【実施例】
【0049】
[水素吸蔵炭素材料の製造]
実施例1においては、有機化合物を含み金属を含まない原料を炭素化することにより、水素吸蔵炭素材料を製造した。すなわち、フェノール樹脂製のビーズ(100μm、群栄化学工業株式会社製)を真空下で加熱して、その温度を昇温速度48℃/hで室温から800℃まで上昇させ、その後、800℃の炭素化温度で1時間保持することにより、炭素化を行った。炭素化後、自然冷却により温度を室温まで低下させた。こうして得られた内部に金属を含まない炭素材料を、実施例1に係る水素吸蔵炭素材料として使用した。実施例2においては、炭素化温度を1000℃としたこと以外は、上述の実施例1と同様にして、水素吸蔵炭素材料を製造した。
【0050】
実施例3においては、フェノール樹脂製のビーズ(100μm、群栄化学工業株式会社製)を真空下で加熱して、その温度を昇温速度48℃/hで室温から1000℃まで上昇させ、さらに、その温度を昇温速度100℃/hで1000℃から1200℃まで上昇させ、その後、1200℃の炭素化温度で1時間保持することにより、炭素化を行った。炭素化後、自然冷却により温度を室温まで低下させた。こうして得られた内部に金属を含まない炭素材料を、実施例3に係る水素吸蔵炭素材料として使用した。
【0051】
比較例1においては、炭素化温度を600℃としたこと以外は、上述の実施例1と同様にして、水素吸蔵炭素材料を製造した。比較例2においては、炭素化温度を1500℃としたこと以外は、上述の実施例3と同様にして、水素吸蔵炭素材料を製造した。比較例3においては、炭素化温度を2000℃としたこと以外は、上述の実施例3と同様にして、水素吸蔵炭素材料を製造した。
【0052】
比較例4においては、有機化合物及び金属を含む原料を炭素化することにより、水素吸蔵炭素材料を製造した。すなわち、フェノール樹脂10g、フタロシアニン鉄3.05g、及び溶媒としてのアセトンを混合し、得られた溶液を乾燥して固形物を得た。この固形物を窒素雰囲気下で加熱して、その温度を昇温速度10℃/分で室温から800℃まで上昇させ、その後、800℃の炭素化温度で1時間保持することにより、炭素化を行った。炭素化後、自然冷却により温度を室温まで低下させた。こうして得られた、炭素材料を粉砕し、粉砕された、内部に金属(鉄)を含む当該炭素材料を、比較例4に係る水素吸蔵炭素材料として使用した。比較例5に係る水素吸蔵炭素材料としては、市販の活性炭(4H、株式会社ツルミコール製)を使用した。
【0053】
[比表面積の測定]
273KにてCO
2吸脱着測定を行った。すなわち、上述のようにして得られた各炭素材料の比表面積、ミクロ孔容積及びウルトラミクロ孔容積を、高圧ガス吸着量測定装置(BELSORP−HP、日本ベル株式会社)を用いて測定した。
【0054】
具体的に、まず、1gの炭素材料を、300℃、1Pa以下の圧力で、2時間保持することにより、当該炭素材料に吸着している水分を取り除いた。次いで、CO
2ガス圧力0〜3.45MPaの範囲での吸着測定を行い、得られた吸着等温線を用いBET法により、炭素材料の比表面積を算出した。さらに、HK法により、炭素材料のミクロ孔(サイズが2nm以下の細孔)の容積と、ウルトラミクロ孔(サイズが0.7nm以下の細孔)の容積とを算出した。
【0055】
HK法は、スリット状マイクロポアの細孔分布を求める為にHorvathとKawazoeが考え出した手法で、吸着等温線から細孔径分布を計算することができ、ミクロ孔の解析に有効であると考えられている。(“Method for the Caluculation of Effective Pore Size Distribution in Molecular Sieve Carbon”,Geza Horvath and Kunitaro Kawazoe,J.Chem.Eng.Japan,16,470(1983))。彼らは、グラファイト層間又はスリット状細孔にガス分子が満たされた場合の自由エネルギーの変化を求め、相対圧とグラファイト層間距離(スリット状細孔)の関係を次の式で表現した:RTln(P/P
0)=L(N
sA
s+N
aA
a)/(σ
4(l−d))×[σ
4/(3(l−d/2)
3)−σ
10/(9(l−d/2)
9)−σ
4/(3(d/2)
