(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
厚みがd1のシート状の前記アクリル系樹脂層において、当該アクリル系樹脂層を構成する樹脂のガラス転移温度に対して40℃高温にて、当該アクリル系樹脂層を、300mm/secの速度で200%延伸させたときに、0.05mm以上のクラックが生じず、且つ以下の式1を満たす請求項1又は2に記載の加飾用複層シート。
<数1> (H2/d2)―(H1/d1)<1.20 (式1)
(式中のH1は延伸前の前記アクリル系樹脂層のヘイズ値であり、d1は0.2mmである延伸前の前記アクリル系樹脂層の厚みであり、H2は延伸後の前記アクリル系樹脂層のヘイズ値であり、d2は延伸後の前記アクリル系樹脂層の厚みである。)
前記基材層と対向しない前記アクリル系樹脂層の主面におけるJIS Z8741による60°光沢度が、80以上、95以下である請求項1〜8のいずれか1項に記載の加飾用複層シート。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を適用した実施形態の一例について説明する。なお、以降の図における各部材のサイズや比率は、説明の便宜上のものであり、これに限定されるものではない。また、本明細書で特定する数値は、後述する実施例に記載した方法により測定したときに得られる値を示す。例えば、重量平均分子量Mwおよび数平均分子量Mnは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)で測定した標準ポリスチレン換算値であり、後述する実施例に記載した方法により測定したときに得られる値を示している。また「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートを意味する。
【0017】
本発明に係る加飾用複層シート(以下、「複層シート」ともいう)は、アクリル系樹脂層と基材層とを含む積層体からなる。
図1に示すように、複層シート1は、アクリル系樹脂層2と基材層3の2層から構成することができる。また、複層シートは、一対の基材層の間にアクリル系樹脂層が挟持された積層体を用いてもよい。基材層とアクリル系樹脂層は、直接積層されていても、接着層を介して積層されていてもよく、他の層を介して積層されていてもよい。複層シートは、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、アクリル系樹脂層と基材層以外の層を更に積層することが可能であり、複層シートの積層数に関しては特に制限はない。アクリル系樹脂層は、最外層に用いてもよいし、内層に用いてもよい。また、複層シートの主面全面に亘ってアクリル系樹脂層が設けられている必要は無く、その一部に設けられていてもよい。また、アクリル系樹脂層は、単層で用いても複数層を積層して用いてもよい。基材層についても同様である。
【0018】
アクリル系樹脂層2は、メタクリル系樹脂(A)およびブロック共重合体(B)を含むアクリル系樹脂組成物を用いて形成されたものである。ブロック共重合体(B)は、メタクリル酸エステルに由来する構造単位を含むメタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)およびアクリル酸エステルに由来する構造単位を含むアクリル酸エステル重合体ブロック(b2)を其々独立に、一分子中に1又は複数有する。即ち、本発明のアクリル系樹脂組成物は、メタクリル系樹脂(A)と、メタクリルエステル重合体ブロックとアクリルエステル重合体ブロックを有するブロック共重合体(B)とを含むものである。アクリル系樹脂組成物は、熱可塑性重合体組成物である。
【0019】
メタクリル系樹脂(A)は、メタクリル酸メチルに由来する構造単位を80質量%以上、好ましくは90質量%以上有する。換言すると、メタクリル系樹脂(A)のメタクリル酸メチル以外の単量体に由来する構造単位を20質量%以下、好ましくは10質量%以下とする。メタクリル系樹脂(A)は、メタクリル酸メチルのみを単量体とする重合体であってもよい。
【0020】
かかるメタクリル酸メチル以外の単量体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸n−へキシル、アクリル酸2−エチルへキシル、アクリル酸ペンタデシル、アクリル酸ドデシル;アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−エトキシエチル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸アリル;アクリル酸シクロへキシル、アクリル酸ノルボルネニル、アクリル酸イソボルニルなどのアクリル酸エステル;メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸イソアミル、メタクリル酸n−へキシル、メタクリル酸2−エチルへキシル、メタクリル酸ペンタデシル、メタクリル酸ドデシル;メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェノキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−エトキシエチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸アリル;メタクリル酸シクロへキシル、メタクリル酸ノルボルニル、メタクリル酸イソボルニルなどのメタクリル酸メチル以外のメタクリル酸エステル;アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、マレイン酸、イタコン酸などの不飽和カルボン酸;エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン、1−オクテンなどのオレフィン;ブタジエン、イソプレン、ミルセンなどの共役ジエン;スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物;アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、ビニルピリジン、ビニルケトン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどが挙げられる。
【0021】
メタクリル系樹脂(A)の立体規則性は、特に制限されず、例えば、イソタクチック、ヘテロタクチック、シンジオタクチックなどの立体規則性を有するものを用いてもよい。
【0022】
メタクリル系樹脂(A)の重量平均分子量Mw(A)は、その値が小さいと、得られるアクリル系樹脂組成物から得られる成形品の耐衝撃性や靭性が低下する傾向がある。一方、Mw(A)が大きいとアクリル系樹脂組成物の流動性が低下し成形加工性が低下する傾向がある。これらの観点から、Mw(A)は、30,000以上、180,000以下とすることが好ましい。また、Mw(A)は、40,000以上がより好ましく、50,000以上が特に好ましい。また、Mw(A)は、150,000以下がより好ましく、130,000以下が特に好ましい。
【0023】
メタクリル系樹脂(A)の重量平均分子量Mw(A)と数平均分子量Mn(A)の比、Mw(A)/Mn(A)(以下、「分子量分布」とも称する)が小さいと、アクリル系樹脂組成物の成形加工性が低下する傾向がある。一方、Mw(A)/Mn(A)が大きいと、アクリル系樹脂組成物から得られる成形品の耐衝撃性が低下し、脆くなる傾向がある。かかる観点から、Mw(A)/Mn(A)は、1.03以上、2.6以下とすることが好ましい。Mw(A)/Mn(A)は、1.05以上がより好ましく、1.2以上が特に好ましい。また、Mw(A)/Mn(A)は、2.3以下がより好ましく、2.0以下が特に好ましい。メタクリル系樹脂(A)の分子量や分子量分布は、重合開始剤および連鎖移動剤の種類や量などを調整することによって制御できる。
【0024】
メタクリル系樹脂(A)は、メタクリル酸メチルを80質量%以上含む単量体を単独重合、若しくはメタクリル酸メチル以外の単量体と共重合することによって得られる。メタクリル系樹脂(A)として、市販品を用いてもよい。例えば「パラペットH1000B」(MFR:22g/10分(230℃、37.3N))、「パラペットGF」(MFR:15g/10分(230℃、37.3N))、「パラペットEH」(MFR:1.3g/10分(230℃、37.3N))、「パラペットHRL」(MFR:2.0g/10分(230℃、37.3N))、「パラペットHRS」(MFR:2.4g/10分(230℃、37.3N))および「パラペットG」(MFR:8.0g/10分(230℃、37.3N))[いずれも商品名、クラレ社製]などが挙げられる。
【0025】
メタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)は、メタクリル酸エステルに由来する構造単位を主たる構成単位とするものである。メタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)におけるメタクリル酸エステルに由来する構造単位の割合は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、特に好ましくは98質量%以上である。
【0026】
かかるメタクリル酸エステルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸イソアミル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ペンタデシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェノキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−メトキシエチル、メタクリル酸グリシジルおよびメタクリル酸アリルなどを挙げることができる。これらの中でも、透明性および耐熱性を向上させる観点から、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸イソボルニルなどのメタクリル酸アルキルエステルが好ましく、メタクリル酸メチルがより好ましい。メタクリル酸エステルは、1種単独または2種以上を組み合わせて重合することによって、メタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)を形成できる。
【0027】
メタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)は、本発明の目的および効果の妨げにならない限りにおいて、メタクリル酸エステル以外の単量体に由来する構造単位を含んでもよい。メタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)に含まれるメタクリル酸エステル以外の単量体に由来する構造単位の割合は、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下、特に好ましくは2質量%以下の範囲である。
