特許第6572911号(P6572911)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6572911液晶配向処理剤、液晶配向膜及び液晶表示素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6572911
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】液晶配向処理剤、液晶配向膜及び液晶表示素子
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1337 20060101AFI20190902BHJP
【FI】
   G02F1/1337 525
【請求項の数】21
【全頁数】59
(21)【出願番号】特願2016-566466(P2016-566466)
(86)(22)【出願日】2015年12月24日
(86)【国際出願番号】JP2015086079
(87)【国際公開番号】WO2016104635
(87)【国際公開日】20160630
【審査請求日】2018年12月17日
(31)【優先権主張番号】特願2014-262604(P2014-262604)
(32)【優先日】2014年12月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090918
【弁理士】
【氏名又は名称】泉名 謙治
(74)【代理人】
【識別番号】100082887
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 利春
(72)【発明者】
【氏名】三木 徳俊
(72)【発明者】
【氏名】軍司 里枝
(72)【発明者】
【氏名】橋本 淳
(72)【発明者】
【氏名】若林 暁子
(72)【発明者】
【氏名】保坂 和義
【審査官】 廣田 かおり
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/14898(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/189128(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1337
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含有する液晶配向処理剤。
(A)成分:下記の式[1]で示される構造を有するジアミン、及び下記の式[2]で示される構造を有するジアミンを含有するジアミン成分と、テトラカルボン酸成分との反応で得られるポリイミド前駆体又は該ポリイミド前駆体をイミド化したポリイミド。
(B)成分:下記の式[2]で示される構造を有するジアミンを含有するジアミン成分と、テトラカルボン酸成分との反応で得られるポリイミド前駆体又は該ポリイミド前駆体をイミド化したポリイミド。
(C):カルボキシ基(COOH基)及びヒドロキシ基(OH基)からなる群から選ばれる少なくとも1種の置換基を有するジアミンを含有するジアミン成分と、テトラカルボン酸成分との反応で得られるポリイミド前駆体又は該ポリイミド前駆体をイミド化したポリイミド。
但し、前記(A)成分、(B)成分及び(C)成分の少なくともいずれかの重合体におけるジアミン成分には、下記の式[4]で示される構造を有するジアミンを含有する。
【化1】
(Xは単結合、−(CH−(aは1〜15の整数である)、−O−、−CHO−、−COO−及び−OCO−からなる群から選ばれる少なくとも1種の結合基を示す。Xは単結合又は−(CH−(bは1〜15の整数である)を示す。X3は単結合、−(CH2−(cは1〜15の整数である)、−O−、−CHO−、−COO−及び−OCO−からなる群から選ばれる少なくとも1種を示す。Xはベンゼン環、シクロヘキサン環及び複素環からなる群から選ばれる少なくとも1種の2価の環状基、又はステロイド骨格を有する炭素数17〜51の2価の有機基を示し、前記環状基上の任意の水素原子は、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜3のフッ素含有アルキル基、炭素数1〜3のフッ素含有アルコキシ基又はフッ素原子で置換されていてもよい。Xはベンゼン環、シクロヘキサン環及び複素環からなる群から選ばれる少なくとも1種の環状基を示し、これらの環状基上の任意の水素原子は、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜3のフッ素含有アルキル基、炭素数1〜3のフッ素含有アルコキシ基又はフッ素原子で置換されていてもよい。nは0〜4の整数を示す。Xは炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のフッ素含有アルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基及び炭素数1〜18のフッ素含有アルコキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種を示す。)
【化2】
(Wは−O−、−NH−、−N(CH)−、−CONH−、−NHCO−、−CHO−、−OCO−、−CON(CH)−及び−N(CH)CO−からなる群から選ばれる少なくとも1種の結合基を示す。Wは単結合、炭素数1〜20のアルキレン基、及び非芳香族環及び芳香族環からなる群から選ばれる少なくとも1種を示す。Wは単結合、−O−、−NH−、−N(CH)−、−CONH−、−NHCO−、−COO−、−OCO−、−CON(CH)−、−N(CH)CO−及び−O(CH−(mは1〜5の整数を示す)からなる群から選ばれる少なくとも1種を示す。Wは窒素含有芳香族複素環を示す。)
【化3】
【請求項2】
前記式[1]で示される構造を有するジアミンが、前記(A)成分におけるジアミン成分にのみ用いられる請求項1に記載の液晶配向処理剤。
【請求項3】
前記(A)成分における前記式[1]で示される構造を有するジアミンのジアミン成分全体に対する使用割合(モル%)を1.0にした際、前記(B)成分における前記式[1]で示される構造を有するジアミンのジアミン成分全体に対する使用割合(モル%)が、0.01〜0.8の比率である請求項1に記載の液晶配向処理剤。
【請求項4】
前記(A)成分における前記式[1]で示される構造を有するジアミンのジアミン成分全体に対する使用割合(モル%)を1.0にした際、前記(C)成分における前記式[1]で示される構造を有するジアミンのジアミン成分全体に対する使用割合(モル%)が、0.01〜0.3の比率である請求項1又は3に記載の液晶配向処理剤。
【請求項5】
前記カルボキシ基(COOH基)及びヒドロキシ基(OH基)からなる群から選ばれる少なくとも1種の置換基を有するジアミンが、前記(C)成分におけるジアミン成分にのみ用いられる請求項1〜4のいずれかに記載の液晶配向処理剤。
【請求項6】
前記式[4]で示される構造を有するジアミンが、前記(A)成分におけるジアミン成分にのみ用いられる請求項1〜5のいずれかに記載の液晶配向処理剤。
【請求項7】
前記式[1]で示される構造を有するジアミンが、下記の式[1a]で示される請求項1〜6のいずれかに記載の液晶配向処理剤。
【化4】
(Xは前記式[1]で示される構造を示す。n1は1〜4の整数を示す。)
【請求項8】
前記式[2]で示される構造を有するジアミンが、下記の式[2a]で示される請求項1〜7のいずれかに記載の液晶配向処理剤。
【化5】
(Wは前記式[2]で示される構造を示す。p1は1〜4の整数を示す。)
【請求項9】
前記カルボキシ基及びヒドロキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の置換基を有するジアミンが、下記の式[3a]で示される請求項1〜8のいずれかに記載の液晶配向処理剤。
【化6】
(Yは下記の式[3−1]又は式[3−2]示される構造を示す。m1は1〜4の整数を示す。)
【化7】
(a及びbはそれぞれ、0〜4の整数を示す。)
【請求項10】
前記式[4]で示される構造を有するジアミンが、下記の式[4a−1]で示される請求項1〜9のいずれかに記載の液晶配向処理剤。
【化8】
(q1は1〜8の整数を示す。)
【請求項11】
前記(A)成分、(B)成分及び(C)成分におけるテトラカルボン酸成分が、下記の式[5]で示されるテトラカルボン酸二無水物を含む請求項1〜10のいずれかに記載の液晶配向処理剤。
【化9】
(Zは下記の式[5a]〜式[5k]で示される構造からなる群から選ばれる少なくとも1種を示す。)
【化10】
(Z〜Zは、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、塩素原子及びベンゼン環からなる群から選ばれる少なくとも1種を示す。Z及びZは、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を示す。)
【請求項12】
N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン及びγ−ブチロラクトンからなる群から選ばれる少なくとも1種の溶媒を含有する請求項1〜11のいずれかに記載の液晶配向処理剤。
【請求項13】
1−ヘキサノール、シクロヘキサノール、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル及び下記の式[D1]〜式[D3]で示される溶媒からなる群から選ばれる少なくとも1種の溶媒を含有する請求項1〜12のいずれかに記載の液晶配向処理剤。
【化11】
(Dは炭素数1〜3のアルキル基を示す。Dは炭素数1〜3のアルキル基を示す。Dは炭素数1〜4のアルキル基を示す。)
【請求項14】
前記液晶配向処理剤が、エポキシ基、イソシアネート基、オキセタン基及びシクロカーボネート基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を有する架橋性化合物、ヒドロキシ基、ヒドロキシアルキル基及び低級アルコキシアルキル基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を有する架橋性化合物、又は重合性不飽和結合基を有する架橋性化合物を含有する請求項1〜13のいずれかに記載の液晶配向処理剤。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれかに記載の液晶配向処理剤から得られる液晶配向膜。
【請求項16】
請求項1〜14のいずれかに記載の液晶配向処理剤をインクジェット法により塗布して得られる液晶配向膜。
【請求項17】
請求項15又は16に記載の液晶配向膜を有する液晶表示素子。
【請求項18】
電極を備えた一対の基板の間に液晶層を有してなり、前記一対の基板の間に活性エネルギー線及び熱の少なくとも一方により、重合する重合性化合物を含む液晶組成物を配置し、前記電極間に電圧を印加しつつ、前記重合性化合物を重合させる工程を経て製造される液晶表示素子に用いられる、請求項15又は16に記載の液晶配向膜。
【請求項19】
請求項18に記載の液晶配向膜を有する液晶表示素子。
【請求項20】
電極を備えた一対の基板の間に液晶層を有してなり、前記一対の基板の間に活性エネルギー線及び熱の少なくとも一方により、重合する重合性基を含む液晶配向膜を配置し、前記電極間に電圧を印加しつつ、前記重合性基を重合させる工程を経て製造される液晶表示素子に用いられる、請求項15又は16に記載の液晶配向膜。
【請求項21】
請求項20に記載の液晶配向膜を有する液晶表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶配向処理剤、該液晶配向処理剤から得られる液晶配向膜及び該液晶配向膜を使用した液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子は、薄型・軽量を実現する表示デバイスとして、現在、広く使用されている。通常、この液晶表示素子には、液晶の配向状態を決定づけるために液晶配向膜が使用されている。
液晶配向膜は、液晶の配向状態を制御する目的で使用されるものである。しかしながら、液晶表示素子の高精細化に伴い、液晶表示素子のコントラスト低下や長期使用に伴う表示不良の抑制が求められている。これらに対して、ポリイミドを用いた液晶配向膜において、液晶配向性を高め、液晶表示画面周辺部に表示不良が生じにくくする手法として、アルコキシシラン化合物を添加した液晶配向処理剤を用いた液晶配向膜が提案されている(特許文献1、2参照)。
【0003】
また、液晶表示素子の高精細化に伴い、液晶表示素子のコントラスト低下の抑制や残像現象の低減といった観点から、そこに使用される液晶配向膜においても、電圧保持率が高いことや、直流電圧を印加した際の蓄積電荷が少ない、又は直流電圧により蓄積した電荷の緩和が早いといった特性が次第に重要となっている。
ポリイミド系の液晶配向膜において、直流電圧によって発生した残像が消えるまでの時間が短いものとして、ポリアミド酸やイミド基含有ポリアミド酸に加えて、特定構造の3級アミンを含有する液晶配向処理剤を使用したもの(例えば、特許文献3参照)や、ピリジン骨格などを有する特定ジアミンを原料に使用した可溶性ポリイミドを含有する液晶配向処理剤を使用したもの(特許文献4参照)などが知られている。
【0004】
また、電圧保持率が高く、かつ、直流電圧によって発生した残像が消えるまでの時間が短いものとして、ポリアミド酸やそのイミド化重合体などに加えて、分子内に1個のカルボン酸基を含有する化合物、分子内に1個のカルボン酸無水物基を含有する化合物、及び分子内に1個の3級アミノ基を含有する化合物から選ばれる化合物を極少量含有する液晶配向処理剤を使用したもの(特許文献5参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】日本特開昭61−171762号公報
【特許文献2】日本特開平11−119226号公報
【特許文献3】日本特開平9−316200号公報
【特許文献4】日本特開平10−104633号公報
【特許文献5】日本特開平8−76128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、スマートフォンや携帯電話などのモバイル用途向けに、液晶表示素子が用いられている。これらの用途では、できるだけ多くの表示面を確保するため、液晶表示素子の基板間を接着させるために用いるシール剤の幅を、従来に比べて狭くする必要がある。更に、上述した理由により、シール剤の描画位置を、シール剤との接着性が弱い液晶配向膜の端部に接した位置、或いは液晶配向膜の上部にすることも求められている。このような場合、高温高湿条件下での使用により、シール剤と液晶配向膜との間から水が混入しやすくなり、液晶表示素子の額縁付近に表示ムラが発生してしまう。そのため、シール剤と液晶配向膜との密着性を高め、これら表示ムラ不良を抑制することが求められている。
【0007】
また、液晶表示素子の電気特性の1つである電圧保持率に関しても、上記のような過酷条件下での高い安定性も求められている。即ち、電圧保持率が、バックライトからの光照射によって低下してしまうと、液晶表示素子の表示不良の1つである、焼き付き不良(線焼き付きともいわれる)が発生しやすくなってしまい、信頼性の高い液晶表示素子を得ることができない。従って、液晶配向膜においては、初期特性が良好なことに加え、例えば、長時間、光の照射に曝された後であっても、電圧保持率が低下しにくいことが求められている。更に、もう1つの焼き付き不良である面焼付きに対しても、バックライトからの光照射によって、直流電圧により蓄積する残留電荷の緩和が早い液晶配向膜が求められている。
【0008】
そこで、本発明は、上記特性を兼ね備えた液晶配向膜を提供することを目的とする。即ち、本発明の目的は、シール剤と液晶配向膜との接着性を高め、高温高湿条件下において、液晶表示素子の額縁付近の表示ムラの発生を抑制することができる液晶配向膜を提供することを目的とする。また、長時間光の照射に曝された後でも、電圧保持率の低下を抑制し、かつ、直流電圧により蓄積する残留電荷の緩和が早い液晶配向膜を提供することを目的とする。
