特許第6573740号(P6573740)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6573740抗腫瘍剤、癌予防用飲食品及び癌抑制的マイクロRNAの発現亢進剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6573740
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】抗腫瘍剤、癌予防用飲食品及び癌抑制的マイクロRNAの発現亢進剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/09 20060101AFI20190902BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20190902BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20190902BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20190902BHJP
【FI】
   A61K31/09ZNA
   A61K47/44
   A61P35/00
   A23L33/10
【請求項の数】4
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2019-501742(P2019-501742)
(86)(22)【出願日】2018年8月13日
(86)【国際出願番号】JP2018030232
(87)【国際公開番号】WO2019049612
(87)【国際公開日】20190314
【審査請求日】2019年1月11日
(31)【優先権主張番号】特願2017-173245(P2017-173245)
(32)【優先日】2017年9月8日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001421
【氏名又は名称】キユーピー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100165526
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100189452
【弁理士】
【氏名又は名称】吉住 和之
(74)【代理人】
【識別番号】100176773
【弁理士】
【氏名又は名称】坂西 俊明
(72)【発明者】
【氏名】落谷 孝広
(72)【発明者】
【氏名】大塚 蔵嵩
【審査官】 高橋 樹理
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2011/0136751(US,A1)
【文献】 国際公開第2013/051459(WO,A1)
【文献】 RIMANDO, A.M. et al.,Cancer Chemopreventive and Antioxidant Activities of Pterostilbene, a Naturally Occurring Analogue o,Journal of Agricultural and Food Chemistry,2002年,Vol.50,p.3453-3457,ISSN 0021-8561,特にAbstract
【文献】 HAGIWARA, K. et al.,Stilbene derivatives promote Ago2-dependent tumor-suppressive microRNA activity,Scientific Reports,2012年,Vol.2:314,p.1-9,ISSN 2045-2322, 特にAbstract, Figure 4
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/09
A61K 47/44
A23L 33/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プテロスチルベンを含有する、
経口投与用抗腫瘍剤。
【請求項2】
請求項1に記載の抗腫瘍剤において、
油脂を更に含有する、
抗腫瘍剤。
【請求項3】
請求項2に記載の抗腫瘍剤において、
前記油脂が、植物油である、
抗腫瘍剤。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の抗腫瘍剤を含む、
癌予防用飲食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗腫瘍剤、癌予防用飲食品及び癌抑制的マイクロRNAの発現亢進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロRNAは、塩基対の長さが22塩基程度のRNAである。スチルベン誘導体であるレスベラトロール及びプテロスチルベンが、このようなマイクロRNAのうち、所定のマイクロRNAの発現を促進又は抑制することが知られている(非特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Scientific Reports,2,314,2012
