(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記工程(1)の後に、コロイダルシリカを含む仕上げ研磨用組成物を用いて前記磁気ディスク基板を研磨する工程(2)をさらに含む、請求項5に記載の磁気ディスク基板製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0016】
<砥粒>
ここに開示される研磨組成物は、磁気ディスク基板に供給されて該磁気ディスク基板の研磨に用いられる磁気ディスク基板用(好ましくは一次研磨用)の研磨組成物であって、シリカ粒子を含む砥粒を含有する。この砥粒は、研磨前後における粒子径の変化が少ない。すなわち、上記研磨組成物中における砥粒の体積平均粒子径をDaとし、上記研磨組成物を用いてニッケルリンめっき基板を研磨する標準研磨試験後における砥粒の体積平均粒子径をDbとして、
次式:X=(Db/Da)×100;
により算出される粒子径変化率Xが、80%以上115%以下である。このことによって、高い研磨レートが実現され得る。
【0017】
なお、本明細書中において、砥粒の粒子径変化率Xは、研磨組成物を研磨液としてそのまま使用して、ニッケルリンめっき基板に対して下記の研磨条件で標準研磨試験を行い、研磨前後の砥粒の体積平均粒子径Da、Dbから前記式に基づいて算出する値が採用される。
[研磨条件]
研磨装置:システム精工株式会社製の両面研磨機、型式「9.5B−5P」
研磨パッド:FILWEL社製のポリウレタンパッド、商品名「CR200」
Ni−P基板の投入枚数:15枚(5枚/キャリア ×3キャリア)
研磨液の供給レート:135mL/分
研磨荷重:120g/cm
2
上定盤回転数:27rpm
下定盤回転数:36rpm
サンギヤ(太陽ギヤ)回転数:8rpm
研磨量:各基板の両面の合計で約2.2μmの厚さ(取り代あわせ加工)
研磨対象物:ニッケルリンめっき基板(直径3.5インチ、厚さ1.75mm)
【0018】
上記砥粒の体積平均粒子径Da、Dbは、動的光散乱法に基づく粒子径測定を行うことによって把握することができる。具体的な手順としては、上記標準研磨試験で用いた研磨液(研磨組成物)および研磨後に回収した研磨廃液を測定サンプルとする。測定サンプルにレーザー光を照射し、測定サンプルと同じpHを有するリン酸水溶液または水酸化ナトリウム水溶液を用いて測定サンプルを希釈しながら測定に適した散乱強度に調整した後、その散乱光を検出することで、粒子径測定を行う。なお、測定に用いる屈折率は1.45とする。この粒子径測定は、例えば、日機装株式会社製の型式「UPA−UT151」を用いて行うことができる。
【0019】
上記砥粒の粒子径変化率Xは、概ね80%以上115%以下であり、好ましくは85%以上110%以下、より好ましくは90%以上110%以下である。上記粒子径変化率Xを80%以上115%以下にすることで、研磨レートがより良く向上する。このような効果が得られる理由としては、特に限定的に解釈されるものではないが、例えば以下のように考えられる。すなわち、研磨前後の粒子径変化率Xが大きい若しくは小さい砥粒を用いた研磨では、粒子と基板表面との摩擦により生じ得る応力(エネルギー)の一部が、粒子同士の凝集や粒子の欠け等により逃げてしまうため、基板表面に応力を伝えにくくなる。これに対して、研磨前後の粒子径変化率Xが80%以上115%以下である砥粒は、研磨中に粒子同士が凝集したり粒子が欠けたりしにくいため、基板の表面に対して、より効果的に応力を伝えうる。このことが研磨レートの向上に寄与するものと考えられる。
【0020】
上記砥粒の粒子径変化率Xは、例えば研磨組成物に含まれる砥粒粒子の材質を変えたり、砥粒が2種類以上の砥粒粒子の混合物である場合はそれらの材質および含有量の比を変えたりすることによっても調整することができる。例えば、シリカ粒子のシラノール基密度は、シリカ粒子同士の脱水縮重合による凝集に影響を与えると考えられるが、静電相互作用をつかさどるサイトにもなるため粒子間や研磨副生成物との相互作用にも影響すると考えられる。つまり、シリカ粒子のシラノール基密度ひいては材質によって研磨前後の粒子径変化が相違する。したがって、研磨組成物に含まれる砥粒粒子の材質や含有量の比を適切に選択することによって、上述した粒子径変化率Xをここに開示される適切な範囲に調整することができる。好ましい一態様では、研磨組成物に含まれる砥粒として、低シラノール基密度の大径粒子に対して高シラノール基密度の小径粒子を混合したものを用いる。このようにすれば、研磨前後の粒子径変化を抑制することができ、良好な加工性を付与することができる。
【0021】
上記研磨組成物中における砥粒の体積平均粒子径Daは、前記Dbとの間で前記粒子径変化率Xを満たす限りにおいて特に制限はないが、研磨レート等の観点から、好ましくは100nm以上、より好ましくは200nm以上、さらに好ましくは300nm以上、特に好ましくは350nm以上である。砥粒の体積平均粒子径Daの上限は、特に限定されないが、より高品質な表面を得る観点から、好ましくは600nm以下、より好ましくは500nm以下、さらに好ましくは400nm以下である。また、DaとDbとの差分(|Da−Db|)は、好ましくは100nm以下であり、より好ましくは50nm以下、さらに好ましくは40nm以下、特に好ましくは10nm以下である。
【0022】
上記標準研磨試験後における砥粒の体積平均粒子径Dbは、上記Daとの間で前記粒子径変化率Xの関係を満たす限りにおいて特に制限はないが、研磨レート等の観点から、好ましくは80nm以上、より好ましくは150nm以上、さらに好ましくは300nm以上、特に好ましくは350nm以上である。また、砥粒の研磨後体積平均粒子径Dbは、より高品質の表面を得る観点から、好ましくは700nm以下、より好ましくは600nm以下、さらに好ましくは400nm以下である。
【0023】
ここで開示される砥粒の好適例として、体積平均粒子径Daが100nm以上600nm以下であり、かつ、体積平均粒子径Dbが80nm以上700nm以下であるもの;体積平均粒子径Daが200nm以上500nm以下であり、かつ、体積平均粒子径Dbが180nm以上550nm以下であるもの;体積平均粒子径Daが300nm以上400nm以下であり、かつ、体積平均粒子径Dbが280nm以上430nm以下であるもの;等が挙げられる。
【0024】
