(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記一般式(1−1−1)で表される化合物が有する芳香族基(a1)と脂肪族基(a2)の平均の存在比〔(a1)/(a2)〕が、モル比で98/2〜85/15である請求項1記載の光学フィルム。
【技術分野】
【0001】
本発明は面内の位相差が高く、且つ逆波長分散性も良好で、特に視野角補償フィルムとして好適に用いる事ができる光学フィルムと該光学フィルムを有する液晶表示装置に関する。
【0002】
セルロースエステル樹脂フィルムは、透明性・光学的等方性・強靭性がいずれも高く、液晶表示装置の偏光子の材料であるポリビニルアルコールとの接着性も良好であることから、テレビやノートパソコンなどの液晶表示装置の偏光板を構成する偏光子保護フィルムとして用いられている。
【0003】
液晶表示装置を斜めから見た場合、偏光板の直交性が崩れることによりバックライトの光漏れが生じる。この光漏れによる画質、特にコントラストの低下を防止し、視野角を補償する目的で、従来は偏光子保護フィルムに位相差フィルムを重ねる手法がとられてきた。
【0004】
しかしながら、近年、液晶表示装置を軽量・薄型化するために、偏光子保護フィルムと位相差フィルムの機能を一枚のフィルムに集約した視野角補償機能付き偏光子保護フィルムが主流になっている。
【0005】
上記の視野角補償機能付き偏光子保護フィルムは、延伸によりフィルムの面内方向に光学異方性を持たせることで位相差を発現し、液晶表示装置の視野角を補償する。
【0006】
一般に位相差の発現の程度は、レタデーション値により把握することができる。具体的には、延伸されたフィルムの面内の位相差の程度は、下記式で求められるレタデーション値(以下、「Re値」と略記する。)によって評価することができる。
Re(nm)=複屈折Δn×フィルムの厚さ(nm)
複屈折Δn=N
x−N
y
(但し、N
x:フィルム面内の遅相軸方向の屈折率、N
y:フィルム面内の進相軸方向の屈折率、N
x>N
y)
【0007】
偏光子保護フィルムに視野角補償機能を付与する手法の一つとして、レタデーション値を上昇させる添加剤(レタデーション上昇剤)をフィルムの原料であるセルロースエステル樹脂に添加し、得られた樹脂組成物を用いて得られるフィルムを更に延伸する手法が知られている。この手法では、レタデーション上昇剤の添加量に応じて偏光子保護フィルムのRe値を調節することが可能である。
【0008】
可視光領域の全域において視野角補償機能を付与する為には、光の波長が長波長になるにつれてRe値の絶対値が大きくなる性質(逆波長分散性)を有する偏光子保護フィルムが好ましい。前記レタデーション上昇剤としては、例えば、1,2−プロピレングリコールとテレフタル酸とを反応させて得られる末端に水酸基を有するエステル化合物の末端水酸基をp−トルイル酸で封止して得られる化合物が知られており、この化合物を添加したセルロースエステル樹脂組成物を用いて得られる延伸フィルムが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0009】
しかしながら、前記特許文献1で開示されている延伸フィルムはRe値の発現性が低く、逆波長分散性も十分でない。その為、特許文献1で開示された延伸フィルムは視野角補償フィルムとして用いるには十分な性能を有していない。
【0010】
また、レタデーション上昇剤として、例えば、2,6−ナフタレンジカルボン酸とプロピレングリコールとエチレングリコールを重縮合させて得られるエステル化合物が知られており、この化合物を添加したセルロースエステル樹脂組成物を用いて得られる延伸フィルムが知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【0011】
しかしながら、前記特許文献2で開示されている延伸フィルムは優れたRe値の発現性を示すが、逆波長分散性は十分でない。その為、特許文献2で開示された延伸フィルムも視野角補償フィルムとして用いるには不十分である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明で用いるセルロースエステル樹脂(α)は、綿花リンター、木材パルプ、ケナフ等から得られるセルロースの有する水酸基の一部、又は全部がエステル化されたものである。これらの中でも、綿花リンターから得られるセルロースをエステル化して得られるセルロースエステル樹脂を使用して得られるフィルムは、フィルムの製造装置を構成する金属支持体から剥離しやすく、フィルムの生産効率を向上させることが可能となるため好ましい。
【0020】
前記セルロースエステル樹脂(α)の具体例としては、例えば、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートブチレート、セルロースアセテートフタレート及び硝酸セルロース等が挙げられる。これらのセルロースエステル樹脂は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。セルロースエステル樹脂(α)の中でも、セルロースアセテートまたはセルロースセテートプロピオネートが、機械的物性及び透明性に優れたフィルムを得ることができるため好ましい。
【0021】
前記セルロースエステル樹脂(α)は、数平均分子量が30,000〜300,000の範囲のものであると、フィルムの機械的物性を向上することができるため好ましい。また、より高い機械的物性が必要な場合は、50,000〜200,000の範囲のものを用いるとより好ましい。
【0022】