【非特許文献2】Oncotarget,2015年,6巻,29号,pp.27214‐27226
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、マイクロRNA(miRNA)の発現量の異常と癌発生の関係が分かってきており、miRNA(例えば、癌抑制的miRNA)の発現量を制御(亢進)し得る化合物は、抗腫瘍剤(癌予防剤)として有用である。さらに、経口投与により、抗腫瘍効果を発揮できる化合物は、食品、サプリメント等への用途展開が容易である。
【0005】
そこで、本発明は、新規な経口投与用抗腫瘍剤の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、プテロスチルベンが、経口投与によって、優れた抗腫瘍効果を有することを見出した。本発明は、この新規な知見に基づくものである。
【0007】
すなわち、本発明は、例えば、以下の各発明に関する。
(1)プテロスチルベンを含有する、経口投与用抗腫瘍剤。
(2)油脂を更に含有する、(1)に記載の抗腫瘍剤。
(3)油脂が、植物油である、(2)に記載の抗腫瘍剤。
(4)(1)〜(3)のいずれかに記載の抗腫瘍剤を含む、癌予防用飲食品。
(5)プテロスチルベンを含有する、癌抑制的マイクロRNAの発現亢進剤。
(6)経口投与用である、(5)に記載の発現亢進剤。
(7)癌抑制的マイクロRNAが、let−7a、let−7b、miR−26a、miR−107、miR−126、miR−185、miR−200c、miR−141、miR−34a及びmiR−193bからなる群より選択される少なくとも1種を含む、(5)又は(6)に記載の発現亢進剤。
(8)癌の治療又は予防のために用いられる、(5)〜(7)のいずれかに記載の発現亢進剤。
(9)プテロスチルベンを、それを必要とする対象に経口投与することを含む、癌を治療又は予防する方法。
(10)経口投与用抗腫瘍剤の製造のための、プテロスチルベンの使用。
(11)経口投与による癌の治療又は予防に使用するための、プテロスチルベン。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、新規な経口投与用抗腫瘍剤が提供される。本発明によればまた、当該抗腫瘍剤を含有する癌予防用飲食品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】プテロスチルベン又はレスベラトロールと癌細胞の細胞生存率との関係を示すグラフである。図1(A)は、乳癌細胞を用いた場合の細胞生存率の測定結果、図1(B)は、胃癌細胞を用いた場合の細胞生存率の測定結果、図1(C)は、大腸癌細胞を用いた場合の細胞生存率の測定結果を示すグラフである。
図2】癌抑制的miRNA(let−7a、let−7b、miR−26a、miR−107、miR−126、miR−185)の発現量の測定結果を示すグラフである。
図3】癌抑制的miRNA(miR−200c、miR−141、miR−34a、miR−193b)の発現量の測定結果を示すグラフである。
図4図4(A)は、投与開始から21日経過時点の腫瘍発光の結果を示す写真である。図4(B)は、発光量の経時観察結果を示すグラフである。
図5】プテロスチルベンの腹腔内投与が腫瘍のサイズに与える影響を示す写真又はグラフである。図5(A)は、摘出した腫瘍片を示す写真である。図5(B)は、摘出した腫瘍の重量を示すグラフである。
図6】プテロスチルベン(腹腔内投与)がマウスの体重に与える影響を示すグラフである。
図7図7(A)は、RNAを抽出した腫瘍片を示す写真である。図7(B)は、腫瘍中の癌抑制的マイクロRNA(miR−200c及びmiR−141)の発現量を示すグラフである。
図8図8(A)は、投与開始から21日経過時点の腫瘍発光の結果を示す写真である。図8(B)は、発光量の経時観察結果を示すグラフである。
図9】プテロスチルベン(経口投与)がマウスの体重に与える影響を示すグラフである。
図10】プテロスチルベンの経口投与が腫瘍のサイズ(重量)に与える影響を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0011】
<本発明の特徴>
(抗腫瘍剤)
本発明は、プテロスチルベンを含有する、経口投与用抗腫瘍剤を提供することに特徴を有する。
【0012】
(癌予防用飲食品)
本発明はまた、上記抗腫瘍剤を含む、癌予防用飲食品を提供することに特徴を有する。
【0013】
(癌抑制的マイクロRNA発現亢進剤)
本発明はさらに、プテロスチルベンを含有する、癌抑制的マイクロRNAの発現亢進剤を提供することに特徴を有する。
【0014】
<抗腫瘍剤>