上記砥粒としては、個数平均アスペクト比が例えば1.4以下のものを使用し得る。個数平均アスペクト比の低減によって、研磨後の面精度が向上し得る。上記砥粒の個数平均アスペクト比は、よりうねりの低減された表面を得る観点から、好ましくは1.3以下、より好ましくは1.2以下、さらに好ましくは1.1以下である。また、上記砥粒の個数平均アスペクト比は、原理上1.0以上であり、研磨レートの観点から、1.01以上であることが適当であり、好ましくは1.04以上である。例えば、個数平均アスペクト比が1.01以上1.2未満(より好ましくは1.04以上1.1未満)である砥粒を含む研磨組成物が好適である。また、砥粒が2種類以上の砥粒粒子の混合物である場合、個数平均アスペクト比が1.25〜1.40の砥粒粒子を少なくとも1種含むことも好適である。例えば熱処理された個数平均アスペクト比が1.25以上のシリカ粒子は、加工時に粒子の欠けが発生しにくく、良好な加工性を付与する砥粒となり得る。
【0025】
砥粒の個数平均アスペクト比は、例えば、電子顕微鏡観察により把握することができる。個数平均アスペクト比を把握する具体的な手順としては、例えば、SEMを用いて、独立した粒子の形状を認識できる所定個数(例えば200個)の砥粒粒子について、各々の粒子画像に外接する最小の長方形を描く。そして、各粒子画像に対して描かれた長方形について、その長辺の長さ(長径の値)を短辺の長さ(短径の値)で除した値を長径/短径比(アスペクト比)として算出する。上記所定個数の粒子のアスペクト比を算術平均することにより、個数平均アスペクト比を求めることができる。
【0026】
上記砥粒の平均一次粒子径は、好ましくは10nm以上、より好ましくは20nm以上、さらに好ましくは30nm以上、特に好ましくは35nm以上である。平均一次粒子径の増大によって、より高い研磨速度が実現され得る。また、より面精度の高い表面を得るという観点から、上記平均一次粒子径は、好ましくは150nm以下、より好ましくは100nm以下、さらに好ましくは80nm以下、特に好ましくは60nm以下である。
【0027】
なお、ここに開示される技術において、砥粒の平均一次粒子径は、BET法に基づいて求められる平均粒子径をいう。例えば、砥粒がシリカ砥粒(すなわちシリカ粒子からなる砥粒)の場合、シリカ砥粒の平均一次粒子径は、BET法により測定される比表面積S(m
2/g)から、D1(nm)=(6000/2.2)/Sの式により算出され得る。この式における2.2はシリカの比重の値であり、シリカとしての粒子径となる。比表面積の測定は、例えば、マイクロメリテックス社製の表面積測定装置、商品名「Flow Sorb II 2300」を用いて行うことができる。
【0028】
上記砥粒に含まれるシリカ粒子は、シリカを主成分とする各種のシリカ粒子であり得る。ここで、シリカを主成分とするシリカ粒子とは、該粒子の90重量%以上(通常は95重量%以上、典型的には98重量%以上)がシリカである粒子をいう。使用し得るシリカ粒子の例としては、特に限定されないが、コロイダルシリカ、沈降シリカ、ケイ酸ソーダ法シリカ、アルコキシド法シリカ、フュームドシリカ、乾燥シリカ、爆発法シリカ等が挙げられる。使用し得るシリカ粒子の例には、さらに、上記シリカ粒子(すなわち、沈降シリカ、ケイ酸ソーダ法シリカ、アルコキシド法シリカ、フュームドシリカ、乾燥シリカ、爆発法シリカ等)を原材料として得られたシリカ粒子が挙げられる。そのようなシリカ粒子の例には、上記原材料のシリカ粒子(以下「原料シリカ」ともいう。)に、加温、乾燥、焼成等の熱処理、オートクレーブ処理等の加圧処理、解砕や粉砕(破砕)等の機械的処理、表面改質(例えば、官能基の導入、金属修飾等の化学的修飾)等から選択される1または2以上の処理を適用して得られたシリカ粒子が含まれ得る。ここに開示される技術における砥粒は、このようなシリカ粒子の1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて含むものであり得る。
【0029】
例えば、原料シリカに対して、熱処理を施して得られたシリカ粒子、具体的には加温されたシリカ粒子、乾燥されたシリカ粒子、焼成されたシリカ粒子等を好ましく利用し得る。ここで、加温されたシリカ粒子とは、典型的には、60℃以上110℃未満の環境下に一定時間以上(例えば15分以上、典型的には30分以上)保持する処理を経て得られたシリカ粒子をいう。また、乾燥されたシリカ粒子とは、典型的には、110℃以上500℃未満(好ましくは300℃以上500℃未満)の環境下に一定時間以上(例えば15分以上、典型的には30分以上)保持する処理を経て得られたシリカ粒子をいう。そして、焼成されたシリカ粒子(以下「焼成シリカ」ともいう。)とは、典型的には、500℃以上の環境下に一定時間以上(例えば15分以上、典型的には30分以上)保持する処理を経て得られたシリカ粒子をいう。上述したいずれかの原料シリカ(沈降シリカ、ケイ酸ソーダ法シリカ、アルコキシド法シリカ、フュームドシリカ、乾燥シリカ、爆発法シリカ等)を熱処理する過程を経て得られたシリカ粒子は、ここでいう熱処理シリカの概念に包含される典型例である。
【0030】
好ましい一態様では、研磨組成物に含まれる砥粒が、熱処理シリカを単独で含むか、熱処理シリカと他のシリカ粒子とを含む。このように砥粒が少なくとも熱処理シリカを含む態様において、砥粒における熱処理シリカの含有量は、特に限定されない。上記熱処理シリカの含有量は、研磨レートの観点から、砥粒の10重量%以上であることが好ましく、より好ましくは20重量%以上(例えば25重量%以上)、さらに好ましくは40重量%以上である。砥粒における熱処理シリカの含有量の上限は特に限定されず、実質的に100重量%(典型的には99重量%以上)であってもよい。各種性能(例えば研磨レート、研磨対象面のうねり等)のバランスをとる観点から、砥粒における熱処理シリカの含有量は、90重量%以下であることが好ましく、より好ましくは80重量%以下(例えば75重量%以下)、さらに好ましくは60重量%以下である。
【0031】
好ましい一態様では、研磨組成物に含まれる砥粒として、熱処理シリカとコロイダルシリカとが組み合わせて用いられる。熱処理シリカに加えてコロイダルシリカを用いることにより、高い研磨レートと良好な面精度とを高レベルで両立させることができる。
【0032】
また好ましい一態様では、研磨組成物はシリカ砥粒(すなわちシリカ粒子からなる砥粒)を含み、該シリカ砥粒の平均シラノール基密度が1.25個/nm
2以下である。ここでシラノール基密度とは、シリカ粒子の表面積1nm
2当たりのシラノール基の個数をいう。上記シラノール基密度(以下、「SD」と表記することがある。)は、BET法により測定されるシリカ粒子の比表面積(BET比表面積)と、滴定により測定されるシラノール基量とから算出される。より詳しくは、シリカ粒子のSDは、以下のシラノール基密度測定方法に準じて測定される。
