特許第6572213号(P6572213)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6572213新規重合開始剤及び該重合開始剤を含有するラジカル重合性組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6572213
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】新規重合開始剤及び該重合開始剤を含有するラジカル重合性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/50 20060101AFI20190826BHJP
   G03F 7/031 20060101ALI20190826BHJP
   C07C 323/32 20060101ALI20190826BHJP
   C07D 295/108 20060101ALI20190826BHJP
【FI】
   C08F2/50
   G03F7/031
   C07C323/32CSP
   C07D295/108
【請求項の数】7
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2016-538318(P2016-538318)
(86)(22)【出願日】2015年7月24日
(86)【国際出願番号】JP2015071077
(87)【国際公開番号】WO2016017537
(87)【国際公開日】20160204
【審査請求日】2018年4月27日
(31)【優先権主張番号】特願2014-158115(P2014-158115)
(32)【優先日】2014年8月1日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】特許業務法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金原 有希子
(72)【発明者】
【氏名】田町 知也
(72)【発明者】
【氏名】有吉 智幸
【審査官】 ▲吉▼澤 英一
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−157805(JP,A)
【文献】 特開平10−069079(JP,A)
【文献】 米国特許第06022906(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C07D
C08F
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表されるα−アミノアルキルフェノン化合物を含有する重合開始剤。
【化1】
(式中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子;水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているかあるいは無置換の炭素原子数1〜12のアルキル基;炭素原子数1〜4のアルキル基、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているかあるいは無置換のフェニル基;炭素原子数1〜4のアルキル基、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているかあるいは無置換の炭素原子数7〜30のアリールアルキル基;炭素数2〜12のアルケニル基を表し、RとRは、連結して3〜6員環の複素環を形成していてもよく、
及びRは、それぞれ独立に、水素原子;水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているかあるいは無置換の炭素原子数1〜12のアルキル基;炭素原子数1〜4のアルキル基、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているかあるいは無置換のフェニル基;炭素原子数1〜4のアルキル基、水酸基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、アミノ基、炭素原子数1〜4のアルキルチオ基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているかあるいは無置換の炭素原子数7〜30のアリールアルキル基;炭素数2〜12のアルケニル基を表し、RとRは、連結して3〜6員環の環状アルカンを形成してもよく、
、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、水酸基;ハロゲン原子で置換されている若しくは無置換の炭素原子数1〜8のアルキル基;炭素原子数1〜4のアルキル基、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているかあるいは無置換の炭素原子数7〜30のアリールアルキル基を表し、
、R10、R11、R12及びR13は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、水酸基;ハロゲン原子で置換されている若しくは無置換の炭素原子数1〜8のアルキル基;炭素原子数1〜4のアルキル基、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているかあるいは無置換の炭素原子数7〜30のアリールアルキル基、−OR14、−O−CO−O−R15、−NR1617、−SR18を表し、かつ、R、R10、R11、R12及びR13のうち少なくとも1つは、ニトロ基、−OR14、−O−CO−O−R15、−NR1617、−SR18の群より選ばれる基であり、
15、R16、R17及びR18は、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているかあるいは無置換の炭素原子数1〜12のアルキル基;水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているかあるいは無置換のフェニル基;炭素原子数1〜4のアルキル基、水酸基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、アミノ基、炭素原子数1〜4のアルキルチオ基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているかあるいは無置換の炭素原子数7〜30のアリールアルキル基;炭素数2〜12のアルケニル基;炭素原子数2〜12の複素環含有基、トリアルキルシリル基又はトリアリールシリル基を表し、
14は、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されている炭素原子数1〜12のアルキル基;水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているかあるいは無置換のフェニル基;炭素原子数1〜4のアルキル基、水酸基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、アミノ基、炭素原子数1〜4のアルキルチオ基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているかあるいは無置換の炭素原子数7〜30のアリールアルキル基;炭素数2〜12のアルケニル基;炭素原子数2〜12の複素環含有基、トリアルキルシリル基又はトリアリールシリル基を表し、
上記アルキル基及びアリールアルキル基中のメチレン鎖は、−O−、−S−、−NR19−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−又は−O−CO−O−で置き換えられていてもよく、上記アルキル基の末端は不飽和結合であってもよく、
19は、水素原子;水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているかあるいは無置換の炭素原子数1〜12のアルキル基;炭素原子数1〜4のアルキル基、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているかあるいは無置換のフェニル基;炭素原子数1〜4のアルキル基、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているかあるいは無置換の炭素原子数7〜30のアリールアルキル基;炭素数2〜12のアルケニル基を表す。)
【請求項2】
上記一般式(I)において、R11がニトロ基又は炭素原子数1〜12のアルコキシカルボニル基であることを特徴とする請求項1記載の重合開始剤。
【請求項3】
上記一般式(I)において、R11が−OR14であることを特徴とする請求項1記載の重合開始剤。
【請求項4】
重合開始剤(A)及びエチレン性不飽和結合を有する重合性化合物(B)を含有するラジカル重合性組成物において、
重合開始剤(A)が請求項1〜3の何れか1項に記載の重合開始剤であることを特徴とするラジカル重合性組成物。
【請求項5】
請求項4に記載のラジカル重合性組成物にエネルギー線を照射してなる硬化物。
【請求項6】
下記一般式(II)で表されるα-アミノアルキルフェノン化合物。
【化2】
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子;水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているかあるいは無置換の炭素原子数1〜12のアルキル基;炭素原子数1〜4のアルキル基、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているかあるいは無置換のフェニル基;炭素原子数1〜4のアルキル基、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているかあるいは無置換の炭素原子数7〜30のアリールアルキル基;炭素数2〜12のアルケニル基を表し、RとRは、連結して3〜6員環の複素環を形成していてもよく、
及びRは、それぞれ独立に、水素原子;水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているかあるいは無置換の炭素原子数1〜12のアルキル基;炭素原子数1〜4のアルキル基、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているかあるいは無置換のフェニル基;炭素原子数1〜4のアルキル基、水酸基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、アミノ基、炭素原子数1〜4のアルキルチオ基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているかあるいは無置換の炭素原子数7〜30のアリールアルキル基;炭素数2〜12のアルケニル基を表し、RとRは、連結して3〜6員環の環状アルカンを形成してもよく、
、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、水酸基;ハロゲン原子で置換されている若しくは無置換の炭素原子数1〜8のアルキル基;炭素原子数1〜4のアルキル基、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているかあるいは無置換の炭素原子数7〜30のアリールアルキル基を表し、
