特許第6573578号(P6573578)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6573578半導体装置の製造方法、基板処理装置、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6573578
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法、基板処理装置、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/316 20060101AFI20190902BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20190902BHJP
   C23C 16/56 20060101ALI20190902BHJP
【FI】
   H01L21/316 C
   H01L21/31 E
   C23C16/56
【請求項の数】16
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2016-108627(P2016-108627)
(22)【出願日】2016年5月31日
(65)【公開番号】特開2017-216335(P2017-216335A)
(43)【公開日】2017年12月7日
【審査請求日】2018年9月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【弁理士】
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(72)【発明者】
【氏名】原田 勝吉
(72)【発明者】
【氏名】高澤 裕真
(72)【発明者】
【氏名】島本 聡
(72)【発明者】
【氏名】八田 啓希
【審査官】 長谷川 直也
(56)【参考文献】
【文献】 特表2002−500450(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0068437(US,A1)
【文献】 特表2009−539268(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/027369(WO,A1)
【文献】 特開2005−347636(JP,A)
【文献】 特開平11−067747(JP,A)
【文献】 特開平11−260750(JP,A)
【文献】 特開2008−244456(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/02、21/205、21/31−21/32、
21/365、21/469−21/475、21/86、
C23C 16/00−16/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1温度とした基板に対して所定元素を含む原料を供給し、前記基板上に、前記所定元素を含む膜を形成する成膜工程と、
第1の酸素含有ガスを含む雰囲気下で、前記基板の温度を前記第1温度よりも高い第2温度へ変更する昇温工程と、
第2の酸素含有ガスを含む雰囲気下で、前記基板の温度を前記第2温度に維持し、前記膜を酸化させる酸化工程と、
を同一の処理室内で行う工程を有し、
前記昇温工程における前記処理室内の圧力を、前記成膜工程における前記処理室内の圧力よりも大きな圧力とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記昇温工程における前記処理室内の圧力を、前記酸化工程における前記処理室内の圧力よりも大きな圧力とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記酸化工程は、前記基板に対して前記第2の酸素含有ガスと水素含有ガスとを同時に供給する期間を含む請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記第1の酸素含有ガスと前記第2の酸素含有ガスとは同一の分子構造を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記第1の酸素含有ガスと前記第2の酸素含有ガスとは異なる分子構造を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記第1の酸素含有ガスとして、前記第2の酸素含有ガスよりも酸化力が小さいガスを用いる請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記第1の酸素含有ガスとして窒素を含むガスを用い、前記第2の酸素含有ガスとして窒素非含有のガスを用いる請求項5または6に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記第1の酸素含有ガスとして、亜酸化窒素、一酸化窒素、および二酸化窒素からなる群より選択される少なくとも1つを含むガスを用い、
前記第2の酸素含有ガスとして、酸素、オゾン、原子状酸素、酸素ラジカル、および水酸基ラジカルからなる群より選択される少なくとも1つを含むガスを用いる請求項5〜7のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記昇温工程における前記第1の酸素含有ガスの供給流量を、前記酸化工程における前記第2の酸素含有ガスの供給流量以下の流量とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記昇温工程では、前記膜の全体を酸化させることなく前記膜の表面を酸化させ、
前記酸化工程では、前記膜の全体を酸化させる請求項1〜9のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記昇温工程では、前記膜を、その最表面から0.05nm以上1nm以下の深さにわたり酸化させる請求項10に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記酸化工程では、前記膜の全体と、前記膜の下地の表面と、をそれぞれ酸化させる請求項10または11に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記酸化工程では、前記膜の下地を、前記膜との界面から0.05nm以上1nm以下の深さにわたり酸化させる請求項10〜12のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記原料として水素化ケイ素を含むガス用いる請求項1〜13のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項15】
基板を収容する処理室と、
前記処理室内の基板に対して、所定元素を含む原料、第1の酸素含有ガス、および第2の酸素含有ガスを供給する供給系と、
前記処理室内の基板を加熱する加熱機構と、
第1温度とした基板に対して前記原料を供給し、前記基板上に、前記所定元素を含む膜を形成する成膜処理と、前記第1の酸素含有ガスを含む雰囲気下で、前記基板の温度を前記第1温度よりも高い第2温度へ変更する昇温処理と、前記第2の酸素含有ガスを含む雰囲気下で、前記基板の温度を前記第2温度に維持し、前記膜を酸化させる酸化処理と、を同一の前記処理室内で行わせ、前記昇温処理における前記処理室内の圧力を、前記成膜処理における前記処理室内の圧力よりも大きな圧力とするように、前記供給系および前記加熱機構を制御するよう構成される制御部と、
を有する基板処理装置。
【請求項16】
第1温度とした基板に対して所定元素を含む原料を供給し、前記基板上に、前記所定元素を含む膜を形成する成膜手順と、
第1の酸素含有ガスを含む雰囲気下で、前記基板の温度を前記第1温度よりも高い第2温度へ変更する昇温手順と、
第2の酸素含有ガスを含む雰囲気下で、前記基板の温度を前記第2温度に維持し、前記膜を酸化させる酸化手順と、
を同一の処理室内で行う手順
前記昇温手順における前記処理室内の圧力を、前記成膜手順における前記処理室内の圧力よりも大きな圧力とする手順と、
コンピュータによって基板処理装置に実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法、基板処理装置、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程の一工程として、基板上に、シリコン(Si)等の所定元素を含む酸化膜を形成する成膜処理が行われることがある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−67747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、基板上に形成する酸化膜の膜質を向上させることが可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、
第1温度とした基板に対して所定元素を含む原料を供給し、前記基板上に、前記所定元素を含む膜を形成する成膜工程と、
第1の酸素含有ガスを含む雰囲気下で、前記基板の温度を前記第1温度よりも高い第2温度へ変更する昇温工程と、
第2の酸素含有ガスを含む雰囲気下で、前記基板の温度を前記第2温度に維持し、前記膜を酸化させる酸化工程と、
を同一の処理室内で行う技術が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、基板上に形成する酸化膜の膜質を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉部分を縦断面図で示す図である。
図2】本発明の一実施形態で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉部分を図1のA−A線断面図で示す図である。
図3】本発明の一実施形態で好適に用いられる基板処理装置のコントローラの概略構成図であり、コントローラの制御系をブロック図で示す図である。
