(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
柱状ビレットをコンテナに挿入し、前記コンテナに挿入した前記柱状ビレットの一方の端面に、ダミーブロックを介して、圧縮力を付与し、前記柱状ビレットの他方の端面側に設置した前記コンテナのダイス孔から前記柱状ビレットを押出して、前記柱状ビレットを押出材の形状に成形する押出材の製造方法において、
前記柱状ビレットは、内部に収納部を有するステンレス鋼からなる柱状容器と前記収納部に収納されたニッケル基超耐熱合金からなる柱状被成形体とを備え、かつ、前記柱状容器は、前記圧縮力が付与される端部の厚さがtb(mm)であり、
押出比Rで前記ダイス孔からの押出しを終了して、前記ダイス孔から押出された押出材を前記柱状ビレットから切断するとき、前記tb(mm)と、前記押出比Rとの関係から算出される値をhamax1としたときに、前記切断面の位置が、下記の式1の関係を満たす位置であることを特徴とする押出材の製造方法。
式1:hc≧hamax1
ここで、
hamax1=3.1×tb+f(R)
f(R)=123.7×ln(R)−75
(hc(mm):押出しを終了したときの前記柱状ビレットの前記一方の端面の位置と、切断面の位置との距離)
柱状ビレットをコンテナに挿入し、前記コンテナに挿入した前記柱状ビレットの一方の端面に、ダミーブロックを介して、圧縮力を付与し、前記柱状ビレットの他方の端面側に設置した前記コンテナのダイス孔から前記柱状ビレットを押出して、前記柱状ビレットを押出材の形状に成形する押出材の製造方法において、
前記柱状ビレットは、内部に収納部を有するステンレス鋼からなる柱状容器と前記収納部に収納されたニッケル基超耐熱合金からなる柱状被成形体とを備え、かつ、前記柱状容器は、前記圧縮力が付与される端部の厚さがtb(mm)であり、
押出比Rで前記ダイス孔からの押出しを終了して、前記ダイス孔から押出された押出材を前記柱状ビレットから切断するとき、切断面の位置が関係式(1.5×hamax1)≧hc≧hamax1を満たすことを特徴とする押出材の製造方法。
ここで、
hamax1=3.1×tb+f(R)
f(R)=123.7×ln(R)−75
(hc(mm):押出しを終了したときの前記柱状ビレットの前記一方の端面の位置と、切断面の位置との距離)
柱状ビレットをコンテナに挿入し、前記コンテナに挿入した前記柱状ビレットの一方の端面に、ダミーブロックを介して、圧縮力を付与し、前記柱状ビレットの他方の端面側に設置した前記コンテナのダイス孔から前記柱状ビレットを押出して、前記柱状ビレットを押出材の形状に成形する押出材の製造方法において、
前記柱状ビレットは、内部に収納部を有するステンレス鋼からなる柱状容器と前記収納部に収納されたニッケル基超耐熱合金からなる柱状被成形体とを備え、かつ、前記柱状容器は、前記圧縮力が付与される端部の厚さがtb(mm)であり、
押出比Rで前記ダイス孔からの押出しを終了して、前記ダイス孔から押出された押出材を前記柱状ビレットから切断するとき、切断面の位置が関係式(1.5×hamax2)≧hc≧hamax2を満たすことを特徴とする押出材の製造方法。
ここで、
hamax2=3.1×tb+f(R)−g(R,he)
f(R)=123.7×ln(R)−75
g(R,he)=(0.2×R+9)×√he
(hc(mm):押出しを終了したときの前記柱状ビレットの前記一方の端面の位置と、切断面の位置との距離)
(he(mm):押出しを終了したときの前記ダミーブロックの先端の位置とダイスとの距離)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一連の押出材の製造工程においては、この押出工程でビレットの有効部分の押出しが完了して、押出しを終了したときに、ダイス孔から押出された押出材を残りのビレットから切断する作業が必要である。そして、ビレットが上記の「柱状ビレット」であるとき、切断位置の押出材には、その表面を上記の容器の材質(以下、容器材と記す)が覆っているだけでなく、押出材の内部にもこの容器材が入り込んでいる場合があった。押出材の内部に容器材が入り込むと(介在すると)、この容器材を押出材から除去することは困難であり、健全な押出材の入手に支障を来した。
本発明の目的は、上記の柱状ビレットを用いた押出材の製造方法において、押出しを終了して、押出材をビレットから切断したときに、切断後の押出材の内部に容器材が介在することを抑制できる押出材の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、柱状ビレットをコンテナに挿入し、このコンテナに挿入した柱状ビレットの一方の端面に、ダミーブロックを介して、圧縮力を付与し、柱状ビレットの他方の端面側に設置したコンテナのダイス孔から上記の柱状ビレットを押出して、柱状ビレットを押出材の形状に成形する押出材の製造方法において、
