特許第6573373号(P6573373)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6573373
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】液状調味料
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/00 20160101AFI20190902BHJP
   A23L 27/10 20160101ALI20190902BHJP
   A23L 27/60 20160101ALI20190902BHJP
【FI】
   A23L27/00 D
   A23L27/10 C
   A23L27/60 A
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-123864(P2015-123864)
(22)【出願日】2015年6月19日
(65)【公開番号】特開2017-6034(P2017-6034A)
(43)【公開日】2017年1月12日
【審査請求日】2018年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227009
【氏名又は名称】日清オイリオグループ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 康信
(72)【発明者】
【氏名】相田 はるな
【審査官】 小金井 悟
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−061065(JP,A)
【文献】 特開2008−187976(JP,A)
【文献】 特開2003−230366(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 27/00−27/60
A23L 19/00−19/20
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生姜粉砕物を乾燥物換算で0.07〜0.14質量%、及び生姜油を0.10〜0.30質量%含有することを特徴とする分離タイプドレッシング
【請求項2】
食酢を含有し、水相中の酢酸換算酸度が1.2〜1.7であることを特徴とする請求項1に記載の分離タイプドレッシング
【請求項3】
油相を5〜35質量%及び水相を65〜95質量%含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の分離タイプドレッシング
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生姜の香味に優れ、該香味が長期間維持される液状調味料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生姜は、特有の爽やかな香味や食欲増進効果を持つことから、すりおろし、スライス、千切り、搾り汁等にして料理の添え物や香味付けに用いられてきた。加工食品においても、生姜の香味を謳った商品が販売されているが、時間が経つにつれて、生姜由来の成分が揮発したり変化して、特有の爽やかな香味が弱くなったり、辛みが強くなることがあった。
【0003】
生姜の香味を劣化させない技術として、生姜由来物、低甘味料の糖類、及び有機酸を含み、且つ醸造調味料を含まないことを特徴とした液状調味料(特許文献1)や、生姜抽出物中のショウガオールとジンゲロールを平衡状態にすることを特徴とした生姜抽出物の製造方法(特許文献2)等が提案されているが、醤油、酢、塩等の調味成分が配合された調味料に関して十分に検討されたものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−13399号公報
【特許文献2】特開2012−50377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、各種の調味成分を含みながらも、生姜の香味に優れ、該香味が長期間維持される液状調味料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために、下記[1]〜[4]の液状調味料を提供する。
[1]生姜粉砕物を乾燥物換算で0.07〜0.14質量%、及び生姜油を0.10〜0.30質量%含有することを特徴とする液状調味料。
[2]食酢を含有し、水相中の酢酸換算酸度が1.2〜1.7であることを特徴とする[1]に記載の液状調味料。
[3]油相を5〜35質量%及び水相を65〜95質量%含有することを特徴とする[1]又は[2]記載の液状調味料。
