(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下の用語の定義は、本明細書および特許請求の範囲にわたって適用される。
「第1の面」とは、映像表示透明部材の最表面であって、投影機から映像光が投射される側の表面を意味する。
「第2の面」とは、映像表示透明部材の最表面であって、第1の面とは反対側の表面を意味する。
「第1の面側(第2の面側)の光景」とは、映像表示透明部材の第2の面側(第1の面側)にいる観察者から見て、映像表示透明部材の向こう側に見える像(主要対象物(商品、美術品、人物等)およびその背景、ならびに風景等)を意味する。光景には、投影機から投射された映像光が映像表示透明部材において結像して表示される映像は含まれない。
「反射防止構造」とは、光の反射を低減させるための立体形状または層構成を意味する。
「前方ヘーズ」とは、第1の面側から第2の面側に透過する透過光、または第2の面側から第1の面側に透過する透過光のうち、前方散乱によって、入射光から0.044rad(2.5°)以上それた透過光の百分率を意味する。すなわち、JIS K 7136:2000(ISO 14782:1999)に記載された方法によって測定される、通常のヘーズである。
「後方ヘーズ」とは、第1の面において反射する反射光のうち、散乱によって、正反射光から0.044rad(2.5°)以上それた反射光の百分率を意味する。
【0021】
「凹凸構造」とは、複数の凸部、複数の凹部、または複数の凸部および凹部からなる凹凸形状を意味する。
「不規則な凹凸構造」とは、凸部または凹部が周期的に出現せず、かつ凸部または凹部の大きさが不揃いである凹凸構造を意味する。
「微細凹凸構造」とは、凸部または凹部の平均間隔が可視光の波長以下である凹凸構造を意味する。
「シート」は、枚葉のものであってもよく、連続した帯状のものであってもよい。
算術平均粗さ(Ra)は、JIS B 0601:2013(ISO 4287:1997,Amd.1:2009)に基づき測定される算術平均粗さである。粗さ曲線用の基準長さlr(カットオフ値λc)は0.8mmとした。
透過率は、入射した光に対し、前方方向へ透過、散乱される光の合計の光量の比を百分率とした値である。
反射率は、入射した光に対し、後方方向へ反射、散乱される光の合計の光量の比を百分率とした値である。
透過率、反射率および屈折率は、ナトリウムランプのd線(波長589nm)を用いて室温で測定したときの値である。
【0022】
<反射型の映像表示透明部材>
本発明の映像表示透明部材の第1の態様は、第1の面およびこれとは反対側の第2の面を有し、第1の面側の光景を第2の面側の観察者に視認可能に透過し、第2の面側の光景を第1の面側の観察者に視認可能に透過し、かつ第1の面側から投射された映像光を第1の面側の観察者に映像として視認可能に表示する映像表示透明部材であって、前記映像表示透明部材は、少なくとも第1の面が、反射防止構造を有する、反射型の映像表示透明部材である。
【0023】
図1は、本発明の反射型の映像表示透明部材の一例を示す層構成図である。
映像表示透明部材1は、第1の透明基材10と、第2の透明基材20との間に、光散乱シート30が配置され、第1の透明基材10の、光散乱シート30とは反対側の表面に反射防止フィルム50が配置されたものである。
第1の透明基材10と光散乱シート30とは、接着層12によって接着され、第2の透明基材20と光散乱シート30とは、接着層22によって接着され、第1の透明基材10と反射防止フィルム50とは、接着層52によって接着されている。
【0024】
(透明基材)
第1の透明基材10および第2の透明基材20(以下、まとめて透明基材とも記す。)の材料としては、ガラス、透明樹脂等が挙げられる。各透明基材の材料は、同じものであってもよく、異なるものであってもよい。
【0025】
透明基材を構成するガラスとしては、ソーダライムガラス、無アルカリガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノケイ酸塩ガラス等が挙げられる。ガラスからなる透明基材には、耐久性を向上させるために、化学強化、物理強化、ハードコーティング等を施してもよい。
【0026】
透明基材を構成する透明樹脂としては、ポリカーボネート、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、トリアセチルセルロース、シクロオレフィンポリマー、ポリメチルメタクリレート等が挙げられ、耐候性および透明性の観点から、ポリカーボネート、ポリエステル、またはシクロオレフィンポリマーが好ましい。
【0027】
透明基材としては、複屈折がないものが好ましい。
透明基材の厚さは、基材としての耐久性が保たれる厚さであればよい。透明基材の厚さは、例えば、0.01mm以上であってよく、0.05mm以上であってよく、0.1mm以上であってよい。また、透明基材の厚さは、例えば、10mm以下であってよく、5mm以下であってよく、0.5mm以下であってよく、0.3mm以下であってよく、0.15mm以下であってよい。
【0028】
(接着層)
接着層12、接着層22および接着層52(以下、まとめて接着層とも記す。)の材料としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、粘着剤(アクリル系粘着剤等)、光硬化性樹脂組成物、熱硬化性樹脂組成物、熱可塑性樹脂組成物等が挙げられる。各接着層の材料は、同じものであってもよく、異なるものであってもよい。
【0029】
熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂としては、例えば、可塑化ポリビニルアセタール、可塑化ポリ塩化ビニル、飽和ポリエステル、可塑化飽和ポリエステル、ポリウレタン、可塑化ポリウレタン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体等が挙げられる。
【0030】
