特許第6574191号(P6574191)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6574191浸透促進剤としてのカプリロイルアラニンエチルエステル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6574191
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】浸透促進剤としてのカプリロイルアラニンエチルエステル
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/44 20060101AFI20190902BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20190902BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20190902BHJP
   A61Q 17/00 20060101ALI20190902BHJP
   A61K 9/107 20060101ALN20190902BHJP
   A61K 47/18 20060101ALN20190902BHJP
【FI】
   A61K8/44
   A61Q19/00
   A61K8/06
   A61Q17/00
   !A61K9/107
   !A61K47/18
【請求項の数】10
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2016-551698(P2016-551698)
(86)(22)【出願日】2015年2月3日
(65)【公表番号】特表2017-505795(P2017-505795A)
(43)【公表日】2017年2月23日
(86)【国際出願番号】EP2015052109
(87)【国際公開番号】WO2015121102
(87)【国際公開日】20150820
【審査請求日】2018年1月31日
(31)【優先権主張番号】14154961.8
(32)【優先日】2014年2月13日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100122389
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 栄一
(74)【代理人】
【識別番号】100111741
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 夏夫
(74)【代理人】
【識別番号】100169971
【弁理士】
【氏名又は名称】菊田 尚子
(74)【代理人】
【識別番号】100201950
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 純
(73)【特許権者】
【識別番号】517376595
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ フランス エス.エー.エス.
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マティス,レイモンド
(72)【発明者】
【氏名】ラーツ,ハンス−クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】メーリング,アネット
(72)【発明者】
【氏名】ブーシェ,マルク
【審査官】 星 浩臣
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−053524(JP,A)
【文献】 特開2000−154112(JP,A)
【文献】 特開2000−035524(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0251597(US,A1)
【文献】 特開平11−246841(JP,A)
【文献】 特開平05−201880(JP,A)
【文献】 特開2003−026559(JP,A)
【文献】 特開2003−055181(JP,A)
【文献】 国際公開第01/035998(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カプリロイルアラニンエチルエステル、並びにUVフィルター、抗ざ瘡活性剤、抗老化活性剤、抗炎症剤、毛髪調節剤、毛髪又は毛包に効果を有する薬剤、制汗剤又は脱臭剤、美白剤、セルフタンニング剤、ペプチド、オリゴペプチド、タンパク質、アセチルサリチル酸、アトロピン、アズレン、ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾン17-吉草酸エステル、ビタミン類、ビタミンB系及びビタミンD系、ビタミンB1、ビタミンB12、ビタミンD、ビタミンA、レチニルパルミタート、ビタミンE、酢酸トコフェリル、ビタミンC、アスコルビルグルコシド、ナイアシンアミド、パンテノール、ビサボロール ポリドカノール、不飽和脂肪酸、ビタミンF、γ-リノレン酸、オレイン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、クロラムフェニコール、カフェイン、プロスタグランジン、チモール、カンファー、スクアレン、植物由来及び動物由来の抽出物、マツヨイグサ油、ルリジサ油又はイナゴマメ油、魚油、タラ肝油、セラミド、香料抽出物、緑茶抽出物、スイレン抽出物、カンゾウ抽出物、及びマンサク、ふけ防止活性化合物、二硫化セレン、ジンクピリチオン、ピロクトン、オラミン、クリンバゾール、オクトピロックス、ポリドカノール、γ-オリザノール、カルシウム塩、パントテン酸カルシウム、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、NOシンターゼ阻害剤、ニトロアルギニン、カテコール、カテコールの胆汁酸エステル、カテコール又はカテコールの胆汁酸エステルを含有する植物又は植物の一部に由来する抽出物、ツバキ科植物の葉、ポリフェノール、フラボン、セリコシド、ピリドキソール、ビタミンK、ビオチン、及び芳香物質、α-ヒドロキシ酸、乳酸若しくはサリチル酸又はそれらの塩、乳酸Na、乳酸Ca、乳酸TEA、尿素、アラントイン、セリン、ソルビトール、乳タンパク質、及びパンテノールからなる群より選択される少なくとも1種の活性剤を含む、化粧品組成物。
【請求項2】
全組成物に対して、0.1〜90重量%のカプリロイルアラニンエチルエステルを含むことを特徴とする、請求項1に記載の化粧品組成物。
【請求項3】
エマルション組成物であることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の化粧品組成物。
【請求項4】
カプリロイルアラニンエチルエステル及び少なくとも1種のUVフィルターを含む、化粧品組成物。
【請求項5】
カプリロイルアラニンエチルエステル及び少なくとも1種のセルフタンニング剤又は少なくとも1種の美白剤を含む、化粧品組成物。
【請求項6】
カプリロイルアラニンエチルエステル並びに少なくとも1種の制汗剤及び/又は脱臭剤を含む、化粧品組成物。
【請求項7】
カプリロイルアラニンエチルエステル並びに少なくとも1種の抗ざ瘡活性剤及び/又は少なくとも1種の抗炎症活性剤を含む、化粧品組成物。
【請求項8】
カプリロイルアラニンエチルエステル及び少なくとも1種の抗老化活性剤を含む、化粧品組成物。
【請求項9】
カプリロイルアラニンエチルエステル及びビタミン類を含む、化粧品組成物。
【請求項10】
カプリロイルアラニンエチルエステル、並びに
新しい毛周期の成長を誘発し、成長速度を高め、又は毛幹径を増加させる毛髪成長刺激剤、
毛髪量、毛髪の光沢、及び毛髪の強度及び毛髪の厚さを増加させる毛髪に効果を有する薬剤、
毛包に効果を有する薬剤、及び
毛髪成長阻害剤からなる群より選択される少なくとも1種の毛髪調節剤
を含む、化粧品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.発明の分野
