【実施例1】
【0024】
[処理システム10]
図1は、処理システム10の一例を示す図である。処理システム10は、例えば
図1に示すように、処理装置100および制御装置200を備える。処理装置100は、被処理体の一例である半導体ウエハWに対して、プラズマエッチング、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)、または熱処理等の所定の処理を行う。制御装置200は、処理装置100に設けられた温度センサ等の各種センサからの情報に基づいて処理装置100を制御し、処理装置100内に搬入された半導体ウエハWに対して処理装置100に所定の処理を実行させる。
【0025】
[処理装置100]
図2は、処理装置100の一例を示す断面図である。処理装置100は、例えば
図2に示すように、気密に構成された処理チャンバ1を有する。処理チャンバ1は、例えば表面に陽極酸化被膜が施されたアルミニウム等により、略円筒状に形成され、接地されている。処理チャンバ1内には、半導体ウエハWを水平に支持する載置台2が設けられている。
【0026】
載置台2は、基材2aおよび静電チャック6を有する。基材2aは、導電性の金属、例えばアルミニウム等で構成されている。載置台2は、下部電極としても機能する。基材2aは、導体の支持台4に支持されている。支持台4は、絶縁板3を介して処理チャンバ1の底部に支持されている。また、載置台2の上方の外周には、例えば単結晶シリコン等で形成されたフォーカスリング5が設けられている。さらに、載置台2および支持台4の周囲を囲むように、例えば石英等からなる円筒状の内壁部材3aが設けられている。
【0027】
基材2aの上面には、静電チャック6が設けられている。静電チャック6は、半導体ウエハWを吸着保持すると共に、半導体ウエハWを加熱する。静電チャック6は、絶縁体6bと、絶縁体6bの間に設けられた電極6aおよびヒータ6cとを有する。電極6aは、直流電源13に接続されている。静電チャック6は、直流電源13から印加された直流電圧によって静電チャック6の表面にクーロン力を発生させ、発生させたクーロン力により半導体ウエハWを静電チャック6の上面に吸着保持する。直流電源13のオンおよびオフは、後述する制御装置200によって制御される。ヒータ6cは、ヒータ電源30に接続されており、ヒータ電源30から供給された電力に応じて静電チャック6を加熱する。ヒータ電源30からヒータ6cへの電力の供給および停止は、後述する制御装置200によって制御される。また、本実施例において、ヒータ6cへ供給される電力の大きさは、後述する制御装置200からヒータ電源30に指示される。
【0028】
また、静電チャック6は、ヒータ6cからの熱により、半導体ウエハWを加熱する。静電チャック6の上面は、複数の領域である分割領域に分割されており、それぞれの分割領域毎にヒータ6cが設けられている。静電チャック6の上面は、載置台2の載置面に相当する。
【0029】
静電チャック6の下面には、温度センサ20が設けられている。温度センサ20は、温度測定装置14に接続されている。温度センサ20は、分割領域毎に設けられており、分割領域毎の静電チャック6の温度を示す情報を検出し、検出した情報を温度測定装置14へ出力する。温度測定装置14は、温度センサ20から出力された情報に基づいて、分割領域毎の静電チャック6の温度を測定し、測定した温度を制御装置200へ出力する。
【0030】
基材2aの内部には、冷媒が流れる流路2bが形成されている。流路2bには、配管2cおよび2dを介してチラーユニット33が接続されている。チラーユニット33は、配管2cおよび2dを介して、所定の温度に制御されたガルデン等の冷媒を流路2b内に循環させることによって、載置台2を冷却する。チラーユニット33は、後述する制御装置200からの指示に応じて、流路2b内への冷媒の流通の開始および停止を制御する。
【0031】
また、載置台2には、基材2aおよび静電チャック6を貫通するように、半導体ウエハWの裏面側にヘリウムガス等の伝熱ガス(バックサイドガス)を供給するための配管32が設けられている。配管32は、静電チャック6の上面における分割領域毎に設けられ、伝熱ガス供給部31に接続されている。静電チャック6の上面には、それぞれの分割領域内に、伝熱ガスを供給する複数の供給口が設けられている。伝熱ガス供給部31から供給された伝熱ガスは、分割領域毎に、配管32を通って静電チャック6の上面に設けられた複数の供給口から、静電チャック6の上面と半導体ウエハWの裏面との間に供給される。伝熱ガスの圧力は、分割領域毎に独立して制御が可能である。伝熱ガス供給部31から配管32を通って半導体ウエハWの裏面側に供給される伝熱ガスの圧力は、後述する制御装置200によって制御される。なお、静電チャック6の温度は、半導体ウエハWが載置される載置台の温度の一例である。
【0032】
載置台2の上方には、載置台2と略平行に対向するように、換言すれば、載置台2上に載置された半導体ウエハWと対向するように、シャワーヘッド16が設けられている。シャワーヘッド16は、上部電極としても機能する。即ち、シャワーヘッド16と載置台2とは、一対の電極(上部電極と下部電極)として機能する。載置台2の基材2aには、整合器11aを介して高周波電源12aが接続されている。また、載置台2の基材2aには、整合器11bを介して高周波電源12bが接続されている。
【0033】
高周波電源12aは、プラズマの発生に用いられる所定の周波数(例えば100MHz)の高周波電力を載置台2の基材2aに供給する。また、高周波電源12bは、イオンの引き込み(バイアス)に用いられる所定の周波数の高周波電力であって、高周波電源12aよりも低い周波数(例えば13MHz)の高周波電力を載置台2の基材2aに供給する。高周波電源12aおよび12bのオンおよびオフの制御、ならびに、高周波電源12aおよび12bによって供給される高周波の電力等は、後述する制御装置200によって制御される。
【0034】
制御装置200は、ヒータ電源30、チラーユニット33、および伝熱ガス供給部31を制御することにより、静電チャック6の上面に吸着保持された半導体ウエハWの温度を、所定の温度に制御することができる。
【0035】
上記したシャワーヘッド16は、処理チャンバ1の上部に設けられている。シャワーヘッド16は、本体部16aと上部天板16bとを備える。シャワーヘッド16は、絶縁性部材45を介して処理チャンバ1の上部に支持されている。本体部16aは、例えば表面が陽極酸化処理されたアルミニウム等により形成され、その下部に上部天板16bを着脱自在に支持する。上部天板16bは、例えば石英等のシリコン含有物質で形成される。
【0036】
本体部16aの内部には、ガス拡散室16cが設けられている。本体部16aの底部には、ガス拡散室16cの下部に位置するように、多数のガス流通口16eが形成されている。上部天板16bには、当該上部天板16bを厚さ方向に貫通するようにガス流通口16fが設けられており、それぞれのガス流通口16fは、上記したガス流通口16eに連通している。このような構成により、ガス拡散室16cに供給された処理ガスは、ガス流通口16eおよびガス流通口16fを介して処理チャンバ1内にシャワー状に拡散されて供給される。なお本体部16a等には、図示しないヒータや、冷媒を循環させるための図示しない配管等の温度調整器が設けられており、半導体ウエハWの処理中にシャワーヘッド16を所望の範囲内の温度に制御できるようになっている。
【0037】
シャワーヘッド16の本体部16aには、ガス拡散室16cに処理ガスを導入するためのガス導入口16gが設けられている。ガス導入口16gには、配管15bの一端が接続されている。配管15bの他端は、弁Vおよびマスフローコントローラ(MFC)15aを介して、半導体ウエハWの処理に用いられる処理ガスを供給する処理ガス供給源15に接続されている。処理ガス供給源15から供給された処理ガスは、配管15bを介してガス拡散室16cに供給され、それぞれのガス流通口16eおよびガス流通口16fを介して処理チャンバ1内にシャワー状に拡散されて供給される。弁VおよびMFC15aは、後述する制御装置200により制御される。
