(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリマーに対して少なくとも90質量%の成分B1.1が、モノマーとしてのトリオキサンおよび任意にブタンジオールホルマール、好ましくはモノマーとしてのトリオキサンおよびブタンジオールホルマールに由来し、ブタンジオールホルマールの割合が、ポリマーに対して1〜5質量%、好ましくは2〜3.5質量%、特に2.5〜3質量%の範囲である、請求項1に記載の方法。
【背景技術】
【0002】
Catamold(登録商標)の商標で市販されているポリマー粒子は、無機粉末、特に金属粉末またはセラミック粉末を含む。典型的には、これらの粉末を最初にポリエチレンの薄層でコーティングし、次にポリオキシメチレンバインダーに作り上げる。次に、これらのCatamold細粒を射出成形により加工しグリーン生成物を得て、バインダーの除去によりブラウン生成物に変換し、次に焼結し焼結成形体を得る。この方法は、金属射出成形(MIM)として知られており、複雑な形状を有する金属またはセラミックの成形体の製造を可能にする。
【0003】
ポリオキシメチレンのホモポリマーまたはコポリマーの使用により作製されるグリーン生成物は、非常に良好な機械的特性、特に寸法安定性を有する。
【0004】
バインダー除去は、例えばHNO
3雰囲気のような酸性雰囲気に、110〜140℃で暴露することを介して、POMバインダーの分解を伴い達成されることが多い。POMの酸性解重合により、バインダーの完全除去が可能となる。無機粒子の薄いポリエチレンコーティングにより、これらが互いに結合され、ブラウン生成物を得る。
【0005】
ブラウン生成物を、好ましくは約1100〜1700℃の範囲の温度で焼結炉内において焼結し、所望の金属成形体またはセラミック成形体を得る。
【0006】
EP−A−413231に、無機焼結成形体の製造方法が記載されており、焼結可能な粉末と、バインダーとしてのポリオキシメチレンとの圧密体は、射出成形または押出しされる。気体状酸または気体の三フッ化ホウ素を用いて、好ましくは不活性キャリヤーガス流中で処理することにより、バインダーをこれらの圧密体から除去し、得られた部分を焼結する。
【0007】
EP−A−0701875は、粉末射出成形による金属の圧密体の製造方法に関する。ポリオキシメチレンのホモポリマーおよびコポリマーの脱バインダーを酸の存在下で実施し、酸は硝酸、シュウ酸または三フッ化ホウ素であり得る。
【0008】
両方法に共通する特徴は、バインダーの除去のために使用される酸の種類であり、即ち、例えば、ハロゲン化水素および硫化水素のような室温で気体である酸、または硝酸、硫酸、ギ酸および酢酸等の室温で液体である酸である。しかしながら、これらの酸は、気相に残存し、気相と接触する状態になる器具部品を全て腐食するか、または同様に腐食性の液膜を形成する。加えて、これらの気体の廃棄は簡単ではない。
【0009】
WO94/25205は、焼結物品を作製する方法に関する。この方法では、焼結可能なセラミックまたは金属の粉末と、バインダーとしてのポリオキシメチレンまたは大多数のオキシメチレン単位を含有するコポリマーとの混合物を成形して、圧密体を得る。引き続いて、室温で固体であり、加熱すると昇華するか、または溶融するか、または蒸発する気体状酸を用いた処理によりバインダーを除去する。好ましいのは、無水シュウ酸またはシュウ酸脱水物である。グリオキサル酸もまた、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、およびマレイン酸、ならびにそれらの混合物のように好適であると記載されている。
【0010】
ポリアセタール−ベースのバインダー系を使用する金属(MIM)およびセラミック(CIM)の粉末射出成形のための現行の方法では、脱バインダー段階用に触媒として、酸化性酸の硝酸を使用する。硝酸の使用により、供給原料に組み込まれ得る金属の種類が制限される。銅およびアルミニウム等の金属は、硝酸により強く劣化し、かつ酸化される。現行の脱バインダー技能に、移行可能な代替の非酸化性酸が必要とされる。