本明細書における「抗腫瘍剤」は、癌の治療又は予防剤、癌細胞増殖抑制剤、癌の進行抑制剤、癌の再発予防(抑制)剤、癌の転移抑制剤、癌の浸潤抑制剤、癌細胞から放出されるエクソソーム等の細胞外小胞の分泌抑制剤等を含む。
【0015】
<プテロスチルベン>
プテロスチルベン(Pterostilbene)は、下記式(1)により表される化合物である。
【化1】
【0016】
<プテロスチルベンの含有量>
本実施形態の抗腫瘍剤において、プテロスチルベンの含有量は、抗腫瘍剤全量基準で、0.01質量%以上、若しくは0.10質量%以上、又は、10質量%以下、若しくは5質量%以下であってよい。
【0017】
<プテロスチルベンの入手方法>
本実施形態において、プテロスチルベンは、市販品を用いてもよく、化学合成により得られたものを用いてもよい。
【0018】
<油脂>
本実施形態の抗腫瘍剤は、油脂を更に含有していてもよい。この場合、抗腫瘍剤が経口投与用として、より一層好適なものとなる。
【0019】
<油脂の種類>
本実施形態の抗腫瘍剤に含有していてもよい油脂は、動物油であってもよく、植物油であってもよい。油脂としては、例えば、コーン油、大豆油、ゴマ油、ナタネ油、サフラワー油、オリーブ油、ヒマシ油、綿実油、米油、ヒマワリ油、グレープシード油及び小麦胚芽油等の植物油、及び、卵黄油、魚油、鯨油、肝油等の動物油、又はこれらの精製油(サラダ油)、及びMCT(中鎖脂肪酸トリグリセリド)、ジグリセリドのように化学的あるいは酵素的処理を施して得られる食用油等が挙げられる。油脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
<油脂の含有量>
油脂の含有量は、抗腫瘍剤全量基準で、0.1質量%以上、若しくは1質量%以上、又は、10質量%以下、若しくは8質量%以下であってよい。
【0021】
<添加剤>
本実施形態の抗腫瘍剤は、添加剤(プテロスチルベン及び油脂を除く)を更に含有していてよい。添加剤としては、例えば、賦形剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、乳化剤、界面活性剤、基剤、溶解補助剤、懸濁化剤が挙げられる。
【0022】
<製剤形態>
本実施形態の抗腫瘍剤は、固体(例えば、粉末)、液体(水溶性又は脂溶性の溶液又は懸濁液)、ペースト等のいずれの形状であってもよい。また、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤等のいずれの剤形であってもよい。
【0023】
<抗腫瘍剤の調製方法>
上述の各種製剤は、プテロスチルベンと、必要に応じて、上記油脂及び添加剤と、を混和し、必要に応じて成形することによって調製することができる。
抗腫瘍剤の好適な調製方法を以下に説明する。まず、品温50〜90℃に加温した油脂を準備する。加温した油脂に、プテロスチルベンを添加して、溶解させる。その後、プテロスチルベン及び油脂の混合物と、その他の成分と、を混合し、必要に応じて、滅菌処理等を行い、プテロスチルベンを含有する製剤を調製することができる。
【0024】
<投与方法>
本実施形態の抗腫瘍剤は、経口投与用として用いられる。通常、腹腔内投与等の非経口投与により、所望の効果を奏する製剤は、必ずしも経口投与によっても、所望の効果を奏するとは限らない。一方で、本実施形態の抗腫瘍剤は、非経口投与によって、抗腫瘍効果が奏されることに加えて、経口投与によっても抗腫瘍効果が奏される。抗腫瘍剤の投与量、投与タイミング、投与期間については、適宜、設定することができる。
【0025】
<投与対象>
本実施形態の抗腫瘍剤の投与対象となる生体は、好ましくは哺乳動物であり、より好ましくはヒトである。
【0026】
<投与量>
具体的な投与量の一例として、例えば、ヒト成人男子(体重60kg)に投与する場合、一日当たりの抗腫瘍剤の投与量は、0.01mg〜5000mg/日/人であってよく、0.05mg〜1000mg/日/人、より好ましくは0.1mg〜500mg/日/人、さらに好ましくは0.5mg〜250mg/日/人である。抗腫瘍剤は、1日当たりの投与量が上記範囲内であれば、1日1回投与されてもよく、1日複数回(例えば、2回又は3回)に分けて投与されてもよい。なお、投与量は、抗腫瘍剤中の有効成分(すなわち、プテロスチルベン)の量を基準とした値である。
【0027】
<抗腫瘍剤の用途>
本実施形態の抗腫瘍剤は、医薬品、医薬部外品、飲食品(飲料、食品)、飼料、飼料添加物等の製品の成分として使用することができる。飲料としては、例えば、水、清涼飲料水、果汁飲料、乳飲料、アルコール飲料、スポーツドリンク、栄養ドリンク等が挙げられる。食品としては、例えば、パン類、麺類、米類、豆腐、乳製品、醤油、味噌、菓子類、クリーム、ソース類、マヨネーズ、ドレッシング等が挙げられる。また、本実施形態の抗腫瘍剤は、健康食品、機能性表示食品、特別用途食品、栄養補助食品、サプリメント(例えば、ドクターズサプリメント)又は特定保健用食品等の成分として使用することもできる。
