特許第6574442号(P6574442)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6574442
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】基板を急速に冷却する方法および装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/31 20060101AFI20190902BHJP
   H01L 21/324 20060101ALI20190902BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20190902BHJP
【FI】
   H01L21/31 B
   H01L21/324 R
   H01L21/324 Q
   H01L21/68 N
【請求項の数】14
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-561693(P2016-561693)
(86)(22)【出願日】2015年3月17日
(65)【公表番号】特表2017-517877(P2017-517877A)
(43)【公表日】2017年6月29日
(86)【国際出願番号】US2015020905
(87)【国際公開番号】WO2015156968
(87)【国際公開日】20151015
【審査請求日】2018年3月16日
(31)【優先権主張番号】14/251,134
(32)【優先日】2014年4月11日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(72)【発明者】
【氏名】ラヴィ ジャレパリー
(72)【発明者】
【氏名】サンソニ スティーヴン ヴイ
(72)【発明者】
【氏名】サヴァンダイア キランクマル
【審査官】 鈴木 聡一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−260432(JP,A)
【文献】 特開2012−089591(JP,A)
【文献】 特開平07−254545(JP,A)
【文献】 特開平10−098048(JP,A)
【文献】 特開2000−100789(JP,A)
【文献】 特開2003−124134(JP,A)
【文献】 特開2008−166706(JP,A)
【文献】 特開2011−091373(JP,A)
【文献】 特表2002−525848(JP,A)
【文献】 特表2002−530858(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/150590(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/205
H01L 21/31
H01L 21/324
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を冷却する冷却チャンバであって、
内容積を有するチャンバ本体と、
前記チャンバ本体内に配された基板支持体であり、基板を支持する支持表面を有する基板支持体と、
前記チャンバ本体内の前記基板支持体とは反対の側に配されたプレートと
を備え、前記基板支持体と前記プレートが、第1の位置と第2の位置の間で互いに対して移動可能であり、前記第1の位置にあるときには、前記内容積内の第1の容積に対して前記支持表面が露出するような態様で、前記基板支持体と前記プレートが互いに離れて配されており、前記第2の位置にあるときには、前記内容積内の第2の容積に対して前記支持表面が露出するような態様で、前記基板支持体と前記プレートが互いに隣接して配されており、前記第2の容積が前記第1の容積よりも小さく、前記冷却チャンバがさらに、
前記基板支持体と前記プレートが前記第2の位置にあるときに前記プレートと接触するような態様で前記基板支持体と前記プレートの間に配された環状シールと、
冷却材を流すために前記プレートまたは前記基板支持体のうちの1つまたは複数の内部に配された複数の流れチャネルと、
前記第2の容積内へガスを供給するガス入口と
を備える冷却チャンバ。
【請求項2】
前記基板支持体が、前記支持表面を取り囲む外リングを備え、前記外リングが環状溝を含み、前記環状シールが前記環状溝の中に配された、請求項に記載の冷却チャンバ。
【請求項3】
前記基板支持体が、前記支持表面を取り囲む外リングを備え、前記外リングと前記支持表面の間に、前記プレートの方向とは反対の方向に前記支持表面から延びる環状チャネルが配されており、前記環状チャネルから前記外リングの周囲表面まで少なくとも1つの貫通孔が延びている、請求項に記載の冷却チャンバ。
【請求項4】
