(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1および2に開示の技術では、容器からの内容物の滑り出し性は改善するが、容器を繰り返し使用する際に内容物の乳化物が油分離したり、滑り出し性が低下したりする等の技術的課題があった。
【0005】
さらに、本発明者らは、内容物が乳化物の場合には、乳化物には適度な滑り出し性が必要であるが、滑り出し性が高すぎると容器内で乳化物が激しく移動し、移動の度に乳化物が内壁の突起に繰り返し強く衝突することになり、乳化破壊につながるという新たな技術的課題を知見した。一方、内壁の平滑性が高いプラスチック容器を用いたとしても、乳化物の物性を調節することで適度な滑り出し性が得られ、かつ、プラスチック容器の製造コストも下げられることを知見した。
【0006】
したがって、本発明の目的は、長期間の保存中に容器内で油分離を起こさずに、使用時に容器からの乳化食品の滑り出し性が維持されたプラスチック容器入り乳化食品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討した結果、驚くべきことに、プラスチック容器に含有された乳化食品において、乳化食品について特定の測定試験によって測定した見かけ上の複素弾性率G
*が特定の条件を満たすことで、上記の技術的課題を解決できることを知見し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の一態様によれば、
プラスチック容器に含有された、油脂、水、及び増粘剤を含む乳化食品であって、
前記乳化食品は、25℃で測定した粘度が、50Pa・s以上500Pa・s以下であり、
前記乳化食品が、連続相として水相を含み、
前記乳化食品中の油脂の含有量が、3質量%以上60質量%以下であり、
前記容器の内壁と前記乳化食品の間に液相が存在し、
前記液相が、25℃で液状の油脂からなり、
前記乳化食品が、下記の動的粘弾性の測定試験1によって測定した見かけ上の複素弾性率G
*について、
条件A:
0Pa<G
0*−G
1*<200Pa、かつ
0.6≦G
1*/G
3*≦4.0
を満たす、プラスチック容器入り乳化食品が提供される。
【0009】
本発明の態様においては、前記乳化食品は、下記の動的粘弾性の測定試験2で測定した損失弾性率G’’の開始時点の値G
i’’および最大値G
m’’が、
条件B:
0Pa≦G
m’’−G
i’’≦20Pa
を満たすことが好ましい。
【0010】
本発明の態様においては、前記乳化食品を構成する油脂が、食用油脂を含むことが好ましい。
【0011】
本発明の態様においては、前記液相を構成する油脂が、食用植物油脂および/または中鎖脂肪酸トリグリセリドを含むことが好ましい。
【0012】
本発明の態様においては、前記乳化食品の比重に対する前記容器の内壁上に存在する液相の比重の比が0.85以上0.95以下であることが好ましい。
【0013】
本発明の態様においては、前記容器の内壁上に存在する液相と同一種の食用油脂を乳化食品の油相中に50%以上含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明のプラスチック容器入り乳化食品は、長期間の保存中に容器内で油分離を起こさずに、使用時に容器からの乳化食品の滑り出し性を維持することができる。また、プラスチック容器自体に滑り出し性を向上させる突起等の手段を設ける必要が無く、プラスチック容器の製造コストを下げることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<プラスチック容器入り乳化食品>
本発明のプラスチック容器入り乳化食品は、特定の物性の乳化食品をプラスチック容器に収納したものであり、さらに容器の内壁と乳化食品の間には液相が存在していることで、使用時に容器からの乳化食品の滑り出し性を向上させることができる。
【0017】
<乳化食品>
乳化食品は、油脂、水、及び増粘剤を含むものであり、卵黄やその他の原料を配合してもよい。乳化食品は、連続相として水相を含むものであり、例えば、水中油型(O/W型)エマルションやW/O/W型複合エマルションの構成を取るものが挙げられる。このような乳化食品としては、酸性乳化液状調味料が好ましく、例えば、マヨネーズ、ドレッシング等が挙げられる。通常、容器からの絞り出し易さの観点から、乳化食品中の水分含量は、15〜80%であることが好ましく、20〜75%であることがより好ましく、30〜70%であることがさらに好ましい。
【0018】
