(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は物理特性及び低温特性に優れる変性クロロスルホン化ポリエチレンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記した課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、クロロスルホン化ポリエチレンとアクリル系化合物のグラフト共重合体であり、ポリマー中にアクリル系化合物5.0〜30.0重量%、塩素15.0〜30.0重量%、硫黄0.1〜1.0重量%を含有することで、物理特性と低温特性を両立できることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。すなわち、本発明は、クロロスルホン化ポリエチレンとアクリル系化合物のグラフト共重合体であることを特徴とする変性クロロスルホン化ポリエチレンである。
【0008】
以下に、本発明について詳細に説明する。
【0009】
本発明は、クロロスルホン化ポリエチレンとアクリル系化合物のグラフト共重合体である変性クロロスルホン化ポリエチレンである。
【0010】
クロロスルホン化ポリエチレンは、原料であるポリエチレンを塩素化及びクロロスルホン化して得られるクロロスルホン化ポリエチレンである。原料であるポリエチレンには、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)等が挙げられ、これらを単独または併用して用いることができるが、良好な物理特性と低温特性を両立させるためには高密度ポリエチレン(HDPE)が好ましい。
【0011】
原料であるポリオレフィンを塩素化及びクロロスルホン化反応を行う際、溶剤としては、例えば、1,1,2−トリクロロエタン、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロルエタン、1,1,1−トリクロロエタン、テトラクロルエタン、モノクロルベンゼン、ジクロルベンゼン、フロロベンゼン、ジクロロジフロロメタン、トリクロロフロロメタン等の塩素化反応に対し不活性な溶媒を単独又は2種類以上を併用してもよい。
【0012】
塩素化およびクロロスルホン化を行う反応工程はラジカル発生剤を触媒として、塩素と亜硫酸ガス、塩素と塩化スルフリル、亜硫酸ガスと塩化スルフリル、塩化スルフリル単独、又は塩素と亜硫酸ガスと塩化スルフリルを、溶剤に溶解又は懸濁したポリオレフィンと反応させる。塩化スルフリルを添加する場合には必要に応じて助触媒としてのピリジン、キノリン等のアミノ化合物が添加される。反応温度は塩素化反応及びクロロスルホン化反応が進行するものであれば特に限定するものではなく、例えば、40〜150℃であり、適度な塩素化反応が進行するために好ましくは60〜130℃である。反応圧力は塩素化及びクロロスルホン化反応が進行すれば特に限定するものではなく、例えば、0〜1.0メガパスカルであり、適度な塩素化及びクロロスルホン化反応が進行するために好ましくは0〜0.7メガパスカルである。
【0013】
ラジカル発生剤は塩素化反応が進行するものであれば特に限定するものではなく、例えば、アゾ系化合物、有機過酸化物等が挙げられる。アゾ系化合物としては、例えば、α,α’−アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等が挙げられ、有機過酸化物としては、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化アセチル、過酸化t−ブチル、過安息香酸t−ブチル等が挙げられる。取り扱い上安定性が高いため、好ましくはアゾ化合物であり、適度な塩素化及びクロロスルホン化反応が進行するため、特に好ましくはα,α’−アゾビスイソブチロニトリルである。
【0014】
塩素化およびクロロスルホン化を行う反応工程における、塩素と亜硫酸ガス、塩素と塩化スルフリル、亜硫酸ガスと塩化スルフリル、塩化スルフリル単独、又は塩素と亜硫酸ガスと塩化スルフリルとラジカル開始剤を添加する際の添加方法は、塩素化およびクロロスルホン化反応が進行すれば特に限定されないが、明色性のためにはラジカル開始剤を加える前に塩素と亜硫酸ガス、塩素と塩化スルフリル、亜硫酸ガスと塩化スルフリル、塩化スルフリル単独、又は塩素と亜硫酸ガスと塩化スルフリル等を先に添加するのが好ましい。工程終了時にはラジカル開始剤添加を停止後、塩素と亜硫酸ガス、塩素と塩化スルフリル、亜硫酸ガスと塩化スルフリル、塩化スルフリル単独、又は塩素と亜硫酸ガスと塩化スルフリル等の添加を停止するのが好ましく、これらの添加方法は単独または併用しても良い。
【0015】