加えて、上記の液晶配向膜を有する液晶表示素子、上記の液晶配向膜を提供することのできる液晶配向処理剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、鋭意研究を行った結果、特定構造を有する3つの重合体を含む液晶配向処理剤が、上記の目的を達成するために極めて有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は以下の要旨を有するものである。
(1)下記の(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含有する液晶配向処理剤。
(A)成分:下記式[1]の構造を有するジアミン、及び下記式[2]の構造を有するジアミンを含有するジアミン成分と、テトラカルボン酸成分との反応で得られるポリイミド前駆体又は該ポリイミド前駆体をイミド化したポリイミド。
(B)成分:下記式[2]の構造を有するジアミンを含有するジアミン成分と、テトラカルボン酸成分との反応で得られるポリイミド前駆体又は該ポリイミド前駆体をイミド化したポリイミド。
(C):カルボキシ基(COOH基)及びヒドロキシ基(OH基)からなる群から選ばれる少なくとも1種の置換基を有するジアミンを含有するジアミン成分と、テトラカルボン酸成分との反応で得られるポリイミド前駆体又は該ポリイミド前駆体をイミド化したポリイミド。
但し、前記(A)成分、(B)成分及び(C)成分の少なくともいずれかの重合体におけるジアミン成分には、下記式[4]の構造を有するジアミンを含有する。
【化1】
(Xは単結合、−(CH−(aは1〜15の整数である)、−O−、−CHO−、−COO−及び−OCO−からなる群から選ばれる少なくとも1種の結合基を示す。Xは単結合又は−(CH−(bは1〜15の整数である)を示す。X3は単結合、−(CH2−(cは1〜15の整数である)、−O−、−CHO−、−COO−及び−OCO−からなる群から選ばれる少なくとも1種を示す。Xはベンゼン環、シクロヘキサン環及び複素環からなる群から選ばれる少なくとも1種の2価の環状基、又はステロイド骨格を有する炭素数17〜51の2価の有機基を示し、前記環状基上の任意の水素原子は、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜3のフッ素含有アルキル基、炭素数1〜3のフッ素含有アルコキシ基又はフッ素原子で置換されていてもよい。Xはベンゼン環、シクロヘキサン環及び複素環からなる群から選ばれる少なくとも1種の環状基を示し、これらの環状基上の任意の水素原子は、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜3のフッ素含有アルキル基、炭素数1〜3のフッ素含有アルコキシ基又はフッ素原子で置換されていてもよい。nは0〜4の整数を示す。Xは炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のフッ素含有アルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基及び炭素数1〜18のフッ素含有アルコキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種を示す。)
【化2】
(Wは−O−、−NH−、−N(CH)−、−CONH−、−NHCO−、−CHO−、−OCO−、−CON(CH)−及び−N(CH)CO−からなる群から選ばれる少なくとも1種の結合基を示す。Wは単結合、炭素数1〜20のアルキレン基、非芳香族環及び芳香族環からなる群から選ばれる少なくとも1種を示す。Wは単結合、−O−、−NH−、−N(CH)−、−CONH−、−NHCO−、−COO−、−OCO−、−CON(CH)−、−N(CH)CO−及び−O(CH−(mは1〜5の整数を示す)からなる群から選ばれる少なくとも1種を示す。Wは窒素含有芳香族複素環を示す。)
【化3】
【0010】
(2)前記式[1]の構造を有するジアミンが、前記(A)成分におけるジアミン成分にのみ用いられる上記(1)に記載の液晶配向処理剤。
(3)前記(A)成分における前記式[1]で示される構造を有するジアミンのジアミン成分全体に対する使用割合(モル%)を1.0にした際、前記(B)成分における前記式[1]で示される構造を有するジアミンのジアミン成分全体に対する使用割合(モル%)が、0.01〜0.8の比率である上記(1)に記載の液晶配向処理剤。
(4)前記(A)成分における前記式[1]で示される構造を有するジアミンのジアミン成分全体に対する使用割合(モル%)を1.0にした際、前記(C)成分における前記式[1]で示される構造を有するジアミンのジアミン成分全体に対する使用割合(モル%)が、0.01〜0.3の比率である上記(1)又は(3)に記載の液晶配向処理剤。
(5)前記カルボキシ基(COOH基)及びヒドロキシ基(OH基)からなる群から選ばれる少なくとも1種の置換基を有するジアミンが、前記(C)成分におけるジアミン成分にのみ用いられる上記(1)〜(4)のいずれかに記載の液晶配向処理剤。
(6)前記式[4]の構造を有するジアミンが、前記(A)成分におけるジアミン成分にのみ用いられる上記(1)〜(5)のいずれかに記載の液晶配向処理剤。
【0011】
(7)前記式[1]の構造を有するジアミンが、下記式[1a]で示される上記(1)〜(6)のいずれかに記載の液晶配向処理剤。
【化4】
(Xは前記式[1]の構造を示す。n1は1〜4の整数を示す。)
(8)前記式[2]の構造を有するジアミンが、下記式[2a]で示される上記(1)〜(7)のいずれかに記載の液晶配向処理剤。
【化5】
(Wは前記式[2]の構造を示す。p1は1〜4の整数を示す。)
(9)前記カルボキシ基及びヒドロキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の置換基を有するジアミンが、下記式[3a]で示される上記(1)〜(8)のいずれかに記載の液晶配向処理剤。
【化6】
(Yは下記式[3−1]又は式[3−2]の構造を示す。m1は1〜4の整数を示す。)
【化7】
(a及びbは、それぞれ、0〜4の整数を示す。)
(10)前記式[4]の構造を有するジアミンが、下記式[4a−1]で示される上記(1)〜(9)のいずれかに記載の液晶配向処理剤。
【化8】
(q1は1〜8の整数を示す。)
【0012】
(11)前記(A)成分、(B)成分及び(C)成分におけるテトラカルボン酸成分が、下記式[5]のテトラカルボン酸二無水物を含む上記(1)〜(10)のいずれかに記載の液晶配向処理剤。
【化9】
(Zは下記式[5a]〜式[5k]からなる群から選ばれる少なくとも1種の構造を示す。)
【化10】
(Z〜Zは、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、塩素原子及びベンゼン環からなる群から選ばれる少なくとも1種を示す。Z及びZは、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を示す。)
【0013】
(12)N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン及びγ−ブチロラクトンからなる群から選ばれる少なくとも1種の溶媒を含有する上記(1)〜(11)のいずれかに記載の液晶配向処理剤。
(13)1−ヘキサノール、シクロヘキサノール、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル及び下記式[D1]〜式[D3]の溶媒からなる群から選ばれる少なくとも1種の溶媒を含有する上記(1)〜(12)のいずれかに記載の液晶配向処理剤。
【化11】
(Dは炭素数1〜3のアルキル基を示す。Dは炭素数1〜3のアルキル基を示す。Dは炭素数1〜4のアルキル基を示す。)
(14)エポキシ基、イソシアネート基、オキセタン基及びシクロカーボネート基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を有する架橋性化合物、ヒドロキシ基、ヒドロキシアルキル基及び低級アルコキシアルキル基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を有する架橋性化合物、又は重合性不飽和結合基を有する架橋性化合物を含有する上記(1)〜(13)のいずれかに記載の液晶配向処理剤。
【0014】
(15)上記(1)〜(14)のいずれかに記載の液晶配向処理剤から得られる液晶配向膜。
(16)上記(1)〜(14)のいずれかに記載の液晶配向処理剤をインクジェット法により塗布して得られる液晶配向膜。
(17)上記(15)又は(16)に記載の液晶配向膜を有する液晶表示素子。
(18)電極を備えた一対の基板の間に液晶層を有してなり、前記一対の基板の間に活性エネルギー線及び熱の少なくとも一方により、重合する重合性化合物を含む液晶組成物を配置し、前記電極間に電圧を印加しつつ、前記重合性化合物を重合させる工程を経て製造される液晶表示素子に用いられる上記(15)又は(16)に記載の液晶配向膜。
(19)上記(18)に記載の液晶配向膜を有する液晶表示素子。
(20)電極を備えた一対の基板の間に液晶層を有してなり、前記一対の基板の間に活性エネルギー線及び熱の少なくとも一方により、重合する重合性基を含む液晶配向膜を配置し、前記電極間に電圧を印加しつつ、前記重合性基を重合させる工程を経て製造される液晶表示素子に用いられる上記(15)又は(16)に記載の液晶配向膜。
(21)上記(20)に記載の液晶配向膜を有する液晶表示素子。
【発明の効果】
【0015】
本発明の液晶配向処理剤は、シール剤と液晶配向膜との接着性を高め、高温高湿条件下において液晶表示素子の額縁付近の表示ムラの発生を抑制することができる液晶配向膜を得ることができる。また、長時間光の照射に曝された後でも、電圧保持率の低下を抑制し、かつ、直流電圧により蓄積する残留電荷の緩和が早い液晶配向膜を得ることができる。
【0016】
本発明により、何故、上記の優れた特性を有する液晶表示素子が得られるメカニズムは、必ずしも明らかではないが、次のように推定される。
特定重合体(A)における特定構造(1)は、ベンゼン環、シクロヘキサン環、複素環又はステロイド骨格を有する炭素数17〜51の2価の有機基を有する。これら環及び有機基の側鎖構造は、液晶を垂直に配向させる従来技術である長鎖アルキル基に比べて剛直で、紫外線などの光に対して安定な構造である。そのため、特定側鎖構造を有する液晶配向処理剤から得られる液晶配向膜は、従来技術に比べて、光の照射に曝されても、電圧保持率を低下させ、かつ、直流電圧により残留電荷を蓄積させる、側鎖成分の分解物を抑制することができる。
【0017】
また、特定ジアミン(4)中の特定構造(4)は、紫外線の照射によりラジカルが発生する。そのため、液晶表示素子を作製する際のシール剤の硬化工程、即ち紫外線照射工程により、シール剤の硬化を促進するラジカルが液晶配向膜からも発生し、よりシール剤の硬化と、シール剤と液晶配向膜との接着性を高めることができると考えられる。
【0018】
更に、特定重合体(A)及び(B)における特定構造(2)が有する窒素含有複素環は、特定重合体(C)におけるカルボキシ基やヒドロキシ基と、塩形成や水素結合といった静電的相互作用で結ばれることで、窒素含有芳香族複素環と、カルボキシ基又はヒドロキシ基との間で、電荷の移動が起こりやすくなる。それにより、移動した電荷が効率的にポリイミド系重合体の分子内及び分子間を移動することができ、直流電圧により蓄積する残留電荷の緩和を早くすることができる。よって、本発明の液晶配向処理剤から得られた液晶配向膜を有する液晶表示素子は、信頼性に優れたものとなる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明書において、「部」、「%」は特に断りのない限り、それぞれ、「質量部」、「質量%」を意味する。
<特定ジアミン(1)>
特定ジアミン(1)は、下記式[1]の特定構造を有するジアミンである。
【化12】
、X、X、X、X、X及びnは、上記に定義した通りであるが、なかでも、それぞれ、以下のものが好ましい。
は、原料の入手性や合成の容易さの点から、単結合、−(CH−(aは1〜15の整数である)、−O−、−CHO−又は−COO−が好ましい。より好ましいのは、単結合、−(CH−(aは1〜10の整数である)、−O−、−CHO−又は−COO−である。
は、単結合又は−(CH−(bは1〜10の整数である)が好ましい。
は、合成の容易さの点から、単結合、−(CH−(cは1〜15の整数である)、−O−、−CHO−又は−COO−が好ましい。より好ましいのは、単結合、−(CH−(cは1〜10の整数である)、−O−、−CHO−又は−COO−である。
は、合成の容易さの点から、ベンゼン環、シクロへキサン環又はステロイド骨格を有する炭素数17〜51の有機基が好ましい。
は、ベンゼン環又はシクロへキサン環が好ましい。
【0020】
は、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、炭素数1〜10のフッ素含有アルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基又は炭素数1〜10のフッ素含有アルコキシ基が好ましい。より好ましくは、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基又は炭素数1〜12のアルコキシ基である。特に好ましくは、炭素数1〜9のアルキル基、炭素数2〜12のアルケニル基又は炭素数1〜9のアルコキシ基である。
nは、原料の入手性や合成の容易さの点から、0〜3が好ましい。より好ましいのは、0〜2である。
【0021】
、X、X、X、X、X及びnの好ましい組み合わせは、国際公開公報WO2011/132751(2011.10.27公開)の13〜34頁の表6〜表47に掲載される(2−1)〜(2−629)と同じ組み合わせが挙げられる。なお、国際公開公報の各表では、本発明におけるX〜Xが、Y1〜Y6として示されているが、Y1〜Y6は、X〜Xと読み替えるものとする。また、国際公開公報の各表に掲載される(2−605)〜(2−629)では、本発明におけるステロイド骨格を有する炭素数17〜51の有機基が、ステロイド骨格を有する炭素数12〜25の有機基と示されているが、ステロイド骨格を有する炭素数12〜25の有機基は、ステロイド骨格を有する炭素数17〜51の有機基と読み替えるものとする。
【0022】
なかでも、(2−25)〜(2−96)、(2−145)〜(2−168)、(2−217)〜(2−240)、(2−268)〜(2−315)、(2−364)〜(2−387)、(2−436)〜(2−483)、(2−603)〜(2−615)又は(2−624)の組み合わせが好ましい。特に好ましい組み合わせは、(2−49)〜(2−96)、(2−145)〜(2−168)、(2−217)〜(2−240)、(2−603)〜(2−606)、(2−607)〜(2−609)、(2−611)、(2−612)又は(2−624)である。
【0023】
特定ジアミン(1)には、特に下記式[1a]で示されるジアミンを用いることが好ましい。
【化13】
Xは、前記式[1]で示される構造を示す。また、式[1a]中のX、X、X、X、X、X、及びnの詳細、及び好ましい組み合せは、前記式[1]に記載される通りである。
n1は、1〜4の整数を示す。なかでも、1の整数が好ましい。
【0024】
