(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態の説明を行う。
【0013】
〔第1の実施形態〕
図1は、本発明の第1の実施形態に係る気化原料供給装置及び基板処理装置の一例を示した図である。
図1において、気化原料供給装置250と、これを含む基板処理装置300が示されている。
【0014】
気化原料供給装置250は、固体又は液体の原料を加熱して気化原料を生成し、生成した気化原料を基板処理装置300のインジェクタ131〜133に供給するための装置である。気化原料供給装置250は、加熱タンク160と、流量制御器(マスフローコントローラ)171〜173と、元配管180と、分岐配管181〜183と、ケーシング220とを備える。
【0015】
加熱タンク160は、固体又は液体の原料を貯留した状態でこれを加熱して気化し、気化原料を生成する気化原料生成手段である。加熱タンク160は、貯留タンク161と、ヒータ162とを備える。
【0016】
貯留タンク161は、固体又は液体の原料210を貯留する手段である。よって、貯留タンク161は、固体又は液体の状態の原料210を貯留可能な容器として構成される。貯留タンク161は、加熱により原料210が気化し、気化原料が生成された場合には、気化空間163に気化原料を留めておく必要があるため、密閉可能な容器として構成される。また、貯留タンク161は、ヒータ162により加熱されるため、十分な耐熱性を有する材料で構成される。
【0017】
なお、原料210は、気化した状態で成膜処理等の基板処理の原料となり得る種々の固体又は液体の材料を用いることができ、例えば、シリコン含有膜の成膜処理に用いる場合、3DMAS(Tris(dimethylamino)silane、トリスジメチルアミノシラン)等を用いることができる。なお、固体には紛体も含まれる。
【0018】
ヒータ162は、貯留タンク161を外側から加熱し、貯留した原料210を気化させるための加熱手段である。ヒータ162は、原料210を加熱して気化させ、気化原料を生成することが可能であれば、種々の構造を採り得る。例えば、ヒータ162は、電熱線から構成されてもよいし、プレート状の加熱プレートで構成されてもよい。
【0019】
流量制御器171〜173は、供給する気化原料の流量を設定して調整するための流量調整手段である。流量制御器171〜173は、複数系統設けられ、
図1においては、3系統に設けられている。このように、複数の流量制御器171〜173を設けることにより、基板処理装置260の処理容器1内に処理ガスとして供給する気化原料の流量を複数系統で制御することができ、複数の領域で異なる流量を設定する場合に個々に流量制御を行うことができる。
【0020】
流量制御器171〜173は、各々に対応する分岐配管181〜183を介して元配管180に接続され、元配管180が加熱タンク160の上面に接続されている。加熱タンク160内で気化した気化原料は、加熱タンク160内の上部の気化空間163に充満するが、元配管180が加熱タンク160の上面に接続されているため、気化原料は元配管180から流出する。元配管180には、複数系統に分岐した分岐配管181〜183が接続されているため、気化原料は各分岐配管181〜183に分岐して流れ、各流量制御器171〜173により各系統の流量が制御され、気化原料供給装置250の外側に設けられた分岐配管181〜183を経て処理容器1内に供給される。
【0021】
ここで、流量制御器171〜173は、ガスの流量が調整できれば、種々の流量制御器(マスフローコントローラ)を用いることができる。流量制御器171〜173は、同じ流量制御器171〜173を用いる必要は無く、各系統の用途に応じて互いに異なる流量制御器171〜173を使用してもよい。特に、各系統で設定流量が大きく異なる場合、設定流量に応じて能力、つまり最大設定流量の異なる流量制御器171〜173を用いるようにしてもよい。一般的に、流量制御器171〜173で精度良く調整できる流量は、最大設定流量の10%程度以上までであり、最大設定流量の10%未満の小さな流量は精度良く調整することが困難である。よって、設定流量自体が小さい系統には、最大設定流量の小さい流量制御器171〜173を用い、設定流量が大きい系統には、それに応じて最大設定流量の大きい流量制御器171〜173を用いることが好ましい。各系統の設定流量に応じて、調整すべき流量が最大設定流量の10%未満とならないように(10%以上となるように)流量制御器171〜173を選択すれば、非常に精度の高い流量制御を行うことができる。
【0022】
また、複数の分岐配管181〜183は、元配管180から分岐した構成となっているが、複数の分岐配管181〜183の各々が直接的に加熱タンク160に接続される構成であってもよい。
【0023】
なお、加熱タンク160、流量制御器171〜173、元配管180及び分岐配管181〜183は、ケーシング220に収容されて一体的に構成されてもよい。各部品をケーシング220に収納することにより、気化原料供給装置250の設置及び移動を容易に行うことができる。
【0024】
ここで、流量制御器171〜173は、複数設けられるが、加熱タンク160は1個設けるだけでよい。気化原料を複数系統に分けた個別供給の場合、複数系統の各々が加熱タンク160及び流量制御器181〜183を備えた構成とすることも考えられるが、そのような構成とすると、加熱タンク160に要するスペースが大きくなり、気化原料制御装置が大きくなり過ぎてしまう。また、加熱タンク160が複数必要になるので、コストも増加してしまう。
【0025】
本実施形態に係る気化原料供給装置250においては、加熱タンク160は1個のみとし、流量制御器171〜173のみを複数個としたので、省スペース化を図りつつ、複数領域での正確な流量制御を行うことが可能となる。
