特許第6569920号(P6569920)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6569920
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】α−シヌクレイン発現抑制剤
(51)【国際特許分類】
   C07H 21/02 20060101AFI20190826BHJP
   A61K 31/712 20060101ALI20190826BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20190826BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20190826BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20190826BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20190826BHJP
【FI】
   C07H21/02CSP
   A61K31/712
   A61P25/16
   A61P25/28
   A61P43/00 111
   C12N15/113ZNA
【請求項の数】15
【全頁数】39
(21)【出願番号】特願2017-560417(P2017-560417)
(86)(22)【出願日】2017年1月5日
(86)【国際出願番号】JP2017000185
(87)【国際公開番号】WO2017119463
(87)【国際公開日】20170713
【審査請求日】2018年7月5日
(31)【優先権主張番号】特願2016-2103(P2016-2103)
(32)【優先日】2016年1月7日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(73)【特許権者】
【識別番号】504179255
【氏名又は名称】国立大学法人 東京医科歯科大学
(73)【特許権者】
【識別番号】505314022
【氏名又は名称】国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100182084
【弁理士】
【氏名又は名称】中道 佳博
(74)【代理人】
【識別番号】100207136
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 有希
(72)【発明者】
【氏名】中森 雅之
(72)【発明者】
【氏名】望月 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】小比賀 聡
(72)【発明者】
【氏名】横田 隆徳
(72)【発明者】
【氏名】永田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】笠原 勇矢
【審査官】 三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2014−501507(JP,A)
【文献】 特表2007−528367(JP,A)
【文献】 特表2015−536927(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/052436(WO,A1)
【文献】 特開2011−155914(JP,A)
【文献】 特表2002−516256(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/046212(WO,A1)
【文献】 張 功幸 他,新規6員環架橋型チミジンを含むオリゴ核酸の合成および機能評価,第44回複素環化学討論会講演要旨集,2014年,pp.21-22
【文献】 大澤昴志 他,新規六員環架橋型核酸の合成およびその物性評価,第40回反応と合成の進歩シンポジウム講演要旨集,2014年,p.122
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07H 1/00− 99/00
A61K 31/33− 33/44
A61P 1/00− 43/00
C12N 15/113
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(I)で表されるヌクレオシド構造:
【化1】
を少なくとも1つ含むオリゴヌクレオチドまたはその薬理学上許容される塩であって、
ここで、
Baseは、α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよいプリン−9−イル基、またはα群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよい2−オキソ−1,2−ジヒドロピリミジン−1−イル基を表し、ここで、該α群は、水酸基、核酸合成の保護基で保護された水酸基、炭素数1から6の直鎖アルキル基、炭素数1から6の直鎖アルコキシ基、メルカプト基、核酸合成の保護基で保護されたメルカプト基、炭素数1から6の直鎖アルキルチオ基、アミノ基、炭素数1から6の直鎖アルキルアミノ基、核酸合成の保護基で保護されたアミノ基、およびハロゲン原子からなり、
Aは、以下:
【化2】
で表される二価の基であり、
は、水素原子、分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基、分岐または環を形成していてもよい炭素数2から7のアルケニル基、該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよくそしてヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から12のアリール基、該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよくそしてヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から12のアリール部分を有するアラルキル基、または核酸合成のアミノ基の保護基を表し;
およびRは、それぞれ独立して、水素原子;ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から12のアリール基で置換されていてもよく、かつ分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基;またはヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から12のアリール部分を有するアラルキル基;であるか、あるいは
およびRは一緒になって、−(CH−[式中、qは2から5の整数である]を表し;
およびRは、それぞれ独立して、水素原子;水酸基;分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基;分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルコキシ基;アミノ基;および核酸合成の保護基で保護されたアミノ基;からなる群から選択される基であるか、あるいは、RおよびRは一緒になって、=C(R11)R12[式中、R11およびR12は、それぞれ独立して、水素原子、水酸基、核酸合成の保護基で保護された水酸基、メルカプト基、核酸合成の保護基で保護されたメルカプト基、アミノ基、炭素数1から6の直鎖または分岐鎖アルコキシ基、炭素数1から6の直鎖または分岐鎖アルキルチオ基、炭素数1から6のシアノアルコキシ基、または炭素数1から6の直鎖または分岐鎖アルキルアミノ基を表す]であり;
およびRは、それぞれ独立して、水素原子、分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基、分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルコキシ基、または炭素数1から6の直鎖または分岐鎖アルキルチオ基であり;
は、水素原子、分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基、分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルコキシ基、または炭素数1から6の直鎖または分岐鎖アルキルチオ基を表し;
は、水素原子、水酸基、分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基、分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルコキシ基、アミノ基、あるいは核酸合成の保護基で保護されたアミノ基であり;
10は、水素原子またはグアニジノ基であり;
13およびR14は、それぞれ独立して、水素原子;水酸基;分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基;分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルコキシ基;アミノ基;および核酸合成の保護基で保護されたアミノ基;からなる群から選択される基であり;
mは、0から2の整数であり;
nは、0から1の整数であり;
10が水素原子の場合、pは1であり、R10がグアニジノ基の場合、pは0であり;
Xは、酸素原子、硫黄原子、またはアミノ基であり;そして
Yは酸素原子または硫黄原子であり、
ここで、該オリゴヌクレオチドが、α−シヌクレイン遺伝子と結合し得、該α−シヌクレイン遺伝子の発現を抑制する活性を有し、そして該α−シヌクレイン遺伝子と相補的であり、
該オリゴヌクレオチドの長さが、12〜20塩基であり、そして
該オリゴヌクレオチドが、配列番号1の99位〜123位の塩基配列からなる標的領域と結合し得、そして該標的領域の少なくとも一部と相補的であり、ここで該一部が、12〜20塩基長の領域である、
オリゴヌクレオチドまたはその薬理学上許容される塩。
【請求項3】
前記標的領域の3’末端が、配列番号1の塩基配列の118位、121位または123位である、請求項1に記載のオリゴヌクレオチドまたはその薬理学上許容される塩。
【請求項4】
(a)配列番号3に示される塩基配列の一部からなる塩基配列、または、
(b)該(a)の塩基配列に対して1または2個の塩基が欠失、置換、付加、または挿入された塩基配列
を有する、請求項1に記載のオリゴヌクレオチドまたはその薬理学上許容される塩。
【請求項5】
前記(b)が、前記(a)の塩基配列に対して1個の塩基が欠失、置換、付加、または挿入された塩基配列である、請求項4に記載のオリゴヌクレオチドまたはその薬理学上許容される塩。
【請求項6】
前記オリゴヌクレオチドの5’末端が、配列番号3の1番目、3番目、または6番目の塩基である請求項4または5に記載のオリゴヌクレオチドまたはその薬理学上許容される塩。
【請求項8】
前記オリゴヌクレオチドが、6〜10塩基のギャップ領域、3〜5塩基の5’ウイングおよび3〜5塩基の3’ウイングからなるギャップマーであり、
該ギャップ領域が、該5’ウイングと該3’ウイングの間に位置づけられ、そして
該5’ウイングおよび該3’ウイングが、少なくとも1つの前記式(I)で表されるヌクレオシド構造を含む、
請求項1および3から6のいずれかに記載のオリゴヌクレオチドまたはその薬理学上許容される塩。
【請求項9】
前記ギャップ領域が、8〜10塩基からなり、前記5’ウイングおよび前記3’ウイングは、各々3塩基からなり、該5’ウイングおよび該3’ウイングは、各々少なくとも2つの前記式(I)で表されるヌクレオシド構造を含む、請求項8に記載のオリゴヌクレオチドまたはその薬理学上許容される塩。
【請求項10】
前記式(I)で表されるヌクレオシド構造が、
【化3】
で表される構造である、請求項1および3から6および8から9のいずれかに記載のオリゴヌクレオチドまたはその薬理学上許容される塩。
【請求項11】
前記式(I)で表されるヌクレオシド構造が、前記式(I’)で表される構造であり、そして該式(I’)において、前記mが0であり、そして前記Rが、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、フェニル基、またはベンジル基である、請求項10に記載のオリゴヌクレオチドまたはその薬理学上許容される塩。
【請求項12】
請求項1および3から6および8から11および16のいずれかに記載のオリゴヌクレオチドまたはその薬理学上許容される塩を有効成分として含有する、α−シヌクレイン発現抑制剤。
【請求項13】
請求項1および3から6および8から11および16のいずれかに記載のオリゴヌクレオチドまたはその薬理学上許容される塩を有効成分として含有する医薬組成物。
【請求項14】
α−シヌクレイン過剰症の治療または予防に用いられる、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
パーキンソン病またはレビー小体型認知症の治療または予防に用いられる、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記Rがメチル基であり、かつ前記オリゴヌクレオチドが配列番号11、15または16に示される塩基配列からなる、請求項11に記載のオリゴヌクレオチドまたはその薬理学上許容される塩。
【請求項17】
請求項16に記載のオリゴヌクレオチドまたはその薬理学上許容される塩を有効成分として含有し、かつ脳室内投与または髄腔内投与に用いられる、α−シヌクレイン発現抑制剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、α−シヌクレイン発現抑制剤、より詳細には、人工核酸を用いたα−シヌクレイン発現抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
パーキンソン病(PD)は、孤発性パーキンソン病および遺伝性パーキンソン病に分類され得る。