【0011】
無水シュウ酸またはシュウ酸脱水物は、この目標の達成に常に成功するとは限らない。
【発明を実施するための形態】
【0016】
A.)焼結可能な金属粉体もしくは焼結可能な合金粉体またはそれらの混合物40〜70体積%と、
B.)B1.)成分Bの総量に対して50〜98質量%の1種または複数種のポリオキシメチレンのホモポリマーまたはコポリマー、
B2.)成分Bの総量に対して2〜35質量%の1種または複数種のポリオレフィン、
B3.)成分Bの総量に対して0〜40質量%のポリ−1,3−ジオキソラン、ポリ−1,3−ジオキセパンもしくはポリテトラヒドロフランまたはそれらの混合物
の混合物を含むバインダーであって、B1.)、B2.)およびB3.)の合計は100質量%になるバインダー30〜60体積%と
を含む混合物(供給原料)を使用することが好ましい。
【0017】
好適な金属粉末の例は、Fe、Al、Cu、Nb、Ti、Mn、V、Ni、Cr、Co、Mo、WおよびSi粉末である。金属粉末は、例えば、TiAl、Ti
3AlおよびNi
3Al等の金属間相として、合金の形態で使用することもできる。グラファイトおよびカーボンブラックもまた好適である。当然のことながら、前記材料の混合物を使用することも可能である。更に、例えば、Al
2O
3、SiC、Si
3N
4またはCのような無機繊維またはひげ結晶を材料に添加することもでき、分散剤等の補助剤も含有してもよい。
【0018】
Cu、Mg、AlおよびMgAl合金から選択される金属粉末を使用することが好ましく、とりわけCu粉末の使用が好ましい。
【0019】
粉末の粒径は、一般に0.005〜100μm、好ましくは0.1〜50μm、特に好ましくは0.2〜30μmである。
【0020】
金属成形体を作製する方法に好適な熱可塑性バインダーB.)組成物は、一例としてEP−A−0446708およびUS2009/0288739A1に記載されている。
【0021】
本発明に基づき使用されるバインダーは、それぞれが成分Bの総量に対して、
B1.)50〜98質量%の1種または複数種のポリオキシメチレンのホモポリマーまたはコポリマー、
B2.)2〜35質量%の1種または複数種のポリオレフィン、
B3.)0〜40質量%のポリ−1,3−ジオキソラン、ポリ−1,3−ジオキセパンもしくはポリテトラヒドロフランまたはそれらの混合物
を含み、B1.)、B2.)およびB3.)の合計は100質量であることが好ましい。
【0022】
成分B1は、好ましくは60〜92質量%、より好ましくは70〜86質量%の量で使用される。
【0023】
成分B1として、ポリオキシメチレンおよびポリオキシメチレンのブレンドは、10,000〜500,000g/molの分子量(Mw)を有利に有する。ホルムアルデヒドまたはトリオキサンのホモポリマーに加えて、トリオキサンと、例えばエチレンオキシドおよび1,3−ジオキソラン等の環状エーテル、またはブタンジオールホルマール等のホルマールとのコポリマーもまた好適であり、コモノマーの量は一般にポリマーの1〜20質量%である。
【0024】
好ましい構成要素B1として、ポリオキシメチレンコポリマーを使用し、そのポリオキシメチレンコポリマーが、20000〜200000g/molの範囲の質量平均モル質量(Mw)を有し、ポリマーに対して、そのうちの少なくとも90質量%が、モノマーとしてのトリオキサンおよびブタンジオールホルマールならびに制御剤としてのブチラールに由来し、ブタンジオールホルマールの割合がポリマーに対して1〜30質量%の範囲、ブチラールの割合がポリマーに対して0.01〜2.5質量%の範囲である。
【0025】
