(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6574710
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】磁気センサ装置
(51)【国際特許分類】
G07D 7/04 20160101AFI20190902BHJP
G01R 33/02 20060101ALI20190902BHJP
H01L 43/06 20060101ALI20190902BHJP
【FI】
G07D7/04
G01R33/02 Q
G01R33/02 U
H01L43/06 A
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-6240(P2016-6240)
(22)【出願日】2016年1月15日
(65)【公開番号】特開2017-126265(P2017-126265A)
(43)【公開日】2017年7月20日
【審査請求日】2017年9月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】510192019
【氏名又は名称】株式会社ヴィーネックス
(74)【代理人】
【識別番号】100141852
【弁理士】
【氏名又は名称】吉本 力
(74)【代理人】
【識別番号】100152571
【弁理士】
【氏名又は名称】新宅 将人
(72)【発明者】
【氏名】麥 健忠
(72)【発明者】
【氏名】日口 慎介
(72)【発明者】
【氏名】舛久 直也
【審査官】
井出 和水
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2015/194605(WO,A1)
【文献】
特開2012−047685(JP,A)
【文献】
特開2005−030872(JP,A)
【文献】
特開平11−101658(JP,A)
【文献】
中国実用新案第203759230(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 7/00 − G07D 7/207
G01R 33/02
H01L 43/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送路を搬送される紙葉類に含まれる磁性体を検出する磁気センサ装置であって、
前記搬送路に磁界を発生させる磁界発生部と、
前記磁界発生部により発生される磁界の強度を電気信号に変換する複数の磁電変換素子を紙葉類の搬送方向に直交する方向に備えたセンサ部と、
前記センサ部を保持するとともに、前記複数の磁電変換素子からの入出力信号について回路パターンを有する保持基板と、
前記保持基板から入力される信号に基づいて紙葉類に含まれる磁性体を検出する検出部と、
前記保持基板と磁界発生部を保持し、前記保持基板と前記磁界発生部を固定する保持ケースと、
前記センサ部と前記検出部をポリイミド材で被覆した可撓性のフレキシブル基板により接続する接続部と、
前記センサ部を搬送路に搬送される紙葉類から保護する保護カバーと、
前記センサ部の周囲に前記保持基板と前記保護カバーを固定するスペーサーとを備え、
前記スペーサーは、前記センサ部の高さよりも厚みが大きく、なおかつ、前記スペーサーと前記保持基板は弾力部材を介して固定され、
前記フレキシブル基板は、前記保持ケースの外側に設けられており、
前記フレキシブル基板と前記保護カバーとの間に設けられ、前記保持ケースとの間で前記フレキシブル基板を挟持するアタッチメントをさらに備え、
前記磁電変換素子からの出力信号が前記フレキシブル基板を介して前記検出部に入力されることを特徴とする磁気センサ装置。
【請求項2】
前記接続部は前記保持ケースに接着固定されていることを特徴とする請求項1記載の磁気センサ装置。
【請求項3】
前記接続部はエポキシ系樹脂により前記保持ケースに接着固定されていることを特徴とする請求項2記載の磁気センサ装置。
【請求項4】
前記保持ケースは前記磁界発生部に対して前記保持基板を位置決めするための位置決め突起を複数備え、前記保持基板には、前記位置決め突起が挿入される位置決め孔が形成されていることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の磁気センサ装置。
