特許第6573877号(P6573877)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6573877液状ビスアシルホスフィンオキシド光開始剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6573877
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】液状ビスアシルホスフィンオキシド光開始剤
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/50 20060101AFI20190902BHJP
   C09D 7/40 20180101ALI20190902BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20190902BHJP
   C09D 11/02 20140101ALI20190902BHJP
   C09J 11/02 20060101ALI20190902BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20190902BHJP
   C07F 9/53 20060101ALI20190902BHJP
   A61K 6/083 20060101ALI20190902BHJP
【FI】
   C08F2/50
   C09D7/40
   C09D201/00
   C09D11/02
   C09J11/02
   C09J201/00
   C07F9/53
   A61K6/083 530
【請求項の数】15
【全頁数】57
(21)【出願番号】特願2016-524916(P2016-524916)
(86)(22)【出願日】2014年6月30日
(65)【公表番号】特表2016-535131(P2016-535131A)
(43)【公表日】2016年11月10日
(86)【国際出願番号】IB2014062730
(87)【国際公開番号】WO2015004566
(87)【国際公開日】20150115
【審査請求日】2017年6月30日
(31)【優先権主張番号】13175468.1
(32)【優先日】2013年7月8日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アラン フランシス カニンガム
(72)【発明者】
【氏名】カタリーナ ミステリ
(72)【発明者】
【氏名】クアト ディートリカー
(72)【発明者】
【氏名】ベアト グリム
【審査官】 大久保 智之
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−520623(JP,A)
【文献】 特開2000−169511(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F2
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分:
(a)式(I)の化合物:
【化1】
(式中、
Ar1およびAr2は互いに独立して、
【化2】
あるいは、置換されていないかまたはR1、R2、R3もしくはR’によって1回以上置換されたナフチルである;
1およびR3は互いに独立して、C1〜C4アルキル、C1〜C4アルコキシまたはハロゲンである;
2は、水素、C1〜C4アルキル、ハロゲン、C1〜C4アルコキシまたは1つ以上のOによって中断されたC2〜C20アルコキシである;
QはC1〜C4アルキレンである;
4はメチルまたはエチルである;
R’およびR”は互いに独立して水素またはPG−Y−R'''−X−である;
PGは重合性基またはメチルもしくはエチルである;
Yは直接結合、OまたはSである;
Xは、直接結合、OまたはSである;
R'''は、直接結合、C1〜C20アルキレンまたは1以上のOで中断されたC2〜C20アルキレンである);
(b)式(II)の1つ以上の化合物:
【化3】
(式中、
Ar1、Ar2およびQは前記定義のとおりであり、かつ
5は、置換されていないかまたはOHおよび
【化4】
から選択される1以上の基で置換されたC3〜C30アルキルであるか、
あるいはR5は、1つ以上のOまたはC3〜C8シクロアルキレンで中断された3〜C28アルキルであり、その中断されたC3〜C28アルキルは置換されていないかまたはOHおよび
【化5】
から選択される1以上の基で置換されている);および
(c)任意で式(III)の化合物:
5−OH (III)
(式中、R5は前記定義のとおりである)
を含む液状光開始剤混合物。
【請求項2】
0.1〜20質量%の成分(a)、80〜99.9質量%の成分(b)および0〜19.9質量%の成分(c)が存在する、請求項1に記載の液状光開始剤混合物。
【請求項3】
式(I)、(II)および(III)の前記化合物において、
1、R2およびR3はC1〜C4アルキルであり、
R’およびR”は水素であり、
Qはメチレンであり、かつ
5は、置換されていないかまたは
【化6】
で置換されたC3〜C30アルキルであるか、あるいはR5はC3〜C8シクロアルキレンで中断された3〜C28アルキルであり、その中断されたC3〜C28アルキルは
【化7】
で置換されている、請求項1に記載の液状光開始剤混合物。
【請求項4】
成分(a)、(b)および任意で(c)に加えてさらなる光開始剤(C)を含む、請求項1に記載の液状光開始剤混合物。
【請求項5】
(A)少なくとも1つのモノマーまたはオリゴマー性エチレン性不飽和光重合性化合物と、
(B)請求項1に記載の少なくとも1つの液状光開始剤混合物と
を含む、光重合性組成物。
【請求項6】
成分(A)および(B)に加えて、光開始剤(C)および他の慣例的添加剤(D)から選択される少なくとも1つのさらなる成分を含む、請求項5に記載の光重合性組成物。
【請求項7】
前記さらなる光開始剤(C)が、アルファ−ヒドロキシケトン、ベンゾフェノン、置換ベンゾフェノン化合物、ベンジルジメチルケタール、フェニルグリオキシレート化合物およびアルファ−アミノケトン化合物からなる群から選択される、請求項6に記載の光重合性組成物。
【請求項8】
組成物を基準として0.05〜15質量%の液状光開始剤混合物(B)または光開始剤(B)+(C)を含む、請求項5から7のいずれか1項に記載の光重合性組成物。
【請求項9】
組成物を基準として0.1〜5質量%の液状光開始剤混合物(B)または光開始剤(B)+(C)を含む、請求項5から7のいずれか1項に記載の光重合性組成物。
【請求項10】
エチレン性不飽和二重結合を含むモノマーまたはオリゴマー化合物を含む組成物の光重合の光開始剤としての、請求項1から4のいずれか1項に記載の液状光開始剤混合物の使用。
【請求項11】
少なくとも1つのエチレン性不飽和二重結合を含むモノマー、オリゴマーまたはポリマー化合物の光重合法であって、前記化合物に、請求項1から4のいずれか1項に記載の液状光開始剤混合物を添加し、得られる組成物を電磁放射線で照射することを含む、前記方法。
【請求項12】
コーティング、印刷インク、印刷版、接着剤、歯科用組成物、ゲルコート、電子機器用フォトレジストを製造するため、電気部材および電子部材を封入するため、磁気記録材料を製造するため、微小機械部品、導波管、光スイッチ、メッキマスク、エッチングマスク、色校正システム、ガラス繊維ケーブルコーティング、スクリーン印刷ステンシルを製造するため、光硬化性材料を使用するフォトリソグラフィーもしくはポリマー噴射法に基づくラピッドプロトタイピングまたは付加製造技術によって3次元物体を製造するため、画像記録材料を製造するため、ホログラフィック記録のため、超小型電子回路を製造するため、または脱色材料を製造するための、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも1つの表面上を請求項5から9のいずれか1項に記載の光重合性組成物でコーティングし、電磁放射線で照射した、コーティングされた基材。
【請求項14】
請求項5から9のいずれか1項に記載の光重合性組成物を硬化させることによって得られる重合された、または架橋された組成物。
【請求項15】
請求項1で定義される式(I)の化合物を
式(III)のアルコール
5−OH (III)
(式中、R5は請求項1で定義のとおりである)
と触媒の存在下で反応させ、反応の間に形成される式(IV)のアルコール
4−OH (IV)
(式中、R4はメチルまたはエチルである)
を除去する手段をとることによる、請求項1で定義する液状光開始剤混合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規液状ビスアシルホスフィンオキシド光開始剤、そのような化合物の製造および使用に関する。
【0002】
モノアシルホスフィンオキシド化合物およびビスアシルホスフィンオキシド化合物の技術がこれらの化合物の優れた光開始剤特性のためにますます重要になるにつれ、施用および硬化過程での性能が改善されたそのような光開始剤の使用しやすい形態である液体も必要とされる。
【0003】
ビスアシルホスフィンオキシド光開始剤化合物は、たとえば米国特許第4737593号で記載されている。
【0004】
今までのところ知られているほとんどのビスアシルホスフィンオキシド(BAPO)光開始剤は固体化合物である。一例として、フェニル−ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−ホスフィンオキシド(Irgacure(登録商標)819)は127〜132℃の融点を有する黄色がかった固体である。これらの化合物は自身の硬化性能で評価が高い一方で、これらの化合物の多くが溶解しにくく、そして放射線硬化性配合物に組み入れにくいことは当業者にはよく知られている。したがって、これらの光開始剤を含む放射線硬化性配合物の製造は、多くの場合、冗漫な過程であり、光開始剤を均一に組み入れるためには長時間および/または高温を必要とする。加えて、粉塵形成を回避するための適切な手段をとらなければならないので、施用過程での粉末状固体化合物の取り扱いは複雑である。簡単な撹拌過程で使用できる公知固体誘導体と同等またはより良好な性能を有するビスアシルホスフィンオキシド光開始剤の液状形態は、したがって高く評価される。
【0005】
さらに、最適硬化性能を達成するために他の種類の光開始剤と組み合わせてビスアシルホスフィンオキシド光開始剤を使用することが多くの場合で有利である。広く使用される組み合わせは、たとえば、英国特許出願公開第2310855号で記載されるままのα−ヒドロキシケトン化合物とビスアシルホスフィンオキシド化合物とのブレンドである。最適性能を提供するためには、ブレンドを均質形態で施用しなければならず、これは2つ以上の光開始剤成分の簡単な混合によって得ることは困難である。ブレンドが液体である場合に最高の均質性が得られ、したがってビスアシルホスフィンオキシド光開始剤を含むほとんどの光開始剤の組み合わせは液体である。液体ブレンドは、固体ビスアシルホスフィンオキシド光開始剤を別の液状光開始剤または液状形態である光開始剤ブレンド中に溶解させることによって得ることができる。あるいは、2つ以上の固体成分の混合物は、取扱い温度より十分低い融点を有する共融混合物の割合でブレンドされる場合に液体を形成する可能性があることはよく知られている。比較的難溶性の成分を含む液体ブレンドの欠点は、それらが通常、限定された混合比範囲内でのみ安定であるという事実である。温度などの貯蔵の間の環境条件の顕著な変化は、低溶解性成分の結晶化をもたらす可能性があり、混合物が不均一になり、したがって使用不能になる。さらに、限定された混合比範囲のために最適硬化性能に必要な生成物比の最適化ができない。したがって、他の光開始剤成分も液体である場合、無限の可能性で他の光開始剤との液体ブレンドを製造するために混合比を大幅に拡大する液状ビスアシルホスフィンオキシド光開始剤が必要とされる。
【0006】
したがって、液状ビスアシルホスフィンオキシド光開始剤を製造するための多くの取り組みが報告されている。実際、ビスアシルホスフィンオキシド構造上に好適な置換基を導入すると、結晶質でない化合物が得られる。しかしながら、これらの化合物は固体でないが、その一方で、分子の大きさのために、それらは通常、たとえば注入することによって容易に取り扱うことができない高粘性樹脂またはラッカーである。これらの化合物は、実際、溶媒などの好適な希釈剤を添加することによるか、または粘度が十分低い温度まで加熱することによって、可溶化しなければならない。そのような条件は工業的応用にふさわしくない。
【0007】
歯科用途で使用される液状ビスアシルホスフィンオキシド光開始剤は、最近、米国特許出願公開第2007/0027229号およびBeilstein J. Org. Chem 2010, 6, 26 by N. Moszner et al.で報告されている。構造は、ベンゾイルおよび/またはP−アリール部分上に選択された置換基、たとえば酸素などのヘテロ原子によって中断された柔軟性アルキル置換基を有する。ビスアシルホスフィンオキシド構造の合成に使用する置換ベンゾイルおよび/またはP−アリール化合物は、一連の多段合成で製造しなければならない。
【0008】
「液状ビス−アシルホスフィンオキシド(BAPO)光開始剤」という表題の論文が2010年のRadTech USAでC. C. Chiuにより提示された。しかしながら、報告された液状光開始剤は、実際、ビスアシルホスフィンと対応するビスアシルホスフィンオキシド(Irgacure(登録商標)819)との混合物である。そのような混合物は液体である一方で、酸素を含有する雰囲気中に置くと容易に酸化して対応するビスアシルホスフィンオキシドが得られることは周知である。したがって、ビスアシルホスフィンとビスアシルホスフィンオキシドとのそのようなブレンドは、貯蔵に際して安定ではないが、固体ビスアシルホスフィンオキシドに変わる。この低い化学安定性のために、コーティングなどのその工業的応用が限定される。
【0009】
最近、P−OR置換基を有するビスアシルホスフィン酸エステルが液状BAPO光開始剤として請求されている。国際公開第2012/012067号で請求されている液状ビスアシルホスフィン酸エステル光開始剤の製造は固体ビスアシルホスフィンオキシドの上記制限を考慮すると望ましいが、国際公開第2012/012067号はビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−n−ブトキシホスフィンオキシドのみを記載している。しかしながら、たとえばエチルまたはヘキシル基などの短鎖または中鎖のアルキル鎖を有するこのクラスの化合物は固体であって液体ではない化合物である(たとえば、欧州特許出願第12197968.6号で開示されている化合物を参照。さらに、報告されている合成アクセスは、かなり面倒で費用がかかり、適用性の容易な微調整を可能にする柔軟なアプローチが得られない。
【0010】
類似のビスアシルホスフィン酸エステル誘導体は国際公開第2013/020469号(T. Chen, Y. Wang)でも請求されている。しかしながら、国際公開第2012/012067号で請求される液状ビスアシルホスフィンオキシド構造および国際公開第2013/020469号で請求されるBAPOはビスアシルホスフィン酸エステル誘導体に限定され、Rがビスアシルホスフィンオキシド構造のリン原子に炭素原子を介して結合している置換基であるP−R置換誘導体を含まない。アシルホスフィンオキシド光開始剤中のリン原子上の置換基が化合物の光開始剤としての適用性に対して決定的な影響を及ぼすことはよく知られている。これは、たとえばモノアシルホスフィンオキシド(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−ジフェニルホスフィンオキシド(Lucirin(登録商標)TPO)および(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィン酸エチル(Lucirin(登録商標)TPO−L)の効率の違いで明らかになる。
【0011】
Rがビスアシルホスフィンオキシド構造のリン原子に炭素原子を介して結合した置換基であるP−R置換誘導体は概して非常に魅力的な適用プロファイルを提供するので、液状であるだけでなく、簡単かつ安価な方法で製造できるこの構造用式の液状ビスアシルホスフィンオキシド光開始剤が依然として必要とされる。
【0012】
室温で液体である、最高で100%のビスアシルホスフィンオキシド成分含有量と対応する高い硬化性能を有する光開始剤は、簡単かつ安価な方法によって得ることができることが見出された。
【0013】
本発明は、以下の成分:
(a)式(I)の化合物
【化1】
(式中、Ar1およびAr2は互いに独立して、
【化2】
あるいは置換されていないか、またはR1、R2、R3もしくはR’により1回以上置換されたナフチルである;
1およびR3は互いに独立して、C1〜C4アルキル、C1〜C4アルコキシまたはハロゲンである;
2は、水素、C1〜C4アルキル、ハロゲン、C1〜C4アルコキシまたは1つ以上のOによって中断されたC2〜C20アルコキシである;
QはC1〜C4アルキレンである;
4はメチルまたはエチルである;
R’およびR”は互いに独立して水素またはPG−Y−R'''−X−である;
PGは重合性基またはメチルもしくはエチルである;
Yは直接結合、OまたはSである;
Xは、直接結合、OまたはSである;
R'''は、直接結合、C1〜C20アルキレンまたは1つ以上のOで中断されたC2〜C20アルキレンである);
(b)式(II)の1以上の化合物
【化3】
(式中、
Ar1、Ar2およびQは前記定義のとおりであり、かつ
5は、置換されていないか、またはOHおよび
【化4】
から選択される1つ以上の基で置換されたC3〜C30アルキルであるか、
あるいはR5は、1つ以上のOで中断されたC2〜C28アルキルまたはC3〜C8シクロアルキレンであり、その中断されたC3〜C28アルキルは、置換されていないか、またはOHおよび
【化5】
から選択される1つ以上の基で置換されている);および
(c)任意で式(III)の化合物
5−OH (III)
(式中、R5は前記定義のとおりである)
を含む液状光開始剤混合物に関する。
【0014】
1〜C20−アルキルは線状または分枝状であり、たとえばC1〜C18−、C1〜C14−、C1〜C12−、C1〜C8−、C1〜C6−またはC1〜C4アルキルである。例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、2,4,4−トリメチルペンチル、2−エチルヘキシル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、オクタデシルおよびアイコシルである。
【0015】
1〜C4アルキルは、線状または分枝状であり、たとえば、C1〜C3−、C1〜C2−、C2〜C4−、C3〜C4−またはC2〜C3アルキルである。例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチルおよびtert−ブチルである。
【0016】
3〜C30−アルキルは、線状または分枝状であり、たとえば、C3〜C28−、C3〜C24−、C3〜C20−、C3〜C18−、C3〜C14−、C3〜C12−、C3〜C8−、C3〜C6−またはC3〜C4アルキルである。例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、2,4,4−トリメチルペンチル、2−エチルヘキシル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、アイコシルなどである。
【0017】
1つ以上のOで中断されたC3〜C30アルキルは、たとえば1〜14、1〜12、1〜10、1〜8、1〜4、1、2または3個のOで中断されている。
【0018】
1つ以上のOHで置換された1以上のOで中断されたC3〜C30アルキルおよびC3〜C28アルキルは、たとえば1〜5、1〜3または1もしくは2個のOH基で置換されている。
【0019】
1〜C4アルコキシは線状または分枝状であり、たとえばC1〜C3−、C1〜C2−、C2〜C4−、C3〜C4−またはC2〜C3アルコキシである。例は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブチルオキシ、sec−ブチルオキシ、イソ−ブチルオキシおよびtert−ブチルオキシである。
【0020】
1つ以上のOで中断されたC2〜C10アルコキシは、たとえば1〜9、1〜7、1〜4または1回もしくは2回Oで中断されている。基が1個以上のOで中断されている場合、前記O原子は少なくとも1つのメチレン基によって互いに隔てられており、すなわちO原子は非連続的である。例は、以下の構造単位−O−CH2−O−CH3、−O−CH2CH2−O−CH2CH3、−O−[CH2CH2O]CH3(v=1〜4)、−O−(CH2CH2O)4CH2CH3、−O−CH2−CH(CH3)−O−CH2−CH2CH3、または−O−CH2−CH(CH3)−O−CH2CH3である。
【0021】
ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素であり、特にフッ素、塩素および臭素であり、好ましくはフッ素および塩素であり、最も好ましいのは塩素である。
【0022】
1〜C20アルキレンは線状または分枝状であり、たとえばC1〜C18−、C1〜C14−、C1〜C12−、C1〜C8−、C1〜C6−またはC1〜C4アルキレン、たとえばメチレン、エチレン、プロピレン、1−メチルエチレン1,1−ジメチルエチレン、ブチレン、1−メチルプロピレン、2−メチル−プロピレン、ペンチレン、ヘキシレン、へプチレン、オクチレン、ノニレン、デシレン、ドデシレン、テトラデシレン、ヘキサデシレンまたはオクタデシレンである。
【0023】
