【実施例1】
【0021】
[プラズマ処理装置10]
図1は、プラズマ処理装置10の一例を示す断面図である。プラズマ処理装置10は、例えば
図1に示すように、気密に構成されたチャンバ1を備える。チャンバ1は、例えば表面に陽極酸化処理が施されたアルミニウム等により、略円筒状に形成され、接地されている。チャンバ1内には、被処理基板の一例である半導体ウエハWを水平に支持する載置台2が設けられている。
【0022】
載置台2は、基材2aおよび静電チャック6を有する。基材2aは、例えばアルミニウム等の導電性の金属で構成されている。載置台2は、下部電極としても機能する。基材2aは、導体で構成された支持台4に支持されている。支持台4は、絶縁板3を介してチャンバ1の底部に支持されている。また、載置台2の上方の外周には、例えば単結晶シリコン等で形成されたフォーカスリング5が設けられている。さらに、載置台2および支持台4の周囲を囲むように、例えば石英等からなる円筒状の内壁部材3aが設けられている。
【0023】
基材2aの上面には、静電チャック6が設けられている。静電チャック6は、絶縁体6bと、絶縁体6bの間に設けられた電極6aとを有する。電極6aは、直流電源12に接続されている。静電チャック6は、直流電源12から印加された直流電圧によって静電チャック6の表面にクーロン力を発生させることにより、半導体ウエハWを静電チャック6の上面に吸着保持する。載置台2は、静電チャック6の上面に半導体ウエハWを吸着保持させることにより、半導体ウエハWを載置する。静電チャック6の上面は、載置台2の載置面に相当する。
【0024】
基材2aの内部には、冷媒が流れる流路2bが形成されている。流路2bには、載置台2cおよび2dを介してガルデンなどの冷媒が循環する。流路2b内を循環する冷媒により、載置台2および支持台4が所定の温度に制御される。また、載置台2には、載置台2を貫通するように、半導体ウエハWの裏面側にヘリウムガス等の熱伝達ガス(バックサイドガス)を供給するための配管30が設けられている。配管30は、図示しないバックサイドガス供給源に接続されている。流路2b内を流れる冷媒と、半導体ウエハWの裏面側に供給される熱伝達ガスによって、静電チャック6の上面に吸着保持された半導体ウエハWを、所定の温度に制御することができる。
【0025】
載置台2の上方には、載置台2と略平行に対向するように、換言すれば、載置台2上に載置された半導体ウエハWと対向するように、シャワーヘッド16が設けられている。シャワーヘッド16は、上部電極としても機能する。即ち、シャワーヘッド16と載置台2とは、一対の電極(上部電極と下部電極)として機能する。載置台2上に載置された半導体ウエハWと、シャワーヘッド16との間を処理空間Sと呼ぶ。載置台2の基材2aには、整合器11aを介して高周波電源10aが接続されている。また、載置台2の基材2aには、整合器11bを介して高周波電源10bが接続されている。
【0026】
高周波電源10aは、プラズマの発生に用いられる所定の周波数(例えば100MHz)の高周波電力を載置台2の基材2aに供給する。また、高周波電源10bは、イオンの引き込み(バイアス)に用いられる所定の周波数の高周波電力であって、高周波電源10aよりも低い周波数(例えば13MHz)の高周波電力を載置台2の基材2aに供給する。
【0027】
シャワーヘッド16は、チャンバ1の上部に設けられている。シャワーヘッド16は、本体部16aと上部天板16bとを備える。シャワーヘッド16は、絶縁性部材45を介してチャンバ1の上部に支持されている。本体部16aは、例えば表面が陽極酸化処理されたアルミニウム等により形成され、その下部に上部天板16bを着脱自在に支持する。上部天板16bは、例えば石英等のシリコン含有物質で形成される。
【0028】
本体部16aの内部には、ガス拡散室16cおよび16dが設けられている。本体部16aの底部には、ガス拡散室16cまたは16dの下部に位置するように、多数のガス流通口16eが形成されている。ガス拡散室16cは、シャワーヘッド16の略中央に設けられ、ガス拡散室16dは、ガス拡散室16cを囲むようにガス拡散室16cの周囲に設けられている。ガス拡散室16cおよび16dは、処理ガスの流量等を独立に制御可能となっている。
【0029】
