(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6572563
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】樹脂組成物及び易剥離性フィルム
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20190902BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20190902BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20190902BHJP
C08L 23/10 20060101ALI20190902BHJP
C08L 23/08 20060101ALI20190902BHJP
【FI】
B32B27/32 E
B32B27/00 L
B65D65/40 D
C08L23/10
C08L23/08
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-45825(P2015-45825)
(22)【出願日】2015年3月9日
(65)【公開番号】特開2016-166270(P2016-166270A)
(43)【公開日】2016年9月15日
【審査請求日】2018年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】森下 功
(72)【発明者】
【氏名】幸田 真吾
【審査官】
安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−349743(JP,A)
【文献】
特開平03−072542(JP,A)
【文献】
特開平05−320441(JP,A)
【文献】
特開昭63−289038(JP,A)
【文献】
特開昭63−275656(JP,A)
【文献】
国際公開第2006/022256(WO,A1)
【文献】
国際公開第2010/079851(WO,A1)
【文献】
特開平01−308439(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/118762(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 27/32
B32B 27/00
B65D 65/40
C08L 23/08
C08L 23/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン(A)80〜98重量%及びエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(B)2〜20重量%を含み((A)と(B)の合計は100重量%)、エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化物(B)が、JIS K6924−1に準拠し測定した酢酸ビニル含有率が6〜50重量%の範囲であるエチレン−酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル単位を20〜100%加水分解したものであることを特徴とする樹脂組成物の層をシーラント層とし、ポリプロピレンと共押出成形したことを特徴とする易剥離性フィルム。
【請求項2】
シーラント層を構成する樹脂組成物が、プロピレンとエチレンのランダム共重合体及び/又はプロピレンとエチレンとブテンのランダム共重合体であるポリプロピレン(A)を含むことを特徴とする請求項1に記載の易剥離性フィルム。
【請求項3】
シーラント層を構成する樹脂組成物が、JIS K7210に準拠して測定したメルトマスフローレイトの範囲が0.5〜60g/10分であるポリプロピレン(A)とJIS K6924−1に準拠し測定したメルトマスフローレイトの範囲が0.5〜40g/10分であるエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(B)を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の易剥離性フィルム。
【請求項4】
シーラント層を少なくとも片面に含むことを特徴とする請求項1乃至3いずれか一項に記載の易剥離性フィルム。
【請求項5】
請求項1乃至4いずれか一項に記載の易剥離性フィルムを含むことを特徴とする積層体。
【請求項6】
請求項1乃至4いずれか一項に記載の易剥離性フィルムを含むことを特徴とする包装体。
【請求項7】
請求項1乃至4いずれか一項に記載の易剥離性フィルムを含むことを特徴とする袋包装。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリプロピレンの優れた耐熱性を保持し、且つ、低温シール性、易剥離性、剥離強度、剥離外観に優れた積層体や包装体に用いることが可能な樹脂組成物、及び易剥離性フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレンからなるフィルムやラミネート製品、成型体などは、機械強度、耐熱性、耐湿性などの諸物性が優れている。その特性を活かし、自動車部品、生活用品、包装材料など幅広い用途に使用されている。例えば包装用フィルムとしては、食品包装分野や工業包装分野などを中心に、単層フィルム、多層フィルム、ラミネートフィルム、ラミネートフィルムの基材、金属または金属酸化物を蒸着する基材、更に他樹脂との共押出による多層フィルム、他樹脂との積層による多層フィルムなどの構成素材としてさまざまな分野で使用されている。使用例としては、一般食品などの包装袋や生活雑貨などの包装袋、医療用包装材などが挙げられる。