【0033】
[シラノール基密度測定方法]
シリカ粒子を1重量%含む分散液を、塩酸でpH3.5〜3.8に調整した後、濃度0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液でpH4.0に調整したものを滴定用サンプルとする。上記滴定用サンプルを、濃度0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH4.0〜pH9.0の範囲で滴定し、このときの滴定量と上記シリカ粒子のBET比表面積の値とからシラノール基密度[個/nm
2]を算出する。
【0034】
また、本明細書において、シリカ砥粒の平均シラノール基密度(以下「SD
AVE」と表記することがある。)とは、ここに開示される研磨組成物に含まれるシリカ砥粒の総体的な特性として把握されるシラノール基密度(SD)を意味する。研磨組成物に含まれるシリカ砥粒が例えば2種類のシリカ粒子X,Yの混合物である場合、SD
AVEは、該シリカ砥粒(すなわち、シリカ粒子X,Yの混合物)を測定サンプルとして、上記シラノール基密度測定方法を適用することにより求めることができる。また、通常は、少なくとも実用上十分な近似値として、上記シリカ砥粒を構成する各成分(ここではシリカ粒子X,Y)の各々のSDと、上記シリカ砥粒におけるシリカ粒子X,Yの重量比とから算出される値を、SD
AVEとして採用することができる。研磨組成物に含まれるシリカ砥粒が3種類以上のシリカ粒子の混合物である場合も同様である。
【0035】
シリカ砥粒が2種類以上のシリカ粒子を含む態様において、種類毎のシリカ粒子のSDは特に限定されず、それらのシリカ粒子を適切な重量比で含むシリカ砥粒のSD
AVEが所望の範囲となり得るSDであればよい。分散安定性等の観点から、通常は、SDが0.3個/nm
2以上のシリカ粒子を好適に使用し得る。より高精度な研磨面を得る観点から、SDが0.4個/nm
2以上(より好ましくは0.5個/nm
2以上、例えば0.6個/nm
2以上、さらには0.7個/nm
2以上)のシリカ粒子を好ましく用いることができる。また、ここに開示される好適なSD
AVEを実現しやすいことから、通常は、SDが10個/nm
2以下(好ましくは5個/nm
2以下、より好ましくは2.5個/nm
2以下、例えば2.0個/nm
2以下)のシリカ粒子を好ましく使用し得る。研磨レート等の観点から、SDが1.5個/nm
2以下(より好ましくは1.3個/nm
2以下、例えば1.25個/nm
2以下)のシリカ粒子を好ましく用いることができる。SDが1.1個/nm
2以下(例えば1.0個/nm
2以下)のシリカ粒子を用いてもよい。
【0036】
ここに開示される技術は、シリカ砥粒がシリカ粒子Kとシリカ粒子Lとを含み、シリカ粒子Kのシラノール基密度(SD
K)がシリカ粒子Lのシラノール基密度(SD
L)よりも低い態様で好ましく実施され得る。かかる態様において、SD
Kは、例えば1.25個/nm
2未満であり、通常は1.2個/nm
2以下が好ましく、好ましくは1.1個/nm
2以下、より好ましくは1.05個/nm
2以下である。SD
Kが1.0個/nm
2未満(例えば0.9個/nm
2以下)であるシリカ粒子Kを好ましく用いることができる。シリカ粒子Lとしては、SD
Lが例えば1.0個/nm
2以上のものを好適に用いることができる。ここに開示される研磨組成物は、SD
Lが1.1個/nm
2以上(例えば1.2個/nm
2以上)のシリカ粒子Lを使用する態様でも好ましく実施されて、高い研磨レートと良好な面精度とをバランスよく両立し得る。
【0037】
ここに開示される研磨組成物は、前記粒子径変化率Xを有する砥粒として、シリカ粒子以外の粒子を含有することができる。シリカ粒子以外の粒子としては、無機粒子、有機粒子、および有機無機複合粒子のいずれも利用可能である。無機粒子の具体例としては、アルミナ粒子、酸化セリウム粒子、酸化クロム粒子、二酸化チタン粒子、酸化ジルコニウム粒子、酸化マグネシウム粒子、二酸化マンガン粒子、酸化亜鉛粒子、ベンガラ粒子等の酸化物粒子;窒化ケイ素粒子、窒化ホウ素粒子等の窒化物粒子;炭化ケイ素粒子、炭化ホウ素粒子等の炭化物粒子;ダイヤモンド粒子;炭酸カルシウムや炭酸バリウム等の炭酸塩;等が挙げられる。上記アルミナ粒子としては、α−アルミナ、α−アルミナ以外の中間アルミナおよびこれらの複合物が挙げられる。中間アルミナとは、α−アルミナ以外のアルミナ粒子の総称であり、具体例としてはγ−アルミナ、δ−アルミナ、θ−アルミナ、η−アルミナ、κ−アルミナおよびこれらの複合物が挙げられる。有機粒子の具体例としては、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)粒子やポリ(メタ)アクリル酸粒子(ここで(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸およびメタクリル酸を包括的に指す意味である。)、ポリアクリロニトリル粒子等が挙げられる。これらシリカ粒子以外の粒子は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0038】
ここに開示される研磨組成物において、該研磨組成物に含まれる固形分に占めるシリカ粒子の含有量は、特に限定されない。上記シリカ粒子の含有量は、本発明による効果を発揮しやすくする観点から、上記固形分全体の40重量%以上であることが好ましく、より好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは60重量%以上、さらにより好ましくは、80重量%以上、特に好ましくは90重量%以上(例えば99重量%以上)が好ましい。上記研磨組成物に含まれる固形分の実質的に全てが上記シリカ粒子であってもよい。
【0039】
ここに開示される研磨組成物は、アルミナ砥粒(例えばα−アルミナ砥粒)を実質的に含まない態様で好ましく実施され得る。かかる研磨組成物によると、アルミナ砥粒の使用に起因する品質低下(例えば、スクラッチや窪みの発生、アルミナの残留、砥粒の突き刺さり欠陥等)が防止される。なお、本明細書において、所定の砥粒(例えばアルミナ砥粒)を実質的に含まないとは、研磨組成物に含まれる固形分全量のうち当該砥粒の割合が1重量%以下(より好ましくは0.5重量%以下、典型的には0.1重量%以下)であることをいう。アルミナ砥粒の割合が0重量%である研磨組成物、すなわちアルミナ砥粒を含まない研磨組成物が特に好ましい。また、ここに開示される研磨組成物は、α−アルミナ砥粒を実質的に含まない態様で好ましく実施され得る。
