(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
リン化合物からなる基板の表面に格子状に形成された複数のストリートによって区画された複数の領域にデバイスおよび金属電極が形成されたウエーハをストリートに沿ってレーザー加工するウエーハの加工方法であって、
前記ウエーハを保持する工程と、
前記ウエーハ表面に水溶性保護膜を形成する保護膜形成工程と、
前記ストリートに沿って前記ウエーハにレーザー光を照射するレーザー光照射工程と、
前記レーザー光を照射した後前記ウエーハを洗浄して前記保護膜を除去する洗浄工程と、
前記洗浄工程後に前記レーザー光照射工程によりレーザー加工部に生成したリンを含む反応生成物が気化して空気中の水分と反応して前記金属電極上にリンを含む異物が生成する時間経過した後に、前記異物を除去する異物除去工程と、
を備えるウエーハの加工方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0014】
〔実施形態〕
実施形態に係るウエーハの加工方法を図面を参照して説明する。
図1は、実施形態に係るウエーハの加工方法の加工対象であるウエーハの斜視図であり、
図2は、
図1に示されたウエーハの要部の側面図である。ウエーハ(被加工物)Wは、
図1に示すように、円板状の基板WSを有する半導体ウエーハや光デバイスウエーハである。また、ウエーハWは、基板WSがリン化合物(InP:インジウムリン)からなる。ウエーハWは、
図1及び
図2に示すように、基板WS(ウエーハW)の表面に複数のストリートLが格子状に形成されているとともに、複数のストリートLによって区画された複数の領域にそれぞれデバイスDが形成されている。また、ウエーハWのデバイスDは、該デバイスDの表面からそれぞれ突出して形成された複数のバンプBP(金属電極に相当)が形成されている。これらのバンプBPは、例えば、金(Au)もしくは白金(Pt)などの貴金属により形成されている。なお、各デバイスDに形成されたバンプBPの数、位置、及び、大きさは、
図1に示すものに限るものではなく、デバイスDの表面に露出して配置されていれば、バンプBPの数、位置及び大きさを適宜に変更することができる。また、実施形態では、金属電極の一例としてバンプBPを示しているが、本発明は、金属電極としてデバイスDの表面と例えば面一に形成された電極を用いても良い。
【0015】
図3は、実施形態に係るウエーハの加工方法に用いられるレーザー加工装置の構成例を示す図であり、
図4は、
図3に示されたレーザー加工装置の保護膜形成兼洗浄部の構成例を示す斜視図である。なお、レーザー加工装置1は、
図3に示す構成例に限定されるものではない。レーザー加工装置1は、ウエーハWの表面に水溶性保護膜P(以下、単に、保護膜Pと記す)を形成した後、ウエーハWのストリートLに沿ってレーザー光を照射してレーザー加工溝PD(
図11に示す)を形成する。そして、レーザー加工装置1は、レーザー加工後に、ウエーハWの表面から保護膜Pを除去する。
【0016】
レーザー加工装置1は、
図3に示すように、チャックテーブル10と、レーザー光照射部20と、を備えている。レーザー加工装置1は、更に、レーザー加工前後のウエーハWを収容するカセット30が載置されるカセットエレベータ(図示せず)と、レーザー加工前後のウエーハWを一時的に載置する仮置き部40と、レーザー加工前のウエーハWに保護膜Pを形成し、かつ、レーザー加工後のウエーハWから保護膜Pを除去する保護膜形成兼洗浄部50とを備えている。更に、レーザー加工装置1は、チャックテーブル10とレーザー光照射部20とをX軸方向に相対移動させる図示しないX軸移動手段と、チャックテーブル10とレーザー光照射部20とをY軸方向に相対移動させる図示しないY軸移動手段と、チャックテーブル10とレーザー光照射部20とをZ軸方向に相対移動させる図示しないZ軸移動手段とを備えている。
【0017】
