【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、請求項1の特徴を有する駆動機構によって解決される。本発明は、ばねトルクには耐えるが使用者のダイヤル設定には克服される第2のクラッチとして戻り止め係合を提供するという着想に基づく。好ましい実施形態によれば、第2のクラッチは、歯が、時計回りと反時計回り方向では抵抗の異なる第2のクラッチがデカップリングした状態で互いに重なり合うことが可能になるように、時計回りと反時計回り方向で斜面歯角の異なる歯が付いたラチェットクリッカを含む。そのデカップリング状態でラチェットクリッカとして動作するように、第2のクラッチは、その歯がデカップリング状態では緩い係合になるように配置される。言い換えると、第2のクラッチは、連結状態では完全に係合して駆動部材とダイヤル部材の間のいかなる相対回転も阻止するのに対し、デカップリング状態ではダイヤル部材に対して駆動部材の相対回転が可能であり、ラチェットクリッカの歯が互いに重なり合って触覚および/または可聴フィードバックを使用者に提供する。ラチェットクリッカ歯の傾斜歯角度が異なることにより、互いに重なり合う歯によって生成される音は、時計回りと反時計回り方向で異なる。
【0009】
本発明によるクラッチは、たとえば互いに係合および係合解除するのに適している歯を用いたフォームフィット(ポジティブフィット(positive fit))によって、または非ポジティブ(摩擦)連結によって、またはこれらの組合せによって、2つの構成要素部材を連結するのに適している構成要素または機能である。クラッチは、たとえば構成要素部材上に直接設けられた歯、スプライン、溝、当接面などによって連結またはデカップリングされるべき2つの構成要素部材からなる一体化機能によって形成される。あるいは、クラッチは、連結またはデカップリングされるべき2つの構成要素部材に、たとえば恒久的に固定または結合される1つまたはそれ以上の別々の連結部材を含む。クラッチの作動、すなわち連結またはデカップリングの動作は、クラッチ部材またはクラッチ機能(たとえば相手係合解除クラッチ歯)の相対運動を含み、かつ/またはクラッチ部材もしくはクラッチ機能にかかる力の変化を含む。
【0010】
上記で定義された駆動機構の一般的な機能は、用量を設定すること、およびそれに続けて設定用量を投薬することである。用量設定(用量ダイヤル設定)には通常、使用者が駆動機構の1つの要素を操作すること、好ましくはダイヤル部材をたとえばダイヤルグリップによって回すことが必要である。用量投薬中にダイヤル部材は、その元の位置まで動き、たとえば回転し、用量設定中には作動されない駆動部材が、用量投薬中にはダイヤル部材と共に動かされる。駆動部材の動きは、回転、変位、または、たとえば螺旋経路に沿った組み合わされた動きである。駆動部材は、用量投薬中にカートリッジから薬剤を排出するピストンロッドとして機能する親ねじに作用する。
【0011】
駆動機構のこの基本的機能に加えて、場合によっては、既に設定されている用量のリセット、すなわち用量の修正または選択解除を可能にすることが好ましい。好ましくは、使用者はただ単に、ダイヤル部材をたとえばダイヤルグリップによって、用量設定中の回転と比べて反対の方向に回すだけでよい。好ましくは、駆動部材は、用量リセット中にも作動されない。
【0012】
機構の構成要素の回転を可能にするために、各構成要素が主として、駆動機構の共通長手方向軸のまわりに同心に置かれるならば好ましい。すなわち、各構成要素は管状またはスリーブ状の形状を有する。さらに、駆動部材の構成要素の総数を減らすことが望ましいが、1つまたはそれ以上の構成要素を別々の要素に分割することが製造上の理由から有効である。たとえば、ハウジングが外側本体と、外側本体に軸方向および/または回転方向に拘束されるインサートおよび/または内側本体とを含む。加えて、クラッチは、クラッチによって連結またはデカップリングされる構成要素上に直接、突起および/または凹部を設けることによって設計される。代替形態として、連結またはデカップリングされるべき2つの構成要素の間に入れられた別個のクラッチ要素が設けられる。
【0013】
本発明は、注射デバイスに使用される駆動機構を対象とする。注射デバイスは通常、カートリッジホルダと、投薬予定の薬剤を収容するカートリッジとをさらに含む。再使用可能な注射デバイスでは、カートリッジホルダは、空のカートリッジを新しいものと交換するために、駆動機構から取外し可能である。代替形態として、使い捨て注射デバイスでは、カートリッジホルダおよびカートリッジは、ある用量数がカートリッジから投薬された後には注射デバイス全体が廃棄されなければならないように、駆動機構に堅固に取り付けられる。
【0014】
以下では、注射デバイスまたは駆動機構の遠位端は、カートリッジと、たとえば針とが置かれる端部と呼ばれるのに対し、反対側の端部は近位端である。用量ボタンは近位端に設けられる。