具体的には、国際公開公報WO2013/125595(2013.8.29公開)の15頁〜19頁に記載される式[2−1]〜式[2−6]、式[2−9]〜式[2−31]のジアミンが挙げられる。なお、国際公開公報WO2013/125595の記載において、式[2−1]〜式[2−3]中のR及び式[2−4]〜式[2−6]中のRは、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のフッ素含有アルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基及び炭素数1〜18のフッ素含有アルコキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種を示す。また、式[2−13]中のAは、炭素数3〜18の直鎖状又は分岐状アルキル基を示す。加えて、式[2−4]〜式[2−6]中のRは、−O−、−CHO−、−COO−及び−OCO−からなる群から選ばれる少なくとも1種を示す。
なかでも、好ましいジアミンは、安定なプレチルト角が発現でき、ODF方式で発生する液晶配向ムラを軽減でき、長時間光の照射に曝された後での電圧保持率の低下を抑制する効果が高い点から、国際公開公報WO2013/125595に記載される式[2−1]〜式[2−6]、式[2−9]〜式[2−13]又は式[2−22]〜式[2−31]のジアミンである。
特定ジアミン(1)の使用割合は、上記の点から、下記の使用割合が好ましい。特定重合体(A)では、ジアミン成分全体に対して、10〜70モル%が好ましい。より好ましいのは、15〜70モル%であり、特に好ましいのは、20〜60モル%である。特定重合体(B)では、ジアミン成分全体に対して、0〜40モル%が好ましい。より好ましいのは、0〜30モル%であり、特に好ましいのは、0〜25モル%である。特定重合体(C)では、0〜20モル%が好ましい。より好ましいのは、0〜10モル%である。
また、特定ジアミン(1)は、ポリイミド系重合体の溶媒への溶解性、液晶配向膜にした際の液晶配向性、更には、液晶表示素子の光学特性などの特性に応じて、1種又は2種以上を混合して使用することができる。
【0025】
<特定ジアミン(2)>
本発明における特定ジアミン(2)は、下記の式[2]で示される特定構造(2)を有するジアミンである。
【化14】
、W、W及びWは、上記に定義した通りであるが、なかでも、それぞれ、以下のものが好ましい。
は、−O−、−NH−、−CONH−、−NHCO−、−CHO−、−OCO−、−CON(CH)−又は−N(CH)CO−が好ましい。より好ましいのは、合成の容易さの点から、−O−、−NH−、−CONH−、−NHCO−、−CHO−、−OCO−又は−CON(CH)−である。特に好ましいのは、−O−、−CONH−又は−CHO−である。
【0026】
は、単結合、炭素数1〜20のアルキレン基、非芳香族環及び芳香族環からなる群から選ばれる少なくとも1種を示す。
炭素数1〜20のアルキレン基は、直鎖状でも良いし、分岐していても良い。また、不飽和結合を有していても良い。なかでも、合成の容易さの点から、炭素数1〜10のアルキレン基が好ましい。
非芳香族環の具体例としては、シクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環、シクロノナン環、シクロデカン環、シクロウンデカン環、シクロドデカン環、シクロトリデカン環、シクロテトラデカン環、シクロペンタデカン環、シクロヘキサデカン環、シクロヘプタデカン環、シクロオクタデカン環、シクロノナデカン環、シクロイコサン環、トリシクロエイコサン環、トリシクロデコサン環、ビシクロヘプタン環、デカヒドロナフタレン環、ノルボルネン環及びアダマンタン環などが挙げられる。なかでも、シクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、ノルボルネン環又はアダマンタン環が好ましい。
【0027】
芳香族環の具体例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、テトラヒドロナフタレン環、アズレン環、インデン環、フルオレン環、アントラセン環、フェナントレン環、フェナレン環などが挙げられる。なかでも、ベンゼン環、ナフタレン環、テトラヒドロナフタレン環、フルオレン環又はアントラセン環が好ましい。
としては、単結合、炭素数1〜10のアルキレン基、シクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、ノルボルネン環、アダマンタン環、ベンゼン環、ナフタレン環、テトラヒドロナフタレン環、フルオレン環又はアントラセン環が好ましい。なかでも、合成の容易さの点及び長時間光の照射に曝された後での直流電圧により蓄積する残留電荷の緩和が早くなる点から、単結合、炭素数1〜5のアルキレン基、シクロヘキサン環又はベンゼン環が好ましい。
【0028】
は、単結合、−O−、−COO−、−OCO−又は−O(CH−(mは1〜5の整数を示す)が好ましい。より好ましいのは、合成の容易さの点から、単結合、−O−、−OCO−又は−O(CH−(mは1〜5を示す)である。
は、窒素含有芳香族複素環を示し、下記の式[a]、式[b]及び式[c]からなる群から選ばれる少なくとも1種の構造を含有する複素環である。
【化15】
(Zは炭素数1〜5のアルキル基を示す。)
【0029】
より具体的には、ピロール環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピラゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、キノリン環、ピラゾリン環、イソキノリン環、カルバゾール環、プリン環、チアジアゾール環、ピリダジン環、ピラゾリン環、トリアジン環、ピラゾリジン環、トリアゾール環、ピラジン環、ベンズイミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、シンノリン環、フェナントロリン環、インドール環、キノキサリン環、ベンゾチアゾール環、フェノチアジン環、オキサジアゾール環及びアクリジン環などを挙げることができる。なかでも、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、トリアジン環、トリアゾール環、ピラジン環、ベンズイミダゾール環又はベンゾイミダゾール環が好ましい。より好ましいのは、長時間光の照射に曝された後での直流電圧により蓄積する残留電荷の緩和が早くなる点から、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、ピリジン環又はピリミジン環である。特に好ましいのは、イミダゾール環又はピリジン環である。
また、式[2]におけるWは、Wに含まれる式[a]、式[b]及び式[c]と隣り合わない置換基と結合していることが好ましい。
式[2a]における好ましいW、W、W、及びWの組み合わせは、下記の表1〜表31に示す通りである。
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】
【表3】
【0033】
【表4】
【0034】
【表5】
【0035】
【表6】
【0036】
【表7】
【0037】
【表8】
【0038】
【表9】
【0039】
【表10】
【0040】
【表11】
【0041】
【表12】
【0042】
【表13】
【0043】
【表14】
【0044】
【表15】
【0045】
【表16】
【0046】
【表17】
【0047】
【表18】
【0048】
【表19】
【0049】
【表20】
【0050】
【表21】
【0051】
【表22】
【0052】
【表23】
【0053】
【表24】
【0054】
【表25】
【0055】
【表26】
【0056】
【表27】
【0057】
【表28】
【0058】
【表29】
【0059】
【表30】
【0060】
【表31】
【0061】
なかでも、(a−43)〜(a−49)、(a−57)〜(a−63)、(a−218)〜(a−224)、(a−232)〜(a−238)、(a−323)〜(a−329)、(a−337)〜(a−343)、(a−428)〜(a−434)又は(a−442)〜(a−448)の組み合わせが好ましい。より好ましいのは、長時間光の照射に曝された後での直流電圧により蓄積する残留電荷の緩和が早くなる点から、(a−44)、(a−45)、(a−58)又は(a−59)の組み合わせである。
【0062】
特定ジアミン(2)としては、特に下記の式[2a]で示されるジアミンを用いることが好ましい。
【化16】
式[2a]中、Wは、前記式[2]で示される構造を示す。また、式[2a]中のW、W、W、及びWの詳細、及び好ましい組み合せは、前記式[2]に記載される通りである。p1は、1〜4の整数を示す。なかでも、合成の容易さの点から1が好ましい。
【0063】
特定ジアミン(2)の使用割合は、上記の点から、下記の使用割合が好ましい。特定重合体(A)では、ジアミン成分全体に対して、1〜60モル%が好ましい。より好ましいのは、5〜50モル%であり、特に好ましいのは、10〜50モル%である。特定重合体(B)では、ジアミン成分全体に対して、5〜100モル%が好ましい。より好ましいのは、10〜95モル%であり、特に好ましいのは、15〜95モル%である。特定重合体(C)では、0〜20モル%が好ましい。より好ましいのは、0〜10モル%であり、特に好ましいのは、0モル%である。
また、特定ジアミン(2)は、ポリイミド系重合体の溶媒への溶解性、液晶配向膜にした際の液晶配向性、更には、液晶表示素子の光学特性などの特性に応じて、1種又は2種以上を混合して使用することができる。
【0064】
<特定ジアミン(3)>
本発明における特定ジアミン(3)は、カルボキシ基(COOH基)及びヒドロキシ基(OH基)からなる群から選ばれる少なくとも1種の置換基を有するジアミンである。
具体的には、下記の式[3a]で示されるジアミンを用いることが好ましい。
【化17】
式[3a]中、Yは、下記の式[3−1]又は式[3−2]で示される構造を示す。
m1は、1〜4の整数を示す。
【0065】
【化18】
式[3−1]中、aは、0〜4の整数を示す。なかでも、原料の入手性や合成の容易さの点から、0又は1の整数が好ましい。
式[3−2]中、bは、0〜4の整数を示す。なかでも、原料の入手性や合成の容易さの点から、0又は1の整数が好ましい。
【0066】
より具体的には、例えば、2,4−ジアミノフェノール、3,5−ジアミノフェノール、3,5−ジアミノベンジルアルコール、2,4−ジアミノベンジルアルコール、4,6−ジアミノレゾルシノール、2,4−ジアミノ安息香酸、2,5−ジアミノ安息香酸、3,5−ジアミノ安息香酸などが挙げられる。
なかでも、長時間光の照射に曝された後での電圧保持率の低下を抑制し、かつ、直流電圧により蓄積する残留電荷の緩和が早くなる点から、2,4−ジアミノフェノール、3,5−ジアミノフェノール、3,5−ジアミノベンジルアルコール又は3,5−ジアミノ安息香酸が好ましい。
【0067】
特定ジアミン(3)の使用割合は、上記の点から、下記の使用割合が好ましい。では、ジアミン成分全体に対して、0〜20モル%が好ましい。より好ましいのは、0〜10モル%であり、特に好ましいのは、0モル%である。特定重合体(B)では、ジアミン成分全体に対して、0〜20モル%が好ましい。より好ましいのは、0〜10モル%であり、特に好ましいのは、0モル%である。特定重合体(C)では、40〜100モル%が好ましい。より好ましいのは、50〜100モル%であり、特に好ましいのは、60〜100モル%である。
また、特定ジアミン(3)は、ポリイミド系重合体の溶媒への溶解性、液晶配向膜にした際の液晶配向性、更には、液晶表示素子の光学特性などの特性に応じて、1種又は2種以上を混合して使用することができる。
【0068】
<特定ジアミン(4)>
本発明における特定ジアミン(4)は、下記の式[4]で示される特定構造(4)を有するジアミンである。
【化19】
より具体的には、下記の式[4a−1]で示されるジアミンを用いることが好ましい。
【化20】
(q1は1〜8の整数を示す。)
【0069】
特定ジアミン(4)の使用割合は、シール剤と液晶配向膜との接着性を高め、高温高湿条件下において液晶表示素子の額縁付近の表示ムラの発生を抑制することができる点から、下記の使用割合が好ましい。特定重合体(A)では、ジアミン成分全体に対して、1〜50モル%が好ましい。より好ましいのは、5〜40モル%であり、特に好ましいのは、5〜30モル%である。特定重合体(B)では、ジアミン成分全体に対して、0〜20モル%が好ましい。より好ましいのは、0〜10モル%であり、特に好ましいのは、0モル%である。特定重合体(C)では、0〜20モル%が好ましい。より好ましいのは、0〜10モル%であり、特に好ましいのは、0モル%である。
また、特定ジアミン(4)は、ポリイミド系重合体の溶媒への溶解性、液晶配向膜にした際の液晶配向性、更には、液晶表示素子の光学特性などの特性に応じて、1種又は2種以上を混合して使用することができる。
【0070】
<特定重合体(A)〜特定重合体(C)>
本発明における特定重合体(A)、特定重合体(B)及び特定重合体(C)は、それぞれ、上記した(A)成分、(B)成分、及び(C)成分の重合体を意味し、ポリイミド前駆体又はポリイミド(総称してポリイミド系重合体ともいう)である。それらは、ジアミン成分とテトラカルボン酸成分とを反応させて得られるポリイミド前駆体又はポリイミドである。
ポリイミド前駆体は、下記の式[A]で示される構造を有する。
【化21】
(Rは4価の有機基を示す。Rは2価の有機基を示す。A及びAは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。A及びAは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又はアセチル基を示す。nAは正の整数を示す。)
【0071】
前記ジアミン成分としては、分子内に1級又は2級のアミノ基を2個有するジアミンが挙げられる。テトラカルボン酸成分としては、テトラカルボン酸、テトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸ジハライド、テトラカルボン酸ジアルキルエステル又はテトラカルボン酸ジアルキルエステルジハライドが挙げられる。
ポリイミド系重合体は、下記の式[B]で示されるテトラカルボン酸二無水物と下記の式[C]で示されるジアミンとを原料とすることで、比較的簡便に得られるという理由から、下記の式[D]で示される繰り返し単位の構造式から成るポリアミド酸又は該ポリアミド酸をイミド化させたポリイミドが好ましい。なかでも、ポリイミド系重合体は、液晶配向膜の物理的及び化学的安定性の点から、ポリイミドであることが好ましい。
【化22】
(R及びRは、前記式[A]で定義したものと同義である。)
【0072】
【化23】
(R、R及びnAは、式[A]で定義したものと同義である。)
また、通常の合成手法で、上記で得られた式[D]の重合体に、式[A]で示されるA及びAの炭素数1〜8のアルキル基、及び式[A]で示されるA及びAの炭素数1〜5のアルキル基又はアセチル基を導入することもできる。
【0073】
特定重合体(A)、(B)及び(C)には、前記の特定ジアミン以外に、本発明の効果を損なわない限りにおいて、その他のジアミンを用いることもできる。
具体的には、下記の式[D1]〜式[D6]で示されるジアミンが挙げられる。
【化24】
【0074】
【化25】
更に、国際公開公報WO2013/125595(2013.8.29公開)の19頁〜23頁に記載されるその他のジアミン、同公報の23頁〜24頁に記載される式[DA1]〜式[DA12]及び式[DA15]〜式[DA20]で示されるジアミン、及び同公報の26頁に記載される式[DA27]及び式[DA28]で示されるジアミンが挙げられる。
【0075】
その他ジアミンは、特定重合体(A)、(B)及び(C)のいずれの特定重合体のジアミン成分に用いても良く、これら全ての特定重合体のジアミン成分、或いはいずれかの特定重合体のジアミン成分に使用できる。
また、その他ジアミンは、ポリイミド系重合体の溶媒への溶解性、液晶配向膜にした際の液晶配向性、更には、液晶表示素子の光学特性などの特性に応じて、1種又は2種以上を混合して使用できる。
【0076】
