特許第6569910号(P6569910)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6569910
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】ケーブルユニット
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/08 20060101AFI20190826BHJP
   H01B 7/18 20060101ALI20190826BHJP
   H01B 7/04 20060101ALI20190826BHJP
   D04C 1/06 20060101ALI20190826BHJP
   D04B 21/20 20060101ALI20190826BHJP
   D04B 1/22 20060101ALI20190826BHJP
【FI】
   H01B7/08
   H01B7/18 H
   H01B7/04
   D04C1/06 Z
   D04B21/20 Z
   D04B1/22
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-116909(P2016-116909)
(22)【出願日】2016年6月13日
(65)【公開番号】特開2017-224395(P2017-224395A)
(43)【公開日】2017年12月21日
【審査請求日】2018年8月10日
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(72)【発明者】
【氏名】黄 得天
(72)【発明者】
【氏名】小林 正則
(72)【発明者】
【氏名】秋山 理沙
【審査官】 神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−217359(JP,A)
【文献】 特開2006−221842(JP,A)
【文献】 特開2015−008072(JP,A)
【文献】 特開2012−227061(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/08
D04B 1/22
D04B 21/20
D04C 1/06
H01B 7/04
H01B 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本のケーブルと、
複数本の前記ケーブルが挿通可能に形成された挿通孔を備える編組スリーブと、を有し、
前記編組スリーブは、繊維からなり、伸縮性を有する編物で形成されており、
前記編組スリーブは、前記挿通孔の内径が前記挿通孔内に挿通される複数本のケーブルよりも小さく形成されており、前記挿通孔内に複数本のケーブルを挿通した状態で前記編組スリーブが緩まないことにより、前記挿通孔内に挿通された複数本の前記ケーブルを屈曲させたときに前記ケーブルが垂れ下がることを抑制する締め付け力によって前記ケーブルを締め付けている
ケーブルユニット。
【請求項2】
前記編組スリーブは、多層構造を有している
請求項1に記載のケーブルユニット。
【請求項3】
前記編組スリーブの各層はそれぞれ、前記各層がそれぞれ有する編み目の交点の位置が互いに重ならないように設けられている
請求項2に記載のケーブルユニット。
【請求項4】
前記編組スリーブの最内層はフッ素樹脂からなる繊維で形成されている
請求項1ないし3のいずれかに記載のケーブルユニット。
【請求項5】
前記編組スリーブの外周側部には、フッ素樹脂からなる繊維で形成された層が設けられている
請求項1ないし4のいずれかに記載のケーブルユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブルユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば半導体や液晶画面等の製造ラインで用いられる(製造装置に配線される)ケーブルのうち、可動部(例えば繰り返しU字屈曲を受ける箇所)に配線されるケーブルは、断線や捩れ対策のためにケーブルベア(登録商標)の中に収容されて配線されている(例えば特許文献1参照)。