【0028】
<癌予防用飲食品>
本実施形態の抗腫瘍剤は、飲食品の成分として使用することが可能である。よって、本発明の一実施形態として、上記抗腫瘍剤を含有する、癌予防用飲食品(癌予防用食品組成物)が提供される。
【0029】
<マイクロRNAの発現調節剤>
本実施形態の抗腫瘍剤は、マイクロRNAの発現を調節する結果として、抗腫瘍効果が奏されるものであってよい。すなわち、本実施形態の抗腫瘍剤は、マイクロRNAの調節剤と捉えることもできる。マイクロRNAの発現調節剤は、例えば、癌促進的マイクロRNAの発現抑制、又は、癌抑制的マイクロRNAの発現亢進によって、マイクロRNAの発現を調節するものであってよい。
【0030】
<癌抑制的マイクロRNAの発現亢進剤>
本実施形態の抗腫瘍剤は、癌抑制的マイクロRNAの発現を亢進する結果として、抗腫瘍効果が奏される。すなわち、本発明の一実施形態は、プテロスチルベンを含有する、癌抑制的マイクロRNAの発現亢進剤を提供する。癌抑制的マイクロRNAの発現亢進剤は、経口投与用であってよい。なお、本実施形態の癌抑制的マイクロRNAの発現亢進剤において、製剤形態、投与量、用途等については、上記の抗腫瘍剤におけるものと同様であってよい。本実施形態の癌抑制的マイクロRNAの発現亢進剤は、癌の治療又は予防のために用いられるものであってよい。ここで、「癌抑制的マイクロRNAの発現亢進剤」とは、癌抑制的マイクロRNAの発現量が低下している状態から健常人(健常者)と同様の発現量まで当該マイクロRNAを増加させるものであってもよく、癌抑制的マイクロRNAの発現量を健常人と同様の発現量に維持するものであってもよい。つまり、癌抑制的マイクロRNAの発現亢進剤は、癌抑制的マイクロRNAの、発現調節剤、発現制御剤、又は発現促進剤と言い換えることもできる。
【0031】
<癌抑制的マイクロRNA>
本明細書において、「癌抑制的マイクロRNA」とは、発現が亢進することにより、癌細胞の増殖が抑制されるマイクロRNAである。癌抑制的マイクロRNAとしては、例えば、let−7a、let−7b、miR−26a、miR−107、miR−126、miR−185、miR−200c、miR−141、miR−34a、miR−193bが挙げられる。本実施形態において、癌抑制的マイクロRNAは、let−7a、let−7b、miR−26a、miR−107、miR−126、miR−185、miR−200c、miR−141miR−34a及びmiR−193bからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてよい。
【0032】
<癌抑制的マイクロRNAの種類>
上記の癌抑制的マイクロRNAは、成熟した一本鎖のマイクロRNAであり、それぞれ以下に示すとおりの配列を有する。
let−7a: UGAGGUAGUAGGUUGUAUAGUU (配列番号1)
let−7b: UGAGGUAGUAGGUUGUGUGGUU (配列番号2)
miR−26a: UUCAAGUAAUCCAGGAUAGGCU (配列番号3)
miR−107: AGCAGCAUUGUACAGGGCUAUCA (配列番号4)
miR−126: UCGUACCGUGAGUAAUAAUGCG (配列番号5)
miR−185: UGGAGAGAAAGGCAGUUCCUGA (配列番号6)
miR−200c: UAAUACUGCCGGGUAAUGAUGGA (配列番号7)
miR−141: UAACACUGUCUGGUAAAGAUGG (配列番号8)
miR−34a: UGGCAGUGUCUUAGCUGGUUGU (配列番号9)
miR−193b: AACUGGCCCUCAAAGUCCCGCU (配列番号10)
【0033】
<癌を治療又は予防する方法>
本発明の一実施形態は、プテロスチルベンを、それを必要とする対象に経口投与することを含む、癌を治療又は予防する方法と捉えることもできる。当該方法において、投与方法、投与対象、投与量等については、上記の抗腫瘍剤におけるものと同様であってよい。対象は哺乳動物であることが好ましく、ヒトであることがより好ましい。
【0034】
<癌抑制的マイクロRNAの発現を亢進する方法>
本発明の一実施形態は、プテロスチルベンを、それを必要とする対象に経口投与することを含む、癌抑制的マイクロRNAの発現を亢進する方法と捉えることもできる。当該方法において、投与方法、投与対象、投与量等については、上記の抗腫瘍剤におけるものと同様であってよい。対象は哺乳動物であることが好ましく、ヒトであることがより好ましい。
【0035】
<癌の種類>
上記癌は、例えば、乳癌、胃癌、大腸癌、結腸直腸癌、卵巣癌、肺癌、口腔癌、食道癌、肝細胞癌、膵臓癌、胆管癌、前立腺癌、膀胱癌、肉腫、神経膠腫等であってもよい。
【0036】
<経口投与用抗腫瘍剤の製造のための、プテロスチルベンの使用>
