【文献】
https://www.toray.jp/plastics/torelina/technical/tec_006.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ISO178に準拠して測定した23℃における曲げ弾性率が8GPa以上であり、ISO178に規定の曲げ試験方法に準じて環境温度を150℃として測定した曲げ弾性率が、ISO178に準拠して測定した23℃における曲げ弾性率の40%未満であり、
ISO178に規定の曲げ試験方法に準じて環境温度を150℃として測定した曲げ破断歪が4%以上であり、かつISO178に規定の曲げ試験方法に準じて環境温度150℃として、付加歪量3.45%で変形量5.9mmとなるまで荷重を付与してから除荷した後、環境温度150℃で10分間放置後に測定した残存変形量Y(mm)を用いて、(5.9−Y)/5.9×100(%)で算出される変形回復率が80%以上である、無理抜き成形品用樹脂組成物。
ISO178に準拠して測定した23℃における曲げ弾性率が8GPa以上であり、ISO178に規定の曲げ試験方法に準じて環境温度を150℃として測定した曲げ弾性率が、ISO178に準拠して測定した23℃における曲げ弾性率の40%未満であり、
ISO178に規定の曲げ試験方法に準じて環境温度150℃として測定した曲げ破断歪が、5.5%以上である、無理抜き成形品用樹脂組成物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、無理抜き方式により金型から離型させても離型後の成形品に変形が残ることを防ぐことができ、かつ得られた成形品が優れた剛性を有する無理抜き成形品用樹脂組成物、及びそれを用いた無理抜き成形品、並びにその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態は、以下のとおりである。
[1]ISO178に準拠して測定した23℃における曲げ弾性率が8GPa以上であり、ISO178に規定の曲げ試験方法に準じて環境温度を150℃として測定した曲げ弾性率が、ISO178に準拠して測定した23℃における曲げ弾性率の40%未満である、無理抜き成形品用樹脂組成物。
[2]ISO178に規定の曲げ試験方法に準じて環境温度を150℃として測定した曲げ弾性率が5GPa以下である、[1]に記載の樹脂組成物。
[3]ISO178に規定の曲げ試験方法に準じて環境温度を150℃として測定した曲げ破断歪が4%以上であり、かつISO178に規定の曲げ試験方法に準じて環境温度150℃として、付加歪量3.45%で変形量5.9mmとなるまで荷重を付与してから除荷した後、環境温度150℃で10分間放置後に測定した残存変形量Y(mm)を用いて、(5.9−Y)/5.9×100(%)で算出される変形回復率が80%以上である、[1]又は[2]に記載の樹脂組成物。
[4]ISO178に規定の曲げ試験方法に準じて環境温度150℃として測定した曲げ弾性率が、ISO178に準拠した23℃における曲げ弾性率の35%以下である、[1]から[3]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[5]ISO178に準拠した、23℃における曲げ弾性率が、10GPa以上である、[1]から[4]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[6]ISO178に規定の曲げ試験方法に準じて環境温度150℃として測定した曲げ破断歪が、5.5%以上である、[1]から[4]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[7]ポリアリーレンサルファイド及びポリアミドから選ばれる少なくとも一種の樹脂を含む、[1]から[6]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[8]溶融粘度が100Pa・s以上200Pa・s以下である少なくとも一種の樹脂を含む、[1]から[7]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[9][1]から[8]のいずれかに記載の樹脂組成物を用いた、無理抜き成形品。
[10]外表面に高さ0.5mm以上の膨出部を有する、[9]に記載の無理抜き成形品。
[11]流体配管用ポート部品である、[9]又は[10]に記載の無理抜き成形品。
[12][1]から[8]のいずれかに記載の樹脂組成物を射出成形する工程と、得られた成形品を金型から無理抜き方式により離型させる工程とを有する、成形品の製造方法。