【0003】
孤発性パーキンソン病は、進行性の神経変性疾患で有病率は1000人に1人であり、進行すると認知症を合併する。このような認知証はレビー小体型認知症であり、その治療は対症療法のみである。これは、脳内のα−シヌクレインの凝集・蓄積が原因とされる。
【0004】
遺伝性パーキンソン病は、パーキンソン病のうち5〜10%であり、病因遺伝子PARK1〜PARK20のうちPARK4遺伝子の関与が考えられている。PARK4遺伝子が関与する遺伝性パーキンソン病は常染色体優性遺伝を示し、そのような患者は日本には数十人存在する。PARK4遺伝子が関与する遺伝性パーキンソン病では正常α−シヌクレイン遺伝子が過剰となり、パーキンソン症状に認知症を合併することとなる。
【0005】
α−シヌクレインは、140アミノ酸残基からなるタンパク質であり、特有の天然構造を持たないアミロイドタンパク質である。α−シヌクレインは、シナプス小胞蓄積・放出に関連する。α−シヌクレインノックアウト(KO)マウスは、病理学的にも異常なしであり、神経毒のMPTP(1−メチル−4−フェニル−1,2,3,6−テトラヒドロピリジン)に対する神経保護作用を示し得る。
【0006】
α−シヌクレインは、パーキンソン病、レビー小体型認知症(DLB)など疾患におけるレビー小体の主成分である。PD剖検脳解析ブラークのステージ分類のため、剖検脳のα−シヌクレイン染色を行い、病気の進展とα−シヌクレイン病変とを対比したところ、神経細胞内のα−シヌクレイン凝集が病変の主体であることが判明している。また、α−シヌクレイントランスジェニック(Tg)マウスにα−シヌクレインフィブリルを投与したところ、このフィブリルを核に病変が伸展し、細胞外にも異常α−シヌクレインがみられるようになった(プリオン様細胞外伝播)。
【0007】
パーキンソン病の病態は次のとおりである。神経細胞内で異常α−シヌクレインが凝集することにより、中脳の黒質神経細胞が変性し、ドパミンの産生が低下し、そして運動機能障害または認知機能障害を引き起こす。従来の対症的治療法では、神経変性は徐々に進行し、ドパミン産生低下に対して、ドパミン補充のためL−ドパ製剤の投与またはドパミン分泌促進のためドパミンアゴニストの投与が行われていた。
【0008】
神経細胞内の異常α−シヌクレインの凝集を標的にして、α−シヌクレインノックダウンのための核酸医薬を用いる試みがなされている。
【0009】
過剰α−シヌクレインを抑制するための核酸医薬に関して、アデノ随伴ウイルス(AAV)リボザイムのラットでの使用(非特許文献1)、レンチウイルス−shRNAのラットでの使用(非特許文献2)、AAV−shRNAのラットでの使用(非特許文献3および4)、ネイキッドsiRNAのマウスでの使用(非特許文献5)、エキソソームsiRNAのマウスでの使用(非特許文献6)、siRNA(2−O−Me)のサルでの使用(非特許文献7)が報告されている。しかし、非特許文献1〜4ではウイルスを使用しており、非特許文献5および6では効果が早期に消失し、そして非特許文献7では効果が充分でないという問題点がある。
【0010】
また、α−シヌクレイン遺伝子の発現抑制のために、人工核酸の使用が報告されている(特許文献1)。特許文献1では、2’−O−メトキシエチル(MOE)で修飾されたヌクレオシドが用いられている。また、特許文献1においては、オリゴヌクレオチドは、線条体内ボーラス注射を介して注射投与されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特表2014−501507号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Kinoh et al. BBRC, 2006,vol. 341, pp.1088−95
【非特許文献2】Sapru et al. Exp Neurol, 2006,vol. 198, pp.382−90
【非特許文献3】Gorbatyuk et al. Mol Ther, 2010,vol. 18, pp.1450−7
【非特許文献4】Khodr et al. Brain Res, 2011,vol. 1395, pp.94−107
【非特許文献5】Lewis et al. Mol Neurodegener, 2008,vol. 3, pp.19
【非特許文献6】Cooper et al. Mov Disord, 2014,vol. 29, pp.1476−85
【非特許文献7】McCormack et al. PLoS One, 2010,vol. 5, pp.e12122
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記課題を解決するものであり、その目的とするところは、α−シヌクレインの発現抑制について、より高い効果およびより長い持続性を有する核酸医薬を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、以下の式(I)で表されるヌクレオシド構造:
【0015】
【化1】
【0016】
を少なくとも1つ含むオリゴヌクレオチドまたはその薬理学上許容される塩であって、
ここで、
Baseは、α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよいプリン−9−イル基、またはα群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよい2−オキソ−1,2−ジヒドロピリミジン−1−イル基を表し、ここで、該α群は、水酸基、核酸合成の保護基で保護された水酸基、炭素数1から6の直鎖アルキル基、炭素数1から6の直鎖アルコキシ基、メルカプト基、核酸合成の保護基で保護されたメルカプト基、炭素数1から6の直鎖アルキルチオ基、アミノ基、炭素数1から6の直鎖アルキルアミノ基、核酸合成の保護基で保護されたアミノ基、およびハロゲン原子からなり、
Aは、以下:
【0017】
【化2】
【0018】
で表される二価の基であり、
は、水素原子、分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基、分岐または環を形成していてもよい炭素数2から7のアルケニル基、該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよくそしてヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から12のアリール基、該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよくそしてヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から12のアリール部分を有するアラルキル基、または核酸合成のアミノ基の保護基を表し;
およびRは、それぞれ独立して、水素原子;ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から12のアリール基で置換されていてもよく、かつ分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基;またはヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から12のアリール部分を有するアラルキル基;であるか、あるいは
およびRは一緒になって、−(CH−[式中、qは2から5の整数である]を表し;
およびRは、それぞれ独立して、水素原子;水酸基;分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基;分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルコキシ基;アミノ基;および核酸合成の保護基で保護されたアミノ基;からなる群から選択される基であるか、あるいは、RおよびRは一緒になって、=C(R11)R12[式中、R11およびR12は、それぞれ独立して、水素原子、水酸基、核酸合成の保護基で保護された水酸基、メルカプト基、核酸合成の保護基で保護されたメルカプト基、アミノ基、炭素数1から6の直鎖または分岐鎖アルコキシ基、炭素数1から6の直鎖または分岐鎖アルキルチオ基、炭素数1から6のシアノアルコキシ基、または炭素数1から6の直鎖または分岐鎖アルキルアミノ基を表す]であり;
およびRは、それぞれ独立して、水素原子、分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基、分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルコキシ基、または炭素数1から6の直鎖または分岐鎖アルキルチオ基であり;
は、水素原子、分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基、分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルコキシ基、または炭素数1から6の直鎖または分岐鎖アルキルチオ基を表し;
は、水素原子、水酸基、分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基、分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルコキシ基、アミノ基、あるいは核酸合成の保護基で保護されたアミノ基であり;
10は、水素原子またはグアニジノ基であり;
13およびR14は、それぞれ独立して、水素原子;水酸基;分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基;分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルコキシ基;アミノ基;および核酸合成の保護基で保護されたアミノ基;からなる群から選択される基であり;
mは、0から2の整数であり;
nは、0から1の整数であり;
10が水素原子の場合、pは1であり、R10がグアニジノ基の場合、pは0であり;
Xは、酸素原子、硫黄原子、またはアミノ基であり;そして
Yは酸素原子または硫黄原子であり、
ここで、該オリゴヌクレオチドが、α−シヌクレイン遺伝子と結合し得、該α−シヌクレイン遺伝子の発現を抑制する活性を有し、そして該α−シヌクレイン遺伝子と相補的であり、そして
該オリゴヌクレオチドの長さが、12〜20塩基である、オリゴヌクレオチドを提供する。
【0019】
1つの実施形態では、上記オリゴヌクレオチドは、配列番号1の99位〜123位の塩基配列からなる標的領域と結合し得、そして該標的領域の少なくとも一部と相補的であり、ここで該一部は、12〜20塩基長の領域である。
【0020】
1つの実施形態では、上記標的領域の3’末端は、配列番号1の塩基配列の118位、121位または123位である。
【0021】
1つの実施形態では、上記オリゴヌクレオチドは、(a)配列番号3に示される塩基配列の一部からなる塩基配列、または、(b)該(a)の塩基配列に対して1または2個の塩基が欠失、置換、付加、または挿入された塩基配列を有する。
【0022】
さらなる実施形態では、上記(b)は、上記(a)の塩基配列に対して1個の塩基が欠失、置換、付加、または挿入された塩基配列である。
【0023】
1つの実施形態では、上記オリゴヌクレオチドの5’末端が、配列番号3の1番目、3番目、または6番目の塩基である。
【0024】
1つの実施形態では、上記オリゴヌクレオチドは15〜18塩基長である。
【0025】
1つの実施形態では、上記オリゴヌクレオチドは、6〜10塩基のギャップ領域、3〜5塩基の5’ウイングおよび3〜5塩基の3’ウイングからなるギャップマーであり、
該ギャップ領域が、該5’ウイングと該3’ウイングの間に位置づけられ、そして
該5’ウイングおよび該3’ウイングが、少なくとも1つの前記式(I)で表されるヌクレオシド構造を含む。
【0026】
さらなる実施形態では、上記ギャップ領域が、8〜10塩基からなり、上記5’ウイングおよび上記3’ウイングは、各々3塩基からなり、該5’ウイングおよび該3’ウイングは、各々少なくとも2つの上記式(I)で表されるヌクレオシド構造を含む。
【0027】
1つの実施形態では、上記式(I)で表されるヌクレオシド構造は、
【0028】
【化3】
【0029】
で表される構造である。
【0030】
1つの実施形態では、上記式(I)で表されるヌクレオシド構造は、前記式(I’)で表される構造であり、そして該式(I’)において、前記mは0であり、そして前記Rは、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、フェニル基、またはベンジル基である。
【0031】
本発明はまた、上記オリゴヌクレオチドまたはその薬理学上許容される塩を有効成分として含有する、α−シヌクレイン発現抑制剤を提供する。
【0032】
さらに、本発明は、上記オリゴヌクレオチドまたはその薬理学上許容される塩を有効成分として含有する医薬組成物を提供する。
【0033】
1つの実施形態では、上記医薬組成物は、α−シヌクレイン過剰症の治療または予防に用いられる。
【0034】
1つの実施形態では、上記医薬組成物は、パーキンソン病またはレビー小体型認知症の治療または予防に用いられる。
【0035】
さらに、本発明は、α−シヌクレイン発現抑制方法であって、上記オリゴヌクレオチドまたはその薬理学上許容される塩を個体に投与する工程を含む、方法を提供する。
【0036】
さらに、本発明は、α−シヌクレイン過剰症の治療または予防方法であって、上記オリゴヌクレオチドまたはその薬理学上許容される塩を個体に投与する工程を含む、方法を提供する。
【0037】