つまり、製造ラインにおける搬送機械等に配線されるケーブル等の一定の軌道上を移動する動作をするケーブルは、ケーブルベア(登録商標)の中に収容して配線され、ケーブルベア(登録商標)に収容された状態で動かされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−5498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ケーブルは柔軟性を有するため、ケーブルをU字屈曲させた際に生じる直線部(屈曲部以外の箇所)が垂れ下がることがある。このようなケーブルがケーブルベア(登録商標)内に収容された状態で動かされると、ケーブルベア(登録商標)内でケーブルが垂れ下がり、ケーブルとケーブルベア(登録商標)とが接触し擦れることがある。これにより、ケーブルが摩耗し、これに伴う粉塵が発生することがある。その結果、ケーブルベア(登録商標)に収容されたケーブルが例えばクリーンルーム内の製造ラインにおける搬送機械に配線されている場合、発生した粉塵により例えば製造している製品の品質の低下等を招くことがある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決し、ケーブルベア(登録商標)を用いることなく製造ラインにおける搬送機械等の可動部にケーブルを配線することができるとともに、ケーブルの摩耗等による粉塵の発生を抑制することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、
複数本のケーブルと、
複数本の前記ケーブルが挿通可能に形成された挿通孔を備える編組スリーブと、を有し、
前記編組スリーブは、繊維からなり、伸縮性を有する編物で形成されており、
前記編組スリーブは、前記挿通孔の内径が前記挿通孔内に挿通される複数本のケーブルよりも小さく形成されており、前記挿通孔内に複数本のケーブルを挿通した状態で前記編組スリーブが緩まないことにより、前記挿通孔内に挿通された複数本の前記ケーブルを屈曲させたときに前記ケーブルが垂れ下がることを抑制する締め付け力によって前記ケーブルを締め付けているケーブルユニットが提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ケーブルベア(登録商標)を用いることなく製造ラインにおける搬送機械等の可動部にケーブルを配線することができ、ケーブルの摩耗等による粉塵の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態にかかるケーブルユニットの概略図を示す。
図2図1のA−A線断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<本発明の一実施形態>
(1)ケーブルユニットの構成
以下に、本発明の一実施形態にかかるケーブルユニットの構成について、図1および図2を参照しながら説明する。
【0010】
図1および図2に示すように、ケーブルユニット10は複数本(例えば5本)のケーブル11を備えている。これら複数本のケーブル11は並列に配置されている。また、これら複数本のケーブル11は、隣接するケーブル11同士が接触するように配置されるとともに、隣接するケーブル11の外層同士が例えば熱風融着等により互いに接合されている。なお、隣接するケーブル11の外層同士は例えば接着剤により互いに接着されていてもよい。
【0011】
複数本のケーブル11を並列に配置することで、ケーブル11の屈曲方向を制御でき、その結果ケーブルユニット10の屈曲方向を制御することができる。つまり、各ケーブル11がそれぞれ種々の方向に屈曲するように構成されている場合であっても、複数本のケーブル11を並列に配置することで、ケーブルユニット10は、ケーブル11の並列方向と直交する方向には屈曲するが、並列方向には屈曲しないようになる。
【0012】
ケーブルユニット10は、複数本のケーブル11が挿通可能に形成された挿通孔12aを備える編組スリーブ12を有している。つまり、編組スリーブ12はチューブ状に形成されている。挿通孔12aの幅方向(つまり挿通孔12a内に挿通された複数本のケーブル11の並列方向)における断面形状は例えば長円状や楕円状に形成されている。また、編組スリーブ12は、挿通孔12a内に挿通されたケーブル11の両端部を露出させるように形成されていることが好ましい。編組スリーブ12は、挿通孔12a内に挿通されるケーブル11を保護する機能も果たす。
