(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(a)熱可塑性樹脂、(b)アンモニウム基を分子末端に有し且つ重量平均分子量が1,000〜5,000,000であるハイパーブランチポリマー、及び(c)金属微粒子を含み、前記(c)金属微粒子に、前記(b)ハイパーブランチポリマーのアンモニウム基が付着して複合体を形成している樹脂組成物を紡糸材料として、エレクトロスピニング法に従いナノファイバーを作製する紡糸工程、及び
前記工程で作製したナノファイバーを無電解めっき処理するめっき工程、
を含むことを特徴とする、導電性ナノファイバーの製造方法。
前記(c)金属微粒子が、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、スズ(Sn)、白金(Pt)及び金(Au)からなる群より選択される少なくとも一種の金属の微粒子である、請求項1乃至請求項3のうち何れか一項に記載の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の導電性ナノファイバーの製造方法は、後述する樹脂組成物を紡糸材料として、エレクトロスピニング法に従いナノファイバーを作製する紡糸工程と、前記工程で作製したナノファイバーを無電解めっき処理するめっき工程とを含むことを特徴とする。なお本発明の製造方法により作製される導電性ナノファイバーも本発明の対象である。
そして本発明の導電性ナノファイバーの製造方法に用いる樹脂組成物は、(a)熱可塑性樹脂、(b)アンモニウム基を分子末端に有し且つ重量平均分子量が1,000〜5,000,000であるハイパーブランチポリマー、及び(c)金属微粒子を含む。
【0014】
[樹脂組成物]
<(a)熱可塑性樹脂>
本発明で用いる熱可塑性樹脂としては特に限定されないが、例えばPE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、EVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)、EVOH(エチレン−ビニルアルコール共重合体)、PVA(ポリビニルアルコール)、EEA(エチレン−アクリル酸エチル共重合体)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体などのポリオレフィン系樹脂;PS(ポリスチレン)、HIPS(ハイインパクトポリスチレン)、AS(アクリロニトリル−スチレン共重合体)、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)、SBS(スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体)、MS(メタクリル酸メチル−スチレン共重合体)などのポリスチレン系樹脂;ポリカーボネート樹脂;塩化ビニル樹脂;ポリアミド樹脂;ポリイミド樹脂;PUE(ポリウレタンエラストマー)などのポリウレタン樹脂;PMMA(ポリメチルメタクリレート)などの(メタ)アクリル樹脂;PAN(ポリアクリロニトリル);PET(ポリエチレンテレフタレート)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、PLA(ポリ乳酸)、ポリ−3−ヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート/アジペートなどのポリエステル樹脂;PEO(ポリエチレンオキシド);ポリフェニレンエーテル樹脂;変性ポリフェニレンエーテル樹脂;ポリアセタール樹脂;PES(ポリエーテルスルホン)樹脂、ポリスルホン樹脂;ポリフェニレンサルファイド樹脂;ポリビニルアルコール樹脂;ポリグルコール酸;変性でんぷん;酢酸セルロース、三酢酸セルロース;キチン、キトサン;リグニン等が挙げられる。
中でも、熱可塑性樹脂として、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体及びポリウレタン樹脂を用いることが好ましい。
【0015】
<(b)ハイパーブランチポリマー>
本発明で使用する樹脂組成物に用いられるハイパーブランチポリマーは、アンモニウム基を分子末端に有し且つ重量平均分子量が1,000〜5,000,000であるポリマーであり、具体的には下記式[1]で表されるハイパーブランチポリマーが挙げられる。
【化4】
前記式[1]中、R
1は、それぞれ独立して水素原子又はメチル基を表す。
また、R
2乃至R
4は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1乃至20の直鎖状、枝分かれ状又は環状のアルキル基、炭素原子数7乃至20のアリールアルキル基、又は−(CH
2CH
2O)
mR
5(式中、R
5は水素原子又はメチル基を表し、mは2乃至100の任意の整数を表す。)を表す。上記アルキル基及びアリールアルキル基は、アルコキシ基、ヒドロキシ基、アンモニウム基、カルボキシル基又はシアノ基で置換されていてもよい。また、R
2乃至R
4のうちの2つの基が一緒になって、直鎖状、枝分かれ状又は環状のアルキレン基を表すか、又はR
2乃至R
4はそれらが結合する窒素原子と一緒になって環を形成してもよい。
またX
−は陰イオンを表し、nは繰り返し単位構造の数であって、5乃至100,000の整数を表す。
【0016】
上記R
2乃至R
4における炭素原子数1乃至20の直鎖状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−エイコシル基等が挙げられる。中でも、本発明の製造方法において、後述するめっき工程において、紡糸材料として使用した樹脂組成物中の(b)ハイパーブランチポリマーが、無電解めっき液に溶出しにくい点で、炭素原子数8以上の基が好ましく、特にn−オクチル基が好ましい。
枝分かれ状のアルキル基としては、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。
環状のアルキル基としては、シクロペンチル環、シクロヘキシル環構造を有する基等が挙げられる。
またR
2乃至R
4における炭素原子数7乃至20のアリールアルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。
さらに、R
2乃至R
4のうちの2つの基が一緒になった直鎖状のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、n−ブチレン基、n−ヘキシレン基等が挙げられる。枝分かれ状のアルキレン基としては、イソプロピレン基、イソブチレン基、2−メチルプロピレン基等が挙げられる。環状のアルキレン基としては、炭素原子数3乃至30の単環式、多環式、架橋環式の環状構造の脂環式脂肪族基が挙げられる。具体的には、炭素原子数4以上のモノシクロ、ビシクロ、トリシクロ、テトラシクロ、ペンタシクロ構造等を有する基を挙げることができる。これらアルキレン基は基中に窒素原子、硫黄原子又は酸素原子を含んでいてもよい。