なおさらに、本発明は、パーキンソン病またはレビー小体型認知症の治療または予防方法であって、上記オリゴヌクレオチドまたはその薬理学上許容される塩を個体に投与する工程を含む、方法を提供する。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、α−シヌクレインの発現抑制効果および持続性を有するオリゴヌクレオチドが提供される。本発明によれば、臨床応用時に通常用いられる投与経路である髄腔内投与においても、オリゴヌクレオチドのα−シヌクレイン抑制効果が発揮され得る。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】実施例3におけるHEK293T細胞に対するアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)のトランスフェクション後のmRNA量を示すグラフである。
図2】実施例4におけるHEK293T細胞に対するアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)のトランスフェクション後のmRNA量を示すグラフである。
図3】実施例5におけるHEK293T細胞に対するアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)のトランスフェクション後のmRNA量を示すグラフである。
図4】実施例6におけるSNCA Tgマウスへのアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)投与後の黒質(a)および線条体(b)におけるmRNA量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0040】
まず、本明細書中で用いられる用語を定義する。
【0041】
本明細書において、用語「炭素数1から6の直鎖アルキル基」は、炭素数1から6の任意の直鎖アルキル基をいい、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、またはn−ヘキシル基をいう。
【0042】
本明細書において、用語「炭素数1から6の直鎖アルコキシ基」は、炭素数1から6の任意の直鎖アルキル基を有するアルコキシ基を包含する。例えば、メチルオキシ基、エチルオキシ基、n−プロピルオキシ基などが挙げられる。本明細書において、用語「炭素数1から6の直鎖または分岐鎖アルコキシ基」は、炭素数1から6の任意の直鎖または分岐鎖アルキル基を有するアルコキシ基を包含する。例えば、メチルオキシ基、エチルオキシ基、n−プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ基、n−ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基などが挙げられる。
【0043】
本明細書において、用語「炭素数1から6の直鎖アルキルチオ基」は、炭素数1から6の任意の直鎖アルキル基を有するアルキルチオ基を包含する。例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基などが挙げられる。本明細書において、用語「炭素数1から6の直鎖または分岐鎖アルキルチオ基」は、炭素数1から6の任意の直鎖または分岐鎖アルキル基を有するアルキルチオ基を包含する。例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、n−ブチルチオ基、イソブチルチオ基、tert−ブチルチオ基、n−ペンチルチオ基、イソペンチルチオ基などが挙げられる。
【0044】
本明細書において、用語「炭素数1から6のシアノアルコキシ基」は、上記炭素数1から6の直鎖アルコキシ基を構成する少なくとも1つの水素原子がシアノ基で置換された基をいう。
【0045】
本明細書において、用語「炭素数1から6の直鎖アルキルアミノ基」は、アミノ基を構成する水素原子の1つまたは2つが、炭素数1から6の直鎖アルキル基で置換された基を包含する。例えば、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、メチルエチルアミノ基、ジエチルアミノ基などが挙げられる。本明細書において、用語「炭素数1から6の直鎖または分岐鎖アルキルアミノ基」は、アミノ基を構成する水素原子の1つまたは2つが、炭素数1から6の任意の直鎖または分岐鎖アルキル基で置換された基を包含する。例えば、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、メチルエチルアミノ基、ジエチルアミノ基、n−プロピルアミノ基、ジn−プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基などが挙げられる。
【0046】
本明細書において、用語「分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基」は、炭素数1から7の任意の直鎖アルキル基、炭素数3から7の任意の分岐鎖アルキル基、および炭素数3から7の任意の環状アルキル基を包含する。単に、「低級アルキル基」という場合もある。例えば、炭素数1から7の任意の直鎖アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、およびn−ヘプチル基が挙げられ、炭素数3から7の任意の分岐鎖アルキル基としては、イソプロピル基、イソブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基などが挙げられ、そして炭素数3から7の任意の環状アルキル基としては、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。
【0047】
本明細書において、用語「分岐または環を形成していてもよい炭素数2から7のアルケニル基」は、炭素数2から7の任意の直鎖アルケニル基、炭素数3から7の任意の分岐鎖アルケニル基、および炭素数3から7の任意の環状アルケニル基を包含する。単に、「低級アルケニル基」という場合もある。例えば、炭素数2から7の任意の直鎖アルケニル基としては、エテニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基、1−ヘキセニル基などが挙げられ、炭素数3から7の任意の分岐鎖アルケニル基としては、イソプロペニル基、1−メチル−1−プロペニル基、1−メチル−2−プロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、2−メチル−2−プロペニル基、1−メチル−2−ブテニル基などが挙げられ、そして炭素数3から7の任意の環状アルケニル基としては、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基などが挙げられる。
【0048】
本明細書において、用語「分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルコキシ基」は、炭素数1から7の任意の直鎖アルコキシ基、炭素数3から7の任意の分岐鎖アルコキシ基、および炭素数3から7の任意の環状アルコキシ基を包含する。単に、「低級アルコキシ基」という場合もある。例えば、炭素数1から7の任意の直鎖アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブチロキシ、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、およびn−ヘプチルオキシ基が挙げられ、炭素数3から7の任意の分岐鎖アルコキシ基としては、イソプロポキシ基、イソブチロキシ基、tert−ブチロキシ基、イソペンチルオキシ基などが挙げられ、そして炭素数3から7の任意の環状アルコキシ基としては、シクロブチロキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基などが挙げられる。
【0049】
本明細書において、用語「ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から12のアリール基」は、炭化水素のみで構成された、炭素数6から12の任意のアリール基と、当アリール基の環構造を構成する少なくとも1つの炭素原子がヘテロ原子(例えば、窒素原子、酸素原子、および硫黄原子、ならびにこれらの組合せ)で置換された、炭素数3から12の任意のヘテロアリール基とを包含する。当該炭素数6から12のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、インデニル基、アズレニル基などが挙げられ、そして当該炭素数3から12の任意のヘテロアリール基としては、ピリジル基、ピロリル基、キノリル基、インドリル基、イミダゾリル基、フリル基、チエニル基などが挙げられる。
【0050】
本明細書において、用語「ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から12のアリール部分を有するアラルキル基」の例としては、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、3−フェニルプロピル基、2−フェニルプロピル基、4−フェニルブチル基、2−フェニルブチル基、ピリジルメチル基、インドリルメチル基、フリルメチル基、チエニルメチル基、ピロリルメチル基、2−ピリジルエチル基、1−ピリジルエチル基、3−チエニルプロピル基などが挙げられる。
【0051】
本明細書において、用語「アシル基」の例としては、脂肪族アシル基および芳香族アシル基が挙げられる。具体的には、脂肪族アシル基の例としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ペンタノイル基、ピバロイル基、バレリル基、イソバレリル基、オクタノイル基、ノナノイル基、デカノイル基、3−メチルノナノイル基、8−メチルノナノイル基、3−エチルオクタノイル基、3,7−ジメチルオクタノイル基、ウンデカノイル基、ドデカノイル基、トリデカノイル基、テトラデカノイル基、ペンタデカノイル基、ヘキサデカノイル基、1−メチルペンタデカノイル基、14−メチルペンタデカノイル基、13,13−ジメチルテトラデカノイル基、ヘプタデカノイル基、15−メチルヘキサデカノイル基、オクタデカノイル基、1−メチルヘプタデカノイル基、ノナデカノイル基、アイコサノイル基およびヘナイコサノイル基のようなアルキルカルボニル基;スクシノイル基、グルタロイル基、アジポイル基のようなカルボキシ化アルキルカルボニル基;クロロアセチル基、ジクロロアセチル基、トリクロロアセチル基、トリフルオロアセチル基のようなハロゲノ低級アルキルカルボニル基;メトキシアセチル基のような低級アルコキシ低級アルキルカルボニル基;(E)−2−メチル−2−ブテノイル基のような不飽和アルキルカルボニル基が挙げられる。また、芳香族アシル基の例としては、ベンゾイル基、α−ナフトイル基、β−ナフトイル基のようなアリールカルボニル基;2−ブロモベンゾイル基、4−クロロベンゾイル基のようなハロゲノアリールカルボニル基;2,4,6−トリメチルベンゾイル基、4−トルオイル基のような低級アルキル化アリールカルボニル基;4−アニソイル基のような低級アルコキシ化アリールカルボニル基;2−カルボキシベンゾイル基、3−カルボキシベンゾイル基、4−カルボキシベンゾイル基のようなカルボキシ化アリールカルボニル基;4−ニトロベンゾイル基、2−ニトロベンゾイル基のようなニトロ化アリールカルボニル基;2−(メトキシカルボニル)ベンゾイル基のような低級アルコキシカルボニル化アリールカルボニル基;4−フェニルベンゾイル基のようなアリール化アリールカルボニル基などが挙げられる。好適には、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ペンタノイル基、ピバロイル基、ベンゾイル基である。
【0052】
本明細書において、用語「シリル基」の例としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、イソプロピルジメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、メチルジイソプロピルシリル基、メチルジ−t−ブチルシリル基、トリイソプロピルシリル基のようなトリ低級アルキルシリル基;ジフェニルメチルシリル基、ブチルジフェニルブチルシリル基、ジフェニルイソプロピルシリル基、フェニルジイソプロピルシリル基のような1〜2個のアリール基で置換されたトリ低級アルキルシリル基などが挙げられる。好適には、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、t−ブチルジフェニルシリル基であり、さらに好適にはトリメチルシリル基である。
【0053】
本明細書において、用語「ハロゲン原子」としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子が挙げられる。好適には、フッ素原子または塩素原子である。
【0054】
本明細書において、用語「核酸合成のアミノ基の保護基」、「核酸合成の水酸基の保護基」、「核酸合成の保護基で保護された水酸基」、「核酸合成の保護基で保護されたリン酸基」、「核酸合成の保護基で保護されたメルカプト基」の「保護基」とは、核酸合成の際に安定してアミノ基、水酸基、リン酸基またはメルカプト基を保護し得るものであれば、特に制限されない。具体的には、酸性または中性条件で安定であり、加水素分解、加水分解、電気分解、および光分解のような化学的方法により開裂し得る保護基のことをいう。このような保護基としては、例えば、低級アルキル基、低級アルケニル基、アシル基、テトラヒドロピラニルまたはテトラヒドロチオピラニル基、テトラヒドロフラニルまたはテトラヒドロチオフラニル基、シリル基、低級アルコキシメチル基、低級アルコキシ化低級アルコキシメチル基、ハロゲノ低級アルコキシメチル基、低級アルコキシ化エチル基、ハロゲン化エチル基、1〜3個のアリール基で置換されたメチル基、「低級アルキル基、低級アルコキシ基、ハロゲン原子またはシアノ基でアリール環が置換された1〜3個のアリール基で置換されたメチル基」、低級アルコキシカルボニル基、「ハロゲン原子、低級アルコキシ基またはニトロ基で置換されたアリール基」、「ハロゲン原子またはトリ低級アルキルシリル基で置換された低級アルコキシカルボニル基」、アルケニルオキシカルボニル基、「低級アルコキシまたはニトロ基でアリール環が置換されていてもよいアラルキルオキシカルボニル基」、「シアノ基で置換された低級アルコキシカルボニル基」、「1〜4個のニトロ基で置換されたベンゼンスルホニル基」などが挙げられる。