【0013】
編組スリーブ12は伸縮性を有する編物で形成されている。編組スリーブ12は2枚の編物の端部をそれぞれ接合してチューブ状に形成されている。なお、接合方法は特に限定されるものではなく、端部を接着剤により接合してもよく、端部をそれぞれ縫い合わせて接合してもよい。
【0014】
編組スリーブ12は、挿通された複数本のケーブル11をその並列配置方向から締め付けることができるように構成されている。すなわち、編組スリーブ12の挿通孔12aは、挿通孔12a内に挿通された複数本のケーブル11をその並列配置方向から締め付ることができる大きさに形成されている。
【0015】
挿通孔12aは、挿通孔12a内にケーブル11を挿通した状態で編組スリーブ12が緩む箇所がない大きさ(形状)に形成されていることが好ましい。例えば、挿通孔12aは、その内径(長径、チューブ径)が挿通孔12a内に挿通されることとなる並列に配置された複数本のケーブル11の幅(複数本のケーブル11の並列方向における長さ)よりもわずかに小さくなるように形成されていることが好ましい。具体的には、挿通孔12a内に挿通する複数本のケーブル11の幅が例えば5.5cmである場合、挿通孔12aの長径は例えば5cmであることが好ましい。これにより、編組スリーブ12は、挿通孔12a内に挿通された複数本のケーブル11を、その並列配置方向から確実に締め付けることができる。
【0016】
また、編組スリーブ12を伸縮性を有する編物で形成することで、挿通孔12a内に挿通される複数本のケーブル11の幅が挿通孔12aの長径よりも大きい場合であっても、複数本のケーブル11を挿通孔12a内に挿通させることができる。
【0017】
また、編組スリーブ12を編物で形成することで、複数本のケーブル11の幅よりも小さな長径を有する挿通孔12a内に複数本のケーブル11を挿通した場合、複数本のケーブル11の並列方向に加えて並列方向と直交する方向にも複数本のケーブル11を締め付ける力が生じることとなる。これにより、ケーブルユニット10をU字状に屈曲させて半導体等の製造ラインにおける搬送機械等の可動部に配設した際、U字屈曲したケーブルユニット10の直線部(非屈曲部)が垂れ下がることを抑制することができる。また、編組スリーブ12、個々のケーブル11のそれぞれに自立性がない場合であっても、ケーブルユニット10を自立させることができる。
【0018】
また、挿通孔12a内に挿通された複数本のケーブル11を、その並列配置方向から締め付けることで、ケーブルユニット10を上記可動部に配設してケーブルユニット10を動かした際、挿通孔12a内でケーブル11が動くことを抑制することができる。これにより、ケーブル11と編組スリーブ12(例えば編組スリーブ12の内周面)とが擦れることを抑制することができ、ケーブル11の摩耗等による粉塵の発生を抑制することができる。
【0019】
また、編組スリーブ12は、伸縮性だけでなく、柔軟性、可撓性等も有している。これにより、上記可動部に配設されたケーブルユニット10を動かした際、ケーブル11の動きに追従させて編組スリーブ12を動かすことができる。また、ケーブルユニット10を繰り返しU字屈曲させた場合であっても、ケーブルユニット10が破損することを抑制することができる。例えば、上記可動部に配設されたケーブルユニット10の一方の端部(後述の移動端)を所定方向に繰り返し往復動させても、ケーブルユニット10が破損することを抑制することができる。
【0020】
図2に示すように、編組スリーブ12は、例えば多層構造を有していることが好ましい。つまり、編組スリーブ12は多層構造編物で形成されていることが好ましい。例えば、編組スリーブ12は内層12bと外層12cとの2層構造を有するチューブ状の編物で形成されていることが好ましい。
【0021】
これにより、例えばケーブルユニット10を動かした際にケーブル11と編組スリーブ12とが擦れてケーブル11の摩耗等による粉塵が発生した場合であっても、内層12bと外層12cとの間に形成されている袋状の空間部に粉塵を収容することができる。その結果、粉塵がケーブルユニット10の外部に漏れ出ることを抑制することができる。
【0022】