そして、式[1]で表される構造でR
2乃至R
4がそれらと結合する窒素原子と一緒になって形成する環は、環中に窒素原子、硫黄原子又は酸素原子を含んでいてもよく、例えばピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、キノリン環、ビピリジル環等が挙げられる。
これらR
2乃至R
4の組合せとしては、例えば、[メチル基、メチル基、メチル基]、[メチル基、メチル基、エチル基]、[メチル基、メチル基、n−ブチル基]、[メチル基、メチル基、n−ヘキシル基]、[メチル基、メチル基、n−オクチル基]、[メチル基、メチル基、n−デシル基]、[メチル基、メチル基、n−ドデシル基]、[メチル基、メチル基、n−テトラデシル基]、[メチル基、メチル基、n−ヘキサデシル基]、[メチル基、メチル基、n−オクタデシル基]、[エチル基、エチル基、エチル基]、[n−ブチル基、n−ブチル基、n−ブチル基]、[n−ヘキシル基、n−ヘキシル基、n−ヘキシル基]、[n−オクチル基、n−オクチル基、n−オクチル基]等が挙げられ、中でも[メチル基、メチル基、n−オクチル基]、[n−オクチル基、n−オクチル基、n−オクチル基]の組合せが好ましい。
またX
−の陰イオンとして好ましくはハロゲン化物イオン、PF
6−、BF
4−又はパーフルオロアルカンスルホナートが挙げられる。
【0017】
上記式[1]中、A
1は下記式[2]で表される構造を表す。
【化5】
上記式[2]中、A
2はエーテル結合又はエステル結合を含んでいてもよい炭素原子数1乃至30の直鎖状、枝分かれ状又は環状のアルキレン基を表す。
Y
1乃至Y
4は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1乃至20のアルキル基、炭素原子数1乃至20のアルコキシ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基又はシアノ基を表す。
【0018】
上記A
2のアルキレン基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、n−ブチレン基、n−ヘキシレン基等の直鎖状アルキレン基、イソプロピレン基、イソブチレン基、2−メチルプロピレン基等の枝分かれ状アルキレン基が挙げられる。また環状アルキレン基としては、炭素原子数3乃至30の単環式、多環式及び架橋環式の環状構造の脂環式脂肪族基が挙げられる。具体的には、炭素原子数4以上のモノシクロ、ビシクロ、トリシクロ、テトラシクロ、ペンタシクロ構造等を有する基を挙げることができる。例えば、下記に脂環式脂肪族基のうち、脂環式部分の構造例(a)乃至(s)を示す。
【化6】
【0019】
また上記式[2]中のY
1乃至Y
4の炭素原子数1乃至20のアルキル基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、シクロヘキシル基、n−ペンチル基等が挙げられる。炭素原子数1乃至20のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、シクロヘキシルオキシ基、n−ペンチルオキシ基等が挙げられる。Y
1乃至Y
4としては、水素原子又は炭素原子数1乃至20のアルキル基が好ましい。
【0020】
なお、前記A
1は下記式[4]で表される構造であることが好ましい。
【化7】
【0021】
好ましくは、本発明に用いられるハイパーブランチポリマーとしては、下記式[3]で表されるハイパーブランチポリマーが挙げられる。
【化8】
前記式[3]中、R
1、R
2乃至R
4及びnは上記と同じ意味を表す。
【0022】
本発明で用いる上記アンモニウム基を分子末端に有するハイパーブランチポリマーは、例えば、分子末端にハロゲン原子を有するハイパーブランチポリマーにアミン化合物を反応させることによって得ることができる。
なお、分子末端にハロゲン原子を有するハイパーブランチポリマーは、国際公開第2008/029688号パンフレットの記載に従い、ジチオカルバメート基を分子末端に有するハイパーブランチポリマーより製造することができる。該ジチオカルバメート基を分子末端に有するハイパーブランチポリマーは、市販品を用いることができ、日産化学工業(株)製のハイパーテック(登録商標)HPS−200等を好適に使用可能である。
【0023】
本反応で使用できるアミン化合物は、第一級アミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン、n−ウンデシルアミン、n−ドデシルアミン、n−トリデシルアミン、n−テトラデシルアミン、n−ペンタデシルアミン、n−ヘキサデシルアミン、n−ヘプタデシルアミン、n−オクタデシルアミン、n−ノナデシルアミン、n−エイコシルアミン等の脂肪族アミン;シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン等の脂環式アミン;ベンジルアミン、フェネチルアミン等のアラルキルアミン;アニリン、p−n−ブチルアニリン、p−tert−ブチルアニリン、p−n−オクチルアニリン、p−n−デシルアニリン、p−n−ドデシルアニリン、p−n−テトラデシルアニリンなどのアニリン類、1−ナフチルアミン、2−ナフチルアミンなどのナフチルアミン類、1−アミノアントラセン、2−アミノアントラセンなどのアミノアントラセン類、1−アミノアントラキノンなどのアミノアントラキノン類、4−アミノビフェニル、2−アミノビフェニルなどのアミノビフェニル類、2−アミノフルオレン、1−アミノ−9−フルオレノン、4−アミノ−9−フルオレノンなどのアミノフルオレン類、5−アミノインダンなどのアミノインダン類、5−アミノイソキノリンなどのアミノイソキノリン類、9−アミノフェナントレンなどのアミノフェナントレン類等の芳香族アミンが挙げられる。更に、N−(tert−ブトキシカルボニル)−1,2−エチレンジアミン、N−(tert−ブトキシカルボニル)−1,3−プロピレンジアミン、N−(tert−ブトキシカルボニル)−1,4−ブチレンジアミン、N−(tert−ブトキシカルボニル)−1,5−ペンタメチレンジアミン、N−(tert−ブトキシカルボニル)−1,6−ヘキサメチレンジアミン、N−(2−ヒドロキシエチル)アミン、N−(3−ヒドロキシプロピル)アミン、N−(2−メトキシエチル)アミン、N−(2−エトキシエチル)アミン等のアミン化合物が挙げられる。
【0024】
