【実施例】
【0039】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0040】
〔実施例1:培養上清中でWnt3aと複合体を形成する蛋白質の同定〕
1.L−3a細胞
マウスWnt3aを安定発現するL細胞(L−3a)は、岡崎統合バイオサイエンスセンターの高田慎治教授らが樹立したもの(Shibamoto et al., Genes to Cells, 3, 659 (1998))を同教授より供与いただいた。
【0041】
2.W−Wnt3a/HEK細胞
アフィニティータグ付きマウスWnt3a(以下「W−Wnt3a」という)の構造を
図1に示した。
図1に示したように、W−Wnt3aは、マウスWnt3aの成熟蛋白質部分(Genbank ACCESSION P27467の19-352残基、配列番号4)のN末端側に、配列番号5で示される配列が付加されている。配列番号5で示される配列には、ヒトプロラクチンのシグナル配列(配列番号6)、21残基のターゲットタグ配列(配列番号7)および11残基のeTEV配列(配列番号8)が含まれる。ヒトプロラクチンのシグナル配列とターゲットタグ配列との間のGRGは、クローニング用の制限酵素サイト(NotI)を挿入したことで生じた人工配列である。すなわち、ヒトプロラクチンのシグナル配列をコードするDNA、ターゲットタグ配列をコードするDNA、eTEV配列をコードするDNA、マウスWnt3aの成熟蛋白質部分をコードするDNAをつないでW−Wnt3aのコンストラクト作製し、これを発現ベクターpEBmulti−Hyg(和光純薬工業)に組み込んだ。
【0042】
W−Wnt3a安定発現細胞株は以下のように作製した。
1)トランスフェクション前日にHEK293S_GnT1−細胞(G.Khorana博士より供与)を10cmディッシュに播いて一晩培養(37℃、5%CO
2)した。
2)翌日、50〜60%コンフルエントになった細胞に、W−Wnt3a発現ベクターをトランスフェクションした。すなわち、プラスミドDNAおよびトランスフェクション試薬(X-tremeGENE HP、Roche)を添加した。プラスミドDNA:Xtreme=1:3の割合になるよう混合し、細胞に添加した。ネガティブコントロールとして、ハイグロマイシン耐性を持たない空のベクターを用いて別のディッシュに同様に添加した。
3)トランスフェクションの翌日に培地を除き、選択抗生物質として0.2mg/mlのハイグロマイシンB(gibco, 10687-010)を含む培地に交換した。
4)3〜5日ごとに新しい培地(ハイグロマイシン含む)に交換し、細胞の増殖が良好になるのを待った。ネガティブコントロールの細胞はトランスフェクション6日後に全て死滅した。
5)トランスフェクションから23日後、増殖が良好な細胞の培養上清中を、抗Wnt3a抗体(岡崎統合バイオ高田教授より供与)を用いたウエスタンブロッティングに供し、Wnt3aの発現を確認した。
【0043】
3.細胞培養方法
(3−1)L−3aの培養
培地にはDMEM/F12_1:1(gibco, 11320-033)を使用した。添加物として10%(v/v)ウシ胎児血清(Fetal Calf Serum, FCS)、0.5%ペニシリン−ストレプトマイシン(SIGMA,P4458)、1.4g/L D−グルコースを加えた。細胞の維持・継代方法は、3〜4日ごとに細胞を20倍程度に希釈した。
【0044】
(3−2)W−Wnt3a/HEKの培養
培地にはDMEM(WAKO, 043-30085)を使用した。添加物として10%(v/v)FCS、0.5%ペニシリン−ストレプトマイシン(SIGMA, P4458)、1%NEAA(SIGMA, M7145)、選択抗生物質として0.2mg/mlハイグロマイシンB(gibco, 10687-010)を加えた。細胞の維持・継代方法は、3〜4日ごとに細胞を10〜20倍程度に希釈した。
【0045】
4.ウエスタンブロッティング
ウエスタンブロッティングは以下のプロトコールで行った。
培養上清の希釈については次の「5.培養上清のTCFレポーターアッセイ」に記述している。
1)培養上清5μlを電気泳動(SDS−PAGE)し、PVDF膜に転写した。
2)PVDF膜をブロッキングした後、一次抗体(5μg/ml biotin-anti_Wnt3a抗体/TBST)で2時間染色した。一次抗体には、精製した抗Wnt3a抗体をビオチン化試薬(PIERCE, EZ-Link NHS-Lc-Biotin)で標識したものを用いた。TBSTの組成は、20mM Tris−HCl、150mM NaCl、0.05% Tween20、pH8.0である。
3)二次抗体(0.4μg/ml Streptavidin-HRP/TBST)で1時間染色した。
4)ウエスタンブロッティング検出試薬(GE, ECLprime)により化学発光させ、撮影(GE, LAS4000mini)した。
【0046】
ウエスタンブロッティングの結果を
図2に示した。