【0055】
より具体的には、テトラヒドロピラニル基またはテトラヒドロチオピラニル基としては、テトラヒドロピラン−2−イル基、3−ブロモテトラヒドロピラン−2−イル基、4−メトキシテトラヒドロピラン−4−イル基、テトラヒドロチオピラン−4−イル基、4−メトキシテトラヒドロチオピラン−4−イル基などが挙げられる。テトラヒドロフラニル基またはテトラヒドロチオフラニル基としては、テトラヒドロフラン−2−イル基、テトラヒドロチオフラン−2−イル基が挙げられる。低級アルコキシメチル基としては、メトキシメチル基、1,1−ジメチル−1−メトキシメチル基、エトキシメチル基、プロポキシメチル基、イソプロポキシメチル基、ブトキシメチル基、t−ブトキシメチル基などが挙げられる。低級アルコキシ化低級アルコキシメチル基としては、2−メトキシエトキシメチル基などが挙げられる。ハロゲノ低級アルコキシメチル基としては、2,2,2−トリクロロエトキシメチル基、ビス(2−クロロエトキシ)メチル基などが挙げられる。低級アルコキシ化エチル基としては、1−エトキシエチル基、1−(イソプロポキシ)エチル基などが挙げられる。ハロゲン化エチル基としては、2,2,2−トリクロロエチル基などが挙げられる。1〜3個のアリール基で置換されたメチル基としては、ベンジル基、α−ナフチルメチル基、β−ナフチルメチル基、ジフェニルメチル基、トリフェニルメチル基、α−ナフチルジフェニルメチル基、9−アンスリルメチル基などが挙げられる。「低級アルキル基、低級アルコキシ基、ハロゲン原子またはシアノ基でアリール環が置換された1〜3個のアリール基で置換されたメチル基」としては、4−メチルベンジル基、2,4,6−トリメチルベンジル基、3,4,5−トリメチルベンジル基、4−メトキシベンジル基、4−メトキシフェニルジフェニルメチル基、4,4’−ジメトキシトリフェニルメチル基、2−ニトロベンジル基、4−ニトロベンジル基、4−クロロベンジル基、4−ブロモベンジル基、4−シアノベンジル基などが挙げられる。低級アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基などが挙げられる。「ハロゲン原子、低級アルコキシ基またはニトロ基で置換されたアリール基」としては、4−クロロフェニル基、2−フロロフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−ニトロフェニル基、2,4−ジニトロフェニル基などが挙げられる。「ハロゲン原子またはトリ低級アルキルシリル基で置換された低級アルコキシカルボニル基」としては、2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル基、2−トリメチルシリルエトキシカルボニル基などが挙げられる。アルケニルオキシカルボニル基としては、ビニルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基などが挙げられる。「低級アルコキシまたはニトロ基でアリール環が置換されていてもよいアラルキルオキシカルボニル基」としては、ベンジルオキシカルボニル基、4−メトキシベンジルオキシカルボニル基、3,4−ジメトキシベンジルオキシカルボニル基、2−ニトロベンジルオキシカルボニル基、4−ニトロベンジルオキシカルボニル基などが挙げられる。「シアノ基で置換された低級アルコキシカルボニル基」としては、シアノエトキシカルボニル基などが挙げられる。「1〜4個のニトロ基で置換されたベンゼンスルホニル基」としては、2−ニトロベンゼンスルホニル基、2,4−ジニトロベンゼンスルホニル基などが挙げられる。
【0056】
「核酸合成の水酸基の保護基」としては、好適には、脂肪族アシル基、芳香族アシル基、1〜3個のアリール基で置換されたメチル基、「低級アルキル、低級アルコキシ、ハロゲン、シアノ基でアリール環が置換された1〜3個のアリール基で置換されたメチル基」、またはシリル基であり、さらに好適には、アセチル基、ベンゾイル基、ベンジル基、p−メトキシベンゾイル基、ジメトキシトリチル基、モノメトキシトリチル基またはtert−ブチルジフェニルシリル基である。「核酸合成の保護基で保護された水酸基」の保護基としては、好適には、脂肪族アシル基、芳香族アシル基、「1〜3個のアリール基で置換されたメチル基」、「ハロゲン原子、低級アルコキシ基またはニトロ基で置換されたアリール基」、低級アルキル基、または低級アルケニル基であり、さらに好適には、ベンゾイル基、ベンジル基、2−クロロフェニル基、4−クロロフェニル基または2−プロペニル基である。「核酸合成のアミノ基の保護基」としては、好適には、アシル基であり、さらに好適には、ベンゾイル基である。「核酸合成の保護基で保護されたリン酸基」の「保護基」としては、好適には、低級アルキル基、シアノ基で置換された低級アルキル基、アラルキル基、「ニトロ基またはハロゲン原子でアリール環が置換されたアラルキル基」または「低級アルキル基、ハロゲン原子、またはニトロ基で置換されたアリール基」であり、さらに好適には、2−シアノエチル基、2,2,2−トリクロロエチル基、ベンジル基、2−クロロフェニル基または4−クロロフェニル基である。「核酸合成の保護基で保護されたリン酸基」を構成する保護基は1つまたはそれ以上であり得る。「核酸合成の保護基で保護されたメルカプト基」の「保護基」としては、好適には、脂肪族アシル基または芳香族アシル基であり、さらに好適には、ベンゾイル基である。
【0057】
本明細書において、−P(R24)R25[式中、R24およびR25は、それぞれ独立して、水酸基、核酸合成の保護基で保護された水酸基、メルカプト基、核酸合成の保護基で保護されたメルカプト基、アミノ基、炭素数1から6の直鎖または分岐鎖アルコキシ基、炭素数1から6の直鎖または分岐鎖アルキルチオ基、炭素数1から6のシアノアルコキシ基、または炭素数1から6の直鎖または分岐鎖アルキルアミノ基を表す]で表される基のうち、R24がOR24aそしてR25がNR25aとして表すことができる基は、「ホスホロアミダイト基」という。ホスホロアミダイト基としては、好適には、式−P(OCCN)(N(iPr))で表される基、または式−P(OCH)(N(iPr))で表される基が挙げられる。ここで、iPrはイソプロピル基を表す。
【0058】
本明細書において、用語「ヌクレオシド」は、プリンまたはピリミジン塩基と糖とが結合した「ヌクレオシド」、ならびに、プリンおよびピリミジン以外の芳香族複素環および芳香族炭化水素環でプリンまたはピリミジン塩基との代用が可能なものと糖が結合した「ヌクレオシド」を含む。天然型のヌクレオシドを「天然ヌクレオシド」ともいう。修飾された非天然型のヌクレオシドを「修飾ヌクレオシド」ともいい、特に糖部分が修飾されたヌクレオチドを「糖修飾ヌクレオシド」という。「ヌクレオチド」とは、ヌクレオシドの糖にリン酸基が結合した化合物を意味する。
【0059】
本明細書において、用語「オリゴヌクレオチド」とは、同一または異なる「ヌクレオシド」がリン酸ジエステル結合または他の結合で2〜50個結合した「ヌクレオチド」のポリマーであり、天然型のものと非天然型のものを含む。非天然型の「オリゴヌクレオチド」としては、好適には、糖部分が修飾された糖誘導体;リン酸ジエステル部分がチオエート化されたチオエート誘導体;末端のリン酸部分がエステル化されたエステル体;プリン塩基上のアミノ基がアミド化されたアミド体が挙げられ、さらに好適には、糖部分が修飾された糖誘導体が挙げられる。
【0060】
本明細書において、用語「アンチセンスオリゴヌクレオチド」(AON)とは、標的遺伝子のmRNA、mRNA前駆体またはncRNA(ノンコーディングRNA)に対して相補的なオリゴヌクレオチドをいい、1本鎖のDNA、RNAおよび/またはそれらの類似体から構成される。当該アンチセンスオリゴヌクレオチドが標的とするmRNA、mRNA前駆体またはncRNAと二本鎖を形成することによりmRNA、mRNA前駆体またはncRNAの働きを抑制する。「アンチセンスオリゴヌクレオチド」には、標的となるmRNA、mRNA前駆体またはncRNAと完全に相補的であるものが含まれる。また、mRNA、mRNA前駆体またはncRNAと結合し、かつこれらの働きを抑制することができる限り、1もしくは数個のミスマッチが存在するものも含まれる。DNAまたはRNAの類似体とは、DNAまたはRNAに似た構造を持つ分子を意味する。例えば、ペプチド核酸(PNA)等が挙げられる。ncRNA(ノンコーディングRNA)とは、タンパク質へ翻訳されずに機能するRNAの総称である。例えば、リボソームRNA、転移RNA、miRNA等が挙げられる。
【0061】
本明細書において、用語「その塩」とは、後述の式(II)で表される化合物の塩をいう。そのような塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩のようなアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩のようなアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、鉄塩、亜鉛塩、銅塩、ニッケル塩、コバルト塩などの金属塩;アンモニウム塩のような無機塩、t−オクチルアミン塩、ジベンジルアミン塩、モルホリン塩、グルコサミン塩、フェニルグリシンアルキルエステル塩、エチレンジアミン塩、N−メチルグルカミン塩、グアニジン塩、ジエチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン塩、クロロプロカイン塩、プロカイン塩、ジエタノールアミン塩、N−ベンジル−フェネチルアミン塩、ピペラジン塩、テトラメチルアンモニウム塩、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩のような有機塩等のアミン塩;フッ化水素酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩のようなハロゲン原子化水素酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩、硫酸塩、リン酸塩等の無機酸塩;メタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩のような低級アルカンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩のようなアリールスルホン酸塩、酢酸塩、リンゴ酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、シュウ酸塩、マレイン酸塩等の有機酸塩;および、グリシン塩、リジン塩、アルギニン塩、オルニチン塩、グルタミン酸塩、アスパラギン酸塩のようなアミノ酸塩が挙げられる。
【0062】
本明細書において、用語「その薬理学上許容される塩」とは、本発明の式(I)で表されるヌクレオシド構造を少なくとも1つ含有するオリゴヌクレオチドの塩であって、本発明のオリゴヌクレオチドの生理学的におよび製薬上許容される塩、すなわち、当該オリゴヌクレオチドの所望される生物学的な活性を保持し、そこで望まれない毒物学的効果を与えない塩のことをいう。そのような塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩のようなアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩のようなアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、鉄塩、亜鉛塩、銅塩、ニッケル塩、コバルト塩などの金属塩;アンモニウム塩のような無機塩、t−オクチルアミン塩、ジベンジルアミン塩、モルホリン塩、グルコサミン塩、フェニルグリシンアルキルエステル塩、エチレンジアミン塩、N−メチルグルカミン塩、グアニジン塩、ジエチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン塩、クロロプロカイン塩、プロカイン塩、ジエタノールアミン塩、N−ベンジル−フェネチルアミン塩、ピペラジン塩、テトラメチルアンモニウム塩、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩のような有機塩等のアミン塩;フッ化水素酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩のようなハロゲン原子化水素酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩、硫酸塩、リン酸塩等の無機酸塩;メタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩のような低級アルカンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩のようなアリールスルホン酸塩、酢酸塩、リンゴ酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、シュウ酸塩、マレイン酸塩等の有機酸塩;および、グリシン塩、リジン塩、アルギニン塩、オルニチン塩、グルタミン酸塩、アスパラギン酸塩のようなアミノ酸塩が挙げられる。
【0063】
以下、本発明について詳述する。
【0064】
