特許第6572900号(P6572900)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6572900潤滑油組成物、及び当該潤滑油組成物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6572900
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】潤滑油組成物、及び当該潤滑油組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C10M 139/00 20060101AFI20190902BHJP
   C10M 141/12 20060101ALI20190902BHJP
   C10M 163/00 20060101ALI20190902BHJP
   C10M 161/00 20060101ALI20190902BHJP
   C10M 133/16 20060101ALN20190902BHJP
   C10M 133/56 20060101ALN20190902BHJP
   C10M 159/20 20060101ALN20190902BHJP
   C10M 159/22 20060101ALN20190902BHJP
   C10M 159/24 20060101ALN20190902BHJP
   C10M 145/14 20060101ALN20190902BHJP
   C10N 10/02 20060101ALN20190902BHJP
   C10N 10/04 20060101ALN20190902BHJP
   C10N 10/12 20060101ALN20190902BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20190902BHJP
   C10N 30/04 20060101ALN20190902BHJP
   C10N 40/25 20060101ALN20190902BHJP
【FI】
   C10M139/00 A
   C10M141/12
   C10M163/00
   C10M161/00
   !C10M133/16
   !C10M133/56
   !C10M159/20
   !C10M159/22
   !C10M159/24
   !C10M145/14
   C10N10:02
   C10N10:04
   C10N10:12
   C10N30:00 Z
   C10N30:04
   C10N40:25
【請求項の数】18
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2016-548979(P2016-548979)
(86)(22)【出願日】2015年9月18日
(86)【国際出願番号】JP2015076808
(87)【国際公開番号】WO2016043333
(87)【国際公開日】20160324
【審査請求日】2018年4月4日
(31)【優先権主張番号】特願2014-191905(P2014-191905)
(32)【優先日】2014年9月19日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(74)【代理人】
【識別番号】100153866
【弁理士】
【氏名又は名称】滝沢 喜夫
(72)【発明者】
【氏名】田村 和志
【審査官】 上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−152301(JP,A)
【文献】 特表2013−536293(JP,A)
【文献】 特開2008−106255(JP,A)
【文献】 特開2005−306913(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M101/00〜177/00
C10N10/00〜80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基油と共に、
櫛形ポリマー(A1)を含む粘度指数向上剤(A)、
アルカリ金属ホウ酸塩(B1)と、アルカリ金属原子及びアルカリ土類金属原子から選ばれる金属原子を含有する有機金属系化合物(B2)とを含む清浄分散剤(B)、並びに、
モリブデン系摩擦調整剤を含む摩擦調整剤(C)を含有し、
アルカリ金属原子及びアルカリ土類金属原子の合計含有量が2000質量ppm以下であり、
櫛形ポリマー(A1)の含有量が0.1〜3質量%であり、
アルカリ金属ホウ酸塩(B1)の含有量が、アルカリ金属原子換算で、0.01〜0.035質量%である、潤滑油組成物。
【請求項2】
櫛形ポリマー(A1)の重量平均分子量(Mw)が、1千〜100万である、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項3】
櫛形ポリマー(A1)の含有量と、アルカリ金属ホウ酸塩(B1)のホウ素原子換算での含有量との比〔A1/B1〕が、12/1〜100/1である、請求項1又は2に記載の潤滑油組成物。
【請求項4】
清浄分散剤(B)が、さらに、アルケニルコハク酸イミド及びホウ素変性アルケニルコハク酸イミドから選ばれる1種以上のアルケニルコハク酸イミド系化合物(B3)を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の潤滑油組成物。
【請求項5】
アルカリ金属ホウ酸塩(B1)に含まれるアルカリ金属原子が、カリウム原子である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の潤滑油組成物。
【請求項6】
有機金属系化合物(B2)に含まれる金属原子が、ナトリウム原子、カルシウム原子、マグネシウム原子、又はバリウム原子である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の潤滑油組成物。
【請求項7】
有機金属系化合物(B2)が、金属サリシレート、金属フェネート、及び金属スルホネートから選ばれる1種以上である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の潤滑油組成物。
【請求項8】
前記潤滑油組成物の全量基準での前記モリブデン系摩擦調整剤の含有量が、モリブデン原子換算で、0.01〜0.15質量%である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の潤滑油組成物。
【請求項9】
ナトリウム原子、カルシウム原子、マグネシウム原子、及びバリウム原子の合計含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、1900質量ppm以下である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の潤滑油組成物。
【請求項10】
カルシウム原子の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、1900質量ppm以下である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の潤滑油組成物。
【請求項11】
有機金属系化合物(B2)のアルカリ金属原子及びアルカリ土類金属原子から選ばれる金属原子換算での含有量と、アルカリ金属ホウ酸塩(B1)のホウ素原子換算での含有量との比〔(B2)/(B1)〕が、1/1〜15/1である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の潤滑油組成物。
【請求項12】
カリウム原子の含有量が、当該潤滑油組成物の全量基準で、0.01〜0.10質量%である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の潤滑油組成物。
【請求項13】
櫛形ポリマー(A1)には該当しないポリメタクリレート系化合物の含有量が、前記潤滑油組成物中に含まれる櫛形ポリマー(A1)100質量部に対して、0〜30質量部である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の潤滑油組成物。
【請求項14】
前記基油が、API(米国石油協会)基油カテゴリーでグループ3に分類される鉱油及び合成油から選ばれる1種以上である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の潤滑油組成物。
【請求項15】
直噴過給ガソリンエンジンに用いられる、請求項1〜14のいずれか1項に記載の潤滑油組成物。
【請求項16】
基油と共に、
櫛形ポリマー(A1)を含む粘度指数向上剤(A)、
アルカリ金属ホウ酸塩(B1)と、アルカリ金属原子及びアルカリ土類金属原子から選ばれる金属原子を含有する有機金属系化合物(B2)とを含む清浄分散剤(B)、並びに、
モリブデン系摩擦調整剤を含む摩擦調整剤(C)を含有し、
カルシウム原子の含有量が1900質量ppm以下であり、
櫛形ポリマー(A1)の含有量が0.1〜3質量%であり、
アルカリ金属ホウ酸塩(B1)の含有量が、アルカリ金属原子換算で、0.01〜0.035質量%である、潤滑油組成物。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか1項に記載の潤滑油組成物を直噴過給ガソリンエンジンに用いる、潤滑油組成物の使用方法。
【請求項18】
基油に、
櫛形ポリマー(A1)を含む粘度指数向上剤(A)、
アルカリ金属ホウ酸塩(B1)と、アルカリ金属原子及びアルカリ土類金属原子から選ばれる金属原子を含有する有機金属系化合物(B2)とを含む清浄分散剤(B)、並びに、
モリブデン系摩擦調整剤を含む摩擦調整剤(C)を配合して、
アルカリ金属原子及びアルカリ土類金属原子の合計含有量が2000質量ppm以下もしくはカルシウム原子の含有量が1900質量ppm以下、櫛形ポリマー(A1)の含有量が0.1〜3質量%、アルカリ金属ホウ酸塩(B1)の含有量が、アルカリ金属原子換算で、0.01〜0.035質量%となるような潤滑油組成物を調製する工程(I)を有する、
潤滑油組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑油組成物、及び当該潤滑油組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球規模での環境規制はますます厳しくなり、自動車を取り巻く状況も、燃費規制、排出ガス規制等の側面から厳しくなる一方である。特に、自動車等の車両の燃費性能向上は大きな課題であり、その課題を解決するための一つの手段として、車両に使用される潤滑油組成物の省燃費性向上が求められている。
潤滑油組成物の省燃費性向上には、一般的に、潤滑油組成物に配合される粘度指数向上剤としてポリメタクリレート(PMA)が用いられる。
【0003】
しかしながら、一般的に、PMA等の粘度指数向上剤を含む潤滑油組成物は、高温高せん断条件下で使用すると、清浄性が低下してしまうことが知られている。そのため、潤滑油組成物中の金属系清浄剤の配合量を増やしたり、金属系清浄剤の好適な組み合わせの検討が行われている。
例えば、特許文献1では、潤滑油基油に、PMAやエチレン−プロピレン共重合体等の粘度指数向上剤と共に、窒素含有無灰性分散剤、金属含有清浄剤、アルカリ金属ホウ酸塩水和物、特定のジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛を所定量を配合して溶解もしくは分散されてなる潤滑油組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−306913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の潤滑油組成物は、ディーゼルエンジン用であり、省燃費性が十分ではない。また、近年、ガソリンエンジン車両においては、燃費向上のため直噴過給エンジンの導入が進んでいる。直噴過給エンジンに用いられる潤滑油組成物には、より高い省燃費性と清浄性が求められる。そのため、特許文献1に記載の潤滑油組成物は、直噴過給ガソリンエンジン用の潤滑油としては適合し難い。