【0026】
基板処理装置300は、基板に成膜等の処理を施すための装置であり、処理容器1と、インジェクタ131〜133とを少なくとも備える。処理容器1は、処理対象となる基板を収容するための容器である。なお、
図1においては、基板として半導体ウエハWが用いられている。以下、処理対象の基板としてウエハWを用いた例を挙げて説明する。
【0027】
インジェクタ131〜133は、ウエハWに処理ガスを供給するための処理ガス供給手段である。インジェクタ131〜133は、ノズル形状に構成される。ノズル形状は、円筒形状であってもよいし、四角柱等の角柱形状であってもよい。よって、インジェクタ131〜133のことをガスノズル131〜133と呼んでもよい。なお、本実施形態においては、処理ガスには、固体又は液体の原料210を気化して生成された気化原料を用いる。
【0028】
インジェクタ131〜133は、処理容器1内の複数の領域、又はウエハW上の複数の領域に気化原料を供給すべく、処理容器1内の複数の領域毎に1個ずつ対応して設けられる。よって、インジェクタ131〜133は全体としては複数設けられる。複数のインジェクタ131〜133は、各々1つのガス導入口141〜143と、少なくとも1つのガス吐出孔151〜153を有する。通常、ガス吐出孔151〜153は、各領域に複数個ずつ設けられる。
図1においては、模式的に各インジェクタ131〜133に3個ずつ設けられた例が示されている。実際には、1個のインジェクタ131〜133の各々に数十個設けられる場合が多い。
【0029】
複数のインジェクタ131〜133は、気化原料供給装置250の複数の流量制御器171〜173の各々に1対1に対応して設けられる。よって、各々のインジェクタ131〜133毎に対応する流量制御器171〜173により流量の制御が可能である。なお、
図1の例においては、流量制御器171にインジェクタ131、流量制御器172にインジェクタ132、流量制御器173にインジェクタ133が各々対応している。
【0030】
図1において、複数のインジェクタ131〜133同士は、処理容器1内の異なる領域に各々設けられており、ウエハW上の異なる領域に気化原料を供給可能に構成されている。処理容器1等を含めた基板処理装置300の構造により、ウエハWの特定の領域への基板処理が不足したり過大になったりする場合がある。そのような場合、気化原料の流量を領域毎に異なる設定とすることにより、過不足を是正し、ウエハWの全面でより均一性の高い基板処理を行うことが可能となるが、本実施形態に係る気化原料供給装置及び基板処理装置は、そのような調整を行うのに非常に適している。
【0031】
図1においては、流量の大小を矢印の大きさで模式的に示しており、
図1に示される通り、左側のインジェクタ133からの流量を最も小さく設定し、右側のインジェクタ131からの流量を最も大きく設定し、中央のインジェクタ132からの流量はそれらの中間に設定している場合について説明する。
【0032】
この場合、当然ながら、インジェクタ133に接続されている流量制御器173の流量設定値が最も小さく、インジェクタ131に接続されている流量制御器171の流量設定値が最も大きい。そして、インジェクタ132に接続されている流量制御器172の流量設定値はそれらの中間値である。ここで、インジェクタ131〜133の各々の設定流量を変更しても、インジェクタ131〜133は各流量制御器171〜173に個別に流星制御されているため、任意の流量に設定変更が可能である。上述のように、インジェクタが1本で、領域毎にガス吐出孔の配置や大きさを変えて設定している場合には、設定流量が変化すると各領域間の関係が崩れてしまい、流量変更への対応が不十分であったが、本実施形態に係る気化原料供給装置250及び基板処理装置300では、流量変更にも何ら問題無く対応可能である。
【0033】
また、インジェクタ171〜173のガス吐出孔151〜153の精度に問題があり、各領域における流量比が設計通りで無い場合であっても、本実施形態に係る気化原料供給装置250及び基板処理装置300では、最終的な出力であるガス吐出孔151〜153から供給される気化原料の流量を制御可能であるので、何ら問題は生じない。
【0034】
更に、ガス吐出孔151〜153に詰まり等が生じ、流量が変化した場合であっても、それに応じて流量制御器171〜173で最終出力となる流量が一定となるように流量を調整すればよいので、そのような経時的変化にも問題無く対応可能である。
【0035】
このように、複数系統のインジェクタ131〜133の各々に対応する流量制御器171〜173を1対1で対応させて設けることにより、種々の変化に柔軟に対応し、所望の流量で気化原料を供給することができる。
【0036】
なお、
図1においては、3系統の例が挙げられているが、複数系統であれば、用途に応じて何系統にもすることができる。
【0037】
また、
図1においては、複数のインジェクタ131〜133同士で重なる領域が無く、総て異なる領域に気化原料を供給する構成となっているが、例えば、隣接する領域同士が一部重なるように複数のインジェクタ131〜133を配置してもよい。
【0038】
なお、
図1においては、基板処理装置300の最小限の構成要素が示されているが、ウエハWを載置する載置台や、処理容器1内を真空引きする真空排気手段等、基板処理に必要な種々の構成要素を必要に応じて備えてよい。
【0039】
次に、
図2を用いて、気化原料供給装置250の構成をより詳細に説明する。
図2は、気化原料供給装置250の一例をより詳細に示した図である。
【0040】
図2に示されるように、加熱タンク160と、複数の流量制御器171〜173と、元配管180と、分岐配管181〜183がケーシング220内に収容されている構成は