図4】本発明の一実施形態の成膜ステップのガス供給シーケンスを示す図である。
図5】(a)は本発明の一実施形態の基板処理シーケンスを示す図であり、(b)および(c)は、それぞれ、成膜ステップ、昇温ステップおよび酸化ステップを実施した後のウエハ表面の断面構造をそれぞれ示す図である。
図6】(a)はSi膜中に含まれるSiがマイグレーションして凝集したり、Si膜中から脱離したりする様子を示す図であり、(b)はSi膜の表面が酸化されることによってSiの凝集や脱離が抑制される様子を示す図である。
図7】SiO膜の表面ラフネスの評価結果を示す図である。
図8】(a)および(b)は、それぞれ、SiO膜の表面のAFM画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<本発明の一実施形態>
以下、本発明の一実施形態について、図1図3を用いて説明する。
【0009】
(1)基板処理装置の構成
図1に示すように、処理炉202は加熱機構(温度調整部)としてのヒータ207を有する。ヒータ207は円筒形状であり、保持板に支持されることにより垂直に据え付けられている。ヒータ207は、ガスを熱で活性化(励起)させる活性化機構(励起部)としても機能する。
【0010】
ヒータ207の内側には、ヒータ207と同心円状に反応管203が配設されている。反応管203は、例えば石英(SiO)または炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料からなり、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。反応管203の下方には、反応管203と同心円状に、マニホールド209が配設されている。マニホールド209は、例えばステンレス(SUS)等の金属からなり、上端および下端が開口した円筒形状に形成されている。マニホールド209の上端部は、反応管203の下端部に係合しており、反応管203を支持するように構成されている。マニホールド209と反応管203との間には、シール部材としてのOリング220aが設けられている。反応管203はヒータ207と同様に垂直に据え付けられている。主に、反応管203とマニホールド209とにより処理容器(反応容器)が構成される。処理容器の筒中空部には処理室201が形成されている。処理室201は、複数枚の基板としてのウエハ200を収容可能に構成されている。
【0011】
処理室201内には、ノズル249a,249bが、マニホールド209の側壁を貫通するように設けられている。ノズル249a,249bには、ガス供給管232a,232bがそれぞれ接続されている。
【0012】
ガス供給管232a,232bには、上流方向から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241a,241bおよび開閉弁であるバルブ243a,243bがそれぞれ設けられている。ガス供給管232a,232bのバルブ243a,243bよりも下流側には、不活性ガスを供給するガス供給管232c,232dがそれぞれ接続されている。ガス供給管232c,232dには、上流方向から順に、MFC241c,241dおよびバルブ243c,243dがそれぞれ設けられている。
【0013】
ノズル249a,249bは、図2に示すように、反応管203の内壁とウエハ200との間における平面視において円環状の空間に、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の積載方向上方に向かって立ち上がるようにそれぞれ設けられている。すなわち、ノズル249a,249bは、ウエハ200が配列されるウエハ配列領域の側方の、ウエハ配列領域を水平に取り囲む領域に、ウエハ配列領域に沿うようにそれぞれ設けられている。ノズル249a,249bの側面には、ガスを供給するガス供給孔250a,250bがそれぞれ設けられている。ガス供給孔250a,250bは、反応管203の中心を向くようにそれぞれ開口しており、ウエハ200に向けてガスを供給することが可能となっている。ガス供給孔250a,250bは、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられている。
【0014】
ガス供給管232aからは、第1の原料(原料ガス)として、所定元素(主元素)としてのSiとハロゲン元素とを含むハロシラン原料ガスが、MFC241a、バルブ243a、ノズル249aを介して処理室201内へ供給される。原料ガスとは、気体状態の原料、例えば、常温常圧下で液体状態である原料を気化することで得られるガスや、常温常圧下で気体状態である原料等のことである。ハロシランとは、ハロゲン基を有するシランのことである。ハロゲン基には、クロロ基、フルオロ基、ブロモ基、ヨード基等が含まれる。すなわち、ハロゲン基には、塩素(Cl)、フッ素(F)、臭素(Br)、ヨウ素(I)等のハロゲン元素が含まれる。第1の原料ガスとしては、例えば、SiおよびClを含むクロロシラン原料ガスを用いることができる。クロロシラン原料ガスとしては、例えば、ジクロロシラン(SiHCl、略称:DCS)ガスを用いることができる。
【0015】
ガス供給管232bからは、第2の原料(原料ガス)として、所定元素(主元素)としてのSiを含みハロゲン元素非含有のシラン原料ガスが、MFC241b、バルブ243b、ノズル249bを介して処理室201内へ供給される。第2の原料ガスとしては、例えば、水素化ケイ素ガスを用いることができる。水素化ケイ素ガスとしては、例えば、ジシラン(Si、略称:DS)ガスを用いることができる。
【0016】
ガス供給管232aからは、酸素(O)含有ガスが、MFC241a、バルブ243a、ノズル249aを介して処理室201内へ供給される。本明細書では、後述する昇温ステップで供給するO含有ガスを第1のO含有ガスとも呼び、また、後述する酸化ステップで供給するO含有ガスを第2のO含有ガスとも呼ぶ。第1のO含有ガスは、ウエハ200上に形成されたシリコン膜(Si膜)を加熱した際に、Si膜中に含まれるSiの移動(マイグレーション)や、Si膜からのSiの脱離(サーマルエッチング)を抑制するように作用する。第2のO含有ガスは、ウエハ200上に形成されたSi膜全体を酸化させる酸化ガス、すなわち、Oソースとして作用する。第1、第2のO含有ガスとしては、例えば、酸素(O)ガスを用いることができる。
【0017】
ガス供給管232bからは、水素(H)含有ガスが、MFC241b、バルブ243b、ノズル249bを介して処理室201内へ供給される。H含有ガスは、それ単体では酸化作用は得られないが、特定の条件下でO含有ガスと反応することで原子状酸素(atomic oxygen、O)等の酸化種を生成し、酸化処理の効率を向上させるように作用する。そのため、H含有ガスは、O含有ガスと同様に酸化ガスに含めて考えることができる。H含有ガスとしては、例えば、水素(H)ガスを用いることができる。
【0018】
ガス供給管232c,232dからは、不活性ガスとして、例えば、窒素(N)ガスが、それぞれMFC241c,241d、バルブ243c,243d、ガス供給管232a,232b、ノズル249a,249bを介して処理室201内へ供給される。
【0019】
主に、ガス供給管232a、MFC241a、バルブ243aにより、第1の原料(原料ガス)供給系が構成される。主に、ガス供給管232b、MFC241b、バルブ243bにより、第2の原料(原料ガス)供給系が構成される。主に、ガス供給管232a、MFC241a、バルブ243aにより、第1、第2のO含有ガス供給系が構成される。主に、ガス供給管232b、MFC241b、バルブ243bにより、H含有ガス供給系が構成される。主に、ガス供給管232c,232d、MFC241c,241d、バルブ243c,243dにより、不活性ガス供給系が構成される。
【0020】
上述の各種供給系のうち、いずれか、或いは、全ての供給系は、バルブ243a〜243dやMFC241a〜241d等が集積されてなる集積型供給システム248として構成されていてもよい。集積型供給システム248は、ガス供給管232a〜232dのそれぞれに対して接続され、ガス供給管232a〜232d内への各種ガスの供給動作、すなわち、バルブ243a〜243dの開閉動作やMFC241a〜241dによる流量調整動作等が、後述するコントローラ121によって制御されるように構成されている。集積型供給システム248は、一体型、或いは、分割型の集積ユニットとして構成されており、ガス供給管232a〜232d等に対して集積ユニット単位で着脱を行うことができ、供給システムのメンテナンス、交換、増設等を、集積ユニット単位で行うことが可能なように構成されている。
【0021】
反応管203には、処理室201内の雰囲気を排気する排気管231が設けられている。排気管231には、処理室201内の圧力を検出する圧力検出器(圧力検出部)としての圧力センサ245および圧力調整器(圧力調整部)としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ244を介して、真空排気装置としての真空ポンプ246が接続されている。APCバルブ244は、真空ポンプ246を作動させた状態で弁を開閉することで、処理室201内の真空排気および真空排気停止を行うことができ、更に、真空ポンプ246を作動させた状態で、圧力センサ245により検出された圧力情報に基づいて弁開度を調節することで、処理室201内の圧力を調整することができるように構成されている。主に、排気管231、APCバルブ244、圧力センサ245により、排気系が構成される。真空ポンプ246を排気系に含めて考えてもよい。
【0022】
