(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6570218
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】お好み焼粉
(51)【国際特許分類】
A23L 7/10 20160101AFI20190826BHJP
【FI】
A23L7/10 H
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-126736(P2014-126736)
(22)【出願日】2014年6月19日
(65)【公開番号】特開2016-2073(P2016-2073A)
(43)【公開日】2016年1月12日
【審査請求日】2017年6月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000187079
【氏名又は名称】昭和産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154597
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 悟郎
(72)【発明者】
【氏名】白取 真希子
(72)【発明者】
【氏名】松井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】望月 梓
【審査官】
太田 雄三
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−125635(JP,A)
【文献】
特開2001−000153(JP,A)
【文献】
特開2003−310195(JP,A)
【文献】
特開平09−299069(JP,A)
【文献】
特開2013−085524(JP,A)
【文献】
特開平06−086658(JP,A)
【文献】
特開平10−150957(JP,A)
【文献】
特開2006−271330(JP,A)
【文献】
特開平11−332503(JP,A)
【文献】
特開2002−125578(JP,A)
【文献】
特開2011−010620(JP,A)
【文献】
特開2002−051688(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0269580(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 5/00−35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水及び具材と混ぜてお好み焼の生地を調製するためのお好み焼粉であって、
小麦粉を、前記お好み焼粉の質量を基準として50質量%を超える含有率で含み、且つ
大豆粉、脱脂大豆粉、及び濃縮大豆たん白からなる群から選択される少なくとも1種の大豆由来粉状品(レーザー回折型粒度分布測定による平均粒子径が20μm以下のものを除く)を、お好み焼粉の質量を基準として3〜30質量%の含有率で含むことを特徴とするお好み焼粉。
【請求項2】
前記大豆由来粉状品が、乾燥した大豆種子を、脱皮処理した後粉砕した全脂大豆粉である請求項1に記載のお好み焼粉。
【請求項3】
さらに、キサンタンガム、グアガム、ローカストビーンガム及びタラガムから選択される少なくとも1種の増粘多糖類を、お好み焼粉の質量を基準として、合計で0.1〜1質量%の含有率で含む請求項1又は2に記載のお好み焼粉。
【請求項4】
前記増粘多糖類が、キサンタンガム及びグアガムを含む請求項3に記載のお好み焼粉。
【請求項5】
さらに、澱粉を、お好み焼粉の質量を基準として2〜20質量%の含有率で含む請求項1〜4のいずれか1項に記載のお好み焼粉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、お好み焼の調理に用いるお好み焼粉に関し、特に、調理器具の性能や調理者の技量にかかわらず、ふっくら感があり口どけが良い良好な品質のお好み焼を安定して焼くことができるお好み焼粉に関する。