【0028】
かかるメタクリル酸エステル以外の単量体としては、例えば、アクリル酸エステル、不飽和カルボン酸、芳香族ビニル化合物、オレフィン、共役ジエン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸ビニル、ビニルピリジン、ビニルケトン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどが挙げられる。メタクリル酸エステル以外の単量体は、1種単独または2種以上を組み合わせて、前述のメタクリル酸エステルと伴に共重合することによって、メタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)を形成できる。
【0029】
メタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)は、屈折率が1.485〜1.495の範囲となる重合体で構成されていることが、アクリル系樹脂層の透明性を高める観点から好ましい。
【0030】
メタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)の単一ユニットの重量平均分子量Mw(b1)は、5,000以上、150,000以下とすることが好ましい。また、単一ユニットの重量平均分子量の下限は、8,000以上がより好ましく、12,000以上が更に好ましい、また、上限は、120,000以下がより好ましく、100,000以下が更に好ましい。
【0031】
ブロック共重合体(B)において、一分子中にメタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)が複数ある場合、其々のメタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)を構成する構造単位の組成比や分子量は、相互に同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0032】
メタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)の一分子(一のポリマー鎖)あたりの重量平均分子量Mw(b1-total)は、12,000以上、160,000以下とすることが好ましい。Mw(b1-total)の下限は15,000以上がより好ましく、20,000以上が更に好ましく、Mw(b1-total)の上限は120,000以下がより好ましく、100,000以下が更に好ましい。ブロック共重合体(B)が、一分子中にメタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)を1つのみ有する場合は、該メタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)の単一ユニットの重量平均分子量Mw(b1)がMw(b1-total)となる。また、ブロック共重合体(B)が、メタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)を一分子中に複数有する場合は、其々のメタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)の重量平均分子量の合計がMw(b1-total)となる。また、複数の結合形態の異なるメタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)をブレンドした場合には、其々のメタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)に対してブレンドした比率を乗じ、これらを合計することによりMw(b1-total)が求められる。
【0033】
本発明に用いるアクリル系樹脂組成物においては、Mw(A)のMw(b1-total)に対する比、即ちMw(A)/Mw(b1-total)は、0.3以上、4.0以下とする。Mw(A)/Mw(b1-total)の下限は、好ましくは1.0以上、より好ましくは1.5以上であり、上限は好ましくは3.5以下、より好ましくは3.0以下である。Mw(A)/Mw(b1)が0.3を下回ると、アクリル系樹脂組成物から作製した成形品の耐衝撃性が低下する傾向、および表面平滑性が低下する傾向がある。一方、Mw(A)/Mw(b1)が大きすぎると、アクリル系樹脂組成物から作製した成形品の表面平滑性およびヘイズの温度依存性が悪化する傾向がある。Mw(A)/Mw(b1)を0.3以上、4.0以下とすることにより、ブロック共重合体(B)のメタクリル系樹脂(A)中での分散粒径を小さくし、温度変化によらず低いヘイズを示すことが可能となり、その結果として広い温度範囲においてヘイズの変化が小さくなるものと考察している。
【0034】
ブロック共重合体(B)におけるメタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)の割合は、透明性、柔軟性、成形加工性および表面平滑性の観点から、好ましくは10質量%以上、70質量%以下である。より好ましくは25質量%以上、60質量%以下である。ブロック共重合体(B)におけるメタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)の割合が10質量%以上、70質量%以下にあると、本発明のアクリル系樹脂組成物またはそれからなる成形品の透明性、可撓性、耐屈曲性、耐衝撃性、柔軟性などに優れる。ブロック共重合体(B)にメタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)が複数含まれる場合には、上記の割合は、すべてのメタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)の合計質量に基づいて算出する。
【0035】
アクリル酸エステル重合体ブロック(b2)は、アクリル酸エステルに由来する構造単位を主たる構成単位とするものである。アクリル酸エステル重合体ブロック(b2)におけるアクリル酸エステルに由来する構造単位の割合は、好ましくは45質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。
【0036】
かかるアクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ペンタデシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸アリルなどが挙げられる。アクリル酸エステルは、1種単独または2種以上を組み合わせて重合することによって、アクリル酸エステル重合体ブロック(b2)を形成できる。
【0037】
アクリル酸エステル重合体ブロック(b2)は、本発明の目的および効果の妨げにならない限りにおいて、アクリル酸エステル以外の単量体に由来する構造単位を含んでもよい。アクリル酸エステル重合体ブロック(b2)に含まれるアクリル酸エステル以外の単量体に由来する構造単位の割合は、好ましくは55質量%以下、より好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。
【0038】
かかるアクリル酸エステル以外の単量体としては、メタクリル酸エステル、不飽和カルボン酸、芳香族ビニル化合物、オレフィン、共役ジエン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸ビニル、ビニルピリジン、ビニルケトン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどが挙げられる。アクリル酸エステル以外の単量体は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて、前述のアクリル酸エステルと伴に共重合することによって、アクリル酸エステル重合体ブロック(b2)を形成できる。
【0039】
アクリル酸エステル重合体ブロック(b2)は、本発明に用いるアクリル系樹脂組成物の透明性を向上させる観点などから、アクリル酸アルキルエステルと(メタ)アクリル酸芳香族エステルとからなることが好ましい。
アクリル酸アルキルエステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ドデシルなどが挙げられる。これらのうち、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルが好ましい。
【0040】
(メタ)アクリル酸芳香族エステルは、アクリル酸芳香族エステルまたはメタクリル酸芳香族エステルを意味し、芳香環を含む化合物が(メタ)アクリル酸にエステル結合して成る。かかる(メタ)アクリル酸芳香族エステルとしては、例えば、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸スチリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェノキシエチル、メタクリル酸スチリルなどが挙げられる。中でも、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸ベンジルが好ましい。
アクリル酸エステル重合体ブロック(b2)が、アクリル酸アルキルエステルと(メタ)アクリル酸芳香族エステルとからなる場合、該アクリル酸エステル重合体ブロック(b2)は、アクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位50〜90質量%と(メタ)アクリル酸芳香族エステルに由来する構造単位50〜10質量%とを含むことが好ましく、アクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位60〜80質量%と(メタ)アクリル酸芳香族エステルに由来する構造単位40〜20質量%とを含むことがより好ましい。
【0041】
アクリル酸エステル重合体ブロック(b2)は、屈折率が1.485〜1.495の範囲となる重合体で構成されていることが、アクリル系樹脂層の透明性を高める観点から好ましい。
【0042】
アクリル酸エステル重合体ブロック(b2)の単一ユニットの重量平均分子量Mw(b2)は、5,000以上、120,000以下とすることが好ましい。また、単一ユニットの重量平均分子量の下限は、15,000以上がより好ましく、30,000以上が特に好ましく、上限は110,000以下がより好ましく、100,000以下が特に好ましい。
【0043】
