【実施例】
【0072】
以下、実施例および比較例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されない。なお、物性値等の測定は以下の方法によって実施した。
(重量平均分子量、数平均分子量、分子量分布)
溶離液としてテトラヒドロフラン、カラムとして東ソー株式会社製のTSKgel SuperMultipore HZM−Mの2本とSuperHZ4000を直列に繋いだものを用いた。GPC装置として、示差屈折率検出器(RI検出器)を備えた東ソー株式会社製のHLC−8320(品番)を使用した。測定対象である重合体または共重合体または重合体組成物4mgをテトラヒドロフラン5mlに溶解させて試料溶液を作製した。カラムオーブンの温度を40℃に設定し、溶離液流量0.35ml/分で、試料溶液20μlを注入して、クロマトグラムを測定した。分子量が400〜5000000の範囲内にある標準ポリスチレン10点をGPCで測定し、保持時間と分子量との関係を示す検量線を作成した。この検量線に基づいて重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を決定し、また分子量分布(Mw/Mn)を求めた。
【0073】
(加メタノール分解)
重合体または共重合体または重合体組成物の0.5質量部をベンゼンの15質量部に溶解させた。そこに、0.5Nカリウムメトキシドのメタノール溶液を10質量部加えた後、23℃で12時間撹拌した。その溶液をイオン交換水で洗浄後、上澄みを十分乾燥させて、加メタノール分解した重合体を得た。加メタノール分解した重合体の数平均分子量、分子量分布をGPCにて測定した。
(ガラス転移温度)
重合体または共重合体または重合体組成物を、JIS K7121に準拠して、示差走査熱量測定装置(島津製作所製、DSC−50(品番))を用いて、230℃まで一度昇温し、次いで室温まで冷却し、その後、室温から230℃までを10℃/分で昇温させる条件にてDSC曲線を測定した。2回目の昇温時に測定されるDSC曲線から求められる中間点ガラス転移温度を本発明におけるガラス転移温度とした。
【0074】
(全光線透過率)
重合体または共重合体または重合体組成物を230℃にて熱プレス成形して、50mm×50mm×厚さ3.2mmの試験片(A)を得た。JIS K7361−1に準じて、ヘイズメータ(村上色彩研究所製、HM−150)を用いて試験片(A)の全光線透過率を測定した。
(ヘイズ)
全光線透過率を測定した試験片(A)のヘイズは、JIS K7136に準拠して、ヘイズメータ(村上色彩研究所製、HM−150)を用いて測定した。
(引張弾性率・引張破断ひずみ)
重合体または共重合体を230℃にて熱プレス成形して、120mm×50mm×厚さ0.4mmの試験片を得た。得られた試験片から90mm×10mmのサイズに切り出し、断面を1500番のサンドペーパーで研磨した。切り出した試験片をチャック間70mmにセットした引張り試験機(島津製:オートグラフAG−IS 5kN)にセットし、引張り速度5mm/分にて引張り試験を行い、引張応力および引張ひずみを測定した(Strain-Stressカーブ)。この測定から引張弾性率および引張破断ひずみを算出した。なお、ここでは試験片が降伏する場合、降伏しない場合に関係なく、破断した時点のひずみを引張破断ひずみとした。
【0075】
(
1H−NMR測定)
後述の合成例で合成した環状ケテンアセタール単量体やその中間体の構造確認、及び、実施例及び比較例の共重合体中の共重合組成、開環率の評価は、
1H−NMRにて実施した。
1H−NMRスペクトルは、核磁気共鳴装置(Bruker社製 ULTRA SHIELD 400 PLUS)を用いて、分析したい試料10mgに対して重水素化溶媒として重水素化クロロホルムを1mL用い、室温、積算回数64回の条件にて、測定した。
(鉛筆硬度)
重合体または共重合体または重合体組成物を230℃にて熱プレス成形して、50mm×50mm×厚さ3.2mmの試験片を得た。得られた試験片の鉛筆硬度測定は、JIS K5600−5−4に準拠し、0.75Kg荷重で測定した。
【0076】
<合成例1>
2−クロロメチル−1,3−ジオキセパン(i)の合成
【0077】
【化1】
