(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
互いに交差する分割予定ラインに区画された複数の領域にデバイスが形成されたデバイス領域と、該デバイス領域を囲繞する外周余剰領域とを表面に備えたウェーハの加工方法であって、
ウェーハの表面に保護テープを貼着する保護テープ貼着ステップと、
該保護テープを介してチャックテーブルの保持面にウェーハを保持する保持ステップと、
該チャックテーブルに保持したウェーハの裏面から該デバイス領域の周縁に沿ってレーザー光線を照射する枠体形成ステップと、
該枠体形成ステップを実施した後、ウェーハの裏面から枠体に囲繞された該デバイス領域の該分割予定ラインに沿ってウェーハに対して透過性を有する波長のレーザー光線を照射し、ウェーハの内部に改質層を形成する分割予定ライン加工ステップと、
該保護テープを介してウェーハに外力を付与し、該ウェーハを複数のデバイスチップに分割する分割ステップと、を備え、
該枠体形成ステップでは、該デバイス領域と該外周余剰領域との円環状の境界に該レーザー光線を照射して、該デバイス領域と該外周余剰領域とを分離して該デバイス領域を囲繞する枠体を形成し、
該分割予定ライン加工ステップにおいて形成される該改質層の膨張による該分割予定ラインの位置ずれを該枠体が抑制することを特徴とするウェーハの加工方法。
該枠体形成ステップでは、ウェーハに対して透過性を有する波長のレーザー光線を照射してウェーハの内部に環状の改質層を形成し、該改質層から表面、裏面に伸展する亀裂で該デバイス領域と該外周余剰領域とを分離し該枠体を形成する請求項1に記載のウェーハの加工方法。
該枠体形成ステップでは、ウェーハに対して吸収性を有する波長のレーザー光線を照射してアブレーション加工を施し、該デバイス領域と該外周余剰領域とを分離して該枠体を形成する請求項1に記載のウェーハの加工方法。
該分割予定ライン加工ステップを実施した後で該分割ステップの実施前に、該枠体にレーザー光線を照射して破断起点を形成することを特徴とする請求項1に記載のウェーハの加工方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。以下で説明する実施形態の構成要素は適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0013】
以下の説明においては、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部の位置関係について説明する。水平面内の一方向をX軸方向、水平面内においてX軸方向と直交する方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向のそれぞれと直交する方向をZ軸方向とする。X軸及びY軸を含むXY平面は、水平面と平行である。XY平面と直交するZ軸方向は、鉛直方向である。
【0014】
[実施形態1]
図1は、実施形態1に係るウェーハ2を示す斜視図である。
図1に示すように、ウェーハ2は、実質的に円板状の部材であり、表面2Aと、表面2Aの逆方向を向く裏面2Bとを有する。表面2Aと裏面2Bとは実質的に平行である。ウェーハ2は、基板と、基板の表面に設けられた機能層とを有する。ウェーハ2の表面2Aは、機能層の表面を含む。ウェーハ2の裏面2Bは、基板の裏面を含む。機能層は、デバイスが形成される層である。基板は、シリコン基板、サファイア基板、タンタル酸リチウム基板、ニオブ酸リチウム基板、及びセラミックス基板の少なくとも一つを含む。
【0015】
ウェーハ2の表面2Aは、互いに交差する分割予定ライン23に区画された複数の領域にデバイス22が形成されたデバイス領域DAと、デバイス領域DAを囲繞する外周余剰領域SAとを有する。
【0016】
デバイス22は、ウェーハ2の表面2Aにおいてマトリクス状に配置される。分割予定ライン23は、格子状に設けられる。デバイス22は、分割予定ライン23によって区画される。デバイス22は、ウェーハ2のデバイス領域DAに形成される。外周余剰領域SAにデバイス22は形成されない。ウェーハ2が分割予定ライン23に沿って分割されることにより、IC(integrated circuit)又はLSI(large scale integration)のようなデバイスチップが製造される。
