特許第6572662号(P6572662)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6572662-ジャンパ線 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6572662
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】ジャンパ線
(51)【国際特許分類】
   H01B 11/02 20060101AFI20190902BHJP
   H01B 11/06 20060101ALI20190902BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20190902BHJP
   H01B 7/18 20060101ALI20190902BHJP
【FI】
   H01B11/02
   H01B11/06
   H01B7/00 310
   H01B7/18 Z
【請求項の数】4
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-151785(P2015-151785)
(22)【出願日】2015年7月31日
(65)【公開番号】特開2017-33739(P2017-33739A)
(43)【公開日】2017年2月9日
【審査請求日】2018年2月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100071526
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 忠雄
(74)【代理人】
【識別番号】100099597
【弁理士】
【氏名又は名称】角田 賢二
(74)【代理人】
【識別番号】100124235
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100124246
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 和光
(74)【代理人】
【識別番号】100128211
【弁理士】
【氏名又は名称】野見山 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100145171
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 浩行
(72)【発明者】
【氏名】王 鯤
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 卓也
【審査官】 神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−172019(JP,A)
【文献】 特開2005−203117(JP,A)
【文献】 特開2008−277195(JP,A)
【文献】 特開2004−207079(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 11/02
H01B 7/00
H01B 7/18
H01B 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体の外周を絶縁体で被覆した複数の絶縁電線と、
ショアA硬度が70以上90以下の介在物と、
前記介在物を中心にして撚り合われた前記複数の絶縁電線の外周に設けられたシースと、を備えたLANケーブルからなる、鉄道車両間に用いられるジャンパ線。
【請求項2】
前記介在物は、ポリエチレンから形成された、
請求項1に記載のジャンパ線。
【請求項3】
前記導体は、中心に配置された複数のテンションメンバと、前記複数のテンションメンバの周囲に圧縮されずに撚り合わされて配置された複数の導線とを有する、請求項1又は2に記載のジャンパ線。
【請求項4】
前記導体の撚り合わせピッチ(P)と撚り合わせ外径(PD)との比(P/PD)は、15〜20である、請求項3に記載のジャンパ線。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジャンパ線に関する。
【背景技術】
【0002】
LAN用のツイストペアケーブルとして可動部に使用されるジャンパ線は、可撓性を重視しているため、導体を被覆する絶縁体、中心の介在物、最外層のシースは、比較的軟らかい材料から形成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載されたツイストペアケーブルは、圧縮撚線導体を発泡架橋ポリエチレン及び無発泡層で被覆した心線を2本撚り合わせて1対の心線とし、この心線を中心にポリプロピレン紐の介在物を介在させて2対撚り合わせ、最外層にポリ塩化ビニール樹脂からなるシースを設けたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−230911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来のツイストペアケーブルは、中心の介在物が比較的軟らかい材料から形成されているため、ケーブルに曲げが加わると、介在物が変形することで導体間の距離が変化し、伝送特性が低下するおそれがある。例えば、鉄道車両間の渡り線に用いるツイストペアケーブルには、アメリカ通信工業会(TIA)とアメリカ電子工業会(EIA)による規格(CAT5E:エンハンストカテゴリー5)の特性が求められているが、従来のツイストペアケーブルでは、その規格の特性を満足することは難しい。
【0006】
したがって、本発明の目的は、繰り返し曲げを受けても長期に亘って所定の規格を満足することが可能な耐屈曲性を備えたジャンパ線を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]導体の外周を絶縁体で被覆した複数の絶縁電線と、ショアA硬度が70以上90以下の介在物と、前記介在物を中心にして撚り合われた前記複数の絶縁電線の外周に設けられたシースと、を備えたLANケーブルからなる、鉄道車両間に用いられるジャンパ線。