温度計、攪拌装置およびクライゼン型単蒸留装置を備えた容量500mLの四つ口フラスコにクロロアセトアルデヒドジメチルアセタール250.0g(2.0mol)、1,4−ブタンジオール180.9g(2.0mol)およびDowex50WX8(登録商標 ダウ・ケミカル製)2.5gを仕込んだ。内温を100〜110℃に昇温し、蒸留装置より搭頂温度70℃以下の留分を抜き取りながら、5時間攪拌した。反応混合物を25℃に冷却した後、Dowex50WX8を濾別した。濾液にヘキサン740gを加えた後、5質量%の炭酸水素ナトリウム水溶液360gで洗浄した。得られた有機層を減圧下に濃縮した。該濃縮液を30cmビグリューカラムを取り付けた蒸留装置を用いて蒸留し、搭頂温度75〜76℃/1.5kPaの留分として2−クロロメチル−1,3−ジオキセパン 253.9g(1.7mol)を得た。収率は84.3%であった。
【0078】
得られた留分(2−クロロメチル−1,3−ジオキセパン)の
1H−NMRを測定したところ、
1H−NMRチャートは以下の通りであった。
1H−NMR(400MHz,CDCl
3,ppm,TMS,)δ:1.75(4H,m),3.47(2H,d,J=5.2Hz),3.69(2H,m),3.95(2H,m),4.85(1H,t,J=5.2Hz)
<合成例2>
2−メチレン−1,3−ジオキセパン[7MDO](ii)の合成
【0079】
【化2】
滴下ロート、温度計、攪拌装置および窒素導入管を備えた容量2リットルの四つ口フラスコにカリウム−t−ブトキシド224.4g(2.0mol)、t−ブタノール700mlを仕込んだ。滴下ロートより合成例1で合成した2−クロロメチル−1,3−ジオキセパン200.0g(1.3mol)を内温25℃以下を維持できる速度で滴下した後、内温60℃にて8時間攪拌した。反応液を25℃まで冷却した後、5B濾紙を用いて吸引濾過し、固体を濾別した。続いて、得られた濾液を減圧下に濃縮した。該濃縮液を30cmビグリューカラムを取り付けた蒸留装置を用いて蒸留し、搭頂温度40〜42℃/1.3kPaの留分として2−メチレン−1,3−ジオキセパン(7MDO)99.7g(0.9mol)を得た。収率は65.8%であった。
【0080】
得られた留分(7MDO)の
1H−NMRを測定したところ、
1H−NMRチャートは以下の通りであった。
1H−NMR(400MHz,CDCl
3,ppm,TMS,)δ:1.76(4H,m),3.48(2H,S),3.94(4H,m)
【0081】
《製造例1》[多層構造重合体粒子(A)を含むエマルジヨンの製造]
(1) コンデンサー、温度計および撹拌機を備えたグラスライニングを施した反応槽(100リットル)に、イオン交換水48kgを投入し、次いでステアリン酸ナトリウム416g、ラウリルザルコシン酸ナトリウム128gおよび炭酸ナトリウム16gを投入して溶解させた。次いで、メタクリル酸メチル11.2kgおよびメタクリル酸アリル110gを投入し撹拌しながら70℃に昇温した後、2%過硫酸カリウム水溶液560gを添加して重合を開始させた。重合ピーク終了後30分間にわたって70℃に保持してエマルジヨンを得た。
(2) 次いで、上記(1)で得られたエマルジヨンに、2%過硫酸ナトリウム水溶液720gを更に添加した後、アクリル酸ブチル12.4kg、スチレン1.76kgおよびメタクリル酸アリル280gからなる単量体混合物を60分かけて滴下し、その後60分間撹拌を続けてグラフト重合を行った。
(3) 上記(2)で得られたグラフト重合後のエマルジヨンに、2%過硫酸カリウム水溶液320gを添加し、さらにメタクリル酸メチル6.2kg、アクリル酸メチル0.2kgおよびn−オクチルメルカプタン200gからなる単量体混合物を30分間かけて添加し、その後60分間撹拌を続けて重合を完結させた後、冷却して重合体エマルジヨンを得た。それにより得られたエマルジヨン(以下「多層構造重合体粒子(A)を含むエマルジヨン」という)は平均粒径0.23μmの多層構造重合体粒子(A)(3段階重合体)を40%含有していた。
【0082】
《製造例2》[(メタ)アクリル酸エステル系重合体粒子(B)を含むエマルジヨンの製造]