図1と同様であるが、更に原料配管191と、パージ配管192と、バルブ201〜203とがケーシング220内に設けられている点で、
図1と異なっている。
【0041】
原料配管201は、加熱タンク160に原料210を供給するための配管である。原料210が液体原料の場合には、原料配管201を用いて加熱タンク160内に原料210を供給することができる。
図2においては、3DMASを原料210とした例が示されている。また、バルブ201は、原料配管201の開閉及び流量調整を行うためのバルブである。
【0042】
パージ配管192は気化原料を処理容器1に供給していないときに、元配管180及び分岐配管181〜183にパージガスを供給してこれらを清浄化するために用いられる配管である。パージガスは、Ar、He等の希ガスや、N
2等の不活性ガスを用途に応じて用いることができる。
図2においては、N
2をパージガスとした例が示されている。また、バルブ202は、パージ配管192の開閉及び流量調整を行うためのバルブであり、基板処理を実施しているときには閉とされる。基板処理が終了し、気化原料が処理容器1に供給されていないときに開とされる。
【0043】
バルブ203は、元配管180の開閉及び流量調整を行うためのバルブである。加熱タンク160から流量制御器171〜173に気化原料を供給するとき、つまり基板処理中に開とされ、基板処理の待機中や停止中には閉とされる。
【0044】
バルブ201〜203は、手動バルブであってもよいし、電磁バルブであってもよいが、ケーシング220の外部から操作が可能なように、電磁バルブ又はエアオペレートバルブが設けられていることが好ましい。
【0045】
他の構成要素については、
図1で説明した通りであるので、対応する構成要素に同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0046】
〔第2の実施形態〕
図3は、本発明の第2の実施形態に係る基板処理装置301の一例を示した図である。なお、気化原料供給装置250については、第1の実施形態に係る気化原料供給装置250と同一であるので、各構成要素に同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0047】
第2の実施形態に係る基板処理装置301では、インジェクタ130の構成が実施形態1に係る複数のインジェクタ131〜133と異なっている。第2の実施形態に係る基板処理装置301では、複数のインジェクタ131〜133ではなく、1本のインジェクタ130が用いられている。1本のインジェクタ130は、その内部において、複数の隔壁121、122が設けられ、インジェクタ130内を3つの室131a〜133aに分割している。更に、隔壁121、122にはオリフィス111、112が設けられ、3つの室131a〜133aは連通可能に構成されている。
【0048】
第1の実施形態と同様、室133aに最小流量で気化原料が供給され、室131aに最大流量で気化原料が供給され、室132aにそれらの中間の流量で気化原料が供給された例を挙げて説明する。
【0049】
この場合、当然に各室131a〜133a間で流量に差を設けて対応する流量制御器171〜173から気化原料を供給するが、室131aと室132aとを仕切る隔壁121にオリフィス111、室132aと室133aとを仕切る隔壁122にオリフィス112が形成されているため、室131aに流入した気化原料はオリフィス111を介して室132aに流入可能であり、室132aに流入した気化原料はオリフィス112を介して室133aに流入可能である。よって、ガス吐出孔151〜153から供給される気化原料は、3つの領域で階段状に変化するのではなく、全領域でなだらかに流量が分布した状態で供給される。
図3のガス吐出孔151〜153の下方の矢印がそのなだらかな分布を模式的に示している。つまり、各ガス導入口141〜143から供給される流量は、3つの矢印で示されるように所定の3段階の流量であるが、複数のガス吐出孔151〜153から吐出される気化原料は、10段階の矢印で示されるように、もっとなめらかな流量比となる。
【0050】
このように、第2の実施形態に係る基板処理装置301によれば、1本のインジェクタ130内部を隔壁121、122により各領域に応じた室131a〜133aに区切るとともに、隔壁121、122に連通口として機能するオリフィス111、112を設けることにより、なめらかな流量差を設けて気化原料をウエハWに供給することができる。
【0051】
〔第3の実施形態〕
以下の実施形態では、第1及び第2の実施形態において説明した気化原料供給装置250及び基板処理装置300、301を、より具体的な基板処理装置に適用する例について説明する。第3の実施形態に係る基板処理装置302は、ALD(Atomic Layer Deposition、原子層成膜方法)成膜装置として構成されており、ALD法により成膜を行う装置である。
【0052】
図4は、本発明の第3の実施形態に係る基板処理装置の一例を示した図である。
図4において、基板処理装置302の処理容器1内の内部構造が示されている。なお、処理容器1は、第1及び第2の実施形態に係る基板処理装置300、301の処理容器1と同様の形状であるので、同一の参照符号を用いる。
【0053】
図4においては、処理容器1から天板を外したときに、処理容器1の側面及び底面を構成する容器本体12が示されている。容器本体12内の底面より上方に円盤状の回転テーブル2が設けられている。
【0054】
回転テーブル2の表面には、
図4に示すように回転方向(周方向)に沿って複数(図示の例では5枚)ウエハWを載置するための円形状の凹部24が設けられている。なお