好ましくは、質量平均モル質量(Mw)は、30000〜60000g/mol、好ましくは40000〜50000g/molであり、および/または数平均モル質量(Mn)は5000〜18000g/mol、好ましくは8000〜16000g/mol、特に10000〜14000g/molである。
【0026】
好ましくは、Mw/Mn比は、3〜5、好ましくは3.5〜4.5の範囲である。
【0027】
第2の好ましい構成要素B1は、2種のポリオキシメチレンのホモポリマーまたはコポリマーのブレンド、即ち、B1.1およびB1.2を含む:
−成分B1.1として、60000超〜200000g/molの範囲の質量平均モル質量(Mw)を有する10〜90質量%のポリオキシメチレンのホモポリマーまたはコポリマー、および
−成分B1.2として、10000〜60000g/molの範囲の質量平均モル質量(Mw)を有する10〜90質量%のポリオキシメチレンコポリマー。
【0028】
B1.1とB1.2の両方において、質量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比は、多分散性またはMw/Mnとも称されるが、3〜5、好ましくは3.5〜4.5の範囲であることが好ましい。
【0029】
ポリマーに対して少なくとも90質量%の成分B1.1は、モノマーとしてのトリオキサンおよび任意にブタンジオールホルマール、好ましくはモノマーとしてのトリオキサンおよびブタンジオールホルマールに由来し、ブタンジオールホルマールの割合がポリマーに対して1〜5質量%、好ましくは2〜3.5質量%、特に2.5〜3質量%の範囲である組成物が好ましい。
【0030】
ポリマーに対して少なくとも90質量%の成分B1.2は、モノマーとしてのトリオキサンおよび任意にブタンジオールホルマール、好ましくはモノマーとしてのトリオキサンおよびブタンジオールホルマールに由来し、ブタンジオールホルマールの割合がポリマーに対して1〜30質量%、好ましくは2.7〜30質量%、好ましいのは2.8〜20質量%、特に3〜17質量%の範囲、ならびにブチラールの割合がポリマーに対して0.7〜2.5質量%、好ましくは1.0〜2.0質量%、特に1.0〜1.3質量%の範囲である組成物が好ましい。更に、このポリオキシメチレンコポリマーは、10000〜60000g/mol、好ましくは30000〜60000g/mol、特に40000〜50000g/molの範囲の質量平均モル質量(Mw)を有する。
【0031】
分子量は、本明細書において実施例に記載されるように決定することができる。分子量は、一般に、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)またはSEC(サイズ排除クロマトグラフィー)によって決定される。数平均分子量は、一般に、GPC−SECにより決定される。
【0032】
ここで、成分B1を、より詳細に以下に記載する。
【0033】
非常に一般に、本発明のポリオキシメチレンコポリマー(POM)は、主ポリマー鎖中に少なくとも50mol%の−CH
2O−繰り返し単位を有する。ポリオキシメチレンコポリマーは、−CH
2O−繰り返し単位と共に、50mol%まで、好ましくは0.01〜20mol%、特に0.1〜10mol%、および特に好ましくは0.5〜6mol%の
【化1】
(式中、R
1〜R
4は相互に独立して水素原子、C
1〜C
4アルキル基、または1〜4個の炭素原子を有するハロゲン置換のアルキル基であり、R
5は−CH
2−、−CH
2O−またはC
1〜C
4アルキルもしくはC
1〜C
4ハロアルキル置換のメチレン基、または同様のオキシメチレン基であり、nは0〜3の範囲の値を有する)
の繰り返し単位も有することが好ましい。前記基は、環状エーテルの開環を介して、コポリマー内に有利に導入することができる。好ましい環状エーテルは、式
【化2】
(式中、R
1〜R
5およびnは、上に定義された通りである)
