特許第6570811号(P6570811)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立金属株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6570811-コネクタ 図000002
  • 特許6570811-コネクタ 図000003
  • 特許6570811-コネクタ 図000004
  • 特許6570811-コネクタ 図000005
  • 特許6570811-コネクタ 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6570811
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/66 20060101AFI20190826BHJP
   G01R 15/20 20060101ALI20190826BHJP
【FI】
   H01R13/66
   G01R15/20
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-80771(P2014-80771)
(22)【出願日】2014年4月10日
(65)【公開番号】特開2015-201402(P2015-201402A)
(43)【公開日】2015年11月12日
【審査請求日】2016年8月12日
【審判番号】不服2018-8954(P2018-8954/J1)
【審判請求日】2018年6月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(72)【発明者】
【氏名】二口 尚樹
(72)【発明者】
【氏名】秋元 克弥
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】梅津 潤
(72)【発明者】
【氏名】林 真也
(72)【発明者】
【氏名】二ツ森 敬浩
【合議体】
【審判長】 平田 信勝
【審判官】 内田 博之
【審判官】 尾崎 和寛
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−80970(JP,A)
【文献】 特開2013−170878(JP,A)
【文献】 特開2013−148513(JP,A)
【文献】 特開2014−55839(JP,A)
【文献】 特開2012−139041(JP,A)
【文献】 特開2012−178484(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/66 , G01R 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング素子を有する電源装置に設けられたコネクタであって、
前記電源装置の筐体内の出力端子に一端部が接続される接続端子と、
前記接続端子の少なくとも一部を収容し、前記筐体に固定されるハウジングと、
前記接続端子に流れる電流によって発生する磁界を検出する電流センサと、
前記電流センサの出力信号を伝送する信号線とを備え、
前記接続端子は、前記電源装置から出力される複数相の電流の複数の出力端子に対応して複数個が所定の並び方向に並列して配置され、
前記電流センサは、前記電源装置から出力される複数相の電流によって発生する磁界をそれぞれ検出するように、複数個が前記ハウジングに保持された基板に実装され、
前記基板は、前記信号線に接続される電極が当該基板の長手方向の一方の端部に設けられると共に、当該電極まで前記電流センサの出力信号を導く配線パターンとが設けられ、
前記信号線は、前記基板の前記電極に接続された、前記電流センサ側の一方の端部から所定の長さに亘る延伸領域が、前記基板と重ならない方向であって、前記接続端子を流れる電流の向きに対して直交する方向に延在し、かつ前記並び方向に沿って延在している、
コネクタ。
【請求項2】
前記信号線は、複数の絶縁電線からなる、
請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記電流センサは、巨大磁気抵抗素子を有するGMRセンサであり、
前記巨大磁気抵抗素子の検出軸が、前記接続端子に流れる電流によって発生する磁界の方向に沿った方向である、
請求項1または2に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング素子を有する電源装置に設けられるコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スイッチング素子を有するインバータ装置等の電源装置には、出力される電流を検出するためのセンサを備えたものがある。特許文献1に記載のインバータ装置では、ケース内に複数の電流センサが収容され、この複数の電流センサによって検出された電流値に応じてモータのフィードバック制御が行われる。
【0003】