図4には便宜上1個の凹部24だけにウエハWを示す。この凹部24は、ウエハWの直径(例えば300mm)よりも僅かに例えば4mm大きい内径と、ウエハWの厚さにほぼ等しい深さとを有している。したがって、ウエハWを凹部24に載置すると、ウエハWの表面と回転テーブル2の表面(ウエハWが載置されない領域)とが同じ高さになる。
【0055】
回転テーブル2の上方には、各々例えば石英からなるインジェクタ131〜133、反応ガスノズル32、及び分離ガスノズル41,42が配置されている。図示の例では、処理容器1の周方向に間隔をおいて、搬送口15(後述)から時計回り(回転テーブル2の回転方向)に分離ガスノズル41、インジェクタ131〜133、分離ガスノズル42、及び反応ガスノズル32の順に配列されている。インジェクタ131〜133は、第1の実施形態で説明した複数の領域毎に別個独立に設けられたインジェクタ131〜133である。
図4においては、回転テーブル2の半径方向において、回転テーブル2の外周側の領域にインジェクタ131、回転テーブル2の中心側(内側)の領域にインジェクタ133、回転テーブル2の半径方向の真中の領域にインジェクタ132が設けられている。回転テーブル2の回転により、回転テーブル2上に載置されたウエハWが回転方向に沿って移動し、インジェクタ131〜133のガス吐出孔151〜153から気化原料を吐出することにより、複数枚(
図4では5枚)のウエハWの表面に、順次気化原料が供給される。よって、3つのインジェクタ131〜133で、ウエハWの直径全体をカバーすることにより、ウエハWの全面に気化原料は供給される。インジェクタ131〜132は、基本的に回転テーブル2の半径方向において、外周側、中央領域、中心側の異なる領域を重ならずにカバーしているが、隣接するインジェクタ131、132同士、及びインジェクタ132、133同士では、端部の領域が互いに重なっている。このような重なる部分を設けることにより、ウエハW上に気化原料が供給されない領域を存在させず、ウエハWの全面に気化原料を供給できることになる。
【0056】
気化原料の各インジェクタ131〜133への供給は、気化原料供給装置250から、分岐配管181〜183を介して、各々ガス導入口141〜143に供給することにより行われる。
図1及び3に示したように、処理容器1の上面から分岐配管181〜183が導入され、各インジェクタ131〜133の各ガス導入口141〜143に気化原料が導入される。
【0057】
なお、回転テーブル2が回転すると、外周側の方が中心側より移動距離が大きいため、外周側の移動速度が中心側よりも速くなる。よって、回転テーブル2の外周側では、気化原料がウエハWに吸着する時間が十分でない場合があり、外周側の流量を内周側の流量よりも多く設定する場合がある。本実施形態においても、インジェクタ131、インジェクタ132、インジェクタ133の順で流量を大きく設定しており、そのような傾向に合致した例を挙げている。
【0058】
インジェクタ131〜133以外の他のノズル32、41、及び42は、それぞれの基端部であるガス導入ポート32a、41a、及び42aを容器本体12の外周壁に固定することにより、処理容器1の外周壁から処理容器1内に導入され、容器本体12の半径方向に沿って回転テーブル2に対して平行に伸びるように取り付けられている。
【0059】
これらのノズル32、41、42には、各々ガス供給源、及び必要に応じて流量制御器が接続され、プロセスに応じて種々のガスが供給されてよい。
【0060】
例えば、反応ガスノズル32には、3DMASを酸化してSiO
2を生成するために、オゾン(O
3)ガスを供給する供給源(不図示)が開閉バルブ及び流量調整器(ともに不図示)を介して接続されてもよい。
【0061】
また、分離ガスノズル41、42には、ArやHeなどの希ガスや窒素ガスなどの不活性ガスの供給源が開閉バルブ及び流量調整器(ともに不図示)を介して接続されてもよい。
図4においては、不活性ガスとしてN
2ガスが使用された例が示されている。
【0062】
図5は、インジェクタ131〜133から反応ガスノズル32まで回転テーブル2の同心円に沿った処理容器1の断面を示している。
図5に示されるように、インジェクタ131〜133には、処理容器1の天板11を貫通して分岐配管181〜183が接続され、ガス導入口141〜143に気化原料が供給される。各インジェクタ131〜133の下面には、ガス吐出孔151〜153が形成されている。
【0063】
また、反応ガスノズル32には、回転テーブル2に向かって下方に開口する複数のガス吐出孔33が、反応ガスノズル32の長さ方向に沿って配列されている。インジェクタ131〜133の下方領域は、3DMASガス等の気化原料をウエハWに吸着させるための第1の処理領域P1となる。反応ガスノズル32の下方領域は、第1の処理領域P1においてウエハWに吸着された気化原料を酸化させる第2の処理領域P2となる。
【0064】
図4及び
図5を参照すると、処理容器1内には2つの凸状部4が設けられている。凸状部4は、頂部が円弧状に切断された略扇型の平面形状を有し、本実施形態においては、内円弧が突出部5(後述)に連結し、外円弧が、処理容器1の容器本体12の内周面に沿うように配置されている。図示のとおり、凸状部4は、天板11の裏面に取り付けられている。このため、処理容器1内には、凸状部4の下面である平坦な低い天井面44(第1の天井面)と、この天井面44の周方向両側に位置する、天井面44よりも高い天井面45(第2の天井面)とが存在している。
【0065】
また、
図5に示すとおり、凸状部4には周方向中央において溝部43が形成されており、溝部43は、回転テーブル2の半径方向に沿って延びている。溝部43には、分離ガスノズル42が収容されている。もう一つの凸状部4にも同様に溝部43が形成され、ここに分離ガスノズル41が収容されている。なお、分離ガスノズル42にもガス吐出孔42hが形成されている。
