特許第6572033号(P6572033)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6572033
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】水素吸蔵炭素材料
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/05 20170101AFI20190826BHJP
   C01B 3/00 20060101ALI20190826BHJP
   B01J 20/20 20060101ALI20190826BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20190826BHJP
   G01N 24/08 20060101ALI20190826BHJP
【FI】
   C01B32/05
   C01B3/00 B
   B01J20/20 B
   B01J20/28 Z
   G01N24/08 510P
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-138774(P2015-138774)
(22)【出願日】2015年7月10日
(65)【公開番号】特開2017-19693(P2017-19693A)
(43)【公開日】2017年1月26日
【審査請求日】2018年6月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(73)【特許権者】
【識別番号】504145364
【氏名又は名称】国立大学法人群馬大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000004374
【氏名又は名称】日清紡ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 治夫
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 純一
(72)【発明者】
【氏名】大谷 朝男
(72)【発明者】
【氏名】石井 孝文
(72)【発明者】
【氏名】真家 卓也
(72)【発明者】
【氏名】小林 里江子
(72)【発明者】
【氏名】今城 靖雄
【審査官】 森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】 特表2004−529747(JP,A)
【文献】 特開2006−335596(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/105336(WO,A1)
【文献】 特開2013−112572(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/084994(WO,A1)
【文献】 JIMENEZ Vicente, et al.,Hydrogen storage in different carbon materials: Influence of porosity development by chemical activation,Applied Surface Science,vol.258, No.7,pages 2498-2509
【文献】 CENTENO T.A. et al.,Effects of phenolic resin pyrolysis conditions on carbon membreane performance for gas separation,Journal of Membrane Science,vol.228, No.1,pages 45-54
【文献】 Robert J. ANDERSON et al.,NMR Methods for Characterizing the Pore Structures and Hydrogen Storage Properties of Microporous Carbons,Journal of the American Chemical Society,2010年 6月30日,Vol.132 No.25,Page.8618-8626
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/00 − 32/991
B01J 20/20
B01J 20/28
C01B 3/00
G01N 24/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミクロ孔容積に対するウルトラミクロ孔容積の割合が60%以上であり、吸蔵された水素が、H−NMR測定において、気体状の水素に起因する第一のピークに対する化学シフト−2ppm〜−20ppmの位置に第二のピークを示す炭素構造を有し、
前記炭素構造のa軸方向の平均結晶子サイズLaが、1.00nm以上、2.50nm以下である
ことを特徴とする水素吸蔵炭素材料。
【請求項2】
ミクロ孔容積に対するウルトラミクロ孔容積の割合が60%以上であり、吸蔵された水素が、H−NMR測定において、気体状の水素に起因する第一のピークに対する化学シフト−2ppm〜−20ppmの位置に第二のピークを示す炭素構造を有し、
前記ミクロ孔容積が、0.19cm/g以上、0.40cm/g以下である
ことを特徴とする水素吸蔵炭素材料。
【請求項3】