【0017】
本実施形態において、ウェーハ2の直径は8[inch]である。デバイス22は正方形状であり、デバイス22の一辺の長さは6[mm]である。なお、ウェーハ2の直径は12[inch]でもよい。
【0018】
次に、実施形態1に係るウェーハ2の加工方法について説明する。
図2は、ウェーハ2の加工方法を示すフローチャートである。
図2に示すように、ウェーハ2の加工方法は、ウェーハ2の表面2Aに保護テープを貼着する保護テープ貼着ステップ(SP1)と、保護テープを介してチャックテーブルの保持面にウェーハ2を保持する保持ステップ(SP2)と、チャックテーブルに保持したウェーハ2の裏面2Bからデバイス領域DAの周縁に沿ってレーザー光線を照射し、デバイス領域DAと外周余剰領域SAとを分離してデバイス領域DAを囲繞する枠体を形成する枠体形成ステップ(SP3)と、枠体形成ステップ(SP3)を実施した後、ウェーハ2の裏面2Bから枠体に囲繞されたデバイス領域DAの分割予定ライン23に沿ってウェーハ2に対して透過性を有する波長のレーザー光線を照射し、ウェーハ2の内部に改質層を形成する分割予定ライン加工ステップ(SP4)と、保護テープを介してウェーハ2に外力を付与し、ウェーハ2を複数のデバイスチップに分割する分割ステップ(SP5)と、を備える。
【0019】
保護テープ貼着ステップについて説明する。
図3は、実施形態1に係る保護テープ貼着ステップを示す図である。保護テープ貼着ステップは、ウェーハ2の表面2Aに保護テープ7を貼着するステップである。
図3に示すように、デバイス22を保護するための保護テープ7がウェーハ2の表面2Aに貼着される。保護テープ7は、シート状の部材である。保護テープ7は、環状のフレーム6に装着される。ウェーハ2は、表面2Aが保護テープ7と対向し、裏面2Bが上方(+Z方向)を向くように、保護テープ7に貼着される。ウェーハ2の表面2Aの全域が保護テープ7で覆われる。保護テープ7により、ウェーハ2の表面2Aに設けられているデバイス22が保護される。
【0020】
次に、保持ステップについて説明する。
図4は、実施形態1に係る保持ステップを示す一部断面図である。保持ステップは、保護テープ7を介してレーザー加工装置3のチャックテーブル31の保持面31Hにウェーハ2を保持するステップである。
【0021】
図4に示すように、レーザー加工装置3は、ウェーハ2を保持する保持面31Hを有するチャックテーブル31を備えている。保持面31Hはポーラスセラミックス板の平坦面であり、XY平面と実質的に平行である。チャックテーブル31は、保護テープ7を介して、ウェーハ2を保持する。保護テープ7と保持面31Hとが対向する。ウェーハ2は、裏面2Bが上方を向くように、保護テープ7を介してチャックテーブル31に保持される。
【0022】
チャックテーブル31は、ウェーハ2の裏面2BとXY平面とが平行となるように、ウェーハ2を保持する。また、チャックテーブル31は、XY平面内における保持面31Hの中心とウェーハ2の裏面2Bの中心とが一致するように、ウェーハ2を保持する。
【0023】
チャックテーブル31は、ウェーハ2を着脱可能に保持する。真空ポンプを含む真空吸引源と接続されたポーラスセラミックス板の平坦面である保持面31Hはポーラス孔で負圧を発生させる。チャックテーブル31の保持面31Hに保護テープ7及びウェーハ2が載せられた状態で真空吸引源が作動することにより、ウェーハ2は、保護テープ7を介して、チャックテーブル31に吸着保持される。真空吸引源の作動が停止されることにより、ウェーハ2及び保護テープ7は、チャックテーブル31から解放される。
【0024】
