(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記高度算出回路は、前記衛星測位無効区間においては、その間の気圧データが示す気圧を前記換算式に基づいて換算した気圧換算高度を採用するととともに、前記受信機から有効な高度データが出力されている区間である衛星測位有効区間では、受信機の高度データが示す高度を採用することによって前記試験走行ルート全体に亘る高度を確定するものであることを特徴とする請求項1記載の高度検出装置。
前記高度算出回路が、前記気圧換算高度を用いて前記試験走行ルートの一部または全部の勾配をも算出するものであることを特徴とする請求項1または2記載の高度検出装置。
【背景技術】
【0002】
車両を実際に路上走行させ、その状況をシャシダイナモ等のテストベンチで模擬することによって、車両の動作を解析し、開発や故障原因の特定などに供することが行われつつある。
【0003】
そのためには、所定の試験走行ルートを路上走行中において、車両の種々の状態、例えばエンジン回転数やスロットル開度、車速、ブレーキ踏度、エミッションなどの車両自身の状態はもちろんのこと、外気温や高度、勾配などの周囲状況をも測定しておくことが好ましいため、車両にエミッション等を測定するための排ガス分析装置や高度検出装置などを搭載している。
【0004】
ところで、この周囲状況のうち、特に勾配は、車両に作用している負荷(または駆動力)に大きな影響を与えるものであるから、路上走行時にこれを精度良く測定しておくことによって、それと同等の負荷(または駆動力)をテストベンチでの試験時に車両に与えることができるようになり、テストベンチでの模擬試験を、路上走行により近い実効性のあるものにすることができる。
【0005】
そこで従来、特許文献1に示すように、前記高度検出装置として、気圧センサが示す気圧から当該車両が路上走行したときの高度やそれに基づく勾配を算出するようにしたものが知られている。
【0006】
この気圧センサを用いた高度・勾配算出方式は、途切れなく連続的にデータを取得できるというメリットがあるものの、気圧は天候で変動するため、該気圧から得られた高度や勾配の値の信頼性に欠けるというデメリットがある。
【0007】
一方、近時、GPSなどの衛星測位システムが開発され、その受信機(以下、GPS受信機を車両に搭載しておけば、位置および高度の双方がかなりの精度で測定できる。
【0008】
しかしながら、GPS受信機の測定データは、ビルの陰やトンネルなど、十分な数(例えば4つ以上)の衛星からの電波を受信できない場所を車両が走行している場合に、その値の信頼性がなくなるというデメリットがある。
【0009】
かといって、GPS受信機の測定データが信頼できない区間、すなわち、GPSによる測定ができない区間を単純に気圧センサから得られた高度データで補うと、GPSによる高度データと気圧センサによる高度データとの切換時に、測定高度に階段状の差が生じ、該測定高度の距離微分で算出される勾配の値が、前記切換時に本来の値からかけ離れた極端に高い(または低い)値を示すこととなってしまう。
【0010】
このように勾配の値に大きな誤差がでることは、該勾配が路上走行をテストベンチで再現するための最も重要なパラメータの1つであるから、好ましいことではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は上述した課題を一挙に解決すべく図ったものであって、衛星測位システムと気圧センサとの長所を双方活かしつつ、これらを組み合わせた場合に生じ得る勾配の測定誤差を可及的に低減できる高度検出装置等を提供すべく図ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
すなわち本発明に係る高度検出装置は、車両が走行した試験走行ルートの高度を検出するものであって、以下の要素を具備していることを特徴とする。
【0014】
(1)車両に搭載された衛星測位システムの受信機から試験走行ルートを走行中の車両の高度を示す高度データを受信するとともに、車両に搭載された気圧センサから車両周囲の気圧を示す気圧データを受信する受信回路。