ミクロ孔容積に対するウルトラミクロ孔容積の割合が60%以上であり、吸蔵された水素が、H−NMR測定において、気体状の水素に起因する第一のピークに対する化学シフト−2ppm〜−20ppmの位置に第二のピークを示す炭素構造を有し、
真密度が、1.40g/cm以上、3.00g/cm以下である
ことを特徴とする水素吸蔵炭素材料。
【請求項4】
ミクロ孔容積に対するウルトラミクロ孔容積の割合が60%以上であり、吸蔵された水素が、H−NMR測定において、気体状の水素に起因する第一のピークに対する化学シフト−2ppm〜−20ppmの位置に第二のピークを示す炭素構造を有し、
粉末X線回折において、ピークトップ位置が18.0°以上、25.0°以下のピーク
を示す前記炭素構造を有する
ことを特徴とする水素吸蔵炭素材料。
【請求項5】
内部に金属を含まない
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の水素吸蔵炭素材料。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の水素吸蔵炭素材料を水素吸蔵に使用する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素吸蔵炭素材料に関する。
【背景技術】
【0002】
水素は、燃焼しても二酸化炭素を発生しないクリーンなエネルギー源として注目されている。水素を燃料として利用するため、水素を貯蔵及び運搬する方法の検討が行われている。水素を貯蔵及び運搬する方法としては、高圧ガスボンベによるものが一般的であるが、ガスボンベは重く、またガスボンベの単位容積当たりの貯蔵効率も実用上の限界があり、大きな貯蔵効率の向上は期待できない。
【0003】
ガスボンベに代わる水素貯蔵方法として、従来から様々な材料について水素吸蔵が検討されてきており、例えば、水素吸蔵合金を利用する方法が知られている。しかし、水素吸蔵合金はそれ自身が重いという欠点があり、水素放出の際に熱が必要であることなどから、応用範囲が限られる。よって、水素吸蔵合金よりも軽量で水素貯蔵能力の高い材料の開発が求められている。
【0004】
この点、特許文献1には、直径1nm以下の細孔の容積が0.2cm/gを超え、且つ、全細孔容積に対する当該直径1nm以下の細孔の容積の割合が85%以上を占める多孔質炭素材料が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−249222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の炭素材料は、必ずしも水素吸蔵に適した炭素構造を有していなかった。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みて為されたものであり、水素吸蔵に適した炭素構造を有する水素吸蔵炭素材料及びその製造方法を提供することをその目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る水素吸蔵炭素材料は、ミクロ孔容積に対するウルトラミクロ孔容積の割合が60%以上であり、吸蔵された水素が、H−NMR測定において、気体状の水素に起因する第一のピークに対する化学シフト−2ppm〜−20ppmの位置に第二のピークを示す炭素構造を有することを特徴とする。本発明によれば、水素吸蔵に適した炭素構造を有する水素吸蔵炭素材料が提供される。
【0009】
また、前記水素吸蔵炭素材料は、内部に金属を含まないこととしてもよい。また、前記炭素構造のa軸方向の平均結晶子サイズLaが、1.00nm以上、2.50nm以下であることとしてもよい。また、前記ミクロ孔容積が、0.19cm/g以上、0.40cm/g以下であることとしてもよい。また、前記水素吸蔵炭素材料は、真密度が、1.40g/cm以上、3.00g/cm以下であることとしてもよい。また、前記水素吸蔵炭素材料は、粉末X線回折において、ピークトップ位置が18.0°以上、25.0°以下のピークを示す前記炭素構造を有することとしてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、水素吸蔵に適した炭素構造を有する水素吸蔵炭素材料及びその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る実施例において、炭素材料のウルトラミクロ孔容積等の特性を評価した結果を示す説明図である。
図2】本発明の一実施形態に係る実施例において、炭素材料の炭素構造のa軸方向の平均結晶子サイズLa等の特性を評価した結果を示す説明図である。
図3】本発明の一実施形態に係る実施例において、H−NMR測定における化学シフト等の特性を評価した結果を示す説明図である。
図4A】本発明の一実施形態に係る実施例において、H−NMR測定により得られたNMRスペクトルの一例を示す説明図である。
図4B】本発明の一実施形態に係る実施例において、H−NMR測定により得られたNMRスペクトルの他の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の一実施形態について説明する。なお、本発明は本実施形態で示す例に限られない。
【0013】
本実施形態に係る水素吸蔵炭素材料(以下、「本炭素材料」という。)は、ミクロ孔容積に対するウルトラミクロ孔容積の割合が60%以上であり、吸蔵された水素が、H−NMR測定において、気体状の水素に起因する第一のピークに対する化学シフト−2ppm〜−20ppmの位置に第二のピークを示す炭素構造を有する。
