特許第6569580号(P6569580)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6569580竪型沈下式渦巻きポンプの管理方法、及び竪型沈下式渦巻きポンプの管理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6569580
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】竪型沈下式渦巻きポンプの管理方法、及び竪型沈下式渦巻きポンプの管理システム
(51)【国際特許分類】
   F04D 7/06 20060101AFI20190826BHJP
   F04D 29/02 20060101ALI20190826BHJP
   F04D 29/22 20060101ALI20190826BHJP
   F04D 29/42 20060101ALI20190826BHJP
   F04D 15/00 20060101ALI20190826BHJP
   F04D 7/04 20060101ALI20190826BHJP
【FI】
   F04D7/06 A
   F04D29/02
   F04D29/22 G
   F04D29/42 F
   F04D15/00 A
   F04D7/06 C
   F04D7/04 B
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-73864(P2016-73864)
(22)【出願日】2016年4月1日
(65)【公開番号】特開2017-186913(P2017-186913A)
(43)【公開日】2017年10月12日
【審査請求日】2018年8月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067736
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100096677
【弁理士】
【氏名又は名称】伊賀 誠司
(72)【発明者】
【氏名】広瀬 正和
【審査官】 加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−329987(JP,A)
【文献】 特開2014−133192(JP,A)
【文献】 特開2001−304134(JP,A)
【文献】 特開平11−128620(JP,A)
【文献】 特開2017−115754(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 1/00−13/16
F04D 17/00−19/02
F04D 21/00−25/16
F04D 29/00−35/00
F04B 49/00−51/00
B01D 23/00−35/04
B01D 35/08−37/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属硫化物が塩素浸出された硫黄を主成分とする浸出残渣の110℃以上150℃以下の溶融物を回分式ろ過装置に流送する竪型沈下式渦巻きポンプの管理方法であって、
前記竪型沈下式渦巻きポンプを据付け後、該竪型沈下式渦巻きポンプの電動機の電流値が設定値となるように、該電動機のインバータの周波数を調整することによって、該竪型沈下式渦巻きポンプの運転を開始する運転開始工程と、
前記竪型沈下式渦巻きポンプの運転を開始した直後に、前記溶融物に含まれる融解残渣が前記回分式ろ過装置内に充填されて該回分式ろ過装置の入力側の液圧力が設定値まで上昇するまでの通液時間を計測し、その計測された時間を標準時間として設定する標準時間設定工程と、
前記回分式ろ過装置のろ過操作毎に該回分式ろ過装置の通液時間を計測する計測工程と、
前記通液時間と前記標準時間とを比較する判定工程と、
前記通液時間が前記標準時間より長いと判定された場合に、前記電動機のインバータの周波数を増加させて、前記通液時間が前記標準時間と同じになるように調整する調整工程と、を含むことを特徴とする竪型沈下式渦巻きポンプの管理方法。
【請求項2】
前記運転開始工程における前記電動機の電流値の設定値は、定格電流の75%であることを特徴とする請求項1に記載の竪型沈下式渦巻きポンプの管理方法。
【請求項3】
前記調整工程で前記電動機のインバータの周波数を108%まで増加させても、通液時間が前記標準時間よりも長いと判定された場合に、前記竪型沈下式渦巻きポンプを整備済み又は新品の竪型沈下式渦巻きポンプに交換するポンプ交換工程を更に含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の竪型沈下式渦巻きポンプの管理方法。
【請求項4】
前記竪型沈下式渦巻きポンプは、ニッケル及びクロムを含有したねずみ鋳鉄材で構成されるインペラと、前記ねずみ鋳鉄材で構成され、前記インペラを収容するケーシングと、を備えており、
前記ポンプ交換工程で取り外された前記竪型沈下式渦巻きポンプの前記インペラの外面全面及び前記ケーシングの内面全面にライニング材を再溶射する再溶射工程を更に含むことを特徴とする請求項3に記載の竪型沈下式渦巻きポンプの管理方法。
【請求項5】
前記再溶射工程後に、前記ライニング材が再溶射されたインペラ及びケーシングを用いて整備済みの竪型沈下式渦巻きポンプを作製し、前記ポンプ交換工程の整備済みの竪型沈下式渦巻きポンプとして用いることを特徴とする請求項4に記載の竪型沈下式渦巻きポンプの管理方法。
【請求項6】
前記再溶射工程では、前記インペラの外面全面に前記ライニング材としてタングステンカーバイドをその厚みが100μm以上400μm以下となるように再溶射し、前記ケーシングの内面全面に前記ライニング材として自溶性溶射溶着用合金材料をその厚みが1mm以上3mm以下となるように再溶射することを特徴とする請求項4又は5に記載の竪型沈下式渦巻きポンプの管理方法。
【請求項7】
金属硫化物が塩素浸出された硫黄を主成分とする浸出残渣の110℃以上150℃以下の溶融物を回分式ろ過装置に流送する竪型沈下式渦巻きポンプの管理システムであって、
前記竪型沈下式渦巻きポンプの電動機のインバータの周波数を調整する機能を有する調整部と、
前記竪型沈下式渦巻きポンプの運転を開始した直後に、前記溶融物に含まれる融解残渣が前記回分式ろ過装置内に充填されて該回分式ろ過装置の入力側の液圧力が設定値に上昇するまでの通液時間を計測し、その計測された時間を標準時間として設定する機能を有する設定部と、
前記回分式ろ過装置のろ過操作毎に該回分式ろ過装置の通液時間を計測する機能を有する計測部と、