、R10、R11、R12及びR13は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、水酸基;ハロゲン原子で置換されている若しくは無置換の炭素原子数1〜8のアルキル基;炭素原子数1〜4のアルキル基、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているかあるいは無置換の炭素原子数7〜30のアリールアルキル基、−O−CO−O−R15、−NR1617、−SR18を表し、かつ、R、R10、R11、R12及びR13のうち少なくとも1つは、ニトロ基、−O−CO−O−R15、−NR1617、−SR18の群より選ばれる基であり、
15、R16、R17及びR18は、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているかあるいは無置換の炭素原子数1〜12のアルキル基;水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているかあるいは無置換のフェニル基;炭素原子数1〜4のアルキル基、水酸基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、アミノ基、炭素原子数1〜4のアルキルチオ基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているかあるいは無置換の炭素原子数7〜30のアリールアルキル基;炭素数2〜12のアルケニル基;炭素原子数2〜12の複素環含有基、トリアルキルシリル基又はトリアリールシリル基を表し、
上記アルキル基及びアリールアルキル基中のメチレン鎖は−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−又は−O−CO−O−で置き換えられていてもよく、上記アルキル基の末端は不飽和結合であってもよい。)
【請求項7】
下記一般式(I)で表されるα−アミノアルキルフェノン化合物。
【化3】
式中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子;水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているかあるいは無置換の炭素原子数1〜12のアルキル基;炭素原子数1〜4のアルキル基、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているかあるいは無置換のフェニル基;炭素原子数1〜4のアルキル基、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているかあるいは無置換の炭素原子数7〜30のアリールアルキル基;炭素数2〜12のアルケニル基を表し、RとRは、連結して3〜6員環の複素環を形成していてもよく、
及びRは、それぞれ独立に、水素原子;水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているかあるいは無置換の炭素原子数1〜12のアルキル基;炭素原子数1〜4のアルキル基、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているかあるいは無置換のフェニル基;炭素原子数1〜4のアルキル基、水酸基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、アミノ基、炭素原子数1〜4のアルキルチオ基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているかあるいは無置換の炭素原子数7〜30のアリールアルキル基;炭素数2〜12のアルケニル基を表し、RとRは、連結して3〜6員環の環状アルカンを形成してもよく、
、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、水酸基;ハロゲン原子で置換されている若しくは無置換の炭素原子数1〜8のアルキル基;炭素原子数1〜4のアルキル基、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているかあるいは無置換の炭素原子数7〜30のアリールアルキル基を表し、
、R10、R11、R12及びR13は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、水酸基;ハロゲン原子で置換されている若しくは無置換の炭素原子数1〜8のアルキル基;炭素原子数1〜4のアルキル基、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているかあるいは無置換の炭素原子数7〜30のアリールアルキル基、−OR14、−O−CO−O−R15、−NR1617、−SR18を表し、かつ、R、R10、R11、R12及びR13のうち少なくとも1つは、ニトロ基、−OR14、−O−CO−O−R15、−NR1617、−SR18の群より選ばれる基であり、
15、R16、R17及びR18は、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているかあるいは無置換の炭素原子数1〜12のアルキル基;水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているかあるいは無置換のフェニル基;炭素原子数1〜4のアルキル基、水酸基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、アミノ基、炭素原子数1〜4のアルキルチオ基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているかあるいは無置換の炭素原子数7〜30のアリールアルキル基;炭素数2〜12のアルケニル基;炭素原子数2〜12の複素環含有基、トリアルキルシリル基又はトリアリールシリル基を表し、
14は、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されている炭素原子数1〜12のアルキル基;水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているかあるいは無置換のフェニル基;炭素原子数1〜4のアルキル基、水酸基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、アミノ基、炭素原子数1〜4のアルキルチオ基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているかあるいは無置換の炭素原子数7〜30のアリールアルキル基;炭素数2〜12のアルケニル基;炭素原子数2〜12の複素環含有基、トリアルキルシリル基又はトリアリールシリル基を表し、
上記アルキル基及びアリールアルキル基中のメチレン鎖は、−O−、−S−、−NR19−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−又は−O−CO−O−で置き換えられていてもよく、上記アルキル基の末端は不飽和結合であってもよく、
19は、水素原子;水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているかあるいは無置換の炭素原子数1〜12のアルキル基;炭素原子数1〜4のアルキル基、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているかあるいは無置換のフェニル基;炭素原子数1〜4のアルキル基、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているかあるいは無置換の炭素原子数7〜30のアリールアルキル基;炭素数2〜12のアルケニル基を表す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジフェニルスルフィド骨格を有する新規重合開始剤、並びに該重合開始剤及びエチレン性不飽和結合を有する重合性化合物を含有するラジカル重合性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
感光性組成物(ラジカル重合性組成物)は、エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物に光重合開始剤を加えたものであり、エネルギー線(光)を照射することによって重合硬化させることができるため、感光性印刷版、各種フォトレジスト等に用いられている。
【0003】
感光性組成物(ラジカル重合性組成物)に用いられる光重合開始剤として、特許文献1には、光重合開始剤としてα−アミノアルキルフェノン誘導体を用いた光ファイバが開示されており、特許文献2には、光重合開始剤としてα−アミノアルキルフェノン誘導体を用いた光重合性組成物が開示されており、特許文献3には、新規α−アミノアセトフェノン光開始剤が開示されている。
しかし、特許文献1〜3に記載のα−アミノアルキルフェノン誘導体は昇華性が十分に低くなく、昇華物によるフォトマスクや加熱炉の汚染等の原因となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63−070210号公報
【特許文献2】特開平10−069079号公報
【特許文献3】US6022906(A)
【発明の概要】
【0005】
解決しようとする問題点は、満足できる感度を有する重合開始剤がこれまでなかったということである。
【0006】
従って、本発明の目的は、安定性に優れ、低昇華性であり、365nm等の近紫外光を効率よく吸収し活性化される高感度の重合開始剤として有用な新規な化合物及び該化合物を用いた重合開始剤並びにラジカル重合性組成物を提供することにある。
【0007】
本発明は、下記一般式(I)で表される新規なα−アミノアルキルフェノン化合物、及び該化合物を含有する重合開始剤を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0008】
【化1】
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子;水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているかあるいは無置換の炭素原子数1〜12のアルキル基;炭素原子数1〜4のアルキル基、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているかあるいは無置換のフェニル基;炭素原子数1〜4のアルキル基、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているかあるいは無置換の炭素原子数7〜30のアリールアルキル基;炭素数2〜12のアルケニル基を表し、RとRは、連結して3〜6員環の複素環を形成していてもよく、
及びRは、それぞれ独立に、水素原子;水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているかあるいは無置換の炭素原子数1〜12のアルキル基;炭素原子数1〜4のアルキル基、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているかあるいは無置換のフェニル基;炭素原子数1〜4のアルキル基、水酸基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、アミノ基、炭素原子数1〜4のアルキルチオ基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているかあるいは無置換の炭素原子数7〜30のアリールアルキル基;炭素数2〜12のアルケニル基を表し、RとRは、連結して3〜6員環の環状アルカンを形成してもよく、
