【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)、インフラ維持管理・更新・マネジメント技術、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【文献】
國枝 正,農業用ポンプ設備への状態監視診断技術の適用に関する研究,農研機構研究報告 農村工学研究部門,日本,2017年 3月28日,P.31-78,[2018年6月7日検索],URL,https://repository.naro.go.jp/index.php?active_action=repository_view_main_item_detail&page_id=13&block_id=21&item_id=47&item_no=1
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記回転機器の停止中に、前記回転機器に潤滑油を循環供給する潤滑油循環機構をさらに備え、前記検査制御部は潤滑油循環機構の稼働中に前記検査機器を制御して前記潤滑油の状態を検査するように構成されている請求項1から5の何れかに記載の回転機器の検査装置。
【背景技術】
【0002】
排水機場に設置された多くのポンプ設備は設置後30年以上経過し、整備・更新時期に差し掛かっている。そのために要するコストを抑制しながら最適な整備・更新を行なうために、事前の精度の高い点検と診断が必要になっている。
【0003】
国土交通省による河川ポンプ設備の点検・整備・更新マニュアル(案)の維持管理の項には、以下のように記載されている。
【0004】
排水機場のポンプ設備は、大雨等の自然現象に対応して必要なときに確実に始動でき、かつ必要な時間中故障なく十分な排水機能が発揮できなければならない。日常はほとんど運転されないため稼働時間は少ないが、一旦出水となると連続運転が要求され、また、運転時は高温多湿、気圧低下があり、非出水期は低温下での長期休止となるなど、通常の常用系設備とは異なった環境下にある。
【0005】
一方、揚水機場のポンプ設備は、一旦稼働期に入ると確実に連続運転できることが要求され、設備を機能させながらの点検・整備の実施が求められるなどの特性を持っている。さらに、河川ポンプ設備共通のものとして、設備が多くの装置・機器等で構成されていて、一つが故障しても排水機能に何らかの影響を及ぼし、場合によっては機能停止という事態を招くことになるため、システム全体として確実に機能することが求められる。このような問題はポンプ設備に限らず、回転機器を備えた多くの設備に共通する問題である。
【0006】
特許文献1には、半導体製造装置に具備される排気ポンプや一般産業用の回転機器等の状態監視と、その予防保全・計画を実現するべく、機器にその状態変化を二次的に捕らえることのできる多次元のセンサを配設し、センサ群からの情報を基に、機器の状態変化や保守管理を実現する管理機器を配設し、センサからの情報により、管理機器内に具備された機器の劣化診断と速度予測する計算手段にて、機器の状態の監視やその状態変化を予測し、さらにその結果を管理機器の表示手段にて開示し、管理機器にはこれらのデータを保存・蓄積するデータサーバ部を具備し、管理機器に具備した入力手段にて、この情報の編集・追加・登録をできるように構成する機器監視・予防保全システムが開示されている。
【0007】
また、特許文献2には、排水機場のポンプ及び駆動機の振動を監視し、異常が発生した場合に異常原因を分析でき、さらに、振動分析したポンプ及び駆動機の異常原因から、重大な故障が発生しないように、ポンプ及び駆動機の運転を制御することができる運転監視制御システムが提案されている。
【0008】