本発明は、化粧品組成物又は他の局所用組成物における浸透促進剤(penetration enhancer)としてのカプリロール-アラニンエチルエステルの使用、並びにカプリロール-アラニンエチルエステルを、活性(有効)成分、具体的には、UVフィルター、抗ざ瘡活性剤、抗老化活性剤、抗炎症剤、毛髪調節剤、制汗剤又は脱臭(消臭)剤、美白剤、セルフタンニング剤、及びビタミン類などの皮膚用有益物質と組み合わせて含む化粧品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
2.従来技術の説明
化粧品組成物において使用が開始される前は、浸透促進剤とも呼ばれる経皮吸収促進剤の第一の応用分野は、医薬経皮治療システムであった。皮膚を介した医薬活性剤の送達は、肝初回通過機構を回避する全身薬物送達を可能にするため、非常に興味深い。しかしながら、大部分の分子の皮膚を介した通過は、皮膚バリア特性により阻害される。浸透促進剤は、目的の物質の吸収促進に使用することができる。その浸透促進活性に対して種々の化学基が研究され、多数の作用様式及び相互作用部位が確認されてきた。作用機構の中には、1)溶媒特性を目的の物質に適合させ、皮膚中への分配を向上させること、2)細胞間脂質マトリックスと相互作用し、それにより、バリア構造を変化させること、3)細胞間タンパク質を変性させて、透過性を高めること、及び/又は4)皮膚内に貯蔵効果をもたらすこと、による浸透促進効果がある。
【0003】
医薬組成物において記述され、且つ使用された最初の皮膚浸透促進剤の1つは、スルホキシドに属する万能溶媒であるジメチルスルホキシド(DMSO)であった。
【0004】
皮膚浸透促進剤であることを特に目的とした最初の物質は、角質層中の脂質との相互作用によって浸透を向上させる極めて親油性の高い物質であるアゾンラウロカプラン(azone laurocapran)であった。
【0005】
N-メチル-2-ピロリドン(NMP)などのピロリドン類も、抗炎症薬の経皮吸収促進に使用されてきたが、毒性学的懸念があり、その使用は不可能である。
【0006】
メントールなどのテルペン類の使用も記述されているが、その臭気によって使用が困難になる恐れがある。メントールは、浸透薬物の溶解度を、これらの活性剤と共融系を作り出すことによって高めるだけではなく、その脂質ドメインとの相互作用により角質層のバリア特性を変化させることによって浸透性を高める。脂肪酸、主に不飽和脂肪酸(オレイン酸)は、促進剤としての使用に成功している。エタノール又はラウリルアルコールなどのアルコール類が角質層の脂質を溶解して引き出し、脂質二重層と相互作用するのに対し、脂肪酸は極めて親油性が高いため、角質層の脂質ドメインを変性させ、それによって、主に親水性分子の浸透性を向上させる。
【0007】
近年では、より一層活性成分が化粧品において使用されている。局所適用経路のために、浸透促進剤はパーソナルケア用途への手段にも見出された。浸透促進剤を化粧品分野に適用する主な焦点は、物質の全身送達ではなく、活性剤の皮膚への浸透性を高め、化粧品の効能を向上させることである。薬物分配を増加させることによって作用する例えばプロピレングリコールなどの溶媒系、又は角質層の水和を促進する薬剤などの一般的な浸透促進剤が、化粧品組成物に使用される。
【0008】
一般的に、化粧品は良好な皮膚適合性を有する必要があり、その成分は良好な毒性プロファイルを有するべきである。
【0009】
種々の研究によって、アミノ酸エステルは低毒性及び非常に良好な生体適合性を有する効果的な浸透促進剤であることが示されている。
【0010】
欧州特許出願であるEP 0 552 505 A1では、式R1NH-R3-COOR2[式中、R1は、水素原子、1〜20個の炭素原子を有するアシル基、又は1〜20個の炭素原子を有する炭化水素基であり、R2は、水素原子又は1〜20個の炭素原子を有する炭化水素基であり、R3は、-CHR4-又はベンジルであり、R4は、水素原子、メチル基、イソプロピル基、2-メチルプロピル基、又は1-メチルプロピル基である]を有するアミノ酸誘導体を含む、薬理活性物質の経皮吸収促進剤が開示されている。インドメタシン、ケトプロフェン、プレドニゾロン、及びピンドロールからなる群より選択される薬理活性物質に対して提案される吸収促進剤の最も効果的な候補物質は、N-n-ドデカノイルグリシンエステルであった。ドデカノイル-アミノ酸、例えばアラニン、バリン、ロイシン、及びイソロイシンのエチルエステルも同様に試験された。
【0011】
N-ラウロイル-イソプロピルサルコシナートは、化粧品分野における種々の特許出願の対象であった:
【0012】
N-ラウロイル-イソプロピルサルコシナートは、WO 2003/039448の国際特許ファミリーで概説されているように、ポリマーで増粘された化粧品組成物及び皮膚科用組成物において脂質相の多くの成分及び活性剤を溶解するために選択される候補物質である。記載のポリマーは、平均分子量が100000DA未満であり、好ましくは1000〜30000の範囲であり、a)少なくともヘテロ原子を含む炭化水素の繰り返し単位を有するポリマー骨格、及びb)場合により、少なくとも1つのペンダント脂肪鎖及び/又は少なくとも1つの末端脂肪鎖であって、場合により官能化され、12〜120個の炭素原子を有し、該単位に結合され、その脂肪鎖が、ヘテロ原子単位及び脂肪鎖の総数の40〜98%に相当する、前記脂肪鎖を含む。これらの組成物は、UVフィルターを含むこともできる。
【0013】
欧州特許出願であるEP 1277462 A1の対象は、少なくとも1つのセルフタンニング剤及び少なくとも1つのN-アシルアミノ酸エステルを含む、人工的な皮膚の日焼けを目的とした化粧品組成物又は皮膚科用組成物であった。N-アシルアミノ酸エステルを添加すると、人工的な皮膚の日焼けのための組成物におけるセルフタンニング剤の着色及び安定性が向上したことが示された。イソプロピルN-ラウロイルサルコシナートは、セルフタンニング剤との併用に選択された。
【0014】
欧州特許出願であるEP 1 269 980 A1では、少なくとも1つの1,3,5-トリアジン誘導体及び少なくとも1つのN-アシルアミノ酸エステルを含む組成物、並びに紫外線から皮膚、口唇、又は外皮を保護するための化粧品組成物における、又はその組成物を製造するためのその使用が開示されている。1,3,5-トリアジン誘導体との併用に選択されるN-アシルアミノ酸エステルは、イソプロピルN-ラウロイルサルコシナートであり、これは、組成物のサンプロテクションファクターを向上させた。
【0015】
米国出願であるUS 2005/0065251 A1の発明は、少なくとも1つの有機UVフィルター、及び少なくとも1つのアミノ酸N-アシル化エステルを含むことを特徴とする、ポリアミドによって構造化された化粧品組成物、紫外線から皮膚、口唇、又は皮膚付属器を保護するための組成物における、又はその組成物を調製するためのその使用に関する。好ましいアミノ酸N-アセチル化エステルは、同様にイソプロピルN-ラウロイルサルコシナートであった。
【0016】
イソプロピルN-ラウロイルサルコシナートの使用には、一部の制限がある。イソプロピルN-ラウロイルサルコシナートは、ろう様の質感を有する半固体化合物であり、その融点が室温よりも高いため、皮膚用組成物に組み入れることは困難である。この融点は、物質が皮膚上で融解する妨げにもなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】EP 0 552 505 A1
【特許文献2】WO 2003/039448
【特許文献3】EP 1277462 A1
【特許文献4】EP 1 269 980 A1
【特許文献5】US 2005/0065251 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は、他の化粧品添加物と共に良好な耐用性及び向上した適合性を備えた局所用組成物のための、効果的な浸透促進剤を提供することであり、これは化粧品組成物中に容易に組み入れることができる。浸透促進剤はまた、良好な官能プロファイルをもたらすこともできる。
【課題を解決するための手段】
【0019】
3.発明の説明
本発明は、化粧品組成物及び他の局所用又は口腔用の組成物における浸透促進剤としてのカプリロール-アラニンエチルエステルの使用に関する。本発明において、浸透は、透過及び吸収も含むことができる。
【0020】