【0040】
ここに開示される研磨組成物は、シリカ粒子以外の粒子(非シリカ粒子)を実質的に含まない態様でも好ましく実施され得る。ここで、非シリカ粒子を実質的に含まないとは、研磨組成物に含まれる固形分全量のうち非シリカ粒子の割合が5重量%以下(より好ましくは1重量%以下、典型的には0.5重量%以下)であることをいう。このような態様において、ここに開示される技術の適用効果が好適に発揮され得る。
【0041】
研磨組成物における砥粒の含有量(複数種類の砥粒を含む場合には、それらの合計含有量)は特に制限されないが、典型的には5g/L以上であり、10g/L以上であることが好ましく、30g/L以上であることがより好ましい。砥粒の含有量の増大によって、より高い研磨レートが実現される傾向にある。研磨後の基板の表面平滑性や研磨の安定性の観点から、通常、上記砥粒の含有量は、250g/L以下が適当であり、好ましくは200g/L以下、より好ましくは150g/L以下、さらに好ましくは100g/L以下である。
【0042】
<研磨組成物>
(水)
ここに開示される研磨組成物は、典型的には、上述のような砥粒の他に、該砥粒を分散させる水を含有する。水としては、イオン交換水(脱イオン水)、純水、超純水、蒸留水等を好ましく用いることができる。
【0043】
ここに開示される研磨組成物(典型的にはスラリー状の組成物)は、例えば、その固形分含量(non-volatile content;NV)が5g/L〜300g/Lである形態で好ましく実施され得る。上記NVが10g/L〜200g/Lである形態がより好ましい。
【0044】
(酸)
ここに開示される研磨組成物は、研磨促進剤として酸を含む態様で好ましくされ得る。好適に使用され得る酸の例としては、無機酸や有機酸(例えば、炭素原子数が1〜10程度の有機カルボン酸、有機ホスホン酸、有機スルホン酸、アミノ酸等)が挙げられるが、これらに限定されない。酸は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0045】
無機酸の具体例としては、リン酸、硝酸、硫酸、塩酸、次亜リン酸、ホスホン酸、ホウ酸、スルファミン酸等が挙げられる。
【0046】
有機酸の具体例としては、クエン酸、マレイン酸、リンゴ酸、グリコール酸、コハク酸、イタコン酸、マロン酸、イミノ二酢酸、グルコン酸、乳酸、マンデル酸、酒石酸、クロトン酸、ニコチン酸、酢酸、アジピン酸、ギ酸、シュウ酸、プロピオン酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、シクロヘキサンカルボン酸、フェニル酢酸、安息香酸、クロトン酸、メタクリル酸、グルタル酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、グリコール酸、タルトロン酸、グリセリン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ酢酸、ヒドロキシ安息香酸、サリチル酸、イソクエン酸、メチレンコハク酸、没食子酸、アスコルビン酸、ニトロ酢酸、オキサロ酢酸、グリシン、アラニン、グルタミン酸、アスパラギン酸、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、システイン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、プロリン、シスチン、グルタミン、アスパラギン、リシン、アルギニン、ニコチン酸、ピコリン酸、メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、エチルグリコールアシッドホスフェート、イソプロピルアシッドホスフェート、フィチン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、エタン−1,1−ジホスホン酸、エタン−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸、エタンヒドロキシ−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1,2−ジカルボキシ−1,2−ジホスホン酸、メタンヒドロキシホスホン酸、2−ホスホノブタン−1,2−ジカルボン酸、1−ホスホノブタン−2,3,4−トリカルボン酸、α−メチルホスホノコハク酸、アミノポリ(メチレンホスホン酸)、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、アミノエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸等が挙げられる。
【0047】
研磨効率の観点から好ましい酸として、リン酸、硝酸、硫酸、スルファミン酸、フィチン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、メタンスルホン酸等が例示される。なかでも硝酸、硫酸、リン酸、スルファミン酸、メタンスルホン酸が好ましい。
【0048】
研磨組成物中に酸を含む場合、その含有量は特に限定されない。酸の含有量は、通常、1g/L以上が適当であり、3g/L以上が好ましく、5g/L以上(例えば10g/L以上)がより好ましい。酸の含有量が少なすぎると、研磨レートが不足しやすくなり、実用上好ましくない場合がある。酸の含有量は、通常、100g/L以下が適当であり、50g/L以下が好ましく、30g/L以下(例えば15g/L以下)がより好ましい。酸の含有量が多すぎると、研磨対象物の面精度が低下しやすくなり、実用上好ましくない場合がある。
【0049】
酸は、該酸の塩の形態で用いられてもよい。塩の例としては、上述した無機酸や有機酸の、金属塩(例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩)、アンモニウム塩(例えば、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩等の第四級アンモニウム塩)、アルカノールアミン塩(例えば、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩)等が挙げられる。