本発明のポイントはアクリル系化合物をグラフト重合によりクロロスルホン化ポリエチレンに導入させることで、物理特性と低温特性に優れる変性クロロスルホン化ポリエチレンを得ることができる点である。
【0016】
本発明の変性クロロスルホン化ポリエチレン中のアクリル系化合物のグラフト含量としては、クロロスルホン化ポリエチレンとしての特性を維持しつつ、優れた物理特性と低温特性を両立させるためには5.0〜30.0重量%であり、9.0〜20.0重量%が好ましい。
【0017】
本発明の変性クロロスルホン化ポリエチレンの塩素量は、優れた物理特性と低温特性を両立させるためには15.0〜35.0重量%であり、20.0〜29.0重量%が好ましい。また、本発明の変性クロロスルホン化ポリエチレンの硫黄量は、優れた物理特性と低温特性を両立させるためには、0.1〜1.0重量%であり、0.2〜0.6が好ましい。
【0018】
本発明の変性クロロスルホン化ポリエチレンの残存結晶融解熱量及びガラス転移温度(Tg)は、良好な物理特性と低温特性を両立させるためには残存結晶融解熱量が20.0mJ/mg以下、Tgが−35.0℃以下である。
【0019】
本発明の変性クロロスルホン化ポリエチレンは、必要に応じて、以下に説明する、分子量調節剤、酸化防止剤、その他の単量体残基等を含有してもよい。
【0020】
本発明の変性クロロスルホン化ポリエチレンは、クロロスルホン化ポリエチレンの存在下、ラジカル発生剤とアクリル系化合物をグラフト重合することにより得ることができる。
【0021】
変性クロロスルホン化ポリエチレンの製造に用いられるクロロスルホン化ポリエチレンは、前に説明したものがあげられる。そのクロロスルホン化ポリエチレンの塩素量は低温性や機械特性を考慮し、15.0〜40.0重量%であり、20.0〜35.0重量%が好ましい。また、そのクロロスルホン化ポリエチレンの硫黄量は、架橋性や機械物性を考慮し、0.1〜2.0重量%であり、0.4〜1.5重量%が好ましい。
【0022】
クロロスルホン化ポリエチレンにグラフトさせるアクリル系化合物としては例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−ペンチル、アクリル酸n−デシル、アクリル酸n−ドデシル、アクリル酸n−オクタデシル、等を例示することができこれらを単独或いは2種類以上併用してもよいが、良好な物理特性及び低温特性を維持するためにはアクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルをそれぞれ単独或いは併用することが好ましい。
【0023】
上記アクリル系化合物以外に変性クロロスルホン化ポリエチレンとしての特性を損なわない範囲で単量体を加えることができ、例えば(メタ)アクリル酸1,1−ジヒドロペルフルオロエチル、(メタ)アクリル酸1,1−ジヒドロペルフルオロプロピル、(メタ)アクリル酸1,1,5−トリヒドペルフルオロヘキシル、(メタ)アクリル酸1,1,2,2−テトラヒドロペルフルオロプロピル、(メタ)アクリル酸1,1,7−トリヒドロペルフルオロヘプチル、(メタ)アクリル酸1,1−ジヒドロペルフルオロオクチル、(メタ)アクリル酸1,1−ジヒドロペルフルオロデシル、(メタ)アクリル酸1−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジブチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸エステル類以外の成分としてはメチルビニルケトン等のアルキルビニルケトン化合物、ビニルエチルエーテル等のアルキルビニルエーテル化合物、アリルメチルエーテル等のアリルエーテル化合物、α−メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレンなどのビニル芳香族化合物、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルニトリル化合物、アクリルアミド、プロピレン、ブダジエン、イソプレン、ペンタジエン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、プロピオン酸ビニル、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水イタコン酸等を例示することができる。これら上記の単量体としては総モノマー中30重量%以下の割合で加えることが好ましい。
【0024】
