特許第6571334号(P6571334)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6571334
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】マイクロフラクチャーピック
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/16 20060101AFI20190826BHJP
【FI】
   A61B17/16
【請求項の数】14
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-554735(P2014-554735)
(86)(22)【出願日】2013年1月14日
(65)【公表番号】特表2015-505484(P2015-505484A)
(43)【公表日】2015年2月23日
(86)【国際出願番号】US2013021400
(87)【国際公開番号】WO2013112308
(87)【国際公開日】20130801
【審査請求日】2016年1月8日
【審判番号】不服2017-16743(P2017-16743/J1)
【審判請求日】2017年11月10日
(31)【優先権主張番号】61/591,980
(32)【優先日】2012年1月29日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502032219
【氏名又は名称】スミス アンド ネフュー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジョン−ポール・ロジャーズ
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー・ピー・キャラハン
【合議体】
【審判長】 内藤 真徳
【審判官】 関谷 一夫
【審判官】 井上 哲男
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−529987(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロフラクチャー法を行う際に使用する外科用デバイスであって、
近位端と遠位端とを有する細長部材と、
前記細長部材の前記遠位端に隣接して配置された先端と、
前記細長部材の1つまたは複数の位置に配置された、細長い打撃器具の遠位端に配置された補完的機構と係合する少なくとも1つの係合機構と、
を備え、それによって、前記打撃器具の近位端に配置された衝撃面を前記先端の方向に対して略平行な方向に叩いたとき、前記細長部材を介して前記先端によって変換される力が生成され、
前記係合機構が、雌型コネクタおよび雄型コネクタのうちの1つとして構成された外科用デバイス。
【請求項2】
前記係合機構が、レセプタクルとして構成された請求項1に記載の外科用デバイス。
【請求項3】
前記レセプタクルが、前記先端の方向に対して略平行な軸を有する請求項2に記載の外科用デバイス。
【請求項4】
前記レセプタクルが、外部ドレン穴を有する請求項2または3に記載の外科用デバイス。
【請求項5】
前記細長部材がその長さの少なくとも一部分に沿ってチャネルを含み、前記係合機構が、前記チャネルと係合し、かつ前記チャネルに沿って前記細長部材の所望位置まで摺動するように構成された請求項1に記載の外科用デバイス。
【請求項6】
前記細長部材の所望位置に前記係合機構を固定するように作用可能な少なくとも1つのストップ部材をさらに備える請求項5に記載の外科用デバイス。
【請求項7】
前記細長部材のそれぞれの位置に配置された複数の係合機構であって、各係合機構が前記打撃器具の補完的機構と係合する、複数の係合機構をさらに備える請求項1に記載の外科用デバイス。
【請求項8】
前記係合機構のうちの少なくともいくつかが平行な軸を有する請求項7に記載の外科用デバイス。
【請求項9】
前記係合機構のうちの少なくともいくつかが非平行な軸を有する請求項7に記載の外科用デバイス。
【請求項10】
前記係合機構のうちの少なくともいくつかが、前記打撃器具の補完的機構の異なる構成と係合するように構成された請求項7に記載の外科用デバイス。
【請求項11】
マイクロフラクチャー法を行う際に使用するシステムであって、
近位端と遠位端とその遠位端近傍の細長部材内の穴とを有する前記細長部材と、前記細長部材内の穴を通過するように構成された打撃ピンと、前記打撃ピンの一端にある衝撃面と、を含む打撃器具と、