、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、水酸基;ハロゲン原子で置換されている若しくは無置換の炭素原子数1〜8のアルキル基;炭素原子数1〜4のアルキル基、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているかあるいは無置換の炭素原子数7〜30のアリールアルキル基を表し、
、R10、R11、R12及びR13は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、水酸基;ハロゲン原子で置換されている若しくは無置換の炭素原子数1〜8のアルキル基;炭素原子数1〜4のアルキル基、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているかあるいは無置換の炭素原子数7〜30のアリールアルキル基、−OR14、−O−CO−O−R15、−NR1617、−SR18を表し、かつ、R、R10、R11、R12及びR13のうち少なくとも1つは、ニトロ基、−OR14、−O−CO−O−R15、−NR1617、−SR18の群より選ばれる基であり、
14、R15、R16、R17及びR18は、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているかあるいは無置換の炭素原子数1〜12のアルキル基;水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているかあるいは無置換のフェニル基;炭素原子数1〜4のアルキル基、水酸基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、アミノ基、炭素原子数1〜4のアルキルチオ基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているかあるいは無置換の炭素原子数7〜30のアリールアルキル基;炭素数2〜12のアルケニル基;炭素原子数2〜12の複素環含有基、トリアルキルシリル基又はトリアリールシリル基を表し、
上記アルキル基及びアリールアルキル基中のメチレン鎖は、−O−、−S−、−NR19−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−又は−O−CO−O−で置き換えられていてもよく、上記アルキル基の末端は不飽和結合であってもよく、
19は、水素原子;水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているかあるいは無置換の炭素原子数1〜12のアルキル基;炭素原子数1〜4のアルキル基、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているかあるいは無置換のフェニル基;炭素原子数1〜4のアルキル基、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているかあるいは無置換の炭素原子数7〜30のアリールアルキル基;炭素数2〜12のアルケニル基を表す。
【0009】
また、本発明は、重合開始剤(A)及びエチレン性不飽和結合を有する重合性化合物(B)を含有するラジカル重合性組成物において、重合開始剤(A)が本発明の重合開始剤であるラジカル重合性組成物を提供するものである。
【0010】
また、本発明は、上記ラジカル重合性組成物にエネルギー線を照射してなる硬化物を提供するものである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のα−アミノアルキルフェノン化合物及び該化合物を含有する重合開始剤について好ましい実施形態に基づき詳細に説明する。
【0012】
本発明のα−アミノアルキルフェノン化合物は、上記一般式(I)で表わされる新規な化合物である。
【0013】
上記一般式(I)中の、R、R、R、R、R14、R15、R16、R17、R18及びR19で表される無置換の炭素原子数1〜12のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、アミル、イソアミル、t−アミル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、イソオクチル、2−エチルヘキシル、t−オクチル、ノニル、イソノニル、デシル、イソデシル、ウンデシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、イコシル、シクロペンチル、シクロペンチルメチル、シクロペンチルエチル、シクロヘキシル、シクロヘキシルメチル、シクロヘキシルエチル等が挙げられる。
上記一般式(I)中の、R、R、R、R、R14、R15、R16、R17、R18及びR19で表される、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されている炭素原子数1〜12のアルキル基としては、上記炭素原子数1〜12のアルキル基の一部又は全部が、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているものが挙げられる。
【0014】
上記一般式(I)中の、R、R、R、R、R、R10、R11、R12及びR13で表される無置換の炭素原子数1〜8のアルキル基としては、上記無置換の炭素原子数1〜12として例示したものの中の炭素原子数1〜8のものを挙げることができる。
上記一般式(I)中の、R、R、R、R、R、R10、R11、R12及びR13で表されるハロゲン原子で置換されている炭素原子数1〜8のアルキル基としては、上記炭素原子数1〜8のアルキル基の一部又は全部が、ハロゲン原子で置換されているものが挙げられる。
【0015】
上記一般式(I)中の、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13及びR19で表される無置換の炭素原子数7〜30のアリールアルキル基としては、例えば、ベンジル、α−メチルベンジル、α、α−ジメチルベンジル、フェニルエチル、9−フルオレニルメチル等が挙げられる。
上記一般式(I)中の、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12及びR13で表される、炭素原子数1〜4のアルキル基、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されている炭素原子数7〜30のアリールアルキル基としては、上記炭素原子数7〜30のアリールアルキル基の一部又は全部が、炭素原子数1〜4のアルキル基、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているものが挙げられる。
上記一般式(I)中の、R、R、R14、R15、R16、R17及びR18で表される、炭素原子数1〜4のアルキル基、水酸基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、アミノ基、炭素原子数1〜4のアルキルチオ基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されている炭素原子数7〜30のアリールアルキル基としては、上記炭素原子数7〜30のアリールアルキル基の一部又は全部が、炭素原子数1〜4のアルキル基、水酸基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、アミノ基、炭素原子数1〜4のアルキルチオ基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基若しくはニトロ基で置換されているものが挙げられる。
【0016】
上記一般式(I)中の、R、R、R、R、R14、R15、R16、R17、R18及びR19で表される炭素原子数2〜12のアルケニル基としては、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1−オクテニル基、1−デセニル基等の基が挙げられる。
【0017】
上記一般式(I)中の、RとRが連結して形成し得る3〜6員環の複素環としては、例えば、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環、ラクタム環等が好ましく挙げられる。
【0018】
上記一般式(I)中の、RとRが連結して形成し得る3〜6員環の環状アルカンとしては、例えば、シクロペンタン環、シクロヘキサン環等が好ましく挙げられる。
【0019】
また、上記一般式(I)中のR、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18及びR19を置換してもよいハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
【0020】
また、上記一般式(I)中のR、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18及びR19を置換してもよい炭素原子数1〜4のアルキル基としては、上記無置換の炭素原子数1〜12として例示したものの中の炭素原子数1〜4のものを挙げることができる。
【0021】
上記一般式(I)中の、R14、R15、R16、R17及びR18で表される炭素原子数2〜12の複素環基としては、例えば、ピリジル、ピリミジル、フリル、チエニル、テトラヒドロフリル、ジオキソラニル、ベンゾオキサゾール−2−イル、テトラヒドロピラニル、ピロリジル、イミダゾリジル、ピラゾリジル、チアゾリジル、イソチアゾリジル、オキサゾリジル、イソオキサゾリジル、ピペリジル、ピペラジル、モルホリニル等の5〜7員複素環が挙げられる。
【0022】
上記一般式(I)中の、R14、R15、R16、R17及びR18で表されるトリアルキルシリル基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、エチルジメチルシリル基等が挙げられ、トリアリールシリル基としては、t−ブチルジフェニルシリル基等が挙げられる。
【0023】
上記一般式(I)中の、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18及びR19で表される基のアルキレン部分は、−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−又は−O−CO−O−により酸素原子が隣合わない条件で1〜5回中断されていてもよく、この時中断する結合基は1種又は2種以上の基でもよく、連続して中断し得る基の場合は2つ以上連続して中断してもよい。
また、上記一般式(I)中の、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18及びR19で表される基のアルキル(アルキレン)部分は、分岐側鎖があってもよく、環状アルキルであってもよく、また、アルキル基の末端が2重結合、3重結合の不飽和結合であってもよい。