接着層の厚さは、接着層としての機能が保たれる厚さであればよく、例えば、0.01〜1.5mmが好ましく、0.05〜1mmがより好ましい。
【0031】
(光散乱シート)
光散乱シート30は、第1の透明フィルム31と;第1の透明フィルム31の表面に設けられた、表面に不規則な凹凸構造を有する第1の透明層32と;第1の透明層32の凹凸構造側の面に沿うように形成された、入射した光の一部を透過する反射膜33と;反射膜33の表面を覆うように設けられた第2の透明層34と;第2の透明層34の表面に設けられた第2の透明フィルム35とを有する。
【0032】
(透明フィルム)
第1の透明フィルム31および第2の透明フィルム35(以下、まとめて透明フィルムとも記す。)は、透明樹脂フィルムであってもよく、薄いガラスフィルムであってもよい。各透明フィルムの材料は、同じものであってもよく、異なるものであってもよい。
【0033】
透明樹脂フィルムを構成する透明樹脂としては、ポリカーボネート、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、トリアセチルセルロース、シクロオレフィンポリマー、ポリメチルメタクリレート等が挙げられる。
【0034】
透明フィルムの厚さは、ロールツーロールプロセスを適用できる厚さが好ましく、例えば、0.01〜0.5mmが好ましく、0.05〜0.3mmがより好ましく、0.2mm以下がさらに好ましい。
【0035】
(透明層)
第1の透明層32および第2の透明層34(以下、まとめて透明層とも記す。)は、透明樹脂層であることが好ましい。各透明層の材料は、同じものであってもよく、異なるものであってもよく、同じものが好ましい。
【0036】
透明樹脂層を構成する透明樹脂としては、光硬化性樹脂(アクリル樹脂、エポキシ樹脂等)の硬化物、熱硬化性樹脂の硬化物、熱可塑性樹脂等が好ましい。透明樹脂層を構成する透明樹脂のイエローインデックスは、映像表示透明部材における窓としての機能が損なわれないように透明感を維持する点から、10以下が好ましく、5以下がより好ましい。
【0037】
透明層の厚さ(凹凸構造が形成された部分を除く)は、ロールツーロールプロセスにて形成しやすい厚さであればよく、例えば、0.5〜50μmが好ましい。
透明層の透過率は、50〜100%が好ましく、75〜100%がより好ましく、90〜100%がさらに好ましい。
【0038】
第1の透明層32の表面に形成された不規則な凹凸構造の算術平均粗さRaは、0.01〜2μmが好ましく、0.05〜2μmがより好ましく、0.1〜1μmが更に好ましい。算術平均粗さRaが該範囲内であれば、投影された映像の視野角が広く、正反射光を直接見ずに視認でき、凹凸構造による粒状感が抑えられ、視認性が良好(解像度が高い)な投影像が得られる。
【0039】
(反射膜)
反射膜33は、反射膜33に入射した光の一部を透過し、他の一部を反射するものであればよい。反射膜33としては、金属膜、半導体膜、誘電体単層膜、誘電体多層膜、これらの組み合わせ等が挙げられる。
【0040】
金属膜、半導体膜等を構成する金属としては、アルミニウム、銀、ニッケル、クロム、タングステン、ケイ素等が挙げられ、アルミニウム、銀、または、それらが主成分である合金が好ましい。
誘電体膜を構成する誘電体としては、金属酸化物、金属窒化物等が挙げられる。
反射膜33としては、金属薄膜、または、酸化物膜、金属薄膜、酸化物膜の順に積層された膜構成のものが好ましい。
【0041】
反射膜33の厚さは、第1の透明層32の表面に形成された不規則な凹凸構造の算術平均粗さRaによる機能を妨げずに活かすことができる点から、1〜100nmが好ましく、4〜25nmがより好ましい。反射膜33の好ましい算術平均粗さRaは、第1の透明層32の算術平均粗さRaと同様の範囲である。
反射膜33の反射率は、充分なスクリーンのゲインが得られる範囲としては、5%以上が好ましく、15%以上がより好ましく、30%以上がさらに好ましい。通常は、反射膜33の反射率は、80%以下が好ましい。
【0042】
(光散乱シートの製造方法)
光散乱シート30の製造方法の一例を、
図2を参照しながら説明する。
図2(a)に示すように、第1の透明フィルム31の表面に、光硬化性樹脂36を塗布し、不規則な凹凸構造が表面に形成されたモールド61を、凹凸構造が光硬化性樹脂36に接するように、光硬化性樹脂36の上に重ねる。
【0043】
第1の透明フィルム31の側から光(紫外線等)を照射し、光硬化性樹脂36を硬化させて、モールド61の不規則な凹凸構造が表面に転写された第1の透明層32を形成した後、
図2(b)に示すように、モールド61を剥離する。
【0044】
図2(c)に示すように、第1の透明層32の表面に金属を物理蒸着し、金属薄膜からなる反射膜33を形成する。
【0045】
図2(d)に示すように、反射膜33の表面に光硬化性樹脂37を塗布し、光硬化性樹脂37の上に第2の透明フィルム35を重ねる。
第1の透明フィルム31の側または第2の透明フィルム35の側から光(紫外線等)を照射し、光硬化性樹脂37を硬化させて、第2の透明層34を形成することによって、光散乱シート30を得る。
【0046】
モールド61としては、不規則な凹凸構造が表面に形成された樹脂フィルム、金属板等が挙げられる。不規則な凹凸構造が表面に形成された樹脂フィルムとしては、微粒子を含む樹脂フィルム、サンドブラスト処理された樹脂フィルム等が挙げられる。
光硬化性樹脂の塗布方法としては、ダイコート法、ブレードコート法、グラビアコート法、スピンコート法、インクジェット法、スプレーコート法等が挙げられる。
物理蒸着方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法等が挙げられる。
【0047】
(反射防止フィルム)
反射防止フィルム50は、二重像の形成を抑制する効果がある。反射型の映像表示透明部材は、反射膜33の算術平均粗さRaが大きいと、二重像が目立たない代わりに解像度が低く、低品位な投影像しか得られない。例えば、投影像中の小さい文字の視認性に影響がある。高品位な投影像を得るために反射膜33の算術平均粗さRaを小さくすると、二重像の形成がされやすい問題を抑制するために、反射防止フィルムは有効に機能する。
