特許第6569475号(P6569475)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6569475
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】収納キャビネットの組立方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 2/74 20060101AFI20190826BHJP
   E04F 19/08 20060101ALI20190826BHJP
【FI】
   E04B2/74 541A
   E04F19/08 102K
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-213968(P2015-213968)
(22)【出願日】2015年10月30日
(65)【公開番号】特開2017-82536(P2017-82536A)
(43)【公開日】2017年5月18日
【審査請求日】2018年7月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 裕之
(72)【発明者】
【氏名】濱野 強
【審査官】 新井 夕起子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−257278(JP,A)
【文献】 特開2010−222908(JP,A)
【文献】 米国特許第5707125(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 2/74
E04F 19/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁の壁面に設けられた開口部を介して前記壁内に背面側の少なくとも一部が埋め込まれる収納キャビネットを組立てる組立方法であって、
前記収納キャビネットの背面を形成する背板を、前記壁面に平行な少なくとも一方向への移動が許容されると共に前記壁面に直交する方向への移動が規制されるように前記壁面に略平行な姿勢で前記開口部内に仮固定する背板仮固定工程と、
前記収納キャビネットを形成する前記背板以外の部材を、仮固定された前記背板に対して組み付け前記収納キャビネットを構成する箱体を組立てる箱体組立工程と、
前記箱体を前記開口部内に本固定する本固定工程と、
を備える、収納キャビネットの組立方法。
【請求項2】
前記背板仮固定工程では、
前記背板が、前記開口部を画成する上側面及び下側面に係止される、請求項1に記載の収納キャビネットの組立方法。
【請求項3】
前記上側面には当該開口部の上方で水平に延在する上方壁芯材の外周面が露出し、
前記下側面には当該開口部の下方で水平に延在する下方壁芯材の外周面が露出し、
前記背板仮固定工程では、
前記上方壁芯材及び前記下方壁芯材に対して前記背板が係止される、請求項2に記載の収納キャビネットの組立方法。
【請求項4】
前記背板仮固定工程では、
前記背板の上端部を前記壁面に直交する方向に挟む上部仮固定材が、前記上方壁芯材に取り付けられ、
前記背板の下端部を前記壁面に直交する方向に挟む下部仮固定材が、前記下方壁芯材に取り付けられる、請求項3に記載の収納キャビネットの組立方法。
【請求項5】
前記開口部を画成する右側面には当該開口部の右方で鉛直に延在する右方壁芯材の外周面が露出し、
前記開口部を画成する左側面には当該開口部の左方で鉛直に延在する左方壁芯材の外周面が露出し、
前記本固定工程では、
前記箱体が、前記上方壁芯材、前記右方壁芯材、及び前記左方壁芯材に固定される、請求項3又は4に記載の収納キャビネットの組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁内に背面側の少なくとも一部が埋め込まれる構造の収納キャビネットを組立てる組立方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
