(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の詳細な説明では、本発明の実施形態の完全な理解を提供するように多くの特定の具体的な構成について記載されている。しかしながら、このような特定の具体的な構成に限定されることなく他の実施態様が実施できることは明らかであろう。また、以下の実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、実施形態で説明されている特徴的な構成の組み合わせの全てを含むものである。
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0015】
[実施形態]
図1は、本発明に係るガス濃度測定装置の実施形態を説明するための図である。図中符号1はガス濃度測定装置、10はガスセル、11はガス導入口、12はガス導出口、20は光源、31は測定用赤外線検出部、40は演算部、Lは最短距離の光路長を示している。なおここでは参考のため、ガスセル10を明示しているが、本発明においてガスセルは必須の構成ではなく、ガスセルの無い形態でも試験容器内等にガス濃度測定装置を配置することで下記と同様の2濃度検査を行うことが可能である。
【0016】
本実施形態のガス濃度測定装置1は、光源20と、光源20からの光を受光し、光に応じた信号である測定出力を出力する測定用赤外線検出部31と、測定出力が入力される演算部40と、を備えたガス濃度測定装置である。
演算部40は、第1の濃度の測定対象ガス中で光源20を点灯させた時に測定用赤外線検出部31が出力する第1の測定出力と、第1の濃度と異なる第2の濃度の測定対象ガス中で光源20を点灯させた時に測定用赤外線検出部31が出力する第2の測定出力と、基準濃度算出式から求まる濃度が第1の濃度であるときの変数の値である第1の解と、基準濃度算出式から求まる濃度が第2の濃度であるときの変数の値である第2の解と、から得られる係数と、基準濃度算出式を第1の解と第1の濃度で補正した式と、第1の濃度と、を含む濃度算出式に、測定時の測定出力を第1の測定出力で規格化して代入することで測定対象ガスの濃度を演算する。これにより、2濃度検査にて、高精度なガス濃度測定が可能なガス濃度測定装置を提供することが可能となる。
【0017】
また、本実施形態のガス濃度測定装置1において、係数が、第2の測定出力と第1の測定出力の比と、第2の解と第1の解の比と、から得られるものであってもよい。これによりさらに高精度な濃度演算が可能になるという効果を奏する。
また、本実施形態のガス濃度測定装置1において、基準濃度算出式がn次多項式であり、濃度算出式は、基準濃度算出式の1次〜n次の係数を、第1の解で補正し、0次の係数を第1の濃度で補正した式に、係数をかけ、さらに第1の濃度を足し合わせた式でああってもよい。これによりさらに高精度な濃度演算が可能になるという効果を奏する。
また、本実施形態のガス濃度測定装置1における基準濃度算出式がn次多項式(式(2))である場合、具体的なガス濃度の演算方法の一例としては、下記式(3)が挙げられる。
【0019】
(式中、a
nはn次の係数、V
stdは基準濃度算出式の変数である。)
【0021】
(式中、cはガスの濃度、c
1は第1の濃度、c
2は第2の濃度、V
out(c
1)は第1の濃度における測定出力、V
out(c
2)は第2の濃度における測定出力、V
std(c
1)は基準濃度算出式の出力が第1の濃度であるときの変数、V
std(c
2)は基準濃度算出式の出力が第2の濃度であるときの変数、V
outは測定時の測定出力である。)
式(3)は、第1の濃度および第2の濃度の、それぞれの濃度における測定出力V
out(c
1)、V
out(c
2)と、それぞれの濃度における基準濃度算出式の変数V
std(c
1)、V
std(c
2)と、基準濃度算出式のn次の係数a
nを定数としており、測定時の測定出力V
outを代入することのみで、濃度演算が可能であることが理解される。
【0022】
ここで式(3)をみると、基準濃度算出式の式(2)を本実施形態のガス濃度測定装置の濃度特性に即した演算式のように補正した形式となっており、これにより光源から測定用赤外線検出部までの光路長や、測定対象ガスによる吸収が無い場合の測定用赤外線検出部の仮想出力の個体ばらつきの影響が低減され、より高精度にガス濃度を演算することが可能となることがわかる。