第二級アミンとしては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジ−sec−ブチルアミン、ジ−n−ペンチルアミン、エチルメチルアミン、メチル−n−プロピルアミン、メチル−n−ブチルアミン、メチル−n−ペンチルアミン、メチル−n−オクチルアミン、メチル−n−デシルアミン、メチル−n−ドデシルアミン、メチル−n−テトラデシルアミン、メチル−n−ヘキサデシルアミン、メチル−n−オクタデシルアミン、エチルイソプロピルアミン、エチル−n−ブチルアミン、エチル−n−ペンチルアミン、エチル−n−オクチルアミン、ジ−n−ヘキシルアミン、ジ−n−オクチルアミン、ジ−n−ドデシルアミン、ジ−n−ヘキサデシルアミン、ジ−n−オクタデシルアミン等の脂肪族アミン;ジシクロヘキシルアミン等の脂環式アミン;ジベンジルアミン等のアラルキルアミン;ジフェニルアミン等の芳香族アミン;フタルイミド、ピロール、ピペリジン、ピペラジン、イミダゾール等の窒素含有複素環式化合物が挙げられる。更に、ビス(2−ヒドロキシエチル)アミン、ビス(3−ヒドロキシプロピル)アミン、ビス(2−エトキシエチル)アミン、ビス(2−プロポキシエチル)アミン等が挙げられる。
【0025】
第三級アミンとしては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−ペンチルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、トリ−n−オクチルアミン、トリ−n−ドデシルアミン、ジメチルエチルアミン、ジメチル−n−ブチルアミン、ジメチル−n−ヘキシルアミン、ジメチル−n−オクチルアミン、ジメチル−n−デシルアミン、ジエチル−n−デシルアミン、ジメチル−n−ドデシルアミン、ジメチル−n−テトラデシルアミン、ジメチル−n−ヘキサデシルアミン、ジメチル−n−オクタデシルアミン、ジメチル−n−エイコシルアミン等の脂肪族アミン;ピリジン、ピラジン、ピリミジン、キノリン、1−メチルイミダゾール、4,4’−ビピリジル、4−メチル−4,4’−ビピリジル等の窒素含有複素環式化合物が挙げられる。
【0026】
これらの反応で使用できるアミン化合物の使用量は、分子末端にハロゲン原子を有するハイパーブランチポリマーのハロゲン原子1モルに対して0.1〜20モル当量、好ましくは0.5〜10モル当量、より好ましくは1〜5モル当量であればよい。
【0027】
分子末端にハロゲン原子を有するハイパーブランチポリマーとアミン化合物との反応は、水又は有機溶媒中で、塩基の存在下又は非存在下で行なうことができる。使用する溶媒は、分子末端にハロゲン原子を有するハイパーブランチポリマーとアミン化合物を溶解可能なものが好ましい。さらに、分子末端にハロゲン原子を有するハイパーブランチポリマーとアミン化合物を溶解可能であるが、分子末端にアンモニウム基を有するハイパーブランチポリマーを溶解しない溶媒であれば、単離が容易となりさらに好適である。
本反応で使用できる溶媒としては、本反応の進行を著しく阻害しないものであればよく、水;イソプロパノール等のアルコール類;酢酸等の有機酸類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン等の芳香族炭化水素類;テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロヘキサノン等のケトン類;クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化物;n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類;N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等のアミド類が使用できる。これらの溶媒は1種を用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。また、使用量は、分子末端にハロゲン原子を有するハイパーブランチポリマーの質量に対して0.2〜1,000倍質量、好ましくは1〜500倍質量、より好ましくは5〜100倍質量、最も好ましくは5〜50倍質量の溶媒を使用することが好ましい。
【0028】
好適な塩基としては一般に、アルカリ金属水酸化物及びアルカリ土類金属水酸化物(例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム)、アルカリ金属酸化物及びアルカリ土類金属酸化物(例えば酸化リチウム、酸化カルシウム)、アルカリ金属水素化物及びアルカリ土類金属水素化物(例えば水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化カルシウム)、アルカリ金属アミド(例えばナトリウムアミド)、アルカリ金属炭酸塩及びアルカリ土類金属炭酸塩(例えば炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム)、アルカリ金属重炭酸塩(例えば重炭酸ナトリウム)等の無機化合物、並びにアルカリ金属アルキル、アルキルマグネシウムハロゲン化物、アルカリ金属アルコキシド、アルカリ土類金属アルコキシド、ジメトキシマグネシウム等の有機金属化合物が使用される。特に好ましいのは、炭酸カリウム及び炭酸ナトリウムである。また、使用量は、分子末端にハロゲン原子を有するハイパーブランチポリマーのハロゲン原子1モルに対して0.2〜10モル当量、好ましくは0.5〜10モル当量、最も好ましくは1〜5モル当量の塩基を使用することが好ましい。
【0029】
この反応では反応開始前に反応系内の酸素を十分に除去することが好ましく、窒素、アルゴン等の不活性気体で系内を置換するとよい。反応条件としては、反応時間は0.01〜100時間、反応温度は0〜300℃から、適宜選択される。好ましくは反応時間が0.1〜72時間で、反応温度が20〜150℃である。
【0030】
第三級アミンを用いた場合、塩基の存在/非存在に関わらず、式[1]で表されるハイパーブランチポリマーを得ることができる。
塩基の非存在下で、第一級アミン又は第二級アミン化合物と分子末端にハロゲン原子を有するハイパーブランチポリマーを反応させた場合、それぞれに対応するハイパーブランチポリマーの末端第二級アミン及び第三級アミンがプロトン化されたアンモニウム基末端のハイパーブランチポリマーが得られる。また、塩基を用いて反応を行った場合においても、有機溶媒中で塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素等の酸の水溶液と混合することにより、対応するハイパーブランチポリマーの末端第二級アミン及び第三級アミンがプロトン化されたアンモニウム基末端のハイパーブランチポリマーが得られる。
【0031】
前記ハイパーブランチポリマーは、ゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwが1,000〜5,000,000であり、好ましくは1,000〜500,000であり、より好ましくは2,000〜200,000であり、最も好ましくは3,000〜100,000である。また、分散度Mw(重量平均分子量)/Mn(数平均分子量)としては1.0〜7.0であり、好ましくは1.1〜6.0であり、より好ましくは1.2〜5.0である。
【0032】
<(c)金属微粒子>