本発明の一実施形態として、経口投与用抗腫瘍剤の製造のための、プテロスチルベンの使用が提供される。なお、当該実施形態における、投与方法、投与対象、投与量等については、上記の抗腫瘍剤におけるものと同様であってよい。
【0037】
<癌の治療又は予防に使用するための、プテロスチルベン>
本発明の一実施形態として、経口投与による癌の治療又は予防に使用するための、プテロスチルベンが提供される。なお、当該実施形態における、投与方法、投与対象、投与量等については、上記の抗腫瘍剤におけるものと同様であってよい。
【実施例】
【0038】
以下、実施例等に基づいて、本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0039】
(統計解析)
以下の実施例において、統計解析はKaleida Graph4.5(HULINKS社)を用いて、分散分析(One-Way ANOVA)を行った後、多重比較(Tukey’s HSD Test)で検定した。
【0040】
〔試験例1:細胞を用いた抗腫瘍効果の評価〕
1.細胞培養の条件
(細胞)
乳癌細胞株(MDA-MB231-luc-D3H2LN)、胃癌細胞株(MKN45)、及び大腸癌細胞株(HCT116)を使用した。
【0041】
(試薬)
細胞培養においては、以下の試薬を用いた。
RPMI1640(Invitrogen社製)
McCoy’ medium 5A modified medium(Invitrogen社製)
Heat-inactivated Fetal Bovine Serum(FBS)(Invitrogen社製)
100X Antibiotic-Antimycotic(Invitrogen社製)
0.5% Trypsin-EDTA(Invitrogen社製)
【0042】
(細胞培養方法)
乳癌細胞株及び胃癌細胞株では、培養培地として、RPMI1640にFBS及び100XAntibiotic-Antimycoticを終濃度がそれぞれ10%(v/v)及び1%(v/v)になるように添加したものを用いた。培養は暗所にて、37℃、5%COの条件で行った。継代の際の細胞剥離は0.05% Trypsin-EDTAを用いて行った。
大腸癌細胞株(HCT116)では、培養培地として、McCoy’ medium 5A modified mediumにFBS及び100X Antibiotic-Antimycoticを終濃度がそれぞれ10%(v/v)及び1%(v/v)になるように添加したものを用いた。培養は暗所にて、37℃、5%COの条件で行った。継代の際の細胞剥離は0.05% Trypsin-EDTAを用いて行った。
【0043】
2.細胞生存率の測定
(試薬及びキット)
以下に示す試薬及びキットを使用した。
レスベラトロール(trans-Resveratrol、Cayman Chemical社製)
プテロスチルベン(Pterostilbene、Cayman Chemical社製)
Cell Counting Kit-8(株式会社 同仁化学研究所製)
【0044】
(評価方法)
上記の乳癌細胞、胃癌細胞、及び大腸癌細胞を96ウェルプレートに各ウェル当たり細胞数が2,500個となるように播種した。播種した翌日に、レスベラトロール又はプテロスチルベンを、それぞれ12.5μM、25μM、50μM又は100μMとなるように添加した。3日間培養後に、Cell Counting Kit-8を用い、製造元のプロトコールの条件に従って、450nmの吸光度を測定することにより、生細胞数を測定した。コントロール(Mock)としては、レスベラトロール又はプテロスチルベンを添加しなかったこと以外は、上記同様にして、生細胞数を測定したものを用いた。450nmの吸光度測定にはSynergyTM H4 Hybrid Microplate Reader(BioTek社製)を使用した。各群(レスベラトロール群又はプテロスチルベン群)の細胞生存率は、コントロールにおける生細胞数を100%としたときの値とした。結果を図1に示す。図1(A)〜(C)は、それぞれ乳癌細胞、胃癌細胞、又は大腸癌細胞を用いたときの細胞生存率測定結果を示す。図1中、エラーバーは、標準誤差を示す。
【0045】
図1に示すとおり、レスベラトロール又はプテロスチルベンを添加することにより、いずれの癌細胞においても細胞生存率が低減した(コントロールとの対比)。プテロスチルベンを添加した場合、レスベラトロールを添加した場合と比較して、細胞生存率がより低減された。
【0046】
3.癌抑制的マイクロRNA(miRNA)の定量
(細胞)
癌抑制的マイクロRNA(miRNA)の定量においては、上記の乳癌細胞株(MDA-MB231-luc-D3H2LN)を使用した。
【0047】
(試薬)
試薬及びキットとしては、以下のものを用いた。
レスベラトロール(trans-Resveratrol、Cayman Chemical社製)
プテロスチルベン(Cayman Chemical社製)
miRNeasy(登録商標) Mini Kit(QIAGEN社製)