3)+σ
10/(9(d/2)
9)]。
【0056】
ここで、上記式において、Rは、理想ガス定数であり、Tは絶対温度であり、Lはアボガドロ数であり、N
sは吸着剤の単位表面積あたりの原子数であり、A
sは吸着質のLennard−Jones定数であり、N
aは吸着状態にある吸着質の単位表面積あたりの分子数であり、A
aは相互作用エネルギーがゼロでの吸着質に対するLennard−Jones定数であり、lはスリット状細孔の層間距離(細孔径)であり、dは吸着質分子の直径dA(nm)と吸着剤分子の直径da(nm)との和であり、σは相互作用エネルギーがゼロでの吸着剤表面と吸着質原子間の距離である。
【0057】
上記高圧ガス吸着量測定装置解析に付属の解析ソフトウエアを使用した解析では、まず細孔径を決定し、次いで、当該細孔径に相当する相対圧を計算した。次に、その相対圧での吸着量を、上述のCO
2吸脱着測定により得られた吸着データの直線補間で算出し、得られた吸着量を細孔径に対してプロットすることにより、積分曲線を得た。そして、この積分曲線を微分することにより、細孔分布曲線を求めた。この結果から、ミクロ孔(2nm以下の細孔)の容積と、ウルトラミクロ孔(0.7nm以下の細孔)の容積とを算出した。なお、解析には低圧領域(相対圧0.530以下)のデータを用いた。
【0058】
[嵩密度の測定]
秤量した炭素材料を圧縮せずに乾いたメスシリンダーに静かに入れ、次いで、粉体層の上面を圧縮せずに注意深くならし、その体積を最小目盛単位まで読み取ることにより、当該炭素材料の嵩密度(g/cm
3)を求めた。
【0059】
[真密度の測定]
乾式自動密度計(アキュピックII1340、マイクロメリティクス社製)及びHeガスを用い、25℃にて、ガス置換法により真密度を測定した。
【0060】
[粉末X線回折測定]
まず、炭素材料の試料を、ガラス試料板の凹部に入れるとともにスライドガラスで押さえ、当該試料をその表面と基準面とが一致するように当該凹部に均一に充填した。次いで、この充填された試料の形態が崩れないように、ガラス試料板を広角X線回折試料台に固定した。そして、X線回折装置(RigakuRINT2100/PC、株式会社リガク)を用いて各試料の粉末X回折測定を実施して回折ピークを測定し、積算を5回行うことで解析対象となるX線回折データを得た。なお、X線管球への印加電圧及び電流はそれぞれ50kV及び300mAであり、サンプリング間隔は0.1°又は0.01°であり、走査速度は1°/分であり、測定角度範囲(2θ)は5〜90°であった。また、入射X線としてはCuKα線を用いた。そして、得られたX線回折図に基づき、回折角2θが18°以上、26°以下の範囲に現れる回折ピークのトップの位置を特定した。
【0061】
[炭素網面の広がりに関する評価]
上述の粉末X線回折で得られたX線回折データに基づいて、結晶子サイズLaに関する評価を行った。すなわち、平均La及びLa分布を、Diamond法を用いて解析した。この解析には、コンピュータにインストールされた解析用ソフトウェア(CarbonAnalyzer Dseries、藤本宏之)を用いた。解析対象データは、CuKα線をX線源としてカウンターグラファイトモノクロメータを用いて測定された炭素材料の11バンド強度に限定した。解析可能な最大網面サイズは約7nmであった。
【0062】
ここで、Diamondの提案した解析方法の手順は、基本的に、(1)試料の11バンドの強度測定、(2)実測強度の補正、(3)試料中に存在すると予想されるモデル網面の想定、(4)想定したモデル網面からの理論散乱強度の計算、(5)求めた実測強度の理論散乱強度による最小二乗フィッティング、及び(6)各理論散乱強度の重みからのモデル網面の重量分率及び平均網面サイズの算出の6つのステップから構成される。そこで、まず解析するデータを読み込み、平滑化処理及び吸収補正を行った。平滑化処理は平滑化点数7点として行い、吸収補正は理論吸収係数4.219を用いて実行した。
【0063】
次に、理論散乱強度計算を行った。計算式として、下記の式(I)を用いた。この式(I)において、Iは実測強度であり、wは質量分率であり、Bは理論X線散乱強度であり、Pは偏向因子であり、v及びsは網面モデル因子である。
【数1】