製造例1で用いたのと同様の反応槽を用いて、イオン交換水48kgを投入した後、界面活性剤(花王株式会社製「ペレックスSS−H」)252gを投入して撹拌して溶解させた。70℃に昇温した後、2%過硫酸カリウム水溶液160gを添加し、次いでメタクリル酸メチル3.04kg、アクリル酸メチル0.16kgおよびn−オクチルメルカプタン15.2gからなる混合物を一括添加して重合を開始させた。重合による発熱が終了した時点から30分間撹拌を続けた後、2%過硫酸カリウム水溶液160gを添加し、次いでメタクリル酸メチル27.4kg、アクリル酸メチル1.44kgおよびn−オクチルメルカプタン98gからなる混合物を2時間かけて連続的に滴下して重合を行った。滴下終了後、60分間放置した後冷却して平均粒径0.12μmの(メタ)アクリル酸エステル系重合体粒子(B)を40%含有する重合体エマルジヨンを得た。それにより得られたエマルジヨン(以下「(メタ)アクリル酸エステル系重合体粒子(B)を含むエマルジヨン」という)中の(メタ)アクリル酸エステル系重合体粒子(B)の極限粘度は0.44g/dlであった。
【0083】
<実施例1>
充分乾燥させた撹拌装置付き耐圧容器内を窒素置換した。該耐圧容器にトルエンの25質量部に対して、メタクリル酸メチルの19.8質量部、合成例2で得られた7MDOの5質量部を仕込んだ。
【0084】
耐圧容器を窒素ガスにて十分置換した後、撹拌しながら140℃に昇温した。トルエン1質量部に溶解させたジ−t−ブチルパーオキサイド(日本油脂製:パーブチルD)の0.001質量部の全量を該耐圧容器に添加し重合を開始した。140℃での撹拌を継続した状態で、重合開始から1.5時間経過時及び重合開始から3時間経過時に、それぞれトルエン0.5質量部に溶解させたジ−t−ブチルパーオキサイド(日本油脂製:パーブチルD)の0.0005質量部の全量をさらに追加した。重合開始から4時間後に室温まで冷却して重合を停止した。得られた溶液にトルエンの25質量部を添加して希釈した後に、メタノール2000質量部に注ぎ、固形物を析出させた。析出固形物をろ別し、充分に乾燥して、共重合体(A1)12質量部を得た。共重合体(A1)の
1H−NMRを測定したところ、メタクリル酸メチルに由来する構造単位の含量は92質量%、7MDOに由来する構造単位の含量は8.0質量%であり、7MDOは100%開環重合し、重合体主鎖にエステル構造単位を有していた。共重合体(A1)は、重量平均分子量(Mw)が272,000、分子量分布(Mw/Mn)が2.23であった。その他評価結果と併せて結果を表1、
図1および
図2に示す。また、230℃にて熱プレス成形して、得られた試験片(120mm×50mm×厚さ0.4mm)を室温(23℃)にて手で180度に折り曲げたところ、割れることなく、また折れ目が白化することもなかった。
【0085】
<実施例2>
充分乾燥させた撹拌装置付き耐圧容器内を窒素置換した。該耐圧容器にトルエンの25質量部に対して、メタクリル酸メチルの21質量部、合成例2で得られた7MDOの4.1質量部を仕込んだ。
【0086】
耐圧容器を窒素ガスにて十分置換した後、撹拌しながら140℃に昇温した。トルエン1質量部に溶解させたジ−t−ブチルパーオキサイド(日本油脂製:パーブチルD)の0.001質量部の全量を該耐圧容器に添加し重合を開始した。140℃での撹拌を継続した状態で、重合開始から1.5時間経過時及び重合開始から3時間経過時に、それぞれメタクリル酸メチルの2.2質量部に溶解させたジ−t−ブチルパーオキサイド(日本油脂製:パーブチルD)の0.0005質量部の全量をさらに追加した。重合開始から4時間後に室温まで冷却して重合を停止した。得られた溶液にトルエンの25質量部を添加して希釈した後に、メタノール2000質量部に注ぎ、固形物を析出させた。析出固形物をろ別し、充分に乾燥して、共重合体(A2)12質量部を得た。共重合体(A2)の
1H−NMRを測定したところ、メタクリル酸メチルに由来する構造単位の含量は94.8質量%、7MDOに由来する構造単位の含量は5.2質量%であり、7MDOは100%開環重合し、重合体主鎖にエステル構造単位を有していた。共重合体(A2)は、重量平均分子量(Mw)が312,000、分子量分布(Mw/Mn)が2.17であった。その他評価結果と併せて結果を表1、
図1および
図2に示す。また、230℃にて熱プレス成形して、得られた試験片(120mm×50mm×厚さ0.4mm)を室温(23℃)にて手で180度に折り曲げたところ、割れることなく、また折れ目が白化することもなかった。
