特許第6571196号(P6571196)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェンの特許一覧 ▶ ヘンケル アイピー アンド ホールディング ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

特許6571196焼結性接合材料およびそれを用いた半導体装置
<>
  • 特許6571196-焼結性接合材料およびそれを用いた半導体装置 図000003
  • 特許6571196-焼結性接合材料およびそれを用いた半導体装置 図000004
  • 特許6571196-焼結性接合材料およびそれを用いた半導体装置 図000005
  • 特許6571196-焼結性接合材料およびそれを用いた半導体装置 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6571196
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】焼結性接合材料およびそれを用いた半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/52 20060101AFI20190826BHJP
   H05K 3/32 20060101ALI20190826BHJP
【FI】
   H01L21/52 E
   H01L21/52 D
   H05K3/32 B
【請求項の数】13
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2017-534360(P2017-534360)
(86)(22)【出願日】2014年12月26日
(65)【公表番号】特表2018-502455(P2018-502455A)
(43)【公表日】2018年1月25日
(86)【国際出願番号】JP2014084765
(87)【国際公開番号】WO2016103528
(87)【国際公開日】20160630
【審査請求日】2017年12月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
(73)【特許権者】
【識別番号】514056229
【氏名又は名称】ヘンケル アイピー アンド ホールディング ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100084146
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(72)【発明者】
【氏名】井上 元
(72)【発明者】
【氏名】高野 礼
【審査官】 堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】 再公表特許第2011/010659(JP,A1)
【文献】 特開2014−196527(JP,A)
【文献】 特開2002−367427(JP,A)
【文献】 特開昭60−120778(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/52
H05K 3/32
H01B 1/20
B22F 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
銀フィラーと樹脂粒子とを含み、
銀フィラーは、走査型電子顕微鏡(SEM)写真により求めて平均厚さ(T)が1nm以上100nm以下であり、原子間力顕微鏡(AFM)により測定して算術平均粗さ(Ra)が10nm以下であるフレーク状フィラーを含み、および
樹脂粒子は、JIS K 6254に従って25℃で求めて弾性率(E)が10GPa以下であり、および熱分解温度が200℃以上であり、ここで、熱分解温度は、熱重量測定装置を用いて空気流中25℃から10℃/分の速度で上昇する温度に付した場合に樹脂の重量が1%減少する温度である焼結性接合材料。
【請求項2】
銀フィラーの含有量は、接合材料の固形分全質量の90質量%以上99.9質量%以下である、請求項1に記載の焼結性接合材料。
【請求項3】
樹脂粒子の弾性率(E)は、100MPa以下である、請求項1または2に記載の焼結性接合材料。
【請求項4】
樹脂粒子の弾性率(E)は、0.01MPa以上1GPa以下である、請求項1または2に記載の焼結性接合材料。
【請求項5】
樹脂粒子は、シリコーンゴム粒子および/またはフッ素ゴム粒子を含む、請求項1〜のいずれかに記載の焼結性接合材料。
【請求項6】
銀フィラーは、結晶質フレーク状フィラーを含む、請求項1〜のいずれかに記載の焼結性接合材料。
【請求項7】
フレーク状フィラーのアスペクト比は、35以上500以下であり、アスペクト比は、粒子の中心粒径(D50)/平均厚さ(T)であり、中心粒径(D50)は、レーザー回折式粒度分布計での測定により得られる体積基準粒度分布曲線から誘導される、請求項1〜6のいずれかに記載の焼結性接合材料。
【請求項8】
添加剤をさらに含む、請求項1〜のいずれかに記載の焼結性接合材料。
【請求項9】
添加剤は焼結促進剤を含む、請求項8に記載の焼結性接合材料。
【請求項10】
焼結促進剤は、銀フィラーの表面を被覆する有機物の溶出および/または熱分解を促進することができる成分を含み、該成分は、有機塩基化合物および酸化剤として働く化合物から選択される、請求項9に記載の焼結性接合材料。
【請求項11】
溶媒をさらに含む、請求項1〜10のいずれかに記載の焼結性接合材料。
【請求項12】
半導体装置の製造方法であって、
接合される2つの部材を与える工程、
2つの部材接合材とを配置して、その間に配置された接合材料を介して2つの部材の接合面を相互に対向させる工程、および
2つの部材をその間に配置された接合材料と共に所定の温度に加熱する工程
を含み、
接合材料は、銀フィラーと樹脂粒子とを含む焼結性接合材料であり、
銀フィラーは、走査型電子顕微鏡(SEM)写真により求めて平均厚さ(T)が1nm以上100nm以下であり、原子間力顕微鏡(AFM)により測定して算術平均粗さ(Ra)が10nm以下であるフレーク状フィラーを含み、および
樹脂粒子は、JIS K 6254に従って25℃で求めて弾性率(E)が10GPa以下であり、および熱分解温度が200℃以上であり、ここで、熱分解温度は、熱重量測定装置を用いて空気流中25℃から10℃/分の速度で上昇する温度に付した場合に樹脂の重量が1%減少する温度であり、
加熱工程は、焼結性接合材料から銀焼結体中に分散した樹脂粒子を含む銀焼結体を形成する、製造方法。
【請求項13】
銀焼結体の平均気孔率が10%以下であり、平均気孔率は、焼結体の露出断面積の走査型電子顕微鏡(SEM)画像の輝度抽出により求める、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合材料、特に、優れた応力緩和能を有する焼結性接合材およびその製造方法に関する。本発明は、さらに、前記接合材料を用いて製造された半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子装置の小型軽量化と高性能化により、半導体装置で発生する熱量が増加する傾向にある。近年、モーター制御分野では、電力デバイス、車両、または工作機械等の高電圧または大電流が必要とされる用途に、炭化珪素や窒化ガリウムなどのバンドギャップの大きなパワー半導体が開発されている。このようなパワー半導体は、半導体素子自体が耐熱性が高いため、従来のシリコン半導体に比べて高温で動作することができる。
【0003】
このようなパワー半導体の特性を利用するために、半導体の動作時に発生する熱を効率的に放出することができる優れた熱伝導率を有する接合材料が必要とされる。近年、ナノサイズ金属微粒子を含むペーストは、優れた熱伝導性を有する接合材として研究されてきた。このようなペーストを用いた接合方法では、金属粒子の焼結現象を利用して接合する。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の金属粒子の焼結現象を利用した接合方法では、焼結反応による焼結収縮によって収縮応力が生じ、接合部に収縮応力が残留する。また、接合対象部材の熱膨張係数が大きく異なると、半導体素子の動作時の冷却加熱サイクル中に接合部に大きな熱応力が加わり、半導体素子または結合部分におけるクラックの発生、または結合部分の剥離などの問題が生じる。