反射防止フィルム50は、反射防止構造を有する公知の反射防止フィルムであればよい。反射防止構造としては、微細凹凸構造、低屈折率の単層膜、複数の誘電体膜を積層した多層膜等が挙げられる。低屈折率の単層膜および複数の誘電体膜を積層した多層膜を反射防止構造として用いると、耐擦傷性に優れ耐久性を有するので好ましい。
反射防止フィルム50として、微細凹凸構造を表面に有する反射防止フィルムを用いた場合、反射率の入射角依存性が少なく、投影機200として短焦点プロジェクタを用いた場合でも、二重像の形成が充分に抑えられ、好ましい。微細凹凸構造としては、凹凸が規則的に配置された、いわゆるモスアイ(登録商標)構造や、凹凸の形状自体も様々で、不規則的に配置された構造等が挙げられる。
【0048】
微細凹凸構造における凸部の幅の平均値が可視光波長以下である場合は、回折現象が発生しづらく、さらに、可視光波長の半分以下になると、取り出し光として回折光が出なくなり、反射防止構造の発色を抑えられるため好ましい。微細凹凸構造における凸部の高さは、反射を抑える点から、100nm以上が好ましい。微細凹凸構造における凸部の高さは、耐久性の観点からは、1000nm以下が好ましく、500nm以下がさらに好ましい。
【0049】
反射防止構造として、複数の誘電体膜を積層した多層膜を用いた場合、多層膜と空気との界面に存在する最表層の屈折率が、多層膜の平均屈折率に対して低いと、入射角度依存性を抑制できる効果が高いという点で好ましく、さらに、最表層の屈折率が最も低いとより好ましい。ここで、多層膜の平均屈折率とは、誘電体膜の屈折率と、前記誘電体膜の多層膜に占める体積比率との積を足し合わせて計算されるものとした。
誘電体膜の材料としては、含フッ素重合体、シリコーン樹脂などが挙げられる。
また、反射防止構造の最表面に、シリカ、アルミナ、チタニア、タンタル等の硬度の高い材料を選択することにより、ハードコートとしての機能を付与してもよい。
【0050】
映像表示透明部材の第1の態様において、映像光の結像面から空気界面までの距離は0.5mm以上であると、二重像の形成が抑えやすく好ましい。結像面とは反射膜の光が入射する側の面である。
図1において、透明層32から反射防止フィルム50までの合計の厚さは0.5mm以上が好ましく、0.5〜10mmがより好ましく、0.5〜5mmがさらに好ましい。この範囲であると二重像の形成が抑えやすい。
【0051】
(反射型の映像表示透明部材の光学特性)
映像表示透明部材1の透過率は、観察者側から見て映像表示透明部材1の向こう側に見える光景の視認性がよい点から、5%以上が好ましく、10%以上がより好ましく、15%以上が好ましい。
映像表示透明部材1の透過率は、スクリーンのゲインを適切に保つ点から、90%以下が好ましく、80%以下がより好ましく、75%以下がさらに好ましい。
【0052】
映像表示透明部材1の第1の面Aにおける表面の反射率として正反射率は、二重像の形成を充分に抑える点から、2%以下が好ましく、1%以下がより好ましく、0.5%以下がさらに好ましい。
映像表示透明部材1の第1の面Aにおける反射率として全反射率は、10%以上が好ましく、30%以上がさらに好ましい。通常、全反射率は、80%以下が好ましい。全反射率が上記範囲である場合は、特に、正反射光から0.044rad(2.5°)以上それた反射光において、上記範囲の反射率が得られると、人間の視感度的に変化が分かりにくくなるため、充分なスクリーンのゲインを得られるからである。
【0053】
映像表示透明部材1の前方ヘイズは、観察者側から見て映像表示透明部材1の向こう側に見える光景の視認性がよい点から、50%以下が好ましく、15%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましい。
【0054】
映像表示透明部材1の後方ヘイズは、スクリーンゲイン確保の点から、5%以上が好ましく、15%以上がより好ましく、30%以上がさらに好ましく、50%以上がさらに好ましい。
映像表示透明部材1の後方ヘイズは、観察者側から見て映像表示透明部材1の向こう側に見える光景の視認性の点から、90%以下が好ましく、80%以下がより好ましい。
【0055】
前方ヘーズに対する後方ヘーズの比率(後方ヘーズ/前方ヘーズ)は、0.5以上が好ましく、1以上がより好ましく、2〜20が特に好ましい。後方ヘーズ/前方ヘーズが1以上であれば、映像表示透明部材1を見る観察者の視線が届く範囲に100ルクス以上の環境があっても、観察者側から見て映像表示透明部材1の向こう側に見える光景の視認性がよく、投影された映像と映像表示透明部材1の向こう側の光景とを見ることができる。このような映像表示透明部材1は、周囲に外光が存在する環境下で利用されることに適している。
【0056】
映像表示透明部材1における隣り合う各層間の屈折率差は、各層界面における反射率が0.5%以内に抑えられる点から、0.2以内が好ましく、各層界面での反射率が0.1%程度となる点から、0.1以内がより好ましい。
【0057】
(反射型の映像表示透明部材を備えた映像表示システム)
本発明の映像表示システムの第1の態様は、本発明の反射型の映像表示透明部材と、映像表示透明部材の第1の面側に設置された投影機とを備えた映像表示システムである。
【0058】
図1は、本発明の映像表示システムの一例を示す概略構成図である。
映像表示システムは、反射型の映像表示透明部材1と、映像表示透明部材1の第1の面A側に設置された投影機200とを備える。
【0059】
投影機200は、映像表示透明部材1に映像光Lを投射できるものであればよい。投影機200としては、公知のプロジェクタ等が挙げられる。
【0060】
(反射型の映像表示透明部材を用いた映像表示方法)
本発明の映像表示方法の第1の態様は、本発明の反射型の映像表示透明部材に、映像表示透明部材の第1の面側に設置された投影機から映像光を投射し、映像を表示させる映像表示方法である。
【0061】
