特許第6572889号(P6572889)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6572889
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】蓄電池盤
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/617 20140101AFI20190902BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20190902BHJP
   H01M 10/6563 20140101ALI20190902BHJP
   H01M 10/6556 20140101ALI20190902BHJP
   H01M 10/6566 20140101ALI20190902BHJP
   H01M 2/10 20060101ALI20190902BHJP
   H01M 10/652 20140101ALI20190902BHJP
   H01M 10/643 20140101ALI20190902BHJP
【FI】
   H01M10/617
   H01M10/613
   H01M10/6563
   H01M10/6556
   H01M10/6566
   H01M2/10 G
   H01M10/652
   H01M10/643
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-527797(P2016-527797)
(86)(22)【出願日】2015年6月8日
(86)【国際出願番号】JP2015066499
(87)【国際公開番号】WO2015190440
(87)【国際公開日】20151217
【審査請求日】2018年3月1日
(31)【優先権主張番号】特願2014-120047(P2014-120047)
(32)【優先日】2014年6月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】日立化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091443
【弁理士】
【氏名又は名称】西浦 ▲嗣▼晴
(74)【代理人】
【識別番号】100130720
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼見 良貴
(74)【代理人】
【識別番号】100130432
【弁理士】
【氏名又は名称】出山 匡
(72)【発明者】
【氏名】中野 光雅
(72)【発明者】
【氏名】三代 祐一朗
(72)【発明者】
【氏名】新東 連
【審査官】 赤穂 嘉紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−133225(JP,A)
【文献】 特開2013−196908(JP,A)
【文献】 特開2008−226488(JP,A)
【文献】 特開平10−270095(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/60−10/667
H01M 2/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の円筒状蓄電池が該蓄電池の長手方向と直交する第1の方向に所定の間隔をあけて並べられて構成された複数の電池列が、前記長手方向及び前記第1の方向と直交する第2の方向に所定の間隔をあけて配置されてなる電池群が、前記長手方向の両側に対向するように配置された一対のホルダ間に保持されてなる複数の組電池と、
内部に前記複数の組電池を収納する筐体と、
前記筐体の天板部に設けられて前記筐体内から空気を誘引して外部に吐き出す誘引送風装置とを備え、
2以上の前記組電池が前記筐体内に横方向に並べられて構成される複数の組電池グループが、前記誘引送風装置が駆動されているときに、全ての前記組電池内を空気が流れるように、前記筐体内に上下方向に分けて配置されており、
前記組電池内には、前記誘引送風装置によって発生する空気流の抵抗を調整するために、少なくとも隣り合う2本以上の前記円筒状蓄電池によって囲まれた空間内に、空気流抵抗調整部材が配置されており、
上下方向に隣接する2つの前記組電池グループにおいて、上側に位置する前記組電池グループに含まれる前記複数の組電池内の冷却効率が、下側に位置する前記組電池グループに含まれる前記複数の組電池内の前記蓄電池の冷却効率よりも良くなるように、前記複数の組電池グループに含まれる前記複数の組電池内の前記空気流抵抗調整部材の形状が定められていることを特徴とする蓄電池盤。