ここで、本発明において、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)はGPC測定に基づきポリスチレン換算した値である。なお、GPCの測定条件は以下の通りである。
【0023】
[GPC測定条件]
測定装置:東ソー株式会社製高速GPC装置「HLC−8320GPC」
カラム:東ソー株式会社製「TSK GUARDCOLUMN SuperHZ−L」
+東ソー株式会社製「TSK gel SuperHZM−M」
+東ソー株式会社製「TSK gel SuperHZM−M」
+東ソー株式会社製「TSK gel SuperHZ−2000」
+東ソー株式会社製「TSK gel SuperHZ−2000」
検出器:RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製「EcoSEC Data Analysis バージョン1.07」
カラム温度:40℃
展開溶媒:テトラヒドロフラン
流速:0.35mL/分
測定試料:試料15mgを10mlのテトラヒドロフランに溶解し、得られた溶液をマイクロフィルターでろ過したものを測定試料とした。
試料注入量:20μl
標準試料:前記「HLC−8320GPC」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
【0024】
(単分散ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A−300」
東ソー株式会社製「A−500」
東ソー株式会社製「A−1000」
東ソー株式会社製「A−2500」
東ソー株式会社製「A−5000」
東ソー株式会社製「F−1」
東ソー株式会社製「F−2」
東ソー株式会社製「F−4」
東ソー株式会社製「F−10」
東ソー株式会社製「F−20」
東ソー株式会社製「F−40」
東ソー株式会社製「F−80」
東ソー株式会社製「F−128」
東ソー株式会社製「F−288」
【0025】
本発明で用いる化合物(β)は、下記一般式(1)
【0026】
【化2】
〔式中、A
1、A
2はそれぞれ独立に芳香族基(a1)または炭素原子数1〜8の脂肪族基(a2)である。R
1〜R
4は、それぞれ独立に炭素原子数1〜3のアルキル基である。X
1、X
2はそれぞれ独立に2価の連結基である。〕で表されるような構造を有する。
【0027】
前記の通り、一般式(1)中のR
1〜R
4は、それぞれ独立して炭素原子数1〜3のアルキル基を表す。これらの中でもセルロースエステル樹脂に対しても相溶性が良好で、かつ、より高い面内のレターデーション値(Re値)を発現する点、及び材料が容易に入手できる点からメチル基が好ましい。
【0028】
前記本発明で用いる化合物(β)中のX
1、X
2は同一のものでも良いし、異なっていても良い。前記X
1、X
2としては、例えば、エステル基、エーテル基、チオエーテル基、アミノ基、イミノ基等が挙げられる。中でもセルロースエステル樹脂への相溶性が良好なことからエステル基またはエーテル基が好ましい。
【0029】
前記A
1、A
2の具体的な例である芳香族基(a1)としては、例えば、フェニル基、ジメチルフェニル基、トリメチルフェニル基、テトラメチルフェニル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、パラトルイル基、メタトルイル基、オルトトルイル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、プロポキシフェニル基、シアノフェニル基、フルオロフェニル基、ニトロフェニル基、フェニルフェニル基、メチルフェニルフェニル基、ジメチルフェニルフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。中でもセルロースエステル樹脂に対して相溶性が良好な化合物が得られることからフェニル基、パラトルイル基、メタトルイル基又はオルトトルイル基が好ましい。
【0030】
脂肪族基(a2)としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。中でも、セルロースエステル樹脂に対して相溶性が良好な化合物が得られ、製造時の過剰分の酸原料の減圧除去が容易であることから、メチル基、エチル基またはプロピル基が好ましい。
【0031】
前記本発明で用いる化合物(β)の具体例としては、例えば、下記一般式で表される化合物等を、本発明の効果を奏すると共に容易に得ることが出来ることから好ましく例示できる。
【0032】
【化3】
〔式中、L
1、L
2はそれぞれ独立に芳香族基(a1)または炭素原子数1〜8の脂肪族基(a2)である。R
1〜R
4は、それぞれ独立に炭素原子数1〜3のアルキル基である。〕
【0033】
前記一般式(1−1)で表される化合物は、例えば、炭素原子数1〜8の脂肪族基を有するモノカルボン酸(v)または芳香族モノカルボン酸(w)と、ビフェニル骨格及び該ビフェニル骨格の4及び4´の炭素原子にグリシジルエーテル基を有する化合物(x)とを反応させることにより得ることができる。また、また、前記一般式(1−2)で表される化合物は、例えば、炭素原子数1〜8の脂肪族基を有するモノアルコールまたはそのアルコキシド誘導体(y)または芳香族モノアルコール(z)とビフェニル骨格及び該ビフェニル骨格の4及び4´の炭素原子にグリシジルエーテル基を有する化合物(x)とを反応させることにより得ることができる。
【0034】