【0005】
このような接合部にかかる熱応力を緩和する方法として、特許文献2には、第1金属からなる金属微粒子と、該金属微粒子より大きな径を有し、第2の金属で被覆されている金属被覆樹脂粒子とを含む導電性接合材料が開示されている。このような接合材では、半導体素子と回路パターンとの接合部に加わる応力を低減することができることが特許文献2に記載されている。
【0006】
特許文献3には、金属リードフレームと半導体チップとを含み、半導体チップと金属リードフレームとが接合材としてのAgを含む導電性粒子が接合された多孔質接合層により接合された半導体装置が開示されている。導電性粒子間の空隙の少なくとも一部に熱硬化性樹脂が充填されている。
【0007】
一方、特許文献4には、半導体チップと、この半導体チップが搭載された絶縁基材とその表面に設けられた電極板とを有する絶縁基材とを有する半導体装置が開示されている。 特許文献4には、半導体チップと電極板とを接合する焼結金属層において、端部の気孔率が、中央部の気孔率よりも高く設定されているため、接合層の端部に適用される応力を緩和することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−352080号公報
【特許文献2】特開2011−198674号公報
【特許文献3】特開2010−171271号公報
【特許文献4】特開2014−29897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献2に記載の導電性接合材料では、金属被覆樹脂粒子の樹脂としてジビニルベンゼン架橋ポリマーが用いられている。このため、パワー半導体等の高温で動作する半導体装置に用いた場合、耐熱性が十分でなく、焼結時に機械的特性の劣化が生じることがあり、半導体装置の長期信頼性を損なうおそれがある。
【0010】
特許文献3に記載の半導体装置の製造方法では、接合層を形成した段階で液状硬化性樹脂を接着層に充填し、液状硬化性樹脂を硬化させる工程が必要となり、製造工程が煩雑となる。また、接合層の外側から接合層が樹脂で充填されているため、樹脂の充填が不均一となり、応力緩和能が不十分となるという問題がある。
【0011】
特許文献4に記載されているように、半導体装置の接合部に加わる応力を緩和するために空隙率を大きくすると、動作中、特に200℃以上の高温での長期間の動作中に接合層の空隙の状態が変化し、これは接合強度を低下させ、接合部の剥離等を引き起こし、半導体装置の長期信頼性を損なう。
【0012】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、本発明の課題は、優れた接合強度および放熱性を有し、接合部に適用される応力を低減することが可能であり、優れた長期信頼性を有する接合体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様は、銀フィラーと樹脂粒子とを含む焼結性接合材料であって、前記銀フィラーは、算術平均粗さ(Ra)が10nm以下のフレーク状フィラーを含み、樹脂粒子の弾性率(E)が10GPa以下であり、熱分解温度が200℃以上である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、長期信頼性に優れた接合体を提供することができる接合材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の一実施形態による半導体デバイスの部分断面図である。
図2図2は、実施例における冷却−加熱サイクルの前後の接合層の断面のSEM画像である。
図3図3は、実施例における接合層の断面のSEM像である。
図4図4は、実施例における冷却−加熱サイクル前後の接合部のSAT像である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明者は、銀フィラーを主成分とする接合材料に特定範囲の弾性を有する樹脂粒子を添加することにより、優れた接合強度および熱伝導率を維持しつつ、接合部に加わる応力を効果的に低減でき、その結果、長期信頼性に優れた接合体が得られることを見出した。このような接合材料は、パワー半導体などの高温で動作可能な半導体デバイスに特に適している。
【0017】
本発明の接合材料は、銀フィラーと、比弾性率を有する耐熱性樹脂粒子とを含む。以下、本発明の接合材料の各成分について詳細に説明する。
【0018】
<銀フィラー>
銀フィラーは、本発明の接合材料の主成分である。加熱によって一緒に接合材料ヒューズ(焼結)中に銀フィラーは銀焼結体を形成し、それによって優れた熱伝導性と接合強度を有する接合層が形成される。
【0019】
本発明に係る接合材料の銀フィラーの含有量は、好ましくは、接合材料中の固体成分の全質量の90質量%以上、より91質量%以上、さらに好ましくは93質量%以上であり、一実施態様では94質量%以上が特に好ましい。銀フィラーの含有量が多いほど、接着強度と熱伝導性に優れた接合材が得られる。銀フィラーの含有量は、接合材中の固形分に対して99.9質量%以下、好ましくは99.0質量%以下である。ここで、「固形分」とは、加熱により接合層から消失する成分を除く、接合材料中の全ての成分をいう。
【0020】
銀フィラーは、好ましくは1nm〜50μmの中粒径を有する。銀フィラーの中心粒径は、より好ましくは10nm〜30μmであり、さらにより好ましくは100nm〜20μmである。銀フィラーの粒径が上記範囲内であると、フィラーの焼結性がより向上することができる。また、フィラーは、接合材中に良好に分散しており、接合材の保存安定性を向上させることができ、均一な接合強度を得ることができる。ここで、銀フィラーの「中心粒径」とは、レーザー回折式粒度分布計での測定により得られる体積基準粒度分布曲線におけるメジアン径(50%粒径:D50)を示す。
【0021】
銀フィラーの形状は特に限定されず、その例としては、球状、略球状、楕円球状、紡錘状、立方体状、略立方体状、フレーク状、不定形形が挙げられる。中でも、保存安定性の観点から、球状、略球状、フレーク状フィラーが好ましく用いられる。
【0022】
一実施形態では、フレーク状フィラーがさらに好ましい。フレーク状フィラーの例としては、板状、ラメラ状、および鱗片状充填剤が挙げられる。フレーク状フィラーの好ましい例としては、側面方向に薄板状であり、正面方向に円形、楕円形、多角形、または不定形の粒子が挙げられる。このような形状のフィラーは、フィラーとの間の高い接触面積に起因する優れた加熱焼結性を有するため、焼結体において気孔率を減少させることができる。
【0023】
フレーク状フィラーの含有量は、銀フィラーの30質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、60質量%以上がさらに好ましく、70質量%以上が特に好ましい。一実施形態では、フレーク状フィラーの含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上であり、100質量%であってよい。フレーク状フィラーを上記範囲内に含む場合、低い気孔率と熱伝導性に優れた焼結体を形成することができる。
【0024】
以下、フレーク状フィラーの好ましい例について説明する。
【0025】
本発明においては、平滑表面を有するフレーク状フィラーは特に好ましい。このようなフィラーは表面が平坦であるため、フィラー同士の接触面積がより大きくなり、優れた焼結性が実現され、これにより熱伝導性に優れた接合層が得られる。さらに、フィラーは滑らかな表面を有するので、フィラーは優れた分散性を有しており、それによって均質な接合強度および応力緩和能を有する接合層を形成することができる。
【0026】
フィラーは滑らかな表面を有する場合、表面の算術平均粗さ(Ra)は、好ましくは20nm以下、より好ましくは10nm以下である。フィラーの分散性およびそれから得られる接着層の熱伝導率の観点から、算術平均粗さ(Ra)は、好ましくは8.5nm以下、より好ましくは5nm以下であり、更に好ましくは3.5nmである。製造の容易さを考慮すると、算術平均粗さ(Ra)は、好ましくは1nm以上である。
【0027】