編組スリーブ12の各層(例えば内層12bおよび外層12c)はそれぞれ、各層が有する編み目の交点の位置が互いに重ならないように設けられていることが好ましい。これにより、各層の編み目の大きさ(各編み目の目の面積)を小さくすることなく、編組スリーブ12全体(つまり各層を積層させた積層体)では編み目の大きさを小さくすることができる。これにより、編組スリーブ12の柔軟性、可撓性等を損なうことなく、ケーブルユニット10を動かした際にケーブル11の摩耗等による粉塵が発生した場合であっても、粉塵(例えば上述の袋状の空間部に収容された粉塵等)がケーブルユニット10の外部に漏れ出ることをより抑制することができる。
【0023】
編組スリーブ12は、例えばフッ素樹脂からなる繊維で形成されていることが好ましい。フッ素樹脂からなる繊維としては、例えば東レ株式会社製のトヨフロン(登録商標)等のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)繊維等を用いることができる。フッ素樹脂からなる繊維は高い耐摩耗性(低摩耗性)を有する。これにより、ケーブルユニット10を動かした際にケーブル11と編組スリーブ12とが擦れた場合であっても、粉塵の発生を抑制することができる。
【0024】
なお、編組スリーブ12が多層構造を有している場合、編組スリーブ12の内層12b(編組スリーブ12が3層以上の層を有している場合は最内層)は、例えば上述のフッ素樹脂からなる繊維で形成されていることが好ましい。つまり、内層12bは、例えばフッ素樹脂からなる繊維を用いて形成した編物で構成されていることが好ましい。
【0025】
編組スリーブ12が多層構造を有している場合、編組スリーブ12の外層12c(編組スリーブ12が3層以上の層を有している場合は最外層)は、編組スリーブ12の用途や目的に応じて種々の繊維で形成することができる。
【0026】
例えば、ケーブルユニット10からの発塵をより抑制する観点から、外層12cは耐傷に強く抗張力のナイロン繊維(ナイロン繊維糸)で形成されていることが好ましい。これにより、編組スリーブ12に外的負荷が加わった場合(例えば編組スリーブ12と床とが接触したり、編組スリーブ12と製造ライン上にある機械とが接触したりして、編組スリーブ12が擦れた場合等)であっても、編組スリーブ12が摩耗することを抑制することができる。その結果、ケーブルユニット10からの粉塵の発生をより抑制することができる。
【0027】
また例えば、編組スリーブ12に高い耐熱性が要求される場合には、外層12cは、内層12bと同様に例えばフッ素樹脂からなる繊維で形成することが好ましい。
【0028】
また、編組スリーブ12の外周側部(両側部)には、例えばフッ素樹脂等の低摩耗性を有する繊維からなる層13が設けられていることが好ましい。これにより、ケーブルユニット10からの粉塵の発生をより抑制することができる。層13は、編組スリーブ12の編物の端部を例えばフッ素樹脂等からなる繊維で縫い合わせることで形成されていてもよく、編組スリーブ12の端部上にフッ素樹脂等の耐摩耗性を有する繊維からなる布を設けることで形成されていてもよい。
【0029】
例えば上記可動部にケーブルユニット10を配設すると、ケーブルユニット10の外周側部に例えば製造ラインや搬送機械等に接触することがある。つまり、ケーブルユニット10(編組スリーブ12)の外周側部に外的負荷が加わることがある。その結果、編組スリーブ12が摩耗して粉塵が発生することがある。したがって、上述のように編組スリーブ12の外周側部に低摩耗性を有する繊維からなる層13を設けることで、ケーブルユニット10の外周側部に外的負荷が加わった場合であっても、粉塵の発生を抑制することができる。
【0030】
編組スリーブ12の両端はそれぞれ例えばレーザ等により溶融されていることが好ましい。例えば、編組スリーブ12を所定長さに切断する際、レーザを用いて切断することが好ましく、これにより編組スリーブ12を切断しつつ、編組スリーブ12の両端をそれぞれ溶融させることができる。これにより、ケーブルユニット10を動かした際に、編組スリーブ12の端部から粉塵が発生することをより抑制することができる。
【0031】