本発明で使用する樹脂組成物に用いられる金属微粒子としては特に限定されず、金属種としては鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、スズ(Sn)、白金(Pt)及び金(Au)が挙げられ、これらの金属の1種類でもよいし2種以上の合金でも構わない。中でも好ましい金属微粒子としてはパラジウム微粒子が挙げられる。なお、金属微粒子として、前記金属の酸化物を用いてもよい。
【0033】
前記金属微粒子は、例えば金属塩の水溶液を高圧水銀灯により光照射する方法や、該水溶液に還元作用を有する化合物(所謂還元剤)を添加する方法等により、金属イオンを還元することによって得られる。例えば、上記ハイパーブランチポリマーを溶解した溶液に金属塩の水溶液を添加してこれに紫外線を照射する、或いは、該溶液に金属塩の水溶液及び還元剤を添加するなどして、金属イオンを還元することにより、ハイパーブランチポリマーと金属微粒子の複合体を形成させながら、ハイパーブランチポリマー及び金属微粒子、並びに後述するその他成分を含む樹脂組成物を調製することができる。
【0034】
前記金属塩としては、塩化金酸、硝酸銀、硫酸銅、硝酸銅、酢酸銅、塩化スズ、塩化第一白金、塩化白金酸、Pt(dba)
2[dba=ジベンジリデンアセトン]、Pt(cod)
2[cod=1,5−シクロオクタジエン]、Pt(CH
3)
2(cod)、塩化パラジウム、酢酸パラジウム(Pd(OC(=O)CH
3)
2)、硝酸パラジウム、Pd
2(dba)
3・CHCl
3、Pd(dba)
2、塩化ロジウム、酢酸ロジウム、塩化ルテニウム、酢酸ルテニウム、Ru(cod)(cot)[cot=シクロオクタトリエン]、塩化イリジウム、酢酸イリジウム、Ni(cod)
2等が挙げられる。
前記還元剤としては、特に限定されるものではなく、種々の還元剤を用いることができ、後に得られる樹脂組成物(すなわちナノファイバー)に含有させる金属種等により還元剤を選択することが好ましい。用いることができる還元剤としては、例えば、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム等の水素化ホウ素金属塩;水素化アルミニウムリチウム、水素化アルミニウムカリウム、水素化アルミニウムセシウム、水素化アルミニウムベリリウム、水素化アルミニウムマグネシウム、水素化アルミニウムカルシウム等の水素化アルミニウム塩;ヒドラジン化合物;クエン酸及びその塩;コハク酸及びその塩;アスコルビン酸及びその塩;メタノール、エタノール、イソプロパノール、ポリオール等の第一級又は第二級アルコール類;トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジエチルメチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン[TMEDA]、エチレンジアミン四酢酸[EDTA]等の第三級アミン類;ヒドロキシルアミン;トリ−n−プロピルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリベンジルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリエトキシホスフィン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン[DPPE]、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン[DPPP]、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン[DPPF]、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル[BINAP]等のホスフィン類などが挙げられる。
【0035】
前記金属微粒子の平均粒径は1〜100nmが好ましい。その理由としては、該金属微粒子の平均粒径が100nmを超えると、表面積が減少し触媒活性が低下するためである。平均粒径としては、75nm以下が更に好ましく、1〜30nmが特に好ましい。
【0036】
本発明で使用する樹脂組成物における(c)金属微粒子に対する上記(b)ハイパーブランチポリマーの添加量は、上記(c)金属微粒子100質量部に対して50〜2,000質量部が好ましい。50質量部未満であると、上記金属微粒子の分散性が不充分であり、2,000質量部を超えると、有機物含有量が多くなり、物性等に不具合が生じやすくなる。より好ましくは、100〜1,000質量部である。
【0037】
[複合体]
本発明において使用する樹脂組成物において、前記ハイパーブランチポリマーと前記金属微粒子とが複合体を形成していることが好ましい。
ここで複合体とは、前記ハイパーブランチポリマーの末端のアンモニウム基の作用により、金属微粒子に接触又は近接した状態で両者が共存し、粒子状の形態を為すものであり、言い換えると、前記ハイパーブランチポリマーのアンモニウム基が金属微粒子に付着又は配位した構造を有する複合体であると表現される。
従って、本発明における「複合体」には、上述のように金属微粒子とハイパーブランチポリマーが結合して一つの複合体を形成しているものだけでなく、金属微粒子とハイパーブランチポリマーが結合部分を形成することなく、夫々独立して存在しているものも含まれていてもよい。
【0038】
ハイパーブランチポリマーと金属微粒子の複合体の形成は、ハイパーブランチポリマーと金属微粒子を予め複合化させてもよいし、本発明の製造方法で使用する樹脂組成物の調製時に同時に実施しても構わない。その方法としては、低級アンモニウム配位子によりある程度安定化した金属微粒子を合成した後にハイパーブランチポリマーにより配位子を交換する方法や、ハイパーブランチポリマーの溶液中で、金属イオンを直接還元することにより複合体を形成する方法がある。
【0039】
配位子交換法において、原料となる低級アンモニウム配位子によりある程度安定化した金属微粒子は、Jounal of Organometallic Chemistry 1996,520,143−162等に記載の方法で合成することができる。得られた金属微粒子の反応混合溶液に、ハイパーブランチポリマーを溶解し、室温(およそ25℃)又は加熱撹拌することにより目的とする金属微粒子複合体を得ることができる。
使用する溶媒としては、金属微粒子とハイパーブランチポリマーとを必要濃度以上に溶解できる溶媒であれば特に限定はされないが、具体的には、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール等のアルコール類;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類;テトラヒドロフラン(THF)、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等の環状エーテル類;アセトニトリル、ブチロニトリル等のニトリル類など及びこれらの溶媒の混合液が挙げられ、好ましくは、テトラヒドロフランが挙げられる。