【0014】
本炭素材料は、水素吸蔵能を有する炭素材料である。すなわち、本炭素材料は、水素を燃料として利用する種々の装置やシステムに好ましく適用される。したがって、本実施形態は、水素吸蔵における本炭素材料の使用、及び本炭素材料を水素吸蔵に使用する方法を含む。本炭素材料による水素吸蔵は、例えば、燃料として使用される水素と当該本炭素材料とを高圧で接触させて、当該水素を当該本炭素材料に吸蔵させる。また、水素の圧力を下げることにより、水素を吸蔵した本炭素材料から水素を放出させることとしてもよい。
【0015】
本炭素材料の炭素構造は、ミクロ孔を含み、当該ミクロ孔は、ウルトラミクロ孔を含む。ミクロ孔は、孔径が2nm以下(例えば、二酸化炭素吸着により測定される孔径は0.48nm以上、2nm以下)の細孔である。ウルトラミクロ孔は、孔径が0.7nm以下(例えば、二酸化炭素吸着により測定される孔径は0.48nm以上、0.7nm以下)の細孔である。
【0016】
そして、本炭素材料は、ミクロ孔容積に対するウルトラミクロ孔容積の割合が60%以上(60%以上、100%以下)である当該ウルトラミクロ孔を有する。すなわち、本炭素材料においては、ミクロ孔に占めるウルトラミクロ孔の割合が比較的大きい。
【0017】
本炭素材料におけるミクロ孔容積に対するウルトラミクロ孔容積の割合は、65%以上(65%以上、100%以下)であることが好ましく、70%以上(70%以上、100%以下)であることが特に好ましい。
【0018】
また、本炭素材料は、さらに、吸蔵された水素が、H−NMR測定において、気体状の水素に起因する第一のピークに対する化学シフト−2ppm〜−20ppmの位置に第二のピークを示す炭素構造を有する。
【0019】
すなわち、水素を吸蔵した本炭素材料のH−NMR測定により得られるNMRスペクトルは、気体状の水素に起因する第一のピークと、当該第一のピークの位置から高磁場側に2ppm〜20ppmシフトした位置の第二のピークとを含む。
【0020】
このように、水素を吸蔵した本炭素材料のH−NMR測定を行うと、特定範囲の化学シフトの位置に、気体状の水素(水素ガス)とは異なる、当該本炭素材料に吸着した水素に特有の第二のピークが現れる。
【0021】
本炭素材料の第二のピークの化学シフトは、例えば、−3ppm〜−15ppmであってもよいし、−3ppm〜−12ppmであってもよいし、−4ppm〜−12ppmであってもよいし、−4ppm〜−10ppmであってもよい。
【0022】
本炭素材料は、上述のとおり、ウルトラミクロ孔を高い割合で含み、且つ吸蔵された水素が特定範囲の化学シフトを示す、水素吸蔵に適した特有の炭素構造を有する。すなわち、本炭素材料は、吸蔵された水素が特定範囲の化学シフトを示すようなウルトラミクロ孔を高い割合で有する。
【0023】
本炭素材料は、有機化合物を含む原料を、50℃/h未満の昇温速度で温度を上昇させながら加熱し、300℃以上、2000℃以下の温度で炭素化することを含む方法により製造される。
【0024】
炭素化の原料に含まれる有機化合物は、炭素化できるもの(炭素源として使用できるもの)であれば特に限られず、有機低分子化合物及び/又は有機高分子化合物が使用され、有機高分子材料が好ましく使用される。
【0025】
有機高分子化合物は、特に限られないが、例えば、フェノール樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリビニルピリジン、キレート樹脂、セルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル、ポリフルフリルアルコール、フラン樹脂、フェノールホルムアルデヒド樹脂、ポリイミダゾール、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ピッチ、褐炭、ポリ塩化ビニリデン、ポリカルボジイミド、リグニン、無煙炭、バイオマス、タンパク質、フミン酸、ポリスルフォン、ポリアミノビスマレイミド、ポリイミド、ポリアニリン、ポリピロール、及びアイオノマーからなる群より選択される1種以上が使用されてもよい。
【0026】
炭素化は、原料を加熱して、当該原料に含有される有機化合物が炭素化される所定の温度(炭素化温度)で保持することにより行う。炭素化温度は、原料に含有される有機化合物が炭素化される温度であれば特に限られないが、例えば、300℃以上、2000℃以下であってもよく、600℃超、1500℃未満であってもよく、700℃以上、1400℃以下であってもよい。
【0027】
炭素化温度で原料を保持する時間は、原料に含有される有機化合物が炭素化される温度であれば特に限られないが、例えば、5分以上、24時間以内であってもよい。炭素化は、窒素等の不活性ガスの流通下で行うことが好ましい。
【0028】
本炭素材料の製造における炭素化においては、50℃/h未満という比較的小さい昇温速度を採用する。具体的に、例えば、炭素化温度が1000℃以下の場合、当該炭素化温度まで、50℃/h未満の昇温速度で加熱し、また、炭素化温度が1000℃超の場合には、少なくとも1000℃まで50℃/h未満の昇温速度で加熱することとしてもよい。
【0029】
昇温速度は、例えば、45℃/h以下であってもよい。より具体的に、昇温速度は、例えば、20℃/h以上、50℃/h未満であってもよく、20℃/h以上、45℃/h以下であってもよく、30℃/h以上、45℃/h以下であってもよい。