遠位端を有する細長部材と、前記細長部材にある係合機構と、前記細長部材の遠位端に隣接して配置された先端と、を含む外科用デバイスと、
を備え、前記打撃器具が、前記打撃ピンの別の端部にある補完的機構をさらに含み、
前記外科用デバイスの係合機構が、前記打撃器具の前記補完的機構と係合するように作用可能であり、
前記打撃器具の細長部材が、前記外科用デバイスの長手方向軸に対して略平行に配置され、前記補完的機構との係合機構の係合を可能にするように構成され、
それによって、前記打撃器具の衝撃面を前記外科用デバイスの先端の方向に対して略平行な方向に叩いたとき、前記外科用デバイスの細長部材を介して先端によって変換される力が生成されるシステム。
【請求項12】
前記打撃器具の細長部材が、前記外科用デバイスに少なくとも一時的に固定されるように構成された請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記外科用デバイスの係合機構が、雌型コネクタとして構成され、前記打撃器具の補完的機構が、雄型コネクタとして構成された請求項11に記載のシステム。
【請求項14】
前記外科用デバイスの係合機構が雄型コネクタとして構成され、かつ前記打撃器具の補完的機構が雌型コネクタとして構成された請求項11に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本特許出願は、2012年1月29日に出願した「マイクロフラクチャーピック」という名称の米国仮特許出願第61/591,980号の優先権の利益を主張するものである。
【0002】
本出願は、一般に微小骨折刺激(microfracture stimulation)に関し、より詳細には、微小骨折刺激を行う際に使用する外科用デバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
人体では、関節(articulating joint)は、低い摩擦係数を持ち耐久性のある天然材料である硝子軟骨で覆われている。そのような硝子軟骨面は、ヒトが走るときに発生し得る負荷などの、繰り返される高度の負荷または外傷を受けると、経時的に損傷され得る。これは、特に、足首、膝、股関節部、および脊柱にある関節などの、圧縮力を受ける、下半身の関節に当てはまる。
【0004】
近年、整形外科業界では、軟骨面の再建(resurfacing)が広く研究されている。軟骨面を再建する1つの既知の方法は、「微小骨折刺激」と呼ばれている。損傷した硝子軟骨を人工軟骨インプラントに交換する代わりに、損傷した軟骨を線維軟骨組織(本明細書では「線維軟骨」ともいう)に交換するために人体を刺激する微小骨折刺激が実行可能である。線維軟骨は、一般に硝子軟骨ほど頑強ではなく、典型的には硝子軟骨の摩擦係数と比較して高い摩擦係数を有する。それにもかかわらず、そのような線維軟骨は、多数の人々に疼痛の減少をもたらし、これらの人々がより活発なライフスタイルを想定することを可能にする。
【0005】
微小骨折刺激を行う際に使用する従来のマイクロフラクチャーピックは、ハンドルと、ハンドルに結合されたシャフトと、シャフトの遠位端に配置された、鋭く、任意選択で傾斜した先端とを有する。たとえば、従来のマイクロフラクチャーピックは、任意選択で、シャフトの長手方向軸に対して約20°、40°、60°、または90°の角度に屈曲した先端を有することができる。一般的な動作モードでは、微小骨折刺激は、最初に、損傷した軟骨の層の除去を必要とする。損傷した軟骨層の厚さは、典型的には、約1mmから6mmまでさまざまであり得る。次に、血液供給に達するように、除去した軟骨の層の領域において下にある軟骨下骨の中を通して、マイクロフラクチャーピックの鋭い先端を約2mm〜5mm動かす。次に、マイクロフラクチャーピックを除去し、小さな通路を軟骨下骨内に残す。マイクロフラクチャーピックは、典型的には、軟骨下骨を通る一連のそのような通路を作製するために使用される。その結果、最終的には、血液が一連の通路に沿って送られ、除去した軟骨層の領域において凝固し、最終的に線維軟骨の形成を生じさせる。
【0006】
