(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の複数のスイッチトキャパシタは、前記各スイッチトキャパシタに蓄積した電荷を前記インクリメンタル型デルタシグマAD変調器の1オーバーサンプリング毎に、順次、前記帰還キャパシタに転送する請求項1に記載のインクリメンタル型デルタシグマAD変調器。
前記複数のダミースイッチトキャパシタは、前記インクリメンタル型デルタシグマAD変調器が複数のオーバーサンプリングを行う期間に渡って、前記複数のダミーキャパシタを前記演算増幅器の反転入力と非反転入力に接続する請求項4に記載のインクリメンタル型デルタシグマAD変調器。
前記第1の複数のスイッチトキャパシタに入力される信号と同一の信号が入力される第1の複数のフィードフォワードスイッチトキャパシタを備える請求項1から6の何れか1項に記載のインクリメンタル型デルタシグマAD変調器。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の詳細な説明では、本発明の実施形態の完全な理解を提供するように多くの特定の具体的な構成について記載されている。しかしながら、このような特定の具体的な構成に限定されることなく他の実施態様が実施できることは明らかであろう。また、以下の実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、実施形態で説明されている特徴的な構成の組み合わせの全てを含むものである。
【0010】
以下、図面を参照して本発明の各実施形態について説明する。
<実施形態1>
図2は、本発明に係るAD変換器の実施形態1を説明するための回路構成図である。
実施形態1のAD変換器は、インクリメンタル型デルタシグマAD変調器40と、インクリメンタル型デルタシグマAD変調器40からの信号が入力されるデジタル演算部43と、を備える。インクリメンタル型デルタシグマAD変調器40は、入力信号を積分するアナログ積分器41と、アナログ積分器41の出力信号を量子化する量子化器42と、量子化器42の出力をDA変換するDA変換器414と、アナログ積分器41とデジタル演算部43をリセットするためのリセット信号を出力するリセット信号出力器44と、を備える。
【0011】
インクリメンタル型デルタシグマAD変調器40は、1変換サイクル毎に入力アナログ信号をシリアルデジタルコードに変換する。シリアルデジタルコードに含まれるデジタルコード(0又は1で表されるコード)の数は、インクリメンタル型デルタシグマAD変調器40のオーバーサンプリング比と同じ数になる。例えば、インクリメンタル型デルタシグマAD変調器40のオーバーサンプリング比が60の時、インクリメンタル型デルタシグマAD変調器40は入力アナログ信号を60個のデジタルコードを含むシリアルデジタルコードに変換する。インクリメンタル型デルタシグマAD変調器40は、1オーバーサンプリング毎に1つのデジタルコードを出力する。
【0012】
アナログ積分器41は、第1の複数のスイッチトキャパシタ410と、第1の複数のスイッチトキャパシタ410と接続する第1のアナログ積分器411と、を備える。第1のアナログ積分器411は、入力が第1の複数のスイッチトキャパシタ410と接続する演算増幅器411aと、演算増幅器411aの入力と出力を接続する帰還キャパシタCi1p及びCi1nを備える。
【0013】
実施形態1のアナログ積分器41は3段のアナログ積分器である。アナログ積分器41は、更に、第1のアナログ積分器411の出力と接続するスイッチトキャパシタCs2p,Cs2nと、スイッチトキャパシタCs2p,Cs2nに接続する第2のアナログ積分器412と、第2のアナログ積分器412の出力と接続するスイッチトキャパシタCs3p,Cs3nと、スイッチトキャパシタCs3p,Cs3nに接続する第3のアナログ積分器413とを含む。
【0014】
第2のアナログ積分器412は、スイッチトキャパシタCs2p,Cs2nに接続する演算増幅器411bと、演算増幅器411bの入力と出力を接続する帰還キャパシタCi2p及びCi2nを備える。