前記第2の容積から前記第2の容積以外の前記内容積の残りの部分への前記ガスのチョークドフローを生成するような形状およびサイズを、前記環状チャネルおよび前記少なくとも1つの貫通孔が有する、請求項に記載の冷却チャンバ。
【請求項5】
前記複数の流れチャネルが前記プレート内に配された、請求項1からのいずれかに記載の冷却チャンバ。
【請求項6】
基板支持体に面する前記プレートの表面が凹形である、請求項1からのいずれかに記載の冷却チャンバ。
【請求項7】
前記支持表面から間隔をあけて基板を支持するため、前記基板支持体が、前記支持表面に配された複数の支持要素を備える、請求項1からのいずれかに記載の冷却チャンバ。
【請求項8】
前記基板支持体上に基板が配されたときに前記基板と前記支持表面の間に裏側ガスを流すため、前記基板支持体が開口を備える、請求項1からのいずれかに記載の冷却チャンバ。
【請求項9】
前記基板支持体上に基板を置くことおよび前記基板支持体から基板を取り外すことを容易にするため、前記基板支持体がリフトピンアセンブリを備える、請求項1からのいずれかに記載の冷却チャンバ。
【請求項10】
前記ガス入口が前記プレートを貫通して配された、請求項1からのいずれかに記載の冷却チャンバ。
【請求項11】
中心真空移送チャンバと、
前記中心真空移送チャンバに結合された少なくとも1つの真空処理チャンバであり、基板上でプロセスを実行するための少なくとも1つの真空処理チャンバと、
前記中心真空移送チャンバに結合された少なくとも1つの冷却チャンバであり、前記基板を冷却するための冷却チャンバと
を備え、前記冷却チャンバが、請求項1から10のいずれかに記載の冷却チャンバである、
基板処理システム。
【請求項12】
基板を冷却する方法であって、
冷却チャンバの内容積内に配された基板支持体の支持表面に基板を置くこと、および
前記基板支持体または前記冷却チャンバ内の前記基板支持体とは反対の側に配されたプレートのうちの少なくとも一方を、前記支持表面に前記基板が置かれる第1の位置から、前記支持表面と前記プレートの間に第2の容積が形成される第2の位置へ移動させること を含み、前記第2の容積が前記内容積よりも小さく、前記第2の容積が実質的に密封されて、前記内容積の残りの部分から分離されており、前記方法がさらに、
前記第2の容積にガスを流入させて、前記第2の容積内の圧力を増大させること、および
前記基板支持体内または前記プレート内のうちの少なくとも一方に配された複数のチャネルに冷却材を流して、前記基板を冷却すること
を含む方法。
【請求項13】
前記基板と前記支持表面の間の空間に前記基板支持体を通して裏側ガスを流入させること
をさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記基板支持体が、前記支持表面を取り囲む外リングを備え、前記外リングが、前記プレートの方向とは反対の方向に前記支持表面から延びる環状チャネルと、前記環状チャネルから前記外リングの周囲表面まで延びる少なくとも1つの貫通孔とを備え、前記方法がさらに、
前記ガスを、前記環状チャネルおよび前記少なくとも1つの貫通孔を通して前記第2の容積から前記内容積の残りの部分へ流すこと
を含み、前記環状チャネルおよび前記少なくとも1つの貫通孔がチョークドフローを生成する、
請求項12または13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は一般に基板処理機器に関する。
【背景技術】
【0002】
いくつかのデバイスの形成では、基板上にデバイスを形成するのに、さまざまなチャンバ内での多数のプロセスが必要となる。例えば、基板上に層を形成しまたは基板上の層を除去する目的で、原子層堆積(ALD)、物理的気相堆積(PVD)、化学気相堆積(CVD)、エッチングなどのプロセスが実行されることがある。これらのプロセスのうちの多くのプロセスでは、基板を高温に加熱する必要があり、したがって処理された基板をその後に冷却する必要がある。
いくつかのプロセスでは、クールダウン(cool down)ステップを実行した後でなければ後続の処理ステップを実行することができない。従来の多くのクールダウンステーションは高真空環境中で動作し、したがって基板を冷却するのに長い時間がかかることを本発明の発明者らは認めた。そのため、それらの冷却ステーションは、基板を1つのチャンバから別のチャンバへ移動させる基板移送プロセスのボトルネックである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、本発明の発明者らは、基板をより急速に冷却する改良された冷却チャンバを提供した。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書には、基板を急速に冷却する方法および装置の実施形態が記載されている。