また、編組スリーブ12の両端が露出しないように、編組スリーブ12の両端部はそれぞれ内側に折り曲げられ(折り返され)ていることが好ましい。これにより、ケーブルユニット10を動かした際に、ケーブル11と編組スリーブ12の端部とが擦れた場合でも、粉塵の発生をより抑制することができる。
【0032】
なお、編組スリーブ12の両端部の折り曲げられた部分(折り曲げ部、折り返し部)は例えばクランプ等を用いて接合されていることが好ましい。折り曲げ部は例えば接着剤により編組スリーブ12の内周面に接着されていてもよい。
【0033】
また、ケーブル11としては、例えば導体とこの導体の外周を囲うように設けられる絶縁層とを有する電線を用いることができる。また、ケーブル11として、例えば導体を有する複数本の電線を拠り合わせた撚線と、撚線の外周に巻きつけられたテープ(例えばフッ素樹脂テープ)と、テープの外周を囲うように設けられたシールド(例えば編組シールド)と、シールドの外周を囲うように設けられたシースと、を有する信号線の他、電源線や光ファイバ等を用いることもできる。なお、電源線、信号線、光ファイバ等における線芯数や、電線が有する導体の大きさ(太さ)などは特に限定されるものではない。また、撚線における各電線間の隙間は所定の介在物によって埋められていることが好ましい。
【0034】
導体として、例えば耐屈曲かつフレキシブルな拠り線導体を用いることができる。また、絶縁層の形成材料として、耐摩耗性を有し(摩耗に強く)、粉塵が発生しにくいフッ素樹脂(例えばETFE、FEP、PFA、PTFE等)を用いることができる。ケーブルユニット10を繰り返しU字状に屈曲させても断線しないような優れた可撓性をケーブルユニット10に付与する観点から、シースの形成材料としては、例えば優れた柔軟性を有するポリ塩化ビニル(PVC)樹脂、ポリウレタン(PU)樹脂、ポリオレフィン(PO)樹脂等を用いることが好ましい。
【0035】
上述のケーブルユニット10は、少なくとも一端がケーブル11の並列方向と直交する方向に可動する上記可動部に固定される。例えば、U字状に屈曲されたケーブルユニット10の一端を固定して固定端とし、他端をケーブル11の並列方向と直交する方向に可動する上記可動部に固定して移動端とする。そして、移動端が所定方向(ケーブル11の並列方向と直交する方向)に繰り返し往復動する。
【0036】
上述のケーブルユニット10は、以下のように製造される。まず、複数本のケーブル11を用意し、隣接するケーブル11の外層同士が接触するように並列に配置する。そして、隣接するケーブル11の外層同士を接合する。なお、あらかじめ並列に配置され隣接する外層同士が接合されている複数本のケーブル11を用意してもよい。また、複数本のケーブル11が挿通される挿通孔12aを備え、伸縮性を有する編物からなる編組スリーブ12を形成し、この編組スリーブ12を例えばレーザ切断により所定長さに切断する。所定長さに切断した編組スリーブ12が有する挿通孔12a内に複数本のケーブル11を挿通させる。そして、編組スリーブ12の両端部をそれぞれ内側に折り曲げ、折り曲げ部を例えばクランプ等を用いて接合する。これにより、上述のケーブルユニット10が形成される。
【0037】
(2)本実施形態にかかる効果
本実施形態によれば、以下に示す1つまたは複数の効果を奏する。
【0038】
(a)ケーブルユニット10は、挿通孔12aを有し伸縮性を有する編物で形成された編組スリーブ12を用い、並列に配置された複数本のケーブル11を編組スリーブ12が有する挿通孔12a内に挿通させた際に、編組スリーブ12によって挿通孔12a内に挿通された複数本のケーブル11をその並列配置方向から締め付けている。このケーブルユニット10を用いることで、ケーブルベア(登録商標)を用いることなく例えば半導体等の製造ラインにおける搬送機械等の可動部にケーブル11を配線することができ、ケーブルベア(登録商標)を用いる場合よりも粉塵の発生を抑制することができる。このように粉塵の発生が抑制されたケーブルユニット10は、例えばクリーンルーム等に配置された上記可動部に設置される場合に特に有効であり、クリーンルーム内のクリーン度を維持することができる。
【0039】