前記通液時間と前記標準時間との大小関係を判定する機能を有する判定部と、を備え、
前記調整部は、前記判定部で前記通液時間が前記標準時間より長いと判定された場合に、前記電動機のインバータの周波数を増加させて、前記通液時間が前記標準時間と同じになるように調整することを特徴とする竪型沈下式渦巻きポンプの管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、竪型沈下式渦巻きポンプの管理方法、及び竪型沈下式渦巻きポンプの管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、竪型沈下式渦巻きポンプは、インペラとケーシングを有するポンプ本体を液体中に浸漬して、当該液体を揚液するポンプである。竪型沈下式渦巻きポンプは、埋設型タンク等の揚液対象となる液体の液面レベルよりも高い位置にポンプを固定しなければならない場合に、自給式ポンプ等と共に用いられることが多い。
【0003】
この竪型沈下式渦巻きポンプは、自給式ポンプと比較して、軸封位置が液面よりも高い位置にあるため、軸封部からの液漏れが無く、呼び水が不要なため、自動起動が容易であり、ポンプ本体が液体中に浸漬されているので、気泡を巻込むいわゆるキャビテーションが発生しない等の特性を有するために、産業界全般において広く使用されている。
【0004】
例えば、ニッケル製錬においては、ニッケル及びコバルトを含有した硫化物を塩素ガスの酸化作用を利用して浸出し、浸出されたニッケルイオン及びコバルトイオンを電解採取によって電気ニッケル及び電気コバルトとして製品化する塩素浸出プロセスが実用化されている。この塩素浸出プロセスでは、塩素ガスの酸化作用を利用して浸出されなかった、硫黄を主成分とし、微量の溶け残りの金属を含有した硫化物及び酸化物を含む塩素浸出残渣が産出される。
【0005】
そこで得られた塩素浸出残渣は、硫黄の融点を超える温度にまで昇温されることにより液体の溶融物となり、その溶融物がろ過装置でろ過されることにより溶融硫黄から固体の金属硫化物及び酸化物が分離されて、塩素浸出残渣から製品硫黄が回収される。溶融物の温度が低下することによって、固体が析出する特殊な使用条件では、ポンプと配管の保温や加温が必要となるが、特にポンプ本体の保温や加温は、装置が複雑かつ高価になる。このため、前述した竪型沈下式渦巻きポンプの特長に加えて、ポンプ本体を溶融物に浸漬する方法が最も簡単で合理的であることから、竪型沈下式渦巻きポンプは、塩素浸出残渣の溶融物をろ過装置に送液するポンプとして適用される。
【0006】
塩素浸出残渣から得られる溶融物には、固体の金属硫化物及び酸化物が含まれているので、ポンプのインペラやケーシングといった接液部の構成部品が摩耗され易い課題があった。摩耗負荷の高い部分の摩耗防止に係る従来技術として、特許文献1には、羽根車の流路を形成するシュラウド内面と羽根面を硬化物質で表面被覆して、羽根車本体と前面シュラウドとを接合したことを特徴とする遠心羽根車が開示されている。また、特許文献2には、羽根車側板円筒部の外周面と、当該円筒部の外周面と対向するディフューザの内周面と、羽根車の心板側の外周面と、当該外周面と対向するステージ内周面のそれぞれに炭化物と金属とを含む被膜で被覆し、当該被膜を形成する炭化物は、WC又はCrの少なくとも何れかを含み、被膜を形成する金属は、Ni,Crの少なくとも何れかを含むものであることを特徴とする多段遠心ポンプが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭59−068599号公報
【特許文献2】特許第3573590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、塩素浸出残渣から得られる溶融物は、高温であり、当該塩素浸出残渣には、酸化性物質である溶存塩素や腐食性物質である塩酸も含まれる。このため、ポンプのインペラやケーシングといった接液部の構成部品の摩耗が高温脆化、酸化、酸食が同時に進行することにより、接液部全面に亘って促進される傾向があった。特許文献1や特許文献2のように、部分的に耐摩耗材を被覆するのみでは、固体の金属硫化物や酸化物、酸化性物質等を含んだ高温の溶融物を送液するポンプのインペラやケーシング等の接液部における構成部品の摩耗を抑制するには、十分でなかった。また、竪型沈下式渦巻きポンプを長時間運転させるためには、竪型沈下式渦巻きポンプの接液部における構成部品の摩耗の進行具合に応じて、運転管理や保全管理が適宜、行われる必要がある。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、固体の金属硫化物や酸化物、酸化性物質等を含んだ高温の溶融物の流送条件下でも、接液部における構成部品の優れた耐摩耗性を確保した竪型沈下式渦巻きポンプの運転管理や保全管理を確実に行うことの可能な、新規かつ改良された竪型沈下式渦巻きポンプの管理方法、及び竪型沈下式渦巻きポンプの管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、金属硫化物が塩素浸出された硫黄を主成分とする浸出残渣の110℃以上150℃以下の溶融物を回分式ろ過装置に流送する竪型沈下式渦巻きポンプの管理方法であって、前記竪型沈下式渦巻きポンプを据付け後、該竪型沈下式渦巻きポンプの電動機の電流値が設定値となるように、該電動機のインバータの周波数を調整することによって、該竪型沈下式渦巻きポンプの運転を開始する運転開始工程と、前記竪型沈下式渦巻きポンプの運転を開始した直後に、前記溶融物に含まれる融解残渣が前記回分式ろ過装置内に充填されて該回分式ろ過装置の入力側の液圧力が設定値まで上昇するまでの通液時間を計測し、その計測された時間を標準時間として設定する標準時間設定工程と、前記回分式ろ過装置のろ過操作毎に該回分式ろ過装置の通液時間を計測する計測工程と、前記通液時間と前記標準時間とを比較する判定工程と、前記通液時間が前記標準時間より長いと判定された場合に、前記電動機のインバータの周波数を増加させて、前記通液時間が前記標準時間と同じになるように調整する調整工程と、を含むことを特徴とする。
【0011】
本発明の一態様によれば、インペラやケーシングの摩耗具合に応じて、ポンプの適正な運転管理ができる。
【0012】
このとき、本発明の一態様では、前記運転開始工程における前記電動機の電流値の設定値は、定格電流の75%であることとしてもよい。
【0013】
このようにすれば、段階的に電動機のインバータの周波数を上げられるように、余裕をもってインバータの周波数が調整可能となるので、インペラやケーシングの摩耗具合に応じて、ポンプの適正な運転管理ができるようになる。