乳化食品は、25℃で測定した粘度が、50Pa・s以上500Pa・s以下であり、好ましくは60Pa・s以上400Pa・s以下であり、より好ましくは70Pa・s以上250Pa・s以下であり、さらに好ましくは80Pa・s以上200Pa・s以下である。乳化食品の粘度が上記数値範囲内であれば、使用時に容器からの乳化食品の滑り出し性を向上させることができる。乳化食品の粘度は、BH型粘度計(回転数:2rpm、ローター:No.6またはNo.5)を用いて測定することができる。
【0019】
<油脂>
乳化食品に配合する油脂は、特に限定されず従来公知の油脂を用いることができ、食用油脂を用いることが好ましい。例えば、炭素数13以上の脂肪酸で主に構成される(例えば90%以上、好ましくは95%以上含む)食用植物油脂を用いることが好ましい。具体的には、例えば、菜種油、大豆油、コーン油、パーム油、綿実油、ひまわり油、サフラワー油、胡麻油、オリーブ油、亜麻仁油、米油、椿油、荏胡麻油、グレープシードオイル、ピーナッツオイル、アーモンドオイル、アボカドオイル等を用いることができる。また、例えば、魚油、牛脂、豚脂、鶏脂、又はMCT(中鎖脂肪酸トリグリセリド)、ジグリセリド、硬化油、エステル交換油等のような化学的あるいは酵素的処理等を施して得られる油脂等を用いることができる。好ましくは、油脂として菜種油、大豆油、コーン油、パーム油、またはこれらの混合油を50質量%以上含むことが好ましい。
【0020】
乳化食品中の油脂の含有量は、3質量%以上60質量%以下であり、好ましくは5質量%以上50質量%以下であり、より好ましくは10質量%以上40質量%以下であり、さらに好ましくは15質量%以上35質量%以下である。乳化食品中の油脂の含有量が上記数値範囲内であれば、乳化物の油分離が起き難く、長期間保存後であっても内容物の物性を維持することができる。
【0021】
(増粘剤)
乳化食品に配合する増粘剤は、特に限定されず従来公知の食品用増粘剤を用いることができる。食品用増粘剤としては、キサンタンガム、グアーガム、タマリンドシードガム、ジェランガム澱粉等を挙げることができ、これらを1種で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
乳化食品中の増粘剤の含有量は、好ましくは0.01質量%以上10質量%以下であり、より好ましくは0.05質量%以上5質量%以下であり、さらに好ましくは0.1質量%以上3質量%以下である。乳化食品中の増粘剤の含有量が上記数値範囲内であれば、乳化物の油分離が起き難く、長期間保存後であっても内容物の物性を維持することができる。
【0023】
(卵黄)
乳化食品に配合する卵黄は、乳化材として一般的に用いている卵黄であれば特に限定されるものではない。例えば、鶏卵を割卵し卵白と分離して得られた生卵黄や、当該生卵黄に殺菌処理、冷凍処理、スプレードライ又はフリーズドライ等の乾燥処理、ホスフォリパーゼA1、ホスフォリパーゼA2、ホスフォリパーゼC、ホスフォリパーゼD又はプロテアーゼ等による酵素処理、超臨界二酸化炭素処理等の脱コレステロール処理、食塩又は糖類等の混合処理等の1種又は2種以上の処理を施したもの等が挙げられ、特にホスフォリパーゼAを用いて酵素処理を施したホスフォリパーゼA処理卵黄を用いるのがよい。
【0024】
乳化食品中の卵黄の含有量は、固形分換算で好ましくは0.5質量%以上10質量%以下であり、より好ましくは1質量%以上9質量%以下であり、さらに好ましくは1.5質量%以上8質量%以下である。乳化食品中の卵黄の含有量が上記範囲内であれば、余剰の卵黄による乳化物への液相(油)の取り込みが起こり難く、乳化物の滑り出し性を維持することができる。
【0025】
(酸材)
本発明の乳化食品は、酸材を配合することで、酸性乳化液状調味料にすることができる。酸性乳化液状調味料のpHは、特に限定されないが、例えば、好ましくは3.0以上であり、より好ましくは3.3以上であり、さらに好ましくは3.5以上であり、また好ましくは5.0以下であり、より好ましくは4.5以下であり、さらに好ましくは4.2以下である。pHが上記範囲内であれば、酸味により乳化食品全体の風味を引き立てることができる。
【0026】
酸材としては、例えば、食酢(酢酸)、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、ソルビン酸、安息香酸、アジピン酸、フマル酸、コハク酸等の有機酸及びそれらの塩、燐酸、塩酸等の無機酸及びそれらの塩、レモン果汁、リンゴ果汁、オレンジ果汁、乳酸発酵乳等を用いることができる。
【0027】