図2に示したようにどちらの細胞においても上清中に分泌されたWnt3a蛋白質の存在が確認できた。希釈系列の結果から、樹立した安定発現株(W−Wnt3a/HEK)は、世界的な標準であるL−3a細胞と同程度なWnt3a産生能を持っていることがわかった。ただし、N末端のタグ配列のため、L−3a細胞が分泌する野生型Wnt3a蛋白質と比べて若干分子量の大きいものが産生されていることが確認できた。
【0047】
5.培養上清のTCFレポーターアッセイ
TCFレポーターアッセイは次の手順で行なった。
(5−1)レポーター遺伝子のトランスフェクション
TOPflashプラスミド(TCF結合領域を含むホタルルシフェラーゼレポータープラスミド)をHEK293T細胞にトランスフェクションした。この時トランスフェクション効率の影響を考慮して標準化するために、Renillaプラスミド(ウミシイタケルシフェラーゼレポータープラスミド)を重トランスフェクションした。実際には1ウエル当たり50ngのTOP_DNAと5ngのRenilla_DNAを混合し、24wellプレートに培養したHEK293T細胞にトランスフェクションを行った。トランスフェクション試薬には前述のX−tremeGENE HP(Roche)をDNA:Xtreme=1:3の割合になるよう混合して使用した。
【0048】
(5−2)Wnt3a発現上清の添加
トランスフェクションの翌日、培地を静かに除きWnt3a発現上清と交換した。Wnt3a発現上清は、Wnt3a安定発現株を3〜4日間培養し、80〜90%コンフルエントになった培地を回収し、遠心分離により得られた上清である。Wnt3a発現上清の希釈にはHEK293Tの培養上清(コンディションメディウム)を用いた。
【0049】
(5−3)シグナルの検出
シグナル検出試薬には、Dual−Luciferase Reporter Assey System(Promega)を使用した。Wnt3a発現上清を添加した翌日、細胞が剥がれないよう培養上清を静かに除きPhosphate buffered saline(PBS)500μlで培養容器を洗浄し、キットに添付されているpassive lysis buffer(×1)100μlで細胞を溶解した。細胞溶解液を遠心分離し、上清8μlを96wellホワイトプレート(NUNC, 236105)にアプライした。添付のLuciferase Assay Reagent II40μlと反応させ、速やかにホタルルシフェラーゼ(firefly)の発光をプレートリーダーで測定した。測定後、添付のStop&Gro Reagent(×1)40μlを加えて、速やかにホタルルシフェラーゼによる発光を消光させ、ウミシイタケルシフェラーゼ(renilla)の発光を測定した。活性の値は次の式で計算した。
Activity =(firefly/renilla)−(firefly(BG)/renilla(BG))
【0050】
TCFレポーターアッセイの結果を
図3に示した。
図3に示したように、どちらの培養上清も同様な濃度依存性でWntシグナル活性を示した。この結果から、N末端にタグを付加したWnt3a(W−Wnt3a)は、タグを付加していない野生型のWnt3aと同様の生物活性を持つことが確認できた。
【0051】
6.アフィニティータグシステムを用いたW−Wnt3aの精製
W−Wnt3a安定発現株(W−Wnt3a/HEK)をディッシュまたは多層フラスコなどで5〜7日間培養し、培地を回収した。遠心分離後フィルター(0.22μm)を通した。集めた培養上清220mlに3mlのP20.1抗体セファロースを加え、4℃で3時間回転混和した後、培地を空のカラムに通してセファロースを集めた。なお、P20.1抗体は上記ターゲットタグ配列を特異的に認識する抗体であり、受託番号FERM BP−11061として国際寄託されているマウス−マウス ハイブリドーマP20.1によって産生されるモノクローナル抗体である(国際公開WO2009−096112号参照)。
カラムに集めたセファロースを3mlのTris buffered saline(20mM Tris-HCl, 150mM NaCl, pH7.5)で洗浄し洗浄液を回収した(washフラクション)。洗浄操作を5回繰り返し、wash1〜5のフラクションを得た。次いで、1回あたり3mlのペプチド溶液(0.2mg/ml PAR4-C8 peptide/TBS)を用いて溶出し溶出液を回収した(eluteフラクション)。溶出操作を10回繰り返し、elute1〜10のフラクションを得た。wash1〜5およびelute1〜10からそれぞれ10μlを取り、非還元状態で電気泳動(SDS−PAGE)に供し、泳動後のゲルをクマシーブリリアントブルー(CBB)で染色した。
【0052】
電気泳動の結果を
図4に示した。
図4に示したように、washフラクションには培地の血清由来の蛋白質が大量に混入していたが、5回の洗浄によってほぼ非特異的なバンドは消え、続いてeluteフラクションからは37kDaのWnt3aが特異的に精製されてきた。そしてこのとき、Wntとともに分子量約65kDaの正体不明の蛋白質(protein X)も同時に溶出されてきた。
【0053】