さらに、潤滑油組成物の省燃費性を向上させるために、潤滑油組成物中にモリブデン系摩擦調整剤を配合することも行われているが、モリブデン系摩擦調整剤は、潤滑油組成物の清浄性を低下させるという問題があった。
潤滑油組成物の清浄性を向上させるために、潤滑油組成物中の金属系清浄剤の配合量を増やすことも行われている。しかしながら、直噴過給ガソリンエンジン用の潤滑油において、金属系清浄剤の配合量を増やすことで、エンジンオイルの着火に伴う異常燃焼(低速プレイグニッション;LSPI)が発生し易いとの弊害が生じることが分かっている。そのため、LSPIの発生防止の観点から、潤滑油組成物中の金属系清浄剤の配合量は極力低減する必要がある。
そのため、これらの問題点を解決し、清浄性、省燃費性、及びLSPI防止性をバランス良く向上させた、直噴過給ガソリンエンジンにも適用し得る潤滑油組成物が望まれていた。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、優れた清浄性、省燃費性、及びLSPI防止性を有する潤滑油組成物、及び当該潤滑油組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、基油と共に、粘度指数向上剤として櫛形ポリマーを用い、さらに、アルカリ金属ホウ酸塩と特定の有機金属系化合物とを含む清浄分散剤、並びに、モリブデン系摩擦調整剤を含有し、アルカリ金属原子及びアルカリ土類金属原子の含有量もしくはカルシウム原子の含有量を所定値以下に調製した潤滑油組成物が、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち本発明は、下記[1]〜[4]を提供する。
[1]基油と共に、
櫛形ポリマー(A1)を含む粘度指数向上剤(A)、
アルカリ金属ホウ酸塩(B1)と、アルカリ金属原子及びアルカリ土類金属原子から選ばれる金属原子を含有する有機金属系化合物(B2)とを含む清浄分散剤(B)、並びに、
モリブデン系摩擦調整剤を含む摩擦調整剤(C)を含有し、
アルカリ金属原子及びアルカリ土類金属原子の合計含有量が2000質量ppm以下である、潤滑油組成物。
[2]基油と共に、
櫛形ポリマー(A1)を含む粘度指数向上剤(A)、
アルカリ金属ホウ酸塩(B1)と、アルカリ金属原子及びアルカリ土類金属原子から選ばれる金属原子を含有する有機金属系化合物(B2)とを含む清浄分散剤(B)、並びに、
モリブデン系摩擦調整剤を含む摩擦調整剤(C)を含有し、
カルシウム原子の含有量が1900質量ppm以下である、潤滑油組成物。
[3]上記[1]又は[2]に記載の潤滑油組成物を直噴過給ガソリンエンジンに用いる、潤滑油組成物の使用方法。
[4]基油に、
櫛形ポリマー(A1)を含む粘度指数向上剤(A)、
アルカリ金属ホウ酸塩(B1)と、アルカリ金属原子及びアルカリ土類金属原子から選ばれる金属原子を含有する有機金属系化合物(B2)とを含む清浄分散剤(B)、並びに、
モリブデン系摩擦調整剤を含む摩擦調整剤(C)を配合して、
アルカリ金属原子及びアルカリ土類金属原子の合計含有量が2000質量ppm以下もしくはカルシウム原子の含有量が1900質量ppm以下となるような潤滑油組成物を調製する工程(I)を有する、潤滑油組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の潤滑油組成物は、優れた清浄性、省燃費性、及びLSPI防止性を有しており、直噴過給ガソリンエンジンにも適合し得る高いレベルの性状を有する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書において、潤滑油組成物中のアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、ホウ素原子、モリブデン原子、及びリン原子の含有量は、JPI−5S−38−92に準拠して測定された値であり、窒素原子の含有量は、JIS K2609に準拠して測定された値を意味する。
また、本明細書において、「40℃又は100℃における動粘度」及び「粘度指数」は、JIS K 2283に準拠して測定された値を意味する。
【0011】
本明細書において、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定される標準ポリスチレン換算の値であり、具体的には、下記の測定装置及び測定条件で測定される標準ポリスチレン換算の値である。
(測定装置)
ゲル浸透クロマトグラフ装置(アジレント社製、「1260型HPLC」)
(測定条件)
・カラム:「Shodex LF404」を2本順次連結したもの
・カラム温度:35℃
・展開溶媒:クロロホルム
・流速:0.3mL/min
【0012】
本明細書において、「アルカリ金属原子」としては、リチウム原子(Li)、ナトリウム原子(Na)、カリウム原子(K)、ルビジウム原子(Rb)、セシウム原子(Cs)、及びフランシウム原子(Fr)を指す。
また、「アルカリ土類金属原子」としては、ベリリウム原子(Be)、マグネシウム原子(Mg)、カルシウム原子(Ca)、ストロンチウム原子(Sr)、及びバリウム原子(Ba)を指す。
【0013】
さらに、本明細書において、例えば、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及び「メタクリレート」の双方を示す語として用いており、他の類似用語や同様の標記についても、同じである。
【0014】
〔潤滑油組成物〕
本発明の潤滑油組成物は、基油と共に、櫛形ポリマー(A1)(成分(A1))を含む粘度指数向上剤(A)(成分(A))、アルカリ金属ホウ酸塩(B1)(成分(B1))と、アルカリ金属原子及びアルカリ土類金属原子から選ばれる金属原子を含有する有機金属系化合物(B2)(成分(B2))とを含む清浄分散剤(B)(成分(B))、並びに、モリブデン系摩擦調整剤を含む摩擦調整剤(C)(成分(C))を含有する。
本発明の一態様の潤滑油組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、さらに耐摩耗剤や酸化防止剤を含有することが好ましく、これら以外の汎用添加剤を含有していてもよい。
【0015】
本発明の潤滑油組成物において、アルカリ金属原子及びアルカリ土類金属原子の合計含有量は、潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、2000質量ppm以下である。
アルカリ金属原子及びアルカリ土類金属原子の合計含有量が2000質量ppmを超えると、得られる潤滑油組成物の自然発火温度が低くなり、LSPI発生の頻度が高くなる傾向にある。
LSPI防止性の向上の観点から、アルカリ金属原子及びアルカリ土類金属原子の合計含有量としては、潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは1800質量ppm以下、より好ましくは1700質量ppm以下、更に好ましくは1500質量ppm以下、より更に好ましくは1300質量ppm以下である。
一方、清浄性の向上の観点から、アルカリ金属原子及びアルカリ土類金属原子の合計含有量は、潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは100質量ppm以上、より好ましくは200質量ppm以上、更に好ましくは300質量ppm以上、より更に好ましくは500質量ppm以上である。
【0016】
本発明の別態様の潤滑油組成物において、カルシウム原子の含有量は、潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、LSPI防止性の向上の観点から、1900質量ppm以下であり、好ましくは1700質量ppm以下、より好ましくは1500質量ppm以下、更に好ましくは1300質量ppm以下、より更に好ましくは1100質量ppm以下であり、清浄性の向上の観点から、好ましくは100質量ppm以上、より好ましくは200質量ppm以上、更に好ましくは300質量ppm以上、より更に好ましくは500質量ppm以上である。
【0017】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、ナトリウム原子、マグネシウム原子、カルシウム原子、及びバリウム原子の合計含有量は、潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、LSPI防止性の向上の観点から、好ましくは1900質量ppm以下、好ましくは1700質量ppm以下、より好ましくは1500質量ppm以下、更に好ましくは1300質量ppm以下、より更に好ましくは1100質量ppm以下であり、清浄性の向上の観点から、好ましくは100質量ppm以上、より好ましくは200質量ppm以上、更に好ましくは300質量ppm以上、より更に好ましくは500質量ppm以上である。
【0018】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、アルカリ土類金属の合計含有量は、潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、LSPI防止性の向上の観点から、好ましくは1900質量ppm以下、好ましくは1700質量ppm以下、より好ましくは1500質量ppm以下、更に好ましくは1300質量ppm以下、より更に好ましくは1100質量ppm以下であり、清浄性の向上の観点から、好ましくは100質量ppm以上、より好ましくは200質量ppm以上、更に好ましくは300質量ppm以上、より更に好ましくは500質量ppm以上である。
【0019】
なお、上述の本発明の潤滑油組成物中に含まれる、各要件で所定の金属原子の含有量には、成分(B1)及び(B2)に由来する当該金属原子の含有量だけでなく、これらの成分以外の化合物に由来する当該金属原子の含有量も含まれる。
【0020】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、基油、成分(A)、成分(B)、及び成分(C)の合計含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは70質量%以上、より好ましくは75質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは85質量%以上、より更に好ましくは90質量%以上であり、また、通常100質量%以下、より好ましくは99.9質量%以下、更に好ましくは99質量%以下である。
【0021】
<基油>
本発明の一態様の潤滑油組成物に含まれる基油としては、鉱油であってもよく、合成油であってもよく、鉱油と合成油との混合油を用いてもよい。
鉱油としては、例えば、パラフィン基系、中間基系、ナフテン基系等の原油を常圧蒸留して得られる常圧残油;当該常圧残油を減圧蒸留して得られる留出油;当該留出油を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製等の精製処理の1つ以上の処理を施した鉱油及びワックス;フィッシャー・トロプシュ法等により製造されるワックス(GTLワックス(Gas To Liquids WAX))を異性化することで得られる鉱油等が挙げられる。
これらの中でも、潤滑油組成物のLSPI防止性の向上の観点から、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製等の精製処理の1つ以上の処理を施した鉱油及びワックスが好ましく、API(米国石油協会)基油カテゴリーのグループ2及びグループ3に分類される鉱油がより好ましく、当該グループ3に分類される鉱油が更に好ましい。
【0022】
合成油としては、例えば、ポリブテン、及びα−オレフィン単独重合体又は共重合体(例えば、エチレン−α−オレフィン共重合体等の炭素数8〜14のα−オレフィン単独重合体又は共重合体)等のポリα−オレフィン;ポリオールエステル、二塩基酸エステル、リン酸エステル等の各種エステル;ポリフェニルエーテル等の各種エーテル;ポリグリコール;アルキルベンゼン;アルキルナフタレン;フィッシャー・トロプシュ法等により製造されるワックス(GTLワックス)を異性化することで得られる合成油等が挙げられる。
これらの合成油の中でも、ポリα−オレフィンが好ましい。
【0023】