第3のアナログ積分器413は、スイッチトキャパシタCs3p,Cs3nに接続する演算増幅器411cと、演算増幅器411cの入力と出力を接続する帰還キャパシタCi3p及びCi3nを備える。
【0015】
実施形態1のAD変換器のアナログ積分器41は3段のアナログ積分器であるが、アナログ積分器41の段数については特に限定は無い。
DA変換器414は、例えば、スイッチトキャパシタ型のDA変換器であり、キャパシタCfbp及びCfbnを備える。DA変換器414は、基準電圧REFPとキャパシタCfbpを接続し、基準電圧REFPに相当する電荷をキャパシタCfbpに蓄積する。また、DA変換器414は、基準電圧REFNとキャパシタCfbnを接続し、基準電圧REFNに相当する電荷をキャパシタCfbnに蓄積する。尚、基準電圧REFNは基準電圧REFPと逆極性の基準電圧である。
【0016】
そして、DA変換器414は、量子化器42の出力に基づいて、キャパシタCfbpの接続先を演算増幅器411aの反転入力に接続するか、非反転入力に接続するかを決定する。キャパシタCfbpが演算増幅器411aの反転入力に接続された場合は、キャパシタCfbnは演算増幅器411aの非反転入力に接続され、キャパシタCfbpが演算増幅器411aの非反転入力に接続された場合は、キャパシタCfbnは演算増幅器411aの反転入力に接続される。
【0017】
インクリメンタル型デルタシグマAD変調器40は、インクリメンタル型デルタシグマAD変調器40の入力AINP、AINNを量子化器42に入力するための第1の複数のフィードフォワードスイッチトキャパシタ421を含む。
また、インクリメンタル型デルタシグマAD変調器40は、演算増幅器411aの出力を量子化器42に入力するための第2の複数のフィードフォワードスイッチトキャパシタ422と、演算増幅器411bの出力を量子化器42に入力するための第3の複数のフィードフォワードスイッチトキャパシタ423と、演算増幅器411cの出力を量子化器42に入力するための第4の複数のフィードフォワードスイッチトキャパシタ424を備える。
【0018】
第1の複数のフィードフォワードスイッチトキャパシタ421は、AINPが入力されるキャパシタC0ffpとAINNが入力されるキャパシタC0ffnとを含む。キャパシタC0ffpは、AINPが入力されるm個のキャパシタC0ffp1〜C0ffpmを含み、キャパシタC0ffnは、AINNが入力されるm個のキャパシタC0ffn1〜C0ffnmを含む。
【0019】
このキャパシタ分割数mは整数であり、インクリメンタル型デルタシグマAD変調器40のオーバーサンプリング比と同じ値である。
第2の複数のフィードフォワードスイッチトキャパシタ422は、演算増幅器411aの正転出力が入力されるキャパシタC1ffpと演算増幅器411aの反転出力が入力されるキャパシタC1ffnを含む。
【0020】
第3の複数のフィードフォワードスイッチトキャパシタ423は、演算増幅器411bの正転出力が入力されるキャパシタC2ffpと演算増幅器411bの反転出力が入力されるキャパシタC2ffnを含む。
第4の複数のフィードフォワードスイッチトキャパシタ424は、演算増幅器411cの正転出力が入力されるキャパシタC3ffpと演算増幅器411cの反転出力が入力されるキャパシタC3ffnを含む。
【0021】
デジタル演算部43は、量子化器42の出力MODOを積分し、デジタル出力DOUTを出力するデジタル積分器を備える。デジタル積分器の次数は、アナログ積分器41の段数と同じであることが好ましい。
図3は、本発明に係るAD変換器の第1の複数のスイッチトキャパシタを説明するための図である。
【0022】
第1の複数のスイッチトキャパシタ410は、AINPが入力されるキャパシタをm個備える。即ち、第1の複数のスイッチトキャパシタ410は、AINPが入力されるキャパシタCs1p1〜Cs1pmを備える。また、第1の複数のスイッチトキャパシタ410は、AINNが入力されるキャパシタをm個備える。即ち、第1の複数のスイッチトキャパシタ410は、AINNが入力されるキャパシタCs1n1〜Cs1nmを備える。
【0023】