[13]高さ0.5mm以上の膨出部を有する成形品を得る、[12]に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、無理抜き方式により金型から離型させても離型後の成形品に変形が残ることを防ぐことができ、かつ得られた成形品が優れた剛性を有する無理抜き成形品用樹脂組成物、及びそれを用いた無理抜き成形品、並びにその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について詳細に説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の効果を阻害しない範囲で適宜変更を加えて実施することができる。
【0010】
[無理抜き成形品用樹脂組成物]
無理抜き成形品用樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」ともいう。)は、無理抜き成形品の製造に適した樹脂組成物、又は無理抜き成形品の製造に用いられる樹脂組成物である。「無理抜き成形品」とは、射出成形した成形品を無理抜き方式で金型から離型させて得られる成形品のことをいう。なお、以下において、成形品を無理抜き方式で金型から離型させることを単に「無理抜き」ともいう。
図2は、無理抜き方式で金型から離型する際の、金型及び得られる成形品の動きを示す説明図である。
図2(a)に示すように、まず、可動側金型21及び可動コアプレート22を備えた金型20内に、ゲート23から樹脂を注入して無理抜き成形品100を射出成形する。可動側金型21には凹部24が設けられており、該凹部24に樹脂が充填されて無理抜き成形品100の先端部分に膨出部101が形成される。その後、可動側金型21を後退させて可動コアプレート22を取り外し(
図2(b))、可動側金型21に設けられたエジェクタスリーブ25を前進させて無理抜き成形品100を可動側金型から突き出すことで金型20から離型させる(
図2(c),(d))。
図2(c)に示すように、膨出部101は、突き出される際に可動側金型21の内面にあたり、それにより成形品100の先端部分が内側にたわんだ状態に変形する。膨出部101が可動側金型21の端部を通過すると、無理抜き成形品100は元の状態に戻る。
【0011】
この際、膨出部101が数ミリメートル程度の高さを有すると、無理抜き成形品100を金型20から離型させる際に無理抜き成形品100の先端部分は内側により大きくたわんだ状態となる。この場合、材料の剛性又は靱性によっては、離型後も変形したままになってしまったり、表面に傷が付いてしまったり、成形品に割れが発生してしまったりすることがある。そこで、弾性率が低い材料を用いて成形品をたわみやすくし、それにより無理抜き後に変形が残ることを防ぐことが検討されている。しかし、材料の弾性率が低い場合は、得られる製品に求められる剛性を満足できない場合がある。加えて、本発明者の研究により、常温での材料の弾性率が低い場合でも、実際に無理抜きが行われる離型時の加工温度のような100℃以上の高温での弾性率を考慮しなくては、無理抜き後に変形が必ずしも抑えられる訳ではないことがわかった。本発明者は、さらに研究を進め、常温での曲げ弾性率を所定の範囲にするとともに、常温での曲げ弾性率と高温での曲げ弾性率とを所定の関係にすることで、数ミリメートル程度の高さの膨出部を有している成形品を金型から無理抜きする場合でも、離型による無理抜き成形品の変形を防ぐことができ、かつ得られた無理抜き成形品の剛性を満足させることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
(曲げ弾性率)
本実施形態に係る無理抜き成形品用樹脂組成物は、ISO178に準拠して測定した23℃における曲げ弾性率(以下、単に「23℃における曲げ弾性率」ともいう。)が8GPa以上であり、ISO178に規定の曲げ試験方法に準じて、環境温度を150℃で測定した曲げ弾性率(以下、単に「150℃における曲げ弾性率」ともいう。)が、ISO178に準拠して測定した23℃における曲げ弾性率の40%未満である。23℃における曲げ弾性率が8GPa未満である場合や、150℃における曲げ弾性率が23℃における曲げ弾性率の40%以上である場合、金型からの離型後の成形品の剛性を高める効果と、離型による成形品の変形を防ぐ効果とを両立することが難しい。
【0013】
23℃における曲げ弾性率は、成形品の剛性を高める観点から、好ましくは、8.5GPa以上であり、より好ましくは、9.5GPa以上である。10GPa以上、又は12GPa以上とすることもできる。23℃における曲げ弾性率の上限値は特に限定されないが、二次加工等を行う場合には、加工性の点で、20GPa以下、又は15GPa以下とすることができる。
【0014】
150℃における曲げ弾性率の23℃における曲げ弾性率に対する割合は、好ましくは、35%以下であり、より好ましくは30%以下である。下限値は特に限定されないが、離型時の突出しにより成形品が軸方向に圧縮または延伸されることで変形するのを抑制する点で、10%以上、又は20%以上とすることができる。