レーザー加工装置3は、フレーム6を保持するフレーム保持装置32を備えている。フレーム保持装置32は、チャックテーブル31の側面に設けられたアーム部材33と、アーム部材33に固定された環状のフレーム保持部材34と、フレーム保持部材34の上面34Hとの間でフレーム6を挟むクランプ機構35とを有する。フレーム保持部材34の上面34Hは、フレーム6が保持される保持面である。上面34Hに載せられたフレーム6は、クランプ機構35とフレーム保持部材34との間に挟まれる。クランプ機構35は、フレーム保持部材34との間でフレーム6を挟むことによって、フレーム6をフレーム保持部材34に固定する。
【0025】
フレーム保持部材34の上面34Hは、チャックテーブル31の保持面31Hよりも下方(−Z方向)に配置される。フレーム保持装置32に保持されたフレーム6は、チャックテーブル31の保持面よりも下方に配置される。フレーム6が保持面よりも下方に配置されることによって、保護テープ7が張られる。
【0026】
次に、枠体形成ステップについて説明する。
図5は、実施形態1に係る枠体形成ステップを示す斜視図である。
図6は、実施形態1に係る枠体形成ステップを示す一部断面図である。
図7は、実施形態1に係るレーザー加工装置3を示す機能ブロック図である。枠体形成ステップは、レーザー加工装置3のチャックテーブル31に保持したウェーハ2の裏面2Bからデバイス領域DAの周縁に沿ってレーザー光線を照射し、デバイス領域DAと外周余剰領域SAとを分離してデバイス領域DAを囲繞する枠体1を形成するステップである。
【0027】
図5、
図6、及び
図7に示すように、レーザー加工装置3は、チャックテーブル31に保持されたウェーハ2にレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段36と、チャックテーブル31を移動する移動装置37と、チャックテーブル31の位置を検出する位置検出装置38と、ウェーハ2の光学像を取得する撮像装置39と、レーザー加工装置3を制御する制御手段40とを備えている。
【0028】
レーザー光線照射手段36は、パルスレーザー光線発振手段と、パルスレーザー光線発振手段から発振されたパルスレーザー光線を集光する集光器とを有する。パルスレーザー光線発振手段は、パルスレーザー光線発振器及び繰り返し周波数設定手段を含む。
【0029】
レーザー光線照射手段36は、ウェーハ2に対して吸収性を有する波長のレーザー光線LB1又は、ウェーハ2に対して透過性を有する波長のレーザー光線LB2を射出可能である。レーザー光線照射手段36は、制御手段40に制御される。レーザー光線LB1は、例えば、波長355nmのレーザー光線である。レーザー光線LB2は、例えば、波長1064nmのレーザー光線である。
【0030】
移動装置37は、チャックテーブル31をX軸方向(加工送り方向)に移動させるための動力を発生する第1アクチュエータと、チャックテーブル31をY軸方向(割り出し送り方向)に移動させるための動力を発生する第2アクチュエータと、チャックテーブル31をθZ方向に回転させるための動力を発生する第3アクチュエータとを有する。移動装置37は、制御手段40により制御される。チャックテーブル31は、移動装置37により、X軸方向、Y軸方向、及びθZ方向に移動される。位置検出装置38は、X軸方向、Y軸方向、及びθZ方向のチャックテーブル31の位置を検出する。位置検出装置38の検出信号は、制御手段40に出力される。
【0031】
撮像装置39は、ウェーハ2を赤外光線で照明する照明装置と、赤外光線で照明されたウェーハ2の光学像を取得する撮像素子とを備える。撮像装置39で取得されたウェーハ2の光学像を示す撮像信号は、制御手段40に出力される。
【0032】
制御手段40は、CPU(central processing unit)のようなマイクロプロセッサを有する演算処理装置41と、ROM(read only memory)又はRAM(random access memory)のようなメモリを含む記憶装置42と、入出力インターフェース装置43とを有する。演算処理装置41は、記憶装置42に記憶されているコンピュータプログラムに従って演算処理を実施して、入出力インターフェース装置43を介して、レーザー加工装置3を制御するための制御信号を出力する。