【0003】
しかしながら、ポリプロピレンは包装材料に要求される重要な性質であるヒートシール後の内容物を保護する性能には優れるが、内容物を容易に取り出せる性能に劣ることや融点が高い為に低温シール性が悪く高速充填適性に劣るために、これらの特性が重要視される用途では使用に際し、制限を受けることが多いという課題があった。例えばポリプロピレンよりなる食品包装袋は、ヒートシール温度を高くし完全に接着させ、他のシール部分に切り込みなどを加えるなど、開封部分を別途設ける必要がある。また、ヒートシール温度などの条件設定を微調整して易剥離性になるようにする方法もあるがが、シール温度のわずかな変化によりシール強度が大きく変化してしまい、輸送の過程での振動や圧縮によりシール部が開放してしまい内容物の腐敗などの保存性に課題が発生する場合や、シール強度が強すぎて開封しづらくなる場合などがあり、その使用が限られていた。このように、ポリプロピレンは包装用途、特に袋包装用途では、その使用が制限されるという課題があった。
【0004】
かかる課題を解消するため、ヒートシール性が改良された易剥離性フィルムが提案され、例えば、ポリプロピレンを主成分とする材料同士が封着されてなる封着界面を有し、該封着界面を構成する材料の少なくとも一方にエチレン−プロピレン系合成ゴムを10〜30重量%配合したポリプロピレン組成物とすることを特徴とした剥離容易な密封包装容器が提案されている(例えば特許文献1参照。)。
【0005】
また、ポリプロピレン系樹脂、密度が930kg/m
3以下のエチレン・α−オレフィンランダム共重合樹脂及びポリエチレン組成物からなるシール層を有する多層シートが提案されている(例えば特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公昭47−35876号公報
【特許文献2】特開2000−355358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に提案されたポリプロピレン組成物や特許文献2に提案されたポリエチレン組成物を含むポリプロピレン組成物は、密封性と易開封性のバランスの点で必ずしも満足できるものではなく、特に易開封性が劣ったものとなる傾向のあるものであった。
【0008】
そこで、ポリプロピレンの優れた耐熱性を保持し、且つ、低温シール性、易剥離性、剥離強度、剥離外観に優れた積層体や包装体を提供することのできる樹脂組成物、及び易剥離性フィルムが切望されていた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題に対し鋭意検討した結果、ポリプロピレンとエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物を特定の割合で配合することにより、著しく低温シール性、易剥離性、剥離強度、剥離外観に優れた易剥離性フィルムや積層体等を提供することのできる樹脂組成物となることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
即ち、本発明は、ポリプロピレン(A)80〜98重量%及びエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(B)2〜20重量%を含み((A)と(B)の合計は100重量%)、エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化物(B)が、JIS K6924−1に準拠し測定した酢酸ビニル含有率が6〜50重量%の範囲であるエチレン−酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル単位を20〜100%加水分解したものであることを特徴とする樹脂組成物に関するものである。
【0011】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0012】
本発明の樹脂組成物を構成するポリプロピレン(A)としては、一般にポリプロピレンと称される範疇に属するものであれば如何なるものを用いることも可能であり、通常、密度890〜930kg/m
3程度のプロピレン単独重合体、プロピレンと他の少量のα−オレフィンとの共重合体である。共重合体においては、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であっても良い。プロピレンの共重合体における他のα−オレフィンとしては、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、4−メチル−1−ペンテン、などの炭素原子数が2〜20程度のα−オレフィンを例示することができる。このような他のα−オレフィンは、1種単独で又は2種以上組み合わせて共重合させても良い。そして、その中でも特に、低温シール性、易剥離性、剥離強度、剥離外観に優れた易剥離性フィルムや積層体等を提供することが可能となる樹脂組成物となることから、プロピレンとエチレンのランダム共重合体及び/又はプロピレンとエチレンと1−ブテンのランダム共重合体であることが好ましい。