また、ケーブルユニット10は、U字状に屈曲させた際に形成される屈曲部の曲げ半径をケーブルベア(登録商標)よりも小さくすることができる。例えば、ケーブルユニット10は、U字屈曲させたケーブルユニット10の編組スリーブ12間の最大幅を60mm以下、好ましくは50mm以下にすることができる。つまり、上記可動部に配設されたU字状に屈曲した状態のケーブルユニット10の高さを低くする(低Highにする)ことができる。したがって、ケーブルユニット10は、ケーブルベア(登録商標)では配設することができない上記可動部のうち小さな可動部や狭い場所にも配設することができる。
【0040】
(b)編組スリーブ12が多層構造を有することで、ケーブルユニット10を動かした際に例えばケーブル11の摩耗による粉塵が発生した場合であっても、層間に形成される袋状の空間部に粉塵を収容することができる。したがって、粉塵がケーブルユニット10の外部に漏れ出ることを抑制することができる。
【0041】
(c)編組スリーブ12が多層構造を有する場合、編組スリーブ12の各層をそれぞれ、各層がそれぞれ有する編み目の交点の位置が互いに重ならないように設けることで、各層の編み目を小さくすることなく、編組スリーブ12全体で編み目を小さくすることができる。これにより、編組スリーブ12の伸縮性、柔軟性、可撓性等を損なうことなく、ケーブルユニット10を動かした際にケーブル11の摩耗等による粉塵が発生した場合であっても、粉塵がケーブルユニット10の外部に漏れ出ることをより抑制することができる。
【0042】
これに対し、各層のそれぞれの編み目の大きさを小さくすると、粉塵がケーブルユニット10の外部に漏れ出ることをより抑制することはできるものの、編組スリーブ12が伸縮性、柔軟性、可撓性等を有さなくなることがある。その結果、ケーブルユニット10を上記可動部に配設してケーブルユニット10を動かした際、ケーブル11の動きに追従させて編組スリーブ12を動かすことができなくなることがある。また、ケーブルユニット10の耐U字屈曲性が低下することがある。例えば、ケーブルユニット10を繰り返しU字状に屈曲させたり、U字状に屈曲させた状態で動かすことができないことがある。
【0043】
(d)編組スリーブ12(編組スリーブ12が多層構造を有する場合は最内層)を低摩耗性を有するフッ素樹脂からなる繊維で形成することで、ケーブルユニット10を動かした際に挿通孔12a内でケーブル11と編組スリーブ12とが擦れた場合であっても、粉塵が発生することを抑制することができる。
【0044】
(e)上記可動部にケーブルユニット10を配設することで、外的負荷が加わりやすくなる編組スリーブ12の外周側部に、低摩耗性を有するフッ素樹脂からなる繊維で形成された層を設けることで、編組スリーブ12の外周側部に外的負荷が加わった場合であっても、粉塵が発生することを抑制することができる。
【実施例】
【0045】
次に、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0046】
ケーブルとして、導体と、導体の外周に巻きつけられたテープ(フッ素樹脂テープ)と、テープの外周を囲うように設けられたシールドと、シールドの外周を囲うように設けられたシースと、を有し、外径が4mmである丸型の耐屈曲ケーブルを5本用意した。5本のケーブルをそれぞれ並列して配置し、隣接するケーブルの外層(シース)同士をそれぞれ熱風融着により接合し、高さが4mm、幅が19mm程度の複数本のケーブルの束(以下、これをフラットケーブルともいう)を形成した。
【0047】
また、上記フラットケーブルを挿通可能な挿通孔を備え、伸縮性を有する編組スリーブを形成した。具体的には、フラットケーブルを挿通した際に複数本のフラットケーブルをその並列配置方向から締め付けることができる大きさ(長径が18mmである長円状)に形成された挿通孔を有し、PTFE繊維で形成した編物からなる内層とナイロン繊維で形成した編物からなる外層との2層を備え、幅が23mmである多層構造(多層構造編物)の編組スリーブを形成した。そして、編組スリーブが所定長さになるように、レーザにより編組スリーブを構成する繊維を焼き切って切断しつつ、編組スリーブの両端の繊維糸同士を融着させた。
【0048】
