特許第6570537号(P6570537)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6570537-鞍形の担体成形体を有する酸化触媒 図000008
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6570537
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】鞍形の担体成形体を有する酸化触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 35/02 20060101AFI20190826BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20190826BHJP
   B01J 23/888 20060101ALI20190826BHJP
   C07C 57/055 20060101ALI20190826BHJP
   C07C 51/235 20060101ALI20190826BHJP
   C07C 11/167 20060101ALI20190826BHJP
   C07C 5/333 20060101ALI20190826BHJP
   C07D 307/89 20060101ALI20190826BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20190826BHJP
【FI】
   B01J35/02 A
   B01J37/02 301M
   B01J23/888 Z
   C07C57/055 A
   C07C51/235
   C07C11/167
   C07C5/333
   C07D307/89 A
   !C07B61/00 300
【請求項の数】15
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2016-554491(P2016-554491)
(86)(22)【出願日】2015年2月25日
(65)【公表番号】特表2017-509477(P2017-509477A)
(43)【公表日】2017年4月6日
(86)【国際出願番号】EP2015053897
(87)【国際公開番号】WO2015128356
(87)【国際公開日】20150903
【審査請求日】2018年2月22日
(31)【優先権主張番号】102014203725.5
(32)【優先日】2014年2月28日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】61/945,845
(32)【優先日】2014年2月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100156812
【弁理士】
【氏名又は名称】篠 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ウルリヒ ハモン
(72)【発明者】
【氏名】カトリン アレクサンドラ ヴェルカー−ニーヴァウト
(72)【発明者】
【氏名】ヨーゼフ マハト
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン ヴァルスドルフ
(72)【発明者】
【氏名】コーネリア ドーブナー
【審査官】 森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−025642(JP,A)
【文献】 米国特許第04707351(US,A)
【文献】 特開昭61−021729(JP,A)
【文献】 特開昭60−216844(JP,A)
【文献】 特開平08−252464(JP,A)
【文献】 特開昭61−221149(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 − 38/74
C07C 5/333
C07C 11/167
C07C 51/235
C07C 57/055
C07D 307/89
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体に対して0.3m2/g未満のBET表面積を有し、ここで、BET表面積の下限値が0.001m2/gであり、当該担体は少なくとも部分的に触媒活性多元素酸化物でコーティングされている、少なくとも1つの非多孔質の無機酸化物担体成形体又はセラミック担体成形体を含む酸化触媒であって、ここで、触媒は貴金属不含であり、かつ担体成形体は鞍の形を有し、その鞍面が2つの主方向で反対向きに曲げられている、前記酸化触媒。
【請求項2】
触媒が、酸化数0の金属を含まないことを特徴とする、請求項1記載の酸化触媒。
【請求項3】
担体成形体が、インタロックスサドル又はベルルサドルとして形成されていることを特徴とする、請求項1又は2記載の酸化触媒。
【請求項4】
鞍形をした担体成形体が、鞍面に1つ以上のリブを有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の酸化触媒。
【請求項5】
担体成形体の最大長さが20mmであることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の酸化触媒。
【請求項6】
酸化触媒全体に対する前記触媒活性多元素酸化物の量が2〜50質量%であることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の酸化触媒。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか1項記載の酸化触媒において、前記触媒活性多元素酸化物が、一般式(I)
Mo12a1b2c3d4e5fn (I)
[式中、
1は、W、Nb、Ta、Cr及び/又はCeであり、
2は、Cu、Ni、Co、Fe、Mn及び/又はZnであり、
3は、Sb及び/又はBiであり、
4は、1種以上のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属及び/又はNであり、
5は、Si、Al、Ti及び/又はZrであり、
aは、1〜6の範囲の数であり、
bは、0.2〜4の範囲の数であり、
cは、0〜18、好ましくは0.5〜3の範囲の数であり、
dは、0〜40の範囲の数であり、
eは、0〜4の範囲の数であり、
fは、0〜40の範囲の数であり、かつ
nは、(I)における酸素とは異なる元素の化学量論係数及びそれらの元素の電荷数によって決定される酸素元素の化学量論係数である]
に相当することを特徴とする、前記酸化触媒。
【請求項8】
請求項1から6までのいずれか1項記載の酸化触媒において、前記触媒活性多元素酸化物が、一般式(III)
Mo12abc1d2e3SbfReghn (III)
[式中、変項は、以下の意味を有する:
1=カリウム、ルビジウム及び/又はセシウム、
2=銅及び/又は銀、
3=セリウム、ホウ素、ジルコニウム、マンガン及び/又はビスマス、
a=0.5〜3、
b=0.01〜3、
c=0.2〜3、
d=0.01〜2、
e=0〜2、
f=0.01〜2、
g=0〜1、
h=0.001〜0.5及び
n=IVにおける酸素とは異なる元素の原子価及び頻度によって決定される数である]に相当することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の酸化触媒。
【請求項9】
前記触媒活性多元素酸化物が、
25として計算された、酸化バナジウム1〜40質量%、
TiO2として計算された、二酸化チタン60〜99質量%、
Csとして計算された、セシウム化合物0〜1質量%、
Pとして計算された、リン化合物0〜1質量%、
Sb23として計算された、酸化アンチモン0〜10質量%
を含有し、それらの全量が100質量%である、請求項1から6までのいずれか1項記載の酸化触媒。
【請求項10】
前記触媒活性多元素酸化物が、一般式(IV)
Mo12BiaFebCocNidCre1f2gx (IV)
[式中、変項は、以下の意味を有する:
1=W、Sn、Mn、La、Ce、Ge、Ti、Zr、Hf、Nb、P、Si、Sb、Al、Cd及び/又はMg、
2=Li、Na、K、Cs及び/又はRb、
a=0.1〜7、好ましくは0.3〜1.5、
b=0〜5、好ましくは2〜4、
c=0〜10、好ましくは3〜10、
d=0〜10、
e=0〜5、好ましくは0.1〜2、
f=0〜24、好ましくは0.1〜2、
g=0〜2、好ましくは0.01〜1及び
x=(I)における酸素とは異なる元素の原子価及び頻度によって決定される数である]に相当する、請求項1から6までのいずれか1項記載の酸化触媒。
【請求項11】
前記触媒活性多元素酸化物のコーティングが多孔質であり、マクロ孔の体積割合pvol
vol=V0.26-2/V0.02-6.5
[式中、
0.26-2は、0.26〜2μmの範囲の平均直径を有する細孔の体積であり、かつ
0.02-6.5は、0.02〜6.5μmの範囲の平均直径を有する細孔の体積である]
が少なくとも0.35である、請求項1から10までのいずれか1項記載の酸化触媒。
【請求項12】
無機酸化物担体又はセラミック担体を、場合によりバインダーを併用して、前記触媒活性多元素酸化物の粉末でコーティングすることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載の酸化触媒を製造する方法。
【請求項13】
請求項7又は8記載の触媒の層を含む触媒固定床上での分子状酸素によるα,β−不飽和アルデヒドの気相酸化によってα,β−不飽和カルボン酸を製造する方法。
【請求項14】
請求項9記載の触媒の層を含む触媒固定床上での分子状酸素によるo−キシレン及び/又はナフタレンの気相酸化によってフタル酸無水物を製造する方法。
【請求項15】
n−ブテンを含有する出発ガス混合物を、酸素を含有するガスと、場合により更に不活性ガス又は水蒸気と混合して、固定床反応器中で220〜490℃の温度にて、触媒固定床に配置された請求項10記載の触媒と接触させる、n−ブテンからブタジエンに酸化脱水素する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化触媒、その製造法、様々の接触気相酸化におけるその使用及び相応の接触気相酸化法に関する。
【0002】
酸化反応における触媒活性多元素酸化物をシェル(eggshell)として含有するシェル触媒は自体公知である。