ブロック共重合体(B)中にアクリル酸エステル重合体ブロック(b2)のユニットが複数ある場合、それぞれのアクリル酸エステル重合体ブロック(b2)を構成する構造単位の組成比や分子量は、相互に同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0044】
アクリル酸エステル重合体ブロック(b2)の合計の重量平均分子量Mw(b2-total)は、30,000以上、140,000以下とする。Mw(b2-total)の下限は、40,000以上が好ましく、50,000以上がより好ましい。また、Mw(b2-total)の上限は、110,000以下が好ましく、100,000以下がより好ましい。Mw(b2-total)が小さいと、アクリル系樹脂組成物から作製した成形品の耐衝撃性が低下する傾向がある。一方、Mw(b2-total)が大きいと、アクリル系樹脂組成物から作製した成形品の表面平滑性が低下する傾向がある。ブロック共重合体(B)が、一分子中にアクリル酸エステル重合体ブロック(b2)を1つのみ有する場合は、該アクリル酸エステル重合体ブロック(b2)の単一ユニットの重量平均分子量Mw(b2)がMw(b2-total)となる。また、ブロック共重合体(B)が、アクリル酸エステル重合体ブロック(b2)を一分子中に複数有する場合は、其々のアクリル酸エステル重合体ブロック(b2)の重量平均分子量の合計がMw(b2-total)となる。また、複数の結合形態の異なるメタクリル酸エステル重合体ブロック(b2)をブレンドした場合には、其々のメタクリル酸エステル重合体ブロック(b2)のブレンド比率を乗じ、これらを合計することによりMw(b1-total)が求められる。
【0045】
なお、メタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)の重量平均分子量およびアクリル酸エステル重合体ブロック(b2)の重量平均分子量は、ブロック共重合体(B)を製造する過程において、重合中および重合後にサンプリングを行なって測定した中間生成物および最終生成物(ブロック共重合体(B))の重量平均分子量から算出される値である。
【0046】
ブロック共重合体(B)におけるアクリル酸エステル重合体ブロック(b2)の割合は、透明性、柔軟性、成形加工性および表面平滑性の観点から、好ましくは10質量%以上、60質量%以下、より好ましくは20質量%以上、55質量%以下である。ブロック共重合体(B)におけるアクリル酸エステル重合体ブロック(b2)の割合が10質量%以上、60質量%以下の範囲にあると、本発明のアクリル系樹脂組成物またはそれからなる成形品の耐衝撃性、柔軟性などに優れる。ブロック共重合体(B)が一分子中にアクリル酸エステル重合体ブロック(b2)を複数含む場合には、上記の割合は、すべてのアクリル酸エステル重合体ブロック(b2)の合計質量に基づいて算出する。
【0047】
ブロック共重合体(B)のメタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)とアクリル酸エステル重合体ブロック(b2)との結合形態は、特に限定されない。例えば、メタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)の一末端にアクリル酸エステル重合体ブロック(b2)の一末端が繋がったもの((b1)−(b2)構造のジブロック共重合体);メタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)の両末端のそれぞれにアクリル酸エステル重合体ブロック(b2)の一末端が繋がったもの((b2)−(b1)−(b2)構造のトリブロック共重合体);アクリル酸エステル重合体ブロック(b2)の両末端のそれぞれにメタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)の一末端が繋がったもの((b1)−(b2)−(b1)構造のトリブロック共重合体)などのメタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)とアクリル酸エステル重合体ブロック(b2)とが直列に繋がった構造のブロック共重合体が挙げられる。
【0048】
また、複数の(b1)−(b2)構造のブロック共重合体の一末端が繋がって放射状構造を成したブロック共重合体([(b1)−(b2)−]nX構造);複数の(b2)−(b1)構造のブロック共重合体の一末端が繋がって放射状構造を成したブロック共重合体([(b2)−(b1)−]nX構造);複数の(b1)−(b2)−(b1)構造のブロック共重合体の一末端が繋がって放射状構造を成したブロック共重合体([(b1)−(b2)−(b1)−]nX構造);複数の(b2)−(b1)−(b2)構造のブロック共重合体の一末端が繋がって放射状構造を成したブロック共重合体([(b2)−(b1)−(b2)−]nX構造)などの星型ブロック共重合体や、分岐構造を有するブロック共重合体などが挙げられる。なお、ここでXはカップリング剤残基を表す。
これらのうち、ジブロック共重合体、トリブロック共重合体、星型ブロック共重合体が好ましく、(b1)−(b2)構造のジブロック共重合体、(b1)−(b2)−(b1)構造のトリブロック共重合体、[(b1)−(b2)−]nX構造の星形ブロック共重合体、[(b1)−(b2)−(b1)−]nX構造の星形ブロック共重合体がより好ましい。
【0049】
また、ブロック共重合体(B)は、メタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)およびアクリル酸エステル重合体ブロック(b2)以外の重合体ブロック(b3)を有するものであってもよい。
重合体ブロック(b3)を構成する主たる構造単位はメタクリル酸エステルおよびアクリル酸エステル以外の単量体に由来する構造単位である。かかる単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン、1−オクテンなどのオレフィン;ブタジエン、イソプレン、ミルセンなどの共役ジエン;スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物;酢酸ビニル、ビニルピリジン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ビニルケトン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン、アクリルアミド、メタクリルアミド、ε−カプロラクトン、バレロラクトンなどを挙げることができる。
【0050】
かかるブロック共重合体(B)における、メタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)、アクリル酸エステル重合体ブロック(b2)および重合体ブロック(b3)の結合形態は特に限定されない。メタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)、アクリル酸エステル重合体ブロック(b2)および重合体ブロック(b3)からなるブロック共重合体(B)の結合形態としては、例えば、(b1)−(b2)−(b1)−(b3)構造のブロック共重合体、(b3)−(b1)−(b2)−(b1)−(b3)構造のブロック共重合体などが挙げられる。ブロック共重合体(B)中に重合体ブロック(b3)が複数ある場合、それぞれの重合体ブロック(b3)を構成する構造単位の組成比や分子量は、相互に同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0051】
ブロック共重合体(B)は、必要に応じて、分子鎖中または分子鎖末端に水酸基、カルボキシル基、酸無水物、アミノ基などの官能基を有していてもよい。
【0052】
ブロック共重合体(B)の重量平均分子量Mw(B)は、好ましくは52,000以上、400,000以下、より好ましくは60,000以上、300,000以下である。
ブロック共重合体(B)の重量平均分子量が小さいと、溶融押出成形において十分な溶融張力を保持できず、良好な板状成形体が得られにくく、また得られた板状成形体の破断強度などの力学物性が低下する傾向がある。一方、ブロック共重合体(B)の重量平均分子量が大きいと、溶融樹脂の粘度が高くなり、溶融押出成形で得られる板状成形体の表面に微細なシボ調の凹凸や未溶融物(高分子量体)に起因するブツが発生し、良好な板状成形体が得られにくい傾向がある。
【0053】
また、ブロック共重合体(B)の分子量分布は、好ましくは1.0以上、2.0以下、より好ましくは1.0以上、1.6以下である。このような範囲内に分子量分布があることにより、本発明のアクリル系樹脂組成物からなる成形品において、ブツの発生原因となる未溶融物の含有量を極めて少量とすることができる。
【0054】
ブロック共重合体(B)の屈折率は、好ましくは1.485〜1.495、より好ましくは1.487〜1.493である。屈折率が1.485〜1.495の範囲にあると、アクリル系樹脂層の透明性が高くなる。なお、本明細書で「屈折率」とは、後述する実施例のとおり、測定波長587.6nm(d線)で測定した値を意味する。
【0055】
ブロック共重合体(B)の製造方法は、特に限定されず、公知の手法に準じた方法を採用することができる。例えば、各重合体ブロックを構成する単量体をリビング重合する方法が一般に使用される。このようなリビング重合の手法としては、例えば、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤として用いアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩などの鉱酸塩の存在下でアニオン重合する方法、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤として用い有機アルミニウム化合物の存在下でアニオン重合する方法、有機希土類金属錯体を重合開始剤として用い重合する方法、α−ハロゲン化エステル化合物を開始剤として用い銅化合物の存在下ラジカル重合する方法などが挙げられる。また、多価ラジカル重合開始剤や多価ラジカル連鎖移動剤を用いて、各ブロックを構成するモノマーを重合させ、本発明に用いられるブロック共重合体(B)を含有する混合物として製造する方法なども挙げられる。これらの方法のうち、特に、ブロック共重合体(B)が高純度で得られ、また分子量や組成比の制御が容易であり、且つ経済的であることから、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤として用い、有機アルミニウム化合物の存在下でアニオン重合する方法が好ましい。
【0056】
本発明に用いるアクリル系樹脂組成物は、メタクリル系樹脂(A)10〜99質量部とブロック共重合体(B)90〜1質量部を含む。好ましくはメタクリル系樹脂(A)55〜90質量部とブロック共重合体(B)45〜10質量部を含み、より好ましくはメタクリル系樹脂(A)70〜90質量部とブロック共重合体(B)30〜10質量部を含む。