フラットケーブルを、編組スリーブが有する挿通孔内に挿通させた後、編組スリーブの両端が露出しないように編組スリーブの両端部を内側に折り曲げ、折り曲げ部をクランプを用いて接合した。これにより、高さ(厚さ)が6mmで、幅が21mmであるケーブルユニットを形成した。なお、編組スリーブの幅がケーブルユニットの幅よりも長くなっているのは、挿通孔内にフラットケーブルを挿通することで、挿通孔の短径が挿通孔内にフラットケーブルを挿通していない状態に比べて大きくなるためである。
【0049】
形成したケーブルユニットをU字状に折り曲げ、ケーブルガイドの一端を固定して固定端とし、他端を金属チューブの並列方向と直交する方向に可動する半導体等の製造ラインにおける搬送機械等の可動部に固定して移動端とし、ケーブルユニットを半導体等の製造ライン上の搬送機械等の可動部に敷設(配設)した。
【0050】
ケーブルユニットは、ケーブルベア(登録商標)を用いなくても最大L=1.0mの移動距離(直線部)で垂れ下がることがないことを確認した。つまり、ケーブルユニットは、ケーブルベア(登録商標)を用いることなく半導体等の製造ラインにおける搬送機械等の可動部に配設することができることを確認した。
【0051】
また、ケーブルユニットを動かした際、ケーブルベア(登録商標)を用いた場合に比べて、ケーブルの摩耗等による粉塵の発生を抑制することができることを確認した。つまり、フラットケーブルを編組スリーブが有する挿通孔内に挿通した際に編組スリーブによって挿通孔内のフラットケーブルが締め付けられることで、ケーブルユニットを動かした場合であっても、ケーブルが挿通孔内で動くことを抑制できることを確認した。これにより、ケーブルが挿通孔内で動くことでケーブルと編組スリーブとが擦れることを抑制でき、その結果ケーブルの摩耗等による粉塵の発生を抑制することができることを確認した。また、編組スリーブの内層(ケーブルと接触する編組スリーブの箇所)を低摩耗性を有するPTFE繊維で形成することで、ケーブルユニットを動かした際にケーブルが挿通孔内で動き、ケーブルと編組スリーブとが擦れた場合であっても、ケーブルの摩耗等による粉塵の発生をより抑制することができることを確認した。さらにまた、編組スリーブを多層構造とすることで、粉塵が発生した場合であっても、発生した粉塵を層間に形成された袋状の空間部に収容することができ、粉塵がケーブルユニットの外部へ漏れ出ることを抑制できることを確認した。
【0052】
移動端を所定方向(金属チューブの並列方向と直交する方向)に、曲げ半径36mm(ケーブルの外径の6倍)、折り返し速度30回/分、移動距離1.0mの条件で往復動させるように動かした。そして、ケーブルユニットの移動端を1000万回以上往復動させても、つまりケーブルユニットを1000万回以上U字屈曲させても、ケーブルユニットは破損することがないことを確認した。つまり、ケーブルユニットは充分な柔軟性、可撓性、耐U字屈曲性を有することを確認した。
【0053】
<本発明の好ましい態様>
以下に、本発明の好ましい態様について付記する。
【0054】
[付記1]
本発明の一態様によれば、
複数本のケーブルと、
複数本の前記ケーブルが挿通可能に形成された挿通孔を備える編組スリーブと、を有し、
前記編組スリーブは伸縮性を有する編物で形成されており、
前記編組スリーブは、前記挿通孔内に挿通された複数本の前記ケーブルを締め付けているケーブルユニットが提供される。
【0055】
[付記2]
付記1のケーブルユニットであって、好ましくは、
前記編組スリーブは、多層構造を有している。
【0056】
[付記3]
付記2のケーブルユニットであって、好ましくは、
前記編組スリーブの各層はそれぞれ、前記各層がそれぞれ有する編み目の交点の位置が互いに重ならないように設けられている。
【0057】
[付記4]
付記1ないし3のいずれかのケーブルユニットであって、好ましくは、
前記編組スリーブの最内層はフッ素樹脂からなる繊維で形成されている。
【0058】
[付記5]
付記1ないし4のいずれかのケーブルユニットであって、好ましくは、
前記編組スリーブの外周側部には、フッ素樹脂からなる繊維で形成された層が設けられている。
【0059】
[付記6]
付記1ないし5のいずれかのケーブルユニットであって、好ましくは、
少なくとも一端が複数本の前記ケーブルの並列方向と直交する方向に可動する可動部に固定される。
【符号の説明】
【0060】
10 ケーブルユニット
11 ケーブル
12 編組スリーブ
12a 挿通孔
図1
図2