特定重合体(A)、(B)及び(C)の少なくともいずれかの重合体におけるテトラカルボン酸成分には、下記の式[5]で示されるテトラカルボン酸二無水物(特定テトラカルボン酸成分ともいう)を用いることが好ましい。より好ましいのは、全ての特定重合体に、特定テトラカルボン酸成分を用いることである。
【化26】
式[5]中、Zは、前記式[5a]〜式[5k]で示される構造からなる群から選ばれる少なくとも1種の構造を示す。
式[5]中のZは、合成の容易さやポリマーを製造する際の重合反応性のし易さの点から、式[5a]、式[5c]、式[5d]、式[5e]、式[5f]、式[5g]又は式[5k]で示される構造が好ましい。より好ましいのは、式[5a]、式[5e]、式[5f]、式[5g]又は式[5k]で示される構造である。特に好ましいのは、式[5e]、式[5f]、式[5g]又は式[5k]で示される構造である。
【0077】
特定テトラカルボン酸成分の使用割合は、全テトラカルボン酸成分に対して1モル%以上であることが好ましい。より好ましいのは、5モル%以である。特に好ましいのは、10モル%以上であり、最も好ましいのは、長時間光の照射に曝された後での電圧保持率の低下を抑制できる点から、10〜90モル%である。
また、前記式[5e]、式[5f]、式[5g]又は式[5k]で示される構造のテトラカルボン酸成分を用いる場合、その使用量を、テトラカルボン酸成分全体の20モル%以上とすることで、所望の効果が得られる。好ましくは、30モル%以上である。更に、テトラカルボン酸成分の全てが、式[5e]、式[5f]、式[5g]又は式[5k]で示される構造のテトラカルボン酸成分であってもよい。
【0078】
全ての特定重合体において、本発明の効果を損なわない限りにおいて、特定テトラカルボン酸成分以外のその他のテトラカルボン酸成分を用いることができる。
具体的には、国際公開公報WO2013/125595(2013.8.29公開)の27頁〜28頁に記載されるその他のテトラカルボン酸成分が挙げられる。 また、特定テトラカルボン酸成分及びその他のテトラカルボン酸成分は、各特性に応じて、1種又は2種以上を混合して使用することができる。
【0079】
本発明における特定重合体(A)は、特定ジアミン(1)及び特定ジアミン(2)を含有するジアミン成分と、テトラカルボン酸成分との反応で得られるポリイミド前駆体又は該ポリイミド前駆体をイミド化したポリイミドである。
その際、ジアミン成分全体における特定ジアミン(1)及び特定ジアミン(2)の使用(含有)割合は、下記の通りである。即ち、特定ジアミン(1)は、ジアミン成分全体に対して、10〜70モル%が好ましい。より好ましいのは、15〜70モル%であり、特に好ましいのは、20〜60モル%である。また、特定ジアミン(2)は、ジアミン成分全体に対して、1〜60モル%が好ましい。より好ましいのは、5〜50モル%であり、特に好ましいのは、10〜50モル%である。更に、特定ジアミン(3)は、シール剤と液晶配向膜との接着性を高め、高温高湿条件下において液晶表示素子の額縁付近の表示ムラの発生を抑制することができる点から、ジアミン成分全体に対して、0〜20モル%が好ましい。より好ましいのは、0〜10モル%であり、特に好ましいのは、0モル%、即ち、特定ジアミン(3)を用いないことである。
【0080】
特定重合体(B)は、特定ジアミン(2)を含有するジアミン成分と、テトラカルボン酸成分との反応で得られるポリイミド前駆体又は該ポリイミド前駆体をイミド化したポリイミドである。その際、ジアミン成分全体における特定ジアミン(2)の使用割合(モル%)は、下記の通りである。即ち、特定ジアミン(2)は、ジアミン成分全体に対して、5〜100モル%が好ましい。より好ましいのは、10〜95モル%であり、特に好ましいのは、15〜95モル%である。また、特定ジアミン(1)は、ジアミン成分全体に対して、0〜40モル%が好ましい。より好ましいのは、0〜30モル%であり、特に好ましいのは、0〜25モル%である。但し、特定重合体(B)における特定ジアミン(1)のジアミン成分全体に対する使用割合(モル%)は、特定重合体(A)における特定ジアミン(1)の使用割合(モル%)を1.0にした際に、その比率が1.0未満となる使用割合(モル%)である。その際、その比率が0である場合、即ち、特定重合体(B)のジアミン成分に、特定ジアミン(1)を用いない場合は、長時間光の照射に曝された後での電圧保持率の低下を抑制し、かつ直流電圧により蓄積する残留電荷の緩和が早くなる点で好ましい。また、特定重合体(B)に、特定ジアミン(1)を用いる場合は、前記比率が、0.01〜0.9が好ましい。より好ましいのは、0.01〜0.8であり、特に好ましいのは、0.05〜0.7である。
更に、特定ジアミン(3)は、ジアミン成分全体に対して、0〜20モル%が好ましい。より好ましいのは、0〜10モル%であり、特に好ましいのは、シール剤と液晶配向膜との接着性を高め、高温高湿条件下において液晶表示素子の額縁付近の表示ムラの発生を抑制することができる点から、0モル%、即ち、特定重合体(B)のジアミン成分に特定ジアミン(3)を用いないことである。
【0081】
特定重合体(C)は、特定ジアミン(3)を含有するジアミン成分と、テトラカルボン酸成分との反応で得られるポリイミド前駆体又は該ポリイミド前駆体をイミド化したポリイミドである。その際、ジアミン成分全体における特定ジアミン(3)の使用割合(モル%)は、下記の通りである。即ち、特定ジアミン(3)は、ジアミン成分全体に対して、40〜100モル%が好ましい。より好ましいのは、50〜100モル%であり、特に好ましいのは、60〜100モル%である。また、特定ジアミン(1)では、ジアミン成分全体に対して、0〜20モル%が好ましい。より好ましいのは、0〜10モル%である。但し、特定重合体(C)における特定ジアミン(1)のジアミン成分全体に対する使用割合(モル%)は、特定重合体(A)における特定ジアミン(1)の使用割合(モル%)を1.0にした際に、その比率が1.0未満となる使用割合(モル%)である。その際、その比率が0である場合、即ち、特定重合体(C)のジアミン成分に、特定ジアミン(1)を用いない場合は、長時間光の照射に曝された後での電圧保持率の低下を抑制し、かつ直流電圧により蓄積する残留電荷の緩和が早くなる点で好ましい。また、特定重合体(C)に、特定ジアミン(1)を用いる場合は、前記比率が、0.01〜0.4が好ましい。より好ましいのは、0.01〜0.3であり、特に好ましいのは、0.01〜0.2である。
更に、特定ジアミン(3)は、ジアミン成分全体に対して、0〜20モル%が好ましい。より好ましいのは、0〜10モル%であり、特に好ましいのは、長時間光の照射に曝された後での電圧保持率の低下を抑制し、かつ直流電圧により蓄積する残留電荷の緩和が早くなる点から、0モル%、即ち、特定重合体(C)のジアミン成分に特定ジアミン(3)を用いないことである。
【0082】
本発明において、特定重合体(A)、(B)及び(C)の少なくともいずれかの重合体におけるジアミン成分は、特定ジアミン(4)を含有する。その際のジアミンは、前記式[4a−1]で示されるジアミンを用いることが好ましい。特定ジアミン(4)は、シール剤と液晶配向膜との接着性を高め、高温高湿条件下において、液晶表示素子の額縁付近の表示ムラの発生を抑制することができる点から、特定重合体(A)に用いることが好ましい。その際、特定重合体(A)における特定ジアミン(4)の使用割合は、ジアミン成分全体に対して、1〜50モル%が好ましい。より好ましくは5〜40モル%であり、特に好ましくは、5〜30モル%である。また、特定重合体(B)に用いる場合は、ジアミン成分全体に対して、0〜20モル%が好ましく、より好ましくは0〜10モル%である。更に、特定重合体(C)に用いる場合は、ジアミン成分全体に対して、0〜20モル%が好ましく、より好ましくは0〜10モル%である。
【0083】
本発明の特定重合体(A)、(B)及び(C)は、通常、ジアミン成分とテトラカルボン酸成分とを反応させて得られる。一般的には、テトラカルボン酸二無水物及びそのテトラカルボン酸の誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種のテトラカルボン酸成分と1種又は複数種のジアミンからなるジアミン成分とを反応させて、ポリアミド酸を得る方法が挙げられる。具体的には、テトラカルボン酸二無水物と1級又は2級のジアミンとを重縮合させてポリアミド酸を得る方法、テトラカルボン酸と1級又は2級のジアミンとを脱水重縮合反応させてポリアミド酸を得る方法、又はテトラカルボン酸ジハライドと1級又は2級のジアミンとを反応させてポリアミド酸を得る方法が用いられる。
【0084】
ポリアミド酸アルキルエステルを得るには、カルボン酸基をジアルキルエステル化したテトラカルボン酸と1級又は2級のジアミンとを重縮合させる方法、カルボン酸基をジアルキルエステル化したテトラカルボン酸ジハライドと1級又は2級のジアミンとを反応させる方法、又はポリアミド酸のカルボキシ基をエステルに変換する方法が用いられる。
ポリイミドを得るには、前記のポリアミド酸又はポリアミド酸アルキルエステルを閉環させてポリイミドとする方法が用いられる。
【0085】
ジアミン成分とテトラカルボン酸成分との反応は、通常、ジアミン成分とテトラカルボン酸成分とを有機溶媒中で行う。その際に用いる有機溶媒としては、生成したポリイミド前駆体が溶解するものであれば特に限定されない。下記に、反応に用いる有機溶媒の具体例を挙げるが、これらの例に限定されるものではない。
例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、1,3−ジメチル−イミダゾリジノンなどが挙げられる。また、ポリイミド前駆体の溶媒溶解性が高い場合は、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン又は下記の式[D−1]〜式[D−3]で示される溶媒を用いることができる。
【化27】
(Dは炭素数1〜3のアルキル基を示す。Dは炭素数1〜3のアルキル基を示す。Dは炭素数1〜4のアルキル基を示す。)
これらは単独で使用しても、混合して使用してもよい。更に、ポリイミド前駆体を溶解させない溶媒であっても、生成したポリイミド前駆体が析出しない範囲で、上記有機溶媒に混合して使用してもよい。また、有機溶媒中の水分は重合反応を阻害し、更には生成したポリイミド前駆体を加水分解させる原因となるので、有機溶媒は脱水乾燥させたものを用いることが好ましい。
【0086】
ジアミン成分とテトラカルボン酸成分とを有機溶媒中で反応させる際には、ジアミン成分を有機溶媒に分散或いは溶解させた溶液を攪拌させ、テトラカルボン酸成分をそのまま添加する、又は有機溶媒に分散或いは溶解させて添加する方法、逆にテトラカルボン酸成分を有機溶媒に分散、或いは溶解させた溶液にジアミン成分を添加する方法、ジアミン成分とテトラカルボン酸成分とを交互に添加する方法などが挙げられ、これらのいずれの方法を用いてもよい。また、ジアミン成分及びテトラカルボン酸成分を、それぞれ複数種用いて反応させる場合は、あらかじめ混合した状態で反応させてもよく、個別に順次反応させてもよく、更に個別に反応させた低分子量体を混合反応させ重合体としてもよい。
【0087】
その際の重合温度は−20〜150℃の任意の温度を選択することができるが、好ましくは−5〜100℃の範囲である。また、反応は任意の濃度で行うことができるが、濃度が低すぎると高分子量の重合体を得ることが難しくなり、濃度が高すぎると反応液の粘性が高くなり過ぎて均一な攪拌が困難となる。そのため、好ましくは1〜50%、より好ましくは5〜30%である。重合反応の初期は高濃度で行い、その後、有機溶媒を追加することもできる。
ポリイミド前駆体の重合反応では、ジアミン成分の合計モル数とテトラカルボン酸成分の合計モル数の比は0.8〜1.2であることが好ましい。通常の重合反応と同様に、このモル比が1.0に近いほど生成するポリイミド前駆体の分子量は大きくなる。
【0088】
ポリイミドは、前記のポリイミド前駆体を閉環させて得られるポリイミドであり、アミド酸基の閉環率(イミド化率ともいう)は必ずしも100%である必要はなく、用途や目的に応じて任意に調整することができる。なかでも、本発明において、全ての特定重合体は、ポリイミド前駆体をイミド化したポリイミドであることが好ましい。
その際のイミド化率は、下記の通りであることが好ましい。即ち、特定重合体(A)は、50〜90%が好ましい。より好ましいのは、55〜90%であり、特に好ましいのは、60〜90%である。特定重合体(B)は、50〜95%が好ましい。より好ましいのは、55〜95%であり、特に好ましいのは、60〜95%である。特定重合体(C)は、50〜90%が好ましい。より好ましいのは、60〜90%であり、特に好ましいのは、60〜80%である。
【0089】
ポリイミド前駆体をイミド化させる方法としては、ポリイミド前駆体の溶液をそのまま加熱する熱イミド化、又はポリイミド前駆体の溶液に触媒を添加する触媒イミド化が挙げられる。ポリイミド前駆体を溶液中で熱イミド化させる場合の温度は、100〜400℃、好ましくは120〜250℃であり、イミド化反応により生成する水を系外に除きながら行う方が好ましい。
ポリイミド前駆体の触媒イミド化は、ポリイミド前駆体の溶液に、塩基性触媒と酸無水物とを添加し、−20〜250℃、好ましくは0〜180℃で攪拌することにより行うことができる。塩基性触媒の量はアミド酸基の0.5〜30モル倍、好ましくは2〜20モル倍であり、酸無水物の量はアミド酸基の1〜50モル倍、好ましくは3〜30モル倍である。
【0090】
塩基性触媒としてはピリジン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミンなどを挙げることができる。なかでも、ピリジンは反応を進行させるのに適度な塩基性を持つので好ましい。酸無水物としては、無水酢酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸などを挙げることができる。なかでも、無水酢酸を用いると反応終了後の精製が容易となるので好ましい。触媒イミド化によるイミド化率は、触媒量、反応温度及び反応時間を調節することにより制御することができる。
【0091】
ポリイミド前駆体又はポリイミドの反応溶液から、生成したポリイミド前駆体又はポリイミドを回収する場合には、反応溶液を溶媒に投入して沈殿させればよい。沈殿に用いる溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、ヘキサン、ブチルセルソルブ、ヘプタン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、ベンゼン、水などを挙げることができる。溶媒に投入して沈殿させたポリマーは、濾過して回収した後、常圧或いは減圧下で、常温或いは加熱して乾燥することができる。また、沈殿回収した重合体を、有機溶媒に再溶解させて再沈殿回収する操作を2〜10回繰り返すと、重合体中の不純物を少なくすることができる。この際の溶媒としては、例えば、アルコール類、ケトン類、炭化水素などが挙げられ、これらから選ばれる3種類以上の溶媒を用いると、より一層精製の効率が上がるので好ましい。
【0092】
ポリイミド系重合体の分子量は、そこから得られる液晶配向膜の強度、液晶配向膜形成時の作業性及び塗膜性を考慮した場合、GPC(Gel Permeation Chromatography)法で測定した重量平均分子量で、5,000〜1,000,000であることが好ましい。なかでも、10,000〜150,000が好ましい。
前記の通り、本発明における全ての特定重合体は、長時間高温及び光の照射に曝された後でも、安定な垂直安定性を示し、長時間光の照射に曝された後でも、電圧保持率の低下を抑制することができる点から、上述したポリイミド前駆体を触媒イミド化したポリイミドであることが好ましい。その際のイミド化率は、上述した範囲であることが好ましい。
【0093】
<液晶配向処理剤>
本発明の液晶配向処理剤は、液晶配向膜(樹脂被膜ともいう)を形成するための塗布溶液であり、特定重合体(A)、(B)、(C)及び溶媒を含有する液晶配向膜を形成するための塗布溶液である。