【0064】
ここで、すべてのパラメータがnの関数として表現できる(藤本宏之、炭素、192(2000)125−129参照)。理論散乱強度の計算には、初期条件の設定として二次元格子定数a
0及びRuland係数の決定、モデル網面の選定が必要になる。二次元格子定数は、一般にベンゼン及び理想黒鉛の格子定数の間の値、約0.240〜0.24612nmを設定する。Rulandの係数は、使用したモノクロメータのエネルギーのパスバンドを表す関数の積分幅を示しており、一般に0〜1の値を取る。本解析では二次元格子定数a
0の初期設定値として、一般的な炭素材料の格子定数に近い値として0.24412nmを選択した。Rulandの係数の初期設定値としては0.05を選択した。
【0065】
次に、モデル網面の選定を行った。上記ソフトウェアでは、ベンゼン・コロネンベースモデル、ピレンベースモデル、混合モデルの3種類のモデル網面を用いて理論強度を計算実行できる。この点、本解析では、ベンゼン・コロネンベースモデルを用いた。このモデルの場合には、二次元格子定数a
0の奇数倍サイズ(1、3、5…25、27、29倍)のモデル網面(およそ0.25nm〜7nm)の散乱強度を計算することが可能である。
【0066】
こうしてすべての選択条件を決定し、理論散乱強度計算を行った。計算が終了すると、下記の式(II)に基づく最小二乗法による反復計算を1000回行い、フィッティング角度範囲2θを60〜100°として、実測プロファイルと理論プロファイルのフィッティングを行った。フィッティングが終了すると、コンピュータのディスプレイに、フィッティング結果、網面サイズ分布、及び平均網面サイズが表示された。
【数2】
【0067】
[炭素網面の積層構造に関する評価]
また、上述の粉末X線回折で得られたX線回折データに基づいて、炭素構造における炭素網面の積層構造に関する評価を行った。すなわち、平均Lc、炭素網面の積層数とその分布、及び平均面間隔d
002を、コンピュータにインストールされた上述の解析用ソフトウェア(CarbonAnalyzer Dseries、藤本宏之)を用いて解析した。
【0068】
このソフトフェアを用いた計算工程においては、(1)回折線の強度補正、(2)バックグラウンドの補正、(3)Patterson関数の計算、(4)逆Fourier変換による妥当性の評価、及び(5)Patterson関数を用いた平均Lc、平均積層数、積層数分布、及び平均面間隔d
002の計算、の5つのステップを実施した。
【0069】
まず、X線回折測定で得た5°から40°の回折データについて、回折線強度補正及びバックグラウンド補正を行った。回折線強度補正においては、炭素の線吸収係数μを4.219とし、試料厚みtを0.2mmとし、発散スリット幅βを2/3°とし、ゴニオメーター半径Rを285mmとした。バックグラウンド補正は15°付近および35°付近を基点とし、スプライン補間法で行った。
【0070】
次いで、この補正データに対して、5°〜40°の回折角範囲でHirschの方法を適用し、Patterson関数を計算した。さらに、得られたPatterson関数に対し、逆Fourier変換を行い、回折図形を復元することで、Patterson関数の妥当性を評価した。なお、このHirschの方法は、石炭やピッチのような比較的網面サイズの小さな試料中の炭素網面の平均積層数及び積層数分布を評価するためにHirschによって1954年に提案された方法である。
【0071】
こうして計算したPatterson関数を用い、残りの計算過程はソフトフェアの標準手順に従って平均Lc、平均積層数、積層数分布、及び平均面間隔d
002を算出した。
【0072】
[水素吸蔵量測定]
JIS H 7201に準拠した方法で、298Kにて、水素圧力0MPa〜11.5MPaにおける水素吸蔵量を測定した。また、こうして得られた水素圧力10MPaにおける水素吸蔵量(重量%)を、炭素材料1g当たりの水素吸蔵量(g)に換算し、得られた値を嵩密度又は真密度で除することにより、単位体積積あたりの水素吸蔵量(mg/cm
3)を算出した。
【0073】
[
1H−NMR測定]
炭素材料の試料を高圧NMR石英製試料管に入れた。次いで、排気・ガス導入用の配管及びバルブを取り付けた後、温度573K、最終到達圧力1×10