【0024】
本発明のα−アミノアルキルフェノン化合物の中でも、R11がニトロ基、炭素原子数1〜12のアルコキシ基又は炭素原子数1〜12のアルコキシカルボニル基であるものは、感度が高く、製造が容易であるため好ましい。
【0025】
従って、上記一般式(I)で表される本発明のα−アミノアルキルフェノン化合物の好ましい具体例としては、以下の化合物No.1〜No.40が挙げられる。但し、本発明は以下の化合物により何ら制限を受けるものではない。
【0026】
【化2】
【0027】
【化3】
【0028】
【化4】
【0029】
【化5】
【0030】
上記一般式(I)で表される本発明のα−アミノアルキルフェノン化合物は、例えば下記スキームに従い、ハロゲン体1とチオール化合物1とを反応させることにより合成することができる。
【0031】
【化6】
(式中、Xは、ハロゲン原子を表し、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12及びR13は、上記一般式(I)と同じである。)
【0032】
以上説明した本発明の新規なα−アミノアルキルフェノン化合物は、ラジカル重合開始剤、特に光重合開始剤又は熱重合開始剤として有用である。また、本発明の新規なα−アミノアルキルフェノン化合物は、増感剤としても好適に用いることができる。
【0033】
本発明の重合開始剤は、本発明のα−アミノアルキルフェノン化合物を少なくとも一種含有するものであり、特にエチレン性不飽和結合を有する重合性化合物の重合開始剤として有用なものである。また本発明の重合開始剤中における本発明のα−アミノアルキルフェノン化合物の含有量は、好ましくは30〜100質量%、より好ましくは50〜100質量%である。
【0034】
本発明のラジカル重合性組成物は、必須成分として、本発明の重合開始剤及びエチレン性不飽和結合を有する重合性化合物を含有し、任意成分として、エチレン性不飽和基を有していてもよいアルカリ現像性を有する化合物、無機化合物、色材、溶媒等の成分を組み合わせて含有するものである。
【0035】
上記エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物としては、特に限定されず、従来、ラジカル重合性組成物に用いられているものを用いることができるが、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン等の不飽和脂肪族炭化水素;(メタ)アクリル酸、α―クロルアクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、シトラコン酸、フマル酸、ハイミック酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ビニル酢酸、アリル酢酸、桂皮酸、ソルビン酸、メサコン酸、コハク酸モノ[2−(メタ)アクリロイロキシエチル]、フタル酸モノ[2−(メタ)アクリロイロキシエチル]、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート等の両末端にカルボキシ基と水酸基とを有するポリマーのモノ(メタ)アクリレート;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート・マレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート・マレート、ジシクロペンタジエン・マレート或いは1個のカルボキシル基と2個以上の(メタ)アクリロイル基とを有する多官能(メタ)アクリレート等の不飽和多塩基酸;(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸グリシジル、下記化合物No.A1〜No.A4、(メタ)アクリル酸メチル、 (メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸−t−ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノメチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸アミノプロピル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸ポリ(エトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸ブトキシエトキシエチル、(メタ)アクリル酸エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフリル、(メタ)アクリル酸ビニル、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸ベンジル、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、トリ[(メタ)アクリロイルエチル]イソシアヌレート、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー等の不飽和一塩基酸及び多価アルコール又は多価フェノールのエステル;(メタ)アクリル酸亜鉛、(メタ)アクリル酸マグネシウム等の不飽和多塩基酸の金属塩;マレイン酸無水物、イタコン酸無水物、シトラコン酸無水物、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸−無水マレイン酸付加物、ドデセニル無水コハク酸、無水メチルハイミック酸等の不飽和多塩基酸の酸無水物;(メタ)アクリルアミド、メチレンビス−(メタ)アクリルアミド、ジエチレントリアミントリス(メタ)アクリルアミド、キシリレンビス(メタ)アクリルアミド、α−クロロアクリルアミド、N−2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等の不飽和一塩基酸及び多価アミンのアミド;アクロレイン等の不飽和アルデヒド;(メタ)アクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、シアン化ビニリデン、シアン化アリル等の不飽和ニトリル;スチレン、4−メチルスチレン、4−エチルスチレン、4−メトキシスチレン、4−ヒドロキシスチレン、4−クロロスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、ビニル安息香酸、ビニルフェノール、ビニルスルホン酸、4−ビニルベンゼンスルホン酸、ビニルベンジルメチルエーテル、ビニルベンジルグリシジルエーテル等の不飽和芳香族化合物;メチルビニルケトン等の不飽和ケトン;ビニルアミン、アリルアミン、N−ビニルピロリドン、ビニルピペリジン等の不飽和アミン化合物;アリルアルコール、クロチルアルコール等のビニルアルコール;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、アリルグリシジルエーテル等のビニルエーテル;マレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等の不飽和イミド類;インデン、1−メチルインデン等のインデン類;1,3−ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等の脂肪族共役ジエン類;ポリスチレン、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリ−n−ブチル(メタ)アクリレート、ポリシロキサン等の重合体分子鎖の末端にモノ(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマー類;ビニルクロリド、ビニリデンクロリド、ジビニルスクシナート、ジアリルフタラート、トリアリルホスファート、トリアリルイソシアヌラート、ビニルチオエーテル、ビニルイミダゾール、ビニルオキサゾリン、ビニルカルバゾール、ビニルピロリドン、ビニルピリジン、水酸基含有ビニルモノマー及びポリイソシアネート化合物のビニルウレタン化合物、水酸基含有ビニルモノマー及びポリエポキシ化合物のビニルエポキシ化合物が挙げられる。
これらの中でも、両末端にカルボキシ基と水酸基とを有するポリマーのモノ(メタ)アクリレート、1個のカルボキシ基と2個以上の(メタ)アクリロイル基とを有する多官能(メタ)アクリレート、不飽和一塩基酸及び多価アルコール又は多価フェノールのエステルに、本発明のα−アミノアルキルフェノン化合物を含有する重合開始剤は好適である。
これらの重合性化合物は、単独で又は2種以上を混合して使用することができ、また2種以上を混合して使用する場合には、それらを予め共重合して共重合体として使用してもよい。
【0036】
【化7】
【0037】
【化8】
【0038】
【化9】
【0039】
【化10】
【0040】
上記エチレン性不飽和基を有していてもよいアルカリ現像性を有する化合物としては、アルカリ水溶液に可溶であれば特に限定されないが、例えば、特開2004−264414号公報に記載の樹脂等が挙げられる。
【0041】
また、上記エチレン性不飽和基を有していてもよいアルカリ現像性を有する化合物としては、アクリル酸エステルの共重合体や、フェノール及び/又はクレゾールノボラックエポキシ樹脂、多官能エポキシ基を有するポリフェニルメタン型エポキシ樹脂、エポキシアクリレート樹脂、下記一般式(III)で表されるエポキシ化合物等のエポキシ基に、不飽和一塩基酸を作用させ、更に多塩基酸無水物を作用させて得られた樹脂を用いることができる。
これらの中でも、下記一般式(III)で表されるエポキシ化合物のエポキシ基に、不飽和一塩基酸を作用させ、更に多塩基酸無水物を作用させて得られた樹脂が好ましい。
また、上記エチレン性不飽和結合を有していてもよいアルカリ現像性を有する化合物は、不飽和基を0.2〜1.0当量含有していることが好ましい。
【0042】
【化11】
(式中、X1は直接結合、メチレン基、炭素原子数1〜4のアルキリデン基、炭素原子数3〜20の脂環式炭化水素基、O、S、SO2、SS、SO、CO、OCO又は下記〔化12〕、〔化13〕若しくは〔化14〕で表される基を表し、上記アルキリデン基はハロゲン原子で置換されていてもよく、R51、R52、R53及びR54は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1〜5のアルキル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基、炭素原子数2〜5のアルケニル基又はハロゲン原子を表し、上記アルキル基、アルコキシ基及びアルケニル基はハロゲン原子で置換されていてもよく、mは0〜10の整数であり、mが0で無いときに存在する光学異性体は、どの異性体でもよい。)
【0043】
【化12】
(式中、Z3は水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基若しくは炭素原子数1〜10
のアルコキシ基により置換されていてもよいフェニル基、又は炭素原子数1〜10のアルキル基若しくは炭素原子数1〜10のアルコキシ基により置換されていてもよい炭素原子数3〜10のシクロアルキル基を示し、Y1は炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原