【0038】
上記したシャワーヘッド16には、ローパスフィルタ(LPF)40を介して可変直流電源42が電気的に接続されている。可変直流電源42は、スイッチ41により本体部16aへの直流電力の供給および遮断が可能となっている。可変直流電源42の電流および電圧ならびにスイッチ41のオンおよびオフは、後述する制御装置200によって制御される。例えば、高周波電源12aおよび高周波電源12bから高周波電力が載置台2に供給されて処理チャンバ1内の処理空間にプラズマが生成される際には、必要に応じて制御装置200によりスイッチ41がオンとされ、上部電極として機能するシャワーヘッド16に所定の直流電圧が印加される。
【0039】
処理チャンバ1の底部には、排気口71が形成されている。排気口71には、排気管72を介して排気装置73が接続されている。排気装置73は、真空ポンプを有しており、この真空ポンプを作動させることにより処理チャンバ1内を所定の真空度まで減圧することができる。排気装置73による排気量等は、後述する制御装置200により制御される。また、処理チャンバ1の側壁には、開口部74が設けられており、開口部74には、当該開口部74を開閉するゲートバルブGが設けられている。
【0040】
処理チャンバ1の内壁には、内壁の面に沿って、デポシールド76が、着脱自在に設けられている。また、載置台2、内壁部材3a、および支持台4の外周面には、載置台2、内壁部材3a、および支持台4の外周面に沿ってデポシールド77が設けられている。デポシールド76および77は、処理チャンバ1の内壁にエッチング副生物(デポ)が付着することを防止する。静電チャック6上に吸着保持された半導体ウエハWと略同じ高さのデポシールド76の位置には、直流的にグランドに接続された導電性部材(GNDブロック)79が設けられている。導電性部材79により、処理チャンバ1内の異常放電が抑制される。
【0041】
また、処理チャンバ1の周囲には、同心円状にリング磁石8が配置されている。リング磁石8は、シャワーヘッド16と載置台2との間の空間に磁場を形成する。リング磁石8は、図示しない回転機構により回転自在に保持されている。
【0042】
[静電チャック6]
図3は、静電チャック6の上面の一例を示す図である。
図4は、
図3のA−A断面の一例を示す図である。静電チャック6の外周には、静電チャック6を囲むようにフォーカスリング5が設けられている。半導体ウエハWが載置される静電チャック6の上面は、例えば同心円状に複数の分割領域に分けられている。本実施例において、静電チャック6の上面は、例えば2つの分割領域60aおよび60bに分けられている。なお、以下では、分割領域60aをセンタ領域、分割領域60bをエッヂ領域と呼ぶ場合がある。また、以下では、複数の分割領域60aおよび60bのそれぞれを区別することなく総称する場合に分割領域60と記載する。
【0043】
例えば
図4に示すように、静電チャック6の内部であって、それぞれの分割領域60の下方には、分割領域60毎にヒータ6cが設けられている。なお、ヒータ6cは、静電チャック6の外部に設けられていてもよい。制御装置200は、ヒータ電源30からそれぞれのヒータ6cに供給される電力を制御することにより、それぞれの分割領域60の温度を独立に制御することができる。
【0044】
例えば
図4に示すように、静電チャック6の下面には、分割領域60毎に温度センサ20が少なくとも1つ設けられている。本実施例において、温度センサ20は、例えば
図3に示すように、分割領域60a内の領域21a、および、分割領域60b内の領域21bに、それぞれ1つずつ設けられている。
【0045】
温度センサ20は、例えば
図4に示すように、感温体22および読取部23を有する。感温体22は、温度に応じて特性が変化する。本実施例において、感温体22は、蛍光体であり、静電チャック6の温度に応じて、蛍光特性が変化する。読取部23は、温度に応じて変化した感温体22の特性を読み取って温度測定装置14へ出力する。本実施例において、読取部23は、例えば光ファイバであり、温度測定装置14から出力されたパルス光を感温体22に照射し、照射されたパルス光に応じて感温体22が発した光を温度測定装置14へ伝送する。
【0046】
温度測定装置14は、分割領域60毎に、分割領域60に設けられた温度センサ20から出力された信号に基づいて、分割領域60の温度を測定し、測定した分割領域60毎の温度の情報を制御装置200へ出力する。温度測定装置14は、例えば読取部23を介して感温体22へパルス光を送信し、読取部23を介して受信した感温体22の光の減衰速度に基づいて、感温体22が設けられた分割領域60の温度を測定する。
【0047】
[制御装置200]
図5は、制御装置200の一例を示すブロック図である。制御装置200は、例えば
図5に示すように、伝熱ガス制御部201、取得部202、算出部203、記憶部204、温度制御部205、および処理制御部206を有する。
【0048】
記憶部204は、例えば
図6に示すような補正テーブル2040を記憶する。
図6は、実施例1における補正テーブル2040の一例を示す図である。補正テーブル2040には、分割領域60毎に個別テーブル2041が格納される。それぞれの個別テーブル2041には、静電チャック6の温度変化の傾きに対応付けて、静電チャック6の温度を所定の温度に制御する際に適用される補正値が格納される。
【0049】
図5に戻って説明を続ける。伝熱ガス制御部201は、算出部203からの指示に応じて、伝熱ガス供給部31に伝熱ガスの供給開始および供給停止を指示する。また、伝熱ガス制御部201は、算出部203からの指示に応じて、伝熱ガスの圧力を伝熱ガス供給部31に指示する。
【0050】
取得部202は、温度測定装置14から、分割領域60毎に測定された温度の情報を取得する。そして、取得部202は、分割領域60毎に、取得した温度の情報を算出部203および温度制御部205へ出力する。また、取得部202は、補正テーブル2040の作成時に、処理装置100の処理チャンバ1内に搬入された温度測定用ウエハW’から出力された温度の情報を取得し、取得した温度の情報を、算出部203へ出力する。
【0051】
温度測定用ウエハW’は、温度測定用ウエハW’の表面に設けられた複数の温度センサと、それぞれの温度センサによって測定された温度の情報を制御装置200へ出力する通信部とを有する。それぞれの温度センサは、静電チャック6上に載置された場合に、静電チャック6の分割領域60に対応する温度測定用ウエハW’上の領域に少なくとも1つ設けられる。通信部は、それぞれの温度センサによって分割領域60毎に測定された温度の情報を、無線通信により制御装置200へ送信する。なお、通信部は、分割領域60毎の温度の情報を、有線通信により制御装置200へ送信してもよい。また、温度測定用ウエハW’は、通信部に代えて不揮発性の記憶装置を有し、それぞれの温度センサによって分割領域60毎に測定された温度の情報を記憶装置に記憶させてもよい。この場合、処理チャンバ1から温度測定用ウエハW’が搬出された後に、制御装置200の取得部202が、それぞれの温度センサによって分割領域60毎に測定された温度の情報を記憶装置から読み出す。
【0052】
温度制御部205は、算出部203からの指示に応じて、ヒータ電源30およびチラーユニット33を制御する。温度制御部205は、静電チャック6の冷却開始を算出部203から指示された場合に、基材2aの流路2b内に所定温度の冷媒を循環させるようにチラーユニット33に指示する。また、温度制御部205は、静電チャック6内のヒータ6cへの電力供給の停止あるいはヒータ6cへ供給される電力の固定を算出部203から指示された場合に、ヒータ6cへの電力供給の停止あるいはヒータ6cへ供給される電力の固定をヒータ電源30に指示する。
【0053】