金属微粒子の反応混合液と、ハイパーブランチポリマーを混合する温度は、通常0℃〜溶媒の沸点の範囲を使用することができ、好ましくは、室温(およそ25℃)〜60℃の範囲である。
なお、配位子交換法において、アミン系分散剤(低級アンモニウム配位子)以外にホスフィン系分散剤(ホスフィン配位子)を用いることによっても、あらかじめ金属微粒子をある程度安定化することができる。
【0040】
直接還元方法としては、金属イオンとハイパーブランチポリマーを溶媒に溶解し、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ポリオール等の第一級又は第二級アルコール類で還元させることにより、目的とする金属微粒子複合体を得ることができる。
ここで用いられる金属イオン源としては、上述の金属塩が使用できる。
使用する溶媒としては、金属イオンとハイパーブランチポリマーを必要濃度以上に溶解できる溶媒であれば特に限定はされないが、具体的には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール等のアルコール類;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類;テトラヒドロフラン(THF)、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等の環状エーテル類;アセトニトリル、ブチロニトリル等のニトリル類;N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等のアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類など及びこれらの溶媒の混合液が挙げられ、好ましくは、アルコール類、ハロゲン化炭化水素類、環状エーテル類が挙げられ、より好ましくは、エタノール、イソプロパノール、クロロホルム、テトラヒドロフランなどが挙げられる。
還元反応の温度は、通常0℃〜溶媒の沸点の範囲を使用することができ、好ましくは、室温(およそ25℃)〜60℃の範囲である。
【0041】
他の直接還元方法としては、金属イオンとハイパーブランチポリマーを溶媒に溶解し、水素ガス雰囲気下で反応させることにより、目的とする金属微粒子複合体を得ることができる。
ここで用いられる金属イオン源としては、上述の金属塩や、ヘキサカルボニルクロム[Cr(CO)
6]、ペンタカルボニル鉄[Fe(CO)
5]、オクタカルボニルジコバルト[Co
2(CO)
8]、テトラカルボニルニッケル[Ni(CO)
4]等の金属カルボニル錯体が使用できる。また金属オレフィン錯体や金属ホスフィン錯体、金属窒素錯体等の0価の金属錯体も使用できる。
使用する溶媒としては、金属イオンとハイパーブランチポリマーを必要濃度以上に溶解できる溶媒であれば特に限定はされないが、具体的には、エタノール、n−プロパノール等のアルコール類;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類;テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等の環状エーテル類;アセトニトリル、ブチロニトリル等のニトリル類など及びこれらの溶媒の混合液が挙げられ、好ましくは、テトラヒドロフランが挙げられる。
金属イオンとハイパーブランチポリマーを混合する温度は、通常0℃〜溶媒の沸点の範囲を使用することができる。
【0042】
また、直接還元方法として、金属イオンとハイパーブランチポリマーを溶媒に溶解し、熱分解反応させることにより、目的とする金属微粒子複合体を得ることができる。
ここで用いられる金属イオン源としては、上述の金属塩や金属カルボニル錯体やその他の0価の金属錯体、酸化銀等の金属酸化物が使用できる。
使用する溶媒としては、金属イオンとハイパーブランチポリマーを必要濃度以上に溶解できる溶媒であれば特に限定はされないが、具体的には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール等のアルコール類;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類;テトラヒドロフラン(THF)、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等の環状エーテル類;アセトニトリル、ブチロニトリル等のニトリル類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類など及びこれらの溶媒の混合液が挙げられ、好ましくはトルエンが挙げられる。
金属イオンとハイパーブランチポリマーを混合する温度は、通常0℃〜溶媒の沸点の範囲を使用することができ、好ましくは溶媒の沸点近傍、例えばトルエンの場合は110℃(加熱還流)である。
【0043】
こうして得られるハイパーブランチポリマーと金属微粒子の複合体は、再沈殿等の精製処理を経て、粉末などの固形物の形態とすることができる。
【0044】
[樹脂組成物]
本発明において紡糸材料として使用する樹脂組成物における(a)熱可塑性樹脂に対する(b)ハイパーブランチポリマー及び(c)金属微粒子の配合量は、ハイパーブランチポリマーと金属微粒子より形成された複合体として、熱可塑性樹脂100質量部に対して好ましくは0.1〜20質量部であり、特に1〜10質量部であることが好ましい。
【0045】
本発明にかかる樹脂組成物には、熱可塑性樹脂と共に一般に添加される添加剤、例えば、熱安定剤、光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤、溶融弾性改質剤、加工助剤、架橋剤、補強剤、難燃剤、消泡剤、分散剤、光拡散剤、顔料、染料、蛍光染料などを併用してもよい。
【0046】
[導電性ナノファイバーの製造方法]
<紡糸工程>
本発明の導電性ナノファイバーの製造方法における紡糸工程は、前記(a)熱可塑性樹脂、(b)ハイパーブランチポリマー、及び(c)金属微粒子を含む樹脂組成物を紡糸材料として、エレクトロスピニング法に従い、ナノファイバーを作製する工程である。実際には、前記組成物を溶媒に溶解又は分散してワニスの形態とし、これを静電紡糸してナノファイバーを作製する工程である。
【0047】
静電紡糸時に使用される前記溶媒としては、熱可塑性樹脂、並びにハイパーブランチポリマー及び金属微粒子を溶解・分散することができるものであればよく、例えばアセトン、エチルメチルケトン(MEK)、イソブチルメチルケトン(MIBK)、クロロホルム、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン、トルエン、キシレン、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、乳酸エチル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ブチルセロソルブ、エタノール、ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)、γ−ブチロラクトン、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸等が挙げられる。これら溶媒は単独で使用してもよく、2種類以上の溶媒を混合してもよい。