【0030】
本炭素材料の製造においては、比較的高い炭素化温度と、比較的小さな昇温速度とを採用することが好ましい。すなわち、本炭素材料の製造においては、例えば、原料を、50℃/h未満の昇温速度で温度を上昇させながら加熱し、600℃超、1500℃未満の温度で炭素化してもよいし、50℃/h未満の昇温速度で温度を上昇させながら加熱し、700℃以上、1400℃以下の温度で炭素化してもよい。
【0031】
このような小さい昇温速度で加熱しながら炭素化を行うことにより、上述したような水素吸蔵に適した炭素構造を有する本炭素材料を効率よく製造することができる。
【0032】
本炭素材料は、内部に金属を含まないこととしてもよい。すなわち、この場合、本炭素材料は、有機化合物を含み金属を含まない原料を、50℃/h未満の昇温速度で温度を上昇させながら加熱し、300℃以上、2000℃以下の温度で炭素化することを含む方法により製造される。
【0033】
本炭素材料は、ミクロ孔容積が、0.19cm/g以上、0.40cm/g以下であることとしてもよい。この場合、本炭素材料のミクロ孔の容積は、例えば、0.20cm/g以上、0.30cm/g以下であってもよい。
【0034】
本炭素材料は、ウルトラミクロ孔容積が、0.12cm/g以上、0.39cm/g以下であることとしてもよい。この場合、本炭素材料のウルトラミクロ孔の容積は、例えば、0.12cm/g以上、0.36cm/g以下であってもよく、0.12cm/g以上、0.29cm/g以下であってもよい。
【0035】
本炭素材料は、その炭素構造のa軸方向の平均結晶子サイズLa(平均La)が、1.00nm以上、2.50nm以下であることとしてもよい。この場合、本炭素材料の平均Laは、例えば、1.10nm以上、2.40nm以下であってもよく、1.30nm以上、2.00nm以下であってもよい。
【0036】
平均Laは、炭素構造に含まれる炭素網面が二次元的に広がって形成される平面を円に近似した場合の直径に相当し、当該平面広がりの程度を示す。平均Laが上記いずれかの範囲内である場合、本炭素材料の炭素構造は、炭素網面のa軸方向の広がりが比較的小さく、当該炭素網面が頻繁に途切れて形成される多くのエッジ面を含むことになる。
【0037】
本炭素材料は、その炭素構造のc軸方向の平均結晶子サイズLc(平均Lc)が、0.20nm以上、0.65nm以下であることとしてもよい。この場合、本炭素材料の平均Lcは、例えば、0.30nm以上、0.60nm以下であってもよく、0.35nm以上、0.45nm以下であってもよい。
【0038】
平均Lcは、炭素構造に含まれる平行に積層した炭素網面群のc軸方向の厚さを示す。平均Lcが上記範囲内である場合、本炭素材料は、c軸方向の積層構造が発達した炭素構造を有することになる。平均Lcが大きくなるほど、本炭素材料は、炭素網面の積層数がより多い炭素構造を有することになる。
【0039】
本炭素材料は、その炭素構造の平均(002)面間隔d002(平均面間隔d002)が、0.35nm以上、0.50nm以下であることとしてもよい。この場合、本炭素材料の平均面間隔d002は、例えば、0.37nm以上、0.45nm以下であってもよく、0.40nm以上、0.42nm以下であってもよい。平均面間隔d002は、炭素構造を構成する炭素(002)面間の平均距離である。
【0040】
本炭素材料は、二酸化炭素吸着により求められる比表面積が20m/g以上、1000m/g以下であることとしてもよい。この場合、本炭素材料の上記比表面積は、例えば、200m/g以上、900m/g以下であってもよく、560m/g以上、800m/g以下であってもよい。
【0041】
本炭素材料は、嵩密度が、0.60g/cm以上、3.00g/cm以下であることとしてもよい。この場合、本炭素材料の嵩密度は、例えば、0.70g/cm以上、1.50g/cm以下であってもよく、0.72g/cm以上、0.90g/cm以下であってもよい。
【0042】
本炭素材料は、真密度が、1.40g/cm以上、3.00g/cm以下であることとしてもよい。この場合、本炭素材料の真密度は、例えば、1.50g/cm以上、2.50g/cm以下であってもよく、2.10g/cm以上、2.25g/cm以下であってもよい。
【0043】
本炭素材料は、粉末X線回折において、ピークトップ位置が18.0°以上、25.0°以下のピークを示す炭素構造を有することとしてもよい。すなわち、本炭素材料の粉末X線回折を行うと、回折角2θが18°以上、26°以下の範囲において、ピークトップ位置が18.0°以上、25.0°以下のピークが観測される。このピークトップの位置は、例えば、19.0°以上、25.0°以下であってもよいし、21.0°以上、23.0°以下であってもよい。
【0044】
本炭素材料は、JIS H 7201に準拠した方法で、298Kにて、水素圧力10MPaにおいて測定される水素吸蔵量が、0.05wt%以上であることとしてもよい。具体的に、本炭素材料の上記水素吸蔵量は、例えば、0.30wt%以上であってもよいし、0.33wt%以上であってもよい。
【0045】
本炭素材料は、上記水素吸蔵量を上記比表面積で除して算出される、単位表面積あたりの水素吸蔵量が、0.40×10−5g/m以上であることとしてもよい。具体的に、本炭素材料の上記単位表面積あたりの水素吸蔵量は、例えば、0.46×10−5g/m以上であってもよいし、0.53×10−5g/m以上であってもよい。