【0033】
図5及び
図6に示すように、本実施形態に係る枠体形成ステップでは、ウェーハ2に対して透過性を有する波長のレーザー光線LB2を照射してウェーハ2の内部に環状の改質層26Sを形成し、改質層26Sからウェーハ2の表面2A及び裏面2Bに伸展する亀裂でデバイス領域DAと外周余剰領域SAとを分離して、枠体1を形成する。
【0034】
制御手段40は、移動装置37を制御して、ウェーハ2のデバイス領域DAと外周余剰領域SAとの境界が、レーザー光線照射手段36から射出されるレーザー光線LB2の照射位置に配置されるように、ウェーハ2を保持するチャックテーブル31を移動する。ウェーハ2は、裏面2Bが上方を向くようにチャックテーブル31に保持されており、レーザー光線照射手段36とウェーハ2の裏面2Bとは対向可能である。XY平面内におけるチャックテーブル31の位置は、位置検出装置38によって検出される。制御手段40は、位置検出装置38の検出信号に基づいて、レーザー光線LB2の照射位置にウェーハ2のデバイス領域DAと外周余剰領域SAとの境界が配置されるように、チャックテーブル31を移動する。
【0035】
デバイス領域DAと外周余剰領域SAとの境界は、デバイス領域DAの周縁を含む。デバイス領域DAは、円形状である。外周余剰領域SAは、円環状である。
【0036】
レーザー光線LB2の照射位置にウェーハ2の裏面2Bのデバイス領域DAと外周余剰領域SAとの境界が配置された後、制御手段40は、レーザー光線照射手段36からレーザー光線LB2を射出させながら、移動装置37を制御してチャックテーブル31をθZ方向に回転させる。
図6の矢印Rで示すように、移動装置37は、保持面31Hの中心を通りZ軸と平行な中心軸AXを中心に、チャックテーブル31を回転させる。これにより、ウェーハ2の裏面2Bから、デバイス領域DAの周縁に沿って、デバイス領域DAと外周余剰領域SAとの円環状の境界にレーザー光線LB2が照射される。
【0037】
図8は、実施形態1に係る枠体形成ステップにおけるウェーハ2及び保護テープ7の要部を示す断面図である。
図8は、デバイス領域DAと外周余剰領域SAとの境界にレーザー光線LB2が照射された後のウェーハ2を模式的に示す。
図8に示すように、ウェーハ2を回転させながらウェーハ2にレーザー光線LB2を照射することにより、ウェーハ2の内部には、XY平面内において円環状の改質層26Sが形成される。改質層26Sが形成された部分のウェーハ2の強度は低下する。ウェーハ2の内部に改質層26Sが形成されることにより、その改質層26Sからウェーハ2の表面2A及び裏面2Bに向かって亀裂が伸展する。これにより、レーザー光線LB2が照射された部位である改質層26Sを境界として、ウェーハ2は、デバイス22を含むデバイス領域DAと、デバイス22を含まない外周余剰領域SAとに分離される。本実施形態においては、デバイス領域DAから分離されたウェーハ2の外周余剰領域SAが枠体1となる。
【0038】
レーザー光線LB2の照射において、チャックテーブル31は、保持面31Hの中心とウェーハ2の裏面2Bの中心とが一致するようにウェーハ2を保持する。そのため、ウェーハ2にレーザー光線LB2を照射しながらチャックテーブル31が回転することによって、均一な幅の円環状の枠体1が形成される。なお、枠体1の幅とは、中心軸AXに対する放射方向の枠体1の寸法である。
【0039】
以下の説明においては、外周余剰領域SA(枠体1)から分離されたウェーハ2のデバイス領域DAを単に、ウェーハ2、と称する。外周余剰領域SAから分離された後のウェーハ2の外形は、円形である。
【0040】
次に、分割予定ライン加工ステップについて説明する。
図9は、実施形態1に係る分割予定ライン加工ステップにおけるレーザー加工装置3の動作を示す斜視図である。
図10は、実施形態1に係る分割予定ライン加工ステップにおけるレーザー加工装置3の動作を示す一部断面図である。分割予定ライン加工ステップは、枠体形成ステップを実施した後、ウェーハ2の裏面2Bから枠体1に囲繞されたデバイス領域DAの分割予定ライン23に沿ってウェーハ2に対して透過性を有する波長のレーザー光線LB2を照射し、ウェーハ2の内部に改質層26Dを形成するステップである。