【0015】
本発明の一態様によれば、駆動部材とダイヤル部材の間に設けられた第2のクラッチは、2つの機能を提供する:第2のクラッチは、一方では、駆動部材とダイヤル部材の間の相対回転を可能にするか、または阻止し、他方では、第2のクラッチのデカップリング状態でラチェットクリッカを提供する。すなわち、本発明によれば、駆動機構に必要とされる部材または構成要素が少ない。
【0016】
本発明の好ましい実施形態では、ラチェットクリッカの歯は、ねじりばねがダイヤル部材を付勢する回転方向では急勾配の斜面歯角を有し、反対の回転方向では浅い斜面歯角を有する。駆動機構のねじりばねは、ダイヤル部材がハウジングに対して、また駆動部材に対して回転するとき、エネルギーを蓄積する。この蓄積エネルギーを保存するには、ダイヤル部材が望ましくない逆巻きをしないようにする必要がある。これは、ねじりばねのトルクが小さすぎて、第2のクラッチの連結状態およびデカップリング状態でラチェットクリッカの歯が互いに強制的に重ね合わされないように設計されている、ラチェットクリッカ歯の急勾配の傾斜歯角によって達成される。一方で、反対の回転方向では浅い傾斜歯角により、用量を設定するのに使用者が必要とする、またそれによってねじりばねを緊張させるトルクは、比較的小さい。既に設定されている用量を減らすには、使用者は、ラチェットクリッカ歯の急勾配の傾斜歯角の高い抵抗を克服しなければならないが、設定用量を減らすためのこの回転は、ねじりばねのトルクに助けられ、その結果、設定用量を減らすために必要な全使用者トルクは、この場合もやはり小さくなる。異なる斜面角度の代替形態として、またはそれに加えて、歯の摩擦が時計回りと反時計回り方向では異なっている。これは、2つの歯の面の異なる材料、および/または異なる表面仕上げ(たとえば、異なる粗さ)を含む。
【0017】
駆動機構の様々な配置が可能であるが、用量設定中および用量リセット中に、第1のクラッチがその連結状態にあり、第2のクラッチがそのデカップリング状態にあるならば好ましい。すなわち、用量設定中および用量リセット中に駆動部材は、ハウジングに対する相対回転が阻止される。これにより、用量設定中および用量リセット中に親ねじが駆動されないことが確実になる。しかし、ダイヤル部材は、ラチェットクリッカとして機能する第2のクラッチの抵抗を克服する使用者によって回される。好ましくは、ダイヤル部材は、用量設定中および用量リセット中に、回転固定された駆動部材に対して回転する。
【0018】
用量設定中および用量リセット中に、この第1のクラッチおよび第2のクラッチの状態を維持するために、用量設定中および用量リセット中に、第1のクラッチをその連結状態で、および/または第2のクラッチをそのデカップリング状態で付勢することが好ましい。これは、ねじりばねによって、および/または追加ばねもしくは弾性部材によって達成される。本発明の実施形態では、付勢は第2のクラッチを、恒久的な連結状態ではない、すなわち使用者が加えたトルクによって克服される、その連結状態になるように引っ張る作用をする。
【0019】
本発明の実施形態によれば、用量設定中および用量リセット中に、第2のクラッチ(ラチェットクリッカ)の歯は、デカップリング状態で係合するが、弾性部材の力に抗する軸方向運動によって互いに重なり合うことが可能にされる。言い換えると、ねじりばね、または追加ばね、または弾性部材は、第2のクラッチのデカップリング状態でもラチェットクリッカの歯を強制的に係合する。しかし、この第2のクラッチのデカップリング状態では、歯が互いに跳び越えることができるように、それぞれの歯の相対軸方向運動が可能にされる。
【0020】
用量投薬中、第1のクラッチはそのデカップリング状態にあり、第2のクラッチはその連結状態にある。したがって、用量投薬中に、第1のクラッチがそのデカップリング状態にあるときにはハウジングに対する駆動部材の回転が可能になり、第2のクラッチがその連結状態にあるときには駆動部材とダイヤル部材の間の相対回転が阻止される。第2のクラッチの連結状態は、ラチェットクリッカの歯は係合するが、互いに重なり合うこと、および/または第2のクラッチのデカップリング状態に対して上記の相対軸方向運動をすることは可能にされない状態である。すなわちダイヤル部材は、好ましくは用量投薬中に回転し、親ねじを作動させる駆動部材を引きずる。
【0021】
第1のクラッチを連結またはデカップリングするための様々な方法がある。好ましい実施形態によれば、第1のクラッチは、駆動部材をハウジングに対して軸方向に変位させることによって連結およびデカップリングされる。代替形態として、駆動部材は回され、かつ/または別個の構成要素がハウジングに対して動かされる(すなわち変位され、かつ/または回される)。本発明の別の実施形態によれば、駆動機構は、ハウジング内に、回転固定され軸方向に変位可能に保持されているトリガクラッチを含む。第1のクラッチは、トリガクラッチを駆動部材に対して軸方向に変位させることによってデカップリングされる。