いくつかの実施形態では、基板を冷却する冷却チャンバが、内容積を有するチャンバ本体と、チャンバ内に配された基板支持体であり、基板を支持する支持表面を有する基板支持体と、チャンバ本体内の基板支持体とは反対の側に配されたプレートとを含み、基板支持体とプレートは、第1の位置と第2の位置の間で互いに対して移動可能であり、第1の位置にあるときには、内容積内の第1の容積に対して支持表面が露出するような態様で、基板支持体とプレートが互いに離れて配されており、第2の位置にあるときには、内容積内の第2の容積に対して支持表面が露出するような態様で、基板支持体とプレートが互いに隣接して配されており、第2の容積は第1の容積よりも小さく、この冷却チャンバはさらに、冷却材を流すためにプレートまたは基板支持体のうちの1つまたは複数の内部に配された複数の流れチャネルと、第2の容積内へガスを供給するガス入口とを含む。
いくつかの実施形態では、基板処理システムが、中心真空移送チャンバと、中心真空移送チャンバに結合された少なくとも1つの真空処理チャンバであり、基板上でプロセスを実行するための少なくとも1つの真空処理チャンバと、中心真空移送チャンバに結合された少なくとも1つの冷却チャンバであり、基板を冷却するための冷却チャンバとを含む。この冷却チャンバは、内容積を有するチャンバ本体と、チャンバ内に配された基板支持体であり、基板を支持する支持表面を有する基板支持体と、チャンバ本体内の基板支持体とは反対の側に配されたプレートとを含むことができ、基板支持体とプレートは、第1の位置と第2の位置の間で互いに対して移動可能であり、第1の位置にあるときには、内容積内の第1の容積に対して支持表面が露出するような態様で、基板支持体とプレートが互いに離れて配されており、第2の位置にあるときには、内容積内の第2の容積に対して支持表面が露出するような態様で、基板支持体とプレートが互いに隣接して配されており、第2の容積は第1の容積よりも小さく、この冷却チャンバはさらに、冷却材を流すためにプレートまたは基板支持体のうちの1つまたは複数の内部に配された複数の流れチャネルと、第2の容積内へガスを供給するガス入口とを含むことができる。
いくつかの実施形態では、基板を冷却する方法が、冷却チャンバの内容積内に配された基板支持体の支持表面に基板を置くこと、および基板支持体または冷却チャンバ内の基板支持体とは反対の側に配されたプレートのうちの少なくとも一方を、支持表面に基板が置かれる第1の位置から、支持表面とプレートの間に第2の容積が形成される第2の位置へ移動させることを含み、第2の容積は内容積よりも小さく、第2の容積は実質的に密封されて、内容積の残りの部分から分離されており、この方法はさらに、第2の容積にガスを流入させて、第2の容積内の圧力を増大させること、および基板支持体内またはプレート内のうちの少なくとも一方に配された複数のチャネルに冷却材を流して、基板を冷却することを含む。
【0005】
本開示の他の追加の実施形態については以下で説明される。
上に概要を示し、以下でより詳細に論じる本開示の実施形態は、添付図面に示された本開示の例示的な実施形態を参照することによって理解することができる。しかしながら、添付図面は本開示の典型的な実施形態だけを示したものであり、したがって添付図面を本開示の範囲を限定するものと考えるべきではない。等しく有効な別の実施形態を本開示が受け入れる可能性があるためである。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本開示のいくつかの実施形態に基づく本発明の冷却チャンバとともに使用するのに適した処理システムを示す図である。
図2】本開示のいくつかの実施形態に基づく冷却チャンバを示す図である。
図3】本開示のいくつかの実施形態に基づく本発明の冷却チャンバの部分図である。
図4】本開示のいくつかの実施形態に基づく本発明の冷却チャンバの部分図である。
図5】本開示のいくつかの実施形態に基づく本発明の冷却チャンバとともに使用するのに適した基板支持体の上面を示す図である。
図6】基板を冷却する本開示のいくつかの実施形態に基づく方法を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
理解を容易にするため、可能な場合には、図に共通する同一の要素を示すのに同一の参照符号を使用した。これらの図は一定の比率では描かれておらず、分かりやすくするために簡略化されていることがある。特段の言及なしに、1つの実施形態の要素および特徴を他の実施形態に有益に組み込むことができる。
本明細書には、基板を急速に冷却する方法および装置の実施形態が記載されている。有利には、本発明の冷却チャンバの実施形態は、基板を冷却するのに必要な時間を短縮することによってスループットを増大させることができる。本発明の処理チャンバの実施形態は、既存の処理システムに容易に組み込むことができ、有利には、既存の処理システムの不必要でコストのかかる変更を回避することができる。