【請求項2】
前記空気流抵抗調整部材は、前記長手方向に延びており、
前記空気流抵抗調整部材の前記長手方向と直交する方向の断面形状の輪郭は、上方向に向かって近付く第1及び第2の辺と、下方向に向かって近付く第3及び第4の辺とを少なくとも有している請求項1に記載の蓄電池盤。
【請求項3】
前記第1の辺と前記第3の辺との間に上下方向に延びる第5の辺が更に形成されており、
前記第2の辺と前記第4の辺との間に前記上下方向に延びる第6の辺が更に形成され、
1の辺と第2の辺との間と、第3の辺と第4の辺との間に、それぞれ左右方向に延びる第7の辺及び第8の辺が形成されている請求項2に記載の蓄電池盤。
【請求項4】
前記上側に位置する前記組電池グループに含まれる前記複数の組電池内の前記空気流抵抗調整部材の横断面積が、前記下側に位置する前記組電池グループに含まれる前記複数の組電池内の前記空気流抵抗調整部材の横断面積よりも大きい請求項2または3に記載の蓄電池盤。
【請求項5】
前記複数の電池列は、平行に並ぶ2本の前記電池列からなり、
一方の前記電池列に含まれる隣接する2本の前記円筒状蓄電池と他方の前記電池列に含まれる隣接2本の蓄電池とによって囲まれる空間内に1本の前記空気流抵抗調整部材が配置されている請求項1,2,3または4に記載の蓄電池盤。
【請求項6】
前記円筒状蓄電池が円筒状リチウムイオン電池である請求項1乃至5のいずれか1項に記載の蓄電池盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気的に接続されて並設された複数本の円筒状蓄電池の両端を一対のセル・ホルダでそれぞれ保持してなる組電池を備えた蓄電池盤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
円筒状蓄電池は、所望の電圧や容量を得るために、複数本の蓄電池を組み合わせて組電池を構成し、さらに、1以上の組電池を組み合わせたものを筐体に収納して蓄電池盤を構成して使用するのが一般的である。特に、リチウムイオン二次電池を用いた蓄電池盤には、リチウムイオン二次電池の発熱対策として、蓄電池盤の筐体内に外部の空気を取り入れて、内部の空気を外部に吐き出す冷却ファンが備えられており、さらに空気の流れを調整して冷却効率を向上させるために、空気流のガイドないしは空気流抵抗として作用する断面形状菱形の部材が蓄電池相互の間の空間に配置されている[特許第3988324号公報の図17(特許文献1)]。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3988324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
蓄電池盤に冷却ファンを備えたとしても、蓄電池盤内の全ての蓄電池を均等に冷却することは困難である。最も典型的には、外部から取り入れられたばかりの空気と、排気直前の空気とを比較すると、蓄電池から発生する熱を既に吸っている後者の方がより高温になる。そのため空気吸入口の近くに位置する蓄電池よりも空気排出口の近くに位置する蓄電池の方が冷却されにくくなる。蓄電池盤に含まれる各蓄電池に大きな温度のバラツキが生じると、一部の蓄電池において十分に充電・放電が行われず蓄電池盤の性能が損なわれるほか、安全性にも影響を及ぼすことがある。
【0005】
本発明の目的は、蓄電池盤内を流れる空気流の上流・下流のどちらに位置するかに拘わらず、各組電池内の蓄電池の温度のバラツキを小さくすることができる蓄電池盤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の蓄電池盤は、複数の組電池と、内部に複数の組電池を収納する筐体と、筐体の天板部に設けられて筐体内から空気を誘引して外部に吐き出す誘引送風装置とを備えている。各組電池は、複数本の円筒状蓄電池から複数の電池列が構成され、さらに複数の電池列から電池群が構成され、この電池群が一対のホルダ間に保持されて構成される。複数の電池列は、複数本の円筒状蓄電池が、該蓄電池の長手方向と直交する第1の方向に所定の間隔をあけて並べられて構成される。電池群は、複数の電池列が長手方向及び第1の方向と直交する第2の方向に所定の間隔をあけて配置されてなる。そして電池群が、長手方向の両側に対向するように配置された一対のホルダ間に保持されて各組電池を構成する。
【0007】