【0022】
トリガクラッチを作動させるために、駆動機構は、ハウジングに旋回可能に取り付けられたトリガを含むことが好ましい。トリガは、ハウジングに対してトリガが旋回することによりトリガクラッチを軸方向に変位させるようにトリガクラッチに係合する。
【0023】
第1のクラッチは、駆動部材および/またはハウジング上に直接設けられた、または駆動部材および/またはハウジングに連結された1つまたはそれ以上の別個の構成要素上に設けられた、解放可能ロッキング手段を含む。好ましくは、第1のクラッチは、駆動部材の外面に少なくとも1つのスプラインと、ハウジングの内面またはハウジングインサートの内面に少なくとも1つの対応する切込みとを含む。代替形態として、切込みが駆動部材の外面に設けられ、ハウジングの内面には対応するスプラインが備えられる。言い換えると、第1のクラッチは、好ましくは駆動部材およびハウジングに対して半径方向に設けられる。
【0024】
一般に、第2のクラッチは、第1のクラッチに関する上記の説明と同様に設けられる。しかし、第2のクラッチが、駆動部材の前縁部上(たとえば近位面)の面歯と、ダイヤル部材の前縁部上(たとえば遠位面)の、またはクラッチ板のような別個の構成要素の遠位面の、対応する面歯とを含むならば好ましい。さらに、面歯は、駆動部材のフランジもしくはショルダ、および/またはダイヤル部材もしくはクラッチ板に設けられる。すなわち第2のクラッチは、駆動部材およびダイヤル部材に対してどちらかと言えば軸方向に設けられる。
【0025】
本発明の一実施形態によれば、ダイヤル部材に回転固定されるクラッチ板が提供される。クラッチ板はさらに、ダイヤル部材に軸方向に固定される。クラッチ板は、第2のクラッチの一部を形成し、第2のクラッチは、クラッチ板を駆動部材に対して軸方向に変位させることによって連結およびデカップリングされる。言い換えると、第2のクラッチは、ラチェットクリッカの歯が互いに重なり合わないようにするために、クラッチ板を駆動部材にしっかりと押し付けることによって連結される。
【0026】
本発明の別の態様によれば、駆動部材は、ハウジング内でねじ係合の形で案内される表示部材を含む。表示部材は、好ましくはダイヤル部材に回転固定され、ダイヤル部材に対して軸方向に変位可能である。たとえば、対応するスプラインおよび溝が、表示部材およびダイヤル部材に設けられる。表示部材は、ダイヤル設定用量を示すための、ハウジングの窓または開口部を通して見える一連の数字で印付けられる。加えて表示部材は、用量設定、用量リセットおよび/または用量投薬のための端部止め具を提供する機能を有する。言い換えると、表示部材は、ゼロ用量止め具および最大設定可能用量止め具を画成する2つの位置の間で動かされる。
【0027】
本発明の別の態様によれば、表示部材は可撓要素を含み、ハウジングまたはトリガクラッチは、反対要素を含む。可撓要素は、用量投薬の終了時に反対要素に接触して、可聴および/または触覚フィードバックを生み出す。すなわち、可撓要素と反対要素は一緒に、用量投薬が完成したことを示す。好ましくは、反対要素はトリガクラッチに設けられ、その結果、ハウジングに対してトリガが旋回するとき、反対要素が、用量投薬中に表示部材の可撓要素によって示される経路に入れられるようになる。したがって、用量投薬の終了時のフィードバックは、トリガが作動される場合にだけ提供される。
【0028】
本発明の別の態様によれば、駆動部材はさらに、駆動部材上で軸方向に変位可能かつ非回転可能に案内されるナットを含む。たとえば、ナットおよび駆動部材は、対応するスプラインおよび切込みを備える。ナットはさらに、用量設定中および用量リセット中の駆動部材とダイヤル部材の間の相対回転によりナットが端部止め具に向かって動くように、ダイヤル部材の内側ねじ山に係合する外側ねじ山を有する。本発明によれば注射デバイスは、上記のように、薬剤を収容するカートリッジおよび駆動機構を含む。ナットおよび端部止め具は、ナットが注射デバイス中の薬剤の量を超える用量の設定を防止するように、注射デバイスの駆動機構内に設けられる。言い換えると、端部止め具は、好ましくは用量設定中にナットが移動する軌道の長さを画成し、この軌道の長さは、カートリッジ内の薬剤の総量に対応する。ダイヤル部材の内側ねじ山は、ダイヤル部材の内面に設けられ、好ましくは複数のねじ山部分を含む。
【0029】