外科医が、そのような従来のマイクロフラクチャーピックを使用して患者の軟骨下骨を穿孔するとき、外科医は、骨の硬い皮質層の中を通して鋭い先端を手動で前進させることに困難を覚えることがある。これは、問題となり得る。なぜなら、マイクロフラクチャーピックを骨内へと十分深く前進させないことによって、除去した軟骨層の領域内での線維軟骨の形成が妨げられることがあるからである。軟骨下骨の中を通してマイクロフラクチャーピックの鋭い先端を前進させる助けとなるように、外科医は、従来、ハンドルに下方への圧力を加えながら、ハンマーまたは木槌を使用してマイクロフラクチャーピックのハンドルの端を叩いてきた。しかし、ハンマーまたは木槌をそのように使用することによって、マイクロフラクチャーピックの先端にせん断力を生じさせ、潜在的には、先端を破損させるまたは損傷させ得るので、ハンマーまたは木槌のそのような使用は欠点を有する。そのような破損した先端は、手術部位内で遊離体となることがあり、マイクロフラクチャー法の進捗の遅延を生じさせ得る。さらに、先端は骨面を削り、潜在的にはマイクロフラクチャーピックを周囲組織面に衝突させ、場合によっては損傷させ得る。
【0007】
この問題に対処するために、従来のマイクロフラクチャーピックのシャフトまたはハンドルに受け板を直接取り付けることができる。そのような受け板は、典型的には、マイクロフラクチャーピックの鋭い先端の方向に垂直にシャフトまたはハンドルに取り付けられる。外科医が受け板をハンマーまたは木槌で叩くと、その結果生じる力によって、マイクロフラクチャーピックの先端が軟骨下骨を通って前進する。しかし、マイクロフラクチャーピックのシャフトまたはハンドルに受け板を直接取り付けることによって、マイクロフラクチャーピックが重くなり、扱いにくくなり得るので、マイクロフラクチャーピックのシャフトまたはハンドルに受け板を直接取り付けることも欠点を有する。患者の身体のすぐ近くで受け板を叩くという行為も、特に足首などの繊細な関節アクセス位置の近くで行うとき、問題となり得る。受け板はまた、手術部位への完全なアクセスを防止することによってマイクロフラクチャー法を妨害することがあり、潜在的に、外科医が骨の罹患した表面エリア全体を処置することを非常に困難にする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、上記で説明した従来のマイクロフラクチャーピックの欠点の少なくともいくつかを回避するマイクロフラクチャーピックを有することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本出願によれば、使用者が骨の中を通してマイクロフラクチャーピックを前進させる助けとなるように構成された機構を有する外科用デバイス(本明細書では「マイクロフラクチャーピック」という)が開示される。一態様では、開示するマイクロフラクチャーピックは、近位端と遠位端とを有する、シャフトなどの少なくとも1つの細長部材(elongated member)と、シャフトの遠位端に配置された、鋭く、任意選択で傾斜した先端と、シャフトの近位端に結合された任意選択のハンドルと、シャフトまたはハンドルの1つまたは複数の位置に配置された、打撃器具(strike instrument)の補完的機構(complementary feature)と係合する少なくとも1つの係合機構とを含む。例示的な態様では、打撃器具は、近位端と遠位端とを有する、シャフトなどの少なくとも1つの細長部材と、シャフトの遠位端に配置された補完的機構と、近位端とシャフトの近位端に結合された遠位端とを有する任意選択のハンドルと、シャフトまたはハンドルの近位端に配置された衝撃面とを含む。さらなる例示的な態様では、マイクロフラクチャーピックのシャフトまたはハンドル上に配置された係合機構はレセプタクル(receptacle)として構成され、打撃器具の補完的機構はマイクロフラクチャーピックのレセプタクルと作用可能に係合するように構成される。別の例示的な態様では、打撃器具の補完的機構はレセプタクルとして構成され、マイクロフラクチャーピックのシャフトまたはハンドル上に配置された係合機構は、打撃器具のレセプタクルと作用可能に係合するように構成される。
【0010】
別の態様では、近位端と遠位端とハンドルの遠位端近傍にある穴とを有する、ハンドルなどの細長部材と、ハンドル内の穴を通過するように構成された打撃ピンと、打撃ピンの一端にある衝撃面と、打撃ピンの他端にある補完機構とを含む打撃器具を含む、マイクロフラクチャー法を行う際に使用するシステムが開示される。このシステムは、任意選択のハンドルと、遠位端を持つ、シャフトなどの細長部材と、シャフトまたはハンドル上にある係合機構と、シャフトの遠位端にある、鋭く、任意選択で傾斜した先端とを有する外科用デバイスをさらに含む。外科用デバイスの係合機構は、打撃器具の補完的機構と係合するように作用可能である。さらに、打撃器具のハンドルは、外科用デバイスの長手方向軸に対して略平行に配置され、補完的機構との係合機構の係合を促進するように構成される。打撃器具の衝撃面を外科用デバイスの先端の方向に対して略平行な方向に叩いたとき、外科用デバイスのシャフトを介して先端によって変換される力が生成される。