チャックテーブル10は、保護膜Pが形成されたウエーハWにレーザー加工を施す際に該ウエーハWを保持する。チャックテーブル10は、表面を構成する部分がポーラスセラミック等から形成された円盤形状であり、図示しない真空吸引経路を介して図示しない真空吸引源と接続され、表面に載置されたウエーハWを吸引することで該ウエーハWを保持する。チャックテーブル10は、X軸移動手段により、カセット30近傍の搬出入領域TRとレーザー光照射部20近傍の加工領域PRとに亘ってX軸方向に移動自在に設けられ、かつY軸移動手段によりY軸方向に移動自在に設けられているとともに図示しない基台駆動源により中心軸線(Z軸と平行である)回りに回転自在に設けられている。
【0018】
レーザー光照射部20は、装置本体2に設けられた加工領域PRに設けられ、かつチャックテーブル10に保持されたウエーハWの表面にレーザー光LB(
図9に示す)を照射して、レーザー加工溝PDを形成するものである。レーザー光LBは、ウエーハWに対して吸収性を有する波長のレーザー光である。レーザー光照射部20は、チャックテーブル10に保持されたウエーハWに対して、Z軸移動手段によりZ軸方向に移動自在に設けられている。レーザー光照射部20は、レーザー光LBを発振する発振器21と、この発振器21により発振されたレーザー光LBを集光する集光器22とを備えている。発振器21は、ウエーハWの種類、加工形態などに応じて、発振するレーザー光LBの周波数が適宜調整される。発振器21として、例えば、YAGレーザー発振器やYVOレーザー発振器などを用いることができる。集光器22は、発振器21により発振されたレーザー光LBの進行方向を変更する全反射ミラーやレーザー光LBを集光する集光レンズなどを含んで構成される。
【0019】
カセット30は、粘着テープTを介して環状フレームFに貼着されたウエーハWを複数枚収容するものである。カセットエレベータは、レーザー加工装置1の装置本体2にZ軸方向に昇降自在に設けられている。
【0020】
仮置き部40は、カセット30からレーザー加工前のウエーハWを一枚取り出すとともに、レーザー加工後のウエーハWをカセット30内に収容する。仮置き部40は、レーザー加工前のウエーハWをカセット30から取り出すとともにレーザー加工後のウエーハWをカセット30内に挿入する搬出入手段41と、レーザー加工前後のウエーハWを一時的に載置する一対のレール42とを含んで構成されている。
【0021】
保護膜形成兼洗浄部50は、一対のレール42上のレーザー加工前のウエーハWが第1の搬送手段61により搬送されてきて、このレーザー加工前のウエーハWに保護膜Pを形成するものである。また、保護膜形成兼洗浄部50は、レーザー加工後のウエーハWが第2の搬送手段62により搬送されてきて、このレーザー加工後のウエーハWの保護膜Pを除去するものである。これら第1及び第2の搬送手段61,62は、それぞれ、例えば、ウエーハWの表面を吸着して持ち上げることが可能に構成されており、ウエーハWを持ち上げて所望の位置に搬送する。
【0022】
保護膜形成兼洗浄部50は、
図4に示すように、レーザー加工前後のウエーハWを保持するスピンナテーブル51と、このスピンナテーブル51をZ軸方向と平行な軸心回りに回転する電動モータ52と、スピンナテーブル51の周囲に配置される水受け部53とを備える。スピンナテーブル51は、円板状に形成されて表面(上面)の中央部にポーラスセラミック等から形成された吸着チャック51aを備え、この吸着チャック51aが図示しない吸引手段に連通されている。これにより、スピンナテーブル51は、吸着チャック51aに載置されたウエーハWを吸引することで該ウエーハWを保持する。
【0023】
電動モータ52は、その駆動軸52aの上端にスピンナテーブル51を連結し、このスピンナテーブル51を回転自在に支持する。水受け部53は、円筒状の外側壁53a及び内側壁53bと、これら外側壁53a及び内側壁53bを連結する底壁53cを備えて環状に形成されている。水受け部53は、ウエーハWの表面に保護膜Pを形成する際に該表面に供給される液状樹脂LR(
