(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記フッ素樹脂以外の樹脂が、フッ素含有量が10質量%未満であるフッ素樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂およびシリコーン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種からなる、請求項2に記載の粉体塗料用組成物。
前記フッ素樹脂以外の樹脂が、フッ素含有量が10質量%未満であるフッ素樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂およびシリコーン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種からなる、請求項8に記載の粉体塗料。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書における下記の用語の意味は以下のとおりである。
「フッ素樹脂」とは、分子中にフッ素原子を有する樹脂を意味する。フッ素樹脂のうち「フッ素含有量が10質量%以上のフッ素樹脂」を、以下、「フッ素樹脂(A)」という。
「可塑剤」とは、樹脂との相溶性を有し、樹脂に柔軟性を付与する化合物を意味する。可塑剤のうち「融点が60〜200℃であり、かつ分子内に環状炭化水素基を有する可塑剤」を、以下、「可塑剤(B)」という。
フッ素樹脂(A)以外の粉体塗料用樹脂を、以下、「樹脂(C)」という。
粉体塗料用組成物の「樹脂成分」とは、粉体塗料用組成物に含まれる、フッ素樹脂(A)および樹脂(C)を意味する。
「ドライブレンド」とは、粉体を溶融することなく、また、溶媒を添加することなく、2種以上の粉体を混合することを意味する。
「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートおよびメタクリレートの総称を意味する。
「単位」とは、重合体中に存在して重合体を構成する、単量体に由来する部分を意味する。また、ある単位の構造を重合体形成後に化学的に変換したものも単位という。なお、以下、場合によっては、個々の単量体に由来する単位をその単量体名に「単位」を付した名称で呼ぶ。
【0015】
「融点」は、示差走査熱量測定(DSC)法で測定した融解ピークにおける温度である。
「ガラス転移温度」は、DSC法で測定した中間点ガラス転移温度である。
「数平均分子量」および「質量平均分子量」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)法によってポリスチレン換算で求めた値である。
「水酸基価」は、JIS K 0070:1992に準拠して測定された値である。
「酸価」は、JIS K 5601−2−1:1999に準拠して測定された値である。
「60度鏡面光沢度」は、JIS K 8741:1997(ISO 2813:1994、ISO 7668:1986)に準拠して測定された値である。
【0016】
〔粉体塗料用組成物〕
本発明の粉体塗料用組成物(以下、「組成物(1)」とも記す。)は、フッ素樹脂(A)と可塑剤(B)とを含む。
組成物(1)は、必要に応じて、樹脂(C)、硬化剤、硬化触媒、それら以外の成分(以下、「他の成分」と記す。)をさらに含んでいてもよい。
組成物(1)を用いることによって、後述する粉体(X1)を製造できる。粉体(X1)をそのまま後述する粉体塗料(I)として用いてもよく、粉体(X1)と他の成分(他の粉体等)を混合した粉体塗料として用いてもよい。
以下、組成物(1)に含まれる各成分、樹脂(C)等の任意に含まれる各成分について説明するが、これらの各成分は後述する本発明の粉体塗料における粉体塗料(I)および粉体塗料(II)においても同様に使用できる。
【0017】
(フッ素樹脂(A))
フッ素樹脂(A)のフッ素含有量は、10質量%以上であり、15質量%がより好ましく、20質量%以上がさらに好ましく、25質量%以上が特に好ましい。また、該フッ素含有量は、80質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましい。フッ素樹脂(A)のフッ素含有量が前記範囲の下限値以上であれば、塗膜の耐候性がさらに優れる。フッ素樹脂(A)のフッ素含有量が前記範囲の上限値以下であれば、塗膜の表面平滑性が優れる。
フッ素含有量は、通常は、フルオロオレフィン単位の含有割合に依存する。ただし一旦フッ素樹脂を製造してからポリマー反応によりこの含有量を増減させることもできる。
フッ素樹脂(A)中のフッ素含有量は、核磁気共鳴(NMR)分析により測定できる。
【0018】
フッ素樹脂(A)としては、フルオロオレフィンの単独重合体または共重合体が挙げられる。共重合体の場合は、フルオロオレフィンの2種以上の共重合体、フルオロオレフィンの1種以上とフルオロオレフィン以外の含フッ素単量体の1種以上との共重合体、フルオロオレフィンの1種以上とフッ素原子を有しない単量体の1種以上との共重合体、フルオロオレフィンの1種以上とフルオロオレフィン以外の含フッ素単量体の1種以上とフッ素原子を有しない単量体の1種以上との共重合体等が挙げられる。フッ素樹脂(A)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0019】
フルオロオレフィンは、炭化水素系オレフィン(一般式C
nH
2n)の水素原子の1個以上がフッ素原子で置換された化合物である。
フルオロオレフィンの炭素数は、2〜8が好ましく、2〜4がより好ましく、2が特に好ましい。
フルオロオレフィンにおけるフッ素原子と水素原子の合計数に対するフッ素原子の数の割合は、25%以上が好ましく、50%以上がより好ましく、100%であってもよい。フッ素原子の数が25%以上であれば、耐候性に優れる塗膜を形成しやすい。フルオロオレフィンにおいては、フッ素原子で置換されていない水素原子の1個以上が塩素原子で置換されていてもよい。フルオロオレフィンが塩素原子を有すると、フッ素樹脂(A)に顔料を分散させやすい。また、フッ素樹脂(A)のガラス転移温度は、30℃以上が好ましく、この温度条であると塗膜のブロッキングを抑えることができる。
【0020】
フルオロオレフィンとしては、テトラフルオロエチレン(以下、「TFE」とも記す。)、クロロトリフルオロエチレン(以下、「CTFE」とも記す。)、ヘキサフルオロプロピレン、ビニリデンフルオリドおよびビニルフルオリドからなる群から選ばれる1種以上が好ましく、TFE、CTFE、ビニリデンフルオリドが特に好ましい。
フルオロオレフィンは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
フルオロオレフィン単位としては、フルオロオレフィンの重合によって直接形成される単位が好ましい。
【0021】
フルオロオレフィン以外の含フッ素単量体としては、フルオロ(アルキルビニルエーテル)、ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)等が挙げられる。
フッ素原子を有しない単量体としては、後述する、水酸基を有する単量体、ビニル系単量体等が挙げられる。
【0022】
フッ素樹脂(A)としては、たとえば、ポリビニリデンフルオリド(以下、「PVDF」とも記す。)、後述する反応性基を有する含フッ素重合体等が挙げられる。
【0023】
これらのフッ素樹脂(A)は、必要に応じて、その本質的な特性を損なわない範囲で、他の単量体単位をさらに有する重合体であってもよい。
他の単量体は、フッ素樹脂(A)を構成する単位として必須の単位を形成する単量体(たとえば、PVDFにおけるビニリデンフルオリド)以外の単量体である。
PVDF以外のフッ素樹脂において、他の単量体としては、フッ素樹脂(A)が基材(特にアルミニウム製基材)への密着性に優れ、シーリング剤によるアルミニウム製カーテンウォールの固定がしやすい等の点からは、ビニリデンフルオリドが特に好ましい。
【0024】
フッ素樹脂(A)の融点は、60〜300℃が好ましく、70〜200℃がより好ましく、80〜180℃が特に好ましい。フッ素樹脂(A)の融点が前記範囲の上限値以下であれば、溶融膜の溶融粘度が下がりやすく、塗膜の塗膜外観、表面平滑性にさらに優れる。
【0025】
フッ素樹脂(A)としては、塗膜の柔軟性や耐衝撃性に優れる点からは、PVDFが好ましい。PVDFの好ましい数平均分子量は5,000〜100万である。
フッ素樹脂(A)としては、防汚性、耐水性、耐酸性、耐アルカリ性に優れる点からは、反応性基を有する含フッ素重合体が好ましい。反応性基としては、水酸基、カルボキシ基、アミノ基等が挙げられる。該含フッ素重合体は、反応性基を2種以上有してもよい。
【0026】
フッ素樹脂(A)としては、水酸基を含有する含フッ素重合体(以下、「水酸基含有含フッ素重合体(A)」を「含フッ素重合体(A1)」とも記す。)またはカルボキシ基を含有する含フッ素重合体(以下、「カルボキシ基含有含フッ素重合体(A)」を「含フッ素重合体(A2)」とも記す。)が特に好ましい。含フッ素重合体(A1)および含フッ素重合体(A2)は、水酸基またはカルボキシ基を含むため、粉体塗料用組成物が後述する硬化剤としてイソシアナート系硬化剤(特にブロック化イソシアナート系硬化剤)を含む場合に、硬化速度に優れる。また、たとえば酸化チタン顔料等を分散させやすく、高光沢の塗膜が得られる点で好ましい。
【0027】
<含フッ素重合体(A1)>
含フッ素重合体(A1)としては、フルオロオレフィン単位と、フルオロオレフィンと共重合可能な、水酸基を有する単量体(以下、「単量体(m1)」と記す。)の単位と、必要に応じてフルオロオレフィンおよび単量体(m1)以外の単量体(以下、「単量体(m2)」と記す。)の単位とを有する水酸基含有含フッ素重合体が好ましい。
【0028】