本発明のオリゴヌクレオチドは、天然に存在するDNAまたはRNAが化学的に修飾されたオリゴヌクレオチドを含む。このような修飾は、オリゴヌクレオチドの活性を変更する。例えば、標的核酸に対する親和性を高め、核酸分解酵素(ヌクレアーゼ)に対する耐性を高め、オリゴヌクレオチドの薬物動態または組織分布を変更する。その標的に対するオリゴヌクレオチドの親和性を高めることにより、より短いオリゴヌクレオチドの使用を可能にし得る。
【0065】
本発明は、下述するようなオリゴヌクレオチドおよびその薬理学上許容される塩を包含する。
【0066】
本発明のオリゴヌクレオチドは、糖修飾ヌクレオシドを任意の位置に少なくとも1つ含む。この糖修飾ヌクレオシドは、その糖環の2位と4位との間で所定の架橋を有する。本発明における糖修飾ヌクレオシドについて、以下に説明する。
【0067】
本発明における糖修飾ヌクレオシドは、以下の式(I)で表されるヌクレオシド構造である:
【0068】
【化4】
【0069】
ここで、
Baseは、α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよいプリン−9−イル基、またはα群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよい2−オキソ−1,2−ジヒドロピリミジン−1−イル基を表し、ここで、該α群は、水酸基、核酸合成の保護基で保護された水酸基、炭素数1から6の直鎖アルキル基、炭素数1から6の直鎖アルコキシ基、メルカプト基、核酸合成の保護基で保護されたメルカプト基、炭素数1から6の直鎖アルキルチオ基、アミノ基、炭素数1から6の直鎖アルキルアミノ基、核酸合成の保護基で保護されたアミノ基、およびハロゲン原子からなり、
Aは、以下:
【0070】
【化5】
【0071】
で表される二価の基であり、
は、水素原子、分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基、分岐または環を形成していてもよい炭素数2から7のアルケニル基、該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよくそしてヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から12のアリール基、該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよくそしてヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から12のアリール部分を有するアラルキル基、または核酸合成のアミノ基の保護基を表し;
およびRは、それぞれ独立して、水素原子;ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から12のアリール基で置換されていてもよく、かつ分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基;またはヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から12のアリール部分を有するアラルキル基;であるか、あるいは
およびRは一緒になって、−(CH−[式中、qは2から5の整数である]を表し;
およびRは、それぞれ独立して、水素原子;水酸基;分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基;分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルコキシ基;アミノ基;および核酸合成の保護基で保護されたアミノ基;からなる群から選択される基であるか、あるいは、RおよびRは一緒になって、=C(R11)R12[式中、R11およびR12は、それぞれ独立して、水素原子、水酸基、核酸合成の保護基で保護された水酸基、メルカプト基、核酸合成の保護基で保護されたメルカプト基、アミノ基、炭素数1から6の直鎖または分岐鎖アルコキシ基、炭素数1から6の直鎖または分岐鎖アルキルチオ基、炭素数1から6のシアノアルコキシ基、または炭素数1から6の直鎖または分岐鎖アルキルアミノ基を表す]であり;
およびRは、それぞれ独立して、水素原子、分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基、分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルコキシ基、または炭素数1から6の直鎖または分岐鎖アルキルチオ基であり;
は、水素原子、分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基、分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルコキシ基、または炭素数1から6の直鎖または分岐鎖アルキルチオ基を表し
は、水素原子、水酸基、分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基、分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルコキシ基、アミノ基、あるいは核酸合成の保護基で保護されたアミノ基であり;
10は、水素原子またはグアニジノ基であり;
13およびR14は、それぞれ独立して、水素原子;水酸基;分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基;分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルコキシ基;アミノ基;および核酸合成の保護基で保護されたアミノ基;からなる群から選択される基であり;
mは、0から2の整数であり;
nは、0から1の整数であり;
10が水素原子の場合、pは1であり、R10がグアニジノ基の場合、pは0であり;
Xは、酸素原子、硫黄原子、またはアミノ基であり;そして
Yは酸素原子または硫黄原子である。
【0072】
1つの実施形態では、上記式(I)で表されるヌクレオシド構造は、
【0073】
【化6】
【0074】
で表される構造である。式(I’)および(I”)中のBase、R、X、mおよびnは、上述したとおりである。
【0075】
式(I’)および(I”)において、Rは、水素原子、分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基、分岐または環を形成していてもよい炭素数2から7のアルケニル基、該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよくそしてヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から12のアリール基、または該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよくそしてヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から12のアリール部分を有するアラルキル基である。より好適には、Rは、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、フェニル基、またはベンジル基であり、さらに好適には、Rは、水素原子またはメチル基である。
【0076】
式(I’)において、mは、0から2の整数であり;そして式(I”)において、nは、0から1の整数である。すなわち、2’位、3’位、4’位、および架橋部を含む環は、5員環〜7員環である。
【0077】
式(I”)において、Xは、酸素原子、硫黄原子、アミノ基、またはメチレン基である。好適には、Xは、酸素原子またはアミノ基である。なお、Xがアミノ基またはメチレン基である場合、低級アルキル基で置換されていてもよい。
【0078】
1つの実施形態では、上記式(I)で表されるヌクレオシド構造は、上記式(I’)で表される構造であり、そしてこの式(I’)において、mは0であり、そしてRは、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、フェニル基、またはベンジル基である。このようなヌクレオシド構造を、アミド架橋型核酸、アミドBNA(Bridged Nucleic Acid)、またはAmNAともいう。
【0079】
式(I’)および(I”)にてそれぞれ表される化合物においては、糖部の2’位のアミノ基と4’位から伸長したカルボニル基との間にアミド結合が形成されている。このように、構造的に揺らぎが少なくかつ親水性に優れるアミド結合を有するため、ヌクレオシドの糖部の構造が、架橋により固定化されている。
【0080】
上記式(I)で表されるヌクレオシド構造としては、上記式(I’)および(I”)に加えて、例えば、以下が挙げられる:
【0081】
【化7】
【0082】
【化8】
【0083】
【化9】
【0084】
【化10】
【0085】
【化11】
【0086】
上記の各式中、Base、R、R、R、R、R10、R13およびR14は上述したとおりである。ここで、R13およびR14がともに水素原子である場合、2’,4’−BNAまたはLNA(Locked Nucleic Acid)と称されるヌクレオシド構造に該当する。
【0087】
上記「Base」は、プリン塩基(すなわち、プリン−9−イル基)またはピリミジン塩基(すなわち、2−オキソ−1,2−ジヒドロピリミジン−1−イル基)である。これらの塩基は、水酸基、炭素数1から6の直鎖アルキル基、炭素数1から6の直鎖アルコキシ基、メルカプト基、炭素数1から6の直鎖アルキルチオ基、アミノ基、炭素数1から6の直鎖アルキルアミノ基、およびハロゲン原子からなるα群より選択される任意の置換基を1以上有していてもよい。
【0088】
上記「Base」の具体例としては、アデニニル基、グアニニル基、シトシニル基、ウラシリル基、およびチミニル基、ならびに6−アミノプリン−9−イル基、2,6−ジアミノプリン−9−イル基、2−アミノ−6−クロロプリン−9−イル基、2−アミノ−6−フルオロプリン−9−イル基、2−アミノ−6−ブロモプリン−9−イル基、2−アミノ−6−ヒドロキシプリン−9−イル基、6−アミノ−2−メトキシプリン−9−イル基、6−アミノ−2−クロロプリン−9−イル基、6−アミノ−2−フルオロプリン−9−イル基、2,6−ジメトキシプリン−9−イル基、2,6−ジクロロプリン−9−イル基、6−メルカプトプリン−9−イル基、2−オキソ−4−アミノ−1,2−ジヒドロピリミジン−1−イル基、4−アミノ−2−オキソ−5−フルオロ−1,2−ジヒドロピリミジン−1−イル基、4−アミノ−2−オキソ−5−クロロ−1,2−ジヒドロピリミジン−1−イル基、2−オキソ−4−メトキシ−1,2−ジヒドロピリミジン−1−イル基、2−オキソ−4−メルカプト−1,2−ジヒドロピリミジン−1−イル基、2−オキソ−4−ヒドロキシ−1,2−ジヒドロピリミジン−1−イル基、2−オキソ−4−ヒドロキシ−5−メチル−1,2−ジヒドロピリミジン−1−イル基、および4−アミノ−5−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロピリミジン−1−イル基が挙げられる。
【0089】
中でも、「Base」は、核酸医薬への導入という観点から、以下の構造式:
【0090】
【化12】
【0091】
でそれぞれ表される基(すなわち、チミニル基、シトシニル基、アデニニル基、グアニニル基、5−メチルシトシニル基およびウラシリル基)、ならびに2−オキソ−4−ヒドロキシ−5−メチル−1,2−ジヒドロピリミジン−1−イル基、2−オキソ−4−アミノ−1,2−ジヒドロピリミジン−1−イル基、6−アミノプリン−9−イル基、2−アミノ−6−ヒドロキシプリン−9−イル基、4−アミノ−5−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロピリミジン−1−イル基、および2−オキソ−4−ヒドロキシ−1,2−ジヒドロピリミジン−1−イル基が好適であり、特に、2−オキソ−4−ヒドロキシ−5−メチル−1,2−ジヒドロピリミジン−1−イル基およびチミニル基が好適である。また、オリゴヌクレオチドの合成の際には、水酸基およびアミノ基が保護基により保護されていることが好ましい。
【0092】
上記のような糖修飾ヌクレオシド構造を少なくとも1つ含むオリゴヌクレオチドは、例えば、糖修飾ヌクレオシド化合物を用いて、例えば、国際公開第2011/052436号、特開2014−043462号公報および国際公開第2014/046212号に記載されるような方法を用いて合成することができる。
【0093】
糖修飾ヌクレオシド化合物の例としては、以下の式(II)で表される化合物またはその塩:
【0094】
【化13】
【0095】
(ここで、
Baseは、α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよいプリン−9−イル基、またはα群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよい2−オキソ−1,2−ジヒドロピリミジン−1−イル基を表し、ここで、該α群は、水酸基、核酸合成の保護基で保護された水酸基、炭素数1から6の直鎖アルキル基、炭素数1から6の直鎖アルコキシ基、メルカプト基、核酸合成の保護基で保護されたメルカプト基、炭素数1から6の直鎖アルキルチオ基、アミノ基、炭素数1から6の直鎖アルキルアミノ基、核酸合成の保護基で保護されたアミノ基、およびハロゲン原子からなり、
Aは、以下:
【0096】
【化14】
【0097】
で表される二価の基であり、
は、水素原子、分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基、分岐または環を形成していてもよい炭素数2から7のアルケニル基、該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよくそしてヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から12のアリール基、該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよくそしてヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から12のアリール部分を有するアラルキル基、または核酸合成のアミノ基の保護基を表し;