グラフト重合の方法としては、特に限定するものではないが、例えば、ラジカルグラフト重合として、塩素化ポリオレフィンを溶媒に溶解、又は押出し機などを用いて攪拌しながら、一括又は連続で、アクリル系化合物及び必要に応じてその他の単量体を添加して、ラジカル発生剤により重合し、所定の重合転化率に到達したところで、酸化防止剤を添加し、必要により溶剤又は未反応モノマーを、洗浄、減圧除去し、乾燥すること等によって、本発明の変性クロロスルホン化ポリエチレンを得ることができる。ラジカル発生剤及びその他の単量体は、必要に応じて、一括又は連続で添加することができる。
【0025】
上記ラジカル発生剤としては、例えば、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジラウリルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1、−ビス(t−ブチルパーオキシ)−シクロヘキサン、シクロヘキサノンパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、クミルパーオキシオクトエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、クミルパーオキシオクトエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、クミルパーオキシオクトエート、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素などのパーオキサイド類、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2、2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、1−[(1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4‘−アゾビス(4−シアノバレリックアシッド)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2.2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1’−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジサルフェートジハイドレート、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}ジハオドロクロライド、2,2’−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−メチルプロパン)ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]テトラハイドレート等のアゾ化合物等が挙げられ、これらを単独または併用して用いることができ、場合によっては、硫酸第一鉄等の第一鉄塩、ハイドロサルファイトナトリウム、アスコルビン酸、エリソルビン酸、アニリン、三級アミン等の還元剤を添加して重合を行うことができる。
【0026】
また、分子量を調整するため、及び分子鎖間架橋を抑制するため、重合反応時に分子量調節剤を添加しても良い。分子量調節剤としては、例えば、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド、ジエチルキサントゲンジスルフィド、ジエチルチウラムジスルフィド、2,2’−ジチオジプロピオン酸、3,3’−ジチオジプロピオン酸、4,4’−ジチオジブラン酸、2,2’−ジチオビス安息香酸のどのジスルフィド類、n−ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、チオグリコール酸、チオリンゴ酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオサリチル酸、3−メルカプト安息香酸、4−メルカプト安息香酸、チオマロン酸、ジチオカハク酸、チオマレイン酸、チオマレイン酸無水物、ジチオマレイン酸、チオグルタール酸、システイン、ホモシステイン、6−メルカプトテトラゾール酢酸、3−メルカプト−1−プロパンスルホン酸などのメルカプタン類、ジフェニルエチレン、p−クロロジフェニルエチレン、p−シアノジフェニルエチレン、α−メチルスチレンダイマー、ベンジルジチオベンゾエート、有機テルル化合物、イオウ等が挙げられ、これらを単独または併用して用いることができる。
【0027】
反応温度は特に限定するものではないが、重合速度、グラフト効率及び分解等の副反応の抑制を考慮すると、30〜150℃が好ましく、50〜120℃が更に好ましい。
【0028】