【背景技術】
【0002】
お好み焼は小麦粉等の粉状素材を水で溶き、具材を混ぜて焼き調理する食品である。お好み焼の調理方法としては、専門店や縁日の出店等において、強い火力で厚い鉄板を加熱する業務用鉄板焼き機を用いる調理方法や、家庭内において、フライパンやホットプレートを用いる調理方法等がある。一般に、家庭内で調理するお好み焼は、専門店のものと比較して、ふっくら感がなかったり、口どけが悪かったり、品質が良好とは言えない場合が多い。
【0003】
従来から、お好み焼に用いるお好み焼粉について種々の技術開発が行われている。たとえば、お好み焼等を焼成し、冷蔵又は冷凍保存した後に電子レンジなどにより再加熱したときでも、ふっくらとしていて、口当たりが良い等の良好な食感が得られるお好み焼類等を提供するため、アセチル化澱粉等及びキサンタンガムを含有するお好み焼粉等(特許文献1)、アセチル化酸化澱粉を含有するお好み焼粉等(特許文献2)、及び平均粒子径20μm以下の植物蛋白又は乳蛋白を含有するお好み焼用改良剤(特許文献3)が開発されている。また、口当たり良く、もちもちした食感のお好み焼を提供するため、澱粉50〜90質量部、グルテン又は大豆たん白等1〜15質量部、グアガム又はキサンタンガム等0.5〜5重量部配合された生地を用いたお好み焼の製造方法が開発されている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−299069号公報
【特許文献2】特開2013−85524号公報
【特許文献3】特開2002−125635号公報
【特許文献4】特開2001−000153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1〜4に記載のお好み焼粉等を用いても家庭内で調理する際に、専門店等で食するようなふっくら感や口どけが良好なお好み焼を調理することは困難であった。本発明者らが、その原因を調べたところ、お好み焼を調理する際の温度が一定にならないことに原因があることが分かった。これは、専門店等においては、鉄板焼き機を用いて、200℃程度の一定の温度で焼き調理が可能であるが、家庭用の調理器具は、業務用と比較して火力が弱く鉄板も薄く、性能にばらつきがあり、且つ調理者の技量も十分ではない場合があることに起因していた。従来のお好み焼粉では、200℃程度の一定の温度で調理すれば、食感が良好なお好み焼が得られるが、調理温度が上記温度より低くなったり、高くなったりすると、お好み焼のふっくら感や口どけが低下してしまう場合がある。また、調理後、冷蔵又は冷凍保存後に電子レンジ等で温めなおした場合は、さらに食感の低下が生じる場合があった。
【0006】
したがって、本発明の目的は、調理器具の性能や調理者の技量によって、焼き調理する温度が低くなる場合や高くなる場合があっても、ふっくら感があり、口どけが良好で、且つ調理後すぐに食する場合だけでなく、冷蔵又は冷凍保存後に電子レンジ等で温めなおした場合であっても、同様な品質のお好み焼が得られるお好み焼粉を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は、水及び具材と混ぜてお好み焼の生地を調製するためのお好み焼粉であって、小麦粉を、前記お好み焼粉の質量を基準として50質量%を超える含有率で含み、且つ大豆粉、脱脂大豆粉、及び濃縮大豆たん白からなる群から選択される少なくとも1種の大豆由来粉状品
(レーザー回折型粒度分布測定による平均粒子径が20μm以下のものを除く)を、お好み焼粉の質量を基準として3〜30質量%の含有率で含むことを特徴とするお好み焼粉によって達成される。
【0008】
お好み焼粉に大豆粉を上記の含有率で配合することにより、140〜250℃の範囲であれば、ふっくら感があり、口どけが良好なお好み焼を調理することができる。更に冷蔵又は冷凍保存後に電子レンジ等で温めなおした場合であっても、同様な品質のお好み焼が得られる。この要因は明らかではないが、大豆粉等が水分を保持し、お好み焼の調理中に主成分である小麦粉中の澱粉の糊化に必要な水分を供給することで、調理温度が低くなったり、高くなったりしても良好な糊化状態とすることができるためと考えられる。