【0046】
本炭素材料は、上記水素吸蔵量を上記嵩密度で除して算出される、単位体積あたりの水素吸蔵量が、0.50mg/cm以上であることとしてもよい。具体的に、本炭素材料の上記嵩密度に基づく体積あたりの水素吸蔵量は、例えば、1.00mg/cm以上であってもよいし、2.80mg/cm以上であってもよい。
【0047】
本炭素材料は、上記水素吸蔵量を上記真密度で除して算出される、単位体積あたりの水素吸蔵量が、1.00mg/cm以上であることとしてもよい。具体的に、本炭素材料の上記真密度に基づく体積あたりの水素吸蔵量は、例えば、5.00mg/cm以上であってもよいし、8.20mg/cm以上であってもよい。
【0048】
次に、本実施形態に係る具体的な実施例について説明する。
【実施例】
【0049】
[水素吸蔵炭素材料の製造]
実施例1においては、有機化合物を含み金属を含まない原料を炭素化することにより、水素吸蔵炭素材料を製造した。すなわち、フェノール樹脂製のビーズ(100μm、群栄化学工業株式会社製)を真空下で加熱して、その温度を昇温速度48℃/hで室温から800℃まで上昇させ、その後、800℃の炭素化温度で1時間保持することにより、炭素化を行った。炭素化後、自然冷却により温度を室温まで低下させた。こうして得られた内部に金属を含まない炭素材料を、実施例1に係る水素吸蔵炭素材料として使用した。実施例2においては、炭素化温度を1000℃としたこと以外は、上述の実施例1と同様にして、水素吸蔵炭素材料を製造した。
【0050】
実施例3においては、フェノール樹脂製のビーズ(100μm、群栄化学工業株式会社製)を真空下で加熱して、その温度を昇温速度48℃/hで室温から1000℃まで上昇させ、さらに、その温度を昇温速度100℃/hで1000℃から1200℃まで上昇させ、その後、1200℃の炭素化温度で1時間保持することにより、炭素化を行った。炭素化後、自然冷却により温度を室温まで低下させた。こうして得られた内部に金属を含まない炭素材料を、実施例3に係る水素吸蔵炭素材料として使用した。
【0051】
比較例1においては、炭素化温度を600℃としたこと以外は、上述の実施例1と同様にして、水素吸蔵炭素材料を製造した。比較例2においては、炭素化温度を1500℃としたこと以外は、上述の実施例3と同様にして、水素吸蔵炭素材料を製造した。比較例3においては、炭素化温度を2000℃としたこと以外は、上述の実施例3と同様にして、水素吸蔵炭素材料を製造した。
【0052】
比較例4においては、有機化合物及び金属を含む原料を炭素化することにより、水素吸蔵炭素材料を製造した。すなわち、フェノール樹脂10g、フタロシアニン鉄3.05g、及び溶媒としてのアセトンを混合し、得られた溶液を乾燥して固形物を得た。この固形物を窒素雰囲気下で加熱して、その温度を昇温速度10℃/分で室温から800℃まで上昇させ、その後、800℃の炭素化温度で1時間保持することにより、炭素化を行った。炭素化後、自然冷却により温度を室温まで低下させた。こうして得られた、炭素材料を粉砕し、粉砕された、内部に金属(鉄)を含む当該炭素材料を、比較例4に係る水素吸蔵炭素材料として使用した。比較例5に係る水素吸蔵炭素材料としては、市販の活性炭(4H、株式会社ツルミコール製)を使用した。
【0053】
[比表面積の測定]
273KにてCO吸脱着測定を行った。すなわち、上述のようにして得られた各炭素材料の比表面積、ミクロ孔容積及びウルトラミクロ孔容積を、高圧ガス吸着量測定装置(BELSORP−HP、日本ベル株式会社)を用いて測定した。
【0054】
具体的に、まず、1gの炭素材料を、300℃、1Pa以下の圧力で、2時間保持することにより、当該炭素材料に吸着している水分を取り除いた。次いで、COガス圧力0〜3.45MPaの範囲での吸着測定を行い、得られた吸着等温線を用いBET法により、炭素材料の比表面積を算出した。さらに、HK法により、炭素材料のミクロ孔(サイズが2nm以下の細孔)の容積と、ウルトラミクロ孔(サイズが0.7nm以下の細孔)の容積とを算出した。
【0055】
HK法は、スリット状マイクロポアの細孔分布を求める為にHorvathとKawazoeが考え出した手法で、吸着等温線から細孔径分布を計算することができ、ミクロ孔の解析に有効であると考えられている。(“Method for the Caluculation of Effective Pore Size Distribution in Molecular Sieve Carbon”,Geza Horvath and Kunitaro Kawazoe,J.Chem.Eng.Japan,16,470(1983))。彼らは、グラファイト層間又はスリット状細孔にガス分子が満たされた場合の自由エネルギーの変化を求め、相対圧とグラファイト層間距離(スリット状細孔)の関係を次の式で表現した:RTln(P/P)=L(N+N)/(σ(l−d))×[σ/(3(l−d/2))−σ10/(9(l−d/2))−σ/(3(d/2))+σ10/(9(d/2))]。
【0056】
ここで、上記式において、Rは、理想ガス定数であり、Tは絶対温度であり、Lはアボガドロ数であり、Nは吸着剤の単位表面積あたりの原子数であり、Aは吸着質のLennard−Jones定数であり、Nは吸着状態にある吸着質の単位表面積あたりの分子数であり、Aは相互作用エネルギーがゼロでの吸着質に対するLennard−Jones定数であり、lはスリット状細孔の層間距離(細孔径)であり、dは吸着質分子の直径dA(nm)と吸着剤分子の直径da(nm)との和であり、σは相互作用エネルギーがゼロでの吸着剤表面と吸着質原子間の距離である。