また、温度制御部205は、補正テーブル2040の作成時に、処理制御部206から目標温度を受け付ける。そして、算出部203からヒータ6cへの電力供給の開始を指示された場合、温度制御部205は、ヒータ6cへの電力供給の開始をヒータ電源30に指示する。そして、温度制御部205は、取得部202から出力された分割領域60毎の温度情報に基づいて、分割領域60の温度が目標温度となるように、分割領域60毎に設けられたヒータ6cに供給される電力をフィードバック制御する。
【0054】
また、温度制御部205は、半導体ウエハWに対する処理の実行に、算出部203から分割領域60毎の補正値を受け付け、処理制御部206から目標温度を受け付ける。そして、算出部203からヒータ6cへの電力供給の開始を指示された場合、温度制御部205は、ヒータ6cへの電力供給の開始をヒータ電源30に指示する。そして、温度制御部205は、分割領域60毎に、補正値に基づいて目標温度を補正する。そして、温度制御部205は、取得部202から出力された分割領域60毎の温度情報に基づいて、分割領域60毎に、分割領域60の温度が補正後の目標温度となるように、ヒータ6cに供給される電力をフィードバック制御する。これにより、静電チャック6上に載置された半導体ウエハWの温度が、補正後の目標温度に、半導体ウエハWと静電チャック6との間の熱抵抗によって半導体ウエハWと静電チャック6との間に生じた温度差を加えた温度となるように制御される。算出部203は、半導体ウエハWと静電チャック6との間の熱抵抗が大きい場合に、目標温度が低くなるように目標温度を補正し、半導体ウエハWと静電チャック6との間の熱抵抗が小さい場合に、目標温度が高くなるように目標温度を補正する。これにより、温度制御部205は、半導体ウエハWと静電チャック6との間の熱抵抗が変化した場合でも、複数の半導体ウエハW間の温度のばらつきを抑制することができる。
【0055】
処理制御部206は、補正テーブル2040の作成時に、算出部203からの指示に応じて、補正テーブル2040の作成時の目標温度を温度制御部205へ出力する。そして、処理制御部206は、算出部203からの指示に応じて、処理装置100の各部を制御する。また、処理制御部206は、半導体ウエハWに対する処理の実行時に、処理装置100のオペレータ等により設定された処理レシピにおいて指定された目標温度を温度制御部205へ出力する。そして、処理制御部206は、処理レシピに基づいて、処理装置100の各部を制御することにより、半導体ウエハWに対する処理を実行する。
【0056】
算出部203は、補正テーブル2040の作成時および半導体ウエハWに対する処理の実行時に、伝熱ガス制御部201、温度制御部205、および処理制御部206をそれぞれ制御する。以下、
図7および
図8を参照しながら、算出部203によって行われる処理の詳細について説明する。
【0057】
[補正テーブル2040の作成処理]
図7は、補正テーブル2040の作成時における温度測定用ウエハW’および静電チャック6の温度変化の一例を示す図である。
図7は、静電チャック6上の一つの分割領域(例えばセンタ領域)に対応する領域の温度測定用ウエハW’および静電チャック6の温度変化の一例を示している。また、以下では、補正テーブル2040のうち、一つの分割領域60における個別テーブル2041の作成処理について説明する。なお、他の分割領域60における個別テーブル2041の作成処理についても同様であるため、他の分割領域60における個別テーブル2041の作成処理については説明を省略する。
【0058】
図7(a)は伝熱ガスの圧力が5Torrの場合、
図7(b)は伝熱ガスの圧力が10Torrの場合、
図7(c)は伝熱ガスの圧力が20Torrの場合の温度測定用ウエハW’および静電チャックの温度変化の一例をそれぞれ示している。
図7において、グラフ80は温度測定用ウエハW’の温度変化を示し、グラフ81は静電チャック6の温度変化を示している。
【0059】
補正テーブル2040の作成時において、算出部203は、まず、静電チャック6の冷却開始と、ヒータ6cへの電力供給の停止あるいはヒータ6cへ供給される電力の固定とを温度制御部205に指示する。これにより、静電チャック6は、基材2aの流路2b内を循環する冷媒により冷却された基材2aを介して冷却される。そして、算出部203は、図示しない搬送ロボットに指示して、温度測定用ウエハW’を処理チャンバ1内に搬入させ、静電チャック6上に載置させる。
【0060】
なお、例えば
図7に示すように、温度測定用ウエハW’が静電チャック6上に載置された時点t
0では、半導体ウエハWの温度は室温(例えば30℃)であり、静電チャック6の温度は室温より低い温度(例えば10℃)に冷却されている。つまり、温度測定用ウエハW’が静電チャック6上に載置された段階では、温度測定用ウエハW’と静電チャック6とは異なる温度である。
【0061】
次に、算出部203は、取得部202を介して分割領域60毎の静電チャック6の温度情報の取得を開始することにより、分割領域60毎に、温度測定用ウエハW’および静電チャック6の温度測定を開始する。そして、算出部203は、
図7に示した時点t
1において、所定圧力の伝熱ガスの供給開始を伝熱ガス制御部201に指示する。本実施例において、算出部203は、伝熱ガスの圧力として、5Torr、10Torr、および20Torrのいずれかを伝熱ガス制御部201に指示する。伝熱ガス制御部201は、分割領域60毎に、算出部203から指示された圧力の伝熱ガスの供給を伝熱ガス供給部31に指示する。これにより、時点t
1において、分割領域60毎に、静電チャック6の上面と温度測定用ウエハW’の裏面との間に伝熱ガスが供給され、温度測定用ウエハW’と静電チャック6との間で、伝熱ガスを介した熱交換が始まる。そして、例えば
図7に示すように、温度測定用ウエハW’との熱交換により、温度測定用ウエハW’の温度が下がり、静電チャック6の温度が上がる。
【0062】
そして、時点t
1から所定時間(例えば十秒程度)が経過した後の時点t
2において、算出部203は、ヒータ6cへの電力供給の開始を温度制御部205に指示する。温度制御部205は、ヒータ電源30にヒータ6cへの電力供給の開始を指示し、分割領域60毎に、分割領域60の温度が目標温度(例えば60℃)となるように、ヒータ6cに供給される電力のフィードバック制御を開始する。これにより、例えば
図7に示すように、分割領域60毎に、静電チャック6の温度と温度測定用ウエハW’の温度とが、目標温度に徐々に近づく。
【0063】
次に、静電チャック6および温度測定用ウエハW’の温度が安定した時点t
3において、処理制御部206は、補正テーブル2040の作成時の処理レシピに基づいて、高周波電力や処理ガスの供給等の制御を開始する。例えば、処理制御部206は、高周波電力の供給開始を高周波電源12aおよび高周波電源12bにそれぞれ指示すると共に、所定の流量の処理ガスが処理チャンバ1内に供給されるように弁VおよびMFC15aを制御する。これにより、処理装置100の処理チャンバ1内には、処理ガスのプラズマが生成される。そして、処理チャンバ1内に生成されたプラズマからの入熱により、例えば
図7に示すように、温度測定用ウエハW’の温度が上昇する。プラズマからの入熱は、静電チャック6に伝わり、静電チャック6から放熱される。しかし、半導体ウエハWと静電チャック6との間には、熱抵抗が存在する。そのため、半導体ウエハWと静電チャック6との間には、半導体ウエハWと静電チャック6との間の熱抵抗に応じた温度差が生じる。
【0064】
伝熱ガスの圧力が5Torrである
図7(a)の例では、プラズマからの入熱により、温度測定用ウエハW’の温度が例えばT
a=74.4℃まで上昇する。静電チャック6は温度制御部205によってほぼ60℃に制御されているので、プラズマからの入熱により温度が上昇した温度測定用ウエハW’と、静電チャック6との間の温度差ΔT
aは14.4℃である。また、伝熱ガスの圧力が10Torrである