−4torrで24時間脱気処理をした。脱気処理後の試料は減圧状態のまま速やかにプローブに設置し、水素を3.5MPaとなるまで導入して測定に供した。
1H−NMR測定は高圧温度可変型プローブを装着したFT−NMR装置(Apollo Pulse NMR Spectrometer、38MHz、Tecmag社製)を用いて行った。パルス系列は90°パルス法とした。測定温度は173Kとした。なお、炭素材料の試料を高圧NMR石英製試料管の半分の充てん量としたときに増加する気体状の水素(水素ガス:試料粒子間に存在する気相水素)に起因するピーク(第一のピーク)の位置を基準(0ppm)とし、当該第一のピークに対して高磁場側にシフトしたピーク(第二のピーク)の化学シフトを評価した。芳香族環の平面上に存在する水素は芳香族環の環電流の効果により高磁場側、即ち低ppm側へシフトする。このシフト量は炭素網面構造の発達の程度に対応し、炭素網面構造が発達した炭素材料表面や細孔に吸蔵した水素は大きなシフトを示す。したがって、第二のピークは炭素材料に吸着した水素に起因すると考えられ、吸蔵サイトの構造の変化に依存してピークシフト量が変化すると考えられた。
【0074】
[結果]
図1には、実施例1〜3及び比較例1〜5に係る炭素材料について、炭素化温度(℃)、比表面積(m
2/g)、ミクロ孔容積(cm
3/g)、ウルトラミクロ孔容積(cm
3/g)、及び当該ミクロ孔容積に対するウルトラミクロ孔容積の割合(%)を示す。なお、比較例3に係る炭素材料については、比表面積及び孔容積を適切に測定できなかった。その理由としては、孔サイズがCO
2吸脱着測定に適さないほど小さかった可能性が考えられる。
【0075】
図1に示すように、CO
2ガス吸着によるBET法により測定された比表面積は、炭素化温度が800℃〜1200℃であった実施例1〜3において580m
2/g〜726m
2/gであり、炭素化温度が600℃、1500℃及び2000℃であった比較例1〜3のそれに比べて大きかった。
【0076】
また、ミクロ孔容積に対するウルトラミクロ孔容積の割合は、実施例1〜3において、70.6%〜91.7%であり、比較例1〜5のそれに比べて大きかった。すなわち、実施例1〜3に係る炭素材料のミクロ孔は、70%以上、95%以下の容積割合でウルトラミクロ孔を含んでいた。
【0077】
サイズが0.7nm以下であるウルトラミクロ孔は、常温での水素吸蔵に適しているため、当該ウルトラミクロ孔の割合が大きい実施例1〜3に係る炭素材料は、特に水素吸蔵に適した炭素構造を有していると考えられた。
【0078】
図2には、実施例1〜3及び比較例1〜5に係る炭素材料について、XRDピークトップ位置(2θ/°)、平均La(nm)、平均Lc(nm)及び平均面間隔d
002(nm)を示す。
【0079】
図2に示すように、粉末X線回折測定で得られた回折角2θが18°〜26°の範囲に現れる回折ピークのトップの位置(XRDピークトップ位置)は、実施例1〜3において、21.6°〜22.1°であった。これに対し、比較例3及び4のピークトップ位置は、それぞれ24.4°及び26.0°であった。
【0080】
ここで、X線回折において、回折角2θが25°付近に現れる回折ピークは、結晶性の高い炭素構造に由来するピークである。この点、上述のとおり、実施例1〜3に係る炭素材料のXRDピークトップ位置は、25°より小さいことから、当該炭素材料の結晶性は、比較例3及び4に係る炭素材料のそれに比べて低いと考えられた。
【0081】
また、実施例1〜3に係る炭素材料の平均Laは、1.49nm〜1.90nmであった。すなわち、実施例1〜3に係る炭素材料のa軸方向における炭素網面の広がりは比較的小さく、当該炭素網面が途切れることにより多数のエッジが形成されていると考えられた。
【0082】
また、実施例1〜3に係る炭素材料の平均Lcは、0.37nm〜0.42nmであった。これに対し、600℃の炭素化により得られた比較例1に係る炭素材料の平均Lcは0.34であり、実施例1〜3のそれより小さかった。
【0083】