マニホールド209の下方には、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219は、例えばSUS等の金属からなり、円盤状に形成されている。シールキャップ219の上面には、マニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング220bが設けられている。シールキャップ219の下方には、後述するボート217を回転させる回転機構267が設置されている。回転機構267の回転軸255は、シールキャップ219を貫通してボート217に接続されている。回転機構267は、ボート217を回転させることでウエハ200を回転させるように構成されている。シールキャップ219は、反応管203の外部に設置された昇降機構としてのボートエレベータ115によって垂直方向に昇降されるように構成されている。ボートエレベータ115は、シールキャップ219を昇降させることで、ボート217すなわちウエハ200を処理室201内外に搬入および搬出する搬送装置(搬送機構)として構成されている。また、マニホールド209の下方には、ボートエレベータ115によりシールキャップ219を降下させている間、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシャッタ219sが設けられている。シャッタ219sは、例えばSUS等の金属からなり、円盤状に形成されている。シャッタ219sの上面には、マニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング220cが設けられている。シャッタ219sの開閉動作(昇降動作や回動動作等)は、シャッタ開閉機構115sにより制御される。
【0023】
基板支持具としてのボート217は、複数枚、例えば25〜200枚のウエハ200を、水平姿勢で、かつ、互いに中心を揃えた状態で垂直方向に整列させて多段に支持するように、すなわち、間隔を空けて配列させるように構成されている。ボート217は、例えば石英やSiC等の耐熱性材料からなる。ボート217の下部には、例えば石英やSiC等の耐熱性材料からなる断熱板218が多段に支持されている。
【0024】
反応管203内には、温度検出器としての温度センサ263が設置されている。温度センサ263により検出された温度情報に基づきヒータ207への通電具合を調整することで、処理室201内の温度が所望の温度分布となる。温度センサ263は、反応管203の内壁に沿って設けられている。
【0025】
図3に示すように、制御部(制御手段)であるコントローラ121は、CPU(Central Processing Unit)121a、RAM(Random Access Memory)121b、記憶装置121c、I/Oポート121dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM121b、記憶装置121c、I/Oポート121dは、内部バス121eを介して、CPU121aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ121には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置122が接続されている。
【0026】
記憶装置121cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。記憶装置121c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラムや、後述する基板処理の手順や条件等が記載されたプロセスレシピ等が、読み出し可能に格納されている。プロセスレシピは、後述する基板処理工程における各手順をコントローラ121に実行させ、所定の結果を得ることが出来るように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、このプロセスレシピや制御プログラム等を総称して、単に、プログラムともいう。また、プロセスレシピを、単に、レシピともいう。本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、レシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。RAM121bは、CPU121aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0027】
I/Oポート121dは、上述のMFC241a〜241d、バルブ243a〜243d、圧力センサ245、APCバルブ244、真空ポンプ246、ヒータ207、温度センサ263、回転機構267、ボートエレベータ115、シャッタ開閉機構115s等に接続されている。
【0028】
CPU121aは、記憶装置121cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置122からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置121cからレシピを読み出すように構成されている。CPU121aは、読み出したレシピの内容に沿うように、MFC241a〜241dによる各種ガスの流量調整動作、バルブ243a〜243dの開閉動作、APCバルブ244の開閉動作および圧力センサ245に基づくAPCバルブ244による圧力調整動作、真空ポンプ246の起動および停止、温度センサ263に基づくヒータ207の温度調整動作、回転機構267によるボート217の回転および回転速度調節動作、ボートエレベータ115によるボート217の昇降動作、シャッタ開閉機構115sによるシャッタ219sの開閉動作等を制御するように構成されている。
【0029】
コントローラ121は、外部記憶装置(例えば、ハードディスク等の磁気ディスク、CD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリ等の半導体メモリ)123に格納された上述のプログラムを、コンピュータにインストールすることにより構成することができる。記憶装置121cや外部記憶装置123は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成されている。以下、これらを総称して、単に、記録媒体ともいう。本明細書において記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置121c単体のみを含む場合、外部記憶装置123単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。なお、コンピュータへのプログラムの提供は、外部記憶装置123を用いず、インターネットや専用回線等の通信手段を用いて行ってもよい。
【0030】
(2)基板処理工程
上述の基板処理装置を用い、半導体装置の製造工程の一工程として、基板としてのウエハ200上にシリコン酸化膜(SiO膜)を形成する基板処理シーケンスの例について、図4図6を用いて説明する。以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作はコントローラ121により制御される。
【0031】
図5に示す基板処理シーケンスでは、
第1温度としたウエハ200に対してDCSガス、DSガスを供給し、ウエハ200上に、Si膜を形成する成膜ステップと、
ガスを含む雰囲気下で、ウエハ200の温度を第1温度よりも高い第2温度へ変更する昇温ステップと、
ガスを含む雰囲気下で、ウエハ200の温度を第2温度に維持し、Si膜を酸化させる酸化ステップと、
を同一の処理室201内で行う。
【0032】
上述の成膜ステップでは、図4にガス供給タイミングを示すように、
ウエハ200に対してDCSガスを供給するステップ1と、
ウエハ200に対してDSガスを供給するステップ2と、
を交互に行うサイクルを所定回数行うことで、ウエハ200上にSi膜を形成する。
【0033】
本明細書において「ウエハ」という言葉を用いた場合は、ウエハそのものを意味する場合や、ウエハとその表面に形成された所定の層や膜との積層体を意味する場合がある。本明細書において「ウエハの表面」という言葉を用いた場合は、ウエハそのものの表面を意味する場合や、ウエハ上に形成された所定の層等の表面を意味する場合がある。本明細書において「ウエハ上に所定の層を形成する」と記載した場合は、ウエハそのものの表面上に所定の層を直接形成することを意味する場合や、ウエハ上に形成されている層等の上に所定の層を形成することを意味する場合がある。本明細書において「基板」という言葉を用いた場合も、「ウエハ」という言葉を用いた場合と同義である。
【0034】
(ウエハチャージおよびボートロード)
複数枚のウエハ200がボート217に装填(ウエハチャージ)されると、シャッタ219sが移動させられて、マニホールド209の下端開口が開放される(シャッタオープン)。その後、図1に示すように、複数枚のウエハ200を支持したボート217が処理室201内へ搬入(ボートロード)される。この状態で、シールキャップ219は、Oリング220bを介してマニホールド209の下端をシールした状態となる。
【0035】
ウエハ200としては、例えば、単結晶Siにより構成されたSi基板、或いは、表面に単結晶Si膜が形成された基板を用いることができる。ウエハ200の表面には、単結晶Siが露出した状態となっている。ウエハ200の表面の一部には、例えば、SiO膜、シリコン窒化膜(SiN膜)、シリコン酸窒化膜(SiON膜)等の絶縁膜が形成されていてもよい。
【0036】
ウエハ200を処理室201内に搬入する前、ウエハ200の表面はフッ化水素(HF)等により予め洗浄される。但し、洗浄処理の後、ウエハ200を処理室201内へ搬入するまでの間に、ウエハ200の表面は一時的に大気に晒される。そのため、処理室201内へ搬入されるウエハ200の表面の少なくとも一部には、自然酸化膜(SiO膜)が形成される。自然酸化膜は、ウエハ200の表面、すなわち、露出した単結晶Siの一部を疎らに(アイランド状に)覆うように形成されることもあり、また、露出した単結晶Siの全域を連続的に(非アイランド状に)覆うように形成されることもある。