図7(b)の例では、プラズマからの入熱により、温度測定用ウエハW’の温度が例えばT
b=69.9℃まで上昇する。プラズマからの入熱により温度が上昇した温度測定用ウエハW’と、静電チャック6との間の温度差ΔT
bは9.9℃である。また、伝熱ガスの圧力が20Torrである
図7(c)の例では、プラズマからの入熱により、温度測定用ウエハW’の温度が例えばT
c=66.6℃まで上昇する。プラズマからの入熱により温度が上昇した温度測定用ウエハW’と、静電チャック6との間の温度差ΔT
cは6.6℃である。
【0065】
なお、時点t
3において、処理チャンバ1内に供給される高周波電力の周波数や電力、処理ガスの種類や流量等は、半導体ウエハWに対して行われる処理のレシピで指定されている高周波電力の周波数や電力、処理ガスの種類や流量等が用いられることが好ましい。これにより、半導体ウエハWに対して実際に行われる処理環境における半導体ウエハWの温度を測定することができる。
【0066】
そして、算出部203は、処理レシピの実行停止を処理制御部206に指示する。これにより、処理チャンバ1内でのプラズマの生成が停止される。そして、算出部203は、ヒータ6cへの電力供給の停止あるいはヒータ6cへ供給される電力の固定を温度制御部205に指示し、伝熱ガスの供給停止を伝熱ガス制御部201に指示する。これにより、静電チャック6上に載置された温度測定用ウエハW’の温度が徐々に室温(例えば30℃)に戻り、静電チャック6の温度がチラーユニット33によって徐々に室温より低い温度(例えば10℃)に戻る。
【0067】
算出部203は、所定数の圧力の伝熱ガスのそれぞれについて、分割領域毎に上記の処理を行うことにより、温度測定用ウエハW’および静電チャック6の温度変化を測定する。そして、算出部203は、それぞれの圧力の伝熱ガスについて、温度変化の測定データから、分割領域毎に、時点t
1と時点t
2との間の静電チャック6の温度変化の傾きを算出する。ここで、静電チャック6の温度変化の傾きの算出方法について、
図8を用いて説明する。
【0068】
図8は、補正テーブル作成時における温度測定用ウエハW’および静電チャック6の温度変化の一例を示す拡大図である。
図8は、静電チャック6上の一つの分割領域(例えばセンタ領域)に対応する領域の温度測定用ウエハW’および静電チャック6の温度変化の一例を示している。また、
図8(a)は
図7(a)における時点t
1付近の拡大図であり、
図8(b)は
図7(b)における時点t
1付近の拡大図であり、
図8(c)は
図7(c)における時点t
1付近の拡大図である。
【0069】
算出部203は、例えば
図8に示すように、伝熱ガスの供給が開始された時点t
1より第1の時間が経過した時点t
11と、時点t
11から第2の時間Δtが経過した時点t
12との間の期間の静電チャック6の温度変化の傾きを測定する。本実施例において、第1の時間は例えば1秒であり、第2の時間Δtは例えば5秒である。
図8(a)〜(c)に示すように、時点t
11から時点t
12までの間の静電チャック6の温度変化の傾きは、伝熱ガスの圧力に応じて変化している。これは、伝熱ガスの圧力に応じて、温度測定用ウエハW’と静電チャック6との間の熱抵抗が変化するためである。
【0070】
そして、算出部203は、それぞれの圧力の伝熱ガスについて、温度変化の測定データから、分割領域毎に、プラズマ生成中の温度測定用ウエハW’の温度(例えば
図7に示したT
a、T
b、およびT
c)を取得する。
図9は、伝熱ガスの圧力毎の静電チャック6の温度変化の傾きおよび温度測定用ウエハW’の温度のデータ62の一例を示す図である。算出部203は、例えば
図9のデータ62に示すように、各分割領域について、伝熱ガスの圧力毎に、静電チャック6の温度変化の傾きを算出すると共に、プラズマ生成中の温度測定用ウエハW’の温度を取得する。そして、算出部203は、例えば下記の算出式(1)に基づいて、各分割領域について、伝熱ガスの圧力毎に、補正値T
offを算出する。
T
off=T
r−T
m ・・・(1)
ここで、T
mは、プラズマ生成中の温度測定用ウエハW’の温度を示し、T
rは、基準となる温度を示す。
【0071】
本実施例では、一例として、伝熱ガスの圧力が10Torrの場合の温度測定用ウエハW’の温度T
mが基準となる温度T
rとして設定される。そのため、
図9に例示したデータ62において、センタ領域では、基準となる温度T
rが69.9℃、エッジ領域では基準となる温度T
rが72.2℃となる。例えば
図9のデータ62において、伝熱ガスの圧力が5Torrの場合、センタ領域の温度測定用ウエハW’の温度T
mが74.4℃なので、算出部203は、69.9−74.4=−4.5を、伝熱ガスの圧力が5Torrの場合のセンタ領域の補正値T
offとして算出する。同様に、例えば
図9のデータ62において、伝熱ガスの圧力が20Torrの場合、センタ領域の温度測定用ウエハW’の温度T
mが66.6℃なので、算出部203は、69.9−66.6=+3.3を、伝熱ガスの圧力が20Torrの場合のセンタ領域の補正値T
offとして算出する。
【0072】
算出部203は、伝熱ガスの圧力毎に静電チャック6の温度変化の傾きと補正値T
offとを対応付けた個別テーブル2041(
図6参照)を、分割領域毎に作成し、作成した個別テーブル2041を含む補正テーブル2040を、記憶部204に保存する。
【0073】
ここで、温度測定用ウエハW’と静電チャック6との間の熱抵抗は、所定の温度差を有する温度測定用ウエハW’と静電チャック6とが熱交換を行った場合の温度測定用ウエハW’および静電チャック6のそれぞれの温度変化の傾きから推定することができる。例えば、温度測定用ウエハW’と静電チャック6との間の熱抵抗が小さい場合には、静電チャック6の温度変化の傾きが大きくなり、温度測定用ウエハW’と静電チャック6との間の熱抵抗が大きい場合には、静電チャック6の温度変化の傾きが小さくなる。また、温度測定用ウエハW’と静電チャック6との間の熱抵抗が大きい場合、プラズマ生成中の温度測定用ウエハW’と静電チャック6との間の温度差が大きくなり、温度測定用ウエハW’と静電チャック6との間の熱抵抗が小さい場合、プラズマ生成中の温度測定用ウエハW’と静電チャック6との間の温度差が小さくなる。
【0074】
そのため、本実施例では、温度測定用ウエハW’と静電チャック6との間の熱抵抗が大きい場合、即ち、静電チャック6の温度変化の傾きが小さい場合に、静電チャック6の目標温度を下げるような補正値を算出する。一方、温度測定用ウエハW’と静電チャック6との間の熱抵抗が小さい場合、即ち、静電チャック6の温度変化の傾きが大きい場合に、静電チャック6の目標温度を上げるような補正値を算出する。そして、プラズマ生成中に測定された温度測定用ウエハW’の温度と、基準温度との差が、補正値の大きさに設定される。半導体ウエハWの処理時には、半導体ウエハWを載置した静電チャック6の温度変化が測定され、静電チャック6の温度変化の傾きに対応する補正値が、半導体ウエハWに対するプラズマ処理が行われる際の静電チャック6の目標温度に適用される。これにより、半導体ウエハWと静電チャック6との間の熱抵抗の変化に伴って、プラズマ処理時の半導体ウエハWの温度が半導体ウエハW間で変動することが抑制される。
【0075】
[半導体ウエハWの処理時の補正]
図10は、補正値が適用された場合の温度測定用ウエハW’および静電チャック6の温度変化の一例を示す図である。
図10は、静電チャック6上の一つの分割領域(例えばセンタ領域)における温度測定用ウエハW’および静電チャック6の温度変化の一例を示している。また、
図10(a)は伝熱ガスの圧力が5Torrの場合、
図10(b)は伝熱ガスの圧力が10Torrの場合、
図10(c)は伝熱ガスの圧力が20Torrの場合の温度測定用ウエハW’および静電チャックの温度変化の一例をそれぞれ示している。
図10において、グラフ80は温度測定用ウエハW’の温度変化を示し、グラフ81は静電チャック6の温度変化を示している。