塩の具体例としては、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム等のアルカリ金属リン酸塩およびアルカリ金属リン酸水素塩;上記で例示した有機酸のアルカリ金属塩;その他、グルタミン酸二酢酸のアルカリ金属塩、ジエチレントリアミン五酢酸のアルカリ金属塩、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸のアルカリ金属塩、トリエチレンテトラミン六酢酸のアルカリ金属塩;等が挙げられる。これらのアルカリ金属塩におけるアルカリ金属は、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等であり得る。
【0050】
ここに開示される研磨組成物に含まれ得る塩としては、無機酸の塩(例えば、アルカリ金属塩やアンモニウム塩)を好ましく採用し得る。例えば、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化アンモニウム、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウム、リン酸カリウム等を好ましく使用し得る。
【0051】
酸およびその塩は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。ここに開示される研磨組成物の好ましい一態様において、酸(好ましくは無機酸)と、該酸とは異なる酸の塩(好ましくは無機酸の塩)とを組み合わせて用いることができる。
【0052】
(酸化剤)
ここに開示される研磨組成物には、必要に応じて酸化剤を含有させることができる。酸化剤の例としては、過酸化物、硝酸またはその塩、ペルオキソ酸またはその塩、過マンガン酸またはその塩、クロム酸またはその塩、酸素酸またはその塩、金属塩類、硫酸類等が挙げられるが、これらに限定されない。酸化剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。酸化剤の具体例としては、過酸化水素、過酸化ナトリウム、過酸化バリウム、硝酸、硝酸鉄、硝酸アルミニウム、硝酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸金属塩、ペルオキソリン酸、ペルオキソ硫酸、ペルオキソホウ酸ナトリウム、過ギ酸、過酢酸、過安息香酸、過フタル酸、次亜臭素酸、次亜ヨウ素酸、塩素酸、臭素酸、ヨウ素酸、過ヨウ素酸、過塩素酸、次亜塩素酸、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム、過マンガン酸カリウム、クロム酸金属塩、重クロム酸金属塩、塩化鉄、硫酸鉄、クエン酸鉄、硫酸アンモニウム鉄等が挙げられる。好ましい酸化剤として、過酸化水素、硝酸鉄、ペルオキソ二硫酸および硝酸が例示される。少なくとも過酸化水素を含むことが好ましく、過酸化水素からなることがより好ましい。
【0053】
研磨組成物中に酸化剤を含む場合、その含有量は、有効成分量基準で1g/L以上であることが好ましく、より好ましくは3g/L以上、さらに好ましくは4g/L以上である。酸化剤の含有量が少なすぎると、研磨対象物を酸化する速度が遅くなり、研磨レートが低下するため、実用上好ましくない場合がある。また、研磨組成物中に酸化剤を含む場合、その含有量は、有効成分量基準で30g/L以下であることが好ましく、より好ましくは15g/L以下である。酸化剤の含有量が多すぎると、研磨対象物の面精度が低下しやすくなり、実用上好ましくない場合がある。
【0054】
(塩基性化合物)
研磨組成物には、必要に応じて塩基性化合物を含有させることができる。ここで塩基性化合物とは、研磨組成物に添加されることによって該組成物のpHを上昇させる機能を有する化合物を指す。塩基性化合物の例としては、アルカリ金属水酸化物、炭酸塩や炭酸水素塩、第四級アンモニウムまたはその塩、アンモニア、アミン、リン酸塩やリン酸水素塩、有機酸塩等が挙げられる。塩基性化合物は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0055】
アルカリ金属水酸化物の具体例としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等が挙げられる。
炭酸塩や炭酸水素塩の具体例としては、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム等が挙げられる。
第四級アンモニウムまたはその塩の具体例としては、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム等の水酸化第四級アンモニウム;このような水酸化第四級アンモニウムのアルカリ金属塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩);等が挙げられる。
アミンの具体例としては、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、N−(β−アミノエチル)エタノールアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、無水ピペラジン、ピペラジン六水和物、1−(2−アミノエチル)ピペラジン、N−メチルピペラジン、グアニジン、イミダゾールやトリアゾール等のアゾール類、等が挙げられる。
リン酸塩やリン酸水素塩の具体例としては、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム等のアルカリ金属塩が挙げられる。
有機酸塩の具体例としては、クエン酸カリウム、シュウ酸カリウム、酒石酸カリウム、酒石酸カリウムナトリウム、酒石酸アンモニウム等が挙げられる。
【0056】
(その他の成分)
ここに開示される研磨組成物は、本発明の効果が著しく妨げられない範囲で、界面活性剤、水溶性高分子、分散剤、キレート剤、防腐剤、防カビ剤等の、研磨組成物(例えば、Ni−P基板等のような磁気ディスク基板用の研磨組成物)に使用され得る公知の添加剤を、必要に応じてさらに含有してもよい。
【0057】
界面活性剤としては、特に限定されず、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤のいずれも使用可能である。界面活性剤(典型的には、分子量1×10
4未満の水溶性有機化合物)の使用により、研磨組成物の分散安定性が向上し得る。界面活性剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