本発明の一実施形態は、カプリロイルアラニンエチルエステルを浸透促進剤として含む化粧品組成物に関する。これらの組成物は、カプリロール-アラニンエステルを、活性剤と組み合わせて、好ましくは、UVフィルター、抗ざ瘡活性剤、抗老化活性剤、抗炎症剤、毛髪調節剤、制汗剤又は脱臭剤、美白剤、セルフタンニング剤、及びビタミン類と組み合わせて含む。
【0021】
驚くべきことに、カプリロール-アラニンエチルエステルを含む組成物は、不快なべたつき感を伴わずに保湿感触を皮膚に与えると同時に、非常に良好な官能プロファイルをもたらすことが見出された。カプリロール-アラニンエチルエステルはまた、他のN-アシルアミノ酸エステルよりも活性剤の皮膚浸透、特に親水性活性剤の浸透を促進する。
【0022】
化粧品組成物は、全組成物に対して、0.1〜90重量%のカプリロイルアラニンエチルエステルを含むことができ、一般的には、全組成物に対して、1〜30重量%、好ましくは2〜10重量%、より好ましくは2〜5重量%含むであろう。
【0023】
カプリロイルアラニンエチルエステルの角質層に対するハンセン溶解度パラメーター(HSP)距離は、皮膚浸透促進剤として十分な可能性を示すエチルジエチレングリコール及びDMIなどの周知の確立された参考例よりも小さいことがわかった。ハンセン溶解度パラメーターは、分子がRTで液体であり、十分小さいモル体積を有する場合に、角質層中への良好な分配の重要な指標である。
【0024】
浸透促進剤としてカプリロール-アラニンエチルエステルを添加すると、活性剤を含む化粧品組成物に多くの利点がもたらされる。不利な適合特性を有する活性剤を含む製剤の皮膚適合性は、特に、目的とする効果がより早く達成され、且つ/又は所望の組織(層)がより効率的に標的とされ、且つ/又はより低濃度の活性成分を使用することができるので、改善され得る。
【0025】
浸透促進剤自体は、皮膚を介して浸透する程度がDMIより低く、従って、全身的に利用可能である可能性は低い。更に、カプリロイル-アラニンエチルエステルは、皮膚で代謝することができ、その結果、毒性プロファイルの改善に寄与する。
【0026】
更に、カプリロイル-アラニンエチルエステルは、他の皮膚軟化剤と同様の保湿効果を有することがわかり、他の皮膚軟化剤よりも早く吸収されることがわかり、従って、局所用組成物におけるその適用は、心地よい官能プロファイルをもたらす。
【0027】
カプリロール-アラニンエチルエステルは、無臭の液体物質であるため、化粧品組成物及び局所用組成物に極めて容易に組み入れられる。得られた製剤は、非常に良好な物理化学的安定性を有する。極性皮膚軟化剤として、カプリロール-アラニンエチルエステルは有益な可溶化特性を有し、組織上での活性剤の分散及び分布を向上することができる。
【0028】
活性化合物
本発明による製剤は、カプリロール-アラニンエステルを、化粧品的に許容可能な活性化合物と組み合わせて含む。
【0029】
本発明によれば、活性化合物(1種以上の化合物)は、有利には、UVフィルター、抗ざ瘡活性剤、抗老化活性剤、抗炎症剤、毛髪成長調節剤、毛髪又は毛包に効果を有する薬剤、制汗剤又は脱臭剤、美白剤、セルフタンニング剤、ペプチド、オリゴペプチド、タンパク質、アセチルサリチル酸、アトロピン、アズレン、ヒドロコルチゾン及びそれらの誘導体、例えばヒドロコルチゾン-17-吉草酸エステル、ビタミン類、特に、ビタミンB系及びD系、具体的には、ビタミンB1、ビタミンB12、ビタミンD、ビタミンA及びそれらの誘導体、例えばレチニルパルミタート、ビタミンE又はそれらの誘導体、例えば酢酸トコフェリルなど、ビタミンC及びそれらの誘導体、例えばアスコルビルグルコシドなど、さらに、ナイアシンアミド、パンテノール、ビサボロール ポリドカノール、不飽和脂肪酸、例えば、必須脂肪酸(通常、ビタミンFと呼ばれる)、具体的には、γ-リノレン酸、オレイン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、及びそれらの誘導体、クロラムフェニコール、カフェイン、プロスタグランジン、チモール、カンファー、スクアレン、植物由来及び動物由来の抽出物又は他の製品、例えば、マツヨイグサ(evening primrose)油、ルリジサ(borage)油又はイナゴマメ(carob bean)油、魚油、タラ肝(cod-liver)油、さらに、セラミド及びセラミド様化合物、香料抽出物、緑茶抽出物、スイレン(water lily)抽出物、カンゾウ(liquorice)抽出物、及びマンサク(witch hazel)、ふけ防止活性化合物(例えば、二硫化セレン、ジンクピリチオン、ピロクトン、オラミン、クリンバゾール、オクトピロックス、ポリドカノール、及びそれらの組み合わせ)、並びに活性化合物複合体、例えばγ-オリザノールと、パントテン酸カルシウム、塩化カルシウム、及び酢酸カルシウムなどのカルシウム塩との活性化合物複合体からなる群より選択することができる。
【0030】
具体的に、本発明による組成物が、内因性及び/又は外因性の皮膚老化の症状の治療及び予防、並びに皮膚及び頭髪への紫外線の有害な影響の治療及び予防に用いられる場合には、1種以上の活性化合物を、NOシンターゼ阻害剤からなる群より選択することもできる。好ましいNOシンターゼ阻害剤としては、ニトロアルギニンがある。
【0031】
1種以上の活性化合物は、更に有利には、カテコール及びカテコールの胆汁酸エステル、並びにカテコール又はカテコールの胆汁酸エステルを含有する植物又は植物の一部に由来する水性抽出物又は有機抽出物、例えば、ツバキ科植物(Theaceae plant family)の葉、具体的には、カメリアシネンシス(Camellia sinensis)種(緑茶)の葉などを含む群より選択される。カテコール類は、水素化フラボン又はアントシアニジンとして解釈される一群の化合物であり、カテコール類としては「カテコール」の誘導体(カテコール、3,3',4',5,7-フラバンペンタオール、2-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-クロマン-3,5,7-トリオール)がある。エピカテコール((2R,3R)-3,3',4',5,7-フラバンペンタオール)もまた、本発明において有利な活性化合物である。
【0032】
更に、好ましい活性化合物としては、(-)-カテコール、(+)-カテコール、(-)-カテコールガラート、(-)-ガロカテコールガラート、(+)-エピカテコール、(-)-エピカテコール、(-)-エピカテコールガラート、(-)-エピガロカテコール、及び(-)-エピガロカテコールガラートからなる群からのポリフェノール又はカテコールがある。
【0033】
フラボン及びその誘導体(総称として「フラボン類」と呼ばれる場合が多い)もまた、本発明において有利な活性化合物である。更に有利な活性化合物としては、セリコシド、ピリドキソール、ビタミンK、ビオチン、及び芳香物質がある。
【0034】
好ましくは、活性化合物(1種以上の化合物)は、非常に有利には、親水性活性化合物である、α-ヒドロキシ酸、例えば、乳酸若しくはサリチル酸又はそれらの塩、例えば、乳酸Na、乳酸Ca、又は乳酸TEAなど、尿素、アラントイン、セリン、ソルビトール、グリセロール、乳タンパク質、パンテノール、又はキトサンからなる群より選択することができる。
【0035】
最も好ましくは、活性化合物は、UVフィルター、抗ざ瘡活性剤、抗老化活性剤、抗炎症剤、毛髪成長調節剤、毛髪又は毛包に効果を有する薬剤、制汗剤又は脱臭剤、美白剤、セルフタンニング剤、及びビタミン類から選択される群より選択される。
【0036】
a)UVフィルター
選択された浸透促進剤が、UVフィルターの可溶化を著しく向上させ、それによって、本発明の化粧品組成物のUV保護特性は大きく向上することが研究された。
【0037】
カプリロール-アラニンエチルエステルは、興味深いUVフィルター可溶化特性を有する。エチルヘキシルトリアゾン(Uvinul T150)などの既知のUVフィルターの溶解度を、通常使用される他の溶媒よりも、高めることが可能であり、例えば、アジピン酸ジブチルにおいて、16重量%に対して23重量%に高めることが可能であり、従って、溶媒中の濃度を増加することが可能になる。このことは、引き続き、官能プロファイルが向上した製剤の設計の利点になり得る。角質層の上層へのより均質な分布及びより良好な浸透も達成することができる。