【0009】
本発明のお好み焼粉の好ましい態様は以下の通りである。
(1)前記大豆由来粉状品が、乾燥した大豆種子を脱皮処理した後粉砕した全脂大豆粉である。よりふっくら感があり口どけが良好なお好み焼が得られる。
(2)さらに、キサンタンガム、グアガム、ローカストビーンガム及びタラガムから選択される少なくとも1種の増粘多糖類を、お好み焼粉の質量を基準として、合計で0.1〜1質量%の含有率で含む。増粘多糖類を含むことで、より口どけが良好なお好み焼が得られ、さらに冷蔵又は冷凍保存後に電子レンジ等で温めなおした場合であっても、同様な口どけの良好なお好み焼が得られる。
(3)(2)において、前記増粘多糖類が、キサンタンガム及びグアガムを含む。
(4)さらに、澱粉を、お好み焼粉の質量を基準として2〜20質量%の含有率で含む。澱粉を含むことで、よりふっくら感があり口どけが良く、さらに冷蔵又は冷凍保存後に電子レンジ等で温めなおした場合であっても、同様な品質が維持されたお好み焼が得られる。
【発明の効果】
【0010】
本発明のお好み焼粉を用いることにより、お好み焼の焼成温度が140〜250℃の範囲であれば、ふっくら感があり、口どけが良好なお好み焼を調理することができる。したがって、本発明により、たとえば、家庭内で調理する場合や、熟練者の少ない店舗や外食店で調理する場合のように、調理器具の性能や調理者の技量によって、焼き調理する温度が低くなる場合や高くなる場合があっても、品質が良好なお好み焼を調理することができ、さらに調理後すぐに食する場合だけでなく、冷蔵又は冷凍保存後に電子レンジ等で温めなおした場合であっても、同様な品質が維持されたお好み焼が得られるお好み焼粉を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のお好み焼粉は、水及び具材と混ぜてお好み焼の生地を調製するためのお好み焼粉である。そして、小麦粉を、前記お好み焼粉の質量を基準として50質量%を超える含有率で含み、且つ大豆粉、脱脂大豆粉、及び濃縮大豆たん白からなる群から選択される少なくとも1種の大豆由来粉状品
(レーザー回折型粒度分布測定による平均粒子径が20μm以下のものを除く)を、お好み焼粉の質量を基準として3〜30質量%の含有率で含むことを特徴とする。なお、本発明において、小麦粉は、特に制限はなく、通常お好み焼粉に用いる小麦粉を用いることができる。
【0012】
お好み焼粉に上記大豆由来粉状品を上記の含有率で配合することにより、後述する実施例で示すように、140〜250℃(特に160〜230℃)の範囲であれば、ふっくら感があり、口どけが良好なお好み焼を調理することができる。したがって、たとえば、家庭内で調理する場合や、熟練者の少ない店舗や外食店で調理する場合のように、調理器具の性能や調理者の技量によって、焼き調理する温度が低くなる場合や高くなる場合があっても、食感が良好なお好み焼を調理することができる。この要因は明らかではないが、以下のように考えられる。すなわち、お好み焼のふっくら感や口どけには、主成分である小麦粉中の澱粉の糊化の状態が影響しており、調理温度条件によって、十分な糊化状態が得られない場合に食感が不良になるものと考えられる。特に調理温度が低温の場合、焼成時間が長くなり、蒸発により失われる水分が多くなり、糊化に必要な水分が不足するため、より糊化状態が不十分になり、食感が悪くなるものと考えられる。そして、本発明のお好み焼粉の大豆由来粉状品中の繊維やたん白質が水分を保持し、焼き調理中に澱粉の糊化に必要な水分を供給することで、調理温度が低くなったり、高くなったりしても良好な糊化状態とすることができるものと考えられる。また、このような水分保持の効果は、調理後すぐに食する場合だけでなく、冷蔵又は冷凍保存後に電子レンジ等で温めなおした場合にも、再加熱する際に大豆由来粉状品中の繊維やたん白質が保持する水分が供給され、澱粉の再糊化が良好に生じ、品質を維持することができるものと考えられる。なお、本発明のお好み焼粉を用いて調理されたお好み焼は、後述する実施例で示すように、上記の温度範囲であれば、良好な焼き色を呈するので、視覚的にも好ましい。