【0066】
高い天井面45の下方の空間には、インジェクタ131〜133及び反応ガスノズル32がそれぞれ設けられている。これらのインジェクタ131〜133及び反応ガスノズル31、32は、天井面45から離間してウエハWの近傍に設けられている。
【0067】
低い天井面44は、狭隘な空間である分離空間Hを回転テーブル2に対して形成している。分離ガスノズル42からN
2ガスが供給されると、このN
2ガスは、分離空間Hを通して空間481及び空間482へ向かって流れる。このとき、分離空間Hの容積は空間481及び482の容積よりも小さいため、N
2ガスにより分離空間Hの圧力を空間481及び482の圧力に比べて高くすることができる。すなわち、空間481及び482の間において、分離空間Hは圧力障壁を提供する。したがって、第1の領域P1からの3DMAS等の気化原料と、第2の領域P2からのO
3ガスとが分離空間Hにより分離される。よって、処理容器1内において気化原料とO
3ガスとが混合して反応することが抑制される。
【0068】
図6は、
図4のI−I'線に沿った断面図であり、天井面45が設けられている領域を示している断面図である。
【0069】
図6に示されるように、基板処理装置は、ほぼ円形の平面形状を有する扁平な処理容器1と、この処理容器1内に設けられ、処理容器1の中心に回転中心を有する回転テーブル2と、を備えている。処理容器1は、有底の円筒形状を有する容器本体12と、容器本体12の上面に対して、例えばOリングなどのシール部材13(
図1)を介して気密に着脱可能に配置される天板11とを有している。
【0070】
回転テーブル2は、中心部にて円筒形状のコア部21に固定され、このコア部21は、鉛直方向に伸びる回転軸22の上端に固定されている。回転軸22は処理容器1の底部14を貫通し、その下端が回転軸22(
図1)を鉛直軸回りに回転させる駆動部23に取り付けられている。回転軸22及び駆動部23は、上面が開口した筒状のケース体20内に収納されている。このケース体20はその上面に設けられたフランジ部分が処理容器1の底部14の下面に気密に取り付けられており、ケース体20の内部雰囲気が外部雰囲気から隔離される。
【0071】
回転テーブル2と容器本体の内周面との間において、空間481と連通する第1の排気口610と、空間482と連通する第2の排気口620とが形成されている。第1の排気口610及び第2の排気口620は、
図1に示すように各々排気管630を介して真空排気手段である例えば真空ポンプ640に接続されている。なお、排気管630には、圧力調整器650が設けられている。
【0072】
回転テーブル2と処理容器1の底部14との間の空間には、
図1及び
図5に示すように加熱手段であるヒータユニット7が設けられ、回転テーブル2を介して回転テーブル2上のウエハWが、プロセスレシピで決められた温度(例えば450℃)に加熱される。回転テーブル2の周縁付近の下方側には、回転テーブル2の下方の空間へガスが侵入するのを抑えるために、リング状のカバー部材71が設けられている。
【0073】
図6に示すように、ヒータユニット7が配置されている空間よりも回転中心寄りの部位における底部14は、回転テーブル2の下面の中心部付近におけるコア部21に接近するように上方側に突出して突出部12aをなしている。この突出部12aとコア部21との間は狭い空間になっている。また、底部14を貫通する回転軸22の貫通孔の内周面と回転軸22との隙間が狭くなっていて、これら狭い空間はケース体20に連通している。そしてケース体20にはパージガスであるN
2ガスを狭い空間内に供給してパージするためのパージガス供給管72が設けられている。さらに、処理容器1の底部14には、ヒータユニット7の下方において周方向に所定の角度間隔で、ヒータユニット7の配置空間をパージするための複数のパージガス供給管73が設けられている(
図6には一つのパージガス供給管73を示す)。
【0074】
また、処理容器1の天板11の中心部には分離ガス供給管51が接続されていて、天板11とコア部21との間の空間52に分離ガスであるN
2ガスを供給するように構成されている。
【0075】
更に、処理容器1の側壁には、
図4に示すように、外部の搬送アーム10と回転テーブル2との間で基板であるウエハWの受け渡しを行うための搬送口15が形成されている。
【0076】
また、本実施形態による基板装置には、
図1に示すように、装置全体の動作のコントロールを行うためのコンピュータからなる制御部100が設けられており、この制御部100のメモリ内には、制御部100の制御の下に、後述する成膜方法を成膜装置に実施させるプログラムが格納されている。このプログラムは、ハードディスク、コンパクトディスク、光磁気ディスク、メモリカード、フレキシブルディスクなどの媒体102に記憶されており、所定の読み取り装置により記憶部101へ読み込まれ、制御部100内にインストールされる。
【0077】
このように、気化原料供給装置250を、成膜処理を行う基板処理装置302に好適に利用することができ、これにより、インジェクタ131〜133の設けられた処理容器1内の各領域の気化原料の流量を正確に制御し、面内均一性に優れた成膜処理を行うことができる。
【0078】
〔第4の実施形態〕
図7は、本発明の第4の実施形態に係る基板処理装置303の一例を示した図である。
図7において、気化原料供給装置250に接続されたインジェクタ130が1本となり、インジェクタ130は、3つの領域となる室131〜133を有している。
【0079】
図8は、インジェクタ130の側断面図である。