前記炭素原子数1〜8の脂肪族基を有するモノカルボン酸(v)としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ヘキサン酸、オクタン酸等が挙げられる。中でも、セルロースエステル樹脂に対して相溶性が良好な化合物が得られ、製造時の過剰分の減圧除去が容易であることから酢酸、プロピオン酸、酪酸が好ましい。これらの脂肪族モノカルボン酸(v)は単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0035】
前記芳香族モノカルボン酸(w)としては、例えば、安息香酸、ジメチル安息香酸、トリメチル安息香酸、テトラメチル安息香酸、エチル安息香酸、プロピル安息香酸、クミン酸、o−トルイル酸、m−トルイル酸、p−トルイル酸、アニス酸、エトキシ安息香酸、プロポキシ安息香酸、シアノ安息香酸、フルオロ安息香酸、ニトロ安息香酸、4−フェニル安息香酸、4−(3−メチルフェニル)安息香酸、4−(4−メチルフェニル)安息香酸、4−(3,5−ジメチルフェニル)安息香酸、2−メチル−4−フェニル安息香酸、2,6−ジメチル−4−フェニル安息香酸、2,6−ジメチル−4−(3,5−ジメチルフェニル)安息香酸、ナフトエ酸、ニコチン酸、フロ酸、1−ナフタレンカルボン酸、2−ナフタレンカルボン酸等が挙げられる。
【0036】
炭素原子数1〜8のアルキル基を有するモノカルボン酸(v)や前記芳香族モノカルボン酸(w)は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。尚、本発明において、「炭素原子数1〜8の脂肪族基を有するモノカルボン酸(v)」の炭素原子数とは、カルボニル基を含まない炭素原子数を言う。
【0037】
前記ビフェニル骨格及び該ビフェニル骨格の4及び4´の炭素原子にグリシジルエーテル基を有する化合物(x)としては、例えば、ビフェノール類とエピクロルヒドリンとの反応によって得られるジグリシジルエーテル型のエポキシ化合物等が挙げられる。このエポキシ化合物の具体的な例として、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジグリシジルオキシビフェニル(市販品では、ジャパンエポキシレジン株式会社製「jER YX−4000」(エポキシ当量180〜192))等のビフェノール型エポキシ化合物を使用できる。
【0038】
前記モノアルコールまたはそのアルコキシド誘導体(y)としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、n−ペンタノール、イソペンチルアルコール、t−ペンチルアルコール、シクロペンタノール、n−ヘキサノール、イソヘキサノール、シクロヘサノール、ヘプタノール、オクタノール等が挙げられる。
【0039】
芳香族モノアルコール(z)としては、例えば、フェノール、ベンジルアルコール、メチルフェノール、2,4,6-トリメチルフェノール、tert−ブチルフェノール、2,4-ジターシャリーブチルフェノール、2,6−ジターシャリーブチルフェノール、1−ナフトール、2-ナフトール等が挙げられる。
【0040】
前記の通り、一般式(1−1)で表される化合物は、例えば、炭素原子数1〜8の脂肪族基を有するモノカルボン酸(v)または芳香族モノカルボン酸(w)と、ビフェニル骨格及び該ビフェニル骨格の4及び4´の炭素原子にグリシジルエーテル基を有する化合物(x)とを反応させることにより得ることができる。
【0041】
また、一般式(1−2)で表される化合物は、例えば、炭素原子数1〜8の脂肪族基を有するモノアルコールまたはそのアルコキシド誘導体(y)または芳香族モノアルコール(z)と、ビフェニル骨格及び該ビフェニル骨格の4及び4´の炭素原子にグリシジルエーテル基を有する化合物(x)とを反応させることにより得ることができる。前記化合物(x)と、前記モノカルボン酸(v、w)や前記モノアルコール(y、z)とを反応させる際の反応温度としては、80〜130℃の範囲が好ましく、100℃〜115℃の範囲がより好ましい。反応時間としては、10〜25時間の範囲が好ましい。また、前記化合物(x)と、前記モノカルボン酸(v、w)やモノアルコール(y、z)との仕込み比は、化合物(x)のエポキシ基のモル数と、前記モノカルボン酸(v、w)のモル数やモノアルコール(y、z)のモル数の比(エポキシ基モル数)/(モノカルボン酸のモル数またはモノアルコールのモル数)が、1/0.9〜1.1の範囲であることが好ましい。
【0042】
前記化合物(x)のエポキシ基と、前記モノカルボン酸(v、w)のカルボキシル基又は前記モノアルコール(y、z)の水酸基とを反応において、必要に応じて触媒を用いてもよい。この触媒としては、例えば、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリオクチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等のホスフィン化合物;2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、4−フェニル−2−メチルイミダゾール等のイミダゾール系化合物;トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリアミルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリアチレンジアミン、ジメチルフェニルアミン、ジメチルベンジルアミン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等のアミン化合物;ジメチルアミノピリジン等のピリジン化合物などが挙げられる。これらの触媒は、前記化合物(x)と、前記モノカルボン酸(v、w)またはモノアルコール(y、z)の合計100質量部に対して0.05〜1質量部使用することが好ましい。
