特許第6573942号(P6573942)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6573942
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】ガス分離方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/22 20060101AFI20190902BHJP
【FI】
   B01D53/22
【請求項の数】5
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2017-177935(P2017-177935)
(22)【出願日】2017年9月15日
(65)【公開番号】特開2019-51486(P2019-51486A)
(43)【公開日】2019年4月4日
【審査請求日】2019年2月15日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】305009898
【氏名又は名称】株式会社ルネッサンス・エナジー・リサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中筋 雄大
(72)【発明者】
【氏名】北浦 武明
(72)【発明者】
【氏名】太田 雄大
(72)【発明者】
【氏名】宮本 久照
(72)【発明者】
【氏名】岡田 治
(72)【発明者】
【氏名】寺本 正明
【審査官】 高橋 成典
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−195900(JP,A)
【文献】 特開2007−137788(JP,A)
【文献】 特開平06−170147(JP,A)
【文献】 特開平05−000226(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/086836(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22
61/00 − 71/82
C02F 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス分離膜モジュールを用いて特定のガス及び水蒸気を含む原料ガスから前記特定のガスを分離するための方法であって、
前記ガス分離膜モジュールは、ハウジング及び前記ハウジング内に収容されたガス分離膜エレメントを含み、
前記ガス分離膜エレメントは、前記特定のガスを選択的に透過させる親水性樹脂組成物層を有するガス分離膜を含み、
前記方法は、
前記ガス分離膜モジュールの内部を0.3MPaG以上10MPaG以下の圧力範囲内で昇圧する工程と、
前記ガス分離膜モジュールの内部を200℃以下の温度範囲内で昇温する工程と、
前記ガス分離膜モジュールの内部に前記原料ガスを供給する工程と、
をこの順に含
前記昇温する工程において、前記ガス分離膜モジュールの内部を、前記原料ガスを供給する工程での前記原料ガスの露点を超える温度まで昇温する、
方法。
【請求項2】
前記昇圧する工程において、不活性ガスの供給により前記ガス分離膜モジュールの内部を昇圧する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記不活性ガスは、水分圧が前記昇圧する工程における最大飽和水蒸気圧よりも低い、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記昇圧する工程において、前記ガス分離膜モジュールの内部の供給側を昇圧する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記親水性樹脂組成物層は、親水性樹脂と、酸性ガスと可逆的に反応し得る酸性ガスキャリアとを含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス分離膜モジュールを用いて特定のガスを分離するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水素や尿素等を製造するプラントで合成される合成ガス、天然ガス、排ガス等から二酸化炭素等の特定のガスを分離するプロセスとして、省エネルギー化を実現することができることから、ガス膜分離プロセスが近年注目されている。
【0003】
ガス膜分離プロセスでは、ガス分離膜を含むガス分離装置の供給側に分離対象となる特定のガスを含む原料ガスが供給される。ガス分離膜を透過するガス成分として上記特定のガスが分離回収される。特定のガスの回収率や処理量の観点から、ガス透過の推進力(例えば、ガス分離装置の運転温度や運転圧力、透過圧力など)は比較的高く設定されるのが通常である(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4965927号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ガス膜分離プロセスに用いられるガス分離装置は通常、ガス分離膜モジュールを含む。ガス分離膜モジュールは、ハウジングと、該ハウジング内に収容され、1以上のガス分離膜を集積してなるガス分離膜エレメントとを含む。
本発明の目的は、ガス分離膜モジュールを用いたガス分離方法であって、良好な分離効率(分離選択性)でガス分離を行うことができるガス分離方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下のガス分離方法を提供する。
〔1〕 ガス分離膜モジュールを用いて特定のガスを含む原料ガスから前記特定のガスを分離するための方法であって、
前記ガス分離膜モジュールは、ハウジング及び前記ハウジング内に収容されたガス分離膜エレメントを含み、
前記ガス分離膜エレメントは、前記特定のガスを選択的に透過させる親水性樹脂組成物層を有するガス分離膜を含み、
前記方法は、
前記ガス分離膜モジュールの内部を昇圧する工程と、
前記ガス分離膜モジュールの内部を昇温する工程と、
前記ガス分離膜モジュールの内部に前記原料ガスを供給する工程と、
をこの順に含む、
方法。
〔2〕 前記昇圧する工程において、不活性ガスの供給により前記ガス分離膜モジュールの内部を昇圧する、〔1〕に記載の方法。
〔3〕 前記不活性ガスは、水分圧が前記昇圧する工程における最大飽和水蒸気圧よりも低い、〔2〕に記載の方法。
〔4〕 前記昇圧する工程において、前記ガス分離膜モジュールの内部の供給側を昇圧する、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の方法。
〔5〕 前記原料ガスは、水蒸気を含む、〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の方法。
〔6〕 前記昇温する工程において、前記ガス分離膜モジュールの内部を、前記原料ガスを供給する工程での前記原料ガスの露点を超える温度まで昇温する、〔5〕に記載の方法。
〔7〕 前記親水性樹脂組成物層は、親水性樹脂と、酸性ガスと可逆的に反応し得る酸性ガスキャリアとを含む、〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の方法。
〔8〕 前記方法が、さらに、
前記ガス分離膜を透過しなかった非透過ガスを前記ガス分離膜モジュールから排出する工程と、
前記非透過ガスを精製する工程と、
を含む、〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の方法。
〔9〕前記精製する工程は、吸着法、物理吸収法、化学吸収法、蒸留法及び深冷分離法からなる群より選択される少なくとも一つを用いる、〔8〕に記載の方法。
【発明の効果】
【0007】
ガス分離膜モジュールを用いたガス分離方法であって、良好な分離効率でガス分離を行うことができるガス分離方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】ガス分離膜モジュールを含むガス分離装置の一例を模式的に示す図である。