また、本実施形態のガス濃度測定装置1における基準濃度算出式が対数関数(式(4))である場合、ガス濃度の具体的な演算方法の一例としては、式(5)が挙げられる。
【0024】
(式中、d
1〜4は基準濃度算出式の係数である。)
【0026】
上記式(5)は、第1の濃度および第2の濃度の、それぞれの濃度における測定出力V
out(c
1)、V
out(c
2)と、それぞれの濃度における基準濃度算出式の変数V
std(c
1)、V
std(c
2)と、基準濃度算出式の係数d
1〜4を定数としており、測定時の測定出力V
outを代入することのみで、濃度演算が可能であることが理解される。
ここで式(5)をみると、基準濃度算出式の式(4)を本実施形態のガス濃度測定装置の濃度特性に即した演算式のように補正した形式となっており、これにより光源から測定用赤外線検出部までの光路長や、測定対象ガスによる吸収が無い場合の測定用赤外線検出部の仮想出力の個体ばらつきの影響が低減され、より高精度にガス濃度を演算することが可能となることがわかる。
【0027】
また、式(5)と式(3)より、実施形態のガス濃度測定装置において、第1の濃度の測定対象ガス中で光源を点灯させた時に測定用赤外線検出部が出力する第1の測定出力と、第1の濃度と異なる第2の濃度の測定対象ガス中で光源を点灯させた時に測定用赤外線検出部が出力する第2の測定出力と、濃度算出式から求まる濃度が第1の濃度であるときの変数の値である第1の解と、基準濃度算出式から求まる濃度が第2の濃度であるときの変数の値である第2の解と、から得られる係数と、基準濃度算出式を第1の解と前記第1の濃度で補正した式と、第1の濃度と、を含む濃度算出式に、測定時の測定出力を第1の測定出力で規格化して代入することで、高精度な濃度演算が可能になることが理解される。
また、式(5)と式(3)より、本実施形態のガス濃度測定装置において、係数が、第2の測定出力と第1の測定出力の比と、第2の解と第1の解の比と、から得ることで、高精度な濃度演算が可能になることが理解される。
【0028】
<式(3)の導出>
以下、式(3)の導出過程について説明する。
ランバートベールの法則(Lambert−Beer_law)より、本実施形態のガス濃度測定装置では、式(6)に基づいて測定対象ガスの濃度を演算できるはずである。
【0030】
(式中、cはガスの濃度、εは吸光度係数、l(エル)は実態的な光路長、V
out(0)は測定対象ガスによる吸収が無い場合の仮想の測定出力、V
outは測定時の測定出力である。)
しかし、式(6)は個体ごとにばらつく実態的な光路長lや測定対象ガスによる吸収が無い場合の仮想の測定出力V
out(0)を含んでいる。そこで、任意の既知の第1の濃度および第2の濃度における測定出力から、これらのばらつき要因を含まない数式を導出する。
任意の既知の第1の濃度の測定対象ガス中で前記光源を点灯させた時に測定用赤外線検出部が出力する第1の測定出力V
out(c
1)とすると、第1の濃度c
1は式(7)で表される。
【0032】
上記式(6)、(7)から、下記式(8)が得られる。
【0034】
任意の既知の第2の濃度c
2の測定対象ガス中で、光源を点灯させた時に得られる測定用出力をV
out(c2)とし、上記式(8)に代入して変形すると、式(9)が得られる。
【0036】
式(8)に式(9)を代入すると式(10)を得ることが出来る。
【0038】
しかしながら、測定用赤外線検出部の出力に含まれる回路的、光学的オフセットの影響などによって、実際の特性は上記式(10)のようなLogの関数からは乖離がある。回路的オフセットは、例えば測定用赤外線検出部に含まれる増幅回路で生じる。また、光学的オフセットは、例えば測定対象ガスによって吸収されない波長の光の測定用赤外線検出部への入射等によって生じる。
そこで、式(2)のような基準濃度算出式を定義し、そこから濃度算出式を導出する。ここでの基準濃度算出式とは、本実施形態のガス濃度測定装置と近いガス濃度特性を示す、別個体のガス濃度測定装置におけるガス濃度特性の近似式、つまりは濃度算出式である。
【0040】
(式中、a
nはn次の係数、V
stdは基準濃度算出式の変数である。)
式(10)を式(11)のように変形する。
【0042】
(式中、V
std(c
1)は基準濃度算出式から求まる値が第1の濃度であるときの基準濃度算出式の変数である。)