【0038】
更に、顔料であり、物理的に作用するUVフィルターのUV保護効果も、カプリロール-アラニンエチルエステルを添加することにより向上する。促進剤の良好な拡散特性によって、こうした種類のUVフィルターは、化粧品組成物において、さらに、適用(塗布)後の皮膚上において、分布の均質性が改善される。
【0039】
従って、活性化合物(1種以上の化合物)は、更に非常に有利には、光フィルター活性化合物からなる群より選択することができる。
【0040】
適切な光フィルター活性化合物としては、UV-B及び/又はUV-A領域の紫外(UV)線を吸収する物質がある。これらによれば、有機物質は、紫外線を吸収することができ、吸収されたエネルギーを例えば熱などのより長波長の放射の形態で再び放出することができるものと理解される。有機物質は、油溶性又は水溶性であり得る。適切なUVフィルターは、例えば、2,4,6-トリアリール-1,3,5-トリアジンであり、その中のアリール基は、それぞれの場合において、ヒドロキシル、アルコキシ、特にメトキシ、並びにアルコキシカルボニル、特に、メトキシカルボニル及びエトキシカルボニルより好ましくは選択される、少なくとも1つの置換基を有することができる。p-アミノ安息香酸エステル、桂皮酸エステル、ベンゾフェノン、カンファー誘導体、並びに紫外線を防ぐ顔料、例えば、二酸化チタン、タルク、及び酸化亜鉛がより適する。二酸化チタン系の顔料が特に好ましい。
【0041】
使用することができる油溶性UV-Bフィルターとしては、例えば、下記の物質がある:
3-ベンジリデンカンファー及びそれらの誘導体、例えば、3-(4-メチルベンジリデン)カンファー;4-アミノ安息香酸誘導体、好ましくは、4-(ジメチルアミノ)-安息香酸2-エチルヘキシルエステル、4-(ジメチルアミノ)安息香酸2-オクチルエステル、及び4-(ジメチルアミノ)安息香酸アミルエステル;桂皮酸エステル、好ましくは、4-メトキシ桂皮酸2-エチルヘキシルエステル、4-メトキシ桂皮酸プロピルエステル、4-メトキシ桂皮酸イソアミルエステル、4-メトキシ桂皮酸イソペンチルエステル、及び2-シアノ-3-フェニル-桂皮酸2-エチルヘキシルエステル(オクトクリレン);サリチル酸エステル、好ましくは、サリチル酸2-エチルヘキシルエステル、サリチル酸4-イソプロピルベンジルエステル、及びサリチル酸ホモメンチルエステル;ベンゾフェノン誘導体、好ましくは、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-4'-メチルベンゾフェノン、及び2,2'-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン;ベンザルマロン酸エステル、好ましくは、4-メトキシベンザルマロン酸ジ-2-エチルヘキシルエステル;トリアジン誘導体、例えば、2,4,6-トリアニリノ-(p-カルボ-2'-エチル-1'-ヘキシルオキシ)-1,3,5-トリアジン(オクチルトリアゾン)、及びジオクチルブタミドトリアゾンなど;プロパン-1,3-ジオン、例えば、1-(4-tert-ブチルフェニル)-3-(4'-メトキシフェニル)プロパン-1,3-ジオンなど。
【0042】
可能な水溶性物質としては、
・2-フェニルベンズイミダゾール-5-スルホン酸、並びにそのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アルキルアンモニウム塩、アルカノールアンモニウム塩、及びグルカモニウム(glucammonium)塩;
・ベンゾフェノンスルホン酸誘導体、好ましくは、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸及びその塩;
・3-ベンジリデンカンファースルホン酸誘導体、例えば、4-(2-オキソ-3-ボルニリデンメチル)ベンゼンスルホン酸及び2-メチル-5-(2-オキソ-3-ボルニリデン)スルホン酸、並びにそれらの塩
がある。
【0043】
桂皮酸エステル、好ましくは、4-メトキシ桂皮酸2-エチルヘキシルエステル、4-メトキシ桂皮酸イソペンチルエステル、及び2-シアノ-3-フェニル-桂皮酸2-エチルヘキシルエステル(オクトクリレン)の使用が特に好ましい。
【0044】
ベンゾフェノン誘導体、具体的には、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-4'-メチルベンゾフェノン、及び2,2'-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノンの使用、及びプロパン-1,3-ジオン、例えば、1-(4-tert-ブチルフェニル)-3-(4'-メトキシフェニル)プロパン-1,3-ジオンなどの使用が更に好ましい。
【0045】
可能な通常のUV-Aフィルターとしては、
・ベンゾイルメタン誘導体、例えば1-(4'-tert-ブチルフェニル)-3-(4'-メトキシフェニル)-プロパン-1,3-ジオン、4-tert-ブチル-4'-メトキシジベンゾイルメタン、又は1-フェニル-3-(4'-イソプロピルフェニル)-プロパン-1,3-ジオンなど;
・ベンゾフェノンのアミノ-ヒドロキシ-置換誘導体、例えば、N,N-ジエチルアミノ-ヒドロキシベンゾイル-n-ヘキシル-ベンゾアートなど
がある。
【0046】
UV-A及びUV-Bフィルターは、当然のことながら、混合物で用いることもできる。
【0047】
更に適切なUVフィルター物質を下記の表に挙げる:
【0048】
【表1】
【0049】
上述の2つの群の第一の日焼け止め物質に加えて、UV線が皮膚に浸透した時に生じる光化学的な細胞の反応連鎖を遮断する、抗酸化型の第二の日焼け止め剤を使用することもできる。典型的な例は、スーパーオキシドジスムターゼ、カタラーゼ、トコフェロール(ビタミンE)、及びアスコルビン酸(ビタミンC)におけるUV誘発性の機能変化及び/又は構造変化である。
【0050】
適切な活性剤の更なる群としては、UV光による皮膚損傷に有益な作用を有する抗炎症物質がある。そのような物質としては、例えば、ビサボロール、フィトール、及びフィタントリオール、並びにアセチルサリチル酸があるが、これらに限定されない。
【0051】
本発明による組成物に使用することができる、上述の活性化合物及び活性化合物の組み合わせのリストは、当然のことながら、限定しようとするものではない。活性化合物は、単独で、又は互いの任意の所望の組み合わせで使用することができる。
【0052】
本発明による組成物におけるこのような活性化合物(1種以上の化合物)の量は、組成物の総重量に対して、好ましくは、0.001〜30重量%であり、特に好ましくは、0.05〜20重量%であり、具体的には、1〜10重量%である。
【0053】
b)セルフタンニング剤及び美白剤
更に、カプリロール-アラニンエチルエステルはセルフタンニング剤の均等性を向上させる。浸透促進剤の添加により、セルフタンニング剤及び美白剤をはるかにより均一に塗布することができ、その結果、均質な皮膚日焼け効果又は皮膚美白効果がもたらされる。
【0054】
適切なセルフタンニング剤としては、ピラゾリン-4,5-ジオン誘導体、グルタルアルデヒド、アロキサン、ニンヒドリン、4,4-ジヒドロキシピラゾリン-5-ジオン、及びジヒドロキシアセトンがある。浸透促進剤と共に使用される好ましいセルフタンニング剤としては、ジヒドロキシアセトン(DHA)がある。セルフタンニング剤の量は、化粧品組成物の総重量に対して、0.05〜10重量%、好ましくは、0.1〜5重量%の範囲である。
【0055】
通常、美白剤は、皮膚に浸透し、その機能を拡散させることが必要とされ、その多くが、メラニンの形成を防止し、その結果、皮膚のメラノサイトに作用することが必須であるチロシン阻害剤を含む。美白剤の例としては、アルブチン、フェルラ酸、コウジ酸、クマリン酸、植物抽出物、及びアスコルビン酸(ビタミンC)がある。
【0056】
c)抗ざ瘡活性剤
抗ざ瘡活性剤、例えば、抗炎症剤、抗生物質、レチノイド、抗細菌剤、及び角質溶解剤は、望ましくない副作用を引き起こすことが多い。従って、皮膚上層、脂腺細胞、及び/又は皮膚毛穴への浸透及び分布の向上によって、これらの活性剤の用量を減少することができる場合は、利点となる。