【0057】
上記高圧ガス吸着量測定装置解析に付属の解析ソフトウエアを使用した解析では、まず細孔径を決定し、次いで、当該細孔径に相当する相対圧を計算した。次に、その相対圧での吸着量を、上述のCO吸脱着測定により得られた吸着データの直線補間で算出し、得られた吸着量を細孔径に対してプロットすることにより、積分曲線を得た。そして、この積分曲線を微分することにより、細孔分布曲線を求めた。この結果から、ミクロ孔(2nm以下の細孔)の容積と、ウルトラミクロ孔(0.7nm以下の細孔)の容積とを算出した。なお、解析には低圧領域(相対圧0.530以下)のデータを用いた。
【0058】
[嵩密度の測定]
秤量した炭素材料を圧縮せずに乾いたメスシリンダーに静かに入れ、次いで、粉体層の上面を圧縮せずに注意深くならし、その体積を最小目盛単位まで読み取ることにより、当該炭素材料の嵩密度(g/cm)を求めた。
【0059】
[真密度の測定]
乾式自動密度計(アキュピックII1340、マイクロメリティクス社製)及びHeガスを用い、25℃にて、ガス置換法により真密度を測定した。
【0060】
[粉末X線回折測定]
まず、炭素材料の試料を、ガラス試料板の凹部に入れるとともにスライドガラスで押さえ、当該試料をその表面と基準面とが一致するように当該凹部に均一に充填した。次いで、この充填された試料の形態が崩れないように、ガラス試料板を広角X線回折試料台に固定した。そして、X線回折装置(RigakuRINT2100/PC、株式会社リガク)を用いて各試料の粉末X回折測定を実施して回折ピークを測定し、積算を5回行うことで解析対象となるX線回折データを得た。なお、X線管球への印加電圧及び電流はそれぞれ50kV及び300mAであり、サンプリング間隔は0.1°又は0.01°であり、走査速度は1°/分であり、測定角度範囲(2θ)は5〜90°であった。また、入射X線としてはCuKα線を用いた。そして、得られたX線回折図に基づき、回折角2θが18°以上、26°以下の範囲に現れる回折ピークのトップの位置を特定した。
【0061】
[炭素網面の広がりに関する評価]
上述の粉末X線回折で得られたX線回折データに基づいて、結晶子サイズLaに関する評価を行った。すなわち、平均La及びLa分布を、Diamond法を用いて解析した。この解析には、コンピュータにインストールされた解析用ソフトウェア(CarbonAnalyzer Dseries、藤本宏之)を用いた。解析対象データは、CuKα線をX線源としてカウンターグラファイトモノクロメータを用いて測定された炭素材料の11バンド強度に限定した。解析可能な最大網面サイズは約7nmであった。
【0062】
ここで、Diamondの提案した解析方法の手順は、基本的に、(1)試料の11バンドの強度測定、(2)実測強度の補正、(3)試料中に存在すると予想されるモデル網面の想定、(4)想定したモデル網面からの理論散乱強度の計算、(5)求めた実測強度の理論散乱強度による最小二乗フィッティング、及び(6)各理論散乱強度の重みからのモデル網面の重量分率及び平均網面サイズの算出の6つのステップから構成される。そこで、まず解析するデータを読み込み、平滑化処理及び吸収補正を行った。平滑化処理は平滑化点数7点として行い、吸収補正は理論吸収係数4.219を用いて実行した。
【0063】
次に、理論散乱強度計算を行った。計算式として、下記の式(I)を用いた。この式(I)において、Iは実測強度であり、wは質量分率であり、Bは理論X線散乱強度であり、Pは偏向因子であり、v及びsは網面モデル因子である。
【数1】
【0064】
ここで、すべてのパラメータがnの関数として表現できる(藤本宏之、炭素、192(2000)125−129参照)。理論散乱強度の計算には、初期条件の設定として二次元格子定数a及びRuland係数の決定、モデル網面の選定が必要になる。二次元格子定数は、一般にベンゼン及び理想黒鉛の格子定数の間の値、約0.240〜0.24612nmを設定する。Rulandの係数は、使用したモノクロメータのエネルギーのパスバンドを表す関数の積分幅を示しており、一般に0〜1の値を取る。本解析では二次元格子定数aの初期設定値として、一般的な炭素材料の格子定数に近い値として0.24412nmを選択した。Rulandの係数の初期設定値としては0.05を選択した。
【0065】
次に、モデル網面の選定を行った。上記ソフトウェアでは、ベンゼン・コロネンベースモデル、ピレンベースモデル、混合モデルの3種類のモデル網面を用いて理論強度を計算実行できる。この点、本解析では、ベンゼン・コロネンベースモデルを用いた。このモデルの場合には、二次元格子定数aの奇数倍サイズ(1、3、5…25、27、29倍)のモデル網面(およそ0.25nm〜7nm)の散乱強度を計算することが可能である。
【0066】
こうしてすべての選択条件を決定し、理論散乱強度計算を行った。計算が終了すると、下記の式(II)に基づく最小二乗法による反復計算を1000回行い、フィッティング角度範囲2θを60〜100°として、実測プロファイルと理論プロファイルのフィッティングを行った。フィッティングが終了すると、コンピュータのディスプレイに、フィッティング結果、網面サイズ分布、及び平均網面サイズが表示された。
【数2】
【0067】