当該運転監視制御システムは、排水ポンプ、駆動機、減速機を含む排水機器を具備する排水機場の運転監視制御システムであって、排水機器の振動を測定する振動計と、振動計が測定した振動を分析し、振動原因を特定する振動分析装置と、振動原因と振動の大きさおよび振動の変化から、排水機器の運転方針を決定し、排水機器の運転を制御する運転制御信号を送信する機器振動制御装置を具備している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、上述の特許文献1や特許文献2に記載されたシステムは、監視対象に振動センサや音響センサを配して、振動解析などの数値解析により劣化診断するシステムであり、異常と診断される時には既に相当程度の劣化が進行しているため、劣化が大きく進行する前に異常の兆候を診断するという要求に応えられるシステムではなかった。
【0011】
劣化が進行する前に異常の兆候を診断し、適切なメンテナンスを行なうために、潤滑油診断法が採用される場合もある。潤滑油診断法とは、回転機器からサンプリングした潤滑油の酸化などの劣化の程度、水の混入の程度、金属粉などの固形分の混入の程度などを専用の分析装置で検査・分析して診断する方法である。
【0012】
しかし、潤滑油診断法では、定期的に回転機器から潤滑油をサンプリングする処理、サンプリングした潤滑油を回転機器の設置場所とは異なる専用の分析装置が設置された場所に搬送する処理、搬送された潤滑油を分析装置で分析する処理が必要となり、検査結果を得るまでに時間を要するという問題があった。
【0013】
また、回転機器から潤滑油をサンプリングする際に、機器の分解が必要となる場合や、サンプリングのために引抜いた潤滑油の油量だけ新たな潤滑油の補充が必要となる場合などには、そのための煩雑な手間を要するという問題があり、さらに回転機器を停止させた状態でオイル溜まりの潤滑油をサンプリングすると、そのサンプリング箇所によっては沈降した多くの金属摩耗分や水分が含まれなかったり、逆に多く含まれたりすることがあり、その回転機器の状態を正確に把握できないという問題があった。
【0014】
本発明の目的は、上述した問題点に鑑み、作動中の回転機器の潤滑油を、手間をかけずにリアルタイムで検査できる回転機器の検査装置、回転機器及び回転機器の状態管理システムを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述の目的を達成するため、本発明による回転機器の診断装置の第一の特徴構成は、特許請求の範囲の書類の請求項1に記載した通り、機械部品の接触部に供給される潤滑油に基づいて回転機器の状態を検査する回転機器の診断装置であって、前記機械部品の接触部に前記潤滑油を循環供給する循環供給路と、前記潤滑油の状態を検査する測定部を備えた検査機器と、前記循環供給路中に配設されるオイルフィルタの上流側で前記循環供給路から分岐して前記潤滑油を前記検査機器に導く潤滑油案内路と、前記検査機器に導かれた前記潤滑油を前記循環供給路へ戻す潤滑油戻り路と、前記潤滑油案内路に設けられ前記検査機器に備えた測定部に供給される潤滑油の流量を調整する流量調整機構と、前記回転機器の作動中に前記検査機器を制御して前記潤滑油の状態を検査する検査制御部と、検査により得られた検査情報を格納するメモリと、前記検査機器で得られた検査情報を外部機器に出力する出力部と、を備え
、前記流量調整機構は前記検査機器に組み込まれ、前記潤滑油案内路に設けられたオイルポンプと、前記オイルポンプにより供給された潤滑油の一部を前記測定部をバイパスして前記潤滑油戻り路に流す流量調整バルブとで構成されている点にある。
【0016】
回転機器の作動中に潤滑油が潤滑油案内路を介して検査機器に導かれ、検査制御部によって検査機器が制御されて、潤滑油の状態がリアルタイムで検査される。検査機器で得られた検査情報は出力部を介して外部機器に出力される。また、機械部品の接触部に循環供給される潤滑油が循環供給路に分岐接続された潤滑油案内路を介して検査機器に導かれるので、潤滑に寄与している潤滑油の状態が正確に検査できる。
【0017】