[4]前記液状調味料が分離タイプドレッシングであることを特徴とする[1]〜[3]のいずれか1つに記載の液状調味料。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、生姜の香味に優れ、該香味が長期間維持される液状調味料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について具体的に説明する。
【0009】
[液状調味料]
本発明の液状調味料とは、ドレッシング、タレ、ソース、又はその他これらに類する食品を指す。本発明の液状調味料の好ましい態様としてはドレッシングが挙げられるが、本発明の効果を奏しやすい分離タイプドレッシングが最も好ましい態様である。ここで、分離タイプドレッシングとは、油相と水相とを含む調味料であり、静置時には油相と水相とがほぼ分離しており、使用時に振盪するなどして混ぜ合わせて使用されるものであり、より具体的には、日本農林規格(JAS)において定義される「分離液状ドレッシング」等が挙げられる。
【0010】
[生姜粉砕物]
本発明の液状調味料に含まれる生姜粉砕物は、ショウガ属に属するショウガ(Zingiber officinale)の根茎を、皮を除いた後、すりおろしたり、粉砕したものであり、通常、90質量%程度の水分を含む。また、前記生姜粉砕物は、水分を除いた粉末状のものを使用することもできる。
本発明の液状調味料に含まれる生姜粉砕物は、乾燥物換算で0.07〜0.14質量%であり、0.08〜0.13質量%が好ましく、0.09〜0.12質量%が最も好ましい。生姜粉砕物の含有量が前記範囲内にあると、生姜のもつ特有の爽やかな香味が強く感じられる。
【0011】
[生姜油]
本発明の液状調味料に含まれる生姜油は、ショウガ(Zingiber officinale)の根茎から、溶剤抽出法、水蒸気蒸留法、超臨界炭酸ガス抽出法等の抽出法によって得られる植物精油である。
本発明の液状調味料に含まれる生姜油は、0.10〜0.30質量%であり、0.15〜0.25質量%が好ましく、0.20〜0.25質量%が最も好ましい。生姜油の含有量が前記範囲内にあると、生姜のもつ特有の爽やかな香味を長期間維持することができる。
【0012】
[食酢]
本発明の液状調味料に含まれる食酢は特に限定されないが、醸造酢(穀物酢、果実酢)、合成酢等が挙げられる。本発明の液状調味料に含まれる食酢は、水相中の酢酸換算酸度が所望の酢酸換算酸度となるように含有してあればよい。
【0013】
[酢酸換算酸度]
本発明の液状調味料は、液状調味料の水相中の酢酸換算酸度が1.2〜1.7であり、好ましくは1.2〜1.6であり、さらに好ましくは1.3〜1.5である。酢酸換算酸度が前記範囲内にあると、酸味が生姜の香味を邪魔することなく、液状調味料中に微生物が繁殖することを抑制できる。
【0014】
次に、本明細書における水相中の酢酸換算酸度の測定方法を以下に説明する。
本発明の液状調味料から油相と固形分とを除いた水相25mlを正確にとり、水で10倍に希釈する。希釈された試料25mlをとり、フラスコに入れ、指示薬としてフェノールフタレインを2滴加え、力価既知の0.1N−水酸化ナトリウム溶液で滴定し、下記式により求める。
酢酸換算酸度(%)=0.006×V×F×(希釈液全量(250ml))/(希釈試料採取量(25ml))×(1/試料採取量(25ml))×100
V:0.1N−NaOH標準液の平均滴定量(ml)
F:0.1N−NaOH標準液の力価
【0015】
[水相]
本発明の液状調味料に含まれる水相は、従来の調味料の水相成分と同様のものが使用できる。具体的には、生姜粉砕物の他に、醤油、食酢等の液状調味料、食塩、糖、スパイス、フレーバー等の呈味料、更に安定剤、着色料等の各種添加剤、及び粉砕した野菜や果実の固形分が挙げられる。また、加水時に使用する水は、特に限定されず、水道水、井水、精製水、イオン交換水等を用いることができる。
【0016】
[油相]
本発明の液状調味料に含まれる油相は、従来の調味料の油相成分と同様のものが使用できる。具体的には、生姜油の他に、食用油、油溶性のフレーバー及び乳化剤等が挙げられる。また、前記食用油は、大豆油、菜種油、コーン油、ヤシ油、パーム油、中鎖脂肪酸油、米油、ゴマ油、綿実油、ひまわり油、紅花油、亜麻仁油、シソ油、オリーブ油、落花生油、ブドウ種子油、マカデミアナッツ油、ヘーゼルナッツ油、カボチャ種子油、クルミ油、椿油、茶実油、エゴマ油、ボラージ油、米糠油、小麦胚芽油、及び香味オイル(ハーブオイル、ガーリックオイル等)等から選択される1種の油脂又はこれらのうち2種以上を組み合わせた混合油脂が挙げられる。また、これらの油脂の分別油、硬化油、エステル交換油等を用いることもできる。