1個以上のOで中断されたC2〜C20アルキレンは線状または分枝状であり、たとえば1〜9回、たとえば1〜7回、または1回もしくは2回のOで中断されている。中断するO原子は非連続的である。これにより、たとえば、−CH2−O−CH2−、−CH2CH2−O−CH2CH2−、−[CH2CH2O]−、−[CH2CH2O]−CH2−(式中、y=1〜9)、−(CH2CH2O)7CH2CH2−、−CH2−CH(CH3)−O−CH2−CH(CH3)−または−CH2−CH(CH3)−O−CH2−CH2CH2−などの構造単位が得られる。
【0024】
本発明で好適な重合性基は、たとえば−CH2−CH=CH2、−CH2−C(CH3)=CH2、−C(CH3)=CH2、−CH=CH2、−O−(CO)−C(CH3)=CH2、−O−(CO)−CH=CH2である。
【0025】
「潜在性光触媒(photolatent catalyst)」または「光開始剤」は、光、特に150〜800nm、たとえば200〜800または200〜600nmの波長の光で照射すると、活性触媒または活性ラジカルを提供する化合物を指す。
【0026】
「および/または」または「または/および」という語は、この文脈では、1つの所定の選択肢(置換基)が存在し得るだけでなく、複数の所定の選択肢(置換基)があわせて、すなわち異なる選択肢(置換基)の混合物も存在し得ることを表現するものである。「少なくとも」という語は、1つ以上、たとえば1つまたは2つまたは3つ、好ましくは1つまたは2つを定義することを意図する。
【0027】
「任意で置換されていてもよい」という語は、この語が指す基が置換されていないかまたは置換されているかのいずれかであることを意味する。
【0028】
本明細書およびそれに続く特許請求の範囲全体にわたって、文脈上他の意味に解すべき場合を除き。「comprise(含む)」という語、または「comprises」もしくは「comprising」という変化形は、記載されたある整数もしくはステップまたは整数もしくはステップの群を含むが、その他の整数もしくはステップ整数もしくはステップの群を排除しないことを意味すると理解される。
【0029】
本願の文脈において、「(メタ)アクリレート」という語は、アクリレートならびに対応するメタクリレートを指すことを意図する。
【0030】
本発明の文脈において、本発明による化合物について上述した選好は、クレームのすべてのカテゴリー、すなわち組成物、使用、および方法クレームも同様に指すことが意図される。
【0031】
本発明は、本明細書中で開示される特定の化合物、構造、方法ステップ、基材、および材料に限定されず、このため化合物、構造、方法ステップ、基材、および材料はやや違っていてもよいと理解すべきである。本明細書中で用いられる専門用語は特定の実施形態を説明するためだけであり、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲およびその等価物によってのみ限定されるので、限定的であることを意図しないことも理解されるべきである。
【0032】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上、そうでないとする明確な指示がない限り、複数の指示対象を含むことに留意しなければならない。
【0033】
その他に定義されていなければ、本明細書中で使用される任意の用語および科学用語は、本発明が関連する分野の当業者により通常理解される意味を有することを意図する。
【0034】
説明および特許請求の範囲全体にわたって数値と関連して使用される場合、「約」という語は、当業者には周知で許容できる精度の範囲を指す。前記範囲は+/−10%である。
【0035】
Ar1およびAr2は、互いに独立して、
【化6】
あるいは置換されていないか、またはR1、R2、R3、R’もしくはR”で1回以上置換されたナフチルである。特に、Ar1およびAr2は互いに独立して
【化7】
である。好ましくは、Ar1およびAr2は同じである。
【0036】
1およびR3は互いに独立して、C1〜C4アルキル、C1〜C4アルコキシまたはハロゲンである。たとえば、R1およびR3は互いに独立して、C1〜C4アルキル、特にメチル、またはC1〜C4アルコキシ、特にメトキシである。好ましくは、R1およびR3は互いに独立して、C1〜C4アルキル、特にメチルである。好ましい化合物において、R1およびR3は同じである。
【0037】
2は、水素、C1〜C4アルキル、ハロゲン、C1〜C4アルコキシまたは1つ以上のOで中断されたC2〜C20アルコキシである。R2は特に水素、C1〜C4アルキルであり、特にメチル、またはC1〜C4アルコキシであり、特にメトキシである。好ましくは、R2は水素またはC1〜C4アルキルであり、特にメチルである。好ましい化合物において、R2はC1〜C4アルキル、特にメチルである。R2は、たとえばR1およびR3と同じである。
【0038】
Qは、たとえばC1〜C4アルキレンまたはC1〜C2アルキレン、特にメチレンである。
【0039】
4はメチルまたはエチルであり、特にメチルである。
【0040】
R’およびR”は互いに独立して、水素またはPG−Y−R'''−X−、特に水素である。好ましい化合物において、R’およびR”は同じである。
【0041】
PGは重合性基またはC1〜C10−アルキルである。重合性基としてのPGは、好ましくはCH2=CH−CH2−、CH2=CH−、CH2=CH−COO−、CH2=C(CH3)−COO−、メチルまたはエチルである。PGは、たとえばC1〜C10アルキル、特にメチルまたはエチルである。あるいはPGは、たとえばCH2=CH−CH2−、CH2=CH−、CH2=CH−COO−またはCH2=C(CH3)−COO−である。
【0042】
Yは直接結合、OまたはSである。Yは、たとえば直接結合もしくはOであるか、または直接結合もしくはSであるか、またはOもしくはSである。好ましくは、Yは直接結合またはOであり、特に直接結合である。
【0043】
Xは、直接結合、OまたはSである。Xは、たとえば直接結合もしくはOであるか、または直接結合もしくはSであるか、またはOもしくはSである。好ましくは、Xは直接結合またはOであり、特に直接結合である。
【0044】
R'''は、直接結合、C1〜C20アルキレンまたは1つ以上のOで中断されたC2〜C20アルキレンである。たとえば、R'''は、C1〜C20アルキレンまたは1つ以上のOで中断されたC2〜C20アルキレン、たとえばC1〜C12アルキレンまたは1〜6個のOで中断されたC2〜C12アルキレンである。
【0045】
5は、たとえばC3〜C30アルキル、またはC3〜C8シクロアルキレンで中断されたC2〜C28アルキルであり、そのどちらも置換されていないか、または
【化8】
もしくはOHで置換されている。特に、R5は、置換されていないか、または
【化9】
で置換されたC3〜C12アルキルである。好ましくは、R5は非置換C3〜C12アルキル、特にオクチルもしくはノニルであるか、またはC3〜C12アルキル、特に
【化10】
で置換されたヘキシルである。
【0046】
成分(b)は、たとえば式(II)の1つ以上の異なる化合物を含む。これらの式(II)の1つ以上の異なる化合物は、たとえば異なる基R5を有する。
【0047】
式(II)の1つ以上の化合物は、m個の式(II)の化合物を指し、ここで、mは、たとえば1〜35、5〜35、25〜35、1〜25、1〜20、1〜10、1〜8、1〜6または1〜3である。
【0048】
興味深いのは、前記定義の液状光開始剤混合物であり、ここで、0.1〜25%の成分(a)、75〜99.9%の成分(b)および0〜25%の成分(c)が存在する。
【0049】
たとえば、混合物は、0.1〜20%の成分(a)、80〜99.9%の成分(b)および0〜19.9%の成分(c)を含む。
【0050】
あるいは、液状光開始剤混合物は、たとえば1〜25%の成分(a)、75〜99.0%の成分(b)および0〜24%の成分(c)を含む。
【0051】
別の実施形態において、液状光開始剤混合物は、2〜10%の成分(a)、90〜98%の成分(b)および0〜5%の成分(c)を含む。
【0052】
好ましいのは、(a)および(c)の量が10%未満、たとえば1〜9%、さらに好ましくは5〜9%である液状光開始剤混合物である。
【0053】
興味深いのは、
Ar1およびAr2が互いに独立して
【化11】
であり、
1およびR3が互いに独立して、C1〜C4アルキル、C1〜C4アルコキシまたはハロゲンであり、
2が、水素、C1〜C4アルキル、ハロゲン、C1〜C4アルコキシまたは1以上のOで中断されたC2〜C20アルコキシであり、
QがC1〜C4アルキレンであり、
4がメチルまたはエチルであり、
R’およびR”が水素であり、
5が、置換されていないかまたはOHおよび
【化12】
から選択される1つ以上の基で置換されたC3〜C30アルキルであるか、あるいはR5が、1つ以上のC3〜C8シクロアルキレンで中断されたC2〜C28アルキルであり、その中断されたC2〜C28アルキルが、置換されていないか、またはOHおよび
【化13】
から選択される1つ以上の基で置換されている、前記定義の液状光開始剤混合物である。
【0054】
さらに興味深いのは、
Ar1およびAr2が互いに独立して、
【化14】
であり、
1およびR3が互いに独立して、C1〜C4アルキル、特にメチル、またはC1〜C4アルコキシ、特にメトキシであり、
2が、水素、C1〜C4アルキルであり、特にメチル、またはC1〜C4アルコキシであり、特にメトキシであり、
Qが、C1〜C4アルキレン、特にエチレンまたはメチレン、好ましくはメチレンであり、
4がメチルまたはエチルであり、
R’およびR”が水素であり、かつ
5が、置換されていないか、または
【化15】
もしくはOHで置換されたC3〜C12アルキルであるか、
あるいはR5が、シクロヘキシレンまたはシクロペンチレンで中断されたC2〜C12アルキルであり、この中断されたC3〜C12アルキルは、
【化16】
またはOHで置換されている、前記定義の液状光開始剤混合物である。
【0055】
好ましいのは、式(I)、(II)および(III)の化合物において、
1、R2およびR3がC1〜C4アルキルであり、
R’およびR”が水素であり、
Qがメチレンであり、かつ
5が、置換されていないかまたは
【化17】
で置換されたC3〜C30アルキルであるか、あるいはR5は、C3〜C8シクロアルキレンで中断されたC2〜C28アルキルであり、その中断されたC3〜C28アルキルが、
【化18】
で置換されている、前記定義の液状光開始剤混合物である。
【0056】
さらに興味深いのは、式(I)、(II)および(III)の化合物において、
1、R2およびR3がC1〜C4アルキル、特にメチルであり、
R’およびR”が水素であり、
Qがメチレンであり、かつ
5がC3〜C10アルキル、特にオクチルまたはノニルであり、これは置換されていないか、
あるいはR5がC3〜C8アルキル、特にヘキシルであり、これは
【化19】
またはOHで置換されているか、あるいはR5が、シクロヘキシレンで中断されたC2〜C6アルキルであり、その中断されたC2〜C6アルキルが、
【化20】
またはOHで置換されている、前記定義の液状光開始剤混合物である。
【0057】
本発明のビスアシルホスフィンオキシド光開始剤の液状混合物は、以下のスキームにしたがって構造(I)のビスアシルホスフィンオキシドの構造(III)のアルコールでのエステル交換によって製造できる:
【化21】
(式中、Ar1、Ar2、R4、R5およびQは前記定義のとおりである)。
【0058】
二量体または多量体構造の式IIの化合物、すなわちR5が1つ以上の
【化22】
で置換されたアルキレンである式IIの化合物を得るために、対応する多官能性アルコール(III)を出発物質として用いる。
【0059】
多官能性アルコール(III)を用いる場合、多官能性アルコール(III)のすべてのアルコール基がエステル交換生成物中でエステル化され得るか、または多官能性アルコール(III)のアルコール基の一部だけがエステル化され得る。ほとんどの場合、異なる数の多官能性アルコール(III)のエステル化アルコール基を有する生成物の混合物が得られる。たとえば、n官能性多官能性アルコール(III)を使用する場合、モノエステル化多官能性アルコール(III)からn回エステル化された多官能性アルコール(III)を含む生成物混合物が得られる。たとえばエステル交換条件、ならびにエステル交換法で使用される多官能性アルコール(III)中のアルコール基および化合物(I)の化学量論によってエステル化度をある程度まで制御する方法を当業者は知っている。
【0060】
エステル交換反応の条件は当業者には周知であり、好適な条件は、J. Otera, Chem. Rev. 1993, 93, 1449、またはU. Schuchardt et al., J. Braz. Chem. Soc. 1998, 9, 199で報告されている。反応は、たとえばアルコール成分(III)を溶媒として使用してニートで実施できる。あるいは、反応は、たとえばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、ベンゼン、トルエン、キシレンおよびその他、またはそれらの混合物などの、エステル交換条件下で不活性である溶媒を使用した溶液中で実施できる。
【0061】
エステル交換は本質的に反応物質を混合することによって起こり、有用な時間内に必要な変換を達成するために過程を加速するためには触媒の添加が必要である。使用される典型的な触媒は、たとえばブレンステッド酸、ルイス酸、ブレンステッド塩基またはルイス塩基である。触媒を、通常、少量で、典型的には出発物質を基準として0.01〜10モル%の範囲で添加する。
【0062】
エステル交換反応にとって有用な触媒の例は、ドデシルベンゼンスルホン酸、オルトチタン酸テトライソプロピル、ジイソプロポキシド−ビス−アセチルアセト酢酸チタン、ビス−2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ−チタン−ビス−アセチルアセトネート、ブチルスズトリス(2−エチル−ヘキサノネート)、ジブチルスズオキシド、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、2−エチルヘキサン酸スズ(II)、イソプロピル酸リチウム、1,3−ジクロロ−2,2,4,4−テトラブチル−ジスタノキサン、ジルコニウム(IV)−n−プロポキシド、ジルコニウム(IV)−n−ブトキシド、ジルコニウム(IV)−アセチルアセトネート、2−エチル−ヘキサン酸ジルコニウム(IV)、マグネシウムアセチルアセトネート、バナジウム(III)アセチルアセトネート、Fascat 4200、リチウムメトキシド、酢酸リチウム、酢酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、酢酸アルミニウム(III)、アルミニウム(III)アセチルアセトネート、アルミニウム−tert−ブトキシド水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、炭酸水素カリウム、カリウムtert−ブトキシド、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、(DABCO)1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノン−5−エン(DBN)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク−7−エン(DBU)1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デク−5−エン(TBD)または硝酸チアミンである。
【0063】
好ましい触媒は、ジブチルスズジラウレート、ブチルスズトリス(2−エチル−ヘキサノネート)、アルミニウム(III)アセチルアセトネート、ジルコニウム(IV)−アセチルアセトネートまたはFascat 4200(Arkema Inc)である。
【0064】
エステル交換反応は室温またはそれ以下で起こり、反応をさらに加速するためには、より高い温度を使用することが多くの場合有利である。したがって、反応温度は、通常、20℃から300℃の間の範囲内であり、たとえば30〜200℃の範囲内であり、好ましくは40〜150℃の範囲内である。有用な温度範囲の上限は、最も揮発性の高い物質成分、通常はアルコール(III)または溶媒によって規定される。
【0065】
典型的には、エステル交換反応は平衡混合物を産生する可逆過程である。平衡混合物の組成は、成分の熱力学的安定性によって決まる。所望の生成物の形成を促進するために、複数の対策を講じることができる。アルコール成分(III)をビスアシルホスフィンオキシド(I)の量よりも大過剰で使用することができ、それにより質量作用の法則の効果によって平衡の生成物へのシフトを促進する。標準圧力下または真空下での蒸留によるアルコール成分(IV)の除去は、平衡を生成物側へシフトさせるためのもう1つの手段である。アルコール(IV)を除去するために添加溶剤を使用することも可能である。典型的な添加溶剤は、たとえばベンゼン、トルエン、キシレン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサンなどの溶媒である。たとえば大過剰のアルコール(III)を使用することと、アルコール(IV)を真空下で蒸留により除去することなどのこれらの手段の2つ以上を組み合わせることも可能である。さらに別の可能性は、たとえばCCl4を溶媒として使用する場合、非極性反応媒体との非相溶性のために高極性アルコール(たとえばR4=CH3)が除去される抽出条件を使用することである。
【0066】
好適な反応条件および反応時間が適用される場合、エステル交換を100%変換にすることが主に可能である。しかしながら、そのような反応条件および反応時間は非常に労力を要し、かつ費用がかかり、したがって工業的過程にとって実行可能ではない。したがって、エステル交換反応は完全変換が達成される前に停止し、反応混合物中に残存量の出発物質(I)が残る。反応条件に応じて、残存する出発物質の量は、たとえば0.1〜25%の範囲内であり得る。
【0067】
この物質は、おそらく、蒸留、結晶化または任意のクロマトグラフ精製技術などの好適な手順によって除去することができる。しかしながら、残存する出発物質が生成物の特性および性能に悪影響を及ぼさない場合、後者を精製することなく使用してもよい。これは、たとえば本発明の液状ビスアシルホスフィンオキシド光開始剤混合物に当てはまる。出発物質(I)はビスアシルホスフィンオキシド光開始剤であるので、その存在は生成物の硬化性能を大きく変更しない。出発物質(I)が生成物混合物中にわずかしか溶解しない固体化合物である場合、変動する温度で長時間貯蔵した場合でも結晶化が起こらない範囲内に濃度を保持しなければならない。好ましくは、生成物混合物中の出発物質(I)の濃度は25%未満、たとえば15%未満、そして特に12%未満である。
【0068】
過剰のアルコール(III)をエステル交換過程のために使用する場合、および/または生成物(II)への変換が完全でない場合、粗生成物混合物は残存するアルコール(III)を含む。この過剰のアルコールは、おそらくは真空下での蒸留によって粗反応混合物から除去することができる。アルコール(III)を含まない液状ビスアシルホスフィン光開始剤混合物はこのようにして得ることができる。アルコール(III)の揮発度に応じて、アルコールの完全な除去のために、大規模で時間および費用がかかる蒸留が必要である。少量の残存するアルコール(III)は液状ビスアシルホスフィンオキシド光開始剤混合物の硬化性能を大きく換えないので、少量のアルコール(III)の存在は混合物の粘度を減少させることによって液状ビスアシルホスフィンオキシド光開始剤混合物の取扱特性に対して有益な効果を及ぼす可能性さえある。したがって、費用効率の高い工業的過程はアルコール(III)の完全な除去を優先的に回避する。しかしながら、希釈効果による硬化効率の損失を防止するためには、残存するアルコール含有量は25%を越えてはならない。優先的には、残存するアルコール(III)の量は15%未満、特に10%未満である。
【0069】
エステル交換過程は、この場合、反応の溶媒として作用し、そして高転化を促進する、大過剰のアルコール(III)を使用して実施することができる。エステル交換過程は、小過剰またはさらには等モル量のアルコール(III)を使用して実施することもできる。これらの条件下で、反応混合物の有用な初期粘度を達成するために、不活性溶媒を使用することが有利であり得る。好ましいのは、アルコール(IV)の添加溶剤として作用できる溶媒の使用である。大過剰のアルコール(III)は反応後に除去しなければならないので、比較的少量のアルコール(III)を使用する反応条件は、費用のかかる蒸留ステップが短縮されるか、または完全に回避されるため、工業的過程にとっては好ましい。好ましいのは、5モル当量未満のアルコール(III)、たとえば2モル%未満、特に1.5モル当量未満のアルコール(III)を使用する反応条件である。
【0070】
興味深いのは、過剰のアルコールを除去するための蒸留ステップを必要とせず、光開始剤として液状ビスアシルホスフィンオキシド混合物の使用を可能にする、小過剰のアルコール(III)を使用する反応条件である。
【0071】
粗生成物中、ごく少量のアルコール(III)を含む液状ビスアシルホスフィンオキシド混合物を製造し、そしてその後、明確に定義された含有量のアルコールおよび対応する粘度を有する生成物を得るために所定の量のアルコール(III)を添加することが可能である。このアプローチによって、最終アルコール含有量および粘度、次いで蒸留過程のより良好な制御が可能になる。
【0072】
エステル交換触媒をエステル交換過程後に、たとえば洗浄または好適な錯化剤で沈殿させることによって除去することが可能である。しかしながら、触媒を極少量で用いる場合、材料の除去は必要でない可能性があり、残存する触媒が反応生成物中に残る。
【0073】
本発明の対象は、したがって、前記定義の式(I)の化合物を式(III)
5−OH (III)
(式中、R5は前記定義のとおりである)
