【実施例】
【0035】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例は、本発明の代表的な実施例の一例を示したものであり、これにより本技術の範囲が狭く解釈されることはない。
【0036】
<実施例1〜31、比較例1〜7及び参考例1の中種法によるパンの製造>
表1〜5の「中種」の欄の配合量に従って原材料を配合し、低速で3分間、中速で6分間ミキシングした生地を28℃、湿度80%で4時間発酵させて、中種を製造した。次に、発酵させた生地に、表1〜5の「本捏」の欄の配合量に従って油脂以外の原材料を添加し、低速で3分間、中速で7〜15分間ミキシングした後、油脂を投入して、低速で2分間、中速で7〜15分間ミキシングした(捏ね上げ温度27℃)。得られた生地を27℃、湿度80%で20分間発酵させ40gに分割して丸めた。20分間ベンチタイムをとった後、成形して、38℃、湿度85%で60分間ホイロをとった後、200℃、9分間焼成してパンを得た。
グルテン(成分(a))は、A−グルG(グリコ栄養食品株式会社製)を使用した。
難消化性澱粉を含む食品素材(成分(b))は、ノベロースW(小麦澱粉由来RS4:イングレディオン・ジャパン株式会社製)、ファイバージムRW(小麦澱粉由来RS4:松谷化学工業株式会社製)、パインスターチRT(タピオカ澱粉由来RS4:松谷化学工業株式会社製)または、ロードスター(ハイアミロースコーンスターチ由来RS2:日本食品化工株式会社製:登録商標)を使用した。
大豆由来食品用素材(成分(c))は、全脂大豆粉として、フレッシュフラワーS−55(昭和産業株式会社製)、アルファプラスHS−600(日清オイリオ株式会社製:登録商標)または、失活大豆粉(みたけ食品工業株式会社製)を、脱脂大豆粉として、フレッシュRF(昭和産業株式会社製)又はソーヤフラワーFT−N(日清オイリオ株式会社製)を、豆乳粉として、プロフィット1000(不二製油株式会社製:登録商標)を使用した。
難消化性澱粉を含む食品素材以外の不溶性食物繊維及び/又は難消化性デキストリン(成分(d))は、ファイバーソル2(難消化性デキストリン:松谷化学株式会社製:登録商標)、焙煎小麦ブラン(小麦ふすま:星野物産株式会社製)または、KCフロックW-100G(セルロース:日本製紙株式会社製:登録商標)を使用した。
【0037】
<評価項目>
生地形成:混捏時の生地のまとまりやすさを以下の4段階で評価した。
◎:通常のパン生地と同様である。
○:若干長めの混捏時間を要する。
△:長めの混捏時間を要するがパン生地の形成は可能である。
×:パン生地の形成ができない。
【0038】
生地の扱いやすさ:丸め、成形時の生地感を以下の4段階で評価した。
◎:滑らかな伸展性のある生地で、弾力と伸展性のバランスが非常に良く、作業性が極めて良好である。
○:滑らかな伸展性のある生地で、弾力と伸展性のバランスが良く、作業性が良好である。
△:伸展性がやや劣るが、問題なく丸め、成形ができる。
×:伸展性が悪い、または弾力が弱すぎて、弾力と伸展性のバランスが悪く、作業性が非常に悪い。
【0039】
ボリューム(比容積):3次元レーザー体積計(3D Laser Volume Measurement selnac−Win VM2100:株式会社ASTEX社製)により測定した。製造したパンの体積を重量で割ることにより比容積(cm
3/g)を算出した。
比容積が6.0以上の場合を良好、5.6〜6.0の場合をやや良好、5.5以下の場合を不良と評価した。
【0040】
食味・食感:一般的な配合により製造されたパンを食したときの食味、食感の印象と比較して以下の4段階で評価した。
◎:非常に良好
○:良好
△:やや劣るが問題なし
×:不良
【0041】
糖質量:配合からパン100gあたりの糖質含有量を算出し、計算値(推定値)とした。
【0042】