【0041】
分割予定ライン加工ステップにおいては、ウェーハ2のデバイス領域DAの全ての分割予定ライン23に沿ってレーザー光線LB2が照射され、ウェーハ2の内部に格子状の改質層26Dが形成される。
【0042】
図9及び
図10に示すように、枠体形成ステップの終了後においても、ウェーハ2及び枠体1は、保護テープ7を介してチャックテーブル31に保持され続ける。枠体1は、保護テープ7を介してチャックテーブル31に保持された状態で、デバイス領域DAからなるウェーハ2の周囲に配置される。ウェーハ2は、裏面2Bが上方を向くようにチャックテーブル31に保持されており、レーザー光線照射手段36とウェーハ2の裏面2Bとは対向可能である。
【0043】
保護テープ7を介してウェーハ2がチャックテーブル31に保持されている状態で、レーザー光線LB2とウェーハ2とのアライメント処理が実施される。アライメント処理は、レーザー光線照射手段36から射出されるレーザー光線LB2の照射位置とウェーハ2の分割予定ライン23との位置合わせを含む。アライメント処理においては、レーザー光線照射手段36との相対位置が固定された撮像装置39が使用される。撮像装置39は、レーザー光線照射手段36の隣に配置され、チャックテーブル31に保持されているウェーハ2と対向可能である。アライメント処理において、制御手段40は、位置検出装置38でチャックテーブル31の位置を検出しながら移動装置37を制御して、ウェーハ2においてX軸方向に延在する分割予定ライン23を撮像装置39の撮像位置に配置する。制御手段40は、撮像装置39を使って、ウェーハ2の画像データを取得する。撮像装置39は、赤外光線でウェーハ2を照明して、ウェーハ2の画像データを取得する。赤外光線を使うことにより、ウェーハ2を透かして、ウェーハ2の表面2Aに設けられている分割予定ライン23が撮像される。制御手段40は、ウェーハ2の画像データを取得して、画像処理を実施して、レーザー光線LB2の照射位置とウェーハ2の分割予定ライン23とのアライメント処理を実施する。これにより、位置検出装置38で規定される座標系内におけるレーザー光線LB2の照射位置に対するウェーハ2の分割予定ライン23の位置が検出される。同様に、ウェーハ2においてY軸方向に延在する分割予定ライン23についてもアライメント処理が実施される。
【0044】
アライメント処理の終了後、制御手段40は、移動装置37を制御して、レーザー光線LB2の照射位置に、ウェーハ2のデバイス領域DAに設けられている分割予定ライン23を配置する。制御手段40は、位置検出装置38でチャックテーブル31の位置を検出しながら移動装置37を制御して、分割予定ライン23の一端部にレーザー光線LB2が照射されるように、レーザー光線LB2の照射位置に対するウェーハ2の位置を調整する。レーザー光線LB2の照射位置に分割予定ライン23の一端部が配置された後、制御手段40は、レーザー光線照射手段36からレーザー光線LB2を射出して、ウェーハ2にレーザー光線LB2を照射する。制御手段40は、ウェーハ2にレーザー光線LB2を照射しながら移動装置37を制御して、チャックテーブル31に保持されているウェーハ2を、
図10の矢印X1で示す方向に移動させる。レーザー光線LB2の照射位置に分割予定ライン23の他端部が配置された後、制御手段40は、レーザー光線照射手段36からのレーザー光線LB2の射出を停止する。これにより、ウェーハ2の内部に、分割予定ライン23に沿った改質層26Dが形成される。
【0045】
制御手段40は、格子状に形成された分割予定ライン23の全部についてレーザー光線照射手段36によるレーザー光線LB2の照射を行う。レーザー光線LB2の照射位置は、撮像装置39で撮像した分割予定ライン23に対応する。これにより、改質層26Dが格子状に形成される。
【0046】
分割予定ライン加工ステップを実施した後で分割ステップの実施前に、制御手段40は、枠体1にレーザー光線を照射して破断起点を形成する。