図2】スパイラル型ガス分離膜エレメントの一例を展開して示す、一部切欠き部分を設けた概略の斜視図である。
図3】スパイラル型ガス分離膜エレメントの一例を示す、一部展開部分を設けた概略の斜視図である。
図4】平膜形状のガス分離膜を含むガス分離装置の概略図である。
図5】ガス分離膜エレメントを含むガス分離装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、記述した範囲内で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0010】
本発明は、ガス分離膜モジュールを用いた、特定のガスを含む原料ガスから該特定のガスを分離するためのガス分離方法に関するものであり、上記課題を解決すべく、とりわけガス分離膜モジュールを用いたガス分離操作の運転開始段階に着目したものである。
ガス分離膜モジュールは、ガス分離膜を含むガス分離膜エレメントと、該ガス分離膜エレメントを収容するハウジング(容器)とを含む。
本発明に係るガス分離方法は、次の工程を含む。
ガス分離膜モジュールの内部を昇圧する工程(昇圧工程)、
ガス分離膜モジュールの内部を昇温する工程(昇温工程)、及び
ガス分離膜モジュールの内部に原料ガスを供給する工程(原料ガス供給工程)。
本発明に係るガス分離方法は、昇圧工程、昇温工程及び原料ガス供給工程をこの順に含む。
【0011】
上記ガス分離方法によれば、良好な分離効率を維持してガス分離を行うことができる。
後述する<比較例1>に記載されるような、平膜形状の小面積のガス分離膜を平膜の状態で含むガス分離装置を用いてラボスケールでガス分離を実施するときと比較する場合、1以上のガス分離膜を集積したガス分離膜エレメントを含むガス分離装置を用いてガス分離を実施したときの分離効率は、概して低くなる傾向にある。
上記ガス分離方法によれば、ガス分離膜エレメントを含むガス分離装置を用いてガス分離を実施する場合であっても、又はガス分離膜エレメントを含むガス分離装置を用いて大規模ガス分離プロセスを実施する場合であっても、良好な分離効率を示すことができ、又は上記ラボスケールでガス分離を実施するときと比較した場合の分離効率の低下を抑制することができる。
【0012】
以下ではまず、ガス分離方法に用いることができるガス分離装置について説明し、その後でガス分離方法について説明する。
【0013】
<ガス分離装置及びガス分離膜モジュール>
ガス分離装置は、特定のガスを含む原料ガスから該特定のガスを分離するための装置であり、ガス分離膜モジュールを少なくとも1つ備える。
【0014】
原料ガスとは、ガス分離膜モジュールに供給されるガスをいう。上記特定のガスとは、分離の対象となるガスをいう。上記特定のガスの一例は酸性ガスである。酸性ガスとは、二酸化炭素(CO)、硫化水素(HS)、硫化カルボニル、硫黄酸化物(SO)、窒素酸化物(NO)、塩化水素等のハロゲン化水素等の酸性を示すガスをいう。
【0015】
図1は、ガス分離装置の一例を模式的に示す図である。図1に示されるガス分離装置は、ガス分離膜モジュールMと、ガス分離膜モジュールMに供給される原料ガスの温度、湿度、圧力を調整するための調整器Aと、ガス分離膜2を透過した透過ガスの圧力を調整するための背圧調整器Bとを有する。
ガス分離膜モジュールMは、供給側のガス流路8と透過側のガス流路9とを含む。供給側のガス流路8と透過側のガス流路9とは、ガス分離膜2によって隔てられている。
ガス分離膜モジュールMは、その内部に原料ガスを導入するための原料ガス供給口11と、ガス分離膜2を透過しなかった非透過ガスを排出させるための非透過ガス排出口12と、ガス分離膜2を透過した透過ガスを排出させるための透過ガス排出口22とを含む。
【0016】
図1に示される例に限らず、ガス分離装置は、2以上のガス分離膜モジュールMを含んでいてもよい。ガス分離装置に備えられるガス分離膜モジュールMの配列及び個数は、要求される特定のガスの処理量及び回収率、ガス分離装置を設置する場所の大きさ等に応じて選択することができる。
【0017】
模式的な図であるので図1には明示されていないが、ガス分離膜モジュールMは、ガス分離膜2を含むガス分離膜エレメントと、該ガス分離膜エレメントを収容するハウジング(容器)とを含む。
ハウジングは、例えばステンレス製等である。原料ガス供給口11、非透過ガス排出口12及び透過ガス排出口22は、例えば、ハウジングに設けることができる。
【0018】
ガス分離膜モジュールMは、ハウジング内に収容されるガス分離膜エレメントを含む。ガス分離膜エレメントは、集積された1以上のガス分離膜を含む。集積された1以上のガス分離膜としては、折り畳まれた、巻回された又はこれらが組み合わせられた1枚のガス分離膜や、積み重ねられた、折り畳まれた、巻回された又はこれらが組み合わせられた2枚以上のガス分離膜が挙げられる。
ガス分離膜モジュールMは、ハウジング内に1つのガス分離膜エレメントを含むことができる(シングル型)。あるいは、ガス分離膜モジュールMは、1つのハウジング内に収容される2以上のガス分離膜エレメントを含むことができる。ガス分離膜エレメントの配列及び個数は、要求される特定のガスの回収率や処理量等に応じて選択することができる。
ハウジング内に2以上のガス分離膜エレメントを配置する場合には、ハウジング内に、2以上のガス分離膜エレメントを並列(並列型)又は直列(直列型)に配列することができる。並列に配列するとは、少なくとも原料ガスを分配して複数のガス分離膜エレメントの供給側に導入することをいい、直列に配列するとは、少なくとも前段のガス分離膜エレメントにおいて排出側から排出された非透過ガスを、後段のガス分離膜エレメントの供給側に導入することをいう。
【0019】
例えば、ハウジング内に2つのガス分離膜エレメントを並列に配列する場合には、ハウジング内に見かけ上、ガス分離膜エレメントを直列に配置し、ハウジングに設けた原料ガス供給口11から原料ガスを2つのガス分離膜エレメントに並列に供給し、各ガス分離膜エレメントのガス分離膜2を透過しなかった非透過ガスを、ハウジングに設けた非透過ガス排出口12から排出すればよい。この場合、ハウジングに設ける原料ガス供給口11と非透過ガス排出口12とは、ガス分離膜エレメント毎にそれぞれ設けてもよく、2つのガス分離膜エレメントで共有するようにしてもよい。あるいは、原料ガス供給口11を1つとし、非透過ガス排出口12をガス分離膜エレメント毎に設けてもよく、これとは反対に、原料ガス供給口11をガス分離膜エレメント毎に設ける一方、非透過ガス排出口12を1つとしてもよい。
【0020】
<ガス分離膜エレメント>
ガス分離膜モジュールMに含まれるガス分離膜エレメントの形式は特に制限されず、スパイラル型、中空糸型、チューブ型、プリーツ型、プレート&フレーム型等いずれであってもよいが、好ましくはスパイラル型である。
【0021】
スパイラル型ガス分離膜エレメントは、有孔の中心管と、中心管に巻回されてなる巻回体とを含む。巻回体は、供給側のガス流路を形成する流路部材と、親水性樹脂組成物層を含むガス分離膜と、透過側のガス流路を形成する流路部材とを積層した積層体から構成される。
以下、図面を参照しながら、スパイラル型ガス分離膜エレメントの実施形態について詳細に説明する。
【0022】
図2は、スパイラル型ガス分離膜エレメントの一例を展開し、一部切欠き部分を設けた概略の斜視図である。図3は、スパイラル型ガス分離膜エレメントの一例を示す、一部展開部分を設けた概略の斜視図である。
図2及び図3に示されるスパイラル型ガス分離膜エレメント及び巻回体(積層体)の層構成は例示であり、本発明はこれらの例示に限定されるものではない。
【0023】
図2及び図3に示されるスパイラル型ガス分離膜エレメントであるガス分離膜エレメント1は、ガス分離膜2、供給側のガス流路を形成する流路部材3及び透過側のガス流路を形成する流路部材4をそれぞれ1以上含むとともに、これらを積層した積層体7が中心管5に巻回された巻回体を備えることができる。巻回体は、円筒状、角筒状等の任意の形状であってもよいが、例えば円筒状のハウジング(容器)に収納される場合には円筒状であることが好ましい。