【0076】
ここで、処理装置100が処理した半導体ウエハWの数が多くなるほど、即ち、処理装置100において実行された処理の累積時間が長くなるほど、処理チャンバ1内の環境の変化により半導体ウエハWと静電チャック6との間の熱抵抗の変化が大きくなる。例えば、複数の半導体ウエハWに対して所定の膜を積層させる処理が行われる場合、処理の累積時間が長くなるほど、デポの付着量の増加により半導体ウエハWと静電チャック6との間の熱抵抗が低くなる。半導体ウエハWと静電チャック6との間の熱抵抗は、半導体ウエハWと静電チャック6との間に供給される伝熱ガスの圧力で制御することができる。そのため、
図10では、半導体ウエハWと静電チャック6との間の熱抵抗の変化を、伝熱ガスの圧力の変化で模擬している。
【0077】
伝熱ガスの圧力が5Torr(
図10(a))の場合の半導体ウエハWと静電チャック6との間の熱抵抗は、半導体ウエハWに対する処理の累積時間が例えば0時間、即ち、新品の状態の静電チャック6と半導体ウエハWとの間の熱抵抗に相当する。また、伝熱ガスの圧力が10Torr(
図10(b))の場合の半導体ウエハWと静電チャック6との間の熱抵抗は、処理の累積時間が例えば30時間の静電チャック6と半導体ウエハWとの間の熱抵抗に相当する。また、伝熱ガスの圧力が20Torr(
図10(c))の場合の半導体ウエハWと静電チャック6との間の熱抵抗は、処理の累積時間が例えば60時間の静電チャック6と半導体ウエハWとの間の熱抵抗に相当する。なお、
図10では、ウエハの温度をモニタするために温度測定用ウエハW’が用いられているが、
図10に示した温度変化は、半導体ウエハWに対する処理の実行時も同様である。そのため、以下の説明では、半導体ウエハWに対する処理として説明する。
【0078】
半導体ウエハWに対する処理の実行時において、算出部203は、まず、静電チャック6の冷却開始と、ヒータ6cへの電力供給の停止あるいはヒータ6cへ供給される電力の固定とを温度制御部205に指示する。これにより、静電チャック6は、基材2aの流路2b内を循環する冷媒により冷却された基材2aを介して冷却される。また、算出部203は、半導体ウエハWに対する処理に用いられる処理レシピの実行を処理制御部206に指示する。処理制御部206は、処理レシピに基づいて、半導体ウエハWに対する処理を行う際の静電チャック6の目標温度を温度制御部205に指示する。そして、算出部203は、図示しない搬送ロボットに指示して、半導体ウエハWを処理チャンバ1内に搬入させ、静電チャック6上に載置させる。なお、半導体ウエハWが静電チャック6上に載置された時点t
0では、半導体ウエハWは室温(例えば30℃)であり、静電チャック6は室温より低い温度(例えば10℃)に冷却されている。
【0079】
次に、算出部203は、取得部202を介して分割領域60毎の静電チャック6の温度情報の取得を開始することにより、分割領域60毎に静電チャック6の温度測定を開始する。そして、算出部203は、
図10に示した時点t
1において、半導体ウエハWの処理レシピで指定された圧力の伝熱ガスの供給開始を伝熱ガス制御部201に指示する。これにより、時点t
1において、分割領域60毎に、静電チャック6の上面と半導体ウエハWの裏面との間に伝熱ガスが供給され、半導体ウエハWと静電チャック6との間で、伝熱ガスを介した熱交換が始まる。これにより、例えば
図10に示すように、半導体ウエハWとの熱交換により、半導体ウエハWの温度が下がり、静電チャック6の温度が上がる。
【0080】
そして、算出部203は、伝熱ガスの供給を開始した時点t
1から第1の時間が経過した時点t
11と、時点t
11から第2の時間が経過した時点t
12との間の期間の静電チャック6の温度変化の傾きを、分割領域60毎に測定する。そして、算出部203は、分割領域60毎に記憶部204内の個別テーブル2041を参照し、測定した静電チャック6の温度変化の傾きに対応する補正値を取得する。本実施例において、算出部203は、分割領域60毎に、例えば、測定した静電チャック6の温度変化の傾きに最も近い傾きを個別テーブル2041内で特定し、特定した傾きに対応付けられている補正値を取得する。また、他の例として、算出部203は、個別テーブル2041内の傾きと補正値との関係を近似するフィッティングカーブを求め、測定した静電チャック6の温度変化の傾きに対応するフィッティングカーブ上の補正値を取得するようにしてもよい。
【0081】
そして、算出部203は、分割領域60毎に取得した補正値を温度制御部205へ出力する。そして、算出部203は、時点t
1から所定時間が経過した後の時点t
2において、ヒータ6cへの電力供給の開始を温度制御部205に指示する。温度制御部205は、分割領域60毎に、処理制御部206から指示された目標温度に、算出部203から指示された補正値を加えることにより、目標温度を補正する。そして、温度制御部205は、分割領域60毎に、静電チャック6の温度が補正後の目標温度となるようにヒータ6cの電力をフィードバック制御する。これにより、静電チャック6は、伝熱ガスの供給が開始された時点t
1から、ヒータ6cへの電力供給が開始される時点t
2までの間の静電チャック6の温度変化に応じた補正値が適用された目標温度に制御される。なお、温度制御部205は、分割領域60毎の補正値が算出部203から出力された場合に、時点t
2まで待つことなく、算出部203から指示された補正値で補正した目標温度となるように、ヒータ6cの電力のフィードバック制御を開始してもよい。
【0082】
そして、静電チャック6と半導体ウエハWの温度が安定した時点t
3において、処理制御部206は、半導体ウエハWに対する処理に用いられる処理レシピに従って、高周波電力および処理ガスの供給等の制御を開始する。これにより、処理チャンバ1内に処理ガスのプラズマが生成され、プラズマにより半導体ウエハWに対して所定の処理が実行される。そして、プラズマからの入熱により、半導体ウエハWの温度が上昇する。
【0083】
ここで、伝熱ガスの圧力が5Torrである
図10(a)の例では、ヒータ6cへの電力供給の開始前のセンタ領域の静電チャック6の温度変化の傾きが0.23である。そのため、
図6に示した補正テーブル2040が記憶部204に保存されている場合、算出部203は、例えば−4.5を補正値として取得する。そして、温度制御部205は、目標温度が60℃である場合、55.5℃を補正後の目標温度として算出し、静電チャック6のセンタ領域の温度が55.5℃になるようにヒータ6cの電力をフィードバック制御する。
図7(a)において説明したように、伝熱ガスの圧力が5Torrの場合の半導体ウエハWと静電チャック6との間の温度差ΔT
aは14.4℃であるため、プラズマ処理時の半導体ウエハWの温度T
a’は約70℃に制御される。
【0084】
また、伝熱ガスの圧力が10Torrである
図10(b)の例では、ヒータ6cへの電力供給の開始前のセンタ領域の静電チャック6の温度変化の傾きが0.33である。そのため、
図6に示した補正テーブル2040が記憶部204に保存されている場合、算出部203は、例えば0を補正値として取得する。そして、温度制御部205は、目標温度が60℃である場合、60℃を補正後の目標温度として算出し、静電チャック6のセンタ領域の温度が60℃になるようにヒータ6cの電力をフィードバック制御する。
図7(b)において説明したように、伝熱ガスの圧力が10Torrの場合の半導体ウエハWと静電チャック6との間の温度差ΔT
bは9.9℃であるため、プラズマ処理時の半導体ウエハWの温度T
b’は約70℃に制御される。
【0085】
また、伝熱ガスの圧力が20Torrである
図10(c)の例では、ヒータ6cへの電力供給の開始前のセンタ領域の静電チャック6の温度変化の傾きが0.42である。そのため、
図6に示した補正テーブル2040が記憶部204に保存されている場合、算出部203は、例えば+3.3を補正値として取得する。そして、温度制御部205は、目標温度が60℃である場合、63.3℃を補正後の目標温度として算出し、静電チャック6のセンタ領域の温度が63.3℃になるようにヒータ6cの電力をフィードバック制御する。