上記の柱状ビレットは、内部に収納部を有する柱状容器と、その収納部に収納された柱状被成形体とを備え、かつ、この柱状容器は、圧縮力が付与される端部の厚さがt
b(mm)であり、
押出比Rで上記のダイス孔からの押出しを終了して、このダイス孔から押出された押出材を上記の柱状ビレットから切断するとき、切断面の位置を、上記のt
b(mm)と押出比Rとの関係から算出される値を基準にして決定する押出材の製造方法である。
【0008】
そして、上記の押出材の製造方法においては、好ましくは、上記のt
b(mm)と押出比Rとの関係から算出される値をh
amax1としたときに、上記の切断面の位置が、下記の式1の関係を満たす位置である押出材の製造方法である。
式1:h
c≧h
amax1
ここで、
h
amax1=3.1×t
b+f(R)
f(R)=123.7×ln(R)−75
(h
c(mm):押出しを終了したときの柱状ビレットの上記した一方の端面の位置と、切断面の位置との距離)
【0009】
また、本発明は、上述した押出材の製造方法において、押出比Rで上記のダイス孔からの押出しを終了して、このダイス孔から押出された押出材を上記の柱状ビレットから切断するとき、切断面の位置を、上記のt
b(mm)と、押出比Rと、さらに、押出しを終了したときの上記のダミーブロックの先端の位置とダイスとの距離h
e(mm)との関係から算出される値を基準にして決定する押出材の製造方法である。
【0010】
そして、上記の押出材の製造方法においては、好ましくは、上記のt
b(mm)と、押出比Rと、さらに、押出しを終了したときの上記のダミーブロックの先端の位置とダイスとの距離h
e(mm)との関係から算出される値をh
amax2としたときに、上記の切断面の位置が、下記の式2の関係を満たす位置である押出材の製造方法である。
式2:h
c≧h
amax2
ここで、
h
amax2=3.1×t
b+f(R)−g(R,h
e)
f(R)=123.7×ln(R)−75
g(R,h
e)=(0.2×R+9)×√h
e
(h
c(mm):押出しを終了したときの柱状ビレットの上記した一方の端面の位置と、切断面の位置との距離)
【0011】
このとき、上記したh
cが(1.5×h
amax1)≧h
c≧h
amax1を満たすことが好ましい。あるいは、上記したh
cが(1.5×h
amax2)≧h
c≧h
amax2を満たすことが好ましい。
上記の距離h
eは、3〜30mmであることが好ましい。また、上記の押出比Rが、3〜40であることが好ましい。また、上記の柱状容器の端部の厚さt
bが、5〜40mmであることが好ましい。そして、この柱状容器の端部の厚さt
bに加えて、柱状容器の側部の厚さt
sが、5〜40mmであることが好ましい。
【0012】
また、本発明は、柱状ビレットをコンテナに挿入し、このコンテナに挿入した柱状ビレットの一方の端面に、ダミーブロックを介して、圧縮力を付与し、柱状ビレットの他方の端面側に設置したコンテナのダイス孔から上記の柱状ビレットを押出して、柱状ビレットを押出材の形状に成形する押出材の製造方法において、
上記の柱状ビレットは、内部に収納部を有する柱状容器と、その収納部に収納された柱状被成形体とを備え、かつ、この柱状容器は、圧縮力が付与される端部の厚さがt
b(mm)であり、
押出比Rで上記のダイス孔からの押出しを終了して、このダイス孔から押出された押出材を上記の柱状ビレットから切断するとき、切断面の位置が関係式(1.5×h
amax1)≧h
c≧h
amax1を満たす押出材の製造方法である。
ここで、
h
amax1=3.1×t
b+f(R)
f(R)=123.7×ln(R)−75
(h
c(mm):押出しを終了したときの柱状ビレットの上記した一方の端面の位置と、切断面の位置との距離)
【0013】
また、本発明は、柱状ビレットをコンテナに挿入し、このコンテナに挿入した柱状ビレットの一方の端面に、ダミーブロックを介して、圧縮力を付与し、柱状ビレットの他方の端面側に設置したコンテナのダイス孔から上記の柱状ビレットを押出して、柱状ビレットを押出材の形状に成形する押出材の製造方法において、
上記の柱状ビレットは、内部に収納部を有する柱状容器と、その収納部に収納された柱状被成形体とを備え、かつ、この柱状容器は、圧縮力が付与される端部の厚さがt
b(mm)であり、
押出比Rで上記のダイス孔からの押出しを終了して、このダイス孔から押出された押出材を上記の柱状ビレットから切断するとき、切断面の位置が関係式(1.5×h
amax2)≧h
c≧h
amax2を満たす押出材の製造方法である。
ここで、
h
amax2=3.1×t
b+f(R)−g(R,h
e)
f(R)=123.7×ln(R)−75
g(R,h
e)=(0.2×R+9)×√h
e
(h
c(mm):押出しを終了したときの柱状ビレットの上記した一方の端面の位置と、切断面の位置との距離)
(h
e(mm):押出しを終了したときのダミーブロックの先端の位置とダイスとの距離)