【請求項5】
前記保持基板はフレキシブル基板により構成され、前記保持基板と前記接続部が一体型にされていることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の磁気センサ装置。
【請求項6】
前記フレキシブル基板は磁電変換素子周辺をソルダーレジスト材で形成されていることを特徴とする請求項5記載の磁気センサ装置。
【請求項7】
前記フレキシブル基板と検出部はコネクタにより接続されていることを特徴とする請求項1〜6いずれか記載の磁気センサ装置。
【請求項8】
前記フレキシブル基板は、前記検出部側の端部が複数の接続片に分割されており、当該複数の接続片がそれぞれ前記検出部に接続されていることを特徴とする請求項1〜7いずれか記載の磁気センサ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば紙幣、有価証券などの紙葉類に含まれる磁性体を検出する磁気センサ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
磁性インクなどで所定の磁性体パターンが含まれる紙葉類を識別する磁気センサ装置として長尺型の磁気センサ装置が各種実用化されている。
【0003】
従来の磁気センサ装置は、主な構成要素として、紙葉類に含まれる磁性体を磁化させるための磁界発生部と、磁化された磁性体の磁界強度を電圧等に変換する磁電変換素子と、磁電変換素子からの出力を検出する検出部と、を備えており、この検出部において、紙葉類に含まれる磁性体が検出される。
【0004】
上述の磁界発生部では、通常永久磁石や電磁コイルにより、紙葉類の搬送路上に磁界(バイアス磁界と呼ぶ)を発生させる。また磁電変換素子には、磁気抵抗素子、磁気ヘッド、ホール素子などが用いられる。磁電変換素子はバイアス磁界中に設置され、紙葉類がその近傍を通過すると、紙葉類に含まれる磁性体によってバイアス磁界が変化するために、その出力が変化する。この出力信号を検出することによって磁性体が検出される。
【0005】
また、最近偽造された紙幣や有価証券等はますます精巧になり、真偽を見分け難くなっている。一方、偽造防止・真偽識別のために、紙葉類に多種類の高度なセキュリティー対策が施されている。例えば、紙葉類に印刷パターンの細かな磁性体を配置したり、磁気特性の異なる複数の磁性体を複数配置したりしている。
【0006】
従来の磁気アレイセンサは特許文献1に示すように、磁電変換素子と磁界発生部を保持する保持ケースを有し、当該保持ケースの天面側に磁電変換素子を配置している。この際、磁電変換素子と検出部とを接続するための外部入出力用の端子は、樹脂ケースの底面から突出するピンなどが用いられる。そして、この外部入出力用のピン端子を磁電変換素子と接続するため、ピン端子は底面から天面まで樹脂ケースを貫通する形状から成り、天面において、ピン端子と磁電変換素子とを導電性材料で形成されたリード端子で接続する形状が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−175490号公報
【特許文献2】特開平11−101658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の磁気センサ装置は、各磁電変換素子が大型であり、かつ素子数も少ないため、直線上に配列される各磁電変換素子間の接続ピン本数は少なく、またピッチが比較的大きい。しかし、紙葉類全面の細かな磁性体を検出するには、各磁電変換素子を小さくかつ素子間のピッチを小さくする必要がある。また、前記複数の磁電変換素子の正規の読み取り位置が紙葉類の搬送方向に対して、直交方向に異なると検出波形も異なることから、位置決め精度が重要である。
【0009】
しかしそのためには、各磁電変換素子の小型化だけでなく磁電変換素子数が増加するので、ピン端子により磁電変換素子と検出回路を接続する方式では、磁電変換素子と検出回路を接続するのが困難であった。特許文献2では、磁電変換素子(本文献の表現では磁気検出素子)および磁石が保持部材に保持されるとともに、該保持部材がケース内にて該ケースと前記磁電変換素子との間に間隔を有して樹脂ホルダにより保持され、かつ、前記保持部材が磁電変換素子を弾性的に保持する保持片を備えて、磁電変換素子と検出回路との接続をフレキシブル回路基板にて接続する方法を示している。しかし、この方法では、磁電変換素子を保持する保持片が磁電変換素子を両サイドから挟持する必要があるが、磁電変換素子の素子数が搬送方向に対して直交方向に増加したとき、保持することができない。また、搬送路に搬送される紙葉類からの振動や衝撃の影響により、磁気センサ出力に悪影響をもたらす。
