(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記遮熱構造体は周方向に分割するように複数設けられており、各遮熱構造体の内部にそれぞれ冷却液室が備えられていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の蒸発源。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0011】
(実施例1)
図1〜
図6を参照して、本発明の実施例1に係る蒸発源及び蒸着装置について説明する。
図1は本発明の実施例1に係る蒸着装置の概略構成図である。
図2は本発明の実施例1に係る蒸発源の平面図である。
図3は本発明の実施例1に係る蒸発源の側面図であり、蒸着装置内に配置された状態における蒸発源の側面図を示している。
図4は本発明の実施例1に係る蒸発源の模式的断面図であり、
図2中のA1−A2断面図に相当する。
図5は本発明の実施例1に係るリフレクタの平面図であり、蓋部を外した状態を示している。
図6は本発明の実施例1に係るリフレクタの内部構造の概略構成図であり、リフレクタの内部構造を簡略的な断面図で示している。
図1,
図3,
図4及び
図6においては、図中の上方が蒸着装置の使用時における鉛直方向上方に相当し、図中下方が蒸着装置の使用時における鉛直方向下方に相当する。
【0012】
<蒸着装置>
図1を参照して、蒸着装置1について簡単に説明する。蒸着装置1は、真空ポンプ30によって、内部が真空に近い状態となるように構成されるチャンバ20と、チャンバ20の内部に配置される蒸発源10とを備えている。蒸発源10は、基板70に蒸着させる物質の材料を加熱させることで、当該材料を蒸発又は昇華させる役割を担っている。この蒸発源10によって蒸発または昇華された物質が、チャンバ20の内部に設置された基板70に付着されることで、基板70に薄膜が形成される。
【0013】
また、蒸着装置1には、チャンバ20の外部に備えられた冷却液ポンプ40から供給される冷却液を蒸発源10に供給するための第1配管50と、蒸発源10からチャンバ20の外部に冷却液を排出するための第2配管60とが備えられている。
【0014】
<蒸発源>
特に、
図2〜
図4を参照して、本実施例に係る蒸発源10の全体構成について説明する。蒸発源10は、基板70に蒸着させる物質の材料を収容する坩堝100と、坩堝100を取り囲むように設けられ、坩堝100を加熱する加熱体200と、加熱体200を取り囲むように設けられ、熱を遮断する遮熱構造体としてのリフレクタ300とを備えている。坩堝100を加熱する方式は各種の構成が採用され得る。例えば、通電加熱方式が採用される場合には、加熱体200は、通電されるワイヤに相当する。また、高周波誘導加熱方式が採用される場合には、加熱体200は加熱コイルに相当する。
【0015】
リフレクタ300は、円筒状のリフレクタ本体310と、リフレクタ本体310の下方に設けられる底板部320と、リフレクタ本体310の上方に設けられる蓋部330とから構成される。このリフレクタ300は、載置台350に載置される。
【0016】
なお、チャンバ20の内部にリフレクタ300を設置した際に、載置台350に対するリフレクタ300の傾きを調整する傾き調整機構が設けられている。この傾き調整機構は、それぞれの位置で、載置台350とリフレクタ300との間隔を調整する複数のネジ部品360により構成されている。これら複数のネジ部品360によって、それぞれの位置
で、載置台350とリフレクタ300との間隔を調整することにより、載置台350に対するリフレクタ300の傾きを調整することができる。
【0017】