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、柱状被成形体を柱状容器に収納してなる柱状ビレットを用いた押出材の製造方法において、押出しを終了して、押出材をビレットから切断したときに、切断後の押出材の内部に容器材が介在することを抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の押出材の製造方法は、柱状ビレットを挿入したコンテナの一端側より、柱状ビレットの一方の端面に圧縮力を付与して、柱状ビレットの他方の端面側であるコンテナの他端側に設置したダイス孔から柱状ビレットを押出す「直接押出」によるものである。そして、この押出しを終了したときには、ダイス孔から押出された押出材を、コンテナ中の残りの柱状ビレットから切断する工程を含むものである。以下、本発明の要件について説明する。
【0017】
(1)本発明が用いるビレットは、内部に収納部を有する柱状容器に、柱状被成形体を収納した「柱状ビレット」である。そして、この柱状容器は、押出時に圧縮力が付与される端部がt
b(mm)の厚さを有するものである。
例えば、各種のチタン合金やニッケル基等の超耐熱合金といった難加工性の材質でなるビレットを熱間加工温度に加熱して押出成形した場合、成形中のビレットの温度が低下して、特に、ビレットの表面温度が熱間加工温度から大幅に低下し得る。そして、その温度低下によって、熱間加工性が悪くなり、これが押出材の表面に疵や割れ等の欠陥が生じる要因となっていた。よって、本発明の場合、この温度低下を抑制するために、通常のビレットを「被成形体」として、この被成形体を容器に収納したものを「改良したビレット」とし、これを熱間加工温度に加熱してコンテナに挿入し押出成形する。この改良したビレットによって、上記の容器が、被成形体とコンテナとの間の断熱材として機能し、押出成形中の被成形体の表面温度の低下を抑制することができる。
【0018】
なお、上記の「被成形体」の材質について、ニッケル基超耐熱合金には、例えば、その組織中に金属間化合物の析出強化相である「ガンマプライム」を含む合金を挙げることができる。組織中にガンマプライムを含む「析出強化型」のニッケル基超耐熱合金は、代表的な難加工材の一つである。そして、このようなニッケル基超耐熱合金は、一具体例として、700℃におけるガンマプライムの平衡析出量が「35モル%以上」のものがある。さらには、このガンマプライムの平衡析出量が40モル%以上や、50モル%以上、60モル%以上のものがある。このガンマプライムの平衡析出量が大きい程、難加工材であると言える(現実的には、75モル%程度が上限である)。
上記のガンマプライムの平衡析出量とは、熱力学的な平衡状態において安定なガンマプライムの析出量のことである。そして、このガンマプライムの平衡析出量を「モル%」で表した値は、ニッケル基超耐熱合金が有する成分組成で決めることができる値である。この平衡析出量のモル%の値は、熱力学平衡計算による解析で求めることができる。そして、熱力学平衡計算による解析の場合、各種の熱力学平衡計算ソフトを用いることで、精度よく、かつ、容易に求めることができる。
【0019】
700℃におけるガンマプライムの平衡析出量が35モル%以上の析出強化型のニッケル基超耐熱合金として、例えば、質量%で、C:0.25%以下、Cr:8.0〜25.0%、Al:0.5〜8.0%、Ti:0.4〜7.0%、残部Niおよび不純物でなる基本的な成分組成が挙げられる。そして、さらに、必要に応じて、質量%で、Mo:8.0%以下を含有することができる。
また、700℃におけるガンマプライムの平衡析出量が40モル%以上の析出強化型のニッケル基超耐熱合金として、例えば、質量%で、C:0.001〜0.250%、Cr:8.0〜22.0%、Mo:2.0〜7.0%、Al:2.0〜8.0%、Ti:0.4〜7.0%、残部Niおよび不純物でなる基本的な成分組成が挙げられる。
そして、上記の二つの基本的な成分組成において、さらに、必要に応じて、質量%で、Co:28.0%以下、W:6.0%以下、Nb:4.0%以下、Ta:3.0%以下、Fe:10.0%以下、V:1.2%以下、Hf:1.0%以下、B:0.300%以下、Zr:0.300%以下のうちから選択される1種または2種以上の元素種を含有することができる。このようなニッケル基超耐熱合金として、例えば、713C合金や、UDIMET720(UDIMETはスペシヤル メタルズ コーポレーション社の登録商標)、IN100が代表的である。
【0020】
また、上記した容器の材料には、各種の低炭素鋼やステンレス鋼を用いることができる。
「炭素鋼」とは、JIS−G−0203の番号1104において、「鉄と炭素の合金で炭素含有率が,通常0.02〜約2%の範囲の鋼。少量のけい素,マンガン,りん,硫黄などを含むのが普通である。」ことで定義される材料のことである。そして、この炭素鋼の分類の中で、容器の材料を低炭素鋼とすることで、低炭素鋼の炭素量は概ね0.25質量%以下であることから、硬度が低く、この容器は塑性加工性に優れるものである。よって、低炭素鋼製の容器が、押出成形中の「改良したビレット」の変形抵抗の増加に作用することはなく、円滑な押出成形を促すことができる。