およびRは、それぞれ独立して、水素原子;ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から12のアリール基で置換されていてもよく、かつ分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基;またはヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から12のアリール部分を有するアラルキル基;であるか、あるいは
およびRは一緒になって、−(CH−[式中、qは2から5の整数である]を表し;
およびRは、それぞれ独立して、水素原子;水酸基;分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基;分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルコキシ基;アミノ基;および核酸合成の保護基で保護されたアミノ基;からなる群から選択される基であるか、あるいは、RおよびRは一緒になって、=C(R11)R12[式中、R11およびR12は、それぞれ独立して、水素原子、水酸基、核酸合成の保護基で保護された水酸基、メルカプト基、核酸合成の保護基で保護されたメルカプト基、アミノ基、炭素数1から6の直鎖または分岐鎖アルコキシ基、炭素数1から6の直鎖または分岐鎖アルキルチオ基、炭素数1から6のシアノアルコキシ基、または炭素数1から6の直鎖または分岐鎖アルキルアミノ基を表す]であり;
およびRは、それぞれ独立して、水素原子、分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基、分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルコキシ基、または炭素数1から6の直鎖または分岐鎖アルキルチオ基であり;
は、水素原子、分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基、分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルコキシ基、または炭素数1から6の直鎖または分岐鎖アルキルチオ基を表し;
は、水素原子、水酸基、分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基、分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルコキシ基、アミノ基、あるいは核酸合成の保護基で保護されたアミノ基であり;
10は、水素原子またはグアニジノ基であり;
13およびR14は、それぞれ独立して、水素原子;水酸基;分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基;分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルコキシ基;アミノ基;および核酸合成の保護基で保護されたアミノ基;からなる群から選択される基であり;
mは、0から2の整数であり;
nは、0から1の整数であり;
10が水素原子の場合、pは1であり、R10がグアニジノ基の場合、pは0であり;
Xは、酸素原子、硫黄原子、またはアミノ基であり;そして
Yは酸素原子または硫黄原子であり;そして
22およびR23は、それぞれ独立して、水素原子、核酸合成の水酸基の保護基、分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基、分岐または環を形成していてもよい炭素数2から7のアルケニル基、該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよくそしてヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から12のアリール基、該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよくそしてヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から12のアリール部分を有するアラルキル基、該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよいアシル基、該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよいシリル基、該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよいリン酸基、核酸合成の保護基で保護されたリン酸基、−P(R24)R25[式中、R24およびR25は、それぞれ独立して、水酸基、核酸合成の保護基で保護された水酸基、メルカプト基、核酸合成の保護基で保護されたメルカプト基、アミノ基、炭素数1から5のアルコキシ基、炭素数1から5のアルキルチオ基、炭素数1から6のシアノアルコキシ基、または炭素数1から6のアルキル基で置換されたアミノ基を表す]を表す)
が挙げられる。
【0098】
上記のような糖修飾ヌクレオシドから、糖修飾ヌクレオチドを容易に調製することができる。例えば、三リン酸化は、M. Kuwaharaら、Nucleic Acids Res.,2008,vol.36, No.13,pp.4257−65に記載の方法に従って容易に行われ得る。
【0099】
本発明のオリゴヌクレオチドは、α−シヌクレイン遺伝子と結合し得る。本明細書において、本発明のオリゴヌクレオチドの「α−シヌクレイン遺伝子との結合」は、本発明のオリゴヌクレオチドのα−シヌクレイン遺伝子への直接結合、本発明のオリゴヌクレオチドのα−シヌクレイン遺伝子のmRNAへの結合、および本発明のオリゴヌクレオチドのα−シヌクレイン遺伝子のmRNA前駆体への結合を包含する。
【0100】
ここで、「結合し得る」とは、異なる複数の1本鎖のオリゴヌクレオチドまたは核酸が、核酸塩基の相補性により2本鎖以上の鎖の核酸を形成し得ることをいう。好適には、2本鎖の核酸を形成し得ることをいう。結合の熱安定性の指標である2本鎖以上の鎖の核酸の融解温度(T)は特に限定されない。2本鎖核酸の融解温度(T)は、例えば、下記のように決定され得る:緩衝液(8.1mM NaHPO,2.68mM KCl,1.47mM KHPO,pH7.2)中で、オリゴヌクレオチドと標的RNAとを等モル混合し、95℃にて5分間加熱後、室温まで徐冷してアニーリングさせ、2本鎖核酸を形成させる。2本鎖核酸の温度を20℃から95℃まで0.5℃/分の速度で加温していき、260nmにおける吸光度(A)の温度(T)による変化を測定し、この測定結果よりdA/dT vs Tのグラフを描き、dA/dTの値が最も大きくなる温度、つまりAのTによる変化が最も大きくなる温度を、2本鎖核酸のTとする。融解温度(T)は、例えば、40℃以上であり、好ましくは50℃以上である。
【0101】
本発明のオリゴヌクレオチドは、α−シヌクレイン遺伝子と相補的であるが、完全な相補性を有する必要はなく、ミスマッチを有していてもよい。例えば、本発明のオリゴヌクレオチドとα−シヌクレイン遺伝子は、2本鎖を形成する領域の塩基配列が完全に相補性を有する必要はなく、2本鎖核酸を形成し得、発現抑制作用を有する限り、1もしくは数個のミスマッチを有し得る。1もしくは数個のミスマッチとは、オリゴヌクレオチドの長さに依存し得るが、1〜4個、好ましくは1〜3個、さらに好ましくは1または2個のミスマッチを意味している。本発明のオリゴヌクレオチドは、好ましくは、2本鎖を形成する領域の塩基配列に対して完全に(100%)相補性を有するものである。
【0102】
本発明のオリゴヌクレオチドの標的遺伝子であるα−シヌクレイン(SNCA)としては、例えば、ヒトSNCA(「hSNCA」)、マウスSNCA(「mSNCA」)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0103】
α−シヌクレイン(「SNCA」)は、140アミノ酸残基からなるタンパク質であり、特有の天然構造を持たないアミロイドタンパク質である。α−シヌクレインは、シナプス小胞蓄積・放出に関連する。ヒトSNCA(hSNCA)のコーディング領域(GenBankアクセッション番号:NM_000345)のDNA配列(塩基配列)を配列表の配列番号1に、そしてアミノ酸配列を配列番号2に記載する。本発明における「SNCA」は、これらの配列に限定されるものではなく、配列番号2のタンパク質の機能が保持される限り、アミノ酸やDNAの変異数や変異部位に制限はないものとする。
【0104】
本発明のオリゴヌクレオチドは、α−シヌクレイン遺伝子の発現を抑制する活性を有する。SNCA発現抑制活性(ノックダウン活性)は、公知の方法により測定することが可能である。例えば、後述するHEK293T細胞に対するアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)のトランスフェクション(実施例3〜5)またはα−シヌクレイントランスジェニックマウス(SNCA Tgマウス)の脳室内投与(実施例6)の方法により測定することができる。
【0105】
本発明のオリゴヌクレオチドは、例えば12〜20塩基長、好ましくは13〜20塩基長、より好ましくは14〜20塩基長、よりさらに好ましくは15〜19塩基長、特に好ましくは15〜18塩基長である。より具体的には、15塩基長、16塩基長、17塩基長などのオリゴヌクレオチドが挙げられる。オリゴヌクレオチドが上記のような長さであることにより、SNCA標的遺伝子への結合、SNCA標的遺伝子のmRNAもしくはmRNA前駆体への結合およびSNCA発現抑制(ノックダウン)をより効果的に行い得る。
【0106】
1つの実施形態では、本発明のオリゴヌクレオチドは、配列番号1の99位〜123位の塩基配列からなる標的領域と結合し得る。上記標的領域は、ヒトSNCA遺伝子において、特に、α−シヌクレイン遺伝子の発現を抑制する活性またはノックダウン活性に関連する領域である。
【0107】
本発明において「標的領域」は、標的となるSNCA遺伝子上の領域(例えば、示された塩基配列(例えば、配列番号1の99位〜123位の塩基配列)からなる標的領域)、および、該遺伝子上の領域に対応するSNCA遺伝子のmRNAもしくはmRNA前駆体上の領域を含む。また、「標的領域と結合」とは、標的領域全体と必ずしも2本以上の鎖(好ましくは2本鎖)を形成する必要はなく、その領域の一部である領域と2本以上の鎖(好ましくは2本鎖)を形成するものであってもよい。本発明のオリゴヌクレオチドは、例えば、この標的領域の少なくとも一部と相補的であり、好ましくは完全な相補性を有する。ここで「一部」とは、当該標的領域のうち12〜20塩基長の領域である。好ましくは、この標的領域の3’末端が、配列番号1の塩基配列の118位、121位または123位であるような「一部」の領域が、標的領域として選択され得る。「標的領域の少なくとも一部と相補的である」とは、SNCA遺伝子上の標的領域(例えば、配列番号1の99位〜123位の塩基配列からなる)の少なくとも一部の領域の塩基と相補的であること、および、当該少なくとも一部の領域に対応するmRNAもしくはmRNA前駆体上の領域の塩基と相補的であることを含む。
【0108】
本発明のオリゴヌクレオチドの好ましい塩基配列としては、配列番号3(配列番号1の99位〜123位の塩基配列からなる標的領域に対応するmRNA上の領域に対するアンチセンスオリゴヌクレオチド)に示される塩基配列の一部からなる塩基配列が挙げられる。アンチセンスオリゴヌクレオチドの配列は、当該アンチセンスオリゴヌクレオチドを構成する塩基数(オリゴヌクレオチドの塩基長に対応する)分、3’から5’の方向(3’→5’)に、配列番号1に示される標的領域の塩基に対して相補的な塩基を並べるように設計され得る。アンチセンスオリゴヌクレオチドの塩基配列を5’から3’の方向(5’→3’)で表す場合、配列番号1に示される標的領域の塩基配列に対して逆相補体となり得る。本発明のオリゴヌクレオチドは、これらの配列において、SNCA発現抑制活性を有する限り、1もしくは数個の塩基が欠失、置換、付加もしくは挿入されたものであってもよい。好ましくは、1〜3個、より好ましくは1〜2個、さらに好ましくは1個の塩基が欠失、置換、付加もしくは挿入されたものであってもよい。
【0109】
本発明の好ましいオリゴヌクレオチドとして、その5’末端が、配列番号3の1番目(配列番号1の123位に対応する)、3番目(配列番号1の121位に対応する)、または6番目(配列番号1の118位に対応する)の塩基であるオリゴヌクレオチドが挙げられる。例えば、配列番号4(15塩基長)、5(14塩基長)、6(16塩基長)および7(20塩基長)(121位);配列番号8(15塩基長)(118位);および配列番号9(15塩基長)(123位)の配列において、糖修飾ヌクレオシドを少なくとも1つ含むものが挙げられる(括弧内の位置番号は、配列番号1の塩基配列における標的領域の3’末端塩基の位置である)。例えば、配列番号4のオリゴヌクレオチドは、その5’末端が配列番号3の3番目の塩基であり、かつ15塩基長である。また、配列番号4のオリゴヌクレオチドは、配列番号1の塩基配列の121位を3’末端とする15塩基長の領域である107位〜121位の5’−GTGTTCTCTATGTAG−3’(配列番号10)を標的領域とし、mRNA上の対応する領域に相補的であり結合し得るアンチセンスオリゴヌクレオチドである。これらの配列において、SNCA発現抑制活性を有する限り、1もしくは数個の塩基が欠失、置換、付加もしくは挿入されたものであってもよい。好ましくは1〜3個、より好ましくは1〜2個、さらに好ましくは1個の塩基が欠失、置換、付加もしくは挿入されたものであってもよい。