上部天板16bには、当該上部天板16bを厚さ方向に貫通するようにガス流通口16fが設けられており、それぞれのガス流通口16fは、上記したガス流通口16eに連通している。このような構成により、ガス拡散室16cおよび16dに供給された処理ガスは、ガス流通口16eまたは16fを介してチャンバ1内にシャワー状に拡散されて供給される。なお、本体部16a等には、図示しないヒータや、冷媒を循環させるための図示しない配管等の温度調整機構が設けられており、半導体ウエハWの処理中にシャワーヘッド16を所望の範囲内の温度に制御できるようになっている。
【0030】
シャワーヘッド16の本体部16aには、ガス拡散室16cに処理ガスを導入するためのガス導入口16gと、ガス拡散室16dに処理ガスを導入するためのガス導入口16hとが設けられている。ガス導入口16gには、配管15aの一端が接続されている。配管15aの他端は、弁V1およびマスフローコントローラ(MFC)15cを介して、半導体ウエハWの処理に用いられる処理ガスを供給する処理ガス供給源15に接続されている。また、ガス導入口16hには、配管15bの一端が接続されている。配管15bの他端は、弁V2およびMFC15dを介して、処理ガス供給源15に接続されている。処理ガス供給源15から供給された処理ガスは、配管15aおよび15bを介してガス拡散室16cおよび16dにそれぞれ供給され、それぞれのガス流通口16eおよび16fを介してチャンバ1内にシャワー状に拡散されて供給される。
【0031】
シャワーヘッド16には、ローパスフィルタ(LPF)51およびスイッチ53を介して可変直流電源52が電気的に接続されている。スイッチ53は、可変直流電源52からシャワーヘッド16への直流電圧の供給および遮断を制御する。例えば、高周波電源10aおよび10bから高周波電力が載置台2に供給されてチャンバ1内の処理空間Sにプラズマが生成される際には、必要に応じてスイッチ53がオンとされ、上部電極として機能するシャワーヘッド16に所定の直流電圧が印加される。
【0032】
載置台2の周囲には、載置台2を囲むように排気路71が設けられている。排気路71には排気管72が接続され、排気管72には排気装置73が接続されている。排気装置73は、ターボ分子ポンプ等の真空ポンプを有する。この真空ポンプを作動させることにより、排気装置73は、排気路71を介して、チャンバ1内を所定の真空度まで減圧することができる。
【0033】
処理空間Sと排気路71との間には、複数の貫通孔を有するバッフル板18が、載置台2を囲むように載置台2の周囲に設けられている。バッフル板18は、排気路71の内壁において、載置台2に近い側の内壁77と、載置台2から遠い側の内壁76との間に設けられている。本実施例において、バッフル板18は、半導体ウエハWが載置される静電チャック6の上面よりも低い位置に設けられている。また、本実施例において、バッフル板18は、載置台2から離れるほど位置が高くなるように、載置台2の周囲に斜めに設けられている。バッフル板18は、処理空間S内に生成されたプラズマを処理空間S内に閉じ込めると共に、処理空間S内の供給された処理ガスを排気路71内へ通過させる。
【0034】
排気路71内において、バッフル板18よりも処理空間Sから遠い位置には、載置台2を囲むように載置台2の周囲に整流板19が設けられている。整流板19は、例えば表面に陽極酸化処理が施されたアルミニウム等により形成される。整流板19は、バッフル板18から所定距離離れて配置される。本実施例において、バッフル板18と整流板19との間の距離は、整流板19の厚さよりも長い。本実施例において、整流板19は、排気路71内において、載置台2に近い側の内壁77に設けられる。整流板19は、排気路71内において、バッフル板18から、排気管72を介して排気装置73へ流れる処理ガスの排気量を、排気装置73からの距離に応じて調整する。即ち、整流板19は、載置台2の周囲において、排気装置73に近いほどバッフル板18から排気装置73へ流れる処理ガスの排気量が少なく、排気装置73から遠いほどバッフル板18から排気装置73へ流れる処理ガスの排気量が多くなるように、排気路71内を流れる処理ガスの排気量を調整する。
【0035】
チャンバ1の側壁には、開口部74が設けられており、開口部74には、当該開口部74を開閉するゲートバルブGが設けられている。また、チャンバ1の内壁および載置台2の外周面には、デポシールドが着脱自在に設けられている。デポシールドは、チャンバ1の内壁にエッチング副生物(デポ)が付着することを防止する。静電チャック6上に吸着保持された半導体ウエハWと略同じ高さのデポシールドの位置には、直流的にグランドに接続された導電性部材(GNDブロック)79が設けられている。GNDブロック79により、チャンバ1内の異常放電が抑制される。