7.精製蛋白質のN末端アミノ酸配列解析
上記で得られたeluteフラクションを濃縮し、37kDaおよび65kDaのバンドそれぞれについてN末端アミノ酸配列をエドマン法によって決定したところ、以下の配列が得られた。
37kDa:GRGYPGQYPG(配列番号9)
65kDa:LPTQPQDVDD(配列番号10)
前者はシグナル配列切断後のターゲットタグおよびベクター由来の配列を含む部分(
図1の下線部)に一致することから、予想通りW−Wnt3aであることが確認できた。後者についてはデータベース検索の結果、ウシ血清蛋白質であるアファミンの成熟型の予想N末端配列(GenBank ACCESSION NP_001179104, afamin precursor [Bos taurus] の第22位〜第31位)と100%一致し、分子量もほぼ一致したことから、ウシアファミンであることが強く疑われた。
【0054】
8.ペプチドマスフィンガープリント(PMF)解析によるウシアファミンの同定
N末端配列分析の結果を確かめるため、protein XをPMF解析(プロテアーゼ消化と質量分析を組み合わせた解析法)に供した。PMF解析は、島津テクノリサーチ社に委託して実施した。その結果、ウシアファミン(GenBank ACCESSION NP_001179104, afamin precursor [Bos taurus])に対してきわめて高い信頼度(Mascotスコア:311)で一致し、最終的にprotein Xがウシのアファミンであると結論した。アファミンはアルブミンファミリーに属する分子量約6万6千の糖タンパク質で、ヒト血清中に約30μg/mlの濃度で存在する(Lichenstein et al. J. Biol. Chem. 269, 18149 (1994))。血清アルブミン同様、様々な脂質、中でもビタミンEに結合することが報告されているが(Jerkovic et al. J. Proteome Res. 4, 889 (2005))、その生理的役割はわかっていない。protein Xはアフィニティータグ精製したWnt3a試料の中に常に存在していたため、Wnt3aと安定な複合体を形成していることが示唆された。発現に用いた細胞はヒト由来のHEK細胞であるため、ウシアファミンは培地に添加したウシ胎児血清由来であると考えざるを得ない。すなわちWnt3aは細胞から分泌される際に培地中のアファミンに結合し、そのまま複合体としてアフィニティー精製されてくるものと考えられた。
【0055】
〔実施例2:Wnt3aと組換えヒトアファミンとの複合体形成〕
Wnt蛋白質とアファミンの複合体はウシ血清中でのみ形成されるのか、あるいは他の因子の介在なしにWnt蛋白質にはアファミンと結合する能力があるかどうかを確認するために、組換えヒトアファミンを作製し、これを用いてWnt蛋白質との結合活性を調べた。
1.組換えヒトアファミンの作製
ヒトアファミン全長のcDNAはカナダのLaval UniversityのLuc Belanger博士より供与を受けた。C末端にPAタグ(Fujii et al, Protein Expr. Purif., 95, 240 (2014))を付加した発現コンストラクト(hAFM−PA)をライフテクノロジー社のExpi293システムを用いて一過性に発現させ、培養上清からNZ−1セファロースを用いて組換えヒトアファミンを一段階精製した。精製試料をPBSに溶解し、濾過滅菌した後、以下の実験に供した。
【0056】
2.組換えヒトアファミン添加によるWnt3aの発現実験
1)Wnt3a発現細胞(L3a、W−Wnt3a/HEK)を12wellプレートに播き、血清入りの培地で一晩インキュベートして細胞をプレートに接着させた。
2)翌日、静かに培地を除き、血清を含む培地(5%(v/v)FCS)または血清を含まない(0%FCS)培地に交換した。
3)血清を含まない培地に、精製した組換えヒトアファミンを濃度が0、5、10、20、30μg/mlになるよう添加した。
4)5日間培養した後、培養上清を電気泳動に供し、抗Wnt3a抗体によるウエスタンブロッティングを行った。
【0057】
ウエスタンブロッティングの結果を
図5に示した。
図5に示したように、Wnt3aは血清の非存在下では培地中に分泌されないが、そこに精製した組換えヒトアファミンを添加することにより、濃度依存的に分泌が促進されることが明らかになった。
【0058】
さらに、5%(v/v)FCSを含む培地または血清の代わりに組換えヒトアファミンを添加した培地でW−Wnt3a/HEKを培養した上清から、上記実施例1の「6.アフィニティータグシステムを用いたW−Wnt3aの精製」と同じ方法でW−Wnt3aを精製し、電気泳動に供した。
電気泳動の結果を
図6に示した。
図6に示したように、組換えヒトアファミンを添加した培地の培養上清では、ウシアファミンに代わってヒトアファミンがW−Wnt3aと複合体を形成した状態で精製された。
【0059】
〔実施例3:抗ウシアファミン抗体を用いたWnt3a−アファミン複合体の免疫沈降〕
1.組換えウシアファミンの作製