【0010】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、磁電変換素子数が増加し、外部入出力端子が多くても磁電変換素子と検出部を接続することが可能な磁気センサ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る磁気センサ装置は、搬送路を搬送される紙葉類に含まれる磁性体を検出する磁気センサ装置であって、前記搬送路に磁界を発生させる磁界発生部と、前記磁界発生部により発生される磁界の強度を電気信号に変換する複数の磁電変換素子を紙葉類の搬送方向に直交する方向に備えたセンサ部と、前記センサ部を保持するとともに、前記複数の磁電変換素子からの入出力信号について回路パターンを有する保持基板と、前記保持基板から入力される信号に基づいて紙葉類に含まれる磁性体を検出する検出部と、前記保持基板と磁界発生部を保持し、前記保持基板と前記磁界発生部を固定する保持ケースと、前記センサ部と前記検出部をポリイミド材で被覆した可撓性のフレキシブル基板により接続する接続部とを備えている。
【0012】
また、該磁気センサ装置は、前記センサ部を搬送路に搬送される紙葉類から保護する保護カバーと、前記保護カバーと前記センサ部が接触しないようセンサ部の周囲に前記保持基板と前記保護カバーとを固定するスペーサーを備え、前記スペーサーと前記保持基板は弾力部材により固定されている。そうすることにより、搬送路を搬送される紙葉類からのセンサ部の振動や衝撃を抑えることができ、高精度のセンサ出力を得ることができる。
【0013】
さらに、前記フレキシブル基板が当該磁界発生部からの電磁誘導を受けないよう前記接続部は前記保持ケースに接着固定されている。そうすることにより、磁界発生部の振動や衝撃によって、フレキシブル基板が電磁誘導の影響を受けずに、高精度のセンサ出力を得ることができる。
【0014】
また、前記保持ケースは前記磁界発生部に対して前記保持基板を位置決めするための位置決め突起を複数備え、前記保持基板には、前記位置決め突起が挿入される位置決め孔が形成されるよう構成する。
【0015】
このような構成によれば、複数の磁電変換素子が小さく素子数が多くても、各磁電変換素子からの信号を検出部に接続することができるとともに、保持基板に形成された位置決め孔に保持ケースの位置決め突起を挿入するだけで、保持基板と磁界発生部を容易に位置決めすることができる。つまり、複数の磁電変換素子が小さく素子数が多くても、各々の磁電変換素子と磁界発生部との位置関係について、精度よく容易に組み立てることができる。なお、前記接続部は磁界発生部と直接接着固定してもよい。
【0016】
また、磁界中に配列されている磁電変換素子は、前記磁界発生部により発生される磁界中であれば、搬送路方向に直交であれば良く、特に一直線上でなくてもよく、例えば千鳥配置のように、複数の直線上に配列されてもよい。
【0017】
さらに、前記センサ部を保持する該保持基板はポリイミド材で被覆したフレキシブル基板により構成され、前記検出部と接続されているフレキシブル基板と一体化されている。
【0018】
このような構成によれば、前記保持基板とフレキシブル基板をコネクタなどで接続することなく、多数の磁電変換素子をフレキシブル基板にリフロー実装し、前記磁電変換素子をフレキシブル基板により直接検出部にまとめて接続することが可能となる。また、磁電変換素子は常に保持ケースに固定されているため常に安定した磁電変換素子の出力を得ることができる。なお、該フレキシブル基板の磁電変換素子周辺を熱膨張の少ないソルダーレジスト材で形成してもよく、磁電変換素子をソルダーレジストで形成することにより、温度変化による磁電変換素子周辺の位置ずれが生じにくくなる。
【0019】
さらに、前記フレキシブル基板と検出部はコネクタにより接続されているようにする。そうすることによりフレキシブル基板と検出部とを簡単に接続することが可能になり、磁気センサ装置の組立作業や保守作業を簡略化することができる。なお、このときフレキシブル基板と検出部との接続はコネクタ接続に限られたものでなく、簡単に圧着接続されるものであればよい。