【0036】
また、チャンバ1の周囲には、同心円状にリング磁石80が配置されている。リング磁石80は、シャワーヘッド16と載置台2との間の処理空間S内に磁場を形成する。リング磁石80は、図示しない回転機構により回転自在に保持されている。
【0037】
上記のように構成されたプラズマ処理装置10は、制御部60によって、その動作が統括的に制御される。制御部60は、CPU(Central Processing Unit)を有しプラズマ処理装置10の各部を制御するプロセスコントローラ61と、ユーザインターフェース62と、記憶部63とを備える。
【0038】
ユーザインターフェース62は、オペレータがプラズマ処理装置10を操作するためのコマンド等の入力に用いられるキーボードや、プラズマ処理装置10の稼動状況を可視化して表示するディスプレイ等を含む。
【0039】
記憶部63には、プラズマ処理装置10で実行される各種処理をプロセスコントローラ61の制御にて実現するための制御プログラム(ソフトウエア)や、処理条件のデータ等が記憶されたレシピが格納されている。プロセスコントローラ61は、記憶部63内に記憶された制御プログラムに基づいて動作し、ユーザインターフェース62を介して受け付けた指示等に応じて、レシピ等を記憶部63から読み出す。そして、プロセスコントローラ61が、読み出したレシピ等に応じてプラズマ処理装置10を制御することにより、プラズマ処理装置10によって所望の処理が行われる。また、プロセスコントローラ61は、コンピュータで読み取り可能な記録媒体(例えば、ハードディスク、CD、フレキシブルディスク、半導体メモリ等)などに格納された制御プログラムやレシピ等を、当該記録媒体から読み出して実行することも可能である。また、プロセスコントローラ61は、他の装置の記憶部内に格納された制御プログラムやレシピ等を、例えば通信回線を介して当該他の装置から取得して実行することも可能である。
【0040】
プラズマ処理装置10において半導体ウエハWにプラズマ処理を行う場合、制御部60は、プラズマ処理装置10に対して以下の制御を行う。まず、制御部60は、静電チャック6上に半導体ウエハWが載置された状態で、弁V1、弁V2、MFC15c、およびMFC15dを制御して、ガス拡散室16cおよび16d内に所定の流量の処理ガスをそれぞれ供給する。ガス拡散室16cおよび16d内に供給された処理ガスは、ガス流通口16eおよび16fを介してチャンバ1内にシャワー状に拡散されて供給される。また、制御部60は、排気装置73の排気量を制御することにより、チャンバ1内を所定の圧力に制御する。
【0041】
そして、制御部60は、高周波電源10aおよび10bにそれぞれ所定の高周波電力を発生させ載置台2に印加させると共に、スイッチ53をオンに制御し、シャワーヘッド16に所定の直流電圧を印加する。これにより、静電チャック6上の半導体ウエハWと、シャワーヘッド16との間の処理空間Sに、処理ガスのプラズマが生成される。そして、処理空間Sに生成されたプラズマに含まれるイオンやラジカルにより、静電チャック6上の半導体ウエハWにエッチングや成膜等の所定の処理が行われる。
【0042】
図2は、バッフル板18の一例を示す上面図である。バッフル板18の外形は、例えば
図2に示すように、上方から見た場合、即ち、シャワーヘッド16から載置台2へ向かう方向から見た場合に環状である。また、バッフル板18には、バッフル板18の面内に略均等な間隔で複数の貫通孔180が設けられている。本実施例において、複数の貫通孔180は、バッフル板18の面内に同心円状に配置されている。なお、複数の貫通孔180は、略均等な間隔でバッフル板18の面内に設けられていれば、同心円状の配置以外に、放射状や格子状に配置されていてもよい。また、それぞれの貫通孔180の開口は、円状であるが、それぞれ開口が同一の形状であれば、楕円状、長丸状、扇形状等であってもよい。
【0043】
図3は、整流板19の一例を示す上面図である。整流板19の外形は、例えば
図3に示すように、上方から見た場合、即ち、シャワーヘッド16から載置台2へ向かう方向から見た場合に環状である。本実施例において、整流板19の外周面190および内周面191は、上方から見た場合に、略円状である。ただし、外周面190が形成する円の中心O