【0017】
本発明の液状調味料に含まれる油相は、5〜35質量%が好ましく、5〜20質量%が好ましく、8〜15質量%が最も好ましい。また、本発明の液状調味料に含まれる水相は、65〜95質量%が好ましく、80〜95質量%が好ましく、85〜92質量%が最も好ましい。油相と水相の含有量が前記範囲内にあると、本発明の液状調味料が、コク味とまろやかな味の優れたものになる。
【0018】
[液状調味料の製造方法]
本発明の液状調味料は、通常の液状調味料の製造方法に従って製造できる。例えば、本発明の液状調味料の一つの態様である分離タイプドレッシングの製造方法の場合、油相部と水相部を別々に調製し、重層して製造する。具体的には、油脂に油溶性の原料を均一に溶解し油相部を調製し、それとは別に、水相の原料(例えば、糖類、増粘多糖類、酢、食塩、水等)を加熱撹拌して原料を均一に分散させ水相部を調製する。水相部の加熱攪拌は加圧、減圧又は常圧下で可能であり、通常は常圧下で行われる。加熱温度に特に制限はなく、原材料が溶解、殺菌がなされる温度であればよく、通常は40〜95℃の温度で、好ましくは60〜95℃の温度で行われる。攪拌は原料の均一な分散等がなされるものであればどのようなものでも実施することができ、例えば、プロペラ、ホモミキサー、ブレンダー、ディスパー、パドルミキサー、スタティックミキサー、超音波等の攪拌機又は方法を用いることができる。その後、常温程度まで冷却し、得られた水相部に、別で調製した油相部を加えて重層することによって分離タイプドレッシングを得る。
【0019】
本発明の液状調味料は、ホットパック殺菌又はレトルト殺菌されていてもよい。液状調味料をホットパック殺菌する方法及びホットパックの材質等に特に制限はなく、従来公知の方法及び材質のものを用いることができる。ホットパック充填条件についても特に制限はなく、従来公知の条件でよく、例えば45℃以上の温度、好ましくは60℃以上の温度で行うことができる。また、液状調味料をレトルト殺菌する方法及びレトルト殺菌に用いる容器に特に制限はなく、従来公知の方法等を用いることができる。レトルト殺菌の方法としては、例えば120℃、30〜60分等でよい。また、105〜115℃の温度でのセミレトルト、130℃以上の温度のハイレトルト等であってもよい。
【実施例】
【0020】
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0021】
[実施例1及び2、比較例1〜4:分離タイプドレッシングの製造]
サラダ油(製品名;日清キャノーラ油、日清オイリオグループ(株)製)及び生姜油(製品名;ショウガジョウユオイルFTC−0087、稲畑香料(株)製)を、表1及び2に記載の配合量で撹拌機付きの容器に投入し、100rpmで撹拌しながら均一に混合して油相部を調製した。
別に、異性化液糖(製品名;ニューフラクト55、昭和産業(株)製)、醸造酢、濃口醤油、上白糖、食塩、グルタミン酸ナトリウム、生姜粉砕物(製品名;冷凍ジンジャーミンチAK−1365T、池田糖化工業(株)製(水分92%))、及び水を、表1及び2に記載の配合量で撹拌機付きの加温可能な容器に投入し、100rpmで撹拌しながら品温が90℃になるまで加熱保持しながら原料を均一に混合し、品温が20℃になるまで冷却して水相部を調製した。
次に、前記水相部に前記油相部を重層し、生姜香味の分離タイプドレッシングを製造した。
【0022】
なお、表1及び2において、「乾燥物換算量」は、生姜粉砕物から水分を除いた固形分の含有量(8%)で換算した数値を指す。また、「酢酸換算酸度」は、上記の酢酸換算酸度の測定方法に従って測定した。
【0023】
[ドレッシングの評価]
製造した各ドレッシングについて、下記の指標に基づき、評価を行った。評価結果を表1及び2に示す。
(風味評価)
製造直後及び長期保存(40℃8週間保存)後の風味試験は、パネラー3名によって、各ドレッシング2mLを口に含んだ後の風味について、パネラー全員の総意で評価した。なお、長期保存試験は、各ドレッシングを40℃の恒温槽に静置し、8週間後に取り出して、室温まで放冷したドレッシングについて評価した。評価基準は下記の通りである。
◎:生姜由来の特有の香味が強く感じられる
○:◎よりは劣るが、生姜由来の特有の香味が感じられる
×:生姜由来の特有の香味が感じられない
【0024】
【表1】
【0025】
【表2】
【0026】
上記の結果から、生姜粉砕物を乾燥物換算で0.10又は0.08質量%、並びに生姜油を0.20又は0.15質量%含有する分離タイプドレッシング(実施例1及び2)は、食酢、醤油、食塩等の多種の調味成分を配合しているにもかかわらず、生姜由来の特有の香味に優れ、また該香味が長期間持続するものであった。