図7(c)において説明したように、伝熱ガスの圧力が20Torrの場合の半導体ウエハWと静電チャック6との間の温度差ΔT
cは6.6℃であるため、プラズマ処理時の半導体ウエハWの温度T
c’は約70℃に制御される。
【0086】
このように、温度センサ20は、半導体ウエハWと静電チャック6との間の熱抵抗が大きい場合、即ち、静電チャック6の温度変化の傾きが小さい場合に、静電チャック6の目標温度を下げ、半導体ウエハWと静電チャック6との間の熱抵抗が小さい場合、即ち、静電チャック6の温度変化の傾きが大きい場合に、静電チャック6の目標温度を上げるようにヒータ6cに供給される電力をフィードバック制御する。これにより、複数の半導体ウエハWが処理される過程で半導体ウエハWと静電チャック6との間の熱抵抗が変化した場合であっても、複数の半導体ウエハW間で、プラズマ処理時の温度のばらつきを抑制することができる。
【0087】
[補正テーブル2040作成時の処理フロー]
図11は、実施例1における補正テーブル作成処理の一例を示すフローチャートである。なお、
図11に示した処理に先立って、ヒータ電源30は、ヒータ6cへの電力供給を停止あるいは固定しており、静電チャック6は、基材2a内を流通する冷媒により所定温度まで冷却されている。また、温度測定用ウエハW’の温度は室温である。
【0088】
まず、算出部203は、図示しない搬送ロボットに指示して、温度測定用ウエハW’を処理チャンバ1内に搬入させ、静電チャック6上に載置させる(S100)。そして、算出部203は、温度測定用ウエハW’と静電チャック6との間に供給される伝熱ガスの圧力を分割領域60毎に選択する(S101)。本実施例において、算出部203は、伝熱ガスの圧力として、5Torr、10Torr、および20Torrのいずれか一つを順次選択する。
【0089】
次に、算出部203は、取得部202を介して分割領域60毎の静電チャック6の温度情報の取得を開始する(S102)。そして、算出部203は、ステップS101で分割領域60毎に選択した圧力における伝熱ガスの供給開始を伝熱ガス制御部201に指示する。これにより、分割領域60毎に、温度測定用ウエハW’と静電チャック6との間への伝熱ガスの供給が開始される(S103)。そして、温度測定用ウエハW’と静電チャック6との間で、伝熱ガスを介した熱交換が始まる。
【0090】
次に、算出部203は、伝熱ガスの供給開始から所定時間(例えば十秒程度)が経過するまで待機する(S104)。そして、算出部203は、ヒータ6cへの電力供給の開始を温度制御部205に指示する。これにより、ヒータ電源30からヒータ6cへの電力供給が開始される(S105)。そして、温度制御部205は、静電チャック6の温度が目標温度となるように、ヒータ6cに供給される電力のフィードバック制御を開始する。
【0091】
次に、処理制御部206は、温度測定用ウエハW’の温度が安定するまで所定時間待機する(S106)。そして、処理制御部206は、補正テーブル2040作成時の処理レシピに基づいて、高周波電力や処理ガスの供給等の制御を開始することにより、処理チャンバ1内に処理ガスのプラズマを生成する(S107)。
【0092】
次に、処理制御部206は、温度測定用ウエハW’の温度が安定するまで所定時間待機する(S108)。そして、処理制御部206は、高周波電力や処理ガスの供給等を停止する(S109)。そして、算出部203は、伝熱ガスの供給停止を伝熱ガス制御部201に指示し、ヒータ6cへの電力供給の停止あるいはヒータ6cへ供給される電力の固定を温度制御部205に指示する(S110)。そして、算出部203は、分割領域60毎の静電チャック6の温度情報の取得を停止する(S111)。
【0093】
次に、算出部203は、測定対象の全ての圧力(本実施例では、5Torr、10Torr、および20Torr)について、温度測定用ウエハW’および静電チャック6の温度測定を行ったか否かを判定する(S112)。測定対象の圧力の中に、温度測定用ウエハW’および静電チャック6の温度測定が行われていない圧力がある場合(S112:No)、算出部203は、チラーユニット33によって静電チャック6が所定温度まで冷却され、かつ、温度測定用ウエハW’の温度が室温に戻るまで、所定時間待機する(S113)。そして、算出部203は、再びステップS101に示した処理を実行する。
【0094】
一方、測定対象の全ての圧力について、温度測定用ウエハW’および静電チャック6の温度測定を行った場合(S112:Yes)、算出部203は、
図8を用いて説明したように、各分割領域60について、伝熱ガスの圧力毎に、伝熱ガスの供給が開始された時点t
1から第1の時間が経過した時点t
11と、時点t
11から第2の時間Δtが経過した時点t
12との間の期間の静電チャック6の温度変化の傾きを算出する(S114)。
【0095】
次に、算出部203は、各分割領域60について、伝熱ガスの圧力毎に、前述の算出式(1)に基づいて、基準となる温度に対する補正値T
offを算出する(S115)。そして、算出部203は、各分割領域60について、伝熱ガスの圧力毎に、静電チャック6の温度変化の傾きと補正値T
offとを対応付けた個別テーブル2041(
図6参照)を作成し、作成した個別テーブル2041を含む補正テーブル2040を記憶部204に保存する(S116)。
【0096】
[半導体ウエハWに対する処理の実行時の処理フロー]
図12は、実施例1における半導体ウエハWに対する処理の一例を示すフローチャートである。なお、
図12に示した処理に先立って、ヒータ電源30は、ヒータ6cへの電力供給を停止あるいは固定しており、静電チャック6は、基材2a内を流通する冷媒により所定温度まで冷却されている。また、半導体ウエハWの温度は室温である。
【0097】
まず、算出部203は、図示しない搬送ロボットに指示して、半導体ウエハWを処理チャンバ1内に搬入させ、静電チャック6上に載置させる(S200)。そして、算出部203は、取得部202を介して分割領域60毎の静電チャック6の温度情報の取得を開始する(S201)。
【0098】
次に、処理制御部206は、半導体ウエハWに対する処理を規定した処理レシピに基づいて、分割領域60毎に、半導体ウエハWと静電チャック6との間に所定の圧力の伝熱ガスの供給開始を伝熱ガス制御部201に指示する。これにより、分割領域60毎に、半導体ウエハWと静電チャック6との間への伝熱ガスの供給が開始される(S202)。そして、半導体ウエハWと静電チャック6との間で、伝熱ガスを介した熱交換が始まる。
【0099】
次に、算出部203は、伝熱ガスの供給開始から所定時間(例えば十秒程度)が経過するまで待機する(S203)。そして、算出部203は、分割領域60毎に、伝熱ガスの供給が開始された時点t
1から第1の時間が経過した時点t
11と、時点t
11から第2の時間Δtが経過した時点t
12との間の期間の静電チャック6の温度変化の傾きを算出する。そして、読取部230は、分割領域60毎に、算出した傾きに対応付けられた補正値を記憶部204内の補正テーブル2040から取得する(S204)。そして、算出部203は、ヒータ6cへの電力供給の開始を温度制御部205に指示すると共に、分割領域60毎に、取得した補正値を温度制御部205へ出力する。
【0100】
温度制御部205は、分割領域60毎に、算出部203から指示された補正値を、処理制御部206から指示された目標温度に加えることにより、目標温度を補正する(S205)。そして、温度制御部205は、ヒータ6cへの電力供給を開始させると共に、分割領域60毎に、静電チャック6の温度が補正後の目標温度となるようにヒータ6cに供給される電力をフィードバック制御する(S206)。
【0101】