[炭素網面の積層構造に関する評価]
また、上述の粉末X線回折で得られたX線回折データに基づいて、炭素構造における炭素網面の積層構造に関する評価を行った。すなわち、平均Lc、炭素網面の積層数とその分布、及び平均面間隔d002を、コンピュータにインストールされた上述の解析用ソフトウェア(CarbonAnalyzer Dseries、藤本宏之)を用いて解析した。
【0068】
このソフトフェアを用いた計算工程においては、(1)回折線の強度補正、(2)バックグラウンドの補正、(3)Patterson関数の計算、(4)逆Fourier変換による妥当性の評価、及び(5)Patterson関数を用いた平均Lc、平均積層数、積層数分布、及び平均面間隔d002の計算、の5つのステップを実施した。
【0069】
まず、X線回折測定で得た5°から40°の回折データについて、回折線強度補正及びバックグラウンド補正を行った。回折線強度補正においては、炭素の線吸収係数μを4.219とし、試料厚みtを0.2mmとし、発散スリット幅βを2/3°とし、ゴニオメーター半径Rを285mmとした。バックグラウンド補正は15°付近および35°付近を基点とし、スプライン補間法で行った。
【0070】
次いで、この補正データに対して、5°〜40°の回折角範囲でHirschの方法を適用し、Patterson関数を計算した。さらに、得られたPatterson関数に対し、逆Fourier変換を行い、回折図形を復元することで、Patterson関数の妥当性を評価した。なお、このHirschの方法は、石炭やピッチのような比較的網面サイズの小さな試料中の炭素網面の平均積層数及び積層数分布を評価するためにHirschによって1954年に提案された方法である。
【0071】
こうして計算したPatterson関数を用い、残りの計算過程はソフトフェアの標準手順に従って平均Lc、平均積層数、積層数分布、及び平均面間隔d002を算出した。
【0072】
[水素吸蔵量測定]
JIS H 7201に準拠した方法で、298Kにて、水素圧力0MPa〜11.5MPaにおける水素吸蔵量を測定した。また、こうして得られた水素圧力10MPaにおける水素吸蔵量(重量%)を、炭素材料1g当たりの水素吸蔵量(g)に換算し、得られた値を嵩密度又は真密度で除することにより、単位体積積あたりの水素吸蔵量(mg/cm)を算出した。
【0073】
H−NMR測定]
炭素材料の試料を高圧NMR石英製試料管に入れた。次いで、排気・ガス導入用の配管及びバルブを取り付けた後、温度573K、最終到達圧力1×10−4torrで24時間脱気処理をした。脱気処理後の試料は減圧状態のまま速やかにプローブに設置し、水素を3.5MPaとなるまで導入して測定に供した。H−NMR測定は高圧温度可変型プローブを装着したFT−NMR装置(Apollo Pulse NMR Spectrometer、38MHz、Tecmag社製)を用いて行った。パルス系列は90°パルス法とした。測定温度は173Kとした。なお、炭素材料の試料を高圧NMR石英製試料管の半分の充てん量としたときに増加する気体状の水素(水素ガス:試料粒子間に存在する気相水素)に起因するピーク(第一のピーク)の位置を基準(0ppm)とし、当該第一のピークに対して高磁場側にシフトしたピーク(第二のピーク)の化学シフトを評価した。芳香族環の平面上に存在する水素は芳香族環の環電流の効果により高磁場側、即ち低ppm側へシフトする。このシフト量は炭素網面構造の発達の程度に対応し、炭素網面構造が発達した炭素材料表面や細孔に吸蔵した水素は大きなシフトを示す。したがって、第二のピークは炭素材料に吸着した水素に起因すると考えられ、吸蔵サイトの構造の変化に依存してピークシフト量が変化すると考えられた。
【0074】
[結果]
図1には、実施例1〜3及び比較例1〜5に係る炭素材料について、炭素化温度(℃)、比表面積(m/g)、ミクロ孔容積(cm/g)、ウルトラミクロ孔容積(cm/g)、及び当該ミクロ孔容積に対するウルトラミクロ孔容積の割合(%)を示す。なお、比較例3に係る炭素材料については、比表面積及び孔容積を適切に測定できなかった。その理由としては、孔サイズがCO吸脱着測定に適さないほど小さかった可能性が考えられる。
【0075】
図1に示すように、COガス吸着によるBET法により測定された比表面積は、炭素化温度が800℃〜1200℃であった実施例1〜3において580m/g〜726m/gであり、炭素化温度が600℃、1500℃及び2000℃であった比較例1〜3のそれに比べて大きかった。
【0076】
また、ミクロ孔容積に対するウルトラミクロ孔容積の割合は、実施例1〜3において、70.6%〜91.7%であり、比較例1〜5のそれに比べて大きかった。すなわち、実施例1〜3に係る炭素材料のミクロ孔は、70%以上、95%以下の容積割合でウルトラミクロ孔を含んでいた。
【0077】
サイズが0.7nm以下であるウルトラミクロ孔は、常温での水素吸蔵に適しているため、当該ウルトラミクロ孔の割合が大きい実施例1〜3に係る炭素材料は、特に水素吸蔵に適した炭素構造を有していると考えられた。
【0078】
図2には、実施例1〜3及び比較例1〜5に係る炭素材料について、XRDピークトップ位置(2θ/°)、平均La(nm)、平均Lc(nm)及び平均面間隔d002(nm)を示す。
【0079】