1と、内周面191が形成する円の中心O
2とは、位置が異なる。即ち、外周面190が形成する円は、内周面191が形成する円に対して偏心している。そのため、整流板19は、上方から見た場合に、周方向の位置に応じて径方向の幅が異なる。なお、整流板19の外周面190および内周面191は、上方から見た場合に略楕円状であってもよい。
【0044】
図4は、実施例1における整流板19と静電チャック6の上面との位置関係の一例を示す図である。シャワーヘッド16から載置台2へ向かう方向から見た場合、整流板19の径方向の幅は、排気路71内の流路の断面の幅よりも狭い。そのため、排気路71内には、整流板19の外周面190と、排気路71内の載置台2から遠い側の内壁76との間の隙間20により、開口75が形成される。本実施例において、整流板19は、排気路71内に単一の開口75を形成する。
【0045】
また、例えば
図4に示すように、整流板19が排気路71内に設けられた状態において整流板19の内周面191の中心は、静電チャック6の上面が形成する円の中心O
3と一致する。一方、整流板19の外周面190の中心O
1は、静電チャック6の上面が形成する円の中心O
3よりも、排気路71と排気装置73とを接続する排気管72側に位置する。即ち、排気管72から外周面190の中心O
1までの距離L1は、排気管72から静電チャック6の上面が形成する円の中心O
3までの距離L2よりも短い。これにより、整流板19の外周面190と、排気路71内の載置台2から遠い側の内壁76との間に形成された開口75は、周方向において、排気管72に近いほど狭く、排気管72から遠いほど広くなっている。
【0046】
本実施例のプラズマ処理装置10において、処理空間S内に供給された処理ガスは、排気装置73の動作により、バッフル板18に形成された複数の貫通孔180を介して排気路71内へ流れる。そして、バッフル板18を通過した処理ガスは、整流板19の外周面190と、排気路71内の内壁76との間に形成された開口75を通って排気管72へ流れる。整流板19と、排気路71内の内壁76との間に形成された開口75は、排気管72に近いほど狭く、排気管72から遠いほど広い。そのため、排気管72に近い流路内の排気量の上昇が抑えられ、排気管72から遠い流路内の排気量の低下が抑えられる。これにより、半導体ウエハWの周方向において、処理空間Sから排気路71を通って排気される処理ガスの排気量の偏りを抑制することができる。
【0047】
ここで、バッフル板18に形成された各貫通孔180の開口面積は、処理空間S内にプラズマを閉じ込めることができる範囲で広く形成される。これにより、バッフル板18による排気コンダクタンスの低下が抑制される。そのため、任意の圧力の処理条件においても、処理空間S内の圧力を所定の圧力に制御することが可能となる。
【0048】
また、バッフル板18と整流板19とは所定距離離れているため、バッフル板18の各貫通孔180を介して排気路71内に排気された処理ガスは、排気路71内を通って、整流板19と、排気路71内の内壁76との間に形成された開口75に滑らかに流れ込む。整流板19は、バッフル板18の各貫通孔180を介して排気路71内に排気された処理ガスの流れを遮ることなく、なだらかに流路を変更する。これにより、バッフル板18と整流板19との間の排気路71内における排気コンダクタンスの低下が抑えられ、排気路71内における圧力上昇が抑えられる。
【0049】
このように、本実施例のプラズマ処理装置10では、排気路71内にバッフル板18と整流板19とを設け、排気される処理ガスの流れを2段階で徐々に整流する。これにより、排気路71内の排気コンダクタンスの低下が抑えられると共に、載置台2の周囲において処理ガスの排気量の偏りが抑制される。これにより、半導体ウエハW上の処理空間Sにおいて、半導体ウエハWの周方向における処理ガスの圧力および流速の偏りを抑制することができる。これにより、半導体ウエハW上の処理空間Sにおいて、半導体ウエハWの周方向における処理ガスの密度の偏りを抑制することができ、処理後の半導体ウエハWにおけるCD偏り等の特性のばらつきを抑制することができる。
【0050】
[シミュレーション結果]
図5は、半導体ウエハWの周方向におけるチャンバ1内の圧力分布のシミュレーション結果の一例を示す図である。
図5の横軸は、半導体ウエハW上の所定の位置を基準とした周方向の角度を示す。