を有するものである。単に一例として、エチレンオキシド、プロピレン−1,2−オキシド、ブチレン1,2−オキシド、ブチレン1,3−オキシド、1,3−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、および1,3−ジオキセパン(=ブタンジオールホルマール、BUFO)を環状エーテルとして挙げてもよく、ポリジオキソランもしくはポリジオキセパン等の直鎖のオリゴホルマールまたはポリホルマールをコモノマーとして挙げてもよい。
【0034】
同様に好適な材料は、オキシメチレンターポリマーであり、一例として、トリオキサンまたは上述の環状エーテルのうちの1種と、第3のモノマーとの反応を介して生成され、第3のモノマーは、好ましくは式
【化3】
[式中、Zは、−O−、−ORO−(R=C
1〜C
8アルキレンまたはC
3〜C
8シクロアルキレン)の化学結合である]
の二官能価化合物である。
【0035】
この種の好ましいモノマーは、エチレンジグリシド、ジグリシジルエーテル、および2:1のモル比のグリシジル化合物とホルムアルデヒド、ジオキサン、またはトリオキサンに由来するジエーテル、ならびに、また2モルのグリシジル化合物と、2〜8個の炭素原子を有する1モルの脂肪族ジオールから作製されるジエーテルであり、例えば、数例として、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、シクロブタン−1,3−ジオール、1,2−プロパンジオールおよびシクロヘキサン−1,4−ジオールのジグリシジルエーテルが挙げられる。
【0036】
特に好ましいのは、主にC−Cまたは−O−CH
3結合を鎖末端に有する末端基安定化ポリオキシメチレンポリマーである。
【0037】
ポリマーに対して少なくとも90質量%のコポリマーは、モノマーとしてのトリオキサンおよびブタンジオールホルマールに由来する。
【0038】
ポリオキシメチレンコポリマーは、好ましくは排他的に、モノマーとしてのトリオキサンおよびブタンジオールホルマールに由来し、ブタンジオールホルマールの割合はポリマーまたはモノマーに対して1〜30質量%、好ましくは2.7〜30質量%、好ましいのは2.8〜20質量%、特に3〜10質量%の範囲である。
【0039】
ポリマーの分子量は、ブチラールを制御剤または連鎖移動剤として使用することにより、所望の値に調整される。
【0040】
ブチラール(n−ブチラール)の制御剤としての使用は、ブチラールが無毒であるという利点があり、一方、メチラールは有毒薬品に分類される。ブチラールの制御剤としての使用は、US6,388,049から周知のポリオキシメチレンコポリマーと比較して、更なる利点を示す。
【0041】
したがって、ポリマーの製造において、ブチラールを制御剤として使用することは好ましい。ポリマーに対して0.1〜5質量%、特に0.2〜4質量%、特に0.3〜2質量%の量のブチラールを使用することが好ましい。
【0042】
特定の量のコモノマーおよび特定の分子量と関連して、特に好適な機械的特性を有するポリオキシメチレンコモノマーが得られ、その特性により、より高分子量を有し、機械的特性、特に硬度において大きな損傷を持たないポリオキシメチレンのホモポリマーまたはコポリマーは、粘度調整剤として好適となる。曲げ強度および破壊強度も、高値を維持する。
【0043】
ポリオキシメチレンコポリマー中の分子量、コモノマーの割合、コモノマーの選択、制御剤の割合、および制御剤の選択の特定の組み合わせにより、特に好適な機械的特性へとつながり、より高分子量のポリオキシメチレンのホモポリマーまたはコポリマーの粘度調整剤としての有利な使用が可能となる。
【0044】