【0037】
(圧力調整および温度調整)
処理室201内、すなわち、ウエハ200が存在する空間が所望の圧力(真空度)となるように、真空ポンプ246によって真空排気(減圧排気)される。この際、処理室201内の圧力は圧力センサ245で測定され、この測定された圧力情報に基づきAPCバルブ244がフィードバック制御される。真空ポンプ246は、少なくともウエハ200に対する処理が終了するまでの間は常時作動させた状態を維持する。また、処理室201内のウエハ200が所望の成膜温度となるようにヒータ207によって加熱される。この際、処理室201内が所望の温度分布となるように、温度センサ263が検出した温度情報に基づきヒータ207への通電具合がフィードバック制御される。ヒータ207による処理室201内の加熱は、少なくともウエハ200に対する処理が終了するまでの間は継続して行われる。また、回転機構267によるボート217およびウエハ200の回転を開始する。ボート217およびウエハ200の回転は、少なくとも、ウエハ200に対する処理が終了するまでの間は継続して行われる。
【0038】
(成膜ステップ)
その後、次の2つのステップ、すなわち、ステップ1,2を順次実行する。
【0039】
[ステップ1]
このステップでは、ウエハ200に対してDCSガスを供給する。具体的には、バルブ243aを開き、ガス供給管232a内にDCSガスを流す。DCSガスは、MFC241aにより流量調整され、ノズル249aを介して処理室201内へ供給され、排気管231から排気される。このとき、ウエハ200に対してDCSガスが供給される。このとき同時にバルブ243cを開き、ガス供給管232c内へNガスを流す。Nガスは、DCSガスと一緒に処理室201内へ供給され、排気管231から排気される。また、ノズル249b内へのDCSガスの侵入を防止するため、バルブ243dを開き、ガス供給管232d内へNガスを流す。Nガスは、ガス供給管232b、ノズル249bを介して処理室201内へ供給され、排気管231から排気される。
【0040】
ウエハ200に対してDCSガスを供給することで、DCSによるトリートメント効果を生じさせ、以下の処理を進行させることができる。すなわち、電気陰性度の大きなClを含むDCSをウエハ200の表面に対して供給することで、ウエハ200の表面に形成された自然酸化膜におけるOと、DCSにおけるClと、を引き合わせ、自然酸化膜に含まれるSi−O結合を切断することができる。すなわち、DCSが有する極性により、単結晶Siの表面を終端しているSi−O結合を切断することができる。また、DCSから分離することで生成された微量のCl(Clイオン)により、単結晶Siの表面を終端しているSi−O結合を切断することもできる。これらにより、単結晶Siの表面において、Siの未結合手を生じさせ、後述するホモエピタキシャル成長が進行しやすい環境を整えることが可能となる。ウエハ200の表面においては、上述の反応が進行することにより、表面に形成された自然酸化膜が除去され、単結晶Siの表面が露出する。このように、DCSガスは、単結晶Siの表面から自然酸化膜を除去するクリーニングガス(洗浄ガス)として作用する。ウエハ200の表面にSiO膜等が形成されている場合は、上述のトリートメント効果により、SiO膜等の表面にSiの吸着サイトが形成される。
【0041】
上述のトリートメント効果により、ウエハ200の表面においてホモエピタキシャル成長が進行しやすい環境が整ったら、バルブ243aを閉じ、DCSガスの供給を停止する。このとき、APCバルブ244は開いたままとして、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留する未反応もしくは上述の反応に寄与した後のガスを処理室201内から排除する。このとき、バルブ243c,243dは開いたままとして、Nガスの処理室201内への供給を維持する。Nガスはパージガスとして作用する。
【0042】
[ステップ2]
ステップ1が終了した後、ウエハ200に対してDSガスを供給する。このステップでは、バルブ243b〜243dの開閉制御を、ステップ1におけるバルブ243a,243c,243dの開閉制御と同様の手順で行うことで、ガス供給管232b内へDSガスを流す。ガス供給管232b内を流れたDSガスは、MFC241bにより流量調整され、ノズル249bを介して処理室201内へ供給され、排気管231から排気される。このとき、ウエハ200に対してDSガスが供給される。
【0043】
ウエハ200に対してDSガスを供給することで、ウエハ200の表面にSi層を成長させることができる。すなわち、ステップ1を行うことで形成されたSiの未結合手にDSに含まれるSiを結合させ、ウエハ200の表面上にSi結晶の核を形成し、Si結晶を気相エピタキシャル成長させることができる。この成長は、ホモエピタキシャル成長となる。ホモエピタキシャル成長では、下地となる結晶の上に、この結晶と同じ格子定数を持ち、同じ材料からなる結晶が、同一の結晶方位で成長するため、欠陥の少ない良質な結晶を得ることができる。以上の処理を行うことにより、ウエハ200の表面上に、Si単結晶からなるSi層が形成される。ウエハ200の表面上にSiO膜等が形成されている場合は、上述のトリートメント効果によりSiO膜等の表面に形成されたSiの吸着サイトに、DSに含まれるSiを吸着させることができる。この場合、SiO膜上に、アモルファス、ポリ、または、アモルファスとポリとの混晶状態のSi膜が形成されることとなる。
【0044】
Si層の形成が完了したら、バルブ243bを閉じ、DSガスの供給を停止する。そして、ステップ1と同様の処理手順により、処理室201内に残留する未反応もしくは上述の反応に寄与した後のガスや反応副生成物を処理室201内から排除する。
【0045】
ステップ2を行うと、Si層の表面の少なくとも一部が、DSガスに含まれるSi−H結合によって終端された状態となる場合がある。Si層の表面を終端するSi−H結合は、次のステップ1においてウエハ200に対してDCSガスを供給することで切断することができる。すなわち、DCSから分離することで生成された微量のClにより、Si層の表面を終端しているSi−H結合を切断することができる。これにより、Si層の表面にSiの未結合手を形成することができ、ホモエピタキシャル成長が進行しやすい環境を再び整えることが可能となる。これにより、次のステップ2において、上述したSi層の形成が遅滞なく開始されることとなる。
【0046】
また、ステップ2を行うと、ウエハ200の表面においてSiが異常成長する場合がある。例えば、ステップ2を行うと、ウエハ200の表面に吸着したSiが局所的に凝集する等し、Si層の表面に凹凸構造が形成される場合がある。但し、この異常成長したSiは、次のステップ1でウエハ200に対してDCSガスを供給することで除去することができる。すなわち、DCSから分離することで生成された微量のClにより、異常成長したSiに含まれるSi−Si結合を切断し、異常成長したSiをエッチングすることが可能となる。これにより、Si層の表面を平滑化させ、結果として、最終的に形成されるSi膜の表面ラフネス等を向上させることが可能となる。ここで表面ラフネスとは、ウエハ面内における膜の高低差を意味しており(表面粗さと同義であり)、その値が小さいほど表面が平滑であることを示している。すなわち、表面ラフネスが向上するとは、膜の高低差が小さくなり、表面の平滑度が向上することを意味する。
【0047】
ここで示した各効果は、DCSによるトリートメント効果に含めて考えることができる。
【0048】
[所定回数実施]
上述したステップ1,2を、交互に、すなわち、同期させることなく非同時に行うサイクルを所定回数(n回(nは1以上の整数))行う。これにより、ウエハ200の表面上にSi膜を形成することができる。
【0049】
Si膜は、ウエハ200の表面上に形成されたSi層を下地として、Si結晶がエピタキシャル成長することで形成される。Si膜の結晶構造は、下地の結晶性を継承した単結晶となる。すなわち、Si膜は、下地の単結晶Siと同一の材料により構成され、同一の格子定数、同一の結晶方位を有する単結晶Si膜(エピタキシャルSi膜)となる。Si膜を形成する際、上述のトリートメント効果を適正に発揮させることにより、この膜を酸化させることで最終的に得られるSiO膜を、ピンホールや膜破れ(以下、これらを総称して膜破れ等とも呼ぶ)の少ない緻密な膜とすることができ、HFに対する耐性(エッチング耐性)の高い膜とすることが可能となる。なお、ピンホールとは、膜に対してエッチングガスやエッチング液等のエッチャントを供給した際に、この膜の下地側に向けてエッチャントが侵入していく経路のことをいう。また、膜破れとは、例えば、ピンホールよりも大きなスケールで生じる欠陥のことをいう。膜破れ等は、膜の膜厚を薄くする場合に特に生じやすくなる。そのため、トリートメント効果を生じさせる技術的意義は、最終的に形成されるSiO膜の膜厚を薄くする場合や、最終的に形成されるSiO膜にエッチング耐性等の加工耐性が要求される場合に、特に大きくなるといえる。
【0050】
以下、成膜ステップの処理条件について説明する。ここに示す条件は、上述のトリートメント効果を適正に発揮させることが可能な条件でもある。
【0051】
DCSガス、DSガスの供給流量は、それぞれ例えば10〜1000sccmの範囲内の流量とする。DCSガス、DSガスの供給時間は、それぞれ例えば1〜600秒の範囲内の時間とする。各ガス供給管より供給するNガスの供給流量は、それぞれ例えば0〜10000sccmの範囲内の流量とする。Nガスを非供給とすることにより、各原料ガスの分圧を高め、層質を変化させることが可能となる。
【0052】
ウエハ200の温度(第1温度)Tは、例えば250〜600℃、好ましくは350〜450℃の範囲内の温度とする。処理室201内の圧力(第1圧力)Pは、例えば0.1〜20Torr(13.3〜2660Pa)の範囲内の圧力とする。