(2)前記気圧データが示す気圧を高度に換算するための換算式を生成する換算式生成回路。ここで、前記換算式は、該換算式を用いて気圧から換算した高度である気圧換算高度が、前記試験走行ルートでの前記受信機から有効な高度データが出力されている所定の複数の有効高度測定地点それぞれにおいて、該高度データの示す高度である衛星測位高度と合致するように構成されている。
(3)前記気圧データが示す気圧を前記換算式に基づいて前記気圧換算高度に換算することによって、前記試験走行ルートの一部または全部の高度を算出する高度算出回路。
【0015】
例えばビルの間を車両が走行するなど、衛星測位高度の信頼性が不安定なときのみ気圧換算高度を用い、その他では衛星測位高度を利用することによって、気圧データによる高度誤差の影響を小さくするには、前記換算式生成回路が、前記受信機から有効な高度データが出力されてない区間である受信機無効区間の直前および直後をそれぞれ前記有効高度測定地点として、当該受信機無効区間に対応する換算式を生成するものであり、前記高度算出回路が、前記受信機無効区間においては、その間の気圧データが示す気圧を前記換算式に基づいて換算した気圧換算高度を採用するととともに、前記受信機から有効な高度データが出力されている区間である受信機有効区間では、受信機の高度データが示す高度を採用することによって前記試験走行ルート全体に亘る高度を確定するものであることが望ましい。
【0016】
テストベンチでの負荷等を定めるには、勾配が必要なため、前記高度算出回路が、前記気圧換算高度を用いて前記試験走行ルートの一部または全部の勾配をも算出機能を有していれば、より好ましい。
【0017】
一方、このような高度検出装置が検出した勾配に基づいて、車両または車両の一部を試験するための負荷・駆動装置における負荷または駆動力を設定すれば、テストベンチにおける試験を、実路上走行により近づけた、精度の高いものにすることができる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように構成した本発明によれば、試験走行ルート上において精度のよい衛星測位高度が得られる複数の有効高度測定地点それぞれにおいて、衛星測位高度に気圧換算高度が合致するように換算式を定めているので、気圧から換算した高度を、天候等の影響を受けない、誤差の小さなものにすることができる。
【0019】
しかも、衛星測位高度と気圧換算高度とが前記有効高度測定地点で連続するので、例えば、2つの有効高度測定地点間において、衛星測位高度の代わりに気圧高度を用いるなどして衛星測位高度を気圧高度で補完しても、試験走行ルート全体に亘り、高度が急激に変化するような実際にはありえない不連続な地点は存在しないこととなる。したがって、該高度を微分して算出される勾配データの誤差をも最小限に抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0022】
<第1実施形態>
図1に、本実施形態に係る高度検出システム100を示す。この高度検出システム100は、車両が走行した試験走行ルートの高度及び勾配を検出するものであり、該車両に搭載された気圧センサ1、GPS受信機2および高度検出装置3を具備してなる。そして、この高度検出システム100によって検出された高度や勾配は、シャシダイナモ等の負荷・駆動装置(図示しない。)を有する室内テストベンチでの模擬走行に利用される。
【0023】
なお、この実施形態の車両には、この高度検出システムに加えて排ガス分析装置6を搭載している。この排ガス分析装置6は、車両排気管5のテールパイプにプローブ部分が取り付けられたサンプル管7を介して排ガスの一部をサンプリングし、該排ガスに含まれる種々の所定成分の濃度を測定するものであり、CO
2濃度計、NO
X濃度計、THC計などの複数の成分濃度計からなる。
次に、前記高度検出システム100の各部を説明する。
【0024】
前記気圧センサ1は、ここでは例えば半導体素子を利用した静電容量式のものである。なお、気圧センサとして、振動式のものなど、その他の測定方式のものを用いても構わない。