TaqMan(登録商標) MicroRNA assay(Applied Biosystems社製)
TaqMan(登録商標) MicroRNA Reverse TranscriptionKit(Applied Biosystems社製)
TaqMan(登録商標) Universal PCR Master Mix, NoAmpErase(登録商標) UNG(AppliedBiosystems社製)
【0048】
(癌抑制的マイクロRNAの定量解析)
癌抑制的マイクロRNAとして知られているlet−7a、let−7b、miR−26a、miR−107、miR−126、miR−185、miR−200c、miR−141、miR−34a及びmiR−193bを以下の方法により定量した。
まず、上記の乳癌細胞に、レスベラトロール又はプテロスチルベンを、それぞれ濃度25μMになるように添加した。2日後にmiRNeasy(登録商標) Mini Kit を用いて、製造元推奨のプロトコールに従い、RNAを抽出した。抽出したRNAは、TaqMan(登録商標) MicroRNA assay とTaqMan(登録商標) MicroRNA Reverse TranscriptionKitとを用いて、それぞれ製造元推奨のプロトコールに従い、相補的DNA(cDNA)に変換した。そのcDNAを鋳型にして、TaqMan(登録商標) Universal PCR Master Mix, NoAmpErase(登録商標) UNG を用いて、StepOnePlusTMReal-Time PCR System(Applied Biosystems)により、miRNAの定量解析を行った。レスベラトロール又はプテロスチルベンを添加しなかったこと以外は上記同様にして、miRNAの定量解析を行ったものをコントロール(Mock)とした。結果を図2及び3に示す。図2及び3中、エラーバーは、標準誤差を示す。また、図2及び3中、*を付したデータはp<0.05である。
【0049】
(評価結果)
図2及び3に示すとおり、レスベラトロール又はプテロスチルベンを添加することにより、コントロールと比較して、癌抑制的miRNAの発現が亢進していることが示された。
【0050】
〔試験例2:腹腔内投与による抗腫瘍効果の評価〕
4−1.プテロスチルベンの腹腔内投与実験
(実験動物)
実験動物として、5週齢のメスのヌードマウス(BALB/cAJc1-nu/nu)(日本クレア社)を用いた。
【0051】
(試薬)
試薬としては、以下のものを用いた。
プテロスチルベン(Cayman Chemical社製)
ジメチルスルホキシド(DMSO)(Merck社製)
ECM Gel from Engelbreth-Holm-Swam murine sarcoma(Invitrogen社製)
エスカイン(登録商標)吸入麻酔液(Pfizer社製)
Beetle Luciferin, Potassium Salt(Promega社製)
プロピレングリコール(Sigma-Aldrich社製)
【0052】
(飼育方法)
温度20〜25℃、湿度40〜60%の条件下に保持された環境下で、上記の実験動物を飼育した。
【0053】
(試験方法)
5週齢のメスのヌードマウス(BALB/cAJc1-nu/nu)を、実験開始前に1週間ほど環境に順応させた。マウスに移植する癌細胞としては、MM-231-luc-D3H2LNを用いた。この癌細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に懸濁し、得られた懸濁液とマトリゲル(ECM Gel from Engelbreth-Holm-Swammurine sarcoma)とを1:1で混ぜ合わせて、移植用の懸濁液(細胞数:1×10cell/ml)を準備した。
【0054】
本試験例では、イソフルラン(エスカイン(登録商標)吸入麻酔液)による麻酔下にて、マウスの乳腺に1×10cellsの癌細胞を移植(上記の移植用の懸濁液(細胞数:1×10cell/ml)を100μl導入)した。癌細胞が移植されていることの確認は、上記方法で移植した後にしばらく放置してから、150mg/kgの量で、15mg/mlルシフェリン溶液(Beetle Luciferin, Potassium Salt、Promega 社)を腹腔内に投与し、約10分後にIVIS Spectrum(Perkin Elmer社)で移植された細胞由来の発光(luciferase活性)を測定することにより行った。移植後2日間飼育した後に、再度細胞由来の発光を測定した。当該測定結果に基づいて、試験用のマウスを1群当たり5匹として、以下の(i)〜(iii)の3群に群分けした。
(i)コントロール群(溶媒投与群、投与量:0mg/kg/day)
(ii)プテロスチルベン群A(投与量:12.5mg/kg/day)
(iii)プテロスチルベン群B(投与量:25mg/kg/day)
【0055】