リフレクタ本体310の内壁面312と加熱体200との間には、加熱体200からの熱を反射させる円筒状リフレクタ410が設けられている。また、加熱体200と底板部320との間には、加熱体200からの熱を反射させる板状リフレクタ420が設けられている。なお、板状リフレクタ420は中央に孔の開いた円板状の部材により構成されている。本実施例では、円筒状リフレクタ410と板状リフレクタ420は離れるように構成されているが、これらは繋がるように構成してもよい。また、円筒状リフレクタ410と板状リフレクタ420は、リフレクタ300を構成する各種部材に固定すればよい。そして、リフレクタ300におけるリフレクタ本体310の内部には、リフレクタ本体310の内壁面312に沿うように設けられ、かつ冷却液Lが流れる冷却液室311が設けられている。本実施例に係るリフレクタ本体310の内壁面312は、加熱体200からの熱を反射させる反射面としての機能を有している。また、本実施例に係る冷却液室311は、円筒状の空間により形成されている。そして、この冷却液室311内には、冷却液Lを冷却液室311の下方から排出させる排液管340が備えられている。
【0018】
リフレクタ300における底板部320には、リフレクタ300の底面から冷却液室311内に至るように設けられ、冷却液Lが供給される供給通路321が設けられている。また、この底板部320には、冷却液室311内からリフレクタ300の底面に至るように設けられ、冷却液Lが排出される排出通路322が設けられている。そして、排液管340は、一端が冷却液室311内の上方に位置し、他端が排出通路322に接続されている。この排液管340の一端側の端面に設けられた開口部は、上方を向くように構成されている。
【0019】
上述した第1配管50は、チャンバ20に形成された第1挿通孔21内と、載置台350に形成された第3挿通孔351内とを挿通するように設けられている。また、この第1配管50の一端側は、供給通路321に接続されている。そして、第1配管50と第1挿通孔21との間の環状隙間は、弾性体製の第1ガスケット26によって封止されており、第1配管50と第3挿通孔351との間には環状隙間が確保されるように設計されている。
【0020】
また、第2配管60は、チャンバ20に形成された第2挿通孔22内と、載置台350に形成された第4挿通孔352内とを挿通するように設けられている。また、この第2配管60の一端側は、排出通路322に接続されている。そして、第2配管60と第2挿通孔22との間の環状隙間は、弾性体製の第2ガスケット27によって封止されており、第2配管60と第4挿通孔352との間には環状隙間が確保されるように設計されている。なお、第1ガスケット26及び第2ガスケット27については、断面形状が円形のOリングや、断面形状が矩形の角リングなど、各種公知技術を適用することができる。
【0021】
上述した傾き調整機構によって、載置台350に対するリフレクタ300の傾きが変化すると、第1配管50と第2配管60は、チャンバ20及び載置台350に対する傾きが変化する。この場合でも、第1配管50と第3挿通孔351との間には環状隙間が確保されるように設計されているので、載置台350に対する第1配管50の傾きの変化に支障が出ることはない。また、第1ガスケット26は弾性体により構成されているため、チャンバ20に対する第1配管50の傾きが変化しても、第1配管50と第1挿通孔21との間の環状隙間は封止された状態が維持される。第2配管60と載置台350との関係、及び第2配管60とチャンバ20との関係についても同様である。
【0022】
<冷却液の流れ方>
特に、
図4〜
図6を参照して、冷却液Lの流れ方について説明する。なお、
図5においては、リフレクタ300のうち、蓋部330を取り外した状態の平面図を簡略的に示している。また、
図6においては、冷却液Lの流れ方が分かり易いように、リフレクタ300の内部構造において、冷却液Lの流れ方に関連する部材を簡略的に示している。
【0023】
第1配管50から供給される冷却液Lは、供給通路321を通って、冷却液室311内に送り込まれる。供給される冷却液Lの増加に伴って、冷却液Lの液面は、冷却液室311内において、徐々に上昇していく(
図6中の実線矢印参照)。そして、冷却液Lの液面が、排液管340の上端位置Hを超えると、冷却液Lは、排液管340の上端(一端側の端面)の開口部から排液管340の管内に入り、重力により落下する(