【0025】
前記GPS受信機2(以下、受信機2ともいう。)は、いわゆる衛星測位システムの構成要素でもあり、少なくとも4つの衛星からの電波を受け、自身の位置を示す位置データ、高度を示す高度データ、その測定した時刻を示す時刻データ等からなる衛星測位データを出力するものである。
【0026】
さらにこのGPS受信機2は、衛星測位データとして、出力された位置データおよび高度データの有効性または信頼性を判断するための有効判断データをも出力できるようにしてある。有効判断データとは、例えば電波を受信した衛星の数を示すものであり、これが2つ以下であれば、位置データおよび測定データのいずれにも信頼性はなく、3つであれば、高度データに信頼性はなく、4つ以上であれば、その数が多いほど、位置データおよび高度データの双方の信頼性が高くなる。
【0027】
高度検出装置3は、物理的にいえば、CPU、メモリ、A/Dコンバータ、通信ポートなどを具備した専用乃至汎用のコンピュータであり、機能的にいえば、
図2に示すように、前記メモリに記憶された所定のプログラムにしたがってCPUやその周辺機器が協働することにより、受信回路31、換算式生成回路32、高度算出回路33等としての機能を発揮するものである。
次に、この高度検出装置3の各部の説明を兼ねて、当該高度検出システム100の動作を説明する。
【0028】
路上での試験走行が始まると、前記受信回路31が、車両に搭載された衛星測位システムの受信機2から、試験走行ルートを走行中の車両の位置を示す位置データ、高度を示す高度データ、および有効判断データからなる衛星測位データを逐次受信し、メモリの所定領域に設定された衛星測位データ格納部(図示しない)に格納する。この受信回路31はまた、車両に搭載された気圧センサ1から車両周囲の気圧を示す気圧データをも受信し、メモリの所定領域に設定された気圧データ格納部(図示しない)に格納する。
【0029】
次に、試験走行が終わると、換算式生成回路32が、その試験走行で得られた全ての有効判断データの内容を、前記衛星測位データ格納部を参照してチェックし、試験走行ルートでの位置データおよび高度データの信頼性に乏しい区間(以下、衛星測位無効区間ともいう。)と、信頼性がある区間(以下、衛星測位有効区間Qともいう。)とに区分する。ここでは、例えば有効判断データの示す衛星数が4以上の区間を衛星測位有効区間Qとし、その他を衛星測位無効区間P(P1、P2)としている。なお、衛星測位有効区間Qでの測定精度の信頼性を高めるべく、衛星測位有効区間Qを抽出するための条件を、5以上の衛星から受信していること、などとしてもよい。
しかしてその結果、
図3に示すように、2つの衛星測位無効区間P1、P2が認識されたとする。
【0030】
これら衛星測位無効区間P1、P2では、受信機2から得られた高度に信頼性がないから、換算式生成回路32は、前記各衛星測位無効区間P1、P2における高度を、前記気圧データが示す気圧から換算するためのそれぞれ別個の気圧−高度換算式(以下、単に換算式ともいう。)を生成する。
まず、第1衛星測位無効区間P1について説明する。
【0031】
この換算式生成回路32は、該第1衛星測位無効区間P1の直前地点S1および直後地点E1を、それぞれ、前記受信機2から有効な高度データが出力されている有効高度測定地点と認識する。
【0032】
そして、換算式生成回路32は、前記各地点S1、E1において、受信機2が示す高度と、気圧から換算された高度とがそれぞれ一致するような、気圧−高度換算式を生成する。
次に、この換算式の具体的な生成手順について説明する。
気圧から高度に換算する数式は、一般的に以下の線形な式(1)で表すことができる。
y=A・x+B・・・(1)
ここで、yは高度(m)、xは気圧(Pa)、AおよびBは係数である。
【0033】
低気圧や高気圧が接近するなどして天候が変わると、高度の変化量と気圧の変化量との関係を示すAは不変であるが、オフセット値Bが
図4に示すようにB’などに変化する。
【0034】
そこで、換算式生成回路32は、まず前記直前地点S1での受信機2が示すGPS高度Y
S1に、気圧センサ1による高度が合致するようなオフセット値B