また、検査機器に導かれた潤滑油を循環供給路へ戻す潤滑油戻り路を備えているので、油量の減少を招くことなく機械部品の接触部に潤滑油を安定供給することができる。しかも、潤滑油案内路は、循環供給路中に配設されるオイルフィルタの上流側で循環供給路から分岐するように構成されているので、オイルフィルタを介して摩耗粉等の固形物が除去される前の潤滑油が潤滑油案内路を介して検査機器に導かれるようになり、潤滑油の状態を適切に検査することができ、オイルフィルタを介して摩耗粉等の固形物が除去された潤滑油が機械部品の接触部に供給されるため、機械部品及ぼす摩耗粉等の影響を軽減できるようになる。
【0018】
さらに、潤滑油案内路に流量調整機構が設けられ、検査機器に備えた測定部に供給される潤滑油の流量が調整されるので、測定部に適量の潤滑油が供給され、安定的に精度の良い測定が可能にな
る。
【0019】
回転機器の作動状態に変動があった場合でも、オイルポンプによって安定的に潤滑油を潤滑油案内路に供給することができ、流量調整バルブによって余剰の潤滑油を測定部をバイパスして潤滑油戻り路に導くことで、測定部に適量の潤滑油を精度良く供給することができる。しかも、そのような流量調整機構が検査機器に組み込まれているので、検査機器を潤滑油案内路に装着するだけの作業でよく、別途のオイルポンプや流量調整バルブを取り付けて調整する手間も不要になる。
【0020】
同第
二の特徴構成は、同請求項
2に記載した通り、上述の第
一の特徴構成に加えて、前記測定部は、少なくとも機器の摩耗診断装置を備えて構成されている点にある。
【0021】
流量調整機構によって流量調整された潤滑油が、その流れ方向に沿って機器の摩耗診断装置に供給され、摩耗診断装置によって機器の摩耗の程度を分析及び評価することができる。
【0022】
同第
三の特徴構成は、同請求項
3に記載した通り、上述の第
一の特徴構成に加えて、前記測定部は、少なくとも油の汚染診断装置を備えて構成されている点にある。
【0023】
流量調整機構によって流量調整された潤滑油が、その流れ方向に沿って油の汚染診断装置に供給され、汚染診断装置によって潤滑油の汚染の程度を分析及び評価することができる。
【0024】
同第
四の特徴構成は、同請求項
4に記載した通り、上述の第
一の特徴構成に加えて、前記測定部は、少なくとも油の性能診断装置を備えて構成されている点にある。
【0025】
流量調整機構によって流量調整された潤滑油が、その流れ方向に沿って油の性能診断装置に供給され、性能診断装置によって潤滑油の性能低下の程度を分析及び評価することができる。
【0026】
同第
五の特徴構成は、同請求項
5に記載した通り、上述の第一から第
四の何れかの特徴構成に加えて、前記検査機器による検査結果に基づいて発報する発報機構を備えている点にある。
【0027】
発報機構による発報により重大な故障が生じる前に適切にメンテナンスを行なえるようになり、そのための交換時期を把握できるようになる。
【0028】
同第
六の特徴構成は、同請求項
6に記載した通り、上述の第一から第
五の何れかの特徴構成に加えて、前記回転機器の停止中に、前記回転機器に潤滑油を循環供給する潤滑油循環機構をさらに備え、前記検査制御部は潤滑油循環機構の稼働中に前記検査機器を制御して前記潤滑油の状態を検査するように構成されている点にある。
【0029】
長期間運転の必要が無いような回転機器であっても、潤滑油循環機構により潤滑油を循環させることで適切に潤滑油の状態を診断することができるようになる。
【0030】
本発明による回転機器の第一の特徴構成は、同請求項
7に記載した通り、上述した第一から第
六の何れかの特徴構成を備えた回転機器の検査装置が組み込まれた点にある。
【0031】
上述した検査装置が組み込まれた回転機器を構成することにより、特段の制限が課されることなく必要な時期にリアルタイムで潤滑油の状態を分析及び評価することができるようになる。
【0032】
本発明による回転機器の状態管理システムの第一の特徴構成は、同請求項