アニオン性界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル、アルキル硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキル硫酸、アルキル硫酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンスルホコハク酸、アルキルスルホコハク酸、アルキルナフタレンスルホン酸、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸、ポリアクリル酸、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、およびこれらの塩等が挙げられる。
アニオン性界面活性剤の他の具体例としては、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、メチルナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、アントラセンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、ベンゼンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等のポリアルキルアリールスルホン酸系化合物;メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等のメラミンホルマリン樹脂スルホン酸系化合物;リグニンスルホン酸、変成リグニンスルホン酸等のリグニンスルホン酸系化合物;アミノアリールスルホン酸−フェノール−ホルムアルデヒド縮合物等の芳香族アミノスルホン酸系化合物;その他、ポリイソプレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリイソアミレンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸;およびこれらの塩等が挙げられる。塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩が好ましい。
ノニオン性界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド等が挙げられる。
カチオン性界面活性剤の具体例としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩、アルキルアミン塩等が挙げられる。
両性界面活性剤の具体例としては、アルキルベタイン、アルキルアミンオキシド等が挙げられる。
【0058】
界面活性剤を含む態様の研磨組成物では、界面活性剤の含有量を、例えば0.005g/L以上とすることが適当である。上記含有量は、研磨後の表面の平滑性等の観点から、好ましくは0.01g/L以上、より好ましくは0.1g/L以上である。また、研磨レート等の観点から、上記含有量は、100g/L以下とすることが適当であり、好ましくは50g/L以下、例えば10g/L以下である。
【0059】
ここに開示される研磨組成物には、水溶性高分子を含有させてもよい。水溶性高分子を含有させることにより、研磨後の面精度が向上し得る。水溶性高分子の例としては、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、メチルナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、アントラセンスルホン酸ホルムアルデヒド等のポリアルキルアリールスルホン酸系化合物;メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等のメラミンホルマリン樹脂スルホン酸系化合物;リグニンスルホン酸、変成リグニンスルホン酸等のリグニンスルホン酸系化合物;アミノアリールスルホン酸−フェノール−ホルムアルデヒド縮合物等の芳香族アミノスルホン酸系化合物;その他、ポリイソプレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリイソアミレンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸塩、ポリアクリル酸塩、ポリ酢酸ビニル、ポリマレイン酸、ポリイタコン酸、ポリビニルアルコール、ポリグリセリン、ポリビニルピロリドン、イソプレンスルホン酸とアクリル酸の共重合体、ポリビニルピロリドンポリアクリル酸共重合体、ポリビニルピロリドン酢酸ビニル共重合体、ジアリルアミン塩酸塩二酸化硫黄共重合体、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースの塩、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、プルラン、キトサン、キトサン塩類等が挙げられる。水溶性高分子は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0060】
水溶性高分子を含む態様の研磨組成物では、研磨液中における該水溶性高分子の含有量(複数の水溶性高分子を含む態様では、それらの合計含有量)を、例えば0.01g/L以上とすることが適当である。上記含有量は、研磨後の研磨対象物(例えば磁気ディスク基板)の表面平滑性等の観点から、好ましくは0.05g/L以上、より好ましくは0.08g/L以上、さらに好ましくは0.1g/L以上である。また、研磨レート等の観点から、上記含有量は、10g/L以下とすることが適当であり、好ましくは5g/L以下、例えば1g/L以下である。なお、ここに開示される技術は、研磨組成物が水溶性高分子を実質的に含まない態様でも好ましく実施され得る。
【0061】
分散剤の例としては、ポリカルボン酸ナトリウム塩、ポリカルボン酸アンモニウム塩等のポリカルボン酸系分散剤;ナフタレンスルホン酸ナトリウム塩、ナフタレンスルホン酸アンモニウム塩等のナフタレンスルホン酸系分散剤;アルキルスルホン酸系分散剤;ポリリン酸系分散剤;ポリアルキレンポリアミン系分散剤;第四級アンモニウム系分散剤;アルキルポリアミン系分散剤;アルキレンオキサイド系分散剤;多価アルコールエステル系分散剤;等が挙げられる。
【0062】