また、1500℃又は2000℃の炭素化により得られた比較例2及び3に係る炭素材料、及び金属を含む原料の炭素化により得られた比較例4に係る炭素材料の平均Lcは、0.50nm〜0.69nmであり、実施例1〜3のそれより大きかった。すなわち、実施例1〜3に係る炭素材料が有する炭素網面の積層構造は、比較例1より発達しており、比較例2〜4ほどには発達していないことが確認された。
【0084】
また、実施例1〜3に係る炭素材料の平均面間隔d
002は、0.40nm〜0.41nmであった。これに対し、600℃の炭素化により得られた比較例1に係る炭素材料の平均面間隔d
002は0.49nmであり、実施例1〜3のそれより大きかった。
【0085】
また、1500℃又は2000℃の炭素化により得られた比較例2及び3に係る炭素材料、及び金属を含む原料の炭素化により得られた比較例4に係る炭素材料の平均面間隔d
002は、0.34nm〜0.39nmであり、実施例1〜3のそれより小さかった。
【0086】
また、比較例5に係る活性炭の平均面間隔d
002は0.36であった。すなわち、比較例2〜4の平均面間隔d
002は、比較例5における黒鉛結晶のそれと同程度であったのに対し、実施例1〜3の平均面間隔d
002は、当該比較例2〜5のそれより大きかった。また、比較例2に係る炭素材料の平均面間隔d
002は、実施例1〜3に係る炭素材料のそれよりもさらに大きく、その結晶性がより低いと考えられた。
【0087】
図3には、実施例1〜3及び比較例1〜5に係る炭素材料について、嵩密度(g/cm
3)、真密度(g/cm
3)、水素圧力10MPaにおける水素吸蔵量(wt%)、単位表面積あたりの水素吸蔵量(×10
−5g/m
2)、当該嵩密度又は真密度に基づく単位体積あたりの水素吸蔵量(mg/cm
3)、及び
1H−NMR測定におけるピークの化学シフト(ppm)を示す。
【0088】
図3に示すように、実施例1〜3に係る炭素材料の嵩密度は0.73g/cm
3〜0.88g/cm
3、真密度は2.11g/cm
3〜2.21g/cm
3であり、比較例1、3〜5のそれらより大きかった。また、実施例1〜3に係る炭素材料の水素吸蔵量は、0.39wt%〜0.42wt%であり、比較例1〜5に係る炭素材料のそれより大きかった。
【0089】
実施例1〜3に係る炭素材料の、単位表面積あたりの水素吸蔵量は、0.57×10
−5g/m
2〜0.67×10
−5g/m
2であり、比較例1、4、5のそれに比べて大きかった。実施例1〜3に係る炭素材料の、嵩密度に基づく単位体積あたりの水素吸蔵量は2.85mg/cm
3〜3.70mg/cm
3であり、また、真密度に基づく単位体積あたりの水素吸蔵量は8.23mg/cm
3〜8.90mg/cm
3であり、いずれも、比較例1〜5に係る炭素材料のそれらより顕著に大きかった。
【0090】
図4A及び
図4Bには、それぞれ実施例1〜3に係る炭素材料及び比較例1〜5に係る炭素材料について、
1H−NMR測定においてシグナルをフーリエ変換して得られたNMRスペクトルを示す。
図4A及び
図4Bにおいて、横軸は化学シフト(ppm)を示し、縦軸はシグナルの強度を示す。
【0091】
図4Bに示すように、比較例1及び比較例3に係る炭素材料に導入された水素は、NMRスペクトルにおいて、水素ガスのみの場合と同様に単一のピーク(第一のピーク)を示した。この第一のピークは、基準周波数からのずれが比較的小さいことから、試料内の空隙に存在する気体状の水素(水素ガス)に起因するものと考えられた。
【0092】
一方、
図4Aに示すように、実施例1〜3に係る炭素材料に導入された水素は、第一のピークに加え、当該第一のピークより高磁場側にシフトした位置に第二のピークを示した。この第二のピークは、化学シフトが比較的大きいこと、及び単位表面積当たりの水素吸蔵量に依存することから、炭素材料に吸着した水素に起因すると考えられた。
【0093】
なお、
図4Bに示すように、比較例2についても、第一のピークに加え、第二のピークが示された。ただし、上述のとおり、比較例2に係る炭素材料は、実施例1〜3に係る炭素材料に比べて、比表面積及びウルトラミクロ孔の割合が小さく、水素吸蔵に適した炭素構造を十分に備えていないと考えられた。
【0094】
以上より、実施例1〜3に係る炭素材料が高い水素吸蔵能を示す理由の一つとして、当該炭素材料が、水素吸蔵に適した特有の炭素構造を有していることが考えられた。