図6中の点線矢印参照)。その後、冷却液Lは、排出通路322を通り、第2配管60からチャンバ20の外部に排出される。
【0024】
<本実施例に係る蒸発源の優れた点>
本実施例に係る蒸発源10によれば、遮熱構造体としてのリフレクタ300の内部(リフレクタ本体310の内部)に、リフレクタ本体310の内壁面312に沿うように冷却液室311が設けられている。従って、パイプ状の管によって、冷却液を流す場合に比べて、冷却効率を高めることができる。
【0025】
また、本実施例に係る蒸発源10によれば、リフレクタ300の底面から冷却液室311内に至るように供給通路321が備えられている。従って、冷却液Lは、冷却液室311内の下方から供給される。
【0026】
そして、リフレクタ本体310の下方に設けられる底板部320に、供給通路321と排出通路322が備えられている。これにより、リフレクタ300の下方に、第1配管50と第2配管60を接続できる。つまり、リフレクタ300の側面側や上面側に配管を接続させる必要がない。従って、装置全体を小型化することができる。
【0027】
また、冷却液室311内に備えられる排液管340は、一端が冷却液室311内の上方に位置し、他端が排出通路322に接続されている。これにより、冷却液Lを、冷却液室311内の上方から、排液管340を通じて、リフレクタ300の下方へと排出させることができる。従って、冷却液Lが冷却液室311内の下方から供給されることと相まって、冷却液の循環方向を坩堝100に要求される温度分布に適合させることが可能となる。すなわち、坩堝100においては、上方側が冷却され過ぎてしまうと、蒸発または昇華した物質が坩堝100の上部に付着して固化された状態となってしまう。そのため、冷却液室311を流れる冷却液Lによって、加熱体200からの熱を遮断させたい一方で、坩堝100の上部側は冷却され過ぎないようにするのが望ましい。本実施例においては、冷却液Lは、冷却液室311の下方から上方へ流れて、排液管340から排出されるように循環する。そして、冷却液Lの温度が高い程、上昇するため、冷却液室311内における冷却液Lの温度は、下方から上方に向かって温度が高くなるような温度分布となる。従って、坩堝100の上方側が冷却され過ぎてしまうことが抑制される。
【0028】
また、本実施例においては、排液管340の一端側の端面に設けられた開口部が、上方を向くように構成されている。これにより、冷却液Lの液面が、排液管340の上端位置Hを超えると、冷却液Lは、排液管340の上端(一端側の端面)の開口部から排液管340の管内に入り、重力により落下する。従って、冷却液Lを排出させるための動力源などを設けることなく、冷却液Lを排液管340から効率良く排出させることができる。
【0029】
また、本実施例においては、冷却液室311は円筒状の空間により形成されている。これにより、加熱体200の周囲において、均一的に熱を遮断させることができる。
【0030】
更に、本実施例においては、円筒状リフレクタ410及び板状リフレクタ420によって、加熱体200からの熱を反射させ、かつ遮熱構造体であるリフレクタ200のリフレクタ本体310によっても熱を反射させる構成が採用されている。従って、坩堝100の加熱効率を高めつつ、加熱体200からの熱を遮断することができる。また、円筒状リフレクタ410及び板状リフレクタ420が設けられているため、リフレクタ本体310が加熱されてしまうことが抑制され、冷却液Lによる冷却効率を高めることができる。
【0031】
(実施例2)
図7〜
図9には、本発明の実施例2が示されている。本実施例においては、遮熱構造体としてのリフレクタの構造が、上記実施例1の場合とは異なる場合の構成を示す。リフレクタ以外の構成については、上記実施例1で説明した構成を適用可能なため、本実施例では、リフレクタの構造についてのみ説明する。
【0032】
図7においては、リフレクタ300Xのうち、蓋部を取り外した状態の平面図を簡略的に示している。また、
図8及び
図9においては、冷却液Lの流れ方が分かり易いように、リフレクタ300Xの内部構造において、冷却液Lの流れ方に関連する部材を簡略的に示している。なお、