ガス分離膜エレメント1のサイズは、円筒状である場合、例えば直径が4インチ(約10cm)以上であり、長さが15インチ(約38cm)以上である。ガス分離膜エレメント1の直径は、通常20インチ(約51cm)以下であり、長さは、通常100インチ(254cm)以下である。
【0024】
ガス分離膜エレメント1は、さらに、巻回体の巻戻しや巻崩れを防止するために、外周テープやテレスコープ防止板(ATD)等の固定部材(図示せず)を備えていてもよく、ガス分離膜エレメント1にかかる内圧及び外圧による負荷に対する強度を確保するために、巻回体の最外周にアウターラップ(補強層)を有していてもよい。外周テープは、巻回体の外周に巻き付けられることにより、巻回体の巻戻しを抑制することができる。テレスコープ防止板は、巻回体の両端部に取付けられ、ガス分離膜エレメント1の使用中に、巻回体に巻崩れ(テレスコープ)現象が発生することを抑制することができる。アウターラップ(補強層)は、例えばガラスファイバーにエポキシ樹脂を含浸した繊維強化樹脂などの補強材を用いることができ、巻回体の最外周に補強材を巻き付けた後にエポキシ樹脂を硬化させることが好ましい。
【0025】
(1)巻回体
ガス分離膜エレメント1をなす巻回体は、例えば、透過側のガス流路を形成する流路部材4、ガス分離膜2、供給側のガス流路を形成する流路部材3、ガス分離膜2がこの順に繰返し積層された積層体7から構成することができる。
【0026】
供給側のガス流路を形成する流路部材3は、原料ガスが供給される部材であり、この部材を通してガス分離膜2に原料ガスが供給される。
ガス分離膜2は、第1多孔層と、供給側のガス流路を形成する流路部材3から供給される原料ガスに含まれる特定のガスを分離して透過させる親水性樹脂組成物層とを含む。第1多孔層は、ガス分離膜2を用いた原料ガスからの特定のガスの分離に際し、親水性樹脂組成物層を支持する目的のために設けられ、通常、親水性樹脂組成物層に隣接して設けられる。
透過側のガス流路を形成する流路部材4は、ガス分離膜2を透過した透過ガス(ガス分離膜2に供給された原料ガスの少なくとも一部を含む。)が流れる部材であり、該透過ガスを中心管5へ誘導する。
中心管5は、透過側のガス流路を形成する流路部材4を流れる透過ガスを収集する。
【0027】
積層体7を構成するガス分離膜2は、多孔体からなる第2多孔層(保護層)を1層又は2層以上有していてもよい。第2多孔層は、例えば、ガス分離膜2と供給側のガス流路を形成する流路部材3との間に配置される。また、積層体7は、多孔体からなる第3多孔層(補強支持層)を1層又は2層以上有していてもよい。第3多孔層は、例えば、ガス分離膜2と透過側のガス流路を形成する流路部材4との間に配置される。
【0028】
(2)分離膜−流路部材複合体
巻回体を構成する積層体7は、分離膜−流路部材複合体(膜リーフ)を含む。分離膜−流路部材複合体とは、二つ折りにされたガス分離膜2と、この二つ折りにされたガス分離膜2に挟み込まれた流路部材とで構成される。二つ折りにされたガス分離膜2に挟まれる流路部材は、例えば、供給側のガス流路を形成する流路部材3であるが、透過側のガス流路を形成する流路部材4であってもよい。スパイラル型ガス分離膜エレメントにおいて、分離膜−流路部材複合体は通常、供給側のガス流路を形成する流路部材3を含む。
二つ折りにされたガス分離膜2に挟まれる流路部材が供給側のガス流路を形成する流路部材3である場合、ガス分離膜2は、第1多孔層を外側にして、すなわち、第1多孔層を親水性樹脂組成物層よりも外側にして二つ折りにされる。
なお、ガス分離膜エレメントのタイプ等によっては、ガス分離膜2は、親水性樹脂組成物層を第1多孔層よりも外側にして二つ折りにされることもある。
【0029】
(3)ガス分離膜2
分離膜−流路部材複合体を構成するガス分離膜2は、多孔体からなる第1多孔層と親水性樹脂組成物層とを含む。
供給側のガス流路を形成する流路部材3を流れる原料ガスに含まれる特定のガスを分離して透過させるために、親水性樹脂組成物層は、該特定のガスに対して選択透過性を有する。ガス分離膜2は、ガス分子の膜への溶解性と膜中での拡散性との差を利用した溶解・拡散機構に基づいて特定のガスに対する選択透過性を有することができる。ガス分離膜2は、好ましくは、溶解・拡散機構に加えて、特定のガスとキャリアとの反応生成物を形成して該特定のガスの透過を促進する促進輸送機構に基づく選択透過性を有する。これにより、特定のガスに対するより高い選択透過性を実現することができる。促進輸送機構に基づく選択透過性は、ガス分離膜2に含まれる親水性樹脂組成物層に特定のガスと可逆的に反応し得るキャリアを含有させることにより付与することができる。
【0030】
親水性樹脂組成物層は、ガス分離膜2において特定のガスに対して選択透過性を示し、該特定のガスを透過させる機能を有する。
特定のガスが酸性ガスのCOである場合、親水性樹脂組成物層は、原料ガス中のCOと可逆的に反応し得るCOキャリアを含むことが好ましく、原料ガス中のCOと可逆的に反応し得るCOキャリアと、該COキャリア及び水分を保持する媒体となる親水性樹脂とを含む親水性樹脂組成物を含むゲル状の薄膜であることがより好ましい。
【0031】
親水性樹脂組成物層の厚みは、ガス分離膜2に必要な分離性能によって適宜選択すればよいが、通常、0.1μm以上600μm以下の範囲であることが好ましく、0.5μm以上400μm以下の範囲であることがより好ましく、1μm以上200μm以下の範囲であることがさらに好ましい。
【0032】
親水性樹脂組成物層に含まれる親水性樹脂としては、例えば、ガス分離膜2において選択透過性を示す特定のガスが酸性ガスのCOである場合、COとCOキャリアとの可逆反応には水分が必要となるため、水酸基やイオン交換基等の親水性基を有することが好ましい。親水性樹脂は、分子鎖同士が架橋により網目構造を有することで高い保水性を示す架橋型親水性樹脂を含むことがより好ましい。特定のガスがガス分離膜2を透過するための推進力として圧力差が印加されるため、ガス分離膜2に要求される耐圧強度の観点からも、架橋型親水性樹脂を含む親水性樹脂を用いることが好ましい。
また、酸性ガス(CO等)と酸性ガスキャリア(COキャリア等)との可逆反応を効率的に起こさせるために、原料ガスは、水蒸気を含むことが好ましい。
【0033】
親水性樹脂を形成する重合体は、例えば、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、脂肪酸のビニルエステル、又はそれらの誘導体に由来する構造単位を有していることが好ましい。このような親水性を示す重合体としては、アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、メタクリル酸、酢酸ビニル等の単量体を重合してなる重合体が挙げられ、具体的には、イオン交換基としてカルボキシル基を有するポリアクリル酸系樹脂、ポリイタコン酸系樹脂、ポリクロトン酸系樹脂、ポリメタクリル酸系樹脂等、水酸基を有するポリビニルアルコール系樹脂等、それらの共重合体であるアクリル酸−ビニルアルコール共重合体系樹脂、アクリル酸−メタクリル酸共重合体系樹脂、アクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体系樹脂、メタクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体系樹脂等が挙げられる。この中でも、アクリル酸の重合体であるポリアクリル酸系樹脂、メタクリル酸の重合体であるポリメタクリル酸系樹脂、酢酸ビニルの重合体を加水分解したポリビニルアルコール系樹脂、アクリル酸メチルと酢酸ビニルとの共重合体を鹸化したアクリル酸塩−ビニルアルコール共重合体系樹脂、アクリル酸とメタクリル酸との共重合体であるアクリル酸−メタクリル酸共重合体系樹脂がより好ましく、ポリアクリル酸、アクリル酸塩−ビニルアルコール共重合体系樹脂がさらに好ましい。