住宅内の空間をより有効活用するため、収納キャビネットの少なくとも一部を壁内に埋め込む構造により、居住空間の確保と収納空間の確保とを住宅内で両立しようとする技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。これらの背景として、住宅側の躯体技術が向上し、住宅強度の壁への依存度が低くなり、単なる間仕切りとして機能させる壁が増えてきたことが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-178642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上記のような収納キャビネットを組立てる方法として、収納キャビネットを構成する箱体を組立てた後に壁内に埋め込むといった方法を採用する場合には、収納キャビネットが大型の場合に、壁内へ埋め込む工程で多くの施工人員が必要となる問題点がある。その一方、壁面に設けられた開口部内で収納キャビネットを組立てる方法もある。しかし、開口部の背壁が例えば隣室の石膏ボードの裏面である場合など、背壁の強度が十分でない場合もある。この場合、組立ての土台とすべき収納キャビネットの背板を背壁に固定できない場合もある。これに対し、例えば収納キャビネットの側板を開口部の側面に固定し、その後当該側板に他の板材を組み付けていくといった方法も考えられる。しかしながら、壁面の開口部には寸法誤差が含まれる場合もあるので、上記方法においては、寸法誤差を含む開口部の側面に収納キャビネットの側板が倣うことで、完成後の収納キャビネットの形状が歪んでしまう場合がある。
【0005】
この問題に鑑み、本発明は、完成後の形状の歪を抑制することができる収納キャビネットの組立方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の収納キャビネットの組立方法は、壁の壁面に設けられた開口部を介して壁内に背面側の少なくとも一部が埋め込まれる収納キャビネットを組立てる組立方法であって、収納キャビネットの背面を形成する背板を、壁面に平行な少なくとも一方向への移動が許容されると共に壁面に直交する方向への移動が規制されるように壁面に略平行な姿勢で開口部内に仮固定する背板仮固定工程と、収納キャビネットを形成する背板以外の部材を、仮固定された背板に対して組み付け収納キャビネットを構成する箱体を組立てる箱体組立工程と、箱体を開口部内に本固定する本固定工程と、を備える。
【0007】
この組立方法によれば、収納キャビネットの背板が開口部に対して仮固定され、壁面に直交する方向への背板の移動が規制される。従って、背板が手前側に倒れて来る動きが阻止され、背板以外の部材を組み付ける作業中においても、背板を安定した土台として使用することができる。また、上記仮固定では、壁面に平行な少なくとも一方向への背板の移動が許容される。従って、背板に対して他の部材を組み付ける際に、組立途中の箱体は、開口部に拘束されないように壁面に平行な上記の方向に僅かに変位することができる。よって、開口部の寸法誤差に起因して収納キャビネットに発生する形状の歪を抑制することができる。
【0008】
また、背板仮固定工程では、背板が、開口部を画成する上側面及び下側面に係止されることとしてもよい。この構成によれば、上側面及び下側面によって背板及び箱体を支持し仮固定することができる。
【0009】
具体的な構成として、上側面には当該開口部の上方で水平に延在する上方壁芯材の外周面が露出し、下側面には当該開口部の下方で水平に延在する下方壁芯材の外周面が露出し、背板仮固定工程では、上方壁芯材及び下方壁芯材に対して背板が係止されるようにしてもよい。
【0010】
更に具体的には、背板仮固定工程では、背板の上端部を壁面に直交する方向に挟む上部仮固定材が、上方壁芯材に取り付けられ、背板の下端部を壁面に直交する方向に挟む下部仮固定材が、下方壁芯材に取り付けられるようにしてもよい。
【0011】
また、本発明の収納キャビネットの組立方法では、開口部を画成する右側面には当該開口部の右方で鉛直に延在する右方壁芯材の外周面が露出し、開口部を画成する左側面には当該開口部の左方で鉛直に延在する左方壁芯材の外周面が露出し、本固定工程では、箱体が、上方壁芯材、右方壁芯材、及び左方壁芯材に固定されるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、完成後の形状の歪を抑制することができる収納キャビネットの組立方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】(a)は、実施形態の組立方法が適用される収納キャビネットの一例を示す斜視図であり、(b)は、その分解斜視図である。
図2図1の収納キャビネットが設置される壁を示す斜視図である。