また、容器の材料をステンレス鋼とすることで、ステンレス鋼もまた、その硬度が低いので(炭素量は概ね0.15質量%以下である)、円滑な押出成形を促すことができる。さらに、オーステナイト系ステンレス鋼は、ガラス潤滑剤との濡れ性に優れるので、押出成形時にガラス潤滑剤を使用する場合、オーステナイト系ステンレス鋼製の容器を用いることが好ましい。「オーステナイト系ステンレス鋼」とは、JIS−G−0203の番号3804において、「常温においてもオーステナイト組織を示す」ことで定義されるステンレス鋼のことである。
【0021】
そして、通常、押出成形用のビレットの形状は、円柱に代表される「柱状」であり、本発明が用いる上記の改良したビレットも柱状である。本発明が用いる改良したビレットは、それに収納されている被成形体(通常のビレット)の形状も「柱状」であり、この柱状被成形体が柱状容器に収納されている。そして、この柱状容器は、後述の「切断位置の押出材内部に容器材が介在する」という課題を解決するために、押出時に圧縮力が付与される端部が「t
b(mm)」の厚さを有している。以降、本発明が用いる上記の改良したビレットを、単に「柱状ビレット」と記す。
【0022】
本発明が用いる「柱状ビレット」の形態について、その製造方法も合わせて、説明しておく。
図2は、本発明が用いることができる柱状ビレット6の一例を示した概略図である。
図2において、通常のビレットである柱状被成形体7は押出成形装置のコンテナの内形状に即して、略円柱状の形状を有している。そして、この柱状被成形体7を内部に納めることができる、有底の略円柱状(円筒状)の柱状容器8を準備して、この柱状容器8の内部に上記の柱状被成形体7を格納する。そして、その柱状被成形体7を格納後の柱状容器8の上面を、例えば、柱状容器8と同材質の円盤状の蓋9で封止して、収納する。あるいは、柱状被成形体7を無底の円筒8’に入れてから、または、柱状被成形体7の周面をシートで巻き覆ってから、残る上下面を蓋9で封止して、収納してもよい。封止は、溶接等によって行うことができる。蓋9の縁はテーパー形状を有しており、柱状ビレット6の蓋9側の端面が、コンテナに挿入するときのダイス側となる。そして、この場合、柱状容器8の有底の端面側から圧縮力を付与することとなり、この柱状容器8の圧縮力が付与される端部の厚さが「t
b(mm)」を有している。
上記の柱状ビレットは、柱状被成形体の全体を柱状容器に収納すること(つまり、押出成形中のコンテナ、ダイス、ダミーブロックと接する柱状被成形体の全表面を柱状容器で覆うこと)が、押出成形の初期から終期に掛けて、柱状被成形体の表面温度の低下を抑制できる点で好ましい。
【0023】
(2)本発明の押出材の製造方法は、上記の柱状ビレットを用いた押出しを終了して、ダイス孔から押出された押出材をコンテナ中の残りの柱状ビレットから切断するときに、その切断面の位置を、上記のt
b(mm)と押出比Rとの関係から算出される値を基準にして決定するものである。
上記の柱状ビレットを押出成形したとき、柱状被成形体(通常のビレット)を収納している柱状容器は、柱状被成形体と共に“一体的に”変形する。そして、この柱状ビレットにおける押出中の各部分は、その中心部分の方が側面部分よりも速く流動する(流動速度が大きい)。この結果、押出しの終期において、コンテナ中の柱状ビレットの圧縮力が付与されている側の端面(つまり、有底の柱状容器の底部)がダイスに近づいたときに、この柱状容器の端部が押出材の中心軸に入り込むように流動して、押出材の内部に容器材が介在した状態となる。
【0024】
図1に、押出材の内部に容器材が介在した状態の一例を示す。
図1において、押出しを終了し、ダイス1(図示しないダイスホルダーを含む)から押出された押出材2を切断する工程で、切断後の押出材2への上述した容器材3の介在を避けるには、その切断面の位置を、コンテナ4中に残る柱状ビレットの圧縮力を付与した端面の位置(つまり、ダミーブロック5の先端の位置)から、十分に離す必要がある。つまり、押出しを終了したときの柱状ビレットの一方の端面の位置と、切断面の位置との距離「h
c」を大きくすることである。
【0025】
しかし、上記のh
cの値を無用に大きくすると、容器材が介在していない押出材の“健全な部位”までをも切断除去することとなって、押出材の歩留が低下する。そこで、本発明者は、押出材に上記の容器材が介在しない理想の切断位置を知るために、柱状ビレットを用いた押出しを行ったときに、押出材にどの程度の容器材が入り込むのか(つまり、
図1に示される押出材への容器材の入り込み量h
a)を調査した。その結果、容器材の入り込み量h
aは、柱状容器の一方の端部の厚さt