【0043】
前記一般式(1−1)で表される化合物や一般式(1−2)で表される化合物の中でも、L
1、L
2がそれぞれフェニル基又はトリル基のものが、セルロースエステル樹脂に対する相溶性が良好なことから好ましい。中でも、一般式(1−1)で表される化合物でL
1がフェニル基又はトリル基のものがより好ましい。
【0044】
本発明で用いる化合物(β)の性状は、組成などの要因により異なるが、通常、常温にて液体、固体、ペースト状などである。
【0045】
本発明で用いる前記化合物(β)の中でも、セルロースエステル樹脂(α)との相溶性に優れ、位相差が高く、逆波長分散性も良好であることに加え、透明性にも優れる光学フィルムが得られることが期待できることから、下記一般式(1−1−1)
【0046】
【化4】
(式中、R
1〜R
4は、それぞれ独立して炭素原子数1〜3のアルキル基を表す。Aはそれぞれ芳香族基(a1)または炭素原子数1〜4の脂肪族基(a2)を表し、芳香族基(a1)と脂肪族基(a2)の平均の存在比〔(a1)/(a2)〕が、モル比で99.9/0.1〜80/20である)で表される化合物〔エポキシエステル化合物(エポキシエステル混合物)。これを「一般式(1−1−1)で表される化合物」と略記することがある。〕が好ましい。以下、この化合物について詳述する。
【0047】
前記一般式(1−1−1)で表される化合物は、前記の通り、芳香族基(a1)と炭素原子数1〜4の脂肪族基(a2)とを有し、その存在比は、モル比で99/1〜82/18が好ましく、98/2〜85/15がより好ましい。ここで、(1−1−1)で表される化合物は通常、一般式(1−1)におけるL
1、L
2として種々の基を有するものの混合物である。従って、芳香族基(a1)と脂肪族基(a2)との存在比とは、個々の化合物の比ではなく、混合物としての存在比(平均の存在比)を言う。
【0048】
前記(1−1−1)で表される化合物は、例えば、下記に示す化合物〔エポキシエステル化合物(β1)〜エポキシエステル化合物(β3)〕の混合物等が挙げられる。
・式(1−1)で表され、片方の末端が芳香族基(a1)で、片方の末端が脂肪族基(a2)であるエポキシエステル化合物(β1)。
・式(1−1)で表され、両末端が芳香族基(a1)であるエポキシエステル化合物(β2)。
・式(1−1)で表され、両末端が脂肪族基(a2)であるエポキシエステル化合物(β3)。
【0049】
前記エポキシエステル化合物(β1)〜(β3)において、芳香族基(a1)や脂肪族基(a2)は同じ種類のものであっても良いし、異なる種類のものであっても良い。また、前記一般式(1−1−1)で表される化合物は、前記エポキシエステル化合物(β1)〜(β3)の全てを含有していなくても良く、例えば、化合物(β1)とエポキシ化合物(β2)からなる混合物であっても良いし、エポキシ化合物(β1)とエポキシ化合物(β3)からなる混合物であっても良い。
【0050】
前記一般式(1−1−1)で表される化合物(エポキシエステル化合物)は、例えば、下記に示す方法により得ることができる。
製法1:芳香族モノカルボン酸(w)と脂肪族モノカルボン酸(v)とを、最終的に得られるエポキシエステル化合物が有する芳香族基(a1)と脂肪族基(a2)の平均の存在比がモル比で99.9/0.1〜80/20となるような割合で用いる。そして、芳香族モノカルボン酸(w)と脂肪族モノカルボン酸(v)とビフェニル骨格及び該ビフェニル骨格の4及び4´の炭素原子にグリシジルエーテル基を有する化合物(x)とを一括で仕込み反応させる。
【0051】
製法2:芳香族モノカルボン酸(w)と脂肪族モノカルボン酸(v)とを、最終的に得られるエポキシエステル化合物が有する芳香族基(a1)と脂肪族基(a2)の平均の存在比がモル比で99.9/0.1〜80/20となるような割合で用いる。そして、芳香族モノカルボン酸(w)と化合物(x)とを、化合物(x)が有するグリシジルエーテル基が残るような割合で反応系内にて反応させた後、この反応系に脂肪族モノカルボン酸(v)を加え、残ったグリシジルエーテル基と脂肪族モノカルボン酸(v)のカルボキシル基を反応させる。
【0052】
製法3:芳香族モノカルボン酸(w)と脂肪族モノカルボン酸(v)とを、最終的に得られるエポキシエステル化合物が有する芳香族基(a1)と脂肪族基(a2)の平均の存在比がモル比で99.9/0.1〜80/20となるような割合で用いる。そして、脂肪族モノカルボン酸(v)と化合物(x)とを、化合物(x)が有するグリシジルエーテル基が残るような割合で反応系内にて反応させた後、この反応系に芳香族モノカルボン酸(w)を加え、残ったグリシジルエーテル基と芳香族モノカルボン酸(w)のカルボキシル基を反応させる。
【0053】
製法4:芳香族モノカルボン酸(w)と化合物(x)とを反応させて、式(1−1)で表され、両末端が芳香族基(a1)であるエポキシエステル化合物(β2)を得る。別途、脂肪族モノカルボン酸(v)と化合物(x)とを反応させて、式(1−1)で表され、両末端が脂肪族基(a2)であるエポキシエステル化合物(β3)を得る。そして、エポキシエステル化合物(β2)とエポキシエステル化合物(β3)とを、芳香族基(a1)と脂肪族基(a2)の平均の存在比がモル比で99.9/0.1〜80/20となるような割合で混合する。
【0054】
前記化合物(β)中にグリシジルエーテル基が残存すると、変異原性が生じやすいので、本発明で用いる化合物(β)のエポキシ当量は、5万g/eq.以上がエポキシ化合物として変異原性が生じにくくなるため好ましく、10万g/eq.以上がより好ましい。