【0015】
150℃における曲げ弾性率は、無理抜きによる成形品の変形をより防ぐ点で、好ましくは、5GPa以下であり、より好ましくは4GPa以下、さらに好ましくは3GPa以下である。150℃における曲げ弾性率の下限値は、特に限定されないが離型時の突出しにより、成形品が軸方向に変形するのを抑制する点で、1GPa以上(例えば2GPa以上)とすることができる。
【0016】
(曲げ破断歪)
本実施形態に係る樹脂組成物は、ISO178に規定の曲げ試験方法に準じて、環境温度を150℃として測定した曲げ破断歪(以下、単に「150℃における曲げ破断歪」ともいう。)が、4%以上であることが好ましく、5%以上であることがより好ましく、5.5%以上であることがさらに好ましい。150℃における曲げ破断歪を4%以上とすることで、無理抜きによる成形品の変形をより小さくすることができる。また、150℃における曲げ破断歪がより大きい材料を用いることで、膨出部の高さが特に高い成形品においても、離型時に成形品に割れが発生することを抑制しやすくなる。150℃における曲げ破断歪の上限は、特に限定されない。
【0017】
曲げ弾性率や曲げ破断歪の調整は、特に限定されず、樹脂組成物に含まれる樹脂の種類、分子量、溶融粘度、含有量等、充填剤又は添加剤の種類や含有量等を、種々調整することにより行うことができる。例えば、曲げ弾性率を高くする方法としてはガラス繊維等の無機充填剤を添加することが挙げられ、曲げ弾性率を低くするにはエラストマー等の軟質材料の添加や、熱可塑性樹脂として高分子量のものを用いるといった方法が挙げられる。
【0018】
(変形率)
本実施形態に係る樹脂組成物は、無理抜きによる離型時の成形品の変形をさらに抑制する点で、無理抜き方式により金型から離型した後の成形品の、スライド方式により金型から離型した後の成形品に対する変形率が、40%以下であることが好ましく、38%以下であることがより好ましい。
【0019】
変形率は、後述する実施例に記載のように、下記式から算出することができる。
((A−B)/2h)×100(%)
但し、Aは、スライド構造金型を用いて作製された成形品の膨出部外径(単位:mm)であり、Bは、無理抜き金型を用いて作製された成形品の膨出部外径(単位:mm)である。また、hは、スライド構造金型による成形品の膨出部の高さであり、膨出部の外径Aと膨出部以外の円筒部の外径R1(
図1(b)参照)から、(A−R1)/2にて求めた値(単位:mm)である。
【0020】
(変形回復率)
本実施形態に係る樹脂組成物は、無理抜きによる成形品の変形をさらに抑制する点で、ISO178に規定の曲げ試験方法に準じて、環境温度を150℃にて、変形量5.9mm(付加歪量3.45%)となるまで荷重を付与してから除荷した後、環境温度150℃で10分間放置後に測定した残存変形量Y(mm)を用いて、(5.9−Y)/5.9×100(%)で算出される変形回復率が80%以上であることが好ましく、82%以上であることがより好ましい。
【0021】
変形回復率を80%以上とすることで、離型による初期の変形を抑制できるだけでなく、流体配管用ポート部品のように、他の部材と嵌合および締結させて用いられる成形品において、他の部材との嵌合や締結によって受けた歪による変形への耐性の面でも有利となる。
【0022】
(樹脂)
樹脂組成物に含まれる樹脂としては、射出成形に用いることができる熱可塑性樹脂であればよく、特に限定されない。熱可塑性樹脂としては、ポリアミド、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アクリル、ポリオレフィン、アラミド、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアリーレンサルファイド、ポリアセタール、液晶ポリマー、ポリイミド等が挙げられる。これらは単独又は2種以上組み合わせて使用することが可能である。中でも、耐熱性及び耐薬品性に優れた成形品を得ることができる点でポリアリーレンサルファイドやポリアミドを含むことが好ましい。よって、樹脂としては、用途に応じて、ポリアリーレンサルファイド及びポリアミドから選ばれる少なくとも一種の樹脂を含むことが好ましい。
【0023】
ポリアリーレンサルファイドは、一般にその製造方法により、実質上線状で分岐や架橋構造を有しない分子構造のものと、分岐や架橋を有する構造のものが知られているが、その何れのタイプであってもよい。
【0024】