【0034】
架橋型親水性樹脂は、親水性を示す重合体を架橋剤と反応させて調製してもよいし、親水性を示す重合体の原料となる単量体と架橋性単量体とを共重合させて調製してもよい。架橋剤又は架橋性単量体としては特に限定されず、従来公知の架橋剤又は架橋性単量体を使用することができる。
【0035】
キャリアは、原料ガス中の特定のガスと可逆的に反応し得る物質である。キャリアを含有させることにより、原料ガス中の特定のガスを透過側のガス流路を形成する流路部材4に供給する親水性樹脂組成物層の機能を促進させることができる。キャリアは、親水性樹脂を含む親水性樹脂組成物層内に少なくとも一種存在し、親水性樹脂組成物層に存在する水に溶解した特定のガスと可逆的に反応することにより、特定のガスを選択的に透過させる。
キャリアとして機能する酸性ガスと可逆的に反応し得る物質の具体例としては、酸性ガスがCOの場合、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属重炭酸塩、アルカノールアミン(例えば、特許第2086581号公報等に記載)、及びアルカリ金属水酸化物(例えば、国際公開公報2016/024523号パンフレット等に記載)等が、酸性ガスが硫黄酸化物の場合、硫黄含有化合物、アルカリ金属のクエン酸塩、及び遷移金属錯体(例えば、特許第2879057号公報等に記載)等が、酸性ガスが窒素酸化物の場合、アルカリ金属亜硝酸塩、遷移金属錯体(例えば、特許第2879057号公報等に記載)等が挙げられる。
【0036】
親水性樹脂組成物層には、親水性樹脂、特定のガスと可逆的に反応し得るキャリアの他に、例えば酸性ガスの水和反応触媒や後述する界面活性剤等が添加剤として含まれていてもよい。酸性ガスの水和反応触媒の併用により、酸性ガスと酸性ガスと可逆的に反応し得るキャリアとの反応速度を向上させ得る。
酸性ガスの水和反応触媒としては、オキソ酸化合物を含むことが好ましく、14族元素、15族元素及び16族元素からなる群より選択される少なくとも1つの元素のオキソ酸化合物を含むことがより好ましく、亜テルル酸化合物、亜セレン酸化合物、亜ヒ酸化合物及びオルトケイ酸化合物からなる群より選択される少なくとも1つを含むことがさらに好ましい。
【0037】
ガス分離膜2は、第1多孔層を含む。第1多孔層は、親水性樹脂組成物層を透過したガス成分の拡散抵抗とならないように、ガス透過性の高い多孔性を有することが好ましい。第1多孔層は、1層構造でもよく2層以上の積層構造であってもよい。第1多孔層の部材は、ガス分離膜2の適用が想定される水素や尿素等を製造するプラントでのプロセス条件に応じた耐熱性を有することが好ましい。本明細書において「耐熱性」とは、第1多孔層等の部材をプロセス条件以上の温度条件下に2時間保存した後も熱収縮又は熱溶融による目視で確認し得るカールが生じないことなどの保存前の形態が維持されることを意味する。
【0038】
第1多孔層を構成する材料としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂;ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等の含フッ素樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、高分子量ポリエステル等のポリエステル樹脂;ポリスチレン(PS)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリスルホン(PSF)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、耐熱性ポリアミド、アラミド、ポリカーボネート等の樹脂材料;金属、ガラス、セラミックス等の無機材料;等が挙げられる。これらの中でも、フッ素含有樹脂、PPがより好ましい。
【0039】
第1多孔層の厚みは特に限定されないが、機械的強度の観点からは、通常、10μm以上3000μm以下の範囲が好ましく、10μm以上500μm以下の範囲がより好ましく、15μm以上150μm以下の範囲がさらに好ましい。第1多孔層の細孔の平均孔径は特に限定されないが、10μm以下が好ましく、0.005μm以上1.0μm以下の範囲がより好ましい。第1多孔層の空孔率は、5%以上99%以下の範囲が好ましく、30%以上90%以下の範囲がより好ましい。
【0040】
ガス分離膜2は、親水性樹脂組成物層における第1多孔層とは反対側の面上、例えば、親水性樹脂組成物層と供給側のガス流路を形成する流路部材3との間に設けられる第2多孔層を含むことができる。ガス分離膜エレメント1の製造時に巻回体が締め付けられると、親水性樹脂組成物層と供給側のガス流路を形成する流路部材3とが擦れ合うことがあるが、第2多孔層を設けることにより、親水性樹脂組成物層を保護し、上記擦れ合いにより損傷が生じることを抑制することができる。第2多孔層は、供給側のガス流路を形成する流路部材3との摩擦が少なく、ガス透過性が良好な材質であれば特に限定されないが、ガス分離膜2が使用される温度条件に応じた耐熱性を有する材料が好ましく、例えば第1多孔層を構成する材料として挙げた材料と同様の材料を好適に用いることができる。
第2多孔層としては、例えば、平均孔径が0.001μm以上10μm以下である多孔膜、不織布、織布、ネット等を適宜選択して用いることができる。第2多孔層は、1層構造でもよく2層以上の積層構造であってもよい。
【0041】
ガス分離膜2は、第1多孔層における親水性樹脂組成物層とは反対側の面上、例えば、第1多孔層と透過側のガス流路を形成する流路部材4との間に設けられる第3多孔層を含むことができる。第3多孔層を設けることにより、ガス分離膜2の製造に際し、塗工液を塗布する多孔膜として用いる第1多孔層に親水性樹脂組成物層を形成する工程において第1多孔層にかかる張力負荷に耐え得る強度を追加的に付与することができるとともに、ガス分離膜2を用いた原料ガスからの特定のガスの分離に際し、ガス分離膜2にかかる圧力負荷等に耐え得る強度を追加的に付与することができる。
【0042】
第3多孔層は、耐圧強度と耐延伸性とを有し、ガス透過性を有する構造及び材質であれば特に限定されないが、ガス分離膜2が使用される温度条件に応じた耐熱性を有する材料が好ましく、例えば、第1多孔層を構成する材料として挙げた材料と同様の材料を好適に用いることができる。
第3多孔層としては、例えば、平均孔径が0.001μm以上10μm以下である不織布、織布、ネット等を適宜選択して用いることができる。第3多孔層は、1層構造でもよく2層以上の積層構造であってもよい。
【0043】
(4)供給側のガス流路を形成する流路部材3
供給側のガス流路を形成する流路部材3は、原料ガスが供給される流路空間を形成するものであり、この流路空間によって原料ガスを巻回体の内部に導き、ガス分離膜2に原料ガスを供給する。
【0044】
供給側のガス流路を形成する流路部材3は、原料ガスの流路空間を形成する流路材としての機能と、原料ガスに乱流を生じさせてガス分離膜2の供給側面の表面更新を促進させつつ、供給される原料ガスの圧力損失をできるだけ小さくする機能とを備えていることが好ましい。この観点から、供給側のガス流路を形成する流路部材3は、網目形状(ネット状、メッシュ状等)を有することが好ましい。網目形状によって原料ガスの流路が変わることから、供給側のガス流路を形成する流路部材3における網目の単位格子の形状は、目的に応じて、例えば、正方形、長方形、菱形、平行四辺形等の形状から選択されることが好ましい。
【0045】
供給側のガス流路を形成する流路部材3を構成する材料としては、樹脂、及び金属、ガラス、セラミックス等の無機材料が挙げられる。供給側のガス流路を形成する流路部材3を構成する材料は、ガス分離膜2が使用される温度条件に応じた耐熱性を有することが好ましい。また、供給側のガス流路を形成する流路部材3を構成する材料は、原料ガスの流路空間を形成する流路材としての機能を維持する観点から、高い機械的強度(剛性)を有することが好ましい。