【0011】
さらなる態様では、近位端と遠位端とを持つ、シャフトなどの少なくとも1つの細長部材と、シャフトの遠位端に配置された、鋭く、任意選択で傾斜した先端と、シャフトの近位端に結合された任意選択のハンドルと、シャフトまたはハンドルの1つまたは複数の場所に配置された、打撃器具の補完的機構と係合する少なくとも1つの係合機構とを有する外科用デバイスを用意することを含む、マイクロフラクチャー法を行う方法が開示される。この方法は、先端を所望の刺激点に位置決めすること、および打撃器具の衝撃面を先端の方向に対して略平行な方向に叩いて、シャフトを介して先端によって変換される力を生成することも含む。次に、先端が所望の刺激点から除去される。マイクロフラクチャー法を行う際の打撃器具のそのような使用によって、外科医は、微小骨折穿孔を所望の刺激点に、精度を向上させて置くことができる。打撃器具のそのような使用はまた、外科医が所望の微小骨折穿孔を達成するためにマイクロフラクチャーピックに手動で加えなければならない力の量を減少させる。
【0012】
近位端と遠位端とを持つ細長部材と、細長部材の遠位端に配置された、鋭く、任意選択で傾斜した先端と、細長部材の1つまたは複数の位置に配置された、打撃器具の補完的機構と係合する少なくとも1つの係合機構とを有するマイクロフラクチャーピックを提供することによって、使用者は、打撃器具を使用して、マイクロフラクチャーピックの細長部材を介して先端によって変換される力を生成し、それによって、骨を通る先端の穿孔をより効果的にすることができる。その結果、使用中に先端を折る事例の数を減少させることができる。さらに、使用中に骨面に沿って先端を削る事例の数を実質的に無くすことができる。
【0013】
本発明の他の特徴、作用、および態様は、以下の「発明を実施するための形態」から明らかであろう。
【0014】
本明細書に組み込まれ、その一部を構成する添付の図面は、本明細書で説明する1つまたは複数の実施形態を示し、「発明を実施するための形態」と併せて、これらの実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本出願による例示的なマイクロフラクチャーピックと、マイクロフラクチャーピックと作用可能に係合するように構成された、本出願による例示的な打撃器具を示す側面図である。
図2図1のマイクロフラクチャーピックを示す斜視図である。
図3図1のマイクロフラクチャーピックおよび図1の打撃器具を示す斜視図である。
図4図1のマイクロフラクチャーピック、マイクロフラクチャーピックの係合機構を含めた図1の打撃器具、および打撃器具の補完的機構を示す断面図である。
図5図1のマイクロフラクチャーピックの第1の代替実施形態を示す斜視図である。
図6図1のマイクロフラクチャーピックの第2の代替実施形態を示す斜視図である。
図7】例示的なマイクロフラクチャーピックおよび図1の打撃器具の一代替実施形態を示す斜視図である。
図8図7のマイクロフラクチャーピックおよび図7の打撃器具を示す別の斜視図である。
図9図1のマイクロフラクチャーピックを使用したマイクロフラクチャー法を行う方法を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
2012年1月29日に出願した「マイクロフラクチャーピック(MICROFRACTURE PICK)」という名称の米国仮特許出願第61/591,980号の開示が、参照によりその全体を本明細書に組み込まれる。
【0017】
使用者が骨の中を通してマイクロフラクチャーピックを前進させる助けとなるように構成された機構を有するマイクロフラクチャーピックが開示される。このマイクロフラクチャーピックは、近位端と遠位端とを持つシャフトと、シャフトの遠位端にある、鋭く、任意選択で傾斜した先端と、シャフトの1つまたは複数の位置に配置された、打撃器具(strike instrument)の補完的機構(complementary feature)と係合する少なくとも1つの係合機構とを有する。打撃器具の衝撃面を叩くことによって、使用者は、マイクロフラクチャーピックのシャフトを介してその先端によって変換される力を生成し、それによって、骨を通る先端の貫通を、より効果的に行うことができる。
【0018】