(i)〜(iii)の各群のマウスに対し、腹腔内投与を行った。腹腔内投与は、上記マウスに癌細胞を移植した日の2日後(投与開始日)から起算して、21日間継続して行った。なお、溶媒としては、DMSO及びプロピレングリコールを含有するPBS溶液(DMSOの含有量:10%(v/v)、プロピレングリコールの含有量:10%(v/v))を用いた。プテロスチルベンの投与には、上記溶媒にプテロスチルベンを溶解したものを用いた。投与量は、プテロスチルベンの量を基準とする値である。
【0056】
各群のマウスにおいて、体重は適時計測し、一週間おきにIVIS spectrumを用いて、発光を計時観察した。移植した細胞由来の発光の測定結果を図4に示す。図4(A)に、投与開始から21日経過時点の腫瘍発光の結果を示す。図4(B)に発光量の経時観察結果を示す。図6に体重の測定結果を示す。
【0057】
投与終了後(投与開始日から21日経過後)には、イソフルラン麻酔下にて腫瘍を摘出し、安楽死を行った。図5に、プテロスチルベンの腹腔内投与が腫瘍のサイズに与える影響を示す。図5(A)に摘出した腫瘍片を示し、図5(B)に、摘出した腫瘍の重量を示す。投与終了後に摘出した腫瘍は、後述するmiRNA発現解析に用いた。
【0058】
(評価結果)
図4及び5に示すとおり、プテロスチルベンを腹腔内投与した群では、コントロール群と比べて、腫瘍の増大が抑制された。プテロスチルベンの用量依存的に腫瘍の増大が抑制されることが示された。なお、プテロスチルベンの腹腔内投与は、マウスの体重に大きな影響を与えないことが示された(図6参照)。
【0059】
4−2.ヒト由来の腫瘍中の癌抑制的miRNA発現解析
上記ヌードマウスに異種移植して形成された腫瘍片組織を用いて、癌抑制的miRNAの発現解析を行った。癌抑制的miRNAであるmiR−200c及びmiR−141の発現量を測定した。
【0060】
(試薬、キット及び実験器具)
試薬、キット及び実験器具としては、以下のものを用いた。
3ml破砕チューブ(安井器械株式会社製)
メタルコーン(安井器械株式会社製)
miRNeasy(登録商標) Mini Kit(QIAGEN社製)
TaqMan(登録商標) MicroRNA assay(Applied Biosystems社製)
TaqMan(登録商標) MicroRNA Reverse TranscriptionKit(Applied Biosystems社製)
TaqMan(登録商標) Universal PCR Master Mix, NoAmpErase(登録商標) UNG(AppliedBiosystems社製)
【0061】
(試験方法)
上記腫瘍片組織を約3mm角の大きさに切り取り、3ml破砕チューブにメタルコーンとともに入れた。液体窒素で冷却しながら、マルチビーズショッカー(登録商標)(安井器械株式会社)で破砕した。その後はmiRNeasy(登録商標) Mini Kitを用いて、製造元推奨のプロトコールでRNAを抽出した。得られたRNAは、TaqMan(登録商標) MicroRNA assay とTaqMan(登録商標) MicroRNA Reverse TranscriptionKitとを用いて、製造元推奨のプロトコールに従い相補的DNA(cDNA)に変換した。cDNAを鋳型にして、TaqMan(登録商標) Universal PCR Master Mix, No AmpErase(登録商標)UNGを用いて、StepOnePlusTM Real-Time PCR System(Applied Biosystems社)により、miRNAの定量解析を行った。
【0062】
癌抑制的miRNAの結果を図7に示す。RNAの抽出は、図7(A)中の丸で示したものを用いた。図7(B)は、それぞれmiR−200c及びmiR−141の発現量の測定結果を示す。
【0063】
(評価結果)
図7(B)に示すとおり、プテロスチルベン群(腹腔内投与)では、コントロール群と比べて、癌抑制的miRNA(miR−200c及びmiR−141)の発現が亢進した。
【0064】
〔試験例3:経口投与による抗腫瘍効果の評価〕
5.プテロスチルベンの経口投与実験
(試験用粉末飼料)
試験用の粉末飼料の調製には、以下の試薬を用いた。
カゼイン(オリエンタル酵母株式会社)
DL−メチオニン(和光純薬工業株式会社)
β−コーン澱粉(オリエンタル酵母株式会社)
スクロース(KH1 精上白糖)(和田製糖株式会社)
セルロースパウダー(オリエンタル酵母株式会社)
コーン油(胚芽の恵みコーン油)(株式会社J−オイルミルズ)
ミネラルミックス(AIN−93G ミネラル混合)(オリエンタル酵母株式会社)
ビタミンミックス(AIN−93 ビタミン混合)(オリエンタル酵母株式会社)
重酒石酸コリン(和光純薬工業株式会社)(Lot.No.:PDQ0575、CTK0241)
90%プテロスチルベン(シルビトール)(サビンサジャパンコーポレーション製)
【0065】
(プテロスチルベン含有粉末飼料の調製)