のアルコールと触媒の存在下で反応させ、そして反応の間に生じる式(IV)
4−OH (IV)
(式中、R4はメチルまたはエチルである)
のアルコールを除去する手段をとることによる、請求項1で定義する液状光開始剤混合物の製造法である。
【0074】
構造(I)のビスアシルホスフィンオキシドの合成は、国際公開第06/056541号で記載されている。主に、この過程で利用可能ないずれのエステル置換化合物もエステル交換反応でビスアシルホスフィンオキシド出発物質(I)として使用できる。本発明にしたがって高純度の液状ビスアシルホスフィンオキシド光開始剤を製造するために、出発物質は少なくとも95%超、たとえば97%超、特に98%超の純度の純粋な化合物でなければならない。国際公開第06/056541号で記載される過程は、通常95%未満の純度を有し、したがって精製ステップを必要とする生成物を製造する多段過程である。精製は、蒸留、再結晶または任意のクロマトグラフ技術などの当業者に公知の任意の過程によって可能である。工業的過程について、再結晶が最も好都合で効率のよい経済的な精製技術である。したがって、容易に精製できる化合物(I)は、エステル交換反応の出発物質として使用するのに好ましい。前記式Iについて定義したR4として高級アルキル残基を有する化合物(I)は、通常、結晶化によって精製できない粘着性樹脂またはラッカーとして得られる。前記式Iについて定義したR4として低級アルキル残基を有する化合物(I)は、精製のために再結晶することができる固体として得られる。したがって、前記定義の式IIのR5よりも低級のアルキル残基R4を有する化合物(I)をエステル交換反応の出発物質として使用する。好ましいのはエチルまたはメチルエステルであり、これらは溶解度が比較的低いために、再結晶によって最も容易に精製される。さらに、両誘導体は、国際公開第06/056541号で記載される方法にしたがって、エチルクロロメチルアセテートまたはメチルクロロメチルアセテートなどの安価な出発物質を使用して利用可能である。
【0075】
エステル交換反応の平衡の生成物側へのシフトを促進するには、反応の間に生じるアルコール(IV)を蒸留によって除去するか、または相当量のアルコール(III)を同時に除去することなく添加溶剤を使用する必要がある。これは、アルコール(II)およびアルコール(IV)の沸点が可能な限り異なる場合に最も得られる。アルコール(II)は比較的低揮発性物質であるので、アルコール(IV)がエタノールまたはメタノールなどの低分子量揮発性化合物である場合に最良の結果が得られる。したがって、R4がメチルまたはエチルである化合物(I)をエステル交換反応の出発物質として使用することが好ましい。最も好ましいのはメチルである。
【0076】
本発明で請求されるものと類似した液状ビスアシルホスフィンオキシド光開始剤はまた、まず1−ハロ酢酸アルキル(V)、たとえば1−クロロ酢酸エチル、1−ブロモ酢酸エチル、1−クロロ酢酸メチルまたは1−ブロモ酢酸メチルを式(III)のアルコールでエステル交換して1−ハロ酢酸エステル(VI)を得ることによっても製造できる。このエステルを続いて国際公開第06/056541号の方法にしたがって反応させてビスアシルホスフィンオキシドにする。エステル交換反応の反応条件は前述のとおりである。
【0077】
【化23】
(式中、Q、R4およびR5は前記定義のとおりであり、Xはハロゲン、特にClまたはBrを表す)。出発1−ハロ酢酸エステル(V)およびアルコール(IV)の低揮発度のために、必要ならば、これらの化合物を蒸留によって容易に除去することができる。粗エステル交換混合物または精製1−ハロ酢酸エステル(VI)のいずれかを続いて国際公開第06/056541号で記載される過程でアルキル化剤として使用する。
【0078】
エステル交換反応に有用な式(III)のアルコールは線状または分枝状C3〜C30アルキルアルコールであり、これは任意で酸素で中断されていてもよいし、または前記定義のヒドロキシル基で置換されていてもよい。アルコールは、たとえば第1、第2または第3アルコールであり、第1アルコールが好ましい。アルコールを純粋な化合物として、または同じ鎖長の異なる異性体ならびに/またはより短いおよび/もしくはより長い鎖長の異なるホモログを含む工業的フラクションとして使用する。純粋な化合物ではないが、これらの工業的フラクションは、通常、アルコール混合物の大部分を占める鎖長にしたがって表される。
【0079】
純粋なアルコールをエステル交換反応のために使用する場合、反応によって得られる構造(II)の化合物は、純粋な単一化合物である。異性体の混合物、またはさらに詳細にはアルコールの工業的フラクションをエステル交換反応に使用する場合、構造(II)のビスアシルホスフィンオキシドは、エステル交換反応において存在する異なる異性体および/またはホモログの相対的反応性に応じてR5において出発アルコール混合物の組成を反映する場合もあるし、反映しない場合もある、異性体および/または同族化合物の混合物からなる。
【0080】
異性体化合物の液状混合物は、通常、同じ化合物の単一異性体よりも結晶化または凝固する傾向が低い。さらに、異性体化合物の液状混合物は多くの場合、同じ化合物の単一異性体よりも容易に注入可能である。したがって、様々な温度などの様々な貯蔵条件下で優れた安定性および優れた注入可能性などの取扱特性を有する液状ビスアシルホスフィンオキシド光開始剤混合物を製造することを考慮すると、異性体アルコールの混合物、またはさらに詳細には異性体および/もしくは同族アルコールの工業的フラクションを使用することが好ましい。
【0081】
異性体および/または同族アルコールの混合物は、2以上の純粋な異性体またはホモログを混合して均一な液状混合物にすることによって製造できる。必要ならば、特に1以上の純粋な化合物が固体またはワックス状稠度を有するものである場合、熱を加えて同族液体の形成を促進してもよい。異性体および同族アルコールは非常に相溶性であるので、本発明の液状ビスアシルホスフィンオキシド光開始剤混合物の特性を最適化するために、成分を任意の割合で混合することができる。
【0082】
異性体および/または同族アルコールの混合物は、通常、工業的蒸留過程からのフラクションである工業的混合物として得ることもできる。一例として、工業的「イソオクタノール」フラクション(Exxal(商標)8、ExxonMobile Chemical)は、同族C7−、C8−、C9−およびC10−アルコール異性体を含む30ものアルコール成分を含み得る。個々のアルコールの量は、典型的には約0.2〜16%の範囲内であり、C8異性体の合計は全アルコール混合物の85%超を占める。
【0083】
工業的「イソノナノール」フラクションの一例として、Nonanol N(BASF SE)は17を越えるC9異性体を含み、個々のC9アルコールの量は、典型的には0.3〜21%の範囲内である。
【0084】
アルコール混合物の組成をさらに拡大するために、異性体および/または同族アルコールの2以上の工業的フラクションの組み合わせ、たとえば「イソヘプタノール」フラクションと「イソトリデカノール」フラクションとの混合物を使用することもさらに可能である。すべての異性体フラクションは液体であるので、液状ビスアシルホスフィンオキシド光開始剤混合物の特性を最適化するために成分を任意の割合で容易に混合することができる。
【0085】
純粋な線状アルキルアルコールの例は、たとえば、Nacol(登録商標)6−98(1−ヘキサノール)、Nacol(登録商標)8−98またはNacol(登録商標)8−99(1−オクタノール)、Nacol(登録商標)10−97またはNacol(登録商標)10−99(1−デカノール)、Nacol(登録商標)12−96またはNacol(登録商標)12−99(1−ドデカノール)、Nacol(登録商標)14−95またはNacol(登録商標)14−98(1−テトラデカノール)、Nacol(登録商標)16−95またはNacol(登録商標)16−98(1−ヘキサデカノール)であり、全てSasol Limitedから入手可能である。
【0086】
純粋な分枝状アルキルアルコールの例は、FINE OXOCOL 140(イソテトラデカノール)、FINE OXOCOL 160(イソパルミチルアルコール)、FINE OXOCOL 180(イソステアリルアルコール)、またはFINE OXOCOL 2000(イソエコサノール)、全てNissan Chemicalから入手可能)または2−エチルヘキサノール(Dow Chemical Company)である。
【0087】
線状アルコールのブレンドの例は、たとえば、Nafol(登録商標)810D(C6〜C12)、Nafol(登録商標)10D(C8〜C12)、Nafol(登録商標)1012(C8〜C16)、Nafol(登録商標)1214(C10〜C16)、Nafol(登録商標)1214Z(C8〜C18)、Nafol(登録商標)1218(C10〜C20)、Nafol(登録商標)1618(C12〜C22)、Nafol(登録商標)1620(C12〜C24)、Nafol(登録商標)20+(C16〜C26)またはNafol(登録商標)22+(C18〜C28)であり、全てSasol Limitedから入手可能である。
【0088】
分枝状第1アルキルアルコールの工業的に利用可能なフラクションの例は、Exxal(商標)7(イソヘプタノール)、Exxal(商標)8(イソオクタノール)、Exxal(商標)9(イソノナノール)、Exxal(商標)10(イソデカノール)、Exxal(商標)11(イソウンデカノール)、Exxal(商標)12(イソドデカノール)、またはExxal(商標)13(イソトリデカノール)であって、全てExxonMobile Chemicalから入手可能であり、「イソヘプタノール」「イソオクタノール」、「イソノナノール」、「イソデカノール」、「イソウンデカノール」、「イソドデカノール」および「イソトリデカノール」は、指定のアルキル鎖長を有する様々な異性体および同族アルコールが主フラクションであることを意味する。他の例は、異性体ノニルアルコールの混合物であるNonanol N(BASF SE)、イソノニルアルコール混合物であるOXOCOL 900(Kyowa Hakko Chemical Co Inc, Ltd)である。
【0089】
工業的な「酸素で中断されたアルキルアルコール」の例は、たとえば、Dowanol DE、Dowanol TE、Dowanol TMAT、Dowanol DMであり、全てDow Chemicalsから入手可能である。テトラエチレングリコールモノエチルエーテルまたはテトラエチレングリコールモノメチルエーテルは、精製化学製品として入手可能な、酸素で中断されたアルキルアルコールの例である。
【0090】
本発明にしたがって、液状光開始剤混合物を、エチレン性不飽和化合物またはそのような化合物を含む混合物の光重合用の光開始剤として使用できる。
【0091】
したがって、本発明はさらに、
(A)少なくとも1つのモノマーまたはオリゴマーエチレン性不飽和光重合性化合物と
(B)少なくとも1つの前記定義の液状光開始剤混合物と
を含む光重合性組成物にも関する。
【0092】
組成物は、成分(A)および(B)少なくとも1つのさらなる光開始剤(C)および/または他の慣例的な添加剤(D)をさらに含んでもよい。
【0093】
不飽和化合物(A)は、たとえば1つ以上のオレフィン性二重結合を含む。それらは、低分子量(モノマー)または高分子量(オリゴマー)を有するものである。
【0094】
二重結合を含むモノマーの例は、(メタ)アクリル酸およびその塩、(メタ)アクリル酸エステル、たとえばアルキルエステル、たとえばメチル、エチル、2−クロロエチル、N−ジメチルアミノエチル、n−ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、2−エチルヘキシル、オクチル、イソボルニル[2−エキソボルニル]エステル、フェニル、ベンジルならびにo−、m−およびp−ヒドロキシフェニルエステル、ヒドロキシアルキルエステル、たとえば2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル、4−ヒドロキシブチル、3,4−ジヒドロキシブチルまたはグリセロール[1,2,3−プロパントリオール]エステル、エポキシアルキルエステル、たとえばグリシジル、2,3−エポキシブチル、3,4−エポキシブチル、2,3−エポキシシクロヘキシル、10,11−エポキシウンデシルエステル、(メタ)アクリルアミド、N置換(メタ)アクリルアミド、たとえばN−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−ヘキシルアクリルアミド、N−ヘキシルメタクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−シクロヘキシルメタクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−フェニルメタクリルアミド、N−ベンジルアクリルアミド、N−ベンジルメタクリルアミド、N−ニトロフェニルアクリルアミド、N−ニトロフェニルメタクリルアミド、N−エチル−N−フェニルアクリルアミド、N−エチル−N−フェニルメタクリルアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)アクリルアミドおよびN−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、IBMAA(N−イソブトキシメチルアクリルアミド)、(メタ)アクリロニトリル、不飽和酸無水物、たとえばイタコン酸無水物、マレイン酸無水物、2,3−ジメチルマレイン酸無水物、2−クロロマレイン酸無水物、不飽和エステル、たとえばマレイン酸エステル、フタル酸エステル、イタコン酸エステル[メチレンコハク酸エステル]、スチレン、たとえばメチルスチレン、クロロメチルスチレンならびにo−、m−およびp−ヒドロキシスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルエーテル、たとえばイソブチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテルおよびフェニルビニルエーテル、ビニルおよびアリルエステル、たとえば酢酸ビニル、アクリル酸ビニル、クロロ酢酸ビニル、酪酸ビニルおよび安息香酸ビニル、コハク酸ジビニル、フタル酸ジアリル、リン酸トリアリル、塩化ビニルおよび塩化ビニリデン、イソシアヌレート、たとえばトリアリルイソシアヌレートおよびトリス(2−アクリロイルエチル)イソシアヌレート、N−ビニル−複素環式化合物、たとえばN−ビニルピロリドンまたは置換N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタムまたは置換N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルピリジンである。
【0095】
好適なエステルのさらなる例は:
ジアクリレートエステル、たとえば1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ヘキサメチレングリコールジアクリレートおよびビスフェノールAジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、テトラメチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリペンタエリスリトールオクタアクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールテトラメタクリレート、トリペンタエリスリトールオクタメタクリレート、ペンタエリスリトールジイタコネート、ジペンタエリスリトールトリスイタコネート、ジペンタエリスリトールペンタイタコネート、ジペンタエリスリトールヘキサイタコネート、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジイタコネート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトール修飾トリアクリレート、ソルビトールテトラメタクリレート、ソルビトールペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、オリゴエステルアクリレートおよびメタクリレート、グリセロールジアクリレートおよびトリアクリレート、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、200〜1500の分子量を有するポリエチレングリコールのビスアクリレートおよびビスメタクリレート、またはそれらの混合物である。アルコキシル化アルコールのアクリル酸エステル、たとえばグリセロールエトキシレートトリアクリレート、グリセロールプロポキシレートトリアクリレート、トリメチロールプロパンエトキシレートトリアクリレート、トリメチロールプロパンプロポキシレートトリアクリレート、ペンタエリスリトールエトキシレートテトラアクリレート、ペンタエリスリトールプロポキシレートトリアクリレート、ペンタエリスリトールプロポキシレートテトラアクリレート、ネオペンチルグリコールエトキシレートジアクリレート、ネオペンチルグリコールプロポキシレートジアクリレートもしばしば用いられる。
【0096】
高分子量不飽和化合物(オリゴマー、プレポリマー)の例は、エチレン性不飽和一官能性または多官能性カルボン酸とポリオールまたはポリエポキシドとのエステル、ならびに、たとえば、不飽和ポリエステル、ポリアミドおよびポリウレタンなどの鎖または側基中にエチレン性不飽和基を有するポリマーおよびそのコポリマー、アルキド樹脂、ポリブタジエンおよびブタジエンコポリマー、ポリイソプレンおよびイソプレンコポリマー、側鎖中に(メタ)アクリル基を有するポリマーおよびコポリマー、ならびに1つ以上のそのようなポリマーの混合物である。
【0097】
好適な一官能性または多官能性不飽和カルボン酸の例は、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、不飽和脂肪酸、たとえばリノレン酸またはオレイン酸である。アクリル酸およびメタクリル酸が好ましい。
【0098】
しかしながら、不飽和カルボン酸との混合物の飽和ジカルボン酸またはポリカルボン酸も使用できる。好適な飽和ジカルボン酸またはポリカルボン酸の例としては、たとえば、テトラクロロフタル酸、テトラブロモフタル酸、フタル酸無水物、アジピン酸、テトラヒドロフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ヘプタンジカルボン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸などが挙げられる。
【0099】
ポリオールとして、芳香族ならびに特に脂肪族および脂環式ポリオールが好適である。芳香族ポリオールの例は、ヒドロキノン、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、2,2−ジ(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ならびにノボラックおよびレゾールである。ポリエポキシドの例は、前記ポリオール、特に芳香族ポリオールおよびエピクロロヒドリンに基づくものである。たとえば、ポリビニルアルコールおよびそのコポリマーまたはポリメタクリル酸ヒドロキシアルキルエステルまたはそのコポリマーなどのポリマー鎖または側基中にヒドロキシル基を含むポリマーおよびコポリマーもポリオールとして好適である。ヒドロキシル末端基を有するオリゴエステルは、さらなる好適なポリオールである。
【0100】
脂肪族および脂環式ポリオールの例は、好ましくは2〜12個の炭素原子を有するアルキレンジオール、たとえばエチレングリコール、1,2−または1,3−プロパンジオール、1,2−、1,3−または1,4−ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ドデカンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、好ましくは200〜1500の分子量を有するポリエチレングリコール、1,3−シクロペンタンジオール、1,2−、1,3−または1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−ジヒドロキシメチル−シクロヘキサン、グリセロール、トリス(β−ヒドロキシエチル)アミン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールおよびソルビトールである。
【0101】
ポリオールは、1つまたは異なる不飽和カルボン酸で部分的または完全にエステル化してもよく、部分エステル中の遊離ヒドロキシル基を修飾すること、たとえば他のカルボン酸によりエーテル化、またはエステル化することが可能である。
【0102】
ポリウレタンの例は、飽和ジイソシアネートおよび不飽和ジオールまたは不飽和ジイソシアネートおよび飽和ジオールから構成されるものである。
【0103】
メタクリル化エポキシエステル、メタクリル化ポリエステル、ビニル基を有するポリエステル、メタクリル化ポリウレタン、メタクリル化ポリエーテルおよびポリオールが優先される。
【0104】
好適な成分(A)はまた、たとえば、米国特許第3844916号、欧州特許出願公開第280222号、米国特許第5482649号もしくは米国特許第5734002号で記載されるように、第1または第2アミンとの反応によって修飾したアクリレートである。そのようなアミン修飾アクリレートはアミンアクリレートとも称する。アミンアクリレートは、UCB ChemicalsからEBECRYL 80、EBECRYL 81、EBECRYL 83、EBECRYL 7100という名称で、BASFからLaromer PO 83F、Laromer PO 84F、Laromer PO 94Fという名称で、CognisからPHOTOMER 4775F、PHOTOMER 4967Fという名称で、またはCray ValleyからCN501、CN503、CN550という名称で、そしてRahnからGENOMER 5275という名称で入手可能である。