【0087】
<実施例3>
充分乾燥させた撹拌装置付き耐圧容器内を窒素置換した。該耐圧容器にトルエンの25質量部に対して、メタクリル酸メチルの21質量部、合成例2で得られた7MDOの4.1質量部、n−オクチルメルカプタンの0.100質量部を仕込んだ以外は、実施例1と同様に重合して共重合体(A3)12質量部を得た。共重合体(A3)の
1H−NMRを測定したところ、メタクリル酸メチルに由来する構造単位の含量は94.1質量%、7MDOに由来する構造単位の含量は5.9質量%であり、7MDOは100%開環重合し、重合体主鎖にエステル構造単位を有していた。共重合体(A3)は、重量平均分子量(Mw)が147,000、分子量分布(Mw/Mn)が3.04であった。その他評価結果と併せて結果を表1に示す。
【0088】
<実施例4>
充分乾燥させた撹拌装置付き耐圧容器内を窒素置換した。該耐圧容器にトルエンの17.5質量部に対して、メタクリル酸メチルの48.3質量部、合成例2で得られた7MDOの21質量部、n−オクチルメルカプタンの0.096質量部、ジ−t−ブチルパーオキサイド(日本油脂製:パーブチルD)の0.002質量部を仕込んだ。
【0089】
耐圧容器を窒素ガスにて十分置換した後、撹拌しながら140℃に昇温した。本実施例では撹拌することなく140℃で4時間重合させた後、室温まで冷却して重合を停止した。得られた溶液にトルエンの150質量部を添加して希釈した後に、メタノール8000質量部に注ぎ、固形物を析出させた。析出固形物をろ別し、充分に乾燥して、共重合体(A4)35質量部を得た。共重合体(A4)の
1H−NMRを測定したところ、メタクリル酸メチルに由来する構造単位の含量は90質量%、7MDOに由来する構造単位の含量は10質量%であり、7MDOは100%開環重合し、重合体主鎖にエステル構造単位を有していた。重合体(A4)は、重量平均分子量(Mw)が285,200、分子量分布(Mw/Mn)が2.84であった。その他評価結果と併せて結果を表1に示す。
【0090】
<実施例5>
充分乾燥させた撹拌装置付き耐圧容器内を窒素置換した。該耐圧容器にメタクリル酸メチルの62.3質量部に対して、合成例2で得られた7MDOの7.0質量部、n−オクチルメルカプタンの0.084質量部、ジ−t−ブチルパーオキサイド(日本油脂製:パーブチルD)の0.0018質量部を仕込んだ以外は、実施例4と同様に重合して共重合体(A5)40質量部を得た。共重合体(A5)の
1H−NMRを測定したところ、メタクリル酸メチルに由来する構造単位の含量は95.4質量%、7MDOに由来する構造単位の含量は4.6質量%であり、7MDOは100%開環重合し、重合体主鎖にエステル構造単位を有していた。共重合体(A5)は、重量平均分子量(Mw)が695,000、分子量分布(Mw/Mn)が3.25であった。その他評価結果と併せて結果を表1に示す。
【0091】
<比較例1>
充分乾燥させた撹拌装置付き耐圧容器内を窒素置換した。該耐圧容器にトルエンの17.5質量部に対して、メタクリル酸メチルの69.3質量部、ジ−t−ブチルパーオキサイド(日本油脂製:パーブチルD)の0.002質量部を仕込んだ。
【0092】
耐圧容器を窒素ガスにて十分置換した後、撹拌しながら140℃に昇温した。撹拌しながら140℃で4時間重合させた後、室温まで冷却して重合を停止した。得られた溶液にトルエンの150質量部を添加して希釈した後に、メタノール8000質量部に注ぎ、固形物を析出させた。析出固形物をろ別し、充分に乾燥して、重合体(B1)35質量部を得た。重合体(B1)の
1H−NMRを測定したところ、メタクリル酸メチルに由来する構造単位の含量は100質量%であった。重合体(B1)は、重量平均分子量(Mw)が853,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.85であった。その他評価結果と併せて結果を表1、
図1および
図2に示す。また、230℃にて熱プレス成形して、得られた試験片(120mm×50mm×厚さ0.4mm)を室温(23℃)にて手で180度に折り曲げようとしたところ、割れてしまった。
【0093】
<比較例2>