【0014】
また、本発明の一態様では、前記調整工程で前記電動機のインバータの周波数を108%まで増加させても、通液時間が前記標準時間よりも長いと判定された場合に、前記竪型沈下式渦巻きポンプを整備済み又は新品の竪型沈下式渦巻きポンプに交換するポンプ交換工程を更に含むこととしてもよい。
【0015】
このようにすれば、インペラやケーシングの摩耗具合に応じて、適正なタイミングでポンプ交換を行うことができる。
【0016】
また、本発明の一態様では、上記の一態様において、前記竪型沈下式渦巻きポンプは、ニッケル及びクロムを含有したねずみ鋳鉄材で構成されるインペラと、前記ねずみ鋳鉄材で構成され、前記インペラを収容するケーシングと、を備えており、前記ポンプ交換工程で取り外された前記竪型沈下式渦巻きポンプの前記インペラの外面全面及び前記ケーシングの内面全面にライニング材を再溶射する再溶射工程を更に含むこととしてもよい。
【0017】
このようにすれば、インペラやケーシングの摩耗具合に応じて、適正なタイミングでポンプ交換を行った使用後のライニング材が減肉したポンプに対して、再溶射して補修できる。
【0018】
また、本発明の一態様では、前記再溶射工程後に、前記ライニング材が再溶射されたインペラ及びケーシングを用いて整備済みの竪型沈下式渦巻きポンプを作製し、前記ポンプ交換工程の整備済みの竪型沈下式渦巻きポンプとして用いることとしてもよい。
【0019】
このようにすれば、インペラやケーシングの摩耗具合に応じて、適正なタイミングでポンプ交換を行ったライニング材が減肉したポンプに対して、再溶射して補修した整備済みのポンプを据替ることによって、設備稼働率の向上と保全コストの低減を図れる。
【0020】
また、本発明の一態様では、前記再溶射工程では、前記インペラの外面全面に前記ライニング材としてタングステンカーバイドをその厚みが100μm以上400μm以下となるように再溶射し、前記ケーシングの内面全面に前記ライニング材として自溶性溶射溶着用合金材料をその厚みが1mm以上3mm以下となるように再溶射することとしてもよい。
【0021】
このようにすれば、優れた耐摩耗性を確保したポンプのインペラやケーシングが摩耗した際に、適正な補修を行うことによって、インペラやケーシングが繰り返し使用可能となるので、ポンプの補修コストを低減できる。
【0022】
また、本発明の他の態様は、金属硫化物が塩素浸出された硫黄を主成分とする浸出残渣の110℃以上150℃以下の溶融物を回分式ろ過装置に流送する竪型沈下式渦巻きポンプの管理システムであって、前記竪型沈下式渦巻きポンプの電動機のインバータの周波数を調整する機能を有する調整部と、前記竪型沈下式渦巻きポンプの運転を開始した直後に、前記溶融物に含まれる融解残渣が前記回分式ろ過装置内に充填されて該回分式ろ過装置の入力側の液圧力が設定値に上昇するまでの通液時間を計測し、その計測された時間を標準時間として設定する機能を有する設定部と、前記回分式ろ過装置のろ過操作毎に該回分式ろ過装置の通液時間を計測する機能を有する計測部と、前記通液時間と前記標準時間との大小関係を判定する機能を有する判定部と、を備え、前記調整部は、前記判定部で前記通液時間が前記標準時間より長いと判定された場合に、前記電動機のインバータの周波数を増加させて、前記通液時間が前記標準時間と同じになるように調整することを特徴とする。
【0023】
本発明の他の態様によれば、インペラやケーシングの摩耗具合に応じて、ポンプの適正な運転管理や保全管理を行うことができる。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように本発明によれば、固体の金属硫化物や酸化物、酸化性物質等を含んだ高温の溶融物の流送条件下において、インペラやケーシングの摩耗具合に応じて、ポンプの適正な運転管理や保全管理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態に係る竪型沈下式渦巻きポンプの管理方法で適用される竪型沈下式渦巻きポンプの概略構成図である。
図2】本発明の一実施形態に係る竪型沈下式渦巻きポンプの管理方法で適用される竪型沈下式渦巻きポンプの要部拡大図である。
図3】(A)は、本発明の一実施形態に係る竪型沈下式渦巻きポンプの管理方法で適用される竪型沈下式渦巻きポンプに備わるインペラの平面図、(B)は、当該インペラの断面図、(C)は、当該インペラの底面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る竪型沈下式渦巻きポンプの管理システムが適用される塩素浸出残渣の融解工程における設備構成図である。
図5】本発明の一実施形態に係る竪型沈下式渦巻きポンプの管理方法の実施例における竪型沈下式渦巻きポンプの電動機のインバータの周波数と回分式リーフ型ろ過機の通液時間との関係を示すグラフである。
図6】本発明の一実施形態に係る竪型沈下式渦巻きポンプの管理方法の比較例における竪型沈下式渦巻きポンプの電動機のインバータの周波数と回分式リーフ型ろ過機の通液時間との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0027】
本発明の一実施形態に係る竪型沈下式渦巻きポンプの管理方法は、金属硫化物が塩素浸出された硫黄を主成分とする浸出残渣の110℃以上150℃以下の溶融物を回分式ろ過装置に流送する竪型沈下式渦巻きポンプの運転管理や保全管理の際に適用される。具体的には、ニッケル製錬におけるニッケル及びコバルトを含有した硫化物の塩素浸出残渣から硫黄を回収する際における塩素浸出残渣の融解工程において、ポンプのインペラやケーシングの摩耗具合に応じて、ポンプの適正な運転管理や保全管理を行う際に使用される。
【0028】
ニッケル製錬において、ニッケル及びコバルトを含有した硫化物を塩素ガスの酸化作用を利用して浸出し、浸出されたニッケルイオン及びコバルトイオンを電解採取によって電気ニッケル及び電気コバルトとして製品化する塩素浸出プロセスが実用化されている。この塩素浸出プロセスでは、浸出残分、すなわち、硫黄を主成分とし、微量の溶け残りの金属を含有した硫化物及び酸化物を含む塩素浸出残渣が産出される。
【0029】
塩素浸出残渣には、硫黄が80〜87重量%、鉄が2〜5重量%、ニッケルが4〜5重量%含まれている。そこで得られた塩素浸出残渣は、遠心分離機で液相と固体に分離され、当該固体が融解槽に投入される。融解槽に投入された固体を硫黄の融点を超える110℃以上にまで昇温することにより、塩素浸出残渣に含まれる硫黄が液体(溶融物)となって、融解槽に滞留する。融解槽中の溶融物は、竪型沈下式渦巻きポンプによって、ろ過装置に送液される。そして、塩素浸出残渣の溶融物がろ過装置でろ過されることにより、溶融硫黄から固体の金属硫化物及び酸化物が分離されて、塩素浸出残渣から製品硫黄が回収される。