図3】(a),(b)は、背板仮固定工程を示す斜視図であり、(c)は背板が仮固定された状態を示す鉛直断面図である。
図4】箱体組立工程を示す分解斜視図である。
図5】完成後の収納キャビネットにおいて、壁側の上端部及び下端部を示す鉛直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る収納キャビネットの組立方法の実施形態について詳細に説明する。
【0015】
図1に示される収納キャビネット1は、例えば住宅の居室の収納家具として用いられるものである。図1(b)に示されるように、居室の壁50の壁面50sには正面視矩形の開口部51が形成されており、収納キャビネット1は開口部51を介して壁50内に背面側の一部が埋め込まれた状態で設置される。開口部51は、水平面をなす上側面51a及び下側面51bと、鉛直面をなす右側面51c及び左側面51dと、壁面50sに平行な背壁面51eと、の5つの平面で画成されている。以下の説明では、壁50の厚さ方向(壁面に直交する方向)を「壁厚方向」といい、壁面50sに平行な水平方向を「壁幅方向」という場合がある。また、以下の説明で単に「奥側」、「手前側」などという場合には、居室側から見た開口部51の奥側、手前側を意味するものとする。また、「右」、「左」の概念をもつ語を用いる場合には、居室側から壁50を見た場合の左右に対応させるものとする。
【0016】
図1では壁50の断面の詳細な図示を省略しているが、図2に示されるように、壁50は、格子状の壁芯部57と、当該壁芯部57の両側を壁厚方向に挟む2枚の石膏ボード61,62と、で構成されている。なお、図2は壁50から居室側の石膏ボード61を取り除いた状態を示している。壁芯部57は、断面矩形の木材からなる鉛直壁芯材53,55と水平壁芯材52,54とを有する。そして、鉛直壁芯材53,55及び水平壁芯材52,54で囲まれる領域において石膏ボード61に矩形の穴が形成されることで、開口部51が形成されている。
【0017】
この構造により、開口部51の上側面51aには開口部51の上方で壁幅方向に延在する水平壁芯材52(以下、「上方壁芯材52」という)の外周面52tが露出しており、開口部51の下側面51bには開口部51の下方で壁幅方向に延在する水平壁芯材54(以下、「下方壁芯材54」という)の外周面54tが露出している。また、開口部51の右側面51cには開口部51の右方で鉛直に延在する鉛直壁芯材53(以下、「右方壁芯材53」という)の外周面53tが露出し、開口部51の左側面51dには開口部51の左方で鉛直に延在する鉛直壁芯材53(以下、「左方壁芯材55」という)の外周面55tが露出している。また、隣室の石膏ボード62の裏面(壁内側の面)が背壁面51eを構成する。
【0018】
図1に示されるように、収納キャビネット1は直方体の箱型をなし、背壁面51eに沿って配置され収納キャビネット1の背面を形成する背板11と、右側面51cに沿って配置される右側板13と、左側面51dに沿って配置される左側板15と、上側面51aに沿って配置され右側面51cの上端部と左側板15の上端部とを連結する天板12と、下側面51bに沿って配置され右側面51cの下端部と左側板15の下端部とを連結する地板14と、を備えている。更に、収納キャビネット1は、右側板13と左側板15との間に水平に設けられる棚板16と、地板14の下方に位置する前框材19等を備えている。そして、収納キャビネット1は、その背面側の一部が開口部51に挿入され埋め込まれるように壁50に設置されている。収納キャビネット1の壁幅方向の寸法及び鉛直方向の寸法は、開口部51の寸法よりも僅かに小さい。
【0019】
続いて、図3及び図4を参照しながら、収納キャビネット1の組立方法について説明する。本実施形態の組立方法は、以下に説明する背板仮固定工程と、箱体組立工程と、本固定工程と、仕上げ工程と、を備えている。
【0020】
(背板仮固定工程)
図3(a)及び(c)に示されるように、開口部51の上側面51aと下側面51bとに、L字金具21(仮固定材)を設置する。具体的には、上方壁芯材52の外周面52t及び下方壁芯材54の外周面54tにL字金具21の水平片がネジ止めされ、L字金具21の鉛直片が背壁面51eに沿うように配置される。L字金具21は、壁幅方向に複数(図の例の場合は2個)ずつ配列され設置される。
【0021】