S1を算出する。このB
S1は、以下の式から求めることができる。
B
S1=Y
S1−A・X
S1・・・(2)
ここでX
S1は、直前地点S1での気圧センサ1が示す気圧である。
同様にして該換算式生成回路32は、前記直後地点E1でのオフセット値B
E1を以下の式から求める。
B
E1=Y
E1−A・X
E1・・・(3)
ここでX
E1は、直後地点E1での気圧センサ1が示す気圧である。
【0035】
次に、前記換算式生成回路32は、前記式(2)および式(3)に基づいて、直前地点S1から直後地点E1までの間の各地点、つまり第1衛星測位無効区間P1の各地点での換算式を求める。
【0036】
具体的に説明すると、第1衛星測位無効区間P1の各地点における換算式のオフセット値が、前記直前地点S1から前記直後地点E1に向かうに連れ、単調に増加(B
S1<B
E1のとき)し、または単調に減少(B
S1>B
E1のとき)するように設定する。
【0037】
ここでは、例えば、第1衛星測位無効区間P1における各地点のオフセット値が、
図5に示すように、直前地点S1からの距離dに応じて線形に変化するようにしてある。このようにして生成された換算式は以下のとおりである。
y=A・x+{(D
1−d)/D
1}・B
S1+(d/D
1)・B
E1・・・(4)
ここで、D
1は第1衛星測位無効区間P1の距離(m)である。
【0038】
このようにして、該換算式生成回路32は、前記受信機2から有効な高度データが出力されている2地点、すなわち第1衛星測位無効区間P1の直前及び直後の2地点S1、E1において、受信機2が示す高度と、気圧から換算された高度とがそれぞれ一致し、かつ第1衛星測位無効区間P1において、当該換算式のオフセット値が滑らかに変化する(ここでは前述したように線形に変化する)ような換算式を生成し、メモリの所定領域に設定した換算式格納部(図示しない)に格納する。
同様にして、この換算式生成回路32は、第2衛星測位無効区間P2についての換算式を生成する。その式は以下のとおりである。
y=A・x+{(D
2−d)/D
2}・B
S2+(d/D
2)・B
E2・・・(5)
【0039】
ここで、D
2は、第2衛星測位無効区間P2の距離(m)である。また、B
S2=Y
S2−A・X
S2、B
E2=Y
E2−A・X
E2であり、Y
S2は、第2衛星測位無効区間P2の直前地点S2での受信機2が示す高度、X
S2は、前記直前地点S2での気圧センサ1が示す気圧、Y
E2は、第2衛星測位無効区間Pの直前地点E2での受信機2が示す高度、X
E2は、直前地点E2での気圧センサ1が示す気圧である。
【0040】
次に高度算出回路33が、前記各衛星測位無効区間P1、P2においては、その間の気圧データが示す気圧を前記各換算式にそれぞれ基づいて換算した気圧換算高度を採用するととともに、前記衛星測位有効区間Qでは、受信機2の高度データが示す衛星測位高度を採用することによって前記試験走行ルート全体に亘る高度を確定する。そして、該高度の単位距離当たりの変化を計算することによって、つまり高度を距離で微分することによって、前記試験走行ルートの全部の勾配を算出する。
【0041】
この勾配を示す勾配データは、試験走行ルートの位置データ及び高度データと紐付けられて、メモリの所定領域に設定した走行ルートデータ格納部(図示しない)に格納され、前述したように、この試験走行を模擬すべくシャシダイナモ等の負荷や駆動力を設定するために供される。
なお、衛星測位無効区間が、1つまたは3つ以上の場合でも、各衛星測位無効区間にそれぞれ換算式を生成するように構成すればよい。
【0042】
以上に述べた本実施形態の構成によれば、衛星測位無効区間P1、P2では測定ができないという衛星測位システムのデメリットを、その衛星測位無効区間P1,P2では気圧換算高度を用いることによって補完し、解消することができる。
【0043】
しかも、衛星測位高度が用いられる衛星測位有効区間Qと、気圧換算高度が用いられる衛星測位無効区間P1、P2との境界での各高度の値は合致するので、最終的に確定された試験走行ルート全体に亘る測定高度において、実際では有り得ないような階段状に急激に変化する部分が存在しなくなる。したがって、該高度を微分して算出される勾配データの誤差を最小限に抑えることができる。