子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数2〜10のアルケニル基又はハロゲン原子を示し、上記アルキル基、アルコキシ基及びアルケニル基はハロゲン原子で置換されていてもよく、dは0〜5の整数である。)
【0044】
【化13】
【0045】
【化14】
(式中、Y2及びZ4は、それぞれ独立して、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1〜10のアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数6〜20のアリール基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数6〜20のアリールオキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数6〜20のアリールチオ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数6〜20のアリールアルケニル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数7〜20のアリールアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数2〜20の複素環基、又はハロゲン原子を表し、上記アルキル基及びアリールアルキル基中のアルキレン部分は、不飽和結合、−O−又は−S−で中断されていてもよく、Z4は、隣接するZ4同士で環を形成していてもよく、pは0〜4の整数を表し、qは0〜8の整数を表し、rは0〜4の整数を表し、sは0〜4の整数を表し、rとsの数の合計は2〜4の整数である。)
【0046】
上記エポキシ化合物に作用させる上記不飽和一塩基酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、ソルビン酸、ヒドロキシエチルメタクリレート・マレート、ヒドロキシエチルアクリレート・マレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート・マレート、ヒドロキシプロピルアクリレート・マレート、ジシクロペンタジエン・マレート等が挙げられる。
【0047】
また、上記不飽和一塩基酸を作用させた後に作用させる上記多塩基酸無水物としては、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、テトラヒドロ無水フタル酸、無水コハク酸、ビフタル酸無水物、無水マレイン酸、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸無水物、2,2’−3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、グリセロールトリスアンヒドロトリメリテート、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、ナジック酸無水物、メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸−無水マレイン酸付加物、ドデセニル無水コハク酸、無水メチルハイミック酸等が挙げられる。
【0048】
上記エポキシ化合物、上記不飽和一塩基酸及び上記多塩基酸無水物の反応モル比は、以下の通りとすることが好ましい。
即ち、上記エポキシ化合物のエポキシ基1個に対し、上記不飽和一塩基酸のカルボキシル基が0.1〜1.0個で付加させた構造を有するエポキシ付加物において、該エポキシ付加物の水酸基1個に対し、上記多塩基酸無水物の酸無水物構造が0.1〜1.0個となる比率となるようにするのが好ましい。
上記エポキシ化合物、上記不飽和一塩基酸及び上記多塩基酸無水物の反応は、常法に従って行なうことができる。
【0049】
本発明のラジカル重合性組成物の実施態様の一つである、本発明のアルカリ現像性感光性樹脂組成物は、必須成分として、本発明の重合開始剤と、エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物と、エチレン性不飽和基を有していてもよいアルカリ現像性を有する化合物とを含有し、任意成分として、無機化合物、色材、溶媒等の成分を組み合わせて含有するものである。尚、本発明のアルカリ現像性感光性樹脂組成物のうち、色材を含有するものを、特に、本発明の着色アルカリ現像性感光性樹脂組成物ともいう。
上記のエチレン性不飽和結合を有する重合性化合物と、上記のエチレン性不飽和基を有していてもよいアルカリ現像性を有する化合物とは同一の化合物であってもよく、異なっていても良く、また、単独であっても2種以上を併用してもよい。
【0050】
酸価調整して上記アルカリ現像性感光性樹脂組成物の現像性を改良するため、上記エチレン性不飽和結合を有していてもよいアルカリ現像性を有する化合物と共に、更に単官能又は多官能エポキシ化合物を用いることができる。上記エチレン性不飽和結合を有していてもよいアルカリ現像性を有する化合物は、固形分の酸価が5〜120mgKOH/gの範囲であることが好ましく、単官能又は多官能エポキシ化合物の使用量は、上記酸価を満たすように選択するのが好ましい。
【0051】
上記単官能エポキシ化合物としては、グリシジルメタクリレート、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、プロピルグリシジルエーテル、イソプロピルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、イソブチルグリシジルエーテル、t−ブチルグリシジルエーテル、ペンチルグリシジルエーテル、ヘキシルグリシジルエーテル、ヘプチルグリシジルエーテル、オクチルグリシジルエーテル、ノニルグリシジルエーテル、デシルグリシジルエーテル、ウンデシルグリシジルエーテル、ドデシルグリシジルエーテル、トリデシルグリシジルエーテル、テトラデシルグリシジルエーテル、ペンタデシルグリシジルエーテル、ヘキサデシルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、プロパルギルグリシジルエーテル、p−メトキシエチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、p−メトキシグリシジルエーテル、p−ブチルフェノールグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル、2−メチルクレジルグリシジルエーテル、4−ノニルフェニルグリシジルエーテル、ベンジルグリシジルエーテル、p−クミルフェニルグリシジルエーテル、トリチルグリシジルエーテル、2,3−エポキシプロピルメタクリレート、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、グリシジルブチレート、ビニルシクロヘキサンモノオキシド、1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサン、スチレンオキシド、ピネンオキシド、メチルスチレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、プロピレンオキシド、下記化合物No.E1、No.E2等が挙げられる。
【0052】
【化15】
【0053】
【化16】
【0054】
上記多官能エポキシ化合物としては、ビスフェノール型エポキシ化合物及びグリシジルエーテル類からなる群から選択される一種以上の化合物を用いると、特性の一層良好な(着色)アルカリ現像性感光性樹脂組成物を得ることができるので好ましい。
上記ビスフェノール型エポキシ化合物としては、上記一般式(III)で表されるエポキシ化合物を用いることができる他、例えば、水添ビスフェノール型エポキシ化合物等のビスフェノール型エポキシ化合物も用いることができる。
また上記グリシジルエーテル類としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、1,8−オクタンジオールジグリシジルエーテル、1,10−デカンジオールジグリシジルエーテル、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテル、テトラエチレングリコールジグリシジルエーテル、ヘキサエチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、1,1,1−トリ(グリシジルオキシメチル)プロパン、1,1,1−トリ(グリシジルオキシメチル)エタン、1,1,1−トリ(グリシジルオキシメチル)メタン、1,1,1,1−テトラ(グリシジルオキシメチル)メタン等を用いることができる。
その他、フェノールノボラック型エポキシ化合物、ビフェニルノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、ビスフェノールAノボラック型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ化合物等のノボラック型エポキシ化合物;3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、1−エポキシエチル−3,4−エポキシシクロヘキサン等の脂環式エポキシ化合物;フタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ダイマー酸グリシジルエステル等のグリシジルエステル類;テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルP−アミノフェノール、N,N−ジグリシジルアニリン等のグリシジルアミン類;1,3−ジグリシジル−5,5−ジメチルヒダントイン、トリグリシジルイソシアヌレート等の複素環式エポキシ化合物;ジシクロペンタジエンジオキシド等のジオキシド化合物;ナフタレン型エポキシ化合物;トリフェニルメタン型エポキシ化合物;ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物等を用いることもできる。
【0055】
本発明のラジカル重合性組成物において、本発明の重合開始剤の含有量は特に限定されるものではないが、上記エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物100質量部に対して、好ましくは0.1〜70質量部、より好ましくは1〜50質量部、最も好ましくは5〜30質量部である。
【0056】
特に、本発明のラジカル重合性組成物を(着色)アルカリ現像性感光性樹脂組成物とする場合、上記エチレン性不飽和結合を有してもよいアルカリ現像性を有する化合物の含有量は、本発明の(着色)アルカリ現像型感光性樹脂組成物中、1〜20質量%、特に3〜12質量%が好ましい。
【0057】