含フッ素重合体(A1)は、重合体の反応性基変換で水酸基を導入した水酸基含有含フッ素重合体であってもよい。該水酸基含有含フッ素重合体としては、フルオロオレフィン単位と、水酸基以外の反応性官能基を有する単量体単位と、必要に応じて前記単量体(m2)単位とを有する含フッ素重合体に、前記反応性官能基と反応する第2の反応性官能基と水酸基を有する化合物を反応させて得られる含フッ素重合体が好ましい。
【0029】
フルオロオレフィンと共重合させる単量体(m1)および単量体(m2)は、フルオロオレフィン以外のフッ素原子を有する単量体であってもよいが、フッ素原子を有しない単量体が好ましい。
【0030】
単量体(m1)は、水酸基を有する単量体である。
水酸基を有する単量体としては、たとえば、アリルアルコール、ヒドロキシアルキルビニルエーテル(2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、シクロヘキサンジオールモノビニルエーテル等)、ヒドロキシアルキルアリルエーテル(2−ヒドロキシエチルアリルエーテル等)、ヒドロキシアルカン酸ビニル(ヒドロキシプロピオン酸ビニル等)、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等)等が挙げられる。
単量体(m1)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0031】
単量体(m2)としては、ビニル系単量体、すなわち、炭素−炭素二重結合を有する化合物が好ましい。ビニル系単量体は、フルオロオレフィンとの交互共重合性に優れ、含フッ素重合体の重合収率が高い。また、未反応で残存した場合でも、塗膜への影響が少なく、かつ、製造工程で容易に除去できる。
ビニル系単量体としては、たとえば、ビニルエーテル、アリルエーテル、カルボン酸ビニルエステル、カルボン酸アリルエステル、オレフィン、不飽和カルボン酸エステル等が挙げられる。
単量体(m2)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
ビニルエーテルとしては、たとえば、シクロアルキルビニルエーテル(シクロヘキシルビニルエーテル(以下、「CHVE」とも記す。)等)、アルキルビニルエーテル(ノニルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル等)が挙げられる。
アリルエーテルとしては、たとえば、アルキルアリルエーテル(エチルアリルエーテル、ヘキシルアリルエーテル等)が挙げられる。
【0033】
カルボン酸ビニルエステルとしては、たとえば、カルボン酸(酢酸、酪酸、ピバリン酸、安息香酸、プロピオン酸、バーサチック酸等)のビニルエステルが挙げられる。また、分枝鎖状のアルキル基を有するカルボン酸のビニルエステルとして、シェル化学社製のベオバ9(商品名)、ベオバ10(商品名)等を用いてもよい。
カルボン酸アリルエステルとしては、たとえば、カルボン酸(酢酸、酪酸、ピバリン酸、安息香酸、プロピオン酸、バーサチック酸等)のアリルエステルが挙げられる。
オレフィンとしては、たとえば、エチレン、プロピレン、イソブチレン等が挙げられる。
【0034】
不飽和カルボン酸エステルとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、イソヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0035】
単量体(m2)としては、含フッ素重合体(A1)のガラス転移温度を30℃以上に設計でき、塗膜のブロッキングを抑えることができる点から、シクロアルキルビニルエーテルが好ましく、CHVEが特に好ましい。
単量体(m2)としては、塗膜が柔軟性に優れる点から、炭素数3以上の直鎖状または分岐状のアルキル基を有するアルキルビニルエーテルやカルボン酸ビニルも好ましい。
単量体(m2)としては、アルキルビニルエーテルおよびカルボン酸ビニルの少なくとも一方とシクロアルキルビニルエーテルとの併用がより好ましい。
【0036】
含フッ素重合体(A1)を構成する単量体の組み合わせとしては、耐候性に優れ、密着性、柔軟性、耐ブロッキング性等の点から、下記の組み合わせ(1)が好ましく、組み合わせ(2)または(3)が特に好ましい。
組み合わせ(1)
フルオロオレフィン:TFEまたはCTFE、
単量体(m1):ヒドロキシアルキルビニルエーテル、
単量体(m2):シクロアルキルビニルエーテル、アルキルビニルエーテルおよびカルボン酸ビニルエステルから選ばれる1種以上。
組み合わせ(2)
フルオロオレフィン:CTFE、
単量体(m1):ヒドロキシアルキルビニルエーテル、
単量体(m2):CHVEおよびエチルビニルエーテル。
組み合わせ(3)
フルオロオレフィン:CTFE、
単量体(m1):ヒドロキシアルキルビニルエーテル、
単量体(m2):tert−ブチルビニルエーテルおよびピバリン酸ビニル。
【0037】
組み合わせ(2)のように、含フッ素重合体(A1)がフルオロオレフィン単位とビニルエーテル単位とを有し、フルオロオレフィンとビニルエーテルとの交互共重合性の高い共重合体である場合には、後述のように数平均分子量を調整することによって、溶融膜の溶融粘度が下がりやすく、塗膜外観、表面平滑性に優れた塗膜が得られやすい。
組み合わせ(3)のように、含フッ素重合体(A1)がフルオロオレフィン単位とビニルエーテル単位とビニルエステル単位とを有し、フルオロオレフィンと(ビニルエーテル/ビニルエステル)との交互共重合性の高い共重合体である場合には、ビニルエーテルとしてtert−ブチルビニルエーテルを用いることによって、溶融膜の溶融粘度が下がりやすく、塗膜外観、表面平滑性に優れた塗膜が得られやすい。
【0038】
フルオロオレフィン単位の割合は、含フッ素重合体(A1)中の全単位(100モル%)のうち、30〜70モル%が好ましく、40〜60モル%が特に好ましい。フルオロオレフィン単位が前記範囲の下限値以上であれば、塗膜の耐候性に優れる。フルオロオレフィン単位が前記範囲の上限値以下であれば、塗膜の防汚性、耐水性、耐酸性、耐アルカリ性がさらに優れる。また、フルオロオレフィン単位の割合が前記範囲内であれば、塗膜を形成する際の硬化速度を制御しやすく、塗膜外観、表面平滑性に優れた塗膜が得られやすい。
【0039】
単量体(m1)単位の割合は、含フッ素重合体(A1)中の全単位(100モル%)のうち、0.5〜20モル%が好ましく、1〜15モル%が特に好ましい。単量体(m1)単位の割合が前記範囲の下限値以上であれば、塗膜の防汚性、耐水性、耐酸性、耐アルカリ性がさらに優れる。単量体(m1)単位の割合が前記範囲の上限値以下であれば、塗膜の耐擦り傷性が優れる。また、単量体(m1)単位の割合が前記範囲内であれば、溶融膜の溶融粘度が下がりやすく、塗膜外観、表面平滑性に優れた塗膜が得られやすい。
【0040】
単量体(m2)単位の割合は、含フッ素重合体(A1)中の全単位(100モル%)のうち、20〜60モル%が好ましく、30〜50モル%が特に好ましい。単量体(m2)単位の割合が前記範囲の下限値以上であれば、含フッ素重合体(A1)のガラス転移温度が適切で、粉体塗料を製造しやすい。単量体(m2)単位の割合が前記範囲の上限値以下であれば、塗膜のブロッキングがさらに抑制され、柔軟性にさらに優れる。また、単量体(m2)単位の割合が前記範囲内であれば、溶融膜の溶融粘度が下がりやすく、塗膜外観、表面平滑性に優れた塗膜が得られやすい。
【0041】
含フッ素重合体(A1)の数平均分子量は、3,000〜50,000が好ましく、5,000〜30,000がより好ましい。含フッ素重合体(A1)の数平均分子量が前記範囲の下限値以上であれば、塗膜の耐水性、耐塩水性に優れる。含フッ素重合体(A1)の数平均分子量が前記範囲の上限値以下であれば、塗膜の塗膜外観、表面平滑性にさらに優れる。
【0042】
含フッ素重合体(A1)が、組み合わせ(2)のように、フルオロオレフィンとビニルエーテルとの交互共重合性の高い共重合体である場合、含フッ素重合体(A1)の数平均分子量が9,500以下であれば、溶融膜の溶融粘度が下がりやすくなる。溶融粘度の点から、含フッ素重合体(A1)の数平均分子量は、8,500以下がより好ましく、7,500以下が特に好ましい。
【0043】
含フッ素重合体(A1)の水酸基価は、5〜100mgKOH/gが好ましく、10〜80mgKOH/gがより好ましい。含フッ素重合体(A1)の水酸基価が前記範囲の下限値以上であれば、塗膜の防汚性、耐水性、耐酸性、耐アルカリ性がさらに優れる。含フッ素重合体(A1)の水酸基価が前記範囲の上限値以下であれば、100℃以上の高温と10℃以下の低温での温度サイクル下での塗膜の耐クラック性が優れる。
【0044】
含フッ素重合体(A1)のガラス転移温度は、30〜150℃が好ましく、30〜120℃がより好ましく、33〜100℃が特に好ましい。含フッ素重合体(A1)のガラス転移温度が前記範囲の下限値以上であれば、粉体塗料を製造しやすい。含フッ素重合体(A1)のガラス転移温度が前記範囲の上限値以下であれば、溶融膜の溶融粘度が下がりやすく、塗膜外観、表面平滑性に優れた塗膜が得られやすい。
【0045】
<含フッ素重合体(A2)>
含フッ素重合体(A2)としては、下記のものが挙げられる。
・含フッ素重合体(A1)の水酸基と酸無水物とを反応させてカルボキシ基を導入したカルボキシ基含有含フッ素重合体(以下、「含フッ素重合体(A21)」と記す。)。
・フルオロオレフィンと、フルオロオレフィンと共重合可能な、カルボキシ基を有する単量体(以下、「単量体(m3)」と記す。)と、フルオロオレフィンおよび単量体(m3)以外の単量体(以下、「単量体(m4)」と記す。)(m4)とを共重合させたカルボキシ基含有含フッ素重合体(以下、「含フッ素重合体(A22)」と記す。)。
【0046】
<含フッ素重合体(A21)>
含フッ素重合体(A21)は、たとえば、下記の方法によって得られる。