図8は
図7中のB1−B2断面を簡略的に示しており、
図9は
図7中のC1−C2断面を簡略的に示している。
【0033】
本実施例に係るリフレクタ300Xは、円筒状の第1リフレクタ本体310XX及び第2リフレクタ本体310XYと、第2リフレクタ本体310XYの下方に設けられる底板部320Xとを備えている。また、本実施例に係るリフレクタ300Xは、第1リフレクタ本体310XXと第2リフレクタ本体310XYとの間に設けられる隔壁部315Xも備えている。
【0034】
更に、本実施例に係るリフレクタ300Xにおいても、第1リフレクタ本体310の上方には、蓋部も備えられている。ただし、蓋部については、上記実施例1で説明した通りであるので、図示及び詳細説明は省略する。また、本実施例に係るリフレクタ300Xが載置台に載置され、かつ載置台に対して傾き調整が可能である点についても、実施例1で説明した通りであるので、その説明は省略する。なお、本実施例においても、上記実施例1で示した第1配管50及び第2配管60がリフレクタ300Xに接続される。本実施例の場合には、2つの第1配管50と2つの第2配管60が接続される。
【0035】
リフレクタ300Xにおける第1リフレクタ本体310XXの内部には、第1リフレクタ本体310XXの内壁面312XXに沿うように設けられ、かつ冷却液Lが流れる冷却液室311XXが設けられている。この第1リフレクタ本体310XXの内壁面312XXは、加熱体(不図示)からの熱を反射させる反射面としての機能を有している。また、本実施例に係る冷却液室311XXは、円筒状の空間により形成されている。
【0036】
そして、第2リフレクタ本体310XYの内部にも、第2リフレクタ本体310XYの内壁面312XYに沿うように設けられ、かつ冷却液Lが流れる冷却液室311XYが設けられている。この第2リフレクタ本体310XYの内壁面312XYは、加熱体(不図示)からの熱を反射させる反射面としての機能を有している。また、本実施例に係る冷却液室311XYも、円筒状の空間により形成されている。
【0037】
このように、本実施例に係るリフレクタ300Xにおいては、冷却液室311XX,311XYが上下方向に分割するように設けられている。
【0038】
本実施例の場合には、第1リフレクタ本体310XXにおける冷却液室311XXに冷
却液Lを供給するための供給管370Xが、第2リフレクタ本体310XYにおける冷却液室311XYを通るように設けられている。また、第1リフレクタ本体310XXにおける冷却液室311XX内には、冷却液Lを冷却液室311XXの下方から排出させる排液管340XXが備えられている。この排液管340XXは、第2リフレクタ本体310XYにおける冷却液室311XYを通るように設けられている。
【0039】
そして、リフレクタ300Xにおける底板部320Xには、冷却液Lが供給される供給通路321XXと、冷却液Lが排出される排出通路322XXとが設けられている。そして、排液管340XXは、一端が第1リフレクタ本体310XXにおける冷却液室311XX内の上方に位置し、他端が排出通路322XXに接続されている。この排液管340XXの一端側の端面に設けられた開口部は、上方を向くように構成されている。
【0040】
また、第2リフレクタ本体310XYにおける冷却液室311XY内には、冷却液Lを冷却液室311XYの下方から排出させる排液管340XYが備えられている。
【0041】
そして、リフレクタ300Xにおける底板部320Xには、リフレクタ300Xの底面から第2リフレクタ本体310XYにおける冷却液室311XY内に至るように設けられ、冷却液Lが供給される供給通路321XYが設けられている。また、この底板部320Xには、第2リフレクタ本体310XYにおける冷却液室311XY内からリフレクタ300Xの底面に至るように設けられ、冷却液Lが排出される排出通路322XYが設けられている。そして、排液管340XYは、一端が冷却液室311XY内の上方に位置し、他端が排出通路322XYに接続されている。この排液管340XYの一端側の端面に設けられた開口部は、上方を向くように構成されている。