【0030】
塩素浸出残渣から得られる溶融物の液温は、110〜150℃、比重は、1.5〜2.0、粘度は、60〜100cP(1cP=1mPa・s)である。このように溶融物は、高温であり、かかる塩素浸出残渣には、酸化性物質である溶存塩素や腐食性物質である塩酸も含まれる。このことから、塩素浸出残渣から得られる溶融物をろ過装置に送液するポンプのインペラやケーシングといった接液部の構成部品の摩耗が高温脆化、酸化、酸食と同時に進行することにより促進される現象を抑制する必要がある。
【0031】
まず、本発明の一実施形態に係る竪型沈下式渦巻きポンプの管理方法で適用される竪型沈下式渦巻きポンプの概略について、図面を使用しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る竪型沈下式渦巻きポンプの管理方法で適用される竪型沈下式渦巻きポンプの概略構成図である。
【0032】
本発明の一実施形態に係る竪型沈下式渦巻きポンプ100は、図1に示すように、駆動源となるモータ102によって回転駆動する回転軸106の先端側にインペラ110が設けられ、当該インペラ110がケーシング112に収容されている。回転軸106の基端側は、軸受104で支持され、当該回転軸106は、略円筒形のフレーム108に収容され、当該フレーム108の先端側にケーシング112がボルトやナット等の接続部材で取り付けられている。
【0033】
ケーシング112の底面側には、先端側に流体を吸い込むための吸込口116が設けられている揚液管114がボルトやナット等の接続部材で取り付けられている。また、ケーシング112の側面側には、吸込口116から吸い込んだ流体を排出するための排出口118が設けられており、当該排出口118は、略L字型の接続管120で連結された移送管122を介して、ろ過装置30(図4参照)に接続される。
【0034】
本発明の一実施形態に係る竪型沈下式渦巻きポンプ100をこのような構成とすることによって、モータ102で回転軸106の先端側に取り付けられたインペラ110を回転駆動させて、揚液管114の吸込口116から吸い込まれた流体が排出口118に排出されるようになる。そして、排出口118から排出された流体は、接続管120、移送管122を介して、ろ過装置30に送液されるようになる。
【0035】
竪型沈下式渦巻きポンプ100によって流体が送液されるとき、揚液管114や、インペラ110、ケーシング112、接続管120、移送管122等は、流体の流れによる摩耗等によって部品寿命が短縮される。特に、流体として金属硫化物が塩素浸出された硫黄を主成分とする浸出残渣の110℃以上150℃以下の溶融物を送液する場合には、ポンプ本体111のインペラ110やケーシング112といった接液部の構成部品の摩耗が高温脆化、酸化、酸食の同時進行により、接液部全面に亘って促進される傾向にある。
【0036】
そこで、検討の結果、ニッケル及びクロムを含有したねずみ鋳鉄材でインペラとケーシング112を構成した上で、インペラ110の外面全面にタングステンカーバイドを溶射して当該タングステンカーバイドで皮膜し、かつ、ケーシング112の内面全面をJIS記号MSFNi4に分類される自溶性溶射溶着用合金材料を溶射して当該自溶性溶射溶着用合金材料で皮膜することによって、ポンプのインペラ110とケーシング112の摩耗が防止できることが分かった。
【0037】
本実施形態では、溶存塩素等を含んだ摩耗性のスラリーを送液するために、スラリー中に浸漬されたポンプ本体111、すなわち、インペラ110及びケーシング112において、インペラ110の外面全面にタングステンカーバイドを溶射してコーティングし、ケーシングの内面全面をJIS記号でMSFNi4に分類される自溶性溶射溶着用合金材料を溶射してコーティングしている。
【0038】
これによって、腐食性物質による腐食等を受ける環境下で摩耗性の高温の溶融物スラリーを送液しても、接液部の構成部品の摩耗によるポンプの停止回数が減少し、ポンプの部品交換等の整備頻度が減少するようになる。このため、設備稼働率が向上して、竪型沈下式渦巻きポンプ100を効率的かつ低コストで運転することができるようになる。
【0039】
次に、本発明の一実施形態に係る竪型沈下式渦巻きポンプにおけるポンプ本体の構成について、図面を使用しながら説明する。図2は、本発明の一実施形態に係る竪型沈下式渦巻きポンプの管理方法で適用される竪型沈下式渦巻きポンプの要部拡大図であり、図1に示すA部の拡大図である。また、図3(A)は、本発明の一実施形態に係る竪型沈下式渦巻きポンプの管理方法で適用される竪型沈下式渦巻きポンプに備わるインペラの平面図、図3(B)は、当該インペラの断面図、図3(C)は、当該インペラの底面図である。
【0040】
回転軸106の先端側には、インペラ110が軸支されるように取り付けられ、当該回転軸106の先端がストッパー113で留められている。インペラ110は、ケーシング112に収容されている。ケーシング112は、図2に示すように、インペラ110の上面側をカバーする頂部側ケーシング112aと、インペラ110の下面側をカバーして吸込カバーとなる底部側ケーシング112bから構成される。頂部側ケーシング112aの頂部112a1は、フレーム108と連結され、底部側ケーシング112bの底部112b2は、揚液管と連結されている。
【0041】
インペラ110の軸方向の上面側には、頂部側ケーシング112aの内壁部112a3と回転軸106との間に軸封部109が回転軸106を囲繞するよう設けられている。インペラ110の軸方向の下面側には、底部側ケーシング112bの中央部に設けられる吸込口112b3が配置され、インペラ10の径方向には、吐出口118が頂部側ケーシング112aの側部側に設けられ、インペラ110の回転により吸込口112b3から流体を吸い込んで、その流体を吐出口118から吐出するようになっている。
【0042】
インペラ110は、図3(B)及び図3(C)に示すように、円盤状の主板110cと、この主板110cの吸込口116側を向く面、すなわち、主板110cの下側の面に設けられた複数の羽根110dを有している。複数の羽根110dは、吸込カバーとなる底部側ケーシング112bに設けられる底面部112b4に対向して回転する。一方、主板110cの上側の面には、軸封部109を減圧するための裏羽根110eが設けられている。
【0043】