キレート剤の例としては、アミノカルボン酸系キレート剤および有機ホスホン酸系キレート剤が挙げられる。アミノカルボン酸系キレート剤の例には、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸アンモニウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、トリエチレンテトラミン六酢酸およびトリエチレンテトラミン六酢酸ナトリウムが含まれる。有機ホスホン酸系キレート剤の例には、2−アミノエチルホスホン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、エタン−1,1−ジホスホン酸、エタン−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸、エタン−1−ヒドロキシ−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1,2−ジカルボキシ−1,2−ジホスホン酸、メタンヒドロキシホスホン酸、2−ホスホノブタン−1,2−ジカルボン酸、1−ホスホノブタン−2,3,4−トリカルボン酸およびα−メチルホスホノコハク酸が含まれる。これらのうち有機ホスホン酸系キレート剤がより好ましく、なかでも好ましいものとしてエチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)およびジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)が挙げられる。特に好ましいキレート剤として、エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)が挙げられる。
【0063】
防腐剤および防カビ剤の例としては、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン等のイソチアゾリン系防腐剤、パラオキシ安息香酸エステル類、フェノキシエタノール等が挙げられる。
【0064】
なお、ここに開示される研磨組成物は、一剤型であってもよいし、二剤型を始めとする多剤型であってもよい。例えば、該研磨組成物の構成成分(典型的には、水以外の成分)のうち一部の成分を含むA液と、残りの成分を含むB液とが混合されて研磨対象物の研磨に用いられるように構成されていてもよい。
【0065】
(pH)
ここに開示される研磨組成物のpHは特に制限されない。研磨組成物のpHは、例えば、12.0以下(典型的には0.5〜12.0)とすることができ、10.0以下(典型的には0.5〜10.0)としてもよい。研磨レートや面精度等の観点から、研磨組成物のpHは、7.0以下(例えば0.5〜7.0)とすることができ、5.0以下(典型的には1.0〜5.0)とすることがより好ましく、4.0以下(例えば1.0〜4.0)とすることがさらに好ましい。研磨組成物のpHは、例えば3.0以下(典型的には1.0〜3.0、好ましくは1.0〜2.0、より好ましくは1.0〜1.8)とすることができる。上記pHは、例えば、ニッケルリンめっき層を有する磁気ディスク基板の研磨用(特に一次研磨用)の研磨組成物に好ましく適用され得る。
【0066】
(用途)
ここに開示される研磨組成物は、例えば、基材ディスクの表面にニッケルリンめっき層を有する磁気ディスク基板(Ni−P基板)の研磨に好ましく適用され得る。上記基材ディスクは、例えば、アルミニウム合金製、ガラス製、ガラス状カーボン製等であり得る。このような基材ディスクの表面にニッケルリンめっき層以外の金属層または金属化合物層を備えたディスク基板であってもよい。なかでも、アルミニウム合金製の基材ディスク上にニッケルリンめっき層を有するNi−P基板用の研磨組成物として好適である。かかる用途では、ここに開示される技術を適用することが特に有意義である。
【0067】
ここに開示される研磨組成物は、仕上げ研磨工程後において高精度な表面が要求される研磨物(例えば磁気ディスク基板)の製造プロセスにおける予備研磨工程のように、高い研磨効率が要求される用途において特に有意義に使用され得る。仕上げ研磨工程の前工程として複数の予備研磨工程を有する場合は、いずれの予備研磨工程にも使用可能であり、これらの予備研磨工程において同一のまたは異なる研磨組成物を用いることができる。ここに開示される研磨組成物は、例えば、研磨対象物の一次研磨工程(最初のポリシング工程)に用いられる研磨組成物として好適である。なかでも、Ni−P基板の製造プロセスにおいて、ニッケルリンメッキ後の最初の研磨工程(一次研磨工程)において好ましく使用され得る。
【0068】
ここに開示される研磨組成物は、例えば、Schmitt Measurement System Inc.社製レーザースキャン式表面粗さ計「TMS−3000WRC」により測定される表面粗さ(算術平均粗さ(Ra))が20Å〜300Å程度の磁気ディスク基板を研磨(典型的には一次研磨)して、該磁気ディスク基板を10Å以下の表面粗さ(算術平均粗さ(Ra))に調整する用途に好適である。かかる用途では、ここに開示される技術を適用することが特に有意義である。
【0069】
(濃縮液)
ここに開示される研磨組成物は、磁気ディスク基板に供給される前には濃縮された形態(すなわち、研磨液の濃縮液の形態)であってもよい。このように濃縮された形態の研磨組成物(濃縮液)は、製造、流通、保存等の際における利便性やコスト低減等の観点から有利である。濃縮倍率は、例えば、体積換算で1.5倍〜50倍程度とすることができ、通常は2倍〜20倍程度が適当である。かかる濃縮液は、所望のタイミングで希釈して研磨組成物(研磨液)を調製し、その研磨液を磁気ディスク基板に供給する態様で使用することができる。上記希釈は、典型的には、上記濃縮液に水を加えて混合することにより行うことができる。また、研磨組成物は、一剤型であってもよいし、二剤型を始めとする多剤型であってもよい。例えば、該研磨組成物の構成成分のうち一部の成分を含むA液と、残りの成分を含むB液とが混合されて研磨対象物の研磨に用いられるように構成されていてもよい。
【0070】
<研磨プロセス>
ここに開示される研磨組成物は、例えば以下の操作を含む態様で、研磨対象物(ここでは磁気ディスク基板)の研磨に好適に使用することができる。以下、ここに開示される研磨組成物を用いて研磨対象物を研磨する方法の好適な一態様につき説明する。
すなわち、ここに開示されるいずれかの研磨組成物を研磨液として用意する。上記研磨液を用意することには、前記濃縮液に濃度調整(例えば希釈)やpH調整等の操作を加えて研磨液を調製することが含まれ得る。
【0071】
次いで、その研磨液を研磨対象物に供給し、常法により研磨する。例えば、一般的な研磨装置に研磨対象物をセットし、該研磨装置の研磨パッドを通じて上記研磨対象物の表面(研磨対象面)に研磨液を供給する。典型的には、上記研磨液を連続的に供給しつつ、研磨対象物の表面に研磨パッドを押しつけて両者を相対的に移動(例えば回転移動)させる。かかる研磨工程を経て研磨対象物の研磨が完了する。
【0072】