【0003】
WO2011/134932は、中空円筒形の担体成形体と、該担体成形体の外面に施与された触媒活性酸化物材料を含有するシェルとから成るシェル触媒、及び該シェル触媒を含む触媒固定床上でのアクロレインの気相接触酸化によるアクリル酸の製造法を開示している。実施例では、100時間の運転後に97.5%までのアクリル酸形成の選択率が得られる。
【0004】
サドル体を、多孔質で無機の耐火性担体として含有する酸化触媒も公知である。
【0005】
EP−A−0218766は、分子状酸素によるエチレンの接触気相酸化によってエチレンオキシドを製造するための銀触媒を記載している。用いられた触媒には、銀と、アルカリ金属及びアルカリ金属化合物の群から選択される少なくとも1種の助触媒とが、インタロックスサドル又はベルルサドルとして形成されている多孔質で無機の耐火性担体上に析出されている。
【0006】
同様に、炭化水素の接触改質からは、触媒担体が鞍の形を有している触媒が知られている(EP−A−0192314)。担体は、焼成されたアルミン酸カルシウムセメント材料から成る。触媒担体は、窒素吸着によって測定された0.5〜40m2/gの全表面積を有する。触媒は、好ましくはニッケル及び/又はコバルトを含有する。
【0007】
AT333704は、好ましくはサドル体として形成されており、かつ酸化アルミニウムをベースとする酸化触媒の担体を記載している。酸化アルミニウムは、酸化物の形の希土類金属2〜10質量%でドーピングされている。これもまた多孔質の触媒担体である。
【0008】
本発明の課題は、殊に(メタ)アクロレインを(メタ)アクリル酸に酸化するための、o−キシレン及び/若しくはナフタレンをフタル酸無水物に酸化するための、又はアルケンをアルカジエン若しくはアルデヒドに酸化するための、公知の触媒より改善された選択率及び低い圧力損失を有し、それに運転時間にわたってこの低い圧力損失を保持する酸化触媒を提供することである。
【0009】
本課題は、本発明により、担体に対して0.5m2/g未満のBET表面積を有し、当該担体は少なくとも部分的に触媒活性多元素酸化物でコーティングされている、少なくとも1つの無機酸化物担体成形体又はセラミック担体成形体を含む酸化触媒によって解決され、ここで、該触媒は、貴金属不含であり、かつ担体成形体は鞍の形を有し、その鞍面が2つの主方向で反対向きに曲げられている。
【0010】
公知の鞍形の酸化触媒は、浸漬された中実材料であり、これは、慣用の触媒担体のように浸漬法によってコーティングされることができるように、低すぎることのない空隙率を有する。
【0011】
それに対して、本発明により用いられる担体成形体は、0.5m2/g未満の非常に低いBET表面積を有し、かつ本質的に非多孔質である。
【0012】
そのうえ、本発明により用いられる酸化触媒は、好ましくは内容積を有さないことから、これは運転時にコークス又はコークス化残分で詰まらないか又はほとんど詰まることがない。これによっても圧力損失は低く保たれることができる。
【0013】
そのうえ、本課題は、無機酸化物担体又はセラミック担体が、場合によりバインダーを併用して、多元素酸化物の粉末でコーティングされる酸化触媒の製造法によって解決される。
【0014】
さらになお、本発明は、プロペンからアクロレインに、プロペン若しくはアクロレインからアクリル酸に、tert−ブタノール、イソブタン、イソブテン若しくはtert−ブチルメチルエーテルからメタクロレインに、メタクロレイン若しくはイソブチルアルデヒドからメタクリル酸に、o−キシレン及び/若しくはナフタレンからフタル酸無水物に又はアルケンからアルカジエンに接触気相酸化するための酸化触媒の使用に関する。
【0015】
さらになお、本発明は、後述する式(I)又は(III)の触媒の層を含む触媒固定床上での分子状酸素によるα,β−不飽和アルデヒドの気相酸化によってα,β−不飽和カルボン酸を製造する方法に関する。
【0016】
さらになお、本発明は、酸化バナジウム及び二酸化チタンをベースとする後述の触媒の層を含む触媒固定床上での分子状酸素によるo−キシレン及び/又はナフタレンの気相酸化によってフタル酸無水物を製造する方法に関する。
【0017】
さらになお、本発明は、n−ブテンを含有する出発ガス混合物を、酸素を含有するガスと、場合により更に不活性ガス又は水蒸気と混合して、固定床反応器中で220〜490℃の温度にて、触媒固定床に配置された一般式(IV)の触媒と接触させる、n−ブテンからブタジエンに酸化脱水素する方法に関する。
【0018】
本発明による酸化触媒の製造のために、担体に対して0.5m2/g未満のBET表面積を有する無機酸化物担体成形体又はセラミック担体成形体が用いられる。担体成形体は鞍の形を有し、その鞍面が2つの主方向で反対向きに曲げられている。
【0019】
無機酸化物担体成形体又はセラミック担体成形体は、無機酸化物をベースとする。
【0020】
セラミック材料は、Roempp Chemielexikon, 9th editionによれは、無機酸化物と、主に非金属の化合物又は元素とから構成されており、かつ30体積%超が結晶性材料である。その製造は、セラミックの慣例的な方法、又は、例えばガラスセラミック、酸化物セラミック若しくは粉末冶金の現代の技法によって行われる。セラミックにおいては、酸化物のほかに、炭化物、窒化物、ケイ化物及び類似の化合物も原料として用いられることができる。その製造時に、固/固反応によって高い温度で固化が生じる。
【0021】
担体成形体は、好ましくは(耐火性)不活性材料から成る。不活性とは、担体成形体の材料が気相酸化の条件下で本質的には変化せず、かつ施与された活性材料と比べて気相酸化に対して触媒活性を有さないか又はせいぜいごく僅かな触媒活性しか有さないことを意味する。不活性材料として、殊に酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、炭化ケイ素、二酸化ジルコニウム、二酸化トリウム、シリケート、例えば粘土、カオリン、ステアタイト、軽石、アルミニウムシリケート、及びマグネシウムシリケート並びにそれらの混合物が考慮される。特に有利なのは、SiO2とAl23とから成る混合物及びSiO2とMgOとから成る混合物である。有利なのは、SiO260〜80質量%、好ましくは約70質量%と、Al2320〜40質量%とから成るせっ器(Steinzeug)である。さらになお、このような材料は、Fe23及びTiO2を、有利には2〜3質量%の量で、並びにK2O及びNa2Oを、好ましくは2.5〜3.5質量%の量で、さらになおMgO及びCaOを、好ましくは0.5〜1質量%の量で含有してよい。全量は100質量%である。相応のせっ器が、例えば、2〜2.5g/cm3、好ましくは約2.3g/cm3の材料密度を有する。適した材料が、例えばVereinigten Fuellkoerper−Fabriken(ランスバッハ=バウムバッハ)のACIDUR(登録商標)特殊せっ器である。
【0022】
さらになお、ステアタイトが有利である。C220型のステアタイトが特に有利である。極めて有利なのは、CeramTec社のC220型のステアタイトである。
【0023】
担体成形体のBET表面積は、0.5m2/g未満、有利には0.3m2/g未満、殊に0.1m2/g未満である。BET表面積の下限値は、好ましくは0.001m2/g、特に有利には0.01m2/gである。担体成形体は、高い機械的安定性を有することになり、そのため該担体成形体は酸化触媒として使用されるときに摩耗を生じない。
【0024】
この担体成形体は、はっきりと分かる表面粗さを有していてよく、それというのも、一般に表面粗さの増大が、担体成形体の表面に施与された活性材料及び/又は前駆体材料のシェルの付着強度の増大をもたらすからである。表面粗さは、WO2009/133065Aに記載されているように、多孔質の薄い無機シェル(これは担体成形体と一緒に焼結される)を施与することによって増大することができる。
【0025】
触媒の活性材料割合Q(質量%)は、活性材料及び担体成形体の質量の合計に対する活性材料の質量である。実際には、活性材料割合Qは、以下のとおり測定することができる。活性材料の質量の測定のために、実験により算出された触媒の質量から、バインダー除去のための熱処理後に、担体成形体の既知の質量を引いてよい。さらに、n個のコーティングされた多数の触媒成形体の活性材料の質量は、触媒の活性材料を測定して、担体成形体の平均的な質量と担体成形体の数との掛け算により得られる担体成形体の質量を引き算することによって測定することができる。測定精度を高めるために、多数の触媒又は担体成形体の質量を測定しかつ平均値を算出してよい。そのほかに、活性材料割合Qの測定は、担体成形体から活性材料を洗浄することによっても可能である。そのために、コーティングされた触媒を、例えばNH4OHで数回煮沸して、生じる液体を傾瀉してよい。残留する担体を、引き続き乾燥してよい。活性材料割合は、触媒材料に対する、(活性材料の洗浄前に測定した)触媒材料と(活性材料の洗浄後に測定した)担体材料との差分から得られる。
【0026】
それに従って、触媒の担体材料割合は(100−Q)(質量%)である。
【0027】
触媒の全質量に対する活性材料割合は、好ましくは2〜50質量%、特に有利には5〜40質量%、殊に10〜30質量%である。
【0028】
本発明により用いられる担体成形体は鞍の形を有し、その鞍面は2つの主方向で反対向きに曲げられている。
【0029】
幾何学的に、鞍面は、2つの主方向で反対向きに、すなわち、主曲率が異符号に(antiklastisch)曲げられている面を表す。通常、2つの主方向は、その際、互いに垂直であることから、それらは90°の角度をなす。本発明により、±20°まで、好ましくは±10°まで、殊に±5°までのずれが可能である。特に有利には、2つの主方向は、互いに垂直である。
【0030】
2つの主方向において、好ましくは、サドルは、180±20°、好ましくは180±10°、殊に180±5°の角度で張り出す(ueberstreichen)。特に有利には、そのつど180°の角度が張り出される。相応の角度については、EP−B−0192314、第4頁、第9行目〜第35行目の記載を参照することができる。
【0031】
これらの2つの主方向をx方向及びy方向で表し、かつ鞍面の点の高さをFで表した場合、x方向におけるFの関数値は、鞍点から離れるのと同時により小さくなり、その一方で、y方向における鞍点から離れると関数Fは増加することになる。