・有機溶媒中、含フッ素重合体(A1)の水酸基と酸無水物とを反応させてエステル結合およびカルボキシ基を形成させる方法。
・含フッ素重合体(A1)と酸無水物とを溶融混練し、含フッ素重合体(A1)の水酸基と酸無水物とを反応させてエステル結合およびカルボキシ基を形成させる方法。
【0047】
該方法で得られた含フッ素重合体(A21)におけるカルボキシ基は、酸無水物に由来する。含フッ素重合体(A21)は、原料の含フッ素重合体(A1)に由来する水酸基を有していてもよい。
粉体塗料用組成物中に未反応の原料(含フッ素重合体(A1)、酸無水物)が含まれる場合、未反応の原料は、含フッ素重合体(A21)として取り扱う。
【0048】
酸無水物としては、二塩基性酸無水物が挙げられる。
二塩基性酸無水物としては、無水コハク酸、無水グルタル酸、無水イタコン酸、無水1,2−シクロヘキサンジカルボン酸(ヘキサヒドロ無水フタル酸)、無水cis−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、無水フタル酸、4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水1,8−ナフタル酸、無水マレイン酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物等が挙げられる。
【0049】
含フッ素重合体(A21)のガラス転移温度は、30〜150℃が好ましく、35〜120℃がより好ましく、35〜100℃が特に好ましい。含フッ素重合体(A21)のガラス転移温度が前記範囲の下限値以上であれば、粉体塗料を製造しやすい。含フッ素重合体(A21)のガラス転移温度が前記範囲の上限値以下であれば、溶融膜の溶融粘度が下がりやすく、塗膜外観、表面平滑性に優れた塗膜が得られやすい。
【0050】
<含フッ素重合体(A22)>
含フッ素重合体(A22)は、フルオロオレフィンと、カルボキシ基を有する単量体(m3)と、他の単量体(m4)とを共重合させたものである。
【0051】
フルオロオレフィンと共重合させる単量体(m3)および単量体(m4)は、フルオロオレフィン以外のフッ素原子を有する単量体であってもよいが、フッ素原子を有しない単量体が好ましい。
【0052】
単量体(m3)としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、10−ウンデシレン酸(ウンデセン酸)、9−オクタデセン酸(オレイン酸)、フマール酸、マレイン酸等の単量体が挙げられ、フルオロオレフィンとの共重合性に優れる点から、10−ウンデシレン酸が好ましい。単量体(m3)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0053】
単量体(m4)としては、ビニル系単量体、すなわち、炭素−炭素二重結合を有する化合物が好ましい。ビニル系単量体は、フルオロオレフィンとの交互共重合性に優れ、含フッ素重合体の重合収率が高い。また、未反応で残存した場合でも、塗膜への影響が少なく、かつ、製造工程で容易に除去できる。また、単量体(m4)は水酸基を有する単量体等の官能基を有する単量体であってもよい。
ビニル系単量体としては、たとえば、ビニルエーテル、アリルエーテル、カルボン酸ビニルエステル、カルボン酸アリルエステル、オレフィン、不飽和カルボン酸エステル等が挙げられる。
【0054】
ビニルエーテルとしては、単量体(m1)や単量体(m2)として例示したもの等が挙げられる。
アリルエーテルとしては、単量体(m1)や単量体(m2)として例示したもの等が挙げられる。
カルボン酸ビニルエステルとしては、単量体(m1)や単量体(m2)として例示したもの等が挙げられる。
カルボン酸アリルエステルとしては、単量体(m2)として例示したもの等が挙げられる。
オレフィンとしては、単量体(m2)として例示したもの等が挙げられる。
不飽和カルボン酸エステルとしては、単量体(m1)や単量体(m2)として例示したもの等が挙げられる。
単量体(m4)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0055】
含フッ素重合体(A22)を構成する単量体の組み合わせとしては、下記の組み合わせ(4)が好ましく、組み合わせ(5)が特に好ましい。
組み合わせ(4)
フルオロオレフィン:TFEまたはCTFE、
単量体(m3):アクリル酸またはメタクリル酸、
単量体(m4):2−ヒドロキシエチルアリルエーテル、カルボン酸ビニルエステルおよび不飽和カルボン酸エステル。
組み合わせ(5)
フルオロオレフィン:CTFE、
単量体(m3):アクリル酸、
単量体(m4):2−ヒドロキシエチルアリルエーテル、酢酸ビニル、バーサチック酸ビニルおよびアクリル酸メチル。
【0056】
組み合わせ(4)および(5)のように、単量体(m4)としてアリルエーテルとビニルエステルを用いた場合には、得られる含フッ素重合体(A22)は、フルオロオレフィンと、(アリルエーテル/ビニルエステル)との交互共重合性の高い共重合体となる。このように単量体(m4)としてtert−ブチルビニルエーテルを用いない場合には、アクリル酸またはメタクリル酸を用いることによって、溶融膜の溶融粘度が下がりやすく、塗膜外観、表面平滑性に優れた塗膜が得られやすい。
【0057】
フルオロオレフィン単位の割合は、含フッ素重合体(A22)中の全単位(100モル%)のうち、30〜70モル%が好ましく、40〜60モル%が特に好ましい。フルオロオレフィン単位が前記範囲の下限値以上であれば、塗膜の耐候性に優れる。フルオロオレフィン単位が前記範囲の上限値以下であれば、塗膜の防汚性、耐水性、耐酸性、耐アルカリ性がさらに優れる。また、フルオロオレフィン単位の割合が前記範囲内であれば、溶融膜の溶融粘度が下がりやすく、塗膜外観、表面平滑性に優れた塗膜が得られやすい。
【0058】
単量体(m3)単位の割合は、含フッ素重合体(A22)中の全単位(100モル%)のうち、0.5〜20モル%が好ましく、1〜15モル%が特に好ましい。単量体(m3)単位の割合が前記範囲の下限値以上であれば、塗膜の防汚性、耐水性、耐酸性、耐アルカリ性がさらに優れる。単量体(m3)単位の割合が前記範囲の上限値以下であれば、塗膜の耐擦り傷性が優れる。また、単量体(m3)単位の割合が前記範囲内であれば、溶融膜の溶融粘度が下がりやすく、塗膜外観、表面平滑性に優れた塗膜が得られやすい。
【0059】
単量体(m4)単位の割合は、含フッ素重合体(A22)中の全単位(100モル%)のうち、20〜60モル%が好ましく、30〜50モル%が特に好ましい。単量体(m4)単位の割合が前記範囲の下限値以上であれば、含フッ素重合体(A22)のガラス転移温度が適切で、粉体塗料を製造しやすい。単量体(m4)単位の割合が前記範囲の上限値以下であれば、塗膜のブロッキングがさらに抑制され、柔軟性にさらに優れる。また、単量体(m4)単位の割合が前記範囲内であれば、溶融膜の溶融粘度が下がりやすく、塗膜外観、表面平滑性に優れた塗膜が得られやすい。
【0060】
含フッ素重合体(A22)の数平均分子量は、3,000〜50,000が好ましく、5,000〜30,000がより好ましい。含フッ素重合体(A22)の数平均分子量が前記範囲の下限値以上であれば、塗膜の耐水性、耐塩水性に優れる。含フッ素重合体(A22)の数平均分子量が前記範囲の上限値以下であれば、溶融膜の溶融粘度が下がりやすく、塗膜外観、表面平滑性に優れた塗膜が得られやすい。
【0061】
(可塑剤(B))
可塑剤(B)は、融点が60〜200℃であり、かつ分子内に環状炭化水素基を有する可塑剤である。
可塑剤(B)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0062】
環状炭化水素基は、脂環式炭化水素基であってもよく、芳香族炭化水素基であってもよい。可塑剤(B)が環状炭化水素基を有することによって、樹脂成分との相溶性がよくなり、可塑剤(B)が塗膜の表面にブリードアウトしにくい。そのため、塗膜のブロッキングが抑えられるとともに、塗膜外観、表面平滑性に優れた塗膜が得られる。
【0063】
可塑剤(B)の融点は、60〜200℃であり、60〜180℃が好ましく、70〜160℃がより好ましい。融点が前記範囲の下限値以上であれば、塗膜のブロッキングを抑えることができる。また、可塑剤(B)が溶融することで樹脂の隙間を埋め、塗膜外観、表面平滑性に優れた塗膜が得られる。可塑剤(B)の融点が前記範囲の上限値以下であれば、溶融膜の溶融粘度が下がり、塗膜外観、表面平滑性に優れた塗膜が得られる。
【0064】
可塑剤(B)の分子量は、200〜1000が好ましく、220〜980がより好ましく、240〜960が特に好ましい。可塑剤(B)の分子量が前記範囲の下限値以上であれば、揮発性が低く、溶融膜の溶融粘度の低減効果が充分に発揮され、塗膜外観、表面平滑性に優れた塗膜が得られやすい。可塑剤(B)の分子量が前記範囲の上限値以下であれば、可塑効果が過度に発現することが抑えられ、塗膜のブロッキングが抑えられる。
【0065】
可塑剤(B)としては、たとえば、下記のものが挙げられる。
ジシクロヘキシルフタレート(融点:68℃、分子量:330)、
ヘキサブロモシクロドデカン(融点:180℃、分子量:641)、
トリ安息香酸グリセリド(融点:68℃、分子量:404)、
テトラ安息香酸ペンタエリスリトール(融点:108℃、分子量:552)、
1,4−シクロヘキサンジメタノールジベンゾエート(融点:118℃、分子量:352)。
【0066】
可塑剤(B)としては、溶融膜の溶融粘度が下がりやすく、塗膜の塗膜外観、表面平滑性にさらに優れる点から、エステル化合物(カルボン酸エステル、亜リン酸エステル等)が好ましく、カルボン酸エステルがより好ましく、塗膜のブロッキングがさらに抑えられる点から、1,4−シクロヘキサンジメタノールジベンゾエートが特に好ましい。