本発明の別の態様によれば、ハウジングはさらに、単方向ラチェット、または好ましくは駆動部材と協働するらせん止め機能を含み、この駆動部材と親ねじはねじ係合されている。らせん止め機能は、好ましくは、駆動部材と親ねじのねじ係合のらせんピッチと(少なくともほぼ)一致するらせんピッチを有する。したがって、駆動部材は、螺旋止め機能輪郭によって画成される螺旋経路に沿って回転し、したがって、ハウジングに対して静止したままの親ねじをらせん状に上に移動する。らせん止め機能の間隔は、単一単位の薬剤を送達するのに必要な駆動部材の回転に対応する。それゆえに、駆動部材が1単位だけ回されると、軸方向の引離しが、1単位を投薬するのに必要な親ねじの変位に対応して引き起こされる。駆動部材に加えられる、ねじりばねによって提供される軸方向の力は、親ねじに直接作用して、らせん止め機能を再係合するように駆動部材および親ねじを変位させることになる。止め機能インターフェースは、それが、第1のクラッチによって画成された駆動部材の回転位置の変化の影響を受けない安定した親ねじの軸方向位置を提供するので、用量精度を改善する。
【0030】
本明細書で使用する用語「薬剤」は、少なくとも1つの薬学的に活性な化合物を含む医薬製剤を意味し、
ここで、一実施形態において、薬学的に活性な化合物は、最大1500Daまでの分子量を有し、および/または、ペプチド、タンパク質、多糖類、ワクチン、DNA、RNA、酵素、抗体もしくはそのフラグメント、ホルモンもしくはオリゴヌクレオチド、または上述の薬学的に活性な化合物の混合物であり、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病、または糖尿病性網膜症などの糖尿病関連の合併症、深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症などの血栓塞栓症、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、がん、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症および/または関節リウマチの処置および/または予防に有用であり、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病または糖尿病性網膜症などの糖尿病に関連する合併症の処置および/または予防のための少なくとも1つのペプチドを含み、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、少なくとも1つのヒトインスリンもしくはヒトインスリン類似体もしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)もしくはその類似体もしくは誘導体、またはエキセンジン−3もしくはエキセンジン−4もしくはエキセンジン−3もしくはエキセンジン−4の類似体もしくは誘導体を含む。
【0031】
インスリン類似体は、たとえば、Gly(A21),Arg(B31),Arg(B32)ヒトインスリン;Lys(B3),Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28),Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;B28位におけるプロリンがAsp、Lys、Leu、Val、またはAlaで置き換えられており、B29位において、LysがProで置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28−B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリン、およびDes(B30)ヒトインスリンである。
【0032】
インスリン誘導体は、たとえば、B29−N−ミリストイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−パルミトイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−ミリストイルヒトインスリン;B29−N−パルミトイルヒトインスリン;B28−N−ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28−N−パルミトイル−LysB28ProB29ヒトインスリン;B30−N−ミリストイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30−N−パルミトイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29−N−(N−パルミトイル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(N−リトコリル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)−des(B30)ヒトインスリン、およびB29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0033】