【0032】
鞍面、鞍点及び主方向は、図2に概略的に示している。
【0033】
鞍点のネーミングは、次の説明に由来する:乗馬鞍が、馬の脊柱に対して垂直に下向きであり、つまりx方向を表し、その一方で、乗馬鞍は、y方向において、すなわち脊柱と平行に上向きに形作られている。
【0034】
本発明により適したサドル体の形の説明については、AT333704、EP−B−0192314、DE522572及びEP−B−0218766を参照することができる。
【0035】
例えば、担体成形体は、インタロックスサドル又はベルルサドルとして形成されていてよい。ベルルサドルは、例えばDE522572における図面、及びEP−B−0218766における図面4〜6に示されている。インタロックスサドルは、例えばEP−B−0218766における図面1〜3、及びEP−B−0192314における図面に示されている。
【0036】
ここで、鞍形をした担体成形体は、鞍面に1つ以上のリブ(Rippen)を有してよく、これらのリブは、例えば鞍点又は複数の鞍点を通ってよい。リブの適した配置が、例えばEP−B−0192314における図面4及び5、さらになおDE522572における図3に示されている。
【0037】
さらになお、本発明により適したサドルは、添付の図面における図1及び4に概略的に示している。図3は、鞍点を通り、かつ長さL、幅B及び高さHを有するリブを備えたベルルサドルを示す。好ましくは、担体成形体の最大長さは、20mm、特に有利には15mm、殊に13mmである。
【0038】
長さL及び幅Bは、それぞれ、好ましくは4〜10mmの範囲にあり、ここで、長さLは、好ましくは幅Bに相当する。高さHは、好ましくは5〜13mmの範囲にある。
【0039】
図2は、ベルルサドルを示す。
【0040】
図1及び4は、選択的なベルルサドルを示し、これはその長さにわたって変化する厚さプロファイル及び突出した縁を有する。かかる突出した縁及び変化する厚さプロファイルは、製作公差(fertigungstechnische Toleranzen)の範囲内で生じてよく、かつ担体成形体の機能に鑑みて許容され得る。突出した縁は、例えば可塑性の出発材料のタブレット化による担体成形体の製造時に形成される。
【0041】
サドルの厚さは、EP−B−0192314、第4頁、第39行目〜第40行目に示されているように、好ましくは半径の0.1〜0.5倍である。サドルの縁又は角は、例えばベルルサドルのときのように丸まっていてよい。角又は縁を丸くすることは、角が特に摩耗し易いことから有利である。
【0042】
さらになお、サドルに、流出溝(Ablaufrillen)若しくは穿孔又は両機能を同時に備え付けることが可能である。端部を軽く押し縮めることによって又は適した円錐体若しくはリブを取り付けることによって、サドルが互いに食い込むことを防ぐことができる。重なり傾向(Stapelneigung)を低くするために、鞍曲線は可能な限り急勾配であるべきか、又は約180°の前述の角度が保たれるべきである。高い壁厚も、重なり傾向を低くするために好ましい。
【0043】
本発明による酸化触媒上で用いられる多元素酸化物は、酸化反応を触媒する公知の多元素酸化物であってよい。好ましくは、多元素酸化物及び触媒全体は、酸化数0の金属を含まず、すなわち、触媒中に金属形態の金属は存在しない。
【0044】
有利には、多元素酸化物及び酸化触媒全体は、貴金属を含まない。ここで、貴金属は、金、銀、水銀、レニウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム及び白金の元素である。これに関して、Roempp Chemielexikon, 9th editionにおける見出し語「貴金属」が参照される。
【0045】
本発明により有利な酸化触媒は、プロペンからアクロレインに、プロペン若しくはアクロレインからアクリル酸に、tert−ブタノール、イソブタン、イソブテン若しくはtert−ブチルメチルエーテルからメタクロレインに、メタクロレイン若しくはイソブチルアルデヒドからメタクリル酸に、o−キシレン及び/若しくはナフタレンからフタル酸無水物に又はアルケンからアルカジエンに接触気相酸化するための触媒である。
【0046】
アクリル酸を製造するための適した触媒は、例えばEP−A0714700における請求項1、21及び23並びにDE−A−19948248、殊に第5頁、第5行目〜第7頁、第15行目及び第9頁、第37行目〜第11頁、第60行目に記載されている。
【0047】
メタクリル酸製造のための適した触媒は、例えばEP−A−0297445、殊に第5頁に記載されている。
【0048】
フタル酸無水物の製造のための適した触媒は、例えばWO2012/014154、殊に第3頁、第20行目〜第4頁、第16行目に記載されている。
【0049】
有利な活性材料を、以下で詳細に説明する。
【0050】
α,β−不飽和アルデヒドの気相酸化によるα,β−不飽和カルボン酸を製造するための活性材料は自体公知である。例えば、Mo及びV元素を含有する触媒活性多元素酸化物材料が適しており、ここで、触媒活性多元素酸化物材料の酸素とは異なる全ての元素の全量におけるMo元素のモル割合は20モル%〜80モル%であり、触媒活性多元素酸化物材料中に含まれるMoの、触媒活性多元素酸化物材料中に含まれるVに対するモル比、Mo/Vは、15:1〜1:1である。好ましくは、多金属酸化物は、そのほかにNb及びW元素の少なくとも1つを含有する;相応のモル比Mo/(W及びNbの全量)は、好ましくは80:1〜1:4である。頻繁に、かかる多元素酸化物材料は、更にCuを30:1〜1:3の相応のモル比Mo/Cuで含有する。
【0051】
前述の多元素酸化物材料は、Mo、V、並びに場合によりNb及び/若しくはW又はCu元素のほかに、更に、例えばTa、Cr、Ce、Ni、Co、Fe、Mn、Zn、Sb、Bi、アルカリ金属(Li、Na、K、Rb、Cs)、H、アルカリ土類金属(Mg、Ca、Sr、Ba)、Si、Al、Ti及びZrを含有してよい。しかし当然の事ながら、多元素酸化物活性材料は、Mo、V、O、及びCu並びに場合によりW及び/又はNbの元素からのみ成っていてもよい。それらは、殊にアクロレインからアクリル酸への不均一系接触気相部分酸化のための触媒活性材料として適している。
【0052】
ここで、アクロレインからアクリル酸への不均一系接触気相部分酸化のための触媒の活性材料として極めて適した触媒活性多元素酸化物材料は、下記の一般式(I)
Mo12a1b2c3d4e5fn (I)
[式中、
1は、W、Nb、Ta、Cr及び/又はCeであり、
2は、Cu、Ni、Co、Fe、Mn及び/又はZnであり、
3は、Sb及び/又はBiであり、
4は、1種以上のアルカリ金属及び/若しくはアルカリ土類金属並びに/又はNであり、
5は、Si、Al、Ti及び/又はZrであり、
aは、1〜6の範囲の数であり、
bは、0.2〜4の範囲の数であり、
cは、0〜18、好ましくは0.5〜18の範囲の数であり、
dは、0〜40の範囲の数であり、
eは、0〜4の範囲の数であり、
fは、0〜40の範囲の数であり、かつ
nは、(I)における酸素とは異なる元素の化学量論係数及びそれらの元素の電荷数によって決定される酸素元素の化学量論係数である]
に相当する。
【0053】
好ましくは、変項は、所定の範囲内で、多元素酸化物材料(I)における酸素とは異なる全ての元素の全量におけるMo元素のモル割合が20モル%〜80モル%であり、触媒活性多元素酸化物材料(I)中に含まれるMoの、触媒活性多元素酸化物材料(I)中に含まれるVに対するモル比、Mo/Vが、15:1〜1:1であり、かつ相応のモル比、Mo/(W及びNbの全量)が80:1〜1:4である(及び多元素酸化物材料がCuを含有する場合、相応のモル比Mo/Cuは30:1〜1:3である)という条件下で選択されるべきである。
【0054】
活性材料は、好ましくは、一般式(II)
Mo12abCuc4e5fn (II)
[式中、
4は、1種以上のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属であり、
5は、Si、Al、Ti及びZrの群からの1種以上の元素であり、
aは、2〜4の範囲の数、好ましくは2.5〜3.5の範囲の数であり、
bは、0〜3の範囲の数、好ましくは0.2〜3の範囲の数、好ましくは0.5〜2の範囲の数、特に有利には0.75〜1.5の範囲の数であり、
cは、0.5〜3の範囲の数、好ましくは0.7〜2.7の範囲の数、好ましくは0.9〜2.4の範囲の数、特に有利には1〜1.5の範囲の数であり、
eは、0〜4の範囲の数、好ましくは0〜2の範囲の数、有利には0〜1の範囲の数、特に有利には0〜0.2の範囲の数であり、
fは、0〜40の範囲の数、好ましくは0〜15の範囲の数、有利には0〜8の範囲の数、特に有利には0であり、かつ
nは、(II)における酸素とは異なる元素の化学量論係数及びそれらの元素の電荷数によって決定される酸素元素の化学量論係数である]
に相当する。
【0055】
元素X4及びX5は、一般式(II)の活性材料の構成成分では必ずしもない。それらは、活性材料中で一般的に不活性希釈剤のように作用する。活性材料中への導入によって、体積比触媒活性を所望の水準に調節することができる。
【0056】
一般的に、多元素コーティングは多孔質である。それは、有利には、異なる平均直径の細孔の特定の分布を有する。マクロ孔の体積割合pvolは、好ましくは、少なくとも0.35であり、ここで、pvolは、
【数1】
[式中、
0.26-2は、0.26〜2μmの範囲の平均直径を有する細孔の体積であり、かつ
0.02-6.5は、0.02〜6.5μmの範囲の平均直径を有する細孔の体積である]によって測定される。
【0057】
ナノメートル範囲及びマイクロメートル範囲における平均直径を有する細孔の体積は、水銀圧入法(例えばDIN番号66133に準拠)によって測定することができる。水銀は、大部分の固体に対して濡らさない液体としての性質がある。それゆえ、水銀は、多孔質材料により自然発生的には吸収されずに、外部圧力下でのみ固体試料の細孔に浸透する。この圧力の高さは、細孔の大きさに依存する。この性質が、外部印加圧力での体積検出浸入量から細孔径を検出するために、水銀圧入法において利用される。
【0058】
メタクロレインからメタクリル酸への気相酸化のために、活性材料は、好ましくは、一般式III
Mo12abc1d2e3SbfReghn (III)
[式中、変項は、以下の意味を有する:
1=カリウム、ルビジウム及び/又はセシウム、
2=銅及び/又は銀、
3=セリウム、ホウ素、ジルコニウム、マンガン及び/又はビスマス、
a=0.5〜3、
b=0.01〜3、
c=0.2〜3、
d=0.01〜2、
e=0〜2、
f=0.01〜2、
g=0〜1、
h=0.001〜0.5及び
n=IIIにおける酸素とは異なる元素の原子価及び頻度によって決定される数である]の化学量論組成を有する。
【0059】
有利なのは、hが0.03〜0.5である活性材料IIIである。
【0060】
一般式IIIの特に有利な化学量論組成は、EP−A467144からの実施例B1〜B15のものであり、かつ、これらの例示的な活性材料がK及び/又はReを含有しない場合にも当てはまる。
【0061】
前述のEP−A467144は、メタクロレインからメタクリル酸への不均一系接触気相部分酸化の触媒として使用することも記載している。これらの記載は、本出願中に示される内容にも相通じている。
【0062】
一般化学量論組成IIIの活性材料は、出発化合物として、それらの構成元素成分の適した塩を、場合により高められた温度で及び酸又は塩基の添加下で、水性媒体中で溶解及び/又は懸濁することによって微細に分散し、不所望の酸化プロセスを回避するために、場合により不活性ガス下で混合し、この混合物を乾燥(例えば蒸発又は噴霧乾燥)して、生じる微細な形を有するか又は微細な形に変換された乾燥材料を担体成形体に施与することによって製造することができる。
【0063】
所望の活性材料の元素成分の供給源の水溶液又は水性懸濁液の有利な乾燥法は、噴霧乾燥である。
【0064】
一般式IIIの活性材料の記載した製造様式の場合、モリブデンが、好ましくはモリブデン酸又はリンモリブデン酸のアンモニウム塩として、バナジウムが、一般にバナジン酸アンモニウム又はシュウ酸バナジウムとして、リンが、好ましくはオルトリン酸又はリン酸二アンモニウムとして、硫黄が、例えば硫酸アンモニウムとして、アンチモンが、通常は三酸化アンチモンとして、レニウムが、例えば酸化レニウム(VII)として、かつカチオン性金属が、通常は硝酸塩、酸化物、水酸化物、炭酸塩、塩化物、ギ酸塩、シュウ酸塩及び/若しくは酢酸塩又はそれらの水和物として用いられる。
【0065】
フタル酸無水物の製造のために、多元素酸化物材料は、好ましくは、
25として計算された、酸化バナジウム1〜40質量%、
TiO2として計算された、二酸化チタン60〜99質量%、
Csとして計算された、セシウム化合物0〜1質量%、
Pとして計算された、リン化合物0〜1質量%、
Sb23として計算された、酸化アンチモン0〜10質量%
を含有し、それらの全量は100質量%であり、酸化バナジウム及び二酸化チタンの適した供給源については、WO2012/014154、第3頁、第29行目〜第4頁、第2行目を参照することができる。用いられる二酸化チタンは、アナターゼ構造で存在すべきである。適した助触媒として、アルカリ金属、殊にリチウム、カリウム及びルビジウムが、記載されるセシウムに加えて考慮される。これらは、典型的には、それらの酸化物又は水酸化物の形で用いられる。さらになお、酸化タリウム(I)、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化鉄、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化マンガン、酸化スズ、酸化銀(あまり有利ではない)、酸化銅、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化イリジウム(あまり有利ではない)、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化ヒ素、四酸化アンチモン、五酸化アンチモン及び酸化セリウムを併用してよい(WO2012/014154、第4頁、第4行目〜第12行目を参照されたい)。
【0066】
アルケンからアルカジエン、好ましくはブテンからブタジエンへの酸化脱水素のために、活性材料は、好ましくは、一般式(IV)
Mo12BiaFebCocNidCre1f2gx (IV)
[式中、変項は、以下の意味を有する:
1=W、Sn、Mn、La、Ce、Ge、Ti、Zr、Hf、Nb、P、Si、Sb、Al、Cd及び/又はMg、
2=Li、Na、K、Cs及び/又はRb、
a=0.1〜7、好ましくは0.3〜1.5、
b=0〜5、好ましくは2〜4、
c=0〜10、好ましくは3〜10、
d=0〜10、
e=0〜5、好ましくは0.1〜2、
f=0〜24、好ましくは0.1〜2、
g=0〜2、好ましくは0.01〜1及び
x=(IV)における酸素とは異なる元素の原子価及び頻度によって決定される数である]を有する。
【0067】
一般的に、酸化脱水素に適した触媒は、一般に更に鉄を含有するMo−Bi−O含有の多元素酸化物系をベースとする。酸化脱水素に用いられる活性材料は、例えばDE−A102011079035に記載されているように、アルケンからα,β−不飽和アルデヒドへの酸化にも適しているが、この場合、たいていはクロムの不存在下で行われる。一般的に、この触媒系は、周期律表の第1族〜第15族からの更なる追加的な成分、例えばカリウム、セシウム、マグネシウム、ジルコニウム、クロム、ニッケル、コバルト、カドミウム、スズ、鉛、ゲルマニウム、ランタン、マンガン、タングステン、リン、セリウム、アルミニウム又はケイ素を含有する。鉄含有フェライトも触媒として提案されていた。
【0068】
有利な1つの実施形態においては、多金属酸化物はコバルト及び/又はニッケルを含有する。更なる有利な1つの実施形態においては、多金属酸化物はクロムを含有する。更なる有利な1つの実施形態においては、多金属酸化物はマンガンを含有する。
【0069】
Mo−Bi−Fe−O含有の多金属酸化物の例は、Mo−Bi−Fe−Cr−O含有の又はMo−Bi−Fe−Zr−O含有の多金属酸化物である。有利な系は、例えばUS4,547,615(Mo12BiFe0.1Ni8ZrCr30.2x及びMo12BiFe0.1Ni8AlCr30.2x)、US4,424,141(Mo12BiFe3Co4.5Ni2.50.50.1x+SiO2)、DE−A2530959(Mo12BiFe3Co4.5Ni2.5Cr0.50.1x、Mo13.75BiFe3Co4.5Ni2.5GE0.50.8x、Mo12BiFe3Co4.5Ni2.5Mn0.50.1x及びMo12BiFe3Co4.5Ni2.5La0.50.1x)、US3,911,039(Mo12BiFe3Co4.5Ni2.5Sn0.50.1x)、DE−A2530959及びDE−A2447825(Mo12BiFe3Co4.5Ni2.50.50.1x)に記載されている。
【0070】
さらに、適した多金属酸化物及びそれらの製造は、US4,423,281(Mo12BibNi8Pb0.5Cr30.2x及びMo12BibNi7Al3Cr0.50.5x)、US4,336,409(Mo12BiNi6Cd2Cr30.5x)、DE−A2600128(Mo12BiNi0.5Cr30.5Mg7.50.1x+SiO2)及びDE2440329(Mo12BiCo4.5Ni2.5Cr30.50.1x)に記載されている。
【0071】
特に有利な触媒活性の、モリブデン及び少なくとも1種の更なる金属を含有する多金属酸化物は、一般式(IVa):
Mo12BiaFebCocNidCre1f2gy (IVa)
[式中、
1=Si、Mn及び/又はAl、
2=Li、Na、K、Cs及び/又はRb、
0.2≦a≦1、
0.5≦b≦10、
0≦c≦10、
0≦d≦10、
2≦c+d≦10、
0≦e≦2、
0≦f≦10、
0≦g≦0.5、
y=電荷中性の条件下で、(Ia)における酸素とは異なる元素の原子価及び頻度によって決定される数である]を有する。
【0072】
有利なのは、触媒活性酸化物材料が2つの金属Co及びNiのうちCoのみを有する触媒である(d=0)。有利には、X1は、Si及び/又はMnであり、かつX2は、好ましくはK、Na及び/又はCsであり、特に有利には、X2=Kである。
【0073】
式(IVa)中の化学量論係数aは、好ましくは0.4≦a≦1、特に有利には0.4≦a≦0.95である。変項bの値は、好ましくは1≦b≦5の範囲にあり、特に有利には2≦b≦4の範囲にある。化学量論係数c+dの合計は、有利には4≦c+d≦8の範囲にあり、特に有利には6≦c+d≦8の範囲にある。化学量論係数eは、有利には0.1≦e≦2の範囲にあり、特に有利には0.2≦e≦1の範囲にある。化学量論係数gは、好適には≧0である。有利なのは0.01≦g≦0.5であり、特に有利には0.05≦g≦0.2が適用される。
【0074】
酸素の化学量論係数の値yは、電荷中性の条件下で、カチオンの原子価及び頻度から得られる。好適なのは、Co/Niのモル比が少なくとも2:1、有利には少なくとも3:1、特に有利には少なくとも4:1である触媒活性酸化物材料を有する本発明によるシェル触媒である。理想的にはCoのみが存在する。
【0075】
適した微細な多金属酸化物材料の製造のために、所望の多金属酸化物材料の酸素とは異なる元素成分のそれぞれの化学量論比における公知の出発化合物から出発して、これらの化合物から可能な限り均質で、好ましくは微細な乾燥混合物を作り出し、次いでこれを熱処理(焼成)に供する。その際、供給源は、既に酸化物であってよいか、又は少なくとも酸素の存在下における加熱によって酸化物に変換され得る化合物であってよい。それゆえ、酸化物のほかに、出発化合物として、中でもハロゲン化物、硝酸塩、ギ酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩、炭酸塩又は水酸化物が考慮される。
【0076】
モリブデンの適した出発化合物はまた、そのオキソ化合物(モリブデン酸塩)又はこれらから誘導された酸である。ヘプタモリブデン酸アンモニウムは、モリブデンの有利な出発化合物である。
【0077】
Bi、Cr、Fe及びCoの適した出発化合物は、殊にそれらの硝酸塩である。
【0078】
出発化合物の均質な混合は、原則的に、乾燥した形で又は水溶液若しくは水性懸濁液の形で行ってよい。
【0079】