【0046】
耐熱性及び剛性の高い材料としては、例えば、PE、PP、PTFE、PS、PPS、PES、PEEK、PI、ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート(PCT)等の樹脂材料;金属、ガラス、セラミックス等の無機材料;樹脂材料と無機材料とを組み合わせた材料が挙げられる。
【0047】
供給側のガス流路を形成する流路部材3は、樹脂、金属及びガラスからなる群より選択される少なくとも1つの材料を含む不織布、織布又はネットからなる層を含むことが好ましく、PE、PP、PTFE、PS、PPS、PES、PEEK、PI、PCT、金属及びガラスからなる群より選択される少なくとも1つの材料を含む不織布、織布又はネットからなる層を含むことがより好ましい。
【0048】
供給側のガス流路を形成する流路部材3は、1層構造でもよく2層以上の積層構造であってもよい。例えば、上記不織布、織布又はネットからなる層を複数積層した構造であってもよい。
【0049】
供給側のガス流路を形成する流路部材3の厚み(複数積層した構造である場合にはそれらの総厚み)は、流通するガスの圧力損失及び機械的強度等の観点からは、10μm以上7500μm以下の範囲が好ましく、50μm以上5000μm以下の範囲がより好ましく、100μm以上2500μm以下の範囲がさらに好ましい。
【0050】
(5)透過側のガス流路を形成する流路部材4
透過側のガス流路を形成する流路部材4は、ガス分離膜2を透過した透過ガスが流れる流路空間を形成するものであり、この流路空間によって透過ガスを中心管5に導く。
透過側のガス流路を形成する流路部材4は、透過ガスの流路空間を形成する流路材としての機能と、透過ガスに乱流を生じさせてガス分離膜2の透過側面の表面更新を促進する機能とを備えていることが好ましい。この観点から、透過側のガス流路を形成する流路部材4は、網目形状(ネット状、メッシュ状等)を有することが好ましい。網目形状によって透過ガスの流路が変わることから、透過側のガス流路を形成する流路部材4における網目の単位格子の形状は、目的に応じて、例えば、正方形、長方形、菱形、平行四辺形等の形状から選択されることが好ましい。
【0051】
透過側のガス流路を形成する流路部材4を構成する材料は、特に限定されないが、ガス分離膜2が使用される温度条件に応じた耐熱性を有する材料が好ましく、例えば、第1多孔層を構成する材料として挙げた樹脂材料と同様の材料を好適に用いることができる。具体的には、PTFE、PES、PSF、PEEK、PI、金属が好ましく、PTFE、PPS、PEEK、金属がより好ましい。透過側のガス流路を形成する流路部材4は、1層構造でもよく2層以上の積層構造であってもよい。
【0052】
(6)中心管
中心管5は、ガス分離膜2を透過した透過ガスを収集して、ガス分離膜エレメント1から排出するための導管である。中心管5の材質は特に限定されないが、ガス分離膜2が使用される温度条件に応じた耐熱性を有する材料が好ましい。また、ガス分離膜2等が外周に複数回巻き付けられることによって巻回体が形成されることから、機械的強度を有する材料であることが好ましい。中心管5の材質としては、例えば、ステンレス等が好適に用いられる。中心管5の直径や長さ、肉厚は、ガス分離膜エレメント1の大きさ、積層体7中の分離膜−流路部材複合体の数、透過ガスの量、中心管5に要求される機械的強度等に応じて適宜設定される。
【0053】
中心管5は、巻回体が円筒状である場合には円管であることが好ましく、巻回体が角筒状である場合には角管であることが好ましい。
【0054】
中心管5は、図3に示すように、中心管5の外周面に、透過側のガス流路を形成する流路部材4の透過ガスの流路空間と中心管5内部の中空空間とを連通させる複数の孔30を有している。中心管5に設けられる孔30の数や孔30の大きさは、透過側のガス流路を形成する流路部材4から供給される透過ガスの量や中心管5に要求される機械的強度を考慮して決定される。中心管5に設けられる孔30は、中心管5の軸に平行な方向に亘って均一な間隔で形成されていてもよく、中心管5のいずれか一方の端部側に偏在していてもよい。
【0055】
(7)ガス分離膜エレメントによるガス分離
ガス分離膜モジュールMの原料ガス供給口11から原料ガスをハウジング内に導入されると、ハウジング内のガス分離膜エレメント1の供給側端部31から原料ガスが連続的に供給側のガス流路を形成する流路部材3に供給され(図3の矢印a)、供給側のガス流路を形成する流路部材3を流れる原料ガスに含まれる特定のガスがガス分離膜2を透過する。ガス分離膜2を透過した透過ガスは、透過側のガス流路を形成する流路部材4内を流れて孔30から中心管5に供給され、中心管5の排出口32から連続的に排出された後(図3の矢印b)、中心管5の内部と連通するガス分離膜モジュールMの透過ガス排出口22から排出される。一方、ガス分離膜2を透過しなかった非透過ガスは、ガス分離膜エレメント1の排出側端部33から連続的に排出された後(図3の矢印c)、排出側端部33と連通するガス分離膜モジュールMの非透過ガス排出口12から排出される。このようにして、原料ガスから特定のガスを分離することができる。
【0056】
<ガス分離方法>
上述のように、本発明に係るガス分離方法は、次の工程を含む。
ガス分離膜モジュールMの内部を昇圧する工程(昇圧工程)、
ガス分離膜モジュールMの内部を昇温する工程(昇温工程)、及び
ガス分離膜モジュールMの内部に原料ガスを供給する工程(原料ガス供給工程)。
本発明に係るガス分離方法は、昇圧工程、昇温工程及び原料ガス供給工程をこの順に含む。
【0057】
(1)昇圧工程
本工程は、ガス分離膜モジュールMの内部を昇圧する工程である。
ガス分離膜モジュールM内部の昇圧は、ガス分離膜モジュールMの内部、すなわち、ハウジングの内部に、ガスを供給することによって行う。
ガスは、例えば、原料ガス供給口11、非透過ガス排出口12等のガス分離膜モジュールMが有する開口から供給することができる。
ガスを供給する際、該ガスが供給されるガス分離膜モジュールMの内部は閉鎖系とすることが好ましい。閉鎖系を構築する方法としては、例えば、ガスが供給される開口以外の開口を閉じたり、該開口に通じるガスラインの弁を閉としたり、背圧弁を設けてこれを調整したりする方法が挙げられる。
【0058】
ガスとしては、原料ガス以外であれば特に制限はないが、不活性ガスであることが好ましい。不活性ガスは、ガス分離膜モジュールMやガス分離膜エレメント1(及びこれに含まれる親水性樹脂組成物層)に対して不活性であることが好ましい。上記ガスは、好ましくは窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等の希ガスであり、より好ましくは窒素ガスである。
ガス中の水分が凝縮することを防止する観点から、上記ガスは、水分を含まない又は水分率が十分に低い乾燥ガスであることが好ましい。
昇圧工程全体にわたって、ガス中の水分が凝縮することを防止する観点から、上記ガスは、水分圧が昇圧工程における最大飽和水蒸気圧よりも低いことが好ましく、昇圧工程における最小飽和水蒸気圧よりも低いことがより好ましい。
水分圧とは、昇圧工程において上記ガス中の水分が示す分圧を意味する。昇圧工程における最大飽和水蒸気圧は、例えば、昇圧工程中にガス分離膜モジュールMの内部の温度が変動する場合には、昇圧工程中の最大温度における飽和水蒸気圧である。昇圧工程における最小飽和水蒸気圧は、例えば、昇圧工程中にガス分離膜モジュールMの内部の温度が変動する場合には、昇圧工程中の最低温度における飽和水蒸気圧である。
昇圧工程全体にわたって、ガス中の水分が凝縮することを防止する観点から、上記ガスは、含水率が10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましい。
【0059】
良好な分離効率を得る観点から、本工程において昇圧されるガス分離膜モジュールMの内部は、ガス分離膜モジュールMの内部の供給側、すなわち、図1に示される供給側のガス流路8を含むことが好ましく、ガス分離膜モジュールMの供給側及び透過側のうち供給側のみであることがより好ましい。