【0110】
上記糖修飾以外の当該分野で公知のヌクレオチドの修飾は、いずれも本発明のオリゴヌクレオチドに利用可能である。ヌクレオチドの修飾としては、リン酸修飾、核酸塩基修飾が知られている。このような核酸修飾は、当該分野で公知の方法に基づいて行うことができる。
【0111】
リン酸修飾としては、例えば、天然の核酸が有するリン酸ジエステル結合、S−オリゴ(ホスホロチオエート)、D−オリゴ(ホスホジエステル)、M−オリゴ(メチルフォスフォネイト)、ボラノホスフェート等が挙げられる。S−オリゴ(ホスホロチオエート)は、ヌクレオシド間のホスホジエステル結合のリン酸基部の酸素原子が硫黄原子で置換されたPS骨格を有する。この修飾は公知の方法に従って、オリゴヌクレオチドに取り込まれる。この修飾をオリゴヌクレオチド中に1もしくは複数もつアンチセンスオリゴヌクレオチドをS−オリゴ型(ホスホロチオエート型)という。
【0112】
核酸塩基修飾としては、例えば、5−メチルシトシン、5−ヒドロキシメチルシトシン、5−プロピニルシトシン等が挙げられる。
【0113】
本発明のオリゴヌクレオチドにおいて、糖修飾ヌクレオシドの位置および数は、特に限定されず、目的に応じて適宜設計され得る。2つ以上の糖修飾ヌクレオシドは、互いに、同じものであってもよく、異なるものであってもよい。
【0114】
本発明のオリゴヌクレオチドは、ギャップマーであることが好ましい。ギャップマーとは、中心領域となる「ギャップ」と該ギャップの両側の領域、2つのウイング、すなわち、5’側の「5’ウイング」および3’側の「3’ウイング」を含むオリゴヌクレオチドを意味する。
【0115】
本発明におけるギャップマーのギャップ領域は6〜10塩基長、好ましくは7〜10塩基長、より好ましくは8〜10塩基長、さらに好ましくは8〜9塩基長、特に好ましくは9塩基長であり得る。ギャップは、天然ヌクレオシドから構成されている。
【0116】
本発明におけるギャップマーのウイング領域は3〜5塩基長、好ましくは3〜4塩基長、さらに好ましくは3塩基長であり得る。本発明のオリゴヌクレオチドは、「5’ウイング」および/または「3’ウイング」に、糖修飾ヌクレオシドを少なくとも1つ含む。好ましくは、「5’ウイング」に、糖修飾ヌクレオシドを少なくとも1つ、好ましくは1〜5、より好ましくは2〜4、さらに好ましくは2〜3、特に好ましくは3含む。好ましくは、「3’ウイング」に、糖修飾ヌクレオシドを少なくとも1つ、好ましくは1〜5、より好ましくは2〜4、さらに好ましくは2〜3、特に好ましくは2含む。
【0117】
1つの実施形態では、6〜10塩基のギャップ領域、3〜5塩基の5’ウイングおよび3〜5塩基の3’ウイングからなり、ギャップ領域が5’ウイングと3’ウイングの間に位置づけられ、5’ウイングおよび3’ウイングは、少なくとも1つの上記式(I)で表されるヌクレオシド構造を含み得る。さらに、リン酸修飾、塩基修飾などを含んでいてもよい。一方のウイング内の修飾の種類、数、位置は、他方のウイングにおける修飾の種類、数、位置と同じであってもまたは異なっていてもよい。
【0118】
1つの好ましい実施形態では、8〜10塩基のギャップ領域、3塩基の5’ウイングおよび3塩基の3’ウイングからなり、5’ウイングおよび3’ウイングは、各々少なくとも2つの上記式(I)で表されるヌクレオシド構造を含み得る。
【0119】
より好ましい実施形態では、9塩基のギャップ領域、3塩基の5’ウイングおよび3塩基の3’ウイングからなり、5’ウイングの3塩基は前記式(I)で表されるヌクレオシドであり、3’ウイングの3塩基のうち2塩基が前記式(I)で表されるヌクレオオシド構造を含み得る。
【0120】
このようなギャップマーとしては、例えば、3−9−2−1、3−8−2−1、3−10−2−1、3−10−3、5−10−5などが挙げられる。例えば、3−9−2−1の表記の場合、ギャップの9塩基が天然ヌクレオシド(DNA)であり、5’ウイング(5’末端から3塩基)が糖修飾ヌクレオシドであり、そして3’ウイング(3’末端から3塩基)のうち中心側からの2塩基が糖修飾ヌクレオシドであり、最後の1塩基(3’末端塩基)が天然ヌクレオシド(DNA)である。配列に依存し得るが、3−9−2−1が好ましい。
【0121】
本発明のオリゴヌクレオチドとしては、例えば、(121位)配列番号11(3−9−2−1)、12(3−8−2−1)、13(3−10−3、3−10−2−1)および14(5−10−5);(118位)配列番号15(3−9−2−1);および(123位)配列番号16(3−9−2−1)が挙げられる(括弧内の位置番号は、配列番号1の塩基配列における標的領域の3’末端塩基の位置であり、キャップマーの領域を共に示す)。これらの配列において、SNCA発現抑制活性を有する限り、1もしくは数個の塩基が欠失、置換、付加もしくは挿入されたものであってもよい。好ましくは、1〜3個、より好ましくは1〜2個、さらに好ましくは1個の塩基が欠失、置換、付加もしくは挿入されたものであってもよい。
【0122】
本発明のオリゴヌクレオチドは、上述したような糖修飾ヌクレオシドおよび天然ヌクレオシドを用いて、常法によって合成することができ、例えば、市販の核酸自動合成装置(例えば、Applied Biosystems社製、株式会社ジーンデザイン製など)によって容易に合成することができる。合成法はホスホロアミダイトを用いた固相合成法、ハイドロジェンホスホネートを用いた固相合成法等がある。例えば、Tetrahedron Letters,1981, vol. 22. pp.1859−1862、国際公開第2011/052436号等に開示されている。
【0123】
本発明は、本発明のオリゴヌクレオチドを含有するα−シヌクレイン発現抑制剤も包含する。さらに本発明は、本発明のオリゴヌクレオチドを含有する医薬組成物も包含する。本発明のα−シヌクレイン発現抑制剤または医薬組成物の投与方法および製剤は、当該分野で公知の投与方法および製剤であれば、いずれも利用可能である。
【0124】
本発明の医薬組成物は、局所的あるいは全身的な治療、または治療すべき領域に応じて様々な方法により投与することができる。投与方法としては、例えば、局所的(点眼、膣内、直腸内、鼻腔内、経皮を含む)、経口的、または、非経口的であってもよい。非経口的投与としては、静脈内注射もしくは点滴、皮下、腹腔内もしくは筋肉内注入、吸引もしくは吸入による肺投与、髄腔内投与、脳室内投与等が挙げられる。
【0125】
本発明の医薬組成物を局所投与する場合、経皮パッチ、軟膏、ローション、クリーム、ゲル、滴下剤、坐剤、噴霧剤、液剤、散剤等の製剤を用いることができる。
【0126】
経口投与用組成物としては、散剤、顆粒剤、水もしくは非水性媒体に溶解させた懸濁液または溶液、カプセル、粉末剤、錠剤等が挙げられる。
【0127】
非経口、髄腔内、または、脳室内投与用組成物としては、バッファー、希釈剤およびその他の適当な添加剤を含む無菌水溶液等が挙げられる。
【0128】
本発明の医薬組成物は、本発明のオリゴヌクレオチドの有効量にその剤型に適した賦形剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、滑沢剤、希釈剤等の各種医薬用添加剤を必要に応じて混合して得ることができる。注射剤の場合には適当な担体と共に滅菌処理を行なって製剤とすればよい。
【0129】
賦形剤としては、乳糖、白糖、ブドウ糖、デンプン、炭酸カルシウムまたは結晶セルロース等が挙げられる。結合剤としては、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチンまたはポリビニルピロリドン等が挙げられる。崩壊剤としてはカルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末またはラウリル硫酸ナトリウム等が挙げられる。滑沢剤としてはタルク、ステアリン酸マグネシウムまたはマクロゴール等が挙げられる。坐剤の基剤としてはカカオ脂、マクロゴールまたはメチルセルロース等を用いることができる。また、液剤または乳濁性、懸濁性の注射剤として調製する場合には通常使用されている溶解補助剤、懸濁化剤、乳化剤、安定化剤、保存剤、等張剤等を適宜添加してもよい。経口投与の場合には嬌味剤、芳香剤等を加えてもよい。
【0130】
本発明の医薬組成物は、α−シヌクレイン(SNCA)遺伝子に関連した疾患の治療または予防に用いられ得る。本発明の医薬組成物は、例えば、SNCA発現抑制活性(ノックダウン活性)に基づく治療または予防に用いられ得る。本発明の医薬組成物が用いられ得る疾患としては、例えば、α−シヌクレイン過剰症が挙げられる。本発明の医薬組成物によれば、そのSNCA発現抑制活性(ノックダウン活性)により、神経変性の進行の予防および認知症の発症の予防(特にDLBなど)が期待できる。本発明の医薬組成物は、例えば、パーキンソン病またはレビー小体型認知症の治療または予防に用いられ得る。
【0131】
本発明は、α−シヌクレイン発現抑制方法を提供する。さらに本発明は、α−シヌクレイン過剰症の治療または予防方法;ならびにパーキンソン病またはレビー小体型認知症の治療または予防方法も提供する。これらの方法は、本発明のオリゴヌクレオチド個体に投与する工程を含む。「個体」とは、好ましくは哺乳動物であり、より好ましくは、ヒト、サル、イヌ、ネコ、ラットおよびマウスであり、さらに好ましくはヒトである。これらの方法においては、本発明のオリゴヌクレオチドの有効量が投与される限り、投与方法および剤型は問わない。投与有効量は、投与される個体に依存するが、個体の性別、年齢、体重、症状等、ならびに投与の方法、経路、頻度などに応じて任意に定めることができる。例えば、投与量として0.1〜10mg/kgが挙げられる。投与方法等は上述したとおりである。
【実施例】
【0132】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0133】
(実施例1:オリゴヌクレオチド合成)
本発明に関連するオリゴヌクレオチドは、Tetrahedron Letters 22,1859−1862(1981)、国際公開第2011/052436号等に記載される方法によって合成した。
【0134】
具体的には、式(a)で示されるLNAを含むオリゴヌクレオチドに関しては、株式会社ジーンデザインに合成委託した。
【0135】
【化15】
【0136】
(式中、Baseは5−メチルシトシニル基、チミニル基、アデニニル基またはグアニニル基である。)
【0137】
式(b)で示されるアミドBNA(AmNA)を含むオリゴヌクレオチドに関しては、国際公開第2011/052436号に記載の方法を参照して合成した。
【0138】
【化16】
【0139】
(式中、Baseは5−メチルシトシニル基、チミニル基、アデニニル基またはグアニニル基であり、Meはメチルである。)
【0140】
式(a)で示されるLNAまたは式(b)で示されるアミドBNA(AmNA)を含有する14mer〜20merのオリゴヌクレオチドは、核酸自動合成機(nS−8型、株式会社ジーンデザイン製)を用いて、0.2μmolスケールで合成した。鎖長の伸長は標準的なホスホロアミダイトプロトコール(固相担体:CPGレジン、硫化はDDT(3H−1,2−Benzodithiole−3−one,1,1−dioxide)等を使用)にて実施し、末端の5’位の水酸基がDMTr(ジメトキシトリチル)基で保護され、かつ3’位が固相に担持されたオリゴヌクレオチドを得た。続いて、酸処理により、DMTr基を除去した後、塩基処理することにより、目的物を固相担体から切り出した。希酸にて中和後、溶媒を留去し、得られた粗生成物をゲルろ過カラムクロマト、逆相HPLCにて精製することにより目的物を得た。
【0141】
本実施例で使用したLNAまたはAmNAの架橋構造、ならびに得られた各オリゴヌクレオチドの純度および構造をHPLCおよびMALDI−TOF−MS(BRUKER DALTONICS社製)により確認した。
【0142】
(実施例2:ヒトアンチセンスオリゴヌクレオチド配列)
アンチセンスオリゴヌクレオチド(AON)を、ヒトα−シヌクレイン(hSNCA)遺伝子コーディング領域(GenBank:NM_000345(配列番号1))を標的とするよう設計した。
【0143】
アンチセンスオリゴヌクレオチドの表記番号(hSNCA−Xの「X」)は、配列番号1におけるその標的領域の3’末端にあたる塩基位置の番号に該当する。例えば、hSNCA−121であれば、配列番号1の塩基配列の121位が標的領域の3’末端となる。
【0144】
アンチセンスオリゴヌクレオチドの配列は、配列番号1の塩基配列に基づいて標的領域の3’末端位置を決定し、その標的領域中の塩基に対して相補的な塩基を当該アンチセンスオリゴヌクレオチドの長さとなる塩基数分、3’から5’の方向(3’→5’)に並べるように設計した。よって、アンチセンスオリゴヌクレオチドの配列を5’から3’の方向(5’→3’)で表す場合、配列番号1の塩基配列により示される標的配列に対して逆相補体となる。例えば、hSNCA−121でアンチセンスオリゴヌクレオチドが15merの長さの場合、配列番号1の塩基配列の121位から15塩基分5’末端側に伸ばした、すなわち121位から107位までの塩基に相補的な塩基をこの記載の順に並べるようにして配列を設計した。hSNCA−121(3−9−2−1)の場合、配列番号1の塩基配列の121位を3’末端とする15塩基長の領域である107位〜121位の5’−GTGTTCTCTATGTAG−3’(配列番号10)の配列を標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドであり、hSNCA−121(3−9−2−1)の配列は、5’−CTACATAGAGAACAC−3’(配列番号11)である。
【0145】