ウシアファミン全長のcDNAはGenBank ACCESSION NM_001192175 Bos taurus afamin (AFM), mRNA の配列を参考にDNA合成により作製した。これを元にヒトアファミンと同様、C末端にPAタグを付加した発現コンストラクト(bAFM−PA)をライフテクノロジー社のExpi293システムを用いて一過性に発現させ、培養上清からNZ−1セファロースを用いて組換えウシアファミンを一段階精製した。タグ部分をTEVプロテアーゼで切断除去した後、ゲル濾過精製して抗体作製のための抗原とした。
【0060】
2.抗ウシアファミンポリクローナルおよびモノクローナル抗体の作製
ポリクローナル抗血清はウサギを用いて定法により作製した。ネイティブなウシアファミンを認識するモノクローナル抗体は、Balb/CマウスとP3U1ミエローマ細胞を用いて定法により作製した。抗原コーティングプレートを用いたELISA法によってクローンをスクリーニングし、最終的に6クローンを樹立した。
【0061】
3.樹立したモノクローナル抗体によるウシ血清中アファミンの免疫沈降
樹立した6つのモノクローナル抗体(B11,B72,B91,B115,B212,B213)およびポリクローナルウサギ抗体について、CNBr−activated Sepharose 4B(GEヘルスケア)を用いて固定化レジンを作製し、これらと10%(v/v)ウシ胎児血清(FCS)を含む培地を4℃で1時間インキュベートした。TBSで洗浄後、SDSサンプルバッファーで溶出したものをSDS電気泳動に供した。
【0062】
電気泳動の結果を
図7に示した。
図7に示したように、ポリクローナル抗体以外では、B11、B91およびB212が血清から約70kDaのバンドを沈降させることができ、これらの抗体がウシアファミンをネイティブな状態で認識できることがわかった。
【0063】
4.抗ウシアファミンモノクローナル抗体を用いたWnt3a−アファミン複合体の免疫沈降
Wnt3a発現細胞(L−3aおよびW−Wnt3a/HEK)を3日間培養し、上清を回収した。この上清1mlに抗ウシアファミンモノクローナル抗体(クローンナンバーB91、以下「B91」という。)を固定化したセファロースを20μl加え、3時間回転混和した。遠心分離によりセファロースを沈殿させて上清を除き、1mlのTBSで3回セファロースを洗浄し、SDSサンプルバッファー30μlを加えて95℃で2分間加熱して試料を溶出した。溶出した試料の8μlを還元状態で電気泳動し、ORIOLEで染色した。また、別途溶出した試料の4μlを電気泳動に供し、抗Wnt3a抗体を用いたウエスタンブロッティングを行った(実施例1参照)。
【0064】
図8に電気泳動(左)およびウエスタンブロッティング(右)の結果を示した。
図8からわかるように、B91によって血清を含む培地からウシアファミンが沈降されること(電気泳動の矢印のバンド)、Wnt3a発現細胞の培養上清から同時にWnt3aが沈降されること(ウエスタンブロッティングのバンド)が示された。この結果から、アファミンはタグの有無にかかわらずWnt3aと複合体を形成し、このWnt3a−アファミン複合体を、B91を用いて精製できることが明らかになった。
【0065】
〔実施例4:Wnt3a−アファミン複合体のゲルろ過クロマトグラフィー〕
アファミンがWnt3aと1対1の安定な複合体を形成していることを確認するために、分子サイズに応じて蛋白質を分離するゲル濾過クロマトグラフィーを行った。またこのとき、界面活性剤CHAPS[3-(3-cholamidepropyl)dimethylammonio-1-propanesulphonate]の影響についても調べた。
【0066】
1.サンプル調製
W−Wnt3a安定発現株(W−Wnt3a/HEK)を培養し、培養上清1LからP20.1セファロースを用いて実施例1と同じ方法でW−Wnt3aを精製し、集めたフラクションを1mlに濃縮した。これをCHAPS(−)のサンプルとした。また、このサンプルに対し終濃度1%(w/v)となるようCHAPSを加えて1時間以上氷上で静置したものをCHAPS(+)のサンプルとした。
【0067】
2.ゲルろ過クロマトグラフィー
ゲルろ過にはAKTA FPLCクロマトグラフィーシステム(GEヘルスケア)を使用した。カラムはSuperdex200 10/300GLを用いた。バッファーには、CHAPS(−)の場合はPBS、CHAPS(+)の場合は終濃度1%(w/v)となるようCHAPSを加えたPBSを使用した。流速は0.5ml/minとし、250μlを1フラクションとして回収した。
【0068】
ゲルろ過クロマトグラフィーの結果を
図9に示した。
図9に示したように、高分子量に相当する排除体積部分(V
0)に大きいピークが見られたが、それに加えて13〜15mlの溶出位置にピークが見られた。分子量スタンダードの溶出位置から、CHAPS(−)サンプルのピークは約101kDa、CHAPS(+)サンプルのピークは約55kDaの分子量に相当することがわかった。
【0069】
3.ゲルろ過フラクションの分析