酸材の配合量は、目的とするpHに応じて適宜調節することができる。例えば、酸材として食酢(酸度5%)を用いる場合、食酢の配合量は、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上であり、さらに好ましくは13質量%以上であり、また、好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは25質量%以下であり、さらに好ましくは20質量%以下である。食酢の配合量が上記範囲内であれば、酸味により乳化食品全体の風味を引き立てることができる。
【0028】
(他の原料)
乳化食品には、上述した原料以外に、本発明の効果を損なわない範囲で乳化食品に通常用いられている各種原料を適宜選択し含有させることができる。例えば、醤油、みりん、食塩、胡麻、グルタミン酸ナトリウム、ブイヨン等の調味料、ぶどう糖、果糖、蔗糖、麦芽糖、オリゴ糖、トレハロース等の糖類、からし粉、胡椒等の香辛料、レシチン、リゾレシチン、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等の乳化剤、アスコルビン酸、ビタミンE等の酸化防止剤、静菌剤等が挙げられる。
【0029】
(乳化食品の動的粘弾性)
乳化食品は、下記の動的粘弾性の測定試験1によって測定した見かけ上の複素弾性率G
*について、下記条件Aを満たすことが好ましい。下記条件Aは、容器と乳化食品を繰り返し衝突させた際の容器と乳化食品の滑り出しの持続性を擬似的に示すパラメータである。
条件A:
0Pa<G
0*−G
1*<200Pa、かつ
0.6≦G
1*/G
3*≦4.0
条件Aは、下記の数値範囲の少なくとも一方を満たすことがより好ましい。
10Pa<G
0*−G
1*<150Pa、
0.7≦G
1*/G
3*≦3.5
条件Aは、下記の数値範囲の少なくとも一方を満たすことがさらに好ましい。
15Pa<G
0*−G
1*<120Pa、
0.8≦G
1*/G
3*≦3.0
条件Aは、下記の数値範囲の少なくとも一方を満たすことがさらにより好ましい。
20Pa<G
0*−G
1*<100Pa、
0.85≦G
1*/G
3*≦2.0
条件Aは、下記の数値範囲の少なくとも一方を満たすことがさらにより一層好ましい。
25Pa<G
0*−G
1*<70Pa、
0.9≦G
1*/G
3*≦1.5
上記条件Aを満たすことで、長期間にわたり容器と乳化食品を繰り返し衝突させた後においても乳化食品の物性が維持されることを示し、長期間の保存中に容器内で油分離を起こさずに、使用時に容器からの乳化食品の滑り出し性を維持することができる。
【0030】
<動的粘弾性の測定試験>
図1に測定試験1に用いる粘弾性測定装置を示して、測定試験1を説明する。粘弾性測定装置1の円形ステージ2に、熱可塑性樹脂フィルム3(直径4cm)を固定し、滑り止めの紙やすり(#240)4を感知センサー5側に貼り付ける。該フィルム3上に、液相6として10μlの菜種油(約0.7mg/cm
2に相当)を静置し、その上から乳化食品7をクリアランス8が下記の条件となるように載せる。続いて、下記ステップ1〜3を連続して実施し、ステップ1とステップ3における見かけ上の複素剛性率G
1*およびG
3*を測定する。なお、熱可塑性樹脂フィルム上に菜種油を載せない状態で測定したステップ1の値をG
0*とする。また、測定試験1は、ステップ1:製造直後の滑り出し性の確認、ステップ2:実際の使用状況の再現、ステップ3:長期間使用後の滑り出し性の確認、を擬似的に行うものである。
<測定試験1>
・測定装置:粘弾性測定装置(ARES−G2(ティ・エー・インスツルメント・ジャパン(株)製))
・温度:25℃(±2℃)
・クリアランス(紙やすりとフィルムの距離):1mm
・測定前の保持時間:120秒
ステップ1(G1*測定条件)
歪み%:10%
角周波数:0.314rad/s
測定タイミング:120秒後
持続時間:120秒
ステップ2(G2*測定条件)
歪み%:200%
角周波数:6.283rad/s
持続時間:120秒
ステップ3(G3*測定条件)
歪み%:10%
角周波数:0.314rad/s
測定タイミング:40秒後
持続時間:120秒
【0031】
乳化食品は、下記の動的粘弾性の測定試験2で測定した損失弾性率G’’の開始時点の値G
i’’および最大値G
m’’が、下記の条件Bを満たすことが好ましい。下記条件Bは、初期状態の乳化食品自体の乳化状態の安定性を擬似的に示すパラメータである。
条件B:
0Pa≦G
m’’−G
i’’≦20Pa