上記酸化防止剤とは、特に限定するものではなく、ポリマーの酸化防止剤として一般に利用されているもので、例えば、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2−ビス〔{[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]オキシ}メチル〕プロパン−1,3−ジオール1,3−ビス[3−(tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、4,4′−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4′−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−tert−ブチル−5−メチル−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス−(ノルマルオクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド)、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルホスホネート−ジエチルエステル、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト、2,4−ビス〔(オクチルチオ)メチル〕−オルト−クレゾール、イソオクチル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス〔メチレン3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、3,9−ビス[2−〔3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−プロピオニオキシ〕−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5・5〕ウンデカンなどのフェノール系酸化防止剤、2,2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル−ベンゾトリアゾール、4,4’−ビス−(2,2−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、ビス(1,2,2,6、6−ペンタメチル−4−ピペリジルデカンジオナートなどのアミン系酸化防止剤、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリチル−テトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)ジトリデシル−3,3’−チオジプロピオネート、2−メルカプトベンズイミダゾールなどのイオウ系酸化防止剤、トリスノニルフェニルフォスファイト、トリフェニルフォスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)フォスファイトなどのリン系酸化防止剤、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルなどの安定ラジカル系酸化防止剤等が挙げられる。
【0029】
ラジカルグラフト重合を溶媒中で行い、本発明の変性クロロスルホン化ポリエチレンを製造する場合、溶媒としては1,1,2−トリクロロエタン、ジクロロエタン、四塩化炭素、1,1,1−トリクロロエタン、テトラクロロエタン、テトラクロロエチレン、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、クロロフロオロベンゼン、トリメチルベンゼン、クロロナフタレン、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、メチルエチルケトン、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、テトラヒドロフラン、酢酸ブチル等を用いることができる。重合終了後、メタノール等の不溶性溶剤による析出、ドラムドライヤー、及びベント付き押出し機等を用いた濃縮、乾燥により目的とする変性クロロスルホン化ポリエチレンが得られる。
【0030】
本発明の変性クロロスルホン化ポリエチレンは、様々な異種ゴムとの積層体ホースや自動車関連部品等に用いることができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明の変性クロロスルホン化ポリエチレンは、良好な物理特性と低温特性を両立しており、様々な異種ゴムとの積層体ホースや自動車関連部品等の用途への使用が期待される。
【実施例】
【0032】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに制限されるものではない。
【0033】