【0057】
浸透促進剤と組み合わせて使用される抗ざ瘡活性剤は、グリコール酸及び乳酸を含むα-ヒドロキシ酸(AHA);β-ヒドロキシ酸、例えば、サリチル酸;過酸化ベンゾイル;ヒドロキシキノリン;硫黄;抗生物質、例えば、テトラサイクリン、ダプゾン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、エリスロマイシン、クリンダマイシンなど;アゼライン酸;レチノイド;イソトレチノイン;トレチノイン、イソトレチノイン、モトレチニド、アダパレン、及びタザロテンを含むビタミンA由来の局所用レチノイド;ニコチンアミド;アラントイン;及び植物抽出物からなる群より選択される。
【0058】
d)抗老化活性剤
抗ざ瘡活性剤として使用される多くの角質溶解剤が、抗老化活性剤としても知られている。特に、α-及びβ-ヒドロキシ酸、並びにレチノイド及びレチノイン酸がある。
【0059】
他の種類の抗老化活性剤としては、ビタミン類、タンパク質加水分解物、ペプチド及び修飾ペプチド、β-グルカン、並びに植物抽出物が含まれる。
【0060】
e)ビタミン類
本発明によれば、使用するのが好ましいビタミンB群のビタミン類、プロビタミン類、又はビタミン前駆体類、或いはそれらの誘導体、及び2-フラノン誘導体としては、特に、下記のものが含まれる:
ビタミンB1、慣用名チアミン、化学名3-[(4'-アミノ-2'-メチル-5'-ピリミジニル)メチル]-5-(2-ヒドロキシエチル)-4-メチルチアゾリウムクロリド、
ビタミンB2、慣用名リボフラビン、化学名7,8-ジメチル-10-(1-D-リビチル)-ベンゾ[g]プテリジン-2,4(3H,10H)-ジオン。リボフラビンは、例えばホエイ中に遊離型で生じ、他のリボフラビン誘導体は、細菌及び酵母から単離することができる。本発明によれば、同様に適するリボフラビン立体異性体としては、魚粉又は魚の肝臓から単離することができ、D-リビチル基の代わりにD-アラビチル基を有するリキソフラビンがある。
ビタミンB3。化合物ニコチン酸及びニコチンアミド(ナイアシンアミド)がこの名称で挙げられることが多い。本発明によれば、ニコチンアミドが好ましい。
ビタミンB5(パントテン酸及びパンテノール)。パンテノールを使用するのが好ましい。本発明に従って使用することができるパンテノール誘導体としては、具体的には、パンテノールのエステル及びエーテル、並びにカチオン誘導体化パンテノールがある。本発明の更なる好ましい実施形態において、パントテン酸又はパンテノールに加え、2-フラノン誘導体を使用することもできる。特に好ましい誘導体としては、商業的に入手可能な物質でもある、慣用名パントラクトン(Merck)であるジヒドロ-3-ヒドロキシ-4,4-ジメチル-2(3H)フラノン、4-ヒドロキシメチル-ブチロラクトン(Merck)、3,3-ジメチル-2-ヒドロキシ-ブチロラクトン(Aldrich)、及び2,5-ジヒドロ-5-メトキシ-2-フラノン(Merck)があり、すべての立体異性体も明白に含まれる。
これらの化合物は、有利なことに、本発明による皮膚用化粧品に水分補給特性及び皮膚鎮静化特性を与える。
ビタミンB6、これは、一定の物質ではないが、慣用名ピリドキシン、ピリドキサミン、及びピリドキソールで知られている、5-ヒドロキシメチル-2-メチルピリジン-3-オールの誘導体類であると理解される。
ビタミンB7(ビオチン)、ビタミンH又は「皮膚ビタミン」とも称される。ビオチンは、(3aS,4S,6aR)-2-オキソヘキサヒドロチエノール[3,4-d]イミダゾール-4-吉草酸である。
【0061】
本発明によれば、ビタミン類としては、パンテノール、パントラクトン、ニコチンアミド、及びビオチンが特に好ましい。
【0062】
f)毛髪調節剤
毛髪調節剤は下記のものを含む:
-新しい毛周期の成長を誘発し、成長速度を高め、又は毛幹径を増加させる、毛髪成長刺激剤;
-例えば、毛髪量、毛髪の光沢、並びに毛髪の強度及び毛髪の厚さを増加させるような、毛髪に効果を有する薬剤;
-毛包に効果を有する薬剤、及び
-毛髪成長阻害剤。
【0063】
効果的な毛髪調節剤であるためには、通常は毛根まで経皮的及び経毛包的に浸透する必要があり、そのため、浸透促進剤を添加すると、毛髪調節剤の効果は直接高められる。
【0064】
大部分の毛髪調節剤は、脱毛を防止し、遅延させる、毛髪成長刺激活性剤である。毛髪成長刺激活性剤を用いた薬物治療は、多くの場合、ミノキシジル、フィナステリド、デュタステリド、ビカルタミド、フルタミド、プロゲステロン誘導体、又はプレグナン誘導体を含むがこれらに限定されない薬物の使用に関連する。
【0065】
化粧品組成物に使用される他の毛髪成長刺激物質としては、亜鉛及び亜鉛塩、不飽和脂肪酸、プロシアニジンオリゴマー、γ-リノレン酸、ビオチン、胎盤抽出物、パントテン酸及びそれらの誘導体、プロスタグランジン、例えば、ビマトプロスト、メチルアミドジヒドロノルアルファプロスタール(methylamido dihydro noralfaprostal)、及び/又はタフルプロスト;マグネシウム、アラントイン、テオフィリン、並びに大麦、ブドウ種子、リンゴ種子、ノコギリヤシ(saw palmetto)、ウバウルシ、緑茶、プロポリス、エゾウコギ根(eleuthero root)、松樹皮由来の抽出物を含むが、これらに限定されない植物抽出物がある。
【0066】
プリン及びプリン誘導体は、脱毛を減少させることが知られている。
【0067】
例えば、脱毛症の治療のための、既知の頭皮血液循環促進剤としては、アセチルコリン誘導体、ニコチン酸誘導体、コショウ由来の植物抽出物、朝鮮人参(ginseng)由来の植物抽出物、センブリ(swertia herb)由来の植物抽出物を含むが、これらに限定されない。
【0068】
毛包に効果を有する適切な薬剤としては、タウリン及びタウリン誘導体、或いはL-カルニチン又はL-カルニチン誘導体がある。
【0069】
毛髪成長阻害剤は、主に美容上の理由で使用される。それらは、ナイアシンアミド、チアゾリジノン誘導体、プロテインキナーゼC阻害剤、オルニチンデカルボキシラーゼ阻害剤、トリヒドロキシプリン塩;Pilinhib(登録商標)(BASF Beauty Care Solutions)として販売されている、ダイズタンパク質加水分解物、尿素、サリチル酸、ヤナギ(willow)抽出物、ハマメリス抽出物、アルニカ抽出物、オトギリソウ(hypericum)抽出物、セイヨウシロヤナギ(salix alba)抽出物、及びメントールの組み合わせを含むがこれらに限定されない。
【0070】
g)脱臭剤又は制汗剤
化粧品脱臭剤は、体臭を打ち消し、マスキングし、又は除去する。アポクリン発汗時の皮膚細菌の影響のために、不快な臭気を有する分解産物の形成と共に、体臭が生じる。従って、脱臭剤は、抗微生物剤、臭気吸収剤、及び/又は酵素阻害剤として作用する活性成分を含む。
【0071】
適切な抗微生物剤としては、基本的に、グラム陽性菌に対して効果的なすべての物質であり、例えば、4-ヒドロキシ安息香酸並びにその塩及びエステル、N-(4-クロロフェニル)-N'-(3,4-ジクロロフェニル)尿素、2,4,4'-トリクロロ-2'-ヒドロキシジフェニルエーテル(トリクロサン)、4-クロロ-3,5-ジメチルフェノール、2,2'-メチレンビス(6-ブロモ-4-クロロフェノール)、3-メチル-4-(1-メチルエチル)フェノール、2-ベンジル-4-クロロフェノール、3-(4-クロロフェノキシ)-1,2-プロパンジオール、3-ヨード-2-プロポニルブチルカルバマート、クロルヘキシジン、3,4,4'-トリクロロカルバニリド(TTC)、抗細菌芳香剤、チモール、タイム油、オイゲノール、チョウジ(clove)油、メントール、ミント油、ファルネソール、フェノキシ-エタノール、グリセロールモノカプラート、グリセロールモノカプリラート、グリセロールモノラウラート(GML)、ジグリセロールモノカプラート(DMC)、サリチル酸N-アルキルアミド、例えば、N-オクチルサリチルアミド又はN-デシルサリチルアミドなどがある。
【0072】