【0042】
以上のように、第1リフレクタ本体310XXと第2リフレクタ本体310XYには、それぞれ、冷却液室311XX,311XYが設けられている。また、これら第1リフレクタ本体310XXと第2リフレクタ本体310XYには、それぞれ、供給通路321XX,321XY,排出通路322XX,322XY及び排液管340XX,340XYが設けられている。供給通路321XX,321XYには、それぞれ第1配管50が接続され、排出通路322XX,322XYにはそれぞれ第2配管60が接続される。第1配管50と第2配管60の構成及び接続構造に関しては、上記実施例1で説明した通りであるので、図示及び詳細説明は省略する。
【0043】
以上のように構成されるリフレクタ300Xにおける冷却液Lの流れ方について、第1リフレクタ本体310XX及び第2リフレクタ本体310XYのそれぞれについて説明する。
【0044】
(第1リフレクタ本体310XXについて)
図8に示すように、供給通路321XXから供給管370Xを介して冷却液室311XX内に冷却液Lが供給される。そして、冷却液Lの増加に伴って、冷却液Lの液面は、冷却液室311XX内において、徐々に上昇していく(
図8中の実線矢印参照)。そして、冷却液Lの液面が、排液管340XXの上端位置H1を超えると、冷却液Lは、排液管340XXの上端(一端側の端面)の開口部から排液管340XXの管内に入り、重力により落下する(
図8中の点線矢印参照)。その後、冷却液Lは、排出通路322XXを通り、チャンバ20の外部に排出される。
【0045】
(第2リフレクタ本体310XYについて)
図9に示すように、供給通路321XYから冷却液室311XY内に冷却液Lが供給される。そして、冷却液Lの増加に伴って、冷却液Lの液面は、冷却液室311XY内において、徐々に上昇していく(
図9中の実線矢印参照)。そして、冷却液Lの液面が、排液
管340XYの上端位置H2を超えると、冷却液Lは、排液管340XYの上端(一端側の端面)の開口部から排液管340XYの管内に入り、重力により落下する(
図9中の点線矢印参照)。その後、冷却液Lは、排出通路322XYを通り、チャンバ20の外部に排出される。
【0046】
以上のように構成される本実施例に係るリフレクタ300Xを蒸発源に適用した場合においても、上記実施例1の場合と同様の効果を得ることができる。また、本実施例の場合には、冷却液室311XX,311XYが上下方向に分割するように設けられている。従って、これらの冷却液室311XX,311XYに供給する冷却液Lの温度を変えることで、リフレクタ300Xの上下で冷却度合を変えることができる。すなわち、上述したように、坩堝の上部側は冷却され過ぎないようにするのが望ましい。上記実施例1の場合でも、冷却液室311内における冷却液Lの温度は、下方から上方に向かって温度が高くなるような温度分布とすることが可能である。しかしながら、より一層、上方の温度を高くして、下方の温度を低くしたい場合には、本実施例に係るリフレクタ300Xを採用すると効果的である。
【0047】
なお、本実施例においては、冷却液室が上下方向に2分割される場合の構成を示したが、冷却液室が上下方向に3分割以上に分割される構成を採用することもできる。また、本実施例においても、上記実施例1の場合のように、円筒状リフレクタ410及び板状リフレクタ420を設けるのが望ましい。
【0048】
(実施例3)
図10及び
図11には、本発明の実施例3が示されている。本実施例においては、遮熱構造体としてのリフレクタの構造が、上記実施例1の場合とは異なる場合の構成を示す。リフレクタ以外の構成については、上記実施例1で説明した構成を適用可能なため、本実施例では、リフレクタの構造についてのみ説明する。
【0049】
図10においては、リフレクタ300Yのうち、蓋部を取り外した状態の平面図を簡略的に示している。また、