本発明のラジカル重合性組成物には、更に溶媒を加えることができる。該溶媒としては、通常、必要に応じて上記の各成分(本発明の重合開始剤及びエチレン性不飽和結合を有する重合性化合物等)を溶解又は分散しえる溶媒、例えば、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、ジエチルケトン、アセトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン等のケトン類;エチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸シクロヘキシル、乳酸エチル、コハク酸ジメチル、テキサノール等のエステル系溶媒;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のセロソルブ系溶媒;メタノール、エタノール、イソ−又はn−プロパノール、イソ−又はn−ブタノール、アミルアルコール等のアルコール系溶媒;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルエーテルアセテート、エトキシエチルエーテルプロピオネート等のエーテルエステル系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等のBTX系溶媒;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒;テレピン油、D−リモネン、ピネン等のテルペン系炭化水素油;ミネラルスピリット、スワゾール#310(コスモ松山石油社)、ソルベッソ#100(エクソン化学社)等のパラフィン系溶媒;四塩化炭素、クロロホルム、トリクロロエチレン、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化脂肪族炭化水素系溶媒;クロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素系溶媒;カルビトール系溶媒;アニリン;トリエチルアミン;ピリジン;酢酸;アセトニトリル;二硫化炭素;N,N−ジメチルホルムアミド;N,N−ジメチルアセトアミド;N−メチルピロリドン;ジメチルスルホキシド;水等が挙げられ、これらの溶媒は1種又は2種以上の混合溶媒として使用することができる。
これらの中でも、ケトン類、エーテルエステル系溶媒等、特にプロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート、シクロヘキサノン等が、ラジカル重合性組成物において、レジストと重合開始剤の相溶性がよいので好ましい。
【0058】
また、本発明のラジカル重合性組成物には、更に色材を含有させて着色ラジカル重合性組成物としてもよい。該色材としては、顔料、染料、天然色素等が挙げられる。これらの色材は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0059】
上記顔料としては、例えば、ニトロソ化合物;ニトロ化合物;アゾ化合物;ジアゾ化合物;キサンテン化合物;キノリン化合物;アントラキノン化合物;クマリン化合物;フタロシアニン化合物;イソインドリノン化合物;イソインドリン化合物;キナクリドン化合物;アンタンスロン化合物;ペリノン化合物;ペリレン化合物;ジケトピロロピロール化合物;チオインジゴ化合物;ジオキサジン化合物;トリフェニルメタン化合物;キノフタロン化合物;ナフタレンテトラカルボン酸;アゾ染料、シアニン染料の金属錯体化合物;レーキ顔料;ファーネス法、チャンネル法又はサーマル法によって得られるカーボンブラック、或いはアセチレンブラック、ケッチェンブラック又はランプブラック等のカーボンブラック;上記カーボンブラックをエポキシ樹脂で調整又は被覆したもの、上記カーボンブラックを予め溶媒中で樹脂で分散処理し、20〜200mg/gの樹脂を吸着させたもの、上記カーボンブラックを酸性又はアルカリ性表面処理したもの、平均粒径が8nm以上でDBP吸油量が90ml/100g以下のもの、950℃における揮発分中のCO及びCO2から算出した全酸素量が、カーボンブラックの表面積100m2当たり9mg以上であるもの;黒鉛、黒鉛化カーボンブラック、活性炭、炭素繊維、カーボンナノチューブ、カーボンマイクロコイル、カーボンナノホーン、カーボンエアロゲル、フラーレン;アニリンブラック、ピグメントブラック7、チタンブラック;酸化クロム緑、ミロリブルー、コバルト緑、コバルト青、マンガン系、フェロシアン化物、リン酸塩群青、紺青、ウルトラマリン、セルリアンブルー、ピリジアン、エメラルドグリーン、硫酸鉛、黄色鉛、亜鉛黄、べんがら(赤色酸化鉄(III))、カドミウム赤、合成鉄黒、アンバー等の有機又は無機顔料を用いることができる。これらの顔料は単独で、或いは複数を混合して用いることができる。
【0060】
上記顔料としては、市販の顔料を用いることもでき、例えば、ピグメントレッド1、2、3、9、10、14、17、22、23、31、38、41、48、49、88、90、97、112、119、122、123、144、149、166、168、169、170、171、177、179、180、184、185、192、200、202、209、215、216、217、220、223、224、226、227、228、240、254;ピグメントオレンジ13、31、34、36、38、43、46、48、49、51、52、55、59、60、61、62、64、65、71;ピグメントイエロー1、3、12、13、14、16、17、20、24、55、60、73、81、83、86、93、95、97、98、100、109、110、113、114、117、120、125、126、127、129、137、138、139、147、148、150、151、152、153、154、166、168、175、180、185;ピグメントグリ−ン7、10、36;ピグメントブルー15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:5、15:6、22、24、56、60、61、62、64;ピグメントバイオレット1、19、23、27、29、30、32、37、40、50等が挙げられる。
【0061】
上記染料としては、アゾ染料、アントラキノン染料、インジゴイド染料、トリアリールメタン染料、キサンテン染料、アリザリン染料、アクリジン染料スチルベン染料、チアゾール染料、ナフトール染料、キノリン染料、ニトロ染料、インダミン染料、オキサジン染料、フタロシアニン染料、シアニン染料等の染料等が挙げられ、これらは複数を混合して用いてもよい。
【0062】
本発明のラジカル重合性組成物において、上記色材の含有量は、上記エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物100質量部に対して、好ましくは50〜350質量部、より好ましくは100〜250質量部である。
【0063】
本発明のラジカル重合性組成物には、更に無機化合物を含有させることができる。該無機化合物としては、例えば、酸化ニッケル、酸化鉄、酸化イリジウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化カリウム、シリカ、アルミナ等の金属酸化物;層状粘土鉱物、ミロリブルー、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、コバルト系、マンガン系、ガラス粉末(特にガラスフリット)、マイカ、タルク、カオリン、フェロシアン化物、各種金属硫酸塩、硫化物、セレン化物、アルミニウムシリケート、カルシウムシリケート、水酸化アルミニウム、白金、金、銀、銅等が挙げられる。
これらの中でも、ガラスフリット、酸化チタン、シリカ、層状粘土鉱物、銀等が好ましい。本発明のラジカル重合性組成物において、上記無機化合物の含有量は、上記エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物100質量部に対して、好ましくは0.1〜1000質量部、より好ましくは10〜800質量部である。尚、これらの無機化合物は1種又は2種以上を使用することができる。
【0064】
これら無機化合物は、例えば、充填剤、反射防止剤、導電剤、安定剤、難燃剤、機械的強度向上剤、特殊波長吸収剤、撥インク剤等として用いられる。
【0065】
本発明のラジカル重合性組成物には、色材及び/又は無機化合物を分散させる分散剤を加えることができる。該分散剤としては、色材又は無機化合物を分散、安定化できるものであれば制限されず、市販の分散剤、例えば、ビックケミー社製のBYKシリーズ等を用いることができる。特に、塩基性官能基を有するポリエステル、ポリエーテル、又はポリウレタンからなる高分子分散剤、塩基性官能基として窒素原子を有し、窒素原子を有する官能基がアミン、及び/又はその四級塩であり、アミン価が1〜100mgKOH/gのものが好適に用いられる。
【0066】
本発明のラジカル重合性組成物では、本発明のα−アミノアルキルフェノン化合物と共に他の重合開始剤を併用することができる。他の重合開始剤としては、光重合開始剤又は熱重合開始剤が挙げられる。
他の光重合開始剤としては、従来既知の化合物を用いることが可能であり、例えば、ベンゾフェノン、フェニルビフェニルケトン、1−ヒドロキシ−1−ベンゾイルシクロヘキサン、ベンゾイン、ベンジルジメチルケタール、1−ベンジル−1−ジメチルアミノ−1−(4'−モルホリノベンゾイル)プロパン、2−モルホリル−2−(4'−メチルメルカプト)ベンゾイルプロパン、チオキサントン、1−クロル−4−プロポキシチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、エチルアントラキノン、4−ベンゾイル−4'−メチルジフェニルスルフィド、ベンゾインブチルエーテル、2−ヒドロキシ−2−ベンゾイルプロパン、2−ヒドロキシ−2−(4'−イソプロピル)ベンゾイルプロパン、4−ブチルベンゾイルトリクロロメタン、4−フェノキシベンゾイルジクロロメタン、ベンゾイル蟻酸メチル、1,7−ビス(9'−アクリジニル)ヘプタン、9−n−ブチル−3,6−ビス(2'−モルホリノイソブチロイル)カルバゾール、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−ナフチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,2−ビス(2−クロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニル−1−2’−ビイミダゾール、4、4−アゾビスイソブチロニトリル、トリフェニルホスフィン、カンファーキノン、N−1414、N−1717、N−1919、NCI−831、NCI−930(ADEKA社製)、IRGACURE369、IRGACURE907、IRGACURE OXE 01、IRGACURE OXE 02(BASF社製)、TR−PBG−304、TR−PBG−305、TR−PBG−314(Tronly社製)、過酸化ベンゾイル、下記一般式(IV)で表される化合物等が挙げられ、これらの他の光重合開始剤を使用する場合、その使用量は、好ましくは本発明のα−アミノアルキルフェノン化合物の使用量の1質量倍以下とする。尚、これらの光重合開始剤は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0067】
【化17】
(式中、R21及びR22は、それぞれ独立に、水素原子、シアノ基、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基又は炭素原子数2〜20の複素環基を表し、
23及びR24は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、水酸基、カルボキシル基、R25、OR26、SR27、NR2829、COR30、SOR31、SO32又はCONR3334を表し、R23及びR24は、互いに結合して環を形成していてもよく、