アクリル系樹脂組成物におけるメタクリル系樹脂(A)の含有量がブロック共重合体(B)に対して少ないと、Tダイを用いた溶融押出成形により得られるシートの表面硬度が低下する傾向がある。
【0057】
本発明に用いるアクリル系樹脂組成物に、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて各種の添加剤、例えば、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、加工助剤、帯電防止剤、酸化防止剤、着色剤、耐衝撃助剤などを添加してもよい。なお、本発明の加飾用複層シートの力学物性および表面硬度の観点から発泡剤、充填剤、艶消し剤、光拡散剤、軟化剤や可塑剤は多量に添加しないことが好ましい。
【0058】
酸化防止剤は、酸素存在下においてそれ単体で樹脂の酸化劣化防止に効果を有するものである。例えば、リン系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤などが挙げられる。酸化防止剤は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、着色による光学特性の劣化防止効果の観点から、リン系酸化防止剤やヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましく、リン系酸化防止剤とヒンダードフェノール系酸化防止剤との併用がより好ましい。
リン系酸化防止剤とヒンダードフェノール系酸化防止剤とを併用する場合、その割合は特に制限されないが、リン系酸化防止剤/ヒンダードフェノール系酸化防止剤の質量比で、下限が1/5以上が好ましく、1/2以上がより好ましく、上限が2/1以下が好ましく、1/1以下がより好ましい。
【0059】
リン系酸化防止剤としては、2,2−メチレンビス(4,6−ジt−ブチルフェニル)オクチルホスファイト(旭電化社製;商品名:アデカスタブHP−10)、トリス(2,4−ジt−ブチルフェニル)ホスファイト(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製;商品名:IRUGAFOS168)などが挙げられる。
【0060】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製;商品名IRGANOX1010)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製;商品名IRGANOX1076)、3,9−ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン(ADEKA社製;商品名:アデカスタブPEP−36)などが挙げられる。
【0061】
熱劣化防止剤は、実質上無酸素の状態下で高熱にさらされたときに生じるポリマーラジカルを捕捉することによって樹脂の熱劣化を防止できるものである。
該熱劣化防止剤としては、2−t−ブチル−6−(3’−t−ブチル−5’−メチル−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート(住友化学社製;商品名スミライザーGM)、2,4−ジ−t−アミル−6−(3’,5’−ジ−t−アミル−2’−ヒドロキシ−α−メチルベンジル)フェニルアクリレート(住友化学社製;商品名スミライザーGS)などが挙げられる。
【0062】
紫外線吸収剤は、紫外線を吸収する能力を有する化合物である。紫外線吸収剤は、主に光エネルギーを熱エネルギーに変換する機能を有すると言われる化合物である。
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン類、ベンゾトリアゾール類、トリアジン類、ベンゾエート類、サリシレート類、シアノアクリレート類、蓚酸アニリド類、マロン酸エステル類、ホルムアミジン類などが挙げられる。これらの中でも、ベンゾトリアゾール類、アニリド類が好ましい。紫外線吸収剤は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0063】
ベンゾトリアゾール類としては、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)6−(2H−ベンゾトリアゾール−イル)フェノール](旭電化工業社製;商品名アデカスタブLA−31)、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製;商品名TINUVIN329)、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製;商品名TINUVIN234)などが挙げられる。
アニリド類としては、2−エチル−2’−エトキシ−オキサルアニリド(クラリアントジャパン社製;商品名サンデユボアVSU)などが挙げられる。
これら紫外線吸収剤のうち、紫外線被照による樹脂劣化が抑えられるという観点からベンゾトリアゾール類がもっとも好ましく用いられる。
【0064】
光安定剤は、主に光による酸化で生成するラジカルを捕捉する機能を有すると言われる化合物である。好適な光安定剤としては、2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン骨格を持つ化合物などのヒンダードアミン類が挙げられる。
【0065】
高分子加工助剤は、アクリル系樹脂組成物を成形する際、厚さ精度および薄膜化に効果を発揮する化合物である。高分子加工助剤は、通常、乳化重合法によって製造することができる、0.05〜0.5μmの粒子径を有する重合体粒子である。
該重合体粒子は、単一組成比および単一極限粘度の重合体からなる単層粒子であってもよいし、また組成比または極限粘度の異なる2種以上の重合体からなる多層粒子であってもよい。この中でも、内層に低い極限粘度を有する重合体層を有し、外層に5dl/g以上の高い極限粘度を有する重合体層を有する2層構造の粒子が好ましいものとして挙げられる。
【0066】
高分子加工助剤は、極限粘度が3〜6dl/gであることが好ましい。極限粘度が小さすぎると成形性の改善効果が低い。極限粘度が大きすぎるとアクリル系樹脂組成物の溶融流動性の低下を招きやすい。
【0067】
また、本発明に用いるアクリル系樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、メタクリル系樹脂(A)およびブロック共重合体(B)以外の他の重合体と混合して用いることができる。かかる他の重合体としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリノルボルネンなどのポリオレフィン樹脂;エチレン系アイオノマー;ポリスチレン、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ハイインパクトポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、AAS樹脂、ACS樹脂、MBS樹脂などのスチレン系樹脂;メチルメタクリレート−スチレン共重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ポリアミドエラストマーなどのポリアミド;ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリアセタール、ポリフッ化ビニリデン、ポリウレタン、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、シリコーン変性樹脂;コア-シェル型アクリルゴム、シリコーンゴム;SEPS、SEBS、SISなどのスチレン系熱可塑性エラストマー;IR、EPR、EPDMなどのオレフィン系ゴムなどが挙げられる。
【0068】
本発明に用いるアクリル系樹脂組成物を調製する方法は特に制限されないが、該アクリル系樹脂組成物を構成する各成分の分散性を高めるため、例えば、溶融混練して混合する方法が推奨される。メタクリル系樹脂(A)およびブロック共重合体(B)を溶融混練する方法では、必要に応じてこれらと添加剤とを同時に混合してもよいし、メタクリル系樹脂(A)を、添加剤とともに混合後、ブロック共重合体(B)と混合してもよい。混合操作は、例えば、ニ一ダールーダー、押出機、ミキシングロール、バンバリーミキサーなどの既知の混合または混練装置を使用して行なうことができる。特に、メタクリル系樹脂(A)とブロック共重合体(B)の混練性、相溶性を向上させる観点から、二軸押出機を使用することが好ましい。混合・混練時の温度は、使用するメタクリル系樹脂(A)、ブロック共重合体(B)等の溶融温度などに応じて適宜調節するのがよく、通常110℃〜300℃の範囲内の温度で混合するとよい。二軸押出機を使用し溶融混練する場合、着色抑制の観点から、ベントを使用し、減圧下での溶融混練および、あるいは窒素気流下での溶融混練を行うことが好ましい。このようにして、本発明のアクリル系組成物を、ペレット、粉末などの任意の形態で得ることができる。ペレット、粉末などの形態のアクリル系組成物は、成形材料として使用するのに好適である。
また、ブロック共重合体(B)を、メタクリル系樹脂(A)の単量体単位であるアクリル系モノマーとトルエン等の溶媒の混合溶液に溶解し、該アクリル系モノマーを重合することにより、ブロック共重合体(B)を含む、本発明に用いられるアクリル系樹脂組成物を調製することもできる。
【0069】
本発明の複層シートの基材層は、他の熱可塑性樹脂層または金属および/または金属酸化物よりなる層が少なくとも1層、直接または接着層を介して設けられているものである。また、本発明の複層シートは、前述の本発明の加飾用複層シートの少なくとも一方の面に熱可塑性樹脂、木製基材、ケナフなどの非木質繊維からなる基材層が設けられてなるものであってもよい。
【0070】
本発明の複層シートの厚さは、500μm以下であることが好ましい。500μm以下とすることにより、ラミネート性、ハンドリング性、切断性・打抜き性などの二次加工性を良好にし、シートとしての取扱い性が容易になる。また、単位面積あたりの単価を適切に設定することができる。複層シートの厚さの上限は、400μm以下がより好ましく、300μm以下が特に好ましく、下限は、50μm以上が好ましく、100μm以上がより好ましい。また、アクリル系樹脂層の厚みは、0.03mm以上が好ましく、0.25mm以下とすることが好ましい。アクリル系樹脂層の厚みの上限は、0.22mm以下がより好ましく、0.2mm以下が特に好ましく、下限は、0.04mm以上がより好ましく、0.05mm以上が特に好ましい。
【0071】