次に、処理制御部206は、半導体ウエハWの温度が安定するまで所定時間待機する(S207)。そして、処理制御部206は、半導体ウエハWに対する処理を規定した処理レシピに基づいて、高周波電力や処理ガスの供給等の制御を開始することにより、プラズマ処理を実行する(S208)。プラズマ処理が終了した場合、処理制御部206は、高周波電力や処理ガスの供給等を停止する(S209)。そして、算出部203は、伝熱ガスの供給停止を伝熱ガス制御部201に指示し、ヒータ6cへの電力供給の停止あるいはヒータ6cへ供給される電力の固定を温度制御部205に指示する(S210)。そして、算出部203は、分割領域60毎の静電チャック6の温度情報の取得を停止する(S211)。そして、算出部203は、図示しない搬送ロボットに指示して、半導体ウエハWを処理チャンバ1内から搬出させる(S212)。
【0102】
以上、実施例1について説明した。上記説明から明らかなように、本実施例の処理システム10によれば、複数の半導体ウエハWが処理される過程で半導体ウエハWと静電チャック6との間の熱抵抗が変化した場合であっても、複数の半導体ウエハW間で、プラズマ処理時の温度のばらつきを抑制することができる。
【実施例2】
【0103】
実施例1では、分割領域60毎に、半導体ウエハWと静電チャック6との間の熱抵抗に応じて、分割領域60毎に静電チャック6の目標温度を補正したが、本実施例では、半導体ウエハWと静電チャック6との間の熱抵抗に応じて、半導体ウエハWと静電チャック6との間に供給される伝熱ガスの圧力を分割領域60毎に制御することにより、半導体ウエハWと静電チャック6との間の熱抵抗の変化に伴う半導体ウエハWの温度変化を抑制する。本実施例は、静電チャック6の目標温度が固定値である処理システム10や、静電チャック6内にヒータ6cが設けられていない処理システム10に対して特に有効である。なお、本実施例における処理システム10、処理装置100、および制御装置200は、以下に説明する点を除き、
図1〜
図5を用いて説明した実施例1における処理システム10、処理装置100、および制御装置200と同様であるため、重複する説明は省略する。
【0104】
本実施例において、記憶部204は、例えば
図13に示すような補正テーブル2043を記憶する。
図13は、実施例2における補正テーブル2043の一例を示す図である。補正テーブル2043には、例えば
図13に示すように、分割領域60(センタ領域およびエッヂ領域)毎に、関係式および傾きの目標値が格納される。関係式とは、伝熱ガスの圧力を変えた場合の静電チャック6の温度変化の傾きの変化の傾向を示す近似式である。傾きの目標値とは、静電チャック6の温度変化において、目標となる傾きを示す。目標となる傾きは、例えば、プロセスの処理条件を決定した時の傾きである。なお、
図13に示した関係式において、xは伝熱ガスの圧力を示し、yは静電チャック6の温度変化の傾きを示す。
【0105】
[補正テーブル2043作成時の処理フロー]
図14は、実施例2における補正テーブル2043の作成処理の一例を示すフローチャートである。なお、以下に説明する点を除き、
図11を用いて説明した補正テーブル2043の作成処理と同様の処理については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0106】
まず、制御装置200は、
図11で説明したステップS100〜S114の処理を実行する。そして、算出部203は、各分割領域60について、伝熱ガスの圧力毎に、伝熱ガスの圧力と、静電チャック6の温度変化の傾きとの関係を示す関係式を算出する(S120)。例えば
図15に示すように、伝熱ガスの圧力毎に、静電チャック6の温度変化の傾きとして複数の点86で示される値が算出されたと仮定する。
図15において、横軸は伝熱ガスの圧力を示し、縦軸は静電チャック6の温度変化の傾きを示す。
【0107】
算出部203は、複数の点86の分布に基づいて、複数の点86の分布の傾向を示す直線85を関係式として算出する。本実施例では、例えば
図13に示したように、センタ領域については「y=0.0121x+0.185」、エッジ領域については「y=0.0141x+0.155」が関係式として算出される。なお、本実施例において、関係式は直線であるが、複数の点86の傾向を示す線であれば、曲線であってもよい。
【0108】
次に、算出部203は、静電チャック6の温度変化の傾きの目標値を決定する(S121)。静電チャック6の温度変化の傾きの目標値は、例えば、プラズマ処理時の半導体ウエハWの温度が基準となる所定の温度となる場合の基準静電チャック6の温度変化の傾きが用いられる。なお、静電チャック6の温度変化の傾きは、半導体ウエハWと静電チャック6との間の熱抵抗と相関がある。静電チャック6の温度変化の傾きの目標値を決定することは、半導体ウエハWと静電チャック6との間の熱抵抗の目標値を決定することに対応する。半導体ウエハWと静電チャック6との間の熱抵抗は、伝熱ガスの圧力により、ある程度制御可能である。そのため、静電チャック6の温度変化の傾きの目標値は、伝熱ガスの圧力によって制御可能な熱抵抗の範囲の略中央付近であることが好ましい。本実施例では、
図13に示したように、センタ領域およびエッジ領域について、静電チャック6の温度変化の傾きの目標値として例えば0.3が決定される。
【0109】
そして、算出部203は、分割領域60毎に算出した関係式および静電チャック6の温度変化の傾きの目標値を含む補正テーブル2043を作成し、作成した補正テーブル2043を記憶部204に保存する(S122)。
【0110】
[半導体ウエハWに対する処理の実行時の処理フロー]
図16は、実施例2における半導体ウエハWに対する処理の一例を示すフローチャートである。なお、以下に説明する点を除き、
図12を用いて説明した半導体ウエハWに対する処理と同様の処理については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0111】
まず、制御装置200は、
図12で説明したステップS200〜S203の処理を実行する。そして、算出部203は、分割領域60毎に、伝熱ガスの供給が開始された時点t
1から第1の時間が経過した時点t
11と、時点t
11から第2の時間が経過した時点t
12との間の期間の静電チャック6の温度変化の傾きを算出する(S220)。ここで、例えば
図15に示すように、点87で示される値が、ある分割領域60における静電チャック6の温度変化の傾きとして算出されたと仮定する。
【0112】
次に、算出部203は、分割領域60毎の関係式を補正テーブル2043から取得する。そして、算出部203は、分割領域60毎に、補正テーブル2043から取得した関係式で示される直線を、ステップS220において算出された温度変化の傾きの値を通るように平行移動させる(S221)。算出部203は、例えば
図15に示すように、補正テーブル2043から取得された関係式を示す直線85を、ステップS220において算出した温度変化の傾きの値を示す点87を通るように平行移動し、直線88を得る。
【0113】
次に、算出部203は、分割領域60毎に、平行移動された直線上の点において、静電チャック6の温度変化の傾きが目標値となる場合の伝熱ガスの圧力を算出する(S222)。例えば
図15に示すように、算出部203は、平行移動された直線88上の点において、静電チャック6の温度変化の傾きが目標値である0.3となる場合の伝熱ガスの圧力Pを算出する。そして、算出部203は、分割領域60毎に算出した圧力Pを伝熱ガス制御部201に指示する。伝熱ガス制御部201は、分割領域60毎に、算出部203から指示された圧力Pとなるように、分割領域60毎の伝熱ガスの圧力を変更する(S223)。
そして、温度制御部205は、ヒータ6cへの電力供給を開始させると共に、分割領域60毎に、静電チャック6の温度が目標温度となるようにヒータ6cに供給される電力をフィードバック制御する(S224)。そして、制御装置200は、
図12で説明したステップS20
7〜S212の処理を実行する。
【0114】