また、式(10)のLogの関数を多項式に置き換えると、式(12)が得られる。
【0044】
(式中、b
nはn次の係数である。)
式(12)のV
outをV
stdに、V
out(c
1)をV
std(c
1)に、V
out(c
2)をV
std(c
2)に置き換えると式(13)が得られる。
【0046】
(式中、V
std(c
2)は基準濃度算出式から求まる値が第2の濃度であるときの基準濃度算出式の変数である。)
式(11)と式(13)が等しいと仮定して、b
nなどの係数を求めると、式(14−0)〜式(14−n)が得られる。
【0051】
式(14−0)〜式(14−n)を式(12)に代入すると、式(3)を得ることができる。
【0053】
<式(5)の導出>
以下、式(3)の導出過程について説明する。
先述の通り、式(10)は実際の特性からは乖離があるため、式(4)のような基準濃度算出式を定義し、そこから濃度算出式を導出する。ここでの基準濃度算出式とは、本実施形態のガス濃度測定装置と近いガス濃度特性を示す、別個体のガス濃度測定装置におけるガス濃度特性の近似式、つまりは濃度算出式である。
【0055】
(式中、d
1〜4は定数、V
stdは基準濃度算出式の変数である。)
式(4)を式(5)のように変形する。
【0057】
(式中、V
std(c
1)は基準濃度算出式から求まる値が第1の濃度であるときの基準濃度算出式の変数である。)
また、式(10)のLogの関数にオフセットなどを加味すると、式(16)が得られる。
【0059】
(式中、e
1〜4は定数である。)
式(16)のV
outをV
stdに、V
out(c
1)をV
std(c
1)に、V
out(c
2)をV
std(c
2)に置き換えると式(17)が得られる。
【0061】
(式中、V
std(c
2)は基準濃度算出式から求まる値が第2の濃度であるときの基準濃度算出式の変数である。)
式(15)と式(17)が等しいと仮定して、e
1〜4を求めると、式(18−1)〜式(18−4)が得られる。
【0066】
式(18−1)〜式(18−4)を式(17)に代入すると、式(5)を得ることができる。
【0068】
また、本実施形態に係るガス濃度測定装置において、ガス濃度測定装置は、光源からの光を受光し、光に応じた信号である参照出力を出力する参照用赤外線検出部をさらに備え、演算部が前記測定出力を前記参照出力で補正するものであっても良い。
【0069】
図2は、本発明に係るガス濃度測定装置の実施形態において、参照用赤外線検出部を追加した構成を説明するための図である。図中符号32は参照用赤外線検出部を示している。なお、
図1に記載の構成要素と同じ機能を有する構成要素には同一の符号を付してある。なおここでは参考のため、ガスセル10を明示しているが、本発明においてガスセルは必須の構成ではなく、ガスセルの無い形態でも試験容器内等にガス濃度測定装置を配置することで下記と同様の2濃度検査を行うことが可能である。
測定出力を参照出力に基づいて補正することで、式(1)中のV
out(0)(測定対象ガスによる吸収が無い場合の測定用赤外線検出部の出力)が経時的に変化したとしても、その変化分を補正できるため、従来よりも高精度なガス濃度測定が可能になるという効果を奏する。
補正の具体例としては、式(19)などがある。
【0071】
(式中、V
std’は参照出力で補正された測定出力である。)
また、式(19)右辺の分母と分子が逆になっても良い。
また、本実施形態に係わるガス濃度測定装置において、演算部が、光源を点灯させた時の測定出力と参照出力の少なくとも一方を、光源を消灯させた時の測定出力と参照出力の少なくとも一方に基づいて補正するものであってもよい。
補正の具体例としては、式(20)、式(21)のように、光源を点灯させた時の測定出力および参照出力と、光源を消灯させた時の測定出力および参照出力の差分をとるなどがある。
【0074】
(式中、D
OUTは光源を点灯させた時の測定出力を光源を消灯させた時の測定出力で補正したもの、D
refは光源を点灯させた時の参照出力を光源を消灯させた時の参照出力で補正したもの、V
out_onは光源を点灯させた時の測定出力、V
out_offは光源を消灯させた時の測定出力、V
ref_onは光源を点灯させた時の参照出力、V
ref_offは光源を消灯させた時の参照出力である。
ここで、光源を点灯させた状態とは、光源が周囲環境から放射される赤外線量よりも多い赤外線を放射している状態をいう。