【0105】
低抽出物および臭気用途のために特にデザインされた一部のアクリレートバインダーも配合物で使用できる。そのような樹脂は、たとえば商品名Ebecryl LEO樹脂で市販されている。
【0106】
さらに、カチオン性UV硬化性組成物をハイブリッドカチオン性/ラジカルUV硬化の成分(A)の一部として使用してもよい。そのような系は、典型的には、脂肪族および/または芳香族エポキシド、少なくとも1つのポリオールまたはポリビニルポリオールまたはオキセタン、さらにはカチオンを生成する少なくとも1つの光開始剤を含む。前記エポキシド、ポリオールおよびポリビニルポリオールは当該技術分野で公知であり、市販されている。慣例的に使用される光開始剤は、たとえば、米国特許第6306555号で記載されるヨードニウムおよびスルホニウム塩である。加えて、エチレン性不飽和化合物を前記カチオン性UV硬化性組成物に添加してもよい。溶媒または水を、本発明の過程で使用する組成物に添加することも可能である。好適な溶媒は、当業者に公知であって、特に表面コーティング技術で慣例的な溶媒である。例は、たとえば、ケトン、たとえばメチルエチルケトン、シクロヘキサノン;芳香族炭化水素、たとえばトルエン、キシレンまたはテトラメチルベンゼン;グリコールエーテル、たとえばジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル;エステル、たとえば酢酸エチル;脂肪族炭化水素、たとえばヘキサン、オクタン、デカン;または石油系溶媒、たとえば石油エーテルなどの様々な有機溶媒である。
【0107】
本発明は、成分(A)として、水中に溶解または乳化した少なくとも1つのエチレン性不飽和光重合性化合物を含む組成物にも関する。
【0108】
そのような放射線硬化性水性プレポリマーは、水性プレポリマーエマルジョンであり得る。例は、Laromer PE 22WNまたはLaromer PE 55WNのような製品である。
【0109】
そのような放射線硬化性水性プレポリマー分散液はさまざまな形態で商業的に入手可能である。それらは、水と水中に分散された少なくとも1つのプレポリマーとを含む分散液であると理解すべきである。それらの系中の水の濃度は、たとえば、5〜80質量%、特に30〜60質量%である。放射線硬化性プレポリマーまたはプレポリマー混合物は、たとえば95〜20質量%、特に70〜40質量%の濃度で存在する。それらの組成物中の水およびプレポリマーについて表示したパーセンテージの合計はそれぞれの場合で100であり、意図する用途に応じて様々な量で存在する補助剤および添加剤がそれに加えられる。
【0110】
水中に分散または多くの場合は溶解させた放射線硬化性塗膜形成性プレポリマーは、フリーラジカルによって開始することができ、それ自体が水性プレポリマー分散液について公知である一官能性または多官能性エチレン性不飽和プレポリマーである;たとえば、それらは100gのプレポリマーあたり0.01〜1.0molの重合性二重結合含有量および、たとえば少なくとも400、特に500〜10000の平均分子量を有するが、目的とする用途に応じて、さらに高分子量を有するプレポリマーも検討される。
【0111】
使用されるのは、たとえば、重合性C−C二重結合を含み、最大で10の酸価を有するポリエステル、重合性C−C二重結合を含むポリエーテル、1分子あたり少なくとも2つのエポキシド基を含むポリエポキシドと少なくとも1つのα,β−エチレン性不飽和カルボン酸とのヒドロキシル基含有反応生成物、ポリウレタン(メタ)アクリレートおよびさらにはたとえば、欧州特許出願公開第012339号で記載されるようなα,β−エチレン性不飽和アクリル基を含むアクリルコポリマーである。それらのプレポリマーの混合物を使用してもよい。たとえば、欧州特許出願公開第033896号で記載される重合性プレポリマーも好適であり、これは、少なくとも600の平均分子量、0.2〜15%のカルボキシル基含有量および100gのプレポリマーあたり0.01〜0.8モルの重合性C−C二重結合の含有量を有する重合性プレポリマーのチオエーテル付加物である。特定の(メタ)アクリル酸アルキルエステル重合生成物に基づく他の好適な水性分散液は欧州特許出願公開第041125号に記載され、ウレタンアクリレートから得られる好適な水分散性放射線硬化性プレポリマーは、たとえば、独国特許出願公開第2936039号で見いだされる。
【0112】
光重合性化合物(A)は、単独または任意の所望の混合物で使用する。成分(A)はバインダーも含んでもよく、光重合性化合物が液体または粘性物質である場合、特に有利である。バインダーの量は、たとえば、全固体物質を基準として、5〜95質量%、好ましくは10〜90質量%、特に40〜90質量%であり得る。バインダーは、使用分野ならびに、たとえば、水性および有機溶媒系中の現像性、基材への接着性、および酸素に対する感受性などの、それに必要な特性にしたがって選択される。
【0113】
好適なバインダーは、たとえば、約5000〜2000000、好ましくは10000〜1000000の分子量を有するポリマーである。例は、アクリレートおよびメタクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、たとえばメチルメタクリレート/エチルアクリレート/メタクリル酸のコポリマー、ポリ(メタクリル酸アルキルエステル)、ポリ(アクリル酸アルキルエステル);セルロースエステルおよびエーテル、たとえばセルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、メチル−セルロース、エチルセルロース;ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、環化ゴム、ポリエーテル、たとえばポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリテトラヒドロフラン;ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリウレタン、塩素化ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル/塩化ビニリデンのコポリマー、塩化ビニリデンとアクリロニトリル、メチルメタクリレートおよび酢酸ビニルとのコポリマー、ポリ酢酸ビニル、コポリ(エチレン/酢酸ビニル)、ポリマー、たとえばポリカプロラクタムおよびポリ(ヘキサメチレンアジパミド)、ポリエステル、たとえばポリ(エチレングリコールテレフタレート)およびポリ(ヘキサメチレングリコールスクシネート)である。
【0114】
不飽和化合物はまた、非光重合性塗膜形成性成分との混合物で使用してもよい。後者は、たとえば、物理的乾燥ポリマーまたは、たとえばニトロセルロースもしくはセルロースアセトブチレートなどの有機溶媒中のその溶液、化学的もしくは熱硬化性樹脂、たとえばポリイソシアネート、ポリエポキシドまたはメラミン樹脂であってもよい。メラミン樹脂は、メラミン(=1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミン)の縮合生成物だけでなく、メラミン誘導体の縮合生成物も包含すると理解すべきである。概して、バインダーは、熱可塑性または熱硬化性樹脂、主に熱硬化性樹脂に基づく塗膜形成性バインダーである。その例は、アルキド、アクリル、ポリエステル、フェノール、メラミン、エポキシおよびポリウレタン樹脂ならびにそれらの混合物である。熱硬化性樹脂の同時使用は、光重合し、かつ熱架橋した、いわゆるハイブリッド系での使用に重要である。
【0115】
成分(A)は、熱可塑性または熱硬化性樹脂、主に熱硬化性樹脂に基づく塗膜形成性バインダーも含み得る。その例は、アルキド、アクリル、ポリエステル、フェノール、メラミン、エポキシおよびポリウレタン樹脂ならびにそれらの混合物である。その例は、たとえば、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry, 5th Ed., Vol. A18, pp. 368−426, VCH, Weinheim 1991で記載されている。
【0116】
バインダーは、低温または高温で完全に硬化するバインダーであってよく、それに対して硬化触媒の添加が有利である場合がある。バインダーの完全硬化を加速する好適な触媒は、たとえば、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry, Vol. A18, p. 469, VCH Verlagsgesellschaft, Weinheim 1991で記載されている。
【0117】
国際公開第99/03930号;国際公開第2000/010974号および国際公開第2000/020517号は、マレイミド修飾バインダーを記載している。その種類のマレイミド修飾バインダーも同様に本発明の光硬化性組成物中に存在していてもよい。
【0118】
バインダーの例は:
1.低温もしくは高温架橋性アルキド、アクリレート、ポリエステル、エポキシまたはメラミン樹脂あるいはそのような樹脂の混合物に基づき、任意で硬化触媒を添加してもよい表面コーティング;
2.ヒドロキシル基を含有するアクリレート、ポリエステルまたはポリエーテル樹脂および脂肪族もしくは芳香族イソシアネート、イソシアヌレートまたはポリイソシアネートに基づく2成分ポリウレタン表面コーティング組成物;
3.チオール基を含有するアクリレート、ポリエステルまたはポリエーテル樹脂および脂肪族もしくは芳香族イソシアネート、イソシアヌレートまたはポリイソシアネートに基づく2成分ポリウレタン表面コーティング組成物;
4.焼き付け中に非ブロック化される、ブロック化イソシアネート、イソシアヌレートまたはポリイソシアネートに基づき、任意で、メラミン樹脂を添加することも可能である1成分ポリウレタン表面コーティング組成物;
5.脂肪族もしくは芳香族ウレタンまたはポリウレタンおよびヒドロキシル基を含有するアクリレート、ポリエステルまたはポリエーテル樹脂に基づく1成分ポリウレタン表面コーティング組成物;
6.ウレタン構造中に遊離アミン基を有する脂肪族もしくは芳香族ウレタンアクリレートまたはポリウレタンアクリレート、およびメラミン樹脂またはポリエーテル樹脂に基づき、任意で硬化触媒を添加してもよい1成分ポリウレタン表面コーティング組成物;
7.(ポリ)ケチミンおよび脂肪族もしくは芳香族イソシアネート、イソシアヌレートまたはポリイソシアネートに基づく2成分表面コーティング組成物;
8.(ポリ)ケチミンおよび不飽和アクリレート樹脂またはポリアセトアセテート樹脂またはメタクリルアミドグリコレートメチルエステルに基づく2成分表面コーティング組成物;
9.カルボキシル基またはアミノ基を含有するポリアクリレートおよびポリエポキシドに基づく2成分表面コーティング組成物;
10.無水物基を含有するアクリレート樹脂およびポリヒドロキシまたはポリアミノ成分に基づく2成分表面コーティング組成物;
11.アクリレートを含有する無水物およびポリエポキシドに基づく2成分表面コーティング組成物;
12.(ポリ)オキサゾリンおよび無水物基を含有するアクリレート樹脂または不飽和アクリレート樹脂あるいは脂肪族もしくは芳香族イソシアネート、イソシアヌレートまたはポリイソシアネートに基づく2成分表面コーティング組成物;
13.不飽和(ポリ)アクリレートおよび(ポリ)マロネートに基づく2成分表面コーティング組成物;
14.エーテル化メラミン樹脂と組み合わせた、熱可塑性アクリレート樹脂または付帯的架橋性アクリレート樹脂に基づく熱可塑性ポリアクリレート表面コーティング組成物;
15.マロネートブロック化イソシアネートと(酸触媒作用を受けた)クロスリンカーとしてのメラミン樹脂(たとえばヘキサメトキシメチルメラミン)に基づく表面コーティング系、特にクリアコート;
16.オリゴマーウレタンアクリレートおよび/またはアシレートアクリレートに基づき、任意で他のオリゴマーまたはモノマーを添加してもよいUV硬化性系;
17.まず加熱により硬化し、次いでUV硬化するか、またはその逆であり、表面コーティング組成物の構成物質が、UV光および光開始剤ならびに/または電子線硬化によって反応するようにすることができる二重結合を含む、二重硬化系
である。
【0119】
1成分(1C)および2成分(2C)系の両方をバインダーとして用いることができる。そのような系の例は、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry, Vol. A18, Paints and Coatings, page 404−407, VCH Verlagsgesellschaft mbH, Weinheim (1991)に記載されている。
【0120】
組成物は、たとえば、バインダー/クロスリンカー比を変えることにより配合物を特に修飾することによって最適化することができる。コーティングまたはインク技術の当業者はそのような手段をよく知っている。
【0121】
本発明の光重合性組成物は、たとえばバインダーポリマー(e)、特にメタクリレートのコポリマーおよびメタクリル酸のコポリマーをさらに含む。
【0122】
光開始剤に加えて、光重合性混合物はさまざまな添加剤(D)を含んでもよい。その例は早期重合を防止することを目的とする熱阻害剤、たとえば2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシ−ピペリジン−1−オキシル(4−ヒドロキシ−TEMPO)およびその誘導体、たとえばビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル−4−イル)−デカンジオエートまたはポリアルキル−ピペリジン−N−オキシル基、3−アリール−ベンゾフラン−2−オンおよびその誘導体、たとえば5,7−ジ−tert−ブチル−3−フェニル−3H−ベンゾフラン−2−オン(たとえば、国際公開第01/42313号で記載されるとおり)、ヒドロキノン、ヒドロキノン誘導体、p−メトキシフェノール、β−ナフトールまたは立体的に遮蔽されたフェノール、たとえば2,6−ジ(tert−ブチル)−p−クレゾールである。暗所貯蔵安定性を増大させるために、たとえば、銅ナフテン酸塩、ステアリン酸塩もしくはオクトアートなどの銅化合物、たとえば、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリエチルホスファイト、トリフェニルホスファイトもしくはトリベンジルホスファイトなどのリン化合物、第4アンモニウム化合物、たとえばテトラメチルアンモニウムクロリドもしくはトリメチルベンジルアンモニウムクロリド、またはヒドロキシルアミン誘導体、たとえばN−ジエチルヒドロキシルアミンを使用することが可能である。重合の間に大気酸素を排除する目的で、ポリマー中に不溶性であり、重合のはじめに表面に移動し、そして空気が入るのを防止する透明な表面層を形成するパラフィンまたは類似のワックス様物質を添加することが可能である。酸素を通さない層を適用することも同様に可能である。
【0123】
光安定化剤として、UV吸収剤、たとえばヒドロキシ−フェニルベンゾトリアゾール、ヒドロキシフェニルベンゾフェノン、シュウ酸アミドまたはヒドロキシ−フェニル−s−トリアジンタイプのものを添加することが可能である。そのような化合物は、それ自体または混合物の形態で、立体的に遮蔽されたアミン(HALS)の使用の有無を問わず使用することができる。そのような化合物は当業者に広く知られている。
【0124】
そのようなUV吸収剤および光安定化剤の例は、国際公開第04/074328号、第12ページ、第9行から第14ページ、第23行で開示され、前記開示は参照により本明細書で援用される。さらに、当該技術分野で慣例的な添加剤、たとえば、帯電防止剤、流動改善剤および接着促進剤を使用してもよい。
【0125】
本発明によると、配合物がバインダーを含む場合、熱乾燥または硬化触媒を配合物に追加の添加剤(D)としてさらに添加してもよい。可能な乾燥触媒、または熱硬化触媒は、たとえば、有機金属化合物、アミンまたは/およびホスフィンである。有機金属化合物は、たとえば、金属カルボン酸塩、特に金属Pb、Mn、Hf、Co、Zn、ZrもしくはCuのカルボン酸塩、または金属キレート、特に金属Hf、Al、TiもしくはZrのキレート、または有機金属化合物、たとえば有機スズ化合物である。金属カルボン酸塩の例は、Pb、MnもしくはZnのステアリン酸塩、Co、ZnもしくはCuのオクトアート、MnおよびCoのナフテン酸塩または対応するリノール酸塩もしくはトール酸塩(トール油、これは樹脂酸、オレイン酸およびリノール酸を含む)である。金属キレートの例は、アセチルアセトン、エチルアセチルアセテート、サリチルアルデヒド、サリチルアルドキシム、o−ヒドロキシアセトフェノンまたはエチル−トリフルオロアセチルアセテートのアルミニウム、チタンもしくはジルコニウムキレートおよびそれらの金属のアルコキシドである。有機スズ化合物の例は、ジブチルスズオキシド、ジブチルスズジラウレートおよびジブチルスズジオクトアートである。アミンの例は、特に第3アミン、たとえば、トリブチルアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−ジメチルエタノールアミン、N−エチルモルホリン、N−メチルモルホリンおよびジアザビシクロオクタン(トリエチレンジアミン)ならびにその塩である。さらなる例は、第4アンモニウム塩、たとえばトリメチルベンジルアンモニウムクロリドである。たとえば、トリフェニルホスフィンなどのホスフィンを硬化触媒として使用することも可能である。好適な触媒はまた、たとえば、J. Bielemann, Lackadditive, Wiley−VCH Verlag GmbH, Weinheim, 1998, pages 244−247で記載されている。例は、たとえば、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸およびジノニルナフタレンジスルホン酸などのカルボン酸である。たとえば、ラテントまたはブロック化スルホン酸も使用することができ、酸のブロッキングはイオン性または非イオン性であり得る。
【0126】
そのような触媒を、当該技術分野で慣例的であって当業者に公知の濃度で使用する。
【0127】
光重合を加速するために、アミン、特に第3アミン、たとえばトリブチルアミン、トリエタノールアミン、p−ジメチルアミノ−安息香酸エチルエステル、ミヒラーケトン、N−メチル−ジエタノールアミン、N−ジメチル−エタノールアミン、N−エチルモルホリン、N−メチルモルホリン、ジアザビシクロオクタン(トリエチレンジアミン)、18−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク−7−エン(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノン−5−エン(DBN)およびその塩をさらなる添加剤(D)として添加してもよい。さらなる例は、第4アンモニウム塩、たとえばトリメチルベンジルアンモニウムクロリドである。アミンの作用は、ベンゾフェノンタイプの芳香族ケトンを添加することによって強化することができる。酸素捕捉剤として好適であるアミンは、たとえば、欧州特許出願公開第339841号で記載されているようなΝ,Ν−ジアルキルアニリンである。さらなる促進剤、共開始剤および自動酸化剤は、たとえば、欧州特許出願公開第438123号およびGB2180358で記載されているようなチオール、チオエーテル、ジスルフィドおよびホスフィンである。
【0128】
当該技術分野で慣例的な連鎖移動剤を本発明の組成物に添加することも可能である。例は、メルカプタン、アミンおよびベンゾチアゾールである。
【0129】
光重合は、さらなる添加剤(D)として、スペクトル感度をシフトさせるかまたは広げる光増感剤を添加することによっても促進できる。これらとしては、特に、芳香族カルボニル化合物、たとえば、ベンゾフェノン誘導体、特にイソプロピルチオキサントンを含むチオキサントン誘導体、アントラキノン誘導体および3−アシルクマリン誘導体、テルフェニル、スチリルケトン、および3−(アロイルメチレン)−チアゾリン、カンファーキノン、ならびにエオシン、ローダミンおよびエリスロシン染料が挙げられる。
【0130】
前記アミンは、たとえば、光増感剤とみなすこともできる。好適な増感剤化合物(D)の例は、国際公開第06/008251号、第36ページ、第30行から第38ページ、第8行で開示され、その開示は参照により本明細書で援用される。
【0131】
着色(たとえば二酸化チタンで着色)した組成物の硬化過程は、加熱条件下でフリーラジカル形成性成分である追加の添加剤(D)、たとえばアゾ化合物、たとえば2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、トリアゼン、ジアゾスルフィド、ペンタザジエンまたはペルオキシ化合物、たとえばヒドロペルオキシドまたはペルオキシカーボネート、たとえば、欧州特許出願公開第245639号で記載されているようなtert−ブチルヒドロペルオキシドを添加することによっても支援することができる。
【0132】
さらなる慣例的添加剤(D)は、目的とする用途に応じて、蛍光増白剤、フィラー、たとえばカオリン、タルク、バライト、石膏、白亜もしくはケイ酸塩タイプのフィラー、湿潤剤または流動改善剤である。
【0133】
厚い着色コーティングを硬化させるために、たとえば、米国特許第5013768号で記載されているようなガラス微小球または粉末状ガラス繊維の添加が好適である。
【0134】