水性懸濁液は、例えば、少なくともモリブデンを含有する溶液と、残りの金属を含有する水溶液とを合一することによって製造することができる。アルカリ金属又はアルカリ土類金属は、両方の溶液中に存在してよい。溶液を合一することによって沈殿が起こり、これにより懸濁液が形成する。沈殿の温度は、室温より高くてよく、有利には30℃〜95℃、特に有利には35℃〜80℃であってよい。その後、懸濁液は、ある一定の時間にわたり、高められた温度で熟成してよい。熟成時間は、一般的に0〜24時間、有利には0〜12時間、特に有利には0〜8時間である。熟成の温度は、一般的に20℃〜99℃、有利には30℃〜90℃、特に有利には35℃〜80℃である。懸濁液の沈殿及び熟成の間、これは一般的に撹拌によって混合される。混合された溶液又は懸濁液のpH値は、一般的にpH0〜pH12、有利にはpH0.5〜pH4、特に有利にはpH1〜pH3である。
【0080】
水の除去によって、添加された金属成分の均質な混合物である固体が生まれる。乾燥工程は、一般的に、蒸発、噴霧乾燥又は凍結乾燥などによって実施してよい。有利には、乾燥は噴霧乾燥によって行われる。このために、懸濁液は、高められた温度で、一般的に120℃〜300℃の温度の噴霧ヘッドにより霧化されて、乾燥された生成物は、>60℃の温度で回収される。噴霧粉末の120℃での乾燥によって測定された残留水分は、一般的に20質量%未満、有利には15質量%未満、特に有利には12質量%未満である。
【0081】
本発明による触媒は、一般的に、粉末状活性材料を担体成形体に施与することによって、好ましくは以下に記載した製造法に従って得られる。
【0082】
粉末状活性材料の製造は、種々の方法で行うことができる。1つの実施形態においては、活性材料の製造は、活性材料の元素成分の供給源から均質な乾燥混合物を作り出し、これを350〜600℃の温度で焼成して、引き続き粉末形に変換することによって行われる。
【0083】
活性材料の元素成分の有利な供給源は、活性材料中に含まれる金属の酸化物である。そのほかに、活性材料の元素成分の供給源として、少なくとも酸素の存在下における加熱によって酸化物に変換され得る化合物が考慮される;殊に、活性材料中に含まれる金属のハロゲン化物、硝酸塩、ギ酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、炭酸塩、アミン錯体、アンモニウム塩及び/又は水酸化物が考慮される。
【0084】
好ましくは、均質な乾燥混合物は、供給源の均質な混合によって作り出す。均質な混合は、乾式形又は湿式形で行うことができる。乾式形で行われる場合、供給源は、好適には微細な粉末として用いられる。特に均質な乾燥混合物は、もっぱら溶解された形で存在する供給源から出発した場合の混合時に得られる。それゆえ、供給源の均質な混合は、好ましくは湿式形で行われる。好ましくは、供給源は、溶液及び/又は懸濁液の形で互いに混合されて、その際に生じる湿式混合物が、引き続き均質な乾燥混合物へと乾燥される。溶剤及び/又は懸濁化剤として、有利には水又は水溶液が用いられる。湿式混合物の乾燥は、好ましくは噴霧乾燥によって100〜150℃の出口温度で行われる。乾燥ガス流は、好ましくは空気又は分子状窒素である。
【0085】
焼成前に、乾燥から生じる乾燥混合物を更に混合操作に供してよい。特に好ましくは、混合操作は、例えば水、酢酸などであってよい液体の添加後に、いわゆる混練として実施される。効果的な剪断力によって、アグロメレートが細かく砕かれて、最終的には十分に均質化されたペースト状の材料が作り出され、これは引き続き、安定したストランド(Straenglingen)に押出しかつ乾燥することができる。乾燥されたストランドは、中でも好ましくは回転管内での焼成に適している。焼成は、不活性ガス下でも、酸化雰囲気下又は還元雰囲気下でも実施することができる。好ましくは、焼成は、酸化雰囲気下で実施される。不活性ガスとして、殊に窒素、水蒸気、希ガス、及びそれらの混合物が考慮される。酸化雰囲気は、好ましくは酸素、殊に空気を含有する。還元雰囲気は、好ましくはH2、NH3、CO、メタン及び/又はアクロレインを含有する。アクロレインをアクリル酸に気相部分酸化するための(I)及び(II)に従った活性材料の触媒活性は、焼成雰囲気の酸素含有率に応じて、一般的に最適値を示す。好ましくは、焼成雰囲気の酸素含有率は0.5〜10体積%、特に有利には1〜5体積%である。前述の限界値を上回る酸素含有率と、それを下回る酸素含有率とは、生じる触媒活性を通常は低下させる。焼成期間は、数分〜数時間であってよく、かつ通常は焼成温度の増大とともに減少する。好適な焼成法を、例えばDE−A10360057が記載している。
【0086】
乾燥混合物の焼成時に活性材料が得られる。粉末形への変換は、好ましくは粉砕によって行われる。
【0087】
触媒を製造する選択的な方法においては、担体成形体の表面にまず微細な前駆体材料を施与して、前駆体材料を活性材料に変える焼成を、担体成形体の表面上で実施する。微細な前駆体材料は、好ましくは、活性材料の元素成分の供給源を含有する。活性材料は、好ましくは、一般式(I)又は(II)又は(III)又は(IV)の活性材料である。
【0088】
触媒を製造する本発明による方法においては、多数の担体成形体、粉末状活性材料及び液状バインダーを、粉末状活性材料に液状バインダーを一杯にしみ込ませずに、容器中で混合することによって、担体成形体を活性材料でコーティングし、その際、コーティングプロセスの期間は60分未満である。粉末状活性材料に液状バインダーが一杯にしみ込むことがないように、粉末状活性材料の量に対する液状バインダーの量の比は、バインダー量が粉末状活性材料の液体吸収容量を下回り続けるように選択する。
【0089】
粉末の液体吸収容量は、例えば、粉末を撹拌機中で渦動せしめ、かつ液体を、撹拌された粉末に施与して、撹拌モーターのトルクの経時変化を計測することによって測定することができる。トルクの最大値まで粉末に施与された液体量から、粉末の液体吸収容量を算出することができる。
【0090】
粉末状活性材料は、好ましくは、50μmを上回る最長寸法(Laengstausdehnung)を有する粒子の1%未満の数値割合を有する。
【0091】
バインダーとの用語は、活性材料粉末粒子同士の及び/又は担体材料への付着を持続的に若しくは一時的に改善する物質を意味する。好ましくは、バインダーは、引き続く乾燥時に本質的に蒸発又は昇華する。本発明による方法においては、例えば、バインダーとして、ポリオール、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン又はアミド、例えばホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジブチルホルムアミド、アセトアミド、ピロリドン又はN−メチルピロリドンを使用してよい。液状バインダーは、好ましくは、水、グリセリン及び水中グリセリン溶液の中から選択される。有利な液状バインダーは、水20〜99質量%を含有する水中グリセリン溶液である。特に有利な液状バインダーは、水75質量%を含有する水中グリセリン溶液である。
【0092】
好ましくは、担体成形体を容器に入れ、かつ粉末状活性材料と液状バインダーとを互いに別個にコーティングの期間にわたり容器に加える。このようにして、粉末状活性材料と液状バインダーとを容器中で初めて互いに接触させる。粉末活性材料と液状バインダーとは、好ましくは、容器に入れられた担体成形体の表面上で初めて合一する。これは、液状バインダーを容器中に噴霧して、粉末状活性材料を、液状バインダーの噴霧コーンの外側にある容器の領域中に導入することによってうまくいく。このようにして、粉末粒子が液体で局所的に負荷され過ぎることを回避する。粉末活性材料と液状バインダーとは、例えば、処理期間にわたって容器中に連続的に添加するか又は部分量を時間的に隔てて添加することによって加えてよい。
【0093】
混合は、好ましくは、容器を連続的に運動させることによって行われる。この運動は、好ましくは回転運動である。
【0094】
触媒を製造する前述の方法を実施するために、中でも、そのつど所望の液体バインダーを使用するDE−A2909671に開示された方法原理(EP−A714700及びDE−A102005010645も参照されたい)が適している。
【0095】
すなわち、コーティングされるべき担体成形体は、好ましくは傾斜された(傾斜角は、一般に30〜90°である)回転容器(例えばターンテーブル又はコーティングパン又はコーティングドラム)中に詰められる。この使用目的のために好適な回転容器は、殊にフロイント産業株式会社、東京(JP)のHCF−100型のハイコーター及びGebrueder Loedige Maschinenbau GmbH社,パーダーボルン(ドイツ国)のLH 100型のハイコーターである。
【0096】
回転容器は、担体成形体を、好ましい間隔で連続して配置された2つの計量供給装置の下に通す。2つの計量供給装置の第一の装置は、好適にはノズルに相当し、これによって回転式ターンテーブル(ハイコーター)の中で転がる担体成形体が液状バインダーで制御して湿らせられる。第二の計量供給装置は、応用技術的に好適には、噴霧される液状バインダーの霧化コーンの外側にあり、かつ粉末状活性材料を供給するために用いられる(例えば振動チャネルを介して)。担体成形体は活性材料を取り込み、それというのも、活性材料は、転動によって担体成形体の外面で圧縮固化して密着したシェルになるからである。このようにしてベースコーティングされた担体成形体は、続く回転の過程で再び噴霧ノズルを通過し、その際に、制御して湿らされ(場合により他の液状バインダーとともに)、そうして更なる運動の過程で(場合により他の)粉末状活性材料の更なる層を取り込むことが続けてできる(中間乾燥は、一般に必要ではない)。使用された液状バインダーの少なくとも部分的な除去は、EP−A714700の教示又はDE−A102005010645の教示に従って、最終的な熱供給によって、例えばN2又は空気といった高温ガスの作用によって行うことができる(これらは、ターンテーブル、又はコーティングパン、又はコーティングドラム(一般的に回転容器)における、格子状の形態で空間的に互いに隔てて取り付けられた壁要素によって供給及び排出される)。
【0097】
担体表面は、好適には、これが、たしかに液状バインダーを吸着して有するものの、担体表面上でそれが視覚的には捉えられないように湿らされる。担体成形体表面が湿り過ぎている場合、活性材料及び前駆体材料が担体成形体の表面に付着する代わりに、いわゆる結着(Zwillingsbildung)が起こり、すなわち、担体成形体そのものが凝集する。これに関するより詳しい記載が、DE−A2909671、EP−A714700及びDE−A102005010645に見出される。記載された方法様式の1つの利点は、使用された液状バインダーの除去が、比較的制御された仕方で、例えば蒸発及び/又は昇華によって行うことができる点にある。最も簡単な場合には、これは、既に説明したとおり、相応の温度(頻繁に50〜150℃)の高温ガスの作用によって行うことができる。高温ガスのかかる作用は、一般的に前乾燥を引き起こす。