bが大きくなる程、または、押出比Rが大きくなる程、大きくなるという相関現象があることを突きとめた。なお、本発明での押出比とは、予熱前の(コンテナの断面積/ダイス孔の断面積)で求められる値のことである。そして、上記の相関現象を利用することで、上記のt
b(mm)と押出比Rとの関係から上記の相関現象を反映した値を算出できるので、この算出された値を基準にすることで、容器材が介在しない押出材の切断面の位置を決定できることを突きとめた。この場合、上記の算出された値とは、例えば、押出しを終了したときに、上記の押出材への容器材の入り込み量h
aがとり得る「最大値」である。
【0026】
そして、上記の算出された値を、押出材への容器材の入り込み量h
aがとり得る最大値である「h
amax」としたときに、押出材の切断面の位置が「下記の式1の関係を満たす位置である」ことが、容器材が介在しない押出材の切断面の位置として好ましいことを突きとめた。つまり、上記の押出比Rの値を「123.7×ln(R)−75」の関数f(R)で換算したときに、上記の容器材の入り込み量h
aが、概ね「h
amax1=3.1×t
b+f(R)」の比例関係を有して、このh
amax1の値よりも小さい値の範囲内に収まることを突きとめた(単位は「mm」である)。
式1:h
c≧h
amax1
ここで、
h
amax1=3.1×t
b+f(R)
f(R)=123.7×ln(R)−75
(h
c(mm):押出しを終了したときの上記した柱状ビレットの一方の端面の位置と、切断面の位置との距離)
【0027】
本発明者は、押出成形を行ったときの、上記の容器材の入り込み量h
a値の挙動を、そのh
aが大きくなる条件の場合までをも加味して、シミュレーション解析した。なお、上記のh
aが大きくなる条件の場合とは、例えば、柱状容器の一方の端部(つまり、ステム側)の厚さt
bや、押出比が大きい条件の場合である。そして、後述する押出成形装置の許容荷重限界の位置が、ダイスに近い条件の場合であったり、押出成形中のダミーブロックの先端の位置が、この許容荷重限界の位置に達するまで、押出成形を行ったりした条件の場合である。その結果、柱状容器に柱状被成形体を収納した「柱状ビレット」を用いた直接押出において、押出中の柱状ビレットの圧縮力が付与されている側の端面の位置(つまり、ダミーブロックの先端の位置)が、例えば、ダイス(ダイスホルダーを含む)に向かって押出成形装置の許容荷重限界の位置(一般的には、ダミーブロックの先端の位置とダイスとの距離(
図1のh
e)が概ね30mm以下の位置)にまで近づいて、この直接押出を終了したときに、上記の容器材の入り込み量h
aは、圧縮力が付与される前の柱状容器の一方の端部の厚さt
bの概ね3.1倍の「最大値」を呈しているという関係を得た。そして、このときの、上記した容器材の入り込み量h
aの最大値h
amax1は、押出比Rにも依存して、その「依存値」の分だけ増加する。そして、本発明者が詳細に調査した結果、この押出比Rに関する「依存値」が、押出比Rとの間で、f(R)=123.7×ln(R)−75の関係で整理できることを突きとめた。そして、この押出比Rと依存値との関係は、押出比Rが、好ましくは3〜40の範囲にあるときに、より高い精度で成立することを確認した。より好ましくは4以上、さらに好ましくは5以上の押出比Rである。また、より好ましくは30以下、さらに好ましくは20以下の押出比Rである。
【0028】
したがって、押出しを終了して、ダイス孔から押出された押出材を柱状ビレットから切断するときには、コンテナ内に残る柱状ビレットの一方の端面の位置と切断面の位置との距離h
cを、柱状容器の一方の端部の厚さt
bと、関数f(R)の値とによって決定されるh
amax1の値“以上”の条件とすることで、押出材への容器材の介在を抑制することができる。つまり、かかる条件は、「h
c≧3.1×t
b+f(R)」の式1の条件である(単位は「mm」である)。この条件を満たした切断位置で、必要であれば、切断装置の仕様等の拘束条件に配慮して、押出材を切断すれば、上記の厚さt
bや押出比Rが大きい場合であっても、押出材への容器材の介在をより効果的に抑制することができる。そして、上述した許容荷重限界の位置がダイスに近い押出成形装置の場合であっても、あるいは、押出成形中のダミーブロックの先端の位置が上述した許容荷重限界の位置に達するまで押出成形を行った場合であっても、押出材への容器材の介在をより効果的に抑制することができる。
【0029】
なお、上記の式で求めたh
amax1の値に対して、切断位置である上記の距離h
cを大きくしすぎることは、押出材内部への容器材の介在抑制により効果的であるが、その分、上述の通り、押出材の歩留低下を招き得る。よって、上記の式1の関係において、距離h
cは、h
amax1の値の1.5倍以下とすることが好ましい。より好ましくは1.4倍以下、さらに好ましくは1.3倍以下とする。そして、よりさらに好ましくは1.2倍以下、特に好ましくは1.1倍以下とする。