ポリアミドとしては、ポリアミド3、ポリアミド4、ポリアミド46、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド11、ポリアミド12等の脂肪族ポリアミド、芳香族ジカルボン酸(例えば、テレフタル酸及び/又はイソフタル酸)と脂肪族ジアミン(例えば、ヘキサメチレンジアミン)とから得られるポリアミド、脂肪族ジカルボン酸(例えば、アジピン酸)と芳香族ジアミン(例えば、メタキシリレンジアミン)とから得られるポリアミド、芳香族及び脂肪族ジカルボン酸(例えば、テレフタル酸とアジピン酸)と脂肪族ジアミン(例えば、ヘキサメチレンジアミン)とから得られるポリアミド及びこれらの共重合体等が挙げられる。また、ポリアミドハードセグメントとポリエーテル成分等の他のソフトセグメントの結合したポリアミド系ブロックコポリマーの使用も可能である。これらのうち、耐熱性や耐薬品性の観点では、モノマーとして少なくとも一種の芳香族化合物を用いた、いわゆる芳香族ポリアミドが好ましい。
【0025】
樹脂組成物に含まれる樹脂の溶融粘度は、310℃及びせん断速度1216sec
−1で測定した溶融粘度が、40Pa・s以上260Pa・s以下であることが好ましく、100Pa・s以上200Pa・s以下であることがより好ましく、120Pa・s以上180Pa・s以下であることがさらに好ましい。この範囲にすることで、良好な成形性を確保しつつ、離型時の変形や割れを抑制することができる。樹脂組成物は、上記範囲の溶融粘度を有する樹脂を少なくとも一種含むことができる。
【0026】
樹脂の含有量は、樹脂の特性を十分発揮する点で、全樹脂組成物中40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることがさらに好ましい。
【0027】
(充填剤)
樹脂組成物は、得られる成形品の強度を高めるために、無機充填剤を含有してもよい。無機充填材としては、例えば、繊維状、粉粒状又は板状の無機充填剤を用いることができる。繊維状無機充填剤としては、ガラス繊維、アスベスト繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化珪素繊維、硼素繊維、チタン酸カリウム繊維、さらにステンレス、アルミニウム、チタン、銅、真鍮等の金属の繊維状物等を例示することができる。また、粉粒状充填剤としては、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ミルドガラスファイバー、ガラスバルーン、ガラス粉、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、カオリン、タルク、クレー、珪藻土、ウォラストナイト等の珪酸塩、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、アルミナ等の金属の酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の金属の炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の金属の硫酸塩、その他フェライト、炭化珪素、窒化珪素、窒化硼素、各種金属粉末等を例示することができる。また、板状充填剤としては、マイカ、ガラスフレーク、各種の金属箔等を例示することができる。これらの無機充填剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用することができる。
【0028】
無機充填剤の大きさは、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、特に限定されない。例えば、繊維状充填剤の平均径は、1μm〜30μm(好ましくは3μm〜20μm)程度とすることができ、平均長は、例えば、100μm〜5mm(好ましくは300μm〜4mm、さらに好ましくは500μm〜3.5mm)程度とすることができる。また、板状又は粉粒状充填剤の平均一次粒子径は、例えば、1μm〜500μm、好ましくは3μm〜500μm、又は5μm〜500μm程度とすることができる。10μm〜500μm、15μm〜100μm程度とすることもできる。なお、繊維状充填剤の平均径と平均長、並びに板状又は粉状充填剤の平均一次粒子径は、樹脂組成物中に配合される前の繊維状充填剤、板状又は粉状充填剤について、CCDカメラで撮影した画像を解析し、加重平均により算出した値である。
【0029】
無機充填材の含有量は、特に限定されないが、無理抜き後の成形品に変形が残ることを防ぎつつ成形品の強度をより高める点で、上記した樹脂100質量部に対して、20〜150質量部であることが好ましく、30〜120質量部であることがより好ましく、40〜100質量部であることがさらに好ましい。
【0030】
(熱可塑性エラストマー)
樹脂組成物は、曲げ弾性率や曲げ破断歪を調整するため、熱可塑性エラストマーを含有してもよい。熱可塑性エラストマーの種類は特に制限されず、例えば、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー及びウレタン系エラストマー等が挙げられる。
【0031】