8に記載した通り、上述した第一の特徴構成を備えた回転機器と、前記回転機器の稼働情報及び前記検査情報を遠隔地のサーバに送信する通信装置と、前記通信装置から送信された前記稼働情報及び前記検査情報を管理するサーバと、前記サーバに蓄積された前記稼働情報及び検査情報を閲覧する端末装置と、を備えて構成されている点にある。
【0033】
回転機器に組み込まれた検査機器によってリアルタイムに得られた潤滑油の状態を示す検査情報とともに回転機器の稼働情報が通信装置を介して遠隔地のサーバに送信され、サーバに検査情報及び稼働情報が蓄積される。端末装置を介してサーバに蓄積された検査情報及び稼働情報を閲覧した管理者などは検査情報及び稼働情報からメンテナンスが必要か否かを随時判断することができ、適切かつ迅速な対処が可能になる。
【発明の効果】
【0034】
以上説明した通り、本発明によれば、作動中の回転機器の潤滑油を、手間をかけずにリアルタイムで検査できる回転機器の検査装置、回転機器及び回転機器の状態管理システムを提供することができるようになった。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明による回転機器の検査装置、回転機器、回転機器の状態管理システム及び回転機器の検査方法を説明する。
図1には、原動機1と減速機2とポンプ装置3の各回転軸がカップリング4,5を介して駆動連結されたポンプシステムが示されている。当該ポンプ装置3として、排水機場に設置される横軸ポンプ装置などが例示され、原動機1と減速機2とポンプ装置3のそれぞれ或いは装置全体が、本発明が適用される回転機器となる。
【0037】
原動機1、減速機2及びポンプ装置3に組み込まれた軸受や駆動伝達用の各機械部品には、互いの接触部の摩耗を低減し、円滑に作動するように潤滑油が供給されている。そのような潤滑油は、使用に伴って経時的に機械部品が摩耗することにより生じる摩耗粉が混入し、熱などの影響を受けて酸化が進み、或いは水分が混入して潤滑能力が次第に低下し、やがて回転機器が破損に到る虞がある。
【0038】
従来は、重大な故障の発生により機能不全となるような状態を回避するために、時間計画保全(Time Based Maintenance)が行なわれていた。つまり、供用年数に基づき設定された所定のメンテナンス時期が到来すると、設備を分解して潤滑油の交換や機械部品の交換を行なうというコストの嵩む大掛かりな保全作業が行なわれていた。
【0039】
本発明は、時間計画保全(Time Based Maintenance)から状態監視保全(Condition Based Maintenance)への移行を可能とするために創作されたものである。状態監視保全(Condition Based Maintenance)とは、設備を分解することなく設備の状態を低コストで的確に診断してメンテナンスコストを低減する保全方法である。
【0040】
以下の実施形態では、回転機器の検査装置として減速機2を対象とする検査装置6(
図1参照)を説明する。減速機2には動力伝達のために複数のギヤが設けられ、それらギヤを含む機械部品の接触部に供給される潤滑油に基づいて減速機2の状態が検査装置6によって検査される。
【0041】
検査装置6は、潤滑油の状態を検査する検査機器6Aと、潤滑油を検査機器6Aに導く潤滑油案内路7と、検査機器6Aから流出した潤滑油を減速機2に戻す潤滑油戻り路8と、減速機2の作動中に検査機器6Aを制御して潤滑油の状態を検査する検査制御部6Bと、検査機器6Aで得られた検査情報例えば検査データや診断データなどを外部機器に出力する出力部6Dなどを備えている。
【0042】
検査制御部6Bにはデータ格納用のメモリ6Cが設けられ、検査機器6Aによる検査データが時系列的にメモリ6Cに記憶される。出力部6Dには、RS232Cなどのシリアル通信ポート、USBインタフェース、Bluetooth(登録商標)などで構成される公知の通信インタフェースと通信制御部が設けられ、メモリ6Cに格納された検査データが外部機器に出力可能に構成されている。外部機器として、回転機器を制御する制御部、遠隔の監視装置などにデータを送信する通信装置、USBメモリなどの可搬性メモリが例示される。