また上記溶媒に溶解又は分散させる濃度は任意であるが、熱可塑性樹脂、ハイパーブランチポリマー及び金属微粒子と溶媒の総質量(合計質量)に対して、熱可塑性樹脂、ハイパーブランチポリマー及び金属微粒子の濃度(固形分濃度とも称する)は1〜50質量%であり、好ましくは10〜40質量%であり、より好ましくは20〜30質量%である。
【0048】
静電紡糸には、市販のエレクトロスピニング装置を用いることができる。
紡糸条件は適宜選択され、例えば、ノズルの長さ:3〜5cm、紡糸距離(電極−コレクター間距離):5〜30cm、紡糸量:0.1〜5.0mL/時間、電極間の印加電圧:5〜40kV、である。
【0049】
上記のようにして得られるナノファイバーは、好ましくは平均直径が50〜2,000nmであり、より好ましくは100〜1,000nmである。
【0050】
<めっき工程>
本発明の導電性ナノファイバーの製造方法におけるめっき工程は、前述の<紡糸工程>で作製したナノファイバーを無電解めっき処理する工程である。
なお前述の紡糸工程にて作製されたナノファイバーは、繊維表面部(界面)に前記ハイパーブランチポリマー及び金属微粒子(これらから形成された複合体)が存在した状態にある。このため、エッチング、コンディショニング、キャタライジング、アクセラレーティングといった各処理からなるめっき前処理を必要とすることなく、エレクトロスピニング法によって得られたナノファイバーをそのまま無電解めっき処理に供することができる。
無電解めっき処理(工程)は特に限定されず、一般的に知られている何れの無電解めっき処理にて行うことができ、例えば、従来一般に知られている無電解めっき液を用い、上述の紡糸工程で得られたナノファイバーを該めっき液(浴)に浸漬する方法が一般的である。
【0051】
前記無電解めっき液は、主として金属イオン(金属塩)、錯化剤、還元剤を主に含有し、その他用途に合わせてpH調整剤、pH緩衝剤、反応促進剤(第二錯化剤)、安定剤、界面活性剤(めっき膜への光沢付与用途、被処理面の濡れ性改善用途など)などが適宜含まれてなる。
ここで無電解めっきにより形成される金属めっき膜に用いられる金属としては、鉄、コバルト、ニッケル、銅、パラジウム、銀、スズ、白金、金及びそれらの合金が挙げられ、目的に応じて適宜選択される。
また上記錯化剤、還元剤についても金属イオンに応じて適宜選択すればよい。
また無電解めっき液は市販のめっき液を使用してもよく、例えばメルテックス(株)製の無電解ニッケルめっき薬品(メルプレート(登録商標)NIシリーズ)、無電解銅めっき薬品(メルプレート(登録商標)CUシリーズ);奥野製薬工業(株)製の無電解ニッケルめっき液(ICPニコロン(登録商標)シリーズ)、無電解銅めっき液(OPC−700無電解銅M−K、ATSアドカッパーIW)、無電解スズめっき液(サブスターSN−5)、無電解金めっき液(フラッシュゴールド330、セルフゴールドOTK−IT);小島化学薬品(株)製の無電解パラジウムめっき液(パレットII)、無電解金めっき液(ディップGシリーズ、NCゴールドシリーズ);佐々木化学薬品(株)製の無電解銀めっき液(エスダイヤAG−40);日本カニゼン(株)製の無電解ニッケルめっき液(シューマー(登録商標)シリーズ、シューマー(登録商標)カニブラック(登録商標)シリーズ)、無電解パラジウムめっき液(S−KPD);ダウケミカル社製の無電解銅めっき液(キューポジット(登録商標)カッパーミックスシリーズ、サーキュポジット(登録商標)シリーズ)、無電解パラジウムめっき液(パラマース(登録商標)シリーズ)、無電解ニッケルめっき液(デュラポジット(登録商標)シリーズ)、無電解金めっき液(オーロレクトロレス(登録商標)シリーズ)、無電解スズめっき液(ティンポジット(登録商標)シリーズ);上村工業(株)製の無電解銅めっき液(スルカップ(登録商標)ELC−SP、同PSY、同PCY、同PGT、同PSR、同PEA);アトテックジャパン(株)製の無電解銅めっき液(プリントガント(登録商標)PV)等を好適に用いることができる。
【0052】
上記無電解めっき工程は、めっき浴の温度、pH、浸漬時間、金属イオン濃度、撹拌の有無や撹拌速度、空気・酸素の供給の有無や供給速度等を調節することにより、金属被膜の形成速度や膜厚を制御することができる。
得られるめっき膜厚は特に限定されないが、一般に10〜500nm程度、例えば30〜300nmとすることができる。
【0053】
このようにして作製される本発明の導電性ナノファイバーは、集合体形状(例えばマット状)を有することができる。
また導電性ナノファイバー集合体は、体積抵抗値が好ましくは1×10
4Ω・cm以下であり、1×10
2Ω・cm以下であることが望ましい。
【実施例】
【0054】
以下、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
なお、実施例において、試料の調製及び物性の分析に用いた装置及び条件は、以下の通りである。
【0055】
(1)GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)
装置:東ソー(株)製 HLC−8220GPC
カラム:昭和電工(株)製 Shodex(登録商標) KF−804L + KF−803L
カラム温度:40℃
溶媒:テトラヒドロフラン
検出器:UV(254nm)、RI
(2)
1H NMRスペクトル
装置:日本電子(株)製 JNM−L400
溶媒:CDCl
3
内部標準:テトラメチルシラン(0.00ppm)
(3)
13C NMRスペクトル
装置:日本電子(株)製 JNM−ECA700
溶媒:CDCl
3
緩和試薬:トリスアセチルアセトナートクロム(Cr(acac)
3)
基準:CDCl
3(77.0ppm)
(4)ICP発光分析(誘導結合プラズマ発光分析)
装置:(株)島津製作所製 ICPM−8500
(5)TEM(透過型電子顕微鏡)画像
装置:(株)日立ハイテクノロジーズ製 H−8000
(6)エレクトロスピニング
インフュージョンポンプ(シリンジポンプ):(有)メルクエスト製 FP−1000
高圧電源:松定プレシジョン(株)製 HR−40R0.75
(7)SEM(走査型電子顕微鏡)画像
装置:(株)キーエンス製 3Dリアルサーフェスビュー顕微鏡 VE−9800
(8)体積抵抗値測定
装置:(株)三菱化学アナリテック製 ロレスタ(登録商標)AX MCP−T370
【0056】
また使用した略号は以下のとおりである。
HPS:ハイパーブランチポリスチレン[日産化学工業(株)製 ハイパーテック(登録商標)HPS−200]
IPA:2−プロパノール
IPE:ジイソプロピルエーテル
PVDF:ポリフッ化ビニリデン[アルドリッチ社製 製品番号:427152、Mw(GPC):180,000、Mn:71,000]