【0008】
図1は、本明細書に開示された本発明の冷却チャンバとともに使用するのに適していることがある例示的なマルチチャンバ処理システム100の略上面図である。本明細書に提供された教示に従って適当に変更することができる適当なマルチチャンバ処理システムの例には、米カリフォルニア州Santa ClaraのApplied Materials,Inc.から市販されているENDURA(登録商標)、CENTURA(登録商標)およびPRODUCER(登録商標)処理システム、またはApplied Materials,Inc.の他の適当な処理システムが含まれる。(他の製造会社の処理システム含む)他の処理システムを、本出願に開示された実施形態から利益を得るように適合させることもできる。
【0009】
いくつかの実施形態では、マルチチャンバ処理システム100が一般に、真空気密(vacuum−tight)処理プラットホーム102、ファクトリインターフェース104およびシステムコントローラ140を備える。処理プラットホーム102は、複数のプロセスチャンバ190A〜D、少なくとも1つの冷却チャンバ195A〜B(図1には2つの冷却チャンバが示されている)、および少なくとも1つのロードロックチャンバ(2つのロードロックチャンバが示されている)184を含むことができ、これらのチャンバは移送チャンバ188に結合されている。ロードロックチャンバ184、プロセスチャンバ190A〜Dおよび少なくとも1つの冷却チャンバ195A〜Bの間で基板を移送するため、移送チャンバ188の中央に移送ロボット106が配されている。プロセスチャンバ190A〜Dは、原子層堆積(ALD)、化学気相堆積(CVD)、物理的気相堆積(PVD)、を含む層堆積、エッチング、前洗浄、脱ガス、オリエンテーション(orientation)およびセンターファインディング(center−finding)、アニールならびに他の基板プロセスを含む、さまざまな機能を実行するように構成することができる。プロセスチャンバ190A〜Dの対応するそれぞれの内容積を移送チャンバ188の内容積に選択的に流体結合するため、プロセスチャンバ190A〜Dはそれぞれ、スリット弁または他の選択的に密閉可能な開口を含むことができる。同様に、ロードロックチャンバ184はそれぞれ、ロードロックチャンバ184の対応するそれぞれの内容積を移送チャンバ188の内容積に選択的に流体結合するためのポートを含むことができる。
【0010】
ファクトリインターフェース104はロードロックチャンバ184を介して移送チャンバ188に結合されている。いくつかの実施形態では、ロードロックチャンバ184がそれぞれ、ファクトリインターフェース104に結合された第1のポート123および移送チャンバ188に結合された第2のポート125を含む。移送チャンバ188の真空環境と実質的に周囲環境(例えば大気環境)であるファクトリインターフェース104の環境との間での基板の受け渡しを容易にするため、ロードロックチャンバ184を、ロードロックチャンバ184の減圧および通気を実行する圧力制御システムに結合することができる。
【0011】
ファクトリインターフェース104から処理プラットホーム102へのロードロックチャンバ184を通した処理のための基板の移送を容易にするため、いくつかの実施形態では、ファクトリインターフェース104が、少なくとも1つのドッキングステーション183および少なくとも1つのファクトリインターフェースロボット185(1つのファクトリインターフェースロボットが示されている)を備える。ドッキングステーション183は、1つまたは複数のフロントオープニングユニファイドポッド(front opening unified pod:FOUP)187A〜D(4つのFOUPが示されている)を受け入れるように構成されている。任意選択で、FOUP187A〜Dからの基板の測定を容易にするために、ファクトリインターフェース104に1つまたは複数の計測ステーション(図示せず)を結合することができる。ロードロックチャンバ184に基板を移動させる前にその基板を処理することができるように、ファクトリインターフェース104に基板処理装置を結合することもできる。ファクトリインターフェース104内に配されたファクトリインターフェースロボット185は、ロードロックチャンバ184と1つまたは複数のFOUP187A〜Dとの間で基板のカセットを往復させるために直線運動および回転運動(矢印182)をすることができる。現在の冷却装置は、処理プラットホームのその他の部分と同じ真空環境中にあるため、基板を冷却する時間は不利な影響を受ける。本発明の発明者らは、真空の処理プラットホーム内に配されてはいるが、より高い圧力を有する環境中で基板を冷却することができ、基板を冷却するのに必要な時間を有利に短縮する冷却チャンバを設計した。