そして、この押出材の歩留向上については、押出材の切断面の位置を定める際に重要な基準となる上記の「h
amax」の値を決定するとき、その決定の概念に、ダミーブロックの先端の位置とダイスとの距離である上記の「h
e」の値を導入することが効果的である。なお、「h
e」は
図1に示す距離である。
【0030】
すなわち、押出材への容器材の入り込み量h
aは、押出しを終了したときのダミーブロックの先端の位置がダイスに近くなる程(つまり、上記のh
eの値が小さくなる程)、大きくなることは、上述の通りである。そこで、上記の「h
amax1=3.1×t
b+f(R)」の式においては、例えば、様々な許容荷重限界等の要因によって、上記のh
eの値が広い範囲で変化したときでも、切断後の押出材の内部に容器材が介在することを抑制するという本発明の効果を達成できるように、予め安全性を持たせている。
つまり、本来であれば、h
eの値が小さいときには、その小ささに相当するだけの値(つまり、h
eを変数に含んだ項の値)がh
amaxの値に加えられて、h
amax1の値を大きく見積もっておかないと、切断後の押出材の内部に容器材が介在する懸念がある。そこで、上記の「h
amax1=3.1×t
b+f(R)」の式においては、上記したh
eの値の小ささに相当するだけの値を、予め見越して、h
amax1の値に加えておくことで、例えば、h
eの値が3〜30mmの広い範囲で変化しても、h
amax1の値が安全に大きく保たれるように配慮がされている。
【0031】
よって、上記の「h
amax1=3.1×t
b+f(R)」の式を用いて押出材の切断面の位置を定めれば、押出し終了時のダミーブロックの先端の位置とダイスとの距離が近いときであっても(つまり、押出材への容器材の入り込み量h
aが大きくなる条件のときであっても)、切断後の押出材の内部に容器材が介在することを抑制できる。しかし、押出し終了時のダミーブロックの先端の位置とダイスとの距離が遠いときには(つまり、押出材への容器材の入り込み量h
aが小さくなる条件のときには)、上記の式で算出されたh
amax1の値が、実際の入り込み量h
aと比べて、より余裕を持って、大きくなる場合がある。このような場合であっても、本発明の効果である押出材への容器材の入り込みの抑制は達成できるが、押出材の歩留が低下する点で、改善の余地がある。
【0032】
そこで、押出材の切断面の位置を決定するときには、その基準となる数値の算出に、さらに、上記のダミーブロックの先端の位置とダイスとの距離h
eも使用することが、押出材への容器材の入り込みの抑制に加えて、押出材の歩留向上にも好ましい。そして、上記のh
amax1の式に対しては、これに「h
eを変数に含んだ項」も導入した、下記の「h
amax2」の式とすることが好ましい。
h
amax2=3.1×t
b+f(R)−g(R,h
e)
g(R,h
e)=(0.2×R+9)×√h
e
(h
e(mm):押出しを終了したときのダミーブロックの先端の位置とダイスとの距離)
【0033】
上記のg(R,h
e)項は、h
eの変化を加味して予め加えられていた安全値である。この安全値は、h
eの平方根の値との相関で整理することができる。なお、このh
eは、押出しを終了したときのダミーブロックの先端の位置とダイスとの距離であるところ、この「ダミーブロックの先端の位置」とは、いわば、圧縮力を付与した「柱状ビレットの一方の端面の位置」でもある。
そして、上記のh
amax2の値もまた、h
amax1と同様、押出比Rに大きく依存することから、上記の安全値も、押出比Rを含む係数によって補正されている。そして、この係数は、(0.2×R+9)で整理することができる。
【0034】
押出材の歩留を向上させたいときには、先述の式で算出されたh
amax1の値から、そのときの押出比Rと上記のh
eとの値によるg(R,h
e)項の値を引き戻して、これを「h
amax2」とすることで、この算出されたh
amax2の値を実際の入り込み量h
aにより近づけることできる。そして、コンテナ内に残る柱状ビレットから押出材を切断するときに、その柱状ビレットの一方の端面の位置と切断面の位置との距離h
cが、上記のh
amax2の値との間で「h
c≧h
amax2」の式2の関係を満たしていることで、押出材への容器材の介在を抑制することができて、かつ、容器材が介在していない押出材の健全な部位の切断除去量も低減できるので、押出材の歩留向上に効果的である。
そして、上記の式で求めたh
amax2の値においても、h
amax1の値のときと同様、上記の距離h
cとの関係は、(1.5×h
amax2)≧h
c≧h
amax2を満たすことが好ましい。上記の距離h
cは、より好ましくはh
amax2の1.4倍以下、さらに好ましくは1.3倍以下とする。そして、よりさらに好ましくは1.2倍以下、特に好ましくは1.1倍以下とする。
【0035】
なお、押出材を切断する切断面の位置を決定するときに、上記のh