以上、実施例2について説明した。上記説明から明らかなように、本実施例の処理システム10によれば、複数の半導体ウエハWが処理される過程で半導体ウエハWと静電チャック6との間の熱抵抗が変化した場合であっても、複数の半導体ウエハW間で、プラズマ処理時の温度のばらつきを抑制することができる。また、静電チャック6の目標温度が固定値である処理システム10や、静電チャック6内にヒータ6cが設けられていない処理システム10においても、半導体ウエハWと静電チャック6との間の熱抵抗の変化に伴う半導体ウエハW間の温度変化を抑制することができる。
【0115】
[制御装置200のハードウェア]
なお、上記した各実施例における制御装置200は、例えば
図17に示すようなコンピュータ90によって実現される。
図17は、制御装置200の機能を実現するコンピュータ90の一例を示す図である。コンピュータ90は、CPU(Central Processing Unit)91、RAM(Random Access Memory)92、ROM(Read Only Memory)93、補助記憶装置94、無線通信機95、通信インターフェイス(I/F)96、入出力インターフェイス(I/F)97、およびメディアインターフェイス(I/F)98を備える。
【0116】
CPU91は、ROM93または補助記憶装置94に格納されたプログラムに基づいて動作し、各部の制御を行う。ROM93は、コンピュータ90の起動時にCPU91によって実行されるブートプログラムや、コンピュータ90のハードウェアに依存するプログラム等を格納する。
【0117】
補助記憶装置94は、例えばHDD(Hard Disk Drive)またはSSD(Solid State Drive)等であり、CPU91によって実行されるプログラムおよび当該プログラムによって使用されるデータ等を格納する。CPU91は、当該プログラムを、補助記憶装置94から読み出してRAM92上にロードし、ロードしたプログラムを実行する。
【0118】
無線通信機95は、無線通信により、温度測定用ウエハW’と通信を行い、温度測定用ウエハW’から送信されたデータを受信してCPU91へ送る。通信I/F96は、LAN(Local Area Network)等の通信回線を介して処理装置100との間で通信を行う。通信I/F96は、処理装置100からデータを受信してCPU91へ送り、CPU91が生成したデータを、通信回線を介して、処理装置100へ送信する。
【0119】
CPU91は、入出力I/F97を介して、キーボード等の入力装置およびディスプレイ等の出力装置を制御する。CPU91は、入出力I/F97を介して、入力装置から入力された信号を取得してCPU91へ送る。また、CPU91は、生成したデータを、入出力I/F97を介して出力装置へ出力する。
【0120】
メディアI/F98は、記録媒体99に格納されたプログラムまたはデータを読み取り、補助記憶装置94に格納する。記録媒体99は、例えばDVD(Digital Versatile Disc)、PD(Phase change rewritable Disk)等の光学記録媒体、MO(Magneto-Optical disk)等の光磁気記録媒体、テープ媒体、磁気記録媒体、または半導体メモリ等である。
【0121】
コンピュータ90のCPU91は、RAM92上にロードされたプログラムを実行することにより、伝熱ガス制御部201、取得部202、算出部203、温度制御部205、および処理制御部206の各機能を実現する。また、補助記憶装置94には、記憶部204内のデータが格納される。
【0122】
コンピュータ90のCPU91は、RAM92上にロードされるプログラムを、記録媒体99から読み取って補助記憶装置94に格納するが、他の例として、他の装置から、通信回線を介してプログラムを取得して補助記憶装置94に格納してもよい。
【0123】
なお、開示の技術は、上記した実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形が可能である。
【0124】
例えば、算出部203は、例えば以下の期間における静電チャック6の温度変化の傾きを、半導体ウエハWまたは温度測定用ウエハW’と静電チャック6との間の熱抵抗に応じた静電チャック6の温度変化の傾きとして算出してもよい。
図18は、静電チャック6の温度変化の傾きを算出する期間の一例を説明する図である。
【0125】
例えば
図18に示すように、静電チャック6の温度は、伝熱ガスの供給が開始される時点t
1までは、チラーユニット33によって所定の温度T
minに制御されている。そして、伝熱ガスの供給が開始された時点t
1から、半導体ウエハWまたは温度測定用ウエハW’との間の熱交換により、静電チャック6の温度が上昇する。そして、ヒータ6cに電力が供給されない場合には、静電チャック6の温度は、所定の温度T
maxをピークとして再び下がり、チラーユニット33によって制御されている温度T
minに戻る。
【0126】
ここで、静電チャック6の温度変化の中で、温度変化の傾きが大きい期間ほど、半導体ウエハWまたは温度測定用ウエハW’と静電チャック6との間の熱抵抗が変わった場合に、温度変化の傾きの差が出やすい。そのため、
図18に示した時点t
1から、静電チャック6の温度が最大になる時点t
aまでの間で、温度変化の傾きが大きくなる期間の開始時点をt
11とし、終了時点を時点t
12とすることが好ましい。例えば、温度T
minを0%、温度T
maxを100%とした場合、時点t
11は、例えば静電チャック6の温度T
1が10〜30%の範囲内となる時点、時点t
12は、例えば静電チャック6の温度T
2が70〜90%の範囲内となる時点であってもよい。
【0127】
また、上記した各実施例では、半導体ウエハWまたは温度測定用ウエハW’の温度が、静電チャック6の温度よりも高い状態から、静電チャック6の温度変化の傾きを算出したが、開示の技術はこれに限られない。例えば、半導体ウエハWまたは温度測定用ウエハW’の温度が、静電チャック6の温度よりも低い状態から、静電チャック6の温度変化の傾きを算出するようにしてもよい。この場合、静電チャック6の温度は、時間の経過とともに温度が下がるように変化する。また、この場合でも、半導体ウエハWまたは温度測定用ウエハW’と静電チャック6との間の熱抵抗に応じて、静電チャック6の温度変化の傾きの大きさが変わる。
【0128】
また、上記した実施例1では、半導体ウエハW毎に、半導体ウエハWに対する処理の実行時に、静電チャック6の温度変化に基づいて目標温度を補正するが、他の例として、所定数の半導体ウエハW毎に、静電チャック6の温度変化に基づいて目標温度を補正する処理を1回行い、次に目標温度を補正する処理を行うまでは、補正後の目標温度を用いて半導体ウエハWに対する処理を実行してもよい。また、上記した実施例2では、半導体ウエハW毎に、半導体ウエハWに対する処理の実行時に、静電チャック6の温度変化に基づいて伝熱ガスの圧力を変更するが、他の例として、所定数の半導体ウエハW毎に、静電チャック6の温度変化に基づいて伝熱ガスの圧力を変更する処理を1回行い、次に伝熱ガスの圧力を変更する処理を行うまでは、変更後の伝熱ガスの圧力を用いて半導体ウエハWに対する処理を実行してもよい。これにより、複数の半導体ウエハWを処理する際のスループットを向上させることができる。
【0129】
また、上記した各実施例において、静電チャック6の上面は、同心円状に2つの分割領域60に分割され、分割領域60毎にヒータ6cの電力および伝熱ガスの圧力を独立して制御可能である。しかし、分割領域60の数は、2つに限られず、3つ以上であってもよい。また、それぞれの分割領域60の分割方法は、同心円状に限られず、格子状や放射状に分割されてもよい。
【0130】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者には明らかである。また、そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。