また、インバータ装置から電流センサを分離することで、インバータ装置の小型化を図ることが可能なコネクタ付きケーブルが提案されている。特許文献2に記載のコネクタ付きケーブルは、インバータ装置の出力端子に接続される複数のバスバーを有するコネクタと、このコネクタを介してインバータ装置に接続される複数のケーブルと、複数のケーブルに流れる電流を検出する複数の電流センサとを有し、この複数の電流センサがコネクタ内に配置されている。電流センサの出力信号は、ハーネスを介してインバータ装置側に出力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−239811号公報
【特許文献2】特開2013−105714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に記載のコネクタ付きケーブルにおいて、電流センサの出力信号を伝送するハーネスの電線に流れる電流は、バスバーを流れる電流に比較して微弱であり、電流センサの出力信号は、インバータ装置内で増幅される。そのため、ハーネスによって伝送される電流センサの出力信号にノイズが重畳すると、そのノイズまで増幅されてしまい、フィードバック制御の精度に影響を及ぼすおそれがある。
【0006】
特に、特許文献2に記載のもののように、電流センサをコネクタ内に配置する場合には、ハーネスの端部がバスバーに近接することとなるので、電流センサの出力信号がノイズの影響を受けやすくなる。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、電源装置から出力される電流を検出する電流センサを有するコネクタにおいて、電流センサの出力信号を伝送する信号線に重畳するノイズを抑制することが可能なコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、スイッチング素子を有する電源装置に設けられたコネクタであって、前記電源装置の筐体内の出力端子に一端部が接続される接続端子と、前記接続端子の少なくとも一部を収容し、前記筐体に固定されるハウジングと、前記接続端子に流れる電流によって発生する磁界を検出する電流センサと、前記電流センサの出力信号を伝送する信号線とを備え、前記信号線は、その両端部のうち前記電流センサ側の一方の端部から所定の長さに亘る延伸領域が、前記接続端子を流れる電流の向きに対して直交する方向に延在しているコネクタを提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るコネクタによれば、電源装置から出力される電流を検出する電流センサを有するコネクタにおいて、電流センサの出力信号を伝送する信号線に重畳するノイズを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態に係るコネクタが設けられたインバータ装置を示す概略図である。
図2】端子台、コネクタ、及びコネクタに嵌合する相手側コネクタを有するワイヤハーネスの一端部を示す斜視図である。
図3図2におけるコネクタを拡大して示す拡大図である。
図4】コネクタを示す正面図である。
図5】基板の非実装面側を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[実施の形態]
図1は、本実施の形態に係るコネクタが設けられた電源装置としてのインバータ装置を示す概略図である。このインバータ装置1は、例えば車両に搭載され、蓄電池から出力される直流電圧をPWM(Pulse Width Modulation)変調により交流電圧に変換し、車両を駆動する駆動源としての三相交流モータへ出力する。
【0012】
このインバータ装置1は、筐体としてのインバータケース10と、インバータケース10に固定された回路基板11と、回路基板11に固定された複数のスイッチング素子12と、スイッチング素子12の冷却のための放熱フィン13と、スイッチング素子12のオン状態とオフ状態とを切り替えるための複数の回路部品14と、端子台15と、コネクタ2とを有している。回路基板11、複数のスイッチング素子12、回路部品14、及び端子台15は、インバータケース10に収容されている。コネクタ2は、一部がインバータケース10に収容され、他の一部がインバータケース10から露出している。
【0013】
インバータケース10は、例えばアルミニウム合金等の導電性金属からなる。図1では、このインバータケース10の一部を切断してその内部を図示している。放熱フィン13は、複数のスイッチング素子12との間にインバータケース10の底面を挟む位置に配置されている。
【0014】
スイッチング素子12は、例えばパワートランジスタであり、各相(U相,V相,及びW相)ごとに、それぞれ2つのスイッチング素子12が設けられている。すなわち、本実施の形態では、6つのスイッチング素子12が回路基板11に固定されている。図1では、このうち3つのスイッチング素子12を図示している。
【0015】