本実施形態では、図3(C)に示すように、複数の羽根110dは、それぞれ主板110cの下側の面に対して6箇所に等配されている。各羽根110dは、主板110cの中心から周方向に向かって渦巻き状に湾曲形成されるとともに、隣接する羽根110dとの対向方向の距離が拡幅するように設けられている。そして、隣接する羽根110d同士の間が移送する流体の流路になっている。
【0044】
本実施形態では、高温の溶融物を流体として送液するので、インペラ110の熱による伸びや膨張が発生することがある。このため、裏羽根110eと頂部側ケーシング112aに設けられる頂面部112a4との間のクリアランスと、羽根110dと底部側ケーシング112bに設けられる底面部112b4との間のクリアランスの大きさに関して、頂部側ケーシング112aの下側に設けられるフランジ部112a2と底部側ケーシング112bの上側に設けられるフランジ部112b1とを連結するボルト115とナット117を使用して調整可能になっている。
【0045】
従来では、塩素浸出残渣の溶融物をろ過装置に送液するポンプに用いられる竪型沈下式渦巻きポンプのインペラの材質として、Crを27重量%、Niを5重量%、Moを2重量%含んだフェライトが80重量%とオーステナイトが20重量%で構成された二相ステンレス鋳鋼(商品名:パイロメット26)が使用されていた。しかしながら、二相ステンレス鋳鋼製のインペラは、使用開始後約2週間が経過すると、摩耗によって送液不能となり、新品と交換せざるを得ない状況となっていた。
【0046】
そこで、本実施形態では、竪型沈下式渦巻きポンプ100のインペラ110の材質をねずみ鋳鉄材(JIS規格:FC250)にニッケル及びクロムを添加して耐摩耗性を向上させたものに変更し、かつ、インペラ110の外面全面にタングステンカーバイドを溶射することとした。具体的には、インペラ110の上側凸部110a、下側凸部110b、主板110c、羽根110d、及び裏羽根110eの外面を全面的にタングステンカーバイドで溶射して、コーティングしている。
【0047】
このように、インペラ110の材質を変更して、かつ、タングステンカーバイドで外面全面を溶射してコーティングした結果、使用開始後約2〜3ヶ月でタングステンカーバイドの溶射被膜に損傷は、認められるものの、タングステンカーバイドの再溶射によって繰返し使用できる程度のものであり、寿命を大幅に延ばせるものとなる。
【0048】
一般的に、タングステンカーバイドは、ビッカース硬度で1100Hvを示す硬い物質であり、化学的にも不活性であるため、摩耗性の固体を含んだ比較的高温の溶融物スラリーであり、かつ、酸化性物質である溶存塩素や腐食性物質である塩酸も含んだ溶融物スラリーを取扱うような過酷な使用条件下でも、優れた耐摩耗性を示すものと考えられる。
【0049】
なお、本実施形態では、耐摩耗性を良好とするために、ねずみ鋳鉄材のニッケル含有率は、1重量%以上10重量%以下、クロム含有率は、1重量%以上10重量%以下としている。また、インペラの外面全面に溶射されたタングステンカーバイドの厚みは、100μm以上400μm以下であることが好ましい。タングステンカーバイドの厚みは、100μm未満では、基材に摩耗が及ぶ可能性があり、400μmを超えると、溶射が難しく、加工コストが増加するので、このような数値範囲としている。
【0050】
さらに、本実施形態では、インペラ110の外面全面に溶射されたタングステンカーバイドの厚みが100μm未満まで摩耗したとき、タングステンカーバイドを再溶射することによって、インペラ110を繰り返し使用することが好ましい。すなわち、インペラ110の使用によりインペラ110の外面全面に溶射されたタングステンカーバイドの厚みが100μm未満まで摩耗した際に、タングステンカーバイドを再溶射することによって、インペラを再利用可能にして、竪型沈下式渦巻きポンプ100を補修する。
【0051】
一方で、竪型沈下式渦巻きポンプのケーシングの材質として、従来は、インペラと同様に、二相ステンレス鋳鋼が使用されていた。しかしながら、二相ステンレス鋳鋼製のケーシングは、使用開始後約1ヶ月が経過すると、摩耗によって孔食が発生して使用不能となり、新品と交換せざるを得ない状況となっていた。
【0052】
そこで、本実施形態では、竪型沈下式渦巻きポンプ100のケーシング112の材質をねずみ鋳鉄材(JIS規格:FC250)にニッケル及びクロムを添加して耐摩耗性を向上させたものに変更し、ケーシング112の内面全面にJIS記号でMSFNi4に分類される自溶性溶射溶着用合金材料(商品名:サーフェロイS−6M)を溶射することとした。
【0053】
その結果、インペラ110と同様に、使用開始後約2〜3ヶ月で自溶性溶射溶着用合金材料の溶射被膜に損傷は、認められたが、自溶性溶射溶着用合金材料の再溶射によって繰返し使用できる程度のものであり、寿命を大幅に延ばすことができた。特に、JIS記号でMSFNi4に分類される自溶性溶射溶着用合金材料は、ニッケル含有率が高いため、耐食性及び耐摩耗性に優れている。
【0054】
また、ケーシング112は、インペラ110のように特定の部位の摩耗負荷が高い状況では無く、かつ、ケーシング112の場合は、内面全面に一様に摩耗が進行する状況である。このため、本実施形態では、タングステンカーバイドよりも溶射厚みを大きく取ることができる材質として、JIS記号でMSFNi4に分類される自溶性溶射溶着用合金材料を選定した。そして、JIS記号でMSFNi4に分類される自溶性溶射溶着用合金材料をケーシング112の内面全面に溶射してコーティングしている。なお、ここで言及するケーシング112の内面全面とは、頂部側ケーシング112aの内壁部112a3と頂面部112a4、及び底部側ケーシング112bの底面部112b4と吸込口(内壁部)112b3を言うものとする。
【0055】
ケーシング112を構成するねずみ鋳鉄材のニッケル含有率は、耐摩耗性を良好とするために、1重量%以上10重量%以下、クロム含有率は、1重量%以上10重量%以下としている。また、ケーシングの内面全面に溶射された自溶性溶射溶着用合金材料の厚みは、1mm以上3mm以下としている。
【0056】
自溶性溶射溶着用合金材料の厚みは、1mm未満では、ケーシングの寿命が短くなり、3mmを超えると、完成品に溶射加工を施す際に、インペラとのクリアランスが狭くなり、実施不可能となる。それを避けるためには、予めケーシングを特注品とする必要があり、手間とコストが掛かるので、このような数値範囲としている。
【0057】