図1は、本出願によるマイクロフラクチャーピック100の例示的な実施形態を示す。図1に示されるように、マイクロフラクチャーピック100は、細長ハンドル(elongated handle)102を含む近位部分と、近位端110と遠位端112とを有する略細長シャフト(generally elongated shaft)104を含む遠位部分とを有する。ハンドル102は、シャフト104の近位端110に結合される。マイクロフラクチャーピック100は、シャフト104の遠位端112にある、鋭く、任意選択で傾斜した先端106と、シャフト104の固定位置に配置された、打撃器具101の補完的機構114と係合する係合機構108とをさらに含む。打撃器具101は近位端118と遠位端120とを有するシャフト116を含むことができ、補完的機構114はシャフト116の遠位端120にあってよい。打撃器具101は、近位端124とシャフト116の近位端118に結合された遠位端126とを有するハンドル122と、ハンドル122の近位端124にある衝撃面128とをさらに含むことができる。
【0019】
打撃器具101のハンドル122、シャフト116、および衝撃面128は、単一の構成要素として実施されてよいことに留意されたい。同様に、マイクロフラクチャーピック100のハンドル102およびシャフト104も単一の構成要素として実施されてよい。マイクロフラクチャーピック100のシャフト104ならびに打撃器具101のシャフト116は、硬化ステンレス鋼などの機械加工された医療用材料または他の任意の適切な材料から作製可能であることにも留意されたい。さらに、マイクロフラクチャーピック100のハンドル102ならびに打撃器具101のハンドル122は、円筒状または他の任意の適切な形状を有することができる。いくつかの実施形態では、マイクロフラクチャーピック100のハンドル102は省略されてよい。さらに、先端106は、任意選択で、マイクロフラクチャーピック100の長手方向軸142に対して約20°、40°、60°、90°の角度、または他の任意の適切な角度で屈曲可能である。たとえば、先端106は、任意選択で、先端106をハンドル102の方へ後屈させることによって、長手方向軸142に対して90°よりも大きい角度で屈曲可能である。
【0020】
使用中、マイクロフラクチャーピック100の鋭い先端106の方向133は、骨の面に対応することができる面130(図1を参照)に対して、角度αで位置合わせ可能である。打撃器具101の補完的機構114がいったんマイクロフラクチャーピック100の係合機構108と係合されると、打撃器具101の長手方向軸132は、面130に対してほぼ同じ角度αで位置合わせ可能である。したがって、使用者(たとえば外科医)が打撃器具101の衝撃面128を、先端106の方向133と略平行な方向にハンマー、木槌、または他の任意の適切な打撃用具で叩くとき、マイクロフラクチャーピック100のシャフト104を介して先端106によって変換される力134が生成される。
【0021】
図2は、ハンドル102と、シャフト104と、鋭く、任意選択で傾斜した先端106と、レセプタクル(receptacle)208として構成される係合機構(図1、参照番号108を参照)とを含むマイクロフラクチャーピック100の斜視図を示す。この例示的な実施形態では、打撃器具101の補完的機構114(図1を参照)は、マイクロフラクチャーピック100のレセプタクル208と作用可能に係合するように構成される。補完的機構114がレセプタクル208と係合されながら、打撃器具101が面130(図1を参照)に対して先端106とほぼ同じ角度αで位置合わせされることを確実にするために、レセプタクル208は、その軸232が先端106の方向133と略平行であるように構成可能である。したがって、外科医が、骨の中を通してマイクロフラクチャーピック100の先端106を前進させることに困難を覚えた場合、外科医は、打撃器具101の補完的機構114をマイクロフラクチャーピック100のレセプタクル208に挿入し、打撃器具101の衝撃面128をハンマーまたは木槌で1回または複数回叩いて、レセプタクル208の軸232に沿って力を生成し、それによって、骨を通る先端106の前進を容易にすることができる。
【0022】
