(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、ワイヤハーネスに取り付けられる外装材(例えば、チューブ等)は、黒色であることが多い。また、外装材を配線体に固定するための粘着テープも黒色であることが多い。従って、黒い外装材の上に黒い粘着テープが巻かれているか否かを検査しなければならない場合が生じる。
【0008】
しかしながら、上記のように外装材と粘着テープの色が良く似ている場合、粘着テープが巻かれているか否かを単純に色によって判定することが難しく、検査精度の低下を招いていた。
【0009】
また、粘着テープを巻いて固定する工程が手作業で行われる場合、巻かれた粘着テープの形状が一定になりにくい。このため、粘着テープの形状だけから粘着テープの有無を判定することとすると、誤判定が生じ易い。
【0010】
また、配線体に誤った外装材が取り付けられたり、外装材の取付けが漏れたりした場合でも、その上に粘着テープを巻くことにより問題の部分が隠れてしまうことがあった。この場合、従来の外観検査装置では不良を安定的に検出することが難しく、改善の余地が残されていた。
【0011】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、ワイヤハーネスに巻かれた粘着テープを安定して検出し、検査精度を向上させたワイヤハーネスの外観検査装置を提供することにある。
【0012】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0013】
本発明の第1の観点によれば、以下の構成の画像検査装置が提供される。即ち、この画像検査装置は、配線体と、外装材と、粘着テープと、を備えるワイヤハーネスについて、前記粘着テープが巻かれているか否かを検査する。前記外装材は、前記配線体に装着される。前記粘着テープは、少なくとも前記外装材の周囲に巻かれる。この画像検査装置は、撮影部と、検査部と、を備える。前記撮影部は、前記ワイヤハーネスを撮影する。前記検査部は、前記撮影部により得られた画像から、巻かれた前記粘着テープに生じている皺を検出することにより、前記粘着テープが巻かれているか否かを検査する。
【0014】
これにより、例えば粘着テープの色が周囲と紛らわしい場合であっても、粘着テープに生じる皺を検出することで、検査を精度良く行うことができる。また、粘着テープの皺が内側の外装材の形状をある程度反映することを利用して、粘着テープに覆われている外装材の組付けが正しいか否かについても検査することができる。
【0015】
前記の画像検査装置においては、前記検査部は、前記外装材の周囲に当該外装材と同じ又は類似である色の粘着テープが巻かれているか否かを検査可能であることが好ましい。
【0016】
即ち、本発明の画像検査装置は、外装材と粘着テープの色が同じ又は類似である場合に特に有利である。
【0017】
前記の画像検査装置においては、前記検査部は、黒色の前記外装材の周囲に黒色の粘着テープが巻かれているか否かを検査可能であることが好ましい。
【0018】
即ち、本発明の画像検査装置は、外装材と粘着テープの色が何れも黒色である場合に特に有利である。
【0019】
前記の画像検査装置においては、前記検査部は、前記画像から、所定値よりも明るい画素が連続する領域である明領域を検出し、当該明領域の形状に基づいて前記皺を検出することが好ましい。
【0020】
これにより、粘着テープの巻き皺に基づくハイライト部分が明領域として現れ、この明領域の形状に特定の傾向があることを利用して、当該皺を適切に検出することができる。
【0021】
前記の画像検査装置においては、前記検査部が前記画像から前記明領域を検出する前に、前記所定値よりも暗い画素によって、前記ワイヤハーネスを長手方向で分割する線を描画する処理が行われることが好ましい。
【0022】
これにより、明領域を、ワイヤハーネスの長手方向で強制的に分断した形で検出することができる。従って、画像に乱れ等があっても、粘着テープの巻き皺に基づくハイライト部分を明領域として安定して検出することができる。
【0023】
前記の画像検査装置においては、前記検査部が前記画像から前記明領域を検出する前に、前記所定値よりも暗い画素が連続する領域である暗領域の輪郭線を検出する処理、及び、前記所定値よりも暗い画素によって前記輪郭線を描画する処理が行われることが好ましい。
【0024】
これにより、明領域を、暗領域の輪郭の内外を分断した形で検出することができる。従って、粘着テープの巻き皺に基づくハイライト部分を安定して検出することができる。