図2は、本開示のいくつかの実施形態に基づく冷却チャンバ200を示す。冷却チャンバ200は、上で説明したマルチチャンバ処理システム100内または他のマルチチャンバ処理システム内で使用することができる。冷却チャンバ200は一般に、内容積204を画定するチャンバ本体202、内容積204内に配された基板支持体208、および基板支持体とは反対の側に配されたプレート214を備える。
【0012】
基板支持体208は、冷却の間、基板212を支持する支持表面210を含む。基板212は、支持表面に直接に載ることができ、または他の支持要素上に載ることができる。例えば、図5に示されているように、いくつかの実施形態では、支持表面210から間隔をあけて基板212を支持して、基板支持体208との接触による基板212の潜在的な汚染を最小化するため、複数の支持要素506が提供され得る。それらの複数の支持要素506は、基板212の裏側の汚染(例えば粒子生成または基板に対する望ましくない材料付着)を防ぐ特性を有する任意の材料から形成することができる。例えば、いくつかの実施形態では、それらの複数の支持要素506がサファイアボール(sapphire ball)である。
【0013】
プレート214は、基板支持体208の支持表面210とは反対の側に配されている。いくつかの実施形態では、プレート214が、チャンバ本体202(図2に示されている)のリッド(lid)もしくは上部に配され、またはチャンバ本体202のリッドもしくは上部の近くに配される。基板支持体208とプレート214は、基板支持体208とプレート214が互いに離れて配される(例えば図2に示されている)第1の位置と、基板支持体208とプレート214が互いに隣接して配される(例えば図3に示されている)第2の位置との間で互いに対して移動可能である。
【0014】
第1の位置では、内容積204内の第1の容積206に対して基板支持体208の支持表面210が露出する。第1の容積206は本質的に内容積204の全体である。例えば、第1の容積206は主に、プレート214およびチャンバ本体202の内表面を境界とすることができる。第2の位置では、内容積204内の第2の容積(図3に示された第2の容積306)に対して支持表面210が露出する。第2の容積306は第1の容積206よりも小さい。例えば、第2の容積306は主に、プレート214および基板支持体208の支持表面210を境界とすることができる。第2の容積306は、第1の容積206よりも数桁小さくすることができる。例えば、いくつかの実施形態では、第2の容積306が、第1の容積206の10パーセント未満、または5パーセント未満、または約2〜約3パーセントである。非限定的な一例では、第1の容積が約9リットル、第2の容積が約0.25リットルである。
【0015】
いくつかの実施形態では、プレート214が固定されており、基板支持体208が、第1の位置(例えば図2に示されている下位置)と第2の位置(例えば図3に示されている上位置)との間で基板支持体208の位置を制御するリフト機構226に結合されている。その代わりにまたはこれと組み合わせて、プレート214を、基板支持体208に対して移動可能とすることもできる。図2に示された構成において、チャンバ本体202の壁に配された開口222を通してチャンバ内およびチャンバ外に基板を移送するのには、第1の位置または下位置が適している。開口222は、スリット弁224によって、または開口222を通したチャンバ内部へのアクセスを選択的に提供する他の機構によって、選択的に密閉することができる。第2の位置または上位置は、基板をより急速に冷却するのに適している。
基板支持体208上に基板212を置くことおよび基板支持体208から基板212を取り外すことを容易にするために、基板212を支持表面210から持ち上げる複数のリフトピンを含むリフトピンアセンブリ238を提供することができる。図5は、本開示の実施形態に基づく基板支持体の上面図を示す。図5に示されているように、基板支持体208を貫通して延びる複数のリフトピン孔504であって、リフトピンアセンブリ238のリフトピンの移動を容易にする複数のリフトピン孔504が示されている。
図2に戻る。冷却チャンバ200は、基板212の冷却速度を高める1つまたは複数の機構を含むことができる。いくつかの実施形態では、1種または数種のガスを内容積204に供給するガス入口を介して、冷却チャンバ200にガス供給源228が結合され得る。図2には1つの入口だけが示されているが、プレート214内に、あるいは1種または数種のガスを第2の容積306に供給するのに適した別の位置に、追加のガス入口または代替のガス入口を提供することもできる。この1種または数種のガスに適したガスの例には、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)、窒素(N2)などの不活性ガス、または水素(H2)などの還元ガス、またはこれらのガスの組合せなどが含まれる。