上述のような研磨工程は、磁気ディスク基板(例えばNi−P基板)の製造プロセスの一部であり得る。したがって、この明細書によると、上記研磨工程を含む磁気ディスク基板の製造方法が提供される。
【0073】
ここに開示される研磨組成物は、研磨対象物の予備研磨工程(例えば一次研磨工程)に好ましく使用され得る。この明細書によると、上述したいずれかの研磨組成物(予備研磨用組成物)を用いて予備研磨を行う工程を含む、研磨物の製造方法が提供される。この研磨物製造方法は、上記予備研磨工程の後に仕上げ研磨工程を含み得る。仕上げ研磨工程に使用する研磨組成物(仕上げ研磨用組成物)は特に限定されない。例えば、砥粒としてコロイダルシリカを含む仕上げ研磨用組成物を好ましく採用し得る。したがって、この明細書により開示される事項には、前記粒子径変化率Xを有する砥粒を含む研磨組成物で研磨対象物を研磨する工程(1)と、コロイダルシリカを含む仕上げ研磨用組成物を用いて上記研磨対象物を研磨する工程(2)とをこの順に含む、磁気ディスク基板の製造方法が含まれる。かかる製造方法によると、磁気ディスク基板を効率よく製造することができる。
【0074】
このようにコロイダルシリカを含む仕上げ研磨用組成物において、該仕上げ研磨用組成物に含まれる砥粒の粒子径変化率X2は特に限定されない。仕上げ研磨後における面精度の観点から、仕上げ研磨用組成物に含まれる砥粒の粒子径変化率X2は、110%以下であることが好ましい。
【0075】
コロイダルシリカを含む仕上げ研磨用組成物において、コロイダルシリカの含有量は特に限定されない。上記コロイダルシリカの含有量は、仕上げ研磨用組成物に含まれる固形分全体の40重量%以上であることが好ましく、より好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは60重量%以上(例えば80重量%以上)である。上記研磨用組成物に含まれる固形分の実質的に全て(例えば99重量%以上)がコロイダルシリカであってもよい。
【0076】
仕上げ研磨用組成物は、典型的にはシリカ砥粒の他に水を含む。その他、仕上げ研磨用組成物には、上述した研磨組成物と同様の成分(酸、酸化剤、塩基性化合物、各種添加剤等)を必要に応じて含有させることができる。特に限定するものではないが、仕上げ研磨用組成物のpHは、上述した研磨組成物と同様とすることができる。仕上げ研磨用組成物のpHは、例えば12.0以下(典型的には0.5〜12.0)とすることができ、好ましくは7.0以下(例えば0.5〜7.0)、より好ましくは5.0以下(典型的には1.0〜5.0)、さらに好ましくは4.0以下(例えば1.0〜4.0)である。好ましい一態様において、仕上げ研磨用組成物のpHを3.0以下(典型的には1.0〜3.0、好ましくは1.0〜2.0、より好ましくは1.0〜1.8)とすることができる。
【実施例】
【0077】
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
【0078】
<研磨組成物>
体積粒度分布が異なる複数種類のシリカ粒子を用意した。これらのシリカ粒子を単独でまたは組み合わせて含む砥粒と、リン酸と、31%過酸化水素水と、脱イオン水とを混合して、リン酸を12.5g/L、31%過酸化水素水を40g/L含む例1〜9の研磨組成物を調製した。研磨組成物における砥粒の含有量は、例1〜4、8を45g/L、例5〜7、9を62g/Lとした。研磨組成物のpHは、例1〜5、7〜9が1.5、例6が2.1であった。
【0079】
<ディスクの研磨>
各例に係る研磨組成物をそのまま研磨液に使用して、下記の条件で、研磨対象物を研磨する標準研磨試験を行った。研磨対象物としては、表面に無電解ニッケルリンめっき層を備えたハードディスク用アルミニウム基板を使用した。上記研磨対象物(以下「Ni−P基板」ともいう。)の直径は3.5インチ(外径約95mm、内径約25mmのドーナツ型)、厚さは1.75mmであり、研磨前における表面粗さRa(Schmitt Measurement System Inc.社製レーザースキャン式表面粗さ計「TMS−3000WRC」により測定したニッケルリンめっき層の算術平均粗さ)は130Åであった。
【0080】
[研磨条件]
研磨装置:システム精工株式会社製の両面研磨機、型式「9.5B−5P」
研磨パッド:FILWEL社製のポリウレタンパッド、商品名「CR200」
Ni−P基板の投入枚数:15枚(5枚/キャリア ×3キャリア)
研磨液の供給レート:135mL/分
研磨荷重:120g/cm
2
上定盤回転数:27rpm
下定盤回転数:36rpm
サンギヤ(太陽ギヤ)回転数:8rpm
研磨量:各基板の両面の合計で約2.2μmの厚さ(取り代あわせ加工)
【0081】
各例に係る研磨組成物について、使用したシリカ粒子の種類、砥粒の体積平均粒子径Da、標準研磨試験後の体積平均粒子径Db、粒子径変化率X、個数平均アスペクト比を表1に纏めて示す。なお、体積平均粒子径Da、Daは、標準研磨試験で用いた研磨液および研磨後に回収した研磨廃液から前述の方法で調製した砥粒含有液を測定サンプルとして、日機装株式会社製「Nanotrac Wave−UT151」を用いて測定した。
【0082】
<研磨レート>
各例に係る研磨組成物を用いて上記標準研磨試験でNi−P基板を研磨したときの研磨レートを算出した。研磨レートは、次の計算式に基づいて求めた。
研磨レート[μm/min]=研磨による基板の重量減少量[g]/(基板の面積[cm
2]×ニッケルリンめっきの密度[g/cm
3]×研磨時間[min])×10
4
得られた値を、比較例1の研磨レートを1としたときの相対値に換算して表1の「研磨レート」の欄に示す。
【0083】
<長波長うねり>
KLA Tencor社(米国)製の「Optiflat III」を使用して、研磨後のNi−P基板の中心から半径20mm〜44mmの範囲についてカットオフ値5mmの条件で測定した算術平均うねり(Wa)の値を測定した。そして、得られた測定値が5Å未満のものを「○」、5Å以上のものを「△」と評価した。結果を表1の「うねり」の欄に示す。
【0084】
【表1】
【0085】
表1に示すように、粒子径変化率Xが80%以上115%以下の砥粒を用いた例1〜4では、例5〜9に比べて、研磨レートでより良好な結果が得られた。この結果から、粒子径変化率が80%以上115%以下の砥粒を用いた研磨組成物によると、高い研磨レートを実現し得ることが確かめられた。また、個数平均アスペクト比が1.3以下の砥粒を用いた例1〜3では、例4に比べると高い面精度が得られた。
【0086】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。