図1に示すように、投影機200から投射され、映像表示透明部材1の反射防止フィルム50側の表面(第1の面A)から入射した映像光Lが、反射膜33において散乱することによって結像し、投影機200と同じ側にいる観察者Xに映像として視認可能に表示できる。
また、映像表示透明部材1における反射膜33が入射した光の一部を透過するため、第1の面A側の光景を第2の面B側の観察者Yに視認可能に透過でき、かつ第2の面B側の光景を第1の面A側の観察者Xに視認可能に透過できる。
【0062】
(作用機序)
以上説明した反射型の映像表示透明部材1、ならびに、これを用いた映像表示システムおよび映像表示方法にあっては、第1の面Aが、反射防止フィルム50に由来する反射防止構造を有するため、
図1に示すように、第2の透明基材20と空気との界面(第2の面B)において正反射した透過光Tが、反射防止フィルム50と空気との界面(第1の面A)においてほとんど反射しない。そのため、透過光Tが、反射膜33に再び入射することが抑えられ、二重像の形成が抑えられる。また、反射膜33において正反射した反射光Rが、反射防止フィルム50と空気との界面(第1の面A)において反射しない。そのため、反射光Rが反射膜33に再び入射することが抑えられ、二重像の形成が抑えられる。また、第1の面Aにおいて反射光Rの反射が抑えられ、投影された映像の視野角が広くなる。
【0063】
(他の実施形態)
なお、本発明の反射型の映像表示透明部材は、第1の面およびこれとは反対側の第2の面を有し、第1の面側の光景を第2の面側の観察者に視認可能に透過し、第2の面側の光景を第1の面側の観察者に視認可能に透過し、かつ第1の面側から投射された映像光を第1の面側の観察者に映像として視認可能に表示する映像表示透明部材であって、前記映像表示透明部材は、少なくとも第1の面が、反射防止構造を有するものであればよく、
図1の映像表示透明部材1に限定はされない。以下、
図1の映像表示透明部材1と同じ構成のものについては同じ符号を付し、説明を省略する。
【0064】
本発明の反射型の映像表示透明部材は、
図3に示すように、第1の透明基材10の、光散乱シート30とは反対側の表面、および第2の透明基材20の、光散乱シート30とは反対側の表面に、反射防止フィルム50が配置された映像表示透明部材2であってもよい。第2の面Bが、反射防止フィルム50に由来する反射防止構造を有することによって、反射膜33を透過した透過光が、反射防止フィルム50と空気との界面(第2の面B)においてほとんど反射しない。そのため、透過光が、反射膜33に再び入射することが抑えられ、裏面像の形成が抑えられる。
【0065】
本発明の反射型の映像表示透明部材は、
図4に示すように、第1の透明基材10を省略し、光散乱シート30の第1の透明フィルム31の表面に反射防止フィルム50を配置した映像表示透明部材3であってもよい。映像表示透明部材3の具体例としては、例えば、第2の透明基材20が既存の窓ガラス等である例、すなわち反射防止フィルム50付きの光散乱シート30を、既存の窓ガラス等に貼り付けた例が挙げられる。
また、
図1の映像表示透明部材1において、第2の透明基材20を省略したものであってもよい。
また、2枚のガラス板と、ガラス板間に空隙が形成されるようにガラス板の周縁部に介在配置された枠状のスペーサとを有する複層ガラスにおいて、一方のガラス板の内面に、反射防止フィルム50付きの光散乱シート30を貼り付けたものであってもよい。
【0066】
本発明の反射型の映像表示透明部材は、
図5に示すように、第1の透明基材10および第2の透明基材20を省略し、光散乱シート30の第1の透明フィルム31の表面に反射防止フィルム50を配置した映像表示透明部材4であってもよい。映像表示透明部材4は、接着層を用いて既存の窓ガラス等への貼り付けが可能である。また、映像表示透明部材4は、変形させることが可能であり、曲面を有する映像表示透明部材を形成するのに向いている。
また、
図5の映像表示透明部材4において、第1の透明フィルム31および第2の透明フィルム35を第1の透明基材10および第2の透明基材20に置き換えたものであってもよい。
【0067】
本発明の反射型の映像表示透明部材においては、投影機からの映像光を第2の透明基材側に投射してもよい。この場合、第2の透明基材の表面に反射防止フィルムを設けるか、第2の透明基材の表面に直接、反射防止構造を形成する。
また、光散乱シート30の第2の透明フィルム35が、投影機200側となるように、光散乱シート30を配置してもよい。
【0068】
本発明の反射型の映像表示透明部材においては、反射防止構造は、反射防止フィルムの表面に形成されたものであってもよく、反射防止フィルムを配置することなく、透明基材の表面に直接形成されたものであってもよい。また、透明基材を省略する場合は、透明フィルムの表面に直接形成されたものであってもよい。また、反射防止構造を各層間の界面に設けてもよい。
光散乱シートにおいて、透明フィルムがなくても光散乱シートがその形状を保つことができる場合は、必ずしも光散乱シートに透明フィルムを設ける必要はない。
【0069】
本発明の反射型の映像表示透明部材においては、第1の透明層の表面の凹凸構造が規則的な凹凸構造(マイクロレンズアレイ等)であってもよい。ただし、下記の理由から、第1の透明層の表面の凹凸構造は、不規則な凹凸構造であることが好ましい。
規則的な凹凸構造(マイクロレンズアレイ等)の表面に反射膜を形成した場合、光の回折によって、観察者側から見て映像表示透明部材の向こう側に見える光景に色むらが生じたり、分光によって、観察者側から見て映像表示透明部材の向こう側に見える光景のエッジ部分が虹色に見えたりして、視認性が損なわれる。一方、不規則な凹凸構造の表面に反射膜を形成した場合、光の回折や分光が起こりにくく、これらの問題が生じにくい。そのため、映像表示透明部材を見る方向や場所、入射する光の向きによって色目が変わるような現象が抑えられ、また、映像表示透明部材の向こう側に見える光景の分光が抑えられる。その結果、映像表示透明部材の向こう側に見える光景の視認性や、光景や映像の色再現性に優れ、視線を邪魔しない透明スクリーンとしての性質を備えることができる。