第1の複数のスイッチトキャパシタ410は、入力信号AINP、AINNに応じた電荷を一度にキャパシタCs1p1〜Cs1pm及びCs1n1〜Cs1nmに蓄積する。尚、AINNはAINPの逆極性の信号を示す。
第1の複数のスイッチトキャパシタ410は、キャパシタCs1p1〜Cs1pmに蓄積された全ての電荷を帰還キャパシタCi1pに転送する。キャパシタCs1p1〜Cs1pmに蓄積された電荷は、一度に帰還キャパシタCi1pに転送されてもよい。
【0024】
ただし、キャパシタCs1p1〜Cs1pmに蓄積された電荷を一度に帰還キャパシタCi1pに転送すると、第3のアナログ積分器413の出力が飽和する可能性がある。飽和防止の観点から、キャパシタCs1p1〜Cs1pmに蓄積された電荷は、インクリメンタル型デルタシグマAD変調器40の1オーバーサンプリング毎に、順次、帰還キャパシタCi1pに転送されることが好ましい。
【0025】
また、キャパシタCs1p1〜Cs1pmに蓄積された電荷をインクリメンタル型デルタシグマAD変調器40の1オーバーサンプリング毎に、順次、帰還キャパシタCi1pに転送することにより、各アナログ積分器のゲインを大きくしたときに第3のアナログ積分器413の出力が飽和しにくくなる。各アナログ積分器のゲインを大きくすることにより、量子化ノイズを低減することができる。第2のアナログ積分器412のゲインは、Cs2p/Ci2pやCs2n/Ci2nを大きくすることによって大きくすることができる。第3のアナログ積分器413のゲインはCs3p/Ci3pやCs3n/Ci3nを大きくすることによって大きくすることができる。
【0026】
同様に、第1の複数のスイッチトキャパシタ410は、キャパシタCs1n1〜Cs1nmに蓄積された電荷を一度に帰還キャパシタCi1nに転送してもよいが、アナログ積分器の出力の飽和の観点と、量子化ノイズ低減の観点から、キャパシタCs1n1〜Cs1nmに蓄積された電荷は、インクリメンタル型デルタシグマAD変調器40の1オーバーサンプリング毎に、順次、帰還キャパシタCi1nに転送されることが好ましい。
【0027】
このように、本実施形態1のAD変換器は、サンプルホールド回路をインクリメンタル型デルタシグマAD変調器内のアナログ積分器に組み込んだ回路構成となっているため、インクリメンタル型デルタシグマAD変調器のループの外にサンプルホールド回路を設ける必要が無い。これにより、低ノイズ且つ低消費電力のインクリメンタル型デルタシグマAD変調器を実現することができる。
【0028】
次に、実施形態1のAD変換器の動作タイミングを説明する。
図4は、
図2の信号波形図である。
入力信号をトラッキングするフェーズでは、第1の複数のスイッチトキャパシタは、φtがHのタイミングでキャパシタCs1p1〜Cs1pm,Cs1n1〜Cs1nmに一度に電荷を蓄積する。
【0029】
そして、コンバージョンフェーズでは、第1の複数のスイッチトキャパシタは、φi1がHのタイミングで、キャパシタCs1p1,Cs1n1の電荷を、帰還キャパシタCi1p,Ci1nに転送する。
同様に、第1の複数のスイッチトキャパシタは、φijがHのタイミングで、j番目のキャパシタCs1pj,Cs1njの電荷を帰還キャパシタCi1p,Ci1nに転送する。
【0030】
キャパシタ分割数mはインクリメンタル型デルタシグマAD変調器40のオーバーサンプリング比と同じ値である。第1の複数のスイッチトキャパシタは、インクリメンタル型デルタシグマAD変調器40の1オーバーサンプリング毎に、順次、帰還キャパシタに電荷を転送し、m回電荷の転送を行うと、トラッキングフェーズで蓄えた電荷の転送が完了する。
【0031】
DA変換器414は、φsの立ち上がりのタイミングでキャパシタCfbpとキャパシタCfbnに基準電圧REFNと基準電圧REFNに相当する電荷を蓄積し、φiの立ち上がりのタイミングでキャパシタCfbpとキャパシタCfbnに蓄積された電荷を帰還キャパシタCi1p,Ci1nに転送する。DA変換器414は、量子化器42の出力に基づいてキャパシタCfbpとキャパシタCfbnの接続先を決定する。
【0032】