【0044】
また、各衛星測位無効区間P1、P2ごとにそれぞれ別個の換算式を用いて気圧換算高度を算出し、かつ、各換算式が、信頼性の高い衛星測位有効区間Qの始点E1、E2及び終点S1、S2を参照しているので、衛星測位無効区間P1、P2における気圧換算高度を、天候等の影響を受けない、誤差の小さなものにすることもできる。
【0045】
さらに、この実施形態では、排ガス分析装置6を車両に搭載して、高度検出システム100と合わせた走行分析システムを構築し、試験走行の各時刻における排ガス各成分の濃度や所定区間における各成分の排出量と高度又は勾配との関係を把握できるようにしているので、高度又は勾配によって排ガス中の各成分の濃度や排出量がどのように変化するかなどを検討でき、車両の開発や故障原因の特定などに資することができる。
【0046】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について、
図6を参照して説明する。
この実施形態では、試験走行が終了すると、換算式生成回路32が、その試験走行で得られた有効判断データの内容を、前記衛星測位データ格納部34を参照してチェックし、試験走行ルートの中から、位置データおよび高度データの信頼性がある、例えば、最も離れている2地点(以下、衛星測位有効地点ともいう。)を抽出する。
この2地点が、例えば試験走行ルートの始点及び終点であったとする。
【0047】
次に、換算式生成回路32は、前記始点及び終点において、受信機2が示す高度と、気圧から換算された高度とがそれぞれ一致するような、気圧−高度換算式を生成する。この換算式の生成手順については、前記第1実施形態の直前地点及び直後地点を、本実施形態の始点及び終点に置き換えただけであるので、詳細な説明は省略する。
【0048】
次に、高度算出回路33が、試験走行ルート全体に亘り、気圧データが示す気圧を前記換算式に基づいて高度に換算する。そして、該高度の単位距離当たりの変化を計算することによって、つまり高度を距離で微分することによって前記試験走行ルートの全体の勾配を算出する。
この勾配を示す勾配データは、第1実施形態同様、試験走行ルートの位置データ及び高度データと紐付けられて、前記走行ルートデータ格納部に格納される。
【0049】
このような本実施形態の構成によれば、換算式が、信頼性の高い2つの衛星測位有効地点で得られた各衛星測位高度に、気圧換算高度が合致するように構成されているので、該気圧換算高度を、天候等の影響を受けない、誤差の小さなものにすることができる。
【0050】
また、試験走行ルート全体に亘り、気圧換算高度を用いており、高度が階段状に急激に変化するような、実際では有り得ない部分が存在しなくなるので、該高度を微分して算出される勾配データの誤差をも最小限に抑えることができる。
なお、2つの衛星測位有効地点は、始点、終点に限られず、中間地点を適宜2点選定してもよい。
【0051】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態について、
図7を参照して説明する。
この実施形態では、試験走行が終了すると、換算式生成回路32が、衛星測位有効地点を3つ以上(ここでは例えば3つ)抽出する。その3地点を、順に第1地点、第2地点、第3地点とする。
【0052】
次に、換算式生成回路32は、隣り合う各2地点での受信機2が示す高度と、気圧から換算された高度とがそれぞれ一致するような、気圧−高度換算式をそれぞれ生成する。
【0053】
より具体的に説明すると、第1地点と第2地点での受信機2が示す高度および気圧から換算された高度とがそれぞれ一致するような第1換算式、および第2地点と第3地点での受信機2が示す高度と、気圧から換算された高度とがそれぞれ一致するような第2換算式をそれぞれ生成する。
【0054】
次に、高度算出回路33が、試験走行ルートの始点から第2地点までは、気圧データが示す気圧を前記第1換算式に基づいて高度に換算し、第2地点から試験走行ルートの終点までは、気圧データが示す気圧を前記第2換算式に基づいて高度に換算する。