2以上の組電池が筐体内に横方向に並べられて構成される複数の組電池グループが、誘引送風装置が駆動されているときに、全ての組電池内を空気が流れるように、筐体内に上下方向に分けて配置されている。そして組電池内には、誘引送風装置によって発生する空気流の抵抗を調整するために、少なくとも隣り合う2本以上の円筒状蓄電池によって囲まれた空間内に、空気流抵抗調整部材が配置されている。本発明では、上下方向に隣接する2つの組電池グループにおいて、上側に位置する組電池グループに含まれる複数の組電池内の冷却効率が、下側に位置する組電池グループに含まれる複数の組電池内の冷却効率よりも良くなるように、複数の組電池グループに含まれる複数の組電池内の空気流抵抗調整部材の形状が定められている。
【0008】
組電池内の冷却性能(または冷却効率)は、蓄電池の外表面に沿って流れる空気流の速度と風量の影響を受ける。そこで発明者は、空気流抵抗調整部材の横断面形状を変えることにより、組電池の冷却性能(冷却効率)を調整することにより、電池盤内の複数の蓄電池内の蓄電池の温度のバラツキを小さくすることを考えた。空気流抵抗調整部材の横断面積が小さくなると、空気流抵抗調整部材が無い状態に近づき、空気流抵抗調整部材の横断面積が大きくなると、空気流抵抗調整部材と隣接する蓄電池との間の流路が狭くなり、その間を通る空気流の速度が速くなって冷却性能の向上を図ることが可能になる。しかしながらあまりこの流路が狭くなると、この流路を通る空気の量が少なくなって、冷却性能(冷却効率)を低下させる。そこで発明者は、電池盤内の複数の蓄電池内の蓄電池の温度のバラツキを、この空気流抵抗調整部材を利用して抑制することを考えた。空気流抵抗調整部材として同じ横断面形状寸法を有する組電池が、左右及び上下方向に並べられた場合、上側に位置する組電池グループに含まれる組電池と下側に位置する組電池グループに含まれる組電池内の蓄電池の温度を比較すると、上側に位置する組電池グループに含まれる組電池内を流れる空気流の温度は、下側に位置する組電池グループに含まれる組電池内を流れる空気流の温度よりも高くなることが確認された。そこで本発明では、上側に位置する組電池グループに含まれる複数の組電池の冷却効率が、下側に位置する組電池グループに含まれる複数の組電池の冷却効率よりも良くなるように、複数の組電池グループに含まれる複数の組電池内の空気流抵抗調整部材の形状を定めているので、上側に位置する組電池グループに含まれる複数の組電池内を流れる空気流の温度が高くなっても、組電池内の蓄電池の冷却効率が高くなって、蓄電池の温度上方を抑制できる。その結果、上側に位置する組電池グループに含まれる複数の組電池内の蓄電池の温度と、下側に位置する組電池グループに含まれる複数の組電池内の蓄電池の温度のバラツキ幅を小さくすることができる。
【0009】
1つのグループは、必ずしも同じ高さ位置にある必要はなく、例えば上下4段に組電池が配置されていれば、上方の2段と下方の2段とを分けて、2つの組電池グループとしてもよい。また上下3段以上の組電池をそれぞれ1段ずつの3つ以上の組電池グループに分け、少なくとも1つの組電池グループ同士の間に冷却性能の差を生じさせるように構成してもよい。また電池列を構成する蓄電池の個数、及び電池群を構成する電池列の数もそれぞれ任意である。典型的には、電池列は3本の蓄電池より構成され、2つの電池列が組み合わされて電池群が構成され、組電池は6本の蓄電池を含む。このような構成例の場合、空気流抵抗調整部材は、隣り合う4本の蓄電池により囲まれた空間が2箇所存在し、それらの各空間それぞれに配置されることが好ましい。また他の隣り合う2本以上の蓄電池の間に配置してもよく、その場合には隣り合う組電池に属する蓄電池も含んで、複数の蓄電池により囲まれた空間になる。
【0010】
本発明によると、蓄電池盤内を流れる空気の上流・下流のいずれに位置するかに拘わらず、各蓄電池の温度の温度差はできるだけ小さく維持される。従って多くの蓄電池が、同じ気道環境内で充放電されるので、蓄電池盤の性能を十分に発揮できるほか、蓄電池が過熱することによる不具合の発生を防止することができる。
【0011】
空気流抵抗調整部材は、長手方向に延びており、空気流抵抗調整部材の長手方向と直交する方向の断面形状の輪郭は、上方向に向かって近付く第1及び第2の辺と、下方向に向かって近付く第3及び第4の辺とを少なくとも有していてもよい。すなわち空気流抵抗調整部材の断面形状の輪郭の概形は、少なくとも第1及び第2の辺との間の(またはそれらの仮想される延長線上にある)角が最上部に位置し、第3及び第4の辺との間の(又はそれらの仮想される延長線上にある)角が最下部に位置するように姿勢が調整された方形である。好ましくは、空気流抵抗調整部材の断面形状の輪郭の概形は、正方形又は菱形である。このような輪郭の外形に空気流抵抗調整部材の断面形状を形成すると、他の形状に比較して、蓄電池盤内の空気流抵抗が減少して、冷却効率が向上することができることが確認されている。