【0070】
また、反射膜付の凹凸構造、凹凸を埋め込んだもの以外の、その他の例として、ハーフミラーに散乱材料を積層したもの;体積ホログラムによって、反射、偏向、拡散などが起こり得るもの;キノフォーム型ホログラム、その他凹凸表面や、その表面に反射膜を形成した構成によって、偏向、反射、拡散などが起こり得るもの;コレステリック液晶、高分子コレステリック液晶等を利用したもの(凹凸構造の表面に配向、形成したコレステリック液晶、若しくは高分子コレステリック液晶の表面にエッチング等で凹凸をつけたもの、水平配向と垂直配向の基材に、コレステリック液晶の液晶層を形成したもの、コレステリック液晶に界面活性剤を添加したものを基材上に塗布して、塗布表面を垂直配光させたもの、または、塗布表面の配向性を落としたもの);等が挙げられる。
また、反射膜がなくても、第1の透明基材10が凹凸構造のみで充分に光を反射、散乱できる場合は、必ずしも反射膜を設ける必要はない。
【0071】
<透過型の映像表示透明部材>
本発明の映像表示透明部材の第2の態様は、第1の面およびこれとは反対側の第2の面を有し、第1の面側の光景を第2の面側の観察者に視認可能に透過し、第2の面側の光景を第1の面側の観察者に視認可能に透過し、かつ第1の面側から投射された映像光を第2の面側の観察者に映像として視認可能に表示する映像表示透明部材であって、前記映像表示透明部材は、第1の面および第2の面のいずれか一方または両方に、反射防止構造を有する、透過型の映像表示透明部材である。
【0072】
図6は、本発明の透過型の映像表示透明部材の一例を示す層構成図である。以下、
図1の映像表示透明部材1と同じ構成のものについては同じ符号を付し、説明を省略する。
映像表示透明部材5は、第1の透明基材10と、第2の透明基材20との間に、光散乱シート40が配置され、第1の透明基材10の、光散乱シート40とは反対側の表面に反射防止フィルム50が配置されたものである。
第1の透明基材10と光散乱シート40とは、接着層12によって接着され、第2の透明基材20と光散乱シート40とは、接着層22によって接着され、第1の透明基材10と反射防止フィルム50とは、接着層52によって接着されている。
【0073】
(光散乱シート)
光散乱シート40は、第1の透明フィルム41と;第1の透明フィルム41の表面に設けられた透明層42と;透明層42の内部に互いに平行に、かつ所定の間隔で配置された、面方向に沿って延びる、長手方向に直交する方向の断面が直角三角形の複数の光散乱部43と;透明層42の表面に設けられた第2の透明フィルム45とを有する。以下、このようにストライプ状に一次元方向に延びる複数の光散乱部43が形成されている構造をルーバー構造と記載する場合がある。
【0074】
(透明フィルム)
第1の透明フィルム41および第2の透明フィルム45(以下、まとめて透明フィルムとも記す。)は、透明樹脂フィルムであってもよく、薄いガラスフィルムであってもよい。各透明フィルムの材料は、同じものであってもよく、異なるものであってもよい。
透明フィルムとしては、上述した光散乱シート30の透明フィルムと同様のものを用いればよい。
【0075】
(透明層)
透明層42は、透明樹脂層であることが好ましい。
透明樹脂層を構成する透明樹脂としては、上述した光散乱シート30の透明樹脂層を構成する透明樹脂と同様のものを用いればよい。
【0076】
透明層42の厚さは、10〜200μmが好ましい。透明層42の厚さが10μm以上であれば、光散乱部43の間隔も10μm以上となり、ルーバーの構造の効果が充分に発揮される。透明層42の厚さが200μm以下であれば、ロールツーロールプロセスにて透明層42を形成しやすい。
【0077】
(光散乱部)
光散乱部43は、例えば、透明樹脂、光散乱材料、および必要に応じて光吸収材料を含む。
【0078】
光散乱部43に含まれる透明樹脂としては、光硬化性樹脂(アクリル樹脂、エポキシ樹脂等)の硬化物、熱硬化性樹脂の硬化物、熱可塑性樹脂等が挙げられる。光散乱部43に含まれる透明樹脂は、透明層42を構成する透明樹脂と同一であってもよく、異なってもよい。
【0079】
光散乱材料としては、酸化チタン(屈折率:2.5〜2.7)、酸化ジルコニウム(屈折率:2.4)、酸化アルミニウム(屈折率:1.76)等の高屈折率材料の微粒子;ポーラスシリカ(屈折率:1.3以下)、中空シリカ(屈折率:1.3以下)等の低屈折率材料の微粒子;前記透明樹脂との相溶性の低い屈折率が異なる樹脂材料;結晶化した1μm以下の樹脂材料等が挙げられる。
【0080】
光散乱材料の濃度は、0.01〜5体積%が好ましく、0.05〜1体積%がより好ましい。
光散乱材料が微粒子である場合、微粒子の平均粒子径は、0.05〜1μmが好ましく、0.15〜0.8μmがより好ましい。微粒子の平均粒子径が、散乱する光の波長と同程度かやや小さいと、前方に散乱される確率が大きくなり、入射した光を屈折させずに散乱させる機能が強くなる。その結果、観察者側から見て映像表示透明部材5の向こう側に見える光景の歪みを抑制し、急激に光量を変化させることがないため、光景の視認性が向上する。
【0081】
光散乱部43が光吸収材料を含む場合、映像表示透明部材5内を不要な迷光として伝搬する光の一部を吸収することができ、散乱される光が減少する。そのため、映像表示透明部材5において白濁して見える現象を抑え、映像のコントラストが向上し、映像の視認性が向上する。また、観察者側から見て映像表示透明部材5の向こう側に見える光景のコントラストも向上し、光景の視認性も向上する。特に、外光によって100ルクス以上の環境が、観察者の視線の中に存在する場合には、前記効果を得やすい。
光吸収材料としては、カーボンブラック、チタンブラック等が挙げられる。
光吸収材料の濃度は、0.01〜10体積%が好ましく、0.1〜3体積%がより好ましい。
【0082】