図8に示されるように、インジェクタ130も内部は、隔壁121、122により分割され、3つの室131a、132a、133aに分割されている。隔壁121、122には、連通口となるオリフィス111、112が形成され、各室131a〜132a同士が連通可能に構成されている。つまり、これは、第2の実施形態に係る基板処理装置301を具体的な装置に適用した例である。このように、第4の実施形態に係る基板処理装置303によれば、処理容器1内の各領域に対し、なめらかな流量分布で気化原料を供給することができ、ALD成膜処理を行うことができる。
【0080】
なお、他の構成要素については、第3の実施形態に係る基板処理装置302と同様であるので、その説明を省略する。
【0081】
〔第5の実施形態〕
図9は、本発明の第5の実施形態に係る基板処理装置のインジェクタ130aの一例を示した図である。第5の実施形態に係る基板処理装置は、
図7に示した第4の実施形態に係る基板処理装置303と同様の平面構成を有するが、インジェクタ130aの構造のみが異なっている。
【0082】
第5の実施形態に係る基板処理装置のインジェクタ130aは、
図9に示されるように、隔壁121a、122aにオリフィス111、112が形成されておらず、完全に室131a〜133aが分離されている点で、第4の実施形態に係る基板処理装置303のインジェクタ130と異なっている。
【0083】
このように、隔壁121a、122aにオリフィス111,112を設けず、各室131a〜133aを完全に分離する構成としてもよい。かかる構成によれば、3本の別個独立のインジェクタ131〜133を設けるよりも省スペース及び低コストでインジェクタ130aを構成することができる。
【0084】
なお、他の構成要素については、第3及び第4の実施形態に係る基板処理装置302と同様であるので、その説明を省略する。
【0085】
〔第6の実施形態〕
図10は、本発明の第6の実施形態に係る基板処理装置304の一例を示した図である。第6の実施形態に係る基板処理装置304においては、インジェクタ130bが1本である点は第4及び第5の実施形態に係る基板処理装置303と共通するが、ガス導入ポート1130が1個だけ容器本体12の外周に設けられている点で、第4及び第5の実施形態に係る基板処理装置303と異なっている。
【0086】
この場合、気化原料は1箇所のガス導入ポート1130から供給され、インジェクタ130bは、容器本体12の外周壁から処理容器1内に導入され、回転テーブル2と平行に外周側から中心側に向かって水平に延びて構成される。
【0087】
図11は、インジェクタ130bの一例の断面構成を示した図である。
図11に示されるように、インジェクタ130の隔壁121b、121c、122b、122cは、インジェクタ130bの長手方向に垂直に存在して各室131b〜133bを長手方向に沿って分割する部分1210、1220に加えて、長手方向に沿って延び、三重管等の同心管の構造を有し、インジェクタ130の径方向に沿って各室131b〜133bを分割する部分1211、1221をも有している。これに伴い、各室131b〜133bのガス導入口141a〜143aは、インジェクタ130bの長手方向において移動しており、長手方向の異なる位置に設けられている。具体的には、一番右奥(先端側)の室131aのガス導入口141aは右奥に移動し、2番目の室132aのガス導入口141bは真中よりやや左側(入口側)にあり、入口側の室133aのガス導入口143aはインジェクタ130bの全体のガス導入口と同じ最も入口側にある。
【0088】
このように、同心管状の部分1211、1221を有する隔壁121b、122bを用いて、インジェクタ130bの内部を三重管に構成してもよい。この場合は、他のノズル32、41、42と同様に、容器本体12の外周壁から気化原料を導入することができる。
【0089】
他の構成要素については、第3乃至第5の実施形態に係る基板処理装置302、303と同様であるので、その説明を省略する。
【0090】
〔第7の実施形態〕
図12は、第7の実施形態に係る基板処理装置のインジェクタ130cの一例を示した図である。第7の実施形態に係る基板処理装置は、
図10に示した第6の実施形態に係る基板処理装置304と同様の平面構成を有するが、インジェクタ130cの構造のみが異なっている。
【0091】
第7の実施形態に係る基板処理装置のインジェクタ130cは、
図12に示されるように、隔壁121c、122cは、各室131b〜133bを長手方向に沿って分割する部分1213、1223と、長手方向に沿って延びるとともに三重管等の同心管の構造を有し、インジェクタ130cの径方向に沿って各室131b〜133bを分割する部分1214、1224を有している点では、第6の実施形態に係る基板処理装置304のインジェクタ130bと共通する。一方、隔壁121c、122cの径方向に沿って延びる部分1213、1223にオリフィス111a、112aが形成されており、室131b〜133bが連通可能に構成されている点で、第6の実施形態に係る基板処理装置304のインジェクタ130bと異なっている。
【0092】
このように、隔壁121c、122cの一部にオリフィス111a、112aを設け、各室131b〜133bを連通する構成としてもよい。かかる構成によれば、3本の別個独立のインジェクタ131c〜133cを設けるよりも省スペース及び低コストでインジェクタ130cを構成することができることに加えて、ガス吐出孔151〜153からの吐出量をなめらかに分布させることができ、より高精度の流量制御を行うことができる。なお、各室131c〜133c同士が連通可能に構成されていれば、オリフィス111a、112aの位置は問わない。
【0093】
なお、他の構成要素については、第3乃至第6の実施形態に係る基板処理装置302、303と同様であるので、その説明を省略する。
【0094】
〔第8の実施形態〕
図13は、本発明の第8の実施形態に係る基板処理装置の一例を示した図である。第8の実施形態に係る基板処理装置は、気化原料供給装置250を縦型熱処理装置に適用した例について説明する。