前述のように、摩耗性の固体を含んだ比較的高温の溶融物スラリーであり、かつ、酸化性物質である溶存塩素や腐食性物質である塩酸も含んだ溶融物スラリーを取扱う竪型沈下式渦巻きポンプとして、本実施形態の竪型沈下式渦巻きポンプ100を用いることによって、インペラ及びケーシングの耐摩耗性を大幅に向上させられる。具体的には、従来では、インペラで約2週間、ケーシングで約1ヶ月程度であった装置寿命をインペラ及びケーシング共に約2〜3ヶ月にまで大幅に延長することができた。そのことにより、設備稼働率が向上し、設備の補修コストを大幅に削減することができた。
【0058】
次に、本発明の一実施形態に係る竪型沈下式渦巻きポンプの管理方法の詳細について説明する。本実施形態の竪型沈下式渦巻きポンプのインペラであれば、タングステンカーバイドの厚みが100μm未満まで摩耗したとき、タングステンカーバイドを再溶射することが望ましく、竪型沈下式渦巻きポンプのケーシングであれば、自溶性溶射溶着用合金材料の厚みが1mm未満まで摩耗したとき、自溶性溶射溶着用合金材料を再溶射することが望ましい。また、設備稼働率の向上、保全コストの低減を図るために、ポンプの補修、整備のための設備停止周期は、可能な限り長い方が望ましい。
【0059】
しかしながら、溶射されたタングステンカーバイド層や自溶性溶射溶着用合金材料層が無くなるまで摩耗が進行すると、流送する流体が摩耗性の固体を含んだ比較的高温の溶融物スラリーであり、かつ、酸化性物質である溶存塩素や腐食性物質である塩酸も含んだ溶融物スラリーを取扱うような過酷な使用条件下においては、ポンプの本体部分となるねずみ鋳鉄材製のインペラやケーシングの摩耗を著しく促進してしまう。そうなると、ねずみ鋳鉄材製のインペラやケーシング本体を交換せざるを得ず、逆に設備稼働率の低下、保全コストの増加を招くことになる。
【0060】
本実施形態の竪型沈下式渦巻きポンプは、ポンプ本体、すなわち、インペラやケーシングが液中に浸漬されているため、タングステンカーバイド層や自溶性溶射溶着用合金材料層の残厚を確認するには、運転中のポンプを停止して、ポンプを引上げて、ポンプ本体を分解する必要がある。また、ポンプ本体の目視による日常点検も実施することが困難である。
【0061】
ポンプのインペラやケーシングの摩耗が進行すれば、送液流量が低下する。しかしながら、110℃未満になると固体が析出する液体硫黄を主成分とするような特殊な測定対象物である溶融物スラリーの送液流量を正確に測定することは、工業的には、極めて困難である。このように、従来では、ポンプのインペラやケーシングに施された耐摩耗層の適切な再溶射時期の見極め方について、課題があった。
【0062】
本発明者らは、前述した本発明の目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、融解残渣の払出しに使用される回分式のリーフ型ろ過装置の通液時間を計測し、ポンプのインペラやケーシングの摩耗度合いを判断する指標とすることによって、インペラやケーシングの摩耗具合に応じて、ポンプの適正な運転管理や保全管理を行うことができることを見出し、かかる知見に基づき更に研究を行った結果、本発明を完成させるに至った。
【0063】
本発明の一実施形態に係る竪型沈下式渦巻きポンプの管理方法は、運転開始工程、標準時間設定工程、計測工程、判定工程、調整工程、ポンプ交換工程、及び再溶射工程の手順で行われる。
【0064】
運転開始工程は、竪型沈下式渦巻きポンプの電動機のインバータの周波数を調整しながら、該竪型沈下式渦巻きポンプの運転を開始する。本実施形態では、新品又は整備品の竪型沈下式渦巻きポンプを据付け後に、当該竪型沈下式渦巻きポンプの電動機の電流値が設定値となる定格電流の75%となるように、竪型沈下式渦巻きポンプの電動機のインバータの周波数を調整し、運転を開始する。
【0065】
このように、運転開始工程では、段階的に電動機のインバータの周波数を上げられるようにするために、竪型沈下式渦巻きポンプの電動機の電流値が定格電流の75%とインバータの周波数の常用値より幾分小さい値となるように、余裕をもってインバータの周波数を調整する。これによって、インペラやケーシングの摩耗具合に応じて、ポンプの適正な運転管理ができるようになる。
【0066】
標準時間設定工程は、竪型沈下式渦巻きポンプの運転を開始した直後に、当該竪型沈下式渦巻きポンプの運転の標準時間を設定する。本実施形態では、竪型沈下式渦巻きポンプの運転を開始した直後、回分式のリーフ型ろ過装置の通液時間、すなわち、溶融物に含まれる融解残渣が当該回分式のリーフ型ろ過装置内に充填されて、回分式リーフ型ろ過装置の入口の液圧力が設定値まで上昇するまでの時間を計測して、そこで計測された時間を標準時間とする。
【0067】
計測工程は、回分式ろ過装置のろ過操作毎に当該回分式ろ過装置の通液時間を計測する。本実施形態では、ろ過装置として回分式のリーフ型ろ過装置を使用するので、回分式ろ過装置で測定された通液時間を利用して、ポンプの運転の管理指標としている。
【0068】
判定工程は、回分ろ過装置の通液時間と標準時間設定工程で設定した標準時間とを比較して、これら通液時間と標準時間の大小関係を判定する。調整工程は、判定工程で通液時間が標準時間より長いと判定された場合に、電動機のインバータの周波数を増加させて、通液時間が標準時間と同じになるように調整する。
【0069】
このように、本実施形態では、回分式のろ過操作毎に、リーフ型ろ過装置の通液時間を計測し、通液時間が標準時間よりも長くなったら、電動機のインバータの周波数を増加させ、通液時間が標準時間と同じ値になるように調整する。
【0070】
ポンプの摩耗が進むと、インペラとケーシングの隙間が空くことによって、ポンプの流量が下がって通液時間が長くなる。このため、本実施形態では、ポンプの電動機のインバータ周波数を増加させて、ポンプの回転数を増加させることによって、ポンプの送液流量の低下を防止し、通液時間を標準時間に近づけるように調整している。
【0071】
このようにして、本実施形態の管理方法では、運転開始工程、標準時間設定工程、計測工程、判定工程、及び調整工程のステップを経て、標準時間を定めて管理指標として運転管理することによって、インペラ及びケーシング等の接液部の摩耗の進行状況に応じて、適正な運転を行えるようにしている。
【0072】
ポンプ交換工程は、調整工程で電動機のインバータの周波数を108%まで増加させた場合における回分式ろ過装置の通液時間と、標準時間設定工程で設定した標準時間とを比較して、通液時間と標準時間の大小関係を判定する。
【0073】
ポンプ交換工程において、電動機のインバータの周波数を108%まで増加させても、通液時間が標準時間よりも長いと判定されたら、ポンプを交換する。本実施形態では、電動機のインバータの周波数を108%まで増加させても、通液時間が標準時間よりも長いと判定されたら、竪型沈下式渦巻きポンプのインペラ及びケーシングが摩耗したと判断されるので、摩耗した竪型沈下式渦巻きポンプを新品又は整備品の竪型沈下式渦巻きポンプに据え替える。このように本実施形態では、インペラやケーシングの摩耗具合に応じて、適正なタイミングでポンプ交換を行うようにしている。