【0067】
(樹脂(C))
樹脂(C)としては、フッ素含有量が10質量%未満であるフッ素樹脂、ならびにアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等の非フッ素樹脂が挙げられ、フッ素樹脂(A)との相溶性の観点から、非フッ素樹脂が好ましく、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂がより好ましく、ポリエステル樹脂が特に好ましい。
【0068】
樹脂(C)の数平均分子量は、溶融粘度が低い点から、10万以下が好ましい。
樹脂(C)の質量平均分子量は、溶融粘度が低い点から、1,000〜20万が好ましい。
【0069】
<フッ素含有量が10質量%未満であるフッ素樹脂>
樹脂(C)としてのフッ素樹脂としては、フッ素樹脂(A)で挙げたフッ素樹脂のなかから、フッ素含有量が10質量%未満であるフッ素樹脂を適宜選択できる。
樹脂(C)としてのフッ素樹脂のフッ素含有量は、10%未満であり、7.5質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。
【0070】
<アクリル樹脂>
アクリル樹脂は、(メタ)アクリレート単位を有する重合体である。アクリル樹脂は、カルボキシ基、水酸基、スルホ基等の反応性基を有していてもよい。反応性基を有するアクリル樹脂は、粉体塗料用組成物が酸化チタン顔料等の顔料を含む場合、その分散性に優れる。
【0071】
アクリル樹脂のガラス転移温度は、30〜60℃が好ましい。ガラス転移温度が前記範囲の下限値以上であれば、塗膜がブロッキングしにくい。アクリル樹脂のガラス転移温度が前記範囲の上限値以下であれば、塗膜の塗膜外観、表面平滑性にさらに優れる。
【0072】
アクリル樹脂の数平均分子量は、5,000〜10万が好ましく、1万〜10万が特に好ましい。アクリル樹脂の数平均分子量が前記範囲の下限値以上であれば、塗膜がブロッキングしにくい。アクリル樹脂の数平均分子量が前記範囲の上限値以下であれば、塗膜の表面平滑性にさらに優れる。
【0073】
アクリル樹脂の質量平均分子量は、6,000〜15万が好ましく、4万〜15万がより好ましく、6万〜15万が特に好ましい。アクリル樹脂の質量平均分子量が前記範囲の下限値以上であれば、塗膜がブロッキングしにくい。アクリル樹脂の質量平均分子量が前記範囲の上限値以下であれば、塗膜の表面平滑性にさらに優れる。
【0074】
アクリル樹脂がカルボキシ基を有する場合、アクリル樹脂の酸価は、150〜400mgKOH/gが好ましい。アクリル樹脂の酸価が前記範囲の下限値以上であれば、粉体塗料用組成物が酸化チタン顔料等の顔料を含む場合、その分散性向上効果がある。アクリル樹脂の酸価が前記範囲の上限値以下であれば、塗膜が耐湿性に優れる。アクリル樹脂が水酸基を有する場合、アクリル樹脂の水酸基価は、基材への密着性の点から、1〜250mgKOH/gが好ましい。
【0075】
<ポリエステル樹脂>
ポリエステル樹脂としては、多価カルボン酸単位と多価アルコール単位とを有し、必要に応じてこれら2種の単位以外の単位(たとえば、ヒドロキシカルボン酸単位等)を有するものが挙げられる。
【0076】
ポリエステル樹脂としては、線状重合体、または少数の分岐を有する分岐重合体が好ましく、線状重合体が特に好ましい。分岐の多い分岐重合体は軟化点や溶融温度が高くなりやすいことから、ポリエステル樹脂が分岐重合体である場合、軟化点は200℃以下が好ましい。ポリエステル樹脂としては、常温で固体状であり、軟化点が100〜150℃であるポリエステル樹脂が好ましい。
【0077】
ポリエステル樹脂の数平均分子量は、5,000以下が好ましい。ポリエステル樹脂の質量平均分子量は、2,000〜20,000が好ましく、2,000〜10,000が特に好ましい。ポリエステル樹脂としては、数平均分子量が5,000以下であり、かつ質量平均分子量が2,000〜20,000であるものがさらに好ましく、数平均分子量が5,000以下であり、かつ質量平均分子量が2,000〜10,000であるものが特に好ましい。
【0078】
ポリエステル樹脂は、後述の硬化剤と反応し得る反応性基を有してもよい。ポリエステル樹脂の重合体鎖の末端単位の少なくとも一部は、1価の多価カルボン酸単位であるか1価の多価アルコール単位であることが好ましく、前者の場合はその単位が有するフリーのカルボキシ基が、後者の場合はその単位が有するフリーの水酸基が反応性基として機能する。反応性基を有する単位は末端単位以外の単位であってもよい。たとえば、3以上の水酸基を有する多価アルコールに由来する2価の多価アルコール単位は、フリーの水酸基を有する単位であることから、ポリエステル樹脂は該反応性基を有する2価以上の単位を有していてもよい。
【0079】
ポリエステル樹脂における反応性基としては、塗膜の耐水性、耐アルカリ性、耐酸性に優れる点から、水酸基が好ましい。ポリエステル樹脂は通常水酸基とカルボキシ基を有し、ポリエステル樹脂としては主として水酸基を有するポリエステル樹脂が好ましい。
ポリエステル樹脂の水酸基価は、20〜100mgKOH/gが好ましく、20〜80mgKOH/gが特に好ましい。ポリエステル樹脂の酸価は、1〜80mgKOH/gが好ましく、3〜50mgKOH/gが特に好ましい。ポリエステル樹脂の水酸基価および酸価は、JIS K 0070:1992に準拠して測定された値である。
【0080】
ポリエステル樹脂としては、溶融膜の溶融粘度を低くできる点から、炭素数8〜15の芳香族多価カルボン酸単位と炭素数2〜10の多価アルコール単位とを有するポリエステル樹脂が好ましい。
【0081】
(硬化剤)
硬化剤は、フッ素樹脂(A)および樹脂(C)のうちの少なくとも一方が反応性基(水酸基、カルボキシ基等)を有する場合に、反応性基と反応してフッ素樹脂(A)や樹脂(C)を架橋したり高分子量化したりして硬化させる化合物である。硬化剤は、フッ素樹脂(A)および樹脂(C)が有する反応性基に反応し得る反応性基を2個以上有する。硬化剤の反応性基は、常温でフッ素樹脂(A)および樹脂(C)の反応性基に反応しやすいものは好ましくない点から、粉体塗料用組成物からなる粉体を含む粉体塗料が加熱溶融された際に反応し得る反応性基であることが好ましい。たとえば、常温で高い反応性基を有するイソシアナート基よりもブロック化イソシアナート基が好ましい。ブロック化イソシアナート基は、粉体塗料が加熱溶融された際にブロック剤が脱離してイソシアナート基となり、該イソシアナート基が反応性基として作用する。
【0082】
硬化剤としては、公知の化合物を用いることができ、たとえば、ブロック化イソシアナート系硬化剤、アミン系硬化剤(ヒドロキシメチル基やアルコキシメチル基が結合したアミノ基を有する、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、スルホアミド樹脂、尿素樹脂、アニリン樹脂等)、β−ヒドロキシアルキルアミド系硬化剤、エポキシ系硬化剤(トリグリシジルイソシアヌレート等)が挙げられる。基材との密着性、塗装後の製品の加工性、塗膜の耐水性に優れる点から、ブロック化イソシアナート系硬化剤が特に好ましい。
含フッ素重合体(A2)の場合、硬化剤としては、β−ヒドロキシアルキルアミド系硬化剤、エポキシ系硬化剤が好ましい。
硬化剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0083】
ブロック化イソシアナート系硬化剤としては、室温で固体のものが好ましい。
ブロック化イソシアナート系硬化剤としては、脂肪族、芳香族または芳香脂肪族のジイソシアナートと、活性水素を有する低分子化合物とを反応させて得たポリイソシアナートを、ブロック剤と反応させ、マスキングすることによって製造したものが好ましい。
【0084】
(硬化触媒)
硬化触媒は、硬化反応を促進し、塗膜に良好な化学性能および物理性能を付与するものである。
ブロック化イソシアナート系硬化剤を用いる場合、硬化触媒としては、スズ触媒(オクチル酸スズ、トリブチルスズラウレート、ジブチルスズジラウレート等)が好ましい。
硬化触媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0085】
(他の成分)
組成物(1)は、必要に応じて、紫外線吸収剤、顔料、光安定剤、つや消し剤、界面活性剤、レベリング剤、表面調整剤、脱ガス剤、充填剤、熱安定剤、増粘剤、分散剤、帯電防止剤、防錆剤、シランカップリング剤、防汚剤、低汚染化処理剤等の各種添加剤の1種以上を他の成分として含んでよい。
【0086】
紫外線吸収剤としては、有機系紫外線吸収剤、無機系紫外線吸収剤のいずれの紫外線吸収剤も用いることができる。
紫外線吸収剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0087】
顔料としては、光輝顔料、防錆顔料、着色顔料および体質顔料からなる群から選ばれる顔料が好ましい。
顔料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0088】
光輝顔料はフレーク状粒子からなる光反射性の高い顔料であり、フレーク状金属粒子、マイカ粒子、パール粒子等が挙げられる。フレーク状粒子の表面は被覆物質で被覆されていてもよい。フレーク状金属粒子としては、フレーク状アルミニウム粒子、フレーク状ニッケル粒子、フレーク状ステンレス粒子、フレーク状銅粒子、フレーク状ブロンズ粒子、フレーク状金粒子、フレーク状銀粒子等が挙げられる。
光輝顔料としては、フレーク状アルミニウム粒子、マイカ粒子またはパール粒子が好ましく、フレーク状アルミニウム粒子が特に好ましい。
フレーク状粒子の比重は、0.1〜4.0g/cm
3が好ましく、0.3〜2.0g/cm
3がより好ましい。
【0089】
(組成物(1)の各成分の含有量)