光散乱部43の間隔(隣り合う光散乱部43の中心間距離)は、10〜250μmが好ましく、10〜100μmがより好ましい。光散乱部43の間隔が10μm以上であれば、光散乱部43を形成しやすい。光散乱部43の間隔が250μm以下であれば、光散乱部43を視認しにくい。
【0083】
光散乱部43の幅(光散乱シート40の面方向かつ光散乱部43の長手方向に直交する方向)は、光散乱部43の間隔の10〜70%が好ましく、25〜50%がより好ましい。光散乱部43の幅が光散乱部43の間隔の10%以上であれば、光散乱部43を形成しやすい。光散乱部43の幅が光散乱部43の間隔の70%以下であれば、光散乱部43の透過率、および観察者側から見て映像表示透明部材5の向こう側に見える光景の視認性が向上する。
【0084】
光散乱部43の幅に対する光散乱部43の高さ(光散乱シート40の面方向に直交する方向)の比、すなわちアスペクト比は、光景の直進光の透過率を維持しながら、斜入射する映像光Lを高ゲインにて散乱させる点から、1以上が好ましく、1.5以上がより好ましく、2以上がさらに好ましい。通常は、アスペクト比は、10以下が好ましい。
【0085】
映像表示透明部材の第2の態様において、映像光の結像面から空気界面までの距離は0.5mm以上であると、二重像の形成が抑えやすく好ましい。
本態様において、結像面は光散乱部である。
【0086】
(光散乱シートの製造方法)
光散乱シート40の製造方法の一例を、
図7を参照しながら説明する。
図7(a)に示すように、第1の透明フィルム41の表面に、光硬化性樹脂46を塗布し、光散乱部43に対応した断面直角三角形の複数の凸条が表面に形成されたモールド62を、凸条が光硬化性樹脂46に接するように、光硬化性樹脂46の上に重ねる。
【0087】
第1の透明フィルム41の側から光(紫外線等)を照射し、光硬化性樹脂46を硬化させて、モールド62の凸条に対応する溝44が表面に形成された透明層下層42aを形成した後、
図7(b)に示すように、モールド62を剥離する。
【0088】
図7(c)に示すように、透明層下層42aの表面に、光硬化性樹脂、光散乱材料、および必要に応じて光吸収材料を含むペーストを供給し、余剰分をドクターブレードでかき取ることによって、透明層下層42aの溝44にペースト48を埋め込む。光(紫外線等)を照射し、ペースト48を硬化させて、光散乱部43を形成する。
【0089】
図7(d)に示すように、透明層下層42aの表面および光散乱部43の表面に光硬化性樹脂47を塗布し、光硬化性樹脂47の上に第2の透明フィルム45を重ねる。
第1の透明フィルム41の側または第2の透明フィルム45の側から光(紫外線等)を照射し、光硬化性樹脂47を硬化させて、透明層上層を形成することによって、光散乱シート40を得る。
【0090】
モールド62としては、複数の凸部が表面に形成された樹脂フィルム、金属板等が挙げられる。
光硬化性樹脂の塗布方法としては、ダイコート法、ブレードコート法、グラビアコート法、スピンコート法、インクジェット法、スプレーコート法等が挙げられる。
【0091】
(透過型の映像表示透明部材の光学特性)
映像表示透明部材5の透過率は、観察者側から見て映像表示透明部材5の向こう側に見える光景の視認性がよい点から、5%以上が好ましく、10%以上がより好ましく、15%以上がさらに好ましい。
【0092】
映像表示透明部材5の第1の面Aにおける表面の反射率(正反射率)は、二重像の形成を充分に抑える点から、2%以下が好ましく、1%以下がより好ましく、0.5%以下がさらに好ましい。
【0093】
映像表示透明部材5の前方ヘイズは、スクリーンのゲインの確保および視野角の確保の点から、4%以上が好ましく、5%以上がより好ましく、8%以上がさらに好ましい。
映像表示透明部材5の前方ヘイズは、観察者側から見て映像表示透明部材5の向こう側に見える光景の視認性の点から、50%以下が好ましく、40%以下がより好ましく、30%以下がさらに好ましく、20%以下が特に好ましい。
【0094】
映像表示透明部材5における透明層42の屈折率と光散乱部43の屈折率との差は、0.01以下が好ましく、0.005以下がより好ましく、0.001以下がさらに好ましい。透明層42の屈折率と光散乱部43の屈折率との差が大きいと、観察者側から見て映像表示透明部材5の向こう側に見える光景が多重に見える。虹ムラや光景の分光を抑える点から、透明層42と光散乱部43は同じ屈折率であることが好ましい。
【0095】
映像表示透明部材5における透明フィルムの屈折率と透明層42の屈折率との差も、できるだけ小さいことが好ましい。透明フィルムの屈折率と透明層42の屈折率との差は、0.1以下が好ましく、0.05以下がより好ましく、0.01以下がさらに好ましく、0.001以下が特に好ましい。
【0096】
(透過型の映像表示透明部材を備えた映像表示システム)
本発明の映像表示システムの第2の態様は、本発明の透過型の映像表示透明部材と、映像表示透明部材の第1の面側に設置された投影機とを備えた映像表示システムである。
【0097】
図6は、本発明の映像表示システムの他の例を示す概略構成図である。
映像表示システムは、反射型の映像表示透明部材5と、映像表示透明部材5の第1の面A側に設置された投影機200とを備える。
【0098】
投影機200は、映像表示透明部材5に映像光Lを投射できるものであればよい。投影機200としては、公知のプロジェクタ等が挙げられる。
【0099】
(透過型の映像表示透明部材を用いた映像表示方法)
本発明の映像表示方法の第2の態様は、本発明の透過型の映像表示透明部材に、映像表示透明部材の第1の面側に設置された投影機から映像光を投射し、映像を表示させる映像表示方法である。
【0100】
図6に示すように、投影機200から投射され、映像表示透明部材5の反射防止フィルム50側の表面(第1の面A)から入射した映像光Lが、光散乱部43において散乱することによって結像し、投影機200と反対側にいる観察者Yに映像として視認可能に表示される。
また、映像表示透明部材5における光散乱部43間の間隙が光を透過するため、第1の面A側の光景を第2の面B側の観察者Yに視認可能に透過でき、かつ第2の面B側の光景を第1の面A側の観察者Xに視認可能に透過できる。