配合物は、染料および/または白色もしくは有色顔料も[さらなる添加剤(D)として]含んでもよい。目的とする用途に応じて、無機および有機顔料の両方を使用できる。そのような添加剤は当業者には公知であり、数例は、たとえばルチルまたはアナターゼタイプの二酸化チタン顔料、カーボンブラック、酸化亜鉛、たとえば亜鉛白、酸化鉄、たとえば酸化鉄黄、酸化鉄赤、クロムイエロー、クロムグリーン、ニッケルチタンイエロー、群青、コバルトブルー、バナジン酸ビスマス、カドミウムイエローまたはカドミウムレッドである。有機顔料の例は、モノアゾ顔料またはビスアゾ顔料、ならびにその金属錯体、フタロシアニン顔料、多環式顔料、たとえばペリレン、アントラキノン、チオインディゴ、キナクリドンまたはトリフェニルメタン顔料、ならびにジケト−ピロロ−ピロール、イソインドリノン、たとえばテトラクロロイソインドリノン、イソインドリン、ジオキサジン、ベンズイミダゾロンおよびキノフタロン顔料である。
【0135】
顔料は、配合物中、単独で、または混合物で使用することができる。
【0136】
顔料を目的とする用途にしたがって当該技術分野で慣例的な量で、たとえば全質量を基準として1〜60質量%、または10〜30質量%の量で配合物に添加する。
【0137】
配合物は、たとえば、様々な種類の有機染料も含み得る。例は、アゾ染料、メチン染料、アントラキノン染料または金属錯体染料である。慣例的な濃度は、たとえば全質量を基準として、0.1〜20%、特に1〜5%である。
【0138】
添加剤の選択は、光重合性組成物の特定の使用分野およびその分野での所望の特性に基づく。
【0139】
本発明の対象はまた、顔料または染料または顔料もしくは染料の混合物をさらなる添加剤(D)として含む上述のような光重合性組成物である。本明細書中で前述の添加剤(D)は、当該技術分野で慣例的であり、したがって、当該技術分野で慣例的な量で使用する。
【0140】
もちろん、本発明の化合物と1種以上の公知光開始剤(C)との混合物、たとえばカンファーキノン;ベンゾ−フェノン、ベンゾフェノン誘導体、たとえば2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、2−メチルベンゾフェノン、3−メチルベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2−メトキシカルボニルベンゾフェノン4,4’−ビス(クロロメチル)ベンゾフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、3,3’−ジメチル−4−メトキシ−ベンゾフェノン、[4−(4−メチルフェニル−チオ)フェニル]−フェニルメタノン、メチル−2−ベンゾイルベンゾエート、3−メチル−4’−フェニルベンゾ−フェノン、2,4,6−トリメチル−4’−フェニルベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン;ケタール化合物、たとえばベンジルジメチルケタール;アセトフェノン、アセトフェノン誘導体、たとえばα−ヒドロキシシクロアルキルフェニルケトンまたはα−ヒドロキシアルキルフェニルケトン、たとえば2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパノン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン、1−(4−ドデシルベンゾイル)−1−ヒドロキシ−1−メチル−エタン、1−(4−イソプロピルベンゾイル)−1−ヒドロキシ−1−メチル−エタン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン;2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン;2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−フェノキシ]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン;オリゴマーα−ヒドロキシケトン;ジアルコキシアセトフェノン、α−ヒドロキシ−もしくはα−アミノ−アセトフェノン、たとえば(4−メチルチオベンゾイル)−1−メチル−1−モルホリノエタン、(4−モルホリノベンゾイル)−1−ベンジル−1−ジメチルアミノプロパン、(4−モルホリノベンゾイル)−1−(4−メチル−ベンジル)−1−ジメチルアミノプロパン、(4−(2−ヒドロキシエチル)アミノベンゾイル)−1−ベンジル−1−ジメチルアミノプロパン)、(3,4−ジメトキシベンゾイル)−1−ベンジル−1−ジメチルアミノプロパン;4−アロイル−1,3−ジオキソラン、ベンゾインアルキルエーテルおよびベンジルケタール、たとえばジメチルベンジルケタール、フェニルグリオキサル酸エステルおよびその誘導体、たとえばα−オキソベンゼン酢酸メチル、オキソ−フェニル−酢酸2−(2−ヒドロキシ−エトキシ)−エチルエステル、二量体フェニルグリオキサル酸エステル、たとえばオキソ−フェニル−酢酸1−メチル−2−[2−(2−オキソ−2−フェニル−アセトキシ)−プロポキシ]−エチルエステル;オキシムエステル、たとえば1,2−オクタンジオン1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−2−(O−ベンゾイルオキシム)、エタノン1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)、9H−チオキサンテン−2−カルボキシアルデヒド9−オキソ−2−(O−アセチルオキシム)、または、たとえばオキシムエステルとα−アミノケトンとの組み合わせ、たとえば(4−モルホリノベンゾイル)−1−ベンジル−1−ジメチルアミノプロパンと[4−(2−メチルフェニルカルボキシ)フェニル]−ビス[4−(O−アセチルオキシミン)フェニル]アミンとの組み合わせ;パーエステル、たとえば欧州特許出願公開第126541号で記載されているようなベンゾフェノンテトラカルボン酸パーエステル、モノアシルホスフィンオキシド、たとえば(2,4,6−トリメチル−ベンゾイル)ジフェニルホスフィンオキシド、エチル(2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニル)ホスフィン酸エステル;ビスアシルホスフィンオキシド、たとえばビス(2,6−ジメトキシ−ベンゾイル)−(2,4,4−トリメチル−ペンチル)ホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−2,4−ジペントキシフェニルホスフィンオキシド、トリスアシルホスフィンオキシド、ハロメチルトリアジン、たとえば2−[2−(4−メトキシ−フェニル)−ビニル]−4,6−ビス−トリクロロメチル−[1,3,5]トリアジン、2−(4−メトキシ−フェニル)−4,6−ビス−トリクロロメチル−[1,3,5]トリアジン、2−(3,4−ジメトキシ−フェニル)−4,6−ビス−トリクロロメチル−[1,3,5]トリアジン、2−メチル−4,6−ビス−トリクロロメチル−[1,3,5]トリアジン、ヘキサアリールビスイミダゾール/共開始剤系、たとえば2−メルカプトベンズチアゾールと組み合わせたオルト−クロロヘキサフェニル−ビス−イミダゾール、フェロセニウム化合物、またはチタノセン、たとえばビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−ピリル−フェニル)チタンとの混合物を使用することが可能である。さらに、ホウ酸塩化合物を共開始剤として使用することができる。
【0141】
多くの前記さらなる光開始剤(C)が、たとえば、BASF SEから商品名Darocur(登録商標)およびIrgacure(登録商標)またはLambertiからEsacure(登録商標)で市販されている。
【0142】
本発明の化合物は、たとえば、補助的応用特性を提供し、それによって開始系の全体的な性能を改善する他の光開始剤(C)と組み合わせて使用する。多くの用途について、1種の光開始剤(C)の添加で良好な結果が得られる。他の使用について、2種またはさらにそれ以上のさらなる光開始剤(C)の添加は、最適の結果を達成するために推奨され得る。
【0143】
本発明の化合物と他の光開始剤(C)との混合物を使用する場合、化合物を個々に配合物に添加することができる。あるいは、本発明の化合物と1種以上の他の光開始剤(C)とを化合物を配合物に添加する前に混合することが可能である。本発明の化合物と混合する2種以上の光開始剤(C)を今度は対応するブレンドとして使用してもよい。複数のそのようなブレンドは市販されている(たとえばIrgacure(登録商標)500またはIrgacure(登録商標)2022)。配合物へ添加する前の本発明の化合物と他の光開始剤(C)とのブレンドは、個々の化合物を使用するのに比べて取扱特性および組み入れやすさを改善するために有利であり得る。本発明の化合物は液体であるので、特に1種以上の光開始剤(C)も液体である場合に可能なブレンドの範囲が大きい。
【0144】
したがって、本発明の対象は、少なくとも1種のさらなる光開始剤(C)をさらに含む前述の液状光開始剤混合物である。
【0145】
特に好ましいのは、1種以上の他の光開始剤(C)も液体であるブレンドである。
【0146】
ブレンドが前述の液状光開始剤と1種の他の液体または固体光開始剤(C)からなる場合、2つの成分を99.9〜0.1%の液状光開始剤および0.1〜99.9%の光開始剤(C)の比で混合することができる。
【0147】
ブレンドが前述の液状光開始剤と2種以上の他の液体または固体光開始剤(C)とからなる場合、3つ以上の成分を任意の比で使用できる。好ましいのは、周囲温度で液状ブレンドを提供する比である。
【0148】
本発明の対象はまた、上述の光重合性組成物であり、ここで、さらなる光開始剤(C)は、アルファ−ヒドロキシケトン、ベンゾフェノン、置換ベンゾフェノン化合物、ベンジルジメチルケタール、フェニルグリオキシレート化合物およびアルファ−アミン系ケトン化合物からなる群から選択される。
【0149】
たとえば、さらなる光開始剤(C)は、ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、2−メチルベンゾフェノン、3−メチルベンゾ−フェノン、4−メチルベンゾフェノン、2−メトキシカルボニルベンゾフェノン4,4’−ビス(クロロ−メチル)ベンゾフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、3,3’−ジメチル−4−メトキシ−ベンゾフェノン、[4−(4−メチルフェニルチオ)フェニル]−フェニルメタノン、メチル−2−ベンゾイルベンゾエート、3−メチル−4’−フェニルベンゾフェノン、2,4,6−トリメチル−4’−フェニルベンゾ−フェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパノン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、1−(4−ドデシルベンゾイル)−1−ヒドロキシ−1−メチル−エタン、1−(4−イソプロピルベンゾイル)−1−ヒドロキシ−1−メチル−エタン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン;2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン;2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−フェノキシ]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、(4−メチルチオベンゾイル)−1−メチル−1−モルホリノエタン、(4−モルホリノベンゾイル)−1−ベンジル−1−ジメチルアミノプロパン、(4−モルホリノ−ベンゾイル)−1−(4−メチルベンジル)−1−ジメチルアミノプロパン、(4−(2−ヒドロキシエチル)アミノベンゾイル)−1−ベンジル−1−ジメチルアミノプロパン)、(3,4−ジメトキシベンゾイル)−1−ベンジル−1−ジメチルアミノプロパン、メチルα−オキソベンゼンアセテート、オキソ−フェニル−酢酸2−(2−ヒドロキシ−エトキシ)−エチルエステルおよびオキソ−フェニル−酢酸1−メチル−2−[2−(2−オキソ−2−フェニル−アセトキシ)−プロポキシ]−エチルエステル、Esacure(登録商標)KIP150、Esacure(登録商標)160からなる群から選択される。
【0150】
さらなる光開始剤(C)の興味深い例は、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパノン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、Esacure KIP(登録商標)150、α−オキソベンゼン酢酸メチル、オキソ−フェニル−酢酸2−(2−ヒドロキシ−エトキシ)−エチルエステルおよびオキソ−フェニル−酢酸1−メチル−2−[2−(2−オキソ−2−フェニル−アセトキシ)−プロポキシ]−エチルエステルからなる群から選択される。
【0151】
特に好ましいさらなる光開始剤(C)は、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(3−[ヒドロキシル−メチル]−フェニル)−1−プロパノン、1,1’−[オキシビス(メチレン−3,1−フェニレン)]ビス[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパノン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、ポリ{2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン}(Esacure(登録商標)KIP 150)、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロパノイル)フェノキシ]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン(Esacure(登録商標)160)、1−[4−(4−ベンゾイルフェニルスルファニル)フェニル]−2−メチル−2−[(4−メチルフェニル)スルホニル]プロパン−1−オン(Esacure(登録商標)1001)、フェニルグリオキサル酸メチル(Darocur(登録商標)MBF)、オキシフェニル酢酸2−[2−オキソ−2−フェニルアセトキシ)−エトキシ]−エチルエステル(Irgacure(登録商標)754)、2,4,6−トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキシド(Lucirin(登録商標)TPO−L)、ビス(2,4,6−トリメチル−ベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド、Irgacure(登録商標)819、ジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(Lucirin(登録商標)TPO)、4−(4−メチルフェニルチオ)ベンゾフェノン、カルボキシメトキシ−ベンゾフェノンとポリ(テトラメチレングリコール250)とのジエステル、イソプロピルチオキサントン、1−クロロ4−プロポキシ−チオキサントン、2,4−ジエチル−9H−チオキサンテン−9−オン、2−カルボキシメトキシ−チオキサントンとポリ(テトラメチレングリコール250)とのジエステル、2−メチル−1−(4−メチルスルファニルフェニル)−2−モルホリノ−プロパン−1−オン(Irgacure(登録商標)907)、2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−(4−モルホリノフェニル)−1−ブタノン(Irgacure(登録商標)369)、2−(4−メチルベンジル)−2−(ジメチルアミノ)−1−(4−モルホリノフェニル)ブタン−1−オン(Irgacure(登録商標)379)、およびポリエチレングリコール−ジ(β−4[4−(2−ジメチルアミノ−2−ベンジル)ブタノイルフェニル]ピペラジン)プロピオネートからなる群から選択される。
【0152】
上述の光重合性組成物は、たとえば、組成物を基準として、0.05〜15質量%、好ましくは0.1〜5質量%の光開始剤(B)または光開始剤(B)+(C)を含む。
【0153】
本発明の組成物は、様々な目的のために、たとえば、重ね刷りコーティングで、印刷インク、たとえばスクリーン印刷インク、オフセット印刷またはフレキソ印刷用インク、インクジェットインク、枚葉印刷用インク、電子写真術インク、インタグリオインクとして、クリアコート、白色コートまたは着色コートとして(たとえば木材もしくは金属用)、粉末コーティングとして、塗料として(とりわけ紙、木材、金属もしくはプラスチック用)、構造物および道路を作製するための日光硬化性塗料、建築物、建造物、車両、飛行機などのための塗料、写真複製法用、ホログラフィック記録材料用、画像記録法用、または有機溶媒を使用するかもしくは水性アルカリ性媒体を使用して現像できる印刷版の製造において、スクリーン印刷用マスクの製造のため、歯科充填化合物として、接着剤として、感圧接着剤として、積層用樹脂として、エッチレジストまたはパーマネントレジストとして(液体および乾燥塗膜の両方)、光構造化可能な誘電体として、そして電子回路用ソルダーマスクとして、任意の種類のディスプレースクリーン用のカラーフィルターの製造またはプラズマディスプレーおよび電子発光ディスプレーの製造中の構造の作製のためのカラーフィルターの製造におけるレジストとして、光スイッチ、光回折格子(干渉格子)の製造において、塊で(透明な型中でのUV硬化)またはたとえば、米国特許第4575330号に記載されるようなステレオリソグラフィー法にしたがった硬化による3次元物品の製造において、ゲルコートおよび厚い層の組成物の複合材料(たとえば、ガラス繊維および/または他の繊維および他の補助剤を含んでもよいスチレンポリエステル)の製造において、電子成分のコーティングもしくはシーリングにおいて、または光ファイバー用コーティングとして、使用できる。組成物は、光学レンズ、たとえばコンタクトレンズまたはフレネルレンズの製造のためにも、そして医療機器、補助器具もしくはインプラントの製造においても好適である。組成物は、サーモトロピック特性を有するゲルの製造のためにも使用できる。そのようなゲルは、たとえば、独国特許出願公開第19700064号および欧州特許出願公開第678534号で記載されている。
【0154】
インクの乾燥時間はグラフィック製品の生産速度の重要な因子であるので、光硬化はさらに、印刷用途のために非常に有用であり、数秒分の1程度でなければならない。UV硬化性インクは、スクリーン印刷、オフセットインク、インクジェットインク、フレキソグラフィー印刷インク、インタグリオインク、電子写真インク、枚葉給紙インク、重ね刷りワニスまたはプライマーに特に重要である。
【0155】
すでに上述したように、液状光開始剤混合物は、印刷版、たとえばフレキソ印刷版またはオフセット印刷版を製造するためにも好適である。この適用は、たとえば、可溶性線状ポリアミドまたはスチレン/ブタジエンおよび/またはスチレン/イソプレンゴム、カルボキシル基を含むポリアクリレートまたはポリメチルメタクリレート、ポリビニルアルコールまたはウレタンアクリレートと光重合性モノマー、たとえばアクリルアミドおよび/またはメタクリルアミド、またはアクリレートおよび/またはメタクリレート、ならびに光開始剤との混合物を使用する。これらの系のフィルムおよびプレート(湿潤または乾燥)を印刷された原本のネガ(またはポジ)上に暴露し、そして未硬化部分を続いて適切な溶媒または水溶液を使用して洗浄する。
【0156】
印刷インクは当業者に公知であり、当該技術分野で広く用いられ、文献で記載されている。
【0157】
それらは、たとえば、顔料で着色した印刷インクおよび染料で着色された印刷インクである。印刷インクは、たとえば、着色剤(顔料または染料)、バインダー、さらには任意で溶媒および/または任意で水ならびに添加剤を含む液体またはペースト形態の分散液である。液体印刷インクでは、バインダーおよび、妥当な場合、添加剤を概して溶媒中に溶解させる。Brookfield粘度計における慣例的粘度は、液体印刷インクについては、たとえば20〜5000mPa・s、たとえば20〜1000mPa・sである。ペースト形態の印刷インクについては、値の範囲はたとえば1〜100Pa・s、好ましくは5〜50Pa・s。当業者は印刷インクの構成要素および組成をよく知っているであろう。
【0158】
当該技術分野で慣例的な印刷インク配合物のような好適な顔料は、概ね公知であり、広く記載されている。
【0159】
印刷インクは、顔料を、有利には印刷インクの総質量基準で、たとえば、0.01〜40質量%、好ましくは1〜25質量%、特に5〜15質量%の濃度で含む。
【0160】
印刷インクを、たとえば、出版業、包装または輸送で、物流で、広告で、偽造防止印刷で、またはオフィス設備の分野で、一般的に公知の配合物を使用して本発明の方法にしたがって前処理された物質上のインタグリオ印刷、グラビア印刷、フレキソグラフィー印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、リソグラフィーまたは連続もしくは液滴インクジェット印刷のために使用できる。
【0161】
好適な印刷インクは、溶媒系印刷インクおよび水系印刷インクの両方である。
【0162】
興味深いのは、たとえば、水性アクリレートに基づく印刷インクである。そのようなインクは、基
【化24】
を含む少なくとも1種のモノマーの重合により得られ、そして水または水を含む有機溶媒中に溶解するポリマーまたはコポリマーを含むと理解すべきである。好適な有機溶媒は、当業者によって慣例的に使用される水混和性溶媒、たとえばアルコール、たとえばメタノール、エタノールならびにプロパノール、ブタノールおよびペンタノールの異性体、エチレングリコールおよびそのエーテル、たとえばエチレングリコールメチルエーテルおよびエチレングリコールエチルエーテル、およびケトン、たとえばアセトン、エチルメチルケトンまたはシクロ、たとえばイソプロパノールである。水およびアルコールが好ましい。
【0163】