複数の回路部品14は、スイッチング素子12のオン/オフ状態を切り替えてPWM変調を行うための論理回路素子や、増幅素子、ならびに抵抗器やコンデンサ等の受動素子等からなり、回路基板11における複数のスイッチング素子12とは反対側の実装面に実装されている。
【0016】
端子台15は、回路基板11の端部における実装面側に配置されている。端子台15は、後述する複数の出力端子を有し、この複数の出力端子から各相の電流が出力される。この電流には、スイッチング素子12のスイッチングによるPWM変調に伴う高調波成分が含まれる。
【0017】
コネクタ2は、その一部がインバータケース10に形成された開口10aを挿通し、インバータケース10に着脱可能に設けられている。このコネクタ2は、インバータ装置1から出力される複数相の電流の出力端子に対応する複数の接続端子を有している。
【0018】
また、コネクタ2は、インバータ装置1から出力される複数相の電流に対応する複数の電流センサを有し、この複数の電流センサの出力信号が信号線4によって回路基板11に伝送される。この出力信号は、三相交流モータのフィードバック制御に用いられる。
【0019】
図2は、端子台15、コネクタ2、及びコネクタ2に嵌合する相手側コネクタ5を有するワイヤハーネス7の一端部を示す斜視図である。図3は、図2におけるコネクタ2を拡大して示す拡大図である。図4は、コネクタ2を示す正面図である。なお、図3では、コネクタ2の第1乃至第3の接続端子21〜23を仮想線(二点鎖線)で示し、その向こう側を実線で示している。
【0020】
端子台15は、樹脂からなる本体150と、第1乃至第3の出力端子151〜153とを有している。第1の出力端子151はU相の電流の出力端子であり、第2の出力端子152はV相の電流の出力端子であり、第3の出力端子153はW相の電流の出力端子である。
【0021】
コネクタ2は、インバータケース10に収容された端子台15の第1乃至第3の出力端子151〜153に一端部が接続される第1乃至第3の接続端子21〜23と、第1乃至第3の接続端子21〜23の少なくとも一部を収容するハウジング20と、ハウジング20に収容され、第1乃至第3の接続端子21〜23に流れる電流によって発生する磁界を検出する第1乃至第3の電流センサ31〜33と、第1乃至第3の電流センサ31〜33が実装された基板30と、第1乃至第3の電流センサ31〜33の出力信号を伝送する信号線4とを備えている。
【0022】
コネクタ2の第1乃至第3の接続端子21〜23は、第1乃至第3の出力端子151〜153に対応して、所定の並び方向に並列して配置されている。本実施の形態では、第1乃至第3の接続端子21〜23の一端部がハウジング20から露出し、この露出部分が端子台15の第1乃至第3の出力端子151〜153に接続される。第1乃至第3の接続端子21〜23は、端子台15の第1乃至第3の出力端子151〜153に接続される一端部が平板状であり、その先端部には、端子台15への固定のための図略のボルトを挿通させる挿通孔21a,22a,23aが形成されている。
【0023】
コネクタ2の第1の接続端子21は、端子台15の第1の出力端子151に接触するように、図略のボルトによって固定される。同様に、第2の接続端子22は第2の出力端子152に、第3の接続端子23は第3の出力端子153に、それぞれ接触するように図略のボルトによって固定される。
【0024】
コネクタ2のハウジング20は、樹脂からなるインナハウジング201と、アルミニウム合金等の導電性金属からなるアウタハウジング202とからなる。インナハウジング201は、アウタハウジング202に収容されている。第1乃至第3の接続端子21〜23は、インナハウジング201に保持されている。
【0025】
また、第1乃至第3の接続端子21〜23は、所定の並び方向に並列して配置され、第1の接続端子21と第3の接続端子23との間に第2の接続端子22が配置されている。第1乃至第3の接続端子21〜23の一端部は互いに平行である。
【0026】
アウタハウジング202は、筒状の本体部202aと、本体部202aの外面に形成された一対の突条202b(図2には一方の突条202bのみを示す)と、突条202bの長手方向の端部に設けられた突起202cと、本体部202aから外方に張り出して形成された板状のフランジ部202dとを有している。一対の突条202bは、本体部202aにおける第1乃至第3の接続端子21〜23の並び方向の両端部に形成されている。突起202cは、突条202bにおけるフランジ部202dとは反対側の端部に形成されている。フランジ部202dは、四角板状であり、その四隅にはボルト挿通孔202eが形成されている。コネクタ2は、このボルト挿通孔202eに挿通されるボルト24(図1に示す)によってインバータケース10に着脱可能に固定される。
【0027】