また、光源を消灯させた状態とは、完全に消灯している状態でなくてもよい。
光源への電力供給の有無に係わらず、光源が赤外線を放射している状態であっても、放射する赤外線量が光源点灯時に放射する赤外線量以下である場合、または周囲環境から放射される赤外線量と同等以下である場合には、光源は実質的に赤外線を放射しない状態であるため消灯状態と看做される。
【0075】
光源を消灯させた時の測定出力や参照出力に基づいて、光源を店頭させた時の測定出力や参照出力を補正することで、測定出力や参照出力に含まれる回路的オフセットを補正できるため、従来よりも高精度なガス濃度測定が可能になるという効果を奏する。
ここで、回路的オフセットとは、例えば測定用赤外線検出や参照用赤外線検出部に内蔵される増幅回路の出力オフセットなどである。
以下、本実施形態のガス濃度測定装置における各構成要件について説明する。各構成要件の具体例や技術的特徴は、本発明の技術思想を逸脱しない範囲で単独または組み合わせて適用可能である。
【0076】
(測定用赤外線検出部及び参照用赤外線検出部)
測定用赤外線検出部、参照用赤外線検出部は、光源が出力する赤外線に対する感度を有し、入射された赤外線に応じた信号を出力するものである。測定用赤外線検出部は参照用赤外線検出部よりも、測定対象ガスによる赤外線吸収帯域に対する感度の赤外線吸収帯域以外の帯域に対する感度に対する比が大きいものであれば特に制限されない。測定用赤外線検出部及び参照用赤外線検出部には、焦電センサ(Pyroelectric sensor)、サーモパイル(Thermopile:熱電堆)、ボロメータ(Bolometer)等の熱型赤外線センサや、量子型赤外線センサ等が好適である。
測定用赤外線検出部、参照用赤外線検出部は、測定対象ガスに併せて所望の光学特性を有する光学フィルタをさらに備えていてもよい。例えば、測定対象ガスが炭酸ガスの場合、測定用赤外線検出部には炭酸ガスによる赤外線吸収が多く生じる波長帯(代表的には4.3μm付近)の赤外線を濾波できるバンドパスフィルタを搭載し、参照用赤外線検出部には炭酸ガスによる赤外線吸収が生じない波長帯(代表的には3.9μm付近)の赤外線を濾波できるバンドパスフィルタを搭載する形態が例示される。
【0077】
(光源)
光源は、測定用赤外線検出部、参照用赤外線検出部が感度を有する赤外線帯域を出力できるものであれば特に制限されない。例えば、白熱電球やセラミックヒータ、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ヒーターやLEDなどを用いることができる。
(演算部)
演算部は、ガス濃度算出における演算が可能なものであれば特に制限されず、例えば、アナログIC、ディジタルIC及びCPU(Central Processing Unit)等が好適である。演算部には、光源を制御するための機能が含まれていても構わない。
【0078】
(ガスセル)
本実施形態のガス濃度測定装置は、内部に測定対象ガスを流入可能であり、内部に光源、測定用赤外線検出部、参照用赤外線検出部、演算部等を配置可能なガスセルをさらに備えても良い。ここで、流入可能とは光源から出力された赤外線が測定対象ガスの存在する空間を通って、測定用赤外線検出部に到達可能であることを示す。ガスセルをさらに備えることで、測定用赤外線検出部及び参照用赤外線検出部の出力する信号のSN比を高めることができ、より高精度なガス濃度測定装置が実現する。赤外線検出部に入射される赤外線の効率化の観点から、ガスセル内部が赤外線を反射する材料で形成されていることが好ましい。具体的にはアルミニウムや銅などの金属材料が挙げられる。
次に、本実施形態のガス濃度測定装置の実施例について説明する。
【実施例】
【0079】
タングステン光源、CO
2による赤外線吸収のある4.2μm〜4.4μmの波長帯を選択的に濾波選別する光学フィルタを搭載した測定用赤外線検出部31としての量子型赤外線センサ「IR1011」(旭化成エレクトロニクス株式会社製)、CO
2による赤外線吸収の無い3.7μm〜3.9μmの波長帯を選択的に濾波選別する光学フィルタを搭載した参照用赤外線検出部としての量子型赤外線センサ「IR1011」(旭化成エレクトロニクス株式会社製)、演算部として記憶部と処理部を備えたICを、リン青銅に金メッキを施したガスセル中に、配置した炭酸ガス濃度測定装置を準備した。