【0013】
本発明において、上記大豆由来粉状品の含有率は、お好み焼粉の質量を基準として3〜20質量%が好ましく、3〜15質量%がより好ましく、3〜10質量%が特に好ましい。大豆粉が少なすぎると効果が得られず、多すぎると、お好み焼の風味が低下したり、焦げやすくなったりする場合がある。
【0014】
本発明において、大豆粉とは、大豆種子の粉砕物を意味し、たとえば、乾燥した大豆種子をそのまま粉砕したもの(大豆全粒粉)、脱皮処理又は脱皮脱胚軸処理した後、任意に、さらに加熱脱臭した後、粉砕したもの(全脂大豆粉(含脂大豆粉ともいう))、大豆種子を焙煎した後粉砕したもの(きな粉)、上記のように粉砕したものを焙煎したもの等が挙げられる。また、脱脂大豆粉とは、乾燥した大豆種子をそのまま、又は、脱皮処理又は、脱皮脱胚軸処理した後、さらに脱脂処理した後、粉砕したものであり、粉砕前又は粉砕後に適宜加熱処理することもできる。濃縮大豆たん白とは、脱脂大豆粉をエタノールで処理し、可溶性成分を除去し、乾燥し、粉末化したものである。本発明において、これらの大豆由来粉状品は、1種で用いても良く、2種以上組み合わせて用いても良い。大豆由来粉状品としては、よりふっくら感があり口どけが良いお好み焼が得られる点で、乾燥した大豆種子を、脱皮処理又は脱皮脱胚軸処理した後、任意に、さらに加熱脱臭した後、粉砕した全脂大豆粉が好ましい。この要因は明らかではないが、全脂大豆粉は、上述の水分保持能力に加えて、油分や乳化効果を有するレシチンや多糖類等を多く含むため、その他の食感改良効果が得られるためと考えられる。
【0015】
本発明のお好み焼粉は、さらに、キサンタンガム、グアガム、ローカストビーンガム及びタラガムから選択される少なくとも1種の増粘多糖類を、お好み焼粉の質量を基準として、合計で0.1〜1質量%の含有率で含むことが好ましい。大豆粉に加えて、これらの増粘多糖類を上記の含有率で配合することで、後述する実施例に示すように、より口どけが良いお好み焼を調理することができ、更に冷蔵又は冷凍保存後に電子レンジ等で温めなおした場合であっても、より口どけが維持されたお好み焼が得られる。上記の増粘多糖類が、本発明の効果を向上する要因は明らかではないが、上述の大豆粉と同様に、増粘多糖類が水分を保持し、焼き調理中に澱粉の糊化に必要な水分を供給することで、良好な糊化状態を維持するとともに、増粘作用によりなめらかな口どけを付与することができるものと考えられる。これらの増粘多糖類の含有率は、お好み焼粉の質量を基準として、合計で0.2〜0.7質量%が好ましく、0.3〜0.5質量%がより好ましい。
【0016】
本発明における効果をより向上できる点で、上記増粘多糖類が、キサンタンガム及びグアガムを含むことが好ましい。この要因は明らかではないが、キサンタンガムは高温になっても生地の粘度を維持することができ、焼成中の水分保持力が高く、更にグアガムと併用することで、粘度安定性が向上し、より水分を保持することができるうえ、焼き調理中に生地がダレ難くなるためと考えられる。キサンタンガム(X)に対するグアガム(G)の質量比(G/X)には、特に制限はなく、生地粘度等を考慮して調整することができる。キサンタンガム(X)に対するグアガム(G)の質量比(G/X)は、0.1〜10の範囲が好ましく、0.3〜10の範囲がより好ましく、0.3〜3の範囲が特に好ましい。
【0017】