図11においては、冷却液Lの流れ方が分かり易いように、リフレクタ300Yの内部構造において、冷却液Lの流れ方に関連する部材を簡略的に示している。なお、
図11は
図10中のD1−D2断面を簡略的に示した図に相当する共に、
図10中のE1−E2断面を簡略的に示した図にも相当する。
【0050】
本実施例に係るリフレクタ300Yは、半円筒状(円筒形状に対して、円筒の中心軸線を含む面で切断したような形状)の第1リフレクタ本体310YX及び第2リフレクタ本体310YYを備えている。なお、第1リフレクタ本体310YX及び第2リフレクタ本体310YYは、同一の構成であるので、以下、第1リフレクタ本体310YXを中心に説明し、第2リフレクタ本体310YYについての説明は適宜省略する。
【0051】
本実施例に係るリフレクタ300Yにおいても、第1リフレクタ本体310YXの下方には底板部320Yが備えられている。更に、本実施例に係るリフレクタ300Yにおいても、第1リフレクタ本体310の上方には、蓋部も備えられている。ただし、蓋部については、その形状がリフレクタ本体の形状に合わせて異なるものの、基本的な構成は、上記実施例1の場合と同様であるので、図示及び詳細説明は省略する。また、本実施例に係るリフレクタ300Yが載置台に載置され、かつ載置台に対して傾き調整が可能である点についても、実施例1で説明した通りであるので、その説明は省略する。なお、本実施例においても、上記実施例1で示した第1配管50及び第2配管60がリフレクタ300Yに接続される。本実施例の場合には、2つの第1配管50と2つの第2配管60が接続される。つまり、第1リフレクタ本体310YXと第2リフレクタ本体310YYに、それぞれ第1配管50及び第2配管60が接続される。
【0052】
リフレクタ300Yにおける第1リフレクタ本体310YXの内部には、第1リフレクタ本体310YXの内壁面312Yに沿うように設けられ、かつ冷却液Lが流れる冷却液室311Yが設けられている。この第1リフレクタ本体310YXの内壁面312Yは、加熱体(不図示)からの熱を反射させる反射面としての機能を有している。また、本実施例に係る冷却液室311Yは、半円筒状の空間により形成されている。
【0053】
上記の通り、第2リフレクタ本体310YYについては、第1リフレクタ本体310YXと同一の構成である。これにより、本実施例においては、遮熱構造体であるリフレクタ300Yは周方向に分割するように設けられており、第1リフレクタ本体310YXと第2リフレクタ本体310YYの内部に、それぞれ冷却液室311Yが設けられている。
【0054】
本実施例においても、上記実施例1の場合と同様に、第1リフレクタ本体310YXにおける冷却液室311Y内には、冷却液Lを冷却液室311Yの下方から排出させる排液管340Yが備えられている。
【0055】
そして、リフレクタ300Yにおける底板部320Yには、リフレクタ300Yの底面から冷却液室311Y内に至るように設けられ、冷却液Lが供給される供給通路321Yが設けられている。また、この底板部320Yには、冷却液室311Y内からリフレクタ300Yの底面に至るように設けられ、冷却液Lが排出される排出通路322Yが設けられている。そして、排液管340Yは、一端が冷却液室311Y内の上方に位置し、他端が排出通路322Yに接続されている。この排液管340Yの一端側の端面に設けられた開口部は、上方を向くように構成されている。
【0056】
上記の通り、第2リフレクタ本体310YYについては、第1リフレクタ本体310YXと同一の構成である。従って、第1リフレクタ本体310YXと第2リフレクタ本体310YYには、それぞれ冷却液室311Yが設けられている。また、これら第1リフレクタ本体310YXと第2リフレクタ本体310YYには、それぞれ、供給通路321Y,排出通路322Y及び排液管340Yが設けられている。各供給通路321Yには、それぞれ第1配管50が接続され、各排出通路322Yにはそれぞれ第2配管60が接続される。第1配管50と第2配管60の構成及び接続構造に関しては、上記実施例1で説明した通りであるので、図示及び詳細説明は省略する。