続いて、背板11を開口部51に挿入する。背板11の下端にはL字金具21を逃げるための切欠き11aが形成されている。ここでは、上下に設置されたL字金具21の鉛直片に背板11の上端部及び下端部がそれぞれ当接した状態となり、下方壁芯材54の外周面54tに背板11の下端面が載置される。そして、L字金具21の鉛直片がガイドとなり背板11は壁面50sに略平行な姿勢で設置される。
【0022】
次に、図3(b)及び(c)に示されるように、背板11の上端部の手前の位置及び背板11の下端部の手前の位置に、それぞれ固定材23(仮固定材)を設置する。具体的には、上方壁芯材52の外周面52t及び下方壁芯材54の外周面54tに固定材23がネジ止めされる。固定材23は、例えば壁幅方向に水平に延在する角材であり、開口部51の壁幅方向の長さよりも短い。
【0023】
図3(c)に示されるように、背板11の上端部及び下端部は、それぞれL字金具21と固定材23とにより壁厚方向に挟まれた状態となる。この構造により、背板11は、上側面51aにおける上方壁芯材52の外周面52t及び下側面51bにおける下方壁芯材54の外周面54tに係止される。ここでは、上方壁芯材52に取り付けられたL字金具21及び固定材23が、背板11の上端部を挟んで係止する上部仮固定材として機能し、下方壁芯材54に取り付けられたL字金具21及び固定材23が、背板11の下端部を挟んで係止する下部仮固定材として機能する。そして、背板11は、壁面50sに略平行な姿勢で配置され、壁厚方向への移動が規制された状態となる。すなわち、背板11の手前側への移動は固定材23に阻止され、背板11が手前側に倒れて来るような動きも阻止される。また、背板11は、壁幅方向への移動が許容された状態となる。すなわち、背板11は、壁幅方向には拘束されておらず、L字金具21及び固定材23に対して壁幅方向に摺動することで、僅かに壁幅方向に移動可能である。以上のような状態で、背板11が開口部51内に仮固定される。なおここでは、背板11と上方のL字金具21との間にも鉛直方向に間隙が形成されるので、ガタつきによって背板11が鉛直方向にも僅かに移動可能である。
【0024】
(箱体組立工程)
図4に示されるように、箱体組立工程では、収納キャビネット1を形成する背板11以外の部材(右側板13、左側板15、天板12、地板14等)を、仮固定された背板11に対して組み付け、箱体2を組立てる。なお、箱体2とは、少なくとも背板11と、右側板13と、左側板15と、右側板13と左側板15とを連結する天板12及び地板14と、を含み、収納キャビネット1の少なくとも一部が略直方体形状に形成された状態のものを言う。
【0025】
具体的には、図4に示されるように、開口部51内に仮固定された背板11の右端部に対して右側板13を接合し、背板11の左端部に対して左側板15を接合する。更に、背板11、右側板13及び左側板15に対して、棚板16、地板14、天板12をこの順に組み付ける。なお、天板12を接合する際には、右側板13と左側板15との間に手前側から壁厚方向に天板12を挿入し、右側板13と左側板15とのそれぞれ上端部に取り付けられた接合用金具の上に滑り込ませるようにしてもよい。上記接合用金具は、壁厚方向に複数配列されてもよい。また、接合用金具に代えて、壁厚方向に延在し天板12を載置するガイド材等が右側板13と左側板15とのそれぞれ上端部に取り付けられてもよい。
【0026】
上記の各板材(背板11、天板12、右側板13、地板14、左側板15、棚板16)同士の接合には、公知の接合手段を用いることができる。例えば、上記の接合手段としては、公知の家具組立用の接合具等(シャフトとジョイント受け材等で勘合する締結金具、L字金具、木ダボ等)を用いることができ、これらを適宜組み合わせて採用することができる。また、桟木などの受け材で板材を固定する方法を採用してもよい。なお、この種の接合具を使用する場合には、図4に例示されるように、接合具類18を予め各板材に取り付けておいてもよい。以上により、互いに組み付けられた各板材からなり収納キャビネット1を構成する箱体2が完成する。この時点では、箱体2は、L字金具21及び固定材23を介して、上方壁芯材52及び下方壁芯材54に支持されている。
【0027】
(本固定工程)