総合評価:上記生地形成、生地の扱いやすさ、ボリューム(比容積)、食味・食感の結果を総合的に判断し、◎、○、△、×の4段階で評価した。特に、焼成後の評価項目(比容積、食味・食感)を重視して評価した。◎、○、△を可とし、×を不可とした。
【0043】
<結果1>
実施例1〜5及び比較例1〜7の結果を表1に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
実施例1〜5で、成分(a)+(b)+(c)の合計含有量が製パン用組成物の80質量%以上、成分(a):(b)+(c)の割合が1:1〜1:2.5の範囲を満たす条件下であると、生地形成、生地の扱いやすさも食味・食感もよく、いずれの実施例でも総合評価で満足できるものであった。また、成分(a):(b)+(c)の割合が1:1〜1:2.1を満たす条件下であると、生地形成、生地の扱いやすさにおいてより良好であり、1:1.25〜1:2を満たす条件下であると、全ての評価項目において、さらに良好な評価が得られた。
特に、成分(a):(b)+(c)の割合が1:2.5を超えると生地の扱いやすさが劣ること、成分(a):(b)+(c)の割合が1:1を下回ると食味・食感も悪くなることがわかった。
更に、成分(a):(b)+(c)の割合が1:2.5の範囲を満たしていても、成分(b)及び成分(c)を含有しないと、生地の扱いやすさ、膨らみ、食味・食感のすべてが悪くなることがわかった。
【0046】
比較例1で、成分(a):(b)+(c)の割合を1:2.6にしたところ、生地の扱いやすさ、ボリューム、食味・食感でやや劣った。比較例2で、成分(a):(b)+(c)の割合を1:3.5と更に大きくしたところ、生地の扱いやすさ、ボリューム、食味・食感が大きく劣った。
【0047】
比較例3で、成分(a):(b)+(c)の割合を1:0.8にしたところ、生地形成がやや劣り、生地の扱いやすさ、ボリューム、食味・食感が劣った。比較例4で、成分(a):(b)+(c)の割合を1:0.5と更に小さくしたところ、生地形成、生地の扱いやすさ、ボリューム、食味・食感のいずれにおいても劣る結果が得られた。
【0048】
比較例5で、成分(a)+(b)+(c)の合計含有量が製パン用組成物の75%となるようにしたところ、生地形成、食味・食感でやや劣った。
【0049】
比較例6で、成分(c)の大豆粉を入れない条件にしたところ、生地形成、生地の扱いやすさ、食味・食感のいずれも劣った。
比較例7で、成分(b)の難消化性澱粉を含む食品用素材を入れない条件にしたところ、生地形成、生地の扱いやすさ、ボリューム、食味・食感のいずれも劣った。
【0050】
<結果2>
参考例6、実施例
7〜13の結果を表2に示す。
【0051】
【表2】
【0052】
参考例6および
実施例7の生地の扱いやすさがやや劣る点を鑑みると、成分(b)は、製パン用組成物の原料全量中40質量%未満が好ましいことが推察された。
また、成分(b):(c)は、より好ましくは1:0.3〜1:1.75、更に好ましくは1:0.5〜1:1.5であることが示された。
また更に、
参考例6、実施例
7〜13のいずれも、生地形成、生地の扱いやすさ、食味・食感の総合で「△」(可)以上の評価であり、比容積も5.7〜6.4cm
3/gでパンとして十分なボリュームが得られた。
【0053】
<結果3>
実施例14〜21の結果を表3に示す。
【0054】
【表3】
【0055】
実施例14で、成分(b)の「ノベロースW」を製パン用組成物に25質量%含めた。
実施例15で、成分(b)の「ファイバージムRW」を製パン用組成物に25質量%含めた。
実施例16で、成分(b)の「パインスターチRT」を製パン用組成物に25質量%含めた。
実施例17で、成分(b)の「ロードスター」を製パン用組成物に25質量%含めた。
実施例18で、成分(b)の「パインスターチRT」製パン用組成物に50%含めた。
【0056】
実施例19で、成分(b)の「ノベロースW」20質量%と、成分(d)の「ファイバーソル2」5質量%とを、製パン用組成物に含めた。