【0020】
さらに、前記フレキシブル基板は、前記検出部側の端部が複数の接続片に分割されており、当該複数の接続片がそれぞれ前記検出部に接続されるようにする。
【0021】
このような構成によれば、フレキシブル基板における検出部側の端部が複数の接続片に分割されているため、当該端部が分割されていない場合と比較して、熱膨張などによる変形が生じにくい。これにより、当該端部の変形が反対側(磁電変換素子側)の端部に与える影響を抑制することができるため、フレキシブル基板の変形による各磁電変換素子の位置ずれなどが生じにくい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、複数の小さな磁電変換素子を精度よく細かなピッチで配列することができ、また磁電変換素子と検出部の入出力端子が増加しても接続することができるので、磁界発生部と搬送路、磁電変換素子との距離をコンパクトに製造可能な磁気センサ装置を実現できる。これにより、紙葉類に含まれる磁性体を高解像度かつ高精度で検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る磁気センサ装置1の概略断面図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る磁気センサ装置1の構成とその中で発生する磁界の様子を概略的に示す断面図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る磁気センサ装置1の一部分を示した概略斜視図である。
【
図4A】保持基板を部分的に拡大して示した概略平面図である。
【
図5】本発明の第2実施形態に係る磁気センサ装置1の構成とその中で発生する磁界の様子を概略的に示す断面図である。
【
図6】本発明の第2実施形態に係る磁気センサ装置1の一部分を示した概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る磁気センサ装置1の概略断面図である。紙葉類Sには、例えば、磁気インク、磁気スレッドなどを用いて磁気パターンMが印刷されており、この磁気センサ装置1は、紙葉類Sに含まれる磁気パターンMを検出するものである。
【0025】
搬送路2は、間隔Gで、紙葉類Sの幅よりもやや大きい幅で、搬送方向D1に向かって形成されている。紙葉類Sは、上流搬送ローラー21によって搬送路2の中に送り込まれ、磁気センサ装置1に対向するセンサ対向ローラー23で下流搬送ローラー22に向かってさらに搬送される。センサ対向ローラー23は、紙葉類Sが磁気センサ装置1に近づくように、D3の方向に向けて押し下げる機能も有する。このようにして紙葉類Sが磁気センサ装置1上を通過する間に紙葉類Sの磁性体が検出される。次いで、紙葉類Sは下流搬送ローラー22で搬送路から排出される。
【0026】
図2は、磁気センサ装置1の構成とその中で発生する磁界の様子を概略的に示す断面図である。また、
図3は、磁気センサ装置1を示した概略斜視図である。
磁界発生部3は、通常、永久磁石で構成されており、バイアス磁界を形成する。この例では、N極が上側、S極が下側となるように、磁界発生部3は、磁電変換素子4の下に設けられている。磁界発生部3の周囲には、
図2に示すようなループ状の磁束が形成され、特に、磁電変換素子4の近傍では、紙葉類Sの搬送方向(
図1参照)に対して垂直なバイアス磁界が形成されている。
【0027】
磁電変換素子4は、ホール素子で構成されている。ホール素子はこのバイアス磁界の中にあり、紙葉類Sに対して直交方向D3に形成される磁束を検知するよう複数備えられている。複数の磁電変換素子4は、センサ部40を構成しており、磁界発生部3により発生されるバイアス磁界の強度を電気信号に変換する。紙葉類Sが磁電変換素子4上を通過する際、紙葉類Sに含まれている磁性体によって、このバイアス磁界が変化する。磁電変換素子4はこの変化したバイアス磁界を検出する。
【0028】
本実施形態では、幅方向D2に沿った各磁電変換素子4間のピッチは0.5mm〜3mmで設定されている。当該ピッチは、該磁電変換素子4のD2方向の磁界検出範囲以下で設定されている。これにより、紙葉類Sを搬送したとき、紙葉類S全面の磁界変化を隙間なく検出することができる。