液晶配向処理剤における特定重合体(A)、(B)及び(C)の使用(含有)割合は、下記の通りであることが好ましい。即ち、特定重合体(A)100部に対して、特定重合体(B)は、30〜300部、特定重合体(C)は、60〜500部であることが好ましい。より好ましいのは、特定重合体(B)は、50〜250部、特定重合体(C)は、100〜350部であり、特に好ましいのは、特定重合体(B)は、50〜200部、特定重合体(C)は、100〜300部である。
【0094】
液晶配向処理剤における全ての重合体成分は、全てが特定重合体であってもよく、それ以外の他の重合体が混合されていてもよい。その際、それ以外の他の重合体の含有量は、全ての特定重合体100部に対して、0.5〜15部であることが好ましい。より好ましいのは、1〜10部である。それ以外の他の重合体としては、セルロース系重合体、アクリルポリマー、メタクリルポリマー、ポリスチレン、ポリアミド、ポリシロキサンなどが挙げられる。
液晶配向処理剤中の溶媒は、塗布により均一な液晶配向膜を形成するという点から、液晶配向処理剤中の溶媒の含有量が70〜99.9%であることが好ましい。この含有量は、目的とする液晶配向膜の膜厚によって適宜変更することができる。
【0095】
液晶配向処理剤に用いる溶媒は、全ての特定重合体を溶解させる溶媒(良溶媒ともいう)であれば特に限定されない。下記に良溶媒の具体例を挙げるが、これらに限定されるものではない。
例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、1,3−ジメチル−イミダゾリジノン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノンなどが挙げられる。
なかでも、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン又はγ−ブチロラクトンを用いることが好ましい。
更に、特定重合体の溶媒への溶解性が高い場合は、前記式[D−1]〜式[D−3]で示される溶媒を用いることが好ましい。
液晶配向処理剤における良溶媒は、液晶配向処理剤に含まれる溶媒全体の10〜100%であることが好ましい。より好ましいのは、20〜90%である。特に好ましいのは、30〜80%である。
【0096】
液晶配向処理剤には、本発明の効果を損なわない限り、液晶配向処理剤を塗布した際の液晶配向膜の塗膜性や表面平滑性を向上させる溶媒(貧溶媒ともいう)を用いることができる。下記に貧溶媒の具体例を挙げるが、これらに限定されるものではない。
具体的には、国際公開公報WO2013/125595(2013.8.29公開)の35頁〜37頁に記載される貧溶媒が挙げられる。
【0097】
なかでも、1−ヘキサノール、シクロヘキサノール、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル又は前記式[D−1]〜式[D−3]で示される溶媒を用いることが好ましい。
これら貧溶媒は、液晶配向処理剤に含まれる溶媒全体の1〜70%であることが好ましい。より好ましいのは、1〜60%である。特に好ましいのは、5〜60%である。
【0098】
液晶配向処理剤には、本発明の効果を損なわない限り、エポキシ基、イソシアネート基、オキセタン基及びシクロカーボネート基からなる群から選ばれる架橋性化合物、ヒドロキシ基、ヒドロキシアルキル基及び低級アルコキシアルキル基からなる群から選ばれる架橋性化合物、又は重合性不飽和結合基を有する架橋性化合物(総称して特定架橋性化合物ともいう)を導入することが好ましい。その際、これらの基は、化合物中に2個以上有する必要がある。
【0099】
エポキシ基又はイソシアネート基を有する架橋性化合物の例としては、具体的には、国際公開公報WO2013/125595(2013.8.29公開)の37頁〜38頁に記載されるエポキシ基又はイソシアネート基を有する架橋性化合物が挙げられる。
【0100】
オキセタン基を有する架橋性化合物としては、具体的には、国際公開公報WO2011/132751の58頁〜59頁に掲載される式[4a]〜式[4k]で示される架橋性化合物が挙げられる。
【0101】
シクロカーボネート基を有する架橋性化合物としては、具体的には、国際公開公報WO2012/014898の76頁〜82頁に掲載される式[5−1]〜式[5−42]で示される架橋性化合物が挙げられる。
【0102】
ヒドロキシ基、ヒドロキシアルキル基及び低級アルコキシアルキル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を有する架橋性化合物としては、具体的には、国際公開公報2013/125595(2013.8.29公開)の39頁〜40頁に記載されるメラミン誘導体又はベンゾグアナミン誘導体、及び、国際公開公報WO2011/132751(2011.10.27公開)の62頁〜66頁に掲載される、式[6−1]〜式[6−48]で示される架橋性化合物が挙げられる。
【0103】
重合性不飽和結合を有する架橋性化合物としては、具体的には、国際公開公報WO2013/125595(2013.8.29公開)の40頁〜41頁に記載される重合性不飽和結合を有する架橋性化合物が挙げられる。
【0104】
液晶配向処理剤における特定架橋性化合物の含有量は、全ての重合体成分100部に対して、0.1〜100部であることが好ましい。より好ましいのは、架橋反応が進行し目的の効果を発現させるため、0.1〜50部である。特に好ましいのは、1〜30部である。
【0105】
本発明の液晶配向処理剤には、液晶配向膜中の電荷移動を促進し、素子の電荷抜けを促進させるため、国際公開公報WO2011/132751(2011.10.27公開)の69頁〜73頁に掲載される、式[M1]〜式[M156]で示される窒素含有複素環アミンを添加することもできる。このアミンは、液晶配向処理剤に直接添加しても構わないが、適当な溶媒で濃度が0.1〜10%、好ましくは1〜7%の溶液にしてから添加することが好ましい。この溶媒としては、特定重合体を溶解させる有機溶媒であれば特に限定されない。
【0106】
液晶配向処理剤には、本発明の効果を損なわない限り、液晶配向処理剤を塗布した際の液晶配向膜の膜厚の均一性や表面平滑性を向上させる化合物を用いることができる。更に、液晶配向膜と基板との密着性を向上させる化合物などを用いることもできる。
液晶配向膜の膜厚の均一性や表面平滑性を向上させる化合物としては、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、ノ二オン系界面活性剤などが挙げられる。具体的には、国際公開公報WO2013/125595(2013.8.29公開)の42頁〜43頁に記載される界面活性剤が挙げられる。
これら界面活性剤の使用量は、液晶配向処理剤に含有される全ての重合体成分100質量部に対して、0.01〜2質量部が好ましく、より好ましいのは、0.01〜1質量部である。
【0107】
液晶配向膜と基板との密着性を向上させる化合物の具体例としては、官能性シラン含有化合物やエポキシ基含有化合物が挙げられる。具体的には、国際公開公報WO2013/125595(2013.8.29公開)の43頁〜44頁に記載される化合物が挙げられる。
【0108】
これらの基板との密着させる化合物の使用割合は、液晶配向処理剤に含有される全ての重合体成分100部に対して、0.1〜30部であることが好ましい。より好ましいのは、1〜20部である。0.1部未満であると密着性向上の効果は期待できず、30部よりも多くなると液晶配向処理剤の保存安定性が悪くなる場合がある。
液晶配向処理剤には、上記以外の化合物の他に、本発明の効果が損なわれない範囲であれば、液晶配向膜の誘電率や導電性などの電気特性を変化させる目的の誘電体や導電物質を添加してもよい。
【0109】
<液晶配向膜・液晶表示素子>
本発明の液晶配向処理剤は、基板上に塗布し、焼成した後、ラビング処理や光照射などで配向処理をして、液晶配向膜として用いることができる。また、垂直配向用途などの場合では、配向処理なしでも液晶配向膜として用いることができる。この際に用いる基板としては、透明性の高い基板であれば特に限定されず、ガラス基板の他、アクリル基板やポリカーボネート基板などのプラスチック基板なども用いることができる。プロセスの簡素化の観点からは、液晶駆動のためのITO(Indium Tin Oxide)電極などが形成された基板を用いることが好ましい。また、反射型の液晶表示素子では、片側の基板のみにならば、シリコンウェハなどの不透明な基板も使用でき、この場合の電極としては、アルミなどの光を反射する材料も使用できる。
【0110】
液晶配向処理剤の塗布方法は、特に限定されないが、工業的には、スクリーン印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、インクジェット法などが一般的である。その他の塗布方法としては、ディップ法、ロールコータ法、スリットコータ法、スピンナー法、スプレー法などがあり、目的に応じてこれらを用いてもよい。
液晶配向処理剤を基板上に塗布した後は、ホットプレート、熱循環型オーブン、IR(赤外線)型オーブンなどの加熱手段により、液晶配向処理剤に用いる溶媒に応じて、30〜300℃、好ましくは30〜250℃の温度で溶媒を蒸発させて液晶配向膜とすることができる。焼成後の液晶配向膜の厚みは、厚すぎると液晶表示素子の消費電力の面で不利となり、薄すぎると液晶表示素子の信頼性が低下する場合があるので、好ましくは5〜300nm、より好ましくは10〜100nmである。液晶を水平配向や傾斜配向させる場合は、焼成後の液晶配向膜をラビング、偏光紫外線照射などで処理する。
【0111】
本発明の液晶表示素子は、上記した手法により、本発明の液晶配向処理剤から液晶配向膜付き基板を得た後、公知の方法で液晶セルを作製して液晶表示素子としたものである。
液晶セルの作製方法としては、例えば、液晶配向膜の形成された一対の基板を用意し、片方の基板の液晶配向膜上にスペーサを散布し、液晶配向膜面が内側になるようにして、もう片方の基板を貼り合わせ、液晶を減圧注入して封止する方法、又はスペーサを散布した液晶配向膜面に液晶を滴下した後に、基板を貼り合わせて封止を行う方法などが例示できる。
【0112】
本発明の液晶配向処理剤は、電極を備えた一対の基板の間に液晶層を有してなり、一対の基板の間に活性エネルギー線及び熱の少なくとも一方により重合する重合性化合物を含む液晶組成物を配置し、電極間に電圧を印加しつつ、活性エネルギー線の照射及び加熱の少なくとも一方により、重合性化合物を重合させる工程を経て製造される液晶表示素子にも好ましく用いられる。ここで、活性エネルギー線としては、紫外線が好適である。紫外線としては、波長が300〜400nm、好ましくは310〜360nmである。加熱による重合の場合、加熱温度は40〜120℃、好ましくは60〜80℃である。また、紫外線と加熱を同時に行ってもよい。
【0113】
上記の液晶表示素子は、PSA(Polymer Sustained Alignment)方式により、液晶分子のプレチルトを制御するものである。PSA方式では、液晶材料中に少量の光重合性化合物、例えば、光重合性モノマーを混入しておき、液晶セルを組み立てた後、液晶層に所定の電圧を印加した状態で光重合性化合物に紫外線などを照射し、生成した重合体によって液晶分子のプレチルトを制御する。重合体が生成するときの液晶分子の配向状態が電圧を取り去った後においても記憶されるので、液晶層に形成される電界などを制御することにより、液晶分子のプレチルトを調整することができる。また、PSA方式では、ラビング処理を必要としないので、ラビング処理によってプレチルトを制御することが難しい垂直配向型の液晶層の形成に適している。即ち、本発明の液晶表示素子は、上記した手法により、液晶配向処理剤から液晶配向膜付き基板を得た後、液晶セルを作製し、紫外線の照射及び加熱の少なくとも一方により重合性化合物を重合することで、液晶分子の配向を制御するものとすることができる。
【0114】
PSA方式の液晶セル作製の一例を挙げるならば、次の通りである。即ち、上述した作製方法にて液晶セルを作製する際の液晶には、熱や紫外線照射により重合する重合性化合物が混合される。重合性化合物としては、アクリレート基やメタクリレート基などの重合性不飽和基を分子内に1個以上有する化合物が挙げられる。その際、重合性化合物は、液晶成分の100部に対して0.01〜10部であることが好ましく、より好ましいのは0.1〜5部である。重合性化合物が0.01部未満であると、重合性化合物が重合せずに液晶の配向制御できなくなり、10部よりも多くなると、未反応の重合性化合物が多くなって液晶表示素子の焼き付き特性が低下する。液晶セルを作製した後は、液晶セルに交流又は直流の電圧を印加しながら、熱や紫外線を照射して重合性化合物を重合する。これにより、液晶分子の配向を制御することができる。
【0115】
更に、本発明の液晶配向処理剤は、電極を備えた一対の基板の間に液晶層を有してなり、前記一対の基板の間に活性エネルギー線及び熱の少なくとも一方により重合する重合性基を含む液晶配向膜を配置し、電極間に電圧を印加する工程を経て製造される液晶表示素子、即ち、SC−PVAモードにも用いることもできる。ここで、活性エネルギー線としては、紫外線が好適である。紫外線としては、波長が300〜400nm、より好ましいのは310〜360nmである。加熱による重合の場合、加熱温度は40〜120℃、より好ましいのは60〜80℃である。また、紫外線と加熱を同時に行ってもよい。
活性エネルギー線及び熱の少なくとも一方より重合する重合性基を含む液晶配向膜を得るためには、この重合性基を含む化合物を液晶配向処理剤中に添加する方法や、重合性基を含む重合体成分を用いる方法が挙げられる。
SC−PVAモードの液晶セル作製の一例を挙げるならば、例えば、次の通りである。即ち、上述した作製方法にて液晶セルを作製する。その後、液晶セルに交流又は直流の電圧を印加しながら、熱や紫外線を照射することで、液晶分子の配向を制御することができる。
【0116】
以上のようにして、本発明の液晶配向処理剤を用いることで、シール剤と液晶配向膜との接着性を高め、高温高湿条件下において液晶表示素子の額縁付近の表示ムラの発生を抑制することができる液晶配向膜を提供することができる。また、長時間光の照射に曝された後でも、電圧保持率の低下を抑制し、かつ、直流電圧により蓄積する残留電荷の緩和が早い液晶配向膜を提供することができる。そのため、本発明の液晶配向処理剤を用いて作製された液晶表示素子は、信頼性に優れたものとなり、大型の液晶テレビ、中小型のカーナビゲーションシステム、スマートフォンなどに好適に利用することができる。特に、本発明の液晶配向処理剤は、VAモード、PSAモード及びSC−PVAモードを用いた液晶表示素子の液晶配向膜に対して有用である。
【実施例】
【0117】
以下に実施例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらに限定して解釈されるものではない。以下で用いた化合物の略号は次のとおりである。
(特定ジアミン(1))
A1:1,3−ジアミノ−4−〔4−(トランス−4−n−ヘプチルシクロへキシル)フェノキシ〕ベンゼン
A2:1,3−ジアミノ−5−〔4−(トランス−4−n−ヘプチルシクロへキシル)フェノキシメチル〕ベンゼン
A3:1,3−ジアミノ−4−{4−〔トランス−4−(トランス−4−n−ペンチルシクロへキシル)シクロへキシル〕フェノキシ}ベンゼン
【0118】
【化28】
【0119】
(特定ジアミン(2))
【化29】
【0120】
(特定ジアミン(3))
C1:3,5−ジアミノ安息香酸
【化30】
【0121】
(特定ジアミン(4))
【化31】
【0122】
(その他ジアミン)
E1:p−フェニレンジアミン、 E2:m−フェニレンジアミン
E3:1,3−ジアミノ−4−オクタデシルオキシベンゼン
【化32】
【0123】
(特定テトラカルボン酸二無水物)
F1:1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物