充分乾燥させた撹拌装置付き耐圧容器内を窒素置換した。該耐圧容器にメタクリル酸メチルの69.3質量部に対して、n−オクチルメルカプタンの0.084質量部、ジ−t−ブチルパーオキサイド(日本油脂製:パーブチルD)の0.0018質量部を仕込んだ以外は、比較例1と同様に重合して共重合体(B2)33質量部を得た。共重合体(B2)の
1H−NMRを測定したところ、メタクリル酸メチルに由来する構造単位の含量は100質量%であった。共重合体(B2)は、重量平均分子量(Mw)が176,000、分子量分布(Mw/Mn)が2.02であった。その他評価結果と併せて結果を表1、
図1および
図2に示す。また、230℃にて熱プレス成形して、得られた試験片(120mm×50mm×厚さ0.4mm)を室温(23℃)にて手で180度に折り曲げようとしたところ、割れてしまった。
【0094】
<比較例3>
充分乾燥させた撹拌装置付き耐圧容器内を窒素置換した。該耐圧容器にトルエンの25質量部に対して、メタクリル酸メチルの21質量部、合成例2で得られた7MDOの4.1質量部、n−オクチルメルカプタンの0.175質量部を仕込んだ以外は、実施例1と同様に重合して共重合体(B3)12質量部を得た。共重合体(B3)の
1H−NMRを測定したところ、メタクリル酸メチルに由来する構造単位の含量は94.1質量%、7MDOに由来する構造単位の含量は5.9質量%であり、7MDOは100%開環重合し、重合体主鎖にエステル構造単位を有していた。共重合体(B3)は、重量平均分子量(Mw)が75,000、分子量分布(Mw/Mn)が2.20であった。その他評価結果と併せて結果を表1に示す。
【0095】
<比較例4>
充分乾燥させた撹拌装置付き耐圧容器内を窒素置換した。該耐圧容器にトルエンの17.5質量部に対して、メタクリル酸メチルの65.8質量部、合成例2で得られた7MDOの3.5質量部、n−オクチルメルカプタンの0.105質量部、ジ−t−ブチルパーオキサイド(日本油脂製:パーブチルD)の0.002質量部を仕込んだ以外は、比較例1と同様に重合して共重合体(B4)30質量部を得た。共重合体(B4)の
1H−NMRを測定したところ、メタクリル酸メチルに由来する構造単位の含量は98.4質量%、7MDOに由来する構造単位の含量は1.6質量%であり、7MDOは100%開環重合し、重合体主鎖にエステル構造単位を有していた。共重合体(B4)は、重量平均分子量(Mw)が200,000、分子量分布(Mw/Mn)が2.12であった。その他評価結果と併せて結果を表1に示す。
【0096】
<比較例5>
充分乾燥させた撹拌装置付き耐圧容器内を窒素置換した。該耐圧容器にトルエンの17.5質量部に対して、メタクリル酸メチルの55.3質量部、合成例2で得られた7MDOの14質量部、n−オクチルメルカプタンの0.105質量部、ジ−t−ブチルパーオキサイド(日本油脂製:パーブチルD)の0.002質量部を仕込んだ以外は、比較例1と同様に重合して共重合体(B5)42質量部を得た。共重合体(B5)の
1H−NMRを測定したところ、メタクリル酸メチルに由来する構造単位の含量は93.1質量%、7MDOに由来する構造単位の含量は6.9質量%であり、7MDOは100%開環重合し、重合体主鎖にエステル構造単位を有していた。共重合体(B5)は、重量平均分子量(Mw)が363,000、分子量分布(Mw/Mn)が3.93であった。その他評価結果と併せて結果を表1に示す。
【0097】
<比較例6>
充分乾燥させた撹拌装置付き耐圧容器内を窒素置換した。該耐圧容器にトルエンの17.5質量部に対して、メタクリル酸メチルの34.3質量部、合成例2で得られた7MDOの35.0質量部、n−オクチルメルカプタンの0.096質量部、ジ−t−ブチルパーオキサイド(日本油脂製:パーブチルD)の0.0043質量部を仕込んだ以外は、比較例1と同様に重合して共重合体(B6)21質量部を得た。共重合体(B6)の
1H−NMRを測定したところ、メタクリル酸メチルに由来する構造単位の含量は75.1質量%、7MDOに由来する構造単位の含量は24.9質量%であり、7MDOは100%開環重合し、重合体主鎖にエステル構造単位を有していた。共重合体(B6)は、重量平均分子量(Mw)が223,000、分子量分布(Mw/Mn)が2.60であった。その他評価結果と併せて結果を表1に示す。