25、R26、R27、R28、R29、R30、R31、R32、R33及びR34は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基又は炭素原子数2〜20の複素環基を表し、
は、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、CR3536、CO、NR37又はPR38を表し、
は、単結合又はCOを表し、
21、R22、R25、R26、R27、R28、R29、R30、R35、R36、R37及びR38中の炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基又は炭素原子数7〜30のアリールアルキル基を表し、該アルキル基又はアリールアルキル基中のメチレン基は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、水酸基、カルボキシル基又は複素環基で置換されていてもよく、−O−で中断されていてもよく、
35、R36、R37及びR38は、それぞれ独立に、隣接するどちらかのベンゼン環と一緒になって環を形成していてもよく、
aは、0〜4の整数を表し、
bは、0〜5の整数を表す。)
【0068】
また、他の熱重合開始剤としては、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス(メチルイソブチレ−ト)、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)等のアゾ系開始剤;ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等の過酸化物系開始剤、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩等が挙げられる。これらは一種又は二種以上を混合して用いることができる。
【0069】
また、本発明のラジカル重合性組成物には、必要に応じて、光/熱酸発生剤;p−アニソール、ハイドロキノン、ピロカテコール、t−ブチルカテコール、フェノチアジン等の熱重合抑制剤;可塑剤;接着促進剤;充填剤;消泡剤;レベリング剤;表面調整剤;酸化防止剤;紫外線吸収剤;分散助剤;凝集防止剤;触媒;硬化促進剤;架橋剤;増粘剤等の慣用の添加物を加えることができる。
【0070】
本発明のラジカル重合性組成物において、上記エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物及び本発明のα−アミノアルキルフェノン化合物以外の任意成分(但し、上記の他の光重合開始剤、エチレン性不飽和基を有していてもよいアルカリ現像性を有する化合物、無機化合物(充填剤)、色材及び溶媒は除く)の使用量は、その使用目的に応じて適宜選択され特に制限されないが、好ましくは、上記エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物100質量部に対して合計で50質量部以下とする。
【0071】
また、本発明のラジカル重合性組成物には、上記エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物と共に、他の有機重合体を用いることによって、硬化物の特性を改善することもできる。該有機重合体としては、例えば、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート−エチルアクリレート共重合体、ポリ(メタ)アクリル酸、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸−メチルメタクリレート共重合体、エチレン−塩化ビニル共重合体、エチレン−ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、ウレタン樹脂、ポリカーボネートポリビニルブチラール、セルロースエステル、ポリアクリルアミド、飽和ポリエステル、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミック酸樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられ、これらの中でも、ポリスチレン、(メタ)アクリル酸−メチルメタクリレート共重合体、エポキシ樹脂が好ましい。
他の有機重合体を使用する場合、その使用量は、上記エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物100質量部に対して、好ましくは10〜500質量部である。
【0072】
本発明のラジカル重合性組成物には、更に、連鎖移動剤、増感剤、界面活性剤、シランカップリング剤、メラミン等を併用することができる。
【0073】
上記連鎖移動剤又は増感剤としては、一般的に硫黄原子含有化合物が用いられる。例えばチオグリコール酸、チオリンゴ酸、チオサリチル酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプト酪酸、N−(2−メルカプトプロピオニル)グリシン、2−メルカプトニコチン酸、3−[N−(2−メルカプトエチル)カルバモイル]プロピオン酸、3−[N−(2−メルカプトエチル)アミノ]プロピオン酸、N−(3−メルカプトプロピオニル)アラニン、2−メルカプトエタンスルホン酸、3−メルカプトプロパンスルホン酸、4−メルカプトブタンスルホン酸、ドデシル(4−メチルチオ)フェニルエーテル、2−メルカプトエタノール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール、1−メルカプト−2−プロパノール、3−メルカプト−2−ブタノール、メルカプトフェノール、2−メルカプトエチルアミン、2−メルカプトイミダゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプト−3−ピリジノール、2−メルカプトベンゾチアゾール、メルカプト酢酸、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)等のメルカプト化合物、該メルカプト化合物を酸化して得られるジスルフィド化合物、ヨード酢酸、ヨードプロピオン酸、2−ヨードエタノール、2−ヨードエタンスルホン酸、3−ヨードプロパンスルホン酸等のヨード化アルキル化合物、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトイソブチレート)、ブタンジオールビス(3−メルカプトイソブチレート)、ヘキサンジチオール、デカンジチオール、1,4−ジメチルメルカプトベンゼン、ブタンジオールビスチオプロピオネート、ブタンジオールビスチオグリコレート、エチレングリコールビスチオグリコレート、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、ブタンジオールビスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート、トリスヒドロキシエチルトリスチオプロピオネート、ジエチルチオキサントン、ジイソプロピルチオキサントン、下記化合物No.C1、トリメルカプトプロピオン酸トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート等の脂肪族多官能チオール化合物、昭和電工社製カレンズMT BD1、PE1、NR1等が挙げられる。
【0074】
【化18】
【0075】
上記界面活性剤としては、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルカルボン酸塩等のフッ素界面活性剤;高級脂肪酸アルカリ塩、アルキルスルホン酸塩、アルキル硫酸塩等のアニオン系界面活性剤;高級アミンハロゲン酸塩、第四級アンモニウム塩等のカチオン系界面活性剤;ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリド等の非イオン界面活性剤;両性界面活性剤;シリコーン系界面活性剤等の界面活性剤を用いることができ、これらは組み合わせて用いてもよい。
【0076】
上記シランカップリング剤としては、例えば信越化学社製シランカップリング剤を用いることができ、その中でも、KBE−9007、KBM−502、KBE−403等の、イソシアネート基、メタクリロイル基又はエポキシ基を有するシランカップリング剤が好適に用いられる。
【0077】
上記メラミン化合物としては、(ポリ)メチロールメラミン、(ポリ)メチロールグリコールウリル、(ポリ)メチロールベンゾグアナミン、(ポリ)メチロールウレア等の窒素化合物中の活性メチロール基(CH2OH基)の全部又は一部(少なくとも2つ)がアルキルエーテル化された化合物等を挙げることができる。
ここで、アルキルエーテルを構成するアルキル基としては、メチル基、エチル基又はブチル基が挙げられ、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、アルキルエーテル化されていないメチロール基は、一分子内で自己縮合していてもよく、二分子間で縮合して、その結果オリゴマー成分が形成されていてもよい。
具体的には、ヘキサメトキシメチルメラミン、ヘキサブトキシメチルメラミン、テトラメトキシメチルグリコールウリル、テトラブトキシメチルグリコールウリル等を用いることができる。
これらの中でも、ヘキサメトキシメチルメラミン、ヘキサブトキシメチルメラミン等のアルキルエーテル化されたメラミンが好ましい。
【0078】
本発明のラジカル重合性組成物は、スピンコーター、ロールコーター、バーコーター、ダイコーター、カーテンコーター、各種の印刷、浸漬等の公知の手段で、ソーダガラス、石英ガラス、半導体基板、金属、紙、プラスチック等の支持基体上に適用することができる。また、一旦フィルム等の支持基体上に施した後、他の支持基体上に転写することもでき、その適用方法に制限はない。
【0079】
また、本発明のラジカル重合性組成物を硬化させる際に用いられるエネルギー線の光源としては、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、水銀蒸気アーク灯、キセノンアーク灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、蛍光灯、タングステンランプ、エキシマーランプ、殺菌灯、発光ダイオード、CRT光源等から得られる2000オングストロームから7000オングストロームの波長を有する電磁波エネルギーや電子線、X線、放射線等の高エネルギー線を利用することができるが、好ましくは、波長300〜450nmの光を発光する超高圧水銀ランプ、水銀蒸気アーク灯、カーボンアーク灯、キセノンアーク灯等が挙げられる。
【0080】
更に、露光光源にレーザー光を用いることにより、マスクを用いずに、コンピューター等のデジタル情報から直接画像を形成するレーザー直接描画法が、生産性のみならず、解像性や位置精度等の向上も図れることから有用であり、そのレーザー光としては、340〜430nmの波長の光が好適に使用されるが、エキシマーレーザー、窒素レーザー、アルゴンイオンレーザー、ヘリウムカドミウムレーザー、ヘリウムネオンレーザー、クリプトンイオンレーザー、各種半導体レーザー及びYAGレーザー等の可視から赤外領域の光を発するものも用いられる。これらのレーザーを使用する場合には、可視から赤外の当該領域を吸収する増感色素が加えられる。
【0081】