[2]前記介在物は、ポリエチレンから形成された、前記[1]に記載のジャンパ線。
[3]前記導体は、中心に配置された複数のテンションメンバと、前記複数のテンションメンバの周囲に圧縮されずに撚り合わされて配置された複数の導線とを有する、前記[1]又は[2]に記載のジャンパ線。
[4]前記導体の撚り合わせピッチ(P)と撚り合わせ外径(PD)との比(P/PD)は、15〜20である、前記[3]に記載のジャンパ線。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、繰り返し曲げを受けても長期に亘って所定の規格を満足することが可能な耐屈曲性を備えたジャンパ線を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の実施の形態に係るジャンパ線の横断面図である。
図2図2は、図1に示すジャンパ線の導体の詳細を示す部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、各図中、実質的に同一の機能を有する構成要素については、同一の符号を付してその重複した説明を省略する。
【0011】
[実施の形態]
図1は、本発明の実施の形態に係るジャンパ線の横断面図である。
【0012】
このジャンパ線1は、導体2の外周を絶縁体3で被覆した複数の絶縁電線4と、複数の絶縁電線4の中心及び周囲に介在物5A、5Bを介在させて巻き付けられた押さえテープ6と、押さえテープ6の外周に設けられたシールド層7と、シールド層7の外周に設けられたシース8とを備える。
【0013】
複数の絶縁電線4は、撚り合わせて配置される。絶縁電線4は、例えば1MHz〜100MHzの信号を伝送する。絶縁電線4として、差動信号を伝送する1組又は2組以上のツイストペア線を用いてもよい。本実施の形態は、2組のツイストペア線を示す。導体2の構成については後述する。
【0014】
絶縁電線4の絶縁体3の材料としては、ショアA硬度が70以上90以下の材料、例えば無発泡のポリエチレン、フッ素樹脂等を用いることができる。
【0015】
押さえテープ6は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン系樹脂等の樹脂からなる樹脂テープを用いることができる。
【0016】
シールド層7は、例えば、導線を編組して形成され、グランドに接続される。なお、シールド層7は、導体付きテープを巻き付けたものでもよい。
【0017】
シース8の材料としては、ショアA硬度が絶縁体3よりも低い材料、例えばポリオレフィンエラストマー、クロロプレン等を用いることができる。
【0018】
中心の介在物5Aは、ショアA硬度が70以上90以下の材料、例えばポリエチレン等を用いることができる。周囲に配置された介在物5Bは、例えば、ガラス繊維等の一般的なものを用いることができる。
【0019】
(導体の構成)
図2は、図1に示すジャンパ線1の絶縁電線4の導体2の詳細の構成例を示す断面図である。導体2は、中心に配置された複数(例えば3本)のテンションメンバ(高張力線)20と、テンションメンバ20の周囲に圧縮されずに撚り合わされて配置された複数の導線21とを有する。
【0020】
テンションメンバ20は、例えば、高張力鋼線(例えばピアノ線)、鋼線、繊維強化プラスチック(FRP)線等を用いることができる。これらの線のうち、引張り強度が高いピアノ線が好ましい。複数のテンションメンバ20は、撚り合わせて配置される。これにより耐屈曲性が向上する。
【0021】
導線21は、例えば、錫メッキ軟銅線を用いることができる。導線21の撚り合わせピッチ(P)と撚り合わせ外径(PD)との比(P/PD)は、15〜20の範囲内が好ましい。P/PDを15以上としたのは、15未満だと伝送特性(例えば、特性インピーダンス)がCAT5E規格を満足しないおそれがあるからである。P/PDを20以下としたのは、20を超えると耐キンク性が急激に低下するからである。
【0022】
(本実施の形態の作用、効果)
本実施の形態によれば、以下の作用、効果を奏する。
(1)中心の介在物5Aを比較的硬度の高い材料から形成し、シース8を比較的硬度の低い材料から形成しているので、ケーブルを曲げが加わる部分に使用しても介在物5Aの変形が少なくなることから、導体2間の距離の精度が向上し、伝送特性の低下を抑制することができる。
(2)導線21のピッチを最適な値としているので、導体2の断面形状が真円に近くなり、CAT5E規格の伝送特性を満足することができる。
(3)導体2の中心にテンションメンバ20を配置しているので、繰り返し曲げを受けても長期に亘ってCAT5E規格を満足することが可能な耐屈曲性が得られる。
(4)本ジャンパ線1は、繰り返し曲げを受ける部分、例えば、鉄道車両間の渡り線においてLANケーブルとして使用することができる。
【実施例1】
【0023】
次に、本発明の実施例を説明する。本実施例は、上記実施の形態に対応するものでありる。本実施例は、絶縁体3にポリエチレンを用い、中心の介在物5Aにポリエチレンを用いた。また、絶縁電線4の導体2を構成するテンションメンバ20は、外径0.26mmのピアノ線を用いた。また、導線21は、外径0.18mmの錫メッキ軟銅線を、内層に12本、外層に18本配置した。導線21の撚り合わせピッチは、20mmとし、P/PDは17とした。これにより、特性インピーダンスは、85〜115Ω(1MHz〜100MHz)となった。
【0024】
なお、本発明の実施の形態は、上記実施の形態に限定されず、種々な実施の形態が可能
である。
【0025】
また、本発明の要旨を変更しない範囲内で、上記実施の形態の構成要素の一部を省くことや変更することが可能である。
【符号の説明】
【0026】
1…ジャンパ線、2…導体、3…絶縁体、4…絶縁電線、5A、5B…介在物、
6…押さえテープ、7…シールド層、8…シース、20…テンションメンバ、
21…導線
図1
図2