【0043】
なお、検査制御部6Bは、検査機器6Aから入力された検査データに基づいて潤滑油の状態を評価し、評価結果である診断データをメモリ6Cに格納するように構成されていてもよい。
【0044】
この様な構成により、減速機2の作動中に潤滑油が潤滑油案内路7を介して検査機器6Aに導かれ、検査制御部6Bによって検査機器6Aが制御されて、潤滑油の状態がリアルタイムで検査される。検査機器6Aで得られた検査データや診断データなどの検査情報は出力部6Dを介して外部機器に出力される。
【0045】
図2には、減速機2に組み込まれた潤滑油の供給機構が例示されている。
減速機2は、入力軸2Aと、出力軸2Bと、入力軸2A及び出力軸2Bを駆動連結する減速ギヤ機構が収容されたケーシング2Cと、潤滑油循環機構20を備えている。
【0046】
ケーシング2Cの底部に備えたオイルパン21に貯留された潤滑油が潤滑油循環機構20を介して機械部品の接触部となる減速ギヤ機構に供給される。潤滑油循環機構20は、始動用のオイルポンプ22Aとバックアップ用のオイルポンプ22B及びメインオイルポンプ23を備えている。
【0047】
減速機2の作動前に始動するオイルポンプ22Aによってオイルパン21に貯留された潤滑油が引き抜かれ、第1往路R1、オイルフィルタ24及び復路R3を経由してケーシング2Cの上部に備えたオイルポートP1,P2から減速ギヤ機構向けて循環供給される。
図2中、符号26はオイルサイトである。
【0048】
減速機2が作動すると動力伝達機構27を介して減速機2の動力によりメインオイルポンプ23が駆動され、第2往路R2を経由してオイルパン21に貯留された潤滑油が引き抜かれる。つまり、第1往路R1、第2往路R2、復路R3によって循環供給路Rが構成される。
図2中、符号25は潤滑油を冷却する熱交換器であり、符号Sth1は温度センサ、符号Sp2は圧力センサである。
【0049】
メインオイルポンプ23とオイルフィルタ24との間に配された第2往路R2には分岐部B1,B2が設けられ、分岐部B1に潤滑油案内路7が接続されるとともに、分岐部B2に潤滑油戻り路8が接続されている。つまり、循環供給路Rを流れる潤滑油の一部がバイパス路となる潤滑油案内路7及び潤滑油戻り路8を介して検査装置6に供給されるように構成されている。
【0050】
循環供給路Rを介して減速機2に循環供給される潤滑油の一部がバイパス路を経由して検査機器6に導かれるので、潤滑に寄与している潤滑油の状態が正確に検査できる。なお、復路R3に流れる潤滑油であれば、オイルフィルタ24を介して摩耗粉等の固形物が除去されているため、潤滑油の状態を適切に検査することができない。
【0051】
検査機器6Aは、機器の摩耗診断装置、油の汚染診断装置、油の性能診断装置の何れかまたはそれらの組合せで構成される。機器の摩耗診断装置として鉄粉濃度診断装置が例示でき、油の汚染診断装置として微粒子計数計測装置が例示でき、油の性能診断装置として赤外線吸収分析装置が例示できる。
【0052】
図3(a)には、検査装置6に収容された検査機器6Aの構成の一例が示されている。検査機器6Aは、潤滑油案内路7に沿って配置された流量調整機構60と、微粒子計数計測装置62と、赤外線吸収分析装置63と、を備えて構成されている。
【0053】
流量調整機構60によって流量調整された潤滑油が、その流れ方向に沿って微粒子計数計測装置62に供給され、さらに赤外線吸収分析装置63に供給される。
【0054】
微粒子計数計測装置62として、例えば細管を流れる潤滑油に光を照射してできる影の面積に応じた電圧降下をパルスに変換して、潤滑油に含まれる金属粒子やごみ等の固形物の粒径別の個数を算出する装置を用いることができ、これにより潤滑油汚染程度を分析及び評価することができる。具体的には、検査制御部6Bによって、NAS(National Aerospace Standard 1638:2001)等級を用いた判定やISO(International Organization for Standard 4406)清浄コードを用いた評価データが算出される。