本発明の一態様で用いる基油としては、潤滑油組成物のLSPI防止性の向上の観点、及び基油自身の酸化安定性の観点から、API(米国石油協会)基油カテゴリーのグループ2及びグループ3に分類される鉱油、並びに合成油から選ばれる1種以上が好ましく、当該グループ3に分類される鉱油、並びにポリα−オレフィンから選ばれる1種以上がより好ましい。
なお、本発明の一態様において、これらの基油は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
本発明の一態様で用いる基油の100℃における動粘度としては、好ましくは2.0〜20.0mm/s、より好ましくは2.0〜15.0mm/s、更に好ましくは2.0〜10.0mm/s、より更に好ましくは2.0〜7.0mm/sである。
当該基油の100℃における動粘度が2.0mm/s以上であれば、蒸発損失が少ないため好ましい。一方、当該基油の100℃における動粘度が20.0mm/s以下であれば、粘性抵抗による動力損失を抑えることができ、燃費改善効果が得られるため好ましい。
【0025】
また、本発明の一態様で用いる基油の粘度指数としては、温度変化による粘度変化を抑えると共に、省燃費性の向上の観点から、好ましくは80以上、より好ましくは90以上、更に好ましくは100以上である。
なお、本発明の一態様の潤滑油組成物において、2種以上の基油を組み合わせた混合油を用いる場合、当該混合油の動粘度及び粘度指数が上記範囲であることが好ましい。
【0026】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、基油の含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは55質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは65質量%以上、より更に好ましくは70質量%以上であり、また、好ましくは99質量%以下、より好ましくは95質量%以下である。
【0027】
<粘度指数向上剤(A)>
本発明の潤滑油組成物は、櫛形ポリマー(A1)を含む粘度指数向上剤(A)を含有する。
一般的な粘度指数向上剤であるPMA等を含有する潤滑油組成物は、高温高せん断条件下で使用すると、清浄性が低下することが知られている。
これに対して、本発明者らは、潤滑油組成物中に粘度指数向上剤として櫛形ポリマー(A1)を配合することで、従来のPMA等とは異なり、逆に清浄性を向上させる効果があることを見出した。
その見地を基に、本発明者らは、更なる検討を重ね、櫛形ポリマー(A1)を含む粘度指数向上剤(A)と共に、アルカリ金属ホウ酸塩(B1)と有機金属系化合物(B2)とを含む清浄分散剤(B)と組み合わせて含有することで、高温での清浄性を著しく向上した潤滑油組成物となり得ることを見出し、本発明を完成させたものである。
【0028】
なお、本発明の一態様で用いる粘度指数向上剤(A)は、本発明の効果を損なわない範囲において、櫛形ポリマー(A1)には該当しない他の樹脂分や、櫛形ポリマー(A1)の合成時に使用した未反応の原料化合物、触媒、及び合成時に生じた櫛形ポリマーには該当しない樹脂分等の副生成物を含有してもよい。
なお、本明細書において、上記の「樹脂分」とは、重量平均分子量(Mw)が1000以上で、一定の繰り返し単位を有する重合体を意味する。
【0029】
櫛形ポリマー(A1)には該当しない他の樹脂分としては、例えば、ポリメタクリレート、分散型ポリメタクリレート、オレフィン系共重合体(例えば、エチレン−プロピレン共重合体など)、分散型オレフィン系共重合体、スチレン系共重合体(例えば、スチレン−ジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体など)等の櫛形ポリマーには該当しない重合体が挙げられる。
【0030】
これらの他の樹脂分は、粘度指数向上剤(A)としてではなく、例えば、ポリメタクリレート系化合物であれば、流動点降下剤等の汎用添加剤として含有する場合もある。
ただし、本発明の一態様の潤滑油組成物において、当該潤滑油組成物の高温高せん断条件下での清浄性の低下を抑制する観点から、櫛形ポリマー(A1)には該当しない他の樹脂分(特に、ポリメタクリレート系化合物)の含有量は、少ない程好ましい。
櫛形ポリマー(A1)には該当しないポリメタクリレート系化合物の含有量は、潤滑油組成物中に含まれる櫛形ポリマー(A1)100質量部に対して、好ましくは0〜30質量部、より好ましくは0〜25質量部、より好ましくは0〜20質量部、更に好ましくは0〜15質量部、更に好ましくは0〜10質量部、より更に好ましくは0〜5質量部である。
【0031】
また、上述の副生成物の含有量は、粘度指数向上剤(A)中の固形分の全量(100質量%)基準で、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは1質量%以下、より更に好ましくは0.1質量%以下である。
なお、上記の「粘度指数向上剤(A)中の固形分」とは、粘度指数向上剤(A)から希釈油を除いた成分を意味し、櫛形ポリマー(A1)だけでなく、上述の櫛形ポリマー(A1)には該当しない他の樹脂分や副生成物も含まれる。
【0032】
本発明の一態様で用いる粘度指数向上剤(A)中の櫛形ポリマー(A1)の含有量は、粘度指数向上剤(A)中の前記固形分の全量(100質量%)基準で、好ましくは60〜100質量%、より好ましくは70〜100質量%、より好ましくは80〜100質量%、更に好ましくは90〜100質量%、更に好ましくは95〜100質量%、より更に好ましくは99〜100質量%である。
【0033】
本発明の一態様で用いる粘度指数向上剤(A)は、樹脂分として、櫛形ポリマー(A1)を含むものであるが、通常はハンドリング性や上述の基油への溶解性を考慮し、この櫛形ポリマー(A1)等の樹脂分を含む前記固形分が、鉱油や合成油等の希釈油により溶解された溶液の形態で市販されていることが多い。
本発明の一態様で用いる粘度指数向上剤(A)が上記溶液の形態である場合、当該溶液の前記固形分濃度としては、当該溶液の全量(100質量%)基準で、通常10〜50質量%である。
【0034】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、粘度指数向上剤(A)の含有量は、粘度特性を向上させ、省燃費性能を良好とする観点から、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.1〜20質量%、より好ましくは0.12〜10質量%、より好ましくは0.15〜7質量%、更に好ましくは0.2〜5質量%、より更に好ましくは0.25〜3質量%である。
なお、本明細書において、上記「粘度指数向上剤(A)の含有量」は、櫛形ポリマー(A1)や上述の他の樹脂分を含む固形分量であって、希釈油の質量は含まれない。
【0035】
以下、本発明の一態様で用いる粘度指数向上剤(A)が含有する「櫛形ポリマー(A1)」について説明する。
【0036】
<櫛形ポリマー(A1)>
本発明で用いる粘度指数向上剤(A)が含有する「櫛形ポリマー」とは、高分子量の側鎖が出ている三叉分岐点を主鎖に数多くもつ構造を有するポリマーを指す。
このような構造を有する櫛形ポリマー(A1)としては、マクロモノマー(I’)に由来する構成単位(I)を少なくとも有する重合体が好ましい。この構成単位(I)が、上記の「高分子量の側鎖」に該当する。
なお、本発明において、上記の「マクロモノマー」とは、重合性官能基を有する高分子量モノマーのことを意味し、末端に重合性官能基を有する高分子量モノマーであることが好ましい。
【0037】
マクロモノマー(I’)の数平均分子量(Mn)としては、好ましくは200以上、より好ましくは500以上、更に好ましくは600以上、より更に好ましくは700以上であり、また、好ましくは200,000以下、より好ましくは100,000以下、更に好ましくは50,000以下、より更に好ましくは20,000以下である。
【0038】
マクロモノマー(I’)が有する重合性官能基としては、例えば、アクリロイル基(CH=CH−COO−)、メタクリロイル基(CH=CCH−COO−)、エテニル基(CH=CH−)、ビニルエーテル基(CH=CH−O−)、アリル基(CH=CH−CH−)、アリルエーテル基(CH=CH−CH−O−)、CH=CH−CONH−で表される基、CH=CCH−CONH−で表される基等が挙げられる。
【0039】
マクロモノマー(I’)は、上記重合性官能基以外に、例えば、以下の一般式(i)〜(iii)で表される繰り返し単位を1種以上有していてもよい。
【化1】
【0040】
上記一般式(i)中、Rは、炭素数1〜10の直鎖又は分岐のアルキレン基を示し、具体的には、メチレン基、エチレン基、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基、1,2−ブチレン基、1,3−ブチレン基、1,4−ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、イソプロピル基、イソブチル基、2−エチルヘキシレン基等が挙げられる。
上記一般式(ii)中、Rは、炭素数2〜4の直鎖又は分岐のアルキレン基を示し、具体的には、エチレン基、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基、1,2−ブチレン基、1,3−ブチレン基、1,4−ブチレン基等が挙げられる。
上記一般式(iii)中、Rは、水素原子又はメチル基を示す。
また、Rは炭素数1〜10の直鎖又は分岐のアルキル基を示し、具体的には、メチル基、エチル基,n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、t−ペンチル基、イソヘキシル基、t−ヘキシル基、イソヘプチル基、t−ヘプチル基、2−エチルヘキシル基、イソオクチル基、イソノニル基、イソデシル基等が挙げられる。
なお、上記一般式(i)〜(iii)で表される繰り返し単位をそれぞれ複数有する場合には、R、R、R、Rは、それぞれ同一であってもよく、互いに異なるものであってもよい。
【0041】
なお、マクロモノマー(I’)が、前記一般式(i)〜(iii)から選ばれる2種以上の繰り返し単位を有する共重合体である場合、共重合の形態としては、ブロック共重合体であってもよく、ランダム共重合体であってもよい。
【0042】
本発明の一態様で用いる櫛形ポリマー(A1)は、1種類のマクロモノマー(I’)に由来する構成単位(I)のみからなる単独重合体でもよく、2種類以上のマクロモノマー(I’)に由来する構成単位(I)を含む共重合体であってもよい。
また、本発明の一態様で用いる櫛形ポリマー(A1)は、マクロモノマー(I’)に由来する構成単位(I)と共に、マクロモノマー(I’)以外の他のモノマー(II’)に由来する構成単位(II)を含む共重合体であってもよい。
このような櫛形ポリマー(A1)の具体的な構造としては、モノマー(II’)に由来する構成単位(II)を含む主鎖に対して、マクロモノマー(I’)に由来する構成単位(I)を含む側鎖を有する共重合体が好ましい。
【0043】
モノマー(II’)としては、例えば、下記一般式(a1)で表される単量体(a)、アルキル(メタ)アクリレート(b)、窒素原子含有ビニル単量体(c)、水酸基含有ビニル単量体(d)、リン原子含有単量体(e)、脂肪族炭化水素系ビニル単量体(f)、脂環式炭化水素系ビニル単量体(g)、芳香族炭化水素系ビニル単量体(h)、ビニルエステル類(i)、ビニルエーテル類(j)、ビニルケトン類(k)、エポキシ基含有ビニル単量体(l)、ハロゲン元素含有ビニル単量体(m)、不飽和ポリカルボン酸のエステル(n)、(ジ)アルキルフマレート(o)、及び(ジ)アルキルマレエート(p)等が挙げられる。
なお、モノマー(II’)としては、芳香族炭化水素系ビニル単量体(h)以外の単量体が好ましい。
【0044】
(下記一般式(a1)で表される単量体(a))
【化2】
【0045】
上記一般式(a1)中、R11は、水素原子又はメチル基を示す。
12は、単結合、炭素数1〜10の直鎖又は分岐のアルキレン基、−O−、もしくは−NH−を示す。
13は、炭素数2〜4の直鎖又は分岐のアルキレン基を示す。また、nは1以上の整数(好ましくは1〜20の整数、より好ましくは1〜5の整数)を示す。なお、nが2以上の整数の場合、複数のR13は、同一であってもよく、異なっていてもよく、さらに、(R13O)部分は、ランダム結合でもブロック結合でもよい。