適切な酵素阻害剤としては、例えば、エステラーゼ阻害剤がある。これらの阻害剤としては、好ましくは、クエン酸トリアルキル、例えば、クエン酸トリメチル、クエン酸トリプロピル、クエン酸トリイソプロピル、クエン酸トリブチル、具体的には、クエン酸トリエチル(Hydagen(登録商標)CAT)がある。この物質は酵素活性を阻害し、それによって、臭気の発生を低下させる。適切なエステラーゼ阻害剤である他の物質としては、硫酸ステロール又はリン酸ステロール、例えば、ラノステロール、コレステロール、カンペステロール、スチグマステロール、及びシトステロールの硫酸エステル又はリン酸エステルなど、ジカルボン酸及びそのエステル、例えば、グルタル酸、グルタル酸モノエチル、グルタル酸ジエチル、アジピン酸、アジピン酸モノエチル、アジピン酸ジエチル、マロン酸、及びマロン酸ジエチルなど、ヒドロキシカルボン酸及びそのエステル、例えば、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、又は酒石酸ジエチルなど、並びにグリシン酸亜鉛がある。
【0073】
適切な臭気吸収剤とは、臭気発生化合物を吸収し、十分に保持することができる物質である。それらは各構成成分の分圧を低下させ、それにより、各構成成分の拡散速度も減少させる。この過程において重要なことは、香料が弱められないように保持されなくてはならないことである。臭気吸収剤は、細菌に対して効果がない。それらは、例えば、主成分として、リシノール酸の亜鉛錯塩、或いは「保留剤」として当業者に既知の、特定の大部分の臭気中和芳香剤、例えばラダナム若しくはエゴノキ(styrax)の抽出物、又はある種のアビエチン酸誘導体などを含む。臭気マスキング剤としては、芳香剤又は香油があり、その臭気マスキング剤としての機能に加えて、それぞれの香調(fragrance note)を脱臭剤に与える。香油として挙げることができるものは、例えば、天然及び合成の芳香剤の混合物である。天然芳香剤としては、花、茎及び葉、果実、果皮、根、木、ハーブ及び草、針状葉及び枝、並びに樹脂及びバルサムに由来する抽出物がある。また、動物原材料、例えば、ジャコウネコ及びカストリウムなども適する。典型的な合成芳香化合物としては、エステル、エーテル、アルデヒド、ケトン、アルコール、及び炭化水素型の製品がある。エステル型の芳香化合物としては、例えば、酢酸ベンジル、p-tert-ブチルシクロヘキシルアセタート、酢酸リナリル、酢酸フェニルエチル、安息香酸リナリル、ギ酸ベンジル、アリルシクロヘキシルプロピオナート、プロピオン酸スチラリル、及びサリチル酸ベンジルがある。エーテル類は、例えば、ベンジルエチルエーテルを含み、アルデヒド類は、例えば8〜18個の炭素原子を有する直鎖状アルカナール、シトラール、シトロネラール、シトロネリルオキシ-アセトアルデヒド、シクラメンアルデヒド、ヒドロキシシトロネラール、リリアール、及びボルゲオナールを含み、ケトン類は、例えば、イオノン及びメチルセドリルケトンを含み、アルコール類は、アネトール、シトロネロール、オイゲノール、イソオイゲノール、ゲラニオール、リナロール、フェニルエチルアルコール、及びテルピネオールを含み、炭化水素類は、主に、テルペン及びバルサムを含む。しかしながら、心地よい香調を共に作り出す、異なる芳香剤の混合物を使用することが好ましい。芳香成分として主に使用される、比較的低揮発性の精油も、香油として適し、例えば、セージ油、カミツレ(camomile)油、チョウジ油、メリッサ油、ミント油、桂皮葉油(cinnamon leaf oil)、シナノキ花油(linden blossom oil)、杜松実(juniper berry)油、ベチベルソウ油、乳香(olibanum)油、ガルバヌム油、ラブダナム油、及びラバンジン油などがある。ベルガモット油、ジヒドロミルセノール、リリアール、リラール、シトロネロール、フェニルエチルアルコール、ヘキシルシンナムアルデヒド、ゲラニオール、ベンジルアセトン、シクラメンアルデヒド、リナロール、ボイスアンブレン・フォルテ(boisambrene forte)、アンブロキサン(ambroxan)、インドール、ヘジオン、サンデリス(sandelice)、レモン油、マンダリン油、オレンジ油、アリルアミルグリコラート、シクロベルタール(cyclovertal)、ラバンジン油、オニサルビア(clary sage)油、ダマスコン、ゼラニウム油バーボン、サリチル酸シクロヘキシル、イソ-E-スーパー(iso-E-super)、フィクソリド(Fixolide) NP、エベルニル、イラルデイン(iraldein)ガンマ、フェニル酢酸、酢酸ゲラニル、酢酸ベンジル、ローズオキシド、ロミラート(romilat)、イロチル(irotyl)、及びフロラマート(floramat)を単独で又は混合物として使用するのが好ましい。
【0074】
制汗剤
制汗剤は、エクリン汗腺の活性に作用することによって、汗の産生を減少させ、そのため、脇の下の湿気及び体臭が打ち消される。制汗剤の水性製剤又は無水製剤は、通常、収斂性活性成分を含む。
【0075】
収斂性制汗活性成分としては、主に、アルミニウム塩、ジルコニウム塩、又は亜鉛塩がある。このような適切な発汗抑制(antihydrotic)活性成分としては、例えば、塩化アルミニウム、アルミニウムクロロヒドラート、アルミニウムジクロロヒドラート、アルミニウムセスキクロロヒドラート、及びそれらの錯体化合物、例えば、1,2-プロピレングリコールとの錯体化合物、アルミニウムヒドロキシアラントイナート、アルミニウムクロリドタルトラート、アルミニウムジルコニウムトリクロロヒドラート、アルミニウムジルコニウムテトラクロロヒドラート、アルミニウムジルコニウムペンタクロロヒドラート、及びそれらの錯体化合物、例えば、グリシンなどのアミノ酸との錯体化合物がある。
【0076】
化粧品組成物及び/又は医薬組成物
本発明による浸透促進剤は、化粧品組成物又は他の局所用組成物、好ましくはエマルション型の組成物で使用され、最も好ましくは、カプリロイルアラニンエチルエステルは、W/O型エマルションで浸透促進剤として使用される。これらの化粧品組成物又は他の局所用組成物は、浸透促進剤を、少なくとも1つの成分と組み合わせて含むが、その少なくとも1つの成分は、浸透促進剤とは異なり、且つ、化粧活性化合物、乳化剤、界面活性剤、保存料、香油、増粘剤、ヘアポリマー、ヘア及びスキンコンディショナー、グラフトポリマー、水溶性又は分散性のシリコーン含有ポリマー、ゲル化剤、ケア剤、カラーリング剤、着色剤、染料、顔料、稠度付与剤(agents for imparting consistency)、保湿剤、リオイリング剤(re-oiling agent)、コラーゲン、タンパク質加水解物、脂質、抗酸化剤、消泡剤、帯電防止剤、皮膚軟化剤、及び柔軟剤より選択される。
【0077】
抗酸化剤は、有利には、アミノ酸(例えば、グリシン、ヒスチジン、チロシン、トリプトファン)及びそれらの誘導体、イミダゾール(例えば、ウロカニン酸)及びそれらの誘導体、ペプチド、例えば、D,L-カルノシン、D-カルノシン、L-カルノシン及びそれらの誘導体(例えばアンセリン)、カロチノイド、カロテン(例えば、β-カロテン、リコペン)、及びそれらの誘導体、クロロゲン酸及びそれらの誘導体、リポ酸(liponic acid)及びそれらの誘導体(例えば、ジヒドロリポ酸)、アウロチオグルコース、プロピル-チオウラシル、及び他のチオール類(例えば、チオレドキシン、グルタチオン、システイン、シスチン、シスタミン、並びにそれらのグリコシルエステル、N-アセチルエステル、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、アミルエステル、ブチルエステル及びラウリルエステル、パルミトイルエステル、オレイルエステル、γ-リノレイルエステル、コレステリルエステル、及びグリセリルエステル)並びにそれらの塩、ジラウリルチオジプロピオナート、ジステアリルチオジプロピオナート、チオジプロピオン酸、及びそれらの誘導体(エステル、エーテル、ペプチド、脂質、ヌクレオチド、ヌクレオシド、及び塩)、並びに、極めて低い耐性用量(例えばpmol〜μmol/kg)のスルホキシイミン化合物(例えば、ブチオニンスルホキシイミン、ホモシステインスルホキシイミン、ブチオニンスルホン、ペンタ-、ヘキサ-及びヘプタ-チオニンスルホキシイミン)、更に、(金属)キレート化剤(例えばα-ヒドロキシ-脂肪酸、パルミチン酸、フィチン酸、ラクトフェリン)、α-ヒドロキシ酸(例えば、クエン酸、乳酸、リンゴ酸)、フミン酸、胆汁酸、胆汁抽出物、ビリルビン、ビリベルジン、EDTA、及びそれらの誘導体、不飽和脂肪酸及びそれらの誘導体(例えば、γ-リノレン酸、リノール酸、オレイン酸)、葉酸及びそれらの誘導体、ユビキノン及びユビキノール並びにそれらの誘導体、ビタミンC及びそれらの誘導体(例えば、アスコルビン酸ナトリウム、パルミチン酸アスコルビル、リン酸アスコルビルMg、酢酸アスコルビル)、トコフェロール及び誘導体(例えば、酢酸ビタミンE、トコトリエノール)、ビタミンA及び誘導体(ビタミンAパルミタート)、並びにベンゾイン樹脂のコニフェリルベンゾアート、ルチン酸及びそれらの誘導体、α-グリコシルルチン、フェルラ酸、フルフリリデン、カルノシン、ブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、ノルジヒドログアイアック樹脂酸、ノルジヒドログアイアレチン酸、トリヒドロキシブチロフェノン、尿酸及びそれらの誘導体、マンノース及びそれらの誘導体、亜鉛及びそれらの誘導体(例えばZnO、ZnSO4)、セレン及びそれらの誘導体(例えばセレンメチオニン)、並びにスチルベン及びそれらの誘導体(例えばスチルベンオキシド、トランス-スチルベンオキシド)からなる群より選択される。