図7に示す)や、表面の保護膜Pを洗浄、除去する際に該表面に供給される洗浄水RW1(
図12に示す)などの余剰量を受けるものである。底壁53cには、排液口53c1が設けられ、この排液口53c1にドレンホース53dが接続されている。
【0024】
また、保護膜形成兼洗浄部50は、スピンナテーブル51上に保持されたウエーハWに保護膜Pを構成する水溶性の液状樹脂LRを供給する樹脂液供給ノズル55と、スピンナテーブル51上のレーザー加工後のウエーハWに洗浄水RW1を供給する洗浄水ノズル57と、スピンナテーブル51上の液状樹脂LRが供給されたウエーハW及び洗浄後のウエーハWにエアーを供給するエアーノズル56と、を備えている。各ノズル55〜57は、それぞれ、ノズル開口がスピンナテーブル51の中央上方に位置する作動位置と、スピンナテーブル51から外れた退避位置とに移動自在に構成される。
【0025】
樹脂液供給ノズル55は、図示は省略するが、液状樹脂供給源及び供給源接続されている。水溶性の液状樹脂LRとしては、PVA(ポリビニルアルコール)、PEG(ポリエチレングリコール)やPVP(ポリビニルピロリドン)などの水溶性の樹脂材が用いられる。これらの液状樹脂LRは、乾燥により固化してウエーハWの表面に該表面を保護する保護膜Pを形成する。
【0026】
また、洗浄水ノズル57は、図示を省略した洗浄水(例えば純水)供給源に接続されている。エアーノズル56は、図示を省略した乾燥空気供給源に接続され、スピンナテーブル51上に供給された液状樹脂LRに乾燥空気を吹き付けて、液状樹脂LRを乾燥させて保護膜Pを形成するものであるとともに、洗浄後のウエーハWに乾燥空気を吹き付けて、ウエーハWを乾燥させるものである。
【0027】
ところで、上述したように、本実施形態のウエーハWは、基板WSがインジウムリン(InP:リン化合物)からなるウエーハであり、さらに、デバイスDの表面にそれぞれ複数のバンプBP(金属電極)が形成されている。この種のウエーハWは、レーザー加工した場合、レーザー加工によって露出したウエーハWの加工面から該ウエーハWを構成する元素(本実施形態ではP(リン))が遊離(気化)して拡散する。この拡散されたリンは、保護膜Pを洗浄除去した後に、空気中の窒素、酸素や水分と反応してバンプBP上にリン酸(H
3PO
4)を含む異物AS(
図13に示す)を生成する。この異物ASは、電気特性等のデバイスDの特性を低下させるため、速やかに除去することが好ましいが、異物ASの生成速度が遅い(例えば2、3日かけて発生する)ため、保護膜Pを洗浄する際に保護膜Pと同時に異物ASを除去するのは困難であった。
【0028】
本実施形態に係るウエーハの加工方法は、デバイスD(特にはバンプBP)の表面に生じうるリンを含む異物ASの発生を抑制する点に特徴を有している。
【0029】
次に、本発明の実施形態に係るウエーハの加工方法について説明する。
図5は、実施形態に係るウエーハの加工方法の手順を示すフローチャートであり、
図6は、実施形態に係るウエーハの加工方法のウエーハを保持する工程を説明する断面図であり、
図7は、実施形態に係るウエーハの加工方法の保護膜形成工程を説明する断面図であり、
図8は、実施形態に係るウエーハの加工方法の保護膜形成工程後のウエーハ等を説明する断面図であり、
図9は、実施形態に係るウエーハの加工方法のレーザー光照射工程を説明する断面図であり、
図10は、実施形態に係るウエーハの加工方法のレーザー光照射工程後のウエーハ等を説明する断面図であり、
図11は、実施形態に係るウエーハの加工方法のレーザー光照射工程中を説明するウエーハの要部の断面図であり、
図12は、実施形態に係るウエーハの加工方法の洗浄工程を説明する断面図であり、
図13は、実施形態に係るウエーハの加工方法の洗浄工程後にバンプの表面に異物が生成した状態を説明する平面図であり、
図14は、実施形態に係るウエーハの加工方法の異物除去工程を説明する断面図である。
【0030】