回収したゲルろ過フラクションのうち、
図10の上段に示した1〜16のフラクションからそれぞれ10μlを取り、非還元状態で電気泳動に供し、CBB染色、または抗Wnt3a抗体を用いたウエスタンブロッティング、または抗ウシアファミン抗体(ウサギ)を用いたウエスタンブロッティングを行った。ウエスタンブロッティングは、実施例1に記載の方法に従って実施した。ただし、ウシアファミンの検出には、実施例3で作製した抗ウシアファミンウサギポリクローナル抗体を一次抗体として27μg/ml/TBSTの濃度で使用し、二次抗体には0.4μg/mlのanti−rabbit−HRP/TBSTを使用した。
【0070】
結果を
図10に示した。
図10の左側パネルがCHAPS(−)サンプルの結果、右側パネルがCHAPS(+)サンプルの結果である。
図10に示したように、CHAPSの非存在下ではアファミンとWnt3aはフラクション10〜12にかけて現れる複合体として挙動しており、その予想分子量(101kDa)から、37kDaのWnt3aと66kDaのアファミンが1対1で結合していることが示唆された。Wnt3a蛋白質はフラクション1〜5にかけての高分子量領域にも存在していたが、それらのフラクションにはアファミンは存在せず、アファミンと複合体を形成したWnt3aだけが単分散した分子種として挙動することが示された。一方、CHAPS存在下のゲル濾過クロマトグラフィーにおいては、アファミンの溶出位置はCHAPS(−)条件とほとんど変化がなかったのに対し、Wnt3aは高分子量領域から単分散領域まで幅広く分布するようになり、アファミンと重なるピークは消滅した。
【0071】
以上の結果から、Wnt3aはアファミンと複合体を形成することで単分散の水溶性蛋白質として挙動するが、両者の相互作用はCHAPSなどの界面活性剤で破壊され、解離したWnt3aは多量体を形成しやすくなることが明らかになった。アファミンと結合していないWnt3aは、すでに報告されているようにリポプロテイン複合体に取り込まれ(Newmann et al., Traffic, 10, 334 (2009))、自身や他の蛋白質と共有結合、非共有結合を介した高分子凝集体を形成するものと考えられた。
【0072】
〔実施例5:アファミンと複合体を形成した状態でWnt3aは活性を持つ〕
市販のリコンビナントマウスWnt3a(High Purity)(R&Dシステムズ社、code:1324-WNP-010/CF)を購入し、Wnt3a蛋白質として使用した。Wnt3a−アファミン複合体は、実施例1でP20.1セファロースを用いて精製したものを使用した。これらのWnt3a蛋白質またはWnt3a−アファミン複合体を、Wnt3aの濃度が20μg/mlになるようPBSで希釈し、この溶液を「1倍希釈原液」として、1/3、1/10、1/30、1/100になるようさらにPBSで希釈した。これらの希釈液と新しい培地(10%(v/v)FCSを含むDMEM)を1:9の割合で混合し、前日にTOPflashプラスミドをトランスフェクションしておいたHEK293T細胞に添加した。TCFレポーターアッセイは、実施例1と同じ方法で実施した。
【0073】
TCFレポーターアッセイの結果を
図11に示した。
図11に示したように、Wnt3a−アファミン複合体は濃度依存的にTCFレポーターを活性化した。この結果から、Wnt3aはアファミンが結合した状態でも生物活性(Wnt活性)を発揮できることが明らかになった。また、市販の最高純度のWnt3a蛋白質(価格は10μgで約18万円)は活性発現に0.67μg/ml(
図11の1/30)以上の濃度を必要としたのに対し、Wnt3a−アファミン複合体は0.02μg/ml(
図11の1/1000)以上で活性を検出できた。この結果から、本発明の製造方法により、市販品の10倍以上の比活性を有するWnt3a活性蛋白質を調製できることが示された。
【0074】
〔実施例6:Wnt3a−アファミン複合体の保存安定性〕
精製したWnt3a−アファミン複合体(濃度はWnt3a換算で約10μg/ml)をPBSに透析置換し、そのまま4℃で、あるいは瞬間凍結してから−80℃で12日間保存した。凍結試料に関しては活性測定の前日に融解した。4℃試料と−80℃保存試料をそれぞれ1/3、1/10、1/30、1/100にPBSで希釈した。これらの希釈液と新しい培地(10%(v/v)FCSを含むDMEM)を1:9の割合で混合し、前日にTOPflashプラスミドをトランスフェクションしておいたHEK293T細胞に添加した。TCFレポーターアッセイは、実施例1と同じ方法で実施した。
【0075】
TCFレポーターアッセイの結果を
図12に示した。
図12に示したように、4℃で保存したWnt3a−アファミン複合体と、−80℃で保存したWnt3a−アファミン複合体とは、ほぼ同様な濃度依存性でWnt活性を示した。この結果から、Wnt3aはアファミンと複合体を形成した状態で精製することにより、界面活性剤の非存在下で活性を保ったまま4℃保存できることがわかった。なお、発明者らは4℃で1か月保存したWnt3a−アファミン複合体についても、Wnt活性が低下しないことを確認している。