【0025】
前記の画像検査装置においては、前記輪郭線を検出する前に、前記暗領域の欠けを除去する処理が行われることが好ましい。
【0026】
これにより、暗領域の欠けを無くすことができるので、粘着テープ等の形状を実質的に良好に反映させた輪郭線を得ることができる。従って、画像に乱れ等があっても、粘着テープの巻き皺に基づくハイライトを明領域として適切に得ることができる。
【0027】
前記の画像検査装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記検査部は、前記画像から、前記所定値よりも暗い画素が連続する領域である暗領域を検出する。前記検査部は、前記画像において、面積が大きい順に選択された1又は複数の前記暗領域によって実質的に囲まれる部分から前記明領域を検出する。
【0028】
これにより、面積の大きい暗領域によって実質的に囲まれる明領域を検出することで、粘着テープの巻き皺に基づくハイライトを明領域として適切に得ることができる。
【0029】
本発明の第2の観点によれば、以下の画像検査方法が提供される。即ち、この画像検査方法は、配線体と、外装材と、粘着テープと、を備えるワイヤハーネスについて、前記粘着テープが巻かれているか否かを検査する。前記外装材は、前記配線体に装着される。前記粘着テープは、少なくとも前記外装材の周囲に巻かれる。この画像検査方法は、撮影工程と、検査工程と、を含む。前記撮影工程では、前記ワイヤハーネスを撮影する。前記検査工程では、前記撮影工程で得られた画像から、巻かれた前記粘着テープに生じている皺を検出することにより、前記粘着テープが巻かれているか否かを検査する。
【0030】
これにより、例えば粘着テープの色が周囲と紛らわしい場合であっても、粘着テープに生じる皺を検出することで、検査を精度良く行うことができる。また、粘着テープの皺が内側の外装材の形状をある程度反映することを利用して、粘着テープに覆われている外装材の組付けが正しいか否かについても検査することができる。
【0031】
本発明の第3の観点によれば、以下の構成の画像検査プログラムが提供される。即ち、この画像検査プログラムは、配線体と、外装材と、粘着テープと、を備えるワイヤハーネスについて、前記粘着テープが巻かれているか否かを検査する。前記外装材は、前記配線体に装着される。前記粘着テープは、少なくとも前記外装材の周囲に巻かれる。この画像検査プログラムは、撮影ステップと、検査ステップと、を含む。前記撮影ステップでは、前記ワイヤハーネスを撮影する。前記検査ステップでは、前記撮影ステップで得られた画像から、巻かれた前記粘着テープに生じている皺を検出することにより、前記粘着テープが巻かれているか否かを検査する。
【0032】
これにより、例えば粘着テープの色が周囲と紛らわしい場合であっても、粘着テープに生じる皺を検出することで、検査を精度良く行うことができる。また、粘着テープの皺が内側の外装材の形状をある程度反映することを利用して、粘着テープに覆われている外装材の組付けが正しいか否かについても検査することができる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る外観検査装置1の構成を示す模式図及びブロック図である。
【0035】
図1に示す本実施形態の外観検査装置(画像検査装置)1は、ワイヤハーネス組立ライン2において製造されたワイヤハーネス5が正確に組み立てられたか否かを検査する装置である。
【0036】
ワイヤハーネス組立ライン2においては、ワイヤハーネス5を組み立てるための組立図板3が、適宜の経路を図略の搬送コンベアによって搬送されるように構成されている。
【0037】
ここで、検査対象となるワイヤハーネス5について簡単に説明する。ワイヤハーネス5とは、機械(本実施形態においては、自動車等の車両)に複数設置された電気機器同士を電気的に接続するために、車両に設定された配線経路に沿って組み付けられる配線部材である。ワイヤハーネス5は、電線などの配線体が適宜分岐された状態で粘着テープ等により結束されて構成されている。
図1ではワイヤハーネス5が簡略的に描かれているが、ワイヤハーネス5の適宜の部位には、車両に固定するための固定部材が取り付けられる。また、ワイヤハーネス5の端部には、電気機器への電気的な接続のためのコネクタが取り付けられる。このほか、ワイヤハーネス5には、上記した粘着テープ、固定部材、コネクタのほかに、チューブ、シート、蛇腹管等の外装材が必要に応じて取り付けられる。
【0038】