ウエーハの加工方法は、ウエーハWをストリートLに沿ってレーザー加工する加工方法であって、
図5に示すように、ウエーハWを保持する工程ST1と、保護膜形成工程ST2と、レーザー光照射工程ST3と、洗浄工程ST4と、異物除去工程ST6と、を備える。まず、ウエーハの加工方法では、表面に複数のデバイスDが形成されたウエーハWの裏面に粘着テープTを貼着し、さらに、粘着テープTに環状フレームFを貼着する。そして、環状フレームFに粘着テープTを介して貼着されたウエーハWをカセットエレベータ内に収容する。
【0031】
そして、ウエーハの加工方法では、オペレータが加工内容情報をレーザー加工装置1の制御手段に登録し、オペレータから加工動作の開始指示があった場合に、レーザー加工装置1が加工動作、即ちウエーハの加工方法を開始する。ウエーハの加工方法において、まずウエーハWを保持する工程ST1において、制御手段は、レーザー加工前のウエーハWを搬出入手段41によりカセットエレベータから仮置き部40まで搬出し、仮置き部40の一対のレール42上に載置する。その後、制御手段は、第1の搬送手段61により保護膜形成兼洗浄部50のスピンナテーブル51まで搬送し、
図6に示すように、スピンナテーブル51にウエーハWを保持する。保護膜形成工程ST2に進む。
【0032】
次に、保護膜形成工程ST2において、制御手段は、ウエーハWの表面に保護膜Pを形成する。具体的には、制御手段は、
図7に示すように、樹脂液供給ノズル55のノズル開口をウエーハWの中央上方に配置し、スピンナテーブル51を所定の回転数で回転させた状態で、樹脂液供給ノズル55から水溶性の液状樹脂LR(例えば、PVA(ポリビニルアルコール))をウエーハWに供給する。供給された液状樹脂LRは、スピンナテーブル51の回転に伴う遠心力により、ウエーハWの中心から径方向外側に広がるため、均一な膜厚の保護膜Pを形成することができる。制御手段は、液状樹脂LRを所定時間、供給し、固化させた後、樹脂液供給ノズル55のノズル開口をウエーハWの上方から退避させる。これにより、
図8に示すように、ウエーハWの表面には、保護膜Pが形成される。レーザー光照射工程ST3に進む。
【0033】
次に、レーザー光照射工程ST3において、制御手段は、ストリートLに沿ってウエーハWにレーザー光LBを照射する。具体的には、制御手段は、第2の搬送手段62によって、保護膜形成兼洗浄部50のスピンナテーブル51の上からチャックテーブル10の上にウエーハWを搬送し、チャックテーブル10の表面に載置されたウエーハWを吸引保持する。そして、制御手段は、X軸移動手段及びY軸移動手段によりチャックテーブル10を移動させ、基台駆動源によりチャックテーブル10を中心軸線回りに回転させ、Z軸移動手段によりレーザー光照射部20を移動させて、所定のストリートLの一端を集光器22の直下に位置付ける。そして、制御手段は、
図9に示すように、レーザー光照射部20の集光器22からレーザー光LBを照射しつつ、ウエーハWを保持したチャックテーブル10を、X軸移動手段によりレーザー光照射部20に対して所定のストリートLに沿って、所定の加工速度で移動させる。
【0034】
すると、ウエーハWの基板WS及び保護膜Pの一部が昇華して、
図11に示すように、アブレーション加工によりレーザー加工溝PDが、レーザー光LBが照射された所定のストリートLに形成される。制御手段は、
図10に示すように、所定のストリートLの他端が集光器22の直下に達したら、レーザー光照射部20からのレーザー光LBの照射を停止するとともに、X軸移動手段によるチャックテーブル10の移動を停止する。制御手段は、前述したように、ストリートLに順にレーザー光LBを照射して、これらのストリートLにレーザー加工溝PDを形成して、ウエーハWの全てのストリートLにレーザー加工溝PDを形成する。洗浄工程ST4に進む。
【0035】