14は、炭素数1〜60(好ましくは10〜50、より好ましくは20〜40)の直鎖又は分岐のアルキル基を示す。
上記の「炭素数1〜10の直鎖又は分岐のアルキレン基」、「炭素数2〜4の直鎖又は分岐のアルキレン基」、及び「炭素数1〜60の直鎖又は分岐のアルキル基」の具体的な基としては、上述の一般式(i)〜(iii)に関する記載で例示した基と同じものが挙げられる。
【0046】
(アルキル(メタ)アクリレート(b))
アルキル(メタ)アクリレート(b)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソ−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2−t−ブチルヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、3−イソプロピルヘプチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
アルキル(メタ)アクリレート(b)が有するアルキル基の炭素数としては、好ましくは1〜30、より好ましくは1〜26、更に好ましくは1〜10である。
【0047】
(窒素原子含有ビニル単量体(c))
窒素原子含有ビニル単量体(c)としては、例えば、アミド基含有ビニル単量体(c1)、ニトロ基含有単量体(c2)、1級アミノ基含有ビニル単量体(c3)、2級アミノ基含有ビニル単量体(c4)、3級アミノ基含有ビニル単量体(c5)、及びニトリル基含有ビニル単量体(c6)等が挙げられる。
【0048】
アミド基含有ビニル単量体(c1)としては、例えば、(メタ)アクリルアミド;N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド及びN−n−又はイソブチル(メタ)アクリルアミド等のモノアルキルアミノ(メタ)アクリルアミド;N−メチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N−エチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピルアミノ−n−ブチル(メタ)アクリルアミド及びN−n−又はイソブチルアミノ−n−ブチル(メタ)アクリルアミド等のモノアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド;N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド及びN,N−ジ−n−ブチル(メタ)アクリルアミド等のジアルキルアミノ(メタ)アクリルアミド;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド及びN,N−ジ−n−ブチルアミノブチル(メタ)アクリルアミド等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド;N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−n−又はイソプロピオニルアミド及びN−ビニルヒドロキシアセトアミド等のN−ビニルカルボン酸アミド;等が挙げられる。
【0049】
ニトロ基含有単量体(c2)としては、例えば、4−ニトロスチレン等が挙げられる。
【0050】
1級アミノ基含有ビニル単量体(c3)としては、例えば、(メタ)アリルアミン及びクロチルアミン等の炭素数3〜6のアルケニル基を有するアルケニルアミン;アミノエチル(メタ)アクリレート等の炭素数2〜6のアルキル基を有するアミノアルキル(メタ)アクリレート;等が挙げられる。
【0051】
2級アミノ基含有ビニル単量体(c4)としては、例えば、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のモノアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート;ジ(メタ)アリルアミン等の炭素数6〜12のジアルケニルアミン;等が挙げられる。
【0052】
3級アミノ基含有ビニル単量体(c5)としては、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート;モルホリノエチル(メタ)アクリレート等の窒素原子を有する脂環式(メタ)アクリレート;ジフェニルアミン(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノスチレン、4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、N−ビニルピロール、N−ビニルピロリドン及びN−ビニルチオピロリドン等の芳香族ビニル系単量体;及びこれらの塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩又は低級アルキル(炭素数1〜8)モノカルボン酸(酢酸及びプロピオン酸等)塩;等が挙げられる。
【0053】
ニトリル基含有ビニル単量体(c6)としては、例えば、(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。
【0054】
(水酸基含有ビニル単量体(d))
水酸基含有ビニル単量体(d)としては、例えば、ヒドロキシル基含有ビニル単量体(d1)、及びポリオキシアルキレン鎖含有ビニル単量体(d2)等が挙げられる。
【0055】
ヒドロキシル基含有ビニル単量体(d1)としては、例えば、p−ヒドロキシスチレン等のヒドロキシル基含有芳香族ビニル単量体;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、及び2−又は3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の炭素数2〜6のアルキル基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;N,N−ジヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ−2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミド等の炭素数1〜4のアルキル基を有するモノ−又はジ−ヒドロキシアルキル置換(メタ)アクリルアミド;ビニルアルコール;(メタ)アリルアルコール、クロチルアルコール、イソクロチルアルコール、1−オクテノール及び1−ウンデセノール等の炭素数3〜12のアルケノール;1−ブテン−3−オール、2−ブテン−1−オール及び2−ブテン−1,4−ジオール等の炭素数4〜12のアルケンモノオール又はアルケンジオール;2−ヒドロキシエチルプロペニルエーテル等の炭素数1〜6のアルキル基及び炭素数3〜10のアルケニル基を有するヒドロキシアルキルアルケニルエーテル;グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン、ジグリセリン、糖類及び蔗糖等の多価アルコールのアルケニルエーテル又は(メタ)アクリレート;等が挙げられる。
【0056】
ポリオキシアルキレン鎖含有ビニル単量体(d2)としては、例えば、ポリオキシアルキレングリコール(アルキレン基の炭素数2〜4、重合度2〜50)、ポリオキシアルキレンポリオール(上述の多価アルコールのポリオキシアルキレンエーテル(アルキレン基の炭素数2〜4、重合度2〜100))、ポリオキシアルキレングリコール又はポリオキシアルキレンポリオールのアルキル(炭素数1〜4)エーテルのモノ(メタ)アクリレート[ポリエチレングリコール(Mn:100〜300)モノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(Mn:130〜500)モノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(Mn:110〜310)(メタ)アクリレート、ラウリルアルコールエチレンオキサイド付加物(2〜30モル)(メタ)アクリレート及びモノ(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレン(Mn:150〜230)ソルビタン等]等が挙げられる。
【0057】
(リン原子含有単量体(e))
リン原子含有単量体(e)としては、例えば、リン酸エステル基含有単量体(e1)、及びホスホノ基含有単量体(e2)等が挙げられる。
【0058】
リン酸エステル基含有単量体(e1)としては、例えば、(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート及び(メタ)アクリロイロキシイソプロピルホスフェート等の炭素数2〜4のアルキル基を有する(メタ)アクリロイロキシアルキルリン酸エステル;リン酸ビニル、リン酸アリル、リン酸プロペニル、リン酸イソプロペニル、リン酸ブテニル、リン酸ペンテニル、リン酸オクテニル、リン酸デセニル及びリン酸ドデセニル等の炭素数2〜12のアルケニル基を有するリン酸アルケニルエステル;等が挙げられる。
【0059】
ホスホノ基含有単量体(e2)としては、例えば、(メタ)アクリロイロキシエチルホスホン酸等の炭素数2〜4のアルキル基を有する(メタ)アクリロイロキシアルキルホスホン酸;ビニルホスホン酸、アリルホスホン酸及びオクテニルホスホン酸等の炭素数2〜12のアルケニル基を有するアルケニルホスホン酸;等が挙げられる。
【0060】
(脂肪族炭化水素系ビニル単量体(f))
脂肪族炭化水素系ビニル単量体(f)としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、イソブチレン、ペンテン、ヘプテン、ジイソブチレン、オクテン、ドデセン及びオクタデセン等の炭素数2〜20のアルケン;ブタジエン、イソプレン、1,4−ペンタジエン、1,6−ヘプタジエン及び1,7−オクタジエン等の炭素数4〜12のアルカジエン;等が挙げられる。
脂肪族炭化水素系ビニル単量体(f)の炭素数としては、好ましくは2〜30、より好ましくは2〜20、更に好ましくは2〜12である。
【0061】
(脂環式炭化水素系ビニル単量体(g))
脂環式炭化水素系ビニル単量体(g)としては、例えば、シクロヘキセン、(ジ)シクロペンタジエン、ピネン、リモネン、ビニルシクロヘキセン及びエチリデンビシクロヘプテン等が挙げられる。
脂環式炭化水素系ビニル単量体(g)の炭素数としては、好ましくは3〜30、より好ましくは3〜20、更に好ましくは3〜12である。
【0062】
(芳香族炭化水素系ビニル単量体(h))
芳香族炭化水素系ビニル単量体(h)としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、ビニルトルエン、2,4−ジメチルスチレン、4−エチルスチレン、4−イソプロピルスチレン、4−ブチルスチレン、4−フェニルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ベンジルスチレン、p−メチルスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、トリブロモスチレン、テトラブロモスチレン、4−クロチルベンゼン、インデン及び2−ビニルナフタレン等が挙げられる。
芳香族炭化水素系ビニル単量体(h)の炭素数としては、好ましくは8〜30、より好ましくは8〜20、更に好ましくは8〜18である。
【0063】
(ビニルエステル類(i))
ビニルエステル類(i)としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル及びオクタン酸ビニル等の炭素数2〜12の飽和脂肪酸のビニルエステル等が挙げられる。
【0064】
(ビニルエーテル類(j))
ビニルエーテル類(j)としては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、及び2−エチルヘキシルビニルエーテル等の炭素数1〜12のアルキルビニルエーテル;フェニルビニルエーテル等の炭素数6〜12のアリールビニルエーテル;ビニル−2−メトキシエチルエーテル、及びビニル−2−ブトキシエチルエーテル等の炭素数1〜12のアルコキシアルキルビニルエーテル;等が挙げられる。
【0065】
(ビニルケトン類(k))