ここで、算術平均粗さ(Ra)は、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて測定することができる。AFMは、カンチレバーの先端に取り付けられたプローブを使用して試料表面をトレースするか、またはプローブと試料表面との間の一定距離を維持して試料表面を走査する。カンチレバーの垂直変位を測定することにより、試料表面の凹凸形状を評価する。測定条件は以下の通りである。
モード:コンタクトモード
カンチレバー:オリンパス製OMCL−TR800PSA−1
高さ方向分解能:0.01nm
横方向解像度:0.2nm
【0028】
さらに、表面が平滑なフレーク状フィラーは、結晶性フィラーであることが好ましい。結晶質フレーク状フィラーは優れた焼結性を有し、優れた接合強度を提供することができる。結晶は単結晶でも多結晶でもよい。表面の平滑性の観点から、結晶はより好ましくは単結晶である。結晶性銀フィラーは、X線回折分析等により確認することができる。
【0029】
さらに、本発明の実施態様のフレーク状フィラーは、好ましくは0.05μm以上20μm以下の中粒径(D50)を有する。0.05μm以上の中粒径を有する粒子を容易に製造し、20μm以下の中粒径を有する粒子は、優れた焼結性を有する。中粒径は、より好ましくは15μm以下、さらに好ましくは8μm以下であり、一実施形態では、5μm以下が特に好ましい。中粒径は、より好ましくは0.1μm以上、さらに好ましくは0.3μm以上である。
【0030】
粒子径の標準偏差(δD)は、好ましくは10μm以下、より好ましくは8μm以下、さらに好ましくは4μm以下である。本明細書において、粒子径の標準偏差(δD)は、ランダムに選択された100個の粒子の粒径に基づいて算出される値である。
【0031】
粒子の平均厚さ(T)は、1nm以上100nm以下であることが好ましい。1nm以上の平均厚さを有する粒子は、より容易に製造することができ、100nm以下の平均厚さを有する粒子は、優れた熱伝導性を有する焼結体を提供することができる。より好ましくは80nm以下であり、さらに好ましくは50nm以下である。より好ましくは10nm以上、さらに好ましくは20nm以上である。ここで、粒子の平均厚さ(T)は、ランダムに選択された100個の粒子の厚さの平均値である。粒子の厚さは、走査型電子顕微鏡(SEM)写真に基づいて、視覚的に、または画像解析ソフトウェアを用いて測定することができる。
【0032】
フレーク状フィラーのアスペクト比(粒子の中心粒径(D50)/平均厚さ(T))は、20以上1000以下であることが好ましい。アスペクト比は30以上がより好ましく、35以上がさらに好ましい。アスペクト比は、500以下であることがより好ましく、200以下であることがさらに好ましく、100以下であることが特に好ましい。
【0033】
本発明に用いることができる銀フィラーは、還元法、粉砕法、電解法、噴霧法、熱処理法等の公知の方法により製造することができる。上記のようなフレーク状フィラーの製造方法としては、例えば、特開2014−196527号公報に記載されている方法が挙げられる。全体の開示は、その参照により本明細書に組み込まれる。
【0034】
一実施形態では、銀フィラーの表面を有機物質でコーティングすることができる。
【0035】
有機物質の量は、好ましくは、銀フィラーの0.01〜10重量%、より好ましくは0.1〜2重量%である。銀フィラーの形状等に応じて有機物の量を調整することも好ましい。有機物質の量は、加熱により有機物を揮発または熱分解させ、例えば重量減少を測定することにより測定することができる。
【0036】
ここで、銀フィラーが「有機物で被覆されている」とは、有機溶剤中に銀フィラーを分散させて、有機フィラーの表面に有機溶剤を付着させた状態をいう。
【0037】
銀フィラーを被覆する有機物としては、例えば、炭素原子数1〜5個のアルキルアルコール、炭素原子数1〜5個のアルカンチオール、炭素原子数1〜5個のアルカンポリオール等の親水性有機化合物、炭素原子数1〜5子の脂肪酸;疎水性有機化合物、例えば15個以上の炭素原子を有する高級脂肪酸およびその誘導体、6〜14個の炭素原子を有する中級脂肪酸およびその誘導体、炭素原子数6個以上のアルキルアルコール、16個以上の炭素原子を有するアルキルアミン、または6個以上の炭素原子を有するアルカンチオールである。
【0038】
中でも、高級脂肪酸、中級脂肪酸、およびそれらの金属塩、アミド、アミン、エステル化合物が好ましい。撥水性(疎水性)有機化合物は、より高級または中級の脂肪酸またはその撥水性誘導体であることがより好ましい。そのコーティング効果の観点から、より高いまたは中間の脂肪酸が特に好ましい。
【0039】
高級脂肪酸の例としては、直鎖状飽和脂肪酸、例えばペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、12−ヒドロキシオクタデカン酸、エイコサン酸、ドコサン酸、テトラコサン酸、ヘキサコサン酸(セリン酸)またはオクタコサン酸等;分岐飽和脂肪酸、例えば2−ペンチルノナン酸、2−ヘキシルデカン酸、2−ヘプチルドデカン酸、またはイソステアリン酸等;および不飽和脂肪酸、例えばパルミトレイン酸、オレイン酸、イソオレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノール酸、ガドレイン酸、エルカ酸、およびセラコレイン酸等が挙げられる。
【0040】
中級脂肪酸の例としては、直鎖状飽和脂肪酸、例えばヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸等;分岐飽和脂肪酸、例えばイソヘキサン酸、イソヘプタン酸、2−エチルヘキサン酸、イソオクタン酸、イソノナン酸、2−プロピルヘプタン酸、イソデカン酸、イソウンデカン酸、2−ブチルオクタン酸、イソドデカン酸、およびイソトリデカン酸等;不飽和脂肪酸、例えば10−ウンデセン酸等が挙げられる。
【0041】
表面に有機物が被覆された銀フィラーの製造方法としては、特に限定されないが、有機溶媒の存在下、還元法により銀フィラーを製造する方法が挙げられる。具体的には、銀フィラーは、特開2006−183072号公報および特開2011−153362号公報等に記載の通り、カルボン酸銀塩と第1級アミンとを混合し、還元剤を用いて有機溶剤の存在下に銀フィラーを析出させることにより得ることができる。また、銀フィラーは、例えば、グリコール、水またはアルコール、および分散媒としてのキャリア媒体を使用して、シュウ酸銀を分散させ、続いて熱および/または圧力を加える工程を含む特開2014−196527公報に記載の方法によって得ることができる。上記出願の全開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0042】
得られた銀フィラーを製造するために使用される溶媒中で分散させ、本発明の接合材料に直接分散液を添加することも好ましい。
【0043】
また、銀フィラーの表面を2以上の有機物層で被覆してもよい。このような充填剤は、例えば上記製造された有機物のコーティングを有する銀充填材を他の有機溶剤に分散させることにより得ることができる。このような「他の溶剤」としては、本発明の接合材に添加する溶剤を好ましく用いることができる。
【0044】
銀フィラーの表面を有機物で被覆する場合、銀フィラーの結合材中での凝集をより一層防止または低減することができる。また、フィラーの表面に有機物質は、銀表面を露出させるために加熱する場合に揮発、溶出、または熱分解させ、その結果、充填材の焼結性をより高めることができる。
【0045】
一実施形態では、銀充填材は、酸化銀粒子または少なくともその表面に酸化銀層を有する粒子であってもよい。このような銀フィラーを用いると、焼結時の酸化銀の還元により銀表面が露出し、焼結性をより高めることができる。
【0046】
銀フィラーは、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。 異なる形状または異なるサイズの充填剤の組み合わせは、焼結体の気孔率を減少させることができる。 組み合わせの例としては、フレーク状充填剤と、フレーク状充填剤の中心粒径よりも小さい中心粒径を有する略球状の充填剤との混合物が挙げられるが、これらに限定されない。含有量が略球状充填剤は、銀フィラーの1〜50質量%の範囲、より好ましくは5〜30質量%の範囲であってよい。