【0101】
(作用機序)
以上説明した透過型の映像表示透明部材5、ならびにこれを用いた映像表示システムおよび映像表示方法にあっては、第1の面Aが、反射防止フィルム50に由来する反射防止構造を有するため、
図6に示すように、光散乱部43を透過した透過光Tが、第2の透明基材20と空気との界面(第2の面B)において反射しても、反射防止フィルム50と空気との界面(第1の面A)においてほとんど反射しない。そのため、光散乱部43を透過し、第2の面Bで反射した光が、光散乱部43に再び入射することが抑えられ、二重像の形成が抑えられる。
【0102】
(他の実施形態)
なお、本発明の透過型の映像表示透明部材は、第1の面およびこれとは反対側の第2の面を有し、第1の面側の光景を第2の面側の観察者に視認可能に透過し、第2の面側の光景を第1の面側の観察者に視認可能に透過し、かつ第1の面側から投射された映像光を第2の面側の観察者に映像として視認可能に表示する映像表示透明部材であって、前記映像表示透明部材は、第1の面および第2の面のいずれか一方または両方に、反射防止構造を有するものであればよく、
図6の映像表示透明部材5に限定はされない。以下、
図6の映像表示透明部材5と同じ構成のものについては同じ符号を付し、説明を省略する。
【0103】
本発明の透過型の映像表示透明部材は、
図8に示すように、第2の透明基材20の、光散乱シート40とは反対側の表面に、反射防止フィルム50が配置された映像表示透明部材6であってもよい。第2の面Bが、反射防止フィルム50に由来する反射防止構造を有することによって、光散乱部43を透過した透過光Tが、反射防止フィルム50と空気との界面(第2の面B)においてほとんど反射しない。そのため、透過光が、光散乱部43に再び入射することが抑えられ、二重像の形成が抑えられる。また、第1の面Bにおける光の反射が抑えられ、投影された映像の視野角が広くなる。
【0104】
本発明の透過型の映像表示透明部材は、
図9に示すように、第1の透明基材10の、光散乱シート40とは反対側の表面、および第2の透明基材20の、光散乱シート40とは反対側の表面に、反射防止フィルム50が配置された映像表示透明部材7であってもよい。第1の面Aおよび第2の面Bが、反射防止フィルム50に由来する反射防止構造を有することによって、二重像の形成がより確実に抑えられる。また、第1の面Bにおける光の反射が抑えられ、投影された映像の視野角が広くなる。
【0105】
本発明の透過型の映像表示透明部材は、
図10に示すように、第1の透明基材10を省略し、光散乱シート40の第1の透明フィルム41の表面に、反射防止フィルム50を配置した映像表示透明部材8であってもよい。映像表示透明部材8の具体例としては、例えば、第2の透明基材20が既存の窓ガラス等である例、すなわち反射防止フィルム50付きの光散乱シート40を、既存の窓ガラス等に貼り付けた例が挙げられる。
また、
図6の映像表示透明部材5において、第2の透明基材20を省略したものであってもよい。
また、2枚のガラス板と、ガラス板間に空隙が形成されるようにガラス板の周縁部に介在配置された枠状のスペーサとを有する複層ガラスにおいて、一方のガラス板の内面に、反射防止フィルム50付きの光散乱シート40を貼り付けたものであってもよい。
【0106】
本発明の透過型の映像表示透明部材は、
図11に示すように、第1の透明基材10および第2の透明基材20を省略し、光散乱シート40の第1の透明フィルム41の表面に、反射防止フィルム50を配置した映像表示透明部材9であってもよい。映像表示透明部材9は、接着層を用いて既存の窓ガラス等への貼り付けが可能である。また、映像表示透明部材9は、変形させることが可能であり、曲面を有する映像表示透明部材を形成するのに向いている。
また、
図11の映像表示透明部材9において、第1の透明フィルム41および第2の透明フィルム45を、第1の透明基材10および第2の透明基材20に置き換えたものであってもよい。
【0107】
本発明の透過型の映像表示透明部材においては、反射防止構造は、反射防止フィルムの表面に形成されたものであってもよく、反射防止フィルムを配置することなく、透明基材の表面に直接形成されたものであってもよい。また、透明基材を省略する場合は、透明フィルムの表面に直接形成されたものであってもよい。また、反射防止構造を各層間の界面に設けてもよい。
光散乱シートにおいて、透明フィルムがなくても光散乱シートがその形状を保つことができる場合は、必ずしも光散乱シートに透明フィルムを設ける必要はない。
【0108】
本発明の透過型の映像表示透明部材においては、光散乱部43の長手方向に直交する断面の形状は、図示例のような直角三角形に限定されず、他の三角形、台形、釣鐘形状等であってもよい。
光散乱シートの他の例としては、体積ホログラムによって、透過、偏向、拡散されるもの;キノフォーム型ホログラムや、その他凹凸表面を形成した構成によって、偏向、散乱、拡散されるもの;等が挙げられる。
【0109】
また、光散乱シートとしては、透明層内に図示例のような複数の光散乱部を設けることなく、透明層全体に光散乱微粒子を分散させて、透明層自体を光散乱層としたものであってもよい。
光散乱微粒子としては、上述した、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム等の高屈折率材料の微粒子;ポーラスシリカ、中空シリカ等の低屈折率材料の微粒子;等が挙げられる。光散乱微粒子の濃度は、0.01〜5体積%が好ましく、0.05〜1体積%がより好ましい。光散乱微粒子の平均粒子径は、上述した理由から、50〜1000nmが好ましく、100〜800nmがより好ましい。
光散乱層は、上述した理由から、光吸収材料を含んでいてもよい。光吸収材料の濃度は、0.01〜5体積%が好ましく、0.1〜3体積%がより好ましい。
【実施例】
【0110】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
例2、および4は実施例であり、例1、および3は比較例である。