【0098】
担体成形体への活性材料の施与は、例えばWO2005/030388、DE4006935A1、DE19824532A1、EP0966324B1に記載されているとおり、流動層内での懸濁液によるコーティングによっても行ってよい。担体は、例えば流動層装置又は流動床装置中で、上昇するガス流、殊に空気において流動化される。これらの装置は、たいていの場合、流動化ガスが下から上に浸漬管を介して導入される円錐形の又は球形の容器から成る。懸濁液は、ノズルを介して、上方から、側方から又は下方から流動層内に噴霧される。好ましくは、浸漬管の中央に及び/又は同心円状に配置された上昇管が用いられる。上昇管内には、担体粒子を上に向かって運ぶ比較的高いガス速度が存在する。外輪でのガス速度は、流動化速度(Lockerungsgeschwindigkeit)を少しだけ上回る。したがって、粒子は鉛直方向で環状に動かされる。適した流動床装置が、例えばDE−A4006935に記載されている。
【0099】
バインダーの除去は、例えばDE−A102005010645が推奨しているように、任意の種類の乾燥装置(例えばベルト乾燥機)において及び/又は管束反応器の触媒固定床において初めて行ってよい。好ましくは、本発明による触媒は、液状バインダーを、コーティングされた担体成形体から150〜400℃、有利には250〜350℃の範囲の温度での乾燥により除去することによって得られる。乾燥は、好ましくは空気流中で実施する。好ましくは、乾燥期間は0.5〜8時間、有利には1〜4時間である。
【0100】
本発明の対象はまた、本発明による触媒の層を含む触媒固定床での分子状酸素によるα,β−不飽和アルデヒドの気相酸化によってα,β−不飽和カルボン酸を製造する方法である。好ましくは、分子状酸素及びα,β−不飽和アルデヒドを触媒固定床上に導くことによって、分子状酸素及びα,β−不飽和アルデヒドを触媒固定床と接触させる。好ましくは、分子状酸素及びα,β−不飽和アルデヒドを含有する反応ガスを触媒固定床上に導いて、この反応ガスを生成物ガスに変換させる。
【0101】
α,β−不飽和アルデヒドは、好ましくは、3〜6個(すなわち3、4、5又は6個)の炭素原子を含有するα,β−不飽和アルデヒド、殊にアクロレイン及びメタクロレインの中から選択される。特に有利には、α,β−不飽和アルデヒドはアクロレインである。本方法は、特にα,β−不飽和カルボン酸の製造、殊にアクロレインからアクリル酸への酸化及びメタクロレインからメタクリル酸への酸化に適している。好ましくは、これは、アクロレインの気相酸化によってアクリル酸を製造する方法である。
【0102】
分子状酸素は、この方法に、好ましくは空気の形で供給される。
【0103】
反応ガス中に含まれるα,β−不飽和アルデヒドの割合は、一般的に、それぞれ反応ガスに対して3〜15体積%、好ましくは4〜10体積%、有利には5〜8体積%となる。
【0104】
好ましくは、反応ガスは、そのほかに、水蒸気とは異なる少なくとも1種の不活性希釈ガスを含有する。これは、気相酸化の過程で少なくとも95モル%、好ましくは少なくとも98モル%が化学的に変化しないままであるガスを意味する。不活性希釈ガスの例は、N2、CO2及び希ガス、例えばArである。不活性希釈ガスとして、好ましくは分子状窒素が用いられる。不活性希釈ガスは、少なくとも20体積%、有利には少なくとも40体積%、更に有利には少なくとも60体積%、特に有利には少なくとも80体積%、極めて有利には少なくとも95体積%の分子状窒素を含有してよい。
【0105】
反応ガスは、そのほかに水蒸気を含有してよい。
【0106】
反応ガスは、そのほかに循環ガスを含有してよい。循環ガスは、気相酸化の生成物ガスからα,β−不飽和カルボン酸及び他の低揮発性成分を本質的に選択的に分離したときに残る残留ガスを意味する。
【0107】
好ましくは、α,β−不飽和カルボン酸を製造する本発明による方法は、アルケンをα,β−不飽和カルボン酸に変える二段階の気相酸化の2つ目の段階を成す。かかる二段階の気相酸化に従って、1つ目の段階の生成物ガスは、好ましくは2つ目の段階に供給される。2つ目の段階への供給前に、1つ目の段階の生成物ガスを、例えば冷却しかつ/又は酸素を加えてよい(二次酸素供給、有利なのは空気の供給である)。循環ガスは、好ましくは、2つの段階の1つ目に導かれる。
【0108】
反応ガス中で、O2:α,β−不飽和アルデヒドのモル比は、好ましくは1:3、有利には1:2、特に有利には1〜1.5である。
【0109】
反応ガスは、好ましくは、α,β−不飽和アルデヒド:酸素:水蒸気:水蒸気とは異なる不活性希釈ガスを、1:(1〜3):(0〜20):(3〜30)、好ましくは1:(1〜3):(0.5〜10):(7〜10)の体積比で含有する。
【0110】
好ましくは、層上でのα,β−不飽和アルデヒドの空間速度(Belastung)は、最大で600Nl/(lh)、有利には最大で300Nl/(lh)、特に有利には最大で250Nl/(lh)である。Nl/(lh)で表記される、層上でのα,β−不飽和アルデヒドの空間速度は、反応ガスの構成成分として触媒固定床上に層1リットル当たりにつき1時間当たりで導かれるα,β−不飽和アルデヒドの量(標準リットル)を意味する。標準リットル(Nl)は、α,β−不飽和アルデヒドのモル量に相当する理想気体のモル量が、標準条件、すなわち0℃及び1barで占有することになる体積(リットル)である。
【0111】
一般的に、反応ガス中には、0.5〜100bar、有利には1〜5bar、殊に1〜3barの全圧が存在する。この明細書中での全ての圧力値は、絶対圧力に関する。
【0112】
好ましくは、酸化法、殊にα,β−不飽和カルボン酸を製造する方法は、反応管に触媒固定床が装入されている管束反応器中で実施する。
【0113】
管束反応器は、有利には2ゾーン管束反応器である。有利な2ゾーン管束反応器を、DE−C2830765が開示している。しかし、DE−C2513405、US−A3147084、DE−A2201528、EP−A383224及びDE−A2903582に開示された2ゾーン管束反応器も適している。
【0114】
2ゾーン管束反応器においては、反応管の周りで、好ましくは、本質的に互いに空間的に隔てられた2つの温度制御媒体が導かれる。これらの温度制御媒体は、好ましくは溶融塩である。温度制御媒体の入口温度は、好ましくは230〜300℃に、有利には240〜290℃に、特に有利には250〜285℃に設定される。温度制御媒体は、反応ガス混合物に並流で又は向流で、それぞれの温度制御ゾーンに導いてよい。温度制御ゾーン内で、温度制御媒体は、有利には蛇行状に導かれる。温度制御媒体の流速は、それぞれの温度制御ゾーン内で、好ましくは、熱交換媒体の温度が、温度ゾーンの入口箇所から温度ゾーンの出口箇所までにおいて0〜15℃、頻繁に1〜10℃、又は2〜8℃、又は3〜6℃上昇するように選択される。
【0115】
有利な実施形態においては、触媒固定床は、少なくとも2つの連続した反応ゾーンを含み、ここで、層は、少なくとも最大局所温度が生じる反応ゾーンに本発明による触媒を含む。
【0116】
層は、例えば、もっぱら本発明による触媒からのみ成ってよい。層内には、気相酸化に対して本質的に不活性に挙動する、本発明による触媒と希釈成形体とからの実質的に均質な混合物も存在していてよい。希釈成形体の材料として、例えば、多孔質若しくは非多孔質の酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、二酸化ジルコニウム、炭化ケイ素、ケイ酸塩、例えばケイ酸マグネシウム若しくはケイ酸アルミニウム及び/又はステアタイト(例えばCeramTec社(DE)のC220型のもの)が考慮される。
【0117】
原則的に、希釈成形体の形状は任意であってよい。すなわち、例えば、リング体、球体、タブレット、穿孔されたタブレット、三葉体、穿孔された三葉体、星形ストランド、星形タブレット、車輪体、押出品、カプセル体、円筒体及び中空円筒体であってよい。
【0118】
一般に、管束反応器は、触媒固定床中でのガス温度を測定するために温度計測管(Thermorohre)を追加的に有する。好適には、温度計測管の内径及び内側にある熱電対の収容ケースの直径は、反応熱を発生する体積の、除熱面に対する比が、温度計測管及び反応管において同じであるか又はごく僅かにしか異ならないように選択される。
【0119】
圧力損失は、反応管及び温度計測管において、同じGHSVを基準として、同じであるべきである。温度計測管における圧力損失は、例えば、細砕された触媒を触媒に加えることによって調整することができる。この調整は、好適には、温度計測管の全長にわたって均一に行われる。その他の点では、温度計測管への装入は、EP−A873783に記載されているとおり行ってよい。
【0120】
温度計測管において測定された温度により、触媒固定床の最大局所温度及び触媒固定床におけるその位置を測定することができる。
【0121】
記載したように得られる触媒成形体を用いたメタクロレインからメタクリル酸への接触気相酸化は、自体公知の、例えばEP−A467144に記載された方法で行ってよい。酸化剤の酸素は、例えば、空気の形で、或いは純粋な形で用いてよい。高い反応熱に基づき、反応相手は、好ましくは、不活性ガス、例えばN2、CO、CO2及び/又は水蒸気で希釈される。好ましくは、1:(1〜3):(2〜20):(3〜30)、特に有利には1:(1〜3):(3〜10):(7〜18)のメタクロレイン:酸素:水蒸気:不活性ガスの比で作業される。その際、反応ガス出発混合物のメタクロレインの割合は、一般に4〜11体積%、しばしば4.5〜9体積%に達する。酸素含有率は、爆発性混合物を回避するために、有利には≦12.5体積%に制限される。これは、特に有利には、反応生成物から分離されたオフガスの部分流の返送によって達成される。その他の点では、メタクリル酸への気相酸化は、典型的には、600〜1800Nl/l・hの触媒固定床の全空間速度で、又は40〜100Nl/l・hのメタクロレイン空間速度で行われる。
【0122】
フタル酸無水物の製造は、WO2012/014154に記されているような反応条件下で行ってよい。