図11は、分割予定ライン加工ステップを実施した後のレーザー加工装置3の動作を示す図である。
【0047】
図11に示すように、制御手段40は、移動装置37を制御して、レーザー光線照射手段36から射出されるレーザー光線LB2の照射位置に枠体1を配置する。レーザー光線LB2は、枠体1に対して透過性を有する波長のレーザー光線である。枠体1にレーザー光線LB2が照射されることにより、枠体1の内部に改質層26Hが形成される。改質層26Hが形成された部分の枠体1の強度は低下する。枠体1に形成された改質層26Hは、枠体1の破断基点となる。枠体1の破断基点は、枠体1の複数部位に形成される。
【0048】
次に、分割ステップについて説明する。
図12及び
図13は、実施形態1に係る分割ステップを示す側面図である。分割ステップは、保護テープ7を介してウェーハ2に外力を付与し、ウェーハ2を複数のデバイスチップに分割するステップである。分割ステップでは、
図12及び
図13に示す分割装置8が使用される。
【0049】
分割予定ライン加工ステップの終了後、フレーム保持装置32によるフレーム6の保持が解除されるとともに、チャックテーブル31による保護テープ7、ウェーハ2、及び枠体1の保持が解除される。フレーム6に装着されている保護テープ7と、保護テープ7に貼着されているウェーハ2及び枠体1とは、レーザー加工装置3から分割装置8に搬送される。
【0050】
図12に示すように、保護テープ7に貼着されたウェーハ2及び枠体1が分割装置8に設置される。
図12に示すように、分割装置8は、フレーム6を保持するフレーム保持手段81と、フレーム保持手段81に保持されたフレーム6に装着された保護テープ7を拡張するテープ拡張手段82とを備えている。
【0051】
フレーム保持手段81は、環状のフレーム保持部材811と、フレーム保持部材811の外周に配置された複数のクランプ機構812とを有する。フレーム保持部材811の上面811aは、フレーム6が載置される載置面である。上面811aに載置されたフレーム6は、クランプ機構812によってフレーム保持部材811に固定される。フレーム保持手段81は、テープ拡張手段82によって上下方向に移動可能である。
【0052】
テープ拡張手段82は、フレーム保持部材811の内側に配置される拡張ドラム821を有する。拡張ドラム821は、フレーム6の内径よりも小さく、ウェーハ2の外径より大きい内径及び外径を有する。テープ拡張手段82は、フレーム保持部材811を支持する支持手段83と、拡張ドラム821を上下方向に移動可能な可動手段84と、を有する。可動手段84は、複数のエアシリンダ841を有する。エアシリンダ841は、ピストンロッド842が拡張ドラム821に連結される。本実施形態では、ピストンロッド842と拡張ドラム821とが一体となっている。複数のエアシリンダ841を含む可動手段84は、拡張ドラム821の上端がフレーム保持部材811の上面811aと略同一高さとなる基準位置と、フレーム保持部材811の上面811aより所定量上方の拡張位置との間を上下方向に移動するように、拡張ドラム821を移動させる。
【0053】
次に、分割装置8を用いる分割ステップについて説明する。
図12に示すように、保護テープ7を介してウェーハ2及び枠体1を支持するフレーム6が、フレーム保持手段81のフレーム保持部材811の上面811aに載置され、クランプ機構812によってフレーム保持部材811に固定される。このとき、フレーム保持部材811は、
図12に示す基準位置に位置付けられている。
【0054】
次に、可動手段84の複数のエアシリンダ841が作動され、拡張ドラム821の上面811aが
図13に示す拡張位置に上昇される。これにより、フレーム保持部材811の上面811aに固定されている環状のフレーム6に対して拡張ドラム821間の保護テープが上昇する。そのため、