なお、以下の実施例等で用いた値は以下の測定法で行ったものである。
【0034】
<グラフト重合におけるモノマーの重合率>
モノマーの重合率は、反応終了時の溶液を少量採取し、重合していないモノマー量を、ガスクロマトグラフィー(G−17A、島津製作所製)を用いて、ガスクロマトグラフィー分析を行うことにより求めた。
【0035】
昇温プログラム(アクリル系化合物)=80℃×5分ホールド後、5℃/分で250℃まで昇温
内部標準=クロロベンゼン
<塩素量の測定>
塩素量の測定は、最初に、吸収液として1.7重量%硫酸ヒドラジニウム水溶液15.0mlを入れた燃焼フラスコ内で得られた変性クロロスルホン化ポリエチレン30.0mgを酸素燃焼法に従い燃焼させ、30分静置した。次に、この吸収液を純水100.0mlで洗い出し、濃度0.05Nの硝酸銀水溶液で電位差滴定法により塩素イオンを定量することにより求めた。
【0036】
<アクリル系化合物の含有量の算出法>
変性クロロスルホン化ポリエチレン中のアクリル系化合物の含有量は塩素含量変化から次式を用いて算出される。
【0037】
(原料クロロスルホン化ポリエチレン塩素含量−変性クロロスルホン化ポリエチレン塩素含量)/(原料クロロスルホン化ポリエチレン塩素含量)×100
<硫黄量の測定>
硫黄量の測定は、3.0重量%の過酸化水素水10.0mlを吸収液として用い、純水約40.0mlで洗い出した後、酢酸1ml、2−プロパノール100.0ml、アルセナゾIII0.47mlを加えた。これを濃度0.01Nの酢酸バリウム溶液で光度滴定法により硫酸イオンを測定した。
【0038】
<ガラス転移温度及び残存結晶融解熱量の測定>
予め100℃で6分間熱プレスを行い、23℃で24時間静置した測定試料から10.0mgを計りとり、示差走査熱量計(セイコー電子工業株式会社 DSC200)に室温で装着し、液体窒素にて測定部を−120℃まで急冷し、昇温速度10℃/分、−110℃から160℃の条件で測定した。得られたDSC曲線において、その温度以下のベースラインとガラス転移領域の直線部分をそれぞれ外挿した交点融解吸熱ピークの開始点と終了点を結ぶ直線で囲まれた面積により熱量値を計算し、これを試料重量で除しmJ/mg単位に換算することにより融解熱量を求めた。融解吸熱ピーク開始点不明瞭な場合は、融解熱量ピークより高温側のベースラインを低温側に外装し、囲まれた面積より熱量値を計算し、これを試料重量で除しmJ/mg単位に換算することにより融解熱量を求めた。
【0039】
<常態物性評価>
変性クロロスルホン化ポリエチレンを表1に示す配合にてJIS−K 6299(2008年度版)に従い混練りを行い、得られたサンプルを厚み2mmの金型にて加硫を行った。その後、引張強さ(TB)、破断時伸び(EB)、100%引張応力(M100)はJIS−K 6251(2008年度版)に従い、引張速度500mm/min、23℃の条件にて評価した。
【0040】
【表1】
【0041】
実施例1
20リッターのグラスライニング製オートクレーブに1,1,2−トリクロロエタンを15.0kgと、密度が960kg/cm
3、メルトフローレート(MFR)が2.5g/10分の高密度ポリエチレンを2.25kg、クロロスルホン化反応の助触媒としてピリジンを0.2g添加した後、反応器のジャケットに蒸気を通し、110℃でポリエチレンを均一に溶解した。またこの間、反応器に10.0リッター/分の流速で窒素ガスを導入し、反応器に混入した空気を除去した。ラジカル発生剤として8.0gのα,α―アゾビスイソブチロニトリルを1,1,2−トリクロロエタン2.0kgに溶解した。この溶液を連続的に反応器へと添加しつつ、5.4kgの塩化スルフリルを別の投入口より反応器へ添加することにより反応を行う際、塩化スルフリルを22.0ml/分、α,α−アゾビスイソブチロニトリル溶液を5.0ml/分の流量で連続的に添加させ、反応中は反応容器の圧力を0.2メガパスカルに保った。反応終了後、反応系の圧力を常圧まで低下させ、その後常圧下で窒素を吹き込むことによって溶液中に残存する塩化水素、亜硫酸ガスを系外に排出した。その後、ドラム乾燥機にて生成物を単離し、クロロスルホン化ポリエチレンを得た。
【0042】
分析の結果、得られたクロロスルホン化ポリエチレンは30.1重量%の塩素と1.2重量%の硫黄を含有していた。
【0043】
次に、得られたクロロスルホン化ポリエチレンを用いてグラフト重合を実施した。
【0044】