基材層は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において特に限定されないが、好ましい例として、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、他のアクリル系樹脂、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合)系樹脂などの熱可塑性樹脂が例示できる。
これらのうちでも、熱成形性・加工性、耐候性、耐薬品性、耐擦傷性等の性能面のバランスのよいポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、ABS樹脂を使用することが好ましい。更に、複層シート中に樹脂由来のゲル化物が発生すると成型品の欠点となり収率低下につながるため、樹脂の構造的にゲル化反応が起こりにくいアクリル系樹脂を基材層に使用することがより好ましい。なお、ここでいう「アクリル系樹脂」とは、メタクリル系樹脂、アクリル系樹脂、およびこれらのブロック共重合体、コア−シェル型粒子並びにこれらをブレンドしたもの等を含む。
【0072】
基材層と対向しないアクリル系樹脂層の主面におけるJIS Z8741による60°光沢度(%)は、表面光沢性をより効果的に引き出す観点から、80以上、95以下が好ましい。
【0073】
複層シートの製法は、特に制限されない。例えば、(1)本発明のアクリル系樹脂組成物を用いて形成した単層からなるシート状のアクリル系樹脂層と、熱可塑性樹脂を用いて形成したシート状の基材層とを別々に用意しておき、プレス機で熱圧着する方法、圧空または真空成形すると同時に積層する方法、接着/粘着層を介在させてラミネートする方法(ウェットラミネーション); (2)Tダイから溶融押出した熱可塑性樹脂を基材層にして、本発明のアクリル系樹脂組成物を用いて形成した単層シートであるアクリル系樹脂をラミネートする方法(押出し同時ドライラミネート法); (3)本発明のアクリル系樹脂組成物と、別の熱可塑性樹脂とをそれぞれ別の押出機を用いて溶融混錬し共押出法により、Tダイから本発明のアクリル系樹脂層と、熱可塑性樹脂シートからなる基材層とが積層された複層シートを得る方法などが挙げられる。
これらの方法のうち、(1)または(2)の方法では、ラミネート前に、アクリル系樹脂層と基材層の貼り合せ面側にコロナ処理などの表面処理を施してもよい。
【0074】
本発明の複層シートの製法は、Tダイ法の他に、インフレーション法、溶融流延法、カレンダー法等の公知の方法を用いて行うことができる。良好な表面平滑性、低ヘイズのシートが得られるという観点から、上記溶融混練物をTダイから溶融状態で押し出し、その両面を鏡面ロール表面または鏡面ベルト表面に接触させて成形する工程を含む方法が好ましい。この際に用いるロールまたはベルトは、いずれも金属製であることが好ましい。このように押し出された溶融混練物の両面を鏡面に接触させて製膜する場合には、シート両面を鏡面ロール若しくは鏡面ベルトで加圧し挟むことが好ましい。鏡面ロール若しくは鏡面ベルトによる挟み込み圧力は、高いほうが好ましく、線圧として10N/mm以上であることが好ましく、30N/mm以上であることがさらに好ましい。
【0075】
Tダイ法による製造方法の場合、単軸あるいは二軸押出スクリューのついたエクストルーダ型溶融押出装置等が使用できる。本発明の複層シートを製造するための溶融押出温度は好ましくは200〜300℃、より好ましくは220〜270℃である。また、溶融押出装置を使用し、溶融押出しする場合、樹脂の劣化による着色抑制の観点から、ベントを使用し、減圧下での溶融押出し、あるいは窒素気流下での溶融押出しを行なうことが好ましい。
【0076】
また、良好な表面平滑性、良好な表面光沢、低ヘイズのシートが得られるという観点から、シートを挟み込む鏡面ロール若しくは鏡面ベルトの少なくとも一方の表面温度を60℃以上で、且つシートを挟み込む鏡面ロール若しくは鏡面ベルトの両方の表面温度を130℃以下とすることが好ましい。シートを挟み込む鏡面ロール若しくは鏡面ベルトの両方の表面温度が60℃未満であると得られるアクリル系樹脂層の表面平滑性、ヘイズが不足する傾向にあり、少なくとも一方の表面温度が130℃を超えるとシートと鏡面ロール若しくは鏡面ベルトが密着しすぎるため、鏡面ロール若しくは鏡面ベルトからシートを引き剥がす際にシート表面が荒れやすくなり、得られる複層シートのアクリル系樹脂層の表面平滑性が低くなるか、またはヘイズが高くなる傾向になる。
【0077】
本発明の複層シートのアクリル系樹脂層は、厚みがd1(但し、d1=0.2mm)のシート状のアクリル系樹脂層を用意して、当該アクリル系樹脂層を構成する樹脂のガラス転移温度に対して40℃高温にて、当該アクリル系樹脂層を300mm/secの速度で200%延伸させたときに、0.05mm以上のクラックが生じず、且つ以下の式1を満たすものであることが好ましい。
<数3> (H2/d2)―(H1/d1)<1.20 (式1)
但し、式中のH1は延伸前のアクリル系樹脂層のヘイズ値であり、d1は延伸前のアクリル系樹脂層の厚みであり、H2は延伸後のアクリル系樹脂層のヘイズ値であり、d2は延伸後のアクリル系樹脂層の厚みである。
上記式1を満たすことにより、このアクリル系樹脂層を用いた複層シートを熱成型した後も、成型前と変らない光沢感を保持できるという効果が得られる。なお、本願のアクリル系樹脂層は、上記厚みに限定されるものではない。即ち、上記条件は、上記条件で測定した場合に得られる特性を特定したものであり、本願発明のアクリル系樹脂層の条件を何ら特定するものではない。
【0078】
本発明の複層シートのアクリル系樹脂層の粗度は1.5nm以下が好ましく、より好ましくは0.1〜1.0nmである。これにより、表面平滑性に優れ、切断時や打抜時等での取扱い性に優れる。更に、意匠性を要求される用途に用いられる場合には、表面光沢に優れ、また、本発明のアクリル系樹脂層に印刷がされた場合には、絵柄層等の鮮明さが優れたものとなる。また、光学用途においては、光線透過率等の光学特性や表面賦形を行う際の賦形精度に優れる。なお、成形体(フィルム)の粗度は、実施例に記載の方法で求めた値である。
【0079】
また、本発明の複層シートのアクリル系樹脂層のヘイズ温度依存性は、より小さいことが好ましい。これにより広い温度範囲において透明性を求められている用途や、高温で加工される場合において、透明性が損なわれず、優位である。
【0080】
本発明の複層シートは基材層またはアクリル系樹脂層は、着色されていても良い。着色法としては、基材層の熱可塑性樹脂組成物自体に顔料または染料を含有させ、樹脂自体を着色する方法;シート状のアクリル系樹脂層を、染料が分散した液中に浸漬して着色させる染色法などが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
用いる顔料としては、例えばアゾ系顔料、キノン系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、チオインジゴ系顔料、イソインドリノン系顔料、ジオキサジン系顔料、ペリレン系顔料、カオリナイト、白雲母、タルク、炭酸カルシウム、無水/含水ケイ酸、アルミナ、塩基性炭酸マグネシウム、沈降性硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、リトポン、鉄黒、黒鉛、カーボンブラック、黄鉛、黄色酸化鉄、チタンイエロー、モリブデートオレンジ、赤色酸化鉄、カドミウムレッド、群青、紺青、コバルトブルー、酸化クロム、コバルトグリーン等が挙げられる。
また、用いる染料としては、例えばアゾ染料、アクリジン染料、ニトロソ染料、ニトロ染料、スチルベンアゾ染料、ケトイミン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料、キノリン染料、メチン/ポリメチン染料、アントラキノン染料、チアゾール染料、インダミン/インドフェノール染料、アジン染料、オキサジン染料、チアジン染料、硫化染料、アミノケトン/オキシケトン染料、インジゴイド染料、フタロシアニン染料、ペリレン染料、ペリノン染料等が挙げられる。
【0081】
中でも、本発明の複層シートは、顔料または染料などで黒色に着色した熱可塑性樹脂を基材層に用いることにより、本発明のアクリル系樹脂層の特徴である熱成型後の表面光沢性がより強調され、より漆黒感に優れたピアノブラック調の加飾シートとして好適に使用できる。基材層に含有する黒色顔料としては、カーボンブラックが好適に用いられる。カーボンブラックの平均粒子径によりカーボンブラックの凝集や分散不良による外観不良が発生しやすいため、カーボンブラックの平均粒子径は、100nm以上、30nm以下とすることが好ましい。
【0082】
本発明のアクリル系樹脂層の着色法としては、メタクリル系樹脂(A)とブロック共重合体(B)との組成物自体に、顔料または染料を含有させ、シート化前のアクリル系樹脂組成物自体を着色する方法;シート状のアクリル系樹脂層を、染料が分散した液中に浸漬して着色させる染色法などが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
本発明のアクリル系樹脂層を着色することにより、裏打ち層の色調を微調整することができる。例えば、前述のピアノブラック調の複層シートでは、アクリル系樹脂層に青や緑色系の染料を含有させ着色することにより、基材層の赤みや黄色みを補正できるため、より漆黒感を上げることができる。
【0083】
本発明の複層シートは、アクリル系樹脂層の少なくとも一方の面に、印刷が施されていてもよい。印刷によって絵柄、文字、図形などの模様、色彩が付与される。模様は有彩色のものであっても、無彩色のものであってもよい。印刷は、印刷層の退色を防ぐために、後述する他の熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂と接する側に施すのが好ましい。
【0084】
本発明の複層シートは、基材層の少なくとも一方の面を(a)有色とし、または/および(b)模様を設けてもよい。前記(a)および(b)の少なくとも一方を満たす場合において、基材層を構成する樹脂およびアクリル系樹脂層を構成する樹脂のうちのガラス転移温度が高い樹脂のガラス転移温度に対して、40℃高温にて、当該複層シートを300mm/secの速度で200%延伸させたときに、0.05mm以上のクラックが生じず、且つアクリル系樹脂層側から、JIS Z8729に規定された物体色の表示方法であるL
*a
*b
*を延伸前後で測定したとき、下記式2を満たすことが好ましい。なお、このときの測定には、アクリル系樹脂層の膜厚が0.03〜0.1mmの範囲にあるものを用いる。但し、この膜厚は当該測定時の膜厚であり、本願発明のアクリル系樹脂層の膜厚を規定するものではない。
<数4> L
*2−L
*1<3.5 (式2)
但し、式中のL
*)は、延伸前の前記積層体のL
*値であり、L
*2は、延伸後の前記積層体のL
*値である。