ガス分離膜モジュールMの供給側のみを昇圧する態様においては、透過側の圧力が供給側の圧力よりも高くなる状態がなくなる。このことは、ガス分離膜エレメントを保護するうえで有利である。
【0060】
1つの実施形態において、良好な分離効率を得る観点から、ガス分離膜モジュールMの内部は、例えば0.3MPaG以上に昇圧される。この実施形態において、ガス分離膜モジュールMの内部は、好ましくは0.5MPaG以上に昇圧され、より好ましくは0.6MPaG以上に昇圧され、さらに好ましくは0.7MPaG以上に昇圧される。
また、他の実施形態において、良好な分離効率を得る観点から、ガス分離膜モジュールMの内部は、例えば運転圧力の25%以上まで昇圧される。この実施形態において、ガス分離膜モジュールMの内部は、好ましくは運転圧力の45%以上まで昇圧され、より好ましくは運転圧力の50%以上まで昇圧され、さらに好ましくは運転圧力の60%以上まで昇圧される。
運転圧力とは、後述する原料ガス供給工程において供給される原料ガスの圧力をいう。
昇圧工程における到達圧力が不十分であると、十分な分離効率を発揮できないことがあるか、又は上記ラボスケールでガス分離を実施するときと比較した場合の分離効率低下の抑制効果が十分でないことがある。
昇圧工程における到達圧力は、運転圧力と同等の圧力であってもよいし、運転圧力よりも高くてもよいし、運転圧力よりも低くてもよい。
昇圧工程における到達圧力は、通常は10MPaG以下とすることが好ましく、8MPaG以下とすることがより好ましい。
【0061】
良好な分離効率を得る観点から、上記圧力範囲まで昇圧した後、この圧力範囲を維持してもよい(例えば1分〜5時間)。昇圧工程を実施した後に減圧し、その後、次の昇温工程を実施してもよい。昇圧工程を実施した後に減圧し、その後、次の昇温工程を実施する場合においては、良好な分離効率を得る観点から、上記減圧を行った時の圧力は、大気圧よりも大きいことが好ましく、0.1MPaG以上であることがより好ましい。
【0062】
昇圧工程において、昇圧されるガス分離膜モジュールMの内部の温度は、通常、外気温以上であり、外気への放熱による温度変化に伴う圧力変動を抑制する観点から、好ましくは外気温又はそれと同等の温度である。
【0063】
(2)昇温工程
本工程は、昇圧工程の後に実施される、ガス分離膜モジュールMの内部を昇温する工程である。「昇温する」とは、昇圧工程における温度よりも高くすることを意味する。昇温工程は、ガス分離膜モジュールMの内部を閉鎖系にして実施してもよい。
ガス分離膜モジュールMの内部の昇温は、ガス分離膜モジュールMの外部や内部、ガス分離膜エレメント1の外部、又はこれらから選択される2以上の箇所に加熱部を設けることにより行うことができる。
加熱部としては、ジャケットヒータ、熱媒を流通させることによって加熱することができるジャケット又は配管、誘導加熱装置等が挙げられ、これらは単独で又は組み合わせて用いることができる。
良好な分離効率を得る観点から、ガス分離膜モジュールMの内部のうち、少なくとも昇圧工程において昇圧された箇所を昇温することが好ましい。
【0064】
1つの実施形態において、原料ガスが水蒸気を含む場合、良好な分離効率を得る観点から、ガス分離膜モジュールMの内部は、後述する原料ガスを供給する工程での原料ガスの露点を超える温度まで昇温する。これにより、原料ガス中の水分の凝縮を防止しつつ、十分な分離効率でガス分離を行うことができる。
また、他の実施形態において、良好な分離効率を得る観点から、ガス分離膜モジュールMの内部は、100℃以上に昇温されることが好ましく、105℃以上に昇温されることがより好ましく、110℃以上に昇温されることがさらに好ましい。昇温工程における到達温度が100℃未満であると、十分な分離効率を発揮できないことがあるか、又は上記ラボスケールでガス分離を実施する場合に対する分離効率低下の抑制効果が十分でないことがある。
ガス分離操作における設計温度を考慮して、昇温工程における到達温度は、通常は200℃以下とすることが好ましく、150℃以下とすることがより好ましい。
良好な分離効率を得る観点から、昇温工程におけるガス分離膜モジュールM内部の到達温度と昇圧工程におけるガス分離膜モジュールM内部の温度との差は、10℃以上であることが好ましく、30℃以上であることがより好ましく、60℃以上であることがさらに好ましい。
【0065】
良好な分離効率を得る観点から、上記温度範囲まで昇温した後、この温度範囲を維持してもよい(例えば1分〜50時間)。
【0066】
昇温工程において、昇温されるガス分離膜モジュールMの内部の圧力は特に制限されない。例えば、昇温工程を閉鎖系で実施する場合、昇温工程でのガス分離膜モジュールMの内部の圧力は、昇圧工程での到達圧力よりも高くなり得る。昇温工程を開放系で実施する場合など、昇温工程でのガス分離膜モジュールMの内部の圧力は、昇圧工程での到達圧力よりも低くてもよい。
【0067】
(3)原料ガス供給工程
本工程は、昇温工程の後に実施される、ガス分離膜モジュールMの内部に原料ガスを供給する工程である。原料ガスは、原料ガス供給口11からガス分離膜モジュールMの供給側に供給される。原料ガスの供給によりガス分離操作が開始される。
【0068】
ガス分離膜モジュールMの内部に供給される原料ガスは、調整器A(図1)によって温度、湿度、圧力が調整されていることが好ましい。上述のように、原料ガスに水蒸気を含ませることによって酸性ガス(CO等)と酸性ガスキャリア(COキャリア等)との可逆反応を促進させることができ、もって分離効率を高めることが可能となる。
【0069】
ガス分離膜モジュールMの内部に供給される原料ガスの温度及び原料ガス供給開始時におけるガス分離膜モジュールM内部の温度は、昇温工程におけるガス分離膜モジュールM内部の到達温度と同じか、又はそれ以上あるいはそれ以下であってよい。
1つの実施形態において、ガス分離膜モジュールMの内部に供給される原料ガスの温度及び原料ガス供給開始時におけるガス分離膜モジュールM内部の温度は、例えば100℃以上200℃以下であり、好ましくは110℃以上150℃以下である。
ガス分離膜モジュールMの内部に供給される原料ガスの圧力及び原料ガス供給開始時におけるガス分離膜モジュールM内部の圧力は、分離効率の観点から、好ましくは0.5MPaG以上10MPaG以下であり、より好ましくは0.6MPaG以上8MPaG以下であり、さらに好ましくは0.7MPaG以上8MPaG以下である。
【0070】
ガス分離膜モジュールMの内部に原料ガスを連続的に供給することにより、ガス分離操作を連続的に行うことができる。連続運転時におけるガス分離膜モジュールM内部の温度、圧力はそれぞれ、上記原料ガス供給開始時における温度、圧力と同様である。
原料ガス供給開始時からガス分離操作を停止するまでの間又はその間の一部において、ガス分離膜モジュールMの透過側に不活性ガス等から選択されるスイープガスを供給してもよい。スイープガスは、ガス分離膜エレメント1の中心管5内に供給することができる。
【0071】
ガス分離膜モジュールMの内部に原料ガスを連続的に供給することにより、ガス分離膜エレメント1に備わるガス分離膜2を透過した特定のガスが分離除去された、ガス分離膜2を透過しなかった非透過ガスは、連続的にガス分離膜モジュールMの非透過ガス排出口12から排出される。
この非透過ガスは、1つの実施形態において、該非透過ガスを精製する工程に供給される。非透過ガスを精製する工程としては、吸着法、物理吸収法、化学吸収法、蒸留法、深冷分離法等を利用した工程が挙げられる。
例えば、水素製造の場合、水蒸気改質にて合成されたHとCOとを含む合成ガスをガス分離膜モジュールMに供給する第1精製工程により、合成ガスに含まれるCOの一部を分離除去した粗精製水素ガス(非透過ガス)を得た後、該粗精製水素ガスを化学吸収法の利用による第2精製工程に供給することにより、該粗精製水素ガスに含まれるCOを分離除去し、精製された水素ガスを得ることができる。ガス分離膜モジュールMを用いた第1精製工程を含むCO分離によれば、第1精製工程を実施しないときと比較する場合、精製工程全体で必要な熱エネルギー消費量を低く抑えることができる。