キャパシタCs2p,Cs2nの電荷とキャパシタCs3p,Cs3nの電荷は、φiの立ち上がりにキャパシタCi2p,Ci2nとCi3p,Ci3nにそれぞれ転送される。
第1の複数のフィードフォワードスイッチトキャパシタ421はφiのタイミングで、キャパシタC0ffp,C0ffnに蓄積されたAINP信号とAINN信号に相当する電荷を量子化器42に転送する。
【0033】
第2の複数のフィードフォワードスイッチトキャパシタ422はφiのタイミングで、C1ffp,C1ffnに蓄積された第1のアナログ積分器411の出力に応じた電荷を量子化器42に転送する。
第3の複数のフィードフォワードスイッチトキャパシタ423はφiのタイミングで、C2ffp,C2ffnに蓄積された第2のアナログ積分器412の出力に応じた電荷を量子化器42に転送する。
【0034】
第4の複数のフィードフォワードスイッチトキャパシタ424はφiのタイミングで、C3ffp,C3ffnに蓄積された第3のアナログ積分器413の出力に応じた電荷を量子化器42に転送する。
第1から第4のフィードフォワードスイッチトキャパシタは、φsのタイミングでC0ffp、C0ffn、C1ffp、C1ffn、C2ffp、C2ffn、C3ffp、C3ffnに蓄積された電荷をリセットする。
【0035】
リセット信号出力器44は、φrがHのタイミングで、リセット信号を出力し、演算増幅器411a〜411cの入出力をショートさせてアナログ積分器のリセットを行い、更に、デジタル演算部43に含まれるデジタル積分器をリセットする。
尚、第1の複数のスイッチトキャパシタがキャパシタCs1p1〜Cs1pm,Cs1n1〜Cs1nmに蓄積された電荷を帰還キャパシタに転送した後に、第1の複数のスイッチトキャパシタを演算増幅器411aのサミングノードSP,SNから切り離してもよい。
【0036】
この他、キャパシタCs1p1〜Cs1pj,Cs1n1〜Cs1nj(ただしjはm未満の整数)に蓄積された電荷を帰還キャパシタに転送したのちに、第1の複数のスイッチトキャパシタを演算増幅器411aのサミングノードSP,SNから切り離してもよい。
即ち、キャパシタCs1pj+1〜Cs1pm,Cs1nj+1〜Cs1nmに蓄積された電荷を帰還キャパシタに転送する前にキャパシタCs1p1〜Cs1pj,Cs1n1〜Cs1njを演算増幅器411aのサミングノードSP,SNから切り離してもよい。また、複数回にわけて切り離してもよい。
【0037】
このような構成により、演算増幅器411aの負荷が軽くなるため、演算増幅器411aのフィードバックゲインやフィードバック帯域が向上するため、消費電流や面積の削減ができる。
ところで、入力容量をAMP1のサミングノードSP,SNから切り離すタイミングでノイズが発生する場合がある。インクリメンタルデルタシグマAD変換器ではコンバージョン回数が少ないほど(jが小さいほど)重みが大きくノイズも大きく見えるが、より後にアンプのサミングノードSP,SNから切り離した方が重みが小さくなり出力に現れるノイズは小さくなるため、すぐに切り離すのではなく任意のタイミングで切り離すことで、ノイズの低減が可能である。
【0038】
<実施形態2>
図5は、本発明に係るAD変換器の実施形態2を説明するための回路構成図である。
本実施形態2のAD変換器は、本実施形態1のAD変換器と比較して、第1の複数のスイッチトキャパシタ410に含まれるスイッチトキャパシタの数が異なる。それ以外の構成は本実施形態1のAD変換器と同じである。
第1の複数のスイッチトキャパシタ410は、AINPが入力されるキャパシタをj個備える。即ち、第1の複数のスイッチトキャパシタ410は、AINPが入力されるキャパシタCs1p1〜Cs1pjを備える。また、第1の複数のスイッチトキャパシタ部410は、AINNが入力されるキャパシタをj個備える。即ち、第1の複数のスイッチトキャパシタ410はAINNが入力されるキャパシタCs1n1〜Cs1njを備える。
【0039】
このキャパシタ分割数jは整数であり、インクリメンタル型デルタシグマAD変調器40のオーバーサンプリング比mよりも小さい数である。