【0076】
〔実施例7:Wnt5a−アファミン複合体の精製〕
1.Wnt5a−アファミン複合体の精製
実施例1の「2.W−Wnt3a/HEK細胞」に記載の方法に従い、N末端にターゲットタグを付加したWnt5a(以下「W−Wnt5a」という)安定発現細胞株(W−Wnt5a/HEK細胞)を作成した。W−Wnt5a安定発現細胞株の培養上清から、実施例1の「6.アフィニティータグシステムを用いたW−Wnt3aの精製」に準じてW−Wnt5aを精製した。具体的には、1Lの培養上清に10mlのP20.1セファロースを加えて4℃で4時間回転混和した後、10mlのTBSで5回洗浄し(wash1〜5)、10mlのペプチド溶液(0.2mg/ml PAR4-C8 peptide/TBS)で10回溶出した(elute1〜10)。集めたフラクションを10μlずつ非還元状態で電気泳動に供し、泳動後のゲルをCBB染色した。
【0077】
電気泳動の結果を
図13に示した。
図13に示したように、アフィニティークロマトグラフィーによって上清から精製された試料にはWnt5a蛋白質とともに血清中のアファミンが含まれており、Wnt3aの場合と全く同様の挙動(
図4参照)を示した。この結果から、アファミンはWnt3aだけでなく他のWnt蛋白質にも結合し、複合体を形成することがわかった。
【0078】
2.Wnt5a−アファミン複合体のゲル濾過分析
上記で精製したWnt5a−アファミン複合体を濃縮し、実施例4と同様にゲルろ過クロマトグラフィーに供した。カラムはSuperdex200 10/300GLを用いた。バッファーにはHBS(20mM HEPES, 150mM NaCl, pH7.5)を使用し、流速は0.5ml/minとした。250μlを1フラクションとして分取した。
【0079】
ゲルろ過クロマトグラフィーの結果を
図14に示した。
図14上段に示したように、排除体積付近の高分子量領域に1番目のピークが、13ml付近に2番目のピークが出現した。回収したゲルろ過フラクションのうち、
図14上段のチャートに1〜15で示したフラクションから各10μlを非還元状態で電気泳動し、ORIOLE染色した(
図14左下)、または抗Wnt5a抗体によるウエスタンブロッティング(
図14右下)を行った。これらの結果から、分子量約40kDaのバンドはWnt5aであることが確認された。さらに、Wnt5aはWnt3aと同様にウシ血清由来アファミンと1対1の複合体を形成しており、見かけ上分子量150kDaの単量体蛋白質のように挙動することがわかった。
【0080】
3.Wnt5a−アファミン複合体の生物活性
Dvl2のリン酸化を指標に、Wnt5a−アファミン複合体の活性を評価した。上記1でアフィニティー精製したWnt5a−アファミン複合体と、従来の方法(Kurayoshi et al., Biochem. J. 402, 515-523 (2007))で精製したWnt5a(1%(w/v)CHAPS含有タグなし)を、CHAPS濃度が0.01%(w/v)以下になるように、1%(w/v)BSAを含む新鮮な培地で希釈した。
【0081】
NIH3T3細胞を培養し、Wnt5a濃度が0、10、20および40ng/mlになるように精製したWnt5aを培地に添加し、2時間処理した。lysis buffer(20 mM Tris-HCl [pH 8.0], 1% Nonidet P-40, 137 mM NaCl, 10% glycerol, 1 mM phenylmethylsulfonyl fluoride, 20 μg/ml aprotinin, 20 μg/ml leupeptin, 5 mM NaF, 5 mM Na3VO4, and 50 mM β-glycerophosphate)を用いて細胞を溶解し、細胞溶解液を抗Dvl2抗体(Cell signaling Technology社)を用いたウエスタンブロッティングに供した。
【0082】
結果を
図15に示した。
図15の左側は従来の方法で精製したWnt5a(アファミンを含まない)の結果であり、
図15の右側はWnt5a−アファミン複合体の結果である。
図15に示したように、どちらのWnt5aも10ng/ml以上の濃度でDvl2のリン酸化を誘導することが示された。この結果から、Wnt5a−アファミン複合体として精製しても、Wnt活性を有するWnt5a蛋白質を調製できることが示された。
【0083】
〔実施例8:抗アファミン抗体を用いたWnt蛋白質の精製〕
Wnt蛋白質は細胞から分泌されると一部が培地中のアファミンに捕捉されて非共有結合的な1対1複合体となり、リポ蛋白質粒子などに取り込まれずに安定な分子として存在できる。そしてWnt蛋白質は1%(w/v)のCHAPSによってアファミンとの複合体から解離する。これらを利用して、アフィニティータグを付加していない野生型のWnt蛋白質を、細胞培養上清から簡便に精製することができることを確認した。
【0084】
<方法>