ビニルケトン類(k)としては、例えば、メチルビニルケトン、及びエチルビニルケトン等の炭素数1〜8のアルキルビニルケトン;フェニルビニルケトン等の炭素数6〜12のアリールビニルケトン等が挙げられる。
【0066】
(エポキシ基含有ビニル単量体(l))
エポキシ基含有ビニル単量体(l)としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アリルエーテル等が挙げられる。
【0067】
(ハロゲン元素含有ビニル単量体(m))
ハロゲン元素含有ビニル単量体(m)としては、例えば、塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、塩化(メタ)アリル及びハロゲン化スチレン(ジクロロスチレン等)等が挙げられる。
【0068】
(不飽和ポリカルボン酸のエステル(n))
不飽和ポリカルボン酸のエステル(n)としては、例えば、不飽和ポリカルボン酸のアルキルエステル、不飽和ポリカルボン酸のシクロアルキルエステル、不飽和ポリカルボン酸のアラルキルエステル等が挙げられ、不飽和カルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸等が挙げられる。
【0069】
((ジ)アルキルフマレート(o))
(ジ)アルキルフマレート(o)としては、例えば、モノメチルフマレート、ジメチルフマレート、モノエチルフマレート、ジエチルフマレート、メチルエチルフマレート、モノブチルフマレート、ジブチルフマレート、ジペンチルフマレート、ジヘキシルフマレート等が挙げられる。
【0070】
((ジ)アルキルマレエート(p))
(ジ)アルキルマレエート(p)としては、例えば、モノメチルマレエート、ジメチルマレエート、モノエチルマレエート、ジエチルマレエート、メチルエチルマレエート、モノブチルマレエート、ジブチルマレエート等が挙げられる。
【0071】
本発明の一態様で用いる櫛形ポリマーの重量平均分子量(Mw)としては、粘度特性を向上させ、省燃費性能を良好とする観点から、好ましくは1千〜100万、より好ましくは5千〜80万、更に好ましくは1万〜65万、より更に好ましくは3万〜50万である。
【0072】
本発明の一態様で用いる櫛形ポリマーの分子量分布(Mw/Mn)としては、粘度特性を向上させ、省燃費性能を良好とする観点から、好ましくは8.00以下、より好ましくは7.00以下、より好ましくは6.00以下、更に好ましくは5.60以下、更に好ましくは5.00以下、より更に好ましくは4.00以下である。なお、当該櫛形ポリマーの分子量分布が小さくなる程、粘度特性が向上し、省燃費性能が向上する傾向にある。
また、櫛形ポリマーの分子量分布の下限値としては特に制限はないが、櫛形ポリマーの分子量分布(Mw/Mn)としては、通常1.01以上、好ましくは1.05以上、より好ましくは1.10以上である。
【0073】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、櫛形ポリマー(A1)の含有量は、粘度特性を向上させ、省燃費性能を良好とする観点から、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.1〜20質量%、より好ましくは0.12〜10質量%、より好ましくは0.15〜7質量%、更に好ましくは0.2〜5質量%、より更に好ましくは0.25〜3質量%である。
なお、本明細書において、上記「櫛形ポリマー(A1)の含有量」には、当該櫛形ポリマーと共に含有される場合がある希釈油等の質量は含まれない。
【0074】
<清浄分散剤(B)>
本発明の潤滑油組成物は、アルカリ金属ホウ酸塩(B1)と、アルカリ金属原子及びアルカリ土類金属原子から選ばれる金属原子を含有する有機金属系化合物(B2)とを含む清浄分散剤(B)を含有する。
本発明の一態様において、清浄分散剤(B)は、上記成分(B1)及び(B2)を含むものであればよいが、より清浄性を向上させる観点から、さらに、アルケニルコハク酸イミド及びホウ素変性アルケニルコハク酸イミドから選ばれる1種以上のアルケニルコハク酸イミド系化合物(B3)(成分(B3))を含むことが好ましい。
なお、清浄分散剤(B)としては、上記成分(B1)〜(B3)以外の他の清浄分散剤を含有してもよい。
【0075】
本発明の一態様において、清浄分散剤(B)中の上記成分(B1)及び(B2)の合計含有量は、清浄分散剤(B)の全量(100質量%)基準で、通常1〜100質量%、好ましくは1〜80質量%、より好ましくは2〜70質量%、更に好ましくは5〜60質量%、より更に好ましくは10〜50質量%である。
【0076】
本発明の一態様において、清浄分散剤(B)中の上記成分(B1)〜(B3)の合計含有量は、清浄分散剤(B)の全量(100質量%)基準で、好ましくは70〜100質量%、より好ましくは80〜100質量%、更に好ましくは90〜100質量%、より更に好ましくは95〜100質量%である。
【0077】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、清浄分散剤(B)の含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.01〜20質量%、より好ましくは0.05〜15質量%、更に好ましくは0.1〜10質量%である。
【0078】
[アルカリ金属ホウ酸塩(B1)]
本発明の潤滑油組成物は、清浄分散剤(B)として、アルカリ金属ホウ酸塩(B1)を含む。
アルカリ金属ホウ酸塩(B1)に含まれるアルカリ金属原子としては、上述のものが挙げられるが、高温での清浄性の向上の観点から、カリウム原子又はナトリウム原子が好ましく、カリウム原子がより好ましい。
なお、ホウ酸塩は、ホウ素と酸素とを含み、且つ任意で水和された電気的に陽性な化合物(塩)である。ホウ酸塩の例として、ホウ酸イオン(BO3−)の塩やメタホウ酸イオン(BO)の塩等が挙げられる。なお、ホウ酸イオン(BO3−)は、例えば、三ホウ酸イオン(B)、四ホウ酸イオン(B2−)、五ホウ酸イオン(B)等の様々な多量体イオン(polymer ion)を形成し得る。
【0079】
本発明の一態様で用いるアルカリ金属ホウ酸塩(B1)としては、例えば、四ホウ酸ナトリウム、五ホウ酸ナトリウム、六ホウ酸ナトリウム、八ホウ酸ナトリウム、二ホウ酸ナトリウム、メタホウ酸カリウム、三ホウ酸カリウム、四ホウ酸カリウム、五ホウ酸カリウム、六ホウ酸カリウム、八ホウ酸カリウム等が挙げられ、下記一般式(B1−1)で表されるアルカリ金属ホウ酸塩が好ましい。
一般式(B1−1): MO1/2・mBO3/2
上記一般式(B1−1)中、Mはアルカリ金属原子を示し、カリウム原子(K)又はナトリウム原子(Na)が好ましく、カリウム原子(K)がより好ましい。mは2.5〜4.5の数を示す。
【0080】
また、本発明の一態様で用いるアルカリ金属ホウ酸塩(B1)は、水和物であってもよい。
本発明の一態様で成分(B1)として使用し得る水和物としては、例えば、Na・10HO、NaBO・4HO、KB・4HO、K・5HO、K・5HO、K・8HO、KB・4HO等が挙げられ、下記一般式(B1−2)で表されるアルカリ金属ホウ酸塩水和物が好ましい。
一般式(B1−2): MO1/2・mBO3/2・nH
上記一般式(B1−2)中、M、mは前記一般式(B1−1)と同じであり、nは0.5〜2.4の数を示す。
【0081】
本発明の一態様で用いるこれらのアルカリ金属ホウ酸塩(B1)中のホウ素原子とアルカリ金属原子との比〔ホウ素原子/アルカリ金属原子〕としては、好ましくは0.1/1以上、より好ましくは0.3/1以上、更に好ましくは0.5/1以上、より更に好ましくは0.7/1以上であり、また、好ましくは5/1以下、より好ましくは4.5/1以下、更に好ましくは3.25/1以下、より更に好ましくは2.8/1以下である。
【0082】
本発明の一態様で用いるこれらのアルカリ金属ホウ酸塩(B1)は、単独で又は2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、高温での清浄性の向上の観点、及び基油への溶解性の観点から、三ホウ酸カリウム(KB)及びその水和物(KB・nHO(nは0.5〜2.4の数))が好ましい。
【0083】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準でのアルカリ金属ホウ酸塩(B1)の含有量は、ホウ素原子換算で、好ましくは0.01〜0.10質量%、より好ましくは0.01〜0.07質量%、更に好ましくは0.01〜0.05質量%、より更に好ましくは0.012〜0.03質量%、特に好ましくは0.015〜0.028である。
当該含有量が0.01質量%以上であれば、高温での清浄性に優れた潤滑油組成物とすることができる。一方、当該含有量が0.10質量%以下であれば、アルカリ金属ホウ酸塩(B1)を潤滑油組成物に分散させやすい。
【0084】
本発明の一態様の潤滑油組成物中のホウ素原子の全量(100質量%)基準に対する、アルカリ金属ホウ酸塩(B1)に由来するホウ素原子の含有量は、好ましくは25質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは35質量%以上であり、また、通常100質量%以下、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下である。
【0085】
また、本発明の潤滑油組成物において、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準でのアルカリ金属ホウ酸塩(B1)の含有量は、上記観点から、アルカリ金属原子換算で、好ましくは0.01〜0.10質量%、より好ましくは0.01〜0.07質量%、更に好ましくは0.01〜0.05質量%、より更に好ましくは0.012〜0.04質量%、特に好ましくは0.015〜0.035%である。
【0086】
櫛形ポリマー(A1)の含有量と、アルカリ金属ホウ酸塩(B1)のホウ素原子換算での含有量との比〔A1/B1〕は、好ましくは12/1〜100/1、より好ましくは15/1〜85/1、更に好ましくは20/1〜70/1、より更に好ましくは25/1〜60/1である。
当該比が12/1以上であれば、粘度特性を良好とし、省燃費性能を向上させることができる。一方、当該比が100/1以下であれば、清浄性をより向上させた潤滑油組成物とすることができる。
なお、本明細書において、上記の「成分(B1)のホウ素原子換算での含有量」は、「成分(B1)に由来のホウ素原子の含有量」と同じである。
【0087】
また、上記と同様の観点から、櫛形ポリマー(A1)の含有量と、アルカリ金属ホウ酸塩(B1)のアルカリ金属原子換算での含有量との比〔A1/B1〕は、上記観点から、好ましくは12/1〜100/1、より好ましくは15/1〜85/1、更に好ましくは20/1〜70/1、より更に好ましくは25/1〜60/1である。
なお、本明細書において、上記の「成分(B1)のアルカリ金属原子換算での含有量」は、「成分(B1)に由来のアルカリ金属原子の含有量」と同じである。
【0088】
[有機金属系化合物(B2)]
本発明の潤滑油組成物は、清浄分散剤(B)として、アルカリ金属原子及びアルカリ土類金属原子から選ばれる金属原子を含有する有機金属系化合物(B2)を含む。
本発明において、「有機金属系化合物」とは、少なくとも上記金属原子、炭素原子、及び水素原子を含む化合物を意味し、当該化合物は、さらに酸素原子、硫黄原子、及び窒素原子等を含有してもよい。
【0089】
本発明の一態様で用いる有機金属系化合物(B2)に含まれる金属原子としては、上述のアルカリ金属原子及びアルカリ土類金属原子が挙げられるが、高温での清浄性の向上の観点から、ナトリウム原子、カルシウム原子、マグネシウム原子、又はバリウム原子が好ましく、カルシウム原子又はマグネシウム原子がより好ましく、カルシウム原子が更に好ましい。
【0090】
本発明の一態様で用いる有機金属系化合物(B2)としては、アルカリ金属原子及びアルカリ土類金属原子から選ばれる金属原子を含有する、金属サリシレート、金属フェネート、及び金属スルホネートから選ばれる1種以上であることが好ましく、金属スルホネートと、金属サリシレート及び金属フォネートから選ばれる1種以上との混合物であることがより好ましく、金属スルホネートと金属サリシレートとの混合物であることが更に好ましい。
【0091】