【0047】
一実施形態では、本発明に係る接合材料は、銀フィラーの部分の代わりに他の金属のフィラーを含むことができる。銀以外の金属の例としては、銅、金、錫、亜鉛、チタンおよびこれらの合金や酸化物が挙げられ、中でも銅および銅を含む合金が好ましい。
【0048】
このような金属フィラーの粒径、形状、および表面被覆の好ましい例としては、前記銀フィラーに例示したものと同様のものが挙げられる。銀フィラー以外の金属フィラーの含有量は、好ましくは、銀フィラーの0〜30質量%、より好ましくは1〜20質量%である。
【0049】
<樹脂粒子>
樹脂粒子は、低モジュラス部分、すなわち接合層中の銀成分のマトリックスより柔軟な部分を形成し、それによって接合層の応力緩和能力を増大させる。
【0050】
したがって、樹脂粒子の弾性率(E)は、銀マトリックスの弾性率(E)より低く、好ましくは10GPa以下である。樹脂粒子の弾性率(E)は、より好ましくは0.01MPa以上1GPa以下、さらに好ましくは0.1MPa以上500MPa以下であり、特に好ましくは0.5MPa以上100MPa以下であり、および一実施形態では、1MPa以上50MPa以下が特に好ましい。樹脂の弾性率(E)が低いほど、半導体動作時の製造工程や冷却−加熱サイクルで発生する応力を吸収する効果をより高めることができる。一方、弾性率(E)が小さすぎると、接着強度や加工性が低下することがある。
【0051】
ここで、弾性率(E)とは、25℃におけるヤング率(圧縮弾性率)であり、以下の通りJIS K 6254(ISO7742:2008)を参照して決定することができる:
試験片:直径25mm、厚さ12.5mm
圧縮速度:10±1mm/分
測定温度:25℃
試験片を25%の圧縮歪で4回圧縮し、圧縮力と歪みとの関係を記録する。得られた4回目の圧縮/圧縮曲線から、弾性率(E)を次式により算出する:
弾性率(E)(MPa)=F/A・ε
ここで、「F」は圧縮力(N)、「A」は試験片本来の断面積(mm)、「ε」は試験片の変形量を示す。
【0052】
ここで、樹脂粒子としては、ゴム状(エラストマー)樹脂と塑性を有する樹脂の両方を用いることができる。
【0053】
一実施形態において、ゴム状粒子は、応力緩和の観点からより好ましい。ゴム状粒子のゴム硬度(デュロメーターA硬度)は、10度以上100度以下が好ましく、20度以上90度以下がより好ましい。「硬度計硬度」は、JIS K 6253を参考にして求めることができる。
【0054】
本発明の樹脂粒子は、耐熱性が高いことが好ましい。具体的には、樹脂の熱分解温度は、200℃以上が好ましく、250℃以上がより好ましく、300℃以上がさらに好ましく、350℃以上が特に好ましい。
【0055】
樹脂の熱分解温度が上記範囲内であると、高温動作時における接合層の機械的特性の劣化をより低減することができる。
【0056】
本発明では、「熱分解温度」は、熱重量測定装置を用いて空気流中25℃から10℃/分の速度で上昇する温度において樹脂の重量が1%減少する温度(1%重量減少温度)のことである。
【0057】
樹脂粒子の形状は特に限定されず、球状、略球状、紡錘状、不定形等が挙げられる。分散性の観点から、球状、略球状、紡錘状が好ましい。
【0058】
樹脂粒子の中心粒子径は、0.05μm以上30μm以下であることが好ましい。一実施形態では、0.1μm以上20μm以下であることが好ましく、0.5μm以上10μm以下であることがより好ましく、5μm以下であることが特に好ましい。一実施形態では、樹脂粒子の中心粒径は、接合層の厚みの1/3以下であることが好ましい。
【0059】
本発明では、樹脂粒子の「中心粒子径」とは、レーザー回折式粒度分布計で測定した体積基準粒度分布曲線における50%粒径(D50)を示す。
【0060】
樹脂粒子の含有量は、上記銀フィラー100質量部を基準に0.1質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましく、1質量部以上がさらに好ましく、2質量部以上が特に好ましい。樹脂粒子の含有量は、銀フィラー100質量部に対して、好ましくは9質量部以下、より好ましくは8質量部以下、さらに好ましくは7質量部以下である。一実施形態では、樹脂粒子の含有量は、6質量部以下であることがさらに好ましい。樹脂粒子の含有量が0.1質量部以上であると、優れた応力緩和能が得られる。樹脂粒子の含有量が9質量部以下であると、接合層中の銀成分の割合が多くなり、熱伝導性を向上させることができる。
【0061】
一実施形態では、熱硬化性樹脂成分が樹脂粒子の代わりにまたは樹脂粒子に加えて過剰に含まれる場合、熱伝導性が損なわれる可能性がある。このような実施形態では、接着材料は、液体熱硬化性樹脂成分を実質的に含まないことが好ましい。具体的には、液状の熱硬化性樹脂成分を含有する場合、その含有量は、銀フィラー100質量部に対して、3質量部以下が好ましく、2質量部以下がより好ましく、1質量部以下がさらに好ましい。
【0062】
本発明に用いられる樹脂粒子の樹脂成分としては、上記弾性率(E)及び耐熱性を有するものであれば特に限定されず、公知の樹脂を用いることができる。その例として、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、スルホン系樹脂、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、イミド系樹脂、アミドイミド系樹脂、フェニレンオキシド系樹脂、マレイミド系樹脂、シアネートエステル系樹脂等が挙げられる。
【0063】
以下、樹脂粒子の樹脂成分の例について説明するが、本発明の樹脂粒子はこれに限定されるものではない。
【0064】
シリコーン系樹脂としては、例えば、下記式で表されるシロキサン結合を主骨格とするホモポリマーまたはコポリマーが挙げられる。
−(−Si(R−O−)− (1)
【0065】
式(1)中、Rは、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アラルキル基、ハロアルキル基、シクロアルキル基、または上記エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、(メタ)アクリルオキシ基で置換されている。Rの炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜10であることがより好ましい。Rで表されるハロアルキル基のハロゲンの例としては、塩素、フッ素、ホウ素、ヨウ素等が挙げられる。ここで、nは、特に限定されないが、好ましくは1,000〜100,000、より好ましくは2,000〜50,000、さらに好ましくは5,000〜10,000である。ポリマー構造は、直鎖であっても分枝鎖であってよい。
【0066】
一実施態様では、前記式(1)中のRは、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アラルキル基およびフルオロアルキル基から選択される少なくとも1種であることが好ましく、アルキル基(例えばメチルおよびエチル等)およびアリール基(例えばフェニル等)である。
【0067】
一実施形態では、Rの80モル%以上がより好ましくはメチル基である。
【0068】
本発明のシリコーン系樹脂粒子は、上記ホモポリマーまたはコポリマーをベース成分として用いてなる硬化物である。応力緩和の観点から、硬化物はゴム状硬化物であることが好ましい。シリコーンゴムの好適な例としては、ジメチルシリコーンゴム、フッ素シリコーンゴム、メチルフェニルシリコーンゴム、メチルビニルシリコーンゴム等が挙げられる。
【0069】
フッ素系樹脂としては、単独重合体または共重合体、例えばテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン/プロピレン、テトラフルオロエチレン/アルコキシエチレン、テトラフルオロエチレン/フルオロビニルエーテル、テトラフルオロエチレン/プロピレン/フッ化ビニリデン、エチレン/ヘキサフルオロプロピレン/テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、エチレン/ヘキサフルオロプロピレン、エチレン/ヘキサフルオロプロピレン/フッ化ビニリデン、およびフルオロホスファゼン等が挙げられる。また、上記ポリマーの全構成単位の90モル%以上がパーフルオロ置換されていることが好ましい。