【0055】
赤外線吸収分析装置63として、例えば潤滑油に所定の振動数を有する赤外光を照射して、振動数に対する赤外光の吸収特性を求める装置が例示でき、潤滑油の酸化による劣化の程度や潤滑油に混入する水分の量などに基づいて潤滑油の劣化の程度を分析及び評価することができる。
【0056】
図4には、一般的な赤外線吸収スペクトル分析装置により検出される潤滑油の特性図が示されている。横軸は波数(1/cm)、縦軸はスペクトル強度を示す。破線は潤滑油の初期特性を示し、実線は劣化した潤滑油の特性を示す。潤滑油が劣化すると波数3600/cmを中心に広帯域で赤外線が吸収されるようになるとともに、波数1710/cmを中心に狭帯域で赤外線が吸収されるようになる。波数3600/cmの帯域で水分量が評価でき、波数1710/cmの帯域で酸化劣化の程度が評価できる。
【0057】
本実施形態では、微粒子計数計測装置62に20ml/min.の流量の潤滑油を供給する必要があり、赤外線吸収分析装置63に20ml/min.以上の流量の潤滑油を供給する必要があるため、流量調整機構60としてオイルポンプ60A及び流量調整バルブ60Bを備え、オイルポンプ60Aによって赤外線吸収分析装置63に20ml/min.以上の流量の潤滑油を供給するように調整され(
図3(a)の構成では20ml/min.となる)、微粒子計数計測装置62に並列に接続されたバイパス路に備えた流量調整バルブ60Bによって微粒子計数計測装置62に供給される流量が調整される。
【0058】
なお、流量調整機構60は上述した検査制御部6Bによって制御される。検査制御部6Bは、オイルポンプ60Aの上流側に設けられた圧力センサ(図示せず)によって始動用のオイルポンプ22A(
図2参照)が駆動されたことを検出した後、予め設定された所定時間が経過した後に流量調整機構60を制御し、微粒子計数計測装置62及び赤外線吸収分析装置63による検査データをメモリ6Cに記憶するとともに、検査データに基づいて評価データを算出して、出力部6Dを介して検査データ及び評価データを検査情報として外部機器に出力するように構成されている。
【0059】
図3(b)には、検査機器6Aの他の構成が示されている。潤滑油案内路7が一対の分岐流路7A,7Bで構成され、検査機器6Aは、一方の分岐流路7Aに沿って配置された第1流量調整機構60及び微粒子計数計測装置62と、他方の分岐流路7Bに沿って配置された第2流量調整機構61及び赤外線吸収分析装置63と、を備えて構成されている。
【0060】
本実施形態では、微粒子計数計測装置62に20ml/min.の流量の潤滑油を供給する必要があるため、流路7Aでは流量調整機構60としてオイルポンプ60A及び流量調整バルブ60Bによって微粒子計数計測装置62に20ml/min.の流量の潤滑油を供給するように調整される。一方、赤外線吸収分析装置63に20ml/min.以上の流量の潤滑油を供給する必要があるため、流路7Bでは流量調整機構61としてオイルポンプ61A及び流量調整バルブ61Bによって赤外線吸収分析装置63に20ml/min.以上の流量の潤滑油を供給するように調整される。これによって、それぞれの機器に対して潤滑油の供給量が適切な量に調整される結果、精度のよい分析及び評価が可能になる。
【0061】
このように、上述した検査装置6が組み込まれた回転機器(本実施形態では減速機2)を構成することにより、特段の制限が課されることなく必要な時期にリアルタイムで潤滑油の状態を分析及び評価することができるようになる。
【0062】