第1乃至第3の電流センサ31〜33は、巨大磁気抵抗素子を有するGMR(Giant Magneto Resistive effect)センサである。この巨大磁気抵抗素子は、小さな磁界の変化に対して大きな電気抵抗の変化を得ることができる巨大磁気抵抗効果を利用したものである。より具体的には、例えばホール素子の磁気抵抗効果は、電気抵抗の変化率が数パーセント程度であるのに対し、この巨大磁気抵抗効果を用いた巨大磁気抵抗素子は、電気抵抗の変化率が数十パーセント程度と大きい。また、巨大磁気抵抗素子は、所定の検出軸に沿った方向の磁界の強度を検出するが、この検出軸に直交する方向の磁界は検出しないという特性を有している。図3では、この検知軸を第1乃至第3の電流センサ31〜33上に矢印で示している。
【0028】
第1の電流センサ31は、U相の電流によって発生する磁界の強度を検出するように、第1の接続端子21の近傍に配置されている。第2の電流センサ32は、V相の電流によって発生する磁界の強度を検出するように、第2の接続端子22の近傍に配置されている。また、第3の電流センサ33は、W相の電流によって発生する磁界の強度を検出するように、第3の接続端子23の近傍に配置されている。
【0029】
U相,V相,及びW相の電流は、第1乃至第3の接続端子21〜23の長手方向に沿って流れる。第1の電流センサ31の検知軸は、第1の接続端子21に流れるU相の電流によって発生する磁界の方向に沿った方向である。第2の電流センサ32の検知軸は、第2の接続端子22に流れるV相の電流によって発生する磁界の方向に沿った方向である。また、第3の電流センサ33の検知軸は、第3の接続端子23に流れるW相の電流によって発生する磁界の方向に沿った方向である。
【0030】
第1乃至第3の電流センサ31〜33は、ハウジング20に保持された基板30に実装されている。本実施の形態では、基板30がインナハウジング201に保持されている。本実施の形態では、基板30の一部がハウジング20の開口端面20aからハウジング20の外部に露出している。また、第1乃至第3の電流センサ31〜33は、ハウジング20から露出した基板30の実装面30aに実装されている。この実装面30aは、第1乃至第3の接続端子21〜23に面している。つまり、第1乃至第3の電流センサ31〜33は、基板30と第1乃至第3の接続端子21〜23との間に配置されている。
【0031】
第1乃至第3の電流センサ31〜33の出力信号を伝送する信号線4は、複数(本実施の形態では6本)の絶縁電線40からなり、これらの絶縁電線40が図略のガイド部材によってインバータケース10内に引き回されている。信号線4は、その両端部のうち第1乃至第3の電流センサ31〜33側の一方の端部から所定の長さに亘る延伸領域4aが、第1乃至第3の接続端子21〜23を流れる電流の向きに対して直交する方向に延在している。
【0032】
ここで、「直交する方向」とは、延伸領域4aの延伸方向が第1乃至第3の接続端子21〜23を流れる電流の向きに対して実質的に直交する方向であることをいい、延伸領域4aの延伸方向が第1乃至第3の接続端子21〜23を流れる電流の向きに対して90°で交差するものに限らず、90±10°(80°以上かつ100°以下)で交差するものも含む趣旨である。
【0033】
また、信号線4の延伸領域4aは、第1乃至第3の接続端子21〜23の並び方向に沿って延在している。本実施の形態では、信号線4の各絶縁電線40が、基板30の長手方向の端部に接続されている。基板30の長手方向は、第1乃至第3の接続端子21〜23の並び方向に平行であり、各絶縁電線40の端部は、基板30の長手方向の両端部のうち、第3の接続端子23に近い側の端部に接続されている。
【0034】
信号線4における延伸領域4aの長さ(基板30の後述する電極に接続された先端部から、信号線4が屈曲される屈曲部4bまでの長さ)は、5mm以上であることが望ましく、30mm以上であることがより望ましい。
【0035】
なお、信号線4の各絶縁電線40が接続される部位は、基板30の長手方向の端部に限らず、例えば基板30の長手方向の中央部であってもよく、各絶縁電線40が第1乃至第3の電流センサ31〜33の端子に直接接続されていてもよい。また、図3に示す例では、信号線4が屈曲部4bにおいて約90°の角度で屈曲され、屈曲部4bから先の部分が第1乃至第3の接続端子21〜23の長手方向と平行となっているが、これに限らず、信号線4の配策経路は、インバータ装置1の構成に応じて適宜設定することが可能である。
【0036】
図5は、基板30における実装面30aとは反対側の非実装面30b側を示す平面図である。なお、図5では、実装面30a側における第1乃至第3の電流センサ31〜33を破線で示している。
【0037】
基板30の非実装面30bには、第1乃至第6の電極301〜306と、実装面30aと非実装面30bとの間で基板30を厚さ方向に貫通する複数のバイア30cと、第1乃至第3の電流センサ31〜33の出力信号を第1乃至第6の電極301〜306に導く配線パターン30dとが形成されている。
【0038】