【0053】
が250℃未満となったり、Pが0.1Torr未満となったりすると、ステップ1でウエハ200に対して供給されるClやDCSの量が不足し、上述のトリートメント効果が得られなくなる場合がある。また、ステップ2でウエハ200に対して供給されるDSが分解しにくくなり、ウエハ200上へのSi層の形成が困難となる場合がある。Tを250℃以上としたり、Pを0.1Torr以上としたりすることで、これらの課題を解消することができ、実用的な成膜レートでSi膜を形成することが可能となる。Tを350℃以上とすることで、これらの課題をより確実に解消することができ、Si膜の成膜レートをさらに高めることが可能となる。
【0054】
が600℃を超えたり、Pが20Torrを超えたりすると、ステップ1では、DCSに含まれるSiがウエハ200上に堆積する場合がある。この場合、単結晶Siの表面から自然酸化膜が除去される前にSiが堆積し、単結晶Si上(自然酸化膜上)では、エピタキシャル成長が進行せず、アモルファスSi膜やポリSi膜が成長する場合がある。また、DCSの極性等を利用した上述のトリートメント効果が得られなくなる場合がある。また、ステップ2では、過剰な気相反応が生じることで、Si層の厚さの均一性や段差被覆性が悪化する場合がある。また、処理室201内に発生するパーティクルの量が増加する場合もある。Tを600℃以下としたり、Pを20Torr以下としたりすることで、これらの課題を解消することができ、ウエハ200上に、面内膜厚均一性や段差被覆性の良好な高品質エピタキシャルSi膜を形成することが可能となる。Tを450℃以下とすることで、これらの課題をより確実に解消することができ、Si膜の膜質をさらに向上させることが可能となる。
【0055】
第1の原料ガスとしては、DCSガスの他、モノクロロシラン(SiHCl、略称:MCS)ガス、トリクロロシラン(SiHCl、略称:TCS)ガス、テトラクロロシラン(SiCl、略称:STC)ガス、ヘキサクロロジシラン(SiCl、略称:HCDS)ガス、オクタクロロトリシラン(SiCl、略称:OCTS)ガス等のクロロシラン原料ガスを用いることができる。ステップ1において、ウエハ200上へのSiの堆積を抑制しつつ、Si−O結合の切断反応を促進させるには、第1の原料ガスとして、1分子中に含まれるSiの数が少なく、1分子中に含まれるClの数が多いハロシラン原料ガスを用いることが好ましい。また、ステップ1において、Si−O結合の切断反応を適正に抑制するには、1分子中に含まれるClの数が少ないハロシラン原料ガスを用いることが好ましい。
【0056】
第2の原料ガスとしては、DSガスの他、モノシラン(SiH、略称:MS)ガス、トリシラン(Si)ガス、テトラシラン(Si10)ガス、ペンタシラン(Si12)ガス、ヘキサシラン(Si14)ガス等の水素化ケイ素ガス、すなわち、ハロゲン元素非含有のシラン原料ガスを用いることができる。
【0057】
不活性ガスとしては、Nガスの他、Arガス、Heガス、Neガス、Xeガス等の希ガスを用いることができる。
【0058】
(第1のアフターパージ)
Si膜の形成が完了したら、ガス供給管232c,232dのそれぞれからNガスを処理室201内へ供給し、排気管231から排気する。これにより、処理室201内が不活性ガスでパージされ、処理室201内に残留するガスや反応副生成物が処理室201内から除去される(第1のアフターパージ)。第1のアフターパージを行うことで、後述する昇温ステップにおいて処理室201内へOガスが供給された際、処理室201内で気相反応が生じ、パーティクルが発生することを抑制することが可能となる。
【0059】
(昇温ステップ)
処理室201内のパージが完了したら、後述する酸化ステップの実施に先立ち、その前準備として、ウエハ200の温度を、上述の第1温度Tよりも高い第2温度Tへと変更する。その後に行う酸化ステップにおいて、OガスとHガスとを用いた酸化処理を適正に進行させるためには、また、最終的に形成されるSiO膜とウエハ200との間の界面電子トラップ密度(界面準位密度)を小さくするためには、ウエハ200の温度を、例えば700〜1000℃、好ましくは700〜900℃の範囲内の温度に昇温させる必要がある。
【0060】
ただし、ここに示した温度条件は、O非含有の雰囲気下においては、ウエハ200上に形成されたSi膜に含まれるSiのマイグレーション、および、Si膜のサーマルエッチングのうち、少なくともいずれかが顕著に生じ得る温度である。図6(a)に、基板上に形成されたSi膜を700℃以上の温度に加熱した際、Si膜を構成するSiがマイグレーションして凝集したり、Si膜の表面がサーマルエッチングされてSiが脱離したりする様子を示す。これらの現象は、最終的に形成されるSiO膜の表面に凹凸構造を生じさせ、その表面ラフネスを悪化させる要因となる。
【0061】
そこで、本実施形態では、これらの現象の発生を抑制するよう、昇温ステップを、Oガスを含む雰囲気下で行うようにしている。具体的には、ウエハ200の昇温を開始するとともに、バルブ243a,243c,243dの開閉制御を、上述のステップ1におけるバルブ243a,243c,243dの開閉制御と同様の手順で行い、ガス供給管232a内へOガスを流す。ガス供給管232a内を流れたOガスは、MFC241aにより流量調整され、ノズル249aを介して処理室201内へ供給され、排気管231から排気される。このとき、ウエハ200に対してOガスが供給される。ウエハ200に対するOガスの供給は、ウエハ200の昇温を開始する前に始めてもよく、また、ウエハ200の昇温を開始した後に始めてもよい。
【0062】
ガスを含む雰囲気下で昇温ステップを行うことにより、ウエハ200上に形成されたSi膜の表面を酸化させ、シリコン酸化層(SiO層)へと改質(変化)させることができる。これにより、表面ラフネスの悪化要因となるSiの凝集や脱離を抑制することが可能となる。これは、Si膜の表面においてSiと結合したOが、Siの凝集や脱離をブロックする阻害要素として作用するためと考えられる。図6(b)に、基板上に形成されたSi膜をOガスの雰囲気下で700℃以上の温度に加熱した際、この膜の表面が酸化されることにより、Siの凝集や脱離が抑制される様子を示す。このように、Si膜の表面を酸化させることにより、最終的に形成されるSiO膜の表面ラフネスの悪化を回避することが可能となる。
【0063】
昇温ステップでは、Si膜の全体を酸化させることなく、Si膜の表面のみを酸化させるようにするのが好ましい。図5(b)に示すように、昇温ステップにおいてSi膜の全体を酸化させた場合は、その後に酸化ステップを実施することで、下地であるウエハ200の表面だけでなく、表面よりも深層の広い領域が酸化されてしまう場合がある。これに対し、図5(c)に示すように、昇温ステップにおいてSi膜の表面のみを酸化させた場合は、その後に酸化ステップを実施しても、下地であるウエハ200の酸化量を、その表面を僅かに酸化させる程度にとどめることが可能となる。なお、酸化ステップを実施した際に、下地であるウエハ200の表面を僅かに酸化させることにより、ウエハ200の表面を酸化させない場合に比べて、SiO膜とウエハ200との間の界面電子トラップ密度を小さくすることが可能となる。
【0064】
以下、昇温ステップの処理条件について説明する。ここに示す条件は、Siの凝集や脱離を抑制することが可能な条件であり、また、Si膜の全体を酸化させることなく、その表面のみを酸化させることが可能な条件でもある。
【0065】
ガスの供給流量(第1流量)Fは、例えば10〜10000sccmの範囲内の流量とする。昇温ステップにおいてSi膜の表面のみを酸化させるには、Fを、その後に行う酸化ステップにおけるOガスの供給流量(第2流量)F以下の流量とする(F≦F)のが好ましく、Fよりも小さな流量とする(F<F)のがより好ましい。各ガス供給管より供給するNガスの供給流量は、それぞれ例えば0〜10000sccmの範囲内の流量とする。
【0066】
処理室201内の圧力(第2圧力)Pは、例えば0.1〜100Torr(13.3〜13300Pa)の範囲内の圧力とする。昇温ステップにおいてSi膜のサーマルエッチングを抑制するには、Pを、その後に行う酸化ステップにおける処理室201内の圧力(第3圧力)Pよりも大きな圧力とする(P>P)のが好ましく、また、上述のPよりも大きな圧力とする(P>P)のが好ましい。
【0067】
昇温ステップでは、Si膜を、その最表面から0.05nm以上1nm以下、好ましくは0.1nm以上0.5nm以下、より好ましくは0.2nm以上0.5nm以下の深さにわたり酸化させる。この深さが0.05nm未満であると、ウエハ200を昇温させた際に、Siの凝集や脱離を抑制できなくなる場合がある。また、後述する酸化ステップを実施した際に、下地であるウエハ200の表面を僅かに酸化させることができず、SiO膜とウエハ200との間の界面電子トラップ密度が大きくなってしまう場合もある。この深さを0.05nm以上の深さとすることで、これらの課題を解消することが可能となる。この深さを0.1nm以上、さらには、0.2nm以上の深さとすることで、これらの課題をより確実に解消することが可能となる。また、この深さが1nmを超えると、その後に酸化ステップを実施することで、下地であるウエハ200の表面が深さ方向にわたり広範囲に酸化されてしまう場合がある。この深さを1nm以下、さらには、0.5nm以下の深さとすることで、ウエハ200の過剰な酸化を抑制することが可能となる。
【0068】
第1のO含有ガスとしては、Oガスの他、亜酸化窒素(NO)ガス、一酸化窒素(NO)ガス、二酸化窒素(NO)ガス等の窒素(N)を含むガスを用いることができる。これらのNを含むO含有ガスは、後述する酸化ステップで用いる第2のO含有ガスよりも、酸化力の小さいガスである。そのため、第1のO含有ガスとしてこれらのガスを用いることで、Si膜の表面のみを酸化させることが容易に行えるようになる。
【0069】
不活性ガスとしては、Nガスの他、上述の各種希ガスを用いることができる。