図5には、検査装置6が組み込まれた回転機器であるポンプシステムの状態管理システム100が例示されている。当該状態管理システム100は、検査装置6が組み込まれた回転機器(ポンプシステム)1,2,3と、回転機器(ポンプシステム)1,2,3の稼働情報及び検査装置6による検査情報を遠隔地のサーバに送信するマイクロサーバである通信装置40と、通信装置40から送信された稼働情報及び検査情報を収集管理する中央監視装置として機能するサーバ50と、サーバ50に蓄積された稼働情報及び検査情報を閲覧する複数の端末装置70と、を備えて構成されている。
【0063】
ポンプシステムのシステム制御部及び検査装置6の出力部6Dがそれぞれ通信装置40に接続され、システム制御部から通信装置40に、ポンプ装置3の稼働情報、具体的に排水機場及びポンプシステムを一意に特定する識別情報と、水位情報、運転開始時間、運転停止時間、故障情報などが時系列的に送信される。同様に、ポンプ装置3の運転時に検査装置6による検査情報が通信装置40に時系列的に出力される。
【0064】
通信装置40は、システム制御部から送信された稼働情報及び検査装置6から送信された検査情報を内部メモリに蓄積し、所定時間毎にサーバ50に送信する。通信装置40とサーバ50とを接続する通信回線として、任意の公衆回線、専用回線を用いることができ、例えば携帯電話ネットワークなどが好適に用いられる。
【0065】
サーバ50では、複数の排水機場から送信されたポンプ装置3の稼働情報や検査情報を識別情報に基づいて管理し、運転履歴をトレンドグラフで表すとともに、1日当たりの運転時間や運転回数などを纏めた日報、1月当たりの運転時間や運転回数などを纏めた月報、1年当たりの運転時間や運転回数などを纏めた年報などの帳票データを生成するとともに、対応する期間の潤滑油の検査情報を纏めた帳票データを生成してデータベースに登録し、インターネットを介して管理者が操作する端末装置70から閲覧できるように構成されている。
【0066】
端末装置70を介してサーバ50に蓄積された検査情報及び稼働情報を閲覧した管理者は、検査情報及び稼働情報からメンテナンスが必要か否かを随時判断することができ、適切かつ迅速な状態監視保全(Condition Based Maintenance)を行なえるようになる。
【0067】
例えば、検査情報に基づいて潤滑油の酸化や水分混入の程度が上昇し、適切な潤滑性能を発揮できないと判断すると潤滑油の交換を行ない、検査情報に基づいて潤滑油に含まれる金属粒子の径及び個数に基づいて機械部品の摩耗の程度を判断して機械部品の交換時期を決定することができる。
【0068】
この場合、検査機器による検査結果に基づいて発報する発報機構を備えていることが好ましい。回転機器の検査装置に、故障などの異常発生時の発報に加え、交換時期を発報する発報機構を備えると、作業者が故障前に適切にメンテナンスを行なえるようになり、そのための交換時期を迅速に把握できる。発報機構としては、表示装置を用いたアラーム表示でもよいし、鳴動装置を用いた警告音の発報でもよい。異常発生時と交換推奨時の発報機構を異なるものとすればさらにオペレータによる状況把握がしやすい。
【0069】
また、検査情報に基づいて潤滑油の劣化や機械部品の摩耗が進んでいると判断することが困難な場合には、回転機器から潤滑油を抽出してさらに詳細な検査を行なうという判断も可能になる。
【0070】
図6には、回転機器の検査方法を説明するフローチャートが示されている。
対象機器が作動し(S1)、潤滑油が安定的に循環するように立ち上がると(S2)、上述した検査装置6によるリアルタイムの1次検査ステップが実行される(S3,S4,S5,S6)。具体的に、流量調整機構60により流量が調整されて(S3)、検査機器62,63で検査され(S4)、検査情報がメモリ6Cに記憶され(S5)、メモリ6Cに記憶された検査情報に基づいて潤滑油の状態が検査制御部6Bによって評価される(S6)。
【0071】
対象機器が停止するまでステップS3からS6の処理が繰り返され、注意レベルが高い場合は1次検査の結果に応じて2次検査も実施し、異常と判断されると修復ステップつまり潤滑油の交換や摩耗部品の交換処理が実行される(S12)。
【0072】