【0123】
本発明の対象はまた、1−ブテン及び/又は2−ブテンからブタジエンに酸化脱水素する方法における本発明によるシェル触媒の使用である。本発明による触媒は、1,3−ブタジエンを1−ブテン及び2−ブテンから形成することに対する高い活性、殊に、或いは高い選択性によって際立つ。本方法の実施については、例えばWO2009/124974及びWO2009/124945を参照することができる。
【0124】
本発明の対象はまた、n−ブテンを含有する出発ガス混合物を、酸素を含有するガスと、場合により更に不活性ガス又は水蒸気と混合して、かつ固定床反応器中で220〜490℃の温度にて、触媒固定床に配置された本発明による触媒と接触させる、n−ブテンをブタジエンに酸化脱水素する方法である。
【図面の簡単な説明】
【0125】
図1】その長さにわたって変化する厚さプロファイル及び突出した縁を有する選択的なベルルサドルを示す図
図2】ベルルサドルを示す図
図3】鞍点を通り、かつ長さL、幅B及び高さHを有するリブを備えたベルルサドルを示す図
図4】その長さにわたって変化する厚さプロファイル及び突出した縁を有する選択的なベルルサドルを示す図
【0126】
本発明を、下記の例によって詳細に説明する。
【0127】
I.アクロレインを酸化するための触媒の製造
A)前駆体材料の製造
水で温度調節された、ストレートアームパドル撹拌機(Balkenruehrer)を備えた1.75m3のステンレス鋼製のジャケット付き容器中で、酢酸銅水和物(含有率:Cu 32.0質量%、添加速度50kg/h、Goldschmidt社)8.2kgを、水274lに室温(〜25℃)で撹拌しながら(回転数:70回転/分)溶解した。溶液1を得た。これを更に30分間撹拌した。
【0128】
それとは空間的に隔てて、水で温度調節された、ストレートアームパドル撹拌機(回転数:70回転/分)を備えた1.75m3のステンレス鋼製のジャケット付き容器に水614lを入れ、40℃に加熱して、ヘプタモリブデン酸アンモニウム四水和物(MoO381.5質量%、添加速度300kg/h、H.C.Starck GmbH社)73kgを、40℃を維持しながら撹拌した。次いで、容器の中身を、撹拌しながら30分以内に90℃に加熱し、この温度を維持しながら、以下のものを連続して、かつ示した順序で撹拌した:メタバナジン酸アンモニウム(V2577.6質量%、添加速度150kg/h、添加後の後撹拌時間40分)12.1kg及びパラタングステン酸アンモニウム七水和物(WO389.6質量%、添加速度50kg/h、添加後の後撹拌時間30分)10.7kg。溶液2を得た。
【0129】
溶液2を80℃に冷却し、引き続き溶液1を素早く70回転/分のストレートアームパドル撹拌機の撹拌機回転数で溶液2に移して撹拌した。得られた混合物を、25℃の温度を有する25質量%のNH3水溶液133lと混ぜた。撹拌中に透明な溶液が形成し、これは短時間で65℃の温度及び8.5のpH値を示した。これを、水で温度調節された、ストレートアームパドル撹拌機を備えた更なる1.75m3のステンレス鋼製のジャケット付き容器に排出した。容器の中身を80℃に加熱し、40回転/分の撹拌機回転数で撹拌して循環させた。容器の中身のpH値は、25質量%のNH3水溶液の自動添加によって8.5の値に保った。容器の中身は、Niro社(デンマーク国)のFS 15型の回転ディスク式噴霧塔内にポンプ供給して、高温空気並流下において350±10℃のガス入口温度、15000rpmのディスク回転数及び2300Nm3/hの燃焼空気体積流で乾燥し、その際に噴霧塔内で1mbarの負圧を保持した。ここで、噴霧塔に供給される液体体積流は、110±5℃のガス出口温度が得られるように制御した。生じる噴霧粉末は、2〜50μmの粒径及び21±2質量%の強熱減量を有していた。強熱減量は、空気中で磁性るつぼ内で加熱することによって(600℃で3時間)測定した。磁性るつぼは、事前に900℃で恒量になるまで熱していた。噴霧粉末は、プラスチック製注入口を有する特殊容器又は特殊桶(200リットル)に移し詰めた。その際、塊片を除去するためにシーブインサートを使用した。
【0130】
このようにして得られた噴霧粉末75kgを、VM 160型(シグマブレード)のAMK社(Aachener Misch− und Knetmaschinen Fabrik)の混練機中に、15回転/分のスクリュー回転数で計量供給した。引き続き、酢酸(100質量%、氷酢酸)6.5l及び水5.2lを、混練機中に15回転/分のスクリュー回転数で計量供給する。4〜5分の混練時間後(スクリュー回転数:20回転/分)に、更に水6.5lを添加して、混練プロセスを30分が経過するまで継続した(混練温度 約40〜50℃)。混練時に電力消費を観察した。25%の電力消費を超過したら、必要に応じて、更に約1lの水を混練物に加えた。その後、混練物を押出機に放出して、押出機(Bonnot Company社(オハイオ州)、型式:G 103−10/D7A−572K(6”Extruder W Packer)によってストランド(長さ:1〜10cm;直径6mm)に形作った。3ゾーンのベルト乾燥機において、ストランドを、10cm/分のベルト速度及び64分間の生じる滞留時間並びに155℃のガス入口温度で乾燥した。ガス温度の期待値は、ゾーン1では90〜95℃、ゾーン2では約115℃及びゾーン3では約125℃である。
【0131】
B)式Mo1231.2Cu1.2nの活性材料の製造
熱処理の実施は、DE10360057A1に記載された回転管炉内で、以下の条件下に行った:
熱処理は、不連続的に、A)で記載したように製造された306kgの材料の量を用いて行った;
水平方向に対する回転管の傾斜角は、ほぼ0℃であった;
回転管は、右回りに1.5回転/分で回転した;
全体の熱処理の間、回転管を205Nm3/hのガス流が通り抜け、これは(初めから含まれる空気の排気後に)次のような組成を有し、かつ回転管からのその出口で更なる25Nm3/hのバリアガス窒素が補充されていた:ベース負荷の窒素と回転管内で放出されたガスとで構成されたもの80Nm3/h、バリアガス窒素25Nm3/h、空気30Nm3/h及び再循環された循環ガス70Nm3/h。バリアガス窒素は、25℃の温度で供給した。加熱器から出てくる他のガス流の混合物はそのつど、材料がそれぞれ回転管において有する温度で回転管内に導いた。
【0132】
10時間以内に、材料温度は、25℃から本質的に線形で300℃に高まった;引き続き、材料温度は、2時間以内に本質的に線形で360℃に高まった;その後に、材料温度は、7時間以内に本質的に線形で350℃に下がった;次いで、材料温度は、2時間以内に本質的に線形で420℃に高まり、かつこの材料温度を30分間保ち;次いで、回転管に導かれたガス流中の空気30Nm3/hを、ベース負荷の窒素を相応して高めることによって置き換え(これによって、実際の熱処理のプロセスが終了した)、回転管の加熱を停止して、周囲空気の吸引による回転管の急速冷却の始動によって材料を2時間以内に100℃より低い温度及び最終的に周囲温度に冷却した;その際、ガス流を、回転管に25℃の温度で供給した;全体の熱処理の間、ガス流の回転管出口の(すぐ)後ろの圧力は、外圧を0.2mbar下回っていた。
【0133】
回転管炉内のガス雰囲気の酸素含有率は、熱処理の全ての段階で2.9体積%であった。還元熱処理の全体の期間を算術的に平均して、回転管炉内のガス雰囲気のアンモニア濃度は4体積%であった。
【0134】
得られた触媒活性材料を、バイプレックスクロスフロー分級ミル(Biplexquerstromsichtmuehle)(BQ500)(Hosokawa Alpine社(アウグスブルク))によって微細な粉末Pへと粉砕した。その際、粉砕経路において24個の長いブレードを取り付けた。ミル回転数は、2500回転/分であった。ベンチレーターのスロットルバルブは完全に開いていた。適用量は2.5回転/分に設定した。排気体積流は1300m3/hであり、差圧は10〜20mbarであった。粉砕から生じる微細な粉末の粉末粒子の50%が、メッシュ幅1〜10μmのシーブを通過した。微細な粉末における50μmより高い長さ寸法(Laengsausdehnung)を有する粒子の割合は1%未満であった。
【0135】
C)活性材料の成形
C1(比較例)内側の面を有する7×3×4のリング体(中空円筒体)
中空円筒形の担体成形体(外径7mm、長さ3mm、内径4mm、45μmの表面粗さRz(粗粒層)を有するCeramTec社のステアタイトC220)1600gを、粉砕された微細な粉末Pでコーティングした。コーティングは、ハイコーターLHC 25/36(Loedige社,パーダーボルン(D−33102))中で行った。このハイコーターは、連続的な粉末計量供給を可能にするために部分変更を加えていた。これは漏斗形の粉末受け器から成り、当該受け器は、タイゴンホース(内径:8mm、外径11.1mm;Saint−Gobain Performance社、シャルニー 89120、フランス国)を介してハイコーターのドラムに接続されていた。ここで、ドラム半径は18cmである。ドラムの深さは20cmである。ドラムが回転する軸は、水平に配向されていた。コーティングのために、粉砕された触媒活性酸化物材料粉末600gを粉末受け器に詰めた。粉末計量供給は、連続的な加圧計量供給によって行った。弁開閉によるパルス時間は50msに設定し、かつ設定した圧力は、周囲圧力(〜1atm)を0.7bar上回っていた。漏斗状の粉末受け器の中の粉末は、コーティングの間、均一な計量供給を保証するために連続的に撹拌した(撹拌機の運転時間:2秒、撹拌機の休止時間1秒、部分変更が加えられV形のアンカー型撹拌機、BASF SE社の独自構造)。バインダーは、水75質量%とグリセリン25質量%との水溶液であった。これを別個に液体計量供給装置によりドラム中に噴霧する。液体は、Watson−Marlow社のHPLCポンプ(323型)により、ドラム中に存在する計量供給アーム内にポンプ供給した(噴霧圧力3bar、成形圧力2bar、流量:グリセリンと水(1:3)の溶液3g/分)。粉末計量供給装置及び液体計量供給装置は、互いに並行に配置されている。計量供給アームに取り付けられたSchlick社(DE)の570/0 S75型のノズル及び同様に計量供給アームの下方に固定された固体計量供給装置の出口オリフィスは、6cmの間隔で平行して、かつ測角器により水平方向に対して40°の角度に位置決めされている。粉末計量供給は、ノズルの噴霧コーンの外側で行われる。ここで、固体計量供給装置のノズルオリフィス及び出口オリフィスは、ドラムの回転方向を指し示す。ドラムは、コーティングの間、時計方向に15rpmで回転した。コーティングは、25℃で40分の時間にわたり行った。その後、コーティングされた担体材料を、130℃の空気送入温度及び81℃の空気送出温度で27分間乾燥した。その後、これらを、静止状態のドラム中で30分の期間にわたり25℃に冷却した。コーティングの間、供給された粉末は、大部分が担体の表面に取り込まれた。取り込まれなかった部分は、ドラムの下流のフィルターで捕集した。