【0070】
中でも、耐熱性の観点から、テトラフルオロエチレン単独重合体(PTFE)またはテトラフルオロエチレン単位(−CF−CF−)を含む共重合体が好ましい。テトラフルオロエチレン単独重合体、および全単位の80モル%以上、好ましくは90モル%以上がテトラフルオロエチレン単位である共重合体がより好ましい。
【0071】
本発明に係るフッ素系樹脂粒子は、上記ホモポリマーまたはコポリマーをベース成分として用いてなる硬化物である。応力緩和の観点から、硬化物はゴム状硬化物であることが好ましい。
【0072】
フッ素系ゴム(フッ素ゴム)の例としては、テトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルコキシエチレン(PFA)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロペン(FEP)、およびエチレン/テトラフルオロエチレン(ETFE)が挙げられる。
【0073】
エポキシ系樹脂の例としては、脂肪族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、エポキシノボラック型樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、およびそれらの混合物が挙げられる。本発明のエポキシ系樹脂粒子は、上記樹脂成分からなる架橋硬化物であることが好ましい。
【0074】
上記樹脂成分の硬化または加硫には、公知の硬化剤や加硫剤などを用いることができる。
【0075】
応力緩和の観点から、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、エポキシ系樹脂成分からなるゴム状粒子が好ましい。耐熱性の観点から、シリコーンゴム、フッ素ゴムがより好ましい。
【0076】
樹脂粒子は、上記樹脂成分を無機担体等で支持した形態であってよい。本発明の効果を阻害しない範囲で、無機フィラー、金属フィラー、耐熱安定化剤、酸化防止剤等を含有させてもよい。
【0077】
また、樹脂粒子は、表面に被覆層を有することが好ましい。
【0078】
被覆層としては、例えば、上記例示した樹脂成分を用いることができる。一実施形態では、内部の樹脂粒子と比較してコーティング層の樹脂成分の架橋密度を増加させることによって、耐熱性および形状安定性を改善することができる。
【0079】
耐熱性の観点から、被覆層はシリコーン系樹脂であることが好ましい。好ましい例としては、下記式で表される架橋構造を有するポリオルガノシルセスキオキサン硬化物が挙げられる:
(R)SiO3/2
[式中、Rの定義は前記式(1)と同じであり、Rの50モル%以上がメチル基であることがより好ましい。]
【0080】
樹脂粒子が被覆層を有する場合、被覆層の被覆率は、樹脂粒子の表面積を基準に、好ましくは1%以上100%以下、より好ましくは5%以上、好ましくは10%以上である。被覆率の質量%は、樹脂粒子を基準に0.5質量%以上500質量%以下であることが好ましく、1質量%以上100質量%以下であることがより好ましい。
【0081】
樹脂粒子は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0082】
本発明の樹脂粒子には、市販生成物を用いてもよく、その例としては、シリコーン系樹脂粒子、例えば信越化学工業株式会社製KMP−600、KMP−601、KMP−602、KMP−605、X−52−7030等が挙げられる。
【0083】
<添加剤>
本発明の接合材料は、添加剤をさらに含むことができる。添加剤としては、加熱中の銀フィラーの焼結を促進することができる焼結促進剤を挙げることができる。焼結促進剤としては、特に限定されず、銀フィラーとの組み合わせ等を考慮して適宜選択することができる。
【0084】
焼結促進剤としては、銀フィラーの表面を被覆する有機物の溶出および/または熱分解を促進することができる成分が挙げられる。
【0085】
このような成分の例としては、有機塩基化合物および酸化剤として働く化合物が挙げられる。
【0086】
有機塩基化合物は、好ましくは、窒素含有塩基性化合物である。窒素含有塩基性化合物としては、非環状アミン化合物、窒素含有ヘテロ環化合物、ホスファゼン化合物等が挙げられ、窒素含有ヘテロ環化合物が好ましい。
【0087】
非環状アミン化合物としては、例えば、アルキルアミン、アミノアルコール、アルキレンジアミン等が挙げられる。非環状アミン化合物が好ましく、より好ましくは1〜15個の炭素原子、1〜10個の炭素原子を有する。アルキルアミンとしては、モノ、ジまたはトリ−アルキルアミンを含み、好ましくはトリアルキルアミンである。トリアルキルアミンの例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリブチルアミン等が挙げられる。アミノアルコールの例としては、モノ、ジ、またはトリ−アルコールアミン、例えばモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、ジイソプロパノールアミン及びトリイソプロパノールアミン等が挙げられる。アルキレンジアミンの例としては、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。
【0088】
窒素含有ヘテロ環化合物の例としては、非芳香族環状アミン化合物、窒素含有芳香族ヘテロ環化合物、窒素含有多環式複素環化合物等が挙げられる。
【0089】
非芳香族環状アミン化合物の例としては、環状第2級アミン化合物、例えばエチレンイミン(またはアジリジン)、ピロリジン、ピペリジンおよびモルホリン等;環状第3級アミン化合物、例えば1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、N−メチルピロリジンおよびN−メチルモルホリン等が挙げられる。
【0090】
窒素含有芳香族ヘテロ環化合物の例としては、ピリジン系化合物、例えばピリジン、ピコリン、2,6−ルチジン、コリジンおよびジメチルアミノピリジン(DMAP);イミダゾール系化合物;トリアゾール系化合物、例えば1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾールおよびベンゾトリアゾール等;ビピリジン化合物、例えば2,2’−ビピリジンおよび4,4’−ビピリジン等;ピリミジン塩基;プリン塩基;およびトリアジン系化合物等が挙げられる。窒素含有芳香族複素環化合物は好ましくは、窒素含有部分として5員環または6員環を有する。中でも、イミダゾール系化合物が好ましい。
【0091】
イミダゾール系化合物の例としては、イミダゾールおよびベンズイミダゾールが挙げられるがこれらに限定されない。イミダゾール系化合物は、少なくとも1個の置換基を有し得るが、その例として1〜4個の炭素原子、ヒドロキシル基、アミノ基、フェニル基等のアルキル基が挙げられる。置換基は好ましくはメチル基またはエチル基であり、より好ましくはメチル基である。
【0092】
窒素含有多環式複素環化合物の例としては、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン(DBN)、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン(MTBD)、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5エン(TBD)等が挙げられる。
【0093】
ホスファゼン化合物の例としては、ホスファゼン化合物、例えばBEMP(2−tert−ブチルイミノ−2−ジエチルアミノ−1,3−ジメチルパーヒドロ−1,3,2−ジアザホスホリン)、tBu−P1(tert−ブチルイミノ−トリス(ジメチルアミノ)ホスホラン)、tBu−P1−t(tert−ブチルイミノ−トリ(ピロリジノ)ホスホラン)、Et−P2(1−エチル−2,2,4,4,4−ペンタキス(ジメチルアミノ)−2λ、4λ−カテナジ(ホスファゼン))、tBu−P4(1−tert−ブチル−4,4,4−トリス(ジメチルアミノ)−2,2−ビス[トリス(ジメチルアミノ)−ホスホラニリデンアミノ]−2λ、4λ−カテナジ(ホスファゼン))等などが挙げられるがこれらに限定されない。