【0080】
次いで、濃度0ppmの炭酸ガスをガスセル中に充填した時の、光源が点灯および消灯している時の、それぞれアンプにより増幅された測定用赤外線検出部と参照用赤外線検出部からの出力と、濃度986mの炭酸ガスをガスセル中に充填した時の、光源が点灯および消灯している時の、それぞれアンプにより増幅された測定用赤外線検出部と参照用赤外線検出部からの出力とを用いて、上述した実施形態の濃度演算を行った。
具体的な演算は下記の通りである。
以下、本実施例で述べる測定出力とは、光源を点灯している時の測定出力と光源を消灯している時の測定出力との差分であり、参照出力とは、光源を点灯している時の参照出力と光源を消灯している時の参照出力との差分である。
【0081】
まず、測定時の測定出力に対する参照出力の比(D
out’)、炭酸ガス濃度0ppm時の測定出力に対する参照出力の比(D
out(c
1)’)、また、炭酸ガス濃度986ppm時の測定出力に対する参照出力の比(D
out(c
2)’)、基準濃度算出式から求まる値が0である時の基準濃度算出式の変数の値(V
std(c
1))、基準濃度算出式から求まる値が986である時の基準濃度算出式の変数の値(V
std(c
2))を演算した。次いで、V
out(c
1)=D
out(c
1)’、V
out(c
2)=D
out(c
2)’とし、式(3)に必要な値を代入し、炭酸ガス濃度を演算した。
【0082】
基準濃度算出式とは、ここで用いているガス濃度測定装置と近いガス濃度特性を示す別個体のガス濃度測定装置(基準ガス濃度測定装置)の、炭酸ガス濃度と測定出力に対する参照出力の比の関係を、直接的あるいは近似的に表す数式である。ここでは、基準ガス濃度測定装置の0〜5000ppmの5点での濃度試験結果から、式(22)のような基準濃度算出式を導出した。
【0083】
【数32】
【0084】
ここで、f(V
std)は基準濃度算出式、V
stdは基準濃度算出式の変数である。
【0085】
[比較例]
以下、本比較例で述べる測定出力とは、光源を点灯している時の測定出力と光源20をしている時の測定出力との差分であり、参照出力とは、光源を点灯している時の参照出力と光源を消灯している時の参照出力との差分である。
まず、式(23)のような、2次の係数が固定で、1次の係数(b
1)と0次の係数(b
0)が未定である濃度算出式を用意した。
【0086】
【数33】
【0087】
ここで、g(D
out’)は比較例における濃度算出式、D
out’は測定時の測定用赤外線検出部の出力に対する参照用赤外線検出部の出力、f
1は濃度算出式の1次の係数、f
0は濃度算出式の0次の係数である。
濃度算出式(式(23))の2次の係数は、ここで用いているガス濃度測定装置と近いガス濃度特性を示す別個体のガス濃度測定装置の、炭酸ガス濃度と参照出力に対する測定出力の比との関係を表す、2次の近似式の2次の係数である。ここでは、実施例で用いた基準ガス濃度測定装置の0〜5000ppmの5点での濃度試験結果から、炭酸ガス濃度と参照出力に対する測定出力の比との関係を表す2次近似式を求め(式(22))、その2次関数の2次の係数を濃度算出式(式(23))中の2次の係数とした。
【0088】
次いで、式(22)の1次および0次の係数を、炭酸ガス濃度0ppm時の測定用赤外線検出部31の出力に対する参照用赤外線検出部の出力と、炭酸ガス濃度987ppm時の参照用赤外線検出部の出力に対する測定用赤外線検出部31の出力の比から求め、式(24)を得た。
【0089】
【数34】
【0090】
次いで、式(12)に測定時の参照出力に対する測定出力の比を代入し、炭酸ガス濃度を演算した。
図3は、上述した実施例と比較例を対比した結果を示す図である。
図3の結果より、実施例の演算によると最大で−14ppmの誤差にとどまったが、比較例1の演算によると最大で+273ppmの誤差が生じた。
以上の結果より、本実施形態のガス濃度演算装置によれば、従来の濃度算出式よりも高精度な濃度演算が可能であることが理解される。
【0091】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は、上述した実施形態に記載の技術的範囲には限定されない。上述した実施形態に、多様な変更又は改良を加えることも可能であり、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。