ワイヤハーネス5は、前記した組立図板3上で、作業者の手作業により製造される。具体的に説明すると、組立図板3には、ワイヤハーネス5やその半製品を保持することが可能な複数のハーネス保持部材6が、突出状に固定されている。ハーネス保持部材6の先端部の形状は様々であり、例えば、略U字状の電線支持部となっているものや、コネクタ保持部となっているものや、固定部材を嵌め込んで保持できるようになっているもの等を挙げることができる。作業者は、組立図板3に取り付けられているハーネス保持部材6に電線を保持させながらコネクタ等を取り付けることで、ワイヤハーネス5を組み立てていく。
【0039】
本実施形態の外観検査装置1は、上記のワイヤハーネス5について予め設定された複数の検査対象部位のそれぞれについて検査を行うように構成されている。具体的な検査項目としては、粘着テープによる固定漏れや部品の取付漏れがないか否か、あるいは、間違った部品が取り付けられていないか等である。
【0040】
外観検査装置1は、
図1に示すように、カメラ(撮影部)12と、撮影用の光源13と、コンピュータ(制御部)30と、を備える。カメラ12及び光源13は、コンピュータ30に電気的に接続される。
【0041】
カメラ12は、ラインに沿って搬送される組立図板3に対向するように配置され、ワイヤハーネス5の組立途中又は組立完了後の時点で、組立図板3に保持されているワイヤハーネス5を撮影する。なお、
図1においてカメラ12は単独で示されているが、必要に応じて複数設置されても良い。
【0042】
光源13は、カメラ12で撮影されるワイヤハーネス5を照明できるように構成されている。
【0043】
外観検査装置1は、カメラ12や光源13等を制御する制御部としてのコンピュータ30を備えている。このコンピュータ30は、設定部31と、記憶部32と、検査部35と、検査結果出力部37と、を備えている。
【0044】
具体的には、コンピュータ30は、図示しないCPU、ROM、RAM等を備えている。なお、CPUは、演算部や画像処理部に相当する。そして、前記ROMには、本発明のワイヤハーネスの画像検査方法における撮影工程、検査工程等を行うための画像検査プログラムが予め記憶されている。なお、この画像検査プログラムは、前記の画像検査方法に対応して、撮影ステップと、検査ステップと、を含んでいる。
【0045】
この構成で、上記のハードウェアとソフトウェアとが協働することにより、コンピュータ30を、
図4に示す、設定部31、記憶部32、検査部35、及び検査結果出力部37等として動作させることができる。そしてコンピュータ30は、光源13で照明しつつカメラ12がワイヤハーネス5を撮影するように制御し、得られた画像を記憶部32に記憶するとともに、検査部35で検査を行い、その結果を検査結果出力部37によって出力するように構成されている。
【0046】
次に、コンピュータ30が備える構成について詳細に説明する。
【0047】
設定部31は、コンピュータ30に接続された図示しないマウス及びキーボード等を介して、検査に関する事項等の設定を受け付ける。検査に関する事項には、ワイヤハーネス5のどの部位を検査対象とするか等が含まれるが、これらに限定されない。
【0048】
記憶部32は、設定部31で設定された事項、カメラ12から取得した画像データ、及び検査部35による検査結果等の様々な情報を記憶することができる。
【0049】
検査部35は、記憶部32に記憶された画像データを解析することで、ワイヤハーネス5に設定された検査対象部位のそれぞれについて検査を行う。検査結果は、検査結果出力部37へ出力される。
【0050】
検査結果出力部37は、検査部35による検査結果を、例えば「OK」「NG」のような形で、コンピュータ30に接続された図示しないディスプレイ等に出力する。
【0051】
次に、検査部35において、外装材の外側に、当該外装材とよく似た色の粘着テープが巻かれている部位の検査を行う方法について説明する。
【0052】
本実施形態の検査部35では、粘着テープを外装材の外側に巻き付けた場合に現れる皺から、当該粘着テープの有無を判定する。
【0053】
即ち、粘着テープを外装材の外側に巻き付けた場合、粘着テープの表面に巻き皺(小さい凹凸)が現れ、この巻き皺は、外装材の外形をある程度反映した特徴的な形状を示す。
【0054】
この巻き皺に光が当たると、主に相対的に凸となっている箇所において明るい部分が現れる。従って、検査対象部位に粘着テープが正しく巻かれていれば、検査対象部位に光源13からの光を当てながらカメラ12で撮影した画像に、暗い画素に囲まれた明るい画素の領域(閉じた領域)が現れることになる。