図13に示すように、環状のフレーム6に装着された保護テープ7は、拡張ドラム821の上端部に当接し、拡張する。その結果、保護テープ7に貼着されているウェーハ2には放射状の外力(引張力)が付与される。ウェーハ2に形成されている改質層26Dの強度は低下しているため、ウェーハ2に放射状の引張力が付与されると、分割予定ライン23に沿って形成された改質層26Dを破断基点として、ウェーハ2が分割予定ライン23に沿って分割される。
【0055】
また、分割予定ライン加工ステップを実施した後で分割ステップの実施前に、枠体1にレーザー光線LB2が照射され、枠体1に破断基点となる改質層26Hが形成されている。そのため、保護テープ7が拡張されることにより、枠体1も、改質層26Hを破断基点として分割される。
【0056】
以上説明したように、実施形態1によれば、デバイス領域DAの分割予定ライン23に沿って改質層26Dを形成する前に、外周余剰領域SAをデバイス領域DAから分断して環状の枠体1を形成することにより、デバイス領域DAにおける改質層26Dの形成に起因して、デバイス領域DAが反ったり面方向に延びたりしようとしても、外周余剰領域SAで形成された枠体1にデバイス領域DAが突き当たるため、分割予定ライン23の位置ずれを物理的に抑制することができる。したがって、アライメント処理において検出された分割予定ライン23に沿ってレーザー光線LB2を照射することができ、ずれた分割予定ラインの位置を確認する作業が不要となり、加工時間の短縮が可能となる。
【0057】
改質層26Dは、レーザー光線LB2の照射によりウェーハ2の内部において結晶構造等が変化した部分である。改質層26Dが形成される部分は、レーザー光線LB2の照射前よりも膨張する。改質層26Dの膨張によりウェーハ2が反ったり面方向に延びたりすると、分割予定ライン23が移動してしまう。すなわち、分割予定ライン加工ステップにおいて、デバイス領域DAの分割予定ライン23に沿ってレーザー光線LB2が照射されて改質層26Dが形成されると、ウェーハ2の反り又は面方向の延びにより、レーザー光線LB2が未だ照射されていない他の分割予定ライン23の位置が、アライメント処理で検出された分割予定ライン23の位置に対してずれてしまう。制御手段40は、レーザー光線LB2の照射前に実施されたアライメント処理の結果に基づいて、レーザー光線LB2の照射位置に対するウェーハ2の分割予定ライン23の位置を調整する。そのため、改質層26Dの形成に起因して分割予定ライン23の位置がずれてしまうと、分割予定ライン23からずれた位置にレーザー光線LB2が照射されてしまうこととなる。
【0058】
本実施形態においては、ウェーハ2の周囲に枠体1が配置された状態で、ウェーハ2に対してレーザー光線LB2を照射して、ウェーハ2の内部に改質層26Dを形成する。枠体1に囲繞された状態で、ウェーハ2にレーザー光線LB2が照射されることにより、改質層26Dの形成に起因してウェーハ2が反ったり面方向に延びたりしようとしても、ウェーハ2は枠体1に突き当たる。すなわち、ウェーハ2を囲繞する枠体1は、ウェーハ2の反り又は面方向の延びを阻止する。これにより、改質層26Dの膨張による分割予定ライン23の位置ずれが枠体1によって物理的に抑制される。
【0059】
本発明者の知見によると、枠体1を設けずに分割予定ライン加工ステップを実施した場合の分割予定ライン23の位置ずれ量の最大値は21[μm]であるのに対し、枠体1を設けて分割予定ライン加工ステップを実施した場合の分割予定ライン23の位置ずれ量の最大値は5[μm]であった。なお、分割予定ライン23の位置ずれ量とは、アライメント処理よって検出された分割予定ライン23の位置(目標位置)と、レーザー光線LB2の照射により形成された改質層26Dの膨張に起因して移動した後の分割予定ライン23の位置(実際位置)との差をいう。このように、枠体1を設けることにより、分割予定ライン23の位置ずれを効果的に抑制できることが確認できる。
【0060】
また、本実施形態によれば、ウェーハ2に対して透過性を有する波長のレーザー光線LB2を照射してウェーハ2の内部に環状の改質層26Sを形成し、改質層26Sから表面2A及び裏面2Bに伸展する亀裂でデバイス領域DAと外周余剰領域SAとを分離し枠体1を形成する。ウェーハ2に対して透過性を有する波長のレーザー光線LB2を照射することにより、ウェーハ2の内部に強度が低下した改質層26Sを形成することができる。そのため、デバイス領域DAと外周余剰領域SAとを円滑に分離して、枠体1を形成することができる。