F2:ビシクロ[3,3,0]オクタン−2,4,6,8−テトラカルボン酸二無水物
【化33】
【0124】
(架橋性化合物)
【化34】
【0125】
(溶媒)
NMP:N−メチル−2−ピロリドン、 NEP:N−エチル−2−ピロリドン、γ−BL:γ−ブチロラクトン、BCS:エチレングリコールモノブチルエーテル、PB:プロピレングリコールモノブチルエーテル、DME:ジプロピレングリコールジメチルエーテル、DPM:ジプロピレングリコールモノメチルエーテル
【0126】
「ポリイミド系重合体の分子量測定」
常温ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)装置(GPC−101、昭和電工社製)、カラム(KD−803,KD−805、Shodex社製)を用いて、以下のようにして測定した。
カラム温度:50℃
溶離液:N,N’−ジメチルホルムアミド(添加剤として、臭化リチウム−水和物(LiBr・HO)が30mmol/L(リットル)、リン酸・無水結晶(o−リン酸)が30mmol/L、テトラヒドロフラン(THF)が10ml/L)
流速:1.0ml/分
検量線作成用標準サンプル:TSK 標準ポリエチレンオキサイド(分子量;約900,000、150,000、100,000及び30,000)(東ソー社製)及びポリエチレングリコール(分子量:約12,000、4,000及び1,000)(ポリマーラボラトリー社製)。
【0127】
「ポリイミド系重合体のイミド化率の測定」
ポリイミド粉末20mgをNMRサンプル管(NMRサンプリングチューブスタンダード,φ5(草野科学社製))に入れ、重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO−d6,0.05%TMS(テトラメチルシラン)混合品)(0.53ml)を添加し、超音波をかけて完全に溶解させた。この溶液をNMR測定機(JNW−ECA500、日本電子データム社製)にて500MHzのプロトンNMRを測定した。イミド化率は、イミド化前後で変化しない構造に由来するプロトンを基準プロトンとして決め、このプロトンのピーク積算値と、9.5〜10.0ppm付近に現れるアミド酸のNH基に由来するプロトンピーク積算値とを用い以下の式によって求めた。
イミド化率(%)=(1−α・x/y)×100
(xはアミド酸のNH基由来のプロトンピーク積算値、yは基準プロトンのピーク積算値、αはポリアミド酸(イミド化率が0%)の場合におけるアミド酸のNH基プロトン1個に対する基準プロトンの個数割合である。)
【0128】
「ポリイミド系重合体の合成」
<合成例1>
F2(2.04g,8.15mmol)、A1(2.52g,6.62mmol)、B1(1.20g,4.95mmol)、D1(0.55g,1.66mmol)及びE1(0.36g,3.33mmol)をNMP(16.5g)中で混合し、80℃で5時間反応させた後、F1(1.60g,8.16mmol)及びNMP(8.26g)を加え、40℃で6時間反応させ、濃度(樹脂固形分濃度を意味する。以下も同じ。)が25%のポリアミド酸溶液を得た。
得られたポリアミド酸溶液(30.0g)に、NMPを加え6%に希釈した後、イミド化触媒として無水酢酸(4.50g)及びピリジン(3.30g)を加え、80℃で4時間反応させた。この反応溶液をメタノール(460ml)中に投入し、得られた沈殿物を濾別した。この沈殿物をメタノールで洗浄し、100℃で減圧乾燥しポリイミド粉末(1)を得た。このポリイミドのイミド化率は80%であり、数平均分子量(Mn)は16,200、重量平均分子量(Mw)は45,300であった。
【0129】
<合成例2>
F2(2.04g,8.15mmol)、A3(2.15g,4.97mmol)、B1(1.20g,4.95mmol)、D1(1.09g,3.30mmol)及びE1(0.36g,3.33mmol)をNMP(16.9g)中で混合し、80℃で5時間反応させた後、F1(1.60g,8.16mmol)及びNMP(8.44g)を加え、40℃で6時間反応させ、濃度が25%のポリアミド酸溶液を得た。
得られたポリアミド酸溶液(30.0g)に、NMPを加え6%に希釈した後、イミド化触媒として無水酢酸(4.50g)及びピリジン(3.30g)を加え、80℃で3.5時間反応させた。この反応溶液をメタノール(460ml)中に投入し、得られた沈殿物を濾別した。この沈殿物をメタノールで洗浄し、100℃で減圧乾燥しポリイミド粉末(2)を得た。このポリイミドのイミド化率は75%であり、Mnは15,800、Mwは43,700であった。
【0130】
<合成例3>
F2(0.83g,3.32mmol)、A2(2.32g,5.88mmol)、B1(1.22g,5.04mmol)、D1(0.83g,2.51mmol)及びE1(0.36g,3.33mmol)をNEP(16.3g)中で混合し、80℃で5時間反応させた後、F1(2.60g,13.3mmol)及びNEP(8.16g)を加え、40℃で6時間反応させ、濃度が25%のポリアミド酸溶液を得た。
得られたポリアミド酸溶液(30.0g)に、NEPを加え6%に希釈した後、イミド化触媒として無水酢酸(4.50g)及びピリジン(3.30g)を加え、80℃で3時間反応させた。この反応溶液をメタノール(460ml)中に投入し、得られた沈殿物を濾別した。この沈殿物をメタノールで洗浄し、100℃で減圧乾燥しポリイミド粉末(3)を得た。このポリイミドのイミド化率は70%であり、Mnは15,900、Mwは43,800であった。
【0131】
<合成例4>
F2(2.04g,8.15mmol)、A4(1.60g,3.25mmol)、B1(1.40g,5.78mmol)、D1(1.09g,3.30mmol)及びE1(0.36g,3.33mmol)をNMP(16.2g)中で混合し、80℃で5時間反応させた後、F1(1.60g,8.16mmol)及びNMP(8.12g)を加え、40℃で6時間反応させ、濃度が25%のポリアミド酸溶液を得た。
得られたポリアミド酸溶液(30.0g)に、NMPを加え6%に希釈した後、イミド化触媒として無水酢酸(4.50g)及びピリジン(3.30g)を加え、80℃で2.5時間反応させた。この反応溶液をメタノール(460ml)中に投入し、得られた沈殿物を濾別した。この沈殿物をメタノールで洗浄し、100℃で減圧乾燥しポリイミド粉末(4)を得た。このポリイミドのイミド化率は65%であり、Mnは14,500、Mwは40,900であった。
【0132】
<合成例5>
F3(3.50g,15.6mmol)、A2(2.50g,6.34mmol)、B1(1.15g,4.75mmol)、D1(1.05g,3.18mmol)及びE1(0.17g,1.57mmol)をNEP(25.1g)中で混合し、40℃で8時間反応させ、濃度が25%のポリアミド酸溶液を得た。
得られたポリアミド酸溶液(30.0g)に、NEPを加え6%に希釈した後、イミド化触媒として無水酢酸(4.50g)及びピリジン(3.30g)を加え、80℃で3時間反応させた。この反応溶液をメタノール(460ml)中に投入し、得られた沈殿物を濾別した。この沈殿物をメタノールで洗浄し、100℃で減圧乾燥しポリイミド粉末(5)を得た。このポリイミドのイミド化率は70%であり、Mnは18,300、Mwは49,400であった。
【0133】
<合成例6>
F4(2.45g,8.16mmol)、A2(1.96g,4.97mmol)、B1(1.40g,5.78mmol)、D1(0.82g,2.48mmol)及びE1(0.36g,3.33mmol)をNMP(17.2g)中で混合し、80℃で5時間反応させた後、F1(1.60g,8.16mmol)及びNMP(8.58g)を加え、40℃で6時間反応させ、濃度が25%のポリアミド酸溶液を得た。
得られたポリアミド酸溶液(30.0g)に、NMPを加え6%に希釈した後、イミド化触媒として無水酢酸(4.50g)及びピリジン(3.30g)を加え、80℃で3.5時間反応させた。この反応溶液をメタノール(460ml)中に投入し、得られた沈殿物を濾別した。この沈殿物をメタノールで洗浄し、100℃で減圧乾燥しポリイミド粉末(6)を得た。このポリイミドのイミド化率は75%であり、Mnは15,600、Mwは43,200であった。
【0134】
<合成例7>
F2(0.83g,3.32mmol)、A1(2.56g,6.73mmol)、B1(1.22g,5.04mmol)、D1(0.55g,1.66mmol)及びE2(0.36g,3.33mmol)をNMP(16.3g)中で混合し、80℃で5時間反応させた後、F1(2.60g,13.3mmol)及びNMP(8.12g)を加え、40℃で6時間反応させ、濃度が25%のポリアミド酸溶液を得た。
得られたポリアミド酸溶液(30.0g)に、NMPを加え6%に希釈した後、イミド化触媒として無水酢酸(4.50g)及びピリジン(3.30g)を加え、80℃で3.5時間反応させた。この反応溶液をメタノール(460ml)中に投入し、得られた沈殿物を濾別した。この沈殿物をメタノールで洗浄し、100℃で減圧乾燥しポリイミド粉末(7)を得た。このポリイミドのイミド化率は75%であり、Mnは17,000、Mwは44,200であった。
【0135】
<合成例8>
F2(3.06g,12.2mmol)、A1(2.52g,6.62mmol)、B2(0.64g,2.47mmol)、D1(0.55g,1.66mmol)及びE2(0.63g,5.83mmol)をNEP(16.4g)中で混合し、80℃で5時間反応させた後、F1(0.80g,4.08mmol)及びNEP(8.19g)を加え、40℃で6時間反応させ、濃度が25%のポリアミド酸溶液を得た。
得られたポリアミド酸溶液(30.0g)に、NEPを加え6%に希釈した後、イミド化触媒として無水酢酸(4.50g)及びピリジン(3.30g)を加え、80℃で3.5時間反応させた。この反応溶液をメタノール(460ml)中に投入し、得られた沈殿物を濾別した。この沈殿物をメタノールで洗浄し、100℃で減圧乾燥しポリイミド粉末(8)を得た。このポリイミドのイミド化率は75%であり、Mnは16,300、Mwは44,300であった。
【0136】
<合成例9>
F2(2.17g,8.67mmol)、A1(2.67g,7.02mmol)、B1(1.28g,5.28mmol)及びE1(0.57g,5.27mmol)をNMP(16.8g)中で混合し、80℃で5時間反応させた後、F1(1.70g,8.67mmol)及びNMP(8.39g)を加え、40℃で6時間反応させ、濃度が25%のポリアミド酸溶液を得た。
得られたポリアミド酸溶液(30.0g)に、NMPを加え6%に希釈した後、イミド化触媒として無水酢酸(4.50g)及びピリジン(3.30g)を加え、80℃で4時間反応させた。この反応溶液をメタノール(460ml)中に投入し、得られた沈殿物を濾別した。この沈殿物をメタノールで洗浄し、100℃で減圧乾燥しポリイミド粉末(9)を得た。このポリイミドのイミド化率は80%であり、Mnは17,500、Mwは47,200であった。
【0137】
<合成例10>
F2(2.04g,8.15mmol)、B1(1.20g,4.95mmol)、E1(0.36g,3.33mmol)及びE3(1.87g,4.97mmol)をNMP(16.3g)中で混合し、80℃で5時間反応させた後、F1(1.60g,8.16mmol)及びNMP(8.16g)を加え、40℃で6時間反応させ、濃度が25%のポリアミド酸溶液を得た。
得られたポリアミド酸溶液(30.0g)に、NMPを加え6%に希釈した後、イミド化触媒として無水酢酸(4.50g)及びピリジン(3.30g)を加え、80℃で3.5時間反応させた。この反応溶液をメタノール(460ml)中に投入し、得られた沈殿物を濾別した。この沈殿物をメタノールで洗浄し、100℃で減圧乾燥しポリイミド粉末(10)を得た。このポリイミドのイミド化率は75%であり、Mnは15,800、Mwは42,500であった。
【0138】
<合成例11>
F2(0.89g,3.56mmol)、A1(1.38g,3.63mmol)及びB1(3.50g,14.4mmol)をNMP(17.2g)中で混合し、80℃で5時間反応させた後、F1(2.80g,14.3mmol)及びNMP(8.57g)を加え、40℃で6時間反応させ、濃度が25%のポリアミド酸溶液を得た。
得られたポリアミド酸溶液(30.0g)に、NMPを加え6%に希釈した後、イミド化触媒として無水酢酸(4.50g)及びピリジン(3.30g)を加え、80℃で5時間反応させた。この反応溶液をメタノール(460ml)中に投入し、得られた沈殿物を濾別した。この沈殿物をメタノールで洗浄し、100℃で減圧乾燥しポリイミド粉末(11)を得た。このポリイミドのイミド化率は90%であり、Mnは17,800、Mwは46,900であった。
【0139】
<合成例12>
F2(0.96g,3.84mmol)、A1(1.47g,3.86mmol)、B1(1.88g,7.76mmol)及びE1(0.84g,7.77mmol)をNMP(16.3g)中で混合し、80℃で5時間反応させた後、F1(3.00g,15.3mmol)及びNMP(8.15g)を加え、40℃で6時間反応させ、濃度が25%のポリアミド酸溶液を得た。
得られたポリアミド酸溶液(30.0g)に、NMPを加え6%に希釈した後、イミド化触媒として無水酢酸(4.50g)及びピリジン(3.30g)を加え、80℃で3.5時間反応させた。この反応溶液をメタノール(460ml)中に投入し、得られた沈殿物を濾別した。この沈殿物をメタノールで洗浄し、100℃で減圧乾燥しポリイミド粉末(12)を得た。このポリイミドのイミド化率は75%であり、Mnは18,600、Mwは48,300であった。
【0140】
<合成例13>
F2(2.30g,9.19mmol)、B1(4.05g,16.7mmol)及びE2(0.20g,1.85mmol)をNMP(16.7g)中で混合し、80℃で5時間反応させた後、F1(1.80g,9.18mmol)及びNMP(8.35g)を加え、40℃で6時間反応させ、濃度が25%のポリアミド酸溶液を得た。
得られたポリアミド酸溶液(30.0g)に、NMPを加え6%に希釈した後、イミド化触媒として無水酢酸(4.50g)及びピリジン(3.30g)を加え、80℃で2.5時間反応させた。この反応溶液をメタノール(460ml)中に投入し、得られた沈殿物を濾別した。この沈殿物をメタノールで洗浄し、100℃で減圧乾燥しポリイミド粉末(13)を得た。このポリイミドのイミド化率は65%であり、Mnは22,100、Mwは53,400であった。
【0141】
<合成例14>
F2(2.55g,10.2mmol)、A1(1.57g,4.13mmol)、B1(1.07g,4.13mmol)及びE2(1.34g,12.4mmol)をNMP(17.1g)中で混合し、80℃で5時間反応させた後、F1(2.00g,10.2mmol)及びNMP(8.54g)を加え、40℃で6時間反応させ、濃度が25%のポリアミド酸溶液を得た。
得られたポリアミド酸溶液(30.0g)に、NMPを加え6%に希釈した後、イミド化触媒として無水酢酸(4.50g)及びピリジン(3.30g)を加え、80℃で3.5時間反応させた。この反応溶液をメタノール(460ml)中に投入し、得られた沈殿物を濾別した。この沈殿物をメタノールで洗浄し、100℃で減圧乾燥しポリイミド粉末(14)を得た。このポリイミドのイミド化率は75%であり、Mnは17,900、Mwは46,500であった。
【0142】
<合成例15>
F2(2.81g,11.2mmol)及びC1(3.46g,22.7mmol)をNMP(16.9g)中で混合し、80℃で5時間反応させた後、F1(2.20g,11.2mmol)及びNMP(8.46g)を加え、40℃で6時間反応させ、濃度が25%のポリアミド酸溶液を得た。
得られたポリアミド酸溶液(30.0g)に、NMPを加え6%に希釈した後、イミド化触媒として無水酢酸(4.50g)及びピリジン(3.30g)を加え、80℃で3.5時間反応させた。この反応溶液をメタノール(460ml)中に投入し、得られた沈殿物を濾別した。この沈殿物をメタノールで洗浄し、100℃で減圧乾燥しポリイミド粉末(15)を得た。このポリイミドのイミド化率は75%であり、Mnは21,800、Mwは52,100であった。