条件Bは、下記の数値範囲を満たすことがより好ましい。
0Pa≦G
m’’−G
i’’≦18Pa
条件Bは、下記の数値範囲を満たすことがさらに好ましい。
1Pa≦G
m’’−G
i’’≦17Pa
上記条件Bを満たすことで、長期間にわたって乳化食品の物性が維持されることを示し、長期間の保存中に容器内で油分離を起こさずに、使用時に容器からの乳化食品の滑り出し性を維持することができる。
【0032】
<測定試験2>
・測定装置:粘弾性測定装置(AR−G2、ティ・エー・インスツルメント・ジャパン(株))
・ジオメトリー:パラレルプレート Φ40mm アルミニウム製
・ギャップ:1400μm
・測定モード:歪み分散測定(Strain sweep step)
・測定温度:25℃±2℃
・角周波数:6.283rad’s
・動的歪み:0.1〜8000%
・測定間隔:8ポイント/10倍の歪み間隔(log軸で等間隔に)
【0033】
[プラスチック容器]
乳化食品を収容するプラスチック容器は、その形態や製法は特に限定されない。例えば、使用時には容器胴部を押して、必要な量の乳化食品を絞り出せるボトル状やチューブ状のブロー成形容器を用いることができる。また、プラスチックフィルムを成形して得られるシート状、トレイ状、またはパウチ状の容器を用いることができる。
【0034】
本発明で用いるプラスチック容器は、熱可塑性樹脂を含む樹脂材料からなる樹脂層を備えることが好ましい。熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンおよびポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂や、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂を挙げることができ、ポリエチレンを用いることが好ましい。また、プラスチック容器は、樹脂層が多層構成であってもよく、ポリエチレン以外の樹脂材料からなる樹脂層を備えていてもよい。
【0035】
プラスチック容器は内壁の平滑性が高いことが好ましく、例えば、プラスチック容器の内壁の表面粗さRaは、好ましくは0.70μm以下であり、より好ましくは0.50μm以下であり、さらに好ましくは0.30μm以下である。プラスチック容器の内壁の表面粗さRaが上記数値であれば、内壁の平滑性が高く、突起や凹凸がほとんど存在しないため、乳化食品が内壁に繰り返し衝突した際のダメージが軽減され、乳化破壊を抑制することができる。
なお、プラスチック容器の内壁の表面粗さRaは、JIS B 0601−1994に準拠して、以下の機器・方法により測定することができる。
・機種:表面粗さ測定器(株式会社ミツトヨ製、サーフテストSJ−401)
・触針:標準スタイラス12AAB403(先端R:5μm、先端角度90°、スキッドレス使用)
・測定速度:0.5mm/sec
・基準長さ:0.8mm
・評価長さ:4mm
・区間:5
【0036】
プラスチック容器は、ブロー成形容器の場合、最大胴径が容器高さの1/2以下であるものが好ましい。乳化食品の絞り出し性が向上するだけでなく、保存中に乳化食品の移動速度に変化が生じ、油の拡散が促進されるためである。その結果、乳化食品の滑り出し性を維持することができる。
【0037】
[液相]
容器の内壁と乳化食品の間に存在する液相としては、常温(25℃)で液状であって、従来公知の油脂を用いることができる。例えば、乳化食品に配合する食用油脂等の油脂と同様の油脂を用いることができる。特に、液相には、炭素数13以上の脂肪酸で主に構成される(例えば90%以上、好ましくは95%以上含む)食用植物油脂を用いることが好ましく、菜種油、大豆油、コーン油、パーム油、またはこれらの混合油を50%以上含むことが好ましい。また、液相には、MCT(中鎖脂肪酸トリグリセリド)を用いてもよい。さらに、油脂として菜種油、大豆油、コーン油、パーム油、MCT、またはこれらの混合油を50質量%以上含むことが好ましい。
【0038】
乳化食品の比重に対する容器の内壁上に存在する液相の比重の比が0.85以上0.95以下であることが好ましく、0.90以上0.94以下であることがより好ましい。この比が上記数値範囲内であれば、容器の底や液表面に液相の局在化が起こり難く、使用時に容器からの乳化食品の滑り出し性をより向上させることができる。
【0039】
容器の内壁上に存在する液相の比重は、0.90以上0.95以下であることが好ましく、0.91以上0.94以下であることがより好ましい。この比が上記数値範囲内であれば、容器の底や液表面に液相の局在化が起こり難く、使用時に容器からの乳化食品の滑り出し性をより向上させることができる。