【0061】
また、本実施形態によれば、枠体1は、ウェーハ2のデバイス領域DAから分離された外周余剰領域SAで形成される。そのため、ウェーハ2(デバイス領域DA)は、枠体1(外周余剰領域SA)で安定して保持される。また、デバイス領域DAと外周余剰領域SAとが分離されて枠体1とウェーハ2とが形成された後、それら枠体1及びウェーハ2がチャックテーブル31から外されることなく、アライメント処理及びレーザー光線LB2の照射を含む分割予定ライン加工ステップが実施される。そのため、枠体1及びウェーハ2の位置が確実に維持された状態で、デバイス領域DAにおける改質層26Dの形成が実施される。
【0062】
また、本実施形態によれば、分割予定ライン加工ステップを実施した後で分割ステップの実施前に、枠体1にレーザー光線LB2を照射して破断基点を形成する。これにより、分割ステップにおいて、ウェーハ2の分割と一緒に、枠体1も分割することができる。枠体1が分割されることにより、ウェーハ2は、枠体1に規制されることなく、円滑に拡張され分割される。
【0063】
[実施形態2]
実施形態2について説明する。実施形態2では、枠体形成ステップの他の態様について説明する。実施形態2に係る枠体形成ステップでは、ウェーハ2に対して吸収性を有する波長のレーザー光線LB1を照射してアブレーション加工を施し、デバイス領域DAと外周余剰領域SAとを分離して枠体1を形成する。
【0064】
図14は、実施形態2に係る枠体形成ステップにおけるレーザー加工装置3の動作を示す斜視図である。制御手段40は、レーザー光線照射手段36からレーザー光線LB1を射出させながら、移動装置37を制御してチャックテーブル31をθZ方向に回転させる。これにより、ウェーハ2の裏面2Bから、デバイス領域DAの周縁に沿って、デバイス領域DAと外周余剰領域SAとの円環状の境界にレーザー光線LB1が照射される。
【0065】
レーザー光線LB1は、ウェーハ2に対して吸収性を有する波長のレーザー光線である。そのため、ウェーハ2はレーザー光線LB1によってアブレーション加工され、デバイス領域DAと外周余剰領域SAとの間にレーザー加工溝25が形成される。レーザー加工溝25によって、デバイス領域DAから外周余剰領域SAが分離され、枠体1が形成される。
【0066】
以上説明したように、ウェーハ2に対して吸収性を有する波長のレーザー光線LB1を照射することによっても、デバイス領域DAから外周余剰領域SAを分離して、枠体1を形成することができる。
【0067】
なお、上述の実施形態1及び実施形態2においては、分割予定ライン加工ステップを実施した後で分割ステップの実施前に、枠体1に、ウェーハ2に対して透過性を有する波長のレーザー光線LB2を照射して、枠体1に破断基点を形成することとした。分割予定ライン加工ステップを実施した後で分割ステップの実施前に、枠体1に、ウェーハ2に対して吸収性を有する波長のレーザー光線LB1を照射して、枠体1に破断基点となるレーザー加工溝を形成してもよい。
【0068】
なお、上述の各実施形態においては、分割予定ライン加工ステップを実施した後で分割ステップの実施前に、枠体1にレーザー光線(レーザー光線LB1又はレーザー光線LB2)を照射して、枠体1に破断基点を形成することとした。これにより、分割ステップにおいて、ウェーハ2とともに枠体1も分割され、ウェーハ2は枠体1に規制されることなく、円滑に分割される。なお、枠体1の厚さ(ウェーハ2の厚さ)が薄い場合又は枠体1の幅が小さい場合、枠体1に破断基点を設けなくても、分割装置8による保護テープ7の拡張により、枠体1を分割することができる。その場合、枠体1に破断基点を形成する処理は省略可能である。
【0069】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。