組成物(1)が樹脂(C)を含む場合、フッ素樹脂(A)と樹脂(C)との質量比((A)/(C))は、90/10〜10/90が好ましく、80/20〜20/80がより好ましく、40/60〜20/80が特に好ましい。(A)/(C)が前記範囲内であれば、塗膜の耐候性が優れるとともに、塗膜のコストを抑えることができる。
【0090】
可塑剤(B)の含有量は、組成物(1)に含まれる樹脂成分の100質量部に対して、0.1〜40質量部である。
可塑剤(B)の含有量は、樹脂成分がフッ素樹脂(A)の場合は、1.0〜35質量部が好ましく、1.5〜30質量部がより好ましい。
可塑剤(B)の含有量は、樹脂成分がフッ素樹脂(A)および樹脂(C)の場合は、0.5〜35質量部が好ましく、1.0〜30質量部がより好ましい。
可塑剤(B)の含有量が前記範囲内であれば、塗膜外観にはじき等の不良がなく、かつ表面平滑性にも優れた塗膜を形成できる。可塑剤(B)の含有量が前記範囲の下限値以上であれば、溶融膜の溶融粘度の低減効果が充分に発揮され、塗膜外観、表面平滑性に優れた塗膜が得られる。可塑剤(B)の含有量が前記範囲の上限値以下であれば、塗膜のブロッキングが抑えられる。
【0091】
組成物(1)が硬化剤を含む場合、組成物(1)中の硬化剤の含有量は、組成物(1)に含まれる樹脂成分の100質量部に対して、1〜55質量部が好ましく、3〜55質量部が特に好ましい。
硬化剤がブロック化イソシアナート系硬化剤の場合、組成物(1)中のブロック化イソシアナート系硬化剤の含有量は、組成物(1)中の水酸基に対するイソシアナート基のモル比が0.05〜1.5となる量が好ましく、0.8〜1.2となる量が特に好ましい。該モル比が前記範囲の下限値以上であれば、塗料の硬化度が高く、塗膜の硬度、耐薬品性等が優れる。該モル比が前記範囲の上限値以下であれば、塗膜が脆くなりにくく、しかも、塗膜の耐熱性、耐薬品性、耐湿性等が優れる。
【0092】
組成物(1)が硬化触媒を含む場合、組成物(1)中の硬化触媒の含有量は、組成物(1)に含まれる樹脂成分の100質量部に対して、0.0001〜10.0質量部が好ましい。硬化触媒の含有量が前記範囲の下限値以上であれば、触媒効果が充分に得られやすい。硬化触媒の含有量が前記範囲の上限値以下であれば、粉体塗料の溶融、硬化過程で粉体塗料中に巻き込まれた空気等の気体が抜けやすく、気体が残存することで生じる塗膜の耐熱性、耐候性および耐水性の低下が少ない。
【0093】
組成物(1)が顔料を含む場合、組成物(1)中の顔料の含有量は、組成物(1)に含まれる樹脂成分の100質量部に対して、20〜200質量部が好ましく、50〜150質量部が特に好ましい。
【0094】
組成物(1)が顔料を除く他の成分を含む場合、組成物(1)中の顔料を除く他の成分の含有量は、組成物(1)(100質量%)のうち、45質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。
【0095】
(作用機序)
以上説明した組成物(1)は、フッ素樹脂(A)を含んでいるため、耐候性に優れた塗膜を形成できる粉体塗料を得ることができる。
また、組成物(1)は、可塑剤(B)を特定の含有量で含んでいるため、下記の理由から、塗膜外観、表面平滑性に優れた塗膜を形成できる粉体塗料を得ることができる。
すなわち、粉体塗料を基材に塗装して粉体塗料の溶融物からなる溶融膜を形成すると、溶融した樹脂成分と、溶融した可塑剤(B)とが混ざり、可塑剤(B)の可塑効果によって、樹脂成分の溶融粘度の低下が加速される。そのため、樹脂同士の融着が進み、塗膜外観、表面平滑性に優れた塗膜が形成されると考えられる。また、可塑剤(B)の量が適度であるため、塗膜の物性(耐ブロッキング性等)への影響も抑制されるものと考えられる。
【0096】
〔粉体塗料〕
本発明の粉体塗料は、下記の粉体塗料(I)と粉体塗料(II)とに分けられる。
粉体塗料(I):本発明の粉体塗料用組成物(上述した組成物(1))からなる粉体(以下、「粉体(X1)」とも記す。)を含む。
粉体塗料(II):フッ素樹脂(A)を含む第2の粉体塗料用組成物(以下、「組成物(2)」とも記す。)からなる粉体(以下、「粉体(X2)」とも記す。)と、樹脂(C)を含み、フッ素樹脂(A)を含まない第3の粉体塗料用組成物(以下、「組成物(3)」とも記す。)からなる粉体(以下、「粉体(Y)」とも記す。)とを含む粉体塗料であって、組成物(2)および組成物(3)のいずれか一方または両方が、可塑剤(B)を含む。
粉体塗料(I)および粉体塗料(II)に用いられる各成分、任意の各成分は、前述の粉体塗料用組成物の説明において記載した各成分を使用できる。
以下、粉体塗料(I)および粉体塗料(II)のそれぞれについて説明する。
【0097】
〔粉体塗料(I)〕
粉体塗料(I)は、組成物(1)からなる粉体(X1)の少なくとも1種を含む。
【0098】
粉体塗料(I)中の粉体(X1)の含有量は、50〜100質量%が好ましく、70〜100質量%がより好ましく、80〜100質量%がさらに好ましく、90〜100質量%が特に好ましい。粉体塗料(I)が、粉体(X1)のみからなる塗料であってもよい。
【0099】
(粉体塗料(I)の製造方法)
粉体塗料(I)は、たとえば、下記工程(a)、工程(b)および工程(c)を有する製造方法によって製造できる。
(a)フッ素樹脂(A)と、可塑剤(B)とを含み、必要に応じて、樹脂(C)、顔料、硬化剤、硬化触媒、他の成分を含んでもよい混合物を溶融混練して組成物(1)からなる混練物を得る工程。
(b)組成物(1)からなる混練物を粉砕して粉体(X1)を得る工程。
(c)必要に応じて、粉体(X1)の分級を行う工程。
【0100】
<工程(a)>
各成分を混合し混合物を調製した後、該混合物を溶融混練して各成分が均一化された混練物を得る。
各成分は、あらかじめ粉砕して粉末状にすることが好ましい。
混合に用いる装置としては、高速ミキサ、V型ミキサ、反転ミキサ等が挙げられる。
溶融混練に用いる装置としては、1軸押出機、2軸押出機、遊星ギア等が挙げられる。
混練物は、冷却後、ペレットとすることが好ましい。
【0101】
<工程(b)>
粉砕に用いる装置としては、ピンミル、ハンマーミル、ジェットミル等の粉砕機が挙げられる。
【0102】
<工程(c)>
粒子径の大きすぎる粉体や粒子径の小さすぎる粉体を除去するために、粉砕後に分級を行うことが好ましい。分級を行う場合、粒子径が10μm未満の粒子および粒子径が100μmを超える粒子の少なくともいずれかを除去することが好ましい。
分級方法としては、ふるい分けによる方法、空気分級法等が挙げられる。
【0103】
また、フッ素樹脂(A)の粉末と可塑剤(B)の粉末を含む粉末組成物や、さらに樹脂(C)の粉末を含む粉末組成物を粉体塗料(I)とすることができる。たとえば、フッ素樹脂(A)の粉末と可塑剤(B)の粉末をドライブレンドして粉体塗料(I)を製造することができる。各粉末はあらかじめ分級等により平均粒径を調整しておくことが好ましく、また、ドライブレンド後に分級することもできる。フッ素樹脂(A)の粉末、可塑剤(B)の粉末、樹脂(C)の粉末は、あらかじめ顔料、硬化剤、硬化触媒等を含有させた組成物の粉末であってもよい。たとえば、フッ素樹脂(A)と顔料、硬化剤、硬化触媒等とを含む溶融混合物を粉末化して上記フッ素樹脂(A)の粉末として使用することができる。また、顔料、硬化剤、硬化触媒等のうち適切な平均粒径に調節した粉末として使用できるものは、その粉末をフッ素樹脂(A)の粉末や可塑剤(B)の粉末とともにドライブレンドして粉体塗料(I)を製造することもできる。
【0104】
粉体(X1)の平均粒子径は、たとえば、50%平均体積粒度分布で25〜50μmが好ましい。粉体の粒子径の測定は、通常、細孔通過時の電位変化を捉える形式、レーザー回折方式、画像判断形式、沈降速度測定方式等の粒子径測定機を用いて行われる。
【0105】
(作用機序)
以上説明した粉体塗料(I)は、フッ素樹脂(A)を含んでいるため、耐候性に優れた塗膜を形成できる。
また、粉体塗料(I)は、可塑剤(B)を特定の含有量で含んでいるため、上述した理由から、塗膜外観、表面平滑性に優れた塗膜を形成できる。
【0106】
〔粉体塗料(II)〕
粉体塗料(II)は、下記粉体(X2)の少なくとも1種および下記粉体(Y)の少なくとも1種を含む。
粉体(X2):組成物(2)からなる粉体。組成物(2)は、必要に応じて、可塑剤(B)、樹脂(C)、硬化剤、硬化触媒、他の成分を含んでいてもよい。ただし、組成物(3)が可塑剤(B)を含まない場合は、組成物(2)は、可塑剤(B)を必ず含む。
粉体(Y):組成物(3)からなる粉体。組成物(3)は、必要に応じて、可塑剤(B)、硬化剤、硬化触媒、他の成分を含んでもよい。ただし、組成物(2)が可塑剤(B)を含まない場合は、組成物(3)は、可塑剤(B)を必ず含む。
【0107】
粉体塗料(II)中の粉体(X2)と粉体(Y)との合計の含有量は、50〜100質量%が好ましく、70〜100質量%がより好ましく、80〜100質量%がさらに好ましく、90〜100質量%が特に好ましい。粉体塗料(II)が、粉体(X2)および粉体(Y)のみからなる塗料であってもよい。粉体塗料(II)中の粉体(X2)と粉体(Y)との混合比((X2)/(Y))は、10/90〜90/10(質量比)が好ましく、20/80〜80/20(質量比)がより好ましく、40/60〜20/80(質量比)が特に好ましい。粉体(X2)の割合が前記範囲の下限値以上であれば、塗膜の耐候性が優れる。粉体(Y)の割合が前記範囲の下限値以上であれば、塗膜のコストを抑えることができる。
【0108】
(組成物(2)および組成物(3)の各成分)
フッ素樹脂(A)、可塑剤(B)、樹脂(C)、硬化剤、硬化触媒、他の成分としては、上述した組成物(1)で例示したものと同様のものが挙げられ、好ましい態様も同様である。
組成物(2)が樹脂(C)を含む場合、組成物(2)に含まれる樹脂(C)は、組成物(3)に含まれる樹脂(C)と同じ種類のものであってもよく、異なる種類のものであってもよい。