PVDF/HFP:フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体[アルドリッチ社製 製品番号:427160、Mw(GPC):400,000、Mn:130,000]
PU:ポリウレタン[BASFジャパン(株)製 エラストラン(登録商標)ET385、Mw(GPC):146,000]
DMAc:N,N−ジメチルアセトアミド
DMF:N,N−ジメチルホルムアミド
THF:テトラヒドロフラン
【0057】
[製造例1]HPS−Clの製造
【化9】
500mLの反応フラスコに、塩化スルフリル[キシダ化学(株)製]27g及びクロロホルム50gを仕込み、撹拌して均一に溶解させた。この溶液を窒素気流下0℃まで冷却した。
別の300mLの反応フラスコに、ジチオカルバメート基を分子末端に有するハイパーブランチポリマーHPS15g及びクロロホルム150gを仕込み、窒素気流下均一になるまで撹拌した。
前述の0℃に冷却されている塩化スルフリル/クロロホルム溶液中に、窒素気流下、HPS/クロロホルム溶液が仕込まれた前記300mLの反応フラスコから、送液ポンプを用いて、該溶液を反応液の温度が−5〜5℃となるように60分間かけて加えた。添加終了後、反応液の温度を−5〜5℃に保持しながら6時間撹拌した。
さらにこの反応液へ、シクロヘキセン[東京化成工業(株)製]16gをクロロホルム50gに溶かした溶液を、反応液の温度が−5〜5℃となるように加えた。添加終了後、この反応液をIPA1,200gに添加してポリマーを沈殿させた。この沈殿をろ取して得られた白色粉末をクロロホルム100gに溶解し、これをIPA500gに添加してポリマーを再沈殿させた。この沈殿物を減圧ろ過し、真空乾燥して、塩素原子を分子末端に有するハイパーブランチポリマー(HPS−Cl)8.5gを白色粉末として得た(収率99%)。
得られたHPS−Clの
1H NMRスペクトルを
図1に示す。ジチオカルバメート基由来のピーク(4.0ppm、3.7ppm)が消失していることから、得られたHPS−Clは、HPS分子末端のジチオカルバメート基がほぼ全て塩素原子に置換されていることが明らかとなった。また、得られたHPS−ClのGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは14,000、分散度Mw/Mnは2.9であった。
【0058】
[製造例2]HPS−N(Me)
2OctClの製造
【化10】
凝縮器を設置した300mLの反応フラスコに、製造例1で製造したHPS−Cl4.6g(30mmol)及びクロロホルム15gを仕込み、均一になるまで撹拌した。この溶液へ、ジメチルオクチルアミン[花王(株)製 ファーミン(登録商標)DM0898]5.0g(31.5mmol)をクロロホルム7.5gに溶解させた溶液を加え、さらにIPA7.5gを加えた。この混合物を、窒素雰囲気下65℃で40時間撹拌した。
液温30℃まで冷却後、溶媒を留去した。得られた残渣を、クロロホルム60gに溶解し、この溶液をIPE290gに添加して再沈精製した。析出したポリマーを減圧ろ過し、50℃で真空乾燥して、ジメチルオクチルアンモニウム基を分子末端に有するハイパーブランチポリマー(HPS−N(Me)
2OctCl)9.3gを白色粉末として得た。
得られたHPS−N(Me)
2OctClの
13C NMRスペクトルを
図2に示す。ベンゼン環のピークと、オクチル基末端のメチル基のピークから、得られたHPS−N(Me)
2OctClは、HPS−Cl分子末端の塩素原子がほぼ定量的にアンモニウム基に置換されていることが明らかとなった。また、HPS−ClのMw(14,000)及びアンモニウム基導入率(100%)から算出されるHPS−N(Me)
2OctClの重量平均分子量Mwは28,000となった。
【0059】
[製造例3]Pd[HPS−N(Me)
2OctCl]の製造
凝縮器を設置した300mLの反応フラスコに、酢酸パラジウム[川研ファインケミカル(株)製]2.1g及びクロロホルム20gを仕込み、均一になるまで撹拌した。この溶液へ、製造例2で製造したHPS−N(Me)
2OctCl9.0gをクロロホルム135gに溶解させた溶液を、滴下ロートを使用して加えた。この滴下ロート内を、エタノール45gを使用して前記反応フラスコへ洗い込んだ。この混合物を、60℃で8時間撹拌した。
液温30℃まで冷却後、この反応混合物を0℃のIPE2,000gに添加して再沈精製した。析出したポリマーを減圧ろ過し、60℃で真空乾燥して、アンモニウム基を分子末端に有するハイパーブランチポリマーとPd粒子の複合体(Pd[HPS−N(Me)
2OctCl])9.8gを黒色粉末として得た。
ICP発光分析の結果から、得られたPd[HPS−N(Me)
2OctCl]のPd含有量は10質量%であった。また、TEM(透過型電子顕微鏡)画像から、そのPd粒子径はおよそ2〜4nmであった。
【0060】
[製造例4]HPS−NOct
3Clの製造
【化11】
還流塔を付した100mLの反応フラスコに、製造例1で製造したHPS−Cl4.6g(30mmol)、トリオクチルアミン[純正化学(株)製]10.6g(30mmol)及びクロロホルム45gを仕込み、窒素置換した。この混合物を、撹拌しながら48時間加熱還流した。
液温30℃まで冷却後、溶媒を留去した。得られた残渣を、クロロホルム150gに溶解し、0℃に冷却した。この溶液を0℃のIPE3,000gに添加して再沈精製した。析出したポリマーを減圧ろ過し、40℃で真空乾燥して、トリオクチルアンモニウム基を分子末端に有するハイパーブランチポリマー(HPS−NOct
3Cl)9.6gを淡黄色粉末として得た。
得られたHPS−NOct
3Clの
13C NMRスペクトルを
図3に示す。塩素原子が結合したメチレン基と、アンモニウム基が結合したメチレン基のピークから、得られたHPS−NOct
3Clは、HPS−Cl分子末端の塩素原子の71%がアンモニウム基に置換されていることが明らかとなった。また、HPS−ClのMw(14,000)及びアンモニウム基導入率(71%)から算出されるHPS−NOct
3Clの重量平均分子量Mwは37,000となった。
【0061】
[製造例5]Pd[HPS−NOct
3Cl]の製造
1Lの二つ口フラスコに、酢酸パラジウム[川研ファインケミカル(株)製]4.3g及びクロロホルム200gを仕込み、均一になるまで撹拌した。この溶液へ、製造例4に従って製造したHPS−NOct
3Cl18.0gをクロロホルム200gに溶解させた溶液を、滴下ロートを使用して加えた。この滴下ロート内を、エタノール100gを使用して前記反応フラスコへ洗い込んだ。この混合物を60℃で17時間撹拌した。
液温30℃まで冷却後、溶媒を留去した。得られた残渣をTHF300gに溶解し、0℃に冷却した。この溶液を0℃のIPE6,000gに添加して再沈精製した。析出したポリマーを減圧ろ過し、60℃で真空乾燥して、アンモニウム基を分子末端に有するハイパーブランチポリマーとPd粒子の複合体(Pd[HPS−NOct