【0055】
前記化合物(β)中に、カルボン酸残基が残存すると、セルロースエステルフィルムの加水分解を促進するため好ましくない。本発明で用いる化合物(β)の酸価は、1.5mgKOH/g以下であれば、セルロースエステルフィルムの加水分解を促進させにくいため、好ましく、1.0mgKOH/g以下であれば、より好ましい。
【0056】
本発明で用いる化合物(β)中のグリシジルエーテル基、カルボン酸基の双方を消失させる為に、過剰のモノカルボン酸原料でグリシジルエーテル基を消失させ、過剰のモノカルボン酸は、減圧留去する手法を用いることが好ましい。前記製法の中でも、前述の減圧留去時に容易に留去が可能となることから、脂肪族モノカルボン酸(v2)を後から添加する製法2が好ましい。
【0057】
前記製法1において、芳香族モノカルボン酸(w)と脂肪族モノカルボン酸(v)と化合物(x)とを一括で仕込み反応させる際の反応温度は、80〜160℃が好ましく、100〜150℃がより好ましい。反応時間としては、5〜40時間の範囲が好ましい。
【0058】
前記製法2において、芳香族モノカルボン酸(w)と化合物(x)とを反応させる際の反応温度は、80℃〜140℃が好ましく、90〜120℃がより好ましい。反応時間としては、5〜30時間の範囲が好ましい。そして、芳香族モノカルボン酸(w)と化合物(x)とを反応させた後、得られる反応物と脂肪族モノカルボン酸(v)とを反応させる際の反応温度は、100℃〜160℃が好ましく、120〜150℃がより好ましい。反応時間としては、1〜10時間の範囲が好ましい。
【0059】
前記製法3において、脂肪族モノカルボン酸(w)と化合物(x)とを反応させる際の反応温度は、80℃〜140℃が好ましく、90〜120℃がより好ましい。反応時間としては、5〜30時間の範囲が好ましい。そして、脂肪族モノカルボン酸(w)と化合物(x)とを反応させた後、得られる反応物と芳香族モノカルボン酸(w)とを反応させる際の反応温度は、100℃〜160℃が好ましく、120〜150℃がより好ましい。反応時間としては、1〜10時間の範囲が好ましい。
【0060】
前記製法1〜3において、化合物(x)と芳香族モノカルボン酸(w)と脂肪族モノカルボン酸(v)の仕込み比は、化合物(x)のエポキシ基のモル数と、芳香族モノカルボン酸(w)と脂肪族モノカルボン酸(v)の合計のカルボキシル基のモル数の比(エポキシ基モル数)/(カルボキシル基のモル数)が、0.8〜1.0/1.0の範囲であることが好ましい。
【0061】
本発明の光学フィルムを得る為に用いるセルロースエステル樹脂組成物は、前記セルロースエステル樹脂(α)100質量部に対して、前記化合物(β)を0.5〜30質量部の範囲で含有したものであると、優れた視野角補償機能と低透湿性とを付与でき、高温多湿下でも該樹脂組成物中から成分が揮発する揮発性が低い光学フィルムが得られることから好ましく、セルロースエステル樹脂(α)100質量部に対して、前記化合物(β)を1〜20質量部の範囲で含有したものがより好ましい。
【0062】
また、本発明で用いるセルロースエステル樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲内で、前記セルロースエステル樹脂(α)に、前記化合物(β)以外の各種添加剤を添加することができる。
【0063】
前記各種添加剤としては、例えば、改質剤(可塑剤も含む)、紫外線吸収剤、本発明で用いる化合物(β)以外のレターデーション上昇剤、樹脂、マット剤、劣化防止剤(例えば、酸化防止剤、過酸化物分解剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、酸捕獲剤等)、染料などの添加剤が挙げられる。また、これらの添加剤は、後述するソルベントキャスト法において、有機溶剤中に前記セルロースエステル樹脂(α)と、前記化合物(β)を溶解、混合する際に、併せて添加することもできる。
【0064】
前記改質剤(可塑剤も含む)としては、例えば、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート等のリン酸エステル;ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート等のフタル酸エステル;エチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、トリメチロールプロパントリベンゾエート、ペンタエリスリトールテトラアセテート、アセチルクエン酸トリブチルなどが挙げられる。
【0065】
前記紫外線吸収剤としては、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等が挙げられる。この紫外線吸収剤の添加量は、前記セルロースエステル樹脂(α)100質量部に対して、0.01〜2質量部の範囲であることが好ましい。
【0066】
前記化合物(β)以外のレターデーション上昇剤としては、レターデーション値(Re値)が上昇するものであれば何ら制限はないが、例えば、4−シアノ−4’−ペンチルビフェニルのような液晶化合物、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸エステル化合物、1,3,5−トリアジン環を有する化合物等が挙げられる。このレターデーション上昇剤の添加量は、前記セルロースエステル樹脂(α)100質量部に対して、0.01〜20質量部の範囲が好ましく、特に1〜10質量部の範囲がより好ましい。