タグの付いていないWnt3aを安定発現する細胞株(L−3a)の培養上清250mlに、抗ウシアファミンモノクローナル抗体(B91)を固定化したセファロースを2.5ml加え、4℃で3時間回転混和した。培養上清を空のカラムに通してセファロースを集め、5mlのPBSで5回洗浄し(wash1〜5)、次いで2.5mlの1%(w/v)CHAPS/PBSを加えて10分間静置した後、溶出を行った。溶出操作を10回繰り返した(elute1〜10)。集めたフラクション(wash1〜5、elute1〜10)からそれぞれ15μlを取り、非還元状態で電気泳動に供し、泳動後のゲルをCBB染色液で染色した。
【0085】
電気泳動の結果を
図16に示した。
図16に示したように、B91カラムにWnt3a−アファミン複合体をキャプチャーした後にCHAPSで溶出すると、B91とアファミンの相互作用はCHAPSの影響を受けないので、Wnt3aだけがアファミンから解離して溶出された。得られるWnt3aはほぼ100%の純度である。この方法を用いれば、250mlのL−3a培養上清から、わずか2.5mLのB91セファロースを使用して1段階で6μgのタグなしWnt3a蛋白質を精製することが可能であり、一連の作業は1日以内に完了する。これに対し、非特許文献7の方法では、4Lの培養上清から、何日もかけてBlue−Sepharose、HiTrap Chelating column、HiLoad26/60Superdex200、HiTrap Heparinの4つのステップ、並びにそれらの間の濃縮およびバッファー交換のステップを経て約100μgのWnt3aが精製できるとしている。すなわち本発明の製造方法を用いれば、培養上清あたりの収率は従来法と同等であり、極めて簡便かつ短時間に、特殊な設備を必要とせず、Wnt蛋白質を取得できることが示された。
【0086】
〔実施例9:Wnt3aとヒトアファミンとの共発現によるWnt3a−アファミン複合体の精製〕
1.Wnt3a/ヒトアファミン共発現のWnt3a分泌に与える効果
N末端にPAタグを付加したWnt3a発現コンストラクトとN末端にターゲットタグを付加したヒトアファミン発現コンストラクトを作製し、Expi293システム(Life Technologies Inc.)を用いてトランスフェクションし、Wnt3aとヒトアファミンを一過性に共発現するExpi293F細胞を作製した。別途、空ベクターまたはPAタグ付加Wnt3a発現コンストラクトをExpi293システム(Life Technologies Inc.)を用いてトランスフェクションしたExpi293F細胞を作製した。
【0087】
上記のトランスフェクションした各細胞を、血清を含まない培地で90時間培養し、それぞれ上清を回収した。上清1mlに抗PAタグ抗体NZ−1(Fujii et al. Protein Expres Purif 95, 240-247 (2014))を固定化したセファロースを20μl加え、1時間回転混和した。遠心分離によりセファロースを沈殿させて上清を除き、1mlのTBSで3回セファロースを洗浄し、SDSサンプルバッファー30μlを加えて95℃で2分間加熱して試料を溶出した。溶出した試料を非還元状態で電気泳動し、泳動後のゲルをCBB染色液で染色した。
【0088】
結果を
図17に示した。レーン3(mock)は空ベクターを、レーン1(Wnt3a)はWnt3a発現ベクターのみを、レーン2(Wnt3a+hAFM)はWnt3aとヒトアファミンの発現ベクターの混合物をそれぞれトランスフェクションした細胞の培養上清の抗PAタグ抗体NZ−1による免疫沈降の結果である。血清を含まない培地を用いたので、Wnt3a発現ベクターのみをトランスフェクションした細胞の培養上清にはWnt3aが分泌されていなかった(レーン1)。これに対し、Wnt3a/ヒトアファミン共発現細胞の培養上清のからは、Wnt3a−アファミン複合体が免疫沈降された(レーン2)。この結果から、アファミンと同時に共発現することによって、本来は血清を含まない培地中にはまったく分泌されないWnt3aを、アファミンとの複合体の形態で培地中に分泌させることができた。
【0089】
2.抗PAタグ抗体を用いたWnt3aの精製
上記と同様にPAタグ付加Wnt3aとターゲットタグ付加ヒトアファミンを一過性に共発現するExpi293F細胞を90時間培養し、回収した培養上清に1/100量のNZ−1セファロースを加えてWnt3a/ヒトアファミン複合体をレジンにキャプチャーした。レジンはTBSで洗浄したのち、0.1mg/mlのPA14ペプチド(EGGVAMPGAEDDVV、配列番号11)を含むTBSで溶出することにより、PAタグ付きWnt3aを精製した。
図18に示すように、レーン1(NR:非還元状態)およびレーン2(R:還元状態)の結果から、溶出物のなかにはWnt3aとヒトアファミン以外にはほとんど夾雑物は存在しなかった。すなわち、Wnt3aとヒトアファミンを共発現させた細胞の培養上清から、抗PAタグ抗体NZ−1を用いることにより、1ステップでWnt3a−アファミン複合体を精製できることが示された。なお、データを示していないが、上記の方法を用いることによって、Wnt3a/ヒトアファミン共発現細胞の培養上清300mlから約170μgの収量のWnt3aが得られた。これは、従来の精製法(非特許文献7)の収量の20倍を超える収量に相当する。