【0098】
<比較例7>
特開平11−228633号公報の実施例8と同様に共重合体を合成した。すなわち、充分乾燥させた撹拌装置付き耐圧容器内を窒素置換した。該耐圧容器にメタクリル酸メチルの25質量部に対して、合成例2で得られた7MDOの25質量部、ジメチル2,2−アゾビスイソブチレート(和光純薬製:V−601)の0.058質量部を仕込んだ。
【0099】
耐圧容器を窒素ガスにて十分置換した後、撹拌しながら60℃に昇温した。撹拌しながら60℃で1時間重合させた後、室温まで冷却して重合を停止した。得られた溶液をメタノール2000質量部に注ぎ、固形物を析出させた。析出固形物をろ別し、充分に乾燥して、共重合体(B7)2.5質量部を得た。共重合体(B7)の
1H−NMRを測定したところ、メタクリル酸メチルに由来する構造単位の含量は95.5質量%、7MDOに由来する構造単位の含量は4.5質量%であり、7MDOは100%開環重合し、重合体主鎖にエステル構造単位を有していた。重合体(B7)は、重量平均分子量(Mw)が533,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.68であった。その他評価結果と併せて結果を表1に示す。
【0100】
<比較例8>
(1) 製造例1で得られた多層構造重合体粒子(A)を含むエマルジヨンおよび製造例2で得られた(メタ)アクリル酸エステル系重合体粒子(B)を含むエマルジヨンを、多層構造重合体粒子(A):(メタ)アクリル酸エステル系重合体粒子(B)の重量比が2:1になるようにして混合して混合エマルジヨンをつくり、それを−20℃で2時間かけて凍結した。凍結した混合エマルジヨンをその2倍量の80℃の温水に投入して溶解させてスラリー状にした後、80℃に20分間保持し、次いで脱水し、70℃で乾燥して、粉末状の耐衝撃性改良材を得た。
【0101】
(2)懸濁重合により得られたビーズ状のメタクリル酸メチル共重合体[メタクリル酸メチル/アクリル酸メチル=99.3/0.7(重量比)、重量平均分子量89,000]700質量部に対して、上記(1)で得られた耐衝撃性改良材を300質量部の割合でスーパーミキサーを用いて混合して、熱可塑性重合体組成物を調製した。評価結果を表1に示す。また、230℃にて熱プレス成形して、得られた試験片(120mm×50mm×厚さ0.4mm)を室温(23℃)にて手で180度に折り曲げたところ、割れることはなかったが、折れ目が白化した。
【0102】
実施例、比較例で得られた重合体、共重合体または重合体組成物を加メタノール分解した。分解後に得られた重合体の評価結果を表1に示す。
【0103】
【表1】
実施例の共重合体は、2〜10質量%の環状ケテンアセタール単量体に由来するエステル構造単位を有し、当該構造単位は開環重合により生じたエステル構造を含有するものであり、重量平均分子量8万以上かつ分子量分布が1.80以上3.80以下であるため、いずれも引張り破断ひずみが大きく、また曲げた際も割れることなく高い延性性能を示す。また全光線透過率が高く、ヘイズが低く、透明性の高いことがわかる。
【0104】
比較例1,2の共重合体もしくは重合体は、透明性は高いものの、2〜10質量%の環状ケテンアセタール単量体に由来するエステル構造単位を有していないため、引張り破断ひずみが小さく、延性性能を示さず(
図1および
図2参照)、曲げた際に割れてしまう。また重量平均分子量8万未満である共重合体(比較例3)や、環状ケテンアセタール単量体に由来するエステル構造単位が2質量%未満である共重合体(比較例4)も引張り破断ひずみが小さく、延性性能を示さない。
【0105】
共重合体の分子量分布が1.75より小さい場合(比較例7)や3.8より大きい場合(比較例5)も引張り破断ひずみが小さく、延性性能を示さないことがわかる。
【0106】
比較例6の共重合体のように環状ケテンアセタール単量体に由来するエステル構造単位が10質量%より多い場合、延性性能は高いものの、ガラス転移温度が低く、引張り弾性率も低い柔らかい材料となってしまう。
【0107】
一般的な延性性能を向上させる手法として比較例8のように多層構造重合体粒子を含有させる手法が知られているが、このようなゴムを添加する手法は、透明性が低下し、曲げた際に白化し、鉛筆硬度も低いものとなってしまう。