【0067】
前記添加剤として用いる樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート等)、ポリカーボネート樹脂、ポリエステルエーテル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、トルエンスルホンアミド樹脂等が挙げられる。
【0068】
前記マット剤としては、例えば、酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、リン酸カルシウム、カオリン、タルク等が挙げられる。このマット剤は、前記セルロースエステル樹脂(α)100質量部に対して、0.1〜0.3質量部の範囲が好ましい。
【0069】
前記染料としては、通常使用されている公知慣用のものを用いることができ、その添加量は本発明の目的を阻害しない範囲であれば、特に限定しない。
【0070】
本発明の光学フィルムは、前記セルロースエステル樹脂組成物を用いて得られるフィルムを延伸することにより得る事ができる。前記フィルムは、セルロースエステル樹脂組成物を押出機等で溶融混練し、Tダイ等を用いることでフィルム状に成形する方法が挙げられる。
【0071】
また、前記フィルムは、前記成形方法の他に、前記セルロースエステル樹脂組成物を有機溶剤中に均一に溶解、混合して得られた樹脂溶液を金属支持体上に流延し乾燥させるソルベントキャスト法での成形によっても得ることができる。このソルベントキャスト法により得られるフィルムは、その表面に凹凸が形成されにくく、表面平滑性に優れるという特長を有するため、ソルベントキャスト法がより好ましいフィルムの成形方法である。
【0072】
ソルベントキャスト法は、前記セルロースエステル樹脂(α)及び前記化合物(β)を有機溶剤中に溶解させ、得られた樹脂溶液を金属支持体上に流延させる第1の工程、流延させた前記樹脂溶液中に含まれる有機溶剤を乾燥させフィルムを形成する第2の工程、及び金属支持体上に形成されたフィルムを金属支持体から剥離し加熱乾燥させる第3の工程からなる。
【0073】
第1の工程で使用する金属支持体としては、無端ベルト状又はドラム状の金属、例えばステンレス製で、その表面が鏡面仕上げの施されたものを使用することができる。前記金属支持体上に、前記樹脂溶液を流延させる際には、得られるフィルムに異物が混入することを防止するために、フィルターで濾過した樹脂溶液を使用することが好ましい。
【0074】
第2の工程における乾燥方法としては、例えば30〜50℃の温度範囲の風を前記金属支持体の上面及び下面に当てることで、流延した前記樹脂溶液中に含まれる有機溶剤のおよそ50〜80質量%程度を蒸発させ、前記金属支持体上にフィルムを形成させる方法がある。
【0075】
第3の工程は、前記第2の工程で形成されたフィルムを金属支持体上から剥離し、前記第2の工程よりも高温で加熱乾燥させる工程である。前記加熱乾燥方法としては、例えば100〜160℃の温度範囲で段階的に温度を上昇させる方法が寸法安定性を良くするために好ましい。前記温度範囲で加熱乾燥することによって、前記第2の工程で得られたフィルム中に残存する有機溶剤をほぼ完全に除去することができる。
【0076】
前記樹脂溶液中の不揮発分濃度としては、3〜50質量%の範囲が好ましく、5〜40質量%の範囲がより好ましい。
【0077】
前記有機溶剤としては、セルロースエステル樹脂(α)及び前記化合物(β)を溶解できるものであれば特に限定されないが、例えば、セルロースエステル樹脂(α)としてセルロースアセテートを使用する場合は、セルロースアセテートの良溶媒として、例えばメチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物やジオキソラン類を使用することができる。また、この良溶媒に対して、メタノール、エタノール、2−プロパノール、n−ブタノール、シクロヘキサン、シクロヘキサノン等の貧溶媒を併用することが、フィルムの生産効率を向上することができるので好ましい。良溶媒と貧溶媒とを混合して使用する場合の質量割合は、良溶媒/貧溶媒=75/25〜95/5(質量%)の範囲が好ましい。
【0078】
前記セルロースエステル樹脂組成物を押出機等で溶融混練し、Tダイ等を用いることでフィルム状に成形する方法や、ソルベントキャスト法で得られるフィルムを延伸(加熱延伸)することにより本発明の光学フィルムを得ることができる。延伸操作は多段階に分割して実施してもよく、流延方向、幅手方向に二軸延伸を実施しても良い。また、二軸延伸を行う場合には、同時二軸延伸を行ってもよいし、段階的に実施してもよい。この場合、段階的とは、例えば、延伸方向の異なる延伸を順次行うことも可能であるし、同一方向の延伸を多段階に分割し、かつ異なる方向の延伸をそのいずれかの段階に加えることも可能である。
【0079】
また、同時二軸延伸には、一方向に延伸し、もう一方向については張力を緩和して収縮させる場合も含まれる。同時二軸延伸の好ましい延伸倍率は、例えば、幅方向に×1.05〜×1.5倍で長手方向(流延方向)に×0.8〜×1.3倍であり、特に幅方向に×1.1〜×2.5倍、長手方向に×0.8〜×0.99倍とすることが好ましい。特に好ましくは幅方向に×1.1〜×2.0倍、長手方向に×0.9〜×0.99倍である。
【0080】
本発明の光学フィルムの膜厚は、10〜100μm範囲であることが好ましい。光学フィルムの中でも視野角補償機能付き偏光子保護フィルムとして使用する場合には、その膜厚が15〜80μmの範囲であれば、液晶表示装置の薄型化を図ることが可能で、かつ優れたフィルム強度、湿熱変化による寸法安定性及び耐透湿性を維持することができる。