【0109】
(粉体塗料(II)全体における各成分の含有量)
粉体塗料(II)全体におけるフッ素樹脂(A)と樹脂(C)との質量比((A)/(C))は、90/10〜10/90が好ましく、80/20〜20/80がより好ましく、40/60〜20/80が特に好ましい。(A)/(C)が前記範囲内であれば、塗膜の耐候性が優れるとともに、塗膜のコストを抑えることができる。
【0110】
粉体塗料(II)全体における可塑剤(B)の含有量は、粉体塗料(II)全体に含まれる樹脂成分の100質量部に対して、0.1〜40質量部であり、0.5〜35.0質量部が好ましく、1.0〜30.0質量部がより好ましい。
可塑剤(B)の含有量が前記範囲内であれば、塗膜外観にはじき等の不良がなく、かつ表面平滑性にも優れた塗膜を形成できる。可塑剤(B)の含有量が前記範囲の下限値以上であれば、溶融膜の溶融粘度の低減効果が充分に発揮され、塗膜外観、表面平滑性に優れた塗膜が得られる。可塑剤(B)の含有量が前記範囲の上限値以下であれば、塗膜のブロッキングが抑えられる。
【0111】
粉体塗料(II)が硬化剤を含む場合、粉体塗料(II)全体における硬化剤の含有量は、粉体塗料(II)全体に含まれる樹脂成分の100質量部に対して、1〜55質量部が好ましく、3〜55質量部が特に好ましい。
硬化剤がブロック化イソシアナート系硬化剤の場合、粉体塗料(II)全体におけるブロック化イソシアナート系硬化剤の含有量は、粉体塗料(II)中の水酸基に対するイソシアナート基のモル比が0.05〜1.5となる量が好ましく、0.8〜1.2となる量が特に好ましい。該モル比が前記範囲の下限値以上であれば、塗料の硬化度が高く、塗膜の硬度、耐薬品性等が優れる。該モル比が前記範囲の上限値以下であれば、塗膜が脆くなりにくく、しかも、塗膜の耐熱性、耐薬品性、耐湿性等が優れる。
【0112】
粉体塗料(II)が硬化触媒を含む場合、粉体塗料(II)全体における硬化触媒の含有量は、粉体塗料(II)全体に含まれる樹脂成分の100質量部に対して、0.0001〜10.0質量部が好ましい。硬化触媒の含有量が前記範囲の下限値以上であれば、触媒効果が充分に得られやすい。硬化触媒の含有量が前記範囲の上限値以下であれば、粉体塗料の溶融、硬化過程で粉体塗料中に巻き込まれた空気等の気体が抜けやすく、気体が残存することで生じる塗膜の耐熱性、耐候性および耐水性の低下が少ない。
【0113】
粉体塗料(II)が顔料を含む場合、粉体塗料(II)全体における顔料の含有量は、粉体塗料(II)全体に含まれる樹脂成分の100質量部に対して、20〜200質量部が好ましく、50〜150質量部が特に好ましい。
【0114】
粉体塗料(II)が顔料を除く他の成分を含む場合、粉体塗料(II)全体における顔料を除く他の成分の含有量は、粉体塗料(II)(100質量%)のうち、45質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。
【0115】
(粉体塗料(II)の製造方法)
粉体塗料(II)は、たとえば、下記工程(a1)、工程(b1)、工程(c1)、工程(a2)、工程(b2)、工程(c2)および工程(d)を有する製造方法によって製造できる。また、前記粉体塗料(I)と同様に、フッ素樹脂(A)の粉末、可塑剤(B)の粉末を使用し、またさらに樹脂(C)の粉末を使用し、それらの粉末をドライブレンドして粉体塗料(II)を製造することもできる。
(a1)フッ素樹脂(A)を含み、必要に応じて、可塑剤(B)、樹脂(C)、硬化剤、硬化触媒、他の成分を含んでもよい混合物を溶融混練して組成物(2)からなる混練物を得る工程。
(b1)組成物(2)からなる混練物を粉砕して粉体(X2)を得る工程。
(c1)必要に応じて、粉体(X2)の分級を行う工程。
(a2)樹脂(C)を含み、フッ素樹脂(A)を含まず、必要に応じて、可塑剤(B)、顔料、硬化剤、硬化触媒、他の成分を含んでもよい混合物を溶融混練して組成物(3)からなる混練物を得る工程。
(b2)前記組成物(3)からなる混練物を粉砕して粉体(Y)を得る工程。
(c2)必要に応じて、粉体(Y)の分級を行う工程。
(d)粉体(X2)と粉体(Y)とをドライブレンドする工程。
【0116】
<工程(a1)〜(c1)、工程(a2)〜(c2)>
粉体塗料(I)の製造方法における工程(a)〜(c)と同様であり、詳細な説明は省略する。
粉体(X2)および粉体(Y)の平均粒子径は、たとえば、50%平均体積粒度分布で25〜50μmが好ましい。粉体の粒子径の測定は、通常、細孔通過時の電位変化を捉える形式、レーザー回折方式、画像判断形式、沈降速度測定方式等の粒子径測定機を用いて行われる。
【0117】
<工程(d)>
ドライブレンドに用いる装置としては、ハイスピードミキサ、ダブルコーンミキサ、ニーダ、ダンプラーミキサ、ミキシングシェーカ、ドラムシェーカ、ロッキングシェーカ等が挙げられる。
粉体(X2)と粉体(Y)との混合比((X2)/(Y))は、10/90〜90/10(質量比)が好ましく、20/80〜80/20(質量比)がより好ましく、40/60〜20/80(質量比)が特に好ましい。粉体(X2)の割合が前記下限値以上であれば、塗膜の耐候性が優れる。粉体(Y)の割合が前記下限値以上であれば、塗膜のコストを抑えることができる。
【0118】
(作用機序)
以上説明した粉体塗料(II)は、フッ素樹脂(A)を含んでいるため、耐候性に優れた塗膜を形成できる。
また、粉体塗料(II)は、可塑剤(B)を特定の含有量で含んでいるため、上述した理由から、塗膜外観、表面平滑性に優れた塗膜を形成できる。
【0119】
本発明の粉体塗料としては前記光輝顔料を含む粉体塗料が好ましい。前記のように、光輝顔料を前記組成物(1)、組成物(2)または組成物(3)に含ませて光輝顔料を含む粉体塗料(I)や光輝顔料を含む粉体塗料(II)とすることができる。また、前記組成物(1)〜組成物(3)に含ませることなく、光輝顔料を含む粉体塗料とすることもできる。たとえば、光輝顔料を含まない組成物(1)の粉末を製造した後、その粉末と光輝顔料粉末とを混合して光輝顔料を含む粉体塗料とすることができる。組成物(1)の粉末と光輝顔料粉末とを混合する際、粉末粒子が溶融しない程度に加熱して光輝顔料粉末の粒子を組成物(1)の粉末粒子表面に付着させてもよい。光輝顔料粉末の粒子を組成物(1)の粉末粒子表面に付着させることにより、粉体塗料粒子と光輝顔料粉末の粒子の分布の不均一化を低減して、均一な塗膜を形成しやすくすることができる。
上記組成物(1)の粉体に光輝顔料を配合した粉体塗料(I)において、組成物(1)には光輝顔料以外の顔料が含まれていてもよく、また光輝顔料の一部が含まれていてもよい。また、光輝顔料を含む粉体塗料(II)においては、組成物(2)、組成物(3)の一方または両方に光輝顔料以外の顔料が含まれていてもよく、また光輝顔料の一部が含まれていてもよい。
粉体塗料における光輝顔料の含有量は、前記の樹脂成分に対する顔料の好ましい割合の範囲内で使用されることが好ましい。
【0120】
〔塗装物品〕
本発明の塗装物品は、基材の表面に、粉体塗料(I)または粉体塗料(II)(以下、粉体塗料(I)および粉体塗料(II)をまとめて「粉体塗料」とも記す。)から形成された塗膜を有する。
基材と前記塗膜との密着性を高めるために、基材と前記塗膜の間にプライマーを含むプライマー層を有していてもよい。
プライマーとしては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂およびエポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも一種の樹脂を適宜用いることができる。
プライマー層の膜厚は、0.1〜60μmが好ましく、1〜40μmがより好ましい。
【0121】
(基材)
基材の材質としては、たとえば、アルミニウム、鉄、亜鉛、錫、チタン、鉛、特殊鋼、ステンレス、銅、マグネシウム、黄銅等の金属が挙げられる。基材の材質は、塗装物品の用途等に応じて適宜選択すればよい。基材は、例示した金属の2種以上を含む合金等であってもよい。基材の材質としては、軽量で、防食性および強度に優れる点から、アルミニウムまたはその合金が好ましい。
アルミニウム合金としては、アルミニウムと、銅、マンガン、ケイ素、マグネシウム、亜鉛およびニッケルからなる群から選ばれる少なくとも一種との合金が挙げられる。
基材の形状、サイズ等は、特に限定はされない。
【0122】
アルミニウムまたはアルミニウム合金は、陽極酸化皮膜処理をされていてもよく、化成処理薬剤で表面処理されていてもよい。
化成処理薬剤としては、6価クロム系処理薬剤、3価クロム系処理薬剤、ジルコニウム系処理薬剤、チタニウム系処理薬剤などが挙げられる。環境への配慮の点から、ジルコニウム系処理薬剤、チタニウム系処理薬剤が好ましい。
具体的に、ジルコニウム系処理薬剤としては、日本シー・ビー・ケミカル社製の「ケミボンダー 5507、5703、5705、5706」(商品名)、日本パーカライジング社製の「パルコート 3762、3796、20X」(商品名)、ヘンケル社製の「アロジン 5200、4707」(商品名)、日本ペイント社製の「アルサーフ 320、375」(商品名)、バルクケミカル社製の「E−CLPS 1700、1900」(商品名)、アトテック社製の「インターロックス 5705、5707」(商品名)等が挙げられ、チタニウム系処理薬剤としては、日本ペイント社製の「アルサーフ CX4707」(商品名)、バルクケミカル社製の「E−CLPS 2100、2900」(商品名)等が挙げられる。
【0123】
(塗膜)
塗膜の厚さは、20〜1,000μmが好ましく、20〜500μmがより好ましく、20〜300μmが特に好ましい。塗膜の厚さは、塗装物品に要求される耐候性等に応じて、適宜設定すればよい。
【0124】