eの値を使用するかしないかに関わらず、このh
eの値は、3〜30mmであることが好ましい。そして、このh
eの値が、30mmから、例えば、20mm以下に小さくなっていって、実際の押出材への容器材の入り込み量が大きくなっていく場合であっても、本発明であれば、押出材への容器材の介在を抑制することができる。また、上記のh
eの値が、3mmから、例えば、10mm以上に大きくなっていって、実際の押出材への容器材の入り込み量が小さくなっていく場合であっても、本発明であれば、押出材への容器材の介在を抑制することができて、かつ、押出材の歩留向上にも効果的である。よって、被成形体が、例えば、析出強化型のニッケル基超耐熱合金といったように、難加工性のものであった場合に、上記のh
eの値が大きくなり得るので、本発明は効果的に作用する。
【0036】
また、上記の式1および式2の関係による本発明の効果を達成するにおいて、上記した柱状容器の一方の端部の厚さt
bの数値を具体的に指定する必要はない。但し、上記した柱状容器の一方の端部の厚さt
bが小さすぎると(薄すぎると)、押出成形中において、ダミーブロックと接触する柱状ビレットの端面からの抜熱により、中に収納されている柱状被成形体の表面温度の低下に繋がる。そして、熱間加工温度に比して、上記の柱状被成形体の表面温度が著しく低下すると、押出材の表面割れの原因となり得る。よって、柱状容器の一方の端部の厚さt
bは、「5mm以上」とすることが好ましい。より好ましくは7mm以上である。さらに好ましくは10mm以上である。
一方、上記した柱状容器の一方の端部の厚さt
bが大きすぎることは(厚すぎることは)、柱状容器の質量増加に繋がり、押出材の歩留低下や、柱状ビレットの作製効率の低下の原因となり得る。また、上記した柱状容器の一方の端部の厚さt
bが大きすぎても、柱状容器による断熱効果は飽和する。よって、柱状容器の一方の端部の厚さt
bは、「40mm以下」とすることが好ましい。より好ましくは30mm以下である。さらに好ましくは20mm以下である。
【0037】
また、本発明者は、上記の押出材への容器材の入り込み量h
aが、柱状容器の周面を形成する側部の厚さt
sに少なからず依存していることを知見した。そして、柱状容器の側部の厚さt
sを大きくすることで、押出材への容器材の入り込み量h
aをさらに小さくできることを突きとめた。この作用については、柱状ビレットの全断面に占める柱状容器の面積(割合)が起因しており、この柱状容器の占める割合を大きくすることで、押出材への容器材の入り込み量h
aを小さくできるものと考えられる。
そして、具体的には、柱状容器の一方の端部の厚さt
bが上記の「5mm以上」であるときに、柱状容器の側部の厚さt
sは、薄くても「5mm」であると、押出材への容器材の入り込み量h
aがさらに小さくなる傾向が生じることを見いだした。よって、本発明の場合、柱状容器の一方の端部の厚さt
bが5mm以上であるときに、柱状容器の側部の厚さt
sは5mm以上とすることが好ましい。より好ましくは6mm以上である。これによって、押出材への容器材の介在をより確実に抑制することができる。
なお、本発明の効果を達成するにおいて、上記した柱状容器の側部の厚さt
sの上限を指定する必要はない。但し、柱状ビレットの作製効率の低下等を考慮すれば、「40mm以下」とすることが好ましい。より好ましくは30mm以下である。さらに好ましくは20mm以下である。特に好ましくは10mm以下である。
【0038】
本発明の押出材の製造方法は、例えば、直径が50〜250mmの柱状被成形体の押出成形に適用することができる。そして、好ましくは、3〜40の広範囲の押出比に対応できることから、例えば、断面の直径が100mm以下、70mm以下、50mm以下、20mm以下の棒材や線材といった、様々な断面径を有した押出材の製造に適用することができる。
【実施例】
【0039】
ニッケル基超耐熱合金(713C合金)の成分組成を有した溶湯を鋳造して、インゴットを得た。なお、このニッケル基超耐熱合金の700℃におけるガンマプライムの平衡析出量は、熱力学平衡計算ソフト「JMatPro(Version8.0.1,Sente Software Ltd.社製)」に、この合金の構成元素の含有量を入力して計算したところ、70モル%であった。そして、このインゴットに機械加工を行って、通常のビレットである、直径82mm×長さ140mmの円柱状被成形体を作製した。
次に、外径108mm、内径92.5mm(すなわち、側部の厚さt
sが7.75mm)、高さ170mmであり、底部の厚さt
bが30mmであるオーステナイト系ステンレス鋼JIS−SUS304製のカップ状(有底)の円柱状容器を準備して、この内部に、上記の円柱状被成形体を格納した。そして、この円柱状被成形体を格納した後の円柱状容器の上面を、縁にテーパー加工が施されたSUS304製の円盤状の蓋で溶接によって封止し、本発明に供する「円柱状ビレットA」を作製した(