本発明のお好み焼粉は、さらに、澱粉を、お好み焼粉の質量を基準として2〜20質量%の含有率で含むことが好ましい。澱粉を配合することで、よりふっくら感があり口どけが良く、更に冷蔵又は冷凍保存後に電子レンジ等で温めなおした場合であっても、同様に食感が良好なお好み焼が得られる。澱粉としては、特に制限なく用いることができる。この要因は明らかではないが、澱粉が小麦粉に由来するねちゃついた食感を低減し、口どけをさらに向上するためと考えられる。澱粉としては、たとえば、コーンスターチ(通常のコーンスターチ(デント種)、ワキシーコーンスターチ、ハイアミロースコーンスターチ等を含む)、小麦澱粉、米澱粉(もち米澱粉、うるち米澱粉等を含む)等の穀類澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉(キャッサバ澱粉、マニオカ澱粉ともいう)、甘藷澱粉等のイモ類澱粉、サゴ澱粉等の幹茎澱粉、及びエンドウ豆澱粉、緑豆澱粉等の豆類澱粉、並びにこれらの澱粉に物理的、化学的な加工を単独又は複数組み合わせて施した加工澱粉等が挙げられ、これらを単独で、又は複数種を組み合わせて用いても良い。澱粉は、コーンスターチ、小麦澱粉、米澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、及び甘藷澱粉のいずれか1種、又は複数種を組み合わせて用いるのが好ましく、特にコーンスターチ、及び/又はタピオカ澱粉を用いるのが好ましい。
【0018】
本発明のお好み焼粉は、本発明の効果を損なわない限り、お好み焼粉に一般に用いられている他の副材料を適宜含有させても良い。副材料としては食塩、うま味調味料等の調味料、粉末油脂やショートニング等の油脂、卵白粉、卵黄粉、粉末卵、膨張剤、乳化剤、山芋粉末等が挙げられる。
【0019】
本発明のお好み焼粉を用いて、お好み焼を調理する際は、常法に従って、生地を調製し、焼き調理すれば良い。たとえば、本発明のお好み焼粉を、水と混合して調製したバッターに、卵、並びに野菜類、畜肉類、魚介類、揚げ玉等の具材を混合して生地を調製し、これをフライパンやホットプレート等で適当な温度(140〜250℃、好ましくは、160℃〜230℃)で焼き調理する。水の量は特に制限はないが、本発明のお好み焼粉100質量部に対して、水90〜150質量部の範囲が好ましい。
【実施例】
【0020】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。
1.お好み焼の調理方法
各表に示した配合のお好み焼粉50gに、水50gを混合しバッターを調製した。次いで得られたバッターに卵50g及び具材としてキャベツ(粗みじん切り)100gを加えて混ぜ生地を調製した。生地を各表に示した温度に維持した鉄板で、各表に示した時間焼成してお好み焼を得た。
2.お好み焼の評価方法
(1)官能評価
お好み焼の食感(ふっくら感)、口どけ、及び焼き色について、10名のパネラーにより、以下の評価基準に従い、点数をつけ、平均の評価点を算出した。
(i)食感(ふっくら感)
1点:ふっくら感がなく、ねちゃつく。
2点:ふっくら感がほとんどなく、ややねちゃつく。
3点:ややふっくらとした食感で、若干ねちゃつきが感じられるが、問題ない程度。
4点:ふっくらとした食感で、ねちゃつきがほとんどない。
5点:非常にふっくらとした食感で、ねちゃつきがない。
(ii)口どけ
1点:口どけが悪い。
2点:やや口どけが悪い。
3点:やや口どけが良い。
4点:口どけが良い。
5点:非常に口どけが良い。
(iii)焼き色
1点:焼き色が付かず白い、又は焦げている。
2点:焼き色が薄く白っぽい、又はやや焦げている。
3点:焼き色がやや薄い、又はやや濃いが問題のない程度。
4点:適度な焼き色で好ましい。
5点:適度な焼き色で、非常に好ましい。
(2)冷蔵保存後に再加熱した場合の食感評価
調理後のお好み焼を5℃、1日間保存した後、電子レンジ(600W)で2分間加熱した後、(1)と同様に食感、口どけを評価した。
【0021】
3.お好み焼粉の評価
各表に示した配合のお好み焼粉を用いて、上記の通り調理したお好み焼を評価した。
【0022】
【表1】
【0023】