次に、第1の複数のスイッチトキャパシタの動作タイミングを説明する。
図6は、
図5における信号波形図である。
入力信号をトラッキングするフェーズでは、第1の複数のスイッチトキャパシタは、φtがHのタイミングでキャパシタCs1p1〜Cs1pj,Cs1n1〜Cs1njに一度に電荷を蓄積する。
【0040】
そして、コンバージョンフェーズでは、第1の複数のスイッチトキャパシタは、φi1がHのタイミングで、キャパシタCs1p1,Cs1n1の電荷を、帰還キャパシタCi1p,Ci1nに転送する。
同様に、第1の複数のスイッチトキャパシタは、φijがHのタイミングで、j番目のキャパシタCs1pj,Cs1njの電荷を帰還キャパシタCi1p,Ci1nに転送する。
【0041】
第1の複数のスイッチトキャパシタは、コンバージョンフェーズにおいて、1〜j回まではキャパシタCs1p1〜Cs1pj,Cs1n1〜Cs1njに蓄積された電荷を帰還キャパシタに転送するが、(j+1)〜m回まではキャパシタCs1p1〜Cs1pj,Cs1n1〜Cs1njに蓄積された電荷を帰還キャパシタに転送しない。つまり、インクリメンタル型デルタシグマAD変調器40は、帰還キャパシタCi1p,Ci1nに電荷を転送せずに(j+1)〜m回のオーバーサンプリングを行う。
【0042】
インクリメンタル型デルタシグマAD変調器の場合、AD変換を実行する前にアナログ積分器41とデジタル演算部43をリセットするため、リセット直後に第1の複数のスイッチトキャパシタ410から帰還キャパシタCi1p及びCi1nに転送された電荷が、量子化器42のデジタル出力MODOに大きく寄与する。そして、あとに転送される電荷ほど、量子化器42のデジタル出力MODOへの寄与度は小さくなる。例えば、第1の複数のスイッチトキャパシタが、コンバージョンフェーズにおいて、キャパシタCs1p1〜Cs1pmに蓄積された電荷をキャパシタCs1p1から順に帰還キャパシタに転送すると仮定する。この場合、キャパシタCs1p1に蓄積された電荷は、デジタル出力MODOへの寄与度が大きく、キャパシタCs1pmに近づくにつれ、デジタル出力MODOへの寄与度は小さいことになる。
【0043】
実施形態2のAD変換器は、デジタル出力MODOへの寄与度が大きい1〜j回までについては電荷の転送を行い、デジタル出力MODOへの寄与度が小さい(j+1)〜m回までの電荷の転送を行わないことを特徴としている。電荷の転送を途中で打ち切るため、コンバージョンフェーズ開始から次回のトラッキングフェイズ開始までの時間を短くすることが出来る。
【0044】
ただし、途中で打ち切った場合には出力のゲインが減少するため、デジタル演算部にデジタル増幅器を設けて、ゲイン補正を行うか、又は、Cs1p1〜Cs1pj,Cs1n1〜Cs1njの容量値を任意に変えることによりトータルゲインを1に合わせることが好ましい。
【0045】
<実施形態3>
図7は、本発明に係るAD変換器の実施形態3を説明するための回路構成図である。
実施形態3のAD変換器は、実施形態2のAD変換器と比較して、第1の複数のスイッチトキャパシタ410が、複数のダミースイッチトキャパシタ500を備える点が異なる。それ以外の構成は実施形態2のAD変換器と同じである。
複数のダミースイッチトキャパシタ500は、キャパシタCs1pxを有するスイッチトキャパシタと、キャパシタCs1nxを有するスイッチトキャパシタから構成される。キャパシタCs1pxとキャパシタCs1nxには、同一の入力信号BINが入力される。
【0046】
次に、第1の複数のスイッチトキャパシタの動作タイミングを説明する。
図8は、
図7における信号波形図である。
第1の複数のスイッチトキャパシタは、コンバージョンフェーズにおいて、1〜j回まではφi1からφijの立ち上がりのタイミングでキャパシタCs1p1〜Cs1pj,Cs1n1〜Cs1njに蓄積された電荷を帰還キャパシタに転送する。しかし、第1の複数のスイッチトキャパシタは、(j+1)〜m回まではキャパシタCs1p1〜Cs1pj,Cs1n1〜Cs1njに蓄積された電荷を帰還キャパシタに転送しない。
【0047】