【0013】
そして、該ポリプロピレン(A)の製造方法としては、ポリプロピレンが得られる限りにおいて如何なる方法を用いてもよく、例えば、典型的には固体状チタン触媒成分と有機金属化合物触媒成分から形成される触媒、あるいはこれら両成分及び電子供与体から形成される触媒、若しくはメタロセン触媒を代表例とするシングルサイト触媒の存在下でプロピレンを重合するかあるいはプロピレンと1種以上の他のα−オレフィンを共重合することにより得ることができる。また、該ポリプロピレン(A)は、市販品であっても良い。プロピレン樹脂(A)としては、2種以上組み合わせて使用することもできる。
【0014】
該ポリプロピレン(A)としては、JIS K7210に準拠して測定したメルトマスフローレイトの範囲が0.5〜60g/10分であると成形加工性に優れた樹脂組成物が得られるため好ましい。更に、好ましくは3〜30g/10分であり、最も好ましくは、6〜20g/10分である。
【0015】
本発明の樹脂組成物を構成するエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(B)としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物の範疇に属するものであれば如何なるものを用いることも可能であり、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体をアルカリ又は酸を触媒として加水分解反応する事により得られるものである。より具体的な製造方法としては、例えば原料となるエチレン−酢酸ビニル共重合体を良溶媒に溶解させて均一系で反応を行なう均一ケン化法、又はメタノール、エタノールのような貧溶媒中でペレットあるいは粉末のまま不均一系で反応を行なう不均一ケン化法等によって製造する方法が挙げられる。この際のエチレン−酢酸ビニル共重合体は、公知の方法、例えば高圧法、乳化法など公知の製造法によって製造されたものでよく、市販品でも良い。また、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(B)も市販品であってもよい。
【0016】
該エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(B)は、特に耐熱性、接着性に優れ、ポリプロピレンとの相溶性にも優れる樹脂組成物となることから、JIS K6924−1に準拠し測定した酢酸ビニル含有率が6〜50重量%の範囲であるエチレン−酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル単位を20〜100%加水分解したものであることが好ましく、特に酢酸ビニル含有率が15〜45重量%であるエチレン−酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル単位を30〜90%加水分解したものが好ましい。
【0017】
該エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(B)としては、JIS K6924−1に準拠し測定したメルトフローレイトの範囲が0.5〜40g/10分であると成形加工性と剥離外観に優れた樹脂組成物が得られるため好ましい。更に、好ましくは1〜20g/10分であり、最も好ましくは、1〜6g/10分である。
【0018】
本発明の樹脂組成物は、ポリプロピレン(A)80〜98重量%及びエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(B)2〜20重量%を含む((A)と(B)の合計は100重量%)ものであり、特にポリプロピレン(A)85〜95重量%及びエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(B)5〜15重量%を含むものであることが好ましい。ここで、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(B)の配合量が2重量%より少ない場合、得られる樹脂組成物をフィルムとした際に、そのフィルムの低温シール性及び易剥離性はほとんど改良されない。一方、エチレン−酢酸ビニル共重合体(B)の配合量が20重量%を超える場合、得られる樹脂組成物は、剥離外観に劣るものとなる。
【0019】
本発明の樹脂組成物の製造方法としては、特に制限はなくポリプロピレン(A)及びエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(B)を混合することが可能であれば如何なる方法を用いることも可能であり、例えばヘンシェルミキサー、Vブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーブレンダー等を用いたドライブレンドにより混合する方法;ドライブレンドを行った後、単軸押出機、2軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー、ロール等の溶融混練機を用い溶融混合体、更にはペレット等とする方法をも適用することができる。
【0020】