図2参照。テーパー加工がされた方の端面が、コンテナに挿入するときのダイス側となる)。
【0040】
また、上記の円柱状ビレットAと同じ作製要領に従って、円柱状被成形体および円柱状容器の寸法を変更して、外径80mm、内径67mm(すなわち、側部の厚さt
sが6.5mm)、高さ140mmであり、底部の厚さt
bが10mmである円柱状容器の内部に、直径66mm×長さ110mmの円柱状被成形体を格納した「円柱状ビレットB」を作製した。
そして、上記の円柱状ビレットAと同じ作製要領に従って、円柱状被成形体および円柱状容器の寸法を変更して、外径80mm、内径67mm(すなわち、側部の厚さt
sが6.5mm)、高さ130mmであり、底部の厚さt
bが20mmである円柱状容器の内部に、直径66mm×長さ100mmの円柱状被成形体を格納した「円柱状ビレットC」を作製した。
【0041】
上記の円柱状ビレットを1100℃の熱間加工温度に加熱して、この加熱した円柱状ビレットを500℃の予熱温度に加熱した
図3の押出成形装置のコンテナ(JIS−SKD61製)に挿入した。そして、このコンテナに挿入した円柱状ビレットに、円柱状容器の底部側より圧縮力を付与して、ステム速度:15(mm/s)で、表1の条件による熱間押出成形を行った。なお、コンテナに挿入する前の円柱状ビレットの周面には、市販の水溶性ガラス潤滑剤を塗布した。また、円柱状ビレットとダイスとの間には、市販のガラス粉末で作製した潤滑用ガラスパッドを設置した。
【0042】
【表1】
【0043】
そして、円柱状ビレットの圧縮力が付与されている側の端面の位置(つまり、ダミーブロックの先端の位置)が、押出成形装置の許容荷重限界の位置(本実施例の場合、ダミーブロックの先端の位置が、ダイス(厚さ60mm)に向かって3mmの位置)に近づいて、表2に示すダイスとの距離h
eの位置に到達した時点で押出しを完了して、押出材の断面を観察し、ダミーブロックの先端の位置からの、押出材への容器材の“実際の”入り込み量h
aを確認した(
図1)。この実際の入り込み量h
aを、本発明に係る「3.1×t
b+f(R)」の式および「3.1×t
b+f(R)-g(R,h
e)」の式で求めた、それぞれ場合における“とり得る”入り込み量の最大値であるh
amax1およびh
amax2とともに、表2に示す。
【0044】
【表2】
【0045】
それぞれの押出成形について、実際の押出材への容器材の入り込み量h
aは、表2の通りであった。押出成形1、2、5、8〜10は、円柱状容器の底部の厚さt
bが大きかったこと等に起因して、押出材への容器材の入り込み量h
aが大きく、ダイス孔から押出された押出材の位置にまで大きく及んでいた。そして、押出成形8〜10は、押出比Rも大きかったことから、円柱状容器の底部の厚さt
bが押出成形1、2、5に比べて薄くても、押出材への容器材の入り込み量h
aがさらに大きかった。
【0046】
このような結果において、ダイス孔から押出された押出材を柱状ビレットから切断するときに、その切断面の位置(つまり、ダミーブロックの先端の位置からの距離)を、「3.1×t
b+f(R)」の関係で求められたh
amax1の値以上の距離h
cとすることで、円柱状容器の底部の厚さt
bが大きく、または、押出比Rが大きく、容器材の入り込み量h
aが大きくなる条件(つまり、押出成形1、2、5、8〜10)の場合であっても、切断後の押出材内部への容器材の介在を抑制できることを確認できた。また、これについては、押出材の切断位置に係る上記の距離h
cを、「3.1×t
b+f(R)−g(R,h
e)」の関係で求めたh
amax2の値以上にしても、切断後の押出材内部への容器材の介在を抑制できることを確認できた。そして、この場合、h
amax2の値がh
aの値に近づいて、押出材の歩留が向上できることが期待された。
【0047】
押出成形3は、円柱状容器の底部の厚さt
bが小さく、かつ、押出比Rが小さいことに加えて、押出し終了時のダミーブロックの先端の位置とダイスとの距離h
eも大きく、容器材の入り込み量h
aが小さくなる条件のものである。そして、押出成形3の場合、実際に容器材の入り込み量h
aが小さく、ダイス孔から押出された押出材の位置にまで及んでいなかったが、押出材の切断位置の決定にh
amax2の値を用いることで、そのh
amax2の値がダイスの厚さ程度にまで小さくなって、押出材の歩留のさらなる向上が期待された。
【0048】
そして、h
amax1およびh
amax2のうちのいずれかの値を用いたときに、その切断面の位置が、h
amaxの値の1.5倍以下の距離であっても、更には、それが1.1倍以下の距離であっても、切断後の押出材内部への容器材の介在を抑制できることを確認できた。
そして、それぞれの押出成形について、円柱状容器の側部の厚さt
sも適度に調整しておいたことで、上記の入り込み量h
aは、h
amaxの値に対して、より小さく抑えられていたことを確認できた。