【0094】
一実施形態では、窒素含有ヘテロ環化合物は好ましくは、分子中に2以上の窒素原子を 有する化合物であり、その例は、アミジン部分および/またはグアニジン部分を有する物を含み得る。ここで、アミジン部分は、2つの窒素原子が1つの炭素原子にそれぞれ1つの単結合と1つの二重結合で結合した構造である。グアニジン部分は、3個の窒素原子がそれぞれ2つの単結合と一つの二重結合で炭素原子に結合した構造である。このような化合物の例としては、イミダゾール系化合物、DBU、DBN、MTBD、TBD等が挙げられる。
【0095】
一実施形態では、本発明の有機塩基化合物の共役酸のpKaは、好ましくは7.0以上であり、より好ましくは8.0以上である。一実施形態では、塩基性の高い化合物はより好ましく、その共役酸のpKaは、好ましくは9.0以上、より好ましくは10.0以上、さらに好ましくは11.0以上である。本発明では、共役酸のpKaは、DMSO中で25℃で測定した値である。
【0096】
好ましくは、有機塩基化合物ではないか、または焼結体中にほとんど存在しない。この観点から、有機塩基化合物の沸点は、本発明の接合材料の焼結温度より過度に高くない、好ましくは焼結温度より低い、さらにより好ましくは焼結温度より100℃以上低い。
【0097】
一実施形態では、銀フィラーの焼結への効果の観点から、イミダゾール系化合物、DBUおよびDBNが好ましい。
【0098】
有機塩基化合物は、単独で使用してよく、または2種以上組み合わせてもよい。
【0099】
酸化剤の例としては、有機過酸化物、無機過酸化物、無機酸等が挙げられる。
【0100】
有機過酸化物は、過酸化物アニオンO2−または過酸化物基−O−O−、およびここに直接結合した少なくとも1つの有機基を有する化合物である。その例としては、ジイソブチリルパーオキシド、クモルペルオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシネオデカノエート、ジ−n−プロピルペルオキシジカーボネート、tert−アミルペルオキシネオデカノエート、ジ−(2−エチルヘキシル)−ペルオキシジカーボネート、tert−ブチルペルオキシネオデカノエート、ジ−n−tert−ブチルペルオキシピバレート、ジ−(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)ペルオキシド、tert−ブチルペルオキシ−2(t−ブチルペルオキシジカーボネート)、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシピバレート、tert−ブチルペルオキシネオヘプタノエート、tert−ブチルペルオキシイソブチレート、tert−アミルペルオキシピバレート、tert−ブチルペルオキシピバレート、ジ−(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)ペルオキシド、tert−ブチル−ペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルペルオキシイソブチレート、1,1−ジ−(tert−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ−(tert−ブチルペルオキシ)−シクロヘキサン、tert−ブチル−ペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、2,2−ジ−(tert−ブチルペルオキシ)−ブタン、tert−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、tert−ブチルペルオキシアセテート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルペルオキシ)−ヘキサン、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−アミルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルペルオキシジエチルアセテート、tert−アミルペルオキシジエチルアセテート、tert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート、tert−ブチルペルオキシベンゾエート、ジ−tert−アミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、tert−ブチルクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、3,6,9−トリエチル−3,6,9−トリメチル−1,4,7−トリペルオキソナン、ジ−イソプロピルベンゼンモノヒドロペルオキシド、p−メンタンヒドロペルオキシド、クモールヒドロペルオキシド、ジクミルパーオキサイド、および1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロペルオキシドが挙げられる。
【0101】
無機過酸化物は、過酸化物アニオンO2−またはペルオキシド基−O−O−、およびそこに直接結合した無機基を有する化合物である。その例としては、過酸化水素、モノメチルアンモニウムパーオキサイド、ジメチルアンモニウムパーオキサイド、トリメチルアンモニウムパーオキサイド、モノエチルアンモニウムパーオキサイド、ジエチルアンモニウムパーオキサイド、トリエチルアンモニウムパーオキサイド、モノプロピルアンモニウムパーオキサイド、ジプロピルアンモニウムパーオキサイド、トリプロピルアンモニウムパーオキサイド、モノイソプロピルアンモニウムパーオキサイド、ジイソプロピルアンモニウムパーオキサイド、トリイソプロピルアンモニウムパーオキサイド、モノブチルアンモニウムパーオキサイド、ジブチルアンモニウムパーオキサイド、トリブチルアンモニウムパーオキサイド、過酸化リチウム、過酸化ナトリウム、過酸化カリウム、過酸化マグネシウム、過酸化カルシウム、過酸化バリウム、過ホウ酸アンモニウム、過ホウ酸リチウム、過ホウ酸カリウム、または過ホウ酸ナトリウムが挙げられる。
【0102】
本発明において、有機過酸化物および無機過酸化物は、好ましくは200℃以下の分解温度(1時間半寿命温度)を有する。
【0103】
無機酸の例としては、オルトリン酸、ピロリン酸、メタリン酸、ポリリン酸などのリン酸化合物が挙げられる。
【0104】
銀フィラーの表面上に存在し得る酸化銀の還元を促進する成分は、好ましくは、焼結促進剤として使用される。
【0105】
酸化銀の還元を促進する成分の例としては、アルコール化合物やカルボン酸化合物が挙げられる。アルコール化合物の例としては、クエン酸、アスコルビン酸、グルコース等の多価アルコールが挙げられる。カルボン酸化合物の例としては、アルキルカルボン酸などの第1級カルボン酸、第2級カルボン酸、第3級カルボン酸;ジカルボン酸;および環状構造を有するカルボキシル化合物等が挙げられる。また、酸化銀の還元を促進する成分として、焼成中に一酸化炭素を放出または発生する有機酸塩、有機酸エステル、カルボニル錯体などを用いることができる。
【0106】
添加剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0107】
有機塩基化合物以外の添加剤を使用する場合、添加剤の含有量は、銀フィラー100質量部を基準に好ましくは、0.01〜3質量部、より好ましくは0.05〜1.5質量部、さらに好ましくは0.1〜1.0質量部である。
【0108】
<溶媒>
本発明の接合材料は、さらに、接合材の焼結温度以下で気化または消滅する溶媒を含むことができる。
【0109】
溶剤は、接合材料の流動性を調節して加工性を改善することができる。溶媒はまた、焼結中の揮発および/または銀充填材を被覆する有機層の除去による銀充填剤の焼結性を改善する効果を有してもよい。また、酸化銀層の還元を促進する効果を有する化合物も溶媒として用いることが好ましい。
【0110】
本発明において使用される溶媒の沸点は、好ましくは60℃以上300℃以下である。沸点が上記範囲にあると、製造工程中の溶媒の揮発や焼結後の溶媒の残存を抑制することができる。