上記式2を満たすことにより、このアクリル系樹脂層を用いた複層シートを熱成型した後も、成型前と変らない色の明度を保持できるという効果を得ることができる。なお、本願の複層シートは、上記条件に限定されるものではない。即ち、上記条件は、上記条件で測定した場合に得られる特性を特定したものであり、本願発明の複層シートの条件を何ら特定するものではない。
【0085】
本発明の複層シートの表面のJIS鉛筆硬度(厚さ75μm)は、HBまたはそれよりも硬いことが好ましく、Fまたはそれよりも硬いことがより好ましく、Hまたはそれよりも硬いことが更に好ましい。表面が硬いアクリル系樹脂層を用いた複層シートは傷つき難いので、意匠性の要求される成形品の表面の加飾に加えて、保護シートとして好適に用いられる。
【0086】
また、本発明の複層シートにおいて、金属および/または金属酸化物よりなる層を設ける場合、金属としては、例えば、アルミニウム、珪素、マグネシウム、パラジウム、亜鉛、錫、ニッケル、銀、銅、金、インジウム、ステンレス鋼、クロム、チタンなどを使用することができ、また金属酸化物としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化カルシウム、酸化カドミウム、酸化銀、酸化金、酸化クロム、珪素酸化物、酸化コバルト、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化チタン、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、酸化白金、酸化パラジウム、酸化ビスマス、酸化マグネシウム、酸化マンガン、酸化モリブデン、酸化バナジウム、酸化バリウムなどを使用することができる。これらの金属および金属酸化物は、それぞれ単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。これらの中で、インジウムは、優れた意匠性を有し、この積層体を深絞り成形する際にも光沢が失われにくいことから好ましい。また、アルミニウムは、優れた意匠性を有し、且つ工業的にも安価に入手できるので、特に深い絞りを必要としない場合には特に好ましい。これらの金属および/または金属酸化物の層を設ける方法としては真空蒸着法が通常用いられるが、イオンプレーティング、スパッタリング、CVD(ChemicalVapor Deposition :化学気相堆積)などの方法を用いてもよい。金属および/または金属酸化物からなる蒸着膜の厚さは、一般的には5〜100nm程度である。層形成後に深絞り成形を行う場合には、5〜250nmとすることが好ましい。
【0087】
本発明の複層シートに用いられる他の層は、複層シートの意匠性の観点から、メタクリル系樹脂などの透明な樹脂から形成した層を用いることが好ましい。複層シートに傷がつきにくく、意匠性が長く持続するという観点から、最外層は、表面硬度および耐候性が高いものが好ましい。最外層の好ましい層として、メタクリル系樹脂からなる層または本発明のアクリル系熱可塑性樹脂を用いて形成したアクリル系樹脂層が例示できる。
【0088】
(立体成型体)
本発明の立体成型体は、複層シートが、立体成形物の表面に設けられてなるものである。立体成形物は、本発明の複層シートを熱成形できるものであればよく、限定されないが、例えば熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、木質基材またはケナフなどの非木質繊維基材である。立体成形物は、複数種類の材質からできていてもよいが、複層シートを被覆する面は、複層シートが熱成形することを考慮して材質を選定すればよい。
【0089】
本発明の立体成型体に用いられる立体成形物の熱可塑性樹脂は、特に限定されないが、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、他の(メタ)アクリル樹脂、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)樹脂などが挙げられる。他の熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂などが例示できる。
【0090】
本発明の立体成型体の製法は、特に制限されない。例えば、本発明の複層シートを、上述した立体成形物の表面に配置し、加熱下で真空成形・圧空成形・圧縮成形することにより、本発明の立体成型体を得ることができる。本発明の立体成型体は、本発明の複層シートを立体成形物の最表層に設けることにより、表面平滑性、表面硬度および表面光沢などに優れる。また、本発明の複層シートのアクリル系樹脂層の内側面に印刷を施した場合には、絵柄等を鮮明に表示することができる。また、金属層を有する複層シートにおいては、金属と同レベルの鏡面光沢性が得られる。
【0091】
本発明の立体成型体の製法のうち好ましい方法は、本発明の複層シートをそのまま、あるいは少なくとも1方の面に印刷を施して被加飾品の表面にラミネーションする方法(ラミネーション成形法)、本発明の複層シートを被加飾品の形状に合わせて真空または圧空成形し、これを射出成形用金型に設置し、次いで射出成形を行うことによって射出成形と同時に加飾処理を行う方法(インサート成形法)、射出成形用金型キャビティー内で本発明の複層シートを真空または圧空成形し、次いで射出成形を行うことによって射出成形と同時に加飾処理を行う方法(インモールド成形法)等を挙げることができる。
【0092】
本発明の立体成型体の製法のうち、更に好ましい方法は、3次元表面加飾成形(TOM成形、真空・圧空成型法)と一般に呼ばれている方法である。この3次元表面加飾成形法は、金型キャビティー内で本発明の複層シートを真空状態で加熱し被加飾品の表面に沿わせ、下方からの真空引き、並びに上方からの圧空成型を同時に行うことにより、被加飾品への加飾処理を行う方法である。当該方法は、より立体的で複雑な形状の成形体を形成することができる。このため、本発明の複層シートが局所的により大きく延伸、または大きく屈曲されることになり、本発明の効果がより顕著に発揮される。
【0093】
金型に挿入されるシートは、平らなものそのままであってもよいし、真空成形、圧空成形等で予備成形して凹凸形状に賦形されたものであってもよい。
シートの予備成形は、別個の成形機で行ってもよいし、射出成形同時貼合法に用いる射出成形機の金型内で予備成形を行ってもよい。後者の方法、即ち、シートを予備成形した後その片面に溶融樹脂を射出する方法は、インサート成形法と呼ばれる。
シートに本発明の複層シートを用いる場合には、本発明の複層シートのアクリル系樹脂層側が最表面となるように配置(一体化する他のシート側に基材層を配置)することが好ましい。このようにして、最表層に本発明の複層シートのアクリル系樹脂層が設けられた立体成型体を得ることができる。
【0094】
本発明の複層シートによれば、熱成型性に優れ、且つ熱成型後に優れた加飾性を維持できる加飾用複層シートおよび立体成型体を提供できる。即ち、本発明の複層シートによれば、熱成型後において、透明性、表面硬度、表面平滑性などに優れたシートを提供できる。更に、折り曲げや延伸による白化や破断が少ない、即ち、耐白化性と耐割れ性に優れるアクリル系樹脂層を積層しているので、光沢性や色の深み感に優れた複層シートを提供できる。このため、より複雑な3次元立体構造、例えば、球状や角のある形状の基体に、本発明の複層シートを圧空・真空により密着させて加飾することにより、優れた立体成型体を得ることができる。本発明の立体成型体によれば、熱成型性に優れ、且つ熱成型後に優れた加飾性を維持できるという優れた効果を奏する。
【実施例】
【0095】
以下に実施例および比較例を示して本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例によって制限されるものではない。また、本発明は、以上までに述べた、特性値、形態、製法、用途などの技術的特徴を表す事項を、任意に組み合わせて成るすべての態様を包含している。
【0096】
実施例および比較例における物性値の測定等は以下の方法によって実施した。
【0097】
〔重量平均分子量(Mw)および分子量分布〕
ブロック共重合体(B)およびメタクリル系樹脂(A)の重合中および重合終了後の重量平均分子量(Mw)および分子量分布はGPC(ゲル・パーミエイション・クロマトグラフィー)によりポリスチレン換算分子量で求めた。
・装置:東ソー社製GPC装置「HLC-8320」
・分離カラム:東ソー社製の「TSKguardcolum SuperHZ-H」、「TSKgel HZM-M」および「TSKgel SuperHZ4000」を直列に連結
・溶離剤:テトラヒドロフラン
・溶離剤流量:0.35mL/min
・カラム温度:40℃
・検出方法:示差屈折率(RI)
【0098】
〔各重合体ブロックの構成割合〕
各重合体ブロックの構成割合は1H−NMR(1H−核磁気共鳴)測定によって求めた。
・装置:日本電子社製核磁気共鳴装置「JNM-LA400」
・重溶媒:重水素化クロロホルム
【0099】
〔アクリル系樹脂層(単層シート)の製造方法〕
任意のアクリル系樹脂組成物を用い、50mmΦベント式の1軸押出機を用いて吐出量26kg/hrにて押出し、幅300mmの単層Tダイより温度260℃にて押出し、80℃と100℃の金属鏡面ロールでニップして8.2m/minの速度にて引取り、厚み200μmの単層シートからなるアクリル系樹脂層(単層シート)を製膜した。
【0100】
〔複層シートの製造方法〕
任意のアクリル系樹脂組成物を用い、30mmΦベント式の1軸押出機を用いて吐出量5kg/hrにて押出し、同時に任意の基材層を形成するための熱可塑性樹脂を用い、50mmΦベント式の1軸押出機を用いて23kg/hrにて押出した。そして、それぞれを幅300mmのマルチマニホールドダイを用いて積層させて温度260℃にて押出し、80℃と100℃の金属鏡面ロールでニップして5.9m/minの速度にて引取ることにより、総厚み300μm、アクリル系樹脂層75μmの複層シートを製膜した。
【0101】
(ガラス転移温度)
各製造例で得られた樹脂を、JIS K7121に準拠して、示差走査熱量測定装置(島津製作所製、DSC−50(品番))を用いて、230℃まで一度昇温し、次いで室温まで冷却し、その後、室温から230℃までを10℃/分で昇温させる条件にてDSC曲線を測定した。2回目の昇温時に測定されるDSC曲線から求められる中間点ガラス転移温度を本発明におけるガラス転移温度とした。
【0102】
〔延伸成型体作製方法〕
前述の製膜条件により作製した単層シート状のアクリル系樹脂層および複層シートを其々切り出し、150mm×50mmの試験片を作製し、オートグラフ(島津製作所社製 オートグラフAG−5kN)にセットした。次いで、アクリル系樹脂層を構成する樹脂もしくは基材層を構成する樹脂のどちらか高い方のTgに対し、40℃高い温度雰囲気にて、5kNロードセル、チャック間距離110mm、引張速度300mm/秒で200%の延伸率まで引っ張り、延伸成型体を作製した。
【0103】
〔アクリル系樹脂層のヘイズ測定方法〕