【0016】
具体的には、ガス供給源228は、基板支持体208とプレート214が互いに隣接して配されたときに第2の容積306にガスを供給する。有利には、1種または数種のガスを第2の容積に供給すると、第2の容積306内の圧力を上昇させることが容易になり、第2の容積306内の圧力を上昇させると、基板から、基板の周囲の基板支持体208、プレート214などの冷却チャンバ200の構成要素への熱伝達の速度が高まる。さらに、冷却チャンバ200の第1の容積206または内容積204よりもはるかに小さな第2の容積306に1種または数種のガスを供給すると、冷却チャンバ200の全体の圧力を大幅には上昇させずに、圧力を上昇させることができ、それによって、有利には、冷却チャンバの全体を加圧および減圧するため、またはより低圧の環境中での基板のより低い冷却速度に依存するために必要となるであろう時間が低減される。
【0017】
いくつかの実施形態では、1種または数種のガスを第2の容積306に供給するガス入口がプレート214を貫通して提供され得る。例えば、図3により詳細に示されているように、いくつかの実施形態では、プレート214を貫通して配された中心開口304(例えばガス入口)を通してガス供給源228が第2の容積306に結合され得る。内容積204とは反対の側のプレート214の表面にカバー310を結合することができる。カバー310は、最終的にガス供給源228に通じる導管314に結合される。動作中にガス供給源228によって供給される1種または数種のガスの漏れを最小限に抑えまたは防ぐため、カバー310とプレート214の間にシールまたはガスケット312を配することができる。プレート214内または別の位置にガス入口を提供する他の構成を使用することもできる。
【0018】
図2に戻る。いくつかの実施形態では、基板支持体208とプレート214が第2の位置にあるときに環状シール236がプレート214と接触するような態様で基板支持体208とプレート214の間に環状シール236が配され得る。この環状シールは、基板支持体208の支持表面210を取り囲む。環状シール236は、基板支持体208が上位置にあるときにプレート214と支持表面210の間に画定される第2の容積を実質的に密封する役目を果たす。したがって、環状シール236は、第2の容積306と内容積204の残りの部分との間の分離の量(amount of isolation)を、第2の容積306に供給された1種または数種のガスが内容積の残りの部分内に制御された低い速度で流入するような態様で制御することを容易にする。
【0019】
いくつかの実施形態では、環状シール236が基板支持体208内に配される。いくつかの実施形態では、基板支持体208が、支持表面210を取り囲む外リング232を含むことができる。外リング232は、環状シール236を保持する環状溝234を含む。例えば、図3に示されているように、基板支持体208が第2の位置にあるとき、環状シール236は、第2の容積306を実質的に密封して、第2の容積306を冷却チャンバ200の内容積204の残りの部分から分離する。
第2の容積306内の加圧された1種または数種のガスが、外リング232の下から内容積204の残りの部分に流入しないことを保証するため、いくつかの実施形態では、外リング232と基板支持体205の間に第2の環状シール302が配され得る。例えば、第2の環状シール302は、外リング232の底表面の第2の環状溝308の中に配することができる。あるいは、第2の環状シール302を、基板支持体208内に形成された溝の中に部分的にまたは完全に配することもできる。
【0020】
図4は、図3に示された第2の位置に基板支持体がある間の外リング232の周囲のエリアの拡大図を示し、この図は、第2の容積306から内容積204の残りの部分内への1種または数種のガスの流入を制御するための諸特徴をより明確に示すための図である。図4に示されているように、外リング232と基板支持体208の間には環状チャネル402が配されている。例えば、環状チャネル402は、支持表面210に隣接した外リング232の一部分の内径と基板支持体208の支持表面210の外径との間に画定することができる。環状チャネル402は、プレート214の方向とは反対の方向に延びている。