【0070】
(酸化ステップ)
ウエハ200の温度が上述の第2温度に到達して安定したら、Oガスを含む雰囲気下で、ウエハ200の温度を第2温度に維持し、表面にSiO層が形成されたSi膜(以下、単にSi膜とも称する)の全体を酸化させる。具体的には、ヒータ207の出力を調整してウエハ200の温度を第2温度に維持した状態で、バルブ243a,232bを開き、処理室201内へOガスとHガスとを別々に供給する。OガスとHガスとは処理室201内で混合して反応し、その後、排気管231から排気される。このとき、バルブ243c,243dを開き、処理室201内へNガスを供給するようにしてもよい。
【0071】
ガスおよびHガスを処理室201内へ供給することで、OガスおよびHガスは、加熱された減圧雰囲気下においてノンプラズマで熱的に活性化(励起)されて反応し、それにより、原子状酸素(O)等の酸素を含む水分(HO)非含有の活性種(酸化種)が生成される。そして、主にこの酸化種により、Si膜の全体に対して酸化処理が行われる。この酸化種の持つエネルギーは、Si膜中に含まれるSi−Cl結合、Si−H結合等の結合エネルギーよりも高いため、この酸化種のエネルギーをSi膜に与えることで、Si膜中に含まれるSi−Cl結合、Si−H結合等は切り離される。Siとの結合が切り離されたH、Cl等は膜中から除去され、Cl、HCl等として排出される。また、H、Cl等との結合が切断されることで余ったSiの結合手は、酸化種に含まれるOと結びつき、Si−O結合が形成される。このようにして、ウエハ200上に形成されたSi膜は、その全体が、Cl等の不純物の含有量が極めて少ない良質なSiO膜へと変化させられる(改質される)。この酸化処理によれば、Oガスを単独で供給する場合や水蒸気(HOガス)を供給する場合に比べ、酸化力を大幅に向上させることができる。すなわち、減圧雰囲気下においてOガスにHガスを添加することで、Oガス単独供給の場合や、HOガスを供給する場合に比べ、大幅な酸化力向上効果が得られる。
【0072】
なお、酸化ステップでは、上述のようにSi膜の全体をSiO膜へと改質させるだけでなく、下地であるウエハ200の表面を僅かに酸化させるようにするのが好ましい。具体的には、ウエハ200の表面を、SiO膜との界面(ウエハ200の最表面)から例えば0.05nm以上1nm以下、好ましくは0.1nm以上0.5nm以下、より好ましくは0.2nm以上0.5nm以下の深さにわたり酸化させるようにするのが好ましい。これにより、最終的に形成されるSiO膜とウエハ200との間の界面電子トラップ密度を小さくすることが可能となる。なお、昇温ステップにおけるSi膜の酸化量を上述のように制御することで、このようなウエハ200の酸化量を実現することが可能となる。
【0073】
以下、酸化ステップの処理条件について説明する。ここに示す条件は、Si膜の全体を充分に酸化させることが可能な条件であり、また、下地であるウエハ200の表面を僅かに酸化させることが可能な条件でもある。
【0074】
ガスの供給流量Fは、上述したように、F以上、好ましくはFよりも大きな流量であって、例えば500〜20000sccmの範囲内の流量とする。Hガスの供給流量は、例えば500〜20000sccmの範囲内の流量とする。各ガス供給管より供給するNガスの供給流量は、それぞれ例えば0〜10000sccmの範囲内の流量とする。
【0075】
ウエハ200の温度Tは、上述したように、例えば700〜1000℃、好ましくは700〜900℃の範囲内の温度とする。処理室201内の圧力Pは、例えば0.1〜20Torr(13.3〜2660Pa)、好ましくは0.1〜3Torr(13.3〜399Pa)の範囲内の圧力とする。
【0076】
が700℃未満となったり、Pが0.1Torr未満となったりすると、絶縁特性やエッチング耐性が不足する等、最終的に形成されるSiO膜の絶縁膜としての膜質が低下する場合がある。また、SiO膜とウエハ200との間の界面電子トラップ密度が大きくなる場合もある。Tを700℃以上としたり、Pを0.1Torr以上としたりすることで、これらの課題を解消することが可能となる。
【0077】
が1000℃を超えたり、Pが20Torrを超えたりすると、OガスとHガスとの反応により発生した酸化種が失活することで、ウエハ200に対して供給される酸化種の量が不足し、Si膜の酸化が不充分となる場合がある。また、ウエハ200が受ける熱ダメージが増加する場合もある。Tを1000℃以下としたり、Pを20Torr以下としたりすることで、上述の課題を解消することが可能となる。Tを900℃以下としたり、Pを3Torr以下としたりすることで、上述の課題をより確実に解消することが可能となる。
【0078】
第2のO含有ガスとしては、Oガスの他、オゾン(O)ガス、原子状酸素(O)、酸素ラジカル(O)、および水酸基ラジカル(OH)等を用いることができる。これらのガスは、昇温ステップで例示したNを含むO含有ガスよりも、酸化力の大きいガスである。そのため、第2のO含有ガスとしてこれらのガスを用いることで、Si膜の全体を充分に酸化させることが容易に行えるようになる。
【0079】
このように、第1のO含有ガスと第2のO含有ガスとは、同一の分子構造(化学構造)を有するガスであってもよく、また、異なる分子構造を有するガスであってもよい。第1のO含有ガスと第2のO含有ガスとを同一のマテリアルとする場合は、ガス供給系の構造を簡素化させることができ、基板処理装置の製造コストやメンテナンスコストを低減させることが可能となる点で、好ましい。また、第1のO含有ガスと第2のO含有ガスとを異なるマテリアルとする場合、例えば、第1のO含有ガスとして第2のO含有ガスよりも酸化力が弱いマテリアルを用いる場合は、昇温ステップにおけるSi膜の過剰な酸化を抑制することが可能となるとともに、酸化ステップにおいてSi膜の全体を充分に酸化させることが可能となる点で、好ましい。
【0080】
H含有ガスとしては、Hガスの他、重水素(D)ガス等を用いることができる。
【0081】
不活性ガスとしては、Nガスの他、上述の各種希ガスを用いることができる。
【0082】
(第2のアフターパージ及び大気圧復帰)
Si膜の全体をSiO膜へと改質させた後、バルブ243a,243bを閉じ、OガスおよびHガスの供給をそれぞれ停止する。そして、上述した第1のアフターパージと同様の処理手順により、処理室201内に残留するガスや反応副生成物を処理室201内から除去する(第2のアフターパージ)。その後、処理室201内の雰囲気が不活性ガスに置換され(不活性ガス置換)、処理室201内の圧力が常圧に復帰される(大気圧復帰)。
【0083】
(ボートアンロード及びウエハディスチャージ)
ボートエレベータ115によりシールキャップ219が下降され、マニホールド209の下端が開口される。そして、処理済のウエハ200が、ボート217に支持された状態で、マニホールド209の下端から反応管203の外部に搬出される(ボートアンロード)。処理済のウエハ200は、ボート217より取り出される(ウエハディスチャージ)。
【0084】
(3)本実施形態による効果
本実施形態によれば、以下に示す1つ又は複数の効果が得られる。
【0085】
(a)ウエハ200上に、段差被覆性、面内膜厚均一性に優れ、表面ラフネスが極めて良好なSiO膜を形成することが可能となる。
【0086】
というのも、本実施形態の成膜ステップでは、DCSによるトリートメント効果により、エピタキシャル成長をウエハ200の表面全域にわたって遅滞なく開始させることが可能となる。結果として、ウエハ200上に形成されるSi膜を、段差被覆性、面内膜厚均一性に優れ、表面ラフネスが極めて良好な膜とすることが可能となる。さらに、本実施形態によれば、成膜ステップを実施した後、昇温ステップを、Oガスを含む雰囲気下で実施するようにしている。これによりSi膜の表面を酸化させ、表面ラフネス等の悪化要因となる昇温時のSiの凝集や脱離を抑制することが可能となる。結果として、最終的に形成されるSiO膜を、表面ラフネス等が極めて良好な状態のまま維持することが可能となる。
【0087】
なお、表面ラフネスが良好なSiO膜上に形成される電極膜は、SiO膜との界面が平滑な状態となる。そのため、電極膜に電圧を印加した際に、SiO膜との界面に生じる電界の局所的な集中を回避することが可能となる。また、表面ラフネスが良好なSiO膜は、局所的に膜厚が薄い箇所が存在せず、面内全域にわたり一定以上の膜厚を有することとなる。これらにより、本実施形態で形成されるSiO膜は、高い絶縁特性を有する絶縁膜として好適に用いることが可能となる。
【0088】
(b)昇温ステップにおける処理室201内の圧力Pを、酸化ステップにおける処理室201内の圧力Pよりも高くする(P>P)ことにより、昇温ステップにおけるSi膜のサーマルエッチング(Siの脱離)をさらに抑制することができる。結果として、最終的に形成されるSiO膜を、表面ラフネス等が極めて良好な状態のまま維持することが、より確実に行えるようになる。Pを、成膜ステップにおける処理室201内の圧力Pよりも高くする(P>P)ことによっても、同様の効果が得られる。
【0089】
(c)本実施形態では、ウエハ200の表面を直接酸化させるのではなく、ウエハ200上に堆積させたSi膜を酸化させることから、ウエハ200の表面へのOの拡散を抑制することが可能となる。また、本実施形態のように、昇温ステップにおいてSi膜の表面のみを酸化させるようにすれば、その後に行う酸化ステップにおいて、ウエハ200の表面の酸化量を、その表面を僅かに酸化させる程度にとどめることも可能となる。すなわち、本実施形態の成膜手法によれば、下地であるウエハ200の酸化量をほんの僅かにとどめる等、ウエハ200の酸化量の制御ウインドウを大幅に広げることが可能となる。これに対し、ウエハ200の表面を直接酸化させる熱酸化法や、ウエハ200に対して原料ガスと酸化ガスとを交互に供給する一般的な交互供給法では、このようなウエハ200の酸化量制御を行うことは困難となる傾向がある。
【0090】