エキセンジン−4は、たとえば、H−His−Gly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Lys−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Lys−Asn−Gly−Gly−Pro−Ser−Ser−Gly−Ala−Pro−Pro−Pro−Ser−NH2配列のペプチドであるエキセンジン−4(1−39)を意味する。
【0034】
エキセンジン−4誘導体は、たとえば、以下のリストの化合物:
H−(Lys)4−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)5−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39);または
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
(ここで、基−Lys6−NH2が、エキセンジン−4誘導体のC−末端に結合していてもよい);
【0035】
または、以下の配列のエキセンジン−4誘導体:
desPro36エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2(AVE0010)、
H−(Lys)6−desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
desAsp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
H−desAsp28Pro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
desMet(O)14,Asp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2;
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Lys6−desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
H−desAsp28,Pro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,
Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(S1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2;
または前述のいずれか1つのエキセンジン−4誘導体の薬学的に許容される塩もしくは溶媒和化合物
から選択される。
【0036】
ホルモンは、たとえば、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、ゴセレリンなどの、Rote Liste、2008年版、50章に列挙されている脳下垂体ホルモンまたは視床下部ホルモンまたは調節性活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニストである。
【0037】
多糖類としては、たとえば、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、もしくは超低分子量ヘパリン、またはそれらの誘導体、または上述の多糖類の硫酸化形態、たとえば、ポリ硫酸化形態、および/または、薬学的に許容されるそれらの塩がある。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容される塩の例としては、エノキサパリンナトリウムがある。
【0038】
抗体は、基本構造を共有する免疫グロブリンとしても知られている球状血漿タンパク質(約150kDa)である。これらは、アミノ酸残基に付加された糖鎖を有するので、糖タンパク質である。各抗体の基本的な機能単位は免疫グロブリン(Ig)単量体(1つのIg単位のみを含む)であり、分泌型抗体はまた、IgAなどの2つのIg単位を有する二量体、硬骨魚のIgMのような4つのIg単位を有する四量体、または哺乳動物のIgMのように5つのIg単位を有する五量体でもあり得る。
【0039】
Ig単量体は、4つのポリペプチド鎖、すなわち、システイン残基間のジスルフィド結合によって結合された2つの同一の重鎖および2本の同一の軽鎖から構成される「Y」字型の分子である。それぞれの重鎖は約440アミノ酸長であり、それぞれの軽鎖は約220アミノ酸長である。重鎖および軽鎖はそれぞれ、これらの折り畳み構造を安定化させる鎖内ジスルフィド結合を含む。それぞれの鎖は、Igドメインと呼ばれる構造ドメインから構成される。これらのドメインは約70〜110個のアミノ酸を含み、そのサイズおよび機能に基づいて異なるカテゴリー(たとえば、可変すなわちV、および定常すなわちC)に分類される。これらは、2つのβシートが、保存されたシステインと他の荷電アミノ酸との間の相互作用によって一緒に保持される「サンドイッチ」形状を作り出す特徴的な免疫グロブリン折り畳み構造を有する。