【0055】
以下、ワイヤハーネス5を撮影した画像の3つの例を用いて、画像検査方法を具体的に説明する。
【0056】
図2(第1例)は、ワイヤハーネス5において、蛇腹管状に形成された黒い軟質の外装材の中途部に黒い粘着テープを巻き付けて固定した部分を、カメラ12で撮影した画像である。なお、本願図面において写真は書式の都合上グレースケールで示されているが、実際にはカラー撮影が行われる。このように、粘着テープを巻いた部分において、巻き皺の凸の部分にハイライトが現れていることがわかる。
【0057】
図2の画像を適宜の閾値で2値化したものが
図3であり、
図3において、当該閾値より明るい画素が白とされ、閾値より暗い画素が黒になっている。この処理によって、粘着テープを巻いた部分の上記ハイライトが、白い画素が縦又は横に連続する領域として現れている。なお、以下の説明では、白い画素が連続する領域を「白領域」と呼ぶことがある。この白領域は、元の画像(
図2)において、上記の閾値より明るい画素が連続する領域(明領域)に相当する。2値化された画像からの白領域の検出は、例えば、周知の方法であるラベリング処理によって行うことができる。
【0058】
図3の例において、粘着テープが巻かれた部分に、白領域が、ワイヤハーネス5の長手方向に多数並んで現れている。また、殆どの白領域は細長い形状を有しており、その長手方向は、ワイヤハーネス5の長手方向とほぼ垂直な方向に向けられている。このような白領域の形状は、外装材が蛇腹形状となっていることに起因したものである。
【0059】
逆に言えば、検査対象部位を2値化した画像に上記のような特徴的な形状の白領域が現れていれば、粘着テープが巻かれており、そうでなければ、粘着テープが巻かれていないと判定することができる。
【0060】
ただし、白領域は、上述した粘着テープの巻き皺のハイライトだけでなく、例えば外装材(粘着テープが巻かれず露出している部分)に形成されている凹凸のハイライト及び模様等によっても生じる。このことを考慮して、検査部35は、検出された白領域が所定の形状の条件を満たしているかを判別する。この白領域の形状の条件としては、縦方向の大きさ、横方向の大きさ、縦横比、面積、領域に外接する矩形の面積と当該領域の面積の比等が考えられる。
【0061】
図4には、白領域のうち、予め設定された形状の条件を満たしたものが、矩形で囲んで強調されて示されている。この
図4によれば、誤検出もゼロではないが、粘着テープの巻き皺に基づくハイライトを概ね良好に検出できていることがわかる。
【0062】
検査部35は、2値化した画像から、上記の特徴的な形状を有する白領域を検出し、検出個数(又は、検出した白領域の面積の合計)が所定の閾値以上であれば合格と判定し、閾値未満であれば不合格と判定する。これにより、外装材と粘着テープの色が殆ど同じであっても、粘着テープが正しく巻かれているか否かを適切に判定することができる。
【0063】
上述したように、外装材の外側に粘着テープを巻き付けた場合、巻き皺の形状には、当該外装材の外形がある程度反映される。従って、当該部位に正しく粘着テープが巻かれていても、粘着テープが巻かれる外装材の組付けが誤っていれば、本来現れるべき巻き皺の特徴が現れないことになる。このように、本実施形態の外観検査装置1によれば、外装材が粘着テープに覆われて隠れてしまっていても、当該外装材の組付けミスを検出することができる。
【0064】
このように粘着テープの巻き皺に基づいてワイヤハーネスを検査することは有用であるが、巻き皺の発生部位は不規則であるため、粘着テープの端部に巻き皺が発生する場合もある。この場合、撮影画像において粘着テープの巻き皺がワイヤハーネスの背景と同化し、巻き皺の形状の判定精度が低下する原因となる。以下、その対策について説明する。
【0065】
図5(第2例)は、ワイヤハーネス5において、平板状の部分を有するチューブ状の硬質の外装材に粘着テープを巻き付けて固定した部分をカメラ12で撮影したグレースケール画像である。
図5の画像では、外装材の平板状の部分に巻き付けられた粘着テープに光が当たることで、大面積のハイライトが現れている。
【0066】
図5の画像を2値化したものが
図6であり、この
図6において、上記の大面積のハイライトが白い画素の領域(符号8a)として表れているものの、当該白い画素の領域が、
図6に符号8bで示した巻き皺の白い画素を通じて、ワイヤハーネスの背景の白い画素(符号8c)と繋がっている。この場合、白い画素が連続する領域にハイライトと背景の両方が含まれてしまうため、形状を正しく判定することができない。