【0012】
さらに、空気流抵抗調整部材は、その断面形状の輪郭に、第1の辺と第3の辺との間に上下方向に延びる第5の辺が更に形成されており、第2の辺と第4の辺との間に上下方向に延びる第6の辺が更に形成されていてもよい。すなわち空気流抵抗調整部材の断面形状の輪郭の概形は、それぞれ左右の端に位置する角(またはその近辺)に上下方向に延びる第5の辺と第6の辺が形成されて、左右の角が面取りされた方形、または六角形になる。このような輪郭の断面形状を有する空気流抵抗調整部材を用いると、冷却効率を向上させることの調整が容易になる。
【0013】
これに加えて、第1の辺と第2の辺との間と、第3の辺と第4の辺との間、すなわち空気流抵抗調整部材の上下の端に位置する角(またはその近辺)に、それぞれ左右方向に延びる第7の辺及び第8の辺が形成されていてもよく、その場合には空気流抵抗調整部材の輪郭の概形は、4隅が面取りされた方形、または八角形になる。この構造にすると、さらに冷却効率を向上させることの調整が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の蓄電池盤の実施の形態を示す図であり、(A)は正面図、(B)は(A)の上側組電池グループに属する組電池の各蓄電池、空気流抵抗調整部材及び一方のホルダのみを示す拡大正面図、(C)は(A)の下側組電池グループに属する組電池の(B)と同様の図である。
図2】(A)は図1(B)に示した組電池を示す側面図であり、(B)は同じ組電池の平面図である。
図3】(A)は図1(B)の組電池を各蓄電池を破線で示す斜視図であり、(B)は図1(C)の組電池の(A)と同様の斜視図である。
図4図1(C)の空気流抵抗調整部材の長手方向の断面形状の輪郭を拡大して示す図である。
図5】空気流抵抗調整部材の異なる断面形状を示す図である。
図6】(A)及び(B)は、試験に用いた温度センサを配置して温度を測定する測定位置と空気流抵抗調整部材の位置関係を示す図である。
図7】(A)は組電池内の中央の位置の電池温度を示す図であり、(B)は各測定位置における測定温度のバラツキを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ、本発明の蓄電池盤の実施の形態の一例について説明する。本実施の形態の蓄電池盤1は、図1(A)に示すように、4×4のマトリクス状に並んだ計16個の組電池3a,3bと、内部に組電池3a,3bを収納する筐体5と、筐体5内に冷却用の空気を引き込む誘引送風装置7とを備えている。
【0016】
誘引送風装置7は筐体5の天板部5Aに設けられており、筐体5の上部の空気を誘引して外部に吐き出し、これにより図示していない空気吸入口(筐体5の底板部5Bまたは筐体5の側壁部5Cの底板部5B寄りの位置に設けられている。)から筐体5内に外部の空気が取り入れられる。筐体5の正面側の側壁部を構成する扉部材は、図示を省略してある。また組電池が置かれる設置棚も図示を省略してある。筐体5の底板部5Bから取り入れられた外部の空気は、各組電池3a,3bの間の空間を通過する間に各組電池3a,3bの表面から熱を吸熱して、誘引送風装置7を通して筐体5の外部に排出される。従って、筐体5内に取り入れられたばかりの空気よりも、排出される空気の方が温度が高い。
【0017】
図1(B)及び(C)及び図2図3に示すように、各組電池3a,3bは、それぞれ6本の円筒状蓄電池9を備えている。図3においては、蓄電池9は破線で示してある。なお以下円筒状蓄電池を単に蓄電池を言う。横方向に並んだ3本の蓄電池9により1列の電池列が構成されている。そして2列の電池列を上下方向に離して配置することにより、6本の蓄電池9を含む電池群が構成されている。電池群が一対の絶縁樹脂製のホルダ11,11間に保持されて各組電池3a,3bがそれぞれ構成されている。本実施の形態では、一対のホルダ11,11は存在を示すためだけに概略的に示してある。また各蓄電池9間を電気的に接続するバスバ、測定用の配線及び制御回路については図示を省略してある。この組電池3a,3bの各蓄電池9は、ホルダ11,11間に保持されている。なおホルダ11,11間には、補強用バーも架け渡されているが、図示を省略してある。各蓄電池9のホルダ11,11間に位置する部分は、空冷のために露出した状態になっている。
【0018】