好適な印刷インクは、たとえばバインダーとして、主にアクリレートポリマーまたはコポリマーを含み、溶媒は、たとえば、水、C1〜C5アルコール、エチレングリコール、2−(C1〜C5アルコキシ)−エタノール、アセトン、エチルメチルケトンおよびそれらの任意の混合物からなる群から選択される。
【0164】
バインダーに加えて、印刷インクは、当業者に知られている慣例的な添加物も慣例的な濃度で含んでもよい。
【0165】
インタグリオまたはフレキソグラフィー印刷について、印刷インクは、通常、印刷インク濃縮物を希釈することによって製造し、次いでそれ自体公知の方法にしたがって使用できる。
【0166】
印刷インクは、たとえば、酸化的に乾燥するアルキド系も含んでもよい。印刷インクを当該技術分野で慣例的な公知方法で、任意でコーティングを加熱して乾燥する。
【0167】
好適な水性印刷インク組成物は、たとえば、顔料または顔料と分散剤とバインダーとの組み合わせを含む。
【0168】
したがって、本発明の対象はさらに、分散剤または分散剤の混合物を含むさらなる添加剤(D)として前記のような光重合性組成物である。
【0169】
検討される分散剤としては、たとえば、慣例的な分散剤、たとえば1種以上のアリールスルホン酸/ホルムアルデヒド縮合生成物または1種以上の水溶性オキシアルキル化フェノール、非イオン性分散剤またはポリマー酸に基づく水溶性分散剤である。そのような分散剤は公知であり、たとえば、米国特許第5186846号および独国特許出願公開第19727767号で記載されている。好適なオキシアルキル化フェノールも同様に公知であり、たとえば、米国特許第4218218号および独国特許出願公開第19727767号で記載されている。好適な非イオン性分散剤は、たとえば、アルキレンオキシド付加物、ビニルピロリドン、酢酸ビニルまたはビニルアルコールの重合生成物およびビニルピロリドンの酢酸ビニルおよび/またはビニルアルコールとのコポリマーまたはターポリマーである。
【0170】
たとえば、分散剤として、そしてバインダーとしての両方で作用するポリマー酸を使用することも可能である。
【0171】
言及することができる好適なバインダー成分の例としては、(メタ)アクリレート基含有、ビニル基含有および/または、意図される用途に応じて、エポキシ基含有モノマー、プレポリマーおよびポリマーならびにそれらの混合物が挙げられる。さらなる例は、メラミンアクリレートおよびシリコーンアクリレートである。アクリレート化合物はまた、非イオン的に修飾(たとえば、アミノ基を提供)またはイオン的に修飾(たとえば、酸基またはアンモニウム基を提供)してもよく、そして水性分散液またはエマルジョン(たとえば、欧州特許出願公開第704469号、欧州特許出願公開第012339号)の形態で使用してもよい。さらに、所望の粘度を得るために、無溶媒アクリレートポリマーをいわゆる反応性希釈剤、たとえばビニル基含有モノマーと混合することができる。さらなる好適なバインダー成分はエポキシ基含有化合物である。
【0172】
印刷インク組成物はまた、追加成分として、たとえば組成物をインクジェット印刷に特に好適にする、水保持作用を有する薬剤(保湿剤)、たとえば多価アルコール、ポリアルキレングリコールも含んでもよい。
【0173】
印刷インクは、さらなる補助剤、たとえば、特に(水性)インクジェットインクについて、そして印刷及びコーティング産業で慣例的なさらなる補助剤、たとえば保存料(たとえばグルタルジアルデヒド及び/又はテトラメチロールアセチレン尿素、酸化防止剤、脱気剤/消泡剤、粘度調節剤、流動改善剤、沈殿防止剤、光沢改善剤、潤滑剤、接着促進剤、皮張り防止剤、つや消し剤、乳化剤、安定剤、疎水性物質、光安定剤、取扱改善剤および帯電防止剤を含み得ると理解される。そのような薬剤が組成物中に存在する場合、それらの総量は、概して製造物の質量を基準として、1質量%以下である。
【0174】
印刷インクとしては、たとえば、染料を含むもの挙げられる(たとえばインクの総質量を基準として、1〜35質量%の染料の総含有量を有する)。そのような印刷インクを着色するために好適な染料は当業者には公知であり、たとえばBASF SEから広く商業的に入手可能である。
【0175】
そのような印刷インクは、有機溶媒、たとえば水混和性有機溶媒、たとえばC1〜C4アルコール、アミド、ケトンまたはケトンアルコール、エーテル、窒素含有複素環式化合物、ポリアルキレングリコール、C2〜C6アルキレングリコールおよびチオグリコール、さらなるポリオール、たとえばグリセロールおよび多価アルコールのC1〜C4アルキルエーテルを、通常、印刷インクの総質量を基準として、2〜30質量%の量で含んでもよい。
【0176】
印刷インクはまた、たとえば可溶化剤、たとえばε−カプロラクタムも含んでもよい。
【0177】
印刷インクは、とりわけ粘度を調節する目的で、天然または合成起源の増粘剤を含んでもよい。増粘剤の例としては、市販のアルギネート増粘剤、デンプンエーテルまたはローカストビーン粉末エーテルが挙げられる。印刷インクは、そのような増粘剤を、たとえば印刷インクの総質量基準で、0.01〜2質量%の量で含む。
【0178】
たとえば4〜9、特に5〜8.5のpH値を確立するために、印刷インクが緩衝物質、たとえばホウ砂、ホウ酸塩、リン酸塩、ポリリン酸塩またはクエン酸塩を、たとえば0.1〜3質量%の量で含むことも可能である。さらなる添加剤として、そのような印刷インクは界面活性剤または保湿剤を含んでもよい。検討される界面活性剤としては、市販のアニオン性および非イオン性界面活性剤が挙げられる。検討される保湿剤は、たとえば、印刷インク中に尿素または乳酸ナトリウムの混合物(有利には50〜60%水溶液の形態の)およびグリセロールおよび/またはプロピレングリコールを、たとえば0.1〜30質量%、特に2〜30質量%の量で含む。
【0179】
さらに、印刷インクはさらに、慣例的な添加剤、たとえば発泡抑制剤または特に真菌および/または細菌の増殖を抑制する物質も含んでもよい。そのような添加剤を、通常、印刷インクの総質量を基準として、0.01〜1質量%の量で使用する。
【0180】
印刷インクはさらに、個々の成分をあわせて、たとえば所望の量の水中で混合することによって、慣例的な方法で製造してもよい。
【0181】
すでに記載したように、使用の性質に応じて、たとえば、印刷インクの粘度または他の物理的特性、特問題になっている基材に対する印刷インクの親和性に影響を及ぼす特性を適切に適応させる必要がある可能性がある。
【0182】
印刷インクは、たとえば、印刷インクを小さな開口部から液滴の形態で絞り出し、これを画像が形成される基材に向かわせる種類の記録システム中での使用にも好適である。好適な基材は、たとえば、本発明の方法によって前処理した織物繊維材料、紙、プラスチックまたはアルミ箔である。好適な記録システムは、たとえば市販のインクジェットプリンターである。
【0183】
水性印刷インクを使用する印刷法が好ましい。好ましいインクジェットインク配合物は、(メタ)アクリル化エポキシエステル;(メタ)アクリル化ポリエステルまたはビニルエーテル基を含有するポリエステル、(メタ)アクリル化ポリウレタン、ポリエーテルおよびポリオールを含む。
【0184】
UV硬化性インクジェットで用いられる好ましい成分は、たとえば、米国特許第3844916号、欧州特許出願公開第280222号、米国特許第5482649号または米国特許第5734002号で記載されるような第1または第2アミンとの反応によって修飾されたアクリレートである。そのようなアミン修飾アクリレートは、アミノアクリレートとも称する。例は、本明細書中ですでに記載している。アミノアクリレートの存在下で、UV硬化性系は硬化性能の増加を示すことが知られている。それらは、ラジカルで誘発される重合反応について、特にUV硬化性インクジェットのような低粘性系について典型的に観察される酸素阻害を克服するために有用である。
【0185】
これらの記載したモノマー、プレポリマー、ポリマーおよびオリゴマーすべての混合物を本発明の液状光開始剤混合物を含むインク組成物で使用できることは明らかである。
【0186】
これに関連して光重合性モノマー、オリゴマーまたはプレポリマーの量は、たとえば10〜80質量%、好ましくは10〜60質量%である。
【0187】
本発明の光開始剤を含むインクは、ラジカル重合性成分に加えて、少なくとも1種の脂肪族または芳香族エポキシド、少なくとも1種の上述のポリオールまたはポリビニルポリオール、および少なくとも1種のカチオン生成性光開始剤を含む、低粘度を有するカチオン硬化性組成物も含んでもよい。多くのこれらのエポキシドは当該技術分野で周知であり、市販されている。カチオン性光硬化性組成物で使用できる光開始剤は、たとえば、アリールヨードニウム塩およびアリールスルホニウム塩である。
【0188】
強調されるのは、カチオン性およびラジカル重合性ならびに光重合性原材料を含むハイブリッド系である。カチオン性重合性系の例としては、環状エーテル、特にエポキシドおよびオキセタン、ならびにビニルエーテルおよびヒドロキシ含有化合物が挙げられる。ラクトン化合物および環状チオエーテルならびにビニルチオエーテルも使用できる。さらなる例としては、アミノプラスチックまたはフェノール系レゾール樹脂が挙げられる。これらは特にメラミン樹脂、尿素樹脂,エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂およびアルキド樹脂であるが、特にアクリル樹脂、ポリエステル樹脂またはアルキド樹脂とメラミン樹脂との混合物である。放射線硬化性樹脂は、エチレン性不飽和化合物、特に(メタ)アクリレート樹脂を含む。例はまた上述のとおりである。
【0189】
さらに興味深いのは、第1段階で光重合し、次いで第2段階での熱的後処理により架橋するか、またはその逆であるハイブリッド系である。そのようなハイブリッド系は、非光重合性塗膜形成性成分との混合物で不飽和化合物を含む。これらは、たとえば、ポリマーまたは、たとえばニトロセルロースもしくはセルロースアセトブチレートなどの有機溶媒中のその溶液を物理的に乾燥することであり得る。しかしながら、それらは化学的または熱硬化性樹脂、たとえばポリイソシアネート、ポリエポキシドまたはメラミン樹脂でもあり得る。
【0190】
たとえばインクジェットインクとして好適な他の組成物は、まず熱によって、続いてUVもしくは電子放射線によって硬化させるか、またはその逆であり、その成分が光開始剤の存在下でUV光での照射により反応できる上述のエチレン性二重結合と、本発明の文脈で、上述の液状光開始剤混合物とを含む二重硬化組成物である。
【0191】
インクジェットインクは、たとえば着色剤を含む。様々な有機および無機染料ならびに顔料は、単独または組み合わせで、インクジェットインク組成物での使用のために選択することができ、当業者は、適切な選択をよく知っている。顔料粒子は、噴射ノズルでのインクの自由流れを可能にするのに充分小さくなければならない(0.005〜15μm)。顔料粒子は、好ましくは0.005〜1μmでなければならない。
【0192】
顔料およびそれらの製造物の非常に微細な分散液は、たとえば米国特許第5538548で開示されている。
【0193】
インクは、好ましくはインクの総質量を基準として1〜35質量%、特に1〜30質量%、そして好ましくは1〜20質量%の着色剤の総含有量を含む。2.5質量%、特に5質量%、および好ましくは7.5質量%の限度が本明細書中では下限として好ましい。
【0194】
好適な着色剤は、たとえば、純粋な顔料粉末、たとえばCyan IRGALITE(登録商標)Blue GLO(BASF SE)または顔料製造物、たとえばMICROLITH−顔料製造物である。
【0195】
インクジェットインクは、たとえば、界面活性剤、殺生物剤、緩衝剤、防かび剤、pH調節剤、電気伝導度調節剤、キレート剤、防錆剤、重合防止剤、光安定剤などの様々なさらなる添加剤を含んでもよい。そのような添加剤は、要望通りに、任意の有効量でインクジェットインク中に含めることができる。
【0196】
好ましい使用分野は、重ね刷りコーティングならびに着色された薄いコーティング(層厚20μm未満)、たとえばフレキソグラフ印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、インタグリオ印刷、グラビア印刷、凸版印刷、タンポン印刷およびインクジェット印刷などの印刷方法で使用される印刷インクを含む。
【0197】
重ね刷りコーティングは、典型的にはオリゴマーおよび/またはモノマーアクリレートなどのエチレン性不飽和化合物を含む。アミンアクリレートもまた含まれていてもよい。
【0198】
本明細書中で前述したように、重ね刷りコーティングおよび印刷インクはさらなる光開始剤および共開始剤も含んでもよい。
【0199】
したがって、本発明の対象はまた、上述のような光重合性組成物であり、これは印刷インク、特にオフセット印刷インクである。
【0200】
本発明の液状光開始剤混合物はまた、UV硬化性接着剤で;たとえば感圧性接着剤、積層用接着剤、ホットメルト接着剤、湿気硬化接着剤、シラン反応性接着剤またはシラン反応性シーラントなどの製造で、ならびに関連する適用で使用するためにも好適である。前記接着剤は、ホットメルト接着剤ならびに水性もしくは溶媒系接着剤、液状無溶媒接着剤または2成分反応性接着剤であり得る。特に好適なのは、感圧性接着剤(PSA)、たとえばUV硬化性ホットメルト感圧性接着剤である。前記接着剤は、たとえば少なくとも1つのゴム成分と、粘着剤として少なくとも1つの樹脂成分と、少なくとも1つの油成分とを、たとえば30:50:20の質量比で含む。好適な粘着剤は、天然または合成樹脂である。当業者は、好適な対応する化合物ならびに好適な油成分またはゴムを知っている。
【0201】
たとえばブロック化形態のイソシアネートを含むプレ重合接着剤は、たとえば高温で処理することができ、そしてホットメルト過程後の基材上にコーティングすることができ、その後、ブロック化イソシアネートを含む追加の硬化ステップによって完全硬化を達成し、これは潜在性光触媒の光活性化によって実現される。
【0202】
本発明の液状光開始剤混合物はまた、乳化重合、ビーズ重合もしくは懸濁重合法用の開始剤として、または液体−結晶質モノマーおよびオリゴマーの配向状態を固定するための重合の開始剤として、または有機材料上に染料を固定するための開始剤として、使用することもできる。
【0203】
本発明の液状光開始剤混合物は、放射線硬化性粉末コーティングのためのフリーラジカル光開始剤または光開始系として使用することもできる。粉末コーティングは、固体樹脂ならびに反応性二重結合を含むモノマー、たとえばマレエート、フマレート、ビニルエーテル、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミドおよびそれらの混合物を含むモノマーに基づくものであり得る。フリーラジカルUV硬化性粉末コーティングは、たとえば講演“Radiation Curing of Powder Coating”, Conference Proceedings, Radtech Europe 1993 by M. Wittig and Th. Gohmannで記載されているように、不飽和ポリエステル樹脂を固体アクリルアミド(例えば、メチルアクリルアミド−グリコレートメチルエステル)および本発明のフリーラジカル光開始剤と混合することによって配合してもよい。フリーラジカルUV硬化性粉末コーティングはまた、不飽和ポリエステル樹脂を固体アクリレート、メタクリレートまたはビニルエーテルおよび本発明の光開始剤(もしくは光開始剤混合物)と混合することによっても配合できる。粉末コーティングは、たとえば、独国特許出願公開第4228514号および欧州特許出願公開第636669号で記載されているようなバインダーも含み得る。欧州特許出願公開第636669号で記載されている粉末コーティング配合物は、たとえば、以下の物を含む:a)(半)結晶質もしくはアモルファス不飽和ポリエステル、不飽和ポリアクリレートまたはその不飽和ポリエステルとの混合物の群からの不飽和樹脂であって、マレイン酸またはフマル酸由来のものが特に好ましい;b)ビニルエーテル官能基、ビニルエステル官能基もしくは(メタ)アクリレート官能基を含むオリゴマーまたはポリマー架橋剤であって、ビニルエーテルオリゴマー、たとえばジビニルエーテル官能化ウレタンが特に好ましい;c)光開始剤。UV硬化性粉末コーティングは、白色または有色顔料も含んでもよい。したがって、たとえば、隠蔽力が良好な硬化粉末コーティングを得るために、好ましくは最高で50質量%の濃度のルチル二酸化チタンを使用することができる。方法は、通常、基材、たとえば金属または木材上へ粉末を静電または摩擦静電スプレーすること、加熱の結果として粉末を溶融させること、そしてなめらかな塗膜が生じた後、紫外線および/または可視光を使用して、たとえば中圧水銀ランプ、金属ハロゲン化物ランプまたはキセノンランプを使用してコーティングを放射線硬化させることを含む。対応する熱硬化性コーティングと比較した放射線硬化性粉末コーティングの特定の利点は、なめらかな高光沢コーティングの形成を確実にするために、粉末粒子の溶融後のフロー時間を要望通りに延長することができることである。熱硬化性系と対照的に、放射線硬化性粉末コーティングは、保存可能期間の短縮という望ましくない影響なしに比較的低い温度で溶融するように配合することができる。そういうわけで、それらは感熱性基材、たとえば木材またはプラスチック用のコーティングとしても好適である。しかしながら、粉末コーティングを非感熱性基材、たとえば金属(車両コーティング)に施用する場合、本発明の光開始剤を使用して利用可能な「二重硬化」粉末コーティング配合物を作製することも可能である。そのような配合物は当業者に公知であり、それらは加熱およびUVの両方により硬化し、そしてたとえば、米国特許第5922473号で見出すことができる。
【0204】
本発明の液状光開始剤混合物はまた、ポリマー分散液、たとえば水性ポリウレタン分散液、いわゆるPUD中水性(たとえば0.5〜5%、好ましくは0.5〜2%)分散液の形態で使用することもできる。
【0205】
本発明の光硬化性組成物は、たとえば、それに対して保護層または、画像ごとの暴露によって画像が適用される、あらゆる種類の基材、たとえば木材、織物、紙、セラミック、ガラス、プラスチック、たとえば特に塗膜の形態のポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリオレフィンまたはセルロースアセテート、ならびに金属、たとえばAl、Cu、Ni、Fe、Zn、MgまたはCoおよびGaAs、SiまたはSiO2のためのコーティング物質として好適である。
【0206】
基材は、液状組成物、溶液もしくは懸濁液または粉末を基材に施用することによってコーティングすることができる。溶媒およびその濃度の選択は、組成物およびコーティング方法の性質によって主に支配される。溶媒は不活性でなければならず、すなわち、成分とのいかなる化学反応にも参入してはならず、そしてコーティング操作後に乾燥すると再度除去することができなければならない。好適な溶媒は、たとえば、ケトン、エーテルおよびエステル、たとえばメチルエチルケトン、イソブチルメチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、N−メチルピロリドン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1,2−ジメトキシエタン、酢酸エチル、酢酸n−ブチルおよび3−エトキシプロピオン酸エチルである。
【0207】
公知コーティング法によって、たとえばフレキソグラフ印刷、リソグラフィー印刷、インクジェット、スクリーン印刷、スピンコーティング、浸漬、ローラー塗り、ナイフコーティング、カーテン注入、はけ塗またはスプレーなどの印刷方法により、特に静電スプレーおよびリバースロールコーティングにより、ならびに電気泳動析出によって配合物を基材に均一に施用する。感光性層を一時的柔軟性支持体に施用し、次いで積層によって層を移すことにより最終基材をコーティングすることも可能である。施用の種類の例は、たとえば、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry, 5th Ed., Vol.A18, pp. 491−500で見いだされる。
【0208】
施用された量(層厚)および基材(層支持体)の性質は所望の使用分野に左右される。
【0209】
さらなる使用分野は、内層、ならびに中間層および外層両方のためのガラス繊維のコーティングに好適な組成物を含む。コーティングしたガラス繊維はまた、束ねてさらなるコーティングを提供することもできる。そのようなコーティング層は、UV硬化性オリゴマー、UV硬化性モノマーならびに少なくとも1つの光開始剤および添加剤を含む。
【0210】
任意のUV硬化性オリゴマーがガラス繊維のコーティングに好適である。
【0211】
光硬化の使用のさらなる分野は、金属コーティング、たとえば仕上げ処理をシートメタルおよびチューブ、缶またはビンの封止に適用すること、ならびにプラスチックコーティング、たとえばPVC系床仕上げ材もしくは壁紙上の光硬化である。
【0212】
紙コーティングの光硬化の例は、ラベル、包装材料または本の表紙に無色仕上げ処理を施用することである。
【0213】
他の光開始剤を含む本発明の液状光開始剤混合物、または本発明の液状光開始剤混合物のブレンドは、フォトリソグラフィー技術に基づくラピッドプロトタイピングまたは付加製造法のために使用する配合物中でフリーラジカル光開始剤または光開始系としても使用することができる。
【0214】
そのような方法は当業者には周知であり、たとえば、可動式レーザーを使用するステレオリソグラフィー(SLA法)、デジタル光処理(DLP)または大面積マスクレス光重合(ランプ)を包含する。これらの技術すべてに共通なのは、前記技術の1つを使用する層ごと、画像ごとの硬化法と、それに続いて好適な洗浄または現像法によって未硬化材料を除去することによる、3次元物体のステップごとの構築である。画像ごとの硬化過程は、所望の最終特性を達成するために、完全暴露照射ステップと、または熱硬化過程と組み合わせることができる。好ましくは先行する層ごとの形態を提供する過程の完了後数分から数時間に前記後硬化過程を続いて適用する。照射ステップでは、様々な光源、たとえば水銀灯、キセノンおよび蛍光灯または発光ダイオード(LED)を使用してもよい。