図2に示すように、粉末X線回折測定で得られた回折角2θが18°〜26°の範囲に現れる回折ピークのトップの位置(XRDピークトップ位置)は、実施例1〜3において、21.6°〜22.1°であった。これに対し、比較例3及び4のピークトップ位置は、それぞれ24.4°及び26.0°であった。
【0080】
ここで、X線回折において、回折角2θが25°付近に現れる回折ピークは、結晶性の高い炭素構造に由来するピークである。この点、上述のとおり、実施例1〜3に係る炭素材料のXRDピークトップ位置は、25°より小さいことから、当該炭素材料の結晶性は、比較例3及び4に係る炭素材料のそれに比べて低いと考えられた。
【0081】
また、実施例1〜3に係る炭素材料の平均Laは、1.49nm〜1.90nmであった。すなわち、実施例1〜3に係る炭素材料のa軸方向における炭素網面の広がりは比較的小さく、当該炭素網面が途切れることにより多数のエッジが形成されていると考えられた。
【0082】
また、実施例1〜3に係る炭素材料の平均Lcは、0.37nm〜0.42nmであった。これに対し、600℃の炭素化により得られた比較例1に係る炭素材料の平均Lcは0.34であり、実施例1〜3のそれより小さかった。
【0083】
また、1500℃又は2000℃の炭素化により得られた比較例2及び3に係る炭素材料、及び金属を含む原料の炭素化により得られた比較例4に係る炭素材料の平均Lcは、0.50nm〜0.69nmであり、実施例1〜3のそれより大きかった。すなわち、実施例1〜3に係る炭素材料が有する炭素網面の積層構造は、比較例1より発達しており、比較例2〜4ほどには発達していないことが確認された。
【0084】
また、実施例1〜3に係る炭素材料の平均面間隔d002は、0.40nm〜0.41nmであった。これに対し、600℃の炭素化により得られた比較例1に係る炭素材料の平均面間隔d002は0.49nmであり、実施例1〜3のそれより大きかった。
【0085】
また、1500℃又は2000℃の炭素化により得られた比較例2及び3に係る炭素材料、及び金属を含む原料の炭素化により得られた比較例4に係る炭素材料の平均面間隔d002は、0.34nm〜0.39nmであり、実施例1〜3のそれより小さかった。
【0086】
また、比較例5に係る活性炭の平均面間隔d002は0.36であった。すなわち、比較例2〜4の平均面間隔d002は、比較例5における黒鉛結晶のそれと同程度であったのに対し、実施例1〜3の平均面間隔d002は、当該比較例2〜5のそれより大きかった。また、比較例2に係る炭素材料の平均面間隔d002は、実施例1〜3に係る炭素材料のそれよりもさらに大きく、その結晶性がより低いと考えられた。
【0087】
図3には、実施例1〜3及び比較例1〜5に係る炭素材料について、嵩密度(g/cm)、真密度(g/cm)、水素圧力10MPaにおける水素吸蔵量(wt%)、単位表面積あたりの水素吸蔵量(×10−5g/m)、当該嵩密度又は真密度に基づく単位体積あたりの水素吸蔵量(mg/cm)、及びH−NMR測定におけるピークの化学シフト(ppm)を示す。
【0088】
図3に示すように、実施例1〜3に係る炭素材料の嵩密度は0.73g/cm〜0.88g/cm、真密度は2.11g/cm〜2.21g/cmであり、比較例1、3〜5のそれらより大きかった。また、実施例1〜3に係る炭素材料の水素吸蔵量は、0.39wt%〜0.42wt%であり、比較例1〜5に係る炭素材料のそれより大きかった。
【0089】
実施例1〜3に係る炭素材料の、単位表面積あたりの水素吸蔵量は、0.57×10−5g/m〜0.67×10−5g/mであり、比較例1、4、5のそれに比べて大きかった。実施例1〜3に係る炭素材料の、嵩密度に基づく単位体積あたりの水素吸蔵量は2.85mg/cm〜3.70mg/cmであり、また、真密度に基づく単位体積あたりの水素吸蔵量は8.23mg/cm〜8.90mg/cmであり、いずれも、比較例1〜5に係る炭素材料のそれらより顕著に大きかった。
【0090】
図4A及び図4Bには、それぞれ実施例1〜3に係る炭素材料及び比較例1〜5に係る炭素材料について、H−NMR測定においてシグナルをフーリエ変換して得られたNMRスペクトルを示す。図4A及び図4Bにおいて、横軸は化学シフト(ppm)を示し、縦軸はシグナルの強度を示す。
【0091】
図4Bに示すように、比較例1及び比較例3に係る炭素材料に導入された水素は、NMRスペクトルにおいて、水素ガスのみの場合と同様に単一のピーク(第一のピーク)を示した。この第一のピークは、基準周波数からのずれが比較的小さいことから、試料内の空隙に存在する気体状の水素(水素ガス)に起因するものと考えられた。
【0092】
一方、図4Aに示すように、実施例1〜3に係る炭素材料に導入された水素は、第一のピークに加え、当該第一のピークより高磁場側にシフトした位置に第二のピークを示した。この第二のピークは、化学シフトが比較的大きいこと、及び単位表面積当たりの水素吸蔵量に依存することから、炭素材料に吸着した水素に起因すると考えられた。
【0093】
なお、図4Bに示すように、比較例2についても、第一のピークに加え、第二のピークが示された。ただし、上述のとおり、比較例2に係る炭素材料は、実施例1〜3に係る炭素材料に比べて、比表面積及びウルトラミクロ孔の割合が小さく、水素吸蔵に適した炭素構造を十分に備えていないと考えられた。
【0094】
以上より、実施例1〜3に係る炭素材料が高い水素吸蔵能を示す理由の一つとして、当該炭素材料が、水素吸蔵に適した特有の炭素構造を有していることが考えられた。
図1
図2
図3
図4A
図4B