図3はマイクロフラクチャーピック100および打撃器具101を示す斜視図を示し、補完的機構(図1、参照番号114を参照)が、マイクロフラクチャーピック100のレセプタクル208に一時的または永久的に固定可能である任意選択の突起(nub)317を含むように構成される。たとえば、任意選択の突起317、または突起317のないシャフト116の一端は、ねじ切り、プレス嵌め、てこ鎖錠、カム錠、スナップ嵌め、止めねじ、テーパー嵌合、ルアーロック(テーパーを持つまたは持たない)、または他の任意の適切な機構を介して、レセプタクル208に一時的または永久的に固定可能である。
【0023】
図4は、レセプタクル208を含むマイクロフラクチャーピック100ならびに任意選択の突起317を含む打撃器具101を示す断面図を示す。図4の断面図では、レセプタクル208は、実質的にマイクロフラクチャーピック100のシャフト104の内部にあるように示される。突起317がレセプタクル208と係合されながら、打撃器具101が、面130に対して、鋭く、任意選択で傾斜した先端106とほぼ同じ角度αで位置合わせされることを確実にするために、レセプタクル208は、その軸232が先端106の方向133と略平行であるように構成可能である。たとえば、突起317は雄型コネクタまたは他の任意の適切なコネクタとして構成可能であり、レセプタクル208は雌型コネクタまたは他の任意の適切なコネクタとして構成可能である。いくつかの実施形態では、マイクロフラクチャーピック100は雄型コネクタを含むように構成可能であり、打撃器具101は、マイクロフラクチャーピック100の雄型コネクタと係合する雌型コネクタを含むように構成可能である。そのような雄型コネクタおよび雌型コネクタは、ねじ切り、プレス嵌め、てこ鎖錠、カム錠、スナップ嵌め、止めねじ、テーパー嵌合、ルアーロック(テーパーを持つまたは持たない)、または他の任意の適切な機構を介して、互いに一時的または永久的に固定可能である。さらに、レセプタクル208は、滅菌時および/または乾燥時の使用を目的とした、ならびに使用中のレセプタクル208内での流体の可能な蓄積を回避するための、外部ドレン穴409を含むように構成可能である。たとえば、外部ドレン穴409は、約2mmの直径または他の任意の適切な直径を有することができる。
【0024】
開示するマイクロフラクチャーピックの上記の例示的な実施形態について説明してきたが、他の代替実施形態または変形形態が行われてもよい。たとえば、マイクロフラクチャーピック100が、シャフト104の固定位置に配置された、打撃器具101の補完的機構114と係合する係合機構108を含むことを、図1を参照して説明した。図5は、ハンドル502と、シャフト504と、鋭く、任意選択で傾斜した先端506と、係合機構508とを含むマイクロフラクチャーピック500の代替実施形態を示す。図5に示されるように、シャフト504は、その長さの少なくとも一部分に沿ってチャネル(channel)540を内蔵するように構成され、係合機構508は、チャネル540と係合し、チャネル540に沿ってシャフト504の所望位置まで摺動するように構成される。チャネル540は、シャフト504の長手方向軸542と略平行である。さらに、係合機構508は、図2のレセプタクル208のようなレセプタクルを含むように構成可能である。係合機構508がいったんチャネル540に沿ってシャフト504の所望位置まで摺動または移動させられると、係合機構508は、シャフト504のその位置に、少なくとも1つのストップ部材(stop member)544によって一時的または永久的に固定可能であり、ストップ部材544は、図5に示されるように、係合機構508に隣接してチャネル540に挿入されてもよいし、または他の任意の適切な機構によって係合されてもよい。代替実施形態では、係合機構508は、シャフト504の所望位置に一時的または永久的に固定可能である。さらなる代替実施形態では、係合機構508は、マイクロフラクチャー法を行うために必要とされない場合、除去可能である。
【0025】
図6は、ハンドル602と、シャフト604と、鋭く、任意選択で傾斜した先端606と、シャフト604の複数の固定位置にそれぞれ配置された複数の係合機構608.1、608.2、608.3とを含むマイクロフラクチャーピック600の代替実施形態を示す。図6は、説明のために、シャフト604の3つのそのような係合機構を示す。しかし、マイクロフラクチャーピック600は、シャフト604のそれぞれの位置に配置された任意の適切な数の係合機構を含むことができることを理解されたい。たとえば、複数の係合機構608.1、608.2、608.3のそれぞれは、図2のレセプタクル208のようなレセプタクルを含むように構成可能である。図6は、打撃器具601をさらに示し、打撃器具601では、補完的機構は、シャフト604の複数の係合機構608.1、608.2、608.3のうち選択された1つに一時的または永久的に固定可能である任意選択の突起617を、シャフト616の一端に含むように構成される。たとえば、任意選択の突起617、または突起617のないシャフト616の一端は、ねじ切り、プレス嵌め、てこ鎖錠、カム錠、スナップ嵌め、止めねじ、テーパー嵌合、ルアーロック(テーパーを持つまたは持たない)、または他の任意の適切な機構を介して、選択された係合機構608.1、608.2、または608.3に一時的または永久的に固定可能である。