次に、上記のように組み立てられた箱体2を開口部51内に本固定する。具体的には、箱体2の天板12の奥側の部位を箱体2の内側から上方壁芯材52にネジ止めし、右側板13の奥側の部位を箱体2の内側から右方壁芯材53にネジ止めし、左側板15の奥側の部位を箱体2の内側から左方壁芯材55にネジ止めする。これにより、箱体2が壁50の開口部51に対して本固定され、上方壁芯材52、右方壁芯材53及び左方壁芯材55によって3方向から支持される。なお、図5に示されるように、ネジ止めの際に、上方壁芯材52と天板12との間に、壁幅方向に延在する隙間材24を介在させてもよい。
【0028】
(仕上工程)
次に、図5に示されるように、開口部51の手前側において、天板12と居室天井との間に、壁幅方向に延在する幕板27を設置する。また、地板14と開口部51の下側面51bとの間に、壁幅方向に延在する後框材29を設置し、後框材29の更に手前側の位置に前框材19(図1参照)を設置する。なお、幕板27、後框材29、及び前框材19は、右側板13及び左側板15に固定されてもよく、天板12或いは地板14に固定されてもよい。また、幕板27及び前框材19は、上記の箱組立工程における各板材の接合よりも先に予め所定の箇所に取り付けられていてもよい。このような幕板27、後框材29、及び前框材19の存在により、固定材23等を含む開口部51内の加工部位が居室側から隠されるので、収納キャビネット1の意匠性が確保される。また、後框材29、及び前框材19は、地板14の耐荷重強度の向上にも寄与する。
【0029】
続いて、以上説明した収納キャビネット1の組立方法による作用効果について説明する。
【0030】
上記の組立方法によれば、最初に背板11が開口部51に対して仮固定され、壁厚方向への背板11の移動が規制され、背板11が手前側に倒れて来る動きが阻止される。従って、箱組立工程の作業においても、背板11を安定した土台として使用することができる。また、上記仮固定では、壁幅方向への背板11の移動が許容される。従って、背板11に対して他の部材を組み付ける際において、組立途中の箱体2は、開口部51に拘束されないように壁幅方向に僅かに変位することができる。更に、背板11の鉛直方向のガタつきにより、同様に鉛直方向にも背板11が僅かに変位することができる。よって、開口部51に寸法誤差がある場合に、当該開口部51に右側板13や左側板15が倣って収納キャビネット1の形状が歪んでしまう現象を抑制することができる。
【0031】
また、上記仮固定では、背板11が、開口部51の上側面51a及び下側面51bに係止される。この構成によれば、例えば、強度不足等の理由によって背壁面51eに組立途中の箱体2を支持させることが困難な場合であっても、上側面51a及び下側面51bによって背板11及び箱体2を支持し仮固定することができる。また、背板11を背壁面51e上に固定する必要がないことから、背壁面51eと収納キャビネット1の背板11との間に間隙を確保する必要がある場合にも、対応が可能である。また、例えばL字金具21と固定材23とを更に手前側に設置することで、背壁面51eと背板11との間隙を広くすることも可能である。
【0032】
本発明は、上述した実施形態を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した様々な形態で実施することができる。また、上述した実施形態に記載されている技術的事項を利用して変形例を構成することも可能である。各実施形態の構成を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0033】
例えば、実施形態では、1つの開口部51に対して1列の収納キャビネット1を構築する例を説明したが、1つの開口部に対して複数列の収納キャビネットを構築する場合にも、同様に本発明を適用することができる。また、実施形態では、背面側の一部のみが壁50に埋め込まれた収納キャビネット1について説明したが、本発明は、背面側から全部が壁に埋め込まれた収納キャビネットにも適用可能である。また、本発明の組立方法において収納キャビネットが設置される壁は、間仕切壁であっても耐力壁であってもよい。
【符号の説明】
【0034】
1…収納キャビネット、11…背板、21…L字金具(上部仮固定材、下部仮固定材)、23…固定材(上部仮固定材、下部仮固定材)、50…壁、50s…壁面、51…開口部、51a…上側面、51b…下側面、51c…右側面、51d…左側面、51e…背壁面、52…上方壁芯材、52t…外周面、53…右方壁芯材、53t…外周面、54…下方壁芯材、54t…外周面、55…左方壁芯材、55t…外周面。
図1
図2
図3
図4
図5