複数のダミースイッチトキャパシタ500は、(j+1)回目に、φixの立ち上がりタイミングでCs1px及びCs1nxに蓄えられた電荷をCi1p,Ci1nに転送し、変換が終了する時刻まで切り離さず接続した状態とする。
実施形態2においては、演算増幅器411aの負荷が1〜j回までと(j+1)〜m回までで異なるため、演算増幅器411aのフィードバック帯域やフィードバックゲインが変動する。
【0048】
一方、実施形態3では、Cs1p1〜Cs1pj、Cs1n1〜Cs1nj、Cs1px,Cs1nxを同じ容量値とすることにより、1〜j回までと(j+1)〜m回までで演算増幅器411aの負荷を一定に保つことができる。これにより、コンバージョンフェーズ中の演算増幅器411aのフィードバック帯域やフィードバックゲインを一定に保つことができるため、演算増幅器411aに要求される帯域やゲインを緩和することができ、消費電流や面積を削減することが可能である。
【0049】
<実施形態4>
図9は、本発明に係るAD変換器の実施形態4を説明するための回路構成図である。
実施形態4のAD変換器は、実施形態1のAD変換器と異なり、第1の複数のスイッチトキャパシタに含まれるキャパシタがAINPとAINNの他、REFPとREFNにも接続している。
即ち、実施形態4のAD変換器は、第1の複数のスイッチトキャパシタ410とDA変換器414がキャパシタを共有している点が実施形態1のAD変換器と異なる。それ以外の構成は実施形態1のAD変換器と同じである。
【0050】
<実施形態5>
図10は、本発明に係るAD変換器の実施形態5を説明するための回路構成図である。
実施形態5のAD変換器は実施形態1のAD変換器と比較して、入力信号AINPとAINNが入力されるサンプルホールド回路50を備え、第1の複数のフィードフォワードスイッチトキャパシタ421がサンプルホールド回路50の出力を量子化器に転送する点が実施形態1と異なる。
【0051】
第1の複数のフィードフォワードスイッチトキャパシタ421に含まれるキャパシタC0ffp,C0ffnには、サンプルホールド回路50の出力が入力される。
ところで、インクリメンタル型デルタシグマAD変調器をマルチビットにすると量子化器が複数必要となる。量子化レベルがQのとき、第1の複数のフィードフォワードスイッチトキャパシタは、正極の信号が入力されるQ×m個のキャパシタと、負極の信号が入力されるQ×m個のキャパシタが必要となり、第1の複数のフィードフォワードスイッチトキャパシタの容量が増大する。
【0052】
そのため、実施形態5では、サンプルホールド回路50を搭載することで第1の複数のフィードフォワードスイッチトキャパシタに含まれるキャパシタの数を抑え、第1の複数のフィードフォワードスイッチトキャパシタの容量が増大することを抑制する。
サンプルホールド回路50は、入力信号AINPとAINNに接続するスイッチトキャパシタ51と、入力がスイッチトキャパシタ51に接続する演算増幅器52と、演算増幅器52の入力と出力に接続する帰還キャパシタChffpとChffnを備える。スイッチトキャパシタ51は、入力信号AINPが入力されるキャパシタCsffpと、入力信号AINNが入力されるCsffnを含む。
【0053】
なお、サンプルホールド回路を置くことにより素子が増加するが、インクリメンタル型デルタシグマAD変調器において一般的にフィードフォワード部には高精度は要求されないため消費電力や面積はさほど増加しない。
このような構成により、インクリメンタル型デルタシグマAD変調器の入力容量の合計値が小さくなるので、この入力容量を駆動するために用いるインクリメンタル型デルタシグマAD変調器前段のドライバーに対する要求性能(帯域や消費電力)を緩和することができる。また、面積の削減が可能である。
【0054】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は、上述した実施形態に記載の技術的範囲には限定されない。上述した実施形態に、多様な変更又は改良を加えることも可能であり、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。