【0081】
また、本発明の光学フィルムは、用いるセルロースエステル樹脂組成物への前記化合物(β)の添加量を調整することによりRe値を調整することが可能である。特に本発明で用いる前記化合物(β)は、少量添加で高いRe値を得ることができるため、視野角補償機能を有する偏光子保護フィルムに使用することができる。偏光子保護フィルムは、TN(Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)、OCB(Optically Compensatory Bend)等の液晶表示方式に応じて特定の範囲の異方性を示すよう設計される。本発明の光学フィルムは、特にVA方式の液晶表示に用いられる光学補償機能を付与した偏光子保護フィルムに好適に用いることができる。
【0082】
本発明の光学フィルムは、Re値が50nm以上を有していることが好ましく、50〜70nmの範囲のRe値を有していることが、液晶由来の位相差を効果的に補償することができるためより好ましい。
【0083】
光学フィルムの膜厚が60μmの場合、セルロースエステル樹脂(α)のみからなるフィルムの透湿度は、セルロースエステル樹脂の種類によっても異なるが、例えば950〜1300g/m
2・24h程度である。前記エポキシエステル化合物(β)を添加した本発明光学フィルムは、900g/m
2・24h以下の透湿度であれば、偏光板としたときの水分の悪影響を抑制できる為好ましく、100〜800g/m
2・24hの範囲の透湿度であることがより好ましい。
【0084】
本発明の光学フィルムは、高い光学性能のみならず、高い透明性、低い揮発性などに優れることから、例えば、特に視野角補償機能を有する偏光子保護フィルムとして好適に用いることができる。また、本発明の光学フィルムは位相差フィルム、反射板、拡散フィルム、視野角拡大フィルム、防眩フィルム、反射防止フィルム、帯電防止フィルム、カラーフィルター等にも使用できる。
【0085】
本発明の液晶表示装置は、例えば、本発明の光学フィルムを有する液晶表示装置用偏光板を有するものを例示できる。液晶表示装置用偏光板は、具体的には、ポリビニルアルコール(PVA)フィルムにヨウ素化合物等の二色性分子を配向させた偏光子の片側又は両側に本発明の光学フィルムを偏光子保護フィルムとして貼付した構造のものである。なお、この液晶表示装置用偏光板は、液晶セルの両側にクロスニコルの状態で配置される。
【実施例】
【0086】
以下、本発明を実施例に基づき更に具体的に説明する。例中の部及び%は断りがない限り質量基準である。
【0087】
合成例1〔化合物(β)の合成〕
温度計、攪拌器、還流冷却器及び窒素導入管を備えた1リットルの四ツ口フラスコに、テトラメチルビフェノール型エポキシ樹脂(エポキシ当量187)299g、安息香酸195gおよび触媒としてトリフェニルホスフィン1gを加え、115℃で20時間反応させて、前記一般式(1−1)で表される化合物〔エポキシエステル化合物。以下(β−1)と略記する。)を得た。化合物(β−1)の酸価は、0.7で、水酸基価は178であった。
【0088】
本発明において、酸価及び水酸基価は、JIS K 0070−1992に準じて測定した。また、エポキシ当量は、JIS K 7236:2001に準じて測定した。
【0089】
合成例2(同上)
温度計、攪拌機及び還流冷却機を備えた0.5リットルの四つ口フラスコに、テトラメチルビフェノール型エポキシ化合物(エポキシ当量193)193g、フェノール92gおよび触媒としてトリフェニルホスフィン0.9gを加え、115℃で19時間反応させて前記一般式(1−2)で表される化合物〔エポキシエーテル化合物。以下(β−2)と略記する。)を得た。化合物(β−2)の酸価は、0.7で、水酸基価は194であった。
【0090】
合成例3(同上)
温度計、攪拌機及び還流冷却機を備えた0.5リットルの四つ口フラスコに、テトラメチルビフェノール型エポキシ化合物(エポキシ当量193)193g、p−クレゾール106gおよび触媒としてトリフェニルホスフィン0.9gを加え、115℃で20時間反応させて前記一般式(1−2)で表される化合物〔エポキシエーテル化合物。以下(β−3)と略記する。)を得た。化合物(β−3)の酸価は、0.4で、水酸基価は142であった。
【0091】
合成例4(同上)
温度計、攪拌機及び還流冷却機を備えた1リットルの四つ口フラスコに、テトラメチルビフェノール型エポキシ化合物(エポキシ当量192)307g、酢酸115および触媒としてトリフェニルホスフィン0.6gを加え、115℃で20時間反応させた。反応後、未反応原料を除去するため130℃にて減圧し、前記一般式(1−1)で表される化合物〔エポキシエステル化合物。以下(β−4)と略記する。)を得た。化合物(β−4)の酸価は、0.4で、水酸基価は206であった。
【0092】
合成例5(同上)
温度計、攪拌機及び還流冷却機を備えた3リットルの四つ口フラスコに、テトラメチルビフェノール型エポキシ化合物(エポキシ当量191)1337g、パラトルイル酸905g、メチルイソブチルケトン449gおよび触媒としてトリフェニルホスフィン2gを加え、115℃で9時間反応後、酢酸56gを加え140℃で4時間反応させた。反応後、未反応原料を除去するため減圧し、前記一般式(1−1)で表される化合物〔エポキシエステル化合物。以下(β−5)と略記する。)を得た。化合物(β−5)の酸価は、0.4で、水酸基価は172であった。
【0093】
合成例6〔比較対照用化合物(β´)の合成〕