【0074】
再溶射工程は、ポンプ交換工程で取り外されたインペラやケーシングが摩耗した竪型沈下式渦巻きポンプのインペラの外面全面及びケーシングの内面全面にライニング材を再溶射する。本実施形態では、摩耗した竪型沈下式渦巻きポンプのインペラ及びケーシングにライニング材を再溶射して、整備品の竪型沈下式渦巻きポンプとしている。そして、再溶射工程で摩耗した竪型沈下式渦巻きポンプのインペラ及びケーシングにライニング材を再溶射して整備済みとしたら、次のポンプ交換工程において、整備済みの竪型沈下式渦巻きポンプを摩耗した竪型沈下式渦巻きポンプと据え替える。
【0075】
本実施形態の再溶射工程では、インペラの外面全面にライニング材としてタングステンカーバイドをその厚みが100μm以上400μm以下となるように再溶射し、ケーシングの内面全面にライニング材として自溶性溶射溶着用合金材料をその厚みが1mm以上3mm以下となるように再溶射する。
【0076】
このように、優れた耐摩耗性を確保したポンプのインペラやケーシングが摩耗した際には、適正な補修を行うことによって、インペラやケーシングが繰り返し使用可能となるので、ポンプの補修コストを低減できるようになる。すなわち、インペラやケーシングの摩耗具合に応じて、適正なタイミングでポンプ交換を行ったライニング材が減肉したポンプに対して、適正なタイミングで再溶射することによる補修が可能になるので、設備稼働率の向上と保全コストの低減を図れる。
【0077】
また、本実施形態では、竪型沈下式渦巻きポンプで流送する流体は、金属硫化物が塩素浸出された硫黄を主成分とする浸出残渣の110℃以上150℃以下の溶融物である。すなわち、ポンプで流送する流体は、摩耗性の固体を含んだ比較的高温の溶融物スラリーであり、かつ、酸化性物質である溶存塩素や腐食性物質である塩酸も含んだ溶融物スラリーである。
【0078】
このような溶融物スラリーを取扱うような過酷な使用条件下において、送液流量の測定が極めて困難な状態で使用される竪型沈下式渦巻きポンプに対して、本実施形態では、ポンプを停止させて操業を中断させること無く、回分式ろ過装置の通液時間とポンプを駆動する電動機のインバータの周波数によって、ポンプのインペラやケーシングの摩耗状態を把握できる。このため、適切な時期にポンプの据替えを行い、ポンプのインペラやケーシングの耐摩耗材の再溶射補修を実施することができる。従って、竪型沈下式渦巻きポンプの適正な運転管理、保全管理を行うことによって、設備稼働率の向上、保全コストの低減を図ることができる。
【0079】
次に、本発明の一実施形態に係る竪型沈下式渦巻きポンプの管理方法により操業される管理システムについて、図面を使用しながら説明する。図4は、本発明の一実施形態に係る竪型沈下式渦巻きポンプの管理システムが適用される塩素浸出残渣の融解工程における設備構成図である。
【0080】
本発明の一実施形態に係る竪型沈下式渦巻きポンプ100の管理方法により操業される管理システム1は、ニッケル製錬におけるニッケル及びコバルトを含有した硫化物の塩素浸出残渣から硫黄を回収する際における塩素浸出残渣の融解工程において、金属硫化物が塩素浸出された硫黄を主成分とする浸出残渣の110℃以上150℃以下の溶融物を回分式ろ過装置30に流送する竪型沈下式渦巻きポンプ100の適正な運転管理や保全管理を行う際に、適用される。
【0081】
前述したように、塩素浸出残渣には、硫黄が80〜87重量%、鉄が2〜5重量%、ニッケルが4〜5重量%含まれている。そこで得られた塩素浸出残渣は、遠心分離機10で液相と固体に分離され、当該固体が融解槽20に投入される。融解槽20に投入された固体を硫黄の融点を超える110℃以上にまで昇温されることにより、塩素浸出残渣に含まれる硫黄が液体(溶融物)22となって、融解槽20に滞留する。
【0082】
融解槽20中の溶融物22は、本発明の一実施形態に係る竪型沈下式渦巻きポンプ100によって、ろ過装置30に送液される。そして、塩素浸出残渣の溶融物がろ過装置30でろ過されることにより、溶融硫黄から固体の金属硫化物及び酸化物が分離されて、塩素浸出残渣から製品硫黄が回収される。
【0083】
溶融物は、高温であり、溶融物である塩素浸出残渣には、酸化性物質である溶存塩素や腐食性物質である塩酸も含まれる。このため、塩素浸出残渣から得られる溶融物をろ過装置30に送液するポンプのインペラやケーシングといった接液部の構成部品の摩耗が高温脆化、酸化、酸食と同時に進行することにより促進される現象を抑制する必要がある。
【0084】
本発明の一実施形態に係る竪型沈下式渦巻きポンプ100の管理方法により操業される管理システム1では、インペラやケーシング等の接液部の摩耗具合に応じて、ポンプの適正な運転管理や保全管理を行うために、竪型沈下式渦巻きポンプ102及びろ過装置30の操業を制御する制御部40は、調整部42、設定部44、計測部46、及び判定部48を備える。
【0085】
調整部42は、竪型沈下式渦巻きポンプ100の電動機102のインバータの周波数を調整する機能を有する。本実施形態では、調整部42は、竪型沈下式渦巻きポンプ100を据付けて運転を開始する際に、電動機102の電流値が定格電流の75%となるように、当該電動機102のインバータの周波数を調整する。
【0086】
設定部44は、竪型沈下式渦巻きポンプ100の運転を開始後に標準時間を設定する機能を有する。本実施形態では、ろ過装置30がリーフ型の回分式ろ過機であることから、設定部44は、竪型沈下式渦巻きポンプ100の運転開始後、溶融物の融解残渣がリーフ型回分式ろ過機内に充填されて、当該リーフ型回分式ろ過機の入力側の液圧力が設定値まで上昇するまでの時間を計測し、その計測された時間を標準時間として設定する。なお、当該設定値は、例えば、ポンプの揚程や吐出量、ろ滓容積等、ポンプの能力とろ過機の能力によって決定される。
【0087】
計測部46は、ろ過装置30のろ過操作毎に当該ろ過装置30の通液時間を計測する機能を有する。本実施形態では、ろ過装置30としてリーフ型の回分式ろ過装置が使用されるので、測定された通液時間を利用して、インペラやケーシングの摩耗具合に応じて、ポンプの適正な運転管理を実現するようにしている。
【0088】