【0029】
複数の磁電変換素子4は、保持基板5により保持されている。保持基板5は、例えばガラスエポキシ樹脂などの絶縁性樹脂により形成されたリジッド基板の表面に、銅箔などの導体箔で回路パターンが印刷されたプリント基板である。本実施形態における保持基板5の表面には、複数の磁電変換素子4と、当該保持基板5を他の部材に電気的に接続するためのコネクタ51が実装されている。
【0030】
保持基板5には、フレキシブル基板6を介して検出部7が接続されている。すなわち、保持基板5に実装されたコネクタ51にフレキシブル基板6の一端部が着脱可能に接続されるとともに、検出部7を構成する駆動基板に実装されたコネクタ71にフレキシブル基板6の他端部が着脱可能に接続されることにより、保持基板5上の回路と検出部7とが電気的に接続されている。
【0031】
各磁電変換素子4には、検出部7からフレキシブル基板6を介して駆動電圧が印加されており、各磁電変換素子4からの出力信号はフレキシブル基板6を介して検出部7に入力される。検出部7は、磁電変換素子4の出力から、紙葉類Sに含まれている磁性体によるバイアス磁界の変化分だけを取り出して、高精度で紙葉類Sの磁性体を検出する。
【0032】
フレキシブル基板6は、可撓性を有するプリント基板であり、銅箔などの導体箔がフィルム状の絶縁体であるポリイミド材により被覆された構成となっている。フレキシブル基板6は、センサ部40(磁電変換素子4)と検出部7を接続する接続部60を構成している。本実施形態では、1つのフレキシブル基板6により、複数の磁電変換素子4が検出部7に対して纏めて接続されている。これにより、各磁電変換素子4を検出部7に対して個別に配線で接続するような構成と比較して、多数の磁電変換素子4を配列して検出部7に接続することができる。
【0033】
このように構成することで、複数の磁電変換素子4は検出部7に対して分離して設けられるため、これらの磁電変換素子4を搬送路2と磁界発生部3との間の比較的狭いスペースに設けることが可能になる。
【0034】
また、フレキシブル基板6における検出部7側の端部は、切り込み又は切り取り部分が形成されることにより、複数の接続片61に分割されている。各接続片61は、それぞれ個別のコネクタ71を介して検出部7に接続されている。すなわち、複数の接続片61をそれぞれ検出部7に接続することにより、1つのフレキシブル基板6を用いて、複数の磁電変換素子4を検出部7に対して纏めて接続することができるようになっている。
【0035】
保持ケース8は、磁界発生部3、磁電変換素子4、保持基板5及びフレキシブル基板6を保持する筐体である。磁界発生部3、磁電変換素子4及び保持基板5は、ほぼ密閉された状態で、相互の位置関係が動かないように保持ケース8により固定されている。フレキシブル基板6は、磁界発生部3、磁電変換素子4及び保持基板5と固定された保持ケース6に、接着固定される。この接着固定は、例えばエポキシ系接着剤などのようにエポキシ系樹脂を含む材料を用いて行われる。
【0036】
保持ケース8により、磁界発生部3と保持基板5は連結されている。この例では、磁界発生部3の幅方向D2の両端部に連結部材81が備え付けられており、当該連結部材81により保持ケース8と保持基板5は幅方向D2の両端部に連結されている。具体的には、連結部材81は保持ケース8から保持基板5側に突出する突起であり、保持基板5の両端部には、各突起に対向する位置に位置決め孔52が形成されている。
【0037】
これにより、保持基板5に形成された位置決め孔52に連結部材81を挿入するだけで、磁界発生部3に対して保持基板5を容易に位置決めすることができる。特に、本実施形態のように複数の磁電変換素子4が保持基板5により保持された構成の場合には、保持基板5を位置決めするだけで、各磁電変換素子4の位置決めを容易かつ精度よく行うことができるため、組立作業を簡略化することができる。
【0038】
なお、連結部材81は、2つに限らず、3つ以上設けられていてもよい。また、連結部材81は、保持基板6の一端部における幅方向D2の両端部で連結部材81に連結するような構成に限らず、幅方向D2の中央部などの他の位置で保持基板5を連結部材81に連結するような構成であってもよい。さらに、連結部材81は保持ケース8に設けられた構成に限らず、例えば磁界発生部3に設けられていてもよいし、他の部材に設けられていてもよい。この場合、保持ケース8と磁界発生部3や磁電変換素子4を固定する必要はない。