第1の電極301は、配線パターン30d及びバイア30cを介して第1の電流センサ31のグランド端子に電気的に接続され、第2の電極302は、配線パターン30d及びバイア30cを介して第2の電流センサ32の信号出力端子に電気的に接続されている。同様に、第3の電極303は、配線パターン30d及びバイア30cを介して第2の電流センサ32のグランド端子に電気的に接続され、第4の電極304は、配線パターン30d及びバイア30cを介して第2の電流センサ32の信号出力端子に電気的に接続されている。また、第5の電極305は、配線パターン30d及びバイア30cを介して第3の電流センサ33のグランド端子に電気的に接続され、第6の電極306は、配線パターン30d及びバイア30cを介して第3の電流センサ33の信号出力端子に電気的に接続されている。
【0039】
各絶縁電線40は、銅等の良導電性の金属からなる芯線401と、芯線401を被覆する絶縁体402とからなる。絶縁電線40の端部では、絶縁体402から芯線401が露出し、この露出した芯線401が例えば半田付けによって第1乃至第6の電極301〜306に接続されている。
【0040】
図2に示すように、第1乃至第3の接続端子21〜23の他方の端部は、コネクタ2と相手側コネクタ5との嵌合により、相手側コネクタ5の第1乃至第3の接続端子51〜53に接触する。相手側コネクタ5は、ハウジング50と、第1乃至第3の接続端子51〜53と、回動レバー54とを有している。ハウジング50は、樹脂からなるインナハウジング501と、アルミニウム合金等の導電性金属からなるアウタハウジング502とからなる。インナハウジング501は、アウタハウジング502に収容されている。第1乃至第3の接続端子51〜53は、インナハウジング501に保持されている。
【0041】
アウタハウジング502には、第1乃至第3の接続端子51〜53の並び方向における両端部に、コネクタ2の突条202bが挿入される一対のスライド溝502aが形成されている。また、アウタハウジング502には、回動レバー54の回転軸となる突起502bが形成されている。回動レバー54には、円弧状に湾曲した湾曲溝541が形成されている。回動レバー54は、突起502bを中心とする回転動作によってコネクタ2の突起202cを湾曲溝541に沿ってスライド溝502aの奥側に引き込み、コネクタ2と相手側コネクタ5との嵌合を確実にする。
【0042】
第1の接続端子51には、U相の電線61の一端部が接続されている。第2の接続端子52には、V相の電線62の一端部が接続されている。また、第3の接続端子53には、W相の電線63の一端部が接続されている。U相の電線61、V相の電線62、及びW相の電線63の他端部は、図略のコネクタを介して三相交流モータのU相,V相,及びW相の各巻線に電気的に接続されている。
【0043】
以上のように構成されたインバータ装置1は、コネクタ2に接続されるワイヤハーネス7を介して三相交流モータにU相,V相,及びW相の電流を供給する。第1乃至第3の電流センサ31〜33は、U相,V相,及びW相の電流によって発生する磁界を検出し、信号線4を介してその出力信号をインバータケース10内の回路部品14に伝送する。
【0044】
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明した実施の形態によれば、以下のような作用及び効果が得られる。
【0045】
(1)信号線4の延伸領域4aは、第1乃至第3の接続端子21〜23を流れる電流の向きに対して直交する方向に延在しているので、第1乃至第3の接続端子21〜23を流れる電流の高調波成分によって発生するノイズが信号線4を伝搬する信号(第1乃至第3の電流センサ31〜33の出力信号)に重畳してしまうことを抑制できる。つまり、U相,V相,及びW相の電流に含まれる高調波成分によって発生する電磁波の強度は、第1乃至第3の接続端子21〜23からの距離の2乗に反比例して弱くなることに鑑み、本実施の形態では、基板30の第1乃至第3の電極301〜306に接続された信号線4の端部から所定の長さに亘る延伸領域4aを、第1乃至第3の接続端子21〜23を流れる電流の向きに対して直交する方向に延在させることで、電磁波の強度が高い領域を通る信号線4の長さを短くし、各相の電流の高調波成分によるノイズの影響を抑制している。特に、本実施の形態では、信号線4の延伸領域4aが第1乃至第3の接続端子21〜23の所定の並び方向に沿って延在しているので、信号線4を伝搬する信号が第1乃至第3の接続端子21〜23を流れる電流によって発生する磁界から受ける影響を可及的に小さくすることができる。
【0046】
(2)第1乃至第3の電流センサ31〜33をコネクタ2のハウジング20内に配置することにより、仮に各相の電流によって発生する磁界を検出する電流センサを回路基板11に実装した場合に比較して、第1乃至第3の電流センサ31〜33をノイズ源である複数のスイッチング素子12から遠ざけることができる。これにより、複数のスイッチング素子12で発生する電磁波の影響を抑制し、第1乃至第3の電流センサ31〜33の検出精度を高めることができる。また、回路基板11に複数の電流センサを配置する必要がないので、回路基板11を小型化し、ひいてはインバータ装置1を小型化することが可能となる。