【0055】
そして、このようにして得られた試験走行ルート全体の高度を、該高度算出回路は、前記第2実施形態同様、距離で微分して試験走行ルート全体の勾配を算出する。その後は、第1実施形態および第2実施形態と同様であるので説明は省略する。
【0056】
このような本実施形態の構成によれば、複数の換算式が用いられ、信頼性の高い3つ以上の衛星測位有効地点で得られた各衛星測位高度に、気圧換算高度が合致するように構成されているので、第2実施形態よりも気圧換算高度の精度をさらに高めることができる。
【0057】
また、換算式が複数用いられてはいるものの、その境界での気圧換算高度の連続性は保たれており、試験走行ルート全体に亘り、高度が階段状に急激に変化するような、実際では有り得ない部分は存在しないので、該高度を微分して算出される勾配データの誤差をも最小限に抑えることができる。
【0058】
<その他の実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
例えば、各実施形態では、2地点間の換算式を求める際、換算式のオフセット値が、距離に応じて線形に変化するように構成していたが、走行時間に応じてオフセット値が線形に変化するようにしてもよい。また、オフセット値は、2地点間を必ずしも線形に変化する必要はなく、非線形な変化であってよい。特にオフセット値を滑らかに変化させるようにしておけば、非連続な勾配が算出されないので好ましい。
【0059】
高度検出装置3は必ずしも車両に搭載しておく必要はなく、車両外の例えばテストベンチに設けてもよい。その場合、車両には、気圧データやGPSデータ等の各データを記録するデータロガーのみを設けておき、そのデータロガーの記録媒体に記録された各データを、測定中に逐次無線で、または測定終了後、有線または無線等、あるいは記録媒体を移し替えることによって高度検出装置3に入力するようにしてもよい。
【0060】
高度算出回路は、少なくとも気圧換算高度を算出する機能を有していればよく、勾配算出機能は、例えば前記負荷・駆動装置が有する情報処理装置に担わせてもよい。また、例えば、受信機が、衛星測位データとして勾配を示す勾配データをも出力するものであれば、衛星測位有効区間においては、受信機が算出する勾配データを用いるようにしても良い。
試験走行後、換算式を生成するのではなく、試験走行中にリアルタイムに換算式を生成して高度算出するようにしてもよい。
【0061】
高度検出装置は、前記実施形態において得られたGPS高度や気圧高度を、ディスプレイ等の表示部に、例えば運転時にリアルタイムに表示するものであっても良い。この場合、高度検出装置は、
図3に示すようなグラフを表示部に表示するものであっても良いし、GPS高度又は気圧高度の何れか一方を表示部に例えばグラフ等の形式で表示するものであっても良い。
このとき、高度検出装置は、車両(GPS受信機2)の位置(経度及び緯度)を示す位置情報とともに、前記GPS高度や気圧高度を表示することが考えられる。また、高度検出装置は、前記GPS受信機2の位置データから算出される車速や加速度等の演算値とともに、前記GPS高度や気圧高度を表示することも考えられる。これらの表示をドライバ等のオペレータが見比べることによって、GPS受信機2の故障等の不具合が生じているのか、又は、例えば建物等の遮蔽物により電波の受信が不能・不調に陥っているのかを判断することができる。
【0062】
前記高度検出装置が、路上での試験走行前に、前記GPS受信機2の高度データを用いて、前記換算式の初期オフセット値を算出し、試験走行中に、前記初期オフセット値を用いてオフセットされた換算式により得られ他方気圧高度と、前記GPS高度とを比較して、両者が所定値以上ずれた場合に、GPS受信機2に故障等の不具合が生じていると判断しても良い。なお、前記初期オフセット値を算出する場合には、前記GPS受信機2の高度データのほか、別の高度計や高度情報を用いても良い。
その他、本発明は、前記各実施形態の一部を適宜組み合わせるなど、その趣旨を逸脱しない範囲で変形可能である。