アンチセンスオリゴヌクレオチドのギャップマー構成は、そのオリゴヌクレオチドの表記に示すように糖修飾ヌクレオシドと天然ヌクレオシドとを配置するように設計した。例えば、hSNCA−121(3−9−2−1)の場合、ギャップ領域の9塩基が天然ヌクレオシド(DNA)であり、5’ウイング(5’末端から3塩基)が糖修飾ヌクレオシドであり、そして3’ウイング(3’末端から3塩基)のうち中心側からの2塩基が糖修飾ヌクレオシドであり、最後の1塩基(3’末端塩基)が天然ヌクレオシド(DNA)である。また、hSNCA−121(5−10−5)の場合は、中心領域の10塩基が天然ヌクレオシド(DNA)であり、5’ウイング(5’末端から5塩基)が糖修飾ヌクレオシドであり、そして3’ウイング(3’末端から5塩基)が糖修飾ヌクレオシドである。
【0146】
さらに、比較のために、特許文献1のオリゴID387985、387986、および388038のオリゴヌクレオチドを調製した。これらのオリゴヌクレオチドはいずれも、5−10−5のAmNA修飾ギャップマーとして設計した。
【0147】
いずれの場合も、ヌクレオシド間の結合は、オリゴヌクレオチド全体を通してホスホロチオエート(P=S)とした。
【0148】
(実施例3:HEK293T細胞に対するアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)のトランスフェクションに基づく一次スクリーニング)
本実施例では、図1の横軸に示す番号(配列番号1における塩基位置の番号に該当する)を標的領域の3’末端とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを、実施例2に記載するように設計して、実施例1に記載のように調製した。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、LNAを含むものであり、ギャップマー構成は、3−8−2−1とした。
【0149】
調製したオリゴヌクレオチドの詳細を以下の表1に示す。表1中の塩基配列のA、T、CおよびGは下記の塩基を表す(大文字および小文字共通であり、括弧内に式(a)中の「Base」の基を示す):C、5−メチルシトシン(5−メチルシトシニル基);T、チミン(チミニル基);A、アデニン(アデニニル基);およびG、グアニン(グアニニル基)。
【0150】
【表1】
【0151】
前日に12ウェルプレート(Thermo Fisher Scientific社製)にて10%FBS(抗生物質なし)を添加したDMEM培地(Thermo Fisher Scientific社製)1mL中にHEK293T細胞(ATCC社より入手:ATCC CRL−1573)2.5×10を撒いた。1つのオリゴヌクレオチドにつき3ウェル+コントロール分を作成した。
【0152】
1つのウェルにつき、チューブ1:75μL Opti−MEM(Thermo Fisher Scientific社製)+5μLリポフェクタミン2000(Invitrogen社製)およびチューブ2:75μL Opti−MEM+1μL 50μMアンチセンスオリゴヌクレオチドを準備して、チューブ1をチューブ2に加えて室温にて5分放置し、その後細胞に加えた。4時間後に培地交換し、そしておよそ24時間後にRNA抽出を行った。
【0153】
RNA抽出は、Rneasy Plus Mini Kit(Thermo Fisher Scientific社製)を用いて、以下のように行った:50μL バッファーRLTを各ウェルに加え、混和した。gDNA eliminaterチューブに移し、10000rpmにて30秒遠心した。次いでチューブのカラムを取り除き、350μLの70%エタノールを加え、混和し、spinカラムに移した。10000rpmにて15秒遠心し、濾過液を捨てた。次いで、700μL バッファーRW1を加え、10000rpmにて15秒遠心し、500μL バッファーRPEを加え、10000rpmにて15秒遠心し、500μL バッファーRPEを加え、10000rpmにて120秒遠心した。カラムをエッペンチューブに設置し、40μL Rnase−free waterを加え、10000rpmにて60秒遠心した。
【0154】
逆転写は、Superscript IIIキット(Thermo Fisher Scientific社製)を用いて、以下のように行った:RNA 1μg分に再蒸留水(ddW)を加えて合計8μLとし、そこに1μLランダムヘキサマープライマー(Thermo Fisher Scientific社製)および1μL 10mM dNTPを加えて計10μLとした。
【0155】
抽出RNA濃度400ng/μLの場合、RNA1μgにつき2.5μLを採り、ddW5.5μLを加え、65℃にて5分インキュベートし、氷上に静置した。
【0156】
以下のマスターミックス1を調製した:2μL 10×RTバッファー;4μL 25mM MgCl;2μL 0.1M DTT;1μL RNase OUT;および1μL Superscript III。このマスターミックス10μLずつをサンプルに加え、25℃にて10分、50℃にて50分、そして85℃にて5分インキュベートした。1μL RNase Hを加え、37℃にて20分間インキュベートした。これにより、cDNAを得た。
【0157】
定量PCRは、TaqMan(登録商標)Gene Expression Assays(Applied Biosystems社製)を用いて以下のように行った:得られたcDNAをddWで10倍希釈した(cDNA 1μLおよびddW 9μL)。マスターミックス2を、Taqmanプローブミックス(Applied Biosystems社製):ddw:SNCAプライマー(TaqMan(登録商標)Gene Expression Assays,ID:Hs01103383_m1)=10:7:1の割合で混ぜて、調製した。それぞれのcDNAにおいて、29.7μLマスターミックス2に3.3μL希DNA(NTCは3.3μL ddW)を加えた。18sプライマー(Eukaryotic 18S rRNA Endogenous Control、Applied Biosystems社製)についても同様のことを行った。10μLずつ、PCRプレート(384ウェル)に分注し、2000rpmにて5分遠心した。ABI PRISM 7900HTリアルタイムPCR解析システム(Applied Biosystems社製)によりリアルタイムPCRを行い、SNCAのmRNA量を定量した。
【0158】
トランスフェクション操作を行わなかった細胞をコントロールとして用いた。
【0159】
結果を図1に示す。図1の縦軸は、mRNA量を示す。コントロール(図1中「Cont」)におけるmRNA量を1.0として、アンチセンスオリゴヌクレオチドのトランスフェクション後のmRNA量を相対的に表した。この結果に基づき、次の実施例では、配列番号1の塩基配列の121位を標的領域の3’末端とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いた。
【0160】
(実施例4:HEK293T細胞に対するアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)のトランスフェクションに基づく二次スクリーニング)
以下を除いて、実施例3と同様に、HEK293T細胞に対するアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)のトランスフェクションを行い、mRNA量を測定した。
【0161】
本実施例では、配列番号1の塩基配列の121位を標的領域の3’末端とし、AmNAを含むものとし、ギャップマー構成がそれぞれ3−10−3、3−10−2−1、3−9−2−1および5−10−5であるアンチセンスオリゴヌクレオチドを、実施例2に記載するように設計して、実施例1に記載のように調製した。比較のために、実施例2に記載のオリゴID387985、387986、および388038のAmNA修飾ギャップマー5−10−5もまた用いた(オリゴID388038は、配列番号1の122位〜125位の4塩基分についてはミスマッチである)。
【0162】
調製したオリゴヌクレオチドの詳細を以下の表2に示す。表2中の塩基配列のA、T、CおよびGは下記の塩基を表す(大文字および小文字共通であり、括弧内に式(b)中の「Base」の基を示す):C、5−メチルシトシン(5−メチルシトシニル基);T、チミン(チミニル基);A、アデニン(アデニニル基);およびG、グアニン(グアニニル基)。
【0163】
【表2】
【0164】
結果を図2に示す。図2の縦軸は、mRNA量を示す。コントロール(図2中「Cont」)におけるmRNA量を1.0として、アンチセンスオリゴヌクレオチドのトランスフェクション後のmRNA量を相対的に表した。調べたアンチセンスオリゴヌクレオチドの中では、3−9−2−1のギャップマーが特に優れたα−シヌクレイン抑制効果を示した。ギャップマー5−10−5について、配列番号1の塩基配列の121位を標的領域の3’末端とするアンチセンスオリゴヌクレオチドは、ID387985、387986、および388038のいずれよりも優れたα−シヌクレイン抑制効果を示した。
【0165】
(実施例5:HEK293T細胞に対するアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)のトランスフェクションに基づく三次スクリーニング)
以下を除いて、実施例3と同様に、HEK293T細胞に対するアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)のトランスフェクションを行い、mRNA量を測定した。
【0166】
本実施例では、アンチセンスオリゴヌクレオチドを、図3の横軸に示す番号(配列番号1における塩基位置の番号に該当する)を標的領域の3’末端とし、AmNAを含み、そしてギャップマー構成が3−9−2−1であるように、実施例2に記載するように設計して、実施例1に記載のように調製した。
【0167】
調製したオリゴヌクレオチドの詳細を以下の表3(表3−1〜3−2)に示す。表3−1〜3−2中の塩基配列のA、T、CおよびGは表2と同様である。
【0168】
【表3-1】
【0169】
【表3-2】
【0170】
結果を図3に示す。図3の縦軸は、mRNA量を示す。コントロール(図3中「Cont」)におけるmRNA量を1.0として、アンチセンスオリゴヌクレオチドのトランスフェクション後のmRNA量を相対的に表した。調べたアンチセンスオリゴヌクレオチドの中では、配列番号1の塩基配列の118位、121位、123位を標的領域の3’末端とするアンチセンスオリゴヌクレオチドが特に優れたα−シヌクレイン発現抑制効果を示した。
【0171】
(実施例6:α−シヌクレイントランスジェニックマウス(SNCA Tgマウス)の脳室内投与)
表3におけるオリゴヌクレオチドのうち、配列番号1の塩基配列の118位、121位、123位を標的領域の3’末端とし、AmNAを含み、ギャップマー構成が3−9−2−1であるアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いた。
【0172】
SNCA Tgマウス(大阪大学免疫学フロンティアセンター崋山力成氏より入手、Neurobiology of Aging, 2008, vol. 29, pp.574−585)に3種混合麻酔にて麻酔施行後、前頂(Bregma)から背側に0.2mm、左に1mmの部位に深さ3mmで針を刺し入れた。一旦針を抜き、髄液の漏出を確認した後に再度挿入し、アンチセンスオリゴヌクレオチド(約1.3mM)10μLをおよそ5分かけて注入し、次いで2分静置し、抜針した。次いで縫合し、麻酔覚醒を確認してから1週間後、マウスを犠牲にし、脳より左右の線条体、黒質、皮質を取り出し、液体窒素にて急速凍結した。
【0173】
RNA抽出は、ISOGEN(株式会社ニッポンジーン製)を用いて、以下のように行った:脳組織を、液体窒素下ですり潰し、950μL ISOGENに溶解し、21G針にて数回ピペッティングし、200μLクロロホルムを加えてボルテックスし、12000gで4℃にて15分遠心した。上澄み(水層)を500μLイソプロパノールに移し替え、3μL ethacinmate(株式会社ニッポンジーン製)と10μL酢酸ナトリウムを加え、12000gで4℃にて10分遠心した。上清を廃棄し、500μL 75%エタノールにて洗浄し、7500gで4℃にて5分遠心した。上清を廃棄し、30μL ddWにて沈殿を溶解した。逆転写および定量PCRは、実施例3と同様に行った。
【0174】
結果を図4に示す。図4は、SNCA Tgマウスへのアンチセンスオリゴヌクレオチド投与後の黒質(a)および線条体(b)におけるmRNA量を示す。図4(a)および(b)の縦軸はmRNA量を示す。アンチセンスオリゴヌクレオチドを投与しない場合をコントロールとし、このコントロール(図4中「Cont」)におけるmRNA量を1.0として、アンチセンスオリゴヌクレオチド投与後のmRNA量を相対的に表した。
【0175】
いずれのアンチセンスオリゴヌクレオチドを投与した場合も、コントロールに比べて、黒質および線条体のmRNA量の低下が見られた。本実施例では、臨床応用を考慮した脳室内投与を行ったが、線条体においてmRNA量の低下が見られている。したがって、AmNA修飾したオリゴヌクレオチドは、優れた組織移行性を示している。よって、AmNA修飾したオリゴヌクレオチドは、脳内への送達のために髄腔内投与を介した適用も期待される。
【産業上の利用可能性】
【0176】
本発明によれば、α−シヌクレインの発現抑制に有用なオリゴヌクレオチドが提供される。本発明のオリゴヌクレオチドは、例えば、α−シヌクレイン過剰症の治療または予防、ならびにパーキンソン病やレビー小体型認知症などの治療または予防に有用な核酸医薬としての利用が期待される。
図1
図2
図3
図4
【配列表】
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