使用される開始剤(触媒とも称される)は、トリオキサンの重合において従来的なカチオン性開始剤である。例えば、フッ素付加のまたは塩素付加のアルキル−およびアリール−スルホン酸のようなプロトン酸が好適であり、例として、過塩素酸およびトリフルメタンスルホン酸、または例えば、四塩化スズ、五フッ化ヒ素、五フッ化リンおよび三フッ化ホウ素のようなルイス酸、その錯化合物および塩類似化合物があり、例として、三フッ化ホウ素エーテレートおよびヘキサフルオロリン酸トリフェニルメチルが挙げられる。開始剤(触媒)の使用される量は、約0.01〜1000ppm、好ましくは0.01〜500ppm、および特に0.01〜200ppmである。開始剤を希釈形態で、好ましくは0.005〜5質量%の濃度で添加することが一般に望ましい。この目的のために使用される溶媒は、例えば、シクロヘキサン、ハロゲン化脂肪族炭化水素、グリコールエーテル等のような脂肪族、または脂環式炭化水素等の不活性化合物であり得る。ブチルジグリム(ジエチレングリコールジブチルエーテル)および1,4−ジオキサン、とりわけブチルジグリムは、溶媒として特に好ましい。
【0045】
本発明では、カチオン性開始剤として、モノマーおよび制御剤の全体に対して0.01〜1ppm(好ましくは0.02〜0.2ppm、特に0.04〜0.1ppm)の範囲の量のBroensted酸を使用することが特に好ましい。特に、HClO
4をカチオン性開始剤として使用する。
【0046】
開始剤に加えて、共触媒を同時に使用することができる。これらは、任意の種類のアルコールであり、例として、tert−アミルアルコール、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール等の2〜20個の炭素原子を有する脂肪族アルコール;ヒドロキノン等の2〜30個の炭素原子を有する芳香族アルコール;ヘキサフルオロイソプロパノール等の2〜20個の炭素原子を有するハロゲン化アルコール;極めて特に好ましいのは任意の種類のグリコール、特にジエチレングリコールおよびトリエチレングリコール;ならびに脂肪族ジヒドロキシ化合物、特に、1,2−エタンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールおよびネオペンチルグリコール等の2〜6個の炭素原子を有するジオールが挙げられる。
【0047】
モノマー、開始剤、共触媒、および任意に制御剤を、任意の所望の手法で予混合するか、または分離して次々に重合反応器に添加することができる。
【0048】
安定化用の成分は、EP−A129369またはEP−A128739に記載されているような立体的障害のあるフェノールを更に含むことができる。
【0049】
成分B1.2のポリオキシメチレンコポリマーは、少なくとも1種のカチオン性開始剤および制御剤としてのブチラールの存在下で、トリオキサン、ブタンジオールホルマールおよび任意に更なる成分の重合により生成される。
【0050】
好ましくは重合反応の直後に相転移を伴わず、重合混合物を非活性化することが好ましい。開始剤残基(触媒残基)は、一般に非活性化剤(停止剤)を重合溶融物に添加することにより非活性化される。好適な非活性化剤の例として、第一級、第二級、または第三級も含むアンモニア、例えば、トリエチルアミン、またはトリアセトンジアミン等のトリアルキルアミンのような脂肪族および芳香族のアミンが挙げられる。他の好適な化合物は、例えば、ナトリウム塩およびホウ酸塩のような塩基として作用する塩であり、ならびにアルカリ金属およびアルカリ土類金属の炭酸塩および水酸化物もまた、ならびにその上、ナトリウムエタノレート等のアルコレートもまた挙げられる。通例、ポリマーに添加される非活性化剤の量は、好ましくは0.01ppmw(質量百万分率)〜2質量%である。非活性化剤として好ましいのは、更にアルカリ金属およびアルカリ土類金属のアルキル化合物であり、これらはアルキル部分に2〜30個の炭素原子を有する。Li、Mg、およびNaは、特に好ましい金属として挙げることができ、本明細書で特に好ましいのはn−ブチルリチウムである。
【0051】
本発明の一実施形態では、モノマーおよび制御剤の全体に対して3〜30ppm、好ましくは5〜20ppm、特に8〜15ppmの連鎖停止剤を同時に使用することができる。ナトリウムメトキシドは、連鎖停止剤として本明細書で特に使用される。