温度計、攪拌機及び還流冷却機を備えた3リットルの四つ口フラスコに、テレフタル酸ジメチル554g、プロピレングリコール476g、パラトルイル酸817gおよび触媒としてテトライソプロピルチタネート0.11gを加え、230℃まで段階的に昇温し、17時間反応させた。反応後、195℃にて未反応のプロピレングリコールを減圧除去し、ポリエステルである比較対照用化合物(β´−1)を得た。化合物(β´−1)の酸価は0.2で、水酸基価は12で、数平均分子量は450であった。
【0094】
合成例7〔同上〕
温度計、攪拌機及び還流冷却機を備えた3リットルの四つ口フラスコに、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル1221g、エチレングリコール93g、プロピレングリコール1027gおよび触媒としてテトライソプロピルチタネート0.12gを加え、205℃まで段階的に昇温し、18時間反応させた。反応後、160℃にて未反応のプロピレングリコールを減圧除去し、ポリエステルである比較対照用化合物(β´−2)を得た。化合物(β´−2)の酸価は0.2で、水酸基価は161で、数平均分子量は710であった。
【0095】
実施例1
セルロースアセテートプロピオネート(CAP−482−20,イーストマンケミカル製。以下「CAP」と略記する。)100部、化合物(β−1)10部に対し、メチレンクロライド670部を加えて溶解し、ドープ液を得た。ドープ液をガラス板上に厚み0.45mmとなるように流延し、室温で一晩放置後、50℃で30分、100℃で30分乾燥し、膜厚60μのフィルムを得た。得られたフィルムについて、二軸延伸機(井本製作所製)を用い流涎方向に延伸(一軸延伸)して本発明の光学フィルムを得た。延伸条件は下記の通りである。
【0096】
延伸温度:CAPと化合物(β−1)との混合物のガラス転移温度(Tg)+20℃。
延伸倍率:延伸方向に1.5倍。
延伸速度:30mm/min。
【0097】
尚、前記CAPと化合物(β−1)との混合物のガラス転移温度(Tg)は、以下の方法に従い求めた。
【0098】
<Tgの測定方法>
Tgの測定には示差走査熱量測定計DSC822e(METTLER TOLEDO社製)を用いた。具体的には、CAP100部と化合物(β−1)10部からなる樹脂組成物5mgを軽量アルミパンに入れ、窒素雰囲気下、25℃から200℃まで毎分10℃で昇温(1st run)した。1st run後、0℃まで毎分10℃で降温し、再度、0℃から200℃まで毎分10℃で昇温(2nd run)した。Tgは、2nd runで得られたDSC曲線より中点法を用いて決定した。
【0099】
尚、後述するジアセチルセルロース(DAC)を用いたセルロースエステル樹脂組成物を用いて延伸フィルムを得る際の延伸温度を決める際に必要なTgの値は、上記<Tgの測定方法>に準じて以下の通り行った。具体的には、DAC100部と化合物(β−1)10部からなる樹脂組成物5mgを軽量アルミパンに入れ、窒素雰囲気下、25℃から180℃まで毎分10℃で昇温(1st run)した。1st run後、−60℃まで毎分10℃で降温し、再度、−60℃から270℃まで毎分10℃で昇温(2nd run)した。Tgは、2nd runで得られたDSC曲線より中点法を用いて決定した。
【0100】
得られた光学フィルムの面内の位相差(Re値)を測定すると共に、逆波長分散性及び透明性の評価を下記方法に従って評価した。評価結果を第1表に示す。
【0101】
<面内の位相差(Re値)の測定方法>
23℃、55%RHの環境下で位相差測定装置KOBRA−WR(王子計測機器株式会社製)を用いて平行ニコル回転法により550nmにおけるRe値を測定し、フィルム厚60μmの換算値を求めた。尚、測定するフィルムは測定前に23℃、55%RH下で30分調湿した。
【0102】
<逆波長分散性の評価方法>
波長448nm、498nm、547nm、588nm、629nm及び745nmにおける面内の位相差(Re値)を前記「<面内の位相差の測定方法>」に従って測定した。得られたRe値を基に位相差測定ソフトKOBRA−RE(王子計測機器株式会社製)を用いてセルマイヤーの式により分散曲線を得た。この分散曲線の傾き(B)をフィルムの厚み(μm)で除し、更に100を掛けた値{〔傾き(B)/厚み(μm)〕×100}を求めた。
【0103】
上記分散曲線が正分散の曲線であれば(分散曲線が右下がり)、前記〔傾き(B)/厚み(μm)〕で求められる値は0よりも大きくなる。上記分散曲線が逆分散の曲線であれば(分散曲線が右上がり)、前記〔傾き(B)/厚み(μm)〕で求められる値は0よりも小さくなる。従って、前記〔傾き(B)/厚み(μm)〕で求められる値が0よりも小さく、その絶対値が大きいものほど、逆分散性に優れるフィルムである。
【0104】
<透明性の評価方法>
濁度計(日本電色工業株式会社製「NDH 5000」)を用いて、JIS K 7105に準じて、フィルムのヘイズ値を測定した。この値が小さい程透明であり、相溶性に優れると言える。
【0105】
実施例2〜5及び比較例1〜4
第1表に示す配合で行う以外は実施例1と同様にしてフィルムを作製した。実施例1と同様にして評価を行い、その結果を第1表に示す。
【0106】
【表1】
【0107】
実施例6及び比較例5
第2表に示す配合で行う以外は実施例1と同様にしてフィルムを作製した。実施例1と同様にして評価を行い、その結果を第2表に示す。
【0108】
【表2】
【0109】
第1表及び第2表の脚注
CAP:セルロースアセテートプロピオネート(CAP−482−20,イーストマンケミカル社製)
DAC:ジアセチルセルロース(L−50,株式会社ダイセル製)