【0067】
そこで、本実施形態では、白領域をラベリング処理によって検出する前に、
図7に示すように、ワイヤハーネス5の長手方向と垂直な方向に、黒い画素の直線(分割線)を描画する処理を行う。この修正処理により、白い画素の領域が強制的に分断されるので、ハイライトに基づく白領域を正しく検出できることが期待できる。
図7には、検出された白領域のうち、予め設定された形状の条件を満たしたものが、矩形で囲んで強調された形で示されている。
【0068】
なお、白い画素の領域を分断するように修正する方法としては、上記のように直線を描画することに代えて、又はそれに加えて、ワイヤハーネス5の輪郭の一部を実質的に抽出して、黒い画素によって当該輪郭を描画することも有効である。以下、この例について説明する。
【0069】
図8(第3例)は、ワイヤハーネス5において、蛇腹管状に形成された黒い軟質の外装材の端部に黒い粘着テープを巻き付けて固定した部分を、カメラ12で撮影したグレースケール画像である。
【0070】
図8の画像を所定の閾値で2値化した結果が
図9に示されており、この例では、符号8dで示す粘着テープの巻き皺のハイライト部分が、符号8eの白い画素を通じて、ワイヤハーネスの背景の白い画素(符号8fの部分)と繋がってしまっている。
【0071】
この第3例において、まず検査部35は、白ではなく黒い画素が連続する領域を検出する。以下の説明では、黒い画素が連続する領域を「黒領域」と呼ぶことがある。この黒領域は、元の画像(
図8)において、上記の閾値より暗い画素が連続する領域(暗領域)に相当する。なお、2値化された画像から黒領域を検出する方法としては、白領域と同様に、周知のラベリング処理等を用いることができる。
【0072】
黒領域を全て検出した後、検査部35は、面積が最大である黒領域を残し、それ以外の黒領域を全て消去する処理を行う。これにより、
図10に示すように、黒い外装材及び黒い粘着テープに相当する部分だけを、背景のノイズ等を除去した状態で抽出することができる。ただし、黒領域を消去し過ぎて後述の輪郭検出時に良好な輪郭が得られない場合も考えられるので、面積の大きい順で複数の黒領域を残すようにしても良い。また、例えば、面積が最大である黒領域と、面積が2番目に大きい黒領域と、の面積比が所定の条件を満たす場合にだけ、両方の黒領域を残すようにしても良い。
【0073】
次に、検査部35は、
図10の画像を一時的に複製した上で、当該複製画像について、黒領域を膨張させた後、収縮させる画像処理を行う。黒領域の膨張処理とは、注目画素に上下左右斜めで隣接する8つの画素(いわゆる8近傍の画素)のうち少なくとも何れかが黒色であれば、当該注目画素を黒色とする処理を、全ての画素について行うものである。黒領域の収縮処理とは、注目画素に上下左右斜めで隣接する8つの画素のうち少なくとも何れかが白色であれば、当該注目画素を白色とする処理を、全ての画素について行うものである。
【0074】
黒領域の膨張処理を適宜の回数繰り返した後、収縮処理を同じ回数だけ繰り返すことにより、
図11のように、
図9の符号8eに相当する白い画素(即ち、黒領域の欠け)を除去した画像を得ることができる。
【0075】
その後、検査部35は、
図11の画像について公知の輪郭検出処理を行うことにより、
図12に示すように輪郭を抽出する。なお、事前に黒領域の欠けが除去されているので、輪郭を良好に得ることができる。そして、検査部35は、
図9に示す元の2値画像に対して、
図12で得られた輪郭を黒色で描画する。この結果として得られた画像(
図13)では、
図9に示す符号8dの部分を、符号8fの部分とは分断された形で白領域として検出し、巻き皺によるハイライトが生じているか否かを白領域の形状に基づいて適切に判断することができる。
【0076】
以上に説明したように、本実施形態の外観検査装置1は、電線と、外装材と、粘着テープと、を備えるワイヤハーネス5について、粘着テープが巻かれているか否かを検査する。外装材は、電線に装着される。粘着テープは、少なくとも外装材の周囲に巻かれる。この外観検査装置1は、カメラ12と、検査部35と、を備える。カメラ12は、ワイヤハーネス5を撮影する。検査部35は、カメラ12により得られた画像から、巻かれた粘着テープに生じている皺を検出することにより、粘着テープが巻かれているか否かを検査する。
【0077】
これにより、例えば粘着テープの色が周囲と紛らわしい場合であっても、粘着テープに生じる皺を検出することで、検査を精度良く行うことができる。また、粘着テープの皺が内側の外装材の形状をある程度反映することを利用して、粘着テープに覆われている外装材の組付けが正しいか否かについても検査することが可能になる。