外リング232の周囲表面から環状チャネル402まで外リング232を貫通して延びる少なくとも1つの貫通孔404を配することができる。この少なくとも1つの貫通孔404および環状チャネル402は、第2の容積306を内容積204の残りの部分に流体結合する。例えば、図5は、本開示の実施形態に基づく基板支持体の上面図を示す。図5に示されているように、環状チャネル402から外リング232の周囲端面まで延びる3つの貫通孔404が示されている。図5には3つの貫通孔404が示されているが、第2の容積306から内容積204の残りの部分へのガスの流れを制御するため、任意の数の貫通孔(例えば1つまたは複数の貫通孔)を提供することができる。
【0021】
図4に戻る。いくつかの実施形態では、環状チャネル402が実質的に垂直であり、少なくとも1つの貫通孔404が実質的に水平である(例えば環状チャネル402と少なくとも1つの貫通孔404が互いに垂直である)。少なくとも1つの貫通孔404は、貫通孔404の直径よりも大きな直径を有する外側セクション406を含むことができる。図4に示された矢印は、冷却チャンバの内容積204が第1の圧力に維持され、第2の容積306が、第1の圧力よりも高い第2の圧力に維持される本開示のいくつかの実施形態に基づくガス流路を示す。図4に示されているように、結果として生じる流路は、第2の容積306から内容積204の残りの部分へのガスのチョークドフロー(choked flow)を提供する。
【0022】
図2に戻る。いくつかの実施形態では、滑らかでより均一な層状のガス流を第2の容積306内に供給することを容易にするために、内容積に面するプレート214の表面が曲面として作られている。例えば、第2の容積306を横切って基板支持体208(およびプレート214)の中心軸の近くで厚さがより大きく、第2の容積306を横切って中心軸の半径方向外側の位置で厚さがより小さい浅いボウルまたは漏斗を形成するため、第2の容積に面するプレート214の表面を凹形にすることができる。いくつかの実施形態では、第2の容積に面するプレート214の表面を凹形にするために、プレート214の厚さが、中心開口304から外側にいくにつれて増大する。
【0023】
いくつかの実施形態では、プレート214または基板支持体208のうちの少なくとも一方が、冷却材を流して基板212の冷却速度を増大させるための1つまたは複数の流れチャネルを含むことができる。例えば、図2に示されているように、基板支持体208は、基板支持体208内の例えば支持表面210の下に配された1つまたは複数の流れチャネル218を含むことができる。この1つまたは複数の流れチャネル218に冷却材供給源216を結合して、流れチャネル218に冷却材を供給することができる。その代わりにまたはこれと組み合わせて、プレート214が1つまたは複数の流れチャネル230を含むこともでき、この1つまたは複数の流れチャネル230は、冷却材供給源216または第2の冷却材供給源231(図2に示されている)に結合することができる。
支持表面210の開口(図5に示されている)を通して裏側ガスを供給するため、いくつかの実施形態では、基板支持体208にガス供給源220が結合され得る。裏側ガスの循環を改良するため、支持表面210は複数の溝(図示せず)を含むことができる。裏側ガスを供給すると、基板と基板支持体208の間の熱伝導が向上することによって、基板212の冷却速度をさらに高めることができる。例えば、図5は、本開示の実施形態に基づく基板支持体の上面図を示す。基板支持体208上に基板212が配されたときに支持表面210と基板212の裏側との間に配される領域に裏側ガスを流すため、図5に示されているように、基板支持体208は中心開口502を含むことができる。支持表面210と基板212の裏側との間の空間に裏側ガスを流入させて基板の冷却を向上させるため、中心開口502はガス供給源220と流体連通している。
【0024】
図2に戻る。いくつかの実施形態では、冷却チャンバ200の動作を制御するコントローラ250を提供すれることができる。コントローラ250は、産業用設定においてさまざまなチャンバおよびサブプロセッサ(sub−processor)を制御するために使用することができる任意の形態の汎用コンピュータプロセッサのうちの1つとすることができる。CPU252のメモリまたはコンピュータ可読媒体256は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、フロッピーディスク、ハードディスクまたは任意の他の形態のディジタル記憶装置などの容易に入手可能なメモリのうちの1種または数種のメモリとすることができ、また、局部メモリまたは遠隔メモリとすることができる。CPU252には、プロセッサを従来の方式で支援する支援回路254が結合されている。これらの回路は、キャッシュ、電源、クロック回路、入力/出力回路およびサブシステムなどを含む。
【0025】