オレフィン系エラストマーとして好ましいものは、エチレン及び/又はプロピレンを主成分とする共重合体であり、具体的にはエチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−オクテン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0032】
スチレン系エラストマーとしては、スチレン等のビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックと未水素化及び/又は水素化した共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックとからなるブロック共重合体が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0033】
ポリエステル系エラストマーの例としては、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートといった芳香族ポリエステルをハードセグメントとし、ポリエチレングリコールやポリテトラメチレングリコールといったポリエーテル、またはポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリカプロラクトンといった脂肪族ポリエステルをソフトセグメントとするブロック共重合体が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0034】
ポリアミド系エラストマーの例としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12などをハードセグメントとし、ポリエーテルまたは脂肪族ポリエステルをソフトセグメントとするブロック共重合体が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0035】
ウレタン系エラストマーの例としては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等のジイソシアネートとエチレングリコール、テトラメチレングリコール等のグリコールとを反応させることによって得られるポリウレタンをハードセグメントとし、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルもしくはポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリカプロラクトン等の脂肪族ポリエステルをソフトセグメントとするブロック共重合体が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0036】
熱可塑性エラストマーの含有量は、好ましくは、樹脂100質量部に対して、1〜50質量部であり、より好ましくは、5〜30質量部である。
【0037】
(その他の添加材)
樹脂組成物は、必要に応じて、酸化防止剤、耐候安定剤、分子量調整剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、染料、顔料、潤滑剤、結晶化促進剤、結晶核剤、近赤外線吸収剤、難燃剤、難燃助剤、着色剤等を含有することができる。
【0038】
(樹脂組成物)
樹脂組成物の形態は、粉粒体混合物であってもよいし、ペレット等の溶融混合物(溶融混練物)であってもよい。樹脂組成物の製造方法は特に限定されるものではなく、当該技術分野で知られている設備及び方法を用いて製造することができる。例えば、必要な成分を混合し、1軸又は2軸の押出機又はその他の溶融混練装置を使用して混練し、成形用ペレットとして調製することができる。押出機又はその他の溶融混練装置は複数使用してもよい。また、全ての成分をホッパから同時に投入してもよいし、一部の成分はサイドフィード口から投入してもよい。
【0039】
(用途)
本実施形態に係る樹脂組成物は、種々の用途に用いることができる。特に、樹脂組成物は、無理抜き方式により金型から離型しても離型後の成形品の変形を防ぐことができ、かつ得られた成形品の剛性を満足させることができるので、射出成型後に無理抜き方式で金型から離形させる成形品(無理抜き成形品)の製造に適している。無理抜き成形品用途としては、例えば、流体配管部品用途(流体配管のジョイント部品用途、流体配管用ポート部品用途)等に用いることができる。流体配管部品用途としては、例えば、冷温水配管部品用途を挙げることができる。
【0040】
[成形品]
本実施形態に係る無理抜き成形品は、上記した樹脂組成物を用いて成形された無理抜き成形品である。すなわち、上記した樹脂組成物を射出成形した後、金型から無理抜き方式で離型させて得られる成形品である。無理抜き成形品であるか否かは、成形品表面に金型のつなぎ目であるパーティングラインに由来する線状の跡やバリが存在するか否かで判断することができる。
【0041】