実施例20で、成分(b)の「ノベロースW」20質量%と、成分(d)の「焙煎小麦ブラン」5質量%とを、製パン用組成物に含めた。
実施例21で、成分(b)の「ノベロースW」20質量%と、成分(d)の「KCフロックW-100G」5質量%とを、製パン用組成物に含めた。
【0057】
実施例14〜17の結果から、成分(b)の由来は限定されず、小麦、タピオカ、トウモロコシのいずれでもよいことがわかった。特に、RS4の難消化性澱粉が含まれるもの(ノベロースW、ファイバージムRW、パインスターチRT)を使うと、より品質が良いパンが得られた。
また、成分(b)は、その由来に依らず、製パン用組成物の原料全量中40質量%以上になると、生地の扱いやすさに影響することが考えられた。
更に、実施例19〜21の結果から、成分(d)として、成分(b)に含まれる難消化性澱粉以外の不溶性食物繊維及び/又は難消化性デキストリンを含有してもよいことが示された。
また更に、実施例14〜21のいずれも、生地形成、生地の扱いやすさ、食味・食感の総合で「△」(可)以上の評価であり、比容積も5.8〜6.5cm
3/gでパンとして十分なボリュームが得られた。
【0058】
<結果4>
実施例22〜27の結果を表4に示す。
【0059】
【表4】
【0060】
実施例22で、成分(c)の「フレッシュフラワーS−55」を製パン用組成物に30質量%含めた。
実施例23で、成分(c)の「フレッシュRF」を製パン用組成物に30質量%含めた。
実施例24で、成分(c)の全脂大豆粉(失活大豆粉)を製パン用組成物に30質量%含めた。
実施例25で、成分(c)の「ソーヤフラワーFT−N」を製パン用組成物に30質量%含めた。
実施例26で、成分(c)の「アルファプラスHS−600」を製パン用組成物に30質量%含めた。
実施例27で、成分(c)の「プロフィット1000」を製パン用組成物に30質量%含めた。
【0061】
実施例22〜27のいずれも、大豆由来食品素材の種類に依らず、生地形成、生地の扱いやすさ、食味・食感の全ての点で良好な評価が得られた。特に、食味の点で、全脂脱臭大豆粉および豆乳粉が優れていた。
また、実施例22〜27のいずれも、生地形成、生地の扱いやすさ、食味・食感の総合で「◎」の評価であり、比容積も6.2〜6.4cm
3/gでパンとして十分なボリュームが得られた。
なお、前述の実施例1〜21、及び実施例22〜27の糖質量をみると、4.7〜9.8g/100gであり、小麦粉を主体とした一般的な配合で製造した参考例1のパン(糖質量 36.2g/100g)と比較して、糖質含有量の低いパンを得ることができた。
【0062】
<結果5>
実施例28〜31の結果を表5に示す。
【0063】
【表5】
【0064】
実施例28で、中種に製パン用組成物を70質量%、本捏に製パン用組成物の代わりに小麦粉30質量%となるように、製パン用組成物を小麦粉で希釈したところ、生地形成、生地の扱いやすさ、食味・食感で良好な結果が得られた。
実施例29で、中種に製パン用組成物の代わりに小麦粉を70質量%、本捏に製パン用組成物30質量%となるように、製パン用組成物を小麦粉で希釈したところ、生地形成、生地の扱いやすさ、食味・食感で良好な結果が得られた。
実施例30で、中種に製パン用組成物35質量%及び小麦粉35質量%、本捏に製パン用組成物15質量%及び小麦粉15質量%となるように、製パン用組成物を小麦粉で希釈したところ、生地形成、生地の扱いやすさ、食味・食感で良好な結果が得られた。
実施例31で、中種に製パン用組成物を70質量%、本捏に製パン用組成物の代わりに米粉30質量%となるように、製パン用組成物を米粉で希釈したところ、生地形成、生地の扱いやすさ、食味・食感で良好な結果が得られた。
以上の実施例28〜31の糖質量をみると、糖質量が17.1〜28.1g/100gと小麦粉を主体とした一般的な配合で製造した参考例1のパン(糖質量 36.2g/100g)よりも糖質含有量が低いパンが得られた。