次に、洗浄工程ST4において、制御手段は、レーザー光LBを照射した後ウエーハWを洗浄して保護膜Pを除去する。具体的には、制御手段は、第2の搬送手段62によって、レーザー加工後のウエーハWをチャックテーブル10の上から再び、保護膜形成兼洗浄部50のスピンナテーブル51の上に搬送する。そして、制御手段は、スピンナテーブル51の吸着チャック51aにウエーハWを保持し、
図12に示すように、洗浄水ノズル57のノズル開口をウエーハWの中央上方に配置し、スピンナテーブル51を所定の回転数で回転させた状態で、洗浄水ノズル57から純水からなる洗浄水RW1をウエーハWに所定時間供給する。すると、保護膜Pは、水溶性の液状樹脂LRを乾燥させて形成されているため、この保護膜Pに向けて洗浄水RW1を供給することにより、保護膜Pは、洗浄水RW1に溶解してウエーハWの表面から除去される。この場合、レーザー加工によって生じたデブリは、保護膜Pとともに、ウエーハWの表面から除去される。制御手段は、洗浄水RW1を所定時間、供給した後、洗浄水ノズル57のノズル開口をウエーハWの上方から退避させ、代わりにエアーノズル56のノズル開口をウエーハWの中央上方に配置し、エアーノズル56から乾燥空気を所定時間供給することで、ウエーハWの表面を乾燥する。なお、本発明では、洗浄工程ST4において、制御手段は、洗浄水ノズル57及びエアーノズル56を揺動させながらノズル開口から洗浄水RW1及び乾燥空気を供給してもよい。
【0036】
次に、制御手段は、レーザー加工され、洗浄されたウエーハWを第1の搬送手段61及び搬出入手段41によってカセット30内に収容する。制御手段は、カセット30内の全てのウエーハWに保持する工程ST1、保護膜形成工程ST2、レーザー光照射工程ST3及び洗浄工程ST4を順に施し、カセット30内に収容する。カセット30内の全てのウエーハWがレーザー加工され、洗浄されると、オペレータが、カセット30をカセットエレベータから取り外し、保管場所に搬送し、保管場所に保管する。そして、オペレータは、保管場所において、洗浄工程ST4後に所定時間経過したか否かを判定する(ステップST5)。なお、ここでいう所定時間は、洗浄工程ST4後にレーザー光照射工程ST3によりレーザー加工部(レーザー加工溝PD及びレーザー加工溝PDの近傍を含む)に生成したウエーハWを構成する元素(本実施形態ではP(リン))を含む反応生成物が気化して、空気中の窒素、酸素や水分と反応してバンプBP上にP(リン)を含む
図13に示す異物AS(リン酸(H
3PO
4))が生成するまでにかかる時間である。例えば、所定時間は、2、3日であるが、これに限定されない。
【0037】
オペレータは、洗浄工程ST4後に所定時間経過していないと判定する(ステップST5:No)と、所定時間経過するまで、ステップST5を繰り返す。オペレータが、洗浄工程ST4後に所定時間経過したと判定する(ステップST5:Yes)と、
図13に示すように、バンプBPの表面に異物ASが生成している。異物除去工程ST6に進む。
【0038】
異物除去工程ST6は、洗浄工程ST4であって所定時間経過に異物ASを除去する工程である。異物除去工程ST6は、保護膜形成兼洗浄部50と同じ構成の洗浄装置100を用いる。なお、洗浄装置100の構成は、樹脂液供給ノズル55を備えていない以外、保護膜形成兼洗浄部50の構成と同等であるので説明を省略する。
【0039】
異物除去工程ST6では、作業装置又はオペレータがカセット30からウエーハWを一枚取り出して、取り出したウエーハWを洗浄装置100のスピンナテーブル51の上に搬送し、スピンナテーブル51にウエーハWを保持する。洗浄装置100は、
図14に示すように、洗浄水ノズル57のノズル開口をウエーハWの中央上方に配置し、スピンナテーブル51を所定の回転数で回転させた状態で、洗浄水ノズル57から純水からなる洗浄水RW2をウエーハWに所定時間供給する。すると、異物ASを構成するリン酸(H
3PO