つまり、ステップS7で注意レベルが高い場合には、通信装置40及びサーバ50を介して端末を操作する管理者によって検査結果が把握されて2次検査の必要性が判断される(S8)。
【0073】
管理者によって2次検査が必要と判断されると(S8)、検査員によって回転機器から潤滑油が抽出され、或いは自動サンプリング装置により潤滑油が自動抽出されて(S9)、専用の分析装置が設置されている試験センターで潤滑油の劣化程度、摩耗粉の径や数の分布の程度が検査され(S10)、異常と診断されると(S11)、修復ステップつまり循環油の交換や摩耗部品の交換が行なわれる(S12)。
【0074】
つまり、本発明による回転機器の検査方法は、潤滑油の状態を検査する検査機器6を用いて、回転機器2の作動中に潤滑油の状態を簡易検査する1次検査ステップと、1次検査ステップで潤滑油の状態が異常であると予備診断されると、回転機器2から潤滑油を抽出して潤滑油の状態を詳細検査する2次検査ステップと、2次検査ステップで潤滑油の状態が異常であると確定診断されると、異常個所を修復し、または修復計画を策定する修復ステップと、を備えている。
【0075】
回転機器2の作動中に1次検査ステップが行なわれて潤滑油の状態が検査され、1次検査で潤滑油の状態に何らかの異常が見られると、回転機器2から潤滑油が抽出され、2次検査ステップで当該潤滑油の状態が2次検査される。様々な潤滑油検査のうち1次検査ステップで採用可能な検査方法は限られるため、例えば他の検査方法やより精度の高い検査方法を採用する2次検査ステップを行なうことにより、必要に応じて精度の高い正確な診断を行なうことが可能になる。
【0076】
上述したように、リアルタイムで行なわれる1次検査ステップでは、微粒子計数計測法及び/または赤外線吸収分析法が採用されることが好ましい。
【0077】
また、2次検査ステップでは、鉄粉濃度計測法、微粒子計測法及び赤外線吸収分析法に加えて、フェログラフィ法、発光分光分析法などを採用することができる。
【0078】
以下、本発明の別実施形態を説明する。
上述した実施形態では、検査機器6Aで得られた検査データに基づいて検査制御部6Bが評価結果である診断データを算出するように構成された検査装置6を説明したが、検査装置6は少なくとも出力部6Dから検査データを出力可能に構成しておけばよく、検査データを受け取った外部機器が評価データを算出するように構成してもよい。例えば、
図5に示した状態管理システム100では、サーバ50に検査データを解析して評価データを算出する評価部を備えていてもよい。
【0079】
上述した実施形態では、回転機器としてポンプシステムを例示し、具体的に減速装置2の潤滑油を検査する検査装置について説明したが、回転機器としては減速機に限るものではなく、原動機やポンプ装置であってもよい。例えば原動機やポンプ装置の軸受部等に封入されている潤滑油の劣化を検査装置で検査することも可能である。この場合には、封入されている潤滑油を検査装置に導く潤滑油案内路を形成すればよい。
【0080】
また、検査装置により検査対象はポンプシステムに限るものではなく、機械部品の接触部に潤滑油を供給する必要がある任意の回転機器が対象となる。
【0081】
また、 ポンプ装置に代表される回転機器は数か月のように比較的長期間、運転する必要のないこともある。ただし、この期間にも潤滑油の状態を診断する必要性がある場合には、回転機器を運転することなく、潤滑油循環機構20に潤滑油を供給して、潤滑油の診断を継続できる機能を備えていてもよい。
【0082】
即ち、回転機器の停止中に、回転機器に潤滑油を循環供給する潤滑油循環機構20をさらに備え、検査制御部6Bは潤滑油循環機構20の稼働中に検査機器6Aを制御して潤滑油の状態を検査するように構成されていればよい。潤滑油循環機構20として、上述した始動用のオイルポンプ22Aを備えた潤滑油循環機構20が例示できる。
【0083】
上述した実施形態は、本発明の一例に過ぎず、該記載により本発明の範囲が限定されるものではない。