【0215】
ラジカル硬化材料と別の機構によって硬化した第2の材料とを組み合わせることも可能である。一例は、ラジカル硬化配合物とカチオン性硬化材料との組み合わせである。たとえば、配合物中に含まれるアクリレート部分を、好ましくはラジカル開始剤を使用して重合させ、一方、エポキシ部分の重合は、好ましくはカチオン性開始剤によって開始させる。両方法は、同時に適用することができるか、またはそれに続く方法で組み合わせることができる。あるいは、ラピッドプロトタイピングまたは付加製造はまた、3D印刷個別多噴射技術を用いて実施することもできる。対応する設備は、たとえば3D Systems Inc.からそれらのProJet(商標)ブランドで、またはPolyJet 3Dプリンターを提供するStratasysからブランドDimension、Connex、EdenおよびProで市販されている。これらの例は、参照のためだけを意図し、本発明を関連する3D印刷技術に限定すべきではない。これらの技術では、3次元物体は、光硬化性材料を層ごとに噴射し、続いて好適な放射線源を使用して直ちに硬化させることによる構築である。好適な放射線源は、たとえば、放射線硬化で一般的に使用される照射系、たとえば水銀灯、ドープ水銀灯、無電極ランプなど、または好適な波長のLEDランプである。
【0216】
これらのラピッドプロトタイピングまたは付加製造適用において、本発明の液状光開始剤混合物は、3次元物体の製造のために使用されるフォトポリマー材料で、または3次元構造の構築のための中間支持体として使用される支持体材料で使用できる。支持体材料は、3次元物体の構築後に後者に影響を及ぼすことなく、たとえば、好適な洗浄または現像法によって、容易に除去できるように設計される。
【0217】
本発明の液状光開始剤混合物、または本発明の液状光開始剤混合物と他の光開始剤とのブレンドは、硬化のためのLED(発光ダイオード)光源を使用する用途で使用する配合物においてフリーラジカル光開始剤または光開始系として使用することもできる。LED光源は、たとえば高速単一パス適用、枚葉給紙適用、ナローウェブ適用、平台適用、または大判適用でのUVインクジェットインクの硬化のために使用できる。特に設計されたLED硬化性インクもフォトポリマー噴射技術を使用するプロトタイピングまたは付加製造法でも使用する。LED光源は、たとえば木材コーティングなどの工業的応用でも使用する。LED光源を使用する他の適用は、修復用途、たとえば自動車もしくは工業用修復コーティング、または建造物側面適用、たとえばフローリング適用などの分野の適用である。他の適用は、専門家および日曜大工用途の両方のための接着剤である。光硬化性マニキュア液などでさらに別の用途が見つかる。
【0218】
可視光から短UVまで及ぶ異なる波長で発光するLED光源が利用可能である。しかしながら様々なLEDダイオードの価格/性能レベルおよびプロセス安全性の検討事項を考慮して、可視光またはUV−Aで発光するLEDが好ましい。可視光、たとえば470nmで発光するLED光源は歯科または医学的応用のために特に好ましい。可視光またはUV−A範囲、たとえば405nm、395nm、385nmまたは365nmで発光するLED光源は、技術的応用のために好ましい。特に好ましいのは、405nm、395nmまたは385nmで発光するLEDである。本発明の液状光開始剤混合物はこの範囲内で良好な吸収を有し、光退色過程をたどるので、それらはそのような適用での使用に特に適している。
【0219】
LED光源を硬化のために使用する場合、本発明の液状光開始剤混合物を別の光開始剤化合物(C)と組み合わせて使用することが有利であり得る。好ましいのは、(置換)ベンゾフェノン誘導体、フェニルグリオキシレート誘導体またはチオキサントン誘導体との組み合わせである。特に好ましいのは、本発明の液状光開始剤混合物とチオキサントン誘導体との組み合わせである。
【0220】
本発明の組成物の光感受性は通常、約150nmからIR範囲に及ぶ。好適な放射線が、たとえば太陽光または人工光源からの光中に存在する。したがって、多数の最も変化に富んだ光源を使用することができる。点光源および扁平なラジエータ(ランプアレイ)のどちらも好適である。例は、カーボンアークランプ、キセノンアークランプ、必要に応じて金属ハロゲン化物(金属ハロゲン化物ランプ)でドープした中圧、高圧および低圧水銀ラジエータ、マイクロ波励起金属蒸気ランプ、エキシマーランプ、スーパーアクチニック蛍光管、蛍光灯、アルゴン白熱灯、フラッシュランプ、たとえば高エネルギーフラッシュランプ、写真用投光照明ランプ、発光ダイオード(LED、OLED)、電子線およびX線である。ランプから露光される基材までの間の距離は、意図される使用ならびに散布の種類および強度にしたがって変化する可能性があり、そしてたとえば、2cm〜150cmであり得る。特に好適なのは、レーザー光源、たとえばエキシマーレーザー、たとえば248nmで露光するためのKrypton−Fレーザーである。可視光および赤外またはNIR範囲内のレーザーも使用してもよい。
【0221】
すでに記載したように、本発明の硬化は、単に電磁放射線での照射によって実施できる。しかしながら、硬化させる配合物の組成に応じて、照射前、照射中または照射後の熱硬化が有利である。
【0222】
熱硬化を当業者に公知の方法によって実施する。概して、硬化を、オーブン、たとえば空気循環オーブン中、加熱板上、またはIRランプでの照射によって実施する。使用するバインダー系に応じて室温での支援を受けない硬化も可能である。硬化温度は概して室温から150℃の間、たとえば25〜150℃または50〜150℃である。粉末コーティングまたはコイルコーティングの場合、硬化温度はさらに高くてもよく、たとえば最高で350℃であってよい。
【0223】
本発明は、エチレン性不飽和二重結合を含むモノマーまたはオリゴマー化合物を含む組成物の光重合のための光開始剤として前述のような液状光開始剤混合物の使用、および少なくとも1つのエチレン性不飽和二重結合を含むモノマー、オリゴマー、またはポリマー化合物の光重合のための方法であって、前記化合物に上述のように液状光開始剤混合物を添加し、得られる組成物を電磁放射線で照射することを含む方法に関する。
【0224】
興味深いのは、着色および非着色塗料ならびにワニス、粉末コーティング、印刷インク、印刷版、接着剤、感圧性接着剤、歯科用組成物、ゲルコート、電子機器用フォトレジスト、電気めっきレジスト、エッチレジスト、液体および乾燥塗膜いずれも、ソルダーレジスト、様々なディスプレー用途のためのカラーフィルターを製造するためのレジスト、プラズマディスプレーパネルの製造法において構造を生成させるためのレジスト、エレクトロルミネッセンスディスプレーおよびLCD、LCD用スペーサーを製造するため、ホログラフィックデータ貯蔵(HDS)のため、電気部材および電子部材を封入するための組成物として、磁気記録材料、微小機械部品、導波管、光スイッチ、メッキマスク、エッチングマスク、色校正系、ガラス繊維ケーブルコーティング、スクリーン印刷ステンシルを製造するため、ステレオリソグラフィーによって3次元物体を製造するため、画像記録材料、ホログラフィック記録、超小型電子回路、脱色材料のため、画像記録材料用脱色材料として、マイクロカプセルを使用する画像記録材料のため、UVおよび可視レーザー直接画像化系用フォトレジスト材料として、プリント基板の順次ビルドアップ層において誘電体層を形成するために使用されるフォトレジスト材料として;特に、着色および非着色塗料およびワニス、粉末コーティング、印刷インク、たとえばスクリーン印刷インク、オフセット印刷、フレキソ印刷またはインクジェット印刷用インク、印刷版、接着剤、シーリング、培養成分、歯科用組成物、フォーム、成型化合物、複合組成物、ガラス繊維ケーブルコーティング、スクリーン印刷ステンシルを製造するため、ステレオリソグラフィーによって3次元物体を製造するため、そして画像記録材料、フォトレジスト組成物、脱色材料、画像記録材料用脱色材料として、マイクロカプセルを使用する画像記録材料のための、前述のような光重合性組成物の使用のための前述の組成物の使用である。
【0225】
本発明の対象は、コーティング、印刷インク、印刷版、接着剤、歯科用組成物、ゲルコート、電子機器用フォトレジストを製造するため、電気部材および電子部材を封入するため、磁気記録材料を製造するため、微小機械部品、導波管、光スイッチ、メッキマスク、エッチングマスク、色校正系、ガラス繊維ケーブルコーティング、スクリーン印刷ステンシルを製造するため、光硬化性材料を使用するフォトリソグラフィーもしくはポリマー噴射法に基づくラピッドプロトタイピングまたは付加製造技術によって3次元物体を製造するため(モデルまたはプロトタイプならびに優れた機械的安定性および美的外観を有する直接使用するために完全に機能的な部品として使用するため)、画像記録材料を製造するため、ホログラフィック記録のため、超小型電子回路を製造するため、あるいは脱色材料を製造するための前述の方法である。
【0226】
好ましいのは、着色および非着色表面コーティング、重ね刷りコーティング、粉末コーティング、印刷インク、インクジェットインク、ゲルコート、複合材料またはガラス繊維コーティングの製造について前述のような方法である。
【0227】
本発明は、少なくとも1つの表面を前述の組成物でコーティングし、電磁放射線で照射した、コーティングされた基材、ならびに前述の重合性組成物を硬化することによって得られる重合または架橋した組成物にも関する。
【0228】
特に興味深いのは、食品包装材料用の表面コーティングとして前述の組成物の使用、ならびに前述の組成物を用いる食品包装材料用の表面コーティングの製造について上述の方法である。
【0229】
本発明の液状光開始剤混合物は、温度を上昇させることなく室温でも簡単な方法で、かつ所望の割合で、光硬化性配合物中に組み入れることができる。さらに、すでに上述したとおり、液状ビスアシルホスフィンオキシド成分以外に、たとえば液状ヒドロキシケトン化合物を含む光開始剤ブレンド、たとえば2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパノン(Darocur(登録商標)1173)またはa−オキソベンゼン酢酸メチル(Darocur(登録商標)MBF)の製造は実施するのが容易である。さらに、固体光開始剤、たとえば固体ヒドロキシケトン化合物、たとえば2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン(Irgacure(登録商標)127)とのブレンド、またはEsacure(登録商標)KIP(Lamberti SAにより提供)とのブレンドを容易に製造することができる。(TheDarocur(登録商標)およびIrgacure(登録商標)製品はBASF SEによって提供される)。
【0230】
公知ビスアシルホスフィンオキシド化合物とは対照的に、本発明の液状光開始剤混合物はさらに、分散剤または乳化剤を使用しなくても、水性配合物中で使用できる。
【0231】
本発明の液状光開始剤混合物の別の特性は、硬化直後の硬化配合物の着色が少ないことである。
【0232】
以下の実施例は、前記実施例のみの範囲を限定することなく本発明をさらに詳細に説明する。部およびパーセンテージは、残りの説明および特許請求の範囲では、特に別段の記載がない限り質量基準である。3個を上回る炭素原子を有するアルキルが実施例で特定の異性体を言及せずに指定される場合、この場合はn−異性体を意味する。
【0233】
実施例:
概要:マグネチックスターラー、蒸留装置および真空接続部を備えた丸底フラスコ中で実験を実施する。溶媒を受け取ったままで使用する。1H−および31P−NMR分光法およびHPLC(Agilent Zorbax XDB Phenyl、2.1×150mm/5μm逆相カラムを50℃で使用して分析を実施する。溶離液勾配は、20分にわたって水(75%)/メタノール(25%)から100%メタノール、続いてメタノールを使用して5分間溶出)。
【0234】
実施例1 やや真空下で大過剰のアルコールを使用した液状ビスアシルホスフィンオキシド混合物の調製
3g(7.2ミリモル)の国際公開第06/056541号で記載されるようにして調製した[ビス−(2,4,6−トリメチル−ベンゾイル)−ホスファニル]−酢酸メチルエステル、40mgのジブチルスズジラウレートおよび9.4g(72ミリモル)のオクチルアルコールの混合物であるExxal8(ExxonMobile)を反応フラスコ中に入れ、ビスアシルホスフィンオキシドのアルコール中懸濁液が生じる。わずかな減圧(280mbar)を適用し、反応混合物を撹拌しながら130℃まで加熱する。混合物は透明な黄色がかった溶液になる。メタノールおよび少量のExxal8を蒸留で除去しながら反応混合物をこの温度で4時間保持する。反応の進行を一定の間隔でHPLCによってモニターする。4時間後、メチルエステル/オクチルエステルの比は98%超である。反応混合物を室温まで冷却し、過剰のアルコールを高真空中で蒸留により除去する。容易に注入可能な黄色がかった液体が得られ、これは1H−NMR−分析およびHPLC分析によると、0.2%の[ビス−(2,4,6−トリメチル−ベンゾイル)−ホスファニル]−酢酸メチルエステル、92.4%の(Exxal8の)対応するオクチルエステルの混合物および7.4%のExxal8からなる。液体の粘度は23℃で3100mPasである。
【0235】
実施例2 高真空下で大過剰のアルコールを使用した液状ビスアシルホスフィンオキシド混合物の調製
100mbarの真空を適用することを除いて実施例1で報告したような反応を繰り返す。これらの条件下で、130℃でわずか1時間後に96:4のメチルエステル/オクチルエステル比に達する。単離後、88%のビス−(2,4,6−トリメチル−ベンゾイル)−ホスファニル]−酢酸のオクチルエステルの混合物、4%のビス−(2,4,6−トリメチル−ベンゾイル)−ホスファニル]−酢酸メチルエステルおよび8%のExxal8を含む黄色がかった液体が得られる。
【0236】
実施例3 高真空下で大過剰のアルコールと触媒としてのZr(acac)4を使用した液状ビスアシルホスフィンオキシド混合物の調製
ジブチルスズジラウレートの代わりにジルコニウム(IV)アセチルアセテートを触媒として使用することを除いて、実施例2で報告したような反応を繰り返す。これらの条件下で、130℃で4時間後に96:4のメチルエステル/オクチルエステル比に達する。単離後、89%のビス−(2,4,6−トリメチル−ベンゾイル)−ホスファニル]−酢酸のオクチルエステルの混合物、4%のビス−(2,4,6−トリメチル−ベンゾイル)−ホスファニル]−酢酸メチルエステルおよび7%のExxal8を含む黄色がかった液体を得る。
【0237】
実施例4 高真空下で小過剰のアルコールと触媒としてZr(acac)4を使用した液状ビスアシルホスフィンオキシド混合物の調製
3g(7.2ミリモル)の国際公開第06/056541号で記載したようにして調製した[ビス−(2,4,6−トリメチル−ベンゾイル)−ホスファニル]−酢酸メチルエステル、40mgのジルコニウム(IV)アセチルアセテートおよび1.4g(8ミリモル)のExxal8(ExxonMobile)を反応フラスコ中に入れる。100mbarのやや真空を適用し、反応混合物を130℃までゆっくりと加熱する。メタノールおよび少量のExxal8を蒸留で除去しながら、反応混合物を130℃で保持する。反応の進行をHPLCにより一定間隔でモニターする。6.5時間後、メチルエステル/オクチルエステルの比は92:8である。反応混合物を室温まで冷却する。容易に注入可能な黄色がかった液体が過剰のアルコールの蒸留なしに得られ、これは1H−NMR分析およびHPLC分析によると、8%のビス−(2,4,6−トリメチル−ベンゾイル)−ホスファニル]−酢酸メチルエステル、88%のExxal8に対応するエステルの混合物および4%のExxal8からなる。
【0238】
実施例5 高真空下で小過剰のアルコールと添加溶剤としてシクロヘキサンとを使用する液状ビスアシルホスフィンオキシド混合物の調製
3g(7.2ミリモル)の国際公開第06/056541号で記載されているようにして調製した[ビス−(2,4,6−トリメチル−ベンゾイル)−ホスファニル]−酢酸メチルエステル、40mgのジルコニウム(IV)アセチルアセテート、1.4g(8ミリモル)のExxal 8(ExxonMobile)および50mlのシクロヘキサンを反応フラスコに入れると、混濁した懸濁液が生じる。真空を適用することなく撹拌しながら、反応混合物をゆっくりと100℃まで加熱する。反応混合物は透明な黄色がかった溶液になる。メタノールを含むシクロヘキサンを連続して蒸留により除去し、そしてほぼ同量の新鮮なシクロヘキサンで置換する。6時間後、メチルエステル/オクチルエステル比は94:6である。反応混合物を室温まで冷却する。シクロヘキサンを真空中で蒸留により除去して、容易に注入可能な黄色がかった液体を得、これは1H−NMR−分析およびHPLC分析によると、5%のビス−(2,4,6−トリメチル−ベンゾイル)−ホスファニル]−酢酸メチルエステルと、92%のExxal8に相当するエステルの混合物と、3%のExxal8とからなる。
【0239】
実施例6 高真空下、小過剰の異性体ノナノールの混合物と触媒としてのZr(acac)4とを使用した液状ビスアシルホスフィンオキシド混合物の調製
622g(1.5モル)の国際公開第06/056541号で記載されているようにして調製した[ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスファニル]酢酸メチルエステルを5回に分けて238g(1.65モル)のNonanol Nに70℃にて30分かけて添加する。1.8g(0.00375モル)のジルコニウム(IV)アセチルアセトネートを次いで添加し、反応混合物を95℃まで加熱し、60mbarの真空下におく。1.8gのジルコニウム(IV)アセチルアセトネートを4回、次の4時間にわたって添加し、続いて反応混合物を95℃でさらに2時間保持する。反応の過程で、メタノールおよび少量のNonanol Nを蒸留によって除去する。反応の最後に黄色油状物を得、これはHPLC分析によると87%の異性体[ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスファニル]酢酸ノニルエステル、8.5%の[ビス(2,4,6−トリメチル−ベンゾイル)ホスファニル]酢酸メチルエステルおよび4.5%のNonanol Nからなる。
【0240】
実施例7 トルエン中1,6−ヘキサンジオールおよび触媒として1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デク−5−エンを使用した液状ビスアシルホスフィンオキシド混合物の調製
3.03g(7.3ミリモル)の国際公開第06/056541号で記載されているようにして調製した[ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスファニル]酢酸メチルエステルおよび0.44gの1,6−ヘキサンジオール(3.7ミリモル)を40mlのトルエン中に懸濁させる。0.05gの1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デク−5−エンを添加し、混合物を130℃まで加熱する。トルエンを反応の間に蒸留で除去し、同じ量の溶媒で連続して置換する。8時間後、混合物を室温まで冷却し、揮発性物質を真空中で除去する。3.25gの黄色がかった油状物を得、これはNMR分析によると、1,6−ヘキサンジオール[ビス(2,4,6−トリメチル−ベンゾイル)ホスファニル]酢酸ジエステル(約55%)、1,6−ヘキサンジオール[ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスファニル]酢酸モノエステル(31%)、ビス(2,4,6−トリメチル−ベンゾイル)−ホスファニル]酢酸メチルエステル(8%)および1,6−ヘキサンジオール(6%)からなる。
【0241】
実施例8 シクロヘキサン中1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンおよび触媒としての1,5,7−トリアザビシクル−[4.4.0]デク−5−エンを使用した液状ビスアシルホスフィンオキシド混合物の調製
国際公開第06/056541号で記載されているようにして調製した8.29g(20ミリモル)の[ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスファニル]酢酸メチルエステルおよび0.72gの1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン(5ミリモル)を50mlのシクロヘキサン中に懸濁させる。0.001gの1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デク−5−エンを添加し、そして混合物を80℃まで加熱する。シクロヘキサンを反応の間に蒸留で除去し、同じ量の溶媒で連続して置換する。9時間後、混合物を室温まで冷却し、揮発性物質を真空中で除去する。3.25gの黄色がかった粘性油状物が得られ、これはNMR分析によると1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン[ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスファニル]酢酸ジエステル(約65%)、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン[ビス(2,4,6−トリメチル−ベンゾイル)ホスファニル]酢酸モノエステル(27%)、およびビス(2,4,6−トリメチル−ベンゾイル)−ホスファニル]酢酸メチルエステル(8%)からなる。
【0242】
応用例
実施例A1:貯蔵安定性