前述の製膜条件により作製したアクリル系樹脂層(単層シート)とその延伸成型体を30mm×30mmに切り出して試験片とした。試験片をヘイズメーター(村上色彩技術研究所製:HAZE METER HM-150)にセットし、JIS−K7136に準拠して延伸前のヘイズH1、延伸後のヘイズH2を測定した。延伸前のシート厚みd1(mm)、延伸後のシート厚みd2(mm)を用いて、下式で定義される延伸前後のヘイズの差を算出した。
<数5> (H2/d2)―(H1/d1)
【0104】
〔複層シートの鉛筆硬度測定方法〕
前述の製膜条件により作製した複層シートとその延伸成型体を、其々30mm×30mmに切り出して試験片とした。鉛筆硬度試験機(東洋精機製作所社製:鉛筆引っかき塗膜硬さ試験機)に試験片をセットし、JIS−K5600−5−4に準拠して鉛筆硬度を測定し、延伸前後の鉛筆硬度を比較した。
【0105】
〔複層シートの測色方法〕
前述の製膜条件により作製した複層シートとその延伸成型体の平面部分を30mm×30mm切り出し試験片とした。分光測色計(日本電色工業社製:Spectro Photometer SE5000)に試験片を透明樹脂層側が測定面になるようにセットし、JIS Z8722に準拠し、C光源、視野角度10度、反射モード(拡散反射)の条件にて、JIS Z8729(2004)に規定された物体色の表示方法であるL
*a
*b
*をアクリル系樹脂層側から測定し、延伸前後のL
*値を比較した。L
*値は数値が小さいほど濃色を示す。
【0106】
〔立体成型体の製造方法〕
前述の製膜条件により作製したアクリル系樹脂層(単層シート)と複層シートを150mm×150mmに切り出して試験片とした。真空成形機(山八歯材工業社製 バキュームアダプターI 型)に試験片をセットし、シート表面の温度がアクリル系樹脂層を構成する樹脂もしくは基材層を構成する樹脂のどちらか高いTgに対して、40℃高温となるまで加熱した。次いで、
図2に示す幅50mm×奥行き50mm×高さ30mmの立方体状の金型に押し付けて下方から真空引きをすることにより立体成型体を成形した。なお、複層シート1はアクリル系樹脂層2側が立体成型体の表面になるように試験片をセットした。
図2におけるRは、曲率半径(mm)を示す。
【0107】
〔複層シート立体成型体の破れと角部白化判別方法〕
前述の成型条件により作製した立体成型体の各辺ならびに各頂点部を目視にて確認し、目視て確認できる幅0.05mm以上のクラックと白化の程度を判別した。判別基準を以下に示した。
a:各辺と各頂点部分に白化や破れが見られない。
b:各辺と各角部に白化が見られる。
c:各辺と各角部に白化と破れが見られる。
【0108】
〔複層シート立体成型体の表面光沢度の測定方法〕
前述の成型条件により作製した複層シート立体成型体のアクリル系樹脂層側の任意の面にて、グロスチェッカー(HORIBA社製 GROSS CHECKER IG-331)を用いてJIS Z8741に準拠し60°グロス値(60°光沢度)を評価した。この60°グロス値は複層加飾シートのアクリル系樹脂層側の片面において異なる10箇所の領域を測定し、10箇所の平均値を複層加飾シートの表面60°グロス値とした。
【0109】
参考例1 [ブロック共重合体(B−1)の合成]
内部を脱気し、窒素で置換したブライン冷却できるジャケットおよび撹拌機つきのグラスライニング製3m
3反応容器に、室温にて乾燥トルエン735kg、ヘキサメチルトリエチレンテトラミン0.4kg、およびイソブチルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム20molを含有するトルエン溶液39.4kgを加え、さらに、sec−ブチルリチウム1.17molを加えた。これにメタクリル酸メチル35.0kgを加え、室温で1時間反応させた。反応液に含まれる重合体をサンプリングして重量平均分子量(以下、Mw(b1-1)と称する)を測定したところ、40,000であった。かかるメタクリル酸メチル重合体はさらにアクリル酸エステルをブロック共重合することで、該メタクリル酸メチル重合体はメタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)(以下、「メタクリル酸メチル重合体ブロック(b1−1)」と称する)となる。
【0110】
次いで、反応液を−25℃にし、アクリル酸n−ブチル24.5kgおよびアクリル酸ベンジル10.5kgの混合液を0.5時間かけて滴下した。滴下直後、反応液に含まれる重合体をサンプリングして重量平均分子量を測定したところ、80,000であった。メタクリル酸メチル重合体ブロック(b1−1)の重量平均分子量は40,000であったので、アクリル酸n−ブチルおよびアクリル酸ベンジルの共重合体からなるアクリル酸エステル重合体ブロック(b2)の重量平均分子量(Mw(b2))を40,000であると決定した。
【0111】
続いて、メタクリル酸メチル35.0kgを加え、反応液を室温に戻し、8時間攪拌することで、2つめのメタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)(以下、「メタクリル酸メチル重合体ブロック(b1−2)」と称する)を形成した。その後、反応液にメタノール4kgを添加して重合を停止させた後、反応液を大量のメタノールに注ぎ、トリブロック共重合体であるブロック共重合体(B)(以下、「ブロック共重合体(B−1)」と称する)を析出させ、ろ過し、80℃にて、1torr(約133Pa)で、12時間乾燥して単離した。得られたブロック共重合体(B−1)の重量平均分子量Mw(B)は120,000であった。ジブロック共重合体の重量平均分子量は80,000であったので、メタクリル酸メチル重合体ブロック(b1−2)の重量平均分子量(Mw(b1-2)と称する)を40,000であると決定した。メタクリル酸メチル重合体ブロック(b1−1)の重量平均分子量Mw(b1-1)と、メタクリル酸メチル重合体ブロック(b1−2)の重量平均分子量Mw(b1-2)が共に40,000なので、Mw(b1)は40,000であり、Mw(b1-total)は、80,000である。得られたブロック共重合体(B−1)の分析結果を表2に示す。なお、表2中、メタクリル酸メチルに由来する構造単位は「メタクリル酸メチル単位」、アクリル酸n−ブチルに由来す構造単位は「アクリル酸n−ブチル単位」、アクリル酸ベンジルに由来する構造単位は「アクリル酸ベンジル単位」と、それぞれ表記した。
【0112】
参考例2〜4 [ブロック共重合体(B−2)〜(B−4)の合成]
表1に示す以外の条件は、参考例1と同様にして、ブロック共重合体(B−2)〜(B−4)を合成した。表1には、得られたMw(b1−1)、Mw(b2)、得られたブロック共重合体(B−2)〜(B−6)の分析結果を表2に示す。
【表1】
【0113】
参考例5 [ブロック共重合体(B−5)の合成]
内部を脱気し、窒素で置換したブライン冷却できるジャケットおよび撹拌機つきのグラスライニング製3m
3反応容器に、室温にて乾燥トルエン735kg、ヘキサメチルトリエチレンテトラミン0.4kg、およびイソブチルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム20molを含有するトルエン溶液39.4kgを加え、さらに、sec−ブチルリチウム1.17molを加えた。これにメタクリル酸メチル35.0kgを加え、室温で1時間反応させた。反応液に含まれる重合体をサンプリングして重量平均分子量(以下、Mw(b1)と称する)を測定したところ、40,000であった。かかるメタクリル酸メチル重合体はさらにアクリル酸エステルをブロック共重合することで、該メタクリル酸メチル重合体はメタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)(以下、「メタクリル酸メチル重合体ブロック(b1)」と称する)となる。
【0114】
次いで、反応液を−25℃にし、アクリル酸n−ブチル24.5kgおよびアクリル酸ベンジル10.5kgの混合液を0.5時間かけて滴下した。その後、反応液にメタノール4kgを添加して重合を停止させた後、反応液を大量のメタノールに注ぎ、ジブロック共重合体であるブロック共重合体(B)(以下、「ブロック共重合体(B−5)」と称する)を析出させ、ろ過し、80℃にて、1torr(約133Pa)で、12時間乾燥して単離した。得られたブロック共重合体(B−5)の重量平均分子量Mw(B)は80,000であった。メタクリル酸メチル重合体ブロック(b1)の重量平均分子量は40,000であったので、アクリル酸n−ブチルおよびアクリル酸ベンジルの共重合体からなるアクリル酸エステル重合体ブロック(b2)の重量平均分子量(Mw(b2))を40,000であると決定した。
【0115】
参考例6 [ブロック共重合体(B−6)の合成]
乾燥トルエンを567kg、ヘキサメチルトリエチレンテトラミンを0.1kg、イソブチルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム4.1mol、トルエン溶液を8.3kg、sec−ブチルリチウム0.42mol、メタクリル酸メチル33.3kgを用いた以外は、参考例5と同様の方法にてメタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)(以下、「メタクリル酸メチル重合体ブロック(b1)」と称する)を得た。反応液に含まれる重合体をサンプリングして重量平均分子量(以下、Mw(b1-1)と称する)を測定したところ、80,000であった。
【0116】
次いで、アクリル酸n−ブチルを24.8kg、アクリル酸ベンジルを8.5kg、メタノールを4kgとした以外は、参考例5と同様の方法により、ジブロック共重合体であるブロック共重合体(B)(以下、「ブロック共重合体(B−6)」と称する)を得た。得られたブロック共重合体(B−6)の重量平均分子量Mw(B)は160,000であり、アクリル酸n−ブチルおよびアクリル酸ベンジルの共重合体からなるアクリル酸エステル重合体ブロック(b2)の重量平均分子量(Mw(b2))は80,000であった。
【0117】
【表2】
【0118】
参考例7 [メタクリル樹脂(A−1)の合成]
メタクリル酸メチル95質量部、アクリル酸メチル5質量部からなる単量体混合物に重合開始剤(2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)、水素引抜能:1%、1時間半減期温度:83℃)0.1質量部および連鎖移動剤(n−オクチルメルカプタン)0.77質量部を加え溶解させて原料液を得た。
イオン交換水100質量部、硫酸ナトリウム0.03質量部および懸濁分散剤0.45質量部を混ぜ合わせて混合液を得た。耐圧重合槽に、前記混合液420質量部と前記原料液210質量部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら、温度を70℃にして重合反応を開始させた。重合反応開始後、3時間経過時に、温度を90℃に上げ、撹拌を引き続き1時間行って、ビーズ状共重合体が分散した液を得た。なお、重合槽壁面あるいは撹拌翼にポリマーが若干付着したが、泡立ちもなく、円滑に重合反応が進んだ。