窒素雰囲気下1Lのガラスフラスコにクロロスルホン化ポリエチレンを10.0g、ドデシルメルカプタン0.02g、1,1,2−トリクロロエタン160.0gを仕込み、内部を窒素で置換し、110℃に加熱した。その後、ラジカル開始剤0.25g(日油(株)、パーブチル−O、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート)、2−エチルヘキシルアクリレート10.0gを1,1,2−トリクロロエタン50.0gに溶かした溶液を、5時間かけて滴下して反応を実施した。5時間後の2−エチルヘキシルアクリレートの重合率は90%であった。得られた反応液を、濃縮、乾燥し、租ポリマーを取得した。さらに、得られたポリマーをシクロヘキサン/アセトンの混合溶剤で再沈殿精製を3回実施し、変性クロロスルホン化ポリエチレンを得た。
【0045】
得られた変性クロロスルホン化ポリエチレンの塩素量は25.7重量%、硫黄量は0.5重量%であり、塩素量から求めたアクリル系化合物の含有量は16.1重量%であった。残存結晶融解熱量は15.6mJ/mg、ガラス転移温度は−37.6℃であった。得られた変性クロロスルホン化ポリエチレンを用いて常態物性を測定した。評価結果を表2に示す。
【0046】
実施例2
2−エチルヘキシルアクリレートを5.0gに変更した以外は実施例1と同様にして変性クロロスルホン化ポリエチレンを得た。2−エチルヘキシルアクリレート重合率は100%であった。
【0047】
得られた変性クロロスルホン化ポリエチレンの塩素量は27.4重量%、硫黄量は0.6重量%であり、塩素量から求めたアクリル系化合物の含有量は9.2重量%であった。残存結晶融解熱量は17.9mJ/mg、ガラス転移温度は−35.2℃であった。得られた変性クロロスルホン化ポリエチレンを用いて常態物性を測定。評価結果を表2に示す。
【0048】
実施例3
2−エチルヘキシルアクリレートを15.0gに変更した以外は実施例1と同様にして変性クロロスルホン化ポリエチレンを得た。2−エチルヘキシルアクリレート重合率は90%であった。
【0049】
得られた変性クロロスルホン化ポリエチレンの塩素量は24.1重量%、硫黄量は0.4重量%であり、塩素量から求めたアクリル系化合物の含有量は20.0重量%であった。残存結晶融解熱量は11.7mJ/mg、ガラス転移温度は−39.4℃であった。得られた変性クロロスルホン化ポリエチレンを用いて常態物性を測定。評価結果を表2に示す。
【0050】
実施例4
20リッターのグラスライニング製オートクレーブに1,1,2−トリクロロエタンを15.0kgと、密度が958kg/cm
3、メルトフローレート(MFR)が4.3g/10分の高密度ポリエチレンを2.25kg、クロロスルホン化反応の助触媒としてピリジンを0.2g添加した後、反応器のジャケットに蒸気を通し、110℃でポリエチレンを均一に溶解した。またこの間、反応器に10.0リッター/分の流速で窒素ガスを導入し、反応器に混入した空気を除去した。ラジカル発生剤として6.0gのα,α―アゾビスイソブチロニトリルを1,1,2−トリクロロエタン2.0kgに溶解した。この溶液を連続的に反応器へと添加しつつ、4.2kgの塩化スルフリルを別の投入口より反応器へ添加することにより反応を行う際、塩化スルフリルを22.0ml/分、α,α−アゾビスイソブチロニトリル溶液を5.0ml/分の流量で連続的に添加させ、反応中は反応容器の圧力を0.2メガパスカルに保った。反応終了後、反応系の圧力を常圧まで低下させ、その後常圧下で窒素を吹き込むことによって溶液中に残存する塩化水素、亜硫酸ガスを系外に排出した。その後、ドラム乾燥機にて生成物を単離し、クロロスルホン化ポリエチレンを得た。分析の結果、得られたクロロスルホン化ポリエチレンは23.2重量%の塩素と1.0重量%の硫黄を含有していた。
【0051】
次に、得られたクロロスルホン化ポリエチレンを用いてグラフト重合を実施した。
【0052】
窒素雰囲気下1Lのガラスフラスコにクロロスルホン化ポリエチレンを10.0g、ドデシルメルカプタン0.02g、1,1,2−トリクロロエタン160.0gを仕込み、内部を窒素で置換し、110℃に加熱した。その後、ラジカル開始剤0.25g(日油(株)、パーヘキシル−O、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート)、2−エチルヘキシルアクリレート10.0gを1,1,2−トリクロロエタン50.0gに溶かした溶液を、5時間かけて滴下して反応を実施した。5時間後の2−エチルヘキシルアクリレートの重合率は93%であった。得られた反応液を、濃縮、乾燥し、租ポリマーを取得した。さらに、得られたポリマーをシクロヘキサン/アセトンの混合溶剤で再沈殿精製を3回実施し、変性クロロスルホン化ポリエチレンを得た。
【0053】
得られた変性クロロスルホン化ポリエチレンの塩素量は20.1重量%、硫黄量は0.2重量%であり、塩素量から求めたアクリル系化合物の含有量は15.4重量%であった。残存結晶融解熱量は19.6mJ/mg、ガラス転移温度は−39.8℃であった。得られた変性クロロスルホン化ポリエチレンを用いて常態物性を測定。評価結果を表2に示す。