【発明を実施するための形態】
【0078】
カプリロイルアラニンエチルエステルの生産方法
カプリロイルアラニンエチルエステル(KE4610)は二段階法で生産する。
【0079】
過程1:ショッテンバウマン法による、水溶液中におけるカプリロイルクロリドを用いたアラニンのアシル化。
カプリロイルクロリド120kg(0.74kmol)を、水100kg及びエタノール30kg中のアラニン66kg(0.74kmol)の激しく撹拌された水溶液に、15℃で、4〜5時間かけて添加する。20%NaOH(約140kg)を常に加えることにより、pH値を11〜12に維持する。温度は25℃を超えないように、pH値は10.5未満にならないようにするべきである。カプリロイルクロリドの添加を完了後、反応混合物を、20〜25℃、9以上のpHで、約2時間、後反応させる。
【0080】
この混合物を、1時間撹拌しながら、70℃まで加熱し、次いで、30%HCl水溶液約80kgを添加することによって、pHを1.8〜2.3に調節する。撹拌を停止した後に、この系は、水性塩溶液と、85〜90%のカプリロイルアラニン、カプリル酸(加水分解生成物)、エタノール、及びわずかの水を含む有機層とに分離し始める。水相を除去し、有機層(約205kg)は過程2で更に処理する。
【0081】
過程2:エステル化及び精製
有機層は、蒸留によって水/エタノールを除去し、所望のエステル化度(少なくとも80〜90%)に到達するまで新鮮なエタノールを添加することで、エステル化を行うが、エステル化は、GC分析することによって又は残留酸価を測定することによって調整することができる。次いで、エステル化混合物を分留する。低沸点物質の水、エタノール及びカプリル酸は、105℃までの温度、1mbar未満で除去され、最終生成物は137〜140℃、1mbar未満で蒸留することができる。高純度のエステルを得るために、混合物は、蒸留前に一定量のソーダ又はNaOHを添加することによってpH=7に調節して、それによって、揮発性の酸を蒸留不可能な塩に変えることができる。好ましい生成物は、蒸留後に1未満の酸価を有する。
【0082】
浸透促進剤の効能は、製造方法と無関係であり、従って、当業者に知られているカプリロイルアラニンエチルエステルの他の製造方法が可能であり、適している。
【実施例】
【0083】
[4.実施例]
4.1 促進剤を直接皮膚に塗布することによる浸透性試験(プレインキュベーション法)
本試験の目的は、化粧品製剤において皮膚透過促進剤として作用する下記の3つの試験物質(1つは最も近い従来技術の浸透促進剤である)の効力を測定することであった。
・浸透促進剤として周知のジメチルイソソルビド(DMI)-化粧品で使用される
・浸透促進剤1(PE1)-カプリロイルアラニンエチルエステル
・浸透促進剤2(PE2)-最も近い従来技術の分子、ドデシロイルアラニンエチルエステル
【0084】
試験は、浸透性試験を専門に扱う独立した試験機関で実施した。製剤1(W/O製剤)は、使用製剤であり、浸透促進剤を含まない。皮膚を、選択された浸透促進剤(DMI、PE1、及びPE2)とプレインキュベートし、30分間のインキュベーション後、製剤を皮膚表面より除去し、放射標識された3H-カフェイン又は3H-酢酸ビタミンEを混合した製剤1を塗布した。
【0085】
【表2】
【0086】
w/o製剤中に組み入れられたカフェイン及び酢酸ビタミンE(それぞれ、代表的な親水性及び親油性の化粧活性剤)の皮膚吸収速度に対する3つの浸透促進剤の影響について調査した。放射標識されたカフェイン及び酢酸ビタミンEを、マーカーとして使用した。in vitro皮膚透過性試験を、採皮したヒト皮膚(dermatomized human skin)(厚さ約500μm)を用いて、24時間にわたって、3回実施した。アクセプターコンパートメントから試料を4つの試料採取時間(1、3、6及び24時間)で取り出し、透過促進効果をスクリーニングした。
【0087】
試験化合物3H-カフェイン及び3H-酢酸ビタミンEの経皮吸収を、アクセプター培地中の放射標識物質の量を測定することによって観察した。
【0088】
試験化合物を、液体シンチレーション計測によって定量した。in vitro透過実験を開始する前に、両同位体のシンチレーション計測の直線性を立証した。
【0089】
試験法の説明
原料及び方法
【0090】
【表3】
【0091】
欧州委員会のSCCPガイドラインによれば、外科的処置より切除されたヒト皮膚は、in vivo条件下においてヒト皮膚に入り、通過する化合物の透過及び浸透過程を模擬実験するための適切なin vitro試験系である。
【0092】
浸透性試験では、500±100μmの厚さに採皮した1名のドナーのヒト皮膚(女性腹部皮膚)を使用し、試験を3回行った。全層皮膚を皮膚生検材料より調製し、-20℃で保存した。
【0093】
OECDガイドラインによれば、皮膚を-20℃、最長466日の期間で保存しても、その透過性は変わらない。皮膚は、解凍後、直ちに使用した。凍結-解凍サイクルの繰り返しは回避した。
【0094】
製剤1(浸透促進剤を含まない)を、放射標識された3H-カフェイン(比放射能60Ci/mmol)及び3H-酢酸ビタミンE(比放射能50Ci/mmol)と混合し、対照として皮膚に直接塗布した。放射標識試料を下記の通りに調製した。製剤1を、放射標識された3H-カフェイン又は3H-酢酸ビタミンEのいずれかと混合し、その結果、それぞれ2960000cpm/50μl又は1264557cpm/50μlになった。異なる3つの浸透促進剤(DMI、PE1、及びPE2)のうちの1つを皮膚へ塗布し、その後、放射性物質を混合したW/O製剤を塗布した。
【0095】
クレブスリンゲル緩衝液(KRB、pH=7.4)を、内部標準操作手順に従って調製した。KRBを、3H-カフェイン用のアクセプター培地として使用した。3H-酢酸ビタミンEには、2%ウシ血清アルブミン(BSA)を添加したKRBをアクセプター培地として使用した。3H-カフェイン及び3H-酢酸ビタミンEの溶液を使用して、検出方法を検証し、直線性を評価した。
【0096】
輸送試験
透過性試験を、ヒト皮膚で試験品目及び基準品目を用いて4回測定することにより実施した。輸送試験では、採皮した皮膚を直径24mmの穿孔器を用いて切断し、各試料について皮膚の厚さを5点で測定した。続いて、拡散チャンバーとして使用される円筒型ガラスのフランツセル上に、皮膚片を固定した。下部(アクセプター)チャンバーの体積は約12mlであり、一方、上部(ドナー)チャンバーの体積は可変である。皮膚の角質層が最上部になるように、真皮層を下向きにして皮膚を挿入した。
【0097】
製剤を塗布する前に、浸透促進剤(それぞれ20μl)を皮膚上へ塗り広げた。この方法は、浸透促進剤と化粧品組成物中の構成成分との起こりうる相互作用から生じる影響を回避するために使用した。
【0098】