【0078】
また、本実施形態の外観検査装置1において、検査部35は、外装材の周囲に当該外装材と同じ又は類似である色の粘着テープが巻かれているか否かを検査可能である。
【0079】
即ち、本実施形態の外観検査装置1は、外装材と粘着テープの色が同じ又は類似である場合に特に有利である。
【0080】
また、本実施形態の外観検査装置1において、検査部35は、黒色の外装材の周囲に黒色の粘着テープが巻かれているか否かを検査可能である。
【0081】
即ち、本実施形態の外観検査装置1は、外装材と粘着テープの色が何れも黒色である場合に特に有利である。
【0082】
また、本実施形態の外観検査装置1において、検査部35は、画像を2値化して白領域を検出し、当該白領域の形状に基づいて前記皺を検出する。
【0083】
これにより、粘着テープの巻き皺に基づくハイライト部分が2値化後の白領域として現れ、この白領域の形状に特定の傾向があることを利用して、当該皺を適切に検出することができる。
【0084】
また、本実施形態の外観検査装置1において、検査部35が画像から白領域を検出する前に、黒い画素によって、ワイヤハーネス5を長手方向で分割する線を描画する処理が行われる。
【0085】
これにより、白領域を、ワイヤハーネス5の長手方向で強制的に分断した形で検出することができる。従って、画像に乱れ等(例えば、
図6及び
図7の符号8bのような白い画素)があっても、粘着テープの巻き皺に基づくハイライト部分を白領域として安定して検出することができる。
【0086】
また、本実施形態の外観検査装置1において、検査部35が前記画像から白領域を検出する前に、黒領域の輪郭線を検出する処理、及び、当該輪郭線を画像に黒い画素で描画する処理が行われる。
【0087】
これにより、白領域を、黒領域の輪郭の内外を分断した形で検出することができる。従って、粘着テープの巻き皺に基づくハイライト部分を安定して検出することができる。
【0088】
また、本実施形態の外観検査装置1においては、黒領域の輪郭線を検出する前に、黒領域の欠けを除去する処理(具体的には、膨張処理と収縮処理の組合せ)が行われる。
【0089】
これにより、黒領域の欠けを無くすことができるので、粘着テープ等の形状を実質的に良好に反映させた輪郭線を得ることができる。従って、画像に乱れ等(例えば、
図9の符号8eのような白い画素)があっても、巻き皺に基づくハイライトを白領域として適切に得ることができる。
【0090】
また、本実施形態の外観検査装置1において、検査部35は、画像を2値化して黒領域を検出する。検査部35は、当該画像において、面積が最も大きい1又は複数の黒領域によって実質的に囲まれる部分(
図12の輪郭で囲まれる部分)から白領域を検出する。
【0091】
これにより、面積の大きい黒領域によって実質的に囲まれる白領域を検出することで、粘着テープの巻き皺に基づくハイライトを白領域として適切に得ることができる。
【0092】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0093】
外観検査装置1によって検査されるワイヤハーネス5の外装材及び粘着テープの色は、上記に限定されず、任意に定めて良い。例えば、高圧系のワイヤハーネスの場合、外装材及び粘着テープの両方がオレンジ色になる場合があるが、当然このような例も含まれる。
【0094】
外観検査装置1によって、粘着テープが巻かれているか以外の検査だけでなく、他の検査(例えば、コネクタが取り付けられているか)等の検査が行われても良い。
【0095】
画像を2値化する明るさの基準としては、例えば輝度を用いれば良いが、これに代えて明度を用いても良い。また、例えば、画素の色をRGBで表した場合の特定の色の輝度値を基準にしても良い。更には、画像を2値化することなく、閾値より明るい画素が連続する領域(明領域)、及び、閾値より暗い画素が連続する領域(暗領域)を検出しても良い。
【0096】
上記の実施形態では、硬質の外装材の場合には
図7のように分割線を描画し、軟質の外装材の場合には
図12のように輪郭線を描画するというように、画像の修正方法が外装材に応じて使い分けられている。しかしながら、
図7のように分割線を描画する処理と、
図12の輪郭線を描画する処理と、の両方が行われても良い。
【0097】
黒領域の欠けを除去する処理は、膨張処理と収縮処理の組合せとすることに代えて、膨張処理だけとしても良い。