【0095】
図13は、本発明の第8の実施形態に係る基板処理装置の一例を示す全体構成図である。図示のとおり、基板処理装置305は、ウエハWを複数枚収容することができる処理容器422を有している。この処理容器422は有天井の円筒体形状を有する縦長の内管424と、有天井の円筒体形状を有する縦長の外管426とにより構成される。外管426は、内管424の外周と外管426の内周との間に所定の間隔をおいて内管424を取り囲むように配置されている。また、内管424と外管426とは共に例えば石英により形成されている。
【0096】
外管426の下端部には、円筒体形状を有する例えばステンレススチール製のマニホールド428がOリング等のシール部材430を介して気密に接続されており、このマニホールド428により外管426の下端部が支持されている。マニホールド428は、図示しないベースプレートによって支持されている。またマニホールド428の内壁には、リング形状を有する支持台432が設けられており、この支持台432により、内管424の下端部が支持される。
【0097】
処理容器422の内管424内には、ウエハ保持部としてのウエハボート434が収容されている。ウエハボート434には、複数のウエハWが所定のピッチで保持される。本実施形態では、300mmの直径を有する、例えば50〜100枚程度のウエハWが略等ピッチでウエハボート434により多段に保持される。ウエハボート434は、昇降可能であり、マニホールド428の下部開口を通して、処理容器422の下方から内管424内へ収容され、内管424から取り出される。ウエハボート434は例えば石英より作製される。
【0098】
またウエハボート434が収容されているときには、処理容器422の下端であるマニホールド428の下部開口は、例えば石英やステンレス板よりなる蓋部436により密閉される。処理容器422の下端部と蓋部436との間には、気密性を維持するために例えばOリング等のシール部材438が介在される。ウエハボート434は、石英製の保温筒440を介してテーブル442上に載置されており、このテーブル442は、マニホールド428の下端開口を開閉する蓋部436を貫通する回転軸444の上端部に支持される。
【0099】
回転軸444と、蓋部436における回転軸444が貫通する孔との間には、例えば磁性流体シール446が設けられ、これにより回転軸444は気密にシールされつつ回転可能に支持される。回転軸444は、例えばボートエレベータ等の昇降機構448に支持されたアーム450の先端に取り付けられており、ウエハボート434及び蓋部436等を一体的に昇降できる。なお、テーブル442を蓋部436側へ固定して設け、ウエハボート434を回転させることなく、ウエハWに対して成膜処理を行うようにしてもよい。
【0100】
また、処理容器422の側部には、処理容器422を取り囲む例えばカーボンワイヤ製のヒータよりなる加熱部(図示せず)が設けられ、これにより、この内側に位置する処理容器422及びこの中のウエハWが加熱される。
【0101】
また、基板処理装置305には、気化原料を供給する気化原料供給装置250と、反応ガスを供給する反応ガス供給源456と、パージガスとして不活性ガスを供給するパージガス供給源458とが設けられている。
【0102】
気化原料供給装置250は、例えば3DMASなどの液体又は固体の原料を貯留して気化し、流量制御器171〜173及び開閉バル
ブが設けられた元配管180及び分岐配管181〜183を介してインジェクタ130dに接続されている。インジェクタ130dは、マニホールド428を気密に貫通し、処理容器422内でL字形状に屈曲して内管424内の高さ方向の全域に亘って延びている。インジェクタ130dには、所定のピッチで多数のガス吐出孔151〜153が形成されており、ウエハボート434に支持されたウエハWに対して横方向から原料ガスを供給することができる。インジェクタ130dは、例えば石英で作製することができる。
【0103】
反応ガス供給源456は、例えばアンモニア(NH
3)ガスを貯留し、流量制御器及び開閉バルブ(図示せず)が設けられた配管を介してガスノズル464に接続されている。ガスノズル464は、マニホールド428を気密に貫通し、処理容器422内でL字形状に屈曲して内管24内の高さ方向の全域に亘って延びている。ガスノズル464には、所定のピッチで多数のガス噴射孔464Aが形成されており、ウエハボート434に支持されたウエハWに対して横方向から反応ガスを供給することができる。ガスノズル464は、例えば石英で作製することができる。
【0104】
パージガス供給源458は、パージガスを貯留し、流量制御器及び開閉バルブ(図示せず)が設けられた配管を介してガスノズル468に接続されている。ガスノズル468は、マニホールド428を気密に貫通し、処理容器422内でL字形状に屈曲して内管424内の高さ方向の全域に亘って延びている。ガスノズル468には、所定のピッチで多数のガス噴射孔468Aが形成されており、ウエハボート434に支持されたウエハWに対して横方向からパージガスを供給することができる。ガスノズル468は、例えば石英で作製することができる。また、パージガスとしては、例えばAr、He等の希ガスや窒素ガスなどの不活性ガスを用いることができる。
【0105】
なお、インジェクタ130d及び各ガスノズル464、468は、内管424内の一側に集合させて設けられており(図示例ではスペースの関係よりガスノズル468を他のインジェクタ130d及びガスノズル464に対して反対側に記載している)、このインジェクタ130d及び各ガスノズル464、468に対して対向する内管424の側壁には複数のガス流通孔472が上下方向に沿って形成されている。このため、インジェクタ130d、及びガスノズル464、468から供給されたガスは、ウエハ間を通って水平方向に流れ、ガス流通孔472を通って内管424と外管426との間の間隙474に案内される。