【0136】
コーティングされた担体成形体は、試料中になお存在するグリセリンを除去するために、Memmert GmbH+Co.KG社の空気循環式乾燥庫(UM 400型;内容積=53l;空気流=800l/h)で処理した。このために、空気循環式乾燥庫を2時間で300℃(空気温度を含む)に加熱し、次いで2時間のあいだ300℃に保った。乾燥物は、乾燥の間、乾燥庫の中心に置かれた多孔板(多孔板全体に均一に分布した貫通オリフィスの孔径=0.5cm;多孔板の開口率は60%であった;多孔板の全断面積は35cm×26cm=910cm2であった)上で層を成していた(層の高さ=2cm
)。その後、空気循環式乾燥庫を、2〜3時間以内に40〜50℃に冷却して試料を取り出した。空気循環式乾燥庫から取り出した中空円筒形のシェル触媒C1は、その全質量に対して、19.9質量%の酸化物シェル割合を有していた。
【0137】
C2(例)ベルルサドル6mm
触媒C2の成形を、C1と同じように行ったが、しかしながら、この場合、C1とは異なり、CeramTec社の中空円筒形の担体成形体(外径7mm、長さ3mm、内径4mm、ステアタイトC220)ではなく、Vereinigte Fuellkoerper−Fabriken GmbH & Co.KG社(ランスバッハ=バウムバッハ D−56225)のベルルサドル体(Acidurの特殊せっ器、SiO2約70%、Al23少なくとも20%、Fe23及びTiO22〜3%、K2O及びNa2O2.5〜3.5%、MgO及びCaO0.5〜1%、材料密度2.6g/cm3、BET表面積<0.1m2/g)であって代表長さ6mmを有するもの(比重:900kg/m3、比表面積:1150m2/m3、自由体積:63%)1600gを用いた。C1と同じように空気循環式乾燥庫で熱処理を実施した後、空気循環式乾燥庫から取り出したコーティングされたベルルサドル体は、その全質量に対して、19.8質量%の酸化物シェル割合を有していた。
【0138】
C3(例)ベルルサドル8mm
触媒C3の成形を、C1と同じように行ったが、しかしながら、この場合、C1とは異なり、CeramTec社の中空円筒形の担体成形体(外径7mm、長さ3mm、内径4mm、ステアタイトC220)ではなく、Vereinigte Fuellkoerper−Fabriken GmbH & Co.KG社(ランスバッハ=バウムバッハ D−56225)の代表長さ8mmを有するベルルサドル体(Acidurの特殊せっ器、SiO2約70%、Al23少なくとも20%、Fe23及びTiO22〜3%、K2O及びNa2O2.5〜3.5%、MgO及びCaO0.5〜1%、材料密度2.6g/cm3、BET表面積<0.1m2/g)1600gを用いた。C1と同じように空気循環式乾燥庫で熱処理を実施した後、空気循環式乾燥庫から取り出したコーティングされたベルルサドル体は、その全質量に対して、19.6質量%の酸化物シェル割合を有していた。
【0139】
中空円筒形のリング状タブレットのコーティングと比較したベルルサドル体のコーティング
結着は、コーティングの間に2つの成形体が互いに付着することを表す。結着の増大は、使用できない生成物、ひいては製造損失を生む。中空円筒形のリング状タブレットのコーティング時には、この場合5%で結着の増大が確認され、その一方で、ベルルサドル体のコーティング時には、結着に基づく製造損失は記録されなかった。
【0140】
II.2つの連続した反応ゾーンを有する触媒固定床を使用した、アクロレインからアクリル酸への気相酸化
例1
アクロレインからアクリル酸への気相酸化
反応管(V2A鋼;外径30mm;壁厚2mm;内径26mm;長さ464cm)は、上から下に向かって:
セクション1:長さ79cm、空管;
セクション2:長さ62cm、7mm×3mm×4mmの形状のステアタイトリング(外径×長さ×内径;CeramTec社のステアタイトC220)より成る上流層;
セクション3:長さ100cm、触媒のコーティング時に用いられたそれぞれの担体材料20質量%とそれぞれの触媒80質量%とから成る均質な混合物の触媒固定床;
セクション4:長さ200cm、セクション3でそのつど使用された触媒からもっぱら成る触媒固定床;
セクション5:長さ10cm、セクション2と同じステアタイトリングより成る下流層;
セクション6:長さ14cm、触媒固定床を収容するためのV2A鋼製の触媒基部
を含んでいた。
【0141】
それぞれの反応管に、該反応管の上から下に流れ込むように反応混合物を導き、この反応混合物は、反応管に入るときに、以下の内容分:
アクロレイン4.3体積%、
プロペン0.2体積%、
プロパン0.2体積%、
アクリル酸0.3体積%、
25.4体積%、
2O7.0体積%、
CO及びCO20.4体積%、
282.2体積%
を有していた。
【0142】
触媒固定床上でのアクロレインの空間速度は、そのつど75Nl/(lh)であった。
【0143】
反応管の周りには、その長さ全体(セクション1における空管の最後の10cm及び製クション6における管の最後の3cmは除く)にわたり、撹拌された及び外側から電気加熱された塩浴(硝酸カリウム53質量%、亜硝酸ナトリウム40質量%及び硝酸ナトリウム7質量%、溶融塩50kgの混合物)がそのつど流れていた(管内の流速は3m/sであった(管の長手軸に対して垂直平面で))。
【0144】
圧力損失Δp(mbar)は、反応器入口及び反応器出口で測定された圧力の差に相当する。
【0145】
塩浴温度TBは、溶融塩が塩浴に導かれた温度に相当する。これは、いずれの場合も、触媒固定床を反応混合物が一回通過したときに関する99.3モル%のアクロレイン変換率UAが生じるように設定した。補助加熱ゆえに塩浴の温度が反応管に沿って変化することはなかった(反応管から塩浴に放出された熱より多くの熱が塩浴から放散された)。反応管の入口では、反応ガスの温度は、それぞれの塩浴温度TBに相当していた。最大局所温度THは、反応管内の点測定によって測定した。様々の触媒を使用して得られた結果を表2にまとめている。
【0146】
アクリル酸形成の選択率(SAS(モル%))は、本明細書中では、
【数2】
(変換値は、それぞれ触媒固定床を反応ガス混合物が一回通過したときに関するものである)
を意味する。
【0147】
以下の表1は、用いられたシェル触媒に応じて、それぞれ100時間の運転後に得られる結果を示す:
【表1】
【0148】
本発明による触媒の場合、アクリル酸形成の選択率は97.5モル%で、本発明によらない触媒C1の場合よりずっと高い。
【0149】
例2
本発明によるシェル触媒と本発明によらないシェル触媒とが装入されている、2つの連続した反応ゾーンを有する触媒固定床を使用した、アクロレインからアクリル酸への気相酸化
反応管(ステンレス鋼1.4541型(EU規格番号EN10088−3;外径33.7mm;壁厚2mm;内径29.7mm;長さ400cm、サーモウェル4mm)に、以下のとおり、下から上に向かって装入した:
セクション1:長さ70cm、7mm×3mm×4mmの形状のステアタイトリング(外径×長さ×内径;CeramTec社のステアタイトC220)より成る上流層;
セクション2:長さ100cm、触媒のコーティング時に用いられたそれぞれの担体材料30質量%とそれぞれの触媒80質量%;それぞれのシェル触媒70質量%とから成る均質な混合物の触媒固定床層;
セクション3:長さ200cm、それぞれのシェル触媒の触媒固定床層;
セクション4:長さ8cm、セクション1と同じステアタイトリングより成る下流層;
セクション5:長さ23cm、空管。
【0150】
反応管を2つの異なる反応条件下で運転し、これらの条件は、反応ガス混合物の組成、(DE−A19927624に定義されるような)触媒固定床上でのアクロレインの空間速度並びに反応器出口で設定及び制御された圧力の点で異なる。前述のように装入されたそれぞれの反応管に、該反応管の上から下に流れ込むように反応混合物を導き、この反応混合物は、以下の内容分を有していた:
【表2】
【0151】
反応管の周りには、その長さ全体にわたり、撹拌された及び外側から電気加熱された塩浴(硝酸カリウム53質量%、亜硝酸ナトリウム40質量%及び硝酸ナトリウム7質量%、溶融塩50kgの混合物)がそのつど流れていた(管内の流速は3m3/hであった(管の長手軸に対して垂直平面で))。
【0152】
塩浴温度TB(℃)(この温度で塩浴を供給した)は、いずれの場合も、触媒固定床を反応ガス混合物が一回通過したときに関する99.3モル%のアクロレイン変換率が生じるように設定した。補助加熱ゆえに塩浴の温度が反応管に沿って変化することはなかった(反応管から塩浴に放出された熱より多くの熱が塩浴から放散された)。(反応管への入口での)反応ガス混合物の供給温度は、そのつどそれぞれの塩浴温度に調節した。
【0153】
触媒床中での温度は、反応器管の内側に存在するサーモウェル内に置かれており、かつ牽引機によって反応器床内で下から上に向かって動かされた熱電対によって連続的に測定した。この測定における最大温度は、ホットスポット温度THに相当していた。
【0154】
下記の表は、反応器セクション2及び3への異なる本発明によるシェル触媒と本発明によらないシェル触媒との装入に応じて生じる、100時間の運転後に得られる結果を示す。
【0155】
【表3】
【0156】
参考例(97.1モル%及び97.4モル%)と比べた本発明による触媒C2のアクリル酸選択率SAS(98.0モル%及び97,8モル%)の比較から、サドル成形体が触媒担体としてアクリル酸形成の選択率に関して好ましいことがわかる。さらに、本発明によるサドル成形体を用いたときの反応器の圧力損失は、中空円筒形の担体成形体を用いたときより明らかに低い。
【0157】
例3
さらになお、触媒層の圧力損失を算出した。結果を表4にまとめている。
【0158】
【表4】
【符号の説明】
【0159】
L 長さ、 B 幅、 H 高さ
図1
図2
図3
図4