塗膜の60度鏡面光沢度は、10〜90%が好ましく、20〜90%がより好ましく、30〜90%が特に好ましい。塗膜の60度鏡面光沢度が前記範囲の下限値以上であれば、塗膜外観にくすみはない。塗膜の60度鏡面光沢度が前記範囲の上限値以下であれば、塗膜の調色再現性が得られやすい。塗膜の60度鏡面光沢度は、無機顔料の添加によって調整できる。
【0125】
(塗装物品の製造方法)
本発明の塗装物品は、下記工程(e)および工程(f)を有する製造方法によって製造できる。
(e)粉体塗料を基材に塗装し、粉体塗料の溶融物からなる溶融膜を形成する工程。
(f)溶融膜を固化させ、必要に応じて硬化させて塗膜を形成する工程。
【0126】
<工程(e)>
溶融膜は、基材への粉体塗料の塗装と同時に形成してもよく、基材に粉体塗料の粉体を付着させた後に基材上で粉体を加熱溶融させて形成してもよい。
粉体塗料が反応性を有する場合、粉体塗料が加熱溶融されるとほぼ同時に、組成物中の反応性基の硬化反応が開始するため、粉体塗料の加熱溶融と基材への付着はほぼ同時に行うか、粉体塗料の基材への付着の後に粉体塗料の加熱溶融を行う必要がある。
【0127】
粉体塗料を加熱して溶融し、その溶融状態を所定時間維持するための加熱温度(以下、「焼付け温度」とも記す。)と加熱維持時間(以下、「焼付け時間」とも記す。)は、粉体塗料の原料成分の種類や組成、所望する塗膜の厚さ等によって適宜設定される。特に、焼付け温度は、硬化剤の反応温度に応じて設定することが好ましい。たとえば、硬化剤としてブロック化ポリイソシアナート系硬化剤を用いた場合の焼付け温度は、170〜210℃が好ましい。焼付け時間は、5〜120分が好ましく、10〜60分が特に好ましい。
【0128】
塗装方法としては、静電塗装法、静電吹付法、静電浸漬法、噴霧法、流動浸漬法、吹付法、スプレー法、溶射法、プラズマ溶射法等が挙げられる。塗膜を薄膜化した場合でも、塗膜の表面平滑性に優れ、さらに、塗膜の隠ぺい性に優れる点からは、粉体塗装ガンを用いた静電塗装法が好ましい。
【0129】
<工程(f)>
溶融膜を室温(20〜25℃)まで冷却して固化させて塗膜を形成する。
冷却は、急冷、徐冷いずれでもよい。
【0130】
(用途)
本発明の塗装物品の用途としては、建築用外装部材(アルミニウムコンポジットパネル、カーテンウォール用アルミニウムパネル、カーテンウォール用アルミニウムフレーム、アルミニウムウィンドウフレーム等)、石油タンク、天然ガスタンク、窯業建材、住宅外装材、自動車部材、航空機用部材、鉄道車輌部材、太陽電池BS部材、風力発電タワー、風力発電ブレード等が挙げられる。
本発明の塗装物品は、塗膜外観、表面平滑性に優れた塗膜を有していることから、建材パネルのような塗装面積の広い用途にも好適である。
【0131】
(作用機序)
以上説明した本発明の塗装物品は、塗膜がフッ素樹脂(A)またはフッ素樹脂(A)と硬化剤の反応生成物を含んでいるため、塗膜の耐候性に優れる。
また、本発明の塗装物品は、可塑剤(B)を特定の含有量で含む粉体塗料を用いて塗膜を形成しているため、上述した理由から、塗膜の塗膜外観、表面平滑性に優れる。
【実施例】
【0132】
以下に、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
例1〜11、例17〜19、例21〜23は実施例であり、例12〜16、例20、例24は比較例である。
【0133】
〔測定方法、評価方法〕
(フッ素樹脂(A)の共重合組成)
含フッ素樹脂(A)の共重合組成は、溶融NMR分析、フッ素含有量分析および赤外吸収スペクトル分析によって求めた。
【0134】
(数平均分子量(Mn))
高速GPC装置(東ソー社製、カラムTSKgelG 400XL)を用い、ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)を求めた。
【0135】
(融点)
示差走査熱量計(パーキンエルマー社製、Themal Analysis System)を用い、サンプルを10℃/分の速度で昇温したときの融解ピークにおける温度を求め、これを融点とした。
【0136】
(軟化点)
自動軟化点装置(明峰社製、ASP−M4SP)を用い、JIS K 2207に従い環球法にてサンプルの軟化点を求めた。
【0137】
(平均粒子径)
粉体の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定機(Sympatec社製、Helos−Rodos)を用い、50%平均体積粒度分布での平均粒子径を測定した。
【0138】
(塗膜外観)
塗膜の表面の状態を目視し、下記の基準で判定した。
○(良好):塗膜上に、ブツ、はじき、塗れ性の不良等が確認されなかった。
×(不良):塗膜上に、ブツ、はじき、塗れ性の不良等が確認された。
【0139】
(塗膜の表面平滑性)
PCI(パウダーコーティングインスティチュート)によって塗膜の平滑性目視判定用標準板を用いて判定した。標準板は、1〜10の10種類があり、数字が大きくなるにしたがい、平滑性に優れる。
○(良好):PCI値が8以上である。
△(普通):PCI値が6〜7である。
×(不良):PCI値が5以下である。
【0140】
(塗膜の耐ブロッキング性)
試験片の塗膜上にウレタン樹脂製のシートをのせ、その上に0.20MPaの圧力がかかるようにおもりを乗せた。40℃の雰囲気下で16時間静置した後、おもりとシートをはずした。試験片の塗膜に残っているシートの痕跡の状態を目視によって1〜5段階で評価した。5はまったく痕跡がない状態であり、1は明らかに痕跡が残っている状態である。
○(良好):評価が4以上である。
△(普通):評価が3である。
×(不良);評価が2以下である。
【0141】
(60度鏡面光沢度)
鏡面光沢計(日本電色工業社製、PG−1M)を用いて、入射角および反射角60゜で塗膜の表面の鏡面光沢度を測定した。
○(良好):鏡面光沢度が10〜90%である。
×(不良):鏡面光沢度が10%未満または90%超である。
【0142】
(促進耐候性(光沢保持率))
試験片について、JIS B 7753:2007(サンシャインウェザオメータ方式)に準拠した促進耐候性試験機を用い、試験時間を3000時間として促進耐候性試験を行った。試験前の塗膜の60°鏡面光沢度を100%として、試験後の塗膜の60°鏡面光沢度の保持率(光沢保持率)(%)を求めた。60°鏡面光沢度は、光沢計(BYK社製、micro−TRI−gross、入反射角:60°)にて測定した。
○(良好):光沢保持率80%以上である。
×(不良):光沢保持率80%未満である。
【0143】
〔各成分〕
(フッ素樹脂(A))
<有含フッ素重合体(A−1)>
内容積250mLのステンレス鋼製撹拌機付きオートクレーブに、シクロヘキシルビニルエーテル(CHVE)の51.2g、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル(HBVE)の13.3g、キシレンの55.8g、エタノールの15.7g、炭酸カリウムの1.1g、tert−ブチルペルオキシピバレートの50質量%キシレン溶液の0.7g、およびCTFEの63.0gを導入した。徐々に昇温し、55℃に達した後、20時間保持した。65℃に昇温し5時間保持した。冷却し、ろ過を行って残渣を除去し、含フッ素重合体(A−1)のキシレン溶液を得た。得られた含フッ素重合体(A−1)のキシレン溶液を薄膜蒸発し、固形分濃度99.5質量%以上になるまで乾燥を行った。こうして得られた含フッ素重合体(A−1)は、水酸基を有する含フッ素重合体(A)であり、示差熱量測定装置(DSC)によるガラス転移点(Tg)が54℃であり、クロマトグラフ(GPC)による数平均分子量(Mn)は12,000であった。また、NMR分析により、共重合組成を確認したところ、CTFE単位/CHVE単位/HBVE単位=50/35/15(モル比)であり、フッ素原子含有量は、23質量%であった。
【0144】
<フッ素重合体(A−2)>
内容積250mLのステンレス鋼製撹拌機付きオートクレーブに、tert−ブチルビニルエーテル(t−BuVE)の10.4g、HBVEの13.2g、ピバリン酸ビニル(VPV)の38.5g、キシレンの55.0g、エタノールの15.7g、炭酸カリウムの1.1g、tert−ブチルペルオキシピバレートの50質量%キシレン溶液の0.7g、およびCTFEの63.0gを導入した。徐々に昇温し、55℃に達した後、20時間保持した。65℃に昇温し5時間保持した。冷却し、ろ過を行って残渣を除去し、含フッ素重合体(A−2)のキシレン溶液を得た。得られた含フッ素重合体(A−2)のキシレン溶液を薄膜蒸発し、固形分濃度99.5質量%以上になるまで乾燥を行った。こうして得られた含フッ素重合体(A−2)は、水酸基を有する含フッ素重合体(A)であり、示差熱量測定装置(DSC)によるガラス転移点(Tg)が54℃であり、クロマトグラフ(GPC)による数平均分子量(Mn)は12,000であった。また、NMR分析により、共重合組成を確認したところ、CTFE単位/t−BuVE単位/HBVE単位/VPV単位=50/11/4/35(モル比)であり、フッ素原子含有量は、25質量%であった。
【0145】
<PVDF(A−3)>
PVDF(A−3)として、市販のPVDF(東岳(SHENZHOU NEWMATERIAL CO., LTD)社製、PVDF DS203、数平均分子量:160,000、フッ素含有量:33質量%)を入手して用いた。
【0146】
(可塑剤)
下記可塑剤のうち可塑剤(1)、(2)が可塑剤(B)であり、可塑剤(3)〜(5)は可塑剤(B)以外の可塑剤である。
可塑剤(1):1,4−シクロヘキサンジメタノールジベンゾエート(VELSICOL社製、Benzoflex 352(商品名)、融点:118℃、分子量:352)。
可塑剤(2):ジシクロヘキシルフタレート(和光純薬工業社製、融点:68℃、分子量:330)。