【0143】
<合成例16>
F2(2.81g,11.2mmol)、C1(2.94g,19.3mmol)及びE2(0.37g,3.42mmol)をNMP(16.6g)中で混合し、80℃で5時間反応させた後、F1(2.20g,11.2mmol)及びNMP(8.31g)を加え、40℃で6時間反応させ、濃度が25%のポリアミド酸溶液を得た。
得られたポリアミド酸溶液(30.0g)に、NMPを加え6%に希釈した後、イミド化触媒として無水酢酸(4.50g)及びピリジン(3.30g)を加え、80℃で3時間反応させた。この反応溶液をメタノール(460ml)中に投入し、得られた沈殿物を濾別した。この沈殿物をメタノールで洗浄し、100℃で減圧乾燥しポリイミド粉末(16)を得た。このポリイミドのイミド化率は70%であり、Mnは23,200、Mwは54,200であった。
【0144】
<合成例17>
F5(2.30g,10.8mmol)、C1(2.84g,18.7mmol)及びE2(0.36g,3.33mmol)をNEP(16.4g)中で混合し、80℃で5時間反応させた後、F1(2.30g,10.8mmol)及びNEP(8.21g)を加え、40℃で6時間反応させ、濃度が25%のポリアミド酸溶液を得た。
得られたポリアミド酸溶液(30.0g)に、NEPを加え6%に希釈した後、イミド化触媒として無水酢酸(4.50g)及びピリジン(3.30g)を加え、80℃で3時間反応させた。この反応溶液をメタノール(460ml)中に投入し、得られた沈殿物を濾別した。この沈殿物をメタノールで洗浄し、100℃で減圧乾燥しポリイミド粉末(17)を得た。このポリイミドのイミド化率は70%であり、Mnは20,500、Mwは51,800であった。
【0145】
<合成例18>
F2(2.04g,8.15mmol)、A1(2.52g,6.62mmol)、B1(1.20g,4.95mmol)、C1(0.50g,3.29mmol)及びD1(0.55g,1.66mmol)をNMP(16.8g)中で混合し、80℃で5時間反応させた後、F1(1.60g,8.16mmol)及びNMP(8.41g)を加え、40℃で6時間反応させ、濃度が25%のポリアミド酸溶液を得た。
得られたポリアミド酸溶液(30.0g)に、NMPを加え6%に希釈した後、イミド化触媒として無水酢酸(4.50g)及びピリジン(3.30g)を加え、80℃で4時間反応させた。この反応溶液をメタノール(460ml)中に投入し、得られた沈殿物を濾別した。この沈殿物をメタノールで洗浄し、100℃で減圧乾燥しポリイミド粉末(18)を得た。このポリイミドのイミド化率は81%であり、Mnは15,300、Mwは41,600であった。
各合成例で得られたポリイミド系重合体を表32及び表33に示す。
【0146】
【表32】
【0147】
【表33】
【0148】
「液晶配向処理剤のインクジェット塗布性の評価」
後記する実施例3、8で得られた液晶配向処理剤を用いて、インクジェット塗布性の評価を行った。具体的には、これら液晶配向処理剤を、細孔径1μmのメンブランフィルタで加圧濾過し、純水及びIPA(イソプロピルアルコール)にて洗浄を行ったITO(酸化インジウムスズ)電極付き基板(縦100mm×横100mm,厚さ0.7mm)のITO面に、塗布面積が70×70mm、ノズルピッチが0.423mm、スキャンピッチが0.5mm、塗布速度が40mm/秒の条件で塗布を行った。その際、インクジェット塗布機には、HIS−200(日立プラントテクノロジー社製)を用いた。また、塗布から仮乾燥までの時間は60秒であり、仮乾燥はホットプレート上にて70℃で5分間の条件で行った。
塗布性の評価は、上記で得られた液晶配向膜付き基板の塗膜面を目視観察することで行った。具体的には、塗膜面をナトリウムランプの下で目視観察し、ピンホールの有無を確認した。その結果、いずれの実施例で得られた液晶配向膜とも、塗膜面上にピンホールは見られず、塗膜性に優れた液晶配向膜が得られた。
【0149】
「液晶セルの額縁付近の表示ムラ特性の評価(通常セル)」
後記する実施例及び比較例で得られた液晶配向処理剤を、細孔径1μmのメンブランフィルタで加圧濾過し、純水及びIPAにて洗浄を行ったITO電極付き基板(縦40mm×横30mm、厚さ0.7mm)のITO面にスピンコートし、ホットプレート上にて100℃で5分間、熱循環型クリーンオーブンにて230℃で30分間加熱処理をして、膜厚が100nmの液晶配向膜付きのITO基板を得た。なお、実施例3及び8の液晶配向処理剤は、上記の「液晶配向処理剤のインクジェット塗布性の評価」と同様の条件で基板を作製し、その後、熱循環型クリーンオーブンにて230℃で30分間加熱処理をして、膜厚が100nmの液晶配向膜付きのITO基板とした。
【0150】
次に、この基板の塗膜面をロール径が120mmのラビング装置で、レーヨン布を用いて、ロール回転数が1000rpm、ロール進行速度が50mm/sec、押し込み量が0.1mmの条件でラビング処理した。
その後、ラビング処理後の基板を2枚用意し、塗膜面を内側にして6μmのスペーサーを挟んで組み合わせ、シール剤で周囲を接着して空セルを作製した。この空セルに減圧注入法によって、MLC−6608(メルク・ジャパン社製)を注入し、注入口を封止して液晶セルを得た。
得られた液晶セルを用いて、液晶セルの額縁付近の表示ムラ特性の評価を行った。具体的には、偏光板とバックライトを用いて、目視観察にて、シール剤付近の液晶配向性の評価を行った。結果、実施例及び比較例で得られた全ての液晶セルとも、均一な液晶配向性を示した。
【0151】
その後、液晶セルを温度80℃、湿度90%RHの恒温恒湿槽内に144時間保管し、上記と同様の条件でシール剤付近の液晶配向性の評価を行った。評価は、恒温恒湿槽内に保管後に、シール剤付近に液晶配向性の乱れが見られていないものほど、本評価に優れるとした(表37〜表39中の良好表示)。
【0152】
「電圧保持率の評価(通常セル)」
前記の「液晶セルの額縁付近の表示ムラ特性の評価(通常セル)」と同様の条件で作製した液晶セルを用いて、電圧保持率の評価を行った。具体的には、上記の手法で得られた液晶セルに、80℃の温度下で1Vの電圧を60μs印加し、50ms後の電圧を測定し、電圧がどのくらい保持できているかを電圧保持率(VHRともいう)として計算した。なお、測定は、電圧保持率測定装置(VHR−1、東陽テクニカ社製)を使用し、Voltage:±1V、Pulse Width:60μs、Flame Period:50msの設定で行った。
【0153】
更に、上記の液晶セル作製直後の電圧保持率の測定が終わった液晶セルに、卓上型UV硬化装置(HCT3B28HEX-1、センライト社製)を用いて、365nm換算で50J/cmの紫外線を照射し、上記と同様の条件で電圧保持率の測定を行った。
本評価では、液晶セル作製直後の電圧保持率の値が高く、更に、液晶セル作製直後の電圧保持率の値(初期ともいう)に対して、紫外線照射後の値(紫外線照射後ともいう)の低下が小さいものほど、本評価に優れるとした。表37〜表39中に、各VHRの値を示す。
【0154】
「残留電荷の緩和の評価(通常セル)」
前記の「液晶セルの額縁付近の表示ムラ特性の評価(通常セル)」と同様の条件で作製した液晶セルを用いて、残留電荷の緩和の評価を行った。具体的には、液晶セルに、直流電圧10Vを30分印加し、1秒間短絡させた後、液晶セル内に発生している電位を1800秒間測定した。そのなかで、50秒後の残留電荷の値を用いて、残留電荷の緩和の評価とした。なお、測定は、6254型液晶物性評価装置(東陽テクニカ社製)を用いた。
更に、上記の液晶セル作製直後の残留電荷の測定が終わった液晶セルに、卓上型UV硬化装置(HCT3B28HEX-1、センライト社製)を用いて、365nm換算で30J/cmの紫外線を照射し、上記と同様の条件で残留電荷の測定を行った。
本評価では、液晶セル作製直後の値(初期ともいう)及び紫外線照射後の残留電荷の値(紫外線照射後ともいう)が小さいものほど、本評価に優れるとした。表37〜表39中に、各残留電荷の値を示す。
【0155】
「液晶セルの作製及び液晶配向性の評価(PSAセル)」
後記する実施例3、9で得られた液晶配向処理剤を用いて、液晶セルの作製及び液晶配向性の評価(PSAセル)を行った。具体的には、これら液晶配向処理剤を、細孔径1μmのメンブランフィルタで加圧濾過し、純水及びIPAにて洗浄した、中心に10×10mmのパターン間隔20μmのITOが付いたITO付き電極付き基板(縦40mm×横30mm、厚さ0.7mm)と中心に10×40mmのITOが付いたITO付き電極付き基板(縦40mm×横30mm、厚さ0.7mm)のITO面に、それぞれスピンコートし、ホットプレート上にて100℃で5分間、熱循環型クリーンオーブンにて230℃で30分間加熱処理をして、膜厚が100nmの液晶配向膜付きのITO基板を得た。なお、実施例3の液晶配向処理剤は、上記の「液晶配向処理剤のインクジェット塗布性の評価」と同様の条件で基板を作製し、その後、熱循環型クリーンオーブンにて230℃で30分間加熱処理をして、膜厚が100nmの液晶配向膜付きのITO基板とした。
【0156】
次に、この2枚の基板を、塗膜面を内側にして、6μmのスペーサーを挟んで組み合わせ、シール剤で周囲を接着して空セルを作製した。この空セルに減圧注入法によって、ネマティック液晶(MLC−6608、メルク・ジャパン社製)に、下記の式で示される重合性化合物(1)を、ネマティック液晶の100%に対して重合性化合物(1)を0.3%混合した液晶を注入し、その後、注入口を封止して液晶セルを得た。
【化35】
【0157】
得られた液晶セルに、AC5Vの電圧を印加しながら、照度60mWのメタルハライドランプを用いて、350nm以下の波長をカットし、365nm換算で20J/cmの紫外線照射を行い、液晶の配向方向が制御された液晶セルを得た。液晶セルに紫外線を照射している際の照射装置内の温度は、50℃であった。
その後、この液晶セルの紫外線照射前と紫外線照射後の液晶の応答速度を測定した。応答速度は、透過率90%から透過率10%迄のT90→T10を測定した。
いずれの液晶セルでも、紫外線照射前の液晶セルに比べて、紫外線照射後の液晶セルの応答速度が早くなったことから、液晶の配向方向が制御されたことを確認した。また、いずれの液晶セルとも、偏光顕微鏡(ECLIPSE E600WPOL、ニコン社製)での観察により、液晶は均一に配向していることを確認した。
【0158】
<実施例1>
合成例1で得られたポリイミド粉末(1)(0.50g)に、NEP(3.92g)を加え、70℃で24時間攪拌して溶解させた。この溶液に、BCS(3.92g)を加え、40℃で4時間攪拌して、溶液を得た。
また、合成例11で得られたポリイミド粉末(11)(0.75g)に、NEP(5.88g)を加え、70℃で24時間攪拌して溶解させた。この溶液に、BCS(5.88g)を加え、40℃で4時間攪拌して、溶液を得た。
更に、合成例15で得られたポリイミド粉末(15)(1.25g)に、NEP(9.79g)を加え、70℃で24時間攪拌して溶解させた。この溶液に、BCS(9.79g)を加え、40℃で4時間攪拌して、溶液を得た。
上記で得られた3つの溶液を混合し、40℃で4時間攪拌して、液晶配配向処理剤(1)を得た。この液晶配向処理剤に、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
【0159】
<実施例2>
合成例2で得られたポリイミド粉末(2)(0.50g)に、NEP(3.92g)を加え、70℃で24時間攪拌して溶解させた。この溶液に、BCS(2.35g)及びPB(1.57g)を加え、40℃で4時間攪拌して溶液を得た。
また、合成例11で得られたポリイミド粉末(11)(0.75g)に、NEP(5.88g)を加え、70℃で24時間攪拌して溶解させた。この溶液に、BCS(3.53g)及びPB(2.35g)を加え、40℃で4時間攪拌して、溶液を得た。
更に、合成例15で得られたポリイミド粉末(15)(1.25g)に、NEP(9.79g)を加え、70℃で24時間攪拌して溶解させた。この溶液に、BCS(5.88g)及びPB(3.92g)を加え、40℃で4時間攪拌して、溶液を得た。
上記で得られた3つの溶液を混合し、40℃で4時間攪拌して、液晶配配向処理剤(2)を得た。この液晶配向処理剤に、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
【0160】
<実施例3>
合成例3で得られたポリイミド粉末(3)(0.30g)、合成例11で得られたポリイミド粉末(11)(0.45g)及び合成例15で得られたポリイミド粉末(15)(0.75g)に、NEP(16.5g)及びγ−BL(4.18g)を加え、70℃で24時間攪拌して溶解させた。この溶液に、BCS(8.27g)、PB(8.27g)及びDME(4.14g)を加え、40℃で4時間攪拌して、液晶配向処理剤(3)を得た。この液晶配向処理剤に、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
【0161】
<実施例4>
合成例4で得られたポリイミド粉末(4)(0.80g)に、NMP(6.27g)を加え、70℃で24時間攪拌して溶解させた。この溶液に、BCS(5.02g)及びDME(1.25g)を加え、40℃で4時間攪拌して、溶液を得た。
また、合成例13で得られたポリイミド粉末(13)(0.80g)に、NMP(6.27g)を加え、70℃で24時間攪拌して溶解させた。この溶液に、BCS(5.02g)及びDME(1.25g)を加え、40℃で4時間攪拌して、溶液を得た。
更に、合成例15で得られたポリイミド粉末(15)(1.07g)に、NMP(8.36g)を加え、70℃で24時間攪拌して溶解させた。この溶液に、BCS(6.68g)及びDME(1.67g)を加え、40℃で4時間攪拌して、溶液を得た。
上記で得られた3つの溶液を混合し、40℃で4時間攪拌して、液晶配配向処理剤(4)を得た。この液晶配向処理剤に、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
【0162】
<実施例5>
合成例5で得られたポリイミド粉末(5)(0.80g)に、NEP(7.52g)を加え、70℃で24時間攪拌して溶解させた。この溶液に、BCS(2.51g)及びPB(2.51g)を加え、40℃で4時間攪拌して、溶液を得た。
また、合成例11で得られたポリイミド粉末(11)(0.80g)に、NEP(7.52g)を加え、70℃で24時間攪拌して溶解させた。この溶液に、BCS(2.51g)及びPB(2.51g)を加え、40℃で4時間攪拌して、溶液を得た。
更に、合成例15で得られたポリイミド粉末(15)(1.07g)に、NEP(10.0g)を加え、70℃で24時間攪拌して溶解させた。この溶液に、BCS(3.34g)及びPB(3.34g)を加え、40℃で4時間攪拌して、溶液を得た。
上記で得られた3つの溶液を混合し、40℃で4時間攪拌して、液晶配配向処理剤(5)を得た。この液晶配向処理剤に、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
【0163】
<実施例6>
合成例6で得られたポリイミド粉末(6)(0.50g)、合成例11で得られたポリイミド粉末(11)(0.75g)及び合成例15で得られたポリイミド粉末(15)(1.25g)に、NEP(21.5g)を加え、70℃で24時間攪拌して溶解させた。この溶液に、PB(17.6g)を加え、40℃で4時間攪拌して、液晶配向処理剤(6)を得た。この液晶配向処理剤に、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
【0164】
<実施例7>
合成例7で得られたポリイミド粉末(7)(0.80g)に、NMP(3.76g)及びNEP(3.76g)を加え、70℃で24時間攪拌して溶解させた。この溶液に、BCS(2.51g)及びPB(2.51g)を加え、40℃で4時間攪拌して、溶液を得た。