4)が水溶性を有するため、この異物ASに向けて洗浄水RW2を供給することにより、異物ASは、洗浄水RW2に溶解してウエーハWの表面から除去される。実施形態において、純水からなる洗浄水RW2を用いるが、これに限定されない。このように、実施形態は、異物除去工程ST6において、ウエーハW表面を水(純水)で洗浄して異物ASを除去する。また、実施形態において、酸性又はアルカリ性を有する腐食性を有するエッチング液からなる洗浄水RW2を用いてもよい。この場合、異物ASは、エッチング液である洗浄水RW2に溶けて除去される。この場合、異物除去工程ST6において、ウエーハW表面をエッチングして異物ASを除去する。
【0040】
洗浄装置100は、洗浄水RW2を所定時間、供給した後、洗浄水ノズル57のノズル開口をウエーハWの上方から退避させ、代わりにエアーノズル56のノズル開口をウエーハWの中央上方に配置し、エアーノズル56から乾燥空気を所定時間供給することで、ウエーハWの表面を乾燥する。なお、本発明では、異物除去工程ST6において、制御手段は、洗浄水ノズル57及びエアーノズル56を揺動させながらノズル開口から洗浄水RW2及び乾燥空気を供給してもよい。なお、洗浄装置100は、エッチング液からなる洗浄水RW2を用いた場合には、洗浄水RW2を供給した後に、純水からなる洗浄水RW1を供給してからウエーハWを乾燥させるのが望ましい。
【0041】
次に、作業装置又はオペレータが異物ASが除去されたウエーハWをカセット30に収容する。作業装置又はオペレータが同様にカセット30内のウエーハWから異物ASを除去すると、ウエーハの加工方法を終了する。そして、ウエーハWは、次工程に搬送され、アブレーション加工によって形成されたレーザー加工溝PDに沿って分割されることで、個々のデバイスDに分割される。
【0042】
実施形態のウエーハの加工方法によれば、洗浄工程ST4後に、バンプBP上に異物ASが充分生成される所要時間経過した後、洗浄水RW1をウエーハWの表面に供給して、異物ASを除去する異物除去工程ST6を行う。また、ウエーハの加工方法は、異物除去工程ST6において、洗浄水RW1として純水を供給する。このために、ウエーハの加工方法は、異物ASが水溶性であるリン酸(H
3PO
4)により構成されているので、洗浄水RW1を供給するという簡易な方法で、レーザー加工後のウエーハWの基板WSに発生する異物ASを十分に除去できる。その結果、ウエーハの加工方法は、デバイスD表面に異物ASが発生することを効果的に抑制することができ、デバイスD特性を良好に保つことができる。
【0043】
また、ウエーハの加工方法は、レーザー光照射工程ST3時に生成した反応生成物が充分に空気中の水等と反応して異物ASを生成する所定時間経過してから、異物除去工程ST6を行うので、一旦、異物ASを除去すると異物ASの再生成を抑制することができる。その結果、ウエーハの加工方法は、デバイスD表面に異物ASが発生することを効果的に抑制することができ、デバイス特性を良好に保つことができる。さらに、ウエーハの加工方法は、ウエーハWをエッチングして異物ASを除去する場合には、エッチングに用いられるエッチング液からなる洗浄水RW2が腐食性を有するので、異物除去工程ST6の所要時間を抑制することができる。
【0044】
〔変形例〕
実施形態の変形例に係るウエーハの加工方法を図面を参照して説明する。
図15は、実施形態の変形例に係るウエーハの加工方法の異物除去工程を説明する断面図である。なお、
図15において、実施形態と同一部分には、同一符号を付して説明を省略する。
【0045】
実施形態の変形例に係るウエーハの加工方法は、異物除去工程ST6以外は実施形態と同じである。実施形態の変形例に係るウエーハの加工方法の異物除去工程ST6では、スピンナテーブル51にウエーハWを保持した後、洗浄装置100は、
図15に示すように、洗浄水ノズル57のノズル開口をウエーハWの中央上方に配置し、スピンナテーブル51を回転させることなく、洗浄水ノズル57から純水からなる洗浄水RW2をウエーハWに所定量供給する。すると、洗浄水RW2は、
図15に示すように、フレームFの内側に溜まり、このフレームFの内側に溜まった洗浄水RW2内にウエーハWを浸漬させることとなる。異物ASを構成するリン酸(H