【0111】
(例1)
透明なポリエチレンテレフタレート(以下、PETと記す。)フィルム(東洋紡社製、コスモシャイン(登録商標)A4300、厚さ:0.1mm)の表面に、紫外線硬化性樹脂(大阪ガスケミカル社製、オグソール(登録商標)EA−F5003)100質量部に対し、光開始剤(BASF社製、イルガキュア(登録商標)907)を3質量部混合した溶液を、ダイコート法によって10μmの厚みに塗布した。
不規則な凹凸構造が表面に形成された白色PETフィルム(東レ社製、E20、算術平均粗さRa:0.23μm、厚さ:50μm)を、凹凸構造が紫外線硬化性樹脂に接するように、紫外線硬化性樹脂の上に重ねた。
【0112】
透明PETフィルムの側から1000mJの紫外線を照射し、紫外線硬化性樹脂を硬化させて、白色PETフィルムの不規則な凹凸構造が表面に転写された第1の透明層を形成した後、白色PETフィルムを剥離した。
第1の透明層の表面に、アルミニウムを真空蒸着法によって物理蒸着し、アルミニウム薄膜(厚さ:8nm)からなる反射膜を形成した。
【0113】
反射膜の表面に、紫外線硬化性樹脂(大阪ガスケミカル社製、オグソール(登録商標)EA−F5003)100質量部に対し、光開始剤(BASF社製、イルガキュア(登録商標)907)を3質量部混合した溶液を、ダイコート法によって10μmの厚みに塗布し、紫外線硬化性樹脂の上に透明PETフィルム(厚さ:0.1mm)を重ねた。
1000mJの紫外線を照射し、紫外線硬化性樹脂を硬化させて、第2の透明層を形成することによって、例1の光散乱シートを得た。
【0114】
ソーダライムガラス板(松浪ガラス社製、厚さ:3mm)、ポリビニルブチラール(以下、PVBと記す。)フィルム(Solutia社製 Saflex(登録商標)RK11l、厚さ:375μm)、例1の光散乱シート、PVBフィルム(厚さ:375μm)、ソーダライムガラス板(厚さ:3mm)の順に積層し、真空加熱圧着(雰囲気圧:0.1MPa、温度:120℃)を行い、例1の反射型の映像表示透明部材を得た。例1の映像表示透明部材の評価結果を表1に示す。
【0115】
(例2)
例1の映像表示透明部材において、第1の透明基材となるソーダライムガラス板の表面に、反射防止フィルム(日油社製、RL7800)を、接着層(材質:アクリル樹脂、厚さ:500μm)を介して貼り付け、例2の反射型の映像表示透明部材を得た。例2の映像表示透明部材の評価結果を表1に示す。
【0116】
(例3)
透明PETフィルム(東洋紡社製、コスモシャイン(登録商標)A4300、厚さ:50μm)の表面に、紫外線硬化性樹脂(日立化成社製、ヒタロイド(登録商標)7981、比重1.1)を、ブレードコート法によって厚さが80μmとなるように塗布した。
光散乱部に対応した断面直角三角形の複数の凸条が表面に形成されたモールドを、凸条が紫外線硬化性樹脂に接するように、温度:25℃、ゲージ圧:0.5MPaの条件で紫外線硬化性樹脂の上に押し付けた。
【0117】
透明PETフィルムの側から、1000mJの紫外線を照射し、紫外線硬化性樹脂を硬化させて、モールドの凸条に対応する溝が表面に形成された透明層下層を形成した後、モールドを剥離した。これにより、100mm×100mmの領域の透明層下層の表面に、間隔:80μm、幅:40μm、深さ:80μm、長さ:100mm、断面形状:直角三角形の複数の溝が形成された。
【0118】
紫外線硬化性樹脂(日立化成社製、ヒタロイド(登録商標)7981、比重1.1)に、酸化チタン微粒子(平均粒子径:0.2μm、比重4.2)を0.1体積%となるように混合したペーストを用意した。
透明層下層の表面にペーストを供給し、余剰分をドクターブレードでかき取ることによって、透明層下層の溝にペーストを埋め込んだ。1000mJの紫外線を照射し、ペーストを硬化させることによって、光散乱部を形成した。
【0119】
透明層下層の表面および光散乱部の表面に、紫外線硬化性樹脂(日立化成社製、ヒタロイド(登録商標)7981、比重1.1)をダイコート法により5μmの厚みに塗布し、紫外線硬化性樹脂の上に透明PETフィルムを重ねた。次いで、紫外線を照射し、紫外線硬化性樹脂を硬化させて、透明層上層を形成することによって、例3の光散乱シートを得た。
【0120】
ソーダライムガラス板(松浪ガラス社製、厚さ:3mm)、PVBフィルム(Solutia社製 Saflex(登録商標)RK11l、厚さ:375μm)、例3の光散乱シート、PVBフィルム(厚さ:375μm)、ソーダライムガラス板(厚さ:3mm)の順に積層し、真空加熱圧着(雰囲気圧:0.1MPa、温度:120℃)を行い、例3の透過型の映像表示透明部材を得た。例3の映像表示透明部材の評価結果を表1に示す。
【0121】
(例4)
例3の映像表示透明部材において、第1の透明基材となるソーダライムガラス板の表面に、反射防止フィルム(日油社製、RL7800)を、接着層(材質:アクリル樹脂、厚さ:500μm)を介して貼り付け、例4の透過型の映像表示透明部材を得た。例4の映像表示透明部材の評価結果を表1に示す。
【0122】
【表1】
【0123】
表中の評価基準は、下記のとおりである。
(光景視認性)
観察者側(反射型の場合は観察者X、透過型の場合は観察者Y)から見て、映像表示透明部材の向こう側に見える光景の視認性を、下記の基準にて評価した。
0:良好である。
1:手前が暗い場合、または外光が小さい場合は良好である。
2:大まかな認識が可能なレベルである。
3:光景を視認できない。
【0124】
(映像視認性)
観察者側(反射型の場合は観察者X、透過型の場合は観察者Y)から見て、映像表示透明部材に表示される映像の視認性を、下記の基準にて評価した。
0:良好である。
1:周囲が暗い場合は良好である。
2:大まかな認識が可能なレベルである。
3:映像を視認できない。
【0125】
(二重像)
観察者側(反射型の場合は観察者X、透過型の場合は観察者Y)から見て、映像表示透明部材に表示される二重像を、下記の基準にて評価した。
0:二重像を認識できない。
3:二重像を認識できる。