2列の電池列10A及び10Bは、それぞれ3本の蓄電池9が、該蓄電池9の長手方向と直交する第1の方向である図1で見たときの水平方向に所定の間隔をあけて並べられて構成される。電池群8は、2列の電池列10A及び10Bが、長手方向及び第1の方向と直交する第2の方向である図1で見たときの垂直方向に所定の間隔をあけて配置されて構成される。そして電池群8が、長手方向の両側にそれぞれの一面を対向して配置された一対のホルダ11(図1では奥の一方のみ表す)間に保持されている。
【0019】
組電池3a,3bが筐体5内に水平方向に並べられて構成される2つの組電池グループである上側組電池グループGuと下側組電池グループGlとは、誘引送風装置7が駆動されているときに、全ての組電池3a,3b内を空気が流れるように、筐体5内に上下方向に分けて配置されている。組電池3a,3b内には、誘引送風装置7によって発生する空気流の抵抗を調整するために、隣り合う4本の蓄電池9によって囲まれたそれぞれ2つの空間内に、上側組電池グループGuに属する組電池3aには空気流抵抗調整部材13aが2本ずつ配置され、下側組電池グループGlに属する組電池3bには空気流抵抗調整部材13bが、2本ずつ配置されている。空気流抵抗調整部材13a及び空気流抵抗調整部材13bは、絶縁樹脂材料によって筒状に形成された構造を有しており、それぞれ両端がホルダ11,11に固定されている。
【0020】
上下方向に隣接する2つの組電池グループにおいて、上側組電池グループGuに含まれる各組電池3a内の空気流抵抗は、下側組電池グループGlに含まれる各組電池3b内の空気流抵抗よりも小さくなるように、各組電池3a,3b内の空気流抵抗調整部材13a、13bの形状が定められている。なお、空気流抵抗調整部材13a,13bの内部には信号線が通されており、ホルダ11の一方に装填されている制御回路(図示していない)に、各蓄電池9ごとに検知された電圧を示す信号等を送信する。
【0021】
空気流抵抗調整部材13bは、組電池3b内を蓄電池9の長手方向に延びており、両端がそれぞれ一対のホルダ11,11の相互に対向する内壁部に固定されている。図4に示すように、空気流抵抗調整部材13bの長手方向と直交する方向の横断面形状の輪郭は、図4で見て上方向に向かって近付く第1の辺15及び第2の辺17と、下方向に向かって近付く第3の辺19及び第4の辺21とを有する。また、第1の辺15と第3の辺19との間に上下方向に延びる第5の辺23が、第2の辺17と第4の辺21との間に垂直方向に延びる第6の辺25が、第1の辺15と第2の辺17との間に左右方向に延びる第7の辺27が、第3の辺19と第4の辺21との間に水平方向に延びる第8の辺29がそれぞれ形成されている。第1の辺15〜第4の辺21の長さは同じで、第5の辺23〜第8の29の長さも同じであるが、第1の辺15〜第4の辺21よりも短い。対向する辺の4つの組(第1の辺15と第4の辺21、第2の辺17と第3の辺19、第5の辺23と第6の辺25、第7辺27と第8の辺29)は相互に平行であり、各角の角度は135°である。
【0022】
すなわち空気流抵抗調整部材13bの断面形状の輪郭の概形は、第1の辺15と第2の辺17との間の第7の辺27が最も上に位置し、第3の辺19と第4の辺21との間の第8の辺29が最も下に位置し、第1の辺15と第3の辺19との間の第5の辺23が最も左に位置し、第2の辺17と第4の辺21との間の第6の辺25が最も右に位置するように配置された八角形、または四隅が面取りされた正方形である。このような断面形状の輪郭の概形を有する空気流抵抗調整部材13bを、図4のような姿勢で、図1(A)及び(B)のように4本の蓄電池9によって囲まれた空間に配置すると、他の形状の空気流抵抗調整部材を配置した場合に比較して、組電池3a,3b内の(従って蓄電池盤1内の)空気流抵抗が減少して、冷却効率が向上する。空気流抵抗調整部材13aの断面形状の輪郭の概形は、空気流抵抗調整部材13bの寸法を小さくした相似形なので、説明を省略する。
【0023】
2つのタイプの組電池3a,3bは、空気流抵抗調整部材13a,13bの形状を除いて、同一の構成である。空気流抵抗調整部材を備えた同一の構成の組電池であれば、冷却用の空気が組電池内を通過する際の速度が速くなるにつれて、冷却効率が向上する。組電池3aと組電池3bとを比較すると、それぞれに備えられている空気流抵抗調整部材13aと空気流抵抗調整部材13bとの断面形状の輪郭の相違により、組電池内を流れる空気流の速度は、組電池3aの方が組電池3bよりも速くなる。
【0024】