【0039】
保護カバー9は、搬送路2内に搬送される紙葉類Sなどから、磁電変換素子4を保護するカバーであり、非磁性体(たとえば、リン青銅)で構成されている。スペーサー10、アタッチメント11は、搬送路2内に搬送される紙葉類Sにより保護カバーの変形を防止するための非磁性体で構成されている。スペーサー10は搬送路2内に搬送される紙葉類Sにより磁電変換素子4が保護カバー9と接触しないよう磁電変換素子4より高く構成されており、また紙葉類Sの搬送による振動を受けないようスペーサー10と保持基板5は弾力性のある両面テープにより固定されている。ここで、弾力性のある両面テープは、弾力部材の一例に過ぎず、他の弾力部材を用いることも可能である。さらに保持ケース8とアタッチメント11でフレキブル基板6を挟持して、固定している。
【0040】
図4Aは、保持基板5を部分的に拡大して示した概略平面図である。
図4Bは、
図4Aの保持基板5の概略底面図である。保持基板5には、
図4A、
図4Bに示すように、表面、裏面ともに回路パターン53、54が形成されている。保持基板5の表面には、各磁電変換素子4の取付位置に回路パターン53、54が形成されており、当該回路パターン53、54上に磁電変換素子4が実装されている。回路パターン53は、磁電変換素子4からの信号パターンであり、各磁電変換素子4の出力から保持基板5上に実装されたコネクタ51まで延びており、当該コネクタ51にフレキシブル基板6が取り付けられる。
【0041】
回路パターン54は磁電変換素子4について、一定の電圧を与える電源パターンであり、保持基板5上に実装されたコネクタ51から裏面の回路パターン54により引き回され、保持基板5のスルーホール穴55を経由して表面の回路パターン54に接続されている。すべての各磁電変換素子4の電源は並列に接続されている。
【0042】
この例では、表面が信号パターン、裏面が電源パターンにて接続される構成となっているが、このような構成に限らず、複数の回路パターン54に分割されていてもよい。また、本実施例では磁電変換素子4を定電圧にて並列に接続しているが、定電流を与える電源にして、各磁電変換素子4の電源パターンを直列に接続してもよい。
【0043】
本実施形態によれば、磁界発生部3が永久磁石、磁電変換素子4がホール素子により構成される場合について説明した。しかし、このような構成に限らず、例えば磁界発生部3をコイル、磁電変換素子4を磁気抵抗素子や磁気インピーダンス素子などで構成するものであってもよい。
【0044】
<第2実施形態>
図5は、本発明の第2実施形態に係る磁気センサ装置100の構成例を示した概略断面図である。また、
図6は、磁気センサ装置100の一部分を示した概略斜視図である。第1実施形態では、複数の磁電変換素子4が保持基板5により保持された構成について説明したが、第2実施形態では、複数の磁電変換素子4がフレキシブル基板6に実装されている点が第1実施形態とは異なる。すなわち、第2実施形態では、第1実施形態における保持基板5がフレキシブル基板6により構成され、保持基板5と接続部60が一体型にされている。他の構成については第1実施形態と同様であるため、同様の構成については、図に同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0045】
幅方向D2に沿って直線上に配列されている複数の磁電変換素子4がフレキシブル基板6により保持されている。フレキシブル基板6は、一般的に、ポリイミドで被覆したものにて構成しているが、各磁電変換素子4の周囲にはポリイミドではなく熱膨張の少ないソルダーレジストにて形成してもよい。磁電変換素子4周辺をソルダーレジストで形成することにより、温度変化による磁電変換素子4周辺の位置ずれが生じにくくなる。
【0046】