【0090】
上記のようにWnt3a/ヒトアファミン共発現細胞の培養上清から精製したWnt3a(PAタグ付き)−アファミン(ターゲットタグ付き)複合体を実施例5と同様に希釈してTCFレポーターアッセイを行なったところ、
図19に示したように、1/200希釈(100ng/ml)以上で活性がみられ、その濃度変化から、Wnt活性は、血清含有培地から精製したWnt3a−アファミン複合体のWnt活性(
図12)と同等であった。
【0091】
3.Wnt3a−アファミン複合体のゲルろ過クロマトグラフィー
Wnt3a/ヒトアファミン共発現細胞上清から精製した複合体をゲルろ過クロマトグラフィーに供した。ゲルろ過にはAKTA FPLCクロマトグラフィーシステム(GEヘルスケア)を使用した。カラムはSuperdex200 10/300GLを、バッファーにはPBSを使用した。流速は0.5ml/minとした。出現した2つのピークのフラクションおよびゲルろ過クロマトグラフィーに供する前の試料について、SDSゲル電気泳動とクマシー染色に供した。
【0092】
結果を
図20に示した。クロマトチャートからわかるように、高分子量に相当する排除体積部分(V
0)および約150kDa付近に2つのピークが現れた。電気泳動結果からわかるように、フラクションIには高分子凝集体が含まれ、フラクションIIにはアファミンとWnt3aが等量含まれることが示された。なお、imputはゲルろ過に供する前の試料である。
【0093】
〔実施例10:各種ヒトWntとヒトアファミンとの共発現によるWnt分泌〕
12種類のヒトWnt(Wnt1、Wnt2b、Wnt3、Wnt3a、Wnt5a、Wnt7a、Wnt7b、Wnt8a、Wnt9a、Wnt9b、Wnt10a、およびWnt10b)について、N末端にPAタグを付加した発現コンストラクトを作製し、実施例9と同様に各ヒトWnt発現コンストラクトとN末端にターゲットタグを付加したヒトアファミン発現コンストラクトをExpi293システム(Life Technologies Inc.)を用いてトランスフェクションし、各ヒトWntとヒトアファミンを一過性に共発現するExpi293F細胞を作製した。別途、12種類のPAタグ付加ヒトWnt発現コンストラクトのみをExpi293システム(Life Technologies Inc.)を用いてトランスフェクションしたExpi293F細胞を作製した。
【0094】
上記のトランスフェクションした各細胞を、血清を含まない培地で90時間培養し、それぞれ上清を回収した。上清1mlにNZ−1セファロースまたはP20.1セファロースを20μl加え、1時間回転混和した。遠心分離によりセファロースを沈殿させて上清を除き、1mlのTBSで3回セファロースを洗浄し、SDSサンプルバッファー30μlを加えて95℃で2分間加熱して試料を溶出した。溶出した試料をビオチン修飾NZ−1を用いたウエスタンブロッティングに供した。
【0095】
図21にNZ−1セファロースを用いて免疫沈降させた試料の結果を示し、
図22にP20.1セファロースを用いて免疫沈降させた試料の結果を示した。
図21からわかるように、12種類全てのヒトWntについて、Wnt−アファミン共発現細胞の培養上清(AFM+)のほうが、Wnt発現細胞の培養上清(AFM−)よりWnt分泌量が増大していた。また、
図22からわかるように、Wnt−アファミン共発現細胞の培養上清(AFM+)において、アファミンに付加されたターゲットタグに対する抗体を用いた免疫沈降によりWntが検出された。この結果から、12種類のヒトWntは、いずれもアファミンと複合体を形成していることが明らかになった。
【0096】
〔実施例11:ヒトWnt3−ヒトアファミン複合体のゲルろ過クロマトグラフィー〕
ヒトWnt3/ヒトアファミン共発現細胞上清から精製した複合体をゲルろ過クロマトグラフィーに供した。ゲルろ過にはAKTA FPLCクロマトグラフィーシステム(GEヘルスケア)を使用した。カラムはSuperdex200 10/300GLを、バッファーにはPBSを使用した。流速は0.5ml/minとした。出現した2つのピークのフラクションおよびゲルろ過クロマトグラフィーに供する前の試料について、SDSゲル電気泳動とクマシー染色に供した。
【0097】
結果を
図23に示した。クロマトチャートからわかるように、高分子量に相当する排除体積部分(V
0)および約150kDa付近に2つのピークが現れた。電気泳動結果からわかるように、フラクションIには高分子凝集体が含まれ、フラクションIIにはアファミンとWnt3が等量含まれることが示された。なお、imputはゲルろ過に供する前の試料である。
【0098】
なお本発明は上述した各実施形態および実施例に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。