また、本発明の樹脂組成物は、更に易剥離性に優れる樹脂組成物となることから市販のポリマーアロイ用相溶化剤を配合してなることが好ましい。例えば、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・1−ブテン共重合体、スチレン系ゴム、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリオレフィン系樹脂のカルボン酸変性物などが挙げられる。
【0021】
さらに、本発明の樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で要求される特性に応じて他の添加剤、例えば他の熱可塑性樹脂やゴム、光安定剤、紫外線吸収剤、造核剤、帯電防止剤、酸化防止剤、ブロッキング防止剤、流動性改良剤、滑剤、離型剤、可塑剤、難燃剤、着色剤、中和剤、発泡剤、充填剤、耐熱剤、カップリング剤、ガラス繊維などを配合していても良い。
【0022】
本発明の樹脂組成物は、耐熱性、低温シール性、易剥離性、剥離強度、剥離外観優れた易剥離性フィルムを提供することが可能となる。
【0023】
易剥離性フィルムとして、基材として例えば、ポリプロピレン、ポリエステル系樹脂、ナイロン系樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコールなどの樹脂の単体及びこれらの積層フィルムや更にこれらプラスチック基材とアルミミウムなどの金属箔との貼合品を用いて、これらの基材にアンカーコート剤や接着性樹脂、中間層樹脂などを介して押出ラミネート加工により樹脂組成物を積層したフィルムや、基材と予め樹脂組成物をシーラント層とした2層フィルムや3層フィルムとをドライラミネート加工により接着剤を介して積層したフィルムなどが挙げられる。
【0024】
また、易剥離性フィルムとして、外層とシーラント層からなり外層がポリプロピレン、シーラント層が該樹脂組成物からなる2層フィルム、外層、中間層、及びシーラント層からなり外層と中間層がポリプロピレン、シーラント層が該樹脂組成物からなる3層フィルムなども挙げられる。
【0025】
その際のフィルムの製造方法としては、公知の製造方法を適用することができ、例えば樹脂組成物を押出機で溶融混練し、Tダイによりフラットフィルム状に押し出し、キャスティングロール面上にキャスティングしてフィルムを冷却するキャスティング法などが適用される。また、フィードブロックやマルチマニホールドTダイ備える多層Tダイ成型機のシーラント層に樹脂組成物、他の1層以上の層にプロピレンなどの他の樹脂を投入して溶融混練し、Tダイによりフラットフィルム状に共押し出し、キャスティングロール面上にキャスティングしてフィルムを冷却し共押出キャストフィルムを得る共押出キャスティング法なども適用される。また、フラット状に製造されたフィルムを連続して、または別工程で延伸することも適用できる。また、環状ダイスより溶融押出しする上向き空気冷却インフレーション成形、下向き水冷却インフレーション成形も適用できる。これらの製造方法により得られるフィルム構成としては、例えば、樹脂組成物、ポリプロピレン/樹脂組成物、ポリプロピレン/ポリプロピレン/樹脂組成物などが挙げられる。これらの製造方法により得られるフィルム厚みは、15〜100μmであることが好ましく、共押出フィルムにおいては樹脂組成物層は3〜10μmであることが好ましい。
【0026】
本発明の樹脂組成物からなるフィルムは、単層フィルム、または、それ以外の高分子、紙、金属などのフィルム、シート、板状物などと積層体にすることもできる。この積層体にする方法は特に制限されず、例えば樹脂組成物からなるフィルムと他の1種もしくは2種以上の高分子、紙、金属などのフィルムを接着剤で接着する方法や、加熱ロールなどを用いたサーマルラミ法などを適用できる。
【0027】
本発明の樹脂組成物からなるラミネート積層体を製造する方法としては、公知の製造方法を適用することができ、例えば樹脂組成物を押出機で溶融混練し、Tダイよりフラットフィルム状に押し出し、キャスティングロールとシリコンゴムロール間で紙などの基材と圧着したり、各種プラスチック基材にアンカーコート剤を塗布した後に圧着して積層フィルムを得る押出ラミネート法などが適用される。
【0028】
本発明のフィルム、積層体は食品包装用や工業包装用として、ラミネート用フィルムや各種プラスチック基材とのラミネートフィルムとして包装袋や容器蓋材、容器などに用いることができる。
【0029】
本発明の包装体としては、例えば食品包装体、医薬や医療品包装体などのプラスチック容器の蓋材などであり、より具体的にはポリエチレン製又はポリプロピレン製容器にプリンやゼリー、医療器具などを充填した後にその密封性を満足させる蓋材などが挙げられる。
【0030】
袋包装としては例えば食品包装袋、医薬や医療品包装袋などがあり、横ピロー包装機、縦ピロー包装機、三方シール包装機、四方シール包装機などにより得られる包装袋であり、より具体的には即席麺包装、パン包装、スナック包装などが挙げられる。
【発明の効果】
【0031】
本発明の樹脂組成物は、ポリプロピレンの優れた耐熱性を保持し、且つ、低温シール性、易剥離性、剥離強度、剥離外観に優れた易剥離性フィルムや積層体を提供することが可能となるものである。また、耐衝撃性や接着性に優れた部品等の成型体を提供することも可能となるものである。
【実施例】
【0032】
以下、実施例に基づいて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0033】