本明細書に開示された方法は一般に、CPU252によって実行されたときに本開示のプロセスを冷却チャンバ200に実行させるソフトウェアルーチン258としてメモリ256に記憶することができる。ソフトウェアルーチン258は、CPU252が制御しているハードウェアから遠く隔たった位置にある第2のCPU(図示せず)によって記憶および/または実行することもできる。本開示の方法の一部または全部をハードウェアで実行することもできる。そのため、本開示の実施形態は、ソフトウェアで実現し、コンピュータシステムを使用して実行することができ、例えば特定用途向け集積回路もしくは他のタイプのハードウェア実現としてハードウェアで実現および実行することができ、またはソフトウェアとハードウェアの組合せとして実現および実行することができる。ソフトウェアルーチン258は、基板支持体208上に基板212が配置された後に実行することができる。CPU252によって実行されたときに、ソフトウェアルーチン258は、汎用コンピュータを、本明細書に開示された方法が実行されるような態様でチャンバ動作を制御する特定目的コンピュータ(コントローラ)250に変化させる。
【0026】
図6は、本開示のいくつかの実施形態に基づく方法600を示す流れ図を示す。方法600は、上で論じたコントローラ250によって実施することができる。方法600は一般に605から始まり、605で、基板支持体208の支持表面210に基板212を置く。リフトピンアセンブリ238が複数のリフトピン孔504から延出して基板212を受け取る。続いて、リフトピンアセンブリ238を下げて、基板212が支持表面に(例えば直接にまたは複数の支持要素上に)載ることができるようにする。
【0027】
610で、基板支持体208とプレート214の相対位置を、基板支持体208上に基板212を置くことおよび基板支持体208上の基板212を取り外すことを容易にする第1の位置(例えば図2)から、外リング232内に配された環状シール236がプレート214の周縁部と接触して第2の容積306を実質的に密封し、それによって第2の容積306を冷却チャンバ200の内容積204の残りの部分から分離する第2の位置(例えば図3および4)へ移動させる。いくつかの実施形態では、基板支持体208を移動させ、プレート214を固定する。いくつかの実施形態では、基板支持体208に加えてプレート214を移動させてもよく、または基板支持体208の代わりにプレート214を移動させてもよい。
【0028】
615で、プレート214の中心開口304を通してガス供給源228から第2の容積306にガスを流入させる。第2の容積306にガスを流入させると、第2の容積306内の圧力が増大し、内容積204の圧力よりも高くなる。このガスは次いで、第2の容積306から、環状チャネル402および少なくとも1つの貫通孔404を通って、内容積204の残りの部分に流入する。内容積204内の圧力をあまりに大量には上昇させずに第2の容積306の内側の増大した圧力をより容易に維持するため、環状チャネル402および少なくとも1つの貫通孔404は、チョークドフローを生成するようなサイズおよび形状を有する。増大した圧力は、基板212と支持表面210の間の接触面積を改善し、その結果、基板212と支持表面210の間の伝導を向上させる。さらに、増大した圧力は、ガスを介した基板からプレート214への伝導を向上させ、基板の冷却速度をさらに高める。
【0029】
基板212をより急速に冷却するため、620で、基板支持体208内の1つもしくは複数の流れチャネル218、プレート214内の1つもしくは複数の流れチャネル230、またはその両方に冷却材を流すことができる。この冷却材は、例えば脱イオン(DI)水などの水、GALDEN(登録商標)などの適当なペルフルオロポリエーテル(PFPE)流体など、知られている任意の冷却材を含むことができる。
625で、ガス供給源228およびガス供給源220からのガスの流れを止め、さらに、基板支持体からの基板212の取外しを容易にするため、基板支持体208を再び第1の位置へ移動させる。この第1の位置では、基板212の取外しを容易にするために、リフトピンアセンブリ238が複数のリフトピン孔504から延出して、基板212を支持表面210から持ち上げる。
【0030】
以上では、真空処理ツールに結合されたチャンバ内での基板の急速冷却について説明したが、その代わりに、ヒータを提供することによって、または所望の温度の熱伝達流体を流れチャネル218、230に流すことによって、本明細書に記載された装置を基板の急速加熱に使用することもできる。
【0031】
以上の説明は本開示の実施形態を対象としているが、本開示の基本的な範囲を逸脱することなく本開示の他の追加の実施形態を考案することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6