【0052】
トリオキサンおよびブタンジオールホルマールから作製されるPOMは、一般に塊状重合により得られ、この目的のために、高レベルの混合作用を備える任意の反応器を使用することができる。本明細書の反応は、例えば溶融において均一に、または例えば重合時に固体もしくは固体細粒を得るように不均一に、実行することができる。好適な装置の例として、トレイ反応器、プローシェアミキサー、管形反応器、傾斜反応器、ニーダ(例えば、Buss ニーダ)、例えば、1個または2個のスクリューを有するような押出機、および撹拌反応器が挙げられ、本明細書の反応器は、静的ミキサーまたは動的ミキサーを備えてもよい。
【0053】
成分B1.2の低分子量POMを、少量の開始剤、大量の制御剤を使用し、かつ鎖末端をキャップすることにより、特に有利に生成することができる。得られた中等度の分子量を有するPOMは、耐熱性であるばかりでなく化学物質耐性でもあり、その粘度は、これまでCatamold組成物に使用された高分子量を有する従来のPOMと比較して、1000倍まで低くなり得る。
【0054】
成分B1.2の低分子量POMを粘度調整剤として使用する場合、成分B1.1の60000g/mol超、好ましくは少なくとも80000g/molの質量平均モル質量を有するPOMに関して、その添加により、熱的および化学的に安定で、その粘度は著しく低減され得るPOM系を得る。
【0055】
成分B1.1の構造およびその製造に関して、分子量、Mw/Mn比、ならびに制御剤およびカチオン性開始剤の量を除外して、成分B1.2に関する上記説明を参照することができる。更に、コモノマーのブタンジオールホルマールを成分B1.1に同時に使用することは必要ではない(しかし、それにもかかわらず好ましい)。
【0056】
成分B1.1およびB1.2の両方がコポリマーであることが、特に好ましく、特に、同一のコモノマーを同一のコモノマー割合で使用することが好ましい。
【0057】
本製造方法におけるカチオン性開始剤の量は、好ましくは0.05〜2ppm、特に0.1〜1ppmであることが好ましい。
【0058】
得られた成分B1のポリオキシメチレンのホモポリマーまたはコポリマーのMw/Mn比は、好ましくは3.5〜9、特に4〜8、特に4.2〜7.7の範囲である。
【0059】
本発明の一実施形態では、本発明の熱可塑性組成物は、10〜90質量%、好ましくは30〜90質量%、特に50〜90質量%の成分B1.1、および対応して、10〜90質量%、好ましくは10〜70質量%、特に10〜50質量%の成分B1.2を使用する。
【0060】
成分B1.1およびB1.2を別々に製造し、次に2種の成分を混合することにより、熱可塑性組成物を生成する。本明細書における混合は、ニーダまたは押出機等の任意の所望される好適な装置で達成することができる。本明細書において、固体微粒子成分のB1.1およびB1.2の機械的予混合から開始し、次にこれらを共に溶融することが可能である。押出機で成分B.1を溶融し、成分B1.2を前記溶融物に添加することもまた可能である。混合方法は、150〜220℃、特に180〜200℃の範囲の温度、0.5〜5バール、特に0.8〜2バールの範囲の圧力下で行うことが好ましい。
【0061】
成分B2は、ポリオレフィンまたはそれらの混合物を、バインダーB.)の総量に対して2〜35質量%、好ましくは3〜20質量%、特に好ましくは4〜15質量%の量で含む。好ましいポリマーの例として、C
2〜8−オレフィンに由来するもの、特にエチレンおよびプロピレン等のC
2〜4−オレフィン、スチレンおよびアルファ−メチルスチレン等のビニル芳香族モノマー、例えば酢酸ビニルおよびプロピオン酸ビニルのような脂肪族C
1〜8−カルボン酸のビニルエステル、ビニルメチルエーテルおよびビニルエチルエーテル等のビニルC
1〜8−アルキルエーテル、ならびにメタクリル酸メチルおよびメタクリル酸エチル等のC