図5の縦軸は、半導体ウエハWの周方向におけるチャンバ1内の圧力と、半導体ウエハWの周方向におけるチャンバ1内の平均圧力との圧力差を示す。
図5では、半導体ウエハWの中心から150mm離れた円周上の処理空間S内の圧力を示している。
図5に示した比較例1は、排気路71内にバッフル板18のみが設けられており、排気路71内に整流板19が設けられていないプラズマ処理装置10におけるシミュレーション結果である。
【0051】
図5のシミュレーション結果から明らかなように、比較例1のプラズマ処理装置10では、半導体ウエハWの周方向におけるチャンバ1内の圧力差の最大値と最小値の差が約0.08mTとなっている。これに対し、排気路71内にバッフル板18と整流板19とが設けられている本実施例1のプラズマ処理装置10では、半導体ウエハWの周方向におけるチャンバ1内の圧力差の最大値と最小値の差が約0.01mT未満となっている。
図5のシミュレーション結果から明らかなように、本実施例のプラズマ処理装置10では、排気路71内にバッフル板18と整流板19とを設けることにより、半導体ウエハWの周方向におけるチャンバ1内の圧力分布の偏りが抑制されている。
【0052】
図6および
図7は、処理条件を変えた場合の半導体ウエハWの周方向におけるチャンバ1内の圧力分布のシミュレーション結果の一例を示す図である。
図7は、
図6における、圧力差が0から0.02mTまでの範囲を拡大した図である。変化させる処理条件としては、チャンバ1内の圧力と、チャンバ1内に供給される処理ガスの流量を用いた。処理ガスとしては、N2ガスを用いた。
図6および
図7の横軸は、処理ガス(N2ガス)の流量を示す。
図6および
図7の縦軸は、半導体ウエハWの周方向におけるチャンバ1内の圧力の最大値と最小値との差を示す。
【0053】
図6(a)および
図7(a)は、チャンバ1内の圧力を15mTに制御し、処理ガスの流量を変えた場合の半導体ウエハWの周方向の圧力差を示す。
図6(b)および
図7(b)は、チャンバ1内の圧力を50mTに制御し、処理ガスの流量を変えた場合の半導体ウエハWの周方向の圧力差を示す。
図6(c)および
図7(c)は、チャンバ1内の圧力を80mTに制御し、処理ガスの流量を変えた場合の半導体ウエハWの周方向の圧力差を示す。
【0054】
ここで、
図6および
図7に示した比較例2は、排気路71内にバッフル板18のみが設けられており、排気路71内に整流板19が設けられていないプラズマ処理装置10におけるシミュレーション結果である。ただし、比較例2のプラズマ処理装置10に設けられたバッフル板18の貫通孔の開口面積は、実施例1のプラズマ処理装置10に設けられたバッフル板18内の貫通孔180の開口面積よりも小さい。比較例2のプラズマ処理装置10では、バッフル板18の貫通孔の開口面積を小さくすることにより、バッフル板18を介して処理ガスが排気される際の排気コンダクタンスが低くなる。そのため、バッフル板18を介して排気される処理ガスの流速が全体的に小さくなり、処理空間S内に処理ガスが滞留する。これにより、処理空間S内において、半導体ウエハWの周方向におけるチャンバ1内の圧力分布の偏りが抑制される。
【0055】
また、
図6および
図7に示した比較例3は、排気路71内にバッフル板18のみが設けられており、排気路71内に整流板19が設けられていないプラズマ処理装置10におけるシミュレーション結果である。ただし、比較例3のプラズマ処理装置10に設けられたバッフル板18が有する複数の貫通孔は、排気装置73が接続された排気管72に近いほど密度が低く、排気管72から遠いほど密度が高くなるように配置されている。これにより、比較例3のプラズマ処理装置10では、半導体ウエハWの周方向において、排気装置73が接続された排気管72に近いほど排気コンダクタンスが低くなり、排気管72から遠いほど排気コンダクタンスが高くなる。そのため、半導体ウエハWの周方向において、バッフル板18を介して排気される処理ガスの流速の偏りが抑制される。これにより、処理空間S内において、半導体ウエハWの周方向におけるチャンバ1内の圧力分布の偏りが抑制される。
【0056】
図6のシミュレーション結果を参照すると、比較例1のプラズマ処理装置10は、実施例1のプラズマ処理装置10に比べて、半導体ウエハWの周方向におけるチャンバ1内の圧力差が大きい。また、比較例1のプラズマ処理装置10は、実施例1のプラズマ処理装置10に比べて、チャンバ1内の圧力および処理ガスの流量の変化に対して、半導体ウエハWの周方向におけるチャンバ1内の圧力差の変化量が大きい。処理条件の変化に対して、半導体ウエハWの周方向における圧力差の変化量が大きいと、半導体ウエハWの周方向における圧力差を所定範囲内に抑えることができる処理条件が制限されてしまう。