無理抜き成形品の形状及び大きさは、特に限定されないが、流体配管部品とする場合、例えば、外径8〜40mm、内径4〜36mm、高さ25〜40mmの略円筒形状の流体配管部品とすることができる。無理抜き成形品は、先端部分よりも中央部分の方が膨らんでいる形状を有していてもよく、バルジ、ビード、スプール等の一般的な先端加工が施されていてもよい。
【0042】
無理抜き成形品は、表面に0.5mm以上3mm以下の高さを有する膨出部を有していてもよい。なお、膨出部の「高さ」は、
図1(b)に示すように、無理抜き成形品10の膨出部11の外径A(
図3参照)と膨出部以外の円筒部の外径R1から、(A−R1)/2にて求めた値とする。膨出部は、無理抜き成形品の外周の少なくとも一部に形成されていてもよく、全周に亘って形成されていてもよい。膨出部がバルジ、ビード、スプール等を構成する場合、膨出部は無理抜き成形品の片側の端部付近に形成されていてもよい。バルジ、ビード、スプール等を有する無理抜き成形品は、流体配管用ポート部品として好適に用いることができる。
【0043】
無理抜き成形品は、バルジ等の膨出部を有する場合、可動側金型のエッジ部分に形成される部分の外表面が、緩やかなカーブとなるフランジ状に外側に張り出していることが好ましい。無理抜き成形品の可動側金型のエッジ部分に形成される部分の外表面が、緩やかなカーブとなるフランジ状に外側に張り出している場合、射出成形時に用いられる可動側金型のエッジは面取りされたように略円弧状に形成されている。そのため、無理抜き成形品を金型から無理抜きで離型させる場合に、膨出部の表面が可動側金型のエッジで擦れて傷が付いてしまうことを防ぐことができる。フランジ状の部分の曲率半径rは、0.1mm以上であることが好ましい。
【0044】
図1に、本実施形態に係る無理抜き成形品の一例を示す。
図1(a)は無理抜き成形品10の斜視図であり、(b)は(a)におけるX−X’線視断面図でり、(c)は(b)におけるY視拡大図であり、(d)は(b)におけるZ視拡大図である。
図1(a)〜(d)に示すように、無理抜き成形品10は、外径R1(膨出部11及びフランジ状部分が形成されていない、円筒部分の外径)が38mm、内径R2が32.8mm、高さHが35mmの略円筒形状である。無理抜き成形品10の片側の端部には高さhが1mmで角度θ1が30度、角度θ2が15度である山型の膨出部11が、外周の全周に亘って環状に形成されている。無理抜き成形品10の、膨出部11が形成されている側と反対側の端部は、緩やかなカーブとなるようにフランジ状に外側に張り出している形状になっている。フランジ状部分の曲率半径rは、3mmである。
【0045】
[成形品の製造方法]
無理抜き成形品の製造方法は、上記した樹脂組成物を射出成形する工程と、得られた成形品を金型から無理抜き方式により離型させる工程とを有する。射出成形する工程における金型温度は、樹脂組成物が含有する樹脂に応じて適宜設定することができる。例えば、PPS及び/又は芳香族ポリアミドを含有する場合は、金型温度は130〜160℃程度(例えば150℃)とすることができる。
【0046】
高さ0.5mm以上の膨出部を有する成形品を得る場合、膨出部に対応する金型内面には深さ0.5mm以上の凹部が設けられている。金型は、パーティング面において、キャビティ開口端のエッジ部分が円弧状に面取りされていることが好ましい。金型のエッジ部分が面取りされていることで、金型から成形品が取り出される際に成形品の膨出部が金型のエッジ部分で擦れて表面に傷が付くことを防いで、傷が少ない無理抜き成形品を得ることができる。なお、当該キャビティ開口端は、無理抜き成形品が例えば流路配管部品として用いられるものである場合には、配管の端部に相当する部分となるため、配管自体の耐久性を考慮し、応力集中を緩和する目的で面取り(R付与)を行う場合がある。このような応力集中緩和のための面取りをもって、エッジ部分の面取りを兼ねることも可能であるが、膨出部の傷付き抑制のための面取りは、応力集中緩和のための面取りに比べ、曲率半径が小さい場合(例えば1mm以下)でも効果を得ることができる。
【0047】
金型から成形品を無理抜きして離型させる方法は、金型に備えられた可動式のエジェクタスリーブ等を用いて成形品を突き出して(押し出して)離型させてもよいし、金型の外側から成形品を引き出して離型させてもよい。
【実施例】
【0048】
以下実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0049】
[材料]
使用した成分の詳細は以下のとおりである。なお、ポリアリーレンサルファイド樹脂の溶融粘度は、310℃及びせん断速度1216sec
−1で測定した値である。
(ポリアリーレンサルファイド樹脂)
PPS1:ポリプラスチックス株式会社製、溶融粘度50Pa・sのポリアリーレンサルファイド樹脂
PPS2:ポリプラスチックス株式会社製、溶融粘度150Pa・sのポリアリーレンサルファイド樹脂