【実施例】
【0072】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0073】
<比較例1>
(1)平膜形状のガス分離膜を含むガス分離装置の作製及び分離効率(分離選択性)の評価
親水性ポリマーとして国際公開第2014/157069号に記載の製造方法にて得たPVA(ポリビニルアルコール)/PAA(ポリアクリル酸)セシウム塩共重合体を2g、キャリアとして炭酸セシウムを4.67g、添加剤として炭酸セシウムに対して0.025倍のモル数の亜テルル酸塩を、水80gに添加し、攪拌混合して塗工液を調製した。
【0074】
得られた塗工液を、親水性PTFE多孔膜(住友電工ファインポリマー社製「WPW−020−80」、厚み:80μm、細孔径:0.2μm)と疎水性PTFE膜(住友電工ファインポリマー社製「フロロポアFP010」、厚み:60μm、細孔径:0.1μm)を2枚重ね合わせた層状多孔膜の親水性PTFE多孔膜側の面上に、アプリケータで塗布(塗布厚:500μm)した後、室温で自然乾燥させ、さらに、120℃で2時間乾燥させることによって親水性樹脂組成物層を形成して、ガス分離膜を得た。
【0075】
上記で得られたガス分離膜を用いて、図4に示される、平膜形状のガス分離膜を含むガス分離膜モジュール51を備えるガス分離装置を作製した。上記で得られたガス分離膜を5cm×5cmの大きさにカットした平膜サンプル50を、ステンレス製の流通式ガス透過セルにセットし、供給側室52と透過側室53との間にフッ素ゴム製Oリングをシール材として用いて固定して、ガス分離膜モジュール51とした。
なお、図4において図示していないが、ガス分離膜モジュール51及び原料ガスとスイープガスの温度を一定に維持するために、上記セルとガス分離膜モジュール51に供給する配管は、所定の温度に設定可能な恒温槽内に設置されている。
このガス分離装置を用いて下記の手順によりガス分離操作を実施して、COパーミアンスとHパーミアンスとの比(CO/H)を測定した。
【0076】
〔a〕ガス分離膜モジュール51を備えたガス分離装置を作製した後、ガス分離膜モジュール51の供給側の原料ガス供給口から、ドライ窒素ガスを12時間供給して、平膜サンプル50を乾燥状態とした。
その後、恒温槽により、上記セルを120℃まで昇温した。
〔b〕次に、原料ガス(CO:23.6%、H:35.4%、HO:41.0%)を120℃に加熱し、この加熱された原料ガスを0.0347mol/minの流量でガス分離膜モジュール51の供給側に供給した。その後、120℃に加熱されたスイープガス(Ar:20%、HO:80%)を、0.00777mol/minの流量でガス分離膜モジュール51の透過側に供給した。HOは、定量送液ポンプ58及び60で送液し、加熱して蒸発させて、HOが上記混合比率及び流量となるように調整した。
ガス分離膜モジュール51の供給側の圧力は、原料ガスの供給によって初めて昇圧され、非透過ガスの排出路の途中の冷却トラップ54の下流側に設けられた背圧調整器55によって500kPaGに調整した。また、冷却トラップ56とガスクロマトグラフ57との間にも背圧調整器59が設けられており、これによって透過側の圧力を大気圧に調整した。
〔c〕原料ガスの供給開始から3時間後において、透過側から排出されたスイープガス中の水蒸気を冷却トラップ56で除去した後の透過ガスをガスクロマトグラフ57で分析し、透過ガスに含まれるCO及びHのパーミアンス(mol/ms kPa)を算出し、COパーミアンスとHパーミアンスとの比(CO/H)を求めた。以下、このパーミアンスの比を「パーミアンス比H0」という。
【0077】
(2)ガス分離膜エレメントを含むガス分離装置の作製及び分離効率(分離選択性)の評価
上記(1)で使用したガス分離膜と同じガス分離膜を用いてスパイラル型のガス分離膜エレメントを作製した。ガス分離膜エレメントの作製に用いた部材の詳細は以下のとおりである。
・供給側のガス流路を形成する流路部材:
PPSネット(50×50mesh)(ダイオ化成(株)製「50−150PPS」)
・透過側のガス流路を形成する流路部材:
PPSネット3層(50×50mesh/60×40mesh/50×50mesh)(ダイオ化成(株)製「50−150PPS」及び「60(40)−150PPS」)
・中心管:
外径1インチのステンレス製、直径3mmの孔が中心管の外周に合計20個形成されたもの。孔は、中心管の軸に平行な方向に2列形成されており、積層体が巻回される中心管の軸に平行な方向の範囲に亘って均一な間隔となるように25.4mmのピッチで、1列あたり10個の孔が形成されている。2つの列は、中心管の軸を挟んで対向する位置に設けられている。
【0078】
接着剤を用い、中心管に1層目の透過側のガス流路を形成する流路部材の一端を固定した。上記で得られた分離膜−流路部材複合体の一方の面において、中心管の軸に平行な方向の両端部、及び、中心管の軸に対して直交する方向の両端に位置する端部のうち中心管から遠い側の端部に沿って帯状に接着剤を塗布し、この塗布面が透過側のガス流路を形成する流路部材と対向するように、上記1層目の透過側のガス流路を形成する流路部材に、1層目の分離膜−流路部材複合体を積層した。分離膜−流路部材複合体は、中心管から離間するように積層した。
続いて、1層目の分離膜−流路部材複合体の露出面に上記と同様に帯状に接着剤を塗布した後、2層目の透過側のガス流路を形成する流路部材を積層した。
【0079】
2層目の分離膜−流路部材複合体についても、1層目の分離膜−流路部材複合体と同様にして2層目の透過側のガス流路を形成する流路部材に積層した。このとき、2層目の分離膜−流路部材複合体の積層位置は、2層目の透過側のガス流路を形成する流路部材よりも中心管から離間した位置となるようにした。
【0080】
その後、積層体に含まれる各透過側のガス流路を形成する流路部材における分離膜−流路部材複合体が積層されていない中心管の軸に平行な方向の両端部と中心管の軸に対して直交する方向の両端に位置する端部のうち中心管から遠い側の端部、及び最上面の分離膜−流路部材複合体における中心管の軸に平行な方向の両端部に接着剤を塗布し、中心管に積層体を巻き付けて巻回体とし、外周テープとして耐熱テープを巻回体の外周に巻き付けた。その後、巻回体の軸に平行な方向の巻回体の両端部を切断し、その両端部の切断面に接してテレスコープ防止板を取り付け、巻回体の最外周にガラスファイバーにエポキシ樹脂を含浸した繊維強化樹脂でアウターラップ(補強層)を形成することで、ガス分離膜エレメント70を得た。得られたガス分離膜エレメント70の直径は4インチ(約10cm)、長さは15インチ(約38cm)であった。
【0081】
得られた1個のガス分離膜エレメント70をステンレス製のハウジング71に収容してガス分離膜モジュール72とした。このガス分離膜モジュール72を用いて、図5に示されるガス分離装置を作製した。図5に示されるように、ガス分離膜モジュール72内において、ガス分離膜エレメント70とハウジング71との間の隙間は、ハウジング71内に供給されたガスがガス分離膜エレメント70内に供給されるよう、シール材73によって封止されている。
得られたガス分離膜エレメントを含むガス分離装置を用いて下記の手順によりガス分離操作を実施して、COパーミアンスとHパーミアンスとの比(CO/H)を測定した。
【0082】
〔a〕ガス分離膜モジュール72の原料ガス供給口から、ドライ窒素ガスを12時間供給して、ガス分離膜エレメント70のガス分離膜を乾燥状態とした。その後、ガス分離膜モジュール72の外面に付設されたスチーム管により、ガス分離膜モジュール72の供給側を120℃まで昇温した。