当該金属サリシレートとしては、下記一般式(B2−1)で表される化合物が好ましく、当該金属フェネートとしては、下記一般式(B2−2)で表される化合物が好ましく、当該金属スルホネートとしては、下記一般式(B2−3)で表される化合物が好ましい。
【0092】
【化3】
【0093】
上記一般式(B2−1)〜(B2−3)中、Mは、アルカリ金属原子及びアルカリ土類金属原子から選ばれる金属原子であり、ナトリウム原子(Na)、カルシウム原子(Ca)、マグネシウム原子(Mg)、又はバリウム原子(Ba)が好ましく、カルシウム原子(Ca)又はマグネシウム原子(Mg)がより好ましく、カルシウム原子(Ca)が更に好ましい。pはMの価数であり、1又は2である。qは、0以上の整数であり、好ましくは0〜3の整数である。Rは、水素原子又は炭素数1〜18の炭化水素基である。
Rとして選択し得る炭化水素基としては、例えば、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルケニル基、環形成炭素数3〜18のシクロアルキル基、環形成炭素数6〜18のアリール基、炭素数7〜18のアルキルアリール基、炭素数7〜18のアリールアルキル基等が挙げられる。
【0094】
本発明の一態様で用いる有機金属系化合物(B2)は、中性塩、塩基性塩、過塩基性塩及びこれらの混合物のいずれであってもよいが、中性塩と、塩基性塩及び過塩基性塩から選ばれる1種以上との混合物が好ましい。
当該混合物において、中性塩と、塩基性塩及び過塩基性塩から選ばれる1種以上との比〔中性塩/(過)塩基性塩〕は、好ましくは1/99〜99/1、より好ましくは10/99〜90/10、更に好ましくは20/80〜80/20である。
【0095】
本発明の一態様で用いる有機金属系化合物(B2)が中性塩である場合、当該中性塩の塩基価としては、好ましくは0〜30mgKOH/g、より好ましくは0〜25mgKOH/g、更に好ましくは0〜20mgKOH/gである。
本発明の一態様で用いる有機金属系化合物(B2)が塩基性塩又は過塩基性塩である場合、当該塩基性塩又は過塩基性塩の塩基価としては、好ましくは100〜600mgKOH/g、より好ましくは120〜550mgKOH/g、更に好ましくは160〜500mgKOH/g、より更に好ましくは200〜450mgKOH/gである。
なお、本明細書において、「塩基価」とは、JIS K2501「石油製品および潤滑油−中和価試験方法」の7.に準拠して測定される過塩素酸法による塩基価を意味する。
【0096】
本発明の一態様で用いるこれらの有機金属系化合物(B2)は、単独で又は2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、高温での清浄性の向上の観点、及び基油への溶解性の観点から、中性塩である金属スルホネートと、金属サリシレート及び金属フェネートから選ばれる1種以上の塩基性塩又は過塩基性塩との混合物であることが好ましく、中性塩である金属スルホネートと塩基性塩又は過塩基性塩である金属サリシレートとの混合物であることがより好ましい。
【0097】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準での有機金属系化合物(B2)の含有量は、アルカリ金属原子及びアルカリ土類金属原子から選ばれる金属原子換算で、好ましくは0.01〜0.20質量%、より好ましくは0.02〜0.18質量%、更に好ましくは0.03〜0.15質量%、より更に好ましくは0.05〜0.13質量%である。
当該含有量が0.01質量%以上であれば、高温での清浄性に優れた潤滑油組成物とすることができる。一方、当該含有量が0.20質量%以下であれば、LSPI防止性を良好である潤滑油組成物とすることができる。
【0098】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、有機金属系化合物(B2)のアルカリ金属原子及びアルカリ土類金属原子から選ばれる金属原子換算での含有量と、アルカリ金属ホウ酸塩(B1)のホウ素原子換算での含有量との比〔(B2)/(B1)〕は、高温での清浄性に優れ、LSPI防止性が良好である潤滑油組成物とする観点から、好ましくは1/1〜15/1、より好ましくは2/1〜12/1、更に好ましくは3/1〜10/1であり、より清浄性を向上させる観点からは、より更に好ましくは6/1〜10/1であり、よりLSPI防止性を向上させる観点からは、より更に好ましくは3/1〜5.5/1である。
なお、本明細書において、上記の「成分(B2)のアルカリ金属原子及びアルカリ土類金属原子から選ばれる金属原子換算での含有量」は、「成分(B2)に由来のアルカリ金属原子及びアルカリ土類金属原子から選ばれる金属原子の含有量」と同じである。
【0099】
[アルケニルコハク酸イミド系化合物(B3)]
本発明の一態様の潤滑油組成物は、高温での清浄性をより向上させる観点から、清浄分散剤(B)として、アルケニルコハク酸イミド及びホウ素変性アルケニルコハク酸イミドから選ばれる1種以上のアルケニルコハク酸イミド系化合物(B3)を含むことが好ましい。
本発明の一態様において、成分(B3)は、モノイミド構造及びビスイミド構造を含む化合物である。
【0100】
上記アルケニルコハク酸イミドとしては、下記一般式(B3−1)で表されるアルケニルコハク酸モノイミド、もしくは下記一般式(B3−2)で表されるアルケニルコハク酸ビスイミドが挙げられる。
また、ホウ素変性アルケニルコハク酸イミドとしては、下記一般式(B3−1)又は(B3−2)で表されるアルケニルコハク酸イミドのホウ素変性体が挙げられる。
【0101】
【化4】
【0102】
上記一般式(B3−1)、(B3−2)中、R、RA1及びRA2は、それぞれ独立に、重量平均分子量(Mw)が500〜3000(好ましくは1000〜3000)のアルケニル基である。
、RB1及びRB2は、それぞれ独立に、炭素数2〜5のアルキレン基である。
x1は1〜10の整数であり、好ましくは2〜5の整数、より好ましくは3又は4である。
x2は0〜10の整数であり、好ましくは1〜4の整数、より好ましくは2又は3である。
【0103】
、RA1及びRA2として選択し得るアルケニル基としては、例えば、ポリブテニル基、ポリイソブテニル基、エチレン−プロピレン共重合体等が挙げられ、これらの中でも、ポリブテニル基又はポリイソブテニル基が好ましい。
【0104】
アルケニルコハク酸イミドは、例えば、ポリオレフィンと無水マレイン酸との反応で得られるアルケニルコハク酸無水物を、ポリアミンと反応させることで製造することができる。
上記ポリオレフィンは、例えば、炭素数2〜8のα−オレフィンから選ばれる1種又は2種以上を重合して得られる重合体が挙げられるが、イソブテンと1−ブテンとの共重合体が好ましい。
また、上記ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ペンチレンジアミン等の単一ジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ジ(メチルエチレン)トリアミン、ジブチレントリアミン、トリブチレンテトラミン、及びペンタペンチレンヘキサミン等のポリアルキレンポリアミン;アミノエチルピペラジン等のピペラジン誘導体;等が挙げられる。
【0105】
ホウ素変性アルケニルコハク酸イミドは、例えば、上述のポリオレフィンと無水マレイン酸との反応で得られるアルケニルコハク酸無水物を、上述のポリアミン及びホウ素化合物と反応させることで製造することができる。
上記ホウ素化合物としては、例えば、酸化ホウ素、ハロゲン化ホウ素、ホウ酸、ホウ酸無水物、ホウ酸エステル、ホウ酸のアンモニウム塩等が挙げられる。
【0106】
本発明の一態様において、ホウ素変性アルケニルコハク酸イミドを構成するホウ素原子と窒素原子の比率〔B/N〕としては、高温での清浄性を向上させる観点から、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.6以上、更に好ましくは0.8以上、より更に好ましくは0.9以上である。
【0107】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準でのアルケニルコハク酸イミド系化合物(B3)の含有量は、窒素原子換算で、好ましくは0.001〜0.30質量%、より好ましくは0.005〜0.25質量%、より好ましくは0.01〜0.20質量%、より好ましくは0.02〜0.20質量%、更に好ましくは0.04〜0.16質量%、更に好ましくは0.05〜0.15質量%、より更に好ましくは0.06〜0.14質量%、特に好ましくは0.07〜0.12質量%である。
当該含有量が0.001質量%以上であれば、高温での清浄性をより向上させた潤滑油組成物とすることができる。一方、当該含有量が0.30質量%以下であれば、潤滑油組成物の動粘度を低く調整しやすく、省燃費性を向上させることができる。
【0108】
櫛形ポリマー(A1)の含有量と、アルケニルコハク酸イミド系化合物(B3)のホウ素原子換算での含有量との比〔A1/B3〕は、好ましくは1.6/1〜30/1、より好ましくは1.8/1〜20/1、更に好ましくは2.0/1〜16/1、より更に好ましくは3.0/1〜10/1である。
当該比が1.6/1以上であれば、粘度特性を良好とし、省燃費性能を向上させることができる。一方、当該比が30/1以下であれば、清浄性をより向上させた潤滑油組成物とすることができる。
なお、本明細書において、上記の「成分(B3)のホウ素原子換算での含有量」は、「成分(B3)に由来のホウ素原子の含有量」と同じである。
【0109】
なお、本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(B3)が、アルケニルコハク酸イミドとホウ素変性アルケニルコハク酸イミドとを共に含むことが好ましい。
アルケニルコハク酸イミドの窒素原子換算での含有量(i)と、ホウ素変性アルケニルコハク酸イミドのホウ素原子換算での含有量(ii)との比〔(i)/(ii)〕としては、好ましくは1/5〜20/1、より好ましくは1/2〜15/1、更に好ましくは1/1〜10/1、より更に好ましくは2.5/1〜6/1である。
【0110】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準での成分(B3)として含まれるホウ素変性アルケニルコハク酸イミドの含有量は、ホウ素原子換算で、好ましくは0.001〜0.015質量%、より好ましくは0.001〜0.10質量%、更に好ましくは0.003〜0.07質量%、より更に好ましくは0.005〜0.05質量%、特に好ましくは0.01〜0.04質量%である。
また、窒素原子換算でのホウ素変性アルケニルコハク酸イミドの含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.001〜0.10質量%、より好ましくは0.003〜0.07質量%、更に好ましくは0.005〜0.05質量%、より更に好ましくは0.01〜0.04質量%である。
【0111】
<摩擦調整剤(C)>
本発明の潤滑油組成物は、モリブデン系摩擦調整剤を含む摩擦調整剤を含有する。当該モリブデン系摩擦調整剤を含有することで、耐摩耗特性を向上させ、省燃費性に優れた潤滑油組成物とすることができる。
本発明の一態様で用いる当該モリブデン系摩擦調整剤としては、分子中にモリブデン(Mo)を含有する化合物であれば特に制限は無く、例えば、ジチオカルバミン酸モリブデン(MoDTC)、ジチオリン酸モリブデン(MoDTP)、モリブテン酸のアミン塩等が挙げられる。
これらの中でも、ジチオカルバミン酸モリブデン(MoDTC)又はジチオリン酸モリブデン(MoDTP)が好ましい。
【0112】
ジチオカルバミン酸モリブデン(MoDTC)としては、下記一般式(C−1)で表される化合物が好ましい。また、ジチオリン酸モリブデン(MoDTP)としては、下記一般式(C−2)で表される化合物が好ましい。
【化5】
【0113】
上記一般式(C−1)及び(C−2)中、R〜Rは、それぞれ独立に、炭素数5〜18(好ましくは5〜16、より好ましくは5〜12)の炭化水素基を示し、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