(d)本実施形態のように、ステップ1,2を非同時に行う交互供給法によりSi膜を形成した後、この膜の全体を酸化させてSiO膜を形成する場合には、原料ガスと酸化ガスとを同時に供給する同時供給法によりSiO膜を形成する場合よりも、SiO膜の段差被覆性、膜厚制御性、面内膜厚均一性等を向上させることが可能となる。このような成膜手法は、成膜処理の下地面が、ラインアンドスペース形状、ホール形状、フィン形状等の3D構造を有する場合に特に有効である。
【0091】
(e)酸化ステップを、成膜時の温度(第1温度)よりも高い例えば700℃以上の温度(第2温度)下で行うことから、比較的低温で形成されたSi膜に対して適正な熱処理を加えることができ、最終的に形成されるSiO膜を、絶縁特性やエッチング耐性が高い良質な絶縁膜とすることが可能となる。また、この熱処理により、SiO膜とウエハ200との間の界面電子トラップ密度を小さくすることも可能となる。また、酸化ステップにおいて、ウエハ200の表面を僅かに酸化させる場合には、ウエハ200の表面を酸化させない場合に比べて、SiO膜とウエハ200との間の界面電子トラップ密度をさらに小さくすることも可能となる。
【0092】
(f)酸化ステップでは、OガスとHガスとの反応により生じさせた酸化力の極めて高い酸化種を用いて酸化処理を行うことから、Si膜の全体を充分に酸化させることができ、最終的に得られるSiO膜を、不純物の含有量が極めて少なく、絶縁特性やエッチング耐性が極めて高い良質な絶縁膜とすることが可能となる。
【0093】
(g)成膜ステップから酸化ステップまでの一連のステップを、同一の処理室201内にてIn−Situで行うことから、基板処理の途中、ウエハ200が大気暴露されてしまうことがなく、ウエハ200を真空下においたまま一貫して基板処理を行うことが可能となる。結果として、クリーンな状態で基板処理を行うことができるだけでなく、酸化量を精密に制御する等、精密で質の高い成膜処理を行うことが可能となる。また、一連のステップをIn−Situで行うことにより、必要となる基板処理装置の台数を抑え、基板処理コストを低減させることも可能となる。
【0094】
これに対し、成膜ステップと酸化ステップとを、異なる処理室内にてEx−Situで行う場合、基板処理の途中、すなわち、成膜ステップ終了後、酸化ステップ開始前までの間にウエハ200が大気暴露され、Si膜の表面が自然酸化されたり汚染されたりする場合がある。また、酸化ステップを行う前にSi膜の表面をRCA洗浄すれば、Si膜の表面にRCA洗浄液の成分を含む酸化膜が形成されてしまう場合もある。これらの酸化膜の膜厚、膜質の制御は困難であることから、酸化ステップを行う前にSi膜の表面をHF洗浄することが必要となる場合もある。本実施形態によれば、このような洗浄ステップを実施する必要がなく、基板処理の生産性低下を回避することが可能となる。
【0095】
(h)上述の効果は、第1の原料ガスとしてDCSガス以外のハロシラン原料ガスを用いる場合や、第2の原料ガスとしてDSガス以外の水素化ケイ素ガスを用いる場合や、第1、第2のO含有ガスとしてOガス以外のO含有ガスを用いる場合や、H含有ガスとしてHガス以外のH含有ガスを用いる場合にも、同様に得ることができる。
【0096】
(4)変形例
本実施形態における基板処理シーケンスは、以下に示す変形例のように変更することができる。
【0097】
(変形例1)
上述したように、昇温ステップにおけるOガスの供給は、成膜ステップの終了後、ウエハ200の昇温を開始する前に始めてもよく、また、ウエハ200の昇温を開始した後に始めてもよい。また、昇温ステップにおけるOガスの供給は、ウエハ200の昇温が完了するまで継続してもよく、ウエハ200の昇温が完了する前に停止してもよい。
【0098】
なお、Oガスの供給を、ウエハ200の昇温開始前に始めたり、ウエハ200の昇温完了まで継続したりする場合には、Si膜の表面を昇温前に確実に酸化させ、Siの凝集や脱離をより確実に抑制できるようになる点で、好ましい。また、Oガスの供給を、ウエハ200の昇温開始後に始めたり、ウエハ200の昇温完了前に停止したりする場合には、Si膜の過剰な酸化を抑制し、その表面のみを酸化させることが容易に行えるようになる点で、好ましい。
【0099】
(変形例2)
昇温ステップでは、ウエハ200に対するOガスの供給を間欠的に所定回数行うようにしてもよい。本変形例によれば、Si膜の酸化をより適正に抑制することが可能となる。また、Oガスの供給回数を調整することにより、Si膜の表面の酸化量を精密に制御することも可能となる。
【0100】
(変形例3)
昇温ステップを、OガスとNOガスとの混合ガスを含む雰囲気下で行うようにしてもよい。NOガスはOガスよりも酸化力が低いことから、この混合ガスの雰囲気下で昇温ステップを行うことにより、Oガスの雰囲気下で昇温ステップを行う場合よりも、Si膜の酸化をより適正に抑制することが可能となる。また、各ガスの混合比率、すなわち、処理室201内における各ガスの分圧比率を調整することで、Si膜の表面の酸化量を精密に制御することも可能となる。
【0101】
(変形例4)
昇温ステップでは、ウエハ200に対するOガスの供給と、ウエハ200に対するNOガスの供給と、を交互に所定回数繰り返すようにしてもよい。この場合においても、変形例2や変形例3と同様の効果が得られる。
【0102】
(変形例5)
昇温ステップでは、ウエハ200に対するOガスの供給を連続的に行い、ウエハ200に対するNOガスの供給を間欠的に所定回数行うようにしてもよい。また、昇温ステップでは、ウエハ200に対するNOガスの供給を連続的に行い、ウエハ200に対するOガスの供給を間欠的に所定回数行うようにしてもよい。いずれの場合においても、変形例2や変形例3と同様の効果が得られる。
【0103】
(変形例6)
酸化対象とするSi膜を、DCSガスとDSガスとの同時供給により形成するようにしてもよい。また、この同時供給を間欠的に所定回数繰り返すことによりSi膜を形成するようにしてもよい。また、DCSガスを用いずに、DSガスの連続供給、或いは、DSガスの間欠供給によりSi膜を形成するようにしてもよい。また、DCSガスとDSガスとの交互供給により所定厚さのSi層(シード層)を形成した後、さらにMSガスを供給することによりSi膜を形成してもよい。本変形例においても、各種処理条件を図4図5に示す基板処理シーケンスの処理条件と同様に設定することで、同様の効果が得られる。
【0104】
(変形例7)
第1の原料ガスとして、1,1,2,2−テトラクロロ−1,2−ジメチルジシラン((CHSiCl、略称:TCDMDS)ガス、ビストリクロロシリルメタン((SiClCH、略称:BTCSM)ガス等のSi−C結合を有するハロシラン原料ガスを用いるようにしてもよい。本変形例においても、各種処理条件を図4図5に示す基板処理シーケンスの処理条件と同様に設定することで、同様の効果が得られる。また、本変形例によれば、SiO膜中に、Cを微量にドープすることが可能となる。
【0105】
(変形例8)
第1の原料ガスとして、テトラフルオロシラン(SiF)ガス等のフルオロシラン原料ガスや、テトラブロモシラン(SiBr)ガス等のブロモシラン原料ガスや、テトラヨードシラン(SiI)ガス等のヨードシラン原料ガス等を用いるようにしてもよい。本変形例においても、各種処理条件を図4図5に示す基板処理シーケンスの処理条件と同様に設定することで、同様の効果が得られる。
【0106】
(変形例9)
第1の原料ガスとして、塩化水素(HCl)ガス、塩素(Cl)ガス、塩化硼素(BCl)ガス、フッ化塩素(ClF)ガス等のSi非含有のハロゲン系ガスを用いるようにしてもよい。本変形例においても、各種処理条件を図4図5に示す基板処理シーケンスの処理条件と同様に設定することで、同様の効果が得られる。
【0107】
(変形例10)
第2の原料ガスとして、ヘキサメチルジシラザン([(CHSi]NH)ガス、テトラメチルジシラザン([H(CHSi]NH)ガス、ヘキサクロロジシラザン((ClSi)NH)ガス、テトラクロロジシラザン((HClSi)NH)ガス等のシラザン原料ガスを用いるようにしてもよい。本変形例においても、各種処理条件を図4図5に示す基板処理シーケンスの処理条件と同様に設定することで、同様の効果が得られる。また、本変形例によれば、SiO膜中に、Nを微量にドープすることが可能となる。
【0108】
(変形例11)
第2の原料ガスとして、ブチルアミノシラン(BAS)ガス、ビスターシャリブチルアミノシラン(BTBAS)ガス、ジメチルアミノシラン(DMAS)ガス、ビスジメチルアミノシラン(BDMAS)ガス、トリスジメチルアミノシラン(3DMAS)ガス、ジエチルアミノシラン(DEAS)ガス、ビスジエチルアミノシラン(BDEAS)ガス、ジプロピルアミノシラン(DPAS)ガス、ジイソプロピルアミノシラン(DIPAS)ガス等のアミノシラン原料ガスを用いるようにしてもよい。本変形例においても、各種処理条件を図4図5に示す基板処理シーケンスの処理条件と同様に設定することで、同様の効果が得られる。また、本変形例によれば、SiO膜中に、CおよびNを微量にドープすることが可能となる。
【0109】
(変形例12)
第1の原料ガスとして、ヘキサクロロジシロキサン((ClSi)O)ガス、テトラクロロジシロキサン((HClSi)O)ガス等のシロキサン原料ガスを用いるようにしてもよい。また、第2の原料ガスとして、ヘキサメチルジシロキサン([(CHSi]O)ガス、テトラメチルジシロキサン([H(CHSi]O)ガス等のシロキサン原料ガスを用いるようにしてもよい。本変形例においても、各種処理条件を図4図5に示す基板処理シーケンスの処理条件と同様に設定することで、同様の効果が得られる。
【0110】
<本発明の他の実施形態>
以上、本発明の実施形態を具体的に説明した。しかしながら、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0111】