以下に、耐熱性、低温シール性、易剥離性、剥離強度、剥離外観の評価方法を示す。
【0034】
〜耐熱性評価〜
100℃の雰囲気下に、作成したフィルム厚み0.03mm、試料幅100mm、試料長さ100mmの試験片を15分間放置し、放置前後の寸法変化を測定し、熱収縮率を計算により求めた。熱収縮率は、放置前後の寸法変化した値を放置前の長さで除して求めた。
【0035】
熱収縮率が3%以下のものを耐熱性○、3%を超えるものを×とした。
【0036】
〜低温シール性評価〜
ヒートシールテスター(テスター産業社製)にて、作成したフィルム厚み0.03mm、試料幅100mm幅の樹脂組成物層が向い合せになるように易剥離性フィルム2枚を重ねあわせ、更にシールバーへの融着防止を目的にポリエステルフィルム(東洋紡社製、商品名:E5100 0.012mm)を易剥離性フィルム2枚の上下に重ね合わせ圧力0.2MPa、時間0.5秒、シール温度を120℃から150℃まで10℃毎に変更した条件にてそれぞれヒートシールバーにより押さえて加熱接着を行った。試験片の該加熱接着部分を、引張試験機(島津製作所(株)社製、商品名オートグラフDCS500)を用いて、剥離速度300mm/分、T字剥離にて剥離強度を測定した。
【0037】
ヒートシール温度130℃条件にて3N/15mm以上の剥離強度が得られ、易剥離性が得られるものを低温シール性〇、3N/15mm未満のものを×とした。
【0038】
〜剥離強度、易剥離性評価〜
ヒートシールテスター(テスター産業社製)にて、作成したフィルム厚み0.03mm、試料幅100mm幅の樹脂組成物層が向い合せになるように易剥離性フィルム2枚を重ねあわせ、更にシールバーへの融着防止を目的にポリエステルフィルム(東洋紡社製、商品名:E5100 0.012mm)を易剥離性フィルム2枚の上下に重ね合わせ圧力0.2MPa、時間0.5秒、シール温度を120℃から150℃まで10℃毎に変更した条件にてそれぞれヒートシールバーにより押さえて加熱接着を行った。試験片の該加熱接着部分を、引張試験機(島津製作所(株)社製、商品名オートグラフDCS500)を用いて、剥離速度300mm/分、T字剥離にて剥離強度を測定した。
得られた剥離強度がヒートシール温度130℃〜150℃条件にて3〜10N/15mmの範囲にあるものを易剥離性〇、それ以外の範囲のもの、剥離不可のものを易剥離性×とした。
【0039】
〜剥離外観評価〜
ヒートシールテスター(テスター産業社製)にて、作成したフィルム厚み0.03mm、試料幅100mm幅の樹脂組成物層が向い合せになるように易剥離性フィルム2枚を重ねあわせ、更にシールバーへの融着防止を目的にポリエステルフィルム(東洋紡社製、商品名:E5100 0.012mm)を易剥離性フィルム2枚の上下に重ね合わせ圧力0.2MPa、時間0.5秒、シール温度を120℃から150℃まで10℃毎に変更した条件にてそれぞれヒートシールバーにより押さえて加熱接着を行った。試験片の該加熱接着部分を、引張試験機(島津製作所(株)社製、商品名オートグラフDCS500)を用いて、剥離速度300mm/分、T字剥離にて剥離強度を測定した。
【0040】
剥離後の剥離面を目視観察し、糸ひきが全くないものとわずかにみられるものを〇、
部分的に小さな糸ひきが見られるものを△、全面に糸ひきが見られるものを×とした。
【0041】
実施例1
〜フィルムの製造方法〜
ポリプロピレン(A)として、プロピレン・1−ブテン・エチレン共重合体(A1)(日本ポリプロ(株)社製、商品名FW4B;メルトマスフローレイト(以下、MFRと記す。);MFR=6.5)95重量%及びエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(B)としてJIS K6924−1に準拠し測定した酢酸ビニル含有率が24重量%であるエチレン−酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル単位を75%加水分解したエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(B1)(東ソー(株)社製、商品名メルセンH7540;MFR=2.5g/10分)5重量%を、タンブラーブレンダーを用いて混合した。
【0042】
次いで、この混合物を20/20/32mmΦのスクリューを有し、Tダイを備えた3層キャストフィルム成形機((株)プラスチック工学研究所社製)の内層の20mmφ押出機へ供給し、他の中間層20mmφ、外層32mmφ押出機にはプロピレン単独重合体(日本ポリプロ(株)社製、商品名FB3HAT)を供給し、240℃の温度でTダイより共押し出し、キャスティングロール面上にキャスティングして内層/中間層/外層=5/10/15μmとなる厚み0.03mmの易剥離性フィルムを得た。
【0043】
得られた易剥離性フィルムを用いて、耐熱性、低温シール性、易剥離性、剥離強度、剥離外観を評価した。その結果を表1に示す。
【0044】
実施例2
ポリプロピレン(A1)95重量%及びエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(B1)5重量%の代わりに、ポリプロピレン(A1)90重量%及びエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(B1)10重量%とした以外は、実施例1と同様にして易剥離性フィルムを得た。