〜Xは、それぞれ独立に、酸素原子又は硫黄原子を示し、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
なお、基油に対する溶解性を向上させる観点から、上記一般式(C−1)及び(C−2)において、X〜X中の硫黄原子と酸素原子とのモル比〔硫黄原子/酸素原子〕が、好ましくは1/3〜3/1、より好ましくは1.5/2.5〜3/1である。
【0114】
〜Rとして選択し得る炭化水素基としては、例えば、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等の炭素数5〜18のアルキル基;オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基等の炭素数5〜18のアルケニル基;シクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基、エチルシクロヘキシル基、メチルシクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、プロピルシクロヘキシル基、ブチルシクロヘキシル基、ヘプチルシクロヘキシル基等の炭素数5〜18のシクロアルキル基;フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、ビフェニル基、ターフェニル基等の炭素数6〜18のアリール基;トリル基、ジメチルフェニル基、ブチルフェニル基、ノニルフェニル基、メチルベンジル基、ジメチルナフチル基等のアルキルアリール基;フェニルメチル基、フェニルエチル基、ジフェニルメチル基等の炭素数7〜18のアリールアルキル基等が挙げられる。
【0115】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準でのモリブデン系摩擦調整剤の含有量は、モリブデン原子換算で、好ましくは0.01〜0.15質量%、より好ましくは0.012〜0.10質量%、更に好ましくは0.015〜0.08質量%、より更に好ましくは0.02〜0.08質量%、特に好ましくは0.05〜0.08である。
当該含有量が0.01質量%以上であれば、耐摩耗特性を向上させ、省燃費性に優れた潤滑油組成物とすることができる。一方、当該含有量が0.15質量%以下であれば、清浄性の低下を抑えることができる。
【0116】
また、本発明の一態様の潤滑油組成物は、摩擦調整剤(C)として、モリブデン系摩擦調整剤以外の他の摩擦調整剤を含有してもよい。
他の摩擦調整剤としては、例えば、炭素数6〜30のアルキル基またはアルケニル基、特に炭素数6〜30の直鎖アルキル基または直鎖アルケニル基を分子中に少なくとも1個有する、脂肪族アミン、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、脂肪酸、脂肪族アルコール、脂肪族エーテル等の無灰摩擦調整剤等が挙げられる。
【0117】
本発明の一態様において、摩擦調整剤(C)中のモリブデン系摩擦調整剤の含有量としては、摩擦調整剤(C)の全量(100質量%)基準で、好ましくは60〜100質量%、より好ましくは70〜100質量%、更に好ましくは80〜100質量%、より更に好ましくは90〜100質量%である。
【0118】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、摩擦調整剤(C)の含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.01〜3.0質量%、より好ましくは0.01〜2.0質量%、更に好ましくは0.01〜1.0質量%である。
【0119】
<汎用添加剤>
本発明の一態様の潤滑油組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で必要に応じて、成分(A)〜(C)には該当しない化合物から構成される汎用添加剤を含有してもよい。
当該汎用添加剤としては、例えば、耐摩耗剤、極圧剤、酸化防止剤、流動点降下剤、防錆剤、金属不活性化剤、消泡剤等が挙げられる。
【0120】
これらの汎用添加剤の各含有量は、本発明の目的を損なわない範囲内で、適宜調整することができるが、潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、通常0.001〜10質量%、好ましくは0.005〜5質量%である。
なお、本発明の一態様の潤滑油組成物において、これらの汎用添加剤の合計含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下、より更に好ましくは2質量%以下である。
【0121】
耐摩耗剤又は極圧剤としては、例えば、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)、リン酸亜鉛、ジチオカルバミン酸亜鉛、ジチオカルバミン酸モリブデン、ジチオリン酸モリブデン、ジスルフィド類、硫化オレフィン類、硫化油脂類、硫化エステル類、チオカーボネート類、チオカーバメート類、ポリサルファイド類等の硫黄含有化合物;亜リン酸エステル類、リン酸エステル類、ホスホン酸エステル類、及びこれらのアミン塩又は金属塩等のリン含有化合物;チオ亜リン酸エステル類、チオリン酸エステル類、チオホスホン酸エステル類、及びこれらのアミン塩又は金属塩等の硫黄及びリン含有耐摩耗剤が挙げられる。
これらの中でも、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)が好ましい。
本発明の一態様の潤滑油組成物がZnDTPを含む場合、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準でのZnDTPの含有量は、リン原子換算で、好ましくは0.01〜0.2質量%、より好ましくは0.02〜0.15質量%、更に好ましくは0.03〜0.12質量%、より更に好ましくは0.03〜0.10質量%である。
【0122】
酸化防止剤としては、例えば、ビスフェノール系、及びエステル基含有フェノール系等のフェノール系酸化防止剤、ジフェニルアミン系等のアミン系酸化防止剤等が挙げられる。なお、アミン系酸化防止剤としては、上述の成分(C)には該当しないモリブデンアミン系酸化防止剤であってもよい。
【0123】
流動点降下剤としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化パラフィンとナフタレンとの縮合物、塩素化パラフィンとフェノールとの縮合物、ポリメタクリレート、ポリアルキルスチレン等が挙げられる。
【0124】
防錆剤としては、例えば、石油スルフォネート、アルキルベンゼンスルフォネート、ジノニルナフタレンスルフォネート、アルケニルコハク酸エステル、多価アルコールエステル等が挙げられる。
【0125】
金属不活性化剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、トリルトリアゾール系化合物、チアジアゾール系化合物、イミダゾール系化合物、ピリミジン系化合物等が挙げられる。
【0126】
消泡剤としては、例えば、シリコーン油、フルオロシリコーン油およびフルオロアルキルエーテル等が挙げられる。
【0127】
極圧剤としては、例えば、スルフィド類、スルフォキシド類、スルフォン類、チオホスフィネート類等の硫黄系極圧剤、塩素化炭化水素等のハロゲン系極圧剤、有機金属系極圧剤等が挙げられる。
【0128】
〔潤滑油組成物の各種性状〕
本発明の一態様の潤滑油組成物中のホウ素原子の含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.01〜0.20質量%、より好ましくは0.012〜0.15質量%、更に好ましくは0.015〜0.10質量%、より更に好ましくは0.02〜0.07質量%である。
【0129】
本発明の一態様の潤滑油組成物中のカリウム原子の含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.01〜0.10質量%、より好ましくは0.01〜0.07質量%、更に好ましくは0.01〜0.05質量%、より更に好ましくは0.012〜0.03質量%である。
【0130】
本発明の一態様の潤滑油組成物中の窒素原子の含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.001〜0.30質量%、より好ましくは0.005〜0.25質量%、更に好ましくは0.01〜0.20質量%、より更に好ましくは0.05〜0.15質量%である。
【0131】
本発明の一態様の潤滑油組成物中のモリブデン原子の含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.01〜0.15質量%、より好ましくは0.012〜0.10質量%、更に好ましくは0.015〜0.08質量%、より更に好ましくは0.02〜0.06質量%である。
【0132】
本発明の一態様の潤滑油組成物中のリン原子の含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.01〜0.2質量%、より好ましくは0.02〜0.15質量%、更に好ましくは0.03〜0.10質量%である。
【0133】
本発明の一態様の潤滑油組成物の40℃における動粘度は、好ましくは10〜100mm/s、より好ましくは10〜70mm/s、更に好ましくは10〜40mm/sである。
【0134】
本発明の一態様の潤滑油組成物の100℃における動粘度は、好ましくは3〜20mm/s、より好ましくは3〜10mm/s、更に好ましくは5〜8mm/sである。
【0135】
本発明の一態様の潤滑油組成物の粘度指数は、好ましくは160以上、より好ましくは170以上、更に好ましくは180以上である。
【0136】
本発明の一態様の潤滑油組成物の150℃におけるHTHS粘度は、好ましくは1.6〜3.2mPa・s、より好ましくは1.7〜3.0mPa・s、更に好ましくは1.8〜2.8mPa・s、より更に好ましくは2.0〜2.7mPa・sである。
当該150℃におけるHTHS粘度が1.6mPa・s以上であれば、潤滑性能を良好とすることができる。一方、当該150℃におけるHTHS粘度が3.2mPa・s以下であれば、低温での粘度特性を良好とすると共に、省燃費性能を良好とすることができる。
この150℃におけるHTHS粘度は、エンジンの高速運転時の高温領域下での粘度として想定することもでき、上記範囲に属していれば、当該潤滑油組成物は、エンジンの高速運転時を想定した高温領域下での粘度等の各種性状が良好であるといえる。
なお、本明細書において、「150℃におけるHTHS粘度」は、ASTM D 4741に準拠して測定された、150℃における高温高せん粘度の値であって、具体的には、実施例に記載の測定方法により得られる値を意味する。
【0137】
本発明の一態様の潤滑油組成物のHFRR試験機を用いて測定した摩擦係数は、好ましくは0.12以下、より好ましくは0.10以下、更に好ましくは0.06以下、より更に好ましくは0.05以下である。
本発明の一態様の潤滑油組成物の高圧示差走査熱量計を用いて測定したヒートフローの最大値としては、好ましくは340mW以下、より好ましくは339mW以下、更に好ましくは337mW以下である。
なお、本明細書において、上記潤滑油組成物の摩擦係数及びヒートフローの最大値は、実施例に記載の測定方法により得られる値を意味する。
【0138】
〔潤滑油組成物の用途〕
本発明の潤滑油組成物は、優れた清浄性、省燃費性、及びLSPI防止性を有している。
そのため、本発明の潤滑油組成物を充填したエンジンは、省燃費性能等に優れたものとなり得る。当該エンジンとしては、特に制限はないが、自動車用エンジンが好ましく、直噴過給ガソリンエンジンがより好ましい。
そのため、本発明は、上述の本発明の潤滑油組成物を直噴過給ガソリンエンジンに用いる、潤滑油組成物の使用方法についても提供する。
【0139】
なお、本発明の一態様の潤滑油組成物は、直噴過給ガソリンエンジン用の潤滑油として好適であるが、他の用途にも適用し得る。
本発明の一態様の潤滑油組成物について考え得る他の用途としては、例えば、パワーステアリングオイル、自動変速機油(ATF)、無段変速機油(CVTF)、油圧作動油、タービン油、圧縮機油、工作機械用潤滑油、切削油、歯車油、流体軸受け油、転がり軸受け油等が挙げられる。
【0140】
〔潤滑油組成物の製造方法〕