【0026】
図7は、マイクロフラクチャーピック700の係合機構708と係合する補完的機構714を含む打撃器具701の代替実施形態を示す。図7に示されるように、打撃器具701は、近位端711と遠位端713とハンドル722の遠位端713近傍にある穴719とを有するハンドル722を含む。打撃器具701は、穴719をぴったりと通過するように構成された打撃ピン715と、打撃ピン715の一端にある補完的機構714と、打撃ピン715の他端にある衝撃面728とをさらに含む。打撃器具701のハンドル722、打撃ピン715、および衝撃面728は、単一の構成要素として実施可能であることに留意されたい。図7にさらに示されるように、マイクロフラクチャーピック700は、ハンドル702と、シャフト704と、シャフト704上にある係合機構708と、シャフト704の遠位端にある、鋭く、任意選択で傾斜した先端706とを含む。打撃ピン715は、打撃器具701のハンドル722を通って穴719の中に一時的または永久的に固定可能であることに留意されたい。
【0027】
図8はマイクロフラクチャーピック700および打撃器具701を示し、打撃器具701の補完的機構714は任意選択の突起717を含むように構成され、マイクロフラクチャーピック700の係合機構708はレセプタクル709を含むように構成される。たとえば、任意選択の突起717、または突起717のない打撃ピン715の一端は、ねじ切り、プレス嵌め、てこ鎖錠、カム錠、スナップ嵌め、止めねじ、テーパー嵌合、ルアーロック(テーパーを持つまたは持たない)、または他の任意の適切な機構を介して、マイクロフラクチャーピック700のレセプタクル709に一時的または永久的に固定可能である。
【0028】
使用中、打撃器具701のハンドル722は、その長手方向軸742に対して略平行にマイクロフラクチャーピック700のハンドル702に一時的または永久的に固定可能であり、それによって、外科医が、打撃器具701のハンドル722とマイクロフラクチャーピック700のハンドル702の両方を同じ手で持つことが可能になる。たとえば、打撃器具701のハンドル722は、ねじ切り、プレス嵌め、てこ鎖錠、カム錠、スナップ嵌め、止めねじ、テーパー嵌合、ルアーロック(テーパーを持つまたは持たない)、差し込み式取り付け具(bayonet mount)、または他の任意の適切な機構を介して、マイクロフラクチャーピック700のハンドル702に一時的または永久的に固定可能である。さらに、打撃ピン715は、ハンドル722内の穴719を通過して、打撃器具701の突起717をマイクロフラクチャーピック700のレセプタクル709と係合させることができる。突起717がレセプタクル709と係合されながら、打撃ピン715が、面730に対して、鋭い先端706とほぼ同じ角度αで位置合わせされることを確実にするために、レセプタクル709は、その軸732が先端706の方向733に対して略平行であるように構成可能である。したがって、外科医が、骨の中を通してマイクロフラクチャーピック700の先端706を前進させることに困難を覚えた場合、外科医は、打撃ピン715の衝撃面728をハンマーまたは木槌で1回または複数回叩いて、レセプタクル709の軸732に沿って力734を生成し、それによって、骨を通る先端706の前進を容易にすることができる。
【0029】
本明細書では、マイクロフラクチャーピックはそのシャフト上にレセプタクルを含むことができ、打撃器具は、レセプタクルと係合する任意選択の突起をそのシャフト上に含むことができることについてさらに説明した。さらなる代替実施形態では、マイクロフラクチャーピックは、そのシャフトの固定位置または移動可能位置に突起のように構成された少なくとも1つの係合機構を含むことができ、打撃器具は、そのシャフト上にレセプタクルのように構成された少なくとも1つの補完的機構を含むことができる。たとえば、打撃器具のシャフトのそのようなレセプタクルは、突起をマイクロフラクチャーピックのシャフトに載せるためのフォーク状構成を有することができる。さらに、マイクロフラクチャーピックは、あるいは、そのハンドル上に、打撃器具の補完的機構と係合するための、突起または雄型コネクタもしくは雌型コネクタなどのレセプタクルを含むことができる。同様に、打撃器具は、あるいは、そのハンドル上に、マイクロフラクチャーピックの係合機構と補完的に係合するための、突起または雄型コネクタもしくは雌型コネクタなどのレセプタクルを含むことができる。