本発明のラジカル重合性組成物は、光硬化性塗料又はワニス;光硬化性接着剤;プリント基板;カラーテレビ、PCモニタ、携帯情報端末、デジタルカメラ等のカラー表示の液晶表示素子におけるカラーフィルター;CCDイメージセンサのカラーフィルター;プラズマ表示パネル用の電極材料;粉末コーティング;印刷版;接着剤;歯科用組成物;ゲルコート;電子工学用のフォトレジスト;電気メッキレジスト;エッチングレジスト;はんだレジスト;種々の表示用途用のカラーフィルターを製造するための或いはプラズマ表示パネル、電気発光表示装置、及びLCDの製造工程において構造を形成するためのレジスト;電気及び電子部品を封入するための組成物;磁気記録材料;微小機械部品;導波路;光スイッチ;めっき用マスク;エッチングマスク;カラー試験系;ガラス繊維ケーブルコーティング;スクリーン印刷用ステンシル;ステレオリトグラフィによって三次元物体を製造するための材料;ホログラフィ記録用材料;画像記録材料;微細電子回路;脱色材料;画像記録材料のための脱色材料;マイクロカプセルを使用する画像記録材料用の脱色材料;印刷配線板用フォトレジスト材料;UV及び可視レーザー直接画像系用のフォトレジスト材料;プリント回路基板の逐次積層における誘電体層形成に使用するフォトレジスト材料又は保護膜等の各種の用途に使用することができ、その用途に特に制限はない。
【0082】
本発明のラジカル重合性組成物は、液晶表示パネル用のスペーサーを形成する目的及び垂直配向型液晶表示素子用突起を形成する目的で使用することもできる。特に垂直配向型液晶表示素子用の突起とスペーサーを同時に形成するための感光性組成物として有用である。
【0083】
上記の液晶表示パネル用スペーサーは、(1)本発明のラジカル重合性組成物の塗膜を基板上に形成する工程、(2)該塗膜に所定のパターン形状を有するマスクを介して放射線を照射する工程、(3)露光後のベーク工程、(4)露光後の該被膜を現像する工程、(5)現像後の該被膜を加熱する工程により好ましく形成される。
【0084】
撥インク剤を添加した本発明のラジカル重合性組成物は、インクジェット方式用隔壁形成樹脂組成物として有用であり、該組成物はカラーフィルター用として用いられ、特にプロファイル角が50°以上であるインクジェット方式カラーフィルター用隔壁に好ましく用いられる。該撥インク剤としては、フッ素系界面活性剤及びフッ素系界面活性剤からなる組成物が好適に用いられる。
【0085】
本発明のラジカル重合性組成物から形成された隔壁が被転写体上を区画し、区画された被転写体上の凹部にインクジェット法により液滴を付与して画像領域を形成する方法により光学素子が製造される。この際、上記液滴が着色剤を含有し、上記画像領域が着色されているのが好ましく、基板上に複数の着色領域からなる画素群と上記画素群の各着色領域を離隔する隔壁を少なくとも有し、上記の光学素子の製造方法により作製された光学素子が好ましく用いられる。
【0086】
本発明のラジカル重合性組成物は、保護膜又は絶縁膜用組成物としても用いられ、紫外線吸収剤、アルキル化変性メラミン及び/又はアクリル変性メラミン、分子中にアルコール性水酸基を含有する1又は2官能の(メタ)アクリレートモノマー及び/又はシリカゾルを含有することができる。
【0087】
上記保護膜、絶縁膜用のラジカル重合性組成物としては、
(A)ジオ−ル化合物と多価カルボン酸類とを反応させて得られ、重量平均分子量が2,000〜40,000、酸価が50〜200mgKOH/gであるカルボキシル基含有樹脂、
(B)光重合可能なエチレン性不飽和結合を一分子中に少なくとも1つ以上含む不飽和化合物、
(C)エポキシ化合物、及び
(D)上記一般式(I)で表されるα-アミノアルキルフェノン化合物を含有する重合開始剤、
を主成分とする樹脂組成物であって、
(A)成分と(B)成分の合計100重量部に対して、(C)成分が10〜40重量部、(D)成分が0.1〜20重量部含有するものが好ましい。
【0088】
上記絶縁膜は、剥離可能な支持基材上に絶縁樹脂層が設けられた積層体における該絶縁樹脂層に用いられ、該積層体は、アルカリ水溶液による現像が可能なものであり、絶縁樹脂層の膜厚が3〜100μmであることが好ましい。
【0089】
本発明のラジカル重合性組成物は、無機材料(無機化合物)を含有させることで、感光性ペースト組成物として用いることができる。該感光性ペースト組成物は、プラズマディスプレイパネルの隔壁パターン、誘電体パターン、電極パターン及びブラックマトリックスパターン等の焼成物パターンを形成するために用いられる。
【実施例】
【0090】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0091】
〔実施例1−1〕化合物No.5の製造
ハロゲン体1の1.0eq.をジメチルスルホキシド11.0eq.に溶解させ、炭酸カリウム3.0eq.及びチオール化合物1の1.3eq.を入れ、窒素雰囲気下70℃で16時間加熱撹拌した。室温まで冷却後、酢酸エチルから抽出した。溶媒を留去し、粗生成物をメタノール:イオン交換水=1:1から再結晶し、乾燥して下記の〔化19〕で表される中間体1(収率22.9%)を得た。
中間体1の1.0eq.をo-キシレン14.0eq.に溶解させ、エチレンカーボネート1.1eq.及び炭酸カリウム0.02eq.を入れ、窒素雰囲気下、140℃で18時間撹拌した。室温まで冷却後、酢酸エチルで抽出した。溶媒を留去し、粗生成物をシリカカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン:酢酸エチル=1:1)で精製し、乾燥して化合物No.5(収率69.0%)を得た。
尚、本製造例においては、ハロゲン体1として、[化6]中のハロゲン体1において、R及びRがモルホリン環を形成しており、R及びRがメチル基であり、R、R、R及びRが水素であり、かつXが臭素であるものを用いた。また、チオール化合物1は[化6]中のチオール化合物1において、R、R10、R12及びR13は水素であり、かつR11が水酸基であるものを用いた。
分析結果を〔表1〕〜〔表3〕に示す。
【0092】
【化19】
【0093】
〔実施例1−2〕化合物No.8の製造
100ml四つ口フラスコに、実施例1−1で得られた中間体1の1.0eq.を入れ、酢酸エチル7.0eq.を加えて溶解させた。ジメチルアミノピリジン0.4eq.及びジ−t−ブチルジカーボネート1.5eq.を加え、窒素雰囲気下室温で4時間撹拌した。反応液をイオン交換水で3回洗浄した後、溶媒を留去した。粗生成物をn−ヘキサンに溶解させ、減圧乾燥し溶媒を完全に除去して化合物No.8(収率41.6%)を得た。
分析結果を〔表1〕〜〔表3〕に示す。
【0094】
〔実施例1−3〕化合物No.41の製造
50ml四つ口フラスコに、実施例1−1で得られた中間体1の1.0eq.を入れ、テトラヒドロピラン32.4eq.に溶解させた。2,6−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン0.005eq.を加えて氷冷下撹拌した。トリエチルアミン1.7eq.を滴下し、続いて、メタクリル酸クロリド1.7eq.を滴下した。氷冷下4時間撹拌した後、酢酸エチルで抽出した。溶媒を留去し、粗生成物をシリカカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン:酢酸エチル=5:1)で精製し、乾燥して化合物No.41(収率43.1%)を得た。
分析結果を〔表1〕〜〔表3〕に示す。
【0095】
〔実施例1−4〕化合物No.42の製造
50ml四つ口フラスコに実施例1−1で得られた中間体1の1.0eq.を入れ、ジメチルアセトアミド14.3eq.で溶解させた。炭酸プロピレン1.1eq.及び炭酸カリウム0.02eq.を加え、150℃で10時間撹拌した。室温まで冷却後、酢酸エチルで抽出し、イオン交換水で2回洗浄した。溶媒を留去し、粗生成物をシリカカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン:酢酸エチル=1:1)で精製し、乾燥して化合物No.42(収率42.4%)を得た。
分析結果を〔表1〕〜〔表3〕に示す。
【0096】
【表1】
【0097】
【表2】
【0098】
【表3】
【0099】
〔実施例2−1〕〜〔実施例2−4〕ラジカル重合性組成物No.1〜No.4の製造
SPC−1000(アクリル樹脂;昭和電工社製)54.84g、アロニックスM−450(多官能アクリレート;東亜合成社製)12.77g、KBE−403(シランカップリング剤;信越シリコーン社製)0.57g、FZ−2122(界面活性剤;日本ユニカー社製)のシクロヘキサノン1%溶液3.19g及びプロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート27.95gを混合し、混合液から14.805g量り取り、実施例1−1〜1−4で得られた化合物No.5、No.8、No.41又はNo.42の0.195gを添加してよく撹拌し、本発明のラジカル重合性組成物であるラジカル重合性組成物No.1〜No.4を得た。
【0100】
〔比較例2−1〕比較ラジカル重合性組成物No.1の製造
実施例1−1で得られた化合物No.5を2−モルホリル−2−(4'−メチルメルカプト)ベンゾイルプロパンに替えた以外は実施例1と同様の手法で、比較ラジカル重合性組成物No.1を得た。
【0101】
〔評価例1−1〜1−3及び比較評価例1−1〕昇華性評価
化合物No.5、No.41及びNo.42並びに比較化合物(2−モルホリル−2−(4'−メチルメルカプト)ベンゾイルプロパン)の昇華性評価を以下のようにして行った。
即ち、化合物2.5mgを窒素雰囲気下150℃で1時間保持し、重量減少の割合を算出し、昇華性評価とした。試験結果を〔表4〕に示す。
【0102】
【表4】
【0103】
上記〔表1〕より、上記一般式(I)で表される化合物である化合物No.5、No.41及びNo.42は、昇華性が低いことが明らかである。
【0104】
〔評価例2−1〜2−4及び比較評価例2−1〕i線感度評価
得られたラジカル重合性組成物No.1〜No.4及び比較ラジカル重合性組成物No.1の放射線感度評価を以下のようにして行った。
即ち、ガラス基板上にラジカル重合性組成物をスピンコートし、ホットプレートを用いて、90℃で90秒間プリベークを行い、光源としてi線バンドパスフィルターを備えた高圧水銀ランプを用いてマスクを介して露光した。現像液として2.5質量%炭酸ナトリウム水溶液を用い現像後、よく水洗し、オーブンを用いて、230℃で30分ポストベークを行い、パターンを定着させた。パターンを電子顕微鏡で観察し、20μm開口のパターンが残った最少露光量をi線感度とした。尚、露光量が〜200mJ/cmの時はA、200〜500mJ/cmの時はB、500mJ/cmの時はCとした。試験結果を〔表5〕に示す。
【0105】
【表5】
【0106】
上記〔表5〕より、上記一般式(I)で表される化合物は、比較化合物よりi線等の近紫外光に対する感度が優れることは明らかである。
【0107】
よって、上記一般式(I)で表される化合物は、感度を維持しつつ昇華性が低いため、重合開始剤として有用なものである。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明のα−アミノアルキルフェノン化合物は、安定性に優れ、低昇華性であり、365nm(i線)等の輝線に対して効率よくラジカルを発生させ、ラジカル重合性組成物に用いられる重合開始剤として有用なものである。