【0111】
溶媒の例としては、アルコール、例えば脂肪族アルコール、脂環式アルコール、芳香族アルコール、および多価アルコール;グリコールエーテル;グリコールエステル;グリコールエーテルエステル;脂肪族および/または芳香族炭化水素;エステル;エーテル;アミド;および環状ケトン等が挙げられる。溶媒の具体例としては、特にメチルカルビトール、エチルカルビトール、プロピルカルビトール、ブチルカルビトール(BC)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(DPGME)、トリエチレングリコールジメチルエーテル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブまたはブチルセルソルブ、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート(BCA)、メチルセロソルブアセテート、またはエチルセロソルブアセテート、エチレングリコール、ジプロピレングリコール(DPG)、ポリエチレングリコール、シクロオクタノン、シクロヘプタノン、シクロヘキサノン、ベンジルアルコール、グリセリン、ブチルエトキシアセテート、プロピレンカーボネート、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、γ−ブチロラクトン、イソホロン、グリシジルフェニルエーテル、テルピネオール、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
【0112】
溶媒は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0113】
添加する溶媒の量は特に限定されないが、銀フィラー100質量部に基づいて、好ましくは0.5質量部以上20重量部以下、より好ましくは1質量部以上10質量部以下の範囲である。一実施形態において、量は8質量部以下であることが好ましい。溶媒の量が上記範囲にあると、塗布した後乾燥または焼成工程での収縮率は、製造中に改良された加工性を維持しながら、より低減することができる。
【0114】
本発明に係る接合材料は、好ましくは5000〜150,000ミリパスカルの範囲内、より好ましくは8,000〜100,000ミリパスカルの範囲内の粘度を有する。接合材料は、好ましくは1.0〜5.0の範囲内のチキソトロピー指数を有します。粘度およびチキソトロピー指数が上記範囲内である場合、接合材料の加工性をより向上させることができる。本明細書において、粘度は、No.7スピンドル/10回転数/25℃の条件下でブルックフィールド粘度計(RV DV−II)を用いて測定された値を表す。チキソトロピー指数は、0.5rpmでの粘度/5rpmでの粘度の比として算出した値である。
【0115】
さらに、無機微粒子、酸化防止剤、安定化剤、分散剤およびチキソトロピー性付与材料等を接合材料に、本発明の効果を損なわない範囲内で必要に応じて添加することができる。
【0116】
本発明に係る接合材料は、銀フィラーおよび焼結促進剤、および必要に応じて添加剤、溶媒等を、ミキサー、例えばビーズミル、グラインダー、ポットミル、三本ロールミル、ロータリーミキサーまたは二軸スクリューミキサー等に導入し、これらを混合することによって製造することができる。
【0117】
接合層は、接合される部材の所望の部分に、本発明に係る接合材を塗布し、加熱することにより形成される。接合層は、応力緩和能に優れた樹脂成分が焼結合金のマトリックス中に分散した構造を有する。
【0118】
樹脂成分を含む低弾性率部分の割合は、接着層の1〜50体積%が好ましく、5〜40体積%がより好ましい。
【0119】
本発明の接合材からなる接合層は、気孔率(銀焼結体に形成される空隙の体積の割合)が小さいことが好ましい。気孔率が低いほど、接合層の応力緩和能が低下するとともに、優れた接合強度と熱伝導率が得られる。しかしながら、本発明によれば、銀焼結体は、低気孔率の銀焼結体中に樹脂成分の低弾性率部分が分散しており、優れた接合強度と放熱性との両立が図られ、向上した応力緩和能を達成することができる。
【0120】
したがって、焼結後の接合層の気孔率は、0%以上12%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましく、8%以下であることがさらに好ましい。
【0121】
本明細書において、気孔率は、接合領域(接合される2つの部材の間に挟まれた領域)上の平均値であり、および以下に実施例で詳細に説明する通り測定することができる。
【0122】
1.研磨剤で接合体を研磨して接合層の横断面を露出させる。
2.別の末端に結合領域の一方の端から面以上の10枚のSEM画像を撮ります。
3.顕微鏡にイメージをインポートし、画像における空隙を輝度抽出により抽出し、および空隙の面積の割合を計算する。
結合領域の気孔率は、取り込まれたイメージの気孔の平均値として算出される。
【0123】
本発明によれば、熱伝導率の高い接合層を得ることができる。接合層の熱伝導率(25℃)は、好ましくは80W/mK以上、より好ましくは160W/mK以上である。一実施形態では、200W/mK以上の熱伝導率がさらに好ましい。ここで、熱伝導率は、JIS R1611−2010に準拠したレーザーフラッシュ式熱量計を用いた方法で測定することができる。その詳細は実施例で説明する。
【0124】
接合層の厚さは、塗布にしたがって接合強度に必要な発揮する適宜設定することができ、例えば厚さは50〜100μmに設定することができる。
【0125】
本発明の接合材料は、種々の用途に好適に用いることができ、パワー半導体素子の接合および/または異なった熱膨張係数を有する部品の接合に特に好適である。
【0126】
本発明に係る接合材料を用いて接合体を製造する方法は、以下の工程を含む:
接合すべき2つの部材を供給する工程;
2つの部材の結合すべき表面が、その間に配置される本発明の接合材料と互いに対向するように2つの部材と接合材料を配置する工程;および
2つの部材をその間に配置された接合材料と共に所定の温度に加熱する工程。
【0127】
本発明に係る接合材料を用いた接合体の一態様として、半導体装置及びその製造方法について説明する。
【0128】
図1は、本発明の半導体装置の部分断面図である。一実施形態では、半導体装置は、半導体チップ(1)および基材(4)を含み、半導体チップ(1)と基板の金属表面(3)を、本発明の接合材を焼結することにより得られる接着層(2)により互いに接着される。別の実施態様では、半導体装置は冷却プレート(5)を更に含み、半導体チップ(1)と基材の金属表面(3)、および/または基材の金属表面(3)と冷却プレート(5)が、焼結により得られた接着層(2および/または2’)によって互いに結合されている。
【0129】
(接合する部材)
半導体チップは、特に限定されない。その例としては、SiチップとSiCチップが挙げられるが、これらに限定されない。半導体チップの裏面(接合される面)は、好ましくは、銀、銅、ニッケル、金等で金属メッキされる。半導体チップの形状の例としては、特に限定されないが、正方形および約2mm〜約15mmの高さおよび幅を有する矩形が挙げられるが、これらに限定されない。
【0130】
基材の例としては、金属基材、セラミック基材、金属層とセラミック層がサンドイッチ構造に積層された構造を有する基材が、これらに限定されない。基板の表面(接合される面)は、好ましくは金属である。例えば、金属メッキ基材、例えば銀メッキ基材、金めっき基材、ニッケルメッキ基材、または錫めっき基材;金属基材、例えば銅基材またはアルミニウム基材等を好適に用いることができる。具体例としては、DBU基材、DBA基材、およびAMB基材等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0131】
(半導体装置の作製方法)
本実施形態の半導体装置の製造方法は、以下の工程を含む。
(1)基材上に本発明の接合材料を適用する工程、
(2)基材上に半導体チップを配置する工程、および
(3)半導体チップが載置された基材を加熱する工程。
【0132】
上記工程(1)において、基材上に接合材料を塗布する方法は、特に限定されないが、ディスペンス法やスクリーン印刷法等を用いることができる。