本発明は、以下の工程(I)を有する潤滑油組成物の製造方法も提供する。
工程(I):基油に、
櫛形ポリマー(A1)を含む粘度指数向上剤(A)、
アルカリ金属ホウ酸塩(B1)と、アルカリ金属原子及びアルカリ土類金属原子から選ばれる金属原子を含有する有機金属系化合物(B2)とを含む清浄分散剤(B)、並びに、
モリブデン系摩擦調整剤を含む摩擦調整剤(C)を配合して、
アルカリ金属原子及びアルカリ土類金属原子の合計含有量が2000質量ppm以下もしくはカルシウム原子の含有量が1900質量ppm以下となるような潤滑油組成物を調製する工程。
【0141】
上記工程(I)において、配合する基油及び成分(A)〜(C)は、上述のとおりであり、好適な成分、各成分の含有量も上述のとおりである。
また、本工程において、基油及び成分(A)〜(C)以外の上述の汎用添加剤等を配合してもよい。
【0142】
なお、成分(A)は、櫛形ポリマー(A1)を含む樹脂分を希釈油に溶解した溶液の形態で配合してもよい。当該溶液の固形分濃度としては、通常10〜50質量%である。
本発明の一態様において、成分(A)を固形分濃度が10〜50質量%の粘度指数向上剤(A)の溶液の形態で配合する場合、当該溶液の配合量としては、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)に対して、好ましくは0.1〜30質量%、より好ましくは1〜25質量%、更に好ましくは2〜20質量%である。
【0143】
また、成分(A)だけでなく、成分(B)〜(C)や上述の汎用添加剤についても、希釈油等を加えて溶液(分散体)の形態とした上で、配合してもよい。
各成分を配合した後、公知の方法により、撹拌して均一に分散させることが好ましい。
なお、各成分を配合後に、成分の一部が変性したり、2成分が互いに反応し、別の成分を生成した場合の得られる潤滑油組成物についても、本発明の技術的範囲に属するものである。
【実施例】
【0144】
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。なお、実施例及び比較例で調製した潤滑油組成物の各原子の含有量、及び潤滑油組成物の150℃におけるHTHS粘度は、下記の方法により測定及び評価した。
【0145】
[潤滑油組成物の各原子の含有量]
<ホウ素原子、カルシウム原子、カリウム原子、モリブデン原子、及びリン原子の含有量>
JPI−5S−38−92に準拠して測定した。
<窒素原子の含有量>
JIS K2609に準拠して測定した。
【0146】
[150℃におけるHTHS粘度(高温高せん断粘度)]
ASTM D 4741に準拠して、対象となる潤滑油組成物について、150℃で、せん断速度10/sにて、せん断した後の粘度を測定した。
【0147】
以下の実施例及び比較例で調製した潤滑油組成物の調製に用いた基油及び各種添加剤は、以下のとおりである。
<基油>
・鉱油(グループIII):API基油カテゴリーのグループIIIに分類される鉱油、100℃における動粘度=4.067mm/s、粘度指数=131。
・合成油(PAO):ポリα−オレフィンからなる合成油、100℃における動粘度=5.1mm/s、粘度指数=143。
【0148】
<粘度指数向上剤>
・粘度指数向上剤(1):商品名「Viscoplex 3−201」、エボニック社製、主剤樹脂分として、Mnが500以上のマクロモノマーに由来する構成単位を少なくとも有する櫛形ポリマー(Mw=42万、Mw/Mn=5.92)を含む、樹脂分濃度が19質量%の粘度指数向上剤。
・粘度指数向上剤(2):商品名「Viscoplex 3−220」、エボニック社製、主剤樹脂分として、Mnが500以上のマクロモノマーに由来する構成単位を少なくとも有する櫛形ポリマー(Mw=45万、Mw/Mn=3.75)を含む、樹脂分濃度が42質量%の粘度指数向上剤。
・粘度指数向上剤(3):商品名「アクルーブ V−5110」、三洋化成工業社製、主剤樹脂分として、ポリメタクリレート(PMA、Mw=50万)を含む、樹脂分濃度が19質量%の粘度指数向上剤。
・粘度指数向上剤(4):商品名「PARATONE 8451」、シェブロン・オロナイト社製、主剤樹脂分として、オレフィン共重合体(OCP、Mw=33万)を含む、樹脂分濃度が6質量%の粘度指数向上剤。
・粘度指数向上剤(5):商品名「Infineum SV261」、インフィニアム社製、主剤樹脂分として、星形ポリマー(Mw=61万)を含む、樹脂分濃度が11質量%の粘度指数向上剤。(なお、ここでいう「星形ポリマー」とは、分岐高分子の一種で、1点で3本以上の鎖状高分子が結合している構造を有しているポリマーを意味し、上述の櫛形ポリマーとは構造上異なる。)
【0149】
<清浄分散剤>
・三ホウ酸カリウム:前記「成分(B1)」に該当、三ホウ酸カリウム水和物の分散体(ホウ素原子含有量:6.8質量%、カリウム原子含有量:8.3質量%)。
・カルシウム系清浄剤:前記「成分(B2)」に該当、中性カルシウムスルホネート(カルシウム原子含有量:2.2質量%、塩基価17mgKOH/g)と過塩基性カルシウムサリシレート(カルシウム原子含有量:12.1質量%、塩基価350mgKOH/g)の混合物。
・アルケニルコハク酸イミド:前記「成分(B3)成分」に該当(窒素原子含有量:1.0質量%)。
・ホウ素変性アルケニルコハク酸イミド:前記「成分(B3)」に該当(ホウ素原子含有量:1.3質量%、窒素原子含有量:1.2質量%)。
【0150】
<摩擦調整剤>
・MoDTC:ジチオカルバミン酸モリブデン(Mo原子含有量:10質量%、硫黄原子含有量:11.5質量%)。
【0151】
<耐磨耗剤>
・ZnDTP:ジアルキルジチオりん酸亜鉛(リン原子含有量:7.5質量%、亜鉛原子含有量:8.5質量%、硫黄原子含有量:15.0質量%)。
【0152】
[潤滑油組成物の清浄性の評価]
実施例1〜14、比較例1〜5
表1に示す種類及び配合量の基油及び各種添加剤を配合して、150℃におけるHTHS粘度が2.6mPa・sとなるように潤滑油組成物をそれぞれ調製した。
なお、表1〜5中の鉱油の含有量の標記が「調整」と記載されているが、これは鉱油の含有量を75〜95質量%の範囲で適宜調整したことを意味している。
【0153】
調製したこれらの潤滑油組成物については、下記の方法に基づき、300℃でのホットチューブ試験を行った。その結果を表1に示す。
また、表1に記載(表2にも記載)の実施例2及び比較例5の潤滑油組成物については、下記の方法に基づき、Sequence IIIG試験も行った。その結果を表2に示す。
【0154】
<ホットチューブ試験(300℃)>
試験用の潤滑油組成物としては、内燃機関内における燃料と潤滑油との混合割合を想定して、前記した各潤滑油組成物(新油)に対してバイオ燃料(菜種油をメチルアルコールによりエステル交換して得られた燃料)を5質量%配合した混合油を用いた。
試験温度は、300℃に設定し、その他の条件については、JPI−5S−55−99に準拠して測定した。また、試験後の評点はJPI−5S−55−99に準拠してテストチューブに付着したラッカーを0(黒色)〜10(無色)の11段階にて評価し、数字が大きいほど堆積物が少なく清浄性が良好であることを示す。当該評点は、6以上を合格としているが、好ましくは7以上、より好ましくは8以上である。
【0155】
【表1】
【0156】
<Sequence IIIG試験>
ASTM D 7320に準拠して測定し、Weighted Piston Deposit(WPD)評点にて評価した。WPD評点が高い程、清浄性が良好であることを示す。当該評点は、4.0以上を合格としているが、好ましくは4.5以上、より好ましくは5.0以上である。
【0157】
【表2】
【0158】
表1より、実施例1〜14の潤滑油組成物は、300℃でのホットチューブ試験の評点が、比較例1〜5の潤滑油組成物に比べて高く、清浄性に優れていることがわかる。
さらに、表2により、ホットチューブ試験の評点が高い実施例2は、ホットチューブ試験の評点が低い比較例2に比べて、「Sequence IIIG試験」の評点も高い結果となった。このことから、表1に記載の「ホットチューブ試験の評点」と、「Sequence IIIG試験」との結果には相関があるといえる。
表1及び2の結果を鑑みると、本発明の一態様の潤滑油組成物は、直噴過給ガソリンエンジン用の潤滑油に好適であるといえる。
【0159】
[潤滑油組成物の動粘度及び粘度指数の値に基づく省燃費性の評価]
実施例1、比較例1、6、7
比較例6〜7について、表3に示す種類及び配合量の基油及び各種添加剤を配合して、150℃におけるHTHS粘度が2.6mPa・sとなる潤滑油組成物を調製した。
表1に記載(表3にも記載)の実施例1及び比較例1の潤滑油組成物、並びに、表3に記載の比較例6〜7の潤滑油組成物について、下記の方法に基づき、40℃及び100℃における動粘度、並びに粘度指数を測定し、これらの測定値に基づく省燃費性の評価を行った。当該結果を表3に示す。
【0160】
<40℃及び100℃における動粘度>
JIS K 2283に準拠して測定した。
<粘度指数>
JIS K 2283に準拠して測定した。
【0161】
【表3】
【0162】
表3より、実施例1の潤滑油組成物は、粘度特性が良好であり、省燃費性に優れているといえる。一方、樹脂分として、オレフィン共重合体(OCP)や星形ポリマーを含む粘度指数向上剤を用いた比較例6、7の潤滑油組成物は、実施例1に比べて、粘度指数が高く、温度による粘度変化が大きいと考えられ、燃費の点で問題がある。
【0163】
[潤滑油組成物の摩擦係数の値に基づく省燃費性の評価]
実施例1〜3、比較例8
比較例8について、表4に示す種類及び配合量の基油及び各種添加剤を配合して、150℃におけるHTHS粘度が2.6mPa・sとなる潤滑油組成物を調製した。
表1に記載(表4にも記載)の実施例1〜3の潤滑油組成物、及び表4に記載の比較例8の潤滑油組成物について、下記の方法に基づき、摩擦係数を測定し、当該摩擦係数の値に基づく省燃費性の評価を行った。当該結果を表4に示す。
【0164】
<摩擦係数(HFRR試験)>
HFRR試験機(PCS Instruments社製)を用い、下記の条件にて、実施例及び比較例で調製した潤滑油組成物の摩擦係数を測定した。摩擦係数が低い程、摩擦低減効果に優れ、省燃費性が良好であるといえる。
・テストピース:(A)ボール=HFRR標準テストピース(AISI 52100材)、(B)ディスク=HFRR標準テストピース(AISI 52100材)
・振幅:1.0mm
・周波数:50Hz
・荷重:5g
・温度:80℃
【0165】
【表4】
【0166】
表4より、実施例1〜3の潤滑油組成物は、摩擦係数が低く、省燃費性に優れているといえる。一方、モリブデン系摩擦調整剤を配合していない比較例8の潤滑油組成物は、実施例1〜3に比べて、摩擦係数が高く、省燃費性が劣る結果となった。
【0167】
[潤滑油組成物のLSPI防止性]
実施例1、7、比較例9〜10
比較例9〜10について、表5に示す種類及び配合量の基油及び各種添加剤を配合して、150℃におけるHTHS粘度が2.6mPa・sとなる潤滑油組成物を調製した。
表1に記載(表5にも記載)の実施例1、7の潤滑油組成物、及び表5に記載の比較例9〜10の潤滑油組成物について、下記の方法に基づき、ヒートフローの最大値を測定し、当該ヒートフローの最大値に基づくLSPI防止性の評価を行った。それらの結果を表5に示す。
【0168】
<ヒートフローの最大値>
調製した潤滑油組成物について、高圧示差走査熱量計を用いて昇温に伴うヒートフローの発生を解析した。一般に、潤滑油組成物は、昇温していくと特定の温度で瞬間的な発熱が生じ、燃焼する。この時の瞬間的な発熱が生じた際の発熱量が大きいほど、燃焼室内において燃焼反応を引き起こしやすく、すなわちLSPIを誘引しやすい。そこで、瞬間的な発熱が生じた際の発熱量の基準として、発熱速度に対応するヒートフローの最大値を求めた。当該値が小さいほど、LSPI防止性が良好であるといえる。
【0169】
【表5】
【0170】
表5より、実施例1及び7の潤滑油組成物は、ヒートフローの最大値が小さく、LSPI防止性に優れていることがわかる。
一方、アルカリ金属原子及びアルカリ土類金属原子の合計含有量が2000ppmを超える比較例9及び10の潤滑油組成物は、実施例1及び7に比べて、ヒートフローの最大値が高く、LSPI防止性が劣るものと考えられる。