【0040】
容器の内壁上に存在する液相の量は、容器の内表面積当たり、0.50mg/cm
2以上2.50mg/cm
2以下であることが好ましく、0.55mg/cm
2以上2.00mg/cm
2以下であることがより好ましく、0.60mg/cm
2以上1.50mg/cm
2以下であることがさらに好ましく、0.65mg/cm
2以上1.0mg/cm
2以下であることがさらにより好ましい。液相の量が0.50mg/cm
2以上であれば、滑り出し性をより向上させることができる。また、液相の量が2.50mg/cm
2以下であれば、液相が多過ぎる場合に発生する乳化物の分離を防止することができる。
【実施例】
【0041】
以下に、実施例と比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例の内容に限定して解釈されるものではない。
【0042】
<プラスチック容器入り乳化食品の製造>
生卵黄(固形分50%)、増粘剤(キサンタンガム)、調味料(アミノ酸、食塩、砂糖)、食酢、および清水をミキサーで均一に混合して水相原料混合液を調製した後、当該水相原料混合液を撹拌しながら、食用油脂(菜種油、大豆油)を徐々に注加することにより、乳化食品を製造した。各原料の配合量は、表1に示した。なお、清水の配合量の残部とは、乳化食品の全原料の合計配合量(100質量部)と、清水以外の原料の合計配合量との差である。なお、実施例4については乳化剤(ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル)を添加し、水相を内水相と外水相に分けW/O/W型乳化食品を作成した。得られた乳化食品をプラスチック容器(内壁の表面粗さRa0.16μm)に充填して、プラスチック容器入り乳化食品を得た。得られた乳化食品のpHはいずれも、4.0〜4.2の範囲内であった。
【表1】
【0043】
<乳化食品の物性測定1>
上記で製造した乳化食品について、熱可塑性樹脂フィルムとしてポリエチレン製フィルム(滑剤無し、表面粗さRa0.16μm)を用いて、上記の動的粘弾性の測定試験1を行った。結果を表2に示した。「0Pa<G
0*−G
1*<200Pa」かつ「0.7≦G
1*/G
3*≦4.0」であると、長期間の使用後であっても滑り出し性の維持効果が高いと言える。
【表2】
【0044】
実施例1、3、4および比較例1で製造した乳化食品について、熱可塑性樹脂フィルムとしてポリエチレン製フィルム(滑剤入り、表面粗さRa0.07μm)を用いた以外は同様にして、上記の動的粘弾性の測定試験1を行った。
【表3】
【0045】
<乳化食品の物性測定2>
上記で製造した乳化食品について、上記の動的粘弾性の測定試験2を行った。結果を表4に示した。「G
m’’−G
i’’」が20以下であると、長期間の使用後であっても滑り出し性の維持効果が高いと言える。
【表4】
【0046】
<乳化食品の物性測定3>
プラスチック容器成形用のポリエチレン製フィルム(滑剤無し、表面粗さRa0.16μm)を使用して、フィルム片(40mm×40mm)を切り出した。
次に、フィルム片に液相として表5に示した塗布液を0.87mg/cm
2となるように噴霧した。続いて、フィルム片上端部に、注出口3.6mmのキャップ付きブロー成型容器から、水平方向に一直線上に乳化食品を絞り出した。
【0047】
上記の乳化食品を置いたフィルム片を90°に傾けた状態にし、乳化食品がフィルム片の下端部に流れるまでの時間(秒)を測定して、乳化食品の滑り出し性を評価した。結果を表5に示した。乳化食品がフィルム片の下端部に流れるまでの時間(秒)までの時間が短い程、滑り出し性が良好であると言える。
また併せて、測定試験1のステップ3終了後の乳化食品の乳化状態を下記の基準で目視により評価した。評価結果を表5に示した。
[評価基準]
・○:乳化状態が安定していた。
・×:部分的に分離していた。
【表5】
【解決手段】プラスチック容器に含有された、油脂、水、及び増粘剤を含む乳化食品であって、乳化食品は、25℃の粘度が50Pa・s以上500Pa・s以下であり、連続相として水相を含み、乳化食品中の油脂の含有量が3質量%以上60質量%以下、容器の内壁と乳化食品の間に液相が存在し、液相が25℃で液状の油脂からなり、乳化食品が動的粘弾性の測定試験1によって測定した見かけ上の複素弾性率G*について、条件A:0Pa<G0*−G1*<200Pa、かつ0.6≦G1*/G3*≦4.0を満たす、プラスチック容器入り乳化食品。