1〜12−(メタ)アクリル酸アルキルが挙げられる。成分B2は、エチレン、プロピレンの少なくとも1種のポリマーまたはこれらのモノマーのコポリマーであることが好ましい。
【0062】
成分B3として好適なポリマーは、ポリ−1,3−ジオキセパン、ポリ−1,3−ジオキソラン、ポリテトラヒドロフランまたはそれらの混合物であり、バインダーB.)の総量に対して0〜40質量%、または存在する場合は、2〜40質量%(この場合、成分B1の上限は98質量%の代わりに96質量%である)、好ましくは5〜30質量%、より好ましくは10〜26質量%の量である。ポリ−1,3−ジオキセパンが特に好ましい。
【0063】
全ての成分を、例えば混合機または押出機内で混合した後、例えば、従来のスクリュー式射出成形機またはプランジャー式射出成形機内で、160℃〜200℃、かつ500〜2000バールで、射出成形により材料を成形する。
【0064】
得られた圧密体を、バインダーのポリオキシメチレンを分解し、主にホルムアルデヒドのような気体生成物を生じさせる酸で処理する。気体状分解生成物を、通例、反応領域から除去する。
【0065】
本発明に基づく方法で使用する酸は、メタンスルホン酸または、水、C
1〜4−カルボン酸およびそれらの混合物から選択される溶媒中のメタンスルホン酸、シュウ酸、もしくはそれらの混合物の溶液から選択される。
【0066】
これらの酸を用いた処理を、液相または好ましくは気相内で使用することができる。気相内で酸を使用する場合は、酸を上述の溶媒と共に使用することが好ましい。
【0067】
好ましくは、酸/溶媒混合物中のメタンスルホン酸、シュウ酸またはそれらの混合物の量は、1〜100質量%、より好ましくは3〜90質量%、殊に5〜80質量%の範囲である。
【0068】
C
1〜4−カルボン酸は、好ましくはギ酸、酢酸およびプロピオン酸から選択され、とりわけギ酸である。
【0069】
最も好ましい実施形態では、水、C
1〜4−カルボン酸およびそれらの混合物から選択される溶媒中のメタンスルホン酸、シュウ酸またはそれらの混合物の溶液から選択される気体状酸で処理することにより、バインダーを除去する。
【0071】
最も好ましい酸の組み合わせとして、
メタンスルホン酸+ギ酸
メタンスルホン酸+水
シュウ酸+ギ酸
シュウ酸+水
が挙げられる。
【0072】
硝酸を使用する先行技術方法では、硝酸は無水でなければならないのに対して、かつ無水シュウ酸またはシュウ酸脱水物の使用と対照的に、本発明に基づき使用する酸は、水溶液またはC
1〜4−カルボン酸中の溶液として使用することができる。
【0073】
シュウ酸は室温で固体であり、メタンスルホン酸は167℃/10mmHgの高沸点を有する。したがって、水、C
1〜4−カルボン酸、好ましくはC
1〜3−カルボン酸またはそれらの混合物中の溶液で両方の酸を使用することが好ましい。
【0074】
バインダー除去中に、これらの酸を、単独で使用、または空気、窒素もしくは希ガス等のキャリヤーガスと共に使用することのいずれかが可能である。
【0075】
バインダー除去温度で、本発明に基づき使用される酸は、最初に気相に変換され、バインダーに作用する。
【0076】
計量を簡単化するために、上述の酸を、極性溶媒中の好ましくは200℃未満の沸点を有する溶媒の溶液として使用することは適切であり得る。好適な溶媒は、特にアセトン、ジオキサン、エタノールおよびアセトニトリルである。
【0077】
バインダー除去中の温度は、一般に、100℃〜160℃、好ましくはバインダーの軟化点未満である。
【0078】
バインダー除去は、減圧下または好ましくは大気圧下で、大気圧下の場合はキャリヤーガス、特に窒素も使用して実行することができる。バインダー除去を減圧下で実行する場合は、キャリヤーガスは必要ない。
【0079】
本発明に基づく方法は、完全なバインダー除去が非酸化性有機酸により影響され得て、それによりMIM成形材料に酸化感受性金属粉末を使用することが可能になるという利点を有する。