〔b〕次に、供給側の温度を上記温度で120分間維持した後、1.5MPaG、120℃の原料ガス(CO:25.0%、H:67.4%、HO:7.6%)を10Nm/hの流量でガス分離膜モジュール72の原料ガス供給口からガス分離膜モジュール72の供給側に供給した。原料ガスの流量は、非透過ガスの排出路の途中であって冷却トラップ75の上流側に設けられた背圧調整器74にて調整した。ガス分離膜モジュール72の供給側の圧力は、原料ガスの供給によって初めて昇圧され、1.5MPaGとなる。透過側の圧力は、背圧調整器76により大気圧に調整した。
〔c〕原料ガスの供給開始から3時間後において、ガス分離膜モジュール72の透過ガス排出口から排出された透過ガス中の水蒸気を冷却トラップ77で除去した後の透過ガスをガスクロマトグラフ78で分析し、透過ガスに含まれるCO及びHのパーミアンス(mol/ms kPa)を算出し、COパーミアンスとHパーミアンスとの比(CO/H)を求めた。以下、このパーミアンスの比を「パーミアンス比H1」という。
【0083】
パーミアンス比H0に対するパーミアンス比H1の比(H1/H0)は、0.05より小さい値であった。
【0084】
<実施例1>
(1)平膜形状のガス分離膜を含むガス分離装置の作製及び分離効率(分離選択性)の評価
親水性ポリマーとして架橋ポリアクリル酸(住友精化(株)製「アクペックHV−501」)4g及びポリアクリル酸(住友精化社製「アクパーナAP−40F」、40%Na鹸化)0.8g、水酸化セシウム一水和物10.5gを、水188gに添加し、撹拌しながら中和反応を行った。中和反応終了後、炭酸セシウム10g、界面活性剤(AGCセイミケミカル(株)製「サーフロンS−242」)1.2gを加えて混合し、塗工液を調製した。
得られた塗工液を、第1多孔層となる疎水性PTFE多孔膜(住友電工ファインポリマー社製「ポアフロンHP−010−50」、厚み:50μm、細孔径:0.1μm)に塗布した後、温度120℃程度で5分間乾燥させて塗膜を形成した。さらに、塗工液の塗布と乾燥とを複数回繰り返すことによって第1多孔層上に親水性樹脂組成物層を形成して、ガス分離膜を得た。
上記で得られたガス分離膜を用いて、比較例1の(1)と同様にして平膜サンプル50を作製し、図4に示される、平膜形状のガス分離膜を含むガス分離膜モジュール51を備えるガス分離装置を作製した。このガス分離装置を用いて下記の手順によりガス分離操作を実施して、COパーミアンスとHパーミアンスとの比(CO/H)を測定した。
【0085】
〔a〕ガス分離膜モジュール51を備えたガス分離装置を作製した後、ガス分離膜モジュール51の供給側の原料ガス供給口から、ドライ窒素ガスを12時間供給して、平膜サンプル50を乾燥状態とした。
その後、供給側の非透過ガス排出口を閉とし、ガス分離膜モジュール51の供給側に23℃のドライ窒素ガスを供給して、供給側の圧力を350kPaGまで昇圧した後、ドライ窒素ガスを停止し、350kPaGで張り止めとした。透過側の圧力は、大気圧に調整した。
〔b〕供給側の圧力を上記圧力値で120分間維持した後、恒温槽により、上記セルを120℃まで昇温した。ガス分離膜モジュール51の供給側の圧力は、500kPaGであった。
〔c〕次に、供給側の温度を上記温度で120分間維持した後、原料ガス(CO:23.6%、H:35.4%、HO:41.0%)を120℃に加熱し、この加熱された原料ガスを0.0347mol/minの流量でガス分離膜モジュール51の供給側に供給するとともに、120℃に加熱されたスイープガス(Ar:20%、HO:80%)を、0.00777mol/minの流量でガス分離膜モジュール51の透過側に供給した。ガス分離膜モジュール51の供給側の圧力は、非透過ガスの排出路の途中の冷却トラップ54の下流側に設けられた背圧調整器55によって調整され、500kPaGである。HOは、定量送液ポンプ58及び60でそれぞれ送入し、加熱して蒸発させて、HOが上記混合比率及び流量となるように調整した。また、背圧調整器59によって透過側の圧力を大気圧に調整した。
〔d〕原料ガスの供給開始から3時間後において、透過側から排出されたスイープガス中の水蒸気を冷却トラップ56で除去した後の透過ガスをガスクロマトグラフ57で分析し、透過ガスに含まれるCO及びHのパーミアンス(mol/ms kPa)を算出し、COパーミアンスとHパーミアンスとの比(CO/H)を求めた。以下、このパーミアンスの比を「パーミアンス比A0」という。
【0086】
(2)ガス分離膜エレメントを含むガス分離装置の作製及び分離効率(分離選択性)の評価
上記(1)で使用したガス分離膜と同じガス分離膜を用いてスパイラル型のガス分離膜エレメント70を作製した。スパイラル型のガス分離膜エレメント70は、該ガス分離膜を用いたこと以外は比較例1の(2)と同様にして作製した。
このガス分離膜エレメント70を用いて、比較例1の(2)と同様にしてガス分離膜モジュール72を作製し、ついで図5に示されるガス分離装置を作製した。
得られたガス分離膜エレメント70を含むガス分離装置を用いて下記の手順によりガス分離操作を実施して、COパーミアンスとHパーミアンスとの比(CO/H)を測定した。
【0087】
〔a〕ガス分離膜モジュール72の原料ガス供給口から、温度23℃のドライ窒素ガスを12時間供給して、ガス分離膜エレメント70のガス分離膜を乾燥状態とした。その後、非透過ガス排出口を閉とし、ガス分離膜モジュール72の原料ガス供給口から、ガス分離膜モジュール72の供給側に23℃の乾燥窒素ガスを供給して、供給側の圧力を1.1MPaGまで昇圧した後、ドライ窒素ガスの供給を停止し、張り止めとした。ガス分離膜モジュール72の供給側の温度は、ドライ窒素ガスの温度と同じである。透過側の圧力は、大気圧に調整した。
〔b〕供給側の圧力を上記圧力値で120分間維持した後、ガス分離膜モジュール72の外面に付設されたスチーム管により、ガス分離膜モジュール72の供給側を120℃まで昇温した。昇温後のガス分離膜モジュール72の供給側の圧力は、1.5MPaGであった。
〔c〕次に、供給側の温度を上記温度で120分間維持した後、1.5MPaG、120℃の原料ガス(CO:25.0%、H:67.4%、HO:7.6%)を10Nm/hの流量でガス分離膜モジュール72の供給側に供給した。原料ガスの流量は、非透過ガスの排出路の途中であって冷却トラップ75の上流側に設けられた背圧調整器74にて調整した。ガス分離膜モジュール72に供給される原料ガスの供給側の圧力は、1.5MPaGに調整されている。透過側の圧力は、背圧調整器76により大気圧に調整した。
〔d〕原料ガスの供給開始から3時間後において、ガス分離膜モジュール72の透過ガス排出口から排出された透過ガス中の水蒸気を冷却トラップ77で除去した後の透過ガスをガスクロマトグラフ78で分析し、透過ガスに含まれるCO及びHのパーミアンス(mol/ms kPa)を算出し、COパーミアンスとHパーミアンスとの比(CO/H)を求めた。以下、このパーミアンスの比を「パーミアンス比A1」という。
【0088】
パーミアンス比A0に対するパーミアンス比A1の比(A1/A0)は、0.1より大きい値であった。
【符号の説明】
【0089】
1 スパイラル型ガス分離膜エレメント(ガス分離膜エレメント)、2 ガス分離膜、3 供給側のガス流路を形成する流路部材、4 透過側のガス流路を形成する流路部材、5 中心管、7 積層体、8 供給側のガス流路、9 透過側のガス流路、11 原料ガス供給口、12 非透過ガス排出口、22 透過ガス排出口、30 孔、31 ガス分離膜エレメントの供給側端部、32 中心管の排出口、33 ガス分離膜エレメントの排出側端部、A 調整器、B 背圧調整器、M ガス分離膜モジュール、50 平膜サンプル(ガス分離膜)、51 ガス分離膜モジュール、52 供給側室、53 透過側室、54 冷却トラップ、55 背圧調整器、56 冷却トラップ、57 ガスクロマトグラフ、58 定量送液ポンプ、59 背圧調整器、60 定量送液ポンプ、70 ガス分離膜エレメント、71 ハウジング、72 ガス分離膜モジュール、73 シール材、74 背圧調整器、75 冷却トラップ、76 背圧調整器、77 冷却トラップ、78 ガスクロマトグラフ。
図1
図2
図3
図4
図5