室温で固体であるPE2(C12)を、水浴中(35〜40℃)で徐々に融解し、液体として塗布した。30分間のインキュベーション後、液体の浸透促進剤を、綿ボールを用いて優しく取り除いた。皮膚上で固化したPE2に関しては、固体膜を毛抜きで取り除いた。その後、製剤50μlを、皮膚表面に塗布した。アクセプター培地を、恒温器で32℃に調温し、400rpmの速度で連続的に撹拌した。皮膚の拡散面積は、約1.8cm2だった。アクセプター培地中への皮膚を介した透過性を、24時間にわたって観察した。アクセプター培地は、1、3、6及び24時間後の4つの異なる時点で、試料200μlを取り出すことにより試料採取した。試料容量を取り出した後、アクセプター培地には、あらかじめ加温されたKRB/KRB+2%BSAを補充した。アクセプターチャンバー中の活性成分濃度は、試料採取による希釈を考慮して、補正した。取り出された試料を、210μl又は500μlのシンチレーションカクテルと、200rpmで、少なくとも1時間混合し、シンチレーション計測によって放射活性を測定した。
【0099】
結果を、時間に対してプロットされたアクセプター培地への活性放出[cpm cm-2]として示した。直線回帰により、対応するキャリブレーションを用いて、未知の試料の活性成分量を計算した。
【0100】
結果
透過性試験の結果を、下記の表にまとめる。
【0101】
【表4】
【0102】
最も高い透過促進効果が、PE1で検出された。この製剤からの輸送は、いずれの浸透促進剤も含まない対照と比較して約5倍高く、実質的にはDMI又はPE2より高い。
【0103】
【表5】
【0104】
酢酸ビタミンEでは、はるかに遅い輸送を検出することができた。その理由は、製剤からのこの親油性物質の放出が不十分であるため、及び/又は皮膚内で親油性構造体に結合するためであり得る。塗布された浸透促進剤DMI及びPE1は、24時間の検出時間の間にほんのわずかな浸透促進効果を示す。しかしながら、PE2は酢酸ビタミンEの輸送を低下させ、実質的に、遅延剤として作用する。従来技術の分子PE2(ドデシルアラニンエチルエステル)と比較して、PE1(カプリロイルアラニンエチルエステル)は浸透効果を1.5倍に高めた。
【0105】
結論
w/o製剤に組み入れられた親水性物質カフェインについて、最も効果的な透過促進剤はPE1である。DMIはカフェインの輸送を約2倍に高め、PE2はカフェインの輸送を約3倍に高めた。
【0106】
同じw/o製剤に組み入れられた親油性酢酸ビタミンEの輸送は、使用された透過促進剤によって有意に高められない。それにもかかわらず、浸透促進剤としてのカプリロイルアラニンエチルエステルの使用は、それが親油性分子である酢酸ビタミンEの浸透に遅延効果を示さないため、DMI又はドデシロイルアラニンエチルエステルと比較しても依然として好ましい。
【0107】
4.2 W/O製剤中に組み入れられた促進剤による浸透性試験(組み入れ法)
化粧品製剤中に組み入れられ、皮膚に直接塗布しない時に、皮膚透過促進剤として作用するための下記の3つの試験物質を用いて、記述された試験を、同様の実験構成で、部分的に繰り返した。
・浸透促進剤として周知のジメチルイソソルビド(DMI)-化粧品で使用される
・浸透促進剤1(PE1)-カプリロイルアラニンエチルエステル
・浸透促進剤2(DGME)-従来技術の浸透促進剤Transcutol(Gattefossee)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル
【0108】
製剤1(W/O製剤)を、基本製剤とし、いずれの浸透促進剤も含まない基準製剤とした。今回は、皮膚を、選択された浸透促進剤(DMI、PE1、及びDGME)とプレインキュベートしなかったが、5%の浸透促進剤をそれぞれ製剤1中に組み入れ、得られた製剤を放射標識された3H-カフェイン又は3H-酢酸ビタミンEと再び混合した。
【0109】
【表6】
【0110】
結果:
透過性試験の結果を表6にまとめる。
【0111】
【表7】
【0112】
結論
浸透促進剤がW/O製剤中に組み入れられる場合も、親水性マーカー化合物カフェインについて、最も効果的な透過促進剤はPE1である。いずれの促進剤も含まない基準製剤と比較して、DMIはカフェインの輸送にわずかな減少をもたらし、DGMEは輸送をわずかに高めた。
いくつかの実施形態を以下に示す。
項1
カプリロイルアラニンエチルエステルを浸透促進剤として含む、化粧品組成物。
項2
全組成物に対して、0.1〜90重量%のカプリロイルアラニンエチルエステルを含むことを特徴とする、項1に記載の化粧品組成物。
項3
エマルション組成物であることを特徴とする、項1又は項2に記載の化粧品組成物。
項4
カプリロイルアラニンエチルエステル及び少なくとも1種の活性剤を含む、化粧品組成物。
項5
活性剤が、UVフィルター、抗ざ瘡活性剤、抗老化活性剤、抗炎症剤、毛髪成長調節剤、毛髪又は毛包に効果を有する薬剤、制汗剤又は脱臭剤、美白剤、セルフタンニング剤、ペプチド、オリゴペプチド、タンパク質、アセチルサリチル酸、アトロピン、アズレン、ヒドロコルチゾン及びそれらの誘導体、例えばヒドロコルチゾン-17-吉草酸エステル、ビタミン類、特に、ビタミンB系及びD系、具体的には、ビタミンB1、ビタミンB12、ビタミンD、ビタミンA及びそれらの誘導体、例えばレチニルパルミタート、ビタミンE又はそれらの誘導体、例えば酢酸トコフェリルなど、ビタミンC及びそれらの誘導体、例えばアスコルビルグルコシドなど、さらに、ナイアシンアミド、パンテノール、ビサボロール ポリドカノール、不飽和脂肪酸、例えば、必須脂肪酸(通常、ビタミンFと呼ばれる)など、具体的には、γ-リノレン酸、オレイン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、及びそれらの誘導体、クロラムフェニコール、カフェイン、プロスタグランジン、チモール、カンファー、スクアレン、植物由来及び動物由来の抽出物又は他の製品、例えば、マツヨイグサ油、ルリジサ油又はイナゴマメ油、魚油、タラ肝油、さらに、セラミド及びセラミド様化合物、香料抽出物、緑茶抽出物、スイレン抽出物、カンゾウ抽出物、及びマンサク、ふけ防止活性化合物(例えば、二硫化セレン、ジンクピリチオン、ピロクトン、オラミン、クリンバゾール、オクトピロックス、ポリドカノール、及びそれらの組み合わせ)、並びに活性化合物複合体、例えばγ-オリザノールと、パントテン酸カルシウム、塩化カルシウム、及び酢酸カルシウムなどのカルシウム塩との活性化合物複合体、NOシンターゼ阻害剤、例えば、ニトロアルギニン;カテコール及びカテコールの胆汁酸エステル、カテコール又はカテコールの胆汁酸エステルを含有する植物又は植物の一部に由来する抽出物、ツバキ科植物の葉;ポリフェノール;フラボン及びその誘導体、セリコシド、ピリドキソール、ビタミンK、ビオチン、及び芳香物質;α-ヒドロキシ酸、例えば、乳酸若しくはサリチル酸又はそれらの塩、例えば、乳酸Na、乳酸Ca、又は乳酸TEA、尿素、アラントイン、セリン、ソルビトール、乳タンパク質、及びパンテノールからなる群より選択されることを特徴とする、項4に記載の化粧品組成物。
項6
活性剤が、UVフィルター、抗ざ瘡活性剤、抗老化活性剤、抗炎症剤、毛髪調節剤、制汗剤又は脱臭剤、美白剤、セルフタンニング剤、及びビタミン類からなる群より選択されることを特徴とする、項4に記載の化粧品組成物。
項7
カプリロイルアラニンエチルエステル及び少なくとも1種のUVフィルターを含む、化粧品組成物。
項8
カプリロイルアラニンエチルエステル及び少なくとも1種のセルフタンニング剤又は少なくとも1種の美白剤を含む、化粧品組成物。
項9
カプリロイルアラニンエチルエステル並びに少なくとも1種の制汗剤及び/又は脱臭剤を含む、化粧品組成物。
項10
カプリロイルアラニンエチルエステル並びに少なくとも1種の抗ざ瘡活性剤及び/又は少なくとも1種の抗炎症活性剤を含む、化粧品組成物。
項11
カプリロイルアラニンエチルエステル及び少なくとも1種の抗老化活性剤を含む、化粧品組成物。
項12
カプリロイルアラニンエチルエステル及びビタミン類を含む、化粧品組成物。
項13
カプリロイルアラニンエチルエステル及び少なくとも1種の毛髪調節活性剤を含む、化粧品組成物。
項14
薬理活性物質及び化粧活性物質の浸透促進剤としての、カプリロイルアラニンエチルエステルの使用。
項15
カプリロイルアラニンエチルエステルを含む組成物を局所的に塗布することによる、薬理活性物質及び化粧活性物質の皮膚浸透を促進する方法。