【0030】
また、本明細書では、マイクロフラクチャーピックは、そのシャフトのそれぞれの位置に配置された、打撃器具の補完的機構と係合する複数の係合機構を含むことができることについても説明した。さらなる代替実施形態では、マイクロフラクチャーピックの複数の係合機構は、平行または非平行な軸を有するそれぞれのレセプタクルとして構成可能である。さらに、マイクロフラクチャーピックの複数の係合機構はそれぞれ、打撃器具の補完的機構の異なる構成を受け入れるように構成可能である。
【0031】
開示するマイクロフラクチャーピックを使用したマイクロフラクチャー法を行う方法について、以下で図9を参照して説明する。ブロック902に示されているように、この方法は、近位端と遠位端とを持つシャフトと、シャフトの遠位端に配置された、任意選択で傾斜した先端と、シャフトの近位端に結合されたハンドルと、シャフトの1つまたは複数の位置に配置された、打撃器具の補完的機構と係合する少なくとも1つの係合機構とを有するマイクロフラクチャーピックを用意することを含む。ブロック904に示されているように、先端は、所望の刺激点にある。たとえば、先端を所望の刺激点に位置決めしながら、シャフトの少なくとも一部分は、関節鏡視下カニューレに挿入可能である。ブロック906に示されているように、打撃器具の衝撃面は、先端の方向に対して略平行な方向にハンマーまたは木槌によって叩かれ、所望の刺激点でシャフトを介して先端によって変換される力を生成する。ブロック908に示されているように、先端は、次に所望の刺激点から除去される。
【0032】
軟骨面を再建する状況で使用するための、開示するマイクロフラクチャーピックの上記の例示的な実施形態について説明してきたが、これらの実施形態は、関節固定法において距骨下/距骨空間(足首)内の軟骨下骨を穿孔するためにも使用可能である。そのような関節固定法では、外科医は、典型的には、距骨下骨(subtalar bone)と距骨の両方の軟骨を除去し、マイクロフラクチャーピックを使用して複数の場所で距骨下骨および距骨を穿孔し、出血を促進する。次に、ねじを距骨下骨と距骨の間に送り、2つの骨を癒合させる。
【0033】
本明細書で開示される発明概念から逸脱することなく上述のマイクロフラクチャーピックのさらなる修正および変形を加えることができることは、当業者には諒解されよう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲の範囲および趣旨を除いて限定されると見なされるべきではない。
【符号の説明】
【0034】
100 マイクロフラクチャーピック
101 打撃器具
102 ハンドル
104 シャフト
106 先端
108 係合機構
110 近位端
112 遠位端
114 補完的機構
116 シャフト
118 近位端
120 遠位端
122 ハンドル
124 近位端
126 遠位端
128 衝撃面
130 面
132 長手方向軸
133 方向
134 力
142 長手方向軸
208 レセプタクル
232 軸
317 突起
409 外部ドレン穴
500 マイクロフラクチャーピック
502 ハンドル
504 シャフト
506 先端
508 係合機構
540 チャネル
542 長手方向軸
544 ストップ部材
600 マイクロフラクチャーピック
601 打撃器具
602 ハンドル
604 シャフト
606 先端
616 シャフト
617 突起
700 マイクロフラクチャーピック
701 打撃器具
702 ハンドル
704 シャフト
706 先端
708 係合機構
709 レセプタクル
711 近位端
713 遠位端
714 補完的機構
715 打撃ピン
717 突起
719 穴
722 ハンドル
728 衝撃面
730 面
732 軸
733 方向
734 力
742 長手方向軸
902 ブロック
904 ブロック
906 ブロック
908 ブロック
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9