基板処理に用いられるレシピは、処理内容に応じて個別に用意し、電気通信回線や外部記憶装置123を介して記憶装置121c内に格納しておくことが好ましい。そして、処理を開始する際、CPU121aが、記憶装置121c内に格納された複数のレシピの中から、基板処理の内容に応じて、適正なレシピを適宜選択することが好ましい。これにより、1台の基板処理装置で様々な膜種、組成比、膜質、膜厚の膜を、再現性よく形成することができるようになる。また、オペレータの負担を低減でき、操作ミスを回避しつつ、処理を迅速に開始できるようになる。
【0112】
上述のレシピは、新たに作成する場合に限らず、例えば、基板処理装置に既にインストールされていた既存のレシピを変更することで用意してもよい。レシピを変更する場合は、変更後のレシピを、電気通信回線や当該レシピを記録した記録媒体を介して、基板処理装置にインストールしてもよい。また、既存の基板処理装置が備える入出力装置122を操作し、基板処理装置に既にインストールされていた既存のレシピを直接変更するようにしてもよい。
【0113】
上述の実施形態では、一度に複数枚の基板を処理するバッチ式の基板処理装置を用いて膜を形成する例について説明した。本発明は上述の実施形態に限定されず、例えば、一度に1枚または数枚の基板を処理する枚葉式の基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、好適に適用できる。また、上述の実施形態では、ホットウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて膜を形成する例について説明した。本発明は上述の実施形態に限定されず、コールドウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、好適に適用できる。
【0114】
上述の実施形態や変形例では、基板上に主元素としてSiを含む酸化膜を形成する例について説明したが、本発明はこのような態様に限定されない。すなわち、本発明は、Siの他、ゲルマニウム(Ge)、ボロン(B)等の半金属元素を主元素として含む酸化膜を基板上に形成する場合にも、好適に適用することができる。また、本発明は、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、ストロンチウム(Sr)、アルミニウム(Al)等の金属元素を主元素として含む酸化膜を基板上に形成する場合にも、好適に適用することができる。
【0115】
上述の実施形態や変形例等は、適宜組み合わせて用いることができる。また、このときの処理条件は、例えば上述の実施形態と同様な処理条件とすることができる。
【実施例】
【0116】
以下、上述の実施形態で得られる効果を裏付ける実験結果について説明する。
【0117】
サンプル1として、図1に示す基板処理装置を用い、図4に示す成膜シーケンスによりウエハ上にSi膜を形成した。その後、図5に示す基板処理シーケンスにより昇温ステップ、酸化ステップを順に実施することで、ウエハ上に形成したSi膜の全体をSiO膜へと改質させた。第1のO含有ガスとしてはOガスを、第2のO含有ガスとしてはOガスを、H含有ガスとしてはHガスを用いた。各ステップにおける処理条件は、上述の実施形態に記載の処理条件範囲内の条件とした。成膜ステップ、昇温ステップ、酸化ステップは、これらのステップの合間にウエハを処理室内から搬出するステップを行うことなく、同一の処理室内で連続的に行った。
【0118】
サンプル2として、サンプル1を作製する際と同様の処理手順、処理条件によりウエハ上にSi膜を形成した。その後、図5に示す基板処理シーケンスにより昇温ステップ、酸化ステップを順に実施することで、ウエハ上に形成したSi膜をSiO膜へと変化させた。ただし、昇温ステップでは、ウエハに対するOガスの供給を不実施とした。他の処理手順、処理条件は、サンプル1を作製する際の処理手順、処理条件と同様とした。
【0119】
そして、サンプル1,2の各膜の表面ラフネス(RMS)を、原子間力顕微鏡(AFM)を用いてそれぞれ測定した。ここでRMSとは二乗平均粗さのことであり、その値が小さいほどSiO膜の表面ラフネスが良好であること、すなわち、SiO膜の表面が平滑であることを意味している。図7は、SiO膜のRMSの測定結果を示すグラフであり、縦軸はRMS[nm]を、横軸はサンプル2,1を順に示している。図8(a)はサンプル2のSiO膜の表面のAFM画像を、図8(b)は、サンプル1のSiO膜の表面のAFM画像をそれぞれ示している。
【0120】
これらの図によれば、昇温ステップでOガスを供給したサンプル1の方が、昇温ステップでOガスの供給を不実施としたサンプル2よりも、RMSが10倍以上小さい(表面が平滑である)ことが分かる。これは、サンプル1を作製する際、昇温ステップで供給したOガスが、Siの凝集や脱離を抑制するように作用したためと考えられる。
【0121】
<本発明の好ましい態様>
以下、本発明の好ましい態様について付記する。
【0122】
(付記1)
本発明の一態様によれば、
第1温度とした基板に対して所定元素を含む原料を供給し、前記基板上に、前記所定元素を含む膜を形成する成膜工程と、
第1の酸素含有ガスを含む雰囲気下で、前記基板の温度を前記第1温度よりも高い第2温度へ変更する昇温工程と、
第2の酸素含有ガスを含む雰囲気下で、前記基板の温度を前記第2温度に維持し、前記膜を酸化させる酸化工程と、
を同一の処理室内で行う工程を有する半導体装置の製造方法、または、基板処理方法が提供される。
【0123】
(付記2)
付記1に記載の方法であって、好ましくは、
前記第2温度は、前記第1の酸素含有ガス非含有の雰囲気下で、前記膜に含まれる前記所定元素の移動、および、前記膜からの前記所定元素の脱離のうち少なくともいずれかが顕著に生じる温度である。
【0124】
(付記3)
付記1又は2に記載の方法であって、好ましくは、
前記昇温工程における前記処理室内の圧力(第2圧力)を、前記酸化工程における前記処理室内の圧力(第3圧力)よりも大きな圧力とする。
【0125】
(付記4)
付記1〜3のいずれかに記載の方法であって、好ましくは、
前記昇温工程における前記処理室内の圧力(第2圧力)を、前記成膜工程における前記処理室内の圧力(第1圧力)よりも大きな圧力とする。
【0126】
(付記5)
付記1〜4のいずれかに記載の方法であって、好ましくは、
前記酸化工程は、前記基板に対して前記第2の酸素含有ガスと水素含有ガスとを同時に供給する期間を含む。
【0127】
(付記6)
付記1〜5のいずれかに記載の方法であって、好ましくは、
前記第1の酸素含有ガスと前記第2の酸素含有ガスとは同一の分子構造を有する。
【0128】
(付記7)
付記1〜5のいずれかに記載の方法であって、好ましくは、
前記第1の酸素含有ガスと前記第2の酸素含有ガスとは異なる分子構造を有する。
【0129】
(付記8)
付記7に記載の方法であって、好ましくは、
前記第1の酸素含有ガスとして、前記第2の酸素含有ガスよりも酸化力が小さいガスを用いる。
【0130】
(付記9)
付記8に記載の方法であって、好ましくは、
前記第1の酸素含有ガスとして窒素を含むガスを用い、前記第2の酸素含有ガスとして窒素非含有のガスを用いる。
【0131】
(付記10)
付記9に記載の方法であって、好ましくは、
前記第1の酸素含有ガスとして、亜酸化窒素、一酸化窒素、および二酸化窒素からなる群より選択される少なくとも1つを含むガスを用い、
前記第2の酸素含有ガスとして、酸素、オゾン、原子状酸素、酸素ラジカル、および水酸基ラジカルからなる群より選択される少なくとも1つを含むガスを用いる。
【0132】
(付記11)
付記1〜10のいずれかに記載の方法であって、好ましくは、
前記昇温工程における記第1の酸素含有ガスの供給流量(第1流量)を、前記酸化工程における前記第2の酸素含有ガスの供給流量(第2流量)以下の流量とする。より好ましくは、
前記第1流量を、前記第2流量よりも小さな流量とする。
【0133】
(付記12)
付記1〜11のいずれかに記載の方法であって、好ましくは、
前記昇温工程では、前記膜の全体を酸化させることなく前記膜の表面を酸化させ、
前記酸化工程では、前記膜の全体を酸化させる。
【0134】
(付記13)
付記12に記載の方法であって、好ましくは、
前記昇温工程では、前記膜を、その最表面から0.05nm以上1nm以下、好ましくは0.1nm以上0.5nm以下、より好ましくは0.2nm以上0.5nm以下の深さにわたり酸化させる。
【0135】
(付記14)
付記12又は13に記載の方法であって、好ましくは、
前記酸化工程では、前記膜の全体と、前記膜の下地の表面と、をそれぞれ酸化させる。
【0136】
(付記15)
付記14に記載の方法であって、好ましくは、
前記酸化工程では、前記膜の下地を、前記膜との界面から0.05nm以上1nm以下、好ましくは0.1nm以上0.5nm以下、より好ましくは0.2nm以上0.5nm以下の深さにわたり酸化させる。
【0137】
(付記16)
付記1〜16のいずれかに記載の方法であって、好ましくは、
前記原料として水素化ケイ素を含むガス用いる。より好ましくは、
前記原料としてジシランを含むガス用いる。
【0138】
(付記17)
本発明の他の態様によれば、
基板を収容する処理室と、
前記処理室内の基板に対して、所定元素を含む原料、第1の酸素含有ガス、および第2の酸素含有ガスを供給する供給系と、
前記処理室内の基板を加熱する加熱機構と、
付記1の処理を行わせるように、前記供給系および前記加熱機構を制御するよう構成される制御部と、
を有する基板処理装置が提供される。
【0139】
(付記18)
本発明のさらに他の態様によれば、
付記1の処理をコンピュータによって基板処理装置に実行させるプログラム、又は、前記プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体が提供される。
【符号の説明】
【0140】
200 ウエハ(基板)
201 処理室
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8