【0045】
得られた易剥離性フィルムを用いて、耐熱性、低温シール性、易剥離性、剥離強度、剥離外観を評価した。その結果を表1に示す。
【0046】
実施例3
ポリプロピレン(A1)95重量%及びエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(B1)5重量%の代わりに、ポリプロピレン(A1)80重量%及びエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(B1)20重量%とした以外は、実施例1と同様にして易剥離性フィルムを得た。
【0047】
得られた易剥離性フィルムを用いて、耐熱性、低温シール性、易剥離性、剥離強度、剥離外観を評価した。その結果を表1に示す。
【0048】
実施例4
エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(B1)10重量%の代わりに、酢酸ビニル含有率28重量%であるエチレン−酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル単位を30%加水分解したエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(B2)(東ソー(株)社製、商品名メルセンH3051R;MFR=6g/10分)10重量%とした以外は、実施例1と同様にして易剥離性フィルムを得た。
【0049】
得られた易剥離性フィルムを用いて、耐熱性、低温シール性、易剥離性、剥離強度、剥離外観を評価した。その結果を表1に示す。
【0050】
実施例5
エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(B1)10重量%の代わりに、酢酸ビニル含有率28重量%であるエチレン−酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル単位を100%加水分解したエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(B3)(東ソー(株)社製、商品名メルセンH6051;MFR=5.5g/10分)10重量%とした以外は、実施例1と同様にして易剥離性フィルムを得た。
【0051】
得られた易剥離性フィルムを用いて、耐熱性、低温シール性、易剥離性、剥離強度、剥離外観を評価した。その結果を表1に示す。
【0052】
実施例6
ポリプロピレン(A1)90重量%の代わりに、プロピレン・エチレン共重合体(A2)((株)プライムポリマー社製、商品名F−744NP;MFR=7)90重量%とした以外は、実施例2と同様にして易剥離性フィルムを得た。
【0053】
得られた易剥離性フィルムを用いて、耐熱性、低温シール性、易剥離性、剥離強度、剥離外観を評価した。その結果を表1に示す。
【0054】
比較例1
ポリプロピレン(A1)90重量%及びエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(B1)10重量%の代わりに、ポリプロピレン(A1)100重量%とした以外は、実施例1と同様にして易剥離性フィルムを得た。
【0055】
得られた易剥離性フィルムを用いて、耐熱性、低温シール性、易剥離性、剥離強度、剥離外観を評価した。その結果を表1に示す。
【0056】
得られた易剥離性フィルムは、低温シール性に劣り、また、易剥離性にも劣るものであった。
【0057】
比較例2
ポリプロピレン(A1)90重量%及びエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(B1)10重量%の代わりに、ポリプロピレン(A1)70重量%及びエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(B1)30重量%とした以外は、実施例1と同様にして易剥離性フィルムを成形した。
【0058】
同配合は低温シール性と剥離強度に劣り、また、剥離外観に劣るものであった。
【0059】
比較例3
エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(B1)20重量%の代わりに、高圧法低密度ポリエチレン(C1)(東ソー(株)社製、商品名ペトロセン186R;MFR=3.0g/10分)20重量%とした以外は、実施例3と同様にして易剥離性フィルムを得た。
【0060】
得られた易剥離性フィルムを用いて、耐熱性、低温シール性、易剥離性、剥離強度、剥離外観を評価した。その結果を表1に示す。
【0061】
得られた易剥離性フィルムは、低温シール性に劣り、また、易剥離性、剥離強度、剥離外観にも劣るものであった。
【0062】
比較例4
エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(B1)20重量%の代わりに、酢酸ビニル含有率24重量%であるエチレン−酢酸ビニル共重合体(C2)(東ソー(株)社製、商品名ウルトラセン640;MFR=2.8)20重量%とした以外は、実施例3と同様にして易剥離性フィルムを得た。
【0063】
得られた易剥離性フィルムを用いて、耐熱性、低温シール性、易剥離性、剥離強度、剥離外観を評価した。その結果を表1に示す。
【0064】
得られた易剥離性フィルムは、耐熱性に劣り、また、剥離外観にも劣るものであった。
【0065】
【表1】