【0057】
また、
図6および
図7のシミュレーション結果を参照すると、比較例2のプラズマ処理装置10は、実施例1のプラズマ処理装置10に比べて、半導体ウエハWの周方向におけるチャンバ1内の圧力差が小さい場合がある。しかし、比較例2のプラズマ処理装置10では、実施例1のプラズマ処理装置10に比べて、チャンバ1内の圧力および処理ガスの流量の変化に対して、半導体ウエハWの周方向におけるチャンバ1内の圧力差の変化量が大きい。比較例2においても、処理条件の変化に対して半導体ウエハWの周方向における圧力差の変化量が大きいため、半導体ウエハWの周方向における圧力差を所定範囲内に抑えることができる処理条件が制限される。
【0058】
また、
図6および
図7のシミュレーション結果を参照すると、比較例3のプラズマ処理装置10は、実施例1のプラズマ処理装置10に比べて、半導体ウエハWの周方向におけるチャンバ1内の圧力差が全体的に大きい。また、比較例3のプラズマ処理装置10では、実施例1のプラズマ処理装置10に比べて、チャンバ1内の圧力および処理ガスの流量の変化に対して、半導体ウエハWの周方向におけるチャンバ1内の圧力差の変化量も大きい。比較例3においても、処理条件の変化に対して半導体ウエハWの周方向における圧力差の変化量が大きいため、半導体ウエハWの周方向における圧力差を所定範囲内に抑えることができる処理条件が制限される。
【0059】
また、
図6および
図7のシミュレーション結果を参照すると、本実施例1のプラズマ処理装置10は、比較例1〜3のプラズマ処理装置10に比べて、半導体ウエハWの周方向におけるチャンバ1内の圧力差が小さい。また、本実施例1のプラズマ処理装置10では、比較例1〜3のプラズマ処理装置10に比べて、チャンバ1内の圧力および処理ガスの流量の変化に対して、半導体ウエハWの周方向におけるチャンバ1内の圧力差の変化量が小さい。本実施例1のプラズマ処理装置10では、比較例1〜3のプラズマ処理装置10に比べて、処理条件の変化に対して半導体ウエハWの周方向における圧力差の変化量が小さいため、より広範囲の任意の処理条件において、半導体ウエハWの周方向における圧力差を所定範囲内に抑えることができる。
【0060】
また、
図6および
図7のシミュレーション結果を参照すると、比較例1〜3および実施例1では、チャンバ1内の圧力が低くなるほど、処理条件の変化に対して、半導体ウエハWの周方向における圧力差の変化量が大きくなっている。そのため、半導体ウエハWに対してより低圧の処理条件で処理が行われる場合、処理ガスの流量等の処理条件の変化に対する、半導体ウエハWの周方向における圧力差の変化量はさらに大きくなる。
【0061】
図8は、処理条件を変えた場合のチャンバ1内の平均圧力のシミュレーション結果の一例を示す図である。変化させる処理条件としては、
図6および
図7と同様に、チャンバ1内の圧力と処理ガス(N2ガス)の流量とを用いた。
図8の横軸は、処理ガス(N2ガス)の流量を示す。
図8の縦軸は、チャンバ1内の平均圧力を示す。
【0062】
図8のシミュレーション結果を参照すると、比較例2は、比較例1、比較例3、および実施例1に比べて、チャンバ1内の平均圧力が全体的に大きい。比較例2のプラズマ処理装置10では、バッフル板18の貫通孔180の開口面積を小さくすることにより、バッフル板18の排気コンダクタンスを低くしているため、チャンバ1内の平均圧力が高くなる。半導体ウエハWの加工の微細化が進むと、より低圧の処理条件で半導体ウエハWに対するプラズマ処理が行われる。しかし、比較例2のプラズマ処理装置10では、半導体ウエハWの周方向におけるチャンバ1内の圧力分布の偏りが抑制されるものの、チャンバ1内の圧力が上昇してしまい、チャンバ1内を低圧に制御することが困難となる。
【0063】
これに対し、本実施例1のプラズマ処理装置10では、
図8のシミュレーション結果から明らかなように、チャンバ1内の平均圧力の上昇が抑えられている。そのため、本実施例1のプラズマ処理装置10では、より低圧の処理条件においても、チャンバ1内の圧力を所定の圧力に制御することが可能となる。
【0064】