試験用の飼料(プテロスチルベン含有粉末飼料)は、以下の方法により調製した。すなわち、まず、コーン油を50g秤量し、加温して70℃とした。加温したコーン油にプテロスチルベンを添加して溶解させた。コーン油及びプテロスチルベン以外の試薬(その他の試薬)は乳鉢ですり潰し、混合した。その他の試薬の混合物に、プテロスチルベンを溶解させたコーン油を添加し、乳鉢で十分にすり潰して混合した。その後、攪拌機で約30分間更に混合して、試験用の飼料を調製した。試験用の飼料に含まれる各種成分の組成は、表1に示すとおりである。試験用の飼料はビニール袋に入れ、株式会社コーガアイソトープでガンマ線滅菌を行った後、後述する動物実験に用いた。また、表1に示す組成の馴化食(プテロスチルベンの含有量:0質量%)を用意した。
【0066】
【表1】
【0067】
(実験動物)
実験動物としては、5週齢のメスのヌードマウス(BALB/c-nu/nu, CAnN.Cg-Foxn1<nu>/CrlCjlj)(日本チャールズリバー社)を用いた。
【0068】
(試薬)
試薬としては、以下のものを用いた。
ECM Gel from Engelbreth-Holm-Swam murine sarcoma(Invitrogen社)
エスカイン(登録商標)吸入麻酔液(Pfizer社)
Beetle Luciferin, Potassium Salt(Promega社)
プロピレングリコール(Sigma-Aldrich社)
【0069】
(飼育方法)
温度20〜25℃、湿度40〜60%の条件下に保持された環境下で、上記の実験動物を飼育した。給餌器としては、吊り下げ型の給餌器を用いた。
【0070】
(試験群)
プテロスチルベン含有粉末飼料の経口投与による癌細胞への影響の検討として、1群当たり8匹又は10匹として、(i)コントロール群(0%(w/w)プテロスチルベン群、n=18)、及び(ii)0.25%(w/w)プテロスチルベン群(n=18)の2群の試験区を設定した。
【0071】
(試験方法及び評価結果)
まず、5週齢のメスのヌードマウスを、実験開始前に1週間ほど環境に順応させた。
プテロスチルベン含有粉末飼料の経口投与による癌細胞への影響の検討として、まず、コントロール食(馴化食)を吊り下げ型給餌器で約1週間与えた後に、(i)コントロール群、及び(ii)0.25%(w/w)プテロスチルベン群の2群に群分けした。コントロール群では、馴化食を経口投与し、プテロスチルベン群では、プテロスチルベン含有粉末飼料(プテロスチルベンの含有量:0.25質量%)を経口投与した。
【0072】
群分けしてから1週間経過時点で、各群のマウスに対して、癌細胞の移植実験を行った。癌細胞の移植実験では、まず、移植する癌細胞(MM-231-luc-D3H2LN)をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に懸濁し、マトリゲル(ECM Gel from Engelbreth-Holm-Swammurine sarcoma)と1:1の比率で混ぜ合わせて、移植用の懸濁液(細胞数:1×10cell/ml)を準備した。次いで、イソフルラン(エスカイン(登録商標)吸入麻酔液)による麻酔下にて、マウスの乳腺に1×10cellsの癌細胞を移植(上記の移植用の懸濁液(細胞数:1×10cell/ml)を100μl導入)した。癌細胞が移植されていることの確認は、移植後にしばらく放置し、150mg/kgの量で、15mg/mlルシフェリン溶液(Beetle Luciferin, Potassium Salt、Promega社)を腹腔内に投与し、約10分後にIVIS Spectrum(Perkin Elmer社)で細胞由来の発光(luciferase活性)を測定することにより行った。試験用の飼料及びマウスの状態は、毎日適切に管理した。マウスの体重は適時計測した。投与開始日(0日目)は、癌細胞(腫瘍)を移植した日とした。そして、投与開始日から一週間おきにIVIS spectrumにて発光を計時観察した。腫瘍発光の測定結果を図8に示す。図8(A)に、投与開始から21日経過時点の腫瘍発光の結果を示す。図8(B)に、発光量の経時観察結果を示す。各群におけるマウスの体重の計測結果を図9に示す。
【0073】
投与終了後には、イソフルラン麻酔下にて腫瘍を摘出し、安楽死を行った。各群(コントロール群又はプテロスチルベン群)における摘出した腫瘍のサイズ(重量)の測定結果を図10に示す。なお、本試験例は独立した試験を2回繰り返し行ったものである。
【0074】
図10中、エラーバーは、標準誤差を示し、図10中、*を付したデータは、P<0.05であり、**を付したデータは、P<0.01である。
【0075】
(評価結果)
図8及び10に示すとおり、プテロスチルベンを経口投与した群(プテロスチルベン群)では、コントロール群と比べて、腫瘍の増大が抑制された。なお、プテロスチルベンの経口投与は、マウスの体重に大きな影響を与えないことが示された(図9参照)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]