PPS3:ポリプラスチックス株式会社製、溶融粘度250Pa・sのポリアリーレンサルファイド樹脂
(熱可塑性エラストマー)
住友化学株式会社製、「ボンドファースト7L」、共重合成分として、エチレン、メタクリル酸グリシジルエステル、及びアクリル酸メチルを含むオレフィン系エラストマー
(無機充填剤)
日本電気硝子株式会社製、「ECS03T−717」、平均長3mm、平均直径13μmのガラス繊維
ポッターズ・バロティーニ株式会社製、「EMB−10」、平均粒子径5μmのガラスビーズ
東洋ファインケミカル株式会社製、「ホワイトンP−30」、平均粒子径5μmの炭酸カルシウム
【0050】
[実施例1〜6、比較例1〜5]
表1に示す成分を表1に示す組成(質量部)でドライブレンドし、30mmφのスクリューを有する2軸押出機((株)日本製鋼所製)にホッパから供給して320℃で溶融混練し、ペレット状の樹脂組成物を得た。
【0051】
[評価]
実施例及び比較例で得られた樹脂組成物のペレットについて、140℃で3時間乾燥後、シリンダ温度320℃、金型温度150℃の条件にて、ISO3167に規定の曲げ試験片(80mm×10mm×4mm)を射出成形し、ISO178に準拠して23℃における曲げ弾性率を測定した。また、環境温度を150℃にする以外はISO178に規定の曲げ試験方法に準じて、150℃における曲げ弾性率及び150℃における曲げ破断歪を測定した。
また、以下に基づいて、成形品の変形率、変形回復率、及び高膨出部離型時の割れ発生を測定した。結果を表1に示す。
【0052】
(変形率)
実施例及び比較例で得られた樹脂組成物のペレットについて、140℃で3時間乾燥後、シリンダ温度320℃、金型温度150℃の条件にて射出成形を行い、
図1に示した形状の無理抜き成形品10を無理抜きで製造して試験片とした。また、各樹脂組成物について、
図1の無理抜き成形品10と同じ形状を有する試験片を、無理抜きでなくスライド構造の金型にても製造した。得られた各試験片について、株式会社東京精密製、真円度測定機、ロンコムNEX100SD−11を用いて、膨出部頂点に沿って測定した外周形状から平均直径(膨出部外径)を求めた。
図3に変形率の測定方法についての説明図を示す。
図3に示すように、スライド構造金型による成形品の膨出部外径をA(単位:mm)、無理抜き金型による成形品の膨出部外径をB(単位:mm)とし、また、スライド構造金型による成形品の膨出部の高さh(膨出部の外径Aと膨出部以外の円筒部の外径R1(
図1(b)参照)から、(A−R1)/2にて求めた値(単位:mm))をもとに、((A−B)/2h)×100(%)を算出し、これを変形率とした。
【0053】
(変形回復率)
図4に変形回復率の測定方法についての説明図を示す。実施例及び比較例で得られた樹脂組成物のペレットについて、140℃で3時間乾燥後、シリンダ温度320℃、金型温度150℃の条件にて、ISO3167に規定の曲げ試験片200(80mm×10mm×4mm)を射出成形し、ISO178に規定の曲げ試験方法に準じて、環境温度150℃にて、変形量5.9mm(付加歪量3.45%)となるまで荷重を付与してから除荷した後、環境温度150℃で10分間放置後に、変形の残存量Y(mm)を測定した。この残存変形量Yを用いて(5.9−Y)/5.9×100(%)を算出し、これを変形回復率とした。
【0054】
(高膨出部離型時の割れ発生)
実施例及び比較例で得られた樹脂組成物のペレットについて、140℃で3時間乾燥後、シリンダ温度320℃、金型温度150℃の条件にて射出成形を行い、
図1の試験片の膨出部の高さを1mmから1.6mmに変更した形状の試験片を無理抜きで製造し、離型後の成形品の割れの有無を目視で観察した。各樹脂組成物につき、試験片を3個製造し、3個のうち全ての成形品において成形品に割れが発生していないものを1、少なくとも1個の成形品において割れが発生したものを2とした。
【0055】
【表1】
【0056】
表1に示すとおり、実施例1〜6の樹脂組成物は、変形率が38%以下であり無理抜き成形品の離型による変形を防ぐことができるとともに、変形回復率が大きく他の部材との嵌合や締結によって受けた歪による変形への耐性の面でも有利である。さらに、23℃における曲げ弾性率が8GPa以上であるので、成形品が優れた剛性を有している。すなわち、常温での曲げ弾性率を所定の範囲にするとともに、常温での曲げ弾性率と高温での曲げ弾性率とを所定の関係にすることで、無理抜き成形品の離型による変形を防ぐことができ、かつ得られた無理抜き成形品の剛性を満足することができる。なお、変形回復率は、言い換えると変形への抵抗を示す指標であり、本来であれば弾性率が高いほど変形させた時の反力は大きく、除荷した時の戻りも大きい、すなわち変形回復率は弾性率に比例すると考えられるが、今回、予想に反し弾性率の低い材料において、より変形回復率が高い結果となった。