【0057】
以上のように構成されるリフレクタ300Yにおける冷却液Lの流れ方について説明する。
【0058】
図11に示すように、第1リフレクタ本体310YXにおいては、供給通路321Yから冷却液室311Y内に冷却液Lが供給される。そして、冷却液Lの増加に伴って、冷却液Lの液面は、冷却液室311Y内において、徐々に上昇していく(
図11中の実線矢印参照)。そして、冷却液Lの液面が、排液管340Yの上端位置Hを超えると、冷却液Lは、排液管340Yの上端(一端側の端面)の開口部から排液管340Yの管内に入り、重力により落下する(
図11中の点線矢印参照)。その後、冷却液Lは、排出通路322Yを通り、チャンバの外部に排出される。第2リフレクタ本体310YYの場合も同様である。
【0059】
以上のように構成される本実施例に係るリフレクタ300Xを蒸発源に適用した場合においても、上記実施例1の場合と同様の効果を得ることができる。また、本実施例の場合には、坩堝を加熱する加熱方式として、高周波誘導加熱方式が採用される場合に効果的である。以下、その理由を説明する。
【0060】
高周波誘導加熱方式を採用した場合に、上記実施例1及び実施例2で示したように、円筒状のリフレクタ本体を採用し、かつリフレクタ本体が導電性の材料により構成される場合には、加熱コイルに電流が流れると、リフレクタ本体にも渦電流が発生してしまう。これに対して、本実施例に係るリフレクタ300Yの場合には、周方向に分割されているため、加熱コイルに電流が流れても、リフレクタ300Yには渦電流が発生することはない。なお、図示の例では、第1リフレクタ本体310YXと第2リフレクタ本体310YYとの間に隙間が設けられている。ただし、この隙間に非導電体からなる部材を設けた状態で、第1リフレクタ本体310YXと第2リフレクタ本体310YYとを連結させる構成も採用し得る。
【0061】
本実施例においては、リフレクタ300Yが周方向に2分割される場合の構成を示したが、リフレクタを周方向に3分割以上に分割させる構成を採用することもできる。また、本実施例のように、リフレクタを周方向に分割させる構成を採用した上で、上記実施例2で説明したように、冷却液室を上下方向に複数に分割させる構成を採用することもできる。また、本実施例においても、上記実施例1の場合と同様に、リフレクタ本体(第1リフレクタ本体310YX及び第2リフレクタ本体310YY)の内壁面312Yと加熱体(不図示)との間に、加熱体からの熱を反射させるリフレクタを設けるのが望ましい。当該リフレクタについても、渦電流が発生しないように、半円筒状の部材からなるリフレクタを採用するのが望ましい。また、加熱体と底板部320Yとの間にも、加熱体からの熱を反射させる板状リフレクタを設けるのが望ましい。この板状リフレクタについても、渦電流が発生しないような形状を採用するのが望ましい。
【0062】
(その他)
実施例3で説明した通り、高周波誘導加熱方式を採用した場合に、円筒状のリフレクタ本体を採用し、かつリフレクタ本体が導電性の材料により構成される場合には、加熱コイルに電流が流れると、リフレクタ本体にも渦電流が発生してしまう。これを防止するために、円筒形状に対して、周方向の1箇所に軸線方向に伸びるスリットが設けられた形状のリフレクタ本体を採用することもできる。この場合、リフレクタ本体及び冷却液室を上方から見た形状は、C字形状となる。
【0063】
上記実施例1で示した円筒状リフレクタ410及び板状リフレクタ420については、1つだけでなく、何重にも設けることができる。実施例2,3の場合でも同様である。また、円筒状リフレクタ410のみを設けて、板状リフレクタ420を設けない構成も採用し得る。また、上記各実施例においては、遮熱構造体がリフレクタにより構成される場合を示した。しかしながら、円筒状リフレクタや板状リフレクタが設けられる場合には、遮熱構造体はリフレクタでなくてもよい。つまり、遮熱構造体には、熱を反射させる機能を設けなくてもよい。また、遮熱構造体がリフレクタの場合には、円筒状リフレクタ及び板状リフレクタを設けない構成も採用し得る。