【0106】
また、マニホールド428の上部側には、内管424と外管426との間の間隙474に連通する排気口476が形成されており、この排気口476には処理容器422を排気する排気系478が設けられている。
【0107】
排気系478は、排気口476に接続される配管480を有しており、配管480の途中には、弁体の開度が調整可能で、その弁体の開度を変えることにより処理容器422内の圧力を調整する圧力調整弁480Bと、真空ポンプ482とが順次設けられている。これにより、処理容器422内の雰囲気を圧力調整しつつ所定の圧力まで排気することができる。
【0108】
図14は、インジェクタ130dの一例の構成を示した断面図である。
図14に示されるように、縦長のインジェクタ130dは、内部が隔壁121c、122cにより3個の室131c〜133cに分割されている。隔壁121c、122cには、オリフィスは形成されておらず、各室131c〜133cは完全に分離されている。隔壁121c、122cは、インジェクタ130dの長手方向に垂直な部分1215、1225と、長手方向に平行な部分1216、1226とから構成され、長手方向に平行な部分1215、1225は同心状に延びて全体として三重管を構成している。
【0109】
各室131c〜133cのガス導入口141b〜143bの位置は、鉛直方向の高い位置からガス導入口141b、142b、143bの順にインジェクタ130dの長手方向(鉛直方向)に沿って配置されている。
【0110】
ガス吐出口151〜153は、鉛直方向に沿って配列され、内側にあるウエハWの方を向いている点を除けば、今までの構成と同様である。
【0111】
このように、縦型の熱処理装置においても、本実施形態に係る気化原料供給装置250を用いて、高さ方向において気化原料の流量比を高精度に調整し、積層されたウエハW間の面内均一性を高めることができる。
【0112】
〔第9の実施形態〕
図15は、本発明の第9の実施形態に係る基板処理装置のインジェクタ130eの一例を示した図である。第9の実施形態に係る基板処理装置は、
図13に示した第8の実施形態に係る基板処理装置305と同様の全体構成を有するが、インジェクタ130eの構造のみが異なっている。
【0113】
第9の実施形態に係る基板処理装置のインジェクタ130eは、
図15に示されるように、隔壁121d、122dの一部にオリフィス111b、112bが形成されており、室131c〜133cが連通可能に構成されている点で、第8の実施形態に係る基板処理装置305のインジェクタ130dと異なっている。
【0114】
このように、隔壁121d、122dの一部にオリフィス111b、112bを各々設け、各室131c〜133cを連通する構成としてもよい。かかる構成によれば、3本の別個独立のインジェクタ131c〜133cを設けるよりも省スペース及び低コストでインジェクタ130eを構成することができることに加えて、ガス吐出孔151〜153からの吐出量をなめらかに分布させることができ、より高精度の流量制御を行うことができる。なお、各室131c〜133c同士が連通可能に構成されていれば、オリフィス111b、112bの位置は問わない。
【0115】
なお、他の構成要素については、第8の実施形態に係る基板処理装置305と同様であるので、その説明を省略する。
【0116】
〔第10の実施形態〕
図16は、本発明の第10の実施形態に係る基板処理装置のインジェクタ131d〜133dの一例を示した図である。第10の実施形態に係る基板処理装置は、
図13に示した第8の実施形態に係る基板処理装置305と類似した全体構成を有するが、
図16に示されるように、気化原料を供給するインジェクタ131d〜133dが複数本に増加するとともに、各インジェクタ131d〜133dが処理容器422の高さ方向において異なる領域に気化原料を供給可能なようにガス吐出孔151〜153が設けられている点で、第8及び第9の実施形態に係る基板処理装置305と異なっている。
【0117】
気化原料供給装置250の分岐配管181〜183から、1対1に各インジェクタ131d〜133dのガス導入口141c〜143cに接続され、各々のインジェクタ131d〜133dが個別に設定された流量で気化原料を処理容器422内に供給する。第10の実施形態に係る基板処理装置は、第1の実施形態に係る基板処理装置300を縦型熱処理装置に適用したものと言える。
【0118】
このように、完全に独立した複数のインジェクタ131d〜133dを用いて、処理容器422内の複数の領域に個別に設定した流量で気化原料を供給する構成としてもよい。
【0119】
以上説明したように、本発明の実施形態に係る気化原料供給装置は、処理容器内の複数領域に供給可能なインジェクタと組み合わせることにより、種々の態様の基板処理装置を構成することができ、領域毎に高精度に流量制御を行うことができ、より高精度の基板処理を行うことができる。
【0120】
なお、第1乃至第10の実施形態では、成膜処理を例に挙げて説明したが、本発明の実施形態に係る基板処理装置は、エッチングガス等、気化原料を用いる基板処理装置であれば、種々の基板処理装置に適用可能である。また、インジェクタの構成も、実施形態の例に限定されること無く、種々の形態のインジェクタに適用することが可能である。
【0121】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳説したが、本発明は、上述した実施形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施形態に種々の変形及び置換を加えることができる。