可塑剤(3):リン酸トリフェニル(城北化学工業社製、JP−360、融点:50℃、分子量:326)。
可塑剤(4):ジメチルフタレート(大八化学工業社製、DMP、融点:2℃、分子量:194)。
可塑剤(5):3,9−ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン(ADEKA社製、PEP−36、融点:234℃、分子量:633)。
【0147】
(樹脂(C))
樹脂樹脂(C−1):ポリエステル樹脂(ダイセル・オルネクス社製、CRYLCOAT 4890−0(商品名)、数平均分子量(Mn):2,500、軟化点:120℃)。
樹脂樹脂(C−2):ポリエステル樹脂(日本ユピカ社製、ユピカコート GV130、数平均分子量(Mn):4,900、軟化点:115℃)。
樹脂樹脂(C−3):アクリル樹脂(東亜合成社製、ARUFON UH−2170(商品名)、数平均分子量(Mn):15,500)。
樹脂樹脂(C−4):エポキシ樹脂(新日鉄住金化学社製、エポトート YDCN704(商品名)、数平均分子量(Mn):1300)。
【0148】
(硬化剤)
硬化剤(1):ブロック化イソシアナート系硬化剤(エボニック社製、ベスタゴン B1530(商品名))。
【0149】
(硬化触媒)
硬化触媒(1):ジブチルスズジラウレートのキシレン溶液(10,000倍希釈品)。
【0150】
(他の成分)
顔料:酸化チタン(デュポン社製、Ti−Pure R960(商品名)、酸化チタン含有量:89質量%)。
脱ガス剤:ベンゾイン。
表面調整剤A:ビックケミー社製、BYK−360P(商品名)。
表面調整剤B:ビックケミー社製、CERAFLOUR 960(商品名)、マイクロナイズド変性アマイドワックス、融点:145℃。
【0151】
〔例1〜16〕
表1および表2に記載の各成分を、高速ミキサ(佑崎有限公司社製)を用いて、10〜30分程度混合し、粉末状の混合物を得た。該混合物を2軸押出機(サーモプリズム社製、16mm押出機)を用いて、120℃のバレル設定温度にて溶融混練を行い、粉体塗料組成物からなるペレットを得た。該ペレットを粉砕機(FRITSCH社製、製品名:ロータースピードミルP14)を用いて常温で粉砕し、150メッシュによる分級を行い、平均粒子径が約40μmの粉体を得た。なお、表1および表2に記載の各成分の量は、正味量である。
【0152】
得られた粉体を粉体塗料(I)として用い、クロメート処理を行ったアルミニウム板(基材)の一面に、静電塗装機(小野田セメント社製、GX3600C)を用いて静電塗装を行い、200℃雰囲気中で20分間保持した。放置して室温まで冷却し、厚さ55〜65μmの塗膜付きアルミニウム板を得た。得られた塗膜付きアルミニウム板を試験片として評価を行った。結果を表1および表2に示す。
【0153】
【表1】
【0154】
【表2】
【0155】
可塑剤(B)を樹脂成分の100質量部に対して0.1〜40質量部の範囲内で添加した粉体塗料用組成物からなる例1〜11の粉体塗料によれば、はじき、塗れ性の不良等がなく塗膜外観に優れ、かつ表面平滑性にも優れた塗膜を形成できた。
一方、可塑剤(B)を含まない例12の粉体塗料用組成物からなる粉体塗料で形成された塗膜は、塗膜外観、表面平滑性に劣った。
融点が60℃未満の可塑剤を含む例13、14の粉体塗料用組成物からなる粉体塗料で形成された塗膜は、表面平滑性に劣った。なお、塗膜の表面の凹凸が大きいため、耐ブロッキング性の結果はよくなっているが、塗膜の表面にはベタつきが認められた。
可塑剤(B)を過剰に含む例15の粉体塗料用組成物からなる粉体塗料から形成された塗膜は、ゴミの付着が多く表面外観が劣り、耐ブロッキング性も劣った。
融点が200℃を超える可塑剤を含む例16の粉体塗料用組成物からなる粉体塗料から形成された塗膜は、表面外観が劣った。
【0156】
〔例17〜20〕
表3に記載の各成分を用いて例1と同様にして平均粒子径が約40μmの粉体(粉体(X−1)〜(X−2)および粉体(Y−1)〜(Y−2))を得た。
表4に記載の各粉体を、それぞれ500gずつハイスピードミキサ(アーステクニカ社製、容量2L)を用い、アジテータ羽根の毎分500回転、チョッパ羽根の毎分4,000回転の条件で、室温で1分間、ドライブレンドし、粉体塗料(II)を製造した。
【0157】
得られた粉体塗料(II)を用い、クロメート処理を行ったアルミニウム板の一面に、静電塗装機(小野田セメント社製、GX3600C)にて静電塗装を行い、200℃雰囲気中で20分間保持した。放置して室温まで冷却し、厚さ55〜65μmの塗膜付きアルミニウム板を得た。得られた塗膜付きアルミニウム板を試験片として評価を行った。結果を表4に示す。
【0158】
【表3】
【0159】
【表4】
【0160】
可塑剤(B)を樹脂成分の100質量部に対して0.1〜40質量部の範囲内で含む例17〜19の粉体塗料によれば、はじき、塗れ性の不良等がなく塗膜外観に優れ、かつ表面平滑性にも優れた塗膜を形成できた。また、基材の腐食性にも優れることを確認した。
さらに、光輝顔料を含む、光輝性粉体塗料は、色むらがなく、塗膜外観にすぐれた塗膜を形成することができた。
一方、可塑剤(B)を含まない例20の粉体塗料で形成された塗膜は、塗膜外観、表面平滑性に劣った。
【0161】
〔例21〕
例7で得られた塗膜付きアルミ板を試験片として、下記腐食性評価A(耐中性塩水噴霧性試験)、腐食性評価B(沖縄暴露試験)の評価試験を行った。
耐中性塩水噴霧試験4000時間後、および、沖縄暴露2年後の塗膜の切り込み傷部(クロスカット部)には、いずれも、塗膜の膨れやアルミニウムの白錆の発生は確認されず、腐食性に優れていることを確認した。
<腐食性評価A(耐中性塩水噴霧性試験)>
JIS K 5600−7−1(1999年)に準拠し、アルミニウム板の腐食性を、以下の基準で評価した。
<腐食性評価B(沖縄暴露試験)>
沖縄県那覇市の屋外に、作成した試験片を設置し、2年間暴露することで、塗膜の切り込み傷部(クロスカット部)の、塗膜の膨れやアルミニウムの白錆の発生を目視により確認した。
【0162】
〔例22〕
クロメート処理を行ったアルミニウム板に代えて、日本シー・ビー・ケミカル社製のクロム(VI)を含まないジルコニウム系化成処理薬剤「ケミボンダ― 5507」(商品名)で処理したアルミニウム板を用い、例7で得られた粉体塗料を、静電塗装機(小野田セメント社製、GX3600C)を用いて静電塗装を行い、その後、200℃雰囲気中で20分間保持した。放置して室温まで冷却し、厚さ55〜65μmの塗膜付きアルミニウム板を得た。得られた塗膜付きアルミニウム板を試験片として、前記腐食性評価A、腐食性評価Bの評価試験を行った。
耐中性塩水噴霧試験4000時間後、および、沖縄暴露2年後の塗膜の切り込み傷部(クロスカット部)には、いずれも、塗膜の膨れやアルミニウムの白錆の発生は確認されず、腐食性に優れていることを確認した。
【0163】
〔例23、例24〕
以下の方法によって、光輝性粉体塗料(1)、光輝性粉体塗料(2)を製造した。ついで、これらの粉体塗料を用いて、塗膜付きアルミニウム板を作成し、色ムラ評価した。
<光輝性粉体塗料(1)の製造>
温度計、撹拌機、滴下ロートを備えた容量500mlの3つ口フラスコに、例7で得られた含フッ素粉体塗料の100質量部と、光輝顔料としてのアルミ粉(製品名「PCF7620A」(東洋アルミニウム社製))の5質量部を採取し、100rpmで撹拌させながら、室温雰囲気下、45℃に加温し、1時間、100pm撹拌混合することで、光輝性粉体塗料(1)を得た。
光輝性粉体塗料(1)の粒子表面を、走査電子顕微鏡(日本電子社製「JSM−5900LV」、20kV、10,000倍)により観察したところ、含フッ素粉体塗料の粒子表面に光輝顔料(アルミ粉)の付着を確認した。
【0164】
<光輝性粉体塗料(2)の製造>
例7の含フッ素粉体塗料に対して、可塑剤(1)を含まない含フッ素粉体塗料を製造した。この含フッ素粉体塗料に対して、光輝顔料としてのアルミ粉(製品名「PCF7620A」(東洋アルミニウム社製))の5質量部を採取し、100rpmで撹拌させながら、室温雰囲気下、45℃に加温し、1時間、100pm撹拌混合することで、光輝性粉体塗料(2)を得た。
光輝性粉体塗料(2)の粒子表面を、走査電子顕微鏡(日本電子社製「JSM−5900LV」、20kV、10,000倍)により観察したところ、含フッ素粉体塗料の粒子表面に光輝顔料(アルミ粉)は付着していないことを確認した。
【0165】
<試験片の作成>
光輝性粉体塗料(1)を用い、クロメート処理を行ったアルミニウム板(縦1m、横1m、厚み1mm)の一面に、粉体塗装ガンを備える静電塗装機(小野田セメント社製、商品名:GX3600C)を用いて静電塗装を行い、その後、200℃雰囲気中で20分間保持し、次いで、放置して室温まで冷却し、厚さ55〜65μmの塗膜(硬化膜)付きアルミニウム板(a)を得た(例23)。また、光輝性粉体塗料(2)を使用して、同様に厚さ55〜65μmの塗膜(硬化膜)付きアルミニウム板(b)を得た(例24)。
得られた塗膜付きアルミニウム板(a)、塗膜(硬化膜)付きアルミニウム板(b)を試験片とし、以下の基準により色ムラの評価を行った。
その結果、塗膜付きアルミニウム板(a)は、色ムラの発生が試験片の全体面積に対して30%以下であったのに対し、塗膜付きアルミニウム板(b)は、色ムラの発生が試験片の全体面積に対して30%超確認され、外観異常が見られた。
[色ムラの評価]
試験片について、目視で塗膜の色ムラを下記の基準で評価した。
○(良好):色ムラの発生が試験片の全体面積に対して30%以下である。
×(不良):色ムラの発生が試験片の全体面積に対して30%超である。
【0166】
(作用効果)
可塑剤(B)が配合されたことにより、含フッ素粉体塗料の粒子表面が軟化し、光輝顔料(アルミ粉)が付着しやすくなったと推測される。これにより、光輝性粉体塗料の塗膜外観が大きく向上したものと推測される。