判定部48は、通液時間と標準時間との大小関係を判定する機能を有する。本実施形態では、判定部48によって通液時間が標準時間より長いと判定された場合に、調整部42は、電動機102のインバータの周波数を増加させて、通液時間が標準時間と同じになるように調整することを特徴とする。このように、本実施形態では、標準時間を定めて、運転の管理指標とすることによって、インペラやケーシングの摩耗具合に応じて、ポンプの適正な運転管理や保全管理を行うことができる。
【実施例】
【0089】
次に、本発明の一実施形態に係る竪型沈下式渦巻きポンプの管理方法について、実施例により詳しく説明する。なお、本発明は、当該実施例に限定されるものではない。
【0090】
(実施例)
ニッケル製錬におけるニッケル及びコバルトを含有した硫化物の塩素浸出残渣からの硫黄の回収工程において、融解槽から溶融物をろ過装置に送液する融解槽ポンプとして、本発明の一実施形態に係る竪型沈下式渦巻きポンプを用いた操業を行った。
【0091】
塩素浸出残渣を蛇管に0.6MPaの蒸気を通すことで加温し、130℃の溶融物スラリーとした。また、溶融物スラリーの比重は、1.5〜2.0、粘度は、60〜100cPであった。さらに、溶融した塩素浸出残渣の化学組成は、硫黄が80〜87重量%、鉄が2〜5重量%、ニッケルが4〜5重量%であった。なお、化学組成については、硫黄については、差引法(100重量%−(有機物+灰分)重量%)により求めた。また、鉄及びニッケルについては、ICP法により測定した。
【0092】
竪型沈下式渦巻きポンプは、吐出量が150L/分、全揚程が前記溶融物において20mであった。また、竪型沈下式渦巻きポンプの材質としては、インペラについては、ニッケル含有率が1重量%以上10重量%以下、クロム含有率が1重量%以上10重量%以下であるねずみ鋳鉄材製であって、該インペラの外面全面にタングステンカーバイドが約300μmの厚みで溶射されたものを用いた。
【0093】
また、ケーシングについては、ニッケル含有率が1重量%以上10重量%以下、クロム含有率が1重量%以上10重量%以下であるねずみ鋳鉄材製であって、該ケーシングの内面全面にJIS記号でMSFNi4に分類される自溶性溶射溶着用合金材料(商品名:サーフェロイS−6M)が約2mmの厚みで溶射されたものを用いた。以上の条件にて、塩素浸出残渣の溶融物を融解槽からろ過装置に送液する操業を47日間継続した。
【0094】
図5は、実施例に係る竪型沈下式渦巻きポンプの電動機のインバータの周波数と回分式リーフ型ろ過機の通液時間の推移を示した図である。なお、図5の横軸は、回分式のリーフ型ろ過機の運転回数を示している。実施例では、運転開始直後から、液粘度が高かったために、電動機のインバータの周波数を高めに設定した。その後、242回バッチ運転した段階において、ポンプを取り外して、内部点検を実施した。目視点検の結果、インペラやケーシングに摩耗が認められなかったため、そのまま使用を継続した。その後、バッチ運転回数が450回頃より、電動機のインバータの周波数を63Hz(105%)としても、通液時間が標準時間を超えるようになってきたため、ポンプの据え替えを行った。点検の結果、耐摩耗溶射していたインペラやケーシングに摩耗がみられたが、耐摩耗溶射層は残存しており、再溶射を行うことで再利用可能な状態であった。
【0095】
(比較例)
実施例と同じ形式の竪型沈下式渦巻きポンプを実施例と同じ融解槽ポンプに用いて、塩素浸出残渣の溶融物を融解槽からろ過装置に送液する操業を75日間継続した。なお、塩素浸出残渣の組成、塩素浸出残渣の融解条件についても、実施例と同様である。比較例では、電動機のインバータの周波数を108%超えるまで増加させたこと以外は、実施例と同じ本発明の一実施形態に係る竪型沈下式渦巻きポンプの管理方法に従って、ポンプの運転管理及び保全管理を行いながら、長期間の操業を行った。
【0096】
図6は、比較例に係る竪型沈下式渦巻きポンプの電動機のインバータの周波数とリーフ型ろ過機の通液時間の推移を示した図である。運転開始直後から、液粘度が高かったために、電動機のインバータの周波数を高めに設定した。その後、バッチ運転回数が増えるにつれて接液部材の摩耗等が進行し、ろ過機への充填時間が長くなったため、電動機のインバータの周波数を上げて対応して行った。そして、約1000回バッチ運転したところで、電動機のインバータの周波数を65.5Hz(109%)まで上昇させた。電動機のインバータの周波数を109%まで上昇させた直後に、ポンプの揚液不良が頻発したため据え替えを実施した。据え替え時のバッチ運転回数は、1026回であった。取り外したポンプを分解した所、インペラやケーシングの耐摩耗溶射被膜は、なくなっており、母材部も摩耗・腐食で減肉している状態で再溶射での補修が不可能な状態であった。このことから、インバータ周波数が108%を超えるまで使用した場合には、耐摩耗溶射被膜だけではなく、母材部も摩耗・腐食によって再利用が不可能となることが分かった。
【0097】
以上の実施例及び比較例の結果より、本発明の一実施形態に係る竪型沈下式渦巻きポンプの管理方法を適用した実施例では、ろ過装置の通液時間とポンプを駆動する電動機のインバータの周波数に基づいて、ポンプのインペラやケーシングの摩耗状態を把握することによって、ポンプの機能を損なうことなく、長期間の操業運転が可能となり、また、好適なタイミングで補修する保全管理も行えることが分かった。さらに、電動機のインバータ周波数を増加させる上限値が108%であることが分かった。
【0098】
なお、上記のように本発明の各実施形態及び各実施例について詳細に説明したが、本発明の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは、当業者には、容易に理解できるであろう。従って、このような変形例は、全て本発明の範囲に含まれるものとする。
【0099】
例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また、竪型沈下式渦巻きポンプの構成、動作も本発明の各実施形態及び各実施例で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0100】
1 竪型沈下式渦巻きポンプの管理システム、10 遠心分離機、20 融解槽、22 溶融物、30 回分式ろ過装置、40 制御部、42 調整部、44 設定部、46 計測部、48 判定部、100 竪型沈下式渦巻きポンプ、102 モータ(電動機)、104 軸受、106 回転軸、108 フレーム、110 インペラ、111 ポンプ本体、112 ケーシング、112a 頂部側ケーシング、112b 底部側ケーシング、113 ストッパー、114 揚液管、116 吸込口、118 排出口、120 接続管、122 移送管
図1
図2
図3
図4
図5
図6