また、合成例11で得られたポリイミド粉末(11)(0.80g)に、NMP(3.76g)及びNEP(3.76g)を加え、70℃で24時間攪拌して溶解させた。この溶液に、BCS(2.51g)及びPB(2.51g)を加え、40℃で4時間攪拌して、溶液を得た。
更に、合成例15で得られたポリイミド粉末(15)(1.07g)に、NMP(5.02g)及びNEP(5.02g)を加え、70℃で24時間攪拌して溶解させた。この溶液に、BCS(3.34g)及びPB(3.34g)を加え、40℃で4時間攪拌して、溶液を得た。
上記で得られた3つの溶液を混合し、40℃で4時間攪拌して、液晶配配向処理剤(7)を得た。この液晶配向処理剤に、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
【0165】
<実施例8>
合成例8で得られたポリイミド粉末(8)(0.30g)、合成例11で得られたポリイミド粉末(11)(0.45g)及び合成例15で得られたポリイミド粉末(15)(0.75g)に、NEP(12.4g)及びγ−BL(6.21g)を加え、70℃で24時間攪拌して溶解させた。この溶液に、BCS(8.27g)及びPB(14.5g)を加え、40℃で4時間攪拌して、液晶配向処理剤(8)を得た。この液晶配向処理剤に、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
【0166】
<実施例9>
合成例1で得られたポリイミド粉末(1)(0.50g)に、NEP(5.09g)を加え、70℃で24時間攪拌して溶解させた。この溶液に、BCS(1.18g)及びPB(1.57g)を加え、40℃で4時間攪拌して、溶液を得た。
また、合成例12で得られたポリイミド粉末(12)(0.75g)に、NEP(7.64g)を加え、70℃で24時間攪拌して溶解させた。この溶液に、BCS(1.76g)及びPB(2.35g)を加え、40℃で4時間攪拌して、溶液を得た。
更に、合成例15で得られたポリイミド粉末(15)(1.25g)に、NEP(12.7g)を加え、70℃で24時間攪拌して溶解させた。この溶液に、BCS(2.94g)及びPB(3.92g)を加え、40℃で4時間攪拌して、溶液を得た。
上記で得られた3つの溶液を混合し、40℃で4時間攪拌して、液晶配配向処理剤(9)を得た。この液晶配向処理剤に、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
【0167】
<実施例10>
合成例5で得られたポリイミド粉末(5)(0.50g)に、NEP(4.70g)を加え、70℃で24時間攪拌して溶解させた。この溶液に、PB(3.13g)を加え、40℃で4時間攪拌して、溶液を得た。
また、合成例13で得られたポリイミド粉末(13)(0.75g)に、NEP(7.05g)を加え、70℃で24時間攪拌して溶解させた。この溶液に、PB(4.70g)を加え、40℃で4時間攪拌して、溶液を得た。
更に、合成例15で得られたポリイミド粉末(15)(1.25g)に、NEP(11.8g)を加え、70℃で24時間攪拌して溶解させた。この溶液に、PB(7.83g)を加え、40℃で4時間攪拌して、溶液を得た。
上記で得られた3つの溶液を混合し、40℃で4時間攪拌して、液晶配配向処理剤(10)を得た。この液晶配向処理剤に、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
【0168】
<実施例11>
合成例1で得られたポリイミド粉末(1)(0.50g)に、NEP(4.70g)を加え、70℃で24時間攪拌して溶解させた。この溶液に、BCS(0.78g)及びPB(2.35g)を加え、40℃で4時間攪拌して、溶液を得た。
また、合成例14で得られたポリイミド粉末(14)(0.75g)に、NEP(7.05g)を加え、70℃で24時間攪拌して溶解させた。この溶液に、BCS(1.18g)及びPB(3.53g)を加え、40℃で4時間攪拌して、溶液を得た。
更に、合成例15で得られたポリイミド粉末(15)(1.25g)に、NEP(11.8g)を加え、70℃で24時間攪拌して溶解させた。この溶液に、BCS(1.96g)及びPB(5.88g)を加え、40℃で4時間攪拌して、溶液を得た。
上記で得られた3つの溶液を混合し、40℃で4時間攪拌して、液晶配配向処理剤(11)を得た。この液晶配向処理剤に、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
【0169】
<実施例12>
合成例1で得られたポリイミド粉末(1)(0.80g)に、NMP(6.27g)を加え、70℃で24時間攪拌して溶解させた。この溶液に、BCS(2.51g)及びPB(3.76g)を加え、40℃で4時間攪拌して、溶液を得た。
また、合成例11で得られたポリイミド粉末(11)(0.53g)に、NMP(4.18g)を加え、70℃で24時間攪拌して溶解させた。この溶液に、BCS(1.67g)及びPB(2.51g)を加え、40℃で4時間攪拌して、溶液を得た。
更に、合成例16で得られたポリイミド粉末(16)(1.33g)に、NMP(10.4g)を加え、70℃で24時間攪拌して溶解させた。この溶液に、BCS(4.18g)及びPB(6.27g)を加え、40℃で4時間攪拌して、溶液を得た。
上記で得られた3つの溶液を混合し、更に、M1(0.19g)を加え、40℃で6時間攪拌して、液晶配配向処理剤(12)を得た。この液晶配向処理剤に、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
【0170】
<実施例13>
合成例1で得られたポリイミド粉末(1)(0.80g)、合成例11で得られたポリイミド粉末(11)(0.80g)及び合成例17で得られたポリイミド粉末(17)(1.07g)に、NEP(20.9g)を加え、70℃で24時間攪拌して溶解させた。この溶液に、BCS(8.36g)及びPB(12.5g)を加え、40℃で4時間攪拌して、液晶配向処理剤(13)を得た。この液晶配向処理剤に、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
【0171】
<実施例14>
合成例1で得られたポリイミド粉末(1)(0.80g)、合成例11で得られたポリイミド粉末(11)(0.80g)及び合成例17で得られたポリイミド粉末(17)(1.07g)に、NEP(20.9g)を加え、70℃で24時間攪拌して溶解させた。この溶液に、PB(12.5g)及びDPM(8.36)を加え、40℃で4時間攪拌して、液晶配向処理剤(23)を得た。この液晶配向処理剤に、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
【0172】
<比較例1>
合成例1で得られたポリイミド粉末(1)(2.50g)に、NEP(19.6g)を加え、70℃で24時間攪拌して溶解させた。この溶液に、BCS(19.6g)を加え、40℃で4時間攪拌して、液晶配向処理剤(14)を得た。この液晶配向処理剤に、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
【0173】
<比較例2>
合成例11で得られたポリイミド粉末(11)(2.50g)に、NEP(19.6g)を加え、70℃で24時間攪拌して溶解させた。この溶液に、BCS(19.6g)を加え、40℃で4時間攪拌して、液晶配向処理剤(15)を得た。この液晶配向処理剤に、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
【0174】
<比較例3>
合成例15で得られたポリイミド粉末(15)(2.50g)に、NEP(19.6g)を加え、70℃で24時間攪拌して溶解させた。この溶液に、BCS(19.6g)を加え、40℃で4時間攪拌して、液晶配向処理剤(16)を得た。この液晶配向処理剤に、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
【0175】
<比較例4>
合成例1で得られたポリイミド粉末(1)(1.30g)に、NEP(10.2g)を加え、70℃で24時間攪拌して溶解させた。この溶液に、BCS(10.2g)を加え、40℃で4時間攪拌して溶液を得た。
また、合成例11で得られたポリイミド粉末(11)(1.30g)に、NEP(10.2g)を加え、70℃で24時間攪拌して溶解させた。この溶液に、BCS(10.2g)を加え、40℃で4時間攪拌して溶液を得た。
上記で得られた2つの溶液を混合し、40℃で4時間攪拌して、液晶配配向処理剤(17)を得た。この液晶配向処理剤に、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
【0176】
<比較例5>
合成例1で得られたポリイミド粉末(1)(1.30g)に、NEP(10.2g)を加え、70℃で24時間攪拌して溶解させた。この溶液に、BCS(10.2g)を加え、40℃で4時間攪拌して溶液を得た。
また、合成例15で得られたポリイミド粉末(15)(1.30g)に、NEP(10.2g)を加え、70℃で24時間攪拌して溶解させた。この溶液に、BCS(10.2g)を加え、40℃で4時間攪拌して溶液を得た。
上記で得られた2つの溶液を混合し、40℃で4時間攪拌して、液晶配配向処理剤(18)を得た。この液晶配向処理剤に、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
【0177】
<比較例6>
合成例11で得られたポリイミド粉末(11)(1.30g)に、NEP(10.2g)を加え、70℃で24時間攪拌して溶解させた。この溶液に、BCS(10.2g)を加え、40℃で4時間攪拌して溶液を得た。
また、合成例15で得られたポリイミド粉末(15)(1.30g)に、NEP(10.2g)を加え、70℃で24時間攪拌して溶解させた。この溶液に、BCS(10.2g)を加え、40℃で4時間攪拌して溶液を得た。
上記で得られた2つの溶液を混合し、40℃で4時間攪拌して、液晶配配向処理剤(19)を得た。この液晶配向処理剤に、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
【0178】
<比較例7>
合成例9で得られたポリイミド粉末(9)(0.50g)に、NEP(3.92g)を加え、70℃で24時間攪拌して溶解させた。この溶液に、BCS(3.92g)を加え、40℃で4時間攪拌して、溶液を得た。
また、合成例11で得られたポリイミド粉末(11)(0.75g)に、NEP(5.88g)を加え、70℃で24時間攪拌して溶解させた。この溶液に、BCS(5.88g)を加え、40℃で4時間攪拌して、溶液を得た。
更に、合成例15で得られたポリイミド粉末(15)(1.25g)に、NEP(9.79g)を加え、70℃で24時間攪拌して溶解させた。この溶液に、BCS(9.79g)を加え、40℃で4時間攪拌して、溶液を得た。
上記で得られた3つの溶液を混合し、40℃で4時間攪拌して、液晶配配向処理剤(20)を得た。この液晶配向処理剤に、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
【0179】
<比較例8>
合成例10で得られたポリイミド粉末(10)(0.50g)に、NMP(3.92g)を加え、70℃で24時間攪拌して溶解させた。この溶液に、BCS(2.35g)及びPB(1.57g)を加え、40℃で4時間攪拌して溶液を得た。
また、合成例11で得られたポリイミド粉末(11)(0.75g)に、NMP(5.88g)を加え、70℃で24時間攪拌して溶解させた。この溶液に、BCS(3.53g)及びPB(2.35g)を加え、40℃で4時間攪拌して溶液を得た。
更に、合成例15で得られたポリイミド粉末(15)(1.25g)に、NMP(9.79g)を加え、70℃で24時間攪拌して溶解させた。この溶液に、BCS(5.88g)及びPB(3.92g)を加え、40℃で4時間攪拌して溶液を得た。
上記で得られた3つの溶液を混合し、40℃で4時間攪拌して、液晶配配向処理剤(21)を得た。この液晶配向処理剤に、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
【0180】
<比較例9>
合成例18で得られたポリイミド粉末(18)(2.50g)に、NEP(19.6g)を加え、70℃で24時間攪拌して溶解させた。この溶液に、BCS(19.6g)を加え、40℃で4時間攪拌して、液晶配配向処理剤(22)を得た。この液晶配向処理剤に、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
【0181】
表34〜表36には、実施例及び比較例で得られた液晶配向処理剤、用いたポリイミド系重合体などの組成比、及び固形分濃度(%)をまとめて示す。
なお、表中、*1は、全ての重合体100部に対する特定重合体(A)の含有量(部)、*2は、全ての重合体100部に対する特定重合体(B)の含有量(部)、*3は、全ての重合体100部に対する特定重合体(C)の含有量(部)、及び*4は、全ての重合体100部に対するその他重合体の含有量(部)を示す。
また、*5は、液晶配向処理剤中の全ての重合体の占める含有割合(固形分濃度)を示す。
【0182】
【表34】
【0183】
【表35】
【0184】
【表36】
【0185】
以下の表37〜表39中、*1は、液晶セル中、シール剤付近に液晶配向性の乱れが見られたこと、*2は、液晶セル中、シール剤から0.5cmまでの幅の領域までに液晶配向性の乱れが見られた(*1よりも液晶配向性の乱れが見られる幅が広い)こと、*3は、液晶セル中、シール剤から1.0cmまでの幅の領域までに液晶配向性の乱れが見られた(*2よりも液晶配向性の乱れが見られる幅が広い)ことを示す。
【0186】
【表37】
【0187】
【表38】
【0188】
【表39】
【0189】
上記の結果からわかるように、実施例の液晶配向処理剤は、比較例の液晶配向処理剤に比べて、液晶セルを長時間、高温高湿槽内に保管しても、シール剤付近に液晶配向性の乱れが見られなかった。また、液晶セルに紫外線照射を行っても、電圧保持率の低下を抑制し、かつ直流電圧により蓄積する残留電荷の緩和が早い結果となった。
【0190】
即ち、特定重合体(A)、(B)及び(C)の3種を用いた実施例と、それらの1種しか用いていない比較例との比較において、比較例の液晶配向処理剤は、本発明の全ての効果を満たすことができなかった。具体的には、実施例1と、比較例1、比較例2又は比較例3との比較である。また、実施例1と、比較例4、比較例5又は比較例6との比較においても、同様であった。、また、特定ジアミン(4)を用いた実施例1と、用いていない比較例7との比較において、比較例の液晶配向処理剤では、本発明の全ての効果を満たすことができなかった。
【0191】
更に、特定ジアミン(1)を用いた実施例2と、従来のアルキル基型の側鎖構造を有するジアミンを用いた比較例8との比較において、比較例の液晶配向処理剤では、本発明の全ての効果を満たすことができなかった。
また、実施例1と、特定ジアミン(1)、(2)、(3)及び(4)の全てを用たポリイミド粉末を使用の比較例9との比較において、比較例の液晶配向処理剤では、本発明の全ての効果を満たすことができなかった。特に、液晶セルの額縁付近の表示ムラの発生と、紫外線照射後の残留電荷の値が大きくなった。
【産業上の利用可能性】
【0192】
本発明の液晶配向処理剤から得られた液晶配向膜を有する液晶表示素子は、信頼性に優れたものとなり、大画面で高精細の液晶テレビ等に好適に利用でき、TN素子、STN素子、TFT液晶素子、特に垂直配向型の液晶表示素子に有用である。
【0193】
なお、2014年12月25日に出願された日本特許出願2014−262604号の明細書、特許請求の範囲、及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。