3gの実施例4にしたがって得られた液状ビスアシルホスフィンオキシド光開始剤を空気下で褐色フラスコ中に入れる。フラスコに栓で蓋をし、「加熱および凍結」サイクルを用いて光を排除して貯蔵し、その間、貯蔵温度を一定の間隔(1日)で室温(22〜24℃)からフリーザー温度(3℃)まで変更する。液体の状態を1週間につき1回、目視で評価する。これらの条件下で6ヶ月貯蔵後、光開始剤は固体部分が形成されることなく依然として液体であり、室温で容易に注入可能である。
【0243】
実施例A2:モノマー中の溶解
2%のビスアシルホスフィンオキシド光開始剤を様々なモノマー中に完全に溶解させるための時間および条件を評価する。
【0244】
2%のビスアシルホスフィンオキシド光開始剤および98%のモノマーを、磁気撹拌子および加熱浴を備えたビーカー中に入れる。混合物を目視で評価し、透明な溶液が形成される時間および条件を採点する。
評点 下記時間後に溶解
1 室温で15分
2 40℃で10分
3 50℃で10分
4 60℃で10分
5 60℃で10分超
以下の結果が得られる(5回の測定の平均)
【表1】
HDDA=1,6−ヘキサンジオールジアクリレート
TPGDA=トリプロピレングリコールジアクリレート
TMPTA=トリメチロールプロパントリアクリレート
【0245】
実施例A3:白色に着色したポリエステルアクリレートコーティングにおける光開始剤性能
2%の試験する光開始剤を含む光硬化性白色に着色したポリエステルアクリレート配合物を調製する。配合物を白色コーティングしたチップボード上に100 mの厚さで施用し、80W中圧水銀ランプを使用し、5m/分のベルト速度で前記ランプ下にベルト上の試料を通過させることによって硬化させる。
【0246】
Konig DIN 53157にしたがってペンデュラム硬度(PH)(秒)により硬化性能を決定する。PH値が高いほど、試験した光開始剤化合物の反応性が高い。硬化後の配合物の黄変をCielabシステムにしたがったb*値の比色定量により決定する。この値が高いほど、硬化したコーティングはより着色している。
【0247】
以下の結果が得られる:
【表2】
【0248】
実施例A4:さらなる光開始剤(C)としてフェニル−1−ヒドロキシシクロヘキシルケトンを使用する様々な白色に着色した光硬化性配合物の光開始剤性能
以下の光硬化性配合物を調製する:
配合物1
40.0質量%のポリエステルアクリレート(Laromer(登録商標)PE9074、BASF SEにより提供)
34.3質量%のジプロピレングリコールジアクリレート(Laromer(登録商標)DPGDA、BASF SEにより提供)
0.2質量%のスリップ助剤(EFKA(登録商標)3030、BASF SEにより提供)
0.5質量%の湿潤助剤(EFKA(登録商標)5220、BASF SEにより提供)
21.0質量%の二酸化チタン(Kronos(登録商標)2300、Kronosにより提供)
1.0質量%の実施例6の光開始剤
3.0質量%のフェニル−1−ヒドロキシシクロヘキシルケトン(Irgacure(登録商標)184、BASF SEにより提供)
配合物2
30.0質量%のポリエーテルポリオール;エポキシ樹脂;アクリル酸エステルに基づくポリマー(Laromer(登録商標)LR8986、BASF SEにより提供
22.3質量%のアミン修飾ポリエーテルアクリレート(PO77F、BASFにより提供)
22.0質量%のトリプロピレングリコールジアクリレート(TPGDA)
0.2質量%のスリップ助剤(EFKA(登録商標)3030、BASF SEにより提供)
0.5質量%の湿潤助剤(EFKA(登録商標)5220、BASF SEにより提供)
21.0質量%の二酸化チタン
1.0質量%の実施例6の光開始剤
3.0質量%のフェニル−1−ヒドロキシシクロヘキシルケトン(Irgacure(登録商標)184、BASF SEにより提供)
配合物3
58.3質量%のアミン修飾ポリエーテルアクリレート(BASF製のPO94F)
16.0質量%のポリエステルアクリレート(Laromer(登録商標)PE9079、BASF SEにより提供)
0.2質量%のスリップ助剤(EFKA(登録商標)3030、BASF SEにより提供)
0.5質量%の湿潤助剤(EFKA(登録商標)5220、BASF SEにより提供)
21.0質量%の二酸化チタン
1.0質量%の実施例6の光開始剤
3.0質量%のフェニル−1−ヒドロキシシクロヘキシルケトン(Irgacure(登録商標)184、BASF SEにより提供)
配合物4
30.0質量%のポリエーテルポリオール;エポキシ樹脂;アクリル酸エステルに基づくポリマー(Laromer(登録商標)LR8986、BASF SEにより提供
22.3質量%のアミン修飾ポリエーテルアクリレート(PO77F、VSFにより提供)
22.0質量%のトリプロピレングリコールジアクリレート(TPGDA)
0.2質量%のスリップ助剤(EFKA(登録商標)3030、BASF SEにより提供)
0.5質量%の湿潤助剤(EFKA(登録商標)5220、BASF SEにより提供)
21.0質量%の二酸化チタン
2.0質量%の実施例6の光開始剤
2.0質量%のフェニル−1−ヒドロキシシクロヘキシルケトン(Irgacure(登録商標)184、BASF SEにより提供)
【0249】
A4.1:反応性
試験する配合物をバーコーター白色コイル上に24μmの厚さで施用する。UV高圧Hgランプ(200W/cm)下、所定の速度のベルト上で試料を移動させることによって配合物の硬化を達成する。配合物を完全に硬化させるために使用できる最高速度を決定する(完全硬化は、指の爪でひっかくことによって判定する)。結果を下記第1表にまとめる。
【0250】
A4.2:黄変
試験する配合物を白色コイル上に100μmの厚さで施用する。Hgランプ(200W/cm)下で5m/分のベルト速度にてベルト上で試料を移動させることによって配合物の硬化を達成する。配合物の黄変を、硬化直後、1時間後、72時間後、およびTL03ランプでさらに照射した後に、Cielabシステムにしたがったb*値の比色定量により決定する。この値が高いほど、硬化したコーティングはより黄色がかっている。結果を下記第1表にまとめる。
【0251】
A4.3:ペンデュラム硬度
試験する配合物を白色コイル上に100μmの厚さで施用する。Hgランプ(200W/cm)下、5m/分のベルト速度にてベルト上で試料を移動させることによって配合物の硬化を達成する。Konig DIN 53157にしたがったペンデュラム硬度(PH)(秒)を、硬化直後および恒温室中22℃で貯蔵後72時間に測定する。PH値が高いほど、試験した光開始剤化合物の反応性が高い。結果を下記第1表にまとめる。
【0252】
A4.4:硬化性塗膜の最大厚さ
配合物を、湿潤厚さが約2mmになるようにポリエチレンカップの蓋に注ぎ、そして200Wガリウムドープ中圧水銀ランプを用いて、5m/分のベルト速度でランプ下、ベルト上の試料を通過させることによって硬化させる。次いで、硬化層を蓋から取り出し、そして未硬化材料をアセトンで除去し、乾燥し、試料の厚さを測定する。
【0253】
これらの条件下で硬化可能な最大塗膜厚を測定する。結果を下記第1表にまとめる。
【表3】
【0254】
実施例A5:さらなる光開始剤(C)としてフェニル−1−ヒドロキシシクロヘキシルケトンを使用する光硬化性青色コーティング配合物における光開始剤性能
以下の光硬化性配合物5a〜5cを調製する:
基本的青色コーティング配合物:
20.0gのトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)
40.0gのアミン修飾ポリエーテルアクリレート(PO94F BASFにより提供)
30.0gのポリエステルアクリレート(Laromer(登録商標)PE9079、BASF SEにより提供)
0.2gのスリップ助剤(EFKA(登録商標)3030、BASF SEにより提供)
0.8gの湿潤助剤(EFKA(登録商標)7731 、BASF SEにより提供)
5.0gのHeliogen Blue 7110F(PB15:4青色顔料、BASF SEによる)
3.0gのフェニル−1−ヒドロキシシクロヘキシルケトン(Irgacure(登録商標)184、BASF SEにより提供)
【0255】
基本的配合物に、以下の量の光開始剤を添加する:
配合物5a:0.5gの実施例6の光開始剤
配合物5b:1.0gの実施例6の光開始剤
配合物5c:1.5gの実施例6の光開始剤
【0256】
A5.1:反応性
試験する配合物を白色コイル上に25μmの厚さで施用する。Hgランプ(120W/cm)下、続いてGaドープHgランプ(120W/cm)下、所定の速度にてベルト上で試料を移動させることによって、配合物の硬化を達成する。配合物を完全に硬化させるために使用できる最高速度(フィンガーネイルテスト)を測定する。結果を下記第2表にまとめる。
【0257】
A5.2:硬化性塗膜の最大厚さ
配合物を、湿潤厚さが約2mmになるようにポリエチレンカップの蓋に注ぎ、そして200Wガリウムドープ中圧水銀ランプを用いてランプ下を、5m/分のベルト速度でベルト上の試料を通過させることによって硬化させる。次いで、硬化層を蓋から取り出し、未硬化材料をアセトンで除去し、乾燥し、試料の厚さを測定する。
【0258】
これらの条件下で硬化可能な最大塗膜厚を測定する。結果を下記第2表にまとめる。
【表4】
【0259】
実施例A6:さらなる光開始剤(C)としてフェニル−1−ヒドロキシシクロヘキシルケトンを使用する光硬化性黄色コーティング配合物の光開始剤性能
以下の光硬化性配合物6a〜6cを調製する:
基本的黄色コーティング配合物:
20.0gのトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)
40.0gのアミン修飾ポリエーテルアクリレート(PO94F BASFにより提供)
30.0gのポリエステルアクリレート(Laromer(登録商標)PE9079、BASF SEにより提供)
0.2gのスリップ助剤(EFKA(登録商標)3030、BASF SEにより提供)
0.8gの湿潤助剤(EFKA(登録商標)7731、BASF SEにより提供)
5.0gのPaliotol黄 L0962HD(PY 138、黄色顔料、BASF SEによる)
3.0gのフェニル−1−ヒドロキシシクロヘキシルケトン(Irgacure(登録商標)184、BASF SEにより提供)
【0260】
基本的配合物に以下の量の光開始剤を添加する:
配合物6a:0.5gの実施例6の光開始剤
配合物6b:1.0gの実施例6の光開始剤
配合物6c:1.5gの実施例6の光開始剤
【0261】
A6.1:反応性
反応性評価をA5.1について記載した用に実施する。結果を下記第3表中にまとめる。
【0262】
A6.2:硬化性塗膜の最大厚さ
硬化性塗膜の最大厚さの評価をA5.21について記載したように実施する。結果を下記第3表中にまとめる。
【表5】
【0263】
実施例A7:さらなる光開始剤(C)としてフェニル−1−ヒドロキシシクロヘキシルケトンを使用する光硬化性赤色コーティング配合物における光開始剤性
以下の光硬化性配合物7a〜7cを調製する:
基本的赤色コーティング配合物:
20.0gのトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)
40.0gのアミン修飾ポリエーテルアクリレート(PO94F BASFにより提供)
30.0gのポリエステルアクリレート(Laromer(登録商標)PE9079、BASF SEにより提供)
0.2gのスリップ助剤(EFKA(登録商標)3030、BASF SEにより提供)
0.8gの湿潤助剤(EFKA(登録商標)7731 、BASF SEにより提供)
5.0gのIragazin(登録商標)Red L3670HD(PR254、赤色顔料、BASFにより提供)
3.0gのフェニル−1−ヒドロキシシクロヘキシルケトン(Irgacure(登録商標)184、BASF SEにより提供)
【0264】
基本的配合物に、以下の量の光開始剤を添加する:
配合物7a:0.5gの実施例6の光開始剤
配合物7b:1.0gの実施例6の光開始剤
配合物7c:1.5gの実施例6の光開始剤
【0265】
A7.1:反応性
反応性評価をA5.1について記載したようにして実施する。結果を下記第4表にまとめる。
【0266】
A7.2:硬化性塗膜の最大厚さ
硬化性塗膜の最大厚さの評価をA5.21について記載したようにして実施する。結果を下記第4表にまとめる。
【表6】
【0267】
実施例A8:白色顔料光硬化性配合物中の単独およびさらなる光開始剤(C)としてフェニル−1−ヒドロキシシクロヘキシルケトンと組み合わせた実施例6の光開始剤の硬化性能
以下の光硬化性配合物8a〜8bを調製する:
基本的白色コーティング配合物
15.0gのトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)
35.3gのアミン修飾ポリエーテルアクリレート(PO94F BASFにより提供)
20.0gのポリエステルアクリレート(Laromer(登録商標)PE9079、BASF SEにより提供)
0.2gのスリップ助剤(EFKA(登録商標)3030、BASF SEにより提供)
0.8gの湿潤助剤(EFKA(登録商標)5220、BASF SEにより提供)
25.0gの二酸化チタン(TiO2 CL 2310)
【0268】
基本的配合物に、以下の量の光開始剤を添加する:
配合物8a:1.0gの実施例6の光開始剤およびさらなる光開始剤(C)としての3.0gのフェニル−1−ヒドロキシシクロヘキシルケトン(Irgacure(登録商標)184、BASFにより提供)
配合物8b:4.0gの実施例6の光開始剤
【0269】
A8.1:反応性
反応性の評価をA5.1について記載したようにして実施する。結果を下記第5表にまとめる。
【0270】
A8.2:硬化性塗膜の最大厚さ
硬化性塗膜の最大厚さの評価をA5.2について記載したようにして実施する。結果を下記第5表にまとめる。
【0271】
A8.3貯蔵安定性
すぐに使用できる配合物8aおよび8bの貯蔵安定性をチェックするために、2つの配合物を40℃で3か月間貯蔵する。この時間の後、評価試験A8.1およびA8.2を繰り返す。結果を下記第5表にまとめる。
【表7】
【0272】
実施例A9:白色着色光硬化性配合物において異なるさらなる光開始剤(C)と組み合わせた実施例6の光開始剤の硬化性能
以下の光硬化性配合物9a〜9eを調製する:
基本的白色コーティング配合物
80.3質量%のエポキシアクリレート(Laromer(登録商標)LR898/6、BASF SEにより提供)
0.2質量%のスリップ助剤(EFKA(登録商標)3030、BASF SEにより提供)
0.5質量%の湿潤助剤(EFKA(登録商標)5220、BASF SEにより提供)
15.0質量%の二酸化チタン(TiO2 CL 2310)
【0273】
基本的配合物に、以下の量の光開始剤を添加する:
配合物9a:1.0質量%の実施例6の光開始剤およびさらなる光開始剤(C)としての3.0質量%の二官能性α−ヒドロキシケトン(Esacure(登録商標)ONE、Lamberti Spaにより提供)
配合物9b:1.0質量%の実施例6の光開始剤およびさらなる光開始剤(C)としての3.0質量%の2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパノン(Darocur(登録商標)1173、BASF SEにより提供)
配合物9c:1.0質量%の実施例6の光開始剤およびさらなる光開始剤(C)としての3.0質量%のフェニル−1−ヒドロキシシクロヘキシルケトン(Irgacure(登録商標)184、BASF SEにより提供)
配合物9d:1.0質量%の実施例6の光開始剤およびさらなる光開始剤(C)としての3.0質量%のα−オキソベンゼン酢酸メチル(Darocur(登録商標)MBF、BASF SEにより提供)
配合物9e:1.0質量%の実施例6の光開始剤およびさらなる光開始剤(C)としての3.0質量%の2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン(Irgacure(登録商標)127、BASF SEにより提供)
【0274】
A9.1:反応性
試験する配合物を、100μmの湿潤厚さで白色コイル上に施用する。所定の速度でHgランプ(200W/cm)下、ベルト上で試料を移動させることによって配合物の硬化を達成する。配合物を完全に硬化させるために使用できる最高速度は、指の爪でひっかくことによって測定する。結果を下記第6表にまとめる。
【0275】
A9.2:ペンデュラム硬度
試験する配合物を、100μmの厚さを有する白色コイル上に施用する。5m/分のベルト速度にてHgランプ(120W/cm)下、ベルト上で試料を移動させることによって配合物の硬化を達成する。Konig DIN 53157にしたがってペンデュラム硬度(PH)(秒)を、恒温室中22℃で24時間を超えて貯蔵した後に測定する。PH値が高いほど、試験した光開始剤化合物は反応性が高い。結果を下記第6表にまとめる。
【表8】
【0276】
実施例A10:光硬化性水性透明および白色配合物における実施例6の光開始剤の硬化性能
以下のものを混合することによって水性透明配合物10a〜10bを調製する:
配合物10a:
100.0gの水性ウレタンアクリレート分散液(Laromer(登録商標)WA9057、BASF SEにより提供)
0.5gのレオロジー修飾剤(DSX 1550 水中5%、BASF SEにより提供)
1.0gの実施例6の光開始剤
配合物10b:
100.0gの水乳化性ポリエステルアクリレート(Laromer(登録商標)PE22WN、BASF SEにより提供)
0.5gのレオロジー修飾剤(DSX 1550 水中5%、BASF SEにより提供)
1.0gの実施例6の光開始剤
以下のものを混合することによって水性白色配合物10c〜10dを調製する:
配合物10c:
100.0gの水性ウレタンアクリレート分散液(Laromer(登録商標)WA 9057、BASF SEにより提供)
0.5gのレオロジー修飾剤(DSX 1550 水中5%、BASF SEにより提供)
12.7gの水性二酸化チタン顔料分散液(Luconyl(登録商標)NG白色0022、BASF SEにより提供)
1.0gの実施例6の光開始剤
1.2gのフェニル−1−ヒドロキシシクロヘキシルケトンとベンゾ−フェノンとの1:1の比の光開始剤ブレンド(Irgacure(登録商標)500、BASF SEにより提供)
配合物10d:
100.0gの水乳化性ポリエステルアクリレート(Laromer(登録商標)PE22WN、BASF SEにより提供)
0.5gのレオロジー修飾(DSX 1550 水中5%、BASF SEにより提供)
12.7gの水性二酸化チタン顔料分散液(Luconyl(登録商標)NG白色0022、BASF SEにより提供)
1.0gの実施例6の光開始剤
1.2gのフェニル−1−ヒドロキシシクロヘキシルケトンとベンゾフェノンとの1:1の比の光開始剤ブレンド(Irgacure(登録商標)500、BASF SEにより提供)
【0277】
A10.1:反応性
試験する配合物を白色アルミニウムコイルパネル上に100μmの湿潤厚さで施用する。パネルを次いで50℃で10分間乾燥する。試料をベルト上、2Hgランプ(120W/cm)下で、5m/分のベルト速度にて移動させることによって配合物の硬化を達成する。反応性(硬化の間中)を、Konig DIN 53157にしたがってペンデュラム硬度(PH)(秒)により測定し、室温で一晩後に決定する。PH値が高いほど、試験した光開始剤化合物の反応性が高い。
【0278】
別法として、硬化はまた、コーティングが除去されるまでアセトンを含ませた綿のボールをこすりつける、アセトンで二回こする試験を使用して測定する。コーティングが除去されるまでのダブルラブの回数が多いほど、光開始剤の硬化効率が良好である。
【0279】
結果を下記第7表にまとめる。
【表9】
【0280】
実施例A11:光硬化性水性白色顔料配合物における実施例3による光開始剤の硬化性能
以下の構成要素を混合することによって水性白色顔料ペーストを調製する:
48.2質量%の水
6.0質量%の湿潤および分散添加剤(Disperbyk(登録商標)190、BYKにより提供)
1.0質量%の消泡剤(Dehydran(登録商標)1620、BYKにより提供)
0.8質量%の親水性ヒュームドシリカ(Aerosil(登録商標)200、Evonikにより提供)、
150.0質量%の水性系用二酸化チタン白色顔料(Kronos(登録商標)2310、Kronosにより提供)
この顔料ペーストを以下の水性白色ラッカーの調製のために使用する:
256.0質量%の水性UV硬化性ポリウレタン分散液(Bayhydrol(登録商標)UV XP2629、Bayerにより提供)
40.0質量%のブチルグリコール/水1:1
2.4質量%の消泡剤(BYK(登録商標)024、BYKにより提供)
4.0質量%の界面活性剤(BYK(登録商標)346、BYKにより提供)
0.8質量%の表面添加剤(BYK(登録商標)332、BYKにより提供)
176.0質量%の上述のような白色顔料ペースト
52.8質量%の水
1.0質量%の実施例3の光開始剤
配合物の試料を用いて、(a)配合物の調製直後、(b)配合物の4週間の貯蔵後、および(c)配合物の12週間の貯蔵後に、下記試験を実施する。
【0281】
A11.1:反応性
試験する配合物を白色のプレコーティングしたアルミニウムパネルコイル上に100μmの湿潤厚さでコーティングする。パネルを次いで50℃で10分間乾燥する。試料をベルト上で2Hgランプ(100W/cm)下、10m/分のベルト速度で移動させることによって配合物の硬化を達成する。Konig DIN 53157によるペンデュラム硬度(PH)(秒)を測定する。PH値が高いほど、試験した光開始剤化合物の反応性が高い。結果を下記第8表にまとめる。
【0282】
A11.2:光沢
A10.1で記載したようにして試料を調製し、硬化させる。
【0283】
光沢を20°で測定する。結果を下記第8表にまとめる。
【表10】