得られた共重合体分散液を適量のイオン交換水で洗浄し、バケット式遠心分離機により、ビーズ状共重合体を取り出し、80℃の熱風乾燥機で12時間乾燥し、ビーズ状のメタクリル樹脂(A)(以下「メタクリル樹脂(A−1)」と称する)を得た。
得られたメタクリル樹脂(A−1)の重量平均分子量Mw(A)は30,000、分子量分布は1.8、ガラス転移温度(Tg)は111℃であった。
【0119】
参考例8 [メタクリル樹脂(A−2)の合成]
連鎖移動剤の量を0.28質量部に変更した以外は、参考例5と同様にして、Mw(A)は80,000、分子量分布1.8、ガラス転移温度は115℃のメタクリル樹脂(A−2)を得た。
【0120】
参考例9 [メタクリル樹脂(A−3)の合成]
連鎖移動剤の量を0.16質量部に変更した以外は、参考例5と同様にして、Mw(A)は130,000、分子量分布1.8の、ガラス転移温度は115℃メタクリル樹脂(A−3)を得た。
【0121】
(実施例1)
ブロック共重合体(B−1)30質量部と、メタクリル樹脂(A−2)70質量部とを、二軸押出機により230℃で溶融混練した。その後、押出し、切断することによって、アクリル系樹脂組成物のペレットを製造した。ガラス転移温度は115℃であった。
得られたアクリル系樹脂組成物を用いて前述の方法で厚さ200μmの透明性樹脂単層シートを製膜し、得られた透明性樹脂単層シートを前述の方法で延伸し、延伸前後のヘイズを前述の方法で測定した。また、得られたメタアクリル樹脂組成物と、カーボンブラック含有黒原着のテクノポリマー社製ABS樹脂「330ABS」(Tg:100℃)を用いて前述の方法で総厚さ300μm、アクリル系樹脂層75μmの共押出し複層シートを製膜し、得られた複層シートを前述の方法で延伸し、延伸前後の鉛筆硬度と測色値L値を前述の方法で測定した。また、複層シートを前述の方法で真空成型することにより得られた複層シート立体成型体の表面光沢度(%)を測定し、破断や白化の有無を目視評価した。結果を表3に示す。
【0122】
(実施例2)
ブロック共重合体(B−2)10質量部と、メタクリル樹脂(A−2)90質量部とを、二軸押出機により230℃で溶融混練した。その後、押出し、切断することによって、アクリル系樹脂組成物のペレットを製造した。
このペレットを用いて実施例1と同じ方法で透明性樹脂単層シートと共押出し複層シート、ならびに複層シート立体成型体を成型し、それぞれの物性を測定した。結果を表3に示す。
【0123】
(実施例3)
ブロック共重合体(B−6)10質量部と、メタクリル樹脂(A−3)90質量部とを、二軸押出機により230℃で溶融混練した。その後、押出し、切断することによって、アクリル系樹脂組成物のペレットを製造した。
このペレットを用いて実施例1と同じ方法で透明性樹脂単層シートと共押出し複層シート、ならびに複層シート立体成型体を成型し、それぞれの物性を測定した。結果を表3に示す。
【0124】
(実施例4)
ブロック共重合体(B−5)30質量部と、メタクリル樹脂(A−2)70質量部とを、二軸押出機により230℃で溶融混練した。その後、押出し、切断することによって、アクリル系樹脂組成物のペレットを製造した。
このペレットを用いて実施例1と同じ方法で透明性樹脂単層シートと共押出し複層シート、ならびに複層シート立体成型体を成型し、それぞれの物性を測定した。結果を表3に示す。
【0125】
(実施例5)
ブロック共重合体(B−5)20質量部と、メタクリル樹脂(A−3)80質量部とを、二軸押出機により230℃で溶融混練した。その後、押出し、切断することによって、アクリル系樹脂組成物のペレットを製造した。
このペレットを用いて実施例1と同じ方法で透明性樹脂単層シートと共押出し複層シート、ならびに複層シート立体成型体を成型し、それぞれの物性を測定した。結果を表3に示す。
【0126】
(実施例6)
ブロック共重合体(B−6)20質量部と、メタクリル樹脂(A−3)80質量部とを、二軸押出機により230℃で溶融混練した。その後、押出し、切断することによって、アクリル系樹脂組成物のペレットを製造した。
このペレットを用いて実施例1と同じ方法で透明性樹脂単層シートと共押出し複層シート、ならびに複層シート立体成型体を成型し、それぞれの物性を測定した。結果を表3に示す。
【0127】
(実施例7)
ブロック共重合体(B−5)20質量部と、メタクリル樹脂(A−2)80質量部とを、二軸押出機により230℃で溶融混練した。その後、押出し、切断することによって、アクリル系樹脂組成物のペレットを製造した。
このペレットを用いて実施例1と同じ方法で透明性樹脂単層シートと共押出し複層シート、ならびに複層シート立体成型体を成型し、それぞれの物性を測定した。結果を表3に示す。
【0128】
(実施例8)
ブロック共重合体(B−5)20質量部と、メタクリル樹脂(A−2)80質量部とを、二軸押出機により230℃で溶融混練した。その後、押出し、切断することによって、アクリル系樹脂組成物のペレットを製造した。また、住化スタイロンポリカーボネート社製、ポリカーボネート「カリバー301−8」(Tg:150度)98質量部、黒色顔料として三菱化学社製「三菱カーボンブラック」1.0質量部、黒色染料としてランクセス社製「MACROLEX Green G」0.3質量部、ランクセス社製「MACROLEX Green 5B」0.7質量部とを、二軸押出機により250℃で溶融混練した。その後、押出し、切断することによって、黒色のポリカーボネート樹脂組成物のペレットを製造した。このペレットを用いて、実施例1と同じ方法で透明性樹脂単層シートと共押出し複層シート、ならびに複層シート立体成型体を成型し、それぞれの物性を測定した。結果を表3に示す。
【0129】
(実施例9)
ブロック共重合体(B−5)20質量部と、メタクリル樹脂(A−2)80質量部とを、二軸押出機により230℃で溶融混練した。その後、押出し、切断することによって、アクリル系樹脂組成物のペレットを製造した。
また、クラレ社製、架橋ゴム粒子配合樹脂「パラペットGR−100」49質量部と、メタクリル樹脂(A−3)49質量部、黒色顔料として三菱化学社製「三菱カーボンブラック」1.0質量部、黒色染料としてランクセス社製「MACROLEX Green G」0.3質量部、ランクセス社製「MACROLEX Green 5B」0.7質量部とを、二軸押出機により230℃で溶融混練した。その後、押出し、切断することによって、黒色のアクリル系樹脂組成物のペレットを製造した。Tgは、108℃であった。
このペレットを用いて、実施例1と同じ方法で透明性樹脂単層シートと共押出し複層シート、ならびに複層シート立体成型体を成型し、それぞれの物性を測定した。結果を表3に示す。
【0130】
(実施例10)
ブロック共重合体(B−5)40質量部と、メタクリル樹脂(A−2)60質量部とを用いる以外は実施例7と同様に成形し、それぞれの物性を測定した。結果を表3に示す。
【0131】
(比較例1)
ブロック共重合体(B)に変えて、クラレ社製、架橋ゴム粒子配合樹脂「パラペットGR−100」20質量部と、メタクリル樹脂(A−2)80質量部とを、二軸押出機により230℃で溶融混錬した。その後、押出し、切断することによって、アクリル系樹脂組成物のペレットを製造した。
このペレットを用いて実施例1と同じ方法で透明性樹脂単層シートと共押出し複層シート、ならびに複層シート立体成型体を成型し、それぞれの物性を測定した。結果を表4に示す。
【0132】
(比較例2)
ブロック共重合体(B)に変えて、クラレ社製、架橋ゴム粒子配合樹脂「パラペットEB−SN」30質量部と、メタクリル樹脂(A−2)70質量部とを、二軸押出機により230℃で溶融混錬した。その後、押出し、切断することによって、アクリル系樹脂組成物のペレットを製造した。
このペレットを用いて実施例1と同じ方法で透明性樹脂単層シートと共押出し複層シート、ならびに複層シート立体成型体を成型し、それぞれの物性を測定した。結果を表4に示す。
【0133】
(比較例3)
ブロック共重合体(B−2)20質量部と、メタクリル樹脂(A−1)80質量部とを、二軸押出機により230℃で溶融混練した。その後、押出し、切断することによって、アクリル系樹脂組成物のペレットを製造した。
このペレットを用いて実施例1と同じ方法で透明性樹脂単層シートと共押出し複層シート、ならびに複層シート立体成型体を成型し、それぞれの物性を測定した。結果を表4に示す。
【0134】
(比較例4)
ブロック共重合体(B−4)20質量部と、メタクリル樹脂(A−1)80質量部とを、二軸押出機により230℃で溶融混練した。その後、押出し、切断することによって、アクリル系樹脂組成物のペレットを製造した。
このペレットを用いて実施例1と同じ方法で透明性樹脂単層シートと共押出し複層シート、ならびに複層シート立体成型体を成型し、それぞれの物性を測定した。結果を表4に示す。
【0135】
(比較例5)
ブロック共重合体(B−3)20質量部と、メタクリル樹脂(A−3)80質量部とを、二軸押出機により230℃で溶融混練した。その後、押出し、切断することによって、アクリル系樹脂組成物のペレットを製造した。
このペレットを用いて実施例1と同じ方法で透明性樹脂単層シートと共押出し複層シート、ならびに複層シート立体成型体を成型し、それぞれの物性を測定した。結果を表4に示す。
【0136】
(比較例6)
ブロック共重合体(B−4)20質量部と、メタクリル樹脂(A−2)80質量部とを、二軸押出機により230℃で溶融混練した。その後、押出し、切断することによって、アクリル系樹脂組成物のペレットを製造した。
このペレットを用いて実施例1と同じ方法で透明性樹脂単層シートと共押出し複層シート、ならびに複層シート立体成型体を成型し、それぞれの物性を測定した。結果を表4に示す。
【0137】
【表3】
【表4】
【0138】
これらの結果から、
(1) 0.3≦Mw(A)/Mw(b1-total)≦4.0
(2) 30,000≦Mw(b2-total)≦140,000
を満たし、且つ、メタクリル系樹脂(A)とブロック共重合体(B)との合計100質量部に対して、メタクリル系樹脂(A)が10〜99質量部であり、ブロック共重合体(B)が90〜1質量部で配合したアクリル系樹脂組成物を用いて作製した加飾用複層シートは、優れた加飾性を示すことがわかる。即ち、局所的な延伸率や屈曲率が高くなりやすい複雑な3次元立体形状に成形した際に、成形時の破断や白化を抑制し、且つ優れた表面平滑性と表面硬度、色の深み感を維持できることがわかる。
【0139】
この出願は、2014年12月26日に出願された日本出願特願2014−266122を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。