3Cl])19.9gを黒色粉末として得た。
ICP発光分析の結果から、得られたPd[HPS−NOct
3Cl]のPd含有量は11質量%であった。また、TEM(透過型電子顕微鏡)画像から、そのPd粒子径はおよそ2〜4nmであった。
【0062】
[参考例1]無電解銅めっき液Aの調製
1Lのフラスコに、メルプレート(登録商標、以下同様)CU−390A[メルテックス(株)製]80mL、メルプレートCU−390B[メルテックス(株)製]80mL及びメルプレートCU−390C[メルテックス(株)製]20mLを仕込み、さらに純水を加えて溶液の総量を1Lとした。この溶液へ界面活性剤としてアデカ(登録商標)プルロニックL−34[(株)ADEKA製]0.7gを加えて、無電解銅めっき液A(Cu−A)とした。
【0063】
[参考例2]無電解銅めっき液Bの調製
1Lのフラスコに、キューポジット(登録商標、以下同様)カッパーミックス328A[ダウケミカル社製]125mL、キューポジットカッパーミックス328L[ダウケミカル社製]125mL及びキューポジットカッパーミックス328C[ダウケミカル社製]15mLを仕込み、さらに純水を加えて溶液の総量を1Lとした。この溶液へ界面活性剤としてアデカ(登録商標)プルロニックL−34[(株)ADEKA製]0.7gを加えて、無電解銅めっき液B(Cu−B)とした。
【0064】
[参考例3]無電解銅めっき液Cの調製
500mLのフラスコに、イオン交換水200mL、スルカップ(登録商標)PSY−1A[上村工業(株)製]25mL、スルカップ(登録商標)PSY−1B[上村工業(株)製]10mL及び18.5質量%ホルムアルデヒド水溶液0.5mLを仕込み、さらにイオン交換水を加えて溶液の総量を500mLとした。この溶液へ界面活性剤としてアデカ(登録商標)プルロニックL−34[(株)ADEKA製]0.05gを加えて、無電解銅めっき液C(Cu−C)とした。
【0065】
[参考例4]無電解ニッケルめっき液Aの調製
1Lのフラスコに、メルプレート(登録商標、以下同様)NI−6522LF1[メルテックス(株)製]50mL、メルプレートNI−6522LF2[メルテックス(株)製]150mL及びメルプレートNI−6522LFアディティブ[メルテックス(株)製]5mLを仕込み、さらに純水を加えて溶液の総量を1Lとした。この溶液を無電解ニッケルめっき液A(Ni−A)とした。
【0066】
[参考例5]無電解ニッケルめっき液Bの調製
200mLのフラスコに、カニゼン(登録商標)ブルーシューマー[日本カニゼン(株)製]70mLを仕込み、さらに純水を加えて溶液の総量を100mLとした。この溶液へ界面活性剤として塩化ベンザルコニウム[東京化成工業(株)製]0.01gを加えて、無電解ニッケルめっき液B(Ni−B)とした。
【0067】
[参考例6]無電解スズめっき液Aの調製
ティンポジット(登録商標)LT−34C[ダウケミカル社製]を、無電解スズめっき液A(Sn−A)とした。
【0068】
[実施例1]
PVDF100質量部、製造例3に従って製造したPd[HPS−N(Me)
2OctCl]5質量部(Pdとして0.5質量部)、及びDMF/アセトン混合液(質量比9:1)300質量部を均一に混合し、樹脂組成物(紡糸材料)を調製した。
この組成物を、エレクトロスピニング装置を用いて表1に記載の条件で紡糸し、マット上のナノファイバーの集合体(以下、ナノファイバーマットと称する)を作製した。得られたナノファイバーマットをSEMで観察し、ナノファイバー径(平均直径)を算出した。ナノファイバー径は、異なる5箇所のSEM画像から無作為に選択した100本のナノファイバーの直径を計測し、その平均値とした。結果を表1に示す。
次に、このナノファイバーマットを、表1に記載のめっき液に表1に記載の時間浸漬した。その後取り出したナノファイバーマットを水洗し、風乾した。得られた無電解めっき処理したナノファイバーマットのナノファイバー径を、上記同様に算出した。また、ナノファイバーマットの体積抵抗値を測定した。結果を表1に併せて示す。また、得られた無電解めっき処理したナノファイバーマットのSEM画像を
図4に示す。
【0069】
[実施例2]
PVDF100質量部、製造例5に従って製造したPd[HPS−NOct
3Cl]4.5質量部(Pdとして0.5質量部)、及びDMAc/アセトン混合液(質量比7:3)300質量部を均一に混合し、樹脂組成物を調製した。
この組成物を用い、表1に記載のめっき液を用いた以外は実施例1と同様に操作し、評価した。結果を表1に併せて示す。
【0070】
[実施例3]
めっき液を変更した以外は実施例2と同様に操作し、評価した。結果を表1に併せて示す。
【0071】
[実施例4]
PU100質量部、製造例3に従って製造したPd[HPS−N(Me)
2OctCl]5質量部(Pdとして0.5質量部)、及びDMF614質量部を均一に混合し、樹脂組成物を調製した。
この組成物を用い、表1に記載のめっき液を用いた以外は実施例1と同様に操作し、評価した。結果を表1に併せて示す。
【0072】
[実施例5]
PU100質量部、製造例5に従って製造したPd[HPS−NOct
3Cl]4.5質量部(Pdとして0.5質量部)、及びDMF614質量部を均一に混合し、樹脂組成物を調製した。
この組成物を用い、表1に記載のめっき液を用いた以外は実施例1と同様に操作し、評価した。結果を表1に併せて示す。
【0073】
[実施例6]
PVDF/HFP100質量部、製造例3に従って製造したPd[HPS−N(Me)
2OctCl]5質量部(Pdとして0.5質量部)、及びDMF400質量部を均一に混合し、樹脂組成物を調製した。
この組成物を用い、表1に記載のめっき液を用いた以外は実施例1と同様に操作し、評価した。結果を表1に併せて示す。
【0074】
[実施例7]
実施例6で得られたナノファイバーマットを、参考例6で調製した無電解スズめっき液A(Sn−A)に、20℃で5分間浸漬した。その後取り出したナノファイバーマットを水洗し、風乾した。得られた無電解めっき(置換型)処理したナノファイバーマットのナノファイバー径を、上記同様に算出した。また、ナノファイバーマットの体積抵抗値を測定した。結果を表1に併せて示す。また、得られた無電解めっき処理したナノファイバーマットのSEM画像を
図5に示す。
【0075】
[比較例1]
PVDF100質量部、塩化パラジウム0.83質量部(Pdとして0.5質量部)、及びDMF300質量部を均一に混合し、樹脂組成物を調製した。
この組成物を用いた以外は実施例1と同様に操作したところ、金属めっき膜は形成されなかった。
【0076】
【表1】
【0077】
表1に示すように、実施例1乃至実施例7では、めっき金属種やめっき液の種類に囚われることなく、簡便な方法にて1×10
4Ω・cm以下という低い体積抵抗値を有する導電性ナノファイバーの集合体(ナノファイバーマット)を得ることができた。
一方、塩化パラジウムをPVDFに配合した紡糸材料を用いた比較例1では、銅めっきがなされず、導電性ナノファイバーを得ることができなかった。