【0040】
α、δ、ε、γおよびμで表される5種類の哺乳類Ig重鎖が存在する。存在する重鎖の種類により抗体のアイソタイプが定義され、これらの鎖はそれぞれ、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM抗体中に見出される。
【0041】
異なる重鎖はサイズおよび組成が異なり、αおよびγは約450個のアミノ酸を含み、δは約500個のアミノ酸を含み、μおよびεは約550個のアミノ酸を有する。各重鎖は、2つの領域、すなわち定常領域(CH)と可変領域(VH)を有する。1つの種において、定常領域は、同じアイソタイプのすべての抗体で本質的に同一であるが、異なるアイソタイプの抗体では異なる。重鎖γ、α、およびδは、3つのタンデム型のIgドメインと、可撓性を加えるためのヒンジ領域とから構成される定常領域を有し、重鎖μおよびεは、4つの免疫グロブリン・ドメインから構成される定常領域を有する。重鎖の可変領域は、異なるB細胞によって産生された抗体では異なるが、単一B細胞またはB細胞クローンによって産生された抗体すべてについては同じである。各重鎖の可変領域は、約110アミノ酸長であり、単一のIgドメインから構成される。
【0042】
哺乳類では、λおよびκで表される2種類の免疫グロブリン軽鎖がある。軽鎖は2つの連続するドメイン、すなわち1つの定常ドメイン(CL)および1つの可変ドメイン(VL)を有する。軽鎖のおおよその長さは、211〜217個のアミノ酸である。各抗体は、常に同一である2本の軽鎖を有し、哺乳類の各抗体につき、軽鎖κまたはλの1つのタイプのみが存在する。
【0043】
すべての抗体の一般的な構造は非常に類似しているが、所与の抗体の固有の特性は、上記で詳述したように、可変(V)領域によって決定される。より具体的には、各軽鎖(VL)について3つおよび重鎖(HV)に3つの可変ループが、抗原との結合、すなわちその抗原特異性に関与する。これらのループは、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる。VHドメインおよびVLドメインの両方からのCDRが抗原結合部位に寄与するので、最終的な抗原特異性を決定するのは重鎖と軽鎖の組合せであり、どちらか単独ではない。
【0044】
「抗体フラグメント」は、上記で定義した少なくとも1つの抗原結合フラグメントを含み、そのフラグメントが由来する完全抗体と本質的に同じ機能および特異性を示す。パパインによる限定的なタンパク質消化は、Igプロトタイプを3つのフラグメントに切断する。1つの完全なL鎖および約半分のH鎖をそれぞれが含む2つの同一のアミノ末端フラグメントが、抗原結合フラグメント(Fab)である。サイズが同等であるが、鎖間ジスルフィド結合を有する両方の重鎖の半分の位置でカルボキシル末端を含む第3のフラグメントは、結晶可能なフラグメント(Fc)である。Fcは、炭水化物、相補結合部位、およびFcR結合部位を含む。限定的なペプシン消化により、Fab片とH−H鎖間ジスルフィド結合を含むヒンジ領域の両方を含む単一のF(ab’)2フラグメントが得られる。F(ab’)2は、抗原結合に対して二価である。F(ab’)2のジスルフィド結合は、Fab’を得るために切断することができる。さらに、重鎖および軽鎖の可変領域は、縮合して単鎖可変フラグメント(scFv)を形成することもできる。
【0045】
薬学的に許容される塩は、たとえば、酸付加塩および塩基性塩である。酸付加塩としては、たとえば、HClまたはHBr塩がある。塩基性塩は、たとえば、アルカリまたはアルカリ土類、たとえば、Na+、またはK+、またはCa2+から選択されるカチオン、または、アンモニウムイオンN+(R1)(R2)(R3)(R4)(式中、R1〜R4は互いに独立に:水素、場合により置換されたC1〜C6アルキル基、場合により置換されたC2〜C6アルケニル基、場合により置換されたC6〜C10アリール基、または場合により置換されたC6〜C10ヘテロアリール基を意味する)を有する塩である。薬学的に許容される塩のさらなる例は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」17版、Alfonso R.Gennaro(編)、Mark Publishing Company、Easton、Pa.、U.S.A.、1985およびEncyclopedia of Pharmaceutical Technologyに記載されている。
【0046】
薬学的に許容される溶媒和物は、たとえば、水和物である。
【0047】
次に、本発明についてさらに詳細に添付の図面を参照して説明する。