【0054】
実施例5
20リッターのグラスライニング製オートクレーブに1,1,2−トリクロロエタンを15.0kgと、密度が957kg/cm
3、メルトフローレート(MFR)が3.6g/10分の高密度ポリエチレンを2.25kg、クロロスルホン化反応の助触媒としてピリジンを0.14g添加した後、反応器のジャケットに蒸気を通し、110℃でポリエチレンを均一に溶解した。またこの間、反応器に10リッター/分の流速で窒素ガスを導入し、反応器に混入した空気を除去した。ラジカル発生剤として8.9gのα,α−アゾビスイソブチロニトリルを1,1,2−トリクロロエタン2.0kgに溶解した。この溶液を連続的に反応器へと添加しつつ、6.0kgの塩化スルフリルを別の投入口より反応器へ添加することにより反応を行う際、塩化スルフリルを22.0ml/分、α,α―アゾビスイソブチロニトリル溶液を5ml/分の流量で連続的に添加させるが、塩化スルフリルの添加をα,α−アゾビスイソブチロニトリルの添加より2分先に添加させ、反応終了時はα,α−アゾビスイソブチロニトリルの添加を中止した後、2分後に塩化スルフリルの添加を停止させた。この間約3時間を要したが、反応容器の圧力を0.2メガパスカルに保った。反応終了後、反応系の圧力を常圧まで低下させ、その後常圧下で窒素を吹き込むことによって溶液中に残存する塩化水素、亜硫酸ガスを系外に排出した。その後、ドラム乾燥機にて生成物を単離し、クロロスルホン化ポリエチレンを得た。
【0055】
分析の結果、得られたクロロスルホン化ポリエチレンは33.4重量%の塩素と1.2重量%の硫黄を含有していた。
【0056】
次に得られたクロロスルホン化ポリエチレンを用いてグラフト重合を実施した。
【0057】
窒素雰囲気下1Lのガラスフラスコにクロロスルホン化ポリエチレンを10.0g、ドデシルメルカプタン0.02g、1,1,2−トリクロロエタン160.0gを仕込み、内部を窒素で置換し、110℃に加熱した。その後、ラジカル開始剤0.25g(日油(株)、パーブチル−O、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート)、2−エチルヘキシルアクリレート10.0gを1,1,2−トリクロロエタン50.0gに溶かした溶液を、5時間かけて滴下して反応を実施した。5時間後の2−エチルヘキシルアクリレートの重合率は92%であった。得られた反応液を、濃縮、乾燥し、租ポリマーを取得した。さらに、得られたポリマーをシクロヘキサン/アセトンの混合溶剤で再沈殿精製を3回実施し、変性クロロスルホン化ポリエチレンを得た。
【0058】
得られた変性クロロスルホン化ポリエチレンの塩素量は29.0重量%、硫黄量は0.52重量%であり、塩素量から求めたアクリル系化合物の含有量は15.2重量%であった。残存結晶融解熱量は10.8mJ/mg、ガラス転移温度は−35.2℃であった。得られた変性クロロスルホン化ポリエチレンを用いて常態物性を測定。評価結果を表2に示す。
【0059】
実施例6
グラフトモノマーをブチルアクリレートに変更した以外は実施例1と同様の手法により変性クロロスルホン化ポリエチレンを作成した。
【0060】
得られた変性クロロスルホン化ポリエチレンの塩素量は26.4重量%、硫黄量は0.5重量%であり、塩素量から求めたアクリル系化合物の含有量は15.3重量%であった。残存結晶融解熱量は16.0mJ/mg、ガラス転移温度は−36.5℃であった。得られた変性クロロスルホン化ポリエチレンを用いて常態物性を測定。評価結果を表2に示す。
【0061】
比較例1
2−エチルヘキシルアクリレートの添加量を1.25gに変更した以外は実施例1同様の手法により変性クロロスルホン化ポリエチレンを作成。
【0062】
得られた変性クロロスルホン化ポリエチレンの塩素量は29.6重量%、硫黄量は0.94重量%であり、塩素量から求めたアクリル系化合物の含有量は2.1重量%であった。残存結晶融解熱量は19.5mJ/mg、ガラス転移温度は−28.5℃であった。得られた変性クロロスルホン化ポリエチレンを用いて常態物性を測定。評価結果を表2に示す。
【0063】
比較例2
2−エチルヘキシルアクリレートの添加量を25.0gに変更した以外は実施例1同様の手法により変性クロロスルホン化ポリエチレンを作成。
【0064】
得られた変性クロロスルホン化ポリエチレンの塩素量は22.3重量%、硫黄量は0.18重量%であり、塩素量から求めたアクリル系化合物の含有量は35.1重量%であった。残存結晶融解熱量は9.5mJ/mg、ガラス転移温度は−41.5℃であった。得られた変性クロロスルホン化ポリエチレンを用いて常態物性を測定。評価結果を表2に示す。
【0065】
【表2】