また、フレキシブル基板6における検出部7側の端部は、切り込み又は切り取り部分が形成されることにより、複数の接続片61に分割されている。各接続片61は、それぞれ個別のコネクタ71を介して検出部7に接続されている。これは、フレキシブル基板6における検出部7側の端部が分割されていない場合と比較して、熱膨張による変形が生じにくい。これにより、当該端部の変形が反対側(磁電変換素子4側)の端部に与える影響を抑制することができるため、フレキシブル基板6の変形による各磁電変換素子4の位置ずれが生じにくい。この例では、フレキシブル基板6の端部が3つの接続片61に分割されているが、これに限らず、2つの接続片61に分割されていてもよいし、4つ以上の接続片61に分割されていてもよい。
【0047】
さらにフレキシブル基板6を介して検出部7が接続されている。すなわち、フレキシブル基板6の一端部が着脱可能に接続されるとともに、検出部7を構成する駆動基板に実装されたコネクタ71にフレキシブル基板6の他端部が着脱可能に接続されることにより、フレキシブル基板6上の回路と検出部7とが電気的に接続されている。これにより、多数の磁電変換素子4をフレキシブル基板6に実装し、それらの磁電変換素子4をフレキシブル基板6により検出部7に対して纏めて接続することができる。
【0048】
この場合、複数の磁電変換素子4がフレキシブル基板6に直接保持されることにより、第1実施形態のような保持基板5が不要となる。そのため、構造が簡略化されるとともに、より狭いスペースに複数の磁電変換素子4を設置することができる。
【0049】
磁界発生部3及びフレキシブル基板6は、保持ケース8に備えられた連結部材81により連結されている。この例では、永久磁石3の幅方向D2の両端部に連結部材81が取り付けられており、当該連結部材81がフレキシブル基板6の一端部における幅方向D2の両端部に連結されている。具体的には、連結部材81は保持ケース8からフレキシブル基板6側に突出する位置決め突起であり、フレキシブル基板6の一端部における幅方向D2の両端部には、各位置決め突起に対向する位置に位置決め孔63が形成されている。
【0050】
これにより、フレキシブル基板6に形成された位置決め孔63に連結部材81を挿入するだけで、磁界発生部3に対してフレキシブル基板6を容易に位置決めすることができる。特に、本実施形態のように複数の磁電変換素子4がフレキシブル基板6に実装された構成の場合には、フレキシブル基板6を位置決めするだけで、各磁電変換素子4の位置決めを容易かつ精度よく行うことができるため、組立作業を簡略化することができる。
【0051】
なお、連結部材81は、2つに限らず、1つだけであってもよいし、3つ以上設けられていてもよい。また、連結部材81は、フレキシブル基板6の一端部における幅方向D2の両端部で連結部材81に連結するような構成に限らず、幅方向D2の中央部などの他の位置でフレキシブル基板6を連結部材81に連結するような構成であってもよい。さらに、連結部材81は保持ケース8に設けられた構成に限らず、例えば磁界発生部3に設けられていてもよいし、他の部材に設けられていてもよい。この場合、保持ケース8と磁界発生部3や磁電変換素子4を固定する必要はない。
【0052】
なお、以上の実施形態では、磁界発生部3が永久磁石、磁電変換素子4がホール素子により構成される場合について説明した。しかし、このような構成に限らず、例えば磁界発生部3を電磁コイル、磁電変換素子4を磁気抵抗素子や磁気インピーダンス素子などで構成し、搬送路2における磁界の方向D3に沿った磁界強度が電気信号に変換されるような構成であってもよい。
【0053】
以上の発明により、複数の小さな磁電変換素子4を精度よく細かなピッチで配列することができ、また磁電変換素子4と検出部7の入出力端子が増加しても接続することができるので、磁界発生部3と搬送路2、磁電変換素子4との距離をコンパクトに製造可能な磁気センサ装置1を実現できる。これにより、紙葉類Sに含まれる磁性体を高解像度かつ高精度で検出することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 磁気センサ装置
2 搬送路
21 上流搬送ローラー
22 下流搬送ローラー
23 センサ対向ローラー
3 磁界発生部
4 磁電変換素子
5 保持基板
6 フレキシブル基板
7 検出部
8 保持ケース
9 保護カバー
10 スペーサー
11 アタッチメント
40 センサ部
51 コネクタ
52 位置決め孔
53 信号パターン
54 電源パターン
60 接続部
61 接続片
63 位置決め孔
64 ソルダーレジスト
71 コネクタ
81 連結部材
100 磁気センサ装置