表1の比較例1〜6に示す通り、焼成温度を210℃とした場合、焼成直後のお好み焼は、大豆由来粉状品を配合していない場合であっても、一定の品質を有していた(各評価項目3点以上)。しかし、焼成温度を160℃とした場合、大豆由来粉状品を配合していないお好み焼粉を使用して調理したお好み焼は、食感、口どけが低下した。一方、大豆由来粉状品(全脂大豆粉、脱脂大豆粉、濃縮大豆たん白)を配合したお好み焼粉を使用して調理したお好み焼は、焼成温度が低くても、良好な食感と口どけを有していた(実施例1〜3)。さらに、大豆由来粉状品と澱粉を併用することで、より品質の良いお好み焼を得ることができた(実施例4〜9)。また、お好み焼を冷蔵保存後に再加熱した場合も、大豆由来粉状品を配合することで、良好な食感と口どけが維持されていた。なお、分離大豆たん白及び、グルテンを配合したお好み焼(比較例2、4)はねちゃついた食感となり、卵白粉を配合したお好み焼(比較例3)は、硬い食感であった。
【0024】
【表2】
【0025】
表2の実施例10〜15に示す通り、大豆由来粉状品をお好み焼粉の質量を基準として3〜30質量%の含有率で配合したお好み焼粉を使用して調理したお好み焼は、調理温度にかかわらず、ふっくら感、及び口どけの評価が高く、焼き色も良好であった。一方、大豆由来粉状品の配合量が、3質量%より少ない場合は、十分な効果が得られず(比較例7)、30質量%より多い場合は、焼成温度を230℃としたとき、焦げやすかった(比較例8)。また、澱粉の配合量は、特にお好み焼粉の質量を基準として2〜20質量%の含有率の実施例が良好であった。
【0026】
【表3】
【0027】
表3の実施例27〜36に示す通り、大豆由来粉状品と増粘多糖類とを配合したお好み焼粉を用いたお好み焼は、増粘多糖類を含まない実施例26に比べて、より口どけの評価が高かった。特に、増粘多糖類として、キサンタンガムとグアガムを組み合わせて、グアガム/キサンタンガムの質量比が0.3〜3となるように調整したお好み焼粉(実施例29〜33)を使用して調理したお好み焼は、焼成温度によらず、非常に品質の良いお好み焼であり、冷蔵保存後に再加熱した場合も良好な食感及び口どけが維持されていた。
【0028】
以上の通り、大豆由来粉状品(全脂大豆粉、脱脂大豆粉、濃縮大豆たん白)をお好み焼粉の質量を基準として3〜30%の含有率で配合した実施例のお好み焼粉を用いたお好み焼は、調理温度にかかわらず、ふっくら感、及び口どけの評価が高く、焼き色も良好であった。また冷蔵保存後に再加熱した場合の評価も良好であった。特に全脂大豆粉を配合した実施例が良好であった。
【0029】
また、大豆粉由来粉状品と増粘多糖類とを配合した実施例のお好み焼粉を用いたお好み焼は、より口どけの評価が高かった。増粘多糖類としては、キサンタンガムとグアガムを組み合わせた実施例が特に良好であった。さらに澱粉を配合した実施例のお好み焼粉を用いたお好み焼は、よりふっくら感、及び口どけの食感の評価が高かった。
【0030】
4.調理例
実施例30及び比較例1に示した配合のお好み焼粉50gに、水50gを混合しバッターを調製した。次いで得られたバッターに卵50g及び具材としてキャベツ(粗みじん切り)100gを加えて混ぜ生地を調製した。200℃に設定したホットプレートで、8分間焼成した後、反転して8分間焼成した。実施例30のお好み焼粉を使用したお好み焼は、食感および口どけが良い、非常に品質が良いものであった。一方、比較例1のお好み焼粉を使用したお好み焼は、ねちゃついた食感で、口どけの悪いものであった。本発明のお好み焼粉を使用すると、生地を投入することにより鉄板の温度が下がりやすい家庭用のホットプレートを使用した場合でも、品質の良いお好み焼を調理することができた。
【0031】
なお、本発明は上記の実施の形態の構成及び実施例に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明により、家庭内で調理する場合や、熟練者の少ない店舗や外食店で調理する場合のように、調理器具の性能や調理者の技量によって、焼き調理する温度が低くなる場合や高くなる場合があっても、食感が良好なお好み焼を調理することができるお好み焼粉を提供できる。