【0047】
(3)第1乃至第3の電流センサ31〜33は、巨大磁気抵抗素子を有するGMRセンサであるので、第1乃至第3の接続端子21〜23を流れる電流によって発生する磁界を高精度に検出することができる。
【0048】
(4)第1乃至第3の電流センサ31〜33は、ハウジング20に保持された基板30に実装されているので、第1乃至第3の電流センサ31〜33を磁界の検出に適した適切な位置に容易に固定することができる。また、信号線4の各絶縁電線40は、その芯線401を基板30に形成された電極(第1乃至第6の電極301〜306)に半田付け等によって接続することで、第1乃至第3の電流センサ31〜33を伝送することが可能となるので、信号線4の接続も容易となる。
【0049】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0050】
[1]スイッチング素子(12)を有する電源装置(インバータ装置1)に設けられたコネクタ(2)であって、前記電源装置(インバータ装置1)の筐体(インバータケース10)内の出力端子(151〜153)に一端部が接続される接続端子(21〜23)と、前記接続端子(21〜23)の少なくとも一部を収容し、前記筐体(インバータケース10)に固定されるハウジング(20)と、前記接続端子(21〜23)に流れる電流によって発生する磁界を検出する電流センサ(31〜33)と、前記電流センサ(31〜33)の出力信号を伝送する信号線(4)とを備え、前記信号線(4)は、その両端部のうち前記電流センサ(31〜33)側の一方の端部から所定の長さに亘る延伸領域(4a)が、前記接続端子(21〜23)を流れる電流の向きに対して直交する方向に延在しているコネクタ(2)。
【0051】
[2]前記接続端子(21〜23)は、前記電源装置(インバータ装置1)から出力される複数相の電流の複数の出力端子(151〜153)に対応して複数個が所定の並び方向に並列して配置され、前記信号線(4)は、前記延伸領域(4a)が前記並び方向に沿って延在している、前記[1]に記載のコネクタ(2)。
【0052】
[3]前記電流センサ(31〜33)は、前記電源装置(インバータ装置1)から出力される複数相の電流によって発生する磁界をそれぞれ検出するように、複数個が前記ハウジング(20)に保持された基板(30)に実装され、前記信号線(4)は、前記一方の端部が前記基板(30)の電極(301〜306)に接続された、前記[1]又は[2]に記載のコネクタ(2)。
【0053】
[4]前記電流センサ(31〜33)は、巨大磁気抵抗素子を有するGMRセンサであり、前記巨大磁気抵抗素子の検出軸が、前記接続端子(21〜23)に流れる電流によって発生する磁界の方向に沿った方向である、前記[1]乃至[3]の何れか1つに記載のコネクタ(2)。
【0054】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0055】
また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することも可能である。例えば、上記実施の形態では、コネクタ2をインバータ装置1に適用した場合について説明したが、これに限らず、スイッチング素子を有するコンバータ装置等の種々の電源装置にコネクタ2を適用することが可能である。
【0056】
また、上記実施の形態では、第1乃至第3の接続端子21〜23の一部がハウジング20に収容された場合について説明したが、これに限らず、第1乃至第3の接続端子21〜23の全体がハウジング20に収容されていてもよい。つまり、第1乃至第3の接続端子21〜23の少なくとも一部がハウジング20に収容されていればよい。
【0057】
また、上記実施の形態では、信号線4が第1乃至第3の接続端子21〜23の所定の並び方向に沿って引き出されている場合について説明したが、これに限らず、ハウジング20から導出された信号線4が第1乃至第3の接続端子21〜23の一端部の延在方向と直交する方向に引き出されていれば、一定の効果を得ることができる。
【0058】
また、上記実施の形態では、第1乃至第3の電流センサ31〜33がGMRセンサである場合について説明したが、これに限らず、例えばホールICを第1乃至第3の電流センサ31〜33として用いてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1…インバータ装置(電源装置)
2…コネクタ
4…信号線
10…インバータケース(筐体)
12…スイッチング素子
20…ハウジング
21〜23…第1乃至第3の接続端子
30…基板
31〜33…第1乃至第3の電流センサ
151〜153…第1乃至第3の出力端子
301〜306…第1乃至第6の電極
図1
図2
図3
図4
図5