3PO
4)が水溶性を有するため、ウエーハWが洗浄水RW2内に浸漬されることにより、異物ASは、洗浄水RW2に溶解してウエーハWの表面から除去される。変形例において、洗浄水RW2として純水を用いるが、これに限定されない。このように、変形例は、異物除去工程ST6において、ウエーハWを水(純水)中に浸漬して異物ASを除去する。その後、洗浄装置100は、スピンナテーブル51を所定の回転数で回転させた状態で、洗浄水ノズル57から洗浄水RW1をウエーハWに所定時間供給してウエーハWを洗浄し、エアーノズル56から乾燥空気を所定時間供給することで、ウエーハWの表面を乾燥する。
【0046】
実施形態の変形例のウエーハの加工方法によれば、異物ASが水溶性であるリン酸(H
3PO
4)により構成されているので、洗浄水RW2を供給するという簡易な方法で、レーザー加工後のウエーハWの基板WSに発生する異物ASを十分に除去できる。その結果、ウエーハの加工方法は、デバイスD表面に異物ASが発生することを効果的に抑制することができ、デバイスD特性を良好に保つことができる。
【0047】
次に、本発明の発明者らは、実施形態のウエーハの加工方法の効果を確認した。結果を表1に示す。
【0049】
表1において、本発明品は、実施形態のウエーハの加工方法である。比較例1は、レーザー光照射工程ST3後に、洗浄工程ST4を行わずに保護膜Pを除去しない状態で、所定時間(例えば2〜3日)経過後に、洗浄工程ST4を行い、保護膜Pを除去した。比較例2は、レーザー光照射工程ST3後に、洗浄工程ST4を行って、デバイスD表面を下方に向けて所定時間(例えば2〜3日)経過させた。比較例1及び比較例2の双方は、異物除去工程ST6を行わなかった。
【0050】
表1によれば、比較例1及び比較例2の双方が、バンプBPの表面に異物ASが生成した。これらに対し、本発明品は、バンプBPの表面に異物ASが生成しなかった。表1により、洗浄工程ST4後に、バンプBP上に異物ASが充分生成される所要時間経過した後、洗浄水RW1をウエーハWの表面に供給して、異物ASを除去する異物除去工程ST6を行うことにより、バンプBPの表面に異物ASが生成されることを抑制できることが明らかとなった。
【0051】
なお、本発明は上記実施形態及び変形例に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、本発明は、特に洗浄水RW1,RW2として純水を用いる場合に、洗浄水RW1,RW2にアミノ基を有する薬液を添加してもよい。ウエーハの加工方法は、洗浄水RW1,RW2にアミノ基を有する薬液(例えば、MEA(モノエタノールアミン))を添加した場合、モノエタノールアミンが有するアミノ基と、レーザー加工溝PDから拡散されるリンとが反応して、リンを含む化合物(例えば、リン酸アンモニウム((NH
4)
3PO
4)が生成される。この化合物(リン酸アンモニウム)は、水溶性を示し、リン酸(H
3PO
4)と比較して反応(生成)時間が短い。このため、ウエーハの加工方法は、洗浄水RW1,RW2にアミノ基を有する薬液を添加することにより、リンを含む化合物(リン酸アンモニウム)が生成されることにより、リン酸(H
3PO
4)を含む異物ASの生成を抑制できる。
【0052】
アミノ基を有する薬液としては、例えば、PAA((登録商標)ポリアリルアミン)、PEI(ポリエチレンイミン)などの高分子の薬液、MEA(モノエタノールアミン)、TETA(トリエチルテトラミン)などのいわゆる低分子の薬液、モノエチルアミン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、モノエタノールアミン、2−アミノエタノール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ピリジン、N−N−ジメチルホルムアミド、N−2−メチルピロリドン、またはこれら2種以上の混合液、または水で希釈したものが用いられる。