蓄電池盤1の筐体5の天板部5Aに設けられた誘引送風装置7が、筐体5の上部から筐体5の空気を外部に排出し、筐体5の底板部から外部の空気を取り入れると、上側組電池グループGuに含まれる組電池3aには、下側組電池グループGlに含まれる組電池3bによって暖められて、より高い温度の空気が供給されるものの、各組電池3aの冷却効率が高いので、蓄電池の温度上昇を抑制することができる。逆に下側組電池グループGlに含まれる組電池3bは外部から取り入れられたばかりの、より低い温度の空気で冷却されるが、冷却効率が低くても、蓄電池の温度上昇は抑制される。その結果、上側組電池グループGuに含まれる組電池3a内の蓄電池9の温度と、下側組電池グループGlに含まれる組電池3bに含まれる蓄電池9の温度の差を小さくして、各蓄電池の温度のバラツキを小さくすることができる。
【0025】
よって本実施の形態によると、蓄電池盤1内を流れる空気の上流(下側組電池グループGlの位置)・下流(上側組電池グループGuの位置)のいずれに位置するかに拘わらず、各組電池3a,3b内の蓄電池9の温度の差を所定の範囲内にすることができる。従ってすべての組電池3a,3bが適正に充放電動作を遂行できるので、蓄電池盤1の性能を十分に発揮できるほか、組電池3a,3b内の一部の蓄電池9が過熱することによる不具合の発生を防止することができる。
【0026】
空気流抵抗調整部材13a,13bの長手方向と直交する方向の断面の輪郭形状は、上記実施の形態に限定されるものではない。空気流抵抗調整部材の長手方向と直交する方向の断面の輪郭形状の相違によって、その他の構成が同じであっても、電池群内の電池の温度上昇にバラツキが発生することを確認する試験を実施した。図5は、この確認試験に用いた空気流抵抗調整部材の長手方向と直交する方向の断面の輪郭形状と各部の寸法を示している。なお図5において、図面における上方向は、誘引送風装置が配置される方向である。ちなみに1番の形状が図1(B)の空気流抵抗調整部材の横断面形状であり、3番の形状が図1(C)の空気流抵抗調整部材の横断面形状である。なお寸法の単位はmmである。図6(A)及び(B)は、試験に用いた温度センサを配置して温度を測定する測定位置と空気流抵抗調整部材の位置関係を示している。図7(A)は、組電池内の中央の位置の電池温度を示しており、図7(B)は各測定位置における測定温度のバラツキを示している。この試験では、容量75Ahで電圧22.8Vのリチウムイオン電池を用いて、2本の蓄電池列間の距離(ピッチ)を5.5mmとし、蓄電池列内の蓄電池間の距離を8.0mmに設定した。そして誘引送風装置により組電池の上方から空気を誘引して、筐体内に配置した組電池内に空気流を流した。なお誘引送風装置の風量は、14000m3/hで、充放電電流は150Aで、充放電を1サイクル繰り返した後に温度を測定した。図7(A)及び(B)を見ると判るように、1番及び2番の形状を採用すると、冷却効率を上げることができることが判る。空気流抵抗調整部材の形状として、どのような形状を用いるかは、使用する組電池の構成に応じて適宜に決定することになる。
【0027】
なお、本実施の形態では、蓄電池としてリチウムイオン二次電池を用いたが、充放電可能な他の円筒形状の蓄電池、キャパシタなどを用いてもよいのはもちろんである。
【0028】
また本実施の形態においては、上下4段に並設された組電池を2段の組電池グループに分けたが、例えば上下3段以上の組電池をそれぞれ1段ずつの3つ以上の組電池グループに分け、少なくとも1つの組電池グループ同士の間に空気流抵抗の差を生じさせるように構成してもよい。また電池列を構成する蓄電池の個数、及び電池群を構成する電池列の数もそれぞれ任意である。例えば電池列は4本以上の蓄電池より構成され、3列以上の電池列が組み合わされて電池群が構成され、組電池は6本以上の蓄電池を含むようにしてもよい。空気流抵抗調整部材は、1つの組電池内において隣り合う4本の蓄電池により囲まれた空間全てに配置されることが好ましいが、配置されない箇所があってもよい。また空気流抵抗調整部材は1つの組電池内の隣り合う2本の蓄電池の間に配置してもよく、その場合には隣り合う組電池に属する蓄電池とともに、複数の蓄電池により囲まれた空間が形成されることもある。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明によれば、蓄電池盤内を循環して各蓄電池を冷却するための空気の上流・下流のいずれに位置するかに拘わらず、各蓄電池の温度のバラツキを小さくすることができるので、蓄電池盤の性能を十分発揮できるほか、蓄電池が過熱することによる不具合の発生を防止することができる。
【符号の説明】
【0030】
1 蓄電池盤
3a,3b 組電池
5 筐体
7 誘引送風装置
9 蓄電池
11 ホルダ
13a,13b 空気流抵抗調整部材
Gu 上側組電池グループ
Gl 下側組電池グループ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7