上記工程(2)においては、公知の方法を、基板上(実装)半導体チップを配置するための方法として使用することができる。上記工程(2)は、半導体チップを配置する工程、および適用接合材料の厚さ等を調整する工程を含むことができる。
上記工程(3)において、加熱の方法は、適切に接着材料または接合される部材に応じて選択することができる。
【0133】
焼結プロファイルの例は、以下が挙げられるがこれらに限定されない:
乾燥工程:90℃以上、15分以上
焼結温度:250℃以上、例えば300℃
圧力:10MPa以上
時間:3分〜5分
【0134】
本実施形態に係る製造方法により製造された半導体装置は、接合層が接着強度および放熱性に優れ、応力緩和能に優れているため、長期信頼性を有する。
【0135】
本発明に係る接合材料は、電子部品、電子機器、電子部品、電気機器などの様々な用途に使用することができる。例えば、接着材料は、好適にチップ部品や例えばコンデンサや抵抗器の回路基板;半導体チップとリードフレームまたは例えばダイオード、メモリ、IC、またはCPUの回路基板;および高発熱CPUチップおよび冷却板を接着するために使用することができる。
【実施例】
【0136】
以下、本発明を実施例によってさらに詳細に説明する。これらの実施例は、本発明を説明するために用いられ、本発明を何ら限定するものではない。
【0137】
実施例で使用した材料を以下に示す。特に指定しない場合は、市販の高純度品を試薬として使用した。
<銀フィラー>
銀フィラー1:
フレーク状フィラー(アスペクト比=20〜200、Ra≦10nm)と球状フィラーの混合物、D50=0.45μm
銀フィラー2:
球状フィラー、D50=2.1μm、
比表面積=0.9mm、TAP密度=5.1g/cm
<樹脂粒子>
樹脂1:球状シリコーンパウダー(X−52−7030、信越シリコーン社製)、D50=5μm
<添加剤>
パーブチルD(ジ−tert−ブチルペルオキシド)
DBU(1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデス−7−エン)
<溶媒>
BCA(ブチルカルビトールアセテート)
BC(ブチルカルビトール)
DPG(ジプロピレングリコール)
【0138】
(実施例1)
<接合材料の作製>
表1に示す割合で銀フィラー、樹脂粒子、添加剤、溶剤を混合して接合材料を調製した。
【0139】
<反りの評価>
得られた接合材料を100μmの厚さで印刷した(銀メッキ銅リードフレーム、25×25mm、0.3mmの厚さ)。半導体チップ(裏面銀メッキSiダイ、10×10mm)を基材に実装した。チップ付き基材を90℃で30分間乾燥させた後、オーブンで300℃/5分/10MPaの条件で加熱して評価用試験片を得た。焼結後の接合層の厚さは約40〜60μmであった。
【0140】
焼結工程で発生した反りを3次元測長機(キーエンス社製KS−1100)を用いて測定した。
【0141】
得られた接合材を2枚の基材(厚さ500μm、5mmφの銀メッキ銅)の間に100μmの厚さで印刷した。2枚の接合材料付基材を90℃で30分間乾燥させた後、オーブンで300℃/5分/10MPaの条件で加熱して評価用試験片を得た。焼結後の接合層の厚さは約40〜60μmであり、得られた試験片の厚さ(すなわち、2枚の基板の厚さと接合層の厚さ)は約1.0〜1.1mmであった。
【0142】
(熱伝導率の測定)
得られた試験片を京都電子工業LFA−502に入れ、熱拡散率(α(m/s))、比熱容量(c(J/gK))を測定して厚み方向の熱伝導率を求めた。室温(23±1℃)での材料密度(ρ(kg/cm))と熱伝導率(λ(W/mK))は、λ=αcρの関係で計算した。
【0143】
参考として、厚さ1mmの銀メッキ銅板の熱伝導率を上記と同様に測定したところ、380W/mKであった。
【0144】
<冷却加熱サイクル試験>
得られた接合材を基材(銀メッキ銅DBC、25×25mm、厚さ1mm)上に100μmの厚さで印刷した。基材上に半導体チップ(裏面銀めっきSiダイ、5×5mm)を実装した。チップ付基材を90℃で30分間乾燥させた後、オーブンで300℃/5分/10MPaの条件で加熱して評価用試験片を得た。
【0145】
SAT(走査型音響顕微鏡)を用いて接合部の状態を評価した。また、接合層の気孔率は以下のようにして求めた。
【0146】
(気孔率の決定)
1.試験片の研磨:
デバイス:BUEHLERベータグラインダー−ポリッシャー60−1990
研磨紙:ストルアスSiCペーパー#120、#220、#500、#800、#1200、#2000
バフ:ストルアスDP−ナップサイズ:200mm径
ダイヤモンドスプレー:ストルアスDP−スプレーP1μm、1/4μm
試験片を研磨紙#120、#220、#500、#800、#1200、#2000、バフ、ダイヤモンドスプレー1μm、1/4μmの順で研磨し、ボンディングの横断面を露出した。
2.SEMイメージング:接合層の横断面のSEM画像は、走査型電子顕微鏡(HITACHI S−3000、倍率=2000倍、1280×960解像度、接合領域の右端から左端の15イメージ)を使用して撮影した。
3.気孔率の計算:得られた画像を、顕微鏡(キーエンスデジタルマイクロスコープVHX−500)へインポートし、空隙は、輝度抽出によって抽出し、気孔率を画像における空隙の面積の割合として決定した。平均気孔率は15枚の画像の気孔率を平均して算出した。
【0147】
上記と同様にして作製した試験片について、−55℃に冷却して30分間保持し、+200℃に加熱して1サイクルとして30分間保持する冷却加熱サイクルに付した。250サイクル、500サイクル、750サイクル後、上記のようにして接合部の状態および接合層の気孔率を評価した。
【0148】
評価結果を表1、および図2〜4に示す。
【0149】
(比較例1)
表1に示す割合で、銀フィラー、樹脂粒子、添加剤、溶剤を混合して接合材を作製した。得られた接合材を実施例1と同様に評価した。その結果を表1、および図2および図4に示す。
【0150】
(比較例2)
表1に示す割合で、銀フィラー、樹脂粒子、添加剤、溶剤を混合して接合材を作製した。得られた接合材を実施例1と同様に評価した。その結果を表1、および図2および図4に示す。
【0151】
(参考例1)
表1に示す割合の銀フィラー、樹脂粒子、添加剤及び溶剤と、液状エポキシ樹脂(イミダゾールを含むビスフェノールA型エポキシ樹脂)とを、接着材の全質量の1.0質量%を混合して接合材を作製した。得られた接合材を実施例1と同様に評価した。その結果を表1および図3に示す。
【0152】
【表1】
【0153】
表1に示すように、実施例1では、熱伝導率を高く維持したまま、比較例1および比較例2に比べてチップおよび基板の反りが大幅に低減されていることがわかった。
【0154】
図2に示すように、比較例1では気孔率が低いものの、接合層に形成されたエアースペースは冷却−加熱サイクルとともに大きくなる傾向がある。比較例2では、気孔率が高く、冷却−加熱サイクルに伴って空気間隔が大きくなる傾向があった。これに対し、実施例1では、接合層中に均一に空隙が分散し、長期冷熱サイクル後も気孔率が13.5%以下に維持されていた。
【0155】
図4に示すように、比較例2の冷却加熱サイクルに伴い、接合部の剥離が顕著に増加した。また、比較例1においても、特に接合部の剥離が接合部のエッジで観察された冷却−加熱サイクルを伴って行われる。一方、実施例1では、長期間の冷却−加熱サイクルを経ても接合部の剥離は見られなかった。
【0156】
これらの結果から、本発明の接合材料を用いることにより、熱伝導率および応力緩和能が高く、長期信頼性に優れた接合体が得られることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0157】
本発明の接合材料は、電子部品、電子デバイス、電気部品、電気デバイス等に適用することができる。特に、コンデンサや抵抗器等のチップ部品と回路基板との接合に有用であり、半導体チップと、ダイオード、メモリ、IC、CPU等のリードフレームまたは回路基板と、高発熱CPU素子と冷却板とを備えている。
【符号の説明】
【0158】
1:半導体チップ
2、2’:接合層
3:基材の金属表面
4:基材
5:冷却板
図1
図2
図3
図4