以上、実施例1におけるプラズマ処理装置10について説明した。上記説明から明らかなように、実施例1におけるプラズマ処理装置10によれば、任意の処理条件において、半導体ウエハWの周方向における処理ガスの圧力および流速の偏りを抑制することができる。
【実施例2】
【0065】
実施例1のプラズマ処理装置10において、整流板19は、載置台2に近い側の排気路71の内壁77に設けられるが、本実施例のプラズマ処理装置10では、整流板19は、載置台2から遠い側の排気路71の内壁76に設けられる点が実施例1のプラズマ処理装置10とは異なる。以下、実施例2のプラズマ処理装置10について説明する。なお、排気路71内における整流板19の取り付け位置以外は、
図1を用いて説明した実施例1のプラズマ処理装置10と同様であるため、重複する説明は省略する。
【0066】
図9は、実施例2における整流板19と静電チャック6の上面との位置関係の一例を示す図である。例えば
図9に示すように、本実施例における整流板19は、排気路71内において、載置台2から遠い側の内壁76に設けられる。また、上方から見た場合、整流板19の径方向の幅は、排気路71内の流路の断面の幅よりも狭い。そのため、排気路71内には、整流板19の内周面191と、排気路71内の載置台2に近い側の内壁77との間の隙間20により、開口75が形成される。
【0067】
整流板19が排気路71内に設けられた状態において整流板19の外周面190の中心は、静電チャック6の上面が形成する円の中心O
3と一致する。一方、整流板19の内周面191の中心O
4は、静電チャック6の上面が形成する円の中心O
3よりも、排気管72から遠い側に位置する。即ち、排気管72から静電チャック6の上面が形成する円の中心O
3までの距離L3は、排気管72から内周面191の中心O
4までの距離L4よりも短い。これにより、整流板19の内周面191と、排気路71内の載置台2に近い側の内壁77との間に形成された開口75は、周方向において、排気管72に近いほど狭く、排気管72から遠いほど広くなっている。
【0068】
本実施例における整流板19においても、載置台2の周囲において、排気管72に近いほどバッフル板18から排気管72へ流れる処理ガスの排気量が少なく、排気管72から遠いほどバッフル板18から排気管72へ流れる処理ガスの排気量が多くなるように、排気路71内を流れる処理ガスの排気量が調整される。これにより、半導体ウエハWの周方向において、処理空間Sから排気路71を通って排気される処理ガスの排気量の偏りを抑制することができる。
【0069】
また、本実施例のプラズマ処理装置10においても、排気路71内の流路内にバッフル板18と整流板19とが設けられ、排気される処理ガスが2段階で徐々に整流される。これにより、排気路71内の排気コンダクタンスの低下が抑えられると共に、載置台2の周囲において処理ガスの排気量の偏りが抑制される。
【0070】
[その他]
上記した実施例1および2において、バッフル板18は、載置台2から離れるほど位置が高くなるように、載置台2の周囲に斜めに設けられているが、開示の技術はこれに限られない。例えば、バッフル板18は、載置台2の周囲に略水平に設けられてもよく、載置台2から離れるほど位置が低くなるように、載置台2の周囲に斜めに設けられてもよい。なお、バッフル板18と整流板19との間の距離は、バッフル板18と水平面とのなす角度が小さいほど長く、バッフル板18と水平面とのなす角度が大きいほど短いことが好ましい。ただし、いずれの場合でも、バッフル板18と整流板19との間の距離は、整流板19の厚さよりも長い。
【0071】
また、上記した各実施例では、半導体ウエハWに対してプラズマを用いたエッチングを行うプラズマ処理装置10を例に説明したが、開示の技術はこれに限られない。排気路71内にバッフル板18と整流板19とが設けられ、プラズマを用いて半導体ウエハWに対する処理を行う装置であれば、半導体ウエハW上に所定の膜を形成する成膜装置や、半導体ウエハWをプラズマに晒すことにより半導体ウエハW上に形成された膜の性